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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】包材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B65D65/40 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021551402
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037252
(87)【国際公開番号】W WO2021066048
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/038601
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 博隆
(72)【発明者】
【氏名】金箱 眞
(72)【発明者】
【氏名】篠原 知也
(72)【発明者】
【氏名】滝島 聡
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087691(JP,A)
【文献】特開2013-248742(JP,A)
【文献】特開2015-089619(JP,A)
【文献】特開2013-249070(JP,A)
【文献】特開2001-171045(JP,A)
【文献】特開2022-125979(JP,A)
【文献】国際公開第2016/21682(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/94491(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/66048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性薬理活性成分を配合する貼付剤を内容物として内包する袋状の包材であって、
前記包材は、
貼付剤側の最内層として、環状ポリオレフィン系樹脂100質量%の環状ポリオレフィン系樹脂層と最内層の前記内容物と接する面ポリエチレン樹脂100質量%のポリエチレン脂層とを有する積層フィルムであって、記積層フィルムの全樹脂成分に基づいて環状ポリオレフィン系樹脂を60質量%以上含有する積層フィルムである、環状ポリオレフィン系フィルムと、
前記最内層より外側に隣接する中間層である一軸延伸ポリプロピレンフィルムと、
前記中間層より外側に隣接する最外層であ金属酸化物を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムとからなる3層フィルムの積層体であり、
前記最外層金属酸化物を蒸着した面は前記中間層側に面している積層構成を有する、
包材。
【請求項2】
前記揮発性薬理活性成分が、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l-メントール又はdl-カンフルから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の包材。
【請求項3】
前記環状ポリオレフィン系樹脂が、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び環状共役ジエン重合体からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂である、請求項1又は請求項2に記載の包材。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂層が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも一種樹脂層である、請求項1乃至請求項のうちいずれか一項に記載の包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品としての貼付剤を一次包装する袋状の包装材料(以下、「包材」という。)に関し、詳細には、密封性に優れることはもちろん、揮発性薬理成分の吸着が少なく、包材開封時における切断部の直線性に優れた貼付剤向けの包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品の包材は、医薬品の品質確保とともに、適正な使用及び投与時の安全性確保に適したものが必要である。第十七改正日本薬局方 製剤総則[2]製剤包装通則には、製剤包装に必要となる適格性として、貼付剤中の薬物の吸着抑制等の「製剤の保護」(Protection)、製剤の品質を低下させない「製剤と包装の適合性」(compatibility)、包材中の成分が製剤に移行して安全性を損なうことのない「包装に用いる資材の安全性」(safety)、及び識別性、使用性、廃棄に関する「投与時の付加的な機能」(performance)が記載されている。
【0003】
このうち、「製剤の保護」の一性能である揮発性薬理活性成分吸着抑制に関しては、l-メントール等の揮発性薬理活性成分が吸着されないシーラント材(包材の最内層)の構成が特に重要となる。例えば、熱融着可能な熱可塑性樹脂上に無機系蒸着薄膜層を積層した低吸着シーラント基材(特許文献1)、ポリアクリロニトリル(PAN)基材(特許文献2)又はポリアクリロニトリル樹脂粒子及びポリエステル樹脂粒子からなる群から選択される基材(特許文献3)、最内層がl-メントールの収着を抑制するポリアクリロニトリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物であることを特徴とする積層体(特許文献4)、溶解度パラメータ(SP値)が9以上のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびエチレン系コポリマーから選ばれる樹脂を1種以上含むシーラントフィルム(特許文献5)、並びに分子量800以下の揮発性の低分子化合物を含有する内容物を、ガラス転移温度が50℃以上190℃以下の環状オレフィン系樹脂を含むシーラント層(特許文献6)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-144879号公報
【文献】特開2005-328928号公報
【文献】特開2012-184357号公報
【文献】特開平8-143452号公報
【文献】特開2016-198918号公報
【文献】特開2016-222332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した熱融着可能な熱可塑性樹脂上に無機系蒸着薄膜層を積層した低吸着シーラント基材は、これを用いた包材が硬いものとなるために手触りや出し入れ等の使用感が悪く、またポリアクリロニトリル(PAN)系基材は高価であり、しかも加工性(製造性)が悪く、エチレン-酢酸ビニル共重合体は揮発性薬理活性成分の吸着抑制効果が低く、環状ポリオレフィン系樹脂は揮発性薬理活性成分の吸着抑制効果は高いものの、包材としたときの使用感が悪いという問題があった。
また、上述のシーラント材を用いたすべての包材材質に関して、手で裁断する際の裁断部の直線性が悪いという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
揮発性薬理活性成分を配合する貼付剤の包材に関して、優れた密封性を有するとともに、揮発性薬理活性成分の吸着を抑制し、袋状としたときに初回開封時の切断部の直線性が悪いとの課題を同時に満足できる包材が求められている。
本発明者らは、袋状としたときに内容物と接することとなる最内層の構成を、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルム、または該フィルムにおいて最内層側にポリエチレン樹脂層を有するフィルムとし、このフィルムと一軸延伸ポリオレフィンフィルムと金属又は金属酸化物を蒸着したフィルムとを積層した包材が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、
1.揮発性薬理活性成分を配合する貼付剤を内包する袋状の包材であって、前記包材は、
貼付剤側の最内層として、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルムと、
最内層より外側の中間層として、一軸延伸ポリオレフィン系フィルムと、
中間層より外側の最外層として、金属又は金属酸化物を蒸着した、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンから選択されるフィルムとを備えた積層体であり、
前記最外層の金属又は金属酸化物を蒸着した面は中間層側に面している積層構成を有する、包材に関する。
【0008】
そして本発明によれば、さらに以下の実施態様が提供される。
2.前記環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルムが、最内層側にポリエチレン樹脂層を有するフィルムである、前記包材。
3.前記揮発性薬理活性成分が、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l-メントール又はdl-カンフルから選択される1種又は2種以上である、前記包材。
4.前記環状ポリオレフィン系フィルム系樹脂が、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び環状共役ジエン重合体からなる群から選択される少なくとも一種である、前記包材。
5.前記一軸延伸ポリオレフィン系フィルムが、一軸延伸ポリエチレンフィルム又は一軸延伸ポリプロピレンフィルムである、前記包材。
6.前記ポリエチレン樹脂層が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む樹脂層である、前記包材。
7.前記金属又は金属酸化物を蒸着したポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートからなる群から選択される少なくとも一種のポリエステルの金属又は金属酸化物を蒸着したフィルムである、前記包材。
8.前記包材は、
前記最内層である環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルムと、
最内層より外側に隣接する中間層である一軸延伸ポリオレフィン系フィルムと、
中間層より外側に隣接する最外層である金属又は金属酸化物を蒸着した、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンから選択されるフィルムの、
3層の積層体である、
前記包材。
9.前記一軸延伸ポリオレフィン系フィルムが、一軸延伸ポリプロピレンフィルムである、前記包材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揮発性薬理活性成分を配合する貼付剤の包材として、袋状としたときの貼付剤側の最内層として、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルム、または該フィルムにおいて最内層側にポリエチレン樹脂層を有するフィルム、最内層より外側の中間層として一軸延伸ポリオレフィン系フィルム、中間層より外側の最外層として金属又は金属酸化物を蒸着したフィルムを有する積層体からなる包材を採用することにより、1)揮発性薬理活性成分の吸着抑制、2)包材を裁断する際の裁断部の直線性の向上、を同時に達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の包材は、少なくとも特定の環状ポリオレフィン系フィルム、すなわち、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルム、若しくは、該フィルムにおいて最内層側にポリエチレン樹脂層を有するフィルムと、一軸延伸ポリオレフィン系フィルムと、金属又は金属酸化物を蒸着した、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンから選択されるフィルムとを、この順に積層した積層体(積層フィルム)からなる。ここで前記特定の環状ポリオレフィン系フィルムは、前記包材を袋状としたときに、内容物である貼付剤側の最内層を構成し、また、金属又は金属酸化物を蒸着したポリエステル等のフィルムが最外層を構成する。
【0011】
[最内層:環状ポリオレフィン系フィルム]
本発明の包材において、袋状としたときに貼付剤側の最内層を構成する特定の環状ポリオレフィン系フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有するフィルムである。具体的には、後述するように、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する単層フィルムの態様、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有し、包材としたときの最内層側(最内面)であって内容物と接触する面がポリエチレン樹脂層である多層フィルムの態様などが挙げられる。
前記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は100℃以上であることが好ましい。環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、より好ましくは7,000~300,000である。尚、本発明におけるガラス転移点、融点は示差走査熱量測定(DSC)にて測定したものである。
【0012】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素原子数2~20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
【0014】
本発明の包材の最内層を構成するフィルムにおいて、環状ポリオレフィン系樹脂の、全樹脂成分に基づく含有率は、積層体(包材)とした際の耐熱性や、高剛性の観点から、60質量%以上であることを必須とするものである。これよりも低い含有率では剛性と耐熱性とに優れた積層体が得られにくい。特に好ましいのは65質量%以上である。
環状ポリオレフィン系樹脂の、全樹脂成分に基づく含有率が60質量%以上の環状ポリオレフィン系フィルムとしては、環状ポリオレフィン系樹脂100質量%のフィルム(以下、単に「COC」と称する)のほか、環状ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂を配合した混合樹脂からなるフィルム(単層フィルムの態様)、あるいは、環状ポリオレフィン系樹脂層と他の樹脂層、例えばポリエチレン樹脂層が積層してなる態様(環状ポリオレフィン系フィルム上にポリエチレンフィルムを積層した積層フィルムなど)(以下、「特殊COC」という。)などが挙げられる。これらのうち、特殊COCの積層フィルムの場合、フィルムの厚みなどを調整することにより、環状ポリオレフィン系樹脂を積層フィルムを構成する全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有するように樹脂含量を調整すればよく、該積層フィルムにおける環状ポリオレフィン系樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂100質量%の樹脂層であってもよいし、ポリオレフィン系樹脂等を配合した樹脂層であってもよい。またこれらのうち、特殊COCの積層フィルムを用いる場合、包材とした際にポリオレフィン樹脂層が最内層側となるように(すなわち内包する貼付剤と面する側に)使用することで、包材としたときの手触りや出し入れのしやすさといった使用感、包材が包装機のガイドロールを通過する際に包材にしわが発生せず、良好に滑るといった加工性(製造性)及び高いヒートシール強度を達成できるとのヒートシール性に優れるため好ましい。
【0015】
また、前記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)は、得られる積層体(包材)の耐熱性及び高剛性の点から100℃以上であることが好ましい。また積層体を製造する観点から共押出可能である点や、工業的原料入手容易性の観点から、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは105℃~180℃である。この様なTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が40~90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50~90質量%、更に好ましくは60~85質量%である。含有比率がこの範囲にあれば、積層体(包材)としての耐熱性、剛性、引き裂き性、加工安定性が向上する。
一方、高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜時・スリット時の引き取りや巻き取り適性を考慮すると、高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とをブレンドすることも可能である。
また剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける・破袋する等の問題がある場合は、Tg100℃未満の環状ポリオレフィン系樹脂を配合することにより、落袋強度をも向上できる。また環状ポリオレフィン系樹脂と相溶性のよい、環状構造を含有しないポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等の、他のポリオレフィン系樹脂を配合することも有効である。
【0016】
前記環状ポリオレフィン系樹脂として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム(COC)としては、倉敷紡績株式会社の「コゼック」(登録商標)、環状ポリオレフィン系樹脂層と、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂層を有する特殊COCのフィルムとして、DIC株式会社の「DIFAREN」(登録商標)MPフィルム等が挙げられる。
【0017】
本発明における環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、包装材料として好適に用いられる5μm~50μmの範囲で選択され得、例えば10μm~40μmの範囲のものが用いられる。
また、環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルムが、最内層側にポリエチレン樹脂層を有するフィルムである場合、該ポリエチレン樹脂層は、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂を含む層が挙げられ、使用感、製造性、ヒートシール性等の観点から、LLDPEが好ましい。上記積層フィルムにおけるポリエチレン樹脂層の厚さは、2~10μmが好ましい。この範囲であると使用感、製造性、ヒートシール性に優れ、厚みの増大による揮発性薬物の吸着量が増加するのを抑制できるからである。
【0018】
[中間層]
<一軸延伸ポリオレフィン系フィルム>
本発明の包材において、上記最内層の外側の中間層(中間フィルム)には、一軸延伸ポリオレフィン系フィルムを備える。
中間層として一軸延伸ポリオレフィン系フィルムを採用することにより、包材に直線カット性を付与することができる。
一軸延伸ポリオレフィン系フィルムとしては、一軸延伸ポリエチレンフィルム(以下「一軸延伸PE」と略す場合がある)、一軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下「一軸延伸PP」と略す場合がある)などの縦一軸または横一軸延伸ポリオレフィン系フィルムを採用することができる。中でも、一軸延伸ポリオレフィン系フィルムとしては、一軸延伸ポリプロピレンフィルムを採用することにより、引き裂き性が向上するため好ましい。
本発明における一軸延伸ポリオレフィン系フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、包装材料として好適に用いられる5μm~50μmの範囲で選択され得、例えば10μm~40μmの範囲、あるいは15μm~30μm範囲のものが用いられる。
【0019】
<その他中間層>
また中間層は、上記一軸延伸ポリオレフィン系フィルムの他、必要に応じて更に1層以上を設けてもよい。追加する中間層は一軸延伸ポリオレフィン系フィルムの外層側または内層側のどちら側に設けてもよい。追加する中間層としては、ガスバリア性を付与する目的として、アルミニウム、銅、マグネシウム等の金属箔の他、強靭性を付与するためにポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等の延伸フィルムを用いることができる。厚みは、例えば、5μm~50μm程度の範囲にすることが好ましい。
【0020】
[最外層:金属又は金属酸化物を蒸着したポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンから選択されるフィルム]
本発明の包材において、中間層より外側であり、袋状としたときに最も外側の層(最外層)を構成するフィルムは、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンから選択されるフィルム上に、金属又は金属酸化物を蒸着したフィルムである。金属又は金属酸化物の蒸着を為すことで、水蒸気バリア性、酸素バリア性やアロマバリア性などの密封性を付与できる。
なお、蒸着面を保護しバリア性の低下を防ぐべく、金属又は金属酸化物を蒸着した面を中間層側に向けて積層することが好ましい。
【0021】
上記ポリエステルフィルムのポリエステルとは、多価カルボン酸モノマーとポリオールモノマーの縮重合によって得られるエステル結合を分子鎖中に有するポリマーの総称であり、これらのなかで、ジカルボン酸とジオールからの縮重合により得られる線状ポリエステルが一般的である。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に代表される脂環式ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族系ジカルボン酸などがある。ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどがある。具体的に用いられるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)が機械特性、耐熱性のバランスから好ましく用いられている。
また上記ポリアミドフィルムのポリアミドは、ナイロン6等の脂肪族骨格を含むポリアミド(ナイロン)を用いることができる。
【0022】
なお本発明で用いるポリエステルフィルムとして、二軸延伸されたものを用いてもよい。二軸延伸ポリエステルフィルムは、未延伸状態のポリエステル被膜を長手方向および幅方向に各々2.5~5倍程度延伸し、その後熱処理を施すことで、寸法安定性や機械的強度、平面性に優れたものとすることができる。
また、ポリアミドフィルム又はポリプロピレンフィルムとして、二軸延伸ポリアミドフィルム又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用する場合は、未延伸状態のポリアミド被膜又はポリプロピレン被膜を、長手方向および幅方向に各々3~5倍(ポリアミド)又は5~10倍(ポリプロピレン)程度延伸し、その後熱処理を施すことで、寸法安定性や機械的強度、平面性に優れたフィルムとすることができる。
また、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム中には、各種添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0023】
本発明におけるポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルムの厚さは特に限定されるものではないが、包装材料として好適に用いられる1μm~100μmの範囲で選択され得、好ましくは2.5μm~75μm、より好ましくは5~50μmの範囲のものが用いられる。
【0024】
また本発明におけるポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよく、表面に種々の目的に応じた塗工層が設けられたものであってもよい。この塗工層は、例えば二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルムの製膜中に長手方向に延伸された後に塗工され、その後幅方向に延伸するいわゆるインラインでの塗工によってもよく、二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルムにオフラインで塗工されたものであってもよい。さらに、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルム表面に、コロナ放電処理、低圧プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射、マット加工等の表面改質処理を施しても構わない。
【0025】
本発明においては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム及びポリプロピレンフィルム上にアルミニウム、銅、マグネシウム等の金属や酸化ケイ素(シリカ)や酸化アルミニウム(アルミナ)等の金属酸化物から形成される層が設けられる。光線から内容物を保護する場合(包材として遮光性が必要な場合)で、且つガスバリア性が必要な場合には金属蒸着フィルムを用い、逆に遮光性は特に必要としないがガスバリア性が必要な場合には金属酸化物蒸着フィルムを用いる。
金属又は金属酸化物の蒸着は、真空蒸着法(抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱)、イオンプレーティング法、スパッタリング法など公知の方法によって実施され得る。中でも生産性の観点から真空蒸着法を用いることが好ましい。例えば真空装置内において、繰り出し軸のロールから長尺のポリエステル等のフィルムを連続的に繰り出し、蒸着領域において金属又は金属酸化物を連続的に蒸着し、巻き取り軸に巻き取る連続式真空蒸着方式にて、金属又は金属酸化物を蒸着したフィルムを製造することができる。
【0026】
本発明における金属又は金属酸化物を蒸着したフィルムの金属又は金属酸化物蒸着層の厚さは、フィルム搬送速度と蒸発量によって決定されるものである。例えば金属又は金属酸化物を蒸着した層の厚さは、10nm~80nmの範囲とすることができ、15nm~70nmの範囲、20nm~60nmの範囲とすることができる。
【0027】
本発明の包材の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば各層を構成するフィルム同士を、接着剤を用いて積層するドライラミネーション法又はTダイスから溶融樹脂をフィルム状に押し出したものを基材上に積層する押出しラミネーション法などが目的に応じて用いられる。
本発明の包材は、最内層(環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系フィルム)/中間層(一軸延伸ポリオレフィン系フィルム)/最外層(金属又は金属酸化物を蒸着した、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンから選択されるフィルム)の三層の積層構造とすることができる。
また上述したように、中間層として一軸延伸ポリオレフィン系フィルムの他、更に1層以上を設けてもよく、すなわち、最内層/中間層A(一軸延伸ポリオレフィン系フィルム)/中間層B(その他)/最外層、最内層/中間層B(その他)/中間層A(一軸延伸ポリオレフィン系フィルム)/最外層、最内層/中間層B(その他)/中間層A(一軸延伸ポリオレフィン系フィルム)/中間層B(その他)/最外層といった積層構造をとることができる。ここで中間層B(その他)は、上述の<その他中間層>で挙げた金属箔や延伸フィルム等を用いることができ、中間層Bは一層又は二層以上の複数層から構成することができる。
【0028】
[貼付剤]
本発明の包材が内包する、揮発性薬理活性成分を配合する貼付剤(以下、単に貼付剤とも称する)について詳述する。
貼付剤は、その構成等は特に限定されず、例えば支持体と、該支持体上の少なくとも一方の面上に設けられた揮発性薬理活性成分を含有する粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられた剥離ライナー(剥離シートとも称する)を含む構成を挙げることができる。
【0029】
上記貼付剤、特に支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層からなる製剤部分の形状は特に限定されず、方形(正方形、長方形等)、四角形(台形、菱形等)、多角形、円形、楕円形、半円形、三角形、三日月形、並びにこれらを組み合わせた形状等、貼付箇所に合わせて種々の形状を選択できる。
なお貼付剤(特に上記の製剤部分)の面積は適宜決定することができ、例えば粘着剤層に配合する有効成分の量などを考慮し、例えば2~300cmの範囲とすることができる。
【0030】
[支持体]
上記貼付剤に用いる支持体としては、フィルム、不織布、和紙、綿布、編布、織布、不織布とフィルムのラミネート複合体等の柔軟性を有する支持体が挙げられる。
これらの支持体は、皮膚に密着することができ、かつ、皮膚の動きに追随することができる程度の柔軟な材質、そして長時間貼付後において皮膚のかぶれ等の発生を抑制できる材質が好ましい。これらの支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
前記支持体の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
[粘着剤層]
上記貼付剤において、粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されるものではなく、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ハイドロコロイド系粘着剤などが挙げられる。これら粘着剤は一種を単独で、或いは二種以上を混合して用いてもよい。
また前記粘着剤層の構造としては、1層構造でもよく、多層構造であってもよい。前記粘着剤層が多層構造である場合は、前記揮発性薬理活性成分はそのうちの1層以上に含まれていればよい。
好ましい形態の一例として、前記粘着剤層はゴム系粘着剤から構成され得る。ゴム系粘着剤は、一般にゴム系エラストマーと粘着付与剤と軟化剤を含有し、必要に応じてその他の成分を含有してなる。以下、ゴム系粘着剤を用いた貼付剤の一例を示す。
【0032】
前記揮発性薬理活性成分としては、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l-メントール及びdl-カンフルが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記揮発性薬理活性成分の前記粘着剤層における含有量としては、粘着剤層の全質量を100質量%とするとき、例えば0.1質量%~30質量%、0.2質量%~20質量%、0.5質量%~15質量%とすることができる。
【0033】
ゴム系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(以下、「SIS」ということがある。)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、「SBS」ということがある。)、または、これらの水素添加物、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(以下、「SEPS」ということがある。)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(以下、「SEBS」ということがある。)等の熱可塑性ブロック共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-α-オレフィン共重合体;など種々の熱可塑性エラストマーが適用可能である。これらの中でもSIS、SBS、SEPS、SEBS等の熱可塑性ブロック共重合体であるスチレン系熱可塑性エラストマーが、粘着性や凝集性が優れていることから好適に使用される。これらの中でも、ヒトの皮膚に対する粘着力、他の成分との相溶性などの観点から、SISが特に好ましく、例えばSIS5002(JSR株式会社製)及びクインタック3520(日本ゼオン株式会社製)などの市販品を挙げることができる。
前記エラストマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記エラストマーの前記粘着剤層における含有量としては、目的に応じて適宜選択することができるが、粘着剤層の全質量を100質量%とするとき、例えば10質量%~60質量%、15質量%~50質量%、15~40質量%などとすることができる。
【0034】
前記粘着付与剤としては、粘着性を向上させるものであれば特に制限はなく、一例としてロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂(C5系石油樹脂、C9系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などを挙げることができる。中でもテルペン樹脂とロジン樹脂から選択される粘着付与剤1種以上を含有することが好ましい。
前記テルペン樹脂としては、例えば、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂などが挙げられる。
前記ロジン樹脂としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン;水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジン;ロジングリセリンエステル、水添ロジンエステル、水添ロジングリセリンエステル等のロジンエステル;などが挙げられる。
前記粘着付与剤としては、例えば、テルペン樹脂であるYSレジンPX1150N(ヤスハラケミカル株式会社製)、及び水添ロジングリセリンエステルであるパインクリスタルKE-311(荒川化学工業株式会社製)などが挙げられる。
前記粘着付与剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記テルペン樹脂と前記ロジン樹脂から選択される粘着付与剤を組み合わせてもよい。
前記粘着付与剤の前記粘着剤層における含有量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば粘着剤層の全質量を100質量%とするとき10質量%~60質量%、15質量%~50質量%とすることができる。
【0035】
軟化剤(可塑剤)としては、流動パラフィンなどの石油系軟化剤;液状ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状ゴム系軟化剤;フタル酸エステル、アジピン酸エステル等の二塩基酸エステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、クエン酸エステル等のその他の可塑剤;などが挙げられる。中でも流動パラフィンは、ゴム系エラストマー系との相溶性に優れ、かつ、その凝集力を低下させる虞がないため、好ましく使用され得、例えば市販品として、ハイコール(登録商標、カネダ株式会社製の流動パラフィン)Mシリーズ等が挙げられる。粘着性の点から、これらの軟化剤の含有量は、粘着剤層の全質量を100質量%としたとき、25質量%~55質量%の範囲が好ましく、より好ましくは、30質量%~50質量%である。
【0036】
ゴム系粘着剤には、必要に応じて、さらに、酸化防止剤(抗酸化剤)、充填剤、経皮吸収促進剤、顔料、安定化剤、溶解性向上剤、溶解性抑制剤など、通常、経皮吸収製剤の粘着剤層に配合される添加剤をさらに含有させることができる。これらの添加剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
前記粘着剤層の平均厚みとしては、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm~500μmが好ましく、10μm~300μmがより好ましく、20μm~200μmがさらに好ましい。
【0038】
[剥離ライナー]
また上記貼付剤に用いる剥離ライナーとしては、粘着剤層中の揮発性薬理活性成分等が吸収・吸着しにくい材質であることが好ましく、貼付剤の技術分野において慣用のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリプロピレン(無延伸、延伸等)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、クラフト紙等の紙や合成紙;前記プラスチックフィルム、紙又は合成紙、合成繊維等にシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングした剥離加工紙;アルミ箔;これらフィルム・シートを種々積層したラミネート加工紙、及び該ラミネート加工紙に剥離剤をコーティングしたラミネート剥離加工紙などの、無色又は着色したシートを挙げることができる。なお剥離ライナーは、包材から取り出しやすいように凹凸を設けることも可能である。
これら剥離ライナーの厚さは特に限定されないが、通常10μm~1mm、例えば20μm~500μm、好ましくは40μm~200μmの範囲である。
剥離ライナーの形状は方形、矩形、円形等とすることができ、所望により角を丸くした形状とすることができる。その大きさは、前記貼付材における支持体の大きさと同形状か、やや大きめとすることができる。剥離ライナーは1枚または分割されて複数枚から構成されてもよく、その切れ目は直線、波線、ミシン線状で構成されてもよく、剥離ライナー同士の一部が重なる状態としてもよい。
【0039】
[貼付剤の製造方法]
上記貼付剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エラストマー、粘着付与剤、揮発性薬理活性成分、及び所望によりその他成分を含有する粘着剤組成物を調製して、これを支持体上に塗工する方法、剥離ライナー上に塗工した後、支持体を貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0040】
本発明によれば、袋状としたときの包材の最内層を環状ポリオレフィン系樹脂を全樹脂成分に基づいて60質量%以上含有する環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、または該フィルムにおいて最内層側にポリエチレン樹脂層を有するフィルム[COC、若しくは特殊COC]を採用することにより、揮発性薬理活性成分(サリチル酸メチル、l-メントール、dl-カンフル)の吸着を抑制し、更に、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムとして特殊COCを用いて袋状としたときには使用感(手触り、内容物の出し入れのしやすさ、シワ・折れの発生)を改善するだけでなく、製造性(シール性、腰、滑り)を改善することができる。
また中間層として一軸延伸ポリオレフィンフィルムを積層することにより、手で裁断する際の裁断部の直線性を向上させることができる。
加えて、最外層に金属又は金属酸化物を蒸着したポリエステル等のフィルムを積層することにより、優れた密閉性を実現することができる。
【実施例
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
表1に示す処方を用いて、下記手順にて実施例及び比較例で使用した貼付剤を製造した。
<膏体撹拌工程>
ヘンシェル型ミキサーに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、テルペン樹脂、水素添加ロジングリセリンエステル、ジブチルヒドロキシトルエン及び流動パラフィンを添加し、160℃、100~300rpmで80分間撹拌し、均一な膏体を得た。ここに、有効成分であるサリチル酸メチル、l-メントール及びdl-カンフルを添加し、160℃、200rpmで10分間撹拌し、均一な有効成分含有膏体を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
<塗工工程>
撹拌工程で得られた有効成分含有膏体を、ダイコーター(ヘッド温度 165℃、塗工速度 15m/分)を用いて、塗布量150g/mとなるように、ポリエチレンテレフタレート製ライナー(厚さ 75μm)に塗工し、ポリエステル製支持体(目付 120g/m)を貼り合わせて、有効成分含有膏体を支持体とライナーの間に均一に塗工した塗工物を得た。
【0045】
<裁断工程>
塗工工程で得られた塗工物を、ダイロール式裁断機で所定形状に裁断し貼付剤を得た。
【0046】
得られた貼付剤を6枚重ねて集積物とし、これを下記実施例又は比較例に示す包材にて、包装機を用いて包装し、包装物を得た。
【0047】
[実施例1]
袋状としたときに、環状ポリオレフィンフィルム(特殊COC)(DIC株式会社製「DIFAREN」(登録商標)MPフィルム M3400MP、厚さ30μm(断面観察により、環状ポリオレフィン系樹脂層21μm、ポリエチレン樹脂層9μmの多層フィルム))のポリエチレン系樹脂層が最内面(最内層側)となるように、前記環状ポリオレフィンフィルムを最内層に配置し、そして中間層が一軸延伸ポリプロピレンフィルム(一軸延伸PP、東京インキ株式会社製「ノーブレン」、厚さ20μm)、最外層が酸化アルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム(AL蒸着PET、東レフィルム加工株式会社製「バリアロックス」、厚さ12μm、蒸着面が中間層側に面している(以下同様))の順となるように積層し、積層体を得た。なお各層は、接着剤を用いたドライラミネーション(DL)法にて積層した。得られた積層体を包材として、上記集積物を内容物として包装し、包装物を得た。
【0048】
[実施例2]
実施例1における最内層の環状ポリオレフィンフィルム(特殊COC)を、COCフィルム(COC)(倉敷紡績株式会社の「コゼック」(登録商標)、厚さ30μm)に変えたほかは、実施例1と同様にして包装物を得た。
【0049】
[実施例3]
実施例2における中間層を、一軸延伸ポリエチレンフィルム(一軸延伸PE、厚さ20μm)に変えたほかは、実施例2と同様にして包装物を得た。
【0050】
[比較例1]
包材を、袋状としたときに最内層が線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、厚さ40μm)、中間層が二軸延伸PETフィルム(PET、東洋紡株式会社製「東洋紡エステル」(登録商標)、厚さ12μm)に変えたほかは、実施例1と同様にして、包装物を得た。
【0051】
[比較例2]
実施例2における中間層の一軸延伸ポリプロピレンフィルムを、二軸延伸PETフィルム(PET、東洋紡株式会社製「東洋紡エステル」(登録商標)、厚さ12μm)に変えたほかは、実施例2と同様にして包装物を得た。
【0052】
[比較例3]
実施例1における中間層の一軸延伸ポリプロピレンフィルムを、二軸延伸PETフィルム(PET、東洋紡株式会社製「東洋紡エステル」(登録商標)、厚さ12μm)に変えたほかは、実施例1と同様にして包装物を得た。
【0053】
実施例及び比較例で使用した包材の構成について以下に示す。
【表2】
【0054】
<試験例1 薬物吸着>
実施例1~2、比較例1、及び比較例3で製造した包装物を60℃下にて保存した。
室温保存直後及び一定時間(1週間(1W)、1ヶ月(1M))経過後、包装物から内容物を取り出した後の包材を裁断し、3種類の有効成分をテトラヒドロフランで抽出した後、第十七改正日本薬局方 一般試験法 液体クロマトグラフィー法(HPLC法)で有効成分の含量を測定した。また、保存直後(24時間後)の包材についても、同様に試験を実施し、初期の薬物吸着量とした。なお、実施例3及び比較例2の最内層は実施例2と同じくCOCフィルムであるため、これら包装物における薬物吸着量は実施例2と同等になると評価できる。
得られた結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示すように、3種類の有効成分(l-メントール、dl-カンフル及びサリチル酸メチル)の吸着量は、実施例1(最内層:特殊COCフィルム)、実施例2(最内層:COCフィルム)及び比較例3(最内層:特殊COCフィルム)はほぼ同等であったが、比較例1(最内層:LLDPEフィルム)はこれらの2倍以上であった。
以上の結果より、最内層を特殊COCフィルム又はCOCフィルムとすることで、3種類の揮発性有効成分(l-メントール、dl-カンフル及びサリチル酸メチル)の包材への吸着を抑制できることが確認された。
なお、後述する《総合評価》において、本試験の結果を「薬物吸着」として以下の基準にて評価し、表5にあわせて示す。
A:60℃下、1ヶ月後の薬物吸着量(3種)の合計量が20mg未満
C:60℃下、1ヶ月後の薬物吸着量(3種)の合計量が20mg以上
【0057】
<試験例2 ヒートシール性>
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例3の包装物で使用した包材を、最内層(特殊COCフィルム又はCOCフィルム)が内側になるように重ね合わせ、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒、ヒートシール温度を110℃~200℃として各試料をヒートシールした後、JIS Z 0238に準拠して、ヒートシール強度を測定した。得られた結果を表4に示す。なお、実施例3及び比較例2の最内層は実施例2と同じくCOCフィルムであるため、これら包装物のヒートシール性は実施例2と同等になると評価できる。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示すように、最内層を特殊COCフィルムとした実施例1及び比較例3の包材、並びに再内層をLLDPEフィルムとした比較例1の包材において、それらのヒートシール強度は、ヒートシール温度130℃以上で15N/15mm以上であり、COCフィルムを用いた実施例2のヒートシール強度は、ヒートシール温度130℃以上で8N/15mm以上であった。
一般包装用袋などで、内容物の質量が大きく、やや強いヒートシール強さを要する場合、及び、一般包装袋などで、内容物の質量が小さく、普通のヒートシール強さを要求する場合、参考となるヒートシール強さの目安は各々、15N/15mm以上及び6N/15mm以上(JIS Z 0238:ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)と記載されている。以上の結果より、実施例1(特殊COC)、実施例2(COC)、比較例1(LLDPE)及び比較例3(特殊COC)は、普通のヒートシール強さ以上であることがわかった。更に、実施例1、比較例1及び比較例3は、やや強いヒートシール強さであった。
なお、後述する《総合評価》において、本試験の結果を「ヒートシール性」として以下の基準にて評価した。評価結果を表5に合わせて示す。
A:ヒートシール強度の最大値が15N/15mm以上
B:ヒートシール強度の最大値が6N/15mm以上~15N/15mm未満
C:ヒートシール強度の最大値が6N/15mm未満
【0060】
<試験例3 使用感>
実施例1~3、比較例1~3の包装物を手に持った際、及び各包装物から内容物を10回出し入れを行った際の手触りについて、また10回出し入れ後の外観(しわや折り目の発生)の変化を目視にて観察し、下記基準にて使用感として評価した。得られた結果を表5に示す。
A:持った時や出し入れ時の手触りに優れ(固さを感じない)、出し入れ操作後の外観にしわや折り目がほとんどない。
B:持った時や出し入れ時の手触りが若干よく(少し固さを感じる)、出し入れ操作後の外観にしわや折り目が少ない。
C:持った時の触感が悪く(固さを感じる)、出し入れ操作後の外観にしわや折り目が目立つ。
【0061】
<試験例4 裁断時の直進性>
実施例1~3、比較例1~3の包装物に関して、包装物の一部に切れ目を設け切れ目から包装物を引き裂く裁断試験を行い、下記基準で評価した。得られた結果を表5に示す。
A:裁断した際、直線的であった。
B:裁断した際、直線的であったが、若干外観が悪かった
C:裁断した際、若干直線性が悪かった。
D:裁断した際、直線性が明らかに悪かった。
【0062】
<試験例5 製造性>
実施例1~3、比較例1~3の包装物に関して、包装時の包材の操作性(取り扱いやすさ)を評価するために、包装機のガイドロールを通過する際に発生する包材の皺の有無を目視で観察し、下記基準で評価した。得られた結果を表5に示す。
A:包装する際、包材の滑りも良く、しわがほとんどなかった。
B:包装する際、包材の滑りが若干悪く、しわが若干発生した。
C:包装する際、包材の滑りが悪く、しわが発生した。
【0063】
【表5】
【0064】
<結果及び考察>
前述したように薬物吸着性は、最内層が特殊COC(実施例1及び比較例3)フィルム及びCOC(実施例2)フィルムが良好で、LLDPE(比較例1)が明らかに悪かった。
また裁断時の直線性は、中間層に1軸延伸PP(実施例1、実施例2)フィルムを採用した場合に良好であるとする結果であった。しかし中間層を一軸延伸PE(実施例3)やPET(比較例1、比較例2、比較例3)フィルムとした場合には裁断時の直線性に劣る結果となった。なお、中間層に一軸延伸PE(実施例3)フィルムを採用した包装物の裁断部には、中間層に1軸延伸PP(実施例1、実施例2)フィルムを採用した場合には観察されない細い糸状のフィルム片が、わずかに観察され、裁断部の外観にやや劣っていた。
また、手触りや繰り返し使用後のしわ等の外観にて評価した使用感は、最内層が特殊COC(実施例1、比較例3)フィルム及びLLDPE(比較例1)フィルムとした包材において、中間層をPETフィルムとした場合であっても良好とする評価であった。なお、最内層をCOCフィルムとした実施例2及び実施例3は、実施例1と比べて多少使用感に劣る結果となったが、実使用には十分に適用可能な使用感を確保できた。一方、最内層をCOCフィルムとし、中間層をPETフィルムとした比較例2は、使用感に明らかに劣る結果となった。
製造性は、最内層が特殊COC(実施例1、比較例3)及びLLDPE(比較例1)である包材が中間層の種類に依らず良好な結果となり、また最内層をCOCフィルムとした実施例2及び実施例3は、実施例1と比べて多少製造性に劣るものの、実際の製造現場ではほとんど問題にならない製造性を確保できた。一方、最内層をCOCフィルムとし、中間層をPETフィルムとした比較例2は、明らかに製造性に劣る結果となった。
またヒートシール性は、実施例1(特殊COC)、実施例2(COC)、比較例1(LLDPE)及び比較例3(特殊COC)はいずれも、普通のヒートシール強さ以上の強度を有していた。更に、実施例1、比較例1及び比較例3は、やや強いヒートシール強さであった。
以上の結果より、薬物吸着を抑制し、裁断時の直進性が優れている包材は、最内層として特殊COCまたはCOCを採用し、中間層に一軸延伸PP、最外層に金属又は金属酸化物を蒸着したPETを採用した積層体(実施例1、実施例2)であることが確認された。さらに、薬物吸着を抑制し、裁断時の直進性に優れることに加えて、使用感、製造性及びヒートシール強度が高く密閉性にも優れている包材は、最内層として特殊COCを採用し、中間層に一軸延伸PP、最外層に金属又は金属酸化物を蒸着したPETを採用した積層体(実施例1)であることが確認された。