(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】分裂した光活動性黄色タンパク質の相補体化系およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/195 20060101AFI20241106BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20241106BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241106BHJP
G01N 33/542 20060101ALI20241106BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C07K14/195
C07K7/06
C07K19/00
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
G01N33/542 A
G01N33/68
(21)【出願番号】P 2021559308
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2020059635
(87)【国際公開番号】W WO2020201538
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518436250
【氏名又は名称】パリ シアンス エ レットル
(73)【特許権者】
【識別番号】510073202
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(73)【特許権者】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ,アーノード
(72)【発明者】
【氏名】テボ,アリソン
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/001437(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/211090(WO,A1)
【文献】特開2010-207134(JP,A)
【文献】KERPPOLA, TK,Bimolecular Fluorescence Complementation (BiFC) Analysis as a Probe of Protein Interactions in Living Cells,Annual Review of Biophysics,2008年,Vol. 37,pp. 465-487
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
G01N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントと第2
の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントとを含む、相補体化系であって、
前記第1のPYPフラグメントが、
配列番号23
~29のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列
、または
配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも
90%の同一性を有するアミノ酸配列
、
を含み、
前記第2のPYPフラグメントが、
配列番号34
~40のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列
、または
配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも
90%の同一性を有するアミノ酸配列
、
を含む、
相補体化系。
【請求項2】
前記第1のPYPフラグメントが、配列番号23
に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の相補体化系。
【請求項3】
前記第2のPYPフラグメントが、配列番号3
4に記載のアミノ酸配列
を含む、請求項1または2に記載の相補体化系。
【請求項4】
前記第1のPYPフラグメントが、配列番号23に記載のアミノ酸配
列を含み、前記第2のPYPフラグメントが、配列番号3
4に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の相補体化系。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トをコードする、第1の核酸配列と、
請求項1~
4のいずれか1項で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トをコードする、第2の核酸配列と、
を含む少なくとも1つのベクターを含む、キット。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トをコードする核酸配列を含む、第1のベクターと、
請求項1~
4のいずれか1項で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トをコードする核酸配列を含む、第2のベクターと、
を含む、請求項
5に記載のキット。
【請求項7】
式(I):
【化1】
の蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体であって、式中、
R1、R2、R5、およびR6は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、
およびハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、
飽和または不飽和のアルキル、
飽和または不飽和のシクロアルキル、
飽和または不飽和のヘテロアルキル、または
飽和または不飽和のヘテロシクロアルキル基を表し;
R3は、非結合性のダブレット(すなわち、電子の遊離対)であるか、
あるいは任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、
およびハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、
飽和または不飽和のアルキル、
飽和または不飽和のシクロアルキル、
飽和または不飽和のヘテロアルキル、または
飽和または不飽和のヘテロシクロアルキル基を表し、
R4は
、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、
およびハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ヒドロキシル、アリール、
飽和または不飽和のアルキル、
飽和または不飽和のシクロアルキル、
飽和または不飽和のヘテロアルキル、または
飽和または不飽和のヘテロシクロアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいS、O、またはN原子により中断または終結した単結合または二重結合であり、
Xは、OH、SH、NHR7、またはN(R7)
2であり、R7は
、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、
およびハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、
飽和または不飽和のアルキル、
飽和または不飽和のシクロアルキル、
飽和または不飽和のヘテロアルキル、または
飽和または不飽和のヘテロシクロアルキル基であり、
Yは、O、NH、またはSである、
蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の相補体化系または請求項
5もしくは
6に記載のキット。
【請求項8】
蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体が、4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデンロダニン(HMBR)、(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBR-3OM)、(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBR-3,5DM)、および(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBR-3,5DOM
)から選択される、請求項
7に記載の相補体化系またはキット。
【請求項9】
サンプル中の2つの目的の生体分子間
の相互作用を検出するための方法であって、
第1の目的の生体分子に、請求項1~
4のいずれか1項で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トを融合し、それにより前記第1のPYPフラグメントで前記第1の目的の生体分子をタグ付けするステップと、
第2の目的の生体分子に、請求項1~
4のいずれか1項で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トを融合し、それにより前記第2のPYPフラグメントで前記第2の目的の生体分子をタグ付けするステップと、
前記サンプルを蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体と接触させるステップと、
2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される機能的なPY
Pへの前記蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップと、
を含み、
それにより2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される機能的なPY
Pへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して前記サンプル中に存在する2つの目的の生体分子の相互作用を検出する、方法。
【請求項10】
2つの目的の生体分子
の結合および解離を、前記目的の生体分子間の相互作用の検出を介して
経時的にモニタリングするための、および
/または2つの目的の生体分子の結合および解離のサンプル中の局在を、前記目的の生体分子間の相互作用の検出を介してモニタリングするための、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記2つの目的の生体分子が、2つの目的のタンパク質である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
サンプル中の2つの目的のタンパク質候補の間での新規のタンパク質間相互作用を同定するためのスクリーニング方法であって、
第1の目的のタンパク質候補に、請求項1~
4のいずれか1項で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トを融合し、それにより前記第1のPYPフラグメントで前記第1の目的のタンパク質候補をタグ付けするステップと、
第2の目的のタンパク質候補に、請求項1~
4のいずれか1項で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トを融合し、それにより前記第2のPYPフラグメントで前記第2の目的のタンパク質候補をタグ付けするステップと、
前記サンプルを蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体と接触させるステップと、
2つの目的のタンパク質候補の相互作用時に再構成される機能的なPY
Pへの前記蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップと、
を含み、
それにより2つの目的のタンパク質候補の相互作用時に再構成される機能的なPY
Pへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、前記サンプル中に存在する2つの目的のタンパク質候補の間の新規のタンパク質間相互作用を同定する、方法。
【請求項13】
サンプル中の2つのタンパク質間の相互作用の検出に依存するアッセイであって、
第1のタグ付けされたタンパク質を得るステップであって、前記タンパク質が、請求項1~
4のいずれか1項で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トでタグ付けされる、ステップと、
第2のタグ付けされたタンパク質を得るステップであって、前記タンパク質が、請求項1~
4のいずれか1項で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメン
トでタグ付けされる、ステップと、
前記サンプルを蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体と接触させるステップと、
前記2つのタンパク質の相互作用時に再構成される機能的なPY
Pへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップと、
を含み、
それにより前記2つのタンパク質の相互作用時に再構成される機能的なPY
Pへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、前記サンプル中に存在する2つのタンパク質の相互作用を検出する、アッセイ。
【請求項14】
タンパク質間相互作用を安定化または阻害する目的の分子の能力を評価するための、請求項13に記載のアッセイ。
【請求項15】
目的のシグナリング経路の活性化に依存する2つのタンパク質の相互作用により、目的のシグナリング経路を評価するための、または前記目的のシグナリング経路を調節する目的の分子の能力を評価するための、請求項13に記載のアッセイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の検出、特には蛍光標識を介したタンパク質間相互作用の検出の分野に関する。特に本発明は、2つの光活動性黄色タンパク質(PYP)のフラグメントを含む相補体化系、および目的の生体分子間の、特に目的のタンパク質間の、相互作用を検出するためのフルオロゲンを伴うその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質間の相互作用は、代謝経路およびシグナリング経路、細胞プロセス、ならびに生命体の系に重要な役割を果たしている。生体機能におけるその中枢的な役割のため、タンパク質の相互作用は、生物に健康状態および疾患状態をもたらす機構を制御する。疾患は多くの場合、タンパク質において結合面に影響するかまたはアロステリックな機能障害の変化をもたらす変異からもたらされる。タンパク質相互作用のネットワークを解読することは従って、疾患の分子学的な基礎の理解を可能にし、それは今度は予防、診断、および処置のための方法をもたらし得る。
【0003】
タンパク質の相互作用のネットワークを解読するために、生細胞のタンパク質間相互作用をモニタリングすることが重要であるだけでなく、さらに、相互作用の細胞内での局在およびタイミングもまた重要なパラメータである。空間および時間においてタンパク質間相互作用に関して報告できる蛍光レポーターは従って、(i)生細胞中のタンパク質間相互作用のモニタリング、(ii)複合体相互作用のネットワークの精査、ならびに(iii)薬物の開発および生物学的な試験のためのタンパク質間相互作用の阻害剤または安定化剤の高スループットスクリーニングの開発、のために最も重要である。
【0004】
生細胞におけるタンパク質間相互作用の可視化は一般に、蛍光共鳴エネルギー移動とも呼ばれるフェルスター共鳴エネルギー移動(Forster resonance energy transfer:FRET)(Piston DW & Kremers GJ, Trends Biochem Sci.2007 Sep;32(9):407-14)、またはBiFC(bimolecular fluorescence complementation)(Kerppola TK, Annu Rev Biophys. 2008;37:465-87)により達成される。
【0005】
FRETによりタンパク質間相互作用を可視化することは、それぞれがFRETドナーおよびFRETアクセプターとして作用する、2つの蛍光タンパク質(フルオロフォアとも呼ばれる)への2つの相互作用するタンパク質(多くの場合baitタンパク質およびpreyタンパク質と呼ばれる)の融合を必要とする。FRETドナーは、FRETアクセプターに、後者が十分に近い場合、その励起エネルギーを移すことができる。よってFRETは、どのようにFRETの効率が経時的に変化するかのモニタリングを介して、複合体の結合および解離のリアルタイムでのモニタリングを可能にする。しかしながら、FRETは、実行することが困難である。これは多くの場合、FRETドナーとFRETアクセプターの間のエネルギー移動を検出するために、高い発現レベルのbaitタンパク質およびpreyタンパク質を必要とする。さらに、エネルギー移動が効率的である距離の範囲内に2つのフルオロフォアを配置するための構造上の情報が必要である。FRETはまた、baitタンパク質およびpreyタンパク質の大部分がドナーおよびアクセプターの蛍光強度の十分な変化をもたらすように相互作用することを必要とする。さらに、FRETベースの相互作用の精確な定量化は理想的には、専用のシステムにより達成される。最後に、多くの対照および著しい定量的な正確性が、別の解釈を除外するために必要とされる。
【0006】
BiFC(Bimolecular fluorescence complementation)ベースのアッセイは多くの場合、実施することが容易であり、解釈することが容易であり、2つの相互作用するタンパク質の相対的なレベルに対する感受性が少ないため、FRETよりも好まれる。BiFCアッセイでは、baitタンパク質およびpreyタンパク質は、蛍光タンパク質(FP)の2つの相補的なフラグメント(いわゆるsplit-FP)に融合され、これはbaitタンパク質およびpreyタンパク質が相互作用する場合に機能的なレポーターへと集合する。この2つの相補的なフラグメントは、別々に採取される場合は蛍光性ではないため、高いコントラストが、2つの相互作用するタンパク質の相対的な比率とは無関係に得られる。しかしながら、BiFCでタンパク質間相互作用をモニタリングすることには、独自の課題がある。第1に、2つの相補的なフラグメントの自然発生的な自己集合は、非特異的な蛍光バックグラウンドをもたらし得る。さらに、GFPファミリーのタンパク質に基づくBiFCでは、相補体化に続き発色団の成熟が起こり、これは不可逆的な複合体の形成をもたらす(Magliery TJ et al., J Am Chem Soc. 2005 Jan 12;127(1):146-57)。フィトクロムベースの赤外線を受容する(infrared)タンパク質に基づくBiFCでは、ビリベルジン発色団の結合はゆっくりであり、また多くの場合、不可逆性をもたらす(Filonov GS & Verkhusha VV, Chem Biol. 2013 Aug 22;20(8):1078-86)。蛍光複合体のゆっくりとした形成は、一時的なタンパク質間相互作用のモニタリング、ならびに活性状態および不活性状態を含む動的な試験の実行を妨げ、ドミナントネガティブまたはポジティブな作用を誘導し得る。
【0007】
よって、タンパク質間相互作用を検出するための動的なシステムを提供する改良された蛍光ベースの相補体化系が必要とされる。特に、コントラストを増強するための低い自己集合により、および試験されるタンパク質の解離を検出し試験される細胞での有害作用を阻止するための可逆的な複合体形成により特徴付けられる、改良された蛍光ベースの相補体化系が必要とされる。
【0008】
国際特許公開公報第2016001437号およびPlamontら(Plamont et al., P Natl Acad Sci Usa 2016, 113 (3), 497-502)は、光活動性黄色タンパク質(PYP)に由来する新規のペプチドタグを開示する。特に、国際特許公開公報第2016001437号およびPlamontら(Plamont et al., P Natl Acad Sci Usa 2016, 113 (3), 497-502)は、Y-FAST(yellow fluorescence-activating and absorption shifting tag)(本明細書中以下で「FAST」)を開示し、これは、出願人が開発したフルオロゲンベースの蛍光レポーターである。FASTは、様々なフルオロゲンと複合体を形成し得る光活動性黄色タンパク質(PYP)に由来する14kDaのタンパク質のタグである。FASTによる検出は、フルオロゲンの活性化に関する2つの分光学的な変化:蛍光の量子収率および赤方偏移した吸収の増大に、依存する。FASTとの結合時のフルオロゲンにより経た赤方偏移した吸収は、結合していないまたは非特異的に結合したフルオロゲンが励起波長の選択を介して区別され得るため、高いイメージングの選択性およびコントラストを確実にする。特に、FASTは、たとえばHMBR(緑色-黄色の蛍光を提供する)およびHBR-3,5-DOM(橙色-赤色の蛍光を提供する)などの、様々なスペクトルの性質を提示する蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体を結合する。蛍光発生HBR類縁体は、溶液中では弱く蛍光を発するが、FASTの結合キャビティ中に固定化された場合、強力に蛍光を発する。
【0009】
ここで、本出願人は、PYPベースの蛍光相補体化系であって、2つのフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントが、フルオロゲンを結合しよってPYPフラグメントが結合する目的のタンパク質が相互作用する場合にその蛍光をオンにする、機能的なレポーターまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへと、可逆的にアセンブルする、PYPベースの蛍光相補体化系を開発した。特に、本出願人らは、FASTタンパク質タグの2つのフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを含むPYPベースの蛍光相補体化系(split-FAST)が、2つのFASTフラグメントの低い自己集合のおかげで低い非特異的蛍光バックグラウンドを呈することを示した。本出願人らはまた、split-FASTが、空間および時間において高い解像度で、細胞におけるタンパク質の結合および解離の両方の検出を可能にすることを示した。本出願人らはさらに、split-FASTが、タンパク質ベースのセンサーおよび細胞ベースのセンサーの開発を可能にすることを示した。本出願人らはまた、split-FAST相補体化系のものと同等の性質を有する、FASTのオルソログに由来するPYPフラグメントを含むPYPベースの蛍光相補体化系を開発した。
【0010】
本発明はよって、第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントと、第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントとを含む相補体化系であって、第1および第2のPYPフラグメントが、蛍光発生発色団、特に蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体を可逆的に結合する、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントを再構成できる、相補体化系に関する。本発明はまた、目的の分子間の、特に目的のタンパク質間の、相互作用を検出するための方法、およびサンプル中の2つのタンパク質間の相互作用の検出に依存するアッセイに関する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントと第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントとを含む相補体化系であって、
上記第1のPYPフラグメントが、配列番号23に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなり、上記トランケートされたフラグメントが、配列番号23に記載のアミノ酸配列または配列番号23と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含み、
上記第2のPYPフラグメントが、配列番号34に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなり、上記トランケートされたフラグメントが、配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む、
相補体化系に関する。
【0012】
一実施形態では、第1のPYPフラグメントは、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、および配列番号29に記載のアミノ酸配列、ならびに上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメント、を含むかまたはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、第2のPYPフラグメントは、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、および配列番号40に記載のアミノ酸配列、ならびに上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメント、を含むかまたはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0013】
一実施形態では、
第1のPYPフラグメントは、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29に記載のアミノ酸配列、または上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなり、
第2のPYPフラグメントは、それぞれ配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40に記載のアミノ酸配列、または上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0014】
よって、一実施形態では、
第1のPYPフラグメントは、配列番号23に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号34に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなるか、または
第1のPYPフラグメントは、配列番号24に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号35に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなるか、または
第1のPYPフラグメントは、配列番号25に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号36に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなるか、または
第1のPYPフラグメントは、配列番号26に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号37に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなるか、または
第1のPYPフラグメントは、配列番号27に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号38に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなるか、または
第1のPYPフラグメントは、配列番号28に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号39に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなるか、または
第1のPYPフラグメントは、配列番号29に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号40に記載のアミノ酸配列、もしくは上記アミノ酸配列の、好ましくはN末端からの、少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかもしくはそれからなる。
【0015】
一実施形態では、第1のPYPフラグメントは、配列番号23に記載のアミノ酸配列、または上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなり、第2のPYPフラグメントは、配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0016】
一実施形態では、第1のPYPフラグメントのアミノ酸配列、または上記アミノ酸配列のC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して以下のアミノ酸置換:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、73位のセリン、および/もしくは107位のイソロイシンのうちの少なくとも1つをさらに含み、かつ/または第2のPYPフラグメント、または上記アミノ酸配列の少なくとも8個の連続したアミノ酸を含むそのトランケートされたフラグメントは、配列番号34に準拠して以下のアミノ酸置換:8位のイソロイシンをさらに含む。
【0017】
本発明はまた、
本明細書中の上で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
本明細書中の上で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする第2の核酸配列と
を含む少なくとも1つのベクターを含む、キットに関する。
【0018】
一実施形態では、本発明のキットは、
本明細書中の上で定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含む第1のベクターと、
本明細書中の上で定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含む第2のベクターと
を含む。
【0019】
一実施形態では、本発明の相補体化系および本発明のキットは、式(I)の蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体:
【化1】
(式中、
R1、R2、R5、およびR6は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基を表し;
R3は、非結合性のダブレット(すなわち、電子の遊離対)または、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基を表し、
R4は、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、S、O、またはN原子により中断または終結した、単結合または二重結合であり、
Xは、OH、SH、NHR7、またはN(R7)
2であり、R7は、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基であり、
Yは、O、NH、またはSである)
をさらに含む。
【0020】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデンロダニン(HMBR)、(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBR-3OM)、(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBR-3,5DM)、および(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBR-3,5DOM)を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0021】
本発明はまた、サンプル中の2つの目的の生体分子間の、好ましくは2つの目的のタンパク質間の、相互作用を検出するための方法であって、
本明細書中上記に定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを、第1の目的の生体分子に融合し、それにより、上記第1の目的の生体分子を上記第1のPYPフラグメントでタグ付けするステップと、
本明細書中上記に定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを、第2の目的の生体分子に融合し、それにより上記第2の目的の生体分子を上記第2のPYPフラグメントでタグ付けするステップと、
上記サンプルを蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体と接触させるステップと、
2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ
を含み、
それにより2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、上記サンプル中に存在する2つの目的の生体分子の相互作用を検出する、方法に関する。
【0022】
一実施形態では、本発明の方法は、上記目的の生体分子間の相互作用の検出を介して、2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質、の結合および解離を、時間および空間にわたりモニタリングするためのものである。
【0023】
本発明はまた、サンプル中の2つの目的のタンパク質候補の間での新規のタンパク質間相互作用を同定するためのスクリーニング方法であって、
本明細書中上記に定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを、第1の目的のタンパク質候補に融合し、それにより上記第1の目的のタンパク質候補を上記第1のPYPフラグメントでタグ付けするステップと、
本明細書中上記に定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを、第2の目的のタンパク質候補に融合し、それにより上記第2の目的のタンパク質候補を上記第2のPYPフラグメントでタグ付けするステップと、
上記サンプルを蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体と接触させるステップと、
2つの目的のタンパク質候補の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つの目的のタンパク質候補の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、上記サンプル中に存在する2つの目的のタンパク質候補の間での新規のタンパク質間相互作用を同定する、方法に関する。
【0024】
本発明はまた、サンプル中の2つのタンパク質間の相互作用の検出に依存するアッセイであって、
本明細書中で上に定義される第1の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントでタグ付けされた、第1のタグ付けされたタンパク質を得るステップと、
本明細書中で上に定義される第2の光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントでタグ付けされた、第2のタグ付けされたタンパク質を得るステップと、
上記サンプルを蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体と接触させるステップと、
上記2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより上記2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、上記機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、上記サンプル中に存在する2つのタンパク質の相互作用を検出する、アッセイに関する。
【0025】
一実施形態では、本発明のアッセイは、タンパク質間相互作用を安定化または阻害する目的の分子の特性を評価するためのものである。一実施形態では、本発明のアッセイは、目的のシグナリング経路の活性化に依存する2つのタンパク質の相互作用により、目的のシグナリング経路を評価するための、または上記目的のシグナリング経路を調節する目的の分子の能力を評価するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書中使用される場合、数字に先行する用語「約」は、上記数値の±10%以下を意味する。用語「約」が表す値は、それ自体が具体的に、好ましくは開示されている。
【0027】
本明細書中使用される場合、用語「アルコキシ」は、いずれかのO-アルキル基を指す。適切なアルコキシ基としては、エトキシおよびメトキシが挙げられる。
【0028】
本明細書中使用される場合、用語「アルキル」は、式CnH2n+1(式中、nは1以上の数字である)のヒドロカルビルラジカルを指す。全般的に、本発明のアルキル基は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖状または分岐状であってよく、本明細書中記載されるように置換され得る。適切なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル、i-プロピル)、ブチル(n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチル)、ペンチルおよびその異性体(たとえばn-ペンチル、イソ-ペンチル)、ならびにヘキシルおよびその異性体(たとえばn-ヘキシル、イソ-ヘキシル)が挙げられる。
【0029】
本明細書中使用される場合、用語「アミド」は、-NR-CO-官能基(式中Rは、-Hまたはアルキル基であり得る)を指す。
【0030】
本明細書中使用される場合、用語「アミノ」は、-NH2基または有機脂肪族基もしくは芳香族基での1つもしくは2つの水素原子の置換によるそれに由来するいずれかの基を指す。好ましくは、-NH2に由来する基は、アルキルアミノ基、すなわちモノアルキルアミノおよびジアルキルアミノ基を含む、N-アルキル基である。特定の実施形態では、用語「アミノ」は、NH2、NHMe、またはNMe2を指す。
【0031】
本明細書中使用される場合、用語「アミノ酸」は、天然のアミノ酸および合成のアミノ酸の両方、ならびにD-アミノ酸およびL-アミノ酸の両方を指す。これらは、当該分野でよく知られているその完全名、その3文字表記、またはその1文字表記により表される。よって、ペプチドのアミノ酸残基は、以下のように略される:フェニルアラニンはPheまたはFであり;ロイシンはLeuまたはLであり;イソロイシンはIleまたはIであり;メチオニンはMetまたはMであり;バリンはValまたはVであり;セリンはSerまたはSであり;プロリンはProまたはPであり;スレオニンはThrまたはTであり;アラニンはAlaまたはAであり;チロシンはTyrまたはYであり;ヒスチジンはHisまたはHであり;グルタミンはGlnまたはQであり;アスパラギンはAsnまたはNであり;リジンはLysまたはKであり;アスパラギン酸はAspまたはDであり;グルタミン酸はGluまたはEであり;システインはCysまたはCであり;トリプトファンはTrpまたはWであり;アルギニンはArgまたはRであり;グリシンはGlyまたはGである。「標準的なアミノ酸」または「天然に存在するアミノ酸」は、天然に存在するペプチドで一般に見出される20の標準的なL-アミノ酸のいずれかを意味する。「非標準的なアミノ酸」は、合成して調製されるか天然の供給源に由来するかどうかにかかわらず、標準的なアミノ酸以外のいずれかのアミノ酸を意味する。たとえば、ナフチルアラニンは、合成を容易にするために、トリプトファンで置換され得る。置換され得る他の合成アミノ酸としては、限定するものではないが、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、αアミノ酸、たとえばL-α-ヒドロキシリシルおよびD-α-メチルアラニル、L-α-メチルアラニル、βアミノ酸、およびイソキノリルが挙げられる。本発明のPYPフラグメントは、標準的なアミノ酸または非標準的なアミノ酸を含み得る。また用語「アミノ酸」は、限定するものではないが、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)および置換を含む、化学的に修飾されたアミノ酸を包有する。よって、本発明のポリペプチド(すなわち本発明のPYPフラグメントおよび融合タンパク質)の中に含まれるアミノ酸、特にカルボキシ末端またはアミノ末端のアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、またはその活性に有害な影響を与えることなくポリペプチドの循環半減期を変えることができる化学基により、修飾され得る。さらに、ジスルフィド結合が、本発明のポリペプチドに存在してもよく、または存在しなくてもよい。本明細書中包有される他のポリペプチドミメティックは、以下の修飾を有する本発明のポリペプチド(すなわち本発明のPYPフラグメントおよび融合タンパク質):i)1つ以上のペプチジル-C(O)NR結合(linkage、bounds)が、非ペプチジル結合、たとえば-CH2-カルバメート結合(-CH2OC(O)NR-)、ホスホネート結合、-CH2-スルホンアミド(-CH2-S(O)2NR-)結合、尿素(-NHC(O)NH-)結合、-CH2-二級アミン結合、またはアルキル化ペプチジル結合(-C(O)NR-)(式中、Rは、C1-C4アルキルである)で置き換えられているポリペプチド;(ii)N末端が、-NRR1基、-NRC(O)R基、-NRC(O)OR基、-NRS(O)2R基、-NHC(O)NHR基(式中、RおよびR1は、水素またはC1-C4アルキルであるが、ただしRおよびR1は、両方が水素ではない)に誘導体化されている、ポリペプチド;(iii)C末端が、-C(O)R2(式中、R2は、C1-C4アルコキシ、および-NR3R4からなる群から選択され、R3およびR4は、独立して、水素およびC1-C4アルキルから選択される)に誘導体化されているポリペプチド、を含む。
【0032】
本明細書中使用される場合、用語「アリール」は、通常5~12個の原子、好ましくは6~10個の原子を含み、少なくとも1つの環が芳香族である、単環(すなわちフェニル)または共に縮合(たとえばナフチル)もしくは共有結合した複数の芳香環を有する、ポリ不飽和の芳香族ヒドロカルビル基を指す。芳香環は任意選択で、それに縮合された1~2つのさらなる環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール)を含み得る。またアリールは、本明細書中列挙される炭素環系の部分的に水素付加された誘導体を含むように意図される。アリールの非限定的な例は、フェニル、ビフェニルイル、ビフェニレニル、5-または6-テトラリニル、ナフタレン-1-または-2-イル、4-、5-、6、または7-インデニル、1-2-、3-、4-、または5-アセナフチレニル(acenaphtylenyl)、3-、4-、または5-アセナフテニル(acenaphtenyl)、1-、または2-ペンタレニル、4-または5-インダニル、5-、6-、7-、または8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-、2-、3-、4-、または5-ピレニルを含む。
【0033】
本明細書中使用される場合、用語「カルボキシ」は、COO-またはその塩を含む-COOH官能基を指す。
【0034】
本明細書中使用される場合、用語「シアノ」は、-C≡N官能基を指す。
【0035】
本明細書中使用される場合、用語「シクロアルキル」は、環状のアルキル基、すなわち、1または2つの環状構造を有する一価の飽和または不飽和のヒドロカルビル基を指す。シクロアルキルとしては、単環式または二環式のヒドロカルビル基が挙げられる。シクロアルキル基は、その環に3つ以上の炭素原子を含み得、全般的に本発明では、3~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を含む。シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
【0036】
本明細書中使用される場合、用語「相補体化系(complementation system)」は、少なくとも2つの相補体、たとえば目的の性質、たとえば蛍光発生発色団に結合する特性ではあるが、別々に採取された各相補体、たとえば各ポリペプチドフラグメントはこの性質を有しない、性質を有する構造を共に形成する、ポリペプチドまたはタンパク質の2つのフラグメントを含む系を指す。よって用語「相補体化(complementation)」は、目的の性質、たとえば蛍光発生発色団に結合する特性を有する構造の再構成を指す。たとえば、用語「相補体化」は、上記ポリペプチド(またはタンパク質)の2つのフラグメントが近接している場合のポリペプチド(またはタンパク質)スキャフォールドの再構成を指し、その後再構成されたポリペプチド(またはタンパク質)は、蛍光発生発色団を結合する能力を有する。
【0037】
本明細書中使用される場合、用語「機能的なPYP」は、好ましくは可逆的に、蛍光発生HBR類縁体に結合できる光活動性黄色タンパク質(PYP)を指す。よって、本明細書中使用される場合、用語「PYPの機能的にトランケートされたフラグメント」は、好ましくは可逆的に、蛍光発生HBR類縁体に結合できる光活動性黄色タンパク質(PYP)のトランケートされたフラグメントを指す。
【0038】
本明細書中使用される場合、用語「蛍光発生発色団」または「フルオロゲン」は、その輝度が環境の変化により有意に増強され得る、発色団を指す。蛍光発生発色団は、その遊離形態下では溶液中で実質的に非蛍光性であるが、その立体構造を制限し非放射性経路によりその励起した状態の脱励起を排除する環境に置いた場合に、輝く。本発明の一実施形態では、蛍光発生発色団、たとえば蛍光発生4-ヒドロキシベンジリデン-ロダニン(HBR)類縁体は、溶液中でほとんど不可視であるが、本発明のPYPフラグメントの相補体化により形成されるものなどの、タンパク質スキャフォールドの結合時に蛍光性になる。
【0039】
本明細書中使用される場合、「蛍光発生HBR類縁体」は、特定の周波数で光を吸収し、これにより色づき、蛍光発生発色団の性質を有する、蛍光発生4-ヒドロキシベンジリデン-ロダニン(HBR)類縁体(蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体とも呼ばれる)を指す。一実施形態では、本明細書中以下で記載されるように、蛍光発生HBR類縁体は、式(I)の化合物である。
【0040】
本明細書中使用される場合、用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。好ましいハロ基は、フルオロおよびクロロである。
【0041】
本明細書中使用される場合、用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロ基で置換されたいずれかのアルキル基を指す。好ましいハロアルキル基の例は、CF3、CHF2、およびCH2Fである。
【0042】
本明細書中使用される場合、用語「ハロアルコキシ」は、1つ以上のハロ基で置換されたいずれかのアルコキシ基を指す。
【0043】
本明細書中使用される場合、用語「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子に置き換えられ;好ましくは上記ヘテロ原子が、N、S、P、またはOから選択される、アルキル基を指す。ヘテロアルキル基では、ヘテロ原子は、炭素原子のみにアルキル鎖に沿って結合し、すなわち各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子により、他のいずれかのヘテロ原子と離れている。しかしながら、窒素、硫黄、およびリンのヘテロ原子は、任意選択で酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されてもよい。ヘテロアルキル基は、特にアルコキシ基を含む。
【0044】
本明細書中使用される場合、用語「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子が、ヘテロ原子により置き換えられ、好ましくは上記ヘテロ原子が、N、S、P、またはOから選択される、シクロアルキル基を指す。ヘテロシクロアルキル基では、ヘテロ原子は、アルキル基に沿って炭素原子にのみ、結合し、すなわち各ヘテロ原子は、少なくとも1つの炭素原子により、他のいずれかのヘテロ原子と離れている。しかしながら、窒素、硫黄、およびリンのヘテロ原子は、任意選択で酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されてもよい。
【0045】
本明細書中使用される場合、用語「ヒドロキシル」は、-OH官能基を指す。
【0046】
本明細書中使用される場合、用語「同一性」は、2つ以上のポリペプチドまたは2つ以上の核酸の配列間の関係で使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基または2つ以上のヌクレオチドのそれぞれの鎖間の一致数により決定される、ポリペプチドまたは核酸(それぞれ)の間の配列の関連性の度合いを指す。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により提示される(存在する場合は)ギャップアライメントを伴う2つ以上の配列の小さい配列に合わせた配列間の同一の一致のパーセントを測定する。関連するポリペプチドまたは核酸配列の同一性は、既知の方法により容易に計算される。このような方法としては、限定するものではないが、Arthur M. Lesk, Computational Molecular Biology: Sources and Methods for Sequence Analysis(New-York: Oxford University Press, 1988);Douglas W. Smith, Biocomputing: Informatics and Genome Projects (New-York: Academic Press, 1993); Hugh G. Griffin and Annette M. Griffin, Computer Analysis of Sequence Data, Part 1 (New Jersey: Humana Press, 1994); Gunnar von Heinje, Sequence Analysis in Molecular Biology: Treasure Trove または Trivial Pursuit (Academic Press, 1987); Michael Gribskov and John Devereux, Sequence Analysis Primer (New-York: M. Stockton Press, 1991);およびCarillo et al., 1988. SIAM J. Appl. Math. 48(5):1073-1082に記載されるものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致を提供するように設計される。同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムで記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法としては、GAP(Devereux et al., 1984. Nucl. Acid. Res. 12(1 Pt 1):387-395; Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, Madison, WI)、BLASTP、BLASTN、TBLASTN、およびFASTA(Altschul et al., 1990. J. Mol. Biol. 215(3):403-410)を含む、GCGプログラムが挙げられる。BLASTXプログラムは、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)および他のソース(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894;Altschul et al., 1990. J. Mol. Biol. 215(3):403-410)から公開されている。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用され得る。
【0047】
本明細書中使用される場合、用語「ニトロ」は、-NO2官能基を指す。
【0048】
本明細書中使用される場合、用語「核酸」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの、ホスホジエステル結合により共有結合したヌクレオチドのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有しかつ天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然のヌクレオチドの既知の類縁体を含む核酸を包有する。他の意味が記載されない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾されたバリアント(縮重コドン置換(degenerate codon substitution)、アレル、オルソログ、一塩基多型(SNP)、および相補的な配列、ならびに明記された配列をも暗に包有する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合された塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換される配列を作製することにより、達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608(1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。他の意味が明記されない限り、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、互いが変性バージョンである、および同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という文言はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部のバージョンでイントロンを含み得る程度にイントロンを含み得る。
【0049】
本明細書中使用される場合、用語「オキソ」は、-C=O官能基を指す。
【0050】
本明細書中使用される場合、用語「PYPフラグメント」は、機能的な光活動性黄色タンパク質PYPから生じるが、それ自体が機能的な光活動性黄色タンパク質(PYP)を含まない、ペプチドまたはポリペプチドを指す(機能的な光活動性黄色タンパク質(PYP)のみが蛍光発生HBR類縁体を結合できる)。言い換えると、本明細書中使用される場合、用語「PYPフラグメント」は、機能的な光活動性黄色タンパク質PYPから生じるが、自身は蛍光発生HBR類縁体を結合できない、ペプチドまたはポリペプチドを指す。よって、自身では蛍光発生HBR類縁体を結合できないため、本明細書中記載のPYPフラグメント(たとえば第1のPYPフラグメントまたは第2のPYPフラグメント)は、自身で蛍光を誘導または作製できない。
【0051】
本明細書中使用される場合、用語「レポータータンパク質」は、目的の標的または目的の機構を間接的に評価するための方法として、その相互作用が検出、局在化、または定量化され得るタンパク質を指す。
【0052】
本明細書中使用される場合、用語「サンプル」は、全般的に固体または液体である、検体または少量の物質、特に生体物質を指す。よって「サンプル」は、目的の細胞または組織または生物を指し得る。
【0053】
詳細な説明
本発明は、本明細書中記載の2つの光活動性黄色タンパク質(PYP)フラグメントである、第1のPYPフラグメントおよび第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントを含む相補体化系に関する。
【0054】
本発明では、相補体化系は、第1のフラグメントおよび第2のフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントを含み、第1および第2のPYPフラグメントは、互いに結合でき、よって好ましくは可逆的に、蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体を結合する、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを再構成できる。本明細書中上述されるように、再構成された機能的なPYPまたは再構成されたその機能的なフラグメントなどの、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントのみが、蛍光発生HBR類縁体を結合できる。本発明の第1のPYPフラグメントおよび本発明の第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、自身で蛍光発生HBR類縁体を結合できず、よって、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントへの結合時に蛍光発生HBR類縁体により放出される蛍光を、自身で誘導または作製できない。
【0055】
「光活動性黄色タンパク質」または「PYP」は、たとえば、紅色光合成細菌のエクトチオロドスピラ・ハロフィラ(Ectothiorhodospira halophila)(ハロロドスピラ・ハロフィラ(Halorhodospira halophila))から、単離された光受容体タンパク質である。野生型のPYPは、比較的小さなタンパク質(14kDa)であり、それは69番目のシステイン残基とのチオエステル共有結合を介して、p-クマル酸、発色団を結合できる。
【0056】
本発明では、相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートの構造を、それらが近接している場合に再構成でき、ここで機能的なPYPは、蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体を結合できる。本明細書中上述されるように、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、それらが近接している場合に互いに結合できる。
【0057】
一実施形態では、近接は、約20nm未満、好ましくは約10nm未満、より好ましくは約5nm未満の距離を意味する。
【0058】
よって、本発明では、再構成された機能的なPYP、または再構成されたその機能的なトランケートされたフラグメントは、蛍光発生HBR類縁体を結合できる。好ましくは、一実施形態では、再構成された機能的なPYP、または再構成されたその機能的なトランケートされたフラグメントは、蛍光発生HBR類縁体を可逆的に結合できる。
【0059】
本発明では、機能的なPYPの再構成(または手短に述べるとPYPの再構成)は、再構成された機能的なPYPへの、または再構成されたその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生ヒドロキシベンジリデン-ロダニン(HBR)類縁体の結合を可能にする、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントの構造の再構成を意味する。
【0060】
よって、本発明では、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントの再構成は、再構成された機能的なPYP、または再構成されたその機能的なトランケートされたフラグメントへの結合時に蛍光発生ヒドロキシベンジリデン-ロダニン(HBR)類縁体により放出される蛍光の検出を介して検出され得る。
【0061】
一実施形態では、機能的なPYPは、配列番号1に記載のアミノ酸配列、または配列番号1に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列に由来する。
【0062】
一実施形態では、機能的なPYPは、ハロロドスピラ・ハロフィラ(Halorhodospira halophila)(配列番号1)、Halomonas boliviensis LC1(配列番号2)、ハロモナス種 GFAJ-1(配列番号3)、Rheinheimera種 A13L(配列番号4)、Idiomarina loihiensis(配列番号5)、Thiorhodospira sibirica ATCC 700588(配列番号6)、およびRhodothalassium salexigens(配列番号7)を含むかまたはからなる群から選択される細菌種のPYPに由来する。
【0063】
本発明では、機能的なPYPは、配列番号1に記載の配列を準拠することにより69位、または配列番号2~7に記載の配列の対応する位にシステイン、および配列番号1を準拠して94位~101位のアミノ酸領域、または配列番号2~7に記載の配列の対応するアミノ酸領域に1つ以上のアミノ酸置換を含み、上記置換の1つは、配列番号1を準拠した97位または配列番号2~7に記載の配列の対応する位のプロリンである。
【0064】
一実施形態では、機能的なPYPは、配列番号8に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメント、または配列番号8に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなり、上記アミノ酸配列は、配列番号8を準拠して94位~101位のアミノ酸領域に1つ以上のアミノ酸置換を含み、上記置換の1つは、配列番号8を準拠して97位のプロリンである。
【0065】
一実施形態では、上記機能的なPYPは、配列番号8に準拠して94位~101位のアミノ酸領域に少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つのアミノ酸置換をさらに含み、上記アミノ酸置換は、94位のトリプトファン;96位のイソロイシン、バリン、またはイソロイシン;および98位のスレオニンを含むかまたはそれからなる群から選択される。
【0066】
一実施形態では、上記機能的なPYPは、配列番号8に準拠して94位~101位のアミノ酸領域に以下のアミノ酸置換をさらに含む:94位のトリプトファン、95位のメチオニン、96位のイソロイシン、98位のスレオニン、99位のセリン、100位のアルギニン、および101位のグリシン。
【0067】
一実施形態では、機能的なPYPは、配列番号9に記載のアミノ酸、またはその機能的なトランケートされたフラグメント、または配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0068】
一実施形態では、機能的なPYPは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0069】
配列番号10~15のいずれか1つに記載のアミノ酸配列は、配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する。
【0070】
一実施形態では、本明細書中上述される機能的なPYPは、配列番号9に準拠して定義される位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、73位のセリン、107位のイソロイシン、および/または122位のイソロイシン。
【0071】
一実施形態では、機能的なPYPは、以下の置換の組み合わせの1つをさらに含む、配列番号8に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる:
Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、およびT101G(配列番号9);
Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、T101G、および107I(配列番号16);
Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、T101G、およびV122I(配列番号17);
Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、T101G、V107I、およびV122I(配列番号18);
F62L、P68C、D71R、P73S、Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、およびT101G(配列番号19);
D19N、F62L、P68C、D71R、P73S、Y94W、F96I、D97P、Y98T、Q99K、M100R、およびT101G(配列番号20);または
F62L、P68E、C69G、D71R、P73S、Y94W、F96I、D97P、Y98T、Q99K、M100R、およびT101G(配列番号21)(ここで、置換は、参照として配列8を使用して定義されいる)。
【0072】
一実施形態では、機能的なPYPは、配列番号9、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、または配列番号21のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメント、または配列番号9;配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、および配列番号21を含むかもしくはそれからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0073】
一実施形態では、機能的なPYPは、配列番号9~21に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0074】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、配列番号8に準拠して114位で終了する本明細書中上述される機能的なPYP、またはそのトランケートされたフラグメントのN末端側のフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0075】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、配列番号22に記載のアミノ酸配列またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号22に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなり、上記アミノ酸配列は、配列番号22に準拠して94位~101位のアミノ酸領域に1つ以上のアミノ酸置換をさらに含み、上記置換の1つは、配列番号22に準拠して97位のプロリンである。
【0076】
一実施形態では、上記本発明の第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号22に準拠して94位~101位のアミノ酸領域に少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つのアミノ酸置換をさらに含み、上記アミノ酸置換は、94位のトリプトファン;96位のイソロイシン、バリン、またはイソロイシン;および98位のスレオニンを含むかまたはそれからなる群から選択される。
【0077】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号22に準拠して94位~101位のアミノ酸領域に以下のアミノ酸置換を含む:94位のトリプトファン、95位のメチオニン、96位のイソロイシン、98位のスレオニン、99位のセリン、100位のアルギニン、および101位のグリシン。
【0078】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、配列番号23に記載のアミノ酸配列(MEHVAFGSEDIENTLAKMDDGQLDGLAFGAIQLDGDGNILQYNAAEGDITGRDPKQVIGKNFFKDVAPGTDSPEFYGKFKEGVASGNLNTMFEWMIPTSRGPTKVKVHMKKALS)、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0079】
よって、一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0080】
配列番号24~29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列は、配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有する。
【0081】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、73位のセリン、および/または107位のイソロイシン。
【0082】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換をさらに含む:107位のイソロイシン。
【0083】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、および/または73位のセリン。
【0084】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:62位のロイシン、71位のアルギニン、および/または73位のセリン。
【0085】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、以下の置換の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、配列番号22に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる:
Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、およびT101G(配列番号23);
Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、T101G、およびV107I(配列番号30);
F62L、P68C、D71R、P73S、Y94W、T95M、F96I、D97P、Y98T、Q99S、M100R、およびT101G(配列番号31);
D19N、F62L、P68C、D71R、P73S、Y94W、F96I、D97P、Y98T、Q99K、M100R、およびT101G(配列番号32);または
F62L、P68E、C69G、D71R、P73S、Y94W、F96I、D97P、Y98T、Q99K、M100R、およびT101G(配列番号33)
(ここで置換は、参照として配列番号22を使用して定義される)。
【0086】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、配列番号23、配列番号30、配列番号31、配列番号32、または配列番号33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23、配列番号30、配列番号31、配列番号32、および配列番号33を含むかまたはそれらからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0087】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントは、配列番号23~33のいずれか1つに記載のアミノ酸配列またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0088】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントのN末端から開始するアミノ酸の欠失、好ましくは1アミノ酸~50アミノ酸の範囲、より好ましくは1アミノ酸~40アミノ酸、1アミノ酸~35アミノ酸、1アミノ酸~30アミノ酸、さらにより好ましくは1アミノ酸~25アミノ酸の範囲の数のアミノ酸の欠失を含む。
【0089】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、配列番号22に準拠して(または配列番号23~33のいずれか1つなどの同じ長さの他のいずれかのアミノ酸配列に準拠して)1位~最大25位のアミノ酸がトランケートされる。よって、一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントの26位~114位の少なくとも89個の連続したアミノ酸を含む。
【0090】
言い換えると、本発明の第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントのC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含む。
【0091】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントのN末端(N-terとも呼ばれる)から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸がトランケートされる。
【0092】
一実施形態では、本発明の第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントのC末端からの89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、または113個の連続したアミノ酸を含む。
【0093】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントは、配列番号8に準拠して115位から開始する本明細書中上述される機能的なPYPまたはそのトランケートされたフラグメントのC末端側のフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0094】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントはよって、配列番号34(GDSYWVFVKRV)に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0095】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントは、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0096】
配列番号35~40のいずれか1つに記載のアミノ酸配列は、配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有する。
【0097】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号34に準拠して以下のアミノ酸置換をさらに含む:8位のイソロイシン。
【0098】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントは、配列番号41に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号41に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0099】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントは、配列番号34~41のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる。
【0100】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントの少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む。
【0101】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントの8、9、または10個の連続したアミノ酸を含む。
【0102】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントのN末端および/またはC末端から開始するアミノ酸の欠失、好ましくは1、2、または3つのアミノ酸の欠失を含む。
【0103】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントのN末端から開始したアミノ酸の欠失、好ましくは1、2、または3つのアミノ酸の欠失を含む。
【0104】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントのC末端から開始するアミノ酸の欠失、好ましくは1、2、または3つのアミノ酸の欠失を含む。
【0105】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントのN末端からの8、9、または10個の連続したアミノ酸を含む。
【0106】
一実施形態では、本発明の第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、配列番号42(GDSYWVFVKR)、配列番号43(GDSYWVFVK)、または配列番号44(GDSYWVFV)に記載のアミノ酸配列、または配列番号42、配列番号43、もしくは配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、もしくは65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、もしくは90%の、もしくはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0107】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、本明細書中上述される第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントとを含む。
【0108】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号34に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0109】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号9に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメント、または配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0110】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号34に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0111】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0112】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0113】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
それぞれ配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント
を含む。
【0114】
よって、一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号34に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント;
配列番号24に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号35に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント;
配列番号25に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号36に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント;
配列番号26に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号37に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント;
配列番号27に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号38に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント;
配列番号28に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号39に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント;または
配列番号29に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントおよび配列番号40に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント
を含む。
【0115】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号24に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントと、
配列番号35に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメント
を含む。
【0116】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号10に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0117】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号25に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号36に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0118】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号11に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0119】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号26に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号37に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0120】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号12に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0121】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号27に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号38に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0122】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号13に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0123】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号28に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号39に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0124】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号14に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0125】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号29に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号40に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0126】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号15に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0127】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0128】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、73位のセリン、および/または107位のイソロイシンの少なくとも1つをさらに含み、かつ/または本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号34に準拠して以下のアミノ酸置換:8位のイソロイシンをさらに含む。
【0129】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、73位のセリン、および/または107位のイソロイシン。
【0130】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換をさらに含む:107位のイソロイシン。
【0131】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:19位のアスパラギン、62位のロイシン、68位のシステインもしくはグルタミン酸、71位のアルギニン、および/または73位のセリン。
【0132】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第1のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号23に準拠して定義した位置に以下のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに含む:62位のロイシン、71位のアルギニン、および/または73位のセリン。
【0133】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、配列番号34に準拠して以下のアミノ酸置換をさらに含む:8位のイソロイシン。
【0134】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号30に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号34に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメント
を含む。
【0135】
上記実施形態では、第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントはよって、配列番号16に記載のアミノ酸配列、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる機能的なPYPを再構成できる。
【0136】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第1のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、上記第1のPYPフラグメントのC末端からの少なくとも89個の連続したアミノ酸を含む。
【0137】
一実施形態では、本明細書中上述される本発明の相補体化アッセイの第2のPYPフラグメントのトランケートされたフラグメントは、上記第2のPYPフラグメントの少なくとも8個の連続したアミノ酸、好ましくは上記第2のPYPフラグメントのN末端からの少なくとも8個の連続したアミノ酸を含む。
【0138】
本明細書中上述されるように、本発明では、相補体化系は、第2のPYPフラグメントおよび第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントを含み、ここで第1および第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、好ましくは可逆的に、蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体を結合する、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを再構成できる。
【0139】
本発明では、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントの再構成は、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを、協同して相互作用する分子にカップリングまたは融合することにより入手でき、ここで第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、第1の分子にカップリングまたは融合され、第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、第2の分子にカップリングまたは融合される。それらの相互作用を介して、これらの分子は、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントが再構成されるように、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを、互いに十分に近接させる。
【0140】
上述されるように、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントの再構成は、再構成された機能的なPYPへの、または再構成されたその機能的なトランケートされたフラグメントへの結合時に蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体により放出される蛍光の検出を介して、検出され得る。
【0141】
実際に、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントと蛍光発生HBR類縁体によりその後形成される複合体は、蛍光性であり、すなわち光励起を受けて光を発することができる。
【0142】
一実施形態では、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントは、可逆的に、すなわち非共有相互作用を介して、蛍光発生HBR類縁体を結合する。よって、一実施形態では、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントに対する蛍光発生HBR類縁体の結合は、可逆的である。
【0143】
ポリペプチドへの蛍光発生発色団の結合を評価するための方法は、当該分野でよく知られている。このような方法は特に、ポリペプチドへの結合時に蛍光発生発色団により放出される蛍光の評価に依存し、分光蛍光分析を含む。
【0144】
一実施形態では、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントは、
約25℃の温度で測定された場合、約0.01~約20μMの範囲、好ましくは約0.05~約10μM、より好ましくは約0.1~約5μMの範囲のKD;および/または
約25℃の温度で測定された場合、約0.5~約50s-1の範囲、好ましくは約1~約25s-1、より好ましくは約5~約20s-1の範囲のkoff;および/または
約25℃の温度で測定された場合、約0.05×107~約50×107M-1s-1の範囲、好ましくは約0.1×107~約25×107M-1s-1、より好ましくは約1×107~約15×107M-1s-1の範囲のkon
で、蛍光発生HBR類縁体を可逆的に結合する。
【0145】
KD、kon、およびkoffの定数を測定するための方法は、当該分野でよく知られており、たとえば、Scatchardら(Ann. N.Y. Acad. Sci. USA 51:660 (1949))に記載されるものを含む。特に、熱力学的な解離定数KDを測定するための方法は、当該分野でよく知られており、たとえばPlamontら(Plamont et al., P Natl Acad Sci Usa 2016, 113 (3), 497-502)により記載されるものを含む。
【0146】
一実施形態では、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントに結合した蛍光発生HBR類縁体のモル吸光係数(molar absorption coefficient)(ε)は、その最大吸収の波長(λabs)で測定した場合に、約1~約100mM-1cm-1の範囲にある。一実施形態では、モル吸光係数(ε)は、λabsで約10~約200mM-1cm-1の範囲にある。特定の実施形態では、モル吸光係数(ε)は、λabsで約20~約100mM-1cm-1の範囲にある。
【0147】
モル吸光係数(ε)を測定するための方法は、当該分野で知られており、たとえばPlamont, M.-Aら(Plamont, M.-A. et al., P Natl Acad Sci Usa 2016, 113 (3), 497-502)に記載されるものを含む。
【0148】
一実施形態では、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントに結合した蛍光発生HBR類縁体の蛍光量子収率(φ)は、その最大吸収の波長(λabs)で測定した場合に、約0.1%超である。一実施形態では、φは、λabsで約0.25%超、約0.75%超、または約1%超である。特定の実施形態では、φは、λabsで約2%超である。
【0149】
蛍光量子収率(φ)を測定するための方法は、当該分野で知られており、たとえば、Plamont, M.-Aら(Plamont, M.-A. et al., P Natl Acad Sci Usa 2016, 113 (3), 497-502)に記載されるものを含む。一実施形態では、一光子の励起後の蛍光量子収率φは、関係
【数1】
(式中、下付き文字のrefは、標準的なサンプルを表し、A(λ
exc)は、励起波長λ
excでの吸光度であり、Dは、積分した発光スペクトルであり、nは、溶媒の屈折率である)
から計算される。
【0150】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体に結合時に、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントは、上記蛍光発生HBR類縁体の輝度を高める。
【0151】
一実施形態では、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントから再構成された、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントに結合した蛍光発生HBR類縁体の輝度は、約50超である。一実施形態では、輝度は、約200超である。特定の実施形態では、輝度は、約1000超である。
【0152】
輝度を測定するための方法は、当該分野でよく知られている。輝度は、エミッターあたりの蛍光出力に対応し、モル吸光係数(励起波長時)および蛍光量子収率の積である。
【0153】
一実施形態では、本明細書中上述される第1および第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントは、低い親和性で、機能的なPYP、またはその機能的なトランケートされたフラグメントを再構成できる。
【0154】
よって、一実施形態では、本明細書中上述される第1および第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントは、上記第1および第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントの低い自己集合により、蛍光発生HBR類縁体の存在下で低い非特異的な蛍光バックグラウンドを呈する。
【0155】
一実施形態では、本発明の第1および第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、約0.1μM超、好ましくは約0.2μM超、より好ましくは約0.5μM超、さらにより好ましくは1μM超の解離定数(KD)で互いに結合する(ここで上記KDは、約25℃の温度、蛍光発生HBR類縁体の存在下で、好ましくは10μMの蛍光発生HBR類縁体の存在下で測定される)。
【0156】
一実施形態では、本発明の第1および第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、約0.2μM超、好ましくは約0.5μM超、より好ましくは約1μM超、さらにより好ましくは5μM超の解離定数(KD)で互いに結合する(ここで上記KDは、約25℃の温度、蛍光発生HBR類縁体の存在下、好ましくは10μMの蛍光発生HBR類縁体の存在下で測定される)。
【0157】
一実施形態では、本発明の第1および第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、約0.2μM超、好ましくは約0.75μM超、より好ましくは約1μM超、さらにより好ましくは5μM超の解離定数(KD)で互いに結合する(ここで上記KDは、約25℃の温度で、HMBRの存在下、好ましくは10μMのHMBRの存在下で測定される)。
【0158】
一実施形態では、本発明の第1および第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントは、約1μM超、好ましくは約2μM超、より好ましくは約5μM超、さらにより好ましくは10μM超の解離定数(KD)で互いに結合する(ここで上記KDは、約25℃の温度で、HBR-3,5-DOMの存在下、好ましくは10μMのHBR-3,5-DOMの存在下で測定される)。
【0159】
上述されるように、熱力学的な解離定数KDを測定するための方法は、当該分野でよく知られており、たとえば、Plamont, M.-Aら(Plamont, M.-A. et al., P Natl Acad Sci Usa 2016, 113 (3), 497-502)により記載されるものを含む。一実施形態では、熱力学的な解離定数KDは、実施例に記載される分光蛍光分析の滴定により決定される。
【0160】
本発明の相補体化系はよって、2つの分子間の相互作用を試験するために、特に上記分子の結合および解離のいずれかまたは両方を試験するために、使用され得る。
【0161】
本発明はまた、本明細書中上述される第1または第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む目的の生体分子に関する。一実施形態では、第1または第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを含む目的の生体分子は、第1または第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントが、共有結合または非共有結合により付着される、目的の生体分子である。
【0162】
本明細書中使用される場合、用語「目的の生体分子」は、生きている生物の中に存在する全ての分子を包有する。特に、この用語は、限定するものではないが、アミノ酸、単糖、ヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖、核酸、脂質、脂肪酸、糖脂質、ステロール、ビタミン、ホルモン、神経伝達物質、および代謝物を含む。
【0163】
目的の生体分子にペプチドまたはポリペプチドを非共有結合的に付着させるための方法は、よく知られている。目的の生体分子にペプチドまたはポリペプチドを共有結合的に付着させるための方法は、よく知られている。
【0164】
本発明はまた、本明細書中上述される第1および第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む目的の生体分子の対であって、1つの目的の生体分子が、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含み、他の目的の生体分子が、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む、目的の生体分子の対に関する。
【0165】
一実施形態では、目的の生体分子は、タンパク質である。
【0166】
よって、本発明は、本明細書中上述される第1または第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む融合タンパク質に関する。
【0167】
実際に、本明細書中上述されるPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるトランケートされたフラグメントは、結果得られる融合タンパク質をコードする核酸配列を(たとえば形質転換またはトランスフェクションを介して)挿入することにより宿主細胞内でいずれかの目的のタンパク質との融合で発現され得る。
【0168】
目的のタンパク質にペプチドまたはポリペプチドを融合するための方法は、よく知られている。簡潔に述べると、このような方法は、ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸とインフレームで目的のタンパク質をコードする核酸配列を挿入することを含む。目的のタンパク質をコードする核酸配列は、コードされたタンパク質が、適宜、目的のタンパク質のN末端または目的のタンパク質のC末端、または内部に位置付けられるように挿入され得る。さらに、リンカーまたはスペーサーをコードする短い核酸配列が、目的のペプチドおよびタンパク質をコードする配列の間に存在し得る。
【0169】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、目的のタンパク質とを含む。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、目的のタンパク質とを含む。
【0170】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、本発明のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメント以外の少なくとも1つのさらなるエレメントと、目的のタンパク質とを含む。
【0171】
本発明の融合タンパク質で考慮され得るさらなるエレメントの例としては、限定するものではないが、リンカー、標的化シグナル、プロテアーゼ標的部位、抗体結晶化可能領域(Fc)、酵素(アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなど)、ヘマグルチニンタグ、ポリアルギニンタグ、ポリヒスチジンタグ、mycタグ、strepタグ、S-タグ、HATタグ、3×flagタグ、カルモジュリン結合ペプチドタグ、SBPタグ、キチン結合ドメインタグ、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、蛍光タンパク質タグ(好ましくは、その蛍光は、本発明の相補体化系に関連した蛍光とはスペクトル的に別であり得る)、T7タグ、V5タグ、およびX-pressタグが挙げられる。
【0172】
一実施形態では、本明細書中上述される融合タンパク質は、リンカーを含む。
【0173】
リンカーを設計または選択するための方法は、当業者によく知られている。
【0174】
リンカーの例としては、限定するものではないが、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含むかまたはからなるリンカーが挙げられる。
【0175】
本発明はまた、本明細書中上述される第1および第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む融合タンパク質の対であって、1つの融合タンパク質が、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含み、他の融合タンパク質が、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む、融合タンパク質の対に関する。
【0176】
一実施形態では、対の融合タンパク質の両方は、同じ目的のタンパク質を含む。言い換えると、一実施形態では、1つの融合タンパク質は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、目的のタンパク質とを含み、他の融合タンパク質は、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、同じ目的のタンパク質とを含む。
【0177】
一実施形態では、対の各融合タンパク質は、明確に異なる目的のタンパク質を含む。言い換えると、一実施形態では、1つの融合タンパク質は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、第1の目的のタンパク質とを含み、他の融合タンパク質は、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、第2の、異なる目的のタンパク質とを含む。
【0178】
一実施形態では、第1および第2の目的のタンパク質は、互いに相互作用できる2つのレポータータンパク質である。
【0179】
本発明はまた、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントおよび/または第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸、ならびに本明細書中上述される本発明の融合タンパク質をコードする核酸配列に関する。
【0180】
本発明では、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントおよび/または第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする本発明の核酸配列は、互いが変性バージョンであり、および同じ第1のPYPフラグメントおよび/または第2のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントをコードする、全ての核酸配列を含む。
【0181】
当業者は、遺伝子コードに基づきコード配列を適応させるための方法、たとえば限定するものではないが、サイレント変異を導入するためにコドンの縮重を使用する方法、および企図される宿主細胞に関連する標準的な遺伝子コードのコドン使用のバイアスおよび変化を考慮する方法、に精通している。
【0182】
一実施形態では、本発明の核酸配列は、配列番号23に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードするか、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする。
【0183】
配列番号23に記載のアミノ酸配列または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、および配列番号52に記載の核酸配列が挙げられる。
【0184】
配列番号23に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号46に記載の核酸配列が挙げられる。
【0185】
配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、および配列番号52に記載の核酸配列が挙げられる。
【0186】
一実施形態では、本発明の核酸配列は、配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードするか、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする。
【0187】
配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、および配列番号59に記載の核酸配列が挙げられる。
【0188】
配列番号34に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号53に記載の核酸配列が挙げられる。
【0189】
配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、および配列番号59に記載の核酸配列が挙げられる。
【0190】
一実施形態では、本発明の核酸配列は、配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードするか、または配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0191】
配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列の例としては、限定するものではないが、配列番号53、配列番号60、配列番号61、および配列番号62にそれぞれ記載の核酸配列が挙げられる。
【0192】
本発明はまた、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントおよび第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列の対であって、1つの核酸配列が、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードし、他の核酸配列が、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする、核酸配列の対に関する。
【0193】
本発明はまた、本明細書中上述される第1の融合タンパク質および第2の融合タンパク質をコードする核酸配列の対であって、1つの融合タンパク質が本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含み、第2の融合タンパク質が、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む、核酸配列の対に関する。
【0194】
本発明はまた、本明細書中上述される少なくとも1つの核酸配列を含むベクターに関する。
【0195】
一実施形態では、本発明のベクターは、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする第2の核酸配列
を含む。
【0196】
一実施形態では、本発明のベクターは、
配列番号23に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
配列番号34に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする第2の核酸配列
を含む。
【0197】
一実施形態では、本発明のベクターは、
配列番号23に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする第2の核酸配列
を含む。
【0198】
本発明はまた、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントおよび第2のPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含むベクターの対であって、1つのベクターが、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含み、他のベクターが、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含む、ベクターの対に関する。
【0199】
一実施形態では、第1のベクターは、配列番号23に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む。
【0200】
一実施形態では、第2のベクターは、配列番号34に記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む。一実施形態では、第2のベクターは、配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む。
【0201】
本明細書中使用される場合、用語「ベクター」は、そこでそれが複製および/または発現され得る細胞中に外来性遺伝子物質を人工的に輸送するためのビヒクルとして分子クローニングで使用される核酸分子を指す。ベクターの例としては、限定するものではないが、プラスミド、ウイルスベクター、および人工染色体が挙げられる。
【0202】
特に、本発明の文脈では、ベクターは、本明細書中上述されるPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントをコードする配列とインフレームで目的のタンパク質をコードする配列の融合のための必要とされる核酸配列を含み得る。
【0203】
本発明はまた、本明細書中上述されるPYPフラグメント、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または本明細書中上述される融合タンパク質の少なくとも1つを発現する細胞に関する。
【0204】
一実施形態では、本発明の細胞は、本明細書中上述される第1および第2のPYPフラグメントの両方、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを発現する。
【0205】
一実施形態では、本発明の細胞は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む本明細書中上述される第1の生体分子と、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む本明細書中上述される第2の生体分子とを発現する。
【0206】
一実施形態では、目的の生体分子の1つは、タンパク質である。一実施形態では、目的の生体分子の両方は、タンパク質である。
【0207】
よって、一実施形態では、本発明の細胞は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む第1の融合タンパク質と、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含む第2の融合タンパク質とを発現する。
【0208】
一実施形態では、融合タンパク質は、レポータータンパク質を含む。
【0209】
よって、一実施形態では、本発明の細胞は、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、レポータータンパク質とを含む第1の融合タンパク質;および
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、レポータータンパク質とを含む第2の融合タンパク質
を発現する(ここでレポータータンパク質は、同一であるまたは異なる)。
【0210】
一実施形態では、本発明の細胞は、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、レポータータンパク質とを含む第1の融合タンパク質;および
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、レポータータンパク質とを含む第2の融合タンパク質
を発現し、ここでレポータータンパク質は、同一であるまたは異なり、それらの相互作用は、目的の標的または目的の機構を間接的に評価するための方法として、検出、局在化、または定量化され得る。
【0211】
よって、一実施形態では、本発明の細胞は、目的の標的または目的の生理的な機構を評価するための細胞性センサーとして使用され得る。
【0212】
目的の標的または機構の例としては、限定するものではないが、カルシウムなどの分析物の細胞での存在の評価、およびアポトーシスなどの生理的な機構の評価が挙げられる。
【0213】
よって、本発明の細胞は、カルシウムなどの目的の分析物の細胞中の存在を評価するための細胞性センサーとして使用され得る。本発明の細胞は、アポトーシスなどの細胞中の生理的な機構を評価するための細胞性センサーとして使用され得る。本発明の細胞はまた、目的の標的または機構を制御する薬物を同定するための化学的なライブラリーをスクリーニングするための細胞性センサーとして使用され得る。
【0214】
一実施形態では、本明細書中上述される相補体化系は、蛍光発生HBR類縁体をさらに含む。
【0215】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、式(I)の蛍光発生HBR類縁体:
【化2】
(式中、
R1、R2、R5、およびR6は、同一であっても異っていてもよく、それぞれ、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルで置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル(例えば、アルコキシ)、またはヘテロシクロアルキル基を表し;
R3は、非結合性のダブレット(すなわち、電子の遊離対)であるか、あるいは、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基を表し、
R4は、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいS、O、またはN原子により中断または終結した、単結合または二重結合であり、
Xは、OH、SH、NHR7、またはN(R7)
2であり、R7は、飽和または不飽和であり、直鎖状または分岐状であり、任意選択でハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミド、カルボキシ、アミノ、シアノ、ハロアルコキシ、ハロアルキルから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、H、ハロ、ヒドロキシル、アリール、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基であり、
Yは、O、NH、またはSである)
をさらに含む。
【0216】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、(Z)-5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HMBR);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DOM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR-3OM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR-2,5DM);(Z)-5-(3-エチル-4-ヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3E);(Z)-5-(3-エトキシ-4-ヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3OE);(Z)-5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-3-メチル-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBMR);(Z)-5-(2,4-ジヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(DHBR) (Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HMOBR);(Z)-2-(5-(3-エチル-4-ヒドロキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3E);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-エトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3OE);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-2-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-2OM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3M);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3OM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-2-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-2OM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-2,5DM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3,5DM)、および(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3,5DOM)を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0217】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HMBR);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DOM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR-3OM)、および(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DM)を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0218】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、膜浸透性である。
【0219】
本明細書中使用される場合、用語「膜浸透性」は、生体膜(すなわち極性脂質層、好ましくは極性脂質二重層からなる膜)を通過できる化合物の性質を指す。用語「膜非浸透性」は、反対に、生体膜を通過できない化合物を指す。
【0220】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、膜浸透性であり、(Z)-5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HMBR);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DOM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR-3OM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR-2,5DM);(Z)-5-(3-エチル-4-ヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3E);(Z)-5-(3-エトキシ-4-ヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3OE);(Z)-5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-3-メチル-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBMR);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBAAR);(Z)-5-(2,4-ジヒドロキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(DHBR)、および(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HMOBR)を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0221】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、膜浸透性であり、(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HMBR);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DOM);(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-4-オン(HBR-3OM)、および(Z)-5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-2-チオキソチアゾリジン-4-オン(HBR-3,5DM)を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0222】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、膜非浸透性である。
【0223】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、膜非浸透性であり、(Z)-2-(5-(3-エチル-4-ヒドロキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3E);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-エトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3OE);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-2-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-2OM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3M);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3OM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-2-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-2OM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-2,5DM);(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3,5DM)、および(Z)-2-(5-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)酢酸(HBRAA-3,5DOM)を含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0224】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、
配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体
を含む。
【0225】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRまたはHBR-3,5DOMとを含む。
【0226】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRとを含む。
【0227】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DOMとを含む。
【0228】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3OMとを含む。
【0229】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号34に記載のアミノ酸配列または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DMとを含む。
【0230】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントと、
配列番号34に記載のアミノ酸配列、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体(好ましくは、蛍光発生類縁体は、HMBRまたはHBR-3,5DOMである)
を含む。
【0231】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、
配列番号42に記載のアミノ酸配列または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体
を含む。
【0232】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号42に記載のアミノ酸配列または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRまたはHBR-3,5DOMとを含む。
【0233】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号42に記載のアミノ酸配列または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRとを含む。
【0234】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号42に記載のアミノ酸配列または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DOMとを含む。
【0235】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号42に記載のアミノ酸配列または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3OMとを含む。
【0236】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号42に記載のアミノ酸配列または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DMとを含む。
【0237】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる本発明の第1のPYPフラグメントと、
配列番号42に記載のアミノ酸配列、または配列番号42に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体(好ましくは、蛍光発生HBR類縁体は、HMBRまたはHBR-3,5DOMである)
を含む。
【0238】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、
配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体
を含む。
【0239】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRまたはHBR-3,5DOMとを含む。
【0240】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRとを含む。
【0241】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DOMとを含む。
【0242】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3OMとを含む。
【0243】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DMとを含む。
【0244】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントと、
配列番号43に記載のアミノ酸配列、または配列番号43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体(好ましくは、蛍光発生HBR類縁体は、HMBRまたはHBR-3,5DOMである)
を含む。
【0245】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、
配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体
を含む。
【0246】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRまたはHBR-3,5DOMとを含む。
【0247】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HMBRとを含む。
【0248】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DOMとを含む。
【0249】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3OMとを含む。
【0250】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントと、配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、HBR-3,5DMとを含む。
【0251】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23または配列番号30に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列、またはそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントと、
配列番号44に記載のアミノ酸配列または配列番号44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる本発明の第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体(好ましくは、蛍光発生HBR類縁体は、HMBRまたはHBR-3,5DOMである)
を含む。
【0252】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントと、
配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体(好ましくは、蛍光発生HBR類縁体は、HMBRまたはHBR-3,5DOMである)
を含む。
【0253】
一実施形態では、本発明の相補体化系は、
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントと、
配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、または配列番号40のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントと、
HMBR、HBR-3,5DOM、HBR-3OM、およびHBR-3,5DMを含むかまたはそれらからなるリストから選択される蛍光発生HBR類縁体(好ましくは、蛍光発生HBR類縁体は、HMBRまたはHBR-3,5DOMである)
を含む。
【0254】
また本発明は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする第2の核酸配列
を含む少なくとも1つのベクターを含むキットに関する。
【0255】
一実施形態では、本発明のキットは、
配列番号23に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
配列番号34に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする第2の核酸配列と
を含む少なくとも1つのベクターを含む。
【0256】
一実施形態では、本発明のキットは、配列番号23に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする第1の核酸配列と、
配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする第2の核酸配列
を含む少なくとも1つのベクターを含む。
【0257】
本発明はまた、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含む第1のベクターと、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントをコードする核酸配列を含む第2のベクター
を含む、キットに関する。
【0258】
一実施形態では、本発明のキットは、
配列番号23に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む第1のベクターと、
配列番号34に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号34に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む第2のベクター
を含む。
【0259】
一実施形態では、本発明のキットは、
配列番号23に記載のアミノ酸配列または本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、または配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列もしくは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを含むかまたはそれからなる第1のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む第1のベクターと、
配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44に記載のアミノ酸配列、または配列番号34、配列番号42、配列番号43、または配列番号44と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または65%の同一性、好ましくは少なくとも約70%、75%、80%、85%、または90%の、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のPYPフラグメントをコードする核酸配列を含む第2のベクター
を含む。
【0260】
本発明はまた、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを含む、本明細書中上述される第1の目的の生体分子と、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを含む、本明細書中上述される第2の目的の生体分子
を含むキットに関する。
【0261】
本発明はまた、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを含む第1の融合タンパク質と、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを含む第2の融合タンパク質
を含むキットに関する。
【0262】
本発明はまた、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメント、およびレポータータンパク質を含む第1の融合タンパク質と、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメント、およびレポータータンパク質を含む第2の融合タンパク質
を含むキットであって、
レポータータンパク質は、同一であるまたは異なる、
キットに関する。
【0263】
本発明はまた、本明細書中上述される細胞または細胞集団を含むキットに関する。
【0264】
一実施形態では、本発明のキットは、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、およびレポータータンパク質を含む第1の融合タンパク質と、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメント、およびレポータータンパク質を含む第2の融合タンパク質とを発現する細胞または細胞集団を含む。
【0265】
一実施形態では、本明細書中上述されるキットは、本明細書中上述される少なくとも1つの蛍光発生HBR類縁体をさらに含む。
【0266】
また本発明は、サンプル中の2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の間の相互作用を検出するための方法であって、
本明細書中上述されるPYPの第1のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを、第1の目的の生体分子に付着させるステップと、
本明細書中上述されるPYPの第2のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを、第2の目的の生体分子に付着させるステップと、
上記サンプルを本明細書中上述される蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
2つの目的の生体分子の相互作用の後に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、上記サンプルに存在する2つの目的の生体分子の相互作用を検出する、方法に関する。
【0267】
一実施形態では、第1の目的の生体分子は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントに付着され、第2の目的の生体分子は、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントに付着される。
【0268】
よって、一実施形態では、本発明の方法は、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントに付着された第1の目的の生体分子と、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントに付着された第2の目的の生体分子の間でのサンプル中の相互作用を検出するためのものであり、
上記サンプルを本明細書中上述される蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、上記サンプルに存在する2つの目的の生体分子の相互作用を検出する。
【0269】
一実施形態では、第1および第2の目的の生体分子は、同一である。
【0270】
一実施形態では、第1および第2の目的の生体分子は、異なる。
【0271】
好ましい実施形態では、目的の生体分子の少なくとも1つは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質などのアミノ酸鎖、好ましくはタンパク質である。このような実施形態では、本発明のPYPフラグメントまたはそのフラグメントの少なくとも1つは、上記少なくとも1つの生体分子と融合タンパク質またはタグ付けされたタンパク質を形成し得る。
【0272】
一実施形態では、両方の第1および第2の目的の生体分子は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質などのアミノ酸鎖、好ましくはタンパク質である。
【0273】
目的のタンパク質は、天然のタンパク質、様々なタンパク質ドメインの融合からもたらされるキメラタンパク質、または合成タンパク質であり得る。
【0274】
一実施形態では、目的のタンパク質は、細胞内タンパク質、膜タンパク質、膜外表面に少なくとも部分的に存在する細胞表面タンパク質、または分泌タンパク質である。
【0275】
一実施形態では、2つの目的の生体分子は、レポータータンパク質である。
【0276】
本明細書中使用される場合、用語レポータータンパク質は、その相互作用がサンプルの変化を反映する、2つのタンパク質を指す。レポータータンパク質を使用してその後起こり得る変化の例としては、限定するものではないが、細胞シグナリング、遺伝子発現、カルシウムの濃度、細胞間相互作用、細胞の移動、細胞死、細胞内輸送、分泌、細胞周期、および概日リズムが挙げられる。
【0277】
一実施形態では、サンプルは、生体サンプルである。一実施形態では、サンプルは、生物である。一実施形態では、生物は、人体ではない。一実施形態では、サンプルは、細胞培養物である。細胞の例として、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、動物細胞が挙げられる。一実施形態では、サンプル中の細胞は、生きている。一実施形態では、サンプル中の細胞は、顕微鏡観察およびイメージングのため固定されている。
【0278】
本発明の文脈で考慮される生物は、たとえば、限定するものではないが、生物医学的な研究で使用されるモデル生物、たとえば細菌、酵母、ショウジョウバエ、線形動物、ゼブラフィッシュ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、およびイヌなどである。
【0279】
一実施形態では、予め産生され、任意選択で精製された、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質に結合した本発明のPYPフラグメント、またはそのトランケートされたフラグメントは、生物または細胞の中に注入される。
【0280】
好ましい実施形態では、サンプル中のモデル生物もしくは細胞、またはそのサブセットは、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質に付着された、本発明のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを発現するように修飾される。
【0281】
当業者は、目的のタンパク質を発現させるために培養物中のモデル生物または細胞を修飾することを可能にする方法に精通している。このような方法の例としては、限定するものではないが、核酸配列、たとえば本明細書中上述される核酸配列のトランスフェクション、エレクトロポレーション、注射、および遺伝子組換えが挙げられる。上記方法はまた、限定するものではないが、目的のタンパク質を発現するように修飾された細胞の移植、注射、および共培養を含む。
【0282】
一実施形態では、サンプルは、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質に付着された、本発明のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを発現するように修飾された細胞から抽出される。
【0283】
一実施形態では、サンプルは、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質に付着された、本発明のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを補充した細胞抽出物である。
【0284】
一実施形態では、サンプルは、無細胞であるか、または目的の生体分子に付着された、本発明のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを産生する細胞を含まない。このような実施形態では、以前に産生され、任意選択で精製された目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質に付着された、本発明のPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントが、サンプルに添加される。
【0285】
一実施形態では、サンプル中の2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の間の相互作用を検出するための方法は、
本明細書中上述されるPYPの第1のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを、第1の目的の生体分子、好ましくは第1の目的のタンパク質に融合するステップと、
本明細書中上述されるPYPの第2のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを、第2の目的の生体分子、好ましくは第2の目的のタンパク質に融合するステップと、
上記サンプルを本明細書中上述される蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、サンプル中の2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の相互作用を検出する。
【0286】
上述されるように、ペプチドまたはポリペプチド、すなわち本発明に係るPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントを目的のタンパク質に融合させるための方法は、よく知られている。
【0287】
一実施形態では、蛍光発生HBR類縁体は、約0.1μM~約50μM、好ましくは約1μM~約25μMの範囲、より好ましくは約1μM~約15μMの範囲の濃度でサンプルに添加される。
【0288】
本明細書中使用される場合、用語「相互作用」は、2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質が、互いに結合し、その結果蛍光発生HBR類縁体を結合できる機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントを形成するように、本発明の相補体化系の2つのPYPフラグメントまたはそのトランケートされたフラグメントに十分に近いことを意味する。
【0289】
一実施形態では、相互作用は、2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の互いの直接の結合により媒介される。
【0290】
一実施形態では、相互作用は、間接的であり、すなわち、少なくとも1つの他の生体分子への、2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の結合により媒介される。
【0291】
2つの目的の生体分子、好ましくは2つの目的のタンパク質の相互作用を誘導し得る生体分子の例としては、限定するものではないが、陽イオン、陰イオン、ペプチド、代謝物、二次的なメッセンジャー、RNA、DNA、およびタンパク質が挙げられる。
【0292】
よって、一実施形態では、本発明の方法は、
本明細書中上述されるPYPの第1のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを第1の目的の生体分子に付着させるステップと、
本明細書中上述されるPYPの第2のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを第2の目的の生体分子に付着させるステップと、
上記サンプルを本明細書中上述される蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
2つの目的の生体分子の相互作用の生体分子による誘導時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つの目的の生体分子の相互作用の生体分子による誘導時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、サンプルに存在する2つの目的の生体分子の相互作用を検出する。
【0293】
一実施形態では、相互作用は、一過性である。
【0294】
一実施形態では、本発明の方法は、2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光の変化を検出するステップを含む。
【0295】
一実施形態では、本発明の方法は、2つの目的の生体分子の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光の増大を検出するステップを含む。
【0296】
一実施形態では、本発明の方法は、2つの目的の生体分子間の相互作用の破壊からもたらされる、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントの分解時の蛍光発生HBR類縁体の非結合からもたらされる蛍光の減少を検出するステップを含む。
【0297】
当業者は、サンプル中の蛍光を検出するために利用可能な技術に精通しており、サンプル、フルオロフォアの励起スペクトルおよび発光スペクトル、ならびに望ましい読み取りに応じて選択できる。
【0298】
このような技術としては、限定するものではないが、直接的な観察、蛍光分光法、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡、および蛍光トモグラフィーが挙げられる。
【0299】
一実施形態では、本発明の方法は、サンプル中の目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質の間の相互作用を空間においてモニタリングするためのものである。
【0300】
たとえば、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質の間の相互作用のサンプル中の局在は、
(i)蛍光トモグラフィーまたは蛍光顕微鏡(レーザー走査型共焦点顕微鏡-およびスピニングディスクベースの共焦点顕微鏡、多光子顕微鏡、超解像顕微鏡を含む)などの、サンプルにおける蛍光発光の供給源の局在を決定することを可能にする蛍光検出技術を使用することにより、
(ii)目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質に、特定の細胞集団に、および/または細胞内区画に付着される本発明のPYPフラグメントを標的化することにより、かつ/または
(iii)特に本明細書中上述される膜浸透性または膜非浸透性HBR類縁体を使用することにより、サンプル中のHBR類縁体の拡散を制御することにより、
決定され得る。
【0301】
一実施形態では、本発明の方法は、蛍光強度を測定することにより、参照値と比較して相互作用する目的の生体分子の量を測定することをさらに可能にする。一実施形態では、上記参照値は、対照サンプル中の蛍光強度の値に対応する。一実施形態では、上記参照値は、同じサンプル中の異なる位置および/または時点での蛍光強度の値に対応する。
【0302】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書中上述されるサンプル中の、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質の間の相互作用を経時的にモニタリングするためのものである。
【0303】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書中上述されるサンプル中の、目的の生体分子、好ましくは目的のタンパク質の間の相互作用を時間および/または空間にわたりモニタリングするためのものである。
【0304】
また本発明は、サンプル中の新規のタンパク質間相互作用を同定するためのスクリーニング方法であって、
本明細書中上述されるPYPの第1のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを第1のタンパク質に融合すること、それにより第1のPYPフラグメントで第1のタンパク質をタグ付けするステップと、
本明細書中上述されるPYPの第2のフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントを第2のタンパク質に融合すること、それにより第2のPYPフラグメントで第2のタンパク質をタグ付けするステップと、
上記サンプルを本明細書中上述される蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、サンプルに存在する2つのタンパク質間の新規のタンパク質間相互作用を同定する、方法に関する。
【0305】
一実施形態では、本発明の方法は、目的のタンパク質と上記目的のタンパク質と相互作用し得るタンパク質候補の間の新規のタンパク質間相互作用をスクリーニングするためのものである。
【0306】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書中上述される生体分子により誘導されるタンパク質間相互作用をスクリーニングするためのものであり、上記生体分子の例としては、限定するものではないが、陽イオン、陰イオン、ペプチド、代謝物、二次的なメッセンジャー、RNA、DNA、およびタンパク質が挙げられる。
【0307】
また本発明は、サンプル中の2つのタンパク質間の相互作用の検出に依存するアッセイであって、
本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントでタグ付けされた、第1のタグ付けされたタンパク質を得るステップと、
本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントでタグ付けされた、第2のタグ付けされたタンパク質を得るステップと、
上記サンプルを蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
2つのタグ付けされたタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つのタグ付けされたタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、サンプルに存在する2つのタグ付けされたタンパク質の相互作用を検出する、アッセイに関する。
【0308】
一実施形態では、2つのタンパク質は、レポータータンパク質である。
【0309】
一実施形態では、本発明のアッセイは、タンパク質間相互作用を安定化または阻害する目的の分子の能力を評価するためのものである。
【0310】
よって、一実施形態では、本発明のアッセイは、
サンプルを目的の分子と接触させるステップと、
上記目的の分子の存在下での2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップと、
目的の分子の非存在下および存在下で検出される2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を比較するステップ
を含み、
それにより2つのタンパク質の相互作用に及ぼす上記目的の分子の作用を評価する。
【0311】
一実施形態では、目的の分子の非存在下で検出される蛍光と比較した、目的の分子の存在下で検出される蛍光の減少は、目的の分子による2つのタンパク質の相互作用の阻害または不安定化を表す。
【0312】
一実施形態では、目的の分子の非存在下で検出される蛍光と比較した、目的の分子の存在下で検出される蛍光の増大は、目的の分子による2つのタンパク質の相互作用の誘導または安定化を表す。
【0313】
一実施形態では、「蛍光の減少または増大」は、蛍光強度の減少または増大を表す。
【0314】
一実施形態では、本発明のアッセイは、目的のシグナリング経路の活性化または不活性化に依存する2つのタンパク質の相互作用を用いて、目的のシグナリング経路を評価するためのものである。
【0315】
一実施形態では、本発明のアッセイは、シグナリング経路の活性化を検出するためのものである。よって、一実施形態では、2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光の変化の検出は、目的のシグナリング経路の活性化を表す。
【0316】
一実施形態では、本発明のアッセイは、シグナリング経路の不活性化を検出するためのものである。よって、一実施形態では、2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光の変化の検出は、目的のシグナリング経路の不活性化を表す。
【0317】
一実施形態では、「蛍光の変化」は、蛍光強度の減少または増加を意味する。
【0318】
一実施形態では、本発明のアッセイは、シグナリング経路の調節を検出するためのものである。一実施形態では、本発明のアッセイは、目的のシグナリング経路を調節する目的の分子の能力を評価するためのものである。一実施形態では、本発明のアッセイは、目的のシグナリングアッセイを活性化または不活性化する目的の分子の能力を評価するためのものである。
【0319】
よって、一実施形態では、本発明のアッセイは、
サンプルを目的の分子と接触させるステップと、
上記目的の分子の存在下での2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップと、
目的の分子の非存在下および存在下で検出された2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を比較するステップ、
を含み、
それにより2つのタンパク質の相互作用に依存する目的のシグナリング経路に及ぼす上記目的の分子の作用を評価する。
【0320】
本発明はまた、細胞または細胞集団における2つのタンパク質間の相互作用の検出に依存するアッセイであって、
細胞または細胞集団中で、本明細書中上述される第1のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントでタグ付けされた第1のタグ付けされたタンパク質を発現させるステップと、
細胞または細胞集団中で、本明細書中上述される第2のPYPフラグメントまたは本明細書中上述されるそのトランケートされたフラグメントでタグ付けされた第2のタグ付けされたタンパク質を発現させるステップと、
上記細胞または細胞集団を蛍光発生HBR類縁体と接触させるステップと、
細胞または細胞集団中で2つのタグ付けされたタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出するステップ、
を含み、
それにより2つのタグ付けされたタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合を介して、細胞または細胞集団に存在する2つのタグ付けされたタンパク質の相互作用を検出する、アッセイに関する。
【0321】
一実施形態では、本発明のアッセイは、目的の分析物の細胞または細胞集団中の存在に依存する2つのタンパク質の相互作用を用いて、細胞または細胞集団中の目的の分析物の存在を評価するためのものである。
【0322】
よって、一実施形態では、細胞または細胞集団中の2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出することは、細胞または細胞集団中の目的の分析物の存在を表す。
【0323】
一実施形態では、本発明のアッセイは、細胞または細胞集団中のカルシウム濃度の変化を検出するためのものである。
【0324】
一実施形態では、本発明のアッセイは、細胞または細胞集団中の目的のシグナリング経路の活性化または不活性化に依存する2つのタンパク質の相互作用を用いて、細胞または細胞集団中の目的のシグナリング経路を評価するためのものである。
【0325】
よって、一実施形態では、細胞または細胞集団中の2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出することは、細胞または細胞集団中の目的のシグナリング経路の活性化または不活性化を表す。
【0326】
一実施形態では、本発明のアッセイは、細胞または細胞集団中のマイトジェン活性化プロテインキナーゼの調節を検出するためのものである。
【0327】
一実施形態では、本発明のアッセイは、細胞または細胞集団の目的の生理的な機構に依存する2つのタンパク質の相互作用を用いて、細胞または細胞集団の目的の生理的機構を評価するためのものである。
【0328】
よって、一実施形態では、細胞または細胞集団中の2つのタンパク質の相互作用時に再構成される、機能的なPYPまたはその機能的なトランケートされたフラグメントへの蛍光発生HBR類縁体の結合からもたらされる蛍光を検出することは、細胞または細胞集団の目的の生理的機構の活性化または不活性化を表す。
【0329】
一実施形態では、本発明のアッセイは、たとえば細胞または細胞集団中のカスパーゼ-3の活性化の検出を介して、細胞または細胞集団中のアポトーシスを検出するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0330】
【
図1】
図1A~Bは、本発明の蛍光相補体化系の作用の原理(
図1A)および設計(
図1B)の概略図である。NおよびCは、それぞれ、相互作用でき、よってフルオロゲンを可逆的に結合しその蛍光をオンにできる機能的なPYPを再構成できる、本発明に係る第1および第2のPYPフラグメントを表す;XおよびYは、潜在的に相互作用する目的のタンパク質を表し、それにPYPフラグメントが融合される。FASTは、配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるPYPに対応する。NFASTは、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる本発明に係る第1のPYPフラグメントに対応する。CFAST11は、配列番号34に記載のアミノ酸配列からなる本発明に係る第2のPYPフラグメントに対応する。CFAST10は、配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる本発明に係る第2のPYPフラグメントに対応する。Split-FASTは、再構成された機能的なPYP、すなわち、2つのFASTフラグメント、NFASTとCFAST11またはCFAST10のいずれかの相補体化からもたらされる、FASTに対応する。
【
図2】
図2A~Cは、FASTまたはsplit-FASTのいずれかと、蛍光発生HBR類縁体とから形成される複合体:FAST:HMBR(
図2A)、splitFAST11:HMBR(
図2B)、およびsplitFAST10:HMBR(
図2C)の正規化された励起スペクトルおよび発光スペクトルを示すグラフのセットである。split-FAST11は、NFASTとCFAST11の相補体化に由来し;split-FAST1は、NFASTとCFAST10の相補体化に由来する。
【
図3】
図3A~Dは、蛍光発生HBR類縁体の非存在下または存在下で示された融合タンパク質:HMBR:E3-CFAST(65-125)+NFAST(1-64)-K3(
図3A)、E3-CFAST(115-125)+NFAST(1-114)-K3(
図3B)、K3-NFAST(1-64)+CFAST(65-125)-E3(
図3C)、およびK3-NFAST(1-114)+CFAST(115-125)-E3(
図3D)を発現する大腸菌細胞のフローサイトメトリー分析を示すグラフのセットである。K3およびE3は、高親和性で相互作用する2つのタンパク質である。
【
図4】
図4A~Dは、使用されるC末端側のフラグメントCFASTn(n=11、10、または9)およびN末端側のフラグメントの機能において示された異なる蛍光発生HBR類縁体(
図4A:HMBR、
図4B:HBR-3,5DM、
図4C:HBR-3OM、および
図4D:HBR-3,5DOM)での様々なsplit-FASTの相対的な細胞内(in-cell)輝度を示すヒストグラムのセットである。iFAST標識は、iFAST由来のNFAST(すなわち、配列番号30に記載のバリンの代わりに107位にイソロイシンを有するアミノ酸配列NFASTからなる本発明に係る第1のPYPフラグメント)が使用される場合を表す。存在しない場合、FAST由来のNFAST(すなわち、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる本発明に係る第1のPYPフラグメント)が使用された。CFAST11、CFAST10およびCFAST9は、それぞれ、配列番号34、配列番号42、および配列番号43に記載のアミノ酸配列からなる本発明に係る第2のPYPフラグメントに対応する。NFASTフラグメントは、FRBに融合され、CFASTフラグメントは、FKBPに融合された。相補体化は、ラパマイシンの添加により誘導された。Split-FASTの蛍光は、同時発現した蛍光タンパク質の蛍光を使用して発現レベルにより正規化された。
【
図5-1】
図5A~Gは、本発明の相補体化系でのラパマイシン誘導性FRB-FKBP二量体形成の検出を示す。
図5A~Bは、5μMのHMBR(
図5A)または10μMのHBR-3,5DOM(
図5B)で標識し、100nMのラパマイシンの添加の前後にイメージングしたFKBP-NFASTおよびFRB-CFASTn(n=10または11)を共発現するHEK293T細胞を示す。スケールバー 10μM。
図5Cは、FKBP-FRBの結合の後の蛍光倍数の増加を示す(平均値±sem、n=84、83、107、112個の細胞、それぞれ3~4回の実験に由来)。
図5Dは、FKBP-NFASTおよびFRB-CFAST11を共発現するHMBRで処置した細胞中のラパマイシン添加後の蛍光強度の経時的な展開(evolution)を示す(n=11個の細胞)。
図5Eは、共焦点顕微鏡によるイメージング時のFAST、split-FAST11(NFASTおよびCFAST11の相補体化からもたらされる)およびsplit-FAST10(NFASTおよびCFAST10の相補体化からもたらされる)を発現するHMBRで標識したHEK293細胞の細胞蛍光の展開を示す。FRB-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=10または11)を発現する細胞を、ラパマイシンで処置して、split-FAST11およびsplit-FAST10を形成した。FASTを発現する細胞を、対照として使用した。HMBRの濃度は、10μMであった。488nm、6.3kW/cm
2での励起。条件あたり6個の細胞を分析した。
図5Fは、100nMのラパマイシンの添加時の(5μMのHMBRで標識した)FKBP-NFASTおよびFRB-CFASTn(n=10または11)を共発現する代表的なHEK293細胞の選択された低速度撮影のフレームを示す。
図5Gは、100nMのラパマイシンの添加時の(10μMのHBR-3,5DOMで標識した)FKBP-NFASTおよびFRB-CFAST11を共時発現する代表的なHEK293細胞の選択されたフレームを示す。スケールバー 20μM。
【
図6-1】
図6A~Fは、本発明の相補体化系でのAP1510誘導性FKBPホモダイマーのラパマイシン誘導性の解離の検出を示す。
図6A~Bは、5μMのHMBR(
図6A)または10μMのHBR-3,5DOM(
図6B)で標識し1μMのラパマイシンの添加の前後にイメージングした、FKBP-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=10または11)を共発現するAP1510で処置したHEK293T細胞を示す。スケールバー 10μM。
図6Cは、FKBP-FKBPの解離時の蛍光倍数の減少を示す(平均値±sem、n=142、175、219、125個の細胞、それぞれ3~4回の実験由来)。
図6Dは、FKBP-NFASTおよびFKBP-CFAST11を共発現するHMBRで標識し、AP1510で処置した細胞(n=8個の細胞)中のラパマイシン添加後の蛍光強度の経時的な展開を示す。
図6Eは、1μMのラパマイシンの添加時のFKBP-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=10または11)を共発現するAP1510で処置した代表的なHEK293細胞(5μMのHMBRで標識した)の選択された低速度撮影のフレームを示す。
図6Fは、1μMのラパマイシンの添加時のFKBP-NFASTおよびFKBP-CFAST11を共発現するAP1510で処置した代表的なHEK293細胞(10μMのHBR-3,5DOMで標識した)の選択された低速度撮影のフレームを示す。スケールバー 20μM。
【
図7-1】
図7A~Dは、本発明の相補体化系でのFKBP-FKBPホモダイマーの二量体形成および上記FKBP-FKBPホモダイマーの解離の検出を示す。
図7Aは、最初に100nMのAP1510で160分間処置し、次にAP1510を除去し、1μMのラパマイシンを添加した、FKBP-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=11または10)を共発現するHMBRで標識した細胞を示す。選択したフレームが示される。スケールバー:30μM。
図7Bは、AP1510、次にラパマイシンでのFKBP-NFASTおよびFKBP-CFAST11を共発現するHMBRで標識した細胞(n=8個の細胞)の順次の処置時の蛍光強度の経時的な展開を示す。
図7C~Dは、最初に100nMのAP1510で160分間(結合期)、次にAP1510を除去し、1μMのラパマイシンを添加した(解離期)、FKBP-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=11(
図7C)またはn=10(
図7D))を共発現するHMBRで標識した細胞を示す。選択したフレームが示される。スケールバー 30μM。
【
図8】
図8A~Bは、本発明の相補体化系での膜タンパク質と細胞質タンパク質の間の相互作用の検出を示す。
図8Aは、5μMのHMBRで標識し、100nMのラパマイシンの添加の前後にイメージングした、Lyn11-FRB-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=10または11)を共発現するHEK293細胞を示す。スケールバー 10μM。
図8Bは、Lyn11-FRB-NFASTおよびFKBP-CFAST11を共発現するHMBRで処置した細胞中のラパマイシン添加後の蛍光強度の経時的な展開を示す。
【
図9-1】
図9A~Dは、K Ras/Raf1(
図9A)、MEK1/ERK2(
図9B)とERK2/MKP1(
図9C)の相互作用をイメージングするためのsplit-FASTの使用を示す画像のセットである。示されたコンストラクトを共発現する細胞の代表的な画像は、10μMのHMBRの存在下でイメージングされた。スケールバー 20μM。
図9Dは、K-Ras/Raf1、MEK1/ERK2、およびERK2/MKP1の相互作用をイメージングするためのsplit-FASTの使用に関連する対照を示す。示されたコンストラクトを共発現する代表的な細胞は、10μMのHMBRの存在下でイメージングされた。陽性対照および陰性対照が示される。スケールバー 10μM。Split-FASTは、再構成された機能的なPYP、すなわち、2つのフラグメント、NFASTおよびCFAST10の相補体化からもたらされるFASTに対応する。
【
図10】
図10A~Bは、EGFで刺激時のMEK1/ERK2の相互作用の展開をイメージングするためのsplit-FASTの使用を示す。MEK1 NFASTおよびmCherry-ERK2-CFAST10を共発現するHMBRで標識したHela細胞を、EGFでの刺激の後にイメージングした。
図10Aは、実験の設計を表す。NおよびCは、それぞれ、相互作用でき、よってフルオロゲンを可逆的に結合しその蛍光をオンにできる機能的なPYPを再構成できる、本発明に係る第1および第2のPYPフラグメントを表す。
図10Bは、split-FASTの蛍光、細胞質のmCherryの蛍光、および核のmCherryの蛍光の強度(平均値±sem、n=6個の細胞、5回の実験)の経時的な展開を示す。データは、参照としてmCherry-ERK2-CFAST10の核の移入の開始を使用して同期された。
【
図11】
図11A~Bは、カルモジュリン(CaM)およびCa
2+-CaMと相互作用するペプチドM13のCa
2+依存的相互作用のイメージングのためのsplit-FASTの使用を示す。
図11Aは、実験設計を表す。NおよびCは、相互作用でき、よってフルオロゲンを可逆的に結合しその蛍光をオンにできる機能的なPYPを再構成できる、本発明に係る第1および第2のPYPフラグメント(それぞれNFASTおよびCFAST10)を表す。センサーは、M13-NFASTおよびCFAST10-CaMから構成される。
図11Bは、ヒスタミンで処置した(ヒスタミンの添加は矢印により示される)代表的なHMBRで処置したHeLa細胞(n=2つの実験からの14個の細胞)の細胞内蛍光強度の経時的な展開を示す。
【
図12】
図12A~Bは、カスパーゼ-3の活性を検出するためのsplit-FASTの使用を示す。
図12Aは、実験設計を表す。NおよびCは、相互作用でき、よってフルオロゲンを可逆的に結合しその蛍光をオンにできる機能的なPYPを再構成できる、本発明に係る第1および第2のPYPフラグメント(それぞれNFASTおよびCFAST10)を表す。センサーは、bFos-CFAST11およびbJun-NFAST-NLS3-DEVDG-mCherry-NESからなる。
図12Bは、HMBRで処置した細胞(n=9個の細胞)中のスタウロスポリンでの処置後の核のsplit-FASTの蛍光強度の経時的な展開を示す。
【
図13-1】
図13A~Iは、FRBおよびFKBPのラパマイシン誘導性二量体形成を検出するためのFASTのPYPフラグメントまたはFASTのオルソログを含む相補体化系の使用を示すグラフの組み合わせである。本発明に係る異なる相補体化系のN末端側のPYPフラグメント(すなわち本発明の第1のPYPフラグメント)に融合されたFRBおよびC末端側のPYPフラグメント(すなわち本発明の第2のPYPフラグメント)に融合されたFKBPを発現するヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、以下の濃度:0、1、5、10、25、50μMのフルオロゲンHMBRとインキュベートした。細胞の蛍光を、フローサイトメトリーにより500nMのラパマイシンの非存在下および存在下で分析した。これらのグラフは、ラパマイシンの存在下および非存在下にて表記のHMBR濃度で、split-FAST(CFAST11を含む)(
図13A)、split-FAST(CFAST10を含む)(
図13B)、split-iFAST(
図13C)、Halomonas boliviensis LC1 PYP由来のO
1-splitFAST(
図13D)、Halomonas種 GFAJ-1 PYP由来のO
2 splitFAST(
図13E)、Rheinheimera種 A13L PYP由来のO
3-splitFAST(
図13F)、Idiomarina loihiensis PYP由来のO4-splitFAS(
図13G)、Thiorhodospira sibirica ATCC 700588 PYP由来のO
5-splitFAST(
図13H)、およびRhodothalassium salexigens PYP由来のO
6-splitFASTの平均蛍光を示す。
【実施例】
【0331】
本発明をさらに、以下の実施例により示す。
【0332】
材料および方法
クローニングに使用した合成オリゴヌクレオチドを、Sigma AldrichまたはIntegrated DNA Technologyから購入した。この試験で使用したオリゴヌクレオチドの配列を、表1に提供する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、提供されたバッファー中でQ5ポリメラーゼにより行った。PCR産物を、QIAquick PCR purification kit(Qiagen)を使用して精製した。制限酵素の消化の産物を、調製ゲル電気泳動(preparative gel electrophまたはesis)、次いでQIAquick gel extraction kit(Qiagen)により精製した。制限エンドヌクレアーゼ、T4リガーゼ、Phusionポリメラーゼ、Taqリガーゼ、およびTaqエキソヌクレアーゼを、New England Biolabsから購入し、製造社のプロトコルによりそれらに付随するバッファーと共に使用した。等温アセンブリ(Gibsonアセンブリ)を、Gibson et al., Nat. Meth. 6, 343-345 (2009)により調製された手製の混合物を使用して行った。プラスミドDNAの小規模の単離を、2mLの一晩の培養物からQIAprep miniprep kit(Qiagen)を使用して行った。プラスミドDNAの大規模な分離を、150mLの一晩の培養物からQIAprep maxiprep kit(Qiagen)を使用して行った。全てのプラスミド配列を、適切なシーケンシングプライマー(GATC-Biotech)を用いてサンガーシーケンシングにより確認した。表2は、この試験で使用したプラスミドを列挙する。CFAST11-8に対応するペプチドを、98%の純度でClinisciencesから購入し、N末端およびC末端でアセチル化およびアミド化した。ラパマイシンを、Sigma Aldrichから購入し、3mMの濃度へとDMSOに溶解した。AP1510を、Clontechから購入し、0.5mMの濃度へとエタールに溶解した。ヒト組み換えEGFを、Sigma Aldrichから購入し、100μg/mLの濃度への0.1%のBSAに溶解した。スタウロスポリンを、Cell Signaling Technologiesから購入し、1mMの濃度へとエタノールに溶解した。HMBR(4-ヒドロキシ-3-メチルベンジリデンロダニン)およびHBR-3,5DOM(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンジリデン ロダニン)は、参照名TFLimeおよびTFCoral(thetwinklefactory.com)の下でThe Twinkle Factoryにより提供された。
【0333】
【0334】
【0335】
分子のクローニング
細菌の発現プラスミド
プラスミドpAG209を、制限酵素Nhe IおよびXho Iを使用して、NFASTをコードする遺伝子(プライマーag126およびag216を使用して増幅)をプラスミドpET28aに挿入することにより得た。
【0336】
哺乳類での発現のためのFRB-FKBP融合タンパク質
全般的に、融合タンパク質は、PCRアセンブリにより構築され、2つのタンパク質の間に11アミノ酸のリンカー、SGGGGSGGGGS(配列番号45)を含む。プラスミドpAG148を、FRB-NFASTをコードする遺伝子(FRB-NFASTをコードする配列は、プライマーag181/ag182およびag175/ag176で増幅したmTORのFKBP-ラパマイシン結合ドメイン(FRB)およびNFASTをコードする配列から、PCRによりアセンブリされた)をプラスミドpAG1042中に、制限酵素Bgl IIおよびNot Iを使用して挿入することによりアセンブリした。プラスミドpAG149を、FKBP-NFASTをコードする遺伝子(FKBP-NFASTをコードする配列は、プライマーag183/ag184およびag175/ag176で増幅したFK56結合タンパク質(FKBP)およびNFASTをコードする配列からPCRによりアセンブリされた)をプラスミドpAG104中に、制限酵素Bgl IIおよびNot Iを使用して挿入することにより作製した。プラスミドpAG152を、FRB-CFAST11をコードする遺伝子(Eurofins Genomicsにより合成された)をpAG104中に、制限酵素Bgl IIおよびNot Iを使用して挿入することにより入手した。プラスミドpAG153を、FKBPをコードする遺伝子(プライマーag183およびag184を使用して増幅された)をpAG152中に、制限酵素Bgl IIおよびBspE Iを使用して挿入することにより作製した。
【0337】
プラスミドpAG241を、プライマーag345/ag313およびag347/ag314でのプラスミドpAG153の増幅により得た2つのフラグメントのギブソンアセンブリにより構築した。プラスミドpAG336を、プライマーag468/313およびag469/314でのプラスミドpAG148の増幅により得た2つのフラグメントのギブソンアセンブリによりクローニングした。細胞におけるsplit-FASTの光安定性を決定するために、FRB-NFAST-P2A-mCherryをコードするプラスミドpAG439を、pAG104(プライマーおよびag347およびag314を使用して増幅)のプラスミド骨格とアセンブリしたFRB-NFAST(プライマーag308およびag313でpAG148から増幅)およびmCherry(ag412およびag550でpAG962から増幅)の配列のギブソンアセンブリにより作製した。FKBP-CFAST10-IRES-mCherryをコードする配列を、プラスミドpAG241(ag700およびag313を使用して増幅)、mCherry(ag701およびag314を使用して増幅)、およびプラスミドpIRESから(プライマーag694およびag695を使用して)増幅したIRES配列から、ギブソンアセンブリを介してクローニングした。FRB-NFAST-IRES-mTurquoise2をコードするプラスミドpAG490を、プラスミドpAG148(ag697およびag313を使用して増幅)、プラスミドpIRESから(ag694およびag695を使用して)増幅したIRES配列、およびmTurquoise2をコードするg-block(IDT)からクローニングした。lyn11-FRB-NFAST-IRES-mTurquoise2をコードするプラスミドpAG491を、プラスミドpAG336(ag697およびag313を使用して増幅)、プラスミドpIRESから(ag694およびag695を使用して)増幅したIRES配列、およびmTurquoise2をコードするg-block(IDT)からクローニングした。
【0338】
シグナリング経路のプラスミド
NFAST-MKP1コードする遺伝子(MKP1 GenBank accession number:NM_004417.3)、NFAST-KRasコードする遺伝子(K-Ras GenBank accession number:NM_004985.4)、およびCFAST10-Raf1-mCherryコードする遺伝子(Raf1 GenBank accession number:NM_001354689.1)は、Eurofins genomicsにより合成された。プラスミドpAG301、pAG341およびpAG340を、NFAST-MKP1(ag357/ag412を使用して増幅)、NFAST-KRas(ag357/ag475を使用して増幅)、およびCFAST10-Raf1-mCherry(ag474/ag412を使用して増幅)、ならびにプライマーag311/ag314およびag358/ag313を使用して2つのフラグメントで増幅したpAG104の骨格の配列のギブソンアセンブリを介して作製した。MEK1コードする遺伝子、ERK2コードする遺伝子、およびmCherryをコードする遺伝子を、それぞれプライマーag418/419、ag416/417、およびag414/415を使用して増幅し、NFAST(プライマー374/313で増幅)およびCFAST10(プライマー413/314で増幅)の対応するフラグメントでギブソンアセンブリを介してアセンブリして、それぞれNFAST-MEK1およびmCherry-ERK2-CFAST10をコードするプラスミドpAG298およびpAG296を作製した。プラスミドpAG492、pAG493、およびpAG494を、シグナリング経路のパートナーpAG298、pAG301、pAG341(プライマー697/313、696/314、699/313、698/313で増幅)をコードするプラスミド、IRES配列(ag694およびag695を使用してプラスミドpIRESから増幅)、およびmTurquoise2をコードするg-block(IDT)からギブソンアセンブリにより構築した。
【0339】
センサーの作製
プラスミドpAG334を、コードされたM13を伴うプライマーag455/ag456を使用してNFASTを増幅し、プライマーag313/ag314でpAG148の骨格を増幅することによるギブソンアセンブリによりプラスミドpAG148から作製した。プラスミドpAG335を、プライマーag465およびag466を使用するカルモジュリンの増幅によるギブソンアセンブリにより作製し、プライマーag467およびag313でCFAST10を増幅し、ag311およびag314で増幅したプラスミドとアセンブリすることによりプラスミドpAG144に挿入した。bJun-NFASTをコードする遺伝子(bJun GenBank accession number:NM_021835.3)およびbFos-CFAST11をコードする遺伝子(bFos GenBank accession number:M34001.1)を、Eurofins genomicsにより合成した。プラスミドpAG384を、bFos-CFAST11をコードする遺伝子(プライマーag541/542を使用して)、およびpAG104の骨格(プライマーag358/ag313およびag347/314を使用して)の増幅によるギブソンアセンブリによりクローニングした。プラスミドpAG385を、プライマーag543/544を使用してbJun-NFASTをコードする遺伝子を増幅し、次に、ag545/546で増幅したmCherry、NLSx3のためのプライマーag535、ならびにプライマーag358/313およびag539/ag314を使用して増幅したpAG104の骨格とのギブソンアセンブリを行うことにより作製した。
【0340】
タンパク質の発現および精製
発現ベクターを、Rosetta(DE3)pLysS E. coli(New Englおよび Biolabs)で形質転換した。細胞を、50μg/mLのカナマイシンおよび34μg/mLのクロラムフェニコールを補充したLB培地において37℃で、OD600nm 0.6に増殖させた。発現を、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を、1mMの最終濃度に添加することにより、4時間誘導した。細胞を、遠心分離(4,000×g、4℃、20分間)により回収し、凍結した。細胞のペレットを、溶解バッファー(リン酸塩バッファー50mM、NaCl 150mM、MgCl2 2.5mM、プロテアーゼ阻害剤、DNase、pH7.4)に再懸濁し、超音波処理した(20分間、20%の振幅、3秒間オン、1秒間オフ)。ライセートを、4℃で2時間インキュベートし、DNaseによりDNA消化させた。細胞フラグメントを、遠心分離(9200×g、4℃で1時間)により除去した。この上清を、10mMのイミダゾールを補充したリン酸緩衝食塩水(PBS)(リン酸ナトリウム50mM、NaCl 150mM、pH7.4)中でNi-NTAアガロースビーズと共にゆっくりと撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。ビーズを、20mMのイミダゾールを含む20容量のPBS、および40mMのイミダゾールを補充した5容量のPBSで洗浄した。ヒスタグ付けしたタンパク質を、0.5mMのイミダゾールを補充した5容量のPBSで溶出した。バッファーを、PD-10脱塩カラムを使用してPBS(50mMのリン酸塩、150mMのNaCl、pH7.4)に交換した。
【0341】
物理化学的な測定
定常状態のUV-Visの吸収スペクトルを、Versa20 Peltier-based temperature-controlled cuvette chamber(Quantum Northwest)を搭載したCary 300 UV-Vis分光計(Agilent Technologies)を使用して記録し、蛍光データを、TLC50TM Legacy/PTI Peltier-based temperature-controlled cuvette chamber(Quantum Northwest)を搭載したLPS 220分光蛍光光度計(PTI, Monmouth Junction, NJ)を使用して記録した。
【0342】
NFAST:CFASTn(n=8~11)の結合体(couples)の熱力学的な解離定数を、CFASTn(n=8~11)および組み換え技術により精製したNFASTのために合成したペプチドを使用して決定した。10μMのHMBRの存在下でのNFAST:CFAST11の親和性を、NFASTの最低3つの異なる精製物から別々に決定した。NFAST:CFAST11を次に、他のNFAST-CFASTの組み合わせの決定のための内部対照として並行して実験を行い、これらを全てNASTの同じ調製で同日に行った。熱力学的な解離定数を、Spark 10M plate reader(Tecan)で決定し、1部位に特異的な結合モデルにPrism 6で適合させた。
【0343】
哺乳類細胞の培養
HEK293T細胞を、フェノールレッド、Glutamax I、および10(vol/vol)%のウシ胎仔血清(FCS)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、37℃、5%のCO2雰囲気で培養した。HeLa細胞を、フェノールレッド、1×の非必須アミノ酸、1×のピルビン酸ナトリウム、および10(vol/vol)%のウシ胎仔血清(FCS)を補充した変法イーグル培地(MEM)中で、37℃、5%のCO2雰囲気で培養した。イメージングのため、細胞を、ポリ-L-リジンでコーティングしたμDish IBIDI(Biovalley)に播種した。細胞を、イメージングの前に24時間、製造社のプロトコルに従いGenejuice(Merck)またはLipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して一時的にトランスフェクトした。
【0344】
蛍光顕微鏡
共焦点の顕微鏡写真を、Plan Apochromat 63×/1.4 NA oil DIC M27液浸対物レンズ、温められた試料台、ならびに温度およびCO2の制御のためのXL-LSM 710 S1インキュベーションチャンバーを搭載したZeiss LSM 710 Laser Scanning Microscopeで取得した。画像を、Zenソフトウェアを使用して獲得し、Fiji(ImageJ)で処理した。
【0345】
HMBRに関する光退色の測定を、488nmの励起の10μMのフルオロゲンで行った(4.6kW/cm2、1.27 μsec pixel dwell);FASTを、対照として使用した。サンプルを、第2の周波数あたり1つのフレームで、100枚の画像で連続的にイメージングした。
【0346】
FRBとFKBPの間のラパマイシン介在性相互作用をイメージングするために、5μMのHMBRまたは10μMのHBR-3,5DOMを補充したフェノールレッドを含まないDMEM中で細胞を、イメージングした。タイル画像(Tile image)を、ラパマイシン添加の前に撮影した。フルオロゲン含有DMEM中で調製したラパマイシンの溶液を、フルオロゲンの濃度を一定に維持するために添加して、100nMの最終的なラパマイシン濃度を得、画像を、毎分撮影した。最終的なタイル画像を、蛍光飽和の後に撮影した。
【0347】
AP1510が介在する相互作用をイメージングするために、AP1510を、イメージング前に2時間細胞に、100nMの最終濃度に添加した。細胞をすすぎ、培地を、5μMのHMBRまたは10μMのHBR-3,5DOMを補充したフェノールレッドを含まないDMEMと交換した。タイル画像を、ラパマイシン添加前に撮影した。(フルオロゲンの濃度を一定に維持するためにフルオロゲンを補充したDMEM中で調製した)ラパマイシンの溶液を添加し、1μMの最終的なラパマイシン濃度を得、画像を30秒ごとに撮影した。最終的なタイル画像を、蛍光の変化が止まった後に撮影した。
【0348】
同じサンプル中のFKBP-FKBPの結合および解離をイメージングするために、optiMEM(Gibco)に5μMのHMBRを補充し、AP1510をイメージングの開始の直前に100nMの最終的な濃度に添加した。細胞を、実験期間にわたり37℃および5%のCO2で維持した。画像を、蛍光シグナルが飽和するまで5分ごとに撮影した。獲得を次いで休止し、サンプルを、1×DPBS(フルオロゲンの濃度を一定に維持するためにHMBRを補充した)で洗浄し、イメージング溶液を、交換した。獲得頻度を、1分あたり2つの画像に減らし、7~10枚の画像を、獲得した後、optiMEM(フルオロゲン濃度を一定に維持するためにHMBRを補充)中で調製したラパマイシンの溶液を添加して、1μMの最終的なラパマイシンの濃度を得た。
【0349】
Raf-MEK-ERK経路における相互作用をイメージングするために、細胞を、トランスフェクションの後のイメージング前に24時間、血清飢餓させた。細胞を、10μMのHMBRを補充したフェノールレッドを含まないDMEM中でイメージングした。経時変化の実験では、経路を、200ng/mLの最終的な濃度に添加された精製されたEGFを使用して活性化した。
【0350】
カルシウムイメージングを、5μMのHMBRを補充したHHBSS(HEPES-Buffered Hanks Balanced Salt Solution)中で行った。カルシウム振動を、HHBSS(フルオロゲン濃度を一定に維持するためにHMBRを補充した)中の50μMのヒスタミンを使用して誘発し、画像を、500msごとに獲得した。
【0351】
カスパーゼ活性をイメージングするために、細胞を、5μMのHMBRを補充したoptiMEM中で、37℃にて、5%のCO2でイメージングした、獲得開始の直前に、スタウロスポリンを、2μMの最終濃度に添加した。画像を、3時間にわたり5分ごとに獲得した。
【0352】
複合体の細胞内輝度に及ぼすCFASTの長さの影響
HEK293T細胞を、ibidi μDish顕微鏡ディッシュに播種し、イメージングの24時間前に、CMV-FRB-NFAST(またはNFAST(V107I))-P2A-mCherry(またはEGFP))およびCMV-FKBP-CFASTn(n=11、10、または9)をコードするプラスミドと共トランスフェクトした。細胞を、500nMのラパマイシンの添加の前後にイメージングした。
【0353】
大腸菌における分裂した部位の効率の評価
de novoで設計したペプチドIAAL-E3およびIAAL-K3は、70nMの親和性で構成的に相互作用する逆平行αヘリックスのコイルドコイルを形成する。相互作用する系を、大腸菌での同時発現のための2つのT7プロモーターによりバイシストロニックベクター中で発現した。IAAL-E3-CFAST(65-125)-T7p-NFAST(1-64)-IAAL-K3、IAAL-K3_NFAST(1-64)-T7p-CFAST(65-125)-IAAL-E3、IAAL-E3-CFAST(115-125)-T7p-NFAST(1-114)-IAAL-K3、IAAL-K3_NFAST(1-114)-T7p-CFAST(115-125)-IAAL-E3をコードする遺伝子を、購入し(Eurofins genomics)、制限酵素Nco IおよびXho Iを使用してプラスミドpET28a中に挿入した。
【0354】
結果的に得られるプラスミドを、大腸菌のBL21 Rosetta細胞中に形質転換した。一晩の前培養物を、5mLの培養物中に使用し、それを次に、OD約0.6に増殖させ、1mMのIPTGで2時間誘導した。1.5mLの培養物をペレット化してから1X PBS+BSA(1g/L)で洗浄したものを用いて、サイトメトリーのサンプルを調製した。サンプルを次に、HMBRを含む1.5mLのPBS+BSAに再懸濁し、50,000のイベントを、BD Accuri c6血球計算器で分析した。
【0355】
実施例1:split-FASTの蛍光相補体化系の形成
相補体化系のsplit-FAST(
図1A)を、様々なスペクトルの性質を呈する蛍光発生ヒドロキシベンジリデンロダニン(HBR)類縁体を特異的かつ可逆的に結合する、14kDaの小さなタンパク質である、PYPに由来するFAST(Fluorescence-Activating and absorption Shifting Tag-アミノ酸配列 配列番号9)から設計した。蛍光発生HBR類縁体は、溶液中では弱く蛍光するが、FASTの結合キャビティに固定された場合、強力に蛍光する。この設計は、アミノ酸114および115の間の2つのフラグメントでのFASTの分裂に基づく(
図1B)。2つのフラグメント1~114(本明細書中以下でNFASTと呼ばれる-配列番号23)および115~125(本明細書中以下でCFAST11と呼ばれる-配列番号34)は、HMBR(緑色-黄色の蛍光を提供する)またはHBR-3,5DOM(橙色-赤色の蛍光を提供する)の存在下で中程度の親和性を示した。2つのフラグメントの見かけの親和性は、CFAST11のC末端で残基を連続して除去することによりさらに減少され得、CFAST10-配列番号42;CFAST9-配列番号43およびCFAST8、配列番号44をもたらす(表3)。
【0356】
【0357】
図2に示されるように、(NFASTおよびCFAST11(
図2B)、ならびにNFASTおよびCFAST10(
図2C)の相補体化からもたらされる)相補体化されたsplit-FAST:フルオロゲンアセンブリの励起スペクトルおよび発光スペクトルは、通常のFAST:フルオロゲン複合体のスペクトル(
図2A)と同一であった。
【0358】
図2の結果はよって、相補体化されると、本発明の相補体化系は、蛍光発生HBR類縁体の結合、上記結合による蛍光の誘導、および光物理学的な性質の観点から、完全長のFASTとして挙動することを示す。本発明の相補体化系はよって、機能的なPYP(たとえばsplit-FAST11)またはその機能的なトランケートされたフラグメント(たとえばsplit-FAST10)の再構成を可能にする。
【0359】
本発明の蛍光相補体化系の設計を、高い親和性で相互作用するタンパク質の対(すなわちE3およびK3)をPYP由来のFASTの異なるフラグメントに融合した際に大腸菌細胞で得た蛍光強度を比較することにより、検証した(
図3)。第1のPYPフラグメント、すなわちNFASTを、K3に融合し、第2のPYPフラグメント、すなわちCFASTを、E3に融合した。FASTは、アミノ酸114および115の間で2つのフラグメントに分裂され、結果的に得られるフラグメント FAST1-114(すなわちNFAST)およびFAST115-125(すなわちCFAST11)を、それぞれK3およびE3に融合した(NFAST-K3またはK3-NFAST、およびE3-CFASTまたはCFAST-E3のいずれか)。NFAST-K3およびE3-CFAST11(
図3B)またはK3-NFASTおよびCFAST11-E3(
図3D)のいずれかの組み合わせは、HMBRを含まずに得られた蛍光強度と比較して、HMBRの存在下での蛍光強度の増大をもたらした。対照的に、FADSTをアミノ酸64および65の間で2つのフラグメントに分裂し、かつ結果的に得られたフラグメントFAST1-64およびFAST65-125をK3またはE3に融合した場合、このような増大は、試験した組み合わせのいずれでも観察されなかった(
図3Aおよび3C)。
【0360】
別のN末端のフラグメントをまた、FASTのバリアント(改善したFASTまたはiFASTと呼ばれる-アミノ酸配列 配列番号16)を使用して開発した(ここで107位のバリンが、イソロイシンで置き換えられている)。異なる蛍光発生HBR類縁体を使用して、様々なsplit-FASTの相対的な細胞内輝度を、評価した(
図4)。
【0361】
図4に示されるように、試験した蛍光発生HBR類縁体のいずれか:HMBR(
図4A)、HBR-3,5DM(
図4B)、HBR-3OM(
図4C)およびHBR-3,5DOM(
図4D)で、観察された蛍光は、CFAST11で最も高く、CFAST10でそれよりも低く、CFAST9で最も低かった。2つのフラグメント間の低い親和性(上記の表3を参照)は、低い細胞内輝度と一致する。
【0362】
図4に示されるように、NFAST(配列番号23)およびCFASTを含む系で観察された蛍光は、対応するiFAST(配列番号30)およびCFASTのNterフラグメントを含む系で観察されるものと類似する。これらのデータはよって、本発明に係る相補体化系におけるiFASTの適合性を示している。
【0363】
実施例2:split-FASTは、動的かつ可逆的なタンパク質相互作用の特徴を可能にする。
哺乳類細胞(蛍光発生HBR類縁体で前処置した)においてタンパク質相互作用を検出するためのsplit-FASTの能力を試験するために、NFASTおよびCFASTn(n=10または11)をFK506結合タンパク質(FKBP)におよびmTORのFKBP-ラパマイシン結合ドメイン(FRB)に、それぞれ融合した。FKBPおよびFRBは、ラパマイシンの存在下で共に相互作用する。
【0364】
図5に示されるように、ラパマイシン誘導性FRB-FKBP二量体形成は、split-FASTの相互作用に依存する相補体化に一致して、大規模な蛍光の増大をもたらした。HMBRまたはHBR-3,5DOMのいずれかの使用は、同様の結果を提供し(
図5A~C)、split-FASTの色が添加されたフルオロゲンの性質を変えることにより調節され得ることを示す。
【0365】
ラパマイシン添加後の低速度撮影イメージングは、FRB-FKBPラパマイシン複合体の迅速な形成と一致して、数分以内に蛍光の飽和を示した(
図5D、F、およびG)。これらの結果はよって、split-FASTが、リアルタイムでタンパク質複合体の形成をモニタリングできることを示す。細胞中で、split-FAST:フルオロゲンアセンブリ(CFAST11またはCFAST10のいずれかを伴う)は、通常のFAST:フルオロゲンとして光安定性であることがさらに示された(
図5E)。
【0366】
AP1510誘導性FKBPホモダイマーを解離するラパマイシンの能力を使用して、split-FASTの可逆性を試験した。FKBP-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=10または11)を共発現する細胞を、AP1510と2時間インキュベートして、FKBPホモダイマーをあらかじめ形成し、HMBRで処置した。ラパマイシンの添加は、FKBPホモダイマーの解離と一致して、split-FAST:フルオロゲンの蛍光の顕著な喪失をもたらした(
図6A~C)。これらの結果はよって、split-FAST:フルオロゲンアセンブリが可逆性であることを示す。数分以内での蛍光の迅速な喪失が、ラパマイシン添加後に観察され、2つのタンパク質が解離した際のsplit-FASTの迅速な分解を示す(
図6D、E、およびF)。動的かつ可逆的なタンパク質の相互作用をイメージングするsplit-FASTの能力は、単一の実験において、最初にAP1510の添加後のFKBP-NFASTおよびFKBP-CFASTn(n=11または10)の結合、次いでAP1510の除去およびラパマイシンの添加によるFKBP-FKBPホモダイマーの解離をモニタリングすることにより、さらに示された(
図7A~D)。
【0367】
結論として、本明細書中で上に提示されたデータは、split-FASTが、目的のタンパク質の結合および解離の両方のリアルタイムのモニタリングを可能にする可逆的な相補体化系であることを示す。さらに、NFASTフラグメントおよびCFASTフラグメントは、低い親和性を特徴とし、限定された自己集合、よって低い非特異的な蛍光バックグラウンドをもたらす。
【0368】
実施例3:split-FASTは、膜タンパク質と細胞質タンパク質の間の相互作用の検出を可能にする。
多くのタンパク質の相互作用は細胞膜で起こるため、膜タンパク質と細胞質タンパク質の間の相互作用を検出するためのsplit-FASTの使用を次に試験した。FKBP-CFASTn(n=11または10)を、細胞質で、およびFRB-NFASTを、Lyn11膜固定配列(Lyn11-FRB-NFAST)を使用して細胞膜において発現させた。ラパマイシンの添加は、HMBRで処置した細胞中の細胞膜で蛍光性split-FAST:フルオロゲンアセンブリの迅速な形成をもたらし(
図8A~B)、リアルタイムで細胞膜でのタンパク質相互作用を検出するsplit-FASTの能力を示した。
【0369】
実施例4
split-FASTは、リアルタイムでシグナリング経路における動的なタンパク質相互作用の観察を可能にする。
split-FASTを次に、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナリング経路からの既知の生理的に関連するタンパク質相互作用により基準に従い評価した。NFASTを、増殖因子受容体の下流にある小さなGTPaseである、K-Rasに融合し、CFAST10を、K-Rasとの相互作用により膜に動員されることが知られている、Raf1のmCherry融合物に融合した。split-FAST:HMBRの蛍光は、K-Rasによる細胞膜でのRaf1の特異的な動員と一致して、mCherryの蛍光と共局在され、膜で濃縮された(
図9A)。次に、MAPキナーゼ キナーゼMEK1と、下流の細胞外シグナル制御タンパク質キナーゼERK2との間の相互作用(Raf/MEK/ERKシグナリング経路における中心的な相互作用の1つ)を、split-FASTを使用して評価した。MEK1をNFASTに融合し(MEK1-NFAST)、ERK2のmCherry融合物をCFAST10に融合した(mCherry-ERK2-CFAST10)場合、特異的な細胞質のsplit-FAST:HMBR蛍光が、細胞質中にMEK1を固定するERK2と一致して観察された(
図9B)。最終的に、split-FASTは、ERK2とMKP1(DUSP1)の間の核の相互作用を検出することを可能にし、これは、その活性化およびその後の核への転位の後のERK2の不活性化に寄与する核に局在するホスファターゼである(
図9C)。K-Ras/Raf1、MEK1/ERK2、およびERK2/MKP1の相互作用をイメージングするためのsplit-FASTの使用に関連する対照は、
図9Dに示される。
【0370】
動的なタンパク質相互作用を試験するためのsplit-FASTの適用性を探索するために、MAPKシグナリング経路の活性化時のMEK1とERK2の間の相互作用を経過観察した。細胞の刺激時に、MEK1はERK2をリン酸化し、それはMEK1から離れ、核に転位し、ここでそれは転写因子の活性を制御する。核ホスファターゼによる脱リン酸化は、ERK2を不活性化し、これを細胞質に戻す。MEK1-NFASTおよびmCherry-ERK2-CFAST10を発現する残りのHMBRで処置した細胞において、mCherryおよびsplit-FAST:HMBRの蛍光は、細胞質中でMEK1を固定するERK2と一致して、細胞質であった。上皮増殖因子(EGF)での細胞刺激時に、mCherry-ERK2-CFAST10は、split-FAST:HMBR蛍光の同時に起こる喪失およびmCherry蛍光の核での集積により示されるように、MEK1-NFASTから解離し核に転位した。mCherry-ERK2-CFAST10の核での集積は、一過性であり:脱感作されたmCherry-ERK2-CFAST10は、split-FAST:HMBRの蛍光および細胞質のmCherryの蛍光の同時の増大により明らかにされるように、細胞質に戻りMEK1 NFASTと再度アセンブリした(
図10A~B)。この実験は、どのようにsplit-FASTがリアルタイムでシグナリング経路の動的なタンパク質相互作用を観察するために使用できるかを示す。
【0371】
実施例5:split-FASTは、一時的かつ短期間の相互作用の観察を可能にする。
迅速かつ一時的な相互作用の検出のためのsplit-FASTの使用をさらに例証するために、カルモジュリン(CaM)とCa
2+CaM-相互作用ペプチドM13の間のCa
2+依存性相互作用をモニタリングした。CFAST10-CaMおよびM13-NFASTを発現するHMBRで処置したHeLa細胞において、ヒスタミンの添加は、split-FAST-HMBRの蛍光の大規模な増大、次いで蛍光シグナルの迅速な振動、および結果的に脱感作をもたらした(
図11A~B)。この応答は、ヒスタミン刺激時の哺乳類細胞中のCa
2+濃度の既知の変化と一致しており、一時的な短期間の相互作用をイメージングするsplit-FASTの能力を示した。
【0372】
実施例6:split-FASTは、細胞性センサーの作製を可能にする。
他のシグナリングプロセスをイメージングするためのsplit-FASTの有用性を試験するために、カスパーゼバイオセンサーを作製した。転写制御因子bFosを、CFAST(bFos-CFAST11)に融合し、bJun-NFAST-NLS3-DEVDG-mCherry-NESをコードする遺伝子を、構築した。ここでNESは、遺伝子学的に融合された核移行シグナルであり、DEVDは、カスパーゼ-3基質配列Asp-Glu-Val-Aspであり、NLSは、核局在シグナルであり、bJunは、bFosとヘテロダイマーを形成することが知られているペプチドである(
図12A)。スタウロスポリンでの処置によるアポトーシス(よってカスパーゼ-3の活性)の誘導は、mCherry-NESからbJun-NFASTを放出し、核へのbJun-NFASTの転位、およびbJunおよびbFosの相互作用によるその後のsplit-FASTの相補体化をもたらした。アポトーシスの誘導後約1~2時間に、mCherryの赤色の蛍光が、細胞質中で分離し、相補体化されたplit-FAST:HMBRの鮮やかな緑色蛍光が核中に出現した(
図12B)。リアルタイムでタンパク質相互作用の形成をモニタリングするためのsplit-FASTの可能性をさらに表す域を超えて、この実験は、細胞性センサーの設計に関するplit-FASTの大きな可能性を示した。
【0373】
結論として、本明細書中で上に提示されたデータは、迅速かつ可逆的な相補体化を呈する分裂したレポーターである、split-FASTが、リアルタイムで一時的なタンパク質相互作用を観察することを可能にすることを示す。Split-FAST:フルオロゲンは、使用されるフルオロゲンに応じて、緑色-黄色または橙色-赤色の蛍光を発し、よって多色イメージングに適応可能な系を提供する。split-FASTは、様々な細胞区画(サイトゾル、核、細胞膜)中のタンパク質の相互作用の観察を可能にし、従来のBiFC系とは対照的に、リアルタイムでタンパク質アセンブリの形成および解離の両方のモニタリングを可能にする。この予想外な挙動を利用して、様々な細胞プロセスにおけるタンパク質相互作用の役割および機能を試験し、複合体相互作用のネットワークを精査できる。
【0374】
実施例7:FASTのオルソログによる相補体化系
FAST、iFAST、およびオルソログOn(n=1-6)に由来する6つの機能的なPYPを、上述のように残基114および115の間のそれらの最後のループで2つの相補的なフラグメントに分裂させた。オルソログO1-6に由来する6つの機能的なPYPは、FAST(配列番号9)のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0375】
本明細書中以下で使用される場合、
O1は、Halomonas boliviensis LC1 PYPに由来し配列番号10に記載の配列を有する機能的なPYPを指し、;
O2は、Halomonas種 GFAJ-1 PYPに由来し配列番号11に記載の配列を有する機能的なPYPを指し、;
O3は、Rheinheimera種 A13L PYPに由来し配列番号12に記載の配列を有する機能的なPYPを指し、;
O4は、Idiomarina loihiensis PYPに由来し配列番号13に記載の配列を有する機能的なPYPを指し、;
O5は、Thiorhodospira sibirica ATCC 700588 PYPに由来し配列番号14に記載の配列を有する機能的なPYPを指し、;
O6は、Rhodothalassium salexigens PYPに由来し配列番号15に記載の配列を有する機能的なPYPを指す。
【0376】
FAST、iFAST、および6つのオルソログO1-6から得たN末端側のフラグメント(残基1~114に対応)を、それぞれNFAST、N-iFAST、およびO1-6NFASTと呼んだ。上述されるように、NFASTフラグメントおよびN-iFASTフラグメントは、それぞれ配列番号23および配列番号30に記載のアミノ酸配列を有する。O1-6NFASTは、配列番号24に記載のアミノ酸配列(O1NFAST)、配列番号25に記載のアミノ酸配列(O2NFAST)、配列番号26に記載のアミノ酸配列(O3NFAST)、配列番号27に記載のアミノ酸配列(O4NFAST)、配列番号28に記載のアミノ酸配列(O5NFAST)、および配列番号29に記載のアミノ酸配列(O6NFAST)を有する。
【0377】
FASTおよびiFASTから得たC末端側のフラグメント(残基115~125に対応)は、同一であり、CFAST11と呼ばれ、6つのオルソログO1-6から得たC末端側のフラグメント(残基115~125に対応)は、O1-6CFASTと呼ばれた。split-FASTについて、トランケートされたC末端側のフラグメント(残基115~124、CFAST10と称される)も試験した。上述されるように、CFAST11フラグメントおよびCFAST10フラグメントは、それぞれ配列番号34および配列番号42に記載のアミノ酸配列を有する。O1-6CFASTは、配列番号35に記載のアミノ酸配列(O1CFAST)、配列番号36に記載のアミノ酸配列(O2CFAST)、配列番号37に記載のアミノ酸配列(O3CFAST)、配列番号38に記載のアミノ酸配列(O4CFAST)、配列番号39に記載のアミノ酸配列(O5CFAST)、および配列番号40に記載のアミノ酸配列(O6CFAST)を有する。
【0378】
哺乳類細胞でのタンパク質間相互作用を検出するsplit-FAST、split-iFAST、およびsplit-O1-6FASTの相補体化系の能力を試験するために、それらのN末端側のフラグメント(すなわち本発明に係る第1のPYPフラグメント)を、ラパマイシンの哺乳類標的のFKBP-ラパマイシン結合ドメイン(FRB)のC末端に融合し、それらのC末端側のフラグメント(すなわち本発明に係る第2のPYPフラグメント)を、FK506結合タンパク質(FKBP)のC末端に融合した。FKBPおよびFRBは、ラパマイシンの添加時に共に相互作用することが知られている。ラパマイシンの添加はよって、split-FAST、split-iFAST、およびsplit-O1-6FASTの系の相補体化を誘導すると予測される。
【0379】
以下のトランスフェクションレポーターを使用して、二重にトランスフェクトした細胞を容易に検出した:mTurquoise2(シアン蛍光を提供)およびiRFP670(近赤外蛍光を提供)。単一のRNA転写物から別々にFKBP融合物およびiRFP670の同時発現を可能にする、配列内リボソーム進入部位(IRES)含有バイシストロニックベクターを作製した。単一のRNA転写物から別々にFRB融合物およびmTurquoise2の同時発現を可能にする、配列内リボソーム進入部位(IRES)含有バイシストロニックベクターを作製した。
【0380】
ヒト胎児由来腎臓(HEK)293T細胞を、2つのバイシストロニックベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、以下の濃度:0、1、5、10、25、および50μMのフルオロゲンHMBRとインキュベートした。細胞の蛍光を、フローサイトメトリーにより、500nMのラパマイシンの非存在下および存在下で分析した。二重にトランスフェクトした細胞の平均蛍光を、異なる条件で抽出した。
【0381】
図13に示されるように、所定のHMBR濃度にて、試験した相補体化系のそれぞれにより、平均細胞蛍光の増大が、PYPフラグメントの相互作用依存的相補体化と一致して、ラパマイシンの添加時に観察された。このデータはよって、split-FAST(
図13A-B)、split-iFAST(
図13C)、およびsplit-O
1-6FAST(
図13D-I)の相補体化系が、タンパク質間相互作用を検出するためにうまく利用できることを示す。
図13はまた、増大するHMBR濃度が、PYPフラグメントの自己集合(すなわちラパマイシンの非存在下で検出される蛍光)を増大させたことを示す。しかしながら、PYPフラグメントの自己集合は、依然として少なく、蛍光は、低いHMBRの濃度で、特には25μM以下のHMBR濃度で、特に10μM以下のHMBR濃度では、ラパマイシンの非存在下でほとんど観察されない。
【配列表】