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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20241106BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01B7/18 C
H01B7/00 301
H01B13/012 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022112721
(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公開番号】P2024011043
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 凌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴健
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-083516(JP,A)
【文献】特開2007-154119(JP,A)
【文献】特開平04-363376(JP,A)
【文献】特開平11-301373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
H01B 7/00
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を束ねた電線束と、前記電線束から前記複数の電線のうち一部の電線が分岐した前記電線束より径が小さい分岐線と、を備えたワイヤハーネスにおいて、
前記分岐線は、
前記電線束との分岐部から当該電線束の長手方向の一方向に沿って延伸する第1直線部と、
前記第1直線部からU字状に屈曲する屈曲部と、
前記屈曲部から前記電線束の長手方向の他方向に延伸する第2直線部と、
前記第2直線部の先端に接続されたコネクタと、
を有し、
前記電線束および前記分岐線は、所定区間の外周に、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するテープが、その幅方向の一部をラップさせた状態で螺旋状に巻き付けられ、前記テープの裏面に塗布した粘着材により、前記電線束またはその外装材と前記テープとの間、および、前記テープ同士の間が固着されたテープ巻き部分を有し、
前記電線束、前記第1直線部、および前記第2直線部が、環状の保持テープにより束ねられており、
前記所定区間には、前記分岐線の屈曲部が含まれており
前記分岐線に巻き付けられている前記テープの一端は、前記分岐線を構成する前記電線に固着されている、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記保持テープは、幅方向に切れ込みが入っている、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記分岐線のコネクタには、オプション用の補機が接続される、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記電線束および前記分岐線の各々に、前記テープを巻き付ける工程と、
前記第1直線部、前記屈曲部および前記第2直線部を含むように前記分岐線を配索する工程と、
前記第2直線部の先端に前記コネクタを接続する工程と、
前記電線束、前記第1直線部および前記第2直線部を、前記保持テープにより束ねる工程と、
を含み、
前記電線束より径が小さい前記分岐線に対して前記テープを巻き付ける際、前記テープの前記一端を前記分岐線を構成する前記電線に固着させた後、前記テープを伸ばすようにしながら前記分岐線を構成する前記電線に巻き付けていく、
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載されるワイヤハーネスに係り、特に、外部干渉材との干渉から電線を保護するためのテープを必要部分に巻き付けたテープ巻き部分を有するワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配索されるワイヤハーネスは、他の部品や車体など外部干渉材との干渉から電線を保護するためのテープを必要部分に巻き付けた、テープ巻き部分を有している。
【0003】
図4に例を示すように、この種のワイヤハーネスWHは、裏面に粘着材が塗布されたテープTBを、複数の電線Waを束ねた電線束Wの外周の所定区間に、幅方向の一部をラップさせながら螺旋状に巻き付けたものである。テープTBは、その裏面に塗布された粘着材によって、巻き付けた電線Waと固着され、また、ラップ部分で下層のテープTBと固着されている。
【0004】
特許文献1には、そのような保護用のテープとして、繊維強化樹脂製の耐摩耗性テープを使用する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-272447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来使用されていたテープTBは、厚くて伸び率が低く、剛性の高いものであった。そのため、図5に示すように、テープTBを巻いた後に、配索状況に応じてワイヤハーネスWHを曲げると、その屈曲部Mで、テープTBがワイヤハーネスWHの曲がりに追従せずに部分的に剥がれてしまい、二重にラップした部分に隙間ができる問題があった(図5中TBeで示す箇所)。そのため、配索時に曲がる可能性のある箇所には、保護材としてテープを使用することは難しいとされていた。
【0007】
また、従来のワイヤハーネス用のテープは厚くて伸び率の低いものであったため、径の細い電線にテープを巻き付けると、テープと電線との間に隙間ができやすく、密着していない箇所ができて剥がれてしまう恐れがあった。また、作業者にとっても、厚くて伸び率の低いテープを径の細い電線に巻き付ける作業が難しいという問題があった。そのため、細い電線には、テープを使用することが難しいとされていた。
【0008】
特に、オプション用の補機が接続される分岐線が電線束から分岐したワイヤハーネスでは、分岐線を折り畳むように屈曲(180度屈曲)させて電線束に束ねられる場合があるが、この場合、分岐線の屈曲部において、テープが曲がりに追従せずに部分的に剥がれ、二重にラップした部分に隙間ができてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オプション用の分岐線を折り畳むように屈曲させて電線束に束ねる場合であっても、保護材として巻き付けたテープの剥がれを起こさずに、電線の屈曲部に巻き付けたテープを追従させ、テープを分岐線の電線に密着させて巻き付けておくことができ、しかも、外部干渉材からの干渉に対して安全に電線をテープ巻きによって保護することのできる、テープ巻き部分を有するワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記を特徴としている。
【0011】
複数の電線を束ねた電線束と、前記電線束から前記複数の電線のうち一部の電線が分岐した前記電線束より径が小さい分岐線と、を備えたワイヤハーネスにおいて、
前記分岐線は、
前記電線束との分岐部から当該電線束の長手方向の一方向に沿って延伸する第1直線部と、
前記第1直線部からU字状に屈曲する屈曲部と、
前記屈曲部から前記電線束の長手方向の他方向に延伸する第2直線部と、
前記第2直線部の先端に接続されたコネクタと、
を有し、
前記電線束および前記分岐線は、所定区間の外周に、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するテープが、その幅方向の一部をラップさせた状態で螺旋状に巻き付けられ、前記テープの裏面に塗布した粘着材により、前記電線束またはその外装材と前記テープとの間、および、前記テープ同士の間が固着されたテープ巻き部分を有し、
前記電線束、前記第1直線部、および前記第2直線部が、環状の保持テープにより束ねられており、
前記所定区間には、前記分岐線の屈曲部が含まれており
前記分岐線に巻き付けられている前記テープの一端は、前記分岐線を構成する前記電線に固着されている、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オプション用の分岐線を折り畳むように屈曲させて電線束に束ねる場合であっても、保護材として巻き付けたテープの剥がれを起こさずに、電線の屈曲部に巻き付けたテープを追従させ、テープを分岐線の電線に密着させて巻き付けておくことができ、しかも、外部干渉材からの干渉に対して安全に電線をテープ巻きによって保護することのできる、テープ巻き部分を有するワイヤハーネスを提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスを示す図である。
図2図2は、参考例に係るワイヤハーネスを示す図である。
図3図3は、参考例に係るワイヤハーネスの分岐線が張り出した状態を示す図である。
図4図4は、従来のワイヤハーネスのテープ巻き前の状態を示す図である。
図5図5は、従来のワイヤハーネスのテープ巻き後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスを示す図である。
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネスWH1は、電線束Wmと、分岐線Wbと、を備えている。
【0017】
電線束Wmは、複数の電線Waを束ねたもので、分岐線Wbは、電線束Wmから分岐した一部の電線Waから構成されている。分岐線Wbは、分岐部Sにおいて、電線束Wmから分岐されている。
【0018】
分岐線Wbは、第1直線部Wb1と、屈曲部Mと、第2直線部Wb2と、コネクタCとを有している。
【0019】
第1直線部Wb1は、電線束Wmとの分岐部Sから電線束Wmの長手方向の一方向D1に沿って延伸する。屈曲部Mは、第1直線部Wb1からU字状に屈曲する。第2直線部Wb2は、屈曲部Mから電線束Wmの長手方向の他方向D2に延伸する。コネクタCは、第2直線部Wb2の先端に接続されている。第1直線部Wb1および第2直線部Wb2は、それぞれ電線束Wmに沿って並列に配置されている。
【0020】
ワイヤハーネスWH1には、電線束Wmおよび分岐線Wbの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)の外周に、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するPVCテープ(ポリ塩化ビニルテープ)TAが巻き付けられている。なお、PVCテープTAとしては、300%以上の伸び率を有するものがより好ましい。
【0021】
本実施形態では、PVCテープTAは、その幅方向の一部である約半分をラップさせた状態で巻き付けられており、この状態をハーフラップという。テープTAの裏面には、予め全面に粘着材が塗布(貼付を含む)されており、この粘着材により、電線束WmとテープTAとの間、分岐線WbとテープTAとの間、および、テープTA同士の間(ラップ部分のテープ同士)が固着されている。そして、このテープTAをラップさせることにより、テープTAの巻き付け部分は、厚さが厚く(0.48mm)された2重巻きとなり、チューブ(厚さ0.5mm程度)によって覆った場合と同等の保護機能が得られる。
【0022】
そして、ワイヤハーネスWH1は、PVCテープTAが巻き付けられて固着された所定区間の部分がテープ巻き部分とされており、この所定区間に分岐線Wbの屈曲部Mが含まれている。
【0023】
ワイヤハーネスWH1は、テープ巻き部分とされた所定区間において、電線束Wm、第1直線部Wb1、および第2直線部Wb2が、環状の保持テープTHにより束ねられている。この保持テープTHは、両側部に、切れ込みTHaが入っている。切れ込みTHaは、保持テープTHの周方向に間隔をあけて設けられている。切れ込みTHaは、保持テープTHの両側部において、周方向の同一位置に設けられている。これにより、保持テープTHは、切れ込みTHaの形成位置において、その幅寸法が小さくされている。
【0024】
そして、上記のワイヤハーネスWH1では、分岐線Wbの第1直線部Wb1および第2直線部Wb2が電線束Wmに密着するように沿わされているので、外部干渉材と干渉するおそれがあるために配索が規制される経路規制領域Arから外れた領域に配索できる。
【0025】
このワイヤハーネスWH1は、その分岐線Wbの第2直線部Wb2の先端に設けられたコネクタCに、オプション用の補機が接続される。つまり、ワイヤハーネスWH1の分岐線Wbは、オプションの装備として、必要に応じて車両に搭載されるオプション用の補機が接続されるオプション接続回路用の配線を構成する。
【0026】
この分岐線Wbにオプション用の補機を接続する場合、ワイヤハーネスWH1の電線束Wm、第1直線部Wb1、および第2直線部Wb2を束ねている保持テープTHを剥がし、電線束Wmに沿わされている第1直線部Wb1および第2直線部Wb2を延ばして配線することとなる。このとき、保持テープTHに切れ込みTHaが入っているので、保持テープTHを容易に引き千切って除去し、保持テープTHによる分岐線Wbの電線束Wmへの結束を解除できる。
【0027】
次に、参考例について説明する。
なお、上記実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
図2は、参考例に係るワイヤハーネスを示す図である。図3は、参考例に係るワイヤハーネスの分岐線が張り出した状態を示す図である。
【0028】
図2に示すように、参考例に係るワイヤハーネスWH2には、電線束Wmおよび分岐線Wbの所定区間(外部干渉材による干渉を受ける可能性のある部分)の外周に、PVCテープ(ポリ塩化ビニルテープ)TBが巻き付けられている。この参考例に係るワイヤハーネスWH2で用いられるテープTBは、0.3mmの厚さを有し、伸び率が低く、剛性の高いものである。
【0029】
このため、分岐線Wbの屈曲部Mにおいて、テープTBが分岐線Wbの曲がりに追従せずに部分的に剥がれてしまい(図3中TBeで示す箇所)、二重にラップした部分に隙間ができてしまう。また、図3に示すように、分岐線WbにおけるテープTBの剥がれを抑えるために、保持テープTHによる結束箇所を分岐部Sに近付けて分岐線Wbを湾曲させると、分岐線Wbが経路規制領域Arに入り込んでしまい、配索が困難となる。
【0030】
これに対して、本実施形態に係るワイヤハーネスWH1によれば、電線束Wmおよび分岐線Wbの所定区間の外周に螺旋状に巻き付けられたテープTAが、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有している。このテープTAを用いれば、電線Waの曲率が大きい屈曲箇所においてもテープTAの浮き上がりによる剥離が抑えられるので、U字状の屈曲部Mを有する分岐線WbをテープTAの剥離なく電線束Wmに密着するように束ねることができる。したがって、分岐線Wbを有するワイヤハーネスWH1の配索スペースを抑え、分岐線Wbが経路規制領域Arに入り込まないように容易に配線できる。つまり、ワイヤハーネスWH1の配索可能な位置を増やせる。
【0031】
このように、ワイヤハーネスWH1によれば、外部干渉材による干渉のおそれのある区間の電線束Wmおよび分岐線Wbの外周に、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するPVCテープTAを巻き付けていることにより、外部干渉材による干渉からテープ巻き部分の電線Waを保護することができる。また、分岐線WbのU字状に屈曲させた屈曲部Mにおいても、テープTAが薄くて伸びがあるため、確実な密着状態を維持したままテープTAを電線Waの曲げに追従させることができ、テープTAの剥がれによる隙間の発生を防止することができる。
【0032】
また、薄くて伸びのあるテープTAを使用していることから、細い径の電線Wa(電線束Wm、分岐線Wb)に対してもテープTAの電線Wa(電線束Wm、分岐線Wb)に対する密着性を維持することができ、テープTAが剥がれることがない。したがって、テープTAを巻き付けた区間において、電線束Wmよりも径が小さい分岐線Wbの外周に対して、他の区間と同様にテープTAを密着して巻き付けることができる。そのため、テープ剥がれやテープ剥がれによる隙間が生じたりすることを防止できる。また、作業者は、細い径の分岐線Wbに対してテープTAを巻き付ける際に、テープTAの一端を電線Waに固着させた後、テープTAを伸ばすようにしながら電線Waに巻き付けていくことができるので、従来は作業者の手によってテープ巻きができなかったような細い径の電線Waに対してもテープ巻きを行うことができる。
【0033】
以上の結果、今までテープ巻きによる保護を行い難かった、配索時に保護対象部位に曲がりが生じるワイヤハーネスや、保護対象部位に電線や電線束の径が小さい箇所があるワイヤハーネスに対しても適用することができる。したがって、例えば、従来はテープ巻きが行えず、プロテクタやコルゲートチューブ等を装着して電線を保護していたワイヤハーネスWH1の所定区間を、テープ巻きによる保護に置き換えることが可能になり、大幅なコスト削減を図ることができる。また、ワイヤハーネスWH1の仕様に変更が生じた場合においても、プロテクタやコルゲートチューブの設計変更をする必要がなく、作業者によるテープ巻きの位置を変更するのみで対応できる。また、型によって成形されるプロテクタやコルゲートチューブ等の外装材は、各種の径の電線束に対応できる大きさとされるため、ワイヤハーネスの大径化を招く。このようなプロテクタやコルゲートチューブによる保護対象部位をテープTAによって保護できるので、ワイヤハーネスの小径化が可能である。
【0034】
また、ワイヤハーネスWH1に対する保護機能のみに着目した場合には、厚手の布テープによるテープ巻きも考えられる。しかしながら、このような布テープは、作業者の手によってテープをちぎる手切れができず、予め所定長に切断したテープを用意したり、作業者が巻き付けごとに毎回テープをカッターなどにより切断する必要が生じ、効率が大幅に低下する。これに対し、本実施形態のPVCテープTAは、作業者による手切れが可能であるため、作業の効率化を保ちつつ、ワイヤハーネスWH1を保護することができる。
【0035】
テープの厚みとしては、0.24mm以下の厚さで、且つ、ワイヤハーネスWH1に対し要求される保護機能を満たすことができるような厚み以上とする必要がある。また、このようなテープの厚みの範囲内において、想定されるワイヤハーネスWH1の曲率に応じてPVCテープTAの厚みを選択するようにしてもよい。
【0036】
なお、ワイヤハーネスWH1は、複数の電線Waを束ねた電線束Wmの途中に樹脂製のプロテクタが外装されていてもよい。この場合、プロテクタの一部と電線束Wmとにわたって、PVCテープTA、即ち、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するPVCテープTAを適当なラップ代で重ねながら巻き付ける。
【0037】
このようにすれば、プロテクタと電線Wa(電線束Wm)をテープTAで確実に結束することができると共に、プロテクタからの電線Wa(電線束Wm)の引出部を外部干渉材の干渉から保護することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネスの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数の電線(Wa)を束ねた電線束(Wm)と、前記電線束(Wm)から前記複数の電線(Wa)のうち一部の電線(Wa)が分岐した分岐線(Wb)と、を備えたワイヤハーネス(WH1)において、
前記分岐線(Wb)は、
前記電線束(Wm)との分岐部(S)から当該電線束(Wm)の長手方向の一方向(D1)に沿って延伸する第1直線部(Wb1)と、
前記第1直線部(Wb1)からU字状に屈曲する屈曲部(M)と、
前記屈曲部(M)から前記電線束(Wm)の長手方向の他方向(D2)に延伸する第2直線部(Wb2)と、
前記第2直線部(Wb2)の先端に接続されたコネクタ(C)と、
を有し、
前記電線束(Wm)および前記分岐線(Wb)は、所定区間の外周に、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有するテープ(TA)が、その幅方向の一部をラップさせた状態で螺旋状に巻き付けられ、前記テープ(TA)の裏面に塗布した粘着材により、前記電線束(Wm)またはその外装材と前記テープ(TA)との間、および、前記テープ(TA)同士の間が固着されたテープ巻き部分を有し、
前記電線束(Wm)、前記第1直線部(Wb1)、および前記第2直線部(Wb2)が、環状の保持テープ(TH)により束ねられており、
前記所定区間には、前記分岐線(Wb)の屈曲部(M)が含まれている、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【0040】
上記[1]の構成のワイヤハーネスによれば、電線束および分岐線の所定区間の外周に螺旋状に巻き付けられたテープが、0.24mm以下の厚さで長手方向に200%以上の伸び率を有している。このテープを用いれば、電線の曲率が大きい屈曲箇所においてもテープの浮き上がりによる剥離が抑えられるので、U字状の屈曲部を有する分岐線をテープの剥離なく電線束に密着するように束ねることができる。したがって、分岐線を有するワイヤハーネスの配索スペースを抑え、配索可能な位置を増やせる。
【0041】
[2] 前記保持テープ(TH)は、幅方向に切れ込み(THa)が入っている、
上記[1]に記載のワイヤハーネス。
【0042】
上記[2]の構成のワイヤハーネスによれば、電線束、第1直線部、および第2直線部を束ねる環状の保持テープに切れ込みが入っているので、保持テープを容易に引き千切って除去し、保持テープによる分岐線の電線束への結束を解除できる。
【0043】
[3] 前記分岐線(Wb)のコネクタ(C)には、オプション用の補機が接続される、
上記[1]または[2]に記載のワイヤハーネス。
【0044】
上記[3]の構成のワイヤハーネスによれば、必要に応じて保持テープを除去して分岐線を配線し、この分岐線のコネクタにオプション用の補機を接続して機能を増やせる。また、オプションの不使用時には、分岐線を電線束に結束した状態で配索スペースへコンパクトに収容できる。
【符号の説明】
【0045】
Ar 経路規制領域
C コネクタ
D1 一方向
D2 他方向
M 屈曲部
S 分岐部
TA テープ
TH 保持テープ
THa 切れ込み
Wa 電線
Wm 電線束
Wb 分岐線
Wb1 第1直線部
Wb2 第2直線部
WH1 ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5