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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】反応性アクリルポリオレフィンブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20241106BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L33/04
C08F265/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021576422
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2020035067
(87)【国際公開番号】W WO2020263496
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】62/868,029
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォ、ハイラン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス、モリス
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112907(JP,A)
【文献】国際公開第99/055779(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00992540(EP,A1)
【文献】特開2004-352837(JP,A)
【文献】特表2005-511805(JP,A)
【文献】特開2009-084354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08L 33/04
C08F 265/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンポリマーと、
架橋性コア及びシェルを含むコアシェルアクリルポリマー
を含み、
前記シェルは、反応物の反応生成物である分岐ポリマーを含み、
前記反応物は、1つ以上のモノエチレン性不飽和エステルモノマー、~15重量パーセントの量の連鎖移動剤、および0.1~15重量パーセントの量の架橋剤を含み、重量パーセントが反応物の総量に基づくが、ただし、前記架橋剤の量前記連鎖移動剤の量の+/-5重量パーセント以内であることを条件とし、前記架橋剤が、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を含み、
前記1つ以上のモノエチレン性不飽和エステルモノマーは、構造R’-C(O)O-Rを有し、式中、Rは、アルキル基であり、R’は、2個または3個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和脂肪族基であり、
前記架橋剤は、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記分岐ポリマーとは、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を含む前記架橋剤の部分で分岐したポリマーのことを表す、組成物。
【請求項2】
前記分岐ポリマーが、架橋されていない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記連鎖移動剤が、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、アルキルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、チオ酪酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオラクテート、ペンタエリスリトールテトラチオブチレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート、トリペンタエリスリトールオクタ(3-メルカプトプロピオネート)、トリペンタエリスリトールオクタチオグリコレート、ブチル3-メルカプトプロピオアンテ(mercaptopropioante)、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コアシェルアクリルポリマーが、前記ポリオレフィンポリマーおよび前記コアシェルアクリルポリマーの総重量に基づいて10~50重量パーセントを構成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記架橋性コアが、ブチルアクリレートとアリルメタクリレートとの反応生成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィンが、エチレン-オクテンコポリマーである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記架橋剤の量が、連鎖移動剤の+/-3重量パーセント以内の量である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記分岐ポリマーが、ラウリルメタクリレートをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記コアシェルアクリルポリマーが、前記ポリオレフィンポリマーにグラフト化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記コアシェルアクリルポリマーが、前記ポリオレフィンポリマーとブレンドされる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を調製する、方法。
【請求項11】
前記コアシェルアクリルポリマーが前記ポリオレフィンポリマーとブレンドされる前に、前記コアシェルアクリルポリマーが、高温熱過酸化物の存在下で凝固する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物から形成された、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ポリオレフィン組成物であり、より具体的には、反応性アクリル熱可塑性プラスチックとブレンドされたポリオレフィンに対するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンポリマーは、最も広く使用されるプラスチックの一部である。ポリオレフィンは、耐久性、耐熱性、薬品耐性がある。ポリオレフィンは、包装材料、医療機器、屋根材料、水道管などとしての使用を見出す。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィンによって提示される主な課題は、ポリオレフィンのコーティングまたはポリオレフィンの他のプラスチックや基板へのラミネートを困難にする、低い表面エネルギーである。ポリオレフィンに直接コーティング、塗装、または印刷することは、多くの場合望ましいが、低い表面エネルギーは、そのようなプロセスを困難にする。ポリオレフィンの表面エネルギーを増加させる添加剤または表面処理の組み込みなどの、ポリオレフィンの低い表面エネルギーを改善するための様々な技法が、存在する。表面処理のいくつかの例は、火炎処理、コロナ処理、およびプラズマ処理を含む。そのような表面処理方法は、特殊な装置を必要とし、ポリオレフィン物品をコーティングするために必要な加工の量を増加させる。添加剤の使用は、追加の課題を引き起こす。例えば、いくつかの添加剤は、ポリオレフィンマトリックスから移動する場合がある。
【0004】
これらの問題のうちの1つ以上に対処するであろう様式でポリオレフィンを改良することは、望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
ポリオレフィンポリマーと、架橋性コア及びシェルを含むコアシェルアクリルポリマーを含み、前記シェルは、反応物の反応生成物である分岐ポリマーを含み、前記反応物は、1つ以上のモノエチレン性不飽和エステルモノマー、0.1~15重量パーセントの量の連鎖移動剤、および架橋剤の0.1~15重量パーセントの量の架橋剤を含み、重量パーセントが、反応物の総量に基づくが、ただし、架橋剤の量が連鎖移動剤の量の+/-5重量パーセント以内であることを条件とし、架橋剤が、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を含む組成物が、本明細書に開示される。分岐ポリマーは、架橋されない。
【0006】
ポリオレフィンポリマーをコアシェルアクリルポリマーとブレンドすることを含む組成物を調製する方法もまた、本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリオレフィンポリマーと、架橋性コアおよび分岐ポリマーを含むコアシェルアクリルポリマーと、を含み、前記分岐ポリマーは、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を有する架橋剤を含む、組成物が、本明細書に開示される。本発明者は、驚くべきことに、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を有する架橋剤を含む分岐ポリマーが、ペンダント二重結合の少なくとも80%が未反応のままである分岐アクリルコポリマーを生成できることを見出した。コアシェルアクリルコポリマーのシェル上の未反応のペンダント二重結合は、コアシェルアクリルポリマーがポリオレフィンポリマーの骨格上にグラフト化されるのを可能にする。このグラフト化は、ポリオレフィンポリマーの特性が改変されるのを可能にし、ポリオレフィンポリマーがさらなる改変なく塗装または印刷されることを可能にし得る。
【0008】
コアシェルアクリルポリマーは、架橋性コア及びシェルを含み、前記シェルは、反応物の反応生成物である分岐ポリマーを含み、前記反応物は、1つ以上のモノエチレン性不飽和エステルモノマー、0.1~15重量パーセントの量の連鎖移動剤、および架橋剤の0.1~15重量パーセントの量の架橋剤を含み、重量パーセントは反応物の総量に基づくが、ただし、架橋剤の量が連鎖移動剤の量の+/-5重量パーセント以内であることを条件とし、架橋剤は、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を含む。コアシェルアクリルポリマーは、コアを形成する第1の段階の架橋性アクリルポリマー組成物と、シェルを形成する外層アクリルポリマー組成物と、を含む、多段階連続ポリマー組成物から形成され得る。
【0009】
第1の段階、すなわち、コアは、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーと、1つ以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、またはそれらの組み合わせとの反応生成物である。好ましくは、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートモノマーに由来する単位の量は、第1の段階の95~99.9重量パーセントの範囲にあり、架橋性モノマーおよび/またはグラフト結合性モノマーに由来する単位の量は、0.1~5重量パーセントである。好ましくは、この第1の段階は、-85~-10℃の範囲のTgで架橋される。
【0010】
架橋性コアは、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートモノマーからなる群から選択される1つ以上のモノマーに由来する95~99.9重量パーセントの単位を含む。95~99.9重量パーセントのすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、1つ以上のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートモノマーに由来する単位の量は、95、95.5、96、96.5、97、975、98、98.5、99、または99.5重量パーセントの下限から95.3、95.8、96.3、96.9、97.5、98、98.7、99.4、または99.9重量パーセントの上限であり得る。例えば、1つ以上のアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートモノマーに由来する単位の量は、95~99.9重量パーセントの範囲にあり得るか、または代替的に、1つ以上のアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートモノマーに由来する単位の量は、95~97.5重量パーセントの範囲にあり得るか、または代替的に、1つ以上のアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートモノマーに由来する単位の量は、97.8~99.9重量パーセントの範囲にあり得るか、または代替的に、1つ以上のアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートモノマーに由来する単位の量は、96.5~97.9重量パーセントの範囲にあり得る。
【0011】
架橋性コアは、架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、またはそれらの組み合わせに由来する0.1~5重量パーセントの単位を含む。0.1~5重量パーセントのすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、またはそれらの組み合わせに由来する単位の量は、0.1、0.7、1.2、1.9、2.6、3.1、3.7、4.4、または4.9重量パーセントの下限から0.2、0.8、1.4、2.1、2.7、3.3、3.8、4.5、または5重量パーセントの上限であり得る。例えば、架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、もしくはそれらの組み合わせに由来する単位の量は、0.1~5重量パーセントの範囲にあり得るか、または代替的に、架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、もしくはそれらの組み合わせに由来する単位の量は、0.5~2.5重量パーセントの範囲にあり得るか、または代替的に、架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、もしくはそれらの組み合わせに由来する単位の量は、1.0~4.0重量パーセントの範囲にあり得るか、または代替的に、架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、もしくはそれらの組み合わせに由来する単位の量は、0.3~3.5重量パーセントの範囲にあり得る。
【0012】
架橋性コアは、-85~-10℃のTgを有する。-70~-10℃のすべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、架橋性コアのTgは、-85、-80-70、-60、-50、-40、-30、-20、または-15℃の下限から-75、-65、-55、-45、-35、-25、-17、または-10℃の上限であり得る。例えば、架橋性コアのTgは、-85~-10℃の範囲にあり得るか、または代替的に、架橋性コアのTgは、-60~-40℃の範囲にあり得るか、または代替的に、架橋性コアのTgは、-70~-50℃の範囲にあり得るか、または代替的に、架橋性コアのTgは、-50~-30℃の範囲にあり得る。
【0013】
上記の場合、コポリマーのTgは、Fox方程式[Bulletin of the American Physical Society 1,3 Page 123(1956)]を用いて以下のように計算され得る。
【数1】
【0014】
コポリマーについて、wおよびwは、反応槽に充填されたモノマーの重量に基づいた2つのコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)およびTg(2)は、ケルビン度の2つの対応するホモポリマーのガラス遷移温度を指す。3つ以上のモノマーを含むポリマーについて、追加の用語が加えられる(w/Tg(n))。本発明の目的のためのホモポリマーのガラス遷移温度は、“Polymer Handbook”,edited by J.Brandrup and E.H.Immergut,Interscience Publishers,1966に報告されたものであるが、その出版物が特定のホモポリマーのTgを報告していない場合、ホモポリマーのTgは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0015】
架橋性コアにおけるアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートのアルキルは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐アルキル基であり得る。例示的なモノマーには、含まれる、例示的な有用なアルキル基には、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびイソ-オクチルアクリレートが含まれる。
【0016】
架橋性コアで有用な架橋性および/またはグラフト結合性モノマーの例は、例えば、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、それらのトリメチロールプロパントリメタクリレートブレンド、およびそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0017】
好ましくは、架橋性コア中のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートのアルキルは、ブチルアクリレート(BA)であり、架橋剤は、アリルメタクリレート(ALMA)である。
【0018】
コアシェルアクリルポリマーの第2の段階は、1つ以上のモノエチレン性不飽和エステルモノマー、0.1~15重量パーセントの量の連鎖移動剤、および架橋剤の0.1~15重量パーセントの量の架橋剤を含む反応物の反応生成物である分岐ポリマーを含み、重量パーセントは、反応物の総量に基づく。
【0019】
好ましくは、連鎖移動剤は、少なくとも0.5重量パーセント、少なくとも1重量パーセント、少なくとも2重量パーセント、または少なくとも3重量パーセントの量で存在する。好ましくは、連鎖移動剤は、14重量パーセント以下、13重量パーセント以下、12重量パーセント以下、11重量パーセント以下、または10重量パーセント以下の量で存在する。
【0020】
分岐ポリマーの架橋剤は、異なる反応性を有する少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を含む多官能性不飽和モノマーである。好ましくは、架橋剤は、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される。アリル(メタ)アクリレートでは、アリル基は、ビニル基とは異なる反応性を有する。ジ(メタ)アクリレートなどの従来の架橋剤は、同一の反応性を有する炭素-炭素二重結合を有する。NMR分光法を使用して、本発明者は、同一の反応性を有する架橋剤を使用するペンダント二重結合が、重合中にほぼ完全に反応して分岐点を形成することを見出した。本発明による架橋剤は、実質的に未反応のままであり、例えば、ペンダント二重結合の少なくとも80%は、重合後に未反応のままである。これらの未反応のペンダント二重結合は、さらにグラフト化するための追加の機会を提供する。
【0021】
分岐ポリマーは、架橋されない。架橋を避けるために、架橋剤の量は、連鎖移動剤の量の+/マイナス5重量パーセント以内である。好ましくは、架橋剤の量は、連鎖移動剤の量+/-4重量パーセント以内である。より好ましくは、架橋剤の量は、連鎖移動剤の量の+/-3重量パーセント以内である。
【0022】
驚くべきことに、本発明者は、架橋剤の量が、分岐ポリマーを依然として形成する間に、連鎖移動剤の量を超える場合があることを見出した。同様の活性を有する官能基を有する架橋剤は、典型的に、モルでの架橋剤の量がモルでの連鎖移動剤の量を超える際に、架橋ポリマーを形成する。本発明によれば、モルでの架橋剤の量は、架橋ポリマーを形成することなく連鎖移動剤の量を超え得る。
【0023】
分岐ポリマーを作製するのに有用な好適なモノエチレン性不飽和エステルモノマーは、構造R’-C(O)O-Rを有することができ、式中、Rは、ヒドロカルビル基(例えば、アルキル基またはアリール基)であり、R’は、少なくとも2個または3個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和脂肪族基である。好ましくは、Rは、少なくとも1個または2個または3個の炭素原子のアルキル基である。ある特定の実施形態によれば、Rは、12個または10個または8個または6個または5個以下の炭素原子を有するアルキル基である。ある特定の実施形態によれば、Rは、6~12個の炭素原子のアリール基である。ある特定の実施形態によれば、R’は、6個以下の炭素原子を有する。好適なモノマーの例は、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチルメタクリレート、テトラヒドロフルフィルメタクリレート(tetrahydrofurfyl methacrylate)、およびベンジル(メタ)アクリレートを含む。好ましくは、モノエチレン性不飽和エステルモノマーは、メチルメタクリレートおよびブチルメタクリレートから選択される。
【0024】
ある特定の実施形態によれば、分岐ポリマーは、少なくとも1つの追加のモノエチレン性不飽和エステルモノマーを含み得る。追加のモノエチレン性不飽和エステルモノマーは、コアシェルアクリルポリマーのポリオレフィンとの適合性を改善するために選択され得る。例えば、本発明者は、ポリオレフィンがThe Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(商標)またはENGAGE(商標)ポリオレフィンポリマーから選択される際に、ラウリルメタクリレート(LMA)がコアシェルアクリルポリマーの適合性を改善できることを見出した。追加のモノエチレン性不飽和エステルモノマー(例えば、LMA)は、0、または反応物の0、1、2、3、4、もしくは5重量パーセント超、かつ反応物の20、15、もしくは10重量パーセント未満であり得る。
【0025】
ある特定の実施形態によれば、1つ以上の追加のモノ不飽和付加重合性(例えば、モノエチレン性不飽和)モノマーが、含まれ得る。例えば、スチレンまたはアクリロニトリルが、付加され得る。そのような追加のモノ不飽和付加重合性モノマーの量は、好ましくは、反応物の重量に基づいて10または5重量パーセント未満である。
【0026】
好ましくは、モノエチレン性不飽和エステルモノマーは、例えば、少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、または少なくとも90重量パーセントなどの、分岐ポリマーを形成する反応物の総重量に基づいて少なくとも65重量パーセントの量で分岐ポリマーに存在する。
【0027】
分岐ポリマーを調製するための反応物は、連鎖移動剤(CTA)をさらに含む。連鎖移動剤は、アクリレートまたはメタクリレートモノマーの重合において連鎖移動剤として有用であることが知られているか、または見出されている任意の化合物であり得る。例えば、チオール連鎖移動剤が、使用され得る。そのようなチオールCTAの例は、単官能性および多官能性チオールを含む。単官能性チオールは、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、アルキルチオグリコレート、例えば、2-エチルヘキシルチオグリコレートまたはオクチルチオグリコレート、メルカプトエタノール、メルカプトウンデカン酸、チオ乳酸、およびチオ酪酸を含むが、これらに限定されない。多官能性チオールは、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)などの三官能性化合物、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオラクテート、ペンタエリスリトールテトラチオブチレートなどの四官能性化合物、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサチオグリコレートなどの六官能性化合物、トリペンタエリスリトールオクタ(3-メルカプトプロピオネート)、およびトリペンタエリスリトールオクタチオグリコレートなどの八官能性チオールを含む。多官能性チオールの使用は、ポリマーの分岐度を高めるための有用な方法である。任意選択で、連鎖移動剤は、2種類以上の化合物の混合物を含み得る。好ましくは、CTAは、以下である。
【化1】
【0028】
代替の連鎖移動剤は、ビニルモノマーの従来のフリーラジカル重合において分子量を低下させることが知られている任意の種であり得る。例は、硫化物、二硫化物、ハロゲン含有種を含む。また、コバルト錯体などの触媒連鎖移動剤、例えば、コバルトポルフィリン化合物などのコバルト(II)キレートは、本発明にとって有用な連鎖移動剤である。好適なコバルトキレートは、当技術分野で知られており、WO98/04603に記載されている。特に好適な化合物は、CoBFとしても知られるビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメート)コバルテート(II)である。触媒連鎖移動剤は、一般に、低濃度で非常に効果的であるため、従来のチオール連鎖移動剤と比較して比較的低濃度、例えば、<0.5重量%、好ましくは<0.1重量%(単官能性モノマーに基づく)で使用され得る。我々は、驚くべきことに、コバルト錯体に基づく触媒連鎖移動化合物が、可溶性分岐ポリマーを得るための本発明の重合プロセスにおいて、単官能性モノマーに基づいて0.05重量%(500ppmw)未満、例えば、0.0001~0.01重量%(1~100ppmw)の濃度で非常に効果的に使用され得ることを見出した。
【0029】
ある特定の実施形態によれば、架橋剤はアリルメタクリレート(ALMA)であり、連鎖移動剤はBMPであり、モノエチレン性不飽和エステルモノマーはメチルメタクリレート(MMA)またはブチルメタクリレート(BMA)である。好ましくは、MMAまたはBMAは80~98重量パーセントの量で存在し、ALMAの量は1または10重量パーセントの範囲にあり、ALMAの量は、MMAまたはBMA、BMPおよびALMAの総重量に基づいて1~10重量パーセントの範囲にある。
【0030】
分岐ポリマーは、任意のフリーラジカル重合法を使用して作製され得、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、および塊状重合法は、すべて使用され得る。例えば、従来の乳化重合が、使用され得る。
【0031】
界面活性剤または乳化剤は、分岐ポリマーを形成するために使用され得る。乳化剤の例は、非イオン性、アニオン性、およびカチオン性の乳化剤を含む。
【0032】
好適な非イオン性乳化剤は、芳香脂肪族(araliphatic)または脂肪族非イオン性乳化剤であり、例は、エトキシル化モノ-、ジ-、およびトリアルキルフェノール(エトキシル化度:3~50、アルキルラジカル:C~C10)、長鎖アルコールのエトキシレート(エトキシル化度:3~100、アルキルラジカル:C~C36)、またポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドホモポリマーおよびコポリマーである。これらは、ランダムな分布で、またはブロックの形態で共重合されたアルキレンオキシド単位を含み得る。例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーは、非常に適している。長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキルラジカルC~C30、平均エトキシル化度5~100)を使用することが好ましく、これらの中でも、直鎖状C12~C20アルキルラジカルおよび10~50の平均エトキシル化度を有するもの、ならびにエトキシル化モノアルキルフェノールもまた特に好ましい。
【0033】
好適なアニオン性乳化剤は、例えば、アルキルサルフェート(アルキルラジカル:C~C22)、エトキシル化アルカノール(エトキシル化度:2~50、アルキルラジカル:C12~C18)およびエトキシル化アルキルフェノール(エトキシル化度:3~50、アルキルラジカル:C~C)を有する硫酸モノエステル、アルキルスルホン酸(アルキルラジカル:C12~C18)、ならびにアルキルアリールスルホン酸(アルキルラジカル:C~C18)のアルカリ金属ならびにアンモニウム塩である。さらに好適な乳化剤は、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg-Thieme-Verlag,Stuttgart,1961,pp.192-208に見出される。また、アニオン性乳化剤として好適なものは、ビス(フェニルスルホン酸)エーテル、および一方または両方の芳香環にC~C24アルキル基を有するそれらのアルカリ金属またはアンモニウム塩である。例えば、米国特許第4,269,749号からのこれらの化合物は、周知であり、例えば、Dowfax(商標)2A1(Dow Chemical Company)の形態で市販されている。
【0034】
好適なカチオン性乳化剤は、好ましくは、四級アンモニウムハライド、例えば、トリメチルセチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、またはN-C~C20-アルキルピリジン、-モルホリンもしくは-イミダゾールの四級化合物、例えば、N-ラウリルピリジニウムクロリドである。
【0035】
乳化剤(または界面活性剤)の量は、分岐ポリマーの形成において重合されるモノマーの量に基づいて、少なくとも0.01または0.1重量パーセント~10または5重量パーセントであり得る。
【0036】
開始剤は、分岐ポリマーを形成するために使用され得る。開始剤の例は、アゾ化合物、過酸化物、またはペルオキシエステルなどの熱開始剤の熱的に誘導された分解などによって、フリーラジカルを生成する任意の好適な方法によって開始され得る。したがって、重合混合物はまた、好ましくは、フリーラジカル重合反応において既知かつ従来使用されているもののうちのいずれかであり得る、重合開始剤を含有する。アゾ開始剤の例は、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(4-シアノ吉草酸)を含む。過酸化物およびペルオキシ開始剤の例は、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジベンゾイルペルオキシド、クミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、およびtert-ブチルペルオキシベンゾエートを含む。追加の開始剤の例は、過硫酸アンモニウムおよび/またはアルカリ金属、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸およびその塩、過マンガン酸カリウム、ならびにペルオキシ二硫酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩を含み、例は、ペルオキシ二硫酸アルカリ金属もしくはアンモニウム、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、スクシニルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルピバレート、tort-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルマレイネート(butyl permaleinate)、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルバメート、ビス(o-トルオイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペルアセテート、ジ-tert-アミルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノ-プロパン)ジヒドロクロリド、または2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)である。これらの開始剤の混合物もまた、適している。開始剤として、還元/酸化(すなわち、レドックス)開始剤系を使用することもまた、可能である。レドックス開始剤系は、少なくとも1つの、通常は無機の還元剤、および1つの有機または無機の酸化剤から構成される。酸化成分は、例えば、すでに上で特定された乳化重合開始剤を含む。還元成分は、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの、亜硫酸のアルカリ金属塩、二亜硫酸ナトリウムなどの、二亜硫酸のアルカリ金属塩、亜硫酸アセトンなどの、脂肪族アルデヒドおよびケトンの重亜硫酸塩付加化合物、またはヒドロキシメタンスルフィン酸およびその塩、もしくはアスコルビン酸などの還元剤を含む。レドックス開始剤系は、その金属成分が複数の原子価状態で存在することができる可溶性金属化合物と共に使用され得る。典型的なレドックス開始剤系は、例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、tert-ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、tert-ブチルヒドロペルオキシド/Naヒドロキシメタンスルフィネートである。個々の成分、例えば、還元成分もまた混合物であってよく、例は、ヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム塩および二亜硫酸ナトリウムの混合物である。
【0037】
開始剤の量は、一般に、重合されるすべてのモノマーに基づいて、少なくとも0.01または0.05または0.01重量パーセント~10または5または3重量パーセントである。
【0038】
分岐ポリマーは、架橋されていない。例えば、これは、テトラヒドロフランなどの溶媒におけるポリマーの溶解度を評価することによって実証され得る。架橋ポリマーは、可溶性とならない。
【0039】
ある特定の実施形態による分岐ポリマーは、1、0.95、0.9、0.8未満のポリマー分岐比g’を特徴とし得る。いくつかの実施形態によれば、g’は、少なくとも0.5または0.6または0.7である。ポリマー分岐比(g’)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析において、各溶出体積増分での分岐ポリマーの測定された固有粘度([η]分岐)を、同じ分子量(M)を有する直鎖状ポリマーの固有粘度([η]直鎖状)と比較することによって計算される(等式1)。直鎖状ポリマーの場合、g’値は1に等しく、分岐ポリマーの場合、g’は1より小さい。
【数2】
【0040】
分子量分析:ポリマーの絶対分子量(M、M)、PMMA相対分子量(Mw_PMMA、Mn_PMMA)、固有粘度([η]、[η])、および分岐比(g’)は、オンライン多角度光散乱(MALS)検出器、粘度計(VS)、および示差屈折率(dRI)検出器を用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって測定され得る。例えば、GPC装置のセットアップは、Agilent 1200シリーズHPLCシステム(デガッサ、ポンプ、オートサンプラー、およびカラムオーブン)、Wyatt HELEOS II MALS検出器、Wyatt ViscoStar II粘度計、およびWyatt T-rEX dRI検出器を含み得る。ポリマー分離は、例えば、2つのPLgel混合B LSカラム(粒径10μm、長さ7.5×300mm)を有するカラムセットで、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を1mL/分の流速で使用して行われ得る。カラムオーブン温度は、30℃に設定される。10ポイントのPMMA標準(Agilent EasiCal PM-1)のセットは、GPCカラムをキャリブレーションし、PMMA相対分子量を得るために使用され得る。絶対分子量は、Zimm形式を使用するMALS検出から得られ、固有粘度データは、粘度計から得られる。高分子量画分データ(6500Daを超えるPMMA相対分子量)は、平均g’値を計算するために使用される。g’計算の一貫性のために、Mark-Houwink等式(等式2、式中、表2の非BA含有試料についてはK=0.0383mL/gかつα=0.581、そして表2のBA含有ポリマーについてはK=0.03044mL/gかつα=0.615)からの線形PMMAモデルは、MALS検出からのMデータを使用して等式1の([η]直鎖状)を得るために使用される。
[η]=KMα (等式2)
【0041】
GPCによって測定される、分岐ポリマーの重量平均分子量Mは、ある特定の実施形態によれば、少なくとも2,500または3,000または5,000または10,000または20,000または25,000g/molの範囲にある。ある特定の実施形態によれば、重量平均分子量は、75,000または50,000g/mol以下である。ある特定の実施形態によれば、GPCによって測定される、分岐ポリマーの数平均分子量Mは、少なくとも1,250または1,500g/molである。ある特定の実施形態によれば、数平均分子量は、6,000または5,000または4,500g/mol以下である。
【0042】
ある特定の実施形態によれば、分岐構造は、樹状構造である。
【0043】
分岐ポリマーは、コアシェルアクリルポリマーの総重量の20~80重量パーセントを含み得る。好ましくは、分岐ポリマーは、コアシェルアクリルポリマーの総重量の少なくとも30重量パーセント、少なくとも45重量パーセント、または少なくとも50重量パーセントを構成する。好ましくは、分岐ポリマーは、コアシェルアクリルポリマーの総重量の70重量パーセント以下、60重量パーセント以下、または55重量パーセント以下を構成する。より好ましくは、分岐ポリマーは、コアシェルアクリルポリマーの総重量の約50重量パーセントを構成する。
【0044】
コアシェルアクリルポリマーは、ポリオレフィンポリマーとの組成物を形成する前に、乾燥、例えば、凍結乾燥され得るか、または凝固、例えば、塩化カルシウム凝固され得る。
【0045】
組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量パーセントであり得る。好ましくは、組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも20重量パーセントであり得る。より好ましくは、組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも25重量パーセントであり得る。さらにより好ましくは、組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも30重量パーセントであり得る。組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、60重量パーセント以下であり得る。好ましくは、組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、50重量パーセント以下であり得る。好ましくは、組成物中のコアシェルアクリルポリマーの量は、コアシェルアクリルポリマーおよびポリオレフィンポリマーの総重量に基づいて、30~50重量パーセントの範囲である。
【0046】
ポリオレフィンポリマーは、例えば、ホモポリマーまたはブロックもしくはランダムポリオレフィンコポリマーから選択され得る。好ましくは、ポリオレフィンポリマーは、ブロックコポリマーである。ポリオレフィンポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどを含み得、また、ヘキセン、オクテン、デセンなどのうちの1つ以上のコポリマーを含み得る。好ましくは、ポリオレフィンは、The Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(商標)またはENGAGE(商標)ポリオレフィンコポリマーなどのエチレン-オクテンコポリマーである。
【0047】
組成物は、成分をブレンドすることによって作製され得る。一実施形態によれば、成分は、2本ロールミルによってブレンドされ得る。
【0048】
ある特定の実施形態では、組成物は、高温熱有機過酸化物をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「高温熱有機過酸化物」という用語は、組成物の溶融加工温度未満の温度で1時間の半減期を有する熱有機過酸化物を指す。
【0049】
高温熱有機過酸化物の一例は、Luperox(登録商標)101(2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン)であり、140℃で1時間の半減期を有する。高温熱有機過酸化物は、コアシェルアクリルポリマーがポリオレフィンポリマーとブレンドされる前に、コアシェルアクリルポリマーと事前ブレンドされ得る。高温の熱有機過酸化物が使用される際、コアシェルアクリルポリマーは、例えば、反応性押出などによって、高温でブレンドすることによって、ポリオレフィンポリマーと架橋され得る。
【0050】
コアシェルアクリルポリマーがポリオレフィン骨格に化学的にグラフト化され得るブレンドポリマーは、機械的完全性を呈し得、コアシェルアクリルポリマーがポリオレフィンポリマーと適合性があることを示している。結果として得られるブレンドされたポリマーは、好ましくは、さらなる改変を必要とせずに、塗装可能または印刷可能である。
【0051】
組成物は、最終製品に望まれる追加の添加剤をさらに含み得る。そのような添加剤の例は、UV光安定剤および酸化防止剤を含む。ある特定の実施形態によれば、添加剤は、組成物が透明のままであるように選択される。UV光安定剤の例は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾオキサジノン、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、およびヒンダードベンゾエートを含む。市販のUVおよび光安定剤は、SolvayからのCyasorb光吸収剤および光安定剤、およびCyasorb Cynergy Solutions、BASFからのTINUVIN、ChemturaからのLowLite、PolyOneのOnCap、およびDelaware,U.S.A.のE.I.du Pont de Nemours and CompanyからのLight Stabilizer 210によって例示される。酸化防止剤の例は、フェノール系酸化防止剤、およびフェノール系酸化防止剤の亜リン酸塩、チオエーテル、または有機硫化物との組み合わせを含む。フェノール系酸化防止剤は、完全に立体障害のあるフェノールおよび部分的に障害のあるフェノール、ならびにテトラメチル-ピペリジン誘導体などの立体障害アミンを含む。好適なフェノール系酸化防止剤は、ビタミンE、およびBASFからのIRGANOX(商標)1010を含む。IRGANOX(商標)1010は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含む。抗酸化剤の追加の例は、アセチルシステイン、アルブチン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ポリペプチド、アスコルビルジパルミテート、アスコルビルメチルシラノールペクチネート、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、BHA、p-ヒドロキシアニソール、BHT、t-ブチルヒドロキノン、コーヒー酸、Camellia sinensis油、キトサンアスコルベート、キトサングリコレート、キトサンサリチレート、クロロゲン酸、システイン、システインHCI、デシルメルカプトメチルイミダゾール、エリソルビン酸、ジアミルヒドロキノン、ジ-t-ブチルヒドロキノン、ジセチルチオジプロピオネート、ジシクロペンタジエン/t-ブチルクレゾールコポリマー、ジガロイルトリオレエート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオレイルトコフェリルメチルシラノール、イソクエルシトリン、ジオスミン、アスコルビル硫酸二ナトリウム、ルチニル二硫酸二ナトリウム、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ドデシルガラート、エチルフェルレート、フェルラ酸、ヒドロキノン、ヒドロキシルアミンHCI、硫酸ヒドロキシルアミン、イソオクチルチオグリコレート、コウジ酸、マデカシコシド(madecassicoside)、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビルリン酸マグネシウム、メラトニン、メトキシ-PEG-7ルチニルスクシネート(methoxy-PEG-7 rutinyl succinate)、メチレンジ-t-ブチルクレゾール、メチルシラノールアスコルベート、ノルジヒドログアヤレト酸、オクチルガラート、フェニルチオグリコール酸、フロログルシノール、アスコルビルトコフェリルリン酸カリウム、チオジグリコールアミド、亜硫酸カリウム、プロピルガラート、ロスマリン酸、ルチン、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビル/コレステリルリン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、エリトルビン酸ナトリウム、メタ二硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、ソルビチル(sorbityl)フルフラール、ティーツリー(Melaleuca aftemifolia)油、トコフェリルアセテート、テトラヘキシルデシルアスコルベート、テトラヒドロジフェルロイルメタン、トコフェリルリノレアート/オレアート、チオジグリコール、トコフェリルスクシネート、チオジグリコール酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオサリチル酸、チオタウリン、レチノール、トコフェレス-5、トコフェレス10、トコフェレス-12、トコフェレス-18、トコフェレス-50、トコフェロール、トコフェルソラン、トコフェリルリノレアート、トコフェリルニコチネート、トコキノン、o-トリルビグアニド、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ユビキノン、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびそれらの混合物である。ある特定の実施形態によれば、使用される添加剤(もしあれば)の総量は、組成物の総重量に基づいて10または5または3重量%パーセント未満である。
【実施例
【0052】
分岐ポリマーの合成および分析
乳化重合を、メカニカルスターラー、加熱マントル、温度計、温度調節器、およびN注入口を備えた5リットルの4つ口丸底フラスコで行った。反応器に、1530部の脱イオン水、54.55部のNa-ドデシルベンゼンスルホンネート界面活性剤(DS-4、水中22%)、0.146部のFeSOおよび0.16部の酢酸を充填した。反応器の内容物を、Nスイープで60℃に加熱した。モノマーエマルジョンを、234部の脱イオン水、18.18部のDS-4界面活性剤(水中22%)、53部のアリルメタクリレート(ALMA)、696部のメチルメタクリレート(MMA)、および52部のブチル3-メルカプトプロピオアンテ(mercaptopropioante)(BMP)を有する別個の容器において調製した。機械的撹拌を適用して、乳化をもたらした。モノマーエマルジョンの合計は、1000部であった。レドックス開始剤系は、2つの別個の溶液からなる。1つ目は、水中のt-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)の3%(重量)溶液(酸化剤)であり、2つ目は、水中のホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム(SFS)の3%(重量)溶液(還元剤)であり、両方は合計53.33部である。60℃の反応器を用いて、t-BHPおよびSFS溶液の同時供給(時間ゼロ)を0.44部/分(両方とも120分の供給時間)で、モノマーエマルジョンを16.67部/分(60分の供給時間)で開始した。反応器温度を、重合プロセス全体を通して60℃に維持した。モノマー供給の終わり(時間ゼロからの総反応時間60分)で、t-BHPおよびSFSはさらに60分間続いた(時間ゼロからの総反応時間120分)。次に、反応物を、40℃に冷却し、チーズクロスで濾過した。エマルジョン粒径は58nm(光散乱による)であると測定され、固形分は30.5%(重量測定による)であり、残留BAおよびMMAモノマーは、両方とも10ppm未満(ヘッドスペースガスクロマトグラフィーによる)であった。形成されたポリマーを、以下の表1の実施例8として識別する。
【0053】
他の実施例を、上記と同じプロセス、および架橋剤(ALMA)の連鎖移動剤(BMP)との比率を変えることによって調製して、分岐ポリマーが形成されたかどうか、および分岐ポリマーの未反応のペンダント二重結合の程度を決定した。ガラス遷移温度(℃)を示差走査熱量測定(DSC)によって決定し、溶解度をテトラヒドロフラン(THF)において決定した。結果(各々少なくとも2つの試料の平均)を、以下の表1に示す。表1では、DPは、重合度、すなわち、各モノマーの単位数を指す。数平均分子量、Mを、GPCによって決定した。
【表1】
【0054】
THFへのそれらの低い溶解度によって示されるように、実施例2、6、10、および11は、架橋されていると決定された。実施例1、3、4、8、9、および12は、THFにほぼ100%溶解した。
【0055】
NMR分光分析を実施例4、8、および12に対して実施して、未反応のペンダント二重結合の量を決定した。ポリマー組成を、13C NMR積分に基づいて決定し、100%に正規化した。未反応のペンダント二重境界の量を、約132.0ppmでのその二重炭素によって計算した。分岐ALMA含量を、約65.0ppmでのその側鎖-OCHエステル炭素に基づいて推定した。以下の表2に示すように、ペンダント二重結合の少なくとも80%は、未反応のままであった。
【表2】
【0056】
比較として、NMR分析を、5重量パーセントのBMP、2.5重量パーセントの1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BGDMA)、5重量パーセントのブチルアクリレート(BA)、および87.5重量パーセントのMMAを含む分岐ポリマーに対して実行した。予想通り、ペンダント二重結合の約4%は、この比較試料において未反応であった。
【0057】
アリル官能性シェルを用いたコアシェルポリマーの合成およびポリオレフィンブレンドの調製
コアシェルポリマーを、乳化重合を使用して調製した。第1の段階の乳化重合を、メカニカルスターラー、加熱マントル、温度計、温度調節器、およびN注入口を備えた5リットルの4つ口丸底フラスコで行った。反応器に、880部の脱イオン水、0.41部の酢酸、2.62部のNaSO、239.96部のアクリルゴムプレフォーム-シードラテックスの(32.0%のラテックスの固形、59nm)、および2.44部のホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム(SFS)を充填した。反応器の内容物を、Nスイープで40℃に加熱した。モノマーエマルジョンを、241部の脱イオン水、72.76部のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)界面活性剤(水中28%)、11.36部のアリルメタクリレート(ALMA)、および1599.03部のブチルアクリレート(BA)を有する別個の容器において調製した。機械的撹拌を適用して、乳化をもたらした。モノマーエマルジョンの合計は、1924.22部であった。40℃での反応で、711.96部のモノマーエマルジョンを、1.09部の70%水性t-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)と共に添加した。重合発熱がピークに達した後、反応を54℃に冷却し、634.99部のモノマーエマルジョンを0.77部の70%水性t-BHPと共に添加した。重合発熱がピークに達した後、反応を65℃に冷却し、577.20部のモノマーエマルジョンを0.79部の70%水性t-BHPと共に添加した。重合発熱がピークに達した後、2部の70%水性t-BHPおよび1部のSFS(50部のDI水に溶解)を、反応に添加した。15分間の保持の後、次に、反応物を、40℃に冷却し、チーズクロスで濾過した。エマルジョン粒径は170nm(光散乱による)であると測定され、固形分は50.0%(重量分析による)であった。
【0058】
第2の段階の乳化重合を、メカニカルスターラー、加熱マントル、温度計、温度調節器、およびN注入口を備えた5リットルの4つ口丸底フラスコで行った。反応器に、670部の脱イオン水、1400部のアクリルゴム段階(A)、(50.0%ラテックス固形)、0.055部のFeSO、および1.5部のメチル-β-シクロデキストリンを充填した。反応器の内容物を、Nスイープで60℃に加熱した。モノマーエマルジョンを、234部の脱イオン水、18.18部のDS-4界面活性剤(水中22%)、53部のアリルメタクリレート(ALMA)、696部のメチルメタクリレート(MMA)、および52部のブチル3-メルカプトプロピオアンテ(BMP)を有する別個の容器において調製した。機械的撹拌を適用して、乳化をもたらした。モノマーエマルジョンの合計は、1000部であった。レドックス開始剤系は、2つの別個の溶液からなる。1つ目は、水中のt-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)の3%(重量)溶液(酸化剤)であり、2つ目は、水中のホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム(SFS)の3%(重量)溶液(還元剤)であり、両方は合計53.33部である。60℃の反応器を用いて、t-BHPおよびSFS溶液の同時供給(時間ゼロ)を0.44部/分(両方とも120分の供給時間)で、モノマーエマルジョンを16.67部/分(60分の供給時間)で開始した。反応器温度を、重合プロセス全体を通して60℃に維持した。モノマー供給の終わり(時間ゼロからの総反応時間60分)で、t-BHPおよびSFSはさらに60分間続いた(時間ゼロからの総反応時間120分)。次に、反応物を、40℃に冷却し、チーズクロスで濾過した。エマルジョン粒径は172nm(光散乱による)であると測定され、固形分は39.4%(重量分析による)であった。
【0059】
コアシェルアクリルポリマーを、塩化カルシウム凝固によって単離した。乳化した過酸化物(Luperox(登録商標)101)を、乾燥前にウェットケーキに添加した。
【0060】
過酸化物を有するコアシェルアクリルポリマーを、エチレン-オクテンコポリマーと30~50重量パーセントのコアシェルアクリルポリマーでブレンドした。ポリマーブレンドを、Duisburg,GermanyのBrabender GmbH & Co.KGから市販されているBrabenderミキサーを使用して、60RPM、185℃、および樹脂50グラムに維持された動作条件を用いて加工した。
【表3】