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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/08 20060101AFI20241106BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F01M1/08 D
F01M1/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022158089
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2024051769
(43)【公開日】2024-04-11
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健介
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】駒形 莉菜
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】長井 順太郎
(72)【発明者】
【氏名】田頭 佑規
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-042617(JP,U)
【文献】実開昭56-117009(JP,U)
【文献】実開昭62-038406(JP,U)
【文献】特開2015-068249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/06、 1/08、 9/10
F02D 1/04
F02F 1/20
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(1)の架設方向を前後方向、前後方向の一方側を前、他方側を後として、シリンダブロック前壁(2a)と、カム軸室前壁(2b)と、カム軸室前壁(2b)の後側に設けられたカム軸室(2c)を備え、カム軸室(2c)にカム軸(5)が収容され、
カム軸室前壁(2b)は、カム軸(5)の前軸受孔(2d)と、その下方に配置された前孔(2e)を備え、カム軸室後壁(2f)は、前孔(2e)と同心の後孔(2g)を備え、
シリンダブロック前壁(2a)は、前孔(2e)の内周面に通路出口(8a)が形成されたオイル供給通路(8)を備え、カム軸室前壁(2b)の前孔(2e)に、オイル供給通路(8)の通路出口(8a)を覆う嵌入部品(9)が内嵌され、嵌入部品(9)は、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)をカム軸(5)に噴射するカム軸用オイルジェット孔(9a)を備え、
カム軸室前壁(2b)の前側にカム軸(5)のカム軸入力ギヤ(12)を備え、嵌入部品(9)は、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)をカム軸入力ギヤ(12)に噴射するギヤ用オイルジェット孔(9c)を備えている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
カム軸用オイルジェット孔(9a)とギヤ用オイルジェット孔(9c)は嵌入部品(9)の内径に沿う内径部(9b)に設けられている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
カム軸用オイルジェット孔(9a)は嵌入部品(9)の内径に沿う内径部(9b)に設けられている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
ギヤ用オイルジェット孔(9c)は嵌入部品(9)の内径に沿う内径部(9b)に設けられている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、所定の回転軸の有無で区別される異仕様エンジンでシリンダブロックを共用する場合に、軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸のカムの潤滑に支障が生じないエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カム軸室に所定の回転軸(ガバナ軸)を架設したエンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
この所定の回転軸(ガバナ軸)が有る軸有仕様のエンジンと同じシリンダブロックを共用し、所定の回転軸(ガバナ軸)の無い軸無仕様のエンジンを製造することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-83336号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 軸無仕様のエンジンではカム軸のカムの潤滑に支障が生じるおそれがある。
上記のようにして、軸無仕様のエンジンを製造した場合、所定の回転軸(ガバナ軸)でエンジンオイルを跳ね上げることができないため、カム軸室内のオイルミストが不足し、カム軸のカムの潤滑に支障が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、所定の回転軸の有無によって区別される異仕様エンジンでシリンダブロックを共用する場合に、軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸のカムの潤滑に支障が生じないエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図1に例示するように、クランク軸(1)の架設方向を前後方向、前後方向の一方側を前、他方側を後として、図2に例示するように、シリンダブロック前壁(2a)と、カム軸室前壁(2b)と、図3に例示するように、カム軸室前壁(2b)の後側に設けられたカム軸室(2c)を備え、カム軸室(2c)にカム軸(5)が収容され、
図3に例示するように、カム軸室前壁(2b)は、カム軸(5)の前軸受孔(2d)と、その下方に配置された前孔(2e)を備え、カム軸室後壁(2f)は、前孔(2e)と同心の後孔(2g)を備え、
図2に例示するように、シリンダブロック前壁(2a)は、前孔(2e)の内周面に通路出口(8a)が形成されたオイル供給通路(8)を備え、カム軸室前壁(2b)の前孔(2e)に、オイル供給通路(8)の通路出口(8a)を覆う嵌入部品(9)が内嵌され、図3に例示するように、嵌入部品(9)は、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)をカム軸(5)に噴射するカム軸用オイルジェット孔(9a)を備え、
図3に例示するように、カム軸室前壁(2b)の前側にカム軸(5)のカム軸入力ギヤ(12)を備え、嵌入部品(9)は、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)をカム軸入力ギヤ(12)に噴射するギヤ用オイルジェット孔(9c)を備えている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果》所定の回転軸(R)の有無によって区別される異仕様エンジンでシリンダブロック(2)を共用する場合に、軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸(5)のカム(5a)の潤滑に支障が生じない。
図10に例示するように、嵌入部品(9)の無い前孔(2e)と後孔(2g)に内嵌した前後軸受(30d)(30e)を介して所定の回転軸(R)をカム軸(5)の下方に架設すれば、軸有仕様のエンジンを製造することができるため、シリンダブロック(2)を軸有仕様のエンジンと共用することができる。
そして、図3に例示するように、エンジンオイル(7)がオイルジェット孔(9a)からカム軸(5)に噴射されるため、回転によってエンジンオイル(7)を跳ね上げる所定の回転軸(R)(図10に例示)が無い軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸(5)のカム(5a)の潤滑には支障がない。
このように、所定の回転軸(R)の有無によって区別される各仕様のエンジンでシリンダブロック(2)を共用する場合に、軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸(5)のカム(5a)の潤滑に支障が生じない。
《効果》カム軸入力ギヤ(12)の潤滑性が高い。
オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)がギヤ用オイルジェット孔(9c)からカム軸入力ギヤ(12)に噴射されるため、カム軸入力ギヤ(12)の潤滑性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る軸無仕様のエンジンの一部切欠要部右側面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5図1のエンジンの右側面図である。
図6図1のエンジンの左側面図である。
図7図1のエンジンの正面図である。
図8図1のエンジンの背面図である。
図9図1のエンジンの平面図である。
図10図1のエンジンとシリンダブロックを共用する軸有仕様のエンジンの一部切欠要部右側面図である。
図11図10のXI-XI線断面図である。
図12図10のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から図9は本発明の実施形態に係る軸無仕様のエンジンを説明する図、図10から図12は、軸無仕様のエンジンとシリンダブロックを共用する軸有仕様のエンジンで、この実施形態では、コモンレール式の立形直列多気筒(3気筒)ディーゼルエンジンについて説明する。
【0010】
図1に示すように、クランク軸の架設方向を前後方向、前後方向の一方側を前、他方側を後、図2に示すように、前後方向と直交するエンジンの幅方向を横方向とする。
図5に示す軸無仕様のエンジンは、シリンダブロック(2)と、シリンダブロック(2)の上部に組み付けられたシリンダヘッド(14)と、シリンダヘッド(14)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(15)と、シリンダブロック(2)の前部に組み付けられた調時伝動ケース(10)と、調時伝動ケース(10)の前側に配置されたエンジン冷却ファン(16)と、シリンダブロック(2)の後部に配置されたフライホイール(17)と、シリンダブロック(2)の下部に組み付けられたオイルパン(18)を備えている。シリンダブロック(2)の下部でクランクケース(2h)が構成されている。
クランクケース(2h)には、クランク軸(1)が収容されている。
このエンジンは、吸気装置と、燃料供給装置と、排気装置を備えている。
【0011】
図5に示すように、吸気装置は、シリンダヘッド(14)の横一方側に組み付けられた吸気マニホルド(19)を備えている。吸気マニホルド(19)内の空気は、吸気弁(図示せず)の開弁により吸気ポート(図示せず)から各気筒(図示せず)に吸引される。
図6に示すように、排気装置は、シリンダヘッド(14)の横他方側に組み付けられた排気マニホルド(20)を備えている。各気筒の排気は、排気弁(図示せず)の開弁により排気ポート(図示せず)から排気マニホルド(20)に排出される。
吸気弁と排気弁は、図4に示す動弁カム軸(21)のカム(図示せず)で開閉駆動される。
【0012】
図5に示すように、燃料供給装置は、燃料圧送ポンプ(4)と、燃料噴射装置(3)を備えている。
燃料噴射装置(3)は、コモンレール式燃料噴射装置(3a)で、コモンレール(3b)と、コモンレール(3b)に蓄圧された液体燃料を各気筒に噴射する燃料インジェクタ(3c)を備えている。
コモンレール(3b)に液体燃料を供給する燃料圧送ポンプ(4)は、燃料サプライポンプ(4a)である。
【0013】
図5に示す燃料インジェクタ(3c)の電磁弁は、アクセルポジションとエンジン負荷の検出に基づいて、エンジンECU(22)の制御により、所定のタイミングで所定期間開弁され、所定タイミングで所定量の液体燃料が燃料インジェクタ(3c)から各気筒に噴射される。エンジンECU(22)は、シリンダブロック(2)の吸気側の側面に取り付けられている。
ECUは電子制御ユニットの略称で、マイコンが用いられている。
エンジンECU(22)は、このエンジンの制御装置(6)として機能する。
【0014】
図5に示す燃料インジェクタ(3c)の電磁弁の開閉のタイミングは、クランク軸(1)のクランク角度と動弁カム軸(21)のカムポジションに基づいて設定される。
アクセルポジションは、アクセルポジションセンサ(図示せず)で検出される。
エンジン負荷は、アクセルポジションとエンジン回転数との比較によりエンジンECU(22)で演算される。
エンジン回転数とクランク軸(1)のクランク角度は、クランク軸(1)に取り付けられたクランク軸ディスク(図示せず)の外周の凹凸を検出する電磁ピックアップ(図示せず)により検出され、カムポジションは、図4に示す動弁カム軸(21)に取り付けられたカム軸ディスク(図示せず)の外周の凹凸を検出するカムポジションセンサ(図示せず)により検出される。
【0015】
図2に示すように、このエンジンは、シリンダブロック前壁(2a)と、カム軸室前壁(2b)と、図3に示すように、カム軸室前壁(2b)の後側に設けられたカム軸室(2c)を備え、カム軸室(2c)にカム軸(5)が収容されている。
図2に示すように、このカム軸(5)は、燃料圧送ポンプ(4)を駆動するポンプ駆動カム軸(5)である。
【0016】
図3に示すようにカム軸室前壁(2b)は、カム軸(5)の前軸受孔(2d)と、その下方に配置された前孔(2e)を備え、カム軸室後壁(2f)は、前孔(2e)と同心の後孔(2g)を備えている。
【0017】
図10に示すように、嵌入部品(9)の無い前孔(2e)と後孔(2g)に内嵌した前後軸受(30d)(30e)を介して所定の回転軸(R)をカム軸(5)の下方に架設すれば、軸有仕様のエンジンを製造することができるため、軸無仕様のエンジンと軸有仕様のエンジンでシリンダブロック(2)を共用することができる。
【0018】
図2に示すように、シリンダブロック前壁(2a)は前孔(2e)の内周面に通路出口(8a)が形成されたオイル供給通路(8)を備え、カム軸室前壁(2b)の前孔(2e)に、オイル供給通路(8)の通路出口(8a)を覆う嵌入部品(9)が内嵌され、図3に示すように、嵌入部品(9)は、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)をカム軸(5)に噴射するカム軸用オイルジェット孔(9a)を備えている
【0019】
図3に示すように、エンジンオイル(7)がカム軸用オイルジェット孔(9a)からカム軸(5)に噴射されるため、回転によってエンジンオイル(7)を跳ね上げる所定の回転軸(R)(図10図示)が無い軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸(5)のカム(5a)の潤滑には支障がない。
このように、所定の回転軸(R)の有無によって区別される異仕様エンジンでシリンダブロック(2)を共用する場合に、軸無仕様のエンジンでありながら、カム軸(5)のカム(5a)の潤滑に支障が生じない。
【0020】
図2に示すように、カム軸(5)は、カム軸室(2c)に差し込まれた燃料圧送ポンプ(4)を駆動するカム(5a)を備えている。
所定の回転軸(R)はPTO軸(30)である。PTOとは、パワーテイクオフの略称で、エンジンから作業出力を取り出すことをいう。
所定の回転軸(R)はPTO軸(30)の他、ガバナ軸やバランサ軸であってもよい。
図4に示すように、このエンジンでは、カム軸室前壁(2b)は、シリンダブロック前壁(2a)から横側に張り出し、図2に示すように、カム軸室(2c)はシリンダブロック(2)の横側に形成されている。
【0021】
図3に示すように、このエンジンでは、カム軸用オイルジェット孔(9a)は嵌入部品(9)の内径に沿う内径部(9b)に設けられている。
このエンジンではカム軸用オイルジェット孔(9a)の配置や向きの設定の自由度が高く、カム軸用オイルジェット孔(9a)からのエンジンオイル(7)の噴射方向や噴射位置を適正化できる。
【0022】
図3に示すように、このエンジンでは、カム軸室前壁(2b)の前側にカム軸(5)のカム軸入力ギヤ(12)を備え、図3,4に示すように、嵌入部品(9)は、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)をカム軸入力ギヤ(12)に噴射するギヤ用オイルジェット孔(9c)を備えている。
【0023】
このエンジンでは、オイル供給通路(8)からのエンジンオイル(7)がギヤ用オイルジェット孔(9c)からカム軸入力ギヤ(12)に噴射されるため、カム軸入力ギヤ(12)の潤滑性が高い。
【0024】
図3,4に示すように、このエンジンでは、カム軸用オイルジェット孔(9a)とギヤ用オイルジェット孔(9c)は嵌入部品(9)の内径に沿う内径部(9b)に設けられている。
このエンジンではカム軸用オイルジェット孔(9a)とギヤ用オイルジェット孔(9c)の配置や向きの設定の自由度が高く、カム軸用オイルジェット孔(9a)とギヤ用オイルジェット孔(9c)からのエンジンオイル(7)の噴射方向や噴射位置を適正化できる。
【0025】
図3に示すように、このエンジンでは、嵌入部品(9)は、前孔(2e)に内嵌される円筒形のカラー部(9d)と、このカラー部(9d)の内径に沿う円板形の内径部(9b)と、カラー部(9d)の内周面から内径部(9b)の表裏面に沿って伸びる隆起部(9e)と、隆起部(9e)に内設されて、図2に示すオイル供給通路(8)と連通するオイル導入通路(9f)と、図3に示すように、オイル導入通路(9f)から導出されたカム軸用オイルジェット孔(9a)とギヤ用オイルジェット孔(9c)を備えている。
【0026】
図2に示すように、このエンジンでは、カム軸(5)のカム(5a)はカム軸(5)の周方向に120°間隔で3個のカムノーズを備えている。
この3個のカムノーズにより、燃料サプライポンプ(4a)は、クランク角720°の1燃焼サイクル中、クランク角240°毎にコモンレール(3b)に液体燃料を圧送する。
図3に示すように、カム軸(5)は、前軸受孔(2d)に内嵌されたカム軸前軸受(5b)と、カム軸前軸受(5b)と同心の後軸受孔(2k)に内嵌されたカム軸後軸受(5c)で軸受けされ、カム軸室(2c)内に架設されている。
後軸受孔(2k)は、カム軸室後壁(2f)に形成され、カム軸後方プラグ(2ka)で塞がれている。
後孔(2g)は後孔プラグ(2ga)で塞がれている。
【0027】
図3に示すように、このエンジンでは、カム軸室(2c)は、クランクケース(2h)内と連通する上下オイルミスト導入口(2n)(2p)と、図4に示す調時伝動ケース(10)内と連通するオイルミスト導出口(2q)を備え、クランクケース(2h)内でクランク軸(1)に跳ね上げられたエンジンオイル(7)のオイルミストが図3に示す上下オイルミスト導入口(2n)(2p)からカム軸室(2c)に導入され、ポンプ駆動カム軸(5)のカム(5a)が潤滑され、カム軸室(2c)内のオイルミストが図4に示すオイルミスト導出口(2q)から調時伝動ケース(10)内に導出され、カム軸入力ギヤ(12)等の調時伝動ギヤトレイン(11)を潤滑する。
【0028】
図4に示すように、このエンジンでは、調時伝動ケース(10)は、シリンダブロック前壁(2a)とカム軸室前壁(2b)を前側から覆い、調時伝動ケース(10)内に収容された調時伝動ギヤトレイン(11)は、クランク軸(1)に取り付けられたクランクギヤ(1a)と、クランクギヤ(1a)と噛み合わされたアイドルギヤ(13)と、アイドルギヤ(13)と噛み合わされたカム軸入力ギヤ(12)及び動弁カム軸入力ギヤ(21a)を備えている。
クランクギヤ(1a)とポンプ駆動カム軸(5)のカム軸入力ギヤ(12)及び動弁カム軸入力ギヤ(21a)のギヤ比は、いずれも2で、クランク軸(1)が2回転する間に、ポンプ駆動カム軸(5)と動弁カム軸(21)は1回転する。
【0029】
所定の回転軸(R)が無い軸無仕様のエンジンとシリンダブロック(2)を共用する軸有仕様のエンジンの構成は、次の通りである。
図10図12に示すように、このエンジンは、所定の回転軸(R)としてPTO軸(30)を備え、PTO軸(30)は、PTO軸入力ギヤ(30a)と、ジャーナル部(30b)と、後端のスリット状のPTO軸出力部(30c)を備え、PTO軸(30)は、前孔(2e)に内嵌された前軸受(30d)と後孔(2g)に内嵌された後軸受(30e)で軸受けされ、カム軸室(2c)の下部に架設されている。
PTO軸(30)からのPTO出力は、後孔(2g)から後孔プラグ(2ga)を抜き取り、PTO軸出力部(30c)に油圧ポンプ等の作業装置の入力部を接続することにより行う。
所定の回転軸(R)は、PTO軸(30)の他、ガバナ軸やバランサ軸であってもよい。
他の構造は、図1図9に示す軸無仕様のエンジンと同じであり、図10図12中、図1図9と同一の要素には、図1図9と同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0030】
(1)…クランク軸、(2a)…シリンダブロック前壁、(2b)…カム軸室前壁、(2c)…カム軸室、(2d)…前軸受孔、(2e)…前孔、(2f)…カム軸室後壁、(2g)…後孔、(5)…カム軸、(7)…エンジンオイル、(8)…オイル供給通路、(8a)…通路出口、(9)…嵌入部品、(9a)…カム軸用オイルジェット孔、(9b)…内径部、(9c)…ギヤ用オイルジェット孔、(12)…カム軸入力ギヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12