(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】Wee1阻害剤化合物の結晶形及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07D 487/22 20060101AFI20241106BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C07D487/22
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021564588
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2020088451
(87)【国際公開番号】W WO2020221358
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】201910364694.X
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522048993
【氏名又は名称】ウーシー・バイオシティ・バイオファーマシューティクス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲銭▼ 文▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲純▼道
(72)【発明者】
【氏名】李 正▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ジエ▼
(72)【発明者】
【氏名】黎 健
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 曙▲輝▼
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/171633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.71±0.2°、12.68±0.2°、15.32±0.2°、23.61±0.2°及び25.68±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、式(I)の化合物のA結晶形物。
【化1】
【請求項2】
X線粉末回折パターンは、2θ角:5.71±0.2°、12.68±0.2°、15.32±0.2°、18.04±0.2°、19.72±0.2°、21.44±0.2°、23.61±0.2°及び25.68±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、請求項1に記載のA結晶形物。
【請求項3】
以下のXRPDパターン
分析データ:
【表1】
を有する、請求項2に記載のA結晶形物。
【請求項4】
示差走査熱量曲線(DSC)は、34.95±3℃、174.75±3℃及び219.12±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のA結晶形物。
【請求項5】
熱重量分析曲線(TGA)は、70.33±3℃で重量減少が0.7367%に達し、209.42±3℃で重量減少が3.123%に達する、請求項1~3のいずれか1項に記載のA結晶形物。
【請求項6】
X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.58±0.2°、11.71±0.2°、12.44±0.2°、18.64±0.2及び22.16±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、式(I)の化合物のB結晶形物。
【化2】
【請求項7】
X線粉末回折パターンは、2θ角:5.58±0.2°、11.71±0.2°、12.44±0.2°、14.48±0.2°、15.13±0.2°、18.64±0.2°、22.16±0.2°及び26.33±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、請求項6に記載のB結晶形物。
【請求項8】
以下のXRPDパターン
分析データ:
【表2】
を有する、請求項7に記載のB結晶形物。
【請求項9】
示差走査熱量曲線(DSC)は、42.88±3℃、198.79±3℃及び222.36±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する、請求項6~8のいずれか1項に記載のB結晶形物。
【請求項10】
熱重量分析曲線(TGA)は、64.21±3℃で重量減少が3.265%に達し、243.05±3℃で重量減少が1.516%に達する、請求項6~8のいずれか1項に記載のB結晶形物。
【請求項11】
X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.05±0.2°、5.58±0.2°及び12.44±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、式(I)の化合物のC結晶形物。
【化3】
【請求項12】
X線粉末回折パターンは、2θ角:5.05±0.2°、5.58±0.2°、12.44±0.2°、15.91±0.2°、16.68±0.2°、17.61±0.2°、22.19±0.2°及び26.37±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、請求項11に記載のC結晶形物。
【請求項13】
以下のXRPDパターン
分析データ:
【表3】
を有する、請求項12に記載のC結晶形物。
【請求項14】
示差走査熱量曲線(DSC)は、37.06±3℃、189.16±3℃及び218.61±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載のC結晶形物。
【請求項15】
熱重量分析曲線(TGA)は、64.98±3℃で重量減少が2.211%に達し、224.71±3℃で重量減少が1.127%に達する、請求項11~13のいずれか1項に記載のC結晶形物。
【請求項16】
X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.22±0.2°、15.99±0.2°、16.57±0.2°、17.08±0.2°及び21.22±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、式(I)の化合物のD結晶形物。
【化4】
【請求項17】
X線粉末回折パターンは、2θ角:5.22±0.2°、15.18±0.2°、15.99±0.2°、16.57±0.2°、17.08±0.2°、18.60±0.2°、21.22±0.2°及び21.89±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、請求項16に記載のD結晶形物。
【請求項18】
以下のXRPDパターン
分析データ:
【表4】
を有する、請求項17に記載のD結晶形物。
【請求項19】
示差走査熱量曲線(DSC)は、56.07±3℃、193.93±3℃及び216.54±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する、請求項16~18のいずれか1項に記載のD結晶形物。
【請求項20】
熱重量分析曲線(TGA)は、79.35±3℃で重量減少が1.977%に達し、223.66±3℃で重量減少が1.589%に達する、請求項16~18のいずれか1項に記載のD結晶形物。
【請求項21】
X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:8.65±0.2°、14.22±0.2°及び24.58±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、式(I)の化合物のE結晶形物。
【化5】
【請求項22】
X線粉末回折パターンは、2θ角:8.65±0.2°、11.41±0.2°、13.13±0.2°、14.22±0.2°、17.35±0.2°、18.34±0.2°、20.39±0.2°、20.94±0.2°及び24.58±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、請求項21に記載のE結晶形物。
【請求項23】
以下のXRPDパターン
分析データ:
【表5】
を有する、請求項22に記載のE結晶形物。
【請求項24】
示差走査熱量曲線(DSC)は、121.57±3℃、197.26±3℃及び217.23±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有し、168.31±3℃及び212.95±3℃でそれぞれ1つの発熱ピークのピーク値を有する、請求項21~23のいずれか1項に記載のE結晶形物。
【請求項25】
熱重量分析曲線(TGA)は、143.31±3℃で重量減少が6.775%に達し、213.62±3℃で重量減少が0.3184%に達する、請求項21~23のいずれか1項に記載のE結晶形物。
【請求項26】
X線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.06±0.2°、
10.98±0.2°、15.13±0.2°、15.91±0.2°、16.68±0.2°及び17.63±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、式(I)の化合物のF結晶形物。
【化6】
【請求項27】
X線粉末回折パターンは、2θ角:5.06±0.2°、8.34±0.2°、10.98±0.2°、15.13±0.2°、15.91±0.2°、16.68±0.2°、17.63±0.2°及び18.87±0.2°に特徴的な回折ピークを有する、請求項26に記載のF結晶形物。
【請求項28】
以下のXRPDパターン
分析データ:
【表6】
を有する、請求項27に記載のF結晶形物。
【請求項29】
示差走査熱量曲線(DSC)は、48.69±3℃と225.26±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する、請求項26~28のいずれか1項に記載のF結晶形物。
【請求項30】
熱重量分析曲線(TGA)は、100±3℃で重量減少が3.404%に達する、請求項26~28のいずれか1項に記載のF結晶形物。
【請求項31】
請求項1~5のいずれか1項に記載のA結晶形物、請求項6~10のいずれか1項に記載のB結晶形物、請求項11~15のいずれか1項に記載のC結晶形物、請求項16~20のいずれか1項に記載のD結晶形物、請求項21~25のいずれか1項に記載のE結晶形物又は請求項26~30のいずれか1項に記載のF結晶形物を含む、Wee1関連疾患を治療するための組成物。
【請求項32】
式(I)の化合物を、メタノールであるアルコール系溶媒に添加し撹拌して油浴の55~65℃まで加熱するステップ(a)と、
47℃~53℃で72時間撹拌するステップ(b)と、
加熱を停止し、撹拌しながら1時間自然冷却して27℃に達するステップ(c)と、
18時間静置し、濾過して、メタノールで濾過ケーキを洗浄するステップ(d)と、
60℃で48時間真空乾燥させるステップ(e)と
を、ステップ(a)~(e)の順番で含む、請求項26~30のいずれか1項に記載の式(I)の化合物のF結晶形物の製造方法。
【請求項33】
請求項1~5のいずれか1項に記載のA結晶形物、請求項6~10のいずれか1項に記載のB結晶形物、請求項11~15のいずれか1項に記載のC結晶形物、請求項16~20のいずれか1項に記載のD結晶形物、請求項21~25のいずれか1項に記載のE結晶形物又は請求項26~30のいずれか1項に記載のF結晶形物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
CN201910364694.X、出願日:2019年4月30日。
【0002】
本発明は、式(I)の化合物の結晶形、及びWee1関連疾患を治療するための医薬品の製造におけるその結晶形の応用を開示する。
【背景技術】
【0003】
細胞周期のプロセスは、一連の細胞周期の制御システムにより制御された複雑なプロセスであり、細胞周期の調整制御システムのコア成分は、サイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinases、CDKs)とサイクリン(Cyclins)を結合して形成されたCDKs/Cyclins複合体であり、これらの複合体は、細胞が増殖周期に入ることを促進することができ、CDK1(ヒト相同体は、CDC2とも呼ばれる)/Cyclin Bの複合体は、細胞がM期に入ることを制御することに対して重要な役割を果たす。
【0004】
細胞がM期に入る前にDNAの複製を完了する必要があり、様々な内因性及び外因性因子の干渉によりDNAは、常に突然変異又は損傷が発生し、これらの異常が発生したDNAは、修復を完了しなければならず、そうでなければ有糸分裂崩壊を引き起こし、細胞死をもたらす。
【0005】
細胞周期チェックポイントの主な機能は、細胞周期を一時停止し、細胞がDNAの修復を完了してM期に入ることである。G1末期のG1/Sチェックポイント及びG2期のG2/Mチェックポイントは、2つの主な細胞周期チェックポイントであり、DNA損傷の識別及び修復機能を共に担う。正常細胞は、G1/SチェックポイントによりG1期にDNAの修復を完了することができるが、約50%の癌化細胞に癌抑制遺伝子p53欠陥が存在し、これも同時にそれらにG1/Sチェックポイントの機能を欠失させ、それらはDNAの修復を完了するためにG2/Mチェックポイントに大きく依存する必要がある。G2/Mチェックポイントに突然変異が発生することが少なく、それがあるため、癌細胞は、DNA損傷剤及び放射線の治療を逃れることができる。
【0006】
Wee1プロテインキナーゼは、細胞周期調節因子であり、核内のセリン及びスレオニンプロテインキナーゼファミリーの一員に属し、G2/Mチェックポイントの重要なキナーゼである。ヒトの「Wee」プロテインキナーゼファミリーは、主にWee1及びMyt1の2種類を含み、いずれもCDC2のTyr15部位をリン酸化させて、CDC2/CyclinB複合体の活性化を阻害し、DNAの修復を完了するまで細胞がM期に入ることを阻止し、また、Myt1は、CDC2のThr14部位をリン酸化することができ、これもCDC2活性に対して負の調節を行うことである。複数の癌化細胞においてWee1キナーゼが高発現し、Wee1キナーゼを阻害することにより、腫瘍細胞がG2期のDNA修復を直接スキップし、有糸分裂に進み、腫瘍細胞死を引き起こし、癌を治療するという目的を達成することができる。
【0007】
現在、AstraZenecaのWee1阻害剤AZD1775は、臨床II期に入り、30項以上の臨床実験が開発され、かつ良好な治療効果を示す。AZD1775は、最も早くMerckにより開発されるため、MK-1775とも呼ばれ、2013年9月にMerckは、AstraZenecaへ該化合物を世界的に譲渡し、それに関連する特許は、主にUS20070254892、WO2007126122、EP2213673、WO2008133866、WO2011034743等である。Abbott及びAbbvieは、Wee1阻害剤についても研究し、関連特許は、主にUS2012220572、WO2013126656、WO2013012681、WO2013059485、WO2013013031、WO2013126656等である。Almac社のWee1阻害剤に関する特許は、WO2014167347、WO2015019037、WO2015092431を含む。
【0008】
WO2008133866は、化合物AZD1775を開示しており、構造は以下に示すとおりである:
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第20070254892号明細書
【文献】国際公開第2007126122号
【文献】欧洲特許第2213673号明細書
【文献】国際公開第2008133866号
【文献】国際公開第2011034743号
【文献】米国特許出願公開第2012220572号明細書
【文献】国際公開第2013126656号
【文献】国際公開第2013012681号
【文献】国際公開第2013059485号
【文献】国際公開第2013013031号
【文献】国際公開第2014167347号
【文献】国際公開第2015019037号
【文献】国際公開第2015092431号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(I)の化合物のA結晶形を提供し、そのX線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.71±0.2°、12.68±0.2°及び15.32±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0011】
【0012】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.71±0.2°、12.68±0.2°、15.32±0.2°、19.72±0.2°、21.44±0.2°、23.61±0.2°及び25.68±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0013】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.71±0.2°、12.68±0.2°、15.32±0.2°、18.04±0.2°、19.72±0.2°、21.44±0.2°、23.61±0.2°及び25.68±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形のXRPDパターンは、
図1に示される。
【0015】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形のXRPDパターンの解析データは、表1に示される。
【0016】
表1:A結晶形のXRPDパターンの解析データ
【表1】
【0017】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、34.95±3℃、174.75±3℃及び219.12±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形のDSCパターンは、
図2に示される。
【0019】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形の熱重量分析曲線(TGA)は、70.33±3℃で重量減少が0.7367%に達し、209.42±3℃で重量減少が3.123%に達する。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、上記A結晶形のTGAパターンは、
図3に示される。
【0021】
本発明は、式(I)の化合物のB結晶形を提供し、そのX線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.58±0.2°、12.44±0.2°及び22.16±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0022】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.58±0.2°、11.71±0.2°、12.44±0.2°、14.48±0.2°、15.13±0.2°、18.64±0.2°、22.16±0.2°及び26.33±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0023】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.58±0.2°、11.71±0.2°、12.44±0.2°、14.48±0.2°、15.13±0.2°、17.57±0.2°、18.64±0.2°、22.16±0.2°及び26.33±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0024】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形のXRPDパターンは、
図4に示される。
【0025】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形のXRPDパターンの解析データは、表2に示される。
【0026】
表2:B結晶形のXRPDパターンの解析データ
【表2】
【0027】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、42.88±3℃、198.79±3℃及び222.36±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する。
【0028】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形のDSCパターンは、
図5に示される。
【0029】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形の熱重量分析曲線(TGA)は、64.21±3℃で重量減少が3.265%に達し、243.05±3℃で重量減少が1.516%に達する。
【0030】
本発明のいくつかの態様では、上記B結晶形のTGAパターンは、
図6に示される。
【0031】
本発明は、式(I)の化合物のC結晶形を提供し、そのX線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.05±0.2°、5.58±0.2°及び12.44±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0032】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.05±0.2°、5.58±0.2°、12.44±0.2°、15.91±0.2°、16.68±0.2°、17.61±0.2°、22.19±0.2°及び26.37±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0033】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形のXRPDパターンは、
図7に示される。
【0034】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形のXRPDパターンの解析データは、表3に示される。
【0035】
表3:C結晶形のXRPDパターンの解析データ
【表3】
【0036】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、37.06±3℃、189.16±3℃及び218.61±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する。
【0037】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形のDSCパターンは、
図8に示される。
【0038】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形の熱重量分析曲線(TGA)は、64.98±3℃で重量減少が2.211%に達し、224.71±3℃で重量減少が1.127%に達する。
【0039】
本発明のいくつかの態様では、上記C結晶形のTGAパターンは、
図9に示される。
【0040】
本発明は、式(I)の化合物のD結晶形を提供し、そのX線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.22±0.2°、15.99±0.2°及び16.57±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0041】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.22±0.2°、15.99±0.2°、16.57±0.2°及び21.22±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0042】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.22±0.2°、15.18±0.2°、15.99±0.2°、16.57±0.2°、17.08±0.2°、18.60±0.2°、21.22±0.2°及び21.89±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0043】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.22±0.2°、15.18±0.2°、15.99±0.2°、16.57±0.2°、17.08±0.2°、17.90±0.2°、18.60±0.2°、21.22±0.2°、21.89±0.2°、25.24±0.2°及び27.00±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0044】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のXRPDパターンは、
図10に示される。
【0045】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のXRPDパターンの解析データは、表4に示される。
【0046】
表4:D結晶形のXRPDパターンの解析データ
【表4】
【0047】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、56.07±3℃、193.93±3℃及び216.54±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する。
【0048】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、56.07±3℃、193.93±3℃及び216.54±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有し、206.82±3℃で1つの発熱ピークのピーク値を有する。
【0049】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のDSCパターンは、
図11に示される。
【0050】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形の熱重量分析曲線(TGA)は、79.35±3℃で重量減少が1.977%に達し、223.66±3℃で重量減少が1.589%に達する。
【0051】
本発明のいくつかの態様では、上記D結晶形のTGAパターンは、
図12に示される。
【0052】
本発明は、式(I)の化合物のE結晶形を提供し、そのX線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:8.65±0.2°、14.22±0.2°及び24.58±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0053】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:8.65±0.2°、11.41±0.2°、13.13±0.2°、14.22±0.2°、17.35±0.2°、18.34±0.2°、20.39±0.2°、20.94±0.2°及び24.58±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0054】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形のXRPDパターンは、
図13に示される。
【0055】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形のXRPDパターンの解析データは、表5に示される。
【0056】
表5:E結晶形のXRPDパターンの解析データ
【表5】
【0057】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、121.57±3℃、197.26±3℃及び217.23±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有し、168.31±3℃及び212.95±3℃でそれぞれ1つの発熱ピークのピーク値を有する。
【0058】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形のDSCパターンは、
図14に示される。
【0059】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形の熱重量分析曲線(TGA)は、143.31±3℃で重量減少が6.775%に達し、213.62±3℃で重量減少が0.3184%に達する。
【0060】
本発明のいくつかの態様では、上記E結晶形のTGAパターンは、
図15に示される。
【0061】
本発明は、式(I)の化合物のF結晶形を提供し、そのX線粉末回折(XRPD)パターンは、2θ角:5.06±0.2°、15.91±0.2°及び16.68±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0062】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.06±0.2°、8.34±0.2°、10.98±0.2°、15.13±0.2°、15.91±0.2°、16.68±0.2°、17.63±0.2°及び18.87±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0063】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形のX線粉末回折パターンは、2θ角:5.06±0.2°、8.34±0.2°、10.98±0.2°、15.13±0.2°、15.91±0.2°、16.68±0.2°、17.63±0.2°、18.87±0.2°、20.33±0.2°、21.44±0.2°、22.01±0.2°、24.04±0.2°、25.32±0.2°及び25.66±0.2°に特徴的な回折ピークを有する。
【0064】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形のXRPDパターンは、
図16に示される。
【0065】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形のXRPDパターンの解析データは、表6に示される。
【0066】
表6 F結晶形のXRPDパターンの解析データ
【表6】
【0067】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形の示差走査熱量曲線(DSC)は、48.69±3℃及び225.26±3℃でそれぞれ1つの吸熱ピークの開始点を有する。
【0068】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形のDSCパターンは、
図17に示される。
【0069】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形の熱重量分析曲線(TGA)は、100±3℃で重量減少が3.404%に達する。
【0070】
本発明のいくつかの態様では、上記F結晶形のTGAパターンは、
図18に示される。
【0071】
本発明に係る式(I)の化合物のF結晶形の製造方法は、
式(I)の化合物をアルコール系溶媒に添加し撹拌して油浴の55~65℃まで加熱するステップ(a)と、
47℃-53℃で72時間撹拌するステップ(b)と、
加熱を停止し、撹拌しながら1時間自然冷却して27℃に達するステップ(c)と、
18時間静置し、濾過して、メタノールで濾過ケーキを洗浄するステップ(d)と、
60℃で48時間真空乾燥させるステップ(e)と、を含む。
【0072】
本発明のいくつかの態様では、上記アルコール系溶媒は、メタノールである。
【0073】
本発明は、Wee1関連疾患を治療するための医薬品の製造における、上記A結晶形、上記B結晶形、上記C結晶形、上記D結晶形、上記E結晶形又は上記F結晶形の応用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0074】
本発明の化合物のA結晶形、B結晶形、C結晶形、D結晶形、E結晶形及びF結晶形は、安定し、光熱湿度による影響が小さく、溶解性が非常に高く、医薬品の製造が将来有望である。
定義及び説明
【0075】
特に説明しない限り、本明細書で使用される以下の用語及び語句は、以下の意味を含むものとする。特定の語句や用語は、特別な定義がない限り、不明確又は不明瞭であるとみなされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書で商品名が現れる場合、その対応する商品又はその活性成分を指すものとする。
【0076】
本発明の中間体化合物は、以下に列挙する具体的な実施形態、それらを他の化学合成方法と組み合わせることによって形成される実施形態、及び当業者に周知の均等置換形態を含む、当業者に周知の様々な合成方法によって製造でき、好ましい実施形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の具体的な実施形態における化学反応は、適切な溶媒中で完成し、上記溶媒は、本発明の化学変化及びそれに必要な試薬と材料に適するべきである。本発明の化合物を取得するために、当業者が既存の実施形態に基づいて合成ステップ又は反応フローを変更するか又は選択する必要がある場合がある。
【0078】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0079】
本発明で使用される全ての溶媒は、市販されており、さらに精製することなく使用することができる。
【0080】
本発明で使用される溶媒は、市販品として入手可能である。本発明は、以下の略語を使用する。DCM:ジクロロメタン;DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;EtOH:エタノール;MeOH:メタノール;TFA:トリフルオロ酢酸;TsOH:p-トルエンスルホン酸;mp:融点;EtSO3H:エタンスルホン酸;MeSO3H:メタンスルホン酸;ATP:アデノシン三リン酸;HEPES:4-ヒドロキシエチルピペラジン;EGTA:エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸;MgCl2:二塩化マグネシウム;MnCl2:二塩化マンガン;DTT:ジチオスレイトール;DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド;DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;wt%:質量百分率;THF:テトラヒドロフラン。
機器及び分析方法
【0081】
1.1 X線粉末回折(X-ray powder diffractometer、 XRPD)
機器型番:ブルカーD8 advance X線回折装置
試験方法:約10~20mgのサンプルは、XRPD検出に用いられる。
詳細なXRPDパラメータは、以下のとおりである:
X線管:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
X線管の電圧:40kV、X線管の電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器側スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:4~40deg
ステップ径:0.02deg
ステップサイズ:0.12秒
サンプル受け皿の回転数:15rpm
1.2 示差走査熱量曲線(Differential Scanning Calorimeter、DSC)
機器型番:TAQ2000示差走査熱量計
試験方法:サンプル(~1mg)をDSCアルミニウムパンに入れて試験を行い、50mL/minのN2の条件で、10℃/minの昇温速度で、サンプルを30℃から300℃まで加熱する。
1.3 熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)
機器型番:TA Q5000熱重量分析装置
試験方法:サンプル(2~5mg)をTGA白金パン内に入れて試験を行い、25mL/minのN2の条件で、10℃/minの昇温速度で、サンプルを、30℃(室温)から300℃に又は重量減少が20%となるように加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】(I)化合物のA結晶形のCu-Kα放射によるXRPDパターンである。
【
図2】(I)化合物のA結晶形のDSCパターンである。
【
図3】(I)化合物のA結晶形のTGAパターンである。
【
図4】(I)化合物のB結晶形のCu-Kα放射によるXRPDパターンである。
【
図5】(I)化合物のB結晶形のDSCパターンである。
【
図6】(I)化合物のB結晶形のTGAパターンである。
【
図7】(I)化合物のC結晶形のCu-Kα放射によるXRPDパターンである。
【
図8】(I)化合物のC結晶形のDSCパターンである。
【
図9】(I)化合物のC結晶形のTGAパターンである。
【
図10】(I)化合物のD結晶形のCu-Kα放射によるXRPDパターンである。
【
図11】(I)化合物のD結晶形のDSCパターンである。
【
図12】(I)化合物のD結晶形のTGAパターンである。
【
図13】(I)化合物のE結晶形のCu-Kα放射によるXRPDパターンである。
【
図14】(I)化合物のE結晶形のDSCパターンである。
【
図15】(I)化合物のE結晶形のTGAパターンである。
【
図16】(I)化合物のF結晶形のCu-Kα放射によるXRPDパターンである。
【
図17】(I)化合物のF結晶形のDSCパターンである。
【
図18】(I)化合物のF結晶形のTGAパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明を不利に限定するものではない。本明細書は、本発明を詳細に説明し、具体的な実施形態をも開示しているが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の実施形態に対して様々な変更及び改良を行うのは、当業者にとって自明である。
【0084】
中間体1:
【化3】
特許WO2007126122における合成方法を参照して製造する。
【0085】
実施例1:式(I)の化合物:
【化4】
合成経路:
【化5】
【0086】
ステップ1:化合物1-Aの合成
0~15℃で、窒素雰囲気下で2-アセチル-6-ブロモピリジン(7.35g、36.74mmol)のTHF(150mL)溶液に3-ブテニルマグネシウムブロミド(1M、55.12mL)を滴下して、この反応液を10~20℃で3時間撹拌する。飽和塩化アンモニウム溶液を100mL添加して反応をクエンチし、分液して有機層を得て、さらに50mLの飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し回転乾燥させて褐色油状物を得る。この褐色油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでさらに精製して(PE/EA=7/1)1-Aを得る。1HNMR(400MHz、DMSO-d6)δ7.73(t、J=8.0Hz、1H)、7.64(d、J=7.2Hz、1H)、7.46(d、J=7.2Hz、1H)、5.78~5.7(m、1H)、4.94~4.85(m、2H)、2.07~2.01(m、1H)、1.90~1.71(m、3H)、1.41(s、3H)。
【0087】
ステップ2:化合物1-Bの合成
1-A(3.47g、13.55mmol)及び1-C(3.01g、13.55mmol)のジオキサン(150mL)の混合物にN,N-ジメチルエチレンジアミン(1.31g、14.90mmol、1.60mL)、ヨウ化銅(2.58g、13.55mmol、)及び炭酸カリウム(2.62g、18.97mmol)を添加し、窒素で三回置換して、この混合物を窒素雰囲気下で95℃で1.5時間撹拌し、アンモニア水(28%)200mLを添加して、酢酸エチルで抽出し(300mL×2)、有機層を合わせ、飽和食塩水で200mL洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して乾燥まで濃縮する。混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=3/1)で精製して1-Bを得る。1HNMR(400MHz、DMSO-d6)δ9.02(s、1H)、8.04(t、J=8.0Hz、1H)、7.76(d、J=7.2Hz、1H)、7.64(d、J=7.6Hz、1H)、5.77~5.67(m、2H)、5.01~4.79(m、6H)、2.56(s、3H)、2.15~2.11(m、1H)、1.85~1.75(m、2H)、1.70~1.60(m、1H)、1.46(s、3H)。
【0088】
ステップ3:化合物1-Dの合成
1-B(2.06g、5.18mmol)のトルエン(700mL)溶液にGrubbsの第2世代触媒(1.32g、1.55mmol)を添加して、この混合物を80℃及び窒素雰囲気下で6時間撹拌する。Grubbsの第2世代触媒(0.65g、0.775mmol)を追加して、この混合物を80℃及び窒素雰囲気で3時間撹拌する。室温まで冷却し、濾過し、濾液を乾燥まで濃縮して褐色残留物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して(PE/EA=1/1)1-Dを得る。1HNMR(400MHz、DMSO-d6)δ9.07(s、1H)、8.06(t、J=8.0Hz、1H)、7.79(d、J=8.2Hz、1H)、7.70(d、J=7.6Hz、1H)、5.39~5.25(m、3H)、4.66(d、J=5.2Hz、2H)、2.62(s、3H)、2.40~1.95(m、3H)、1.85~1.65(m、1H)1.64(s、3H)。
【0089】
ステップ4:化合物1-Eの合成
化合物1-D(360mg、974.45μmol)のトルエン(35mL)溶液にメタクロロ過安息香酸(265.09mg、1.31mmol、85%純度)を添加し、反応を25℃で2時間撹拌する。反応液に4-(4-メチル-1-ピペラジニル)アニリン(242.30mg、1.27mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(503.76mg、3.90mmol)を添加する。反応液を25℃で12時間撹拌する。反応液に水を25mL添加して、撹拌し、酢酸エチル(30mL×3)で抽出する。有機相を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(30mL)及び飽和食塩水(30mL)でそれぞれ1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。濾過し、真空で濃縮して粗生成物を得て、粗生成物を、液相(中性)を調製して分離して1-Eを得る。1HNMR(400MHz、CDCl3)δ ppm 1.70(s、3H)1.78(brd、J=13.54Hz、2H)2.04(brd、J=6.54Hz、1H)2.08~2.23(m、2H)2.39(s、3H)2.62~2.64(m、4H)3.21~3.24(m、4H)4.24(brs、1H)4.51(brd、J=13.54Hz、1H)5.61~5.88(m、2H)6.95(d、J=9.04Hz、2H)7.49(d、J=9.04Hz、3H)7.81~7.90(m、2H)8.87(s、1H)、MS m/z: 513.1 [M+H]+。
【0090】
ステップ5:式(I)の化合物の合成
化合物1-E(100mg、195.08μmol)に対して、SFCキラル分割を行って(クロマトグラフィーカラム:AD 250×50mm I.D.、10μm移動相:A:超臨界CO2、B:EtOH(0.1%NH3H2O)、A:B=55:45 at 200mL/min)、保持時間を21minとして、式(I)の化合物を得る。 1HNMR(400MHz、CDCl3)δ ppm 1.60(s、3H)1.68(brs、2H)1.94(brd、J=7.04Hz、1H)2.00~2.20(m、2H)2.30(s、3H)2.52~2.55(m、4H)3.12~3.15(m、4H)4.24(brs、1H)4.42(brd、J=9.54Hz、1H)5.65(brs、2H)6.85(d、J=9.04Hz、2H)7.17(s、1H)7.40(d、J=9.04Hz、2H)7.69~7.81(m、2H)8.77(s、1H)。MS m/z: 513.1 [M+H]+。
【0091】
実施例2:式(I)の化合物のA結晶形の製造
約50mgの式(I)の化合物をそれぞれ異なるガラス瓶に添加し、それぞれアセトンを0.5mL添加して懸濁液になる。上記懸濁液サンプルを恒温振とう器(40℃)に置いて試験を行う。懸濁液サンプルを40℃で2日間振とうして遠心分離し、上層液体を除去して、残留サンプルを真空オーブン(40℃)に置いて一晩乾燥させて、式(I)の化合物Aの結晶形を得る。
【0092】
実施例3:式(I)の化合物のB結晶形の製造
約50mgの式(I)の化合物をそれぞれ異なるガラス瓶に添加し、それぞれエタノールを0.3mL添加して懸濁液になる。上記懸濁液サンプルを恒温振とう器(40℃)に置いて試験を行う。懸濁液サンプルを40℃で2日間振とうして遠心分離し、上層液体を除去して、残留サンプルを真空オーブン(40℃)に置いて一晩乾燥させて、式(I)の化合物Bの結晶形を得る。
【0093】
実施例4:式(I)の化合物のC結晶形の製造
約50mgの式(I)の化合物をそれぞれ異なるガラス瓶に添加し、それぞれメタノールを0.2mL添加して懸濁液になる。上記懸濁液サンプルを恒温振とう器(40℃)に置いて試験を行う。懸濁液サンプルを40℃で2日間振とうして遠心分離し、上層液体を除去して、残留サンプルを真空オーブン(40℃)に置いて一晩乾燥させて、式(I)の化合物Cの結晶形を得る。
【0094】
実施例5:式(I)の化合物のD結晶形の製造
約50mgの式(I)の化合物をそれぞれ異なるガラス瓶に添加し、それぞれメタノール/水(1/1)を0.4mL添加して懸濁液になる。上記懸濁液サンプルを恒温振とう器(40℃)に置いて試験を行う。懸濁液サンプルを40℃で2日間振とうして遠心分離し、上層液体を除去して、残留サンプルを真空オーブン(40℃)に置いて一晩乾燥させて、式(I)の化合物Dの結晶形を得る。
【0095】
実施例6:式(I)の化合物のE結晶形の製造
約50mgの式(I)の化合物をそれぞれ異なるガラス瓶に添加し、それぞれアセトニトリルを0.5mL添加して懸濁液になる。上記懸濁液サンプルを恒温振とう器(40℃)に置いて試験を行う。懸濁液サンプルを40℃で2日間振とうして遠心分離し、上層液体を除去して、残留サンプルを真空オーブン(40℃)に置いて一晩乾燥させて、式(I)の化合物Eの結晶形を得る。
【0096】
実施例7:式(I)の化合物のF結晶形の製造
25~26℃で、560mLのMeOHが充填された1Lの三口フラスコに式(I)の化合物134.19g)を添加し、撹拌し、油浴の55~65℃まで加熱し、20分間後に内部温度を47℃~53℃に保持する。保温して72時間撹拌する。加熱を停止し、撹拌しながら1時間自然冷却して27℃に達する。18時間静置し、濾過し、30mLのMeOHで濾過ケーキをさらに洗浄する。濾過ケーキを60℃で48時間真空乾燥させる。式(I)の化合物Fの結晶形を得る。
【0097】
実験例1:式(I)の化合物のF結晶形の高温、高湿及び照明条件下での固体の安定性試験
影響因子及び加速試験条件に基づいて、約5mgの式(I)の化合物のF結晶形を正確に秤量して、乾燥した清潔なガラス瓶に置き、二重で薄層に広げ、正式な試験サンプルとして、影響因子の試験条件(60℃、92.5%RH(相対湿度))及び加速条件(40℃/75%RH及び60℃/75%RH)に置き、そのサンプルを完全に露出して置き、アルミ箔紙でカバーし、小孔を刺す。また、それぞれ少量のサンプルを40mLのガラスサンプル瓶に置いて同じ条件で結晶形の状態を測定する。5日目、10日目、1カ月目にサンプリング分析を行い、分析方法を表7に示し、分析結果を表8に示す。光照射(可視光1200000Lux、紫外線200W)条件下で置かれたサンプルは、室温で完全に露出して置かれるサンプルである。
【0098】
表7:関連物質の高速液体クロマトグラフィー分析方法
【表7】
表8:式(I)の化合物のF結晶形の固体の安定性サンプルの含有量及び関連物質の分析結果(5日目、10日目、1ヶ月目)
【表8】
【0099】
結論:式(I)の化合物Fの結晶形は、1ヶ月間の固体影響因子及び加速試験において、原料化合物の結晶形が変化せず、良好な物理的安定性を有する。関連物質分析において不純物は、高温(60℃)及び加速条件(60℃/75%RH)でわずかに増加し、他の条件で不純物の総量がほとんど変化せず、温度にわずかに敏感である。
【0100】
実験結論:本発明は、結晶形の安定性が高く、医薬品を製造しやすい。
【0101】
実験例2:式(I)の化合物のインビトロ酵素学的阻害活性
実験試験は、Eurofins社で行われ、実験結果は、同社により提供される。
【0102】
試験体系において、20mMのTris-HCl、pH8.5、0.2mMのEDTA、500μMのポリペプチド基質(LSNLYHQGKFLQTFCGSPLYRRR)、10mMの酢酸マグネシウム及び10μMの[γ-33P]-ATP(強度が約500cpm/pmolである)を添加する。Mg2+及びATP混合液を添加した後、反応を開始し、室温で40minインキュベートする。3%リン酸緩衝液を添加して、反応を停止する。10μLの反応液を連続濾過機P30で濾過し、75mMのリン酸緩衝液で3回洗浄し、メタノールで1回洗浄し、毎回5min洗浄する。乾燥後にシンチレーションカウント法で値を読み取る。試験結果を表9に示す。
【0103】
表9 本発明の化合物のインビトロスクリーニング試験結果(IC
50)
【表9】
【0104】
試験例3 本発明の化合物のインビトロ透過性試験
研究においてオランダ癌研究所Piet Borstの実験室で許可されたMDR1-MDCK II細胞が用いられ、ヒトの多耐性遺伝子(MDR1)をトランスフェクトしたMadin-Darbyイヌ腎細胞であり、該細胞は、排出輸送体のP糖タンパク質(P-gp)を安定的に発現することができるため、P-gp基質又は阻害剤のスクリーニングに適用され、かつ十二指腸、血液脳関門、肝細胞核及び腎ユニットなどに化合物の排出作用関門の透過性が高いことを予測する。本発明者らは、第5-35世代のMDR1-MDCKII細胞を浸透性研究に用いる。
【0105】
MDR1-MDCKII細胞をα-MEM培地(α-Minimum Essential Media)で培養し、培養条件は、37±1℃、5%CO2及び飽和相対湿度である。その後に細胞をBD Transwell-96細胞ウェルプレートに接種し、接種密度が2.3×105個の細胞/cm2であり、その後に細胞を二酸化炭素インキュベータに置いて4~7日間培養した後に輸送実験に用いる。そのα-MEM培地の調製方法は、以下のとおりである。
【0106】
液体培地は、粉末(α-MEM powderがGibco、Cat#:11900から由来する)を純水に溶解して調製し、L-(L-グルタミン)及びNaHCO3を添加して得られるものである。その後に使用する時に10%FBS(ウシ胎児血清)、1%PS(二重抗体)及び1%NEAAを添加して完全培地になる。α-MEM培地の配合材料を表10に示す。
【0107】
【0108】
AZD1775(又は本発明の化合物)及びジゴキシン(Digoxin)の投与濃度は、2μMであり、二方向(A-B及びB-A方向)に投与し、いずれも2つの二重ウェルを行う。フェノテロール(Fenoterol)及びプロプラノロール(Propranolol)の試験濃度は、いずれも2μMであり、単方向(A-B方向)に投与し、いずれも2つの二重ウェルを行う。
【0109】
使用される溶液を37±1℃の水浴中に置いて30分間を予めインキュベートする。投与液と受容液をそれぞれ対応する細胞ウェルプレートのウェル位置(各頂端及び底端のウェルにそれぞれ75と250μLのサンプルを添加する)に添加し、双方向輸送実験を開始する。サンプルを添加した後、細胞ウェルプレートを37±1℃、5%CO2及び飽和相対湿度のインキュベータに置いて150分間インキュベートする。サンプル収集情報を表11に示す。
【0110】
【0111】
注釈:T0は、最初の投与液サンプルを示す。
【0112】
全てのサンプルをボルテックスした後に3220gで10分間遠心分離し、適量の体積の上澄液をサンプル分析プレートに転移し、プレートを密封した後にサンプルを直ちに分析しなければ2-8℃に貯蔵し、LC-MS/MSの方法で分析する。
【0113】
輸送実験が終了した後、蛍光イエロー測定アッセイ(Lucifer Yellow Rejection Assay)によりMDR1-MDCKII細胞の完全性を試験する。蛍光イエロー溶液で30分間インキュベートした後、蛍光イエローサンプルを収集し、2eプレートリーダーは425/528nm(励起/発射)スペクトルでサンプル中の蛍光イエローの相対蛍光強度(the relative fluorescence unit、RFU)を検出する。
【0114】
半定量により供試品のAZD1775(又は本発明の化合物)、対照品のフェノテロール(Fenoterol)、プロプラノロール(Propranolol)及びジゴキシン(Digoxin)を分析し、被分析物と内部標準のピーク面積との比を対照品の濃度とする。
【0115】
実験結果を表12に示す。
【0116】
表12 透過速度(10
-6cm/s)
【表12】
実験結論:
式(I)の化合物の透過特性は、AZD1775に対して大幅に向上し、生体の医薬品への利用に役立つ。
【0117】
実験例4:化合物薬物動態評価
本実験は、AZD1775(又は本発明の化合物)の単回静脈を研究し、単回経口投与した後、雌性Balb/c Nudeマウスの血漿における薬物動態学的状況を研究することを目的とする。
【0118】
12匹のマウス(霊暢によって提供される)を2群にランダムに分け、各組に6匹の雌性を有し、交互採血方式によりサンプルを収集する。静脈群の全ての動物に1mg/kgのAZD1775(又は本発明の化合物)を静脈注射し、溶媒調製製剤は、0.2mg/mLのAZD1775(又は本発明の化合物)を含有する5%HP-betaCD(崑山瑞斯克化工原料有限公司)の清澄溶液である。経口群の動物に10mg/kgのAZD1775(又は本発明の化合物)を胃内投与し、溶媒調製製剤は、1mg/mLのAZD1775(又は本発明の化合物)を含有する0.5%メチルセルロースの均一な懸濁液である。
【0119】
静脈群の動物に対して、投与後の5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間の9つの時点で血漿サンプルを収集する;経口組に対して、投与後の15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間の8つの時点で血漿サンプルを収集する;サンプルは、LC-MS/MS分析によりAZD1775(又は本発明の化合物)の血漿の濃度データを取得し、かつ薬物動態パラメータ、例えばピーク濃度、ピーク到達時間、除去率、半減期、薬物時間曲線下面積、生物学的利用率等を計算する。
【0120】
実験結果を表13に示す。
【0121】
表13 薬物動態の試験結果
【表13】
実験結論:式(I)の化合物は、AZD1775と比較してマウス薬物動態の複数の指標を顕著に向上させることができ、インビボ除去率、半減期、インビボ濃度積分及び生物学的利用率は、いずれも明らかな利点を有する。
【0122】
実験例5:インビボ研究
(1)ヒト結腸癌LoVo細胞の皮下異種移植腫瘍BALB/cのヌードマウスモデルに対する化合物のインビボ薬力学的研究
実験方法:選択された実験動物(上海西普尓-必凱実験動物有限公司によって提供される)は、体重が18~22gである6~8週齢のBALB/cヌードマウスである。
【0123】
ヒト結腸癌LoVo細胞を、インビトロで単層培養し、培養条件は、Ham’s F-12培地に10%ウシ胎児血清、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン及び2mMのグルタミン、37℃で5%CO2で培養することである。膵酵素-EDTAで週2回通常消化処理して継代した。細胞飽和度が80%~90%になると、細胞を受け取り、計数し、接種した。0.1mL(10×106個)のLoVo細胞を、各ヌードマウスの右背部に皮下接種し、腫瘍の平均体積が213mm3に達すると、群分け投与を開始した。胃内投与量:40ミリグラム/キログラムであり、毎日2回である。実験指標は、腫瘍成長が阻害、遅延又は治癒されるか否かを考察することである。カーソルスケールで週2回腫瘍径を測定した。腫瘍体積の計算式は、V=0.5a×b2であり、ここで、aとbはそれぞれ腫瘍の長径と短径を表す。
【0124】
化合物の腫瘍阻害効果を、TGI(%)又は相対腫瘍増殖率T/C(%)で評価した。TGI(%)は、腫瘍成長阻害率を反映するものである。TGI(%)の計算:TGI(%)=[1-(ある処理群の投与終了時の平均腫瘍体積-当該処理群の投与開始時の平均腫瘍体積)/(溶媒対照群の治療終了時の平均腫瘍体積-溶媒対照群の治療開始時の平均腫瘍体積)]×100%。
【0125】
最終的に16日間投与した実験結果を表14に示す。
【0126】
表14 ヒト結腸癌LoVo細胞の異種移植腫瘍のマウスモデルの薬効試験結果
【表14】
【0127】
結論:本発明の化合物は、AZD1775と比較してマウス体内の腫瘍に対する阻害作用を顕著に向上させることができ、かつ化合物のキラルは、インビボ薬効に予期せぬ影響を与える。
【0128】
(2)化合物のヒト膵臓癌のBxPC-3BALB/cヌードマウスの皮下移植腫瘍モデルに対するインビボ薬力学的研究
実験方法:選択された実験動物は、体重が18~22gである6~8週齢のBALB/cヌードマウスである。
【0129】
BxPC-3細胞の第10世代を、インビトロで単層培養し、培養条件は、RPMI1640培地(メーカー:gibco、品番:22400-089)に10%ウシ胎児血清、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを添加し、37℃で5%CO2培養し、4回継代することである。継代法は、膵酵素-EDTAで週2回通常消化処理して継代することである。細胞飽和度が80%~90%に達する場合、細胞をパンクレアチン-EDTAで消化し、カウントし、PBSに再懸濁させ、密度は、5×107個の細胞/mLである。各動物に対して、右背部に0.1mL(5×106個)のBxPC-3細胞を接種し、腫瘍の平均体積が153mm3に達すると、腫瘍の体積に基づいてランダムに群分けし、かつ投与を開始する。胃内投与量:25ミリグラム/キログラムであり、毎日1回である。
【0130】
実験指標は、腫瘍成長が阻害、遅延又は治癒されるか否かを考察することである。カーソルスケールで週2回腫瘍径を測定した。化合物の腫瘍阻害効果を、TGI(%)又は相対腫瘍増殖率T/C(%)で評価した。TGI(%)は、腫瘍成長阻害率を反映するものである。TGI(%)の計算:TGI(%)=[1-(ある処理群の投与終了時の平均腫瘍体積-当該処理群の投与開始時の平均腫瘍体積)/(溶媒対照群の治療終了時の平均腫瘍体積-溶媒対照群の治療開始時の平均腫瘍体積)]×100%。
【0131】
最終的に27日間投与した実験結果を表15に示す。
【0132】
表15 ヒト膵臓癌BxPC-3細胞の異種移植腫瘍のマウスモデルの薬効試験結果
【表15】
【0133】
結論:表15から分かるように、式(I)の化合物は、AZD1775と比較してマウス体内の腫瘍に対する阻害作用を顕著に向上させることができる。
【0134】
(3)CT26マウス結腸癌細胞の動物移植腫瘍モデルに対する化合物のインビボ抗腫瘍薬効研究
実験方法:選択された実験動物は、体重が16~20gである7週齢の雌性のBALB/cヌードマウスである。
【0135】
細胞:マウス結腸癌CT26細胞(中国科学院の典型的培養物保蔵委員会細胞バンク)をインビトロで単層培養し、培養条件は、10%ウシ胎児血清RPMI-1640を含有する培地を使用し、37℃で5%CO2インキュベータで培養することである。膵酵素-EDTAで通常消化処理して継代した。細胞が指数増殖期にあり、細胞飽和度が80%~90%になると、細胞を受け取り、計数し、接種した。0.1mLのDPBS(3×105個のCT26細胞を含む)を各マウスの右背部に皮下接種し、腫瘍の平均体積が50~70mm3に達すると、腫瘍体積に基づいてランダムに群分けし投与する。胃内投与量:30ミリグラム/キログラムであり、毎日2回である。
【0136】
実験指標は、腫瘍成長が阻害、遅延又は治癒されるか否かを考察することである。カーソルスケールで週2回腫瘍径を測定した。化合物の腫瘍阻害効果を、TGI(%)又は相対腫瘍増殖率T/C(%)で評価した。TGI(%)は、腫瘍成長阻害率を反映するものである。TGI(%)の計算:TGI(%)=[1-(ある処理群の投与終了時の平均腫瘍体積-当該処理群の投与開始時の平均腫瘍体積)/(溶媒対照群の治療終了時の平均腫瘍体積-溶媒対照群の治療開始時の平均腫瘍体積)]×100%。
【0137】
最終的に18日間投与した実験結果を表16に示す。
【0138】
表16 マウス結腸癌CT26細胞の同種移植腫瘍のモデルのインビボ薬効試験結果
【表16】
【0139】
結論:表16から分かるように、式(I)の化合物は、AZD1775と比較してマウス体内の腫瘍に対する阻害作用を顕著に向上させることができる。