(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】試料加工装置、遮蔽板、および試料加工方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20241106BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20241106BHJP
G01N 1/32 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01J37/09 Z
H01J37/305 A
G01N1/32 B
(21)【出願番号】P 2022147736
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】木村 達人
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003732(JP,A)
【文献】特開2006-300759(JP,A)
【文献】特開2009-174940(JP,A)
【文献】特開2016-026374(JP,A)
【文献】特開2016-173874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358201(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0255295(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0077106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さ
く、
前記遮蔽板を支持する遮蔽板ホルダーを含み、
前記遮蔽板ホルダーは、前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジのみが前記試料にあたるように前記遮蔽板を支持する、試料加工装置。
【請求項2】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さ
く、
前記遮蔽面は、
前記試料の上面に対して傾斜した第1傾斜面と、
前記第1傾斜面よりも前記試料の上面に対する傾斜角度が小さい第2傾斜面と、
を含み、
前記第1傾斜面は、前記底面に接続され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に接続されている、試料加工装置。
【請求項3】
請求項
2において、
前記第2傾斜面よりも前記試料の上面に対する傾斜角度が小さい第3傾斜面を含み、
前記第3傾斜面は、前記第2傾斜面に接続されている、試料加工装置。
【請求項4】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さ
く、
前記遮蔽板は、前記遮蔽面に接続する上面を含み、
前記試料の上面の垂線方向から見て、前記遮蔽面と前記遮蔽板の上面が形成するエッジと前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジとの間の距離は、イオンビーム強度の半値半幅よりも大きい、試料加工装置。
【請求項5】
請求項
1ないし4のいずれか1項において、
前記遮蔽板を支持する遮蔽板ホルダーを含み、
前記遮蔽板と前記遮蔽板ホルダーの接触面積は、前記遮蔽板と前記試料の接触面積よりも大きい、試料加工装置。
【請求項6】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さ
く、
前記遮蔽板を支持する遮蔽板ホルダーを含み、
前記遮蔽板と前記遮蔽板ホルダーの接触面積は、前記遮蔽板と前記試料の接触面積よりも大きく、
前記遮蔽板ホルダーの熱伝導率は、前記遮蔽板の熱伝導率よりも高い、試料加工装置。
【請求項7】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さ
く、
前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジおよび前記遮蔽面を覆う導電性テープを含む、試料加工装置。
【請求項8】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置において、前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板であって、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さ
く、
前記遮蔽面は、
前記試料の上面に対して傾斜した第1傾斜面と、
前記第1傾斜面よりも前記試料の上面に対する傾斜角度が小さい第2傾斜面と、
を含み、
前記第1傾斜面は、前記底面に接続され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に接続されている、遮蔽板。
【請求項9】
請求項
8において、
前記第2傾斜面よりも前記試料の上面に対する傾斜角度が小さい第3傾斜面を含み、
前記第3傾斜面は、前記第2傾斜面に接続されている、遮蔽板。
【請求項10】
請求項
8または9に記載の遮蔽板を準備する工程と、
前記遮蔽板を前記試料上に配置して、前記試料の一部を前記遮蔽板で覆う工程と、
前記遮蔽板および前記試料にイオンビームを照射する工程と、
を含む、試料加工方法。
【請求項11】
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置において、前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板であって、イオンビームが照射される遮蔽面と、前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、を含み、前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さい遮蔽板を準備する工程と、
前記遮蔽板を前記試料上に配置して、前記試料の一部を前記遮蔽板で覆う工程と、
前記遮蔽板および前記試料にイオンビームを照射する工程と、
を含
み、
前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジおよび前記遮蔽面を導電性テープで覆う工程を含む、試料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工装置、遮蔽板、および試料加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、クロスセクションポリッシャ(登録商標)が知られている。クロスセクションポリッシャ(登録商標)は、試料上に遮蔽板を配置してイオンビームを照射することによって、イオンビームによりエッチングされる照射領域と遮蔽板で遮蔽されてエッチングされない非照射領域との境界に沿って断面を形成する。
【0003】
特許文献1には、照射領域と非照射領域を規定するエッジ部分の厚みを他の部分の厚みよりも大きくした遮蔽板が開示されている。特許文献1において、遮蔽板は試料上に密接配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロスセクションポリッシャでは、イオンビームの約半分は遮蔽板に照射される。そのため、遮蔽板で発生した熱が試料に流入し、試料が損傷する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さく、
前記遮蔽板を支持する遮蔽板ホルダーを含み、
前記遮蔽板ホルダーは、前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジのみが前記試料にあたるように前記遮蔽板を支持する。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さく、
前記遮蔽面は、
前記試料の上面に対して傾斜した第1傾斜面と、
前記第1傾斜面よりも前記試料の上面に対する傾斜角度が小さい第2傾斜面と、
を含み、
前記第1傾斜面は、前記底面に接続され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に接続されている。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さく、
前記遮蔽板は、前記遮蔽面に接続する上面を含み、
前記試料の上面の垂線方向から見て、前記遮蔽面と前記遮蔽板の上面が形成するエッジと前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジとの間の距離は、イオンビーム強度の半値半幅よりも大きい。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さく、
前記遮蔽板を支持する遮蔽板ホルダーを含み、
前記遮蔽板と前記遮蔽板ホルダーの接触面積は、前記遮蔽板と前記試料の接触面積よりも大きく、
前記遮蔽板ホルダーの熱伝導率は、前記遮蔽板の熱伝導率よりも高い。
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置であって、
イオンビームを放出するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板と、
を含み、
前記遮蔽板は、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さく、
前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジおよび前記遮蔽面を覆う導電性テープを含む。
【0007】
このような試料加工装置では、遮蔽板の底面の面積が遮蔽面の面積よりも小さいため、底面の面積が遮蔽面の面積以上の場合と比べて、遮蔽板にイオンビームが照射されることにより遮蔽板で発生する熱の試料への流入を低減できる。したがって、このような試料加工装置では、試料の熱による損傷を低減できる。
【0008】
本発明に係る遮蔽板の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置において、前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板であって、
イオンビームが照射される遮蔽面と、
前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、
を含み、
前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さく、
前記遮蔽面は、
前記試料の上面に対して傾斜した第1傾斜面と、
前記第1傾斜面よりも前記試料の上面に対する傾斜角度が小さい第2傾斜面と、
を含み、
前記第1傾斜面は、前記底面に接続され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に接続されている。
【0009】
このような遮蔽板では、遮蔽板の底面の面積が遮蔽面の面積よりも小さいため、底面の面積が遮蔽面の面積以上の場合と比べて、遮蔽板にイオンビームが照射されることにより遮蔽板で発生する熱の試料への流入を低減できる。したがって、このような遮蔽板では、試料の熱による損傷を低減できる。
【0010】
本発明に係る試料加工方法の一態様は、
前記遮蔽板を準備する工程と、
前記遮蔽板を前記試料上に配置して、前記試料の一部を前記遮蔽板で覆う工程と、
前記遮蔽板および前記試料にイオンビームを照射する工程と、
を含む。
本発明に係る試料加工方法の一態様は、
イオンビームを照射して試料を加工する試料加工装置において、前記試料上に配置され、前記試料の一部を覆う遮蔽板であって、イオンビームが照射される遮蔽面と、前記遮蔽面に接続してエッジを形成する底面と、を含み、前記底面の面積は、前記遮蔽面の面積よりも小さい遮蔽板を準備する工程と、
前記遮蔽板を前記試料上に配置して、前記試料の一部を前記遮蔽板で覆う工程と、
前記遮蔽板および前記試料にイオンビームを照射する工程と、
を含み、
前記遮蔽面と前記底面が形成するエッジおよび前記遮蔽面を導電性テープで覆う工程を含む。
【0011】
このような試料加工方法では、遮蔽板の底面の面積が遮蔽面の面積よりも小さいため、底面の面積が遮蔽面の面積以上の場合と比べて、遮蔽板にイオンビームが照射されることにより遮蔽板で発生する熱の試料への流入を低減できる。したがって、このような試料高方法では、試料の熱による損傷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る試料加工装置を用いた試料加工方法の一例を示すフローチャート。
【
図7】試料加工方法の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 試料加工装置
まず、本発明の一実施形態に係る試料加工装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る試料加工装置100の構成を示す図である。
【0015】
試料加工装置100は、試料SにイオンビームIBを照射して試料Sを加工する。試料加工装置100では、例えば、走査電子顕微鏡用の断面試料を作製できる。
【0016】
試料加工装置100は、
図1に示すように、イオン源10と、遮蔽板20と、遮蔽板ホルダー30と、支持部材40と、試料ステージ50と、チャンバー60と、を含む。
【0017】
イオン源10は、試料SにイオンビームIBを照射する。イオン源10は、チャンバー
60の上部に取り付けられている。イオン源10は、例えば、所定の加速電圧でイオンを加速させてイオンビームIBを放出するイオン銃である。イオンビームIBとしては、例えば、Arイオンビームを用いることができる。
【0018】
遮蔽板20は、試料S上に配置される。遮蔽板20は、試料Sの上面Saの一部を覆う。試料S上に遮蔽板20を配置してイオンビームIBを照射することによって、イオンビームIBによりエッチングされる照射領域と遮蔽板20で遮蔽されてエッチングされない非照射領域との境界に沿って断面を形成できる。
【0019】
遮蔽板ホルダー30は、遮蔽板20を保持している。支持部材40は、遮蔽板ホルダー30を支持している。支持部材40は、遮蔽板20の位置を調整するための遮蔽板位置調整機構を備えている。
【0020】
試料ステージ50には、試料位置調整機構52が設けられている。試料位置調整機構52上には、試料Sを保持する試料ホルダー54が装着されている。試料位置調整機構52によって試料Sの位置を調整できる。
【0021】
試料ステージ50は、試料ホルダー54に保持された試料Sおよび遮蔽板20を軸Aを回転軸として回転可能な回転機構を備えている。軸Aは、イオンビームIBの光軸に直交する軸である。回転機構は、例えば、モーター駆動によって動作する。試料加工装置100では、回転機構によって試料Sおよび遮蔽板20を軸Aを回転軸(スイング軸)としてスイングさせながら、イオンビームIBを試料Sに照射できる。
【0022】
試料加工装置100では、遮蔽板位置調整機構および試料位置調整機構52によって、遮蔽板20と試料Sとの間の位置関係を調整できる。さらに、遮蔽板位置調整機構および試料位置調整機構52によって、試料Sとイオン源10との間の位置関係、および遮蔽板20とイオン源10との間の位置関係を調整できる。
【0023】
チャンバー60内には、試料Sが収容される。チャンバー60内は、不図示の真空ポンプによって真空状態にできる。チャンバー60内において、試料SにイオンビームIBが照射される。
【0024】
なお、図示はしないが試料加工装置100は、遮蔽板20および試料Sの位置を確認するためのカメラ、および試料Sの加工状況を確認するためのカメラを備えていてもよい。
【0025】
2. 遮蔽板
図2は、遮蔽板20を模式的に示す断面図である。
【0026】
図2に示すように、遮蔽板20は、試料S上、すなわち試料Sの上面Saに配置される。イオンビームIBは、試料Sおよび遮蔽板20の回転軸(スイング軸)となる軸Aに対して垂直に照射される。軸Aは、試料Sの上面Saと遮蔽板20との境界を通る。試料Sの上面Saは、軸Aに平行である。試料加工装置100では、軸Aに平行な試料Sの上面SaにイオンビームIBを照射し、上面Saに垂直な断面を形成できる。
【0027】
遮蔽板20は、
図2に示すように、遮蔽面2と、底面4と、上面6と、背面8と、を含む。
【0028】
【0029】
遮蔽面2は、イオンビームIBが照射される面である。遮蔽面2は、
図2および
図3に
示すように、第1傾斜面2aと、第2傾斜面2bと、を有している。
【0030】
第1傾斜面2aは、底面4に接続されている。第1傾斜面2aと底面4によってエッジ3が形成される。第1傾斜面2aは、
図2に示すように、垂直ではなく、試料Sの上面Saの垂線に対してわずかに傾いている。第1傾斜面2aと試料Sの上面Saがなす角度θ1は、鋭角である。第1傾斜面2aと試料Sの上面Saがなす角度θ1は、例えば、85°<θ1<90°である。第1傾斜面2aが試料Sの上面Saの垂線に対して傾いていることによって、イオンビームIBの照射角度がずれた場合でも遮蔽板20が試料Sの上面Saに影をつくることを防ぐことができる。
【0031】
図4は、参考例に係る遮蔽板20を模式的に示す断面図である。
【0032】
図4に示すように、遮蔽板20の遮蔽面2が垂直の場合、イオンビームIBの照射角度がずれると、遮蔽板20の影101が上面Saにできてしまう。遮蔽板20の影101が上面Saにできると、遮蔽面2と底面4がつくるエッジ3を境界として断面を作製できなくなってしまう。第1傾斜面2aを傾斜させることによって、イオンビームIBの照射角度がずれた場合でも遮蔽板20が試料Sの上面Saに影101をつくることを防ぐことができる。
【0033】
なお、第1傾斜面2aと試料Sの上面Saがなす角度θ1が小さくなると、イオンビームIBの照射によって遮蔽板20のエッチングが進んでしまい、遮蔽板20の消耗が早くなってしまう。そのため、第1傾斜面2aと試料Sの上面Saがなす角度θ1は、85°<θ1<90°とする。
【0034】
第2傾斜面2bは、第1傾斜面2aに接続されている。第2傾斜面2bは、上面6に接続されている。第2傾斜面2bと上面6によって、エッジ5が形成される。第2傾斜面2bは、第1傾斜面2aよりも試料Sの上面Saに対する傾斜角度が小さい。第2傾斜面2bと試料Sの上面Saがなす角度θ2は、鋭角である。第2傾斜面2bと試料Sの上面Saがなす角度θ2は、例えば、65°<θ2<θ1である。
【0035】
ここで、試料Sの断面形状は、遮蔽面2の形状に影響を受ける。特に、第1傾斜面2aおよびエッジ3の形状は、試料Sの断面形状に影響を与える。これに対して、第2傾斜面2bの形状は試料Sの断面形状にほとんど影響しない。そのため、第1傾斜面2aは精密に研磨しなければならないが、第2傾斜面2bは精密な研磨は要求されない。このように遮蔽板20では、遮蔽面2が第1傾斜面2aおよび第2傾斜面2bを有することによって、精密に研磨する領域を狭くでき、遮蔽板20を容易に製造できる。例えば、
図4に示すように遮蔽面2が1つの傾斜面からなる場合、遮蔽面2の全体を精密に研磨しなければならない。
【0036】
底面4は、試料Sの上面Saを向く面である。底面4は、遮蔽面2に接続されている。遮蔽面2と底面4によって、エッジ3が形成される。図示の例では、第1傾斜面2aが底面4に接続されてエッジ3を形成している。エッジ3は、イオンビームIBでエッチングされる照射領域と遮蔽板20で遮蔽されてイオンビームIBでエッチングされない非照射領域との境界を決める。
【0037】
試料加工装置100では、エッジ3のみが試料Sの上面Saにあたるように遮蔽板20が遮蔽板ホルダー30で支持されている。
図2に示す例では、遮蔽板20の底面4は試料Sの上面Saに接しておらず、エッジ3のみが上面Saに接している。底面4は試料Sの上面Saに対して傾斜しているため、底面4は試料Sに接触しない。遮蔽板20では、底面4が試料Sに接触しないため、底面4に対して精密な研磨が不要である。
【0038】
底面4の面積は、遮蔽面2の面積よりも小さい。遮蔽面2のエッジ3に沿った最大の大きさW2と底面4のエッジ3に沿った最大の大きさW4は、等しい。遮蔽面2のエッジ3に垂直な最大の大きさL2は、底面4のエッジ3に垂直な最大の大きさL4よりも大きい。底面4の大きさW4は、底面4の大きさL4よりも大きい。底面4の大きさW4は、イオンビームIBの径よりも大きくしなければならないため、底面4の大きさL4を小さくすることによって底面4の面積を小さくしている。また、遮蔽板20では、底面4の長さL4が小さいため、長さL4に沿った遮蔽板20の熱膨張による変形量が小さい。したがって、遮蔽板20では、熱によるエッジ3のずれが小さい。
【0039】
試料加工装置100では、底面4の面積を遮蔽面2の面積よりも小さくすることによって、例えば、底面4の面積が遮蔽面2の面積以上の場合と比べて、イオンビームIBが照射されることにより遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。したがって、試料Sの熱による損傷を低減できる。また、試料加工装置100では、試料Sと遮蔽板20の接触面積が遮蔽板20の遮蔽面2の面積よりも小さい。そのため、試料加工装置100では、イオンビームIBが照射されることにより遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。
【0040】
上面6は、遮蔽面2の第2傾斜面2bに接続されている。遮蔽面2と上面6によって、エッジ5が形成されている。エッジ5は、イオンビームIBの強度が弱い位置に配置される。エッジ5は、イオンビームIBによってエッチングされやすい形状を有している。そのため、例えば、
図4に示すように、遮蔽面2と上面6が形成するエッジ5に強いイオンビームIBが照射されるとエッジ5が選択的にエッチングされてしまい、遮蔽板20が消耗してしまう。イオンビームIBの強度が弱い位置にエッジ5を配置することによって、遮蔽板20の消耗を低減できる。
【0041】
例えば、試料Sの上面Saの垂線方向から見て(すなわち、イオンビームIBの照射方向から見て)、エッジ5とエッジ3との間の距離Dは、イオンビームIBの強度の半値半幅よりも大きい。イオンビームIBの強度の半値半幅は、半値全幅の半分の大きさである。エッジ3上にはイオンビームIBの中心軸が位置するため、距離DをイオンビームIBの強度の半値半幅よりも大きくすることによって、エッジ5をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置でき、エッジ5に強いイオンビームIBが照射されることを防ぐことができる。
【0042】
遮蔽面2が第2傾斜面2bを有することによって、遮蔽板20が大きくなることを防ぎつつ、エッジ5をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置できる。例えば、遮蔽面2が1つの傾斜面のみからなる場合、遮蔽面2と上面6が形成するエッジ5をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置するためには、遮蔽板20の高さを大きくしなければならず、遮蔽板20とイオン源10との間の距離が小さくなってしまう。
【0043】
これに対して、遮蔽面2が、第1傾斜面2aよりも傾斜角度が小さい第2傾斜面2bを有することによって、遮蔽板20の高さが大きくなることを防ぎつつ、エッジ5をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置できる。したがって、遮蔽板20とイオン源10との間の距離を適切に保ちつつ、エッジ5をイオンビームIBの強度が弱い位置に配置できる。
【0044】
背面8は、遮蔽面2の反対側の面である。背面8は、上面6に接続されている。背面8は、底面4に接続されている。背面8には、遮蔽板ホルダー30が接続されている。
【0045】
遮蔽板ホルダー30は、遮蔽板20の熱を逃がす。遮蔽板ホルダー30の熱伝導率は、
遮蔽板20の熱伝導率よりも高い。遮蔽板20の材質は、例えば、ステンレス鋼である。遮蔽板ホルダー30の材質は、例えば、銅である。
【0046】
イオンビームIBが照射されることによって遮蔽板20に生じた熱は、遮蔽板ホルダー30を通して放熱される。遮蔽板20では、遮蔽面2の面積が大きいため、背面8の面積も大きくすることができる。例えば、背面8の面積は、底面4の面積よりも大きい。そのため、遮蔽板20と遮蔽板ホルダー30の接触面積を、遮蔽板20と試料Sの接触面積よりも大きくできる。これにより、遮蔽板20では、遮蔽板20を効率よく放熱でき、かつ、試料Sへの熱の流入を低減できる。この結果、試料Sの温度の上昇を低減できる。
【0047】
このように遮蔽板20では、イオンビームIBが照射されることによって生じた熱を、効率よく放熱できる。そのため、遮蔽板20の材質として、スーパーインバーなどの熱膨張率が低い材料を用いなくてもよく、材料の自由度が高い。例えば、遮蔽板20の材質として、研磨しやすい均質な材料を選択できる。
【0048】
3. 試料加工方法
図5は、試料加工装置100を用いた試料加工方法の一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、遮蔽板20を準備する(S100)。
【0050】
次に、遮蔽板20を試料S上に配置して、試料Sの一部を遮蔽板20で覆う(S102)。
【0051】
図2に示すように、遮蔽板20を遮蔽板ホルダー30に装着し、遮蔽板20のエッジ3を試料S上の断面を作製する位置に配置する。このとき、遮蔽板20のエッジ3のみが試料Sの上面Saにあたるように、遮蔽板20を試料S上に配置する。遮蔽板20の位置は遮蔽板位置調整機構で調整でき、試料Sの位置は試料位置調整機構52で調整できる。また、遮蔽板20のエッジ3の位置を、イオンビームIBの照射位置に合わせる。例えば、エッジ3上にイオンビームIBの中心が位置するように、遮蔽板20および試料Sの位置合わせを行う。
【0052】
次に、遮蔽板20および試料Sの上面SaにイオンビームIBを照射する(S104)。
【0053】
図1に示すように、チャンバー60内を真空状態とし、イオン源10からイオンビームIBを照射する。このとき、試料Sおよび遮蔽板20をスイングさせてもよい。試料Sの一部を遮蔽板20で覆った状態でイオンビームIBを照射することによって、エッジ3に沿って試料Sの断面を形成できる。
【0054】
上記の工程により、試料Sの断面を作製できる。このようにして形成された試料Sの断面は、走査電子顕微鏡等で観察できる。
【0055】
4. 効果
試料加工装置100は、試料S上に配置され、試料Sの一部を覆う遮蔽板20を含む。遮蔽板20は、イオンビームIBが照射される遮蔽面2と、遮蔽面2に接続してエッジ3を形成する底面4と、を含み、底面4の面積は、遮蔽面2の面積よりも小さい。そのため、試料加工装置100では、例えば、底面4の面積が遮蔽面2の面積以上の場合と比べて、イオンビームIBが照射されることにより遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。したがって、試料Sの熱による損傷を低減できる。
【0056】
さらに、遮蔽面2の面積を底面4の面積よりも大きくすることによって、背面8の面積を大きくできる。そのため、遮蔽板20と遮蔽板ホルダー30の接触面積を大きくでき、遮蔽板20で発生した熱を遮蔽板ホルダー30を通して放熱できる。
【0057】
試料加工装置100では、遮蔽板20を支持する遮蔽板ホルダー30を含み、遮蔽板ホルダー30は、遮蔽面2と底面4が形成するエッジ3のみが試料Sにあたるように遮蔽板20を支持する。そのため、試料加工装置100では、底面4の全体が試料Sに接触する場合と比べて、遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。
【0058】
試料加工装置100では、遮蔽面2は、試料Sの上面Saに対して傾斜した第1傾斜面2aと、第1傾斜面2aよりも試料Sの上面Saに対する傾斜角度が小さい第2傾斜面2bと、を含む。また、第1傾斜面2aは底面4に接続され、第2傾斜面2bは第1傾斜面2aに接続されている。そのため、試料加工装置100では、遮蔽板20が大きくなることを防ぎつつ、エッチングされやすい形状のエッジ5に強いイオンビームIBが照射されることを防ぐことができる。
【0059】
試料加工装置100では、遮蔽板20は、遮蔽面2に接続する上面6を含み、試料Sの上面Saの垂線方向から見て、遮蔽面2と上面6が形成するエッジ5と遮蔽面2と底面4が形成するエッジ3との間の距離Dは、イオンビームIBの強度の半値半幅よりも大きい。そのため、エッチングされやすい形状のエッジ5に強いイオンビームIBが照射されることを防ぐことができる。
【0060】
試料加工装置100では、遮蔽板20と遮蔽板ホルダー30の接触面積は、遮蔽板20と試料Sの接触面積よりも大きい。そのため、試料加工装置100では、遮蔽板20で発生した熱を遮蔽板ホルダー30を通して放熱でき、かつ、熱の試料Sへの流入を低減できる。したがって、試料Sの熱による損傷を低減できる。
【0061】
試料加工装置100では、遮蔽板ホルダー30の熱伝導率は、遮蔽板20の熱伝導率よりも高い。そのため、試料加工装置100では、遮蔽板20で発生した熱を遮蔽板ホルダー30を通して効率よく放熱できる。
【0062】
試料加工装置100を用いた試料加工方法では、遮蔽板20を試料S上に配置して、試料Sの一部を遮蔽板20で覆う工程と、遮蔽板20および試料SにイオンビームIBを照射する工程と、を含む。そのため、このような試料加工方法では、試料Sの熱による損傷を低減できる。
【0063】
5. 変形例
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。以下では、上述した実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0064】
5.1. 第1変形例
図6は、試料加工方法の変形例を説明するための図である。
【0065】
試料加工装置100は、導電性テープ210を含む。
図6に示すように、遮蔽板20の遮蔽面2およびエッジ3は、導電性テープ210で覆われている。図示の例では、遮蔽面2、エッジ3、底面4、エッジ5、および上面6が、導電性テープ210で覆われている。導電性テープ210は、遮蔽板20のうちの少なくともイオンビームIBが照射される領域を覆う。
【0066】
導電性テープ210は、例えば、導電層212と、粘着層214と、を含む。導電層212は、例えば、アルミニウム、銅、カーボンなどからなる金属箔や、グラファイトシートなどの導電性薄膜である。圧延によって製造された光沢のある金属箔は表面粗さが小さいため、導電層212として好ましい。導電層212の厚さは、例えば、50μm程度である。導電層212の表面は、鏡面であることが好ましい。粘着層214は、導電性を有する接着剤である。粘着層214は、耐熱性を有する。
【0067】
図7は、試料加工方法の変形例を示すフローチャートである。第1変形例では、遮蔽板20を試料S上に配置する工程S102の前に、遮蔽板20のエッジ3および遮蔽面2を導電性テープ210で覆う工程S101を含む点で、上述した
図5に示す試料加工方法と異なる。ここでは、上述した
図5に示す試料加工方法と異なる点について説明し、同様の点についてはその説明を省略する。
【0068】
遮蔽板20のエッジ3および遮蔽面2を導電性テープ210で覆う工程S101では、
図6に示すように、遮蔽板20に導電性テープ210をしわや気泡がないように貼り付ける。導電性テープ210にしわや気泡があると、試料Sの断面形状に影響を与えてしまう。また、導電性テープ210にしわや気泡があると、イオンビームIBによってしわや気泡の部分が選択的にエッチングされて、導電性テープ210に孔があいてしまう場合がある。
【0069】
遮蔽板20を試料S上に配置する工程S102では、遮蔽面2およびエッジ3が導電性テープ210で覆われた遮蔽板20を遮蔽板ホルダー30に装着する。このとき、導電性テープ210で覆われたエッジ3のみが試料Sにあたるように遮蔽板ホルダー30が遮蔽板20を支持する。すなわち、導電性テープ210でエッジ3を覆うことによって形成されるエッジのみが試料Sにあたる。
【0070】
イオンビームIBを照射する工程S104では、遮蔽面2およびエッジ3が導電性テープ210で覆われた遮蔽板20にイオンビームIBを照射する。
【0071】
以上の工程により、試料Sの断面を作製できる。
【0072】
第1変形例では、遮蔽面2と底面4が形成するエッジ3および遮蔽面2を導電性テープ210で覆う工程を含むため、遮蔽板20の消耗する領域を導電性テープ210で覆うことができる。これにより、遮蔽板20の消耗を低減できる。また、導電性テープ210を張り替えることで、遮蔽板20を再利用できるため、低コスト化を図ることができる。また、エッジ3を導電性テープ210で覆うため、凹凸の無いきれいなエッジ3を得ることができる。例えば、導電性テープ210の導電層212として、圧延によって製造された光沢のある金属箔を用いることにより、機械加工および研磨によって精度の高い遮蔽面2を作成しなくてもよい。
【0073】
図8は、プリント基板の断面の走査電子顕微鏡像(SEM像)である。
【0074】
図8に示すプリント基板のSEM像は、遮蔽面2およびエッジ3をアルミニウム箔テープで覆った遮蔽板20を用いて、ブロードなイオンビームで加工した断面のSEM写真である。遮蔽面2およびエッジ3を導電性テープで覆った遮蔽板20を用いて加工を行った場合でも、走査電子顕微鏡による観察に適した良好な断面を得ることができた。
【0075】
5.2. 第2変形例
図9は、遮蔽板20の変形例を模式的に示す断面図である。
【0076】
図9に示すように、遮蔽板20の遮蔽面2は、第1傾斜面2aと、第2傾斜面2bと、第3傾斜面2cと、第4傾斜面2dと、を有していてもよい。
【0077】
第3傾斜面2cは、第2傾斜面2bに接続されている。第3傾斜面2cと試料Sの上面Saがなす角度(傾斜角度)は、第2傾斜面2bと試料Sの上面Saがなす角度θ2よりも小さい。第4傾斜面2dは、第3傾斜面2cに接続されている。第4傾斜面2dと試料Sの上面Saがなす角度(傾斜角度)は、第3傾斜面2cと試料Sの上面Saがなす角度よりも小さい。
【0078】
図9に示す遮蔽板20は、
図2に示す遮蔽板20と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
なお、
図2および
図9に示す例では、各傾斜面が平面である場合について説明したが、各傾斜面は曲面であってもよい。また、
図2に示す遮蔽板20では遮蔽面2が2つの傾斜面を有し、
図9に示す遮蔽板20では遮蔽面2が4つの傾斜面を有していたが、遮蔽面2が有する傾斜面の数は特に限定されない。
【0080】
5.3. 第3変形例
図10~
図14は、遮蔽板20の変形例を模式的に示す断面図である。
【0081】
図10および
図11に示すように、底面4は、複数の面を含んでいてもよい。
【0082】
図10に示す遮蔽板20では、底面4は、第1底面4aと、第2底面4bと、を含む。第1底面4aは、遮蔽面2とともにエッジ3を形成している。第1底面4aは、試料Sの上面Saに対して平行な面であり、試料Sに接している。第2底面4bは第1底面4aに接続している。第2底面4bは、試料Sの上面Saに対して傾斜している。第2底面4bは、試料Sの上面Saに接していない。
図10に示す遮蔽板20では、底面4の面積は遮蔽面2の面積よりも小さいため、
図2に示す遮蔽板20と同様に、遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。
【0083】
図11に示す遮蔽板20では、底面4は、第1底面4aと、第2底面4bと、を含む。第1底面4aは、遮蔽面2とともにエッジ3を形成している。第1底面4aは、試料Sの上面Saに対して平行な面であり、試料Sに接している。第1底面4aと第2底面4bとの間には段差が設けられている。第2底面4bは、試料Sの上面Saに接していない。
図11に示す遮蔽板20では、底面4の面積は遮蔽面2の面積よりも小さいため、
図2に示す遮蔽板20と同様に、遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。
【0084】
図12に示す遮蔽板20では、底面4の全体が試料Sの上面Saに接している。底面4の面積は遮蔽面2の面積よりも小さいため、
図2に示す遮蔽板20と同様に、遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。
【0085】
図13および
図14に示すように、底面4は曲面であってもよい。
【0086】
図13に示す遮蔽板20では、底面4は凸状の曲面である。
図14に示す遮蔽板20では、底面4は凹状の曲面である。
図13に示す遮蔽板20および
図14に示す遮蔽板20では、
図2に示す遮蔽板20と同様に、エッジ3のみが試料Sの上面Saにあたっている。そのため、
図13に示す遮蔽板20および
図14に示す遮蔽板20では、
図2に示す遮蔽板20と同様に、遮蔽板20で発生した熱の試料Sへの流入を低減できる。
【0087】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0088】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0089】
2…遮蔽面、2a…第1傾斜面、2b…第2傾斜面、2c…第3傾斜面、2d…第4傾斜面、3…エッジ、4…底面、4a…第1底面、4b…第2底面、5…エッジ、6…上面、8…背面、10…イオン源、20…遮蔽板、30…遮蔽板ホルダー、40…支持部材、50…試料ステージ、52…試料位置調整機構、54…試料ホルダー、60…チャンバー、100…試料加工装置、101…影、210…導電性テープ、212…導電層、214…粘着層