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特許7583011衝突判定装置、プログラム及び衝突判定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】衝突判定装置、プログラム及び衝突判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/24 20060101AFI20241106BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20241106BHJP
【FI】
H01J37/24
G06T19/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022205954
(22)【出願日】2022-12-22
(65)【公開番号】P2024090213
(43)【公開日】2024-07-04
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 耕平
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 拓史
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0074317(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0116401(US,A1)
【文献】特開2012-094128(JP,A)
【文献】特開2020-126721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103245(US,A1)
【文献】特開平08-241437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0251302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/30
H01L 21/68
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置の試料室内にて位置が変わる動的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記動的オブジェクトの位置情報を含む点群情報と、前記試料室内にて位置が変わらない静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報であって、前記静的オブジェクトの位置情報を含みデータベース化されたボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を出力する出力手段と、
を含み、
互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められており、
前記判定手段は、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
前記座標系は、前記動的オブジェクトの傾斜軸を更に含み、
前記判定手段は、前記動的オブジェクトが傾斜軸を中心として傾斜した状態で、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
前記座標系は、前記動的オブジェクトの回転軸を更に含み、
予め定められた回転角度の範囲毎に前記動的オブジェクトを表す点群情報が生成されており、
前記判定手段は、前記動的オブジェクトの回転角度の範囲に応じた点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
前記判定手段は、
座標軸毎に、順番に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定し、
前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとが重なっていると判定された場合、照合する座標軸の順番を変えて、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
前記静的オブジェクトの状態毎のボクセル群情報が生成されており、
前記判定手段は、更に、前記静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の衝突判定装置において、
前記静的オブジェクトは、第1位置と第2位置との間を往復移動する構造物を含み、
前記静的オブジェクトの状態は、前記構造物が前記第1位置にある状態、前記構造物が前記第2位置にある状態、又は、前記構造物が前記第1位置と前記第2位置との間を往復移動中にある状態、である、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
前記判定手段は、更に、前記荷電粒子線装置による観察の条件に応じた前記動的オブジェクトを表す点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の衝突判定装置において、
前記観察の条件は、観察の対象である試料に印加される電圧に関する条件である、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項9】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
前記動的オブジェクトに搭載される試料のサイズの入力を受け付けるユーザーインターフェースを更に含み、
前記判定手段は、前記ユーザーインターフェースによって受け付けられたサイズが反映された前記動的オブジェクトの点群を表す点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項10】
請求項1に記載の衝突判定装置において、
試料が搭載された前記動的オブジェクトの傾斜操作と高さ方向への移動操作とによって、前記試料の高さを算出する算出手段を更に含み、
前記判定手段は、前記算出手段によって算出された高さが反映された前記動的オブジェクトの点群を表す点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定装置。
【請求項11】
コンピュータを、
荷電粒子線装置の試料室内にて位置が変わる動的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記動的オブジェクトの位置情報を含む点群情報と、前記試料室内にて位置が変わらない静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報であって、前記静的オブジェクトの位置情報を含みデータベース化されたボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する判定手段、
前記判定手段の判定結果を出力する出力手段、
として機能させ、
互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められており、
前記判定手段は、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
荷電粒子線装置の試料室内にて位置が変わる動的オブジェクトの三次元形状を表す三次元モデルに基づいて、前記動的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記動的オブジェクトの位置情報を含む点群情報を生成し、
前記試料室内にて位置が変わらない静的オブジェクトの三次元形状を表す三次元モデルに基づいて、前記静的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記静的オブジェクトの位置情報を含む点群情報を生成し、
前記静的オブジェクトの点群情報に基づいて、前記静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表す、データベース化されたボクセル群情報を生成し、
互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められており、
座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、
ことを特徴とする衝突判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置の試料室内に存在する構造物同士の衝突を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡(例えば走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM))、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置、及び、オージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy:AES)装置等の、荷電粒子線装置が知られている。
【0003】
荷電粒子線装置の試料室内に存在する構造物同士の衝突の有無を判定する技術が知られている。以下、図36から図38を参照して、従来技術に係る衝突判定方法について説明する。互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が定められている。
【0004】
図36には、対物レンズ500、試料ホルダ502、及び、試料ホルダ502上に搭載された試料504が示されている。対物レンズ500、試料ホルダ502及び試料504は、試料室内に存在する構造物の一例である。図36には、Y-Z平面内で見たときの構造物が示されている。
【0005】
従来においては、二次元のY-Z平面内で、対物レンズ500が多角形で表現され、試料ホルダ502が長方形で表現されて、Y-Z平面内で対物レンズ500と試料ホルダ502とが衝突するか否かを判定される。また、試料504の高さとして1つの高さが設定され、Y-Z平面内で対物レンズ500と試料504とが衝突するか否かが判定される。複数の試料が試料ホルダ502上に搭載される場合、当該複数の試料の中で最も高い試料の高さが、試料の高さとして設定されて、対物レンズ500と試料とが衝突するか否かが判定される。
【0006】
図37には、試料ホルダ502、試料504、ステージ506及び検出器508が示されている。図37には、Y-Z平面内で見たときの構造物が示されている。
【0007】
検出器508は、往復移動する構造物の一例である。このような検出器508は、Y-Z平面内で1辺がZ軸に接する2種類の長方形で表現される。また、Y-Z平面内で、試料ホルダ502は長方形で表現され、ステージ506は、2種類の長方形と1種類の円とで表現される。従来技術では、Y-Z平面内で、これらの構造物が衝突するか否かが判定される。
【0008】
図38には、試料ホルダ502、試料室の壁面510及びステージ512が示されている。図38には、X-Y平面内で見たときの構造物が示されている。
【0009】
X-Y平面内で、試料室の壁面510が、円弧と線分との組み合わせで表現され、試料ホルダ502が円で表現される。従来技術では、試料ホルダ502やステージ512の移動可能範囲が予め定められ、X-Y平面内で、これらの構造物が衝突するか否かが判定される。
【0010】
特許文献1,2には、ボクセルを用いてオブジェクトを表現して、オブジェクト同士の衝突の有無を判定するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第2726811号公報
【文献】特開2021-24019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術では、二次元の平面内で構造物同士の衝突の有無が判定され、奥行きが考慮されない。そのため、二次元の平面上で構造物同士が重なったと判定された場合、実際には構造物同士が衝突していなくても、構造物同士が衝突していると判定されてしまう。
【0013】
また、従来技術では、予め定められた二次元の形状を用いて衝突の有無が判定される。例えば、実際の構造物よりも大きい形状が定められて衝突の有無が判定される。そのため、実際には構造物同士が衝突していない場合であっても、構造物同士が衝突していると判定されることがある。
【0014】
また、構造物を実際に動かす前に衝突の有無を判定することができれば、構造物同士の衝突を未然に回避することができる。そのため、構造物を実際に動かす前に衝突の有無を判定することができることが望まれる。
【0015】
本発明の目的は、二次元の平面上で構造物同士の衝突の有無を判定する場合と比べて、その衝突の有無をより正確に判定することにある。また、三次元モデルを用いて衝突の有無を判定する場合であっても、本発明を実施しない場合と比較して、その衝突の有無の判定に要する時間を短縮することにある。また、構造物同士の衝突を未然に回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの態様は、荷電粒子線装置の試料室内にて位置が変わる動的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記動的オブジェクトの位置情報を含む点群情報と、前記試料室内にて位置が変わらない静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報であって、前記静的オブジェクトの位置情報を含みデータベース化されたボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を出力する出力手段と、を含み、互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められており、前記判定手段は、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、ことを特徴とする衝突判定装置である。
【0017】
前記座標系は、前記動的オブジェクトの傾斜軸を更に含み、前記判定手段は、前記動的オブジェクトが傾斜軸を中心として傾斜した状態で、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0018】
前記座標系は、前記動的オブジェクトの回転軸を更に含み、予め定められた回転角度の範囲毎に前記動的オブジェクトを表す点群情報が生成されており、前記判定手段は、前記動的オブジェクトの回転角度の範囲に応じた点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0019】
前記判定手段は、座標軸毎に、順番に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定し、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとが重なっていると判定された場合、照合する座標軸の順番を変えて、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0020】
前記静的オブジェクトの状態毎のボクセル群情報が生成されており、前記判定手段は、更に、前記静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0021】
前記静的オブジェクトは、第1位置と第2位置との間を往復移動する構造物を含み、前記静的オブジェクトの状態は、前記構造物が前記第1位置にある状態、前記構造物が前記第2位置にある状態、又は、前記構造物が前記第1位置と前記第2位置との間を往復移動中にある状態、であってもよい。
【0022】
前記判定手段は、更に、前記荷電粒子線装置による観察の条件に応じた前記動的オブジェクトを表す点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0023】
前記観察の条件は、観察の対象である試料に印加される電圧に関する条件であってもよい。
【0024】
衝突判定装置は、前記動的オブジェクトに搭載される試料のサイズの入力を受け付けるユーザーインターフェースを更に含み、前記判定手段は、前記ユーザーインターフェースによって受け付けられたサイズが反映された前記動的オブジェクトの点群を表す点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0025】
衝突判定装置は、試料が搭載された前記動的オブジェクトの傾斜操作と高さ方向への移動操作とによって、前記試料の高さを算出する算出手段を更に含み、前記判定手段は、前記算出手段によって算出された高さが反映された前記動的オブジェクトの点群を表す点群情報と、前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。
【0026】
本発明の1つの態様は、コンピュータを、荷電粒子線装置の試料室内にて位置が変わる動的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記動的オブジェクトの位置情報を含む点群情報と、前記試料室内にて位置が変わらない静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報であって、前記静的オブジェクトの位置情報を含みデータベース化されたボクセル群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する判定手段、前記判定手段の判定結果を出力する出力手段、として機能させ、互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められており、前記判定手段は、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、ことを特徴とするプログラムである。
【0027】
本発明の1つの態様は、荷電粒子線装置の試料室内にて位置が変わる動的オブジェクトの三次元形状を表す三次元モデルに基づいて、前記動的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記動的オブジェクトの位置情報を含む点群情報を生成し、前記試料室内にて位置が変わらない静的オブジェクトの三次元形状を表す三次元モデルに基づいて、前記静的オブジェクトの三次元形状を点群で表す点群情報であって、前記静的オブジェクトの位置情報を含む点群情報を生成し、前記静的オブジェクトの点群情報に基づいて、前記静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表す、データベース化されたボクセル群情報を生成し、互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められており、座標軸毎に、前記動的オブジェクトの移動経路上に存在する前記静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、前記動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、前記動的オブジェクトと前記静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する、ことを特徴とする衝突判定方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、二次元の平面上で構造物同士の衝突の有無を判定する場合と比べて、その衝突の有無をより正確に判定することができる。また、三次元モデルを用いて衝突の有無を判定する場合であっても、本発明を実施しない場合と比較して、その衝突の有無の判定に要する時間を短縮することができる。また、構造物同士の衝突を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る衝突判定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る衝突判定装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
図3】対物レンズの三次元モデルと試料ホルダの三次元モデルとを示す図である。
図4】対物レンズの点群と試料ホルダの点群とを示す図である。
図5】対物レンズのボクセル群を示す図である。
図6】データベース化されたボクセル群情報を示す図である。
図7】実際の対物レンズと試料ホルダとを示す斜視図である。
図8】対物レンズのボクセル群と試料ホルダの点群とを示す図である。
図9】静的オブジェクトの三次元モデルと動的オブジェクトの三次元モデルとを示す図である。
図10】動的オブジェクトの構成を模式的に示す図である。
図11】Y-Z平面上の構造物を示す図である。
図12】試料ホルダの一例を示す斜視図である。
図13】ユーザーインターフェースの一例である画面を示す図である。
図14】ユーザーインターフェースの一例である画面を示す図である。
図15】試料ホルダの一例を示す斜視図である。
図16】試料ホルダと試料とを示す図である。
図17】試料ホルダと試料とを示す図である。
図18】試料ホルダと試料とを示す図である。
図19】画面を示す図である。
図20】画面を示す図である。
図21】静的オブジェクトの三次元モデルと動的オブジェクトの三次元モデルとを示す図である。
図22】静的オブジェクトの三次元モデルと動的オブジェクトの三次元モデルとを示す図である。
図23】静的オブジェクトの三次元モデルと動的オブジェクトの三次元モデルとを示す図である。
図24】静的オブジェクトの点群を示す図である。
図25】X-Z平面内で見たときの構造物を示す図である。
図26】X-Z平面又はY-Z平面内での移動経路を示す図である。
図27】Y-Z平面内で見たときの構造物を示す図である。
図28】Y-Z平面内での移動経路を示す図である。
図29】点とボクセルとの関係を示す図である。
図30】傾斜移動の経路を示す図である。
図31】回転移動の経路を示す図である。
図32】三次元モデルと点群とを示す図である。
図33】点群を示す図である。
図34】試料ホルダを示す図である。
図35】三次元モデルを示す図である。
図36】従来技術に係る衝突判定方法を説明するための図である。
図37】従来技術に係る衝突判定方法を説明するための図である。
図38】従来技術に係る衝突判定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照して、実施形態に係る衝突判定装置10について説明する。図1は、衝突判定装置10の機能的な構成を示すブロック図である。
【0031】
衝突判定装置10は、荷電粒子線装置12の試料室内に存在する構造物同士の衝突の有無を判定する。荷電粒子線装置12は、SEMやTEM等の電子顕微鏡、FIB装置又はAES装置等である。衝突判定装置10は、荷電粒子線装置12に搭載されてもよいし、荷電粒子線装置12とは別の装置として構成されてもよい。
【0032】
衝突判定装置10は、各構造物の位置を示す位置情報を荷電粒子線装置12から取得し、各構造物の位置情報に基づいて、構造物同士の衝突の有無を判定する。
【0033】
本実施形態では、荷電粒子線装置12の試料室内に存在する構造物が、動的オブジェクト又は静的オブジェクトに分類され、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが区別される。
【0034】
動的オブジェクトは、試料室内にてその位置が変わる構造物である。例えば、動的オブジェクトは、試料ホルダ、試料ホルダが搭載される試料ステージ、及び、試料ホルダ上に搭載される試料等である。
【0035】
静的オブジェクトは、試料室内にてその位置が変わらない構造物である。例えば、静的オブジェクトは、試料室の壁面、対物レンズ、及び、予め定められた経路を往復移動する検出器等である。
【0036】
試料室内の各構造物は、動的オブジェクト又は静的オブジェクトのいずれかに予め分類される。なお、ここで例示された構造物は一例に過ぎず、ここで例示された構造物以外の物体が、動的オブジェクト又は静的オブジェクトに分類されてもよい。
【0037】
動的オブジェクトの位置を示す位置情報と静的オブジェクトの位置を示す位置情報が、荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力され、衝突判定装置10は、動的オブジェクトの位置を示す位置情報と静的オブジェクトの位置を示す位置情報とに基づいて、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの衝突の有無を判定する。例えば、荷電粒子線装置12において、ユーザーによって、動的オブジェクトの移動量及び移動方向が指定されて移動の指示が与えられると、その移動量及び移動方向を示す情報が、荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力される。衝突判定装置10は、当該情報に基づいて、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの衝突の有無を判定する。
【0038】
衝突判定装置10は、例えば、生成部14と、データベース16と、判定部18と、出力部20と、算出部22と、表示部24と、を含む。
【0039】
生成部14は、構造物の三次元形状を表す三次元モデルに基づいて、当該構造物の三次元形状を点群で表す点群情報を生成する。三次元モデルは、例えば、予め生成されて、衝突判定装置10に入力される。構造物のサイズ(例えば高さや幅)がユーザーによって入力されてもよい。この場合、生成部14は、ユーザーによって入力されたサイズに応じた三次元モデルや点群情報を生成する。サイズを入力するためのユーザーインターフェースが、ユーザーに提供されてもよい。
【0040】
点群情報は、構造物の三次元形状を三次元空間内に分布する点の集合(つまり点群)で表現する情報であり、試料室内での当該構造物の位置を示す位置情報を含む。構造物の位置は、三次元空間内での位置である。より詳しく説明すると、点群情報は、構造物を表現する各点の位置を示す位置情報を含む。例えば、生成部14は、荷電粒子線装置12から構造物の位置情報を取得し、当該構造物の点群情報に位置情報を含める。生成部14は、動的オブジェクト及び静的オブジェクトのそれぞれの点群情報を生成する。
【0041】
また、生成部14は、静的オブジェクトの点群情報に基づいて、静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報を生成する。具体的には、生成部14は、格子状に区切られた三次元空間の単位をボクセルと定め、静的オブジェクトを表す点が含まれるボクセル(つまり、静的オブジェクトが存在するボクセル)に、静的オブジェクトが存在することを示す情報(例えば値「1」)を紐付ける。生成部14は、静的オブジェクトを表す点が含まれないボクセル(つまり、静的オブジェクトが存在しないボクセル)に、静的オブジェクトが存在しないことを示す情報(例えば値「0」)を紐付ける。このようにして、生成部14は、静的オブジェクトの三次元形状を、三次元空間内に分布する各ボクセルに紐付けられた情報(静的オブジェクトの存在の有無を示す情報)で表現する。生成部14は、静的オブジェクトの存在の有無を表す情報をデータベース化し、静的オブジェクトの三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報を生成する。ボクセル群情報は、試料室内での静的オブジェクトの位置情報を含む。より詳しく説明すると、ボクセル群情報は、構造物を表現する各ボクセルの位置を示す位置情報を含む。
【0042】
データベース16は、データベース化された、静的オブジェクトのボクセル群情報を格納する。
【0043】
判定部18は、動的オブジェクトを表す点群情報と、静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なる場合、判定部18は、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが衝突していると判定する。動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なっていない場合、判定部18は、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが衝突していないと判定する。
【0044】
また、判定部18は、座標軸毎に、動的オブジェクトの移動経路上に存在する静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定してもよい。例えば、互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められ、判定部18は、座標軸毎に、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。当該座標軸には、動的オブジェクトの傾斜軸と回転軸とが含まれてもよい。
【0045】
また、予め定められた回転角度の範囲毎に動的オブジェクトを表す点群情報が予め生成
されてもよい。この場合、判定部18は、動的オブジェクトの回転角度の範囲に応じた点群情報と、静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。こうすることで、動的オブジェクトが回転する度に、回転した動的オブジェクトを表す点群情報を生成して衝突を判定する場合と比べて、衝突の判定に要する時間を短縮することができる。
【0046】
また、静的オブジェクトの状態毎にボクセル群情報が予め生成されてもよい。この場合、判定部18は、静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。例えば、静的オブジェクトの状態に変化が生じる場合、その変化に対応して状態毎のボクセル群情報が予め生成される。こうするとで、状態に変化が生じる度に、その状態に対応した静的オブジェクトを表すボクセル群情報を生成して衝突を判定する場合と比べて、衝突の判定に要する時間を短縮することができる。
【0047】
出力部20は、判定部18による判定結果を示す情報を出力する。出力部20は、判定結果を示す情報を表示部24に表示させてもよいし、判定結果を音によって表現してその音をスピーカから発生させてもよいし、外部装置(例えば、ユーザーの端末装置等)に送信してもよいし、用紙等の媒体に印刷してもよい。また、出力部20は、判定部18による判定が行われているときに、判定部18による判定中であることを示す情報を表示部24に表示させてもよい。
【0048】
算出部22は、試料室内に設置された試料の高さを算出する。具体的には、算出部22は、動的オブジェクトの傾斜操作と高さ方向への移動操作とによって、試料の高さを算出する。なお、算出部22は、衝突判定装置10に含まれなくてもよい。
【0049】
表示部24は、液晶ディスプレイやELディスプレイ等のディスプレイである。表示部24には、判定部18による判定結果を示す情報等の各種の情報が表示される。表示部24は、ユーザーインターフェースの一例として機能してもよい。
【0050】
図2には、衝突判定装置10のハードウェアの構成が示されている。
【0051】
衝突判定装置10は、通信装置26と、UI28と、記憶装置30と、プロセッサ32と、を含む。
【0052】
通信装置26は、通信チップや通信回路等を有する1又は複数の通信インターフェースを含み、他の装置に情報を送信する機能、及び、他の装置から情報を受信する機能を有する。通信装置26は、近距離無線通信やWi-Fi(登録商標)等の無線通信機能を有してもよいし、有線通信機能を有してもよい。
【0053】
UI28は、ユーザーインターフェースであり、ディスプレイと入力装置とを含む。ディスプレイは、液晶ディスプレイやELディスプレイ等である。入力装置は、キーボード、マウス、入力キー又は操作パネル等である。UI28は、ディスプレイと入力装置とを兼ね備えたタッチパネル等のUIであってもよい。
【0054】
記憶装置30は、データを記憶する1又は複数の記憶領域を構成する装置である。記憶装置30は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、各種のメモリ(例えばRAM、DRAM、ROM等)、その他の記憶装置(例えば光ディスク等)、又は、それらの組み合わせである。例えば、上述した点群情報及びボクセル群情報が、記憶装置30に記憶される。各構造物の三次元モデルを表すデータが、記憶装置30に記憶されてもよい。また、記憶装置30によってデータベース16が構築される。もちろん、上述した点群情報及びボクセル群情報は、衝突判定装置10以外の外部装置(例えば、外部の記憶装置やサーバ等の装置)に記憶されてもよいし、外部装置にてデータベース16が構築されてもよい。
【0055】
プロセッサ32は、衝突判定装置10の各部の動作を制御する。プロセッサ32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、その他のプログラマブル論理デバイス、又は、電子回路等を含む。
【0056】
図1に示されている衝突判定装置10の各機能は、プロセッサ32によって実現される。各機能の実行には、UI28や記憶装置30が用いられてもよい。
【0057】
例えば、衝突判定装置10の各機能は、ハードウェア資源とソフトウェア資源との協働により実現される。例えば、プロセッサ32を構成するCPUが、記憶装置30に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、各機能が実現される。プログラムは、CD又はDVD等の記録媒体を経由して、又は、ネットワーク等の通信経路を経由して、記憶装置30に記憶される。別の例として、電子回路等のハードウェア資源によって、衝突判定装置10の各機能が実現されてもよい。
【0058】
以下、実施形態について具体的を挙げて説明する。
【0059】
図3を参照して、構造物の一例について説明する。図3には、対物レンズ34の三次元モデルと試料ホルダ36の三次元モデルとが示されている。対物レンズ34と試料ホルダ36は、荷電粒子線装置12の試料室内に存在する構造物の一例である。対物レンズ34の三次元モデルは、対物レンズ34を立体的に表すモデルである。試料ホルダ36の三次元モデルは、試料ホルダ36を立体的に表すモデルである。これらの三次元モデルは予め生成されて、衝突判定装置10に入力される。これらの三次元モデルのデータが、記憶装置30に記憶されてもよい。
【0060】
対物レンズ34は、静的オブジェクトの一例であり、試料室内にてその位置が変わらないと想定される構造物である。試料ホルダ36は、動的オブジェクトの一例であり、試料室内にてその位置が変わると想定される構造物である。
【0061】
生成部14は、対物レンズ34の三次元モデルに基づいて、対物レンズ34の三次元形状を点群で表す点群情報を生成する。同様に、生成部14は、試料ホルダ36の三次元モデルに基づいて、試料ホルダ36の三次元形状を点群で表す点群情報を生成する。
【0062】
図4には、構造物を表す点群の一例が示されている。点群38は、対物レンズ34の三次元形状を三次元空間内に分布する点の集合で表現する点群である。点群40は、試料ホルダ36の三次元形状を三次元空間内に分布する点の集合で表現する点群である。点群38を示す点群情報と、点群40を示す点群情報は、記憶装置30に記憶される。
【0063】
点群38を示す点群情報は、点群38に含まれる各点の位置(三次元空間内における各点の位置)を示す位置情報を含む。つまり、点群38を示す点群情報は、試料室内での対物レンズ34を表現する各点の位置を示す位置情報を含む。例えば、試料室内における対物レンズ34の位置を示す位置情報が、荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力され、生成部14は、その位置情報を点群38の点群情報に含める。
【0064】
点群40を示す点群情報は、点群40に含まれる各点の位置(三次元空間内における各点の位置)を示す位置情報を含む。つまり、点群40を示す点群情報は、試料室内での試料ホルダ36を表現する各点の位置を示す位置情報を含む。例えば、試料室内における試料ホルダ36の位置を示す位置情報が、荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力され、生成部14は、その位置情報を点群40の点群情報に含める。
【0065】
また、生成部14は、静的オブジェクトである対物レンズ34の点群38を示す点群情報に基づいて、対物レンズ34の三次元形状をボクセル群で表すボクセル群情報を生成する。図5には、対物レンズ34を表すボクセル群42が示されている。
【0066】
ここで、図6を参照して、対物レンズ34のボクセル群情報について詳しく説明する。図6には、データベース化されたボクセル群情報が示されている。互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が定められ、複数の格子状のボクセルが三次元空間内に分布している。
【0067】
生成部14は、格子状に区切られた三次元空間の単位をボクセルと定め、点群38が示す点群情報に基づいて、各ボクセルに、対物レンズ34の存在の有無を示す情報を紐付ける。図6中の値「1」は、対物レンズ34が存在することを示す情報であり、値「0」は、対物レンズ34が存在しないことを示す情報である。
【0068】
値「1」が紐付けられたボクセルは、対物レンズ34が存在するボクセル(つまり、点群38に含まれる点が存在するボクセル)である。値「0」が紐付けられたボクセルは、対物レンズ34が存在しないボクセル(つまり、点群38に含まれる点が存在しないボクセル)である。
【0069】
図6に示すように、生成部14は、点群38を示す点群情報に基づいて、各ボクセルに値「1」又は値「0」を紐付けることで、対物レンズ34の三次元形状を三次元空間に分布する各ボクセルに紐付けられた情報(値「1」又は「0」)で表現するボクセル群情報を生成する。このようにして、対物レンズ34の存在の有無を示す情報がデータベース化される。データベース化されたボクセル群情報は、データベース16に格納される。対物レンズ34の三次元形状を表すボクセル群情報は、対物レンズ34を表現する各ボクセルの位置を示す位置情報を含む。
【0070】
なお、図5においては、対物レンズ34の三次元形状をボクセルで視覚的に説明するために、便宜上、値「1」が紐付けられたボクセルのみが示され、値「0」が紐付けられたボクセルは示されていない。つまり、図5に示されているボクセル群42は、値「1」が紐付けられたボクセルのみによって表現されているが、対物レンズ34を表すデータベースにおいては、対物レンズ34が存在するボクセルには値「1」が紐付けられ、対物レンズ34が存在しないボクセルには値「0」が紐付けられている。
【0071】
図7及び図8を参照して、判定部18による判定処理の概略について説明する。図7には、実際の対物レンズ44と実際の試料ホルダ46とが示されている。図8には、対物レンズ44を表すボクセル群42と試料ホルダ46を表す点群40とが示されている。なお、図8には、説明の便宜上、値「1」が紐付けられたボクセルのみが示されている。
【0072】
判定部18は、対物レンズ44のボクセル群42を示すデータベース化されたボクセル群情報と、試料ホルダ46の点群40を示す点群情報と、を照合することで、対物レンズ44と試料ホルダ46との重なりの有無を判定する。例えば、試料ホルダ46の位置を示す位置情報が荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力され、その位置情報を含む点群情報が生成部14によって生成される。判定部18は、そのようにして生成された点群情報と、対物レンズ44を表すボクセル群情報と、を照合することで、対物レンズ44と試料ホルダ46との重なりの有無を判定する。
【0073】
ボクセル群42に含まれるボクセルの中に、点群40に含まれる点が1つでも存在する場合、判定部18は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが重なっていると判定する。つまり、判定部18は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが衝突していると判定する。
【0074】
ボクセル群42に含まれるボクセルの中に、点群40に含まれる点が存在していない場合、判定部18は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが重なっていないと判定する。つまり、判定部18は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが衝突していないと判定する。
【0075】
図8に示す例では、ボクセル群42に含まれるボクセルの中に、点群40に含まれる複数の点が存在しているので、判定部18は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが重なっていると判定する。この場合、出力部20は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが衝突していることを示す情報(例えば警告情報)を表示部24に表示させてもよい。対物レンズ44と試料ホルダ46とが衝突していないと判定された場合、出力部20は、対物レンズ44と試料ホルダ46とが衝突していないことを示す情報を表示部24に表示させてもよい。
【0076】
本実施形態によれば、点群情報とボクセル群情報とはそれぞれ三次元モデルに基づいて生成されるため、二次元の平面内だけでなく、奥行きも考慮して、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの衝突の有無を判定することができる。その結果、二次元の平面上で構造物同士の衝突の有無を判定する場合と比べて、その衝突の有無をより正確に判定することができる。
【0077】
また、三次元モデルを用いることで、複雑な形状を有する構造物同士の衝突の有無を正確に判定したり、複雑な移動経路を移動する構造物同士の衝突の有無を正確に判定したり、実際の移動を考慮して衝突の有無を判定したりすることができる。
【0078】
また、動的オブジェクトを実際に動かす前に、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの衝突の有無を判定することで、その衝突を未然に回避することができる。
【0079】
以下、各実施例について説明する。
【0080】
(実施例1)
図9から図11を参照して、実施例1について説明する。
【0081】
図9には、静的オブジェクト48の三次元モデルと動的オブジェクト50の三次元モデルとが示されている。ここでは一例として、静的オブジェクト48は、対物レンズ等の構造物であり、動的オブジェクト50は、試料ホルダ及びステージ等の構造物である。
【0082】
図10には、動的オブジェクト50の構成が模式的に示されている。動的オブジェクト50は、試料ホルダ52とステージ54とを含む。互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が定められており、ステージ54は、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに沿って移動可能な構造物である。また、ステージ54は、R軸を回転軸として回転可能であり、T軸を傾斜軸として傾斜可能である。ここでは一例として、X軸とT軸とが一致している。
【0083】
例えば、ステージ54は、X軸に沿って移動可能なX軸ステージ、Y軸に沿って移動可能なY軸ステージ、Z軸に沿って移動可能なZ軸ステージ、T軸を中心に傾斜可能なT軸ステージ、及び、R軸を中心に回転可能なR軸ステージを含む。図10に示されている「X」、「Y」、「Z」、「T」及び「R」は、それぞれの軸ステージに対応している。
【0084】
X軸ステージがX軸に沿って移動することで、ステージ54上の試料ホルダ52もX軸に沿って移動することになる。Y軸及びZ軸についても同様である。T軸ステージがT軸を中心に傾斜することで、試料ホルダ52もT軸を中心に傾斜することになる。R軸ステージがR軸を中心に回転することで、試料ホルダ52もR軸を中心に回転することになる。図10に示す例では、Y軸ステージ上にR軸ステージが設けられているため、Y軸ステージが移動すると、ステージ54上の試料ホルダ52とR軸ステージとが、Y軸に沿って移動する。
【0085】
生成部14は、静的オブジェクト48の三次元モデルを点群に変換して静的オブジェクト48の点群情報を生成し、動的オブジェクト50の三次元モデルを点群に変換して動的オブジェクト50の点群情報を生成する。また、生成部14は、静的オブジェクト48の点群をボクセル群に変換して静的オブジェクト48のボクセル群情報を生成する。動的オブジェクト50の三次元モデルとして、ステージ54の全軸の座標(つまり、X軸上、Y軸上、Z軸上、T軸上及びR軸上のそれぞれの座標)が「0」のときの三次元モデルが用いられる。また、各点群の座標を定義する三次元空間のX軸、Y軸及びZ軸は、ステージ54が傾斜していないときの(つまりT=0のときの)X軸、Y軸及びZ軸と一致する。
【0086】
判定部18は、静的オブジェクト48のボクセル群情報と動的オブジェクト50の点群情報とを照合することで、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との重なりの有無を判定する。静的オブジェクト48と動的オブジェクト50とが重なっていると判定された場合、そのときのステージ54の位置は、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との衝突が発生する位置であると判定される。静的オブジェクト48と動的オブジェクト50とが重なっていないと判定された場合、そのときのステージ54の位置は、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との衝突が発生しない位置であると判定される。このようにして、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との衝突の有無が判定される。
【0087】
三次元の点群とボクセル群とを用いて衝突の有無を判定すると、二次元のモデルを用いて衝突の有無を判定する場合と比べて、判定のための処理速度が遅くなり、判定に要する時間が長くなる。
【0088】
そこで、実施例1では、判定部18は、まず、二次元モデルを用いて、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との衝突の有無を判定する。二次元のモデルを用いた判定にて、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50とが衝突していると判定された場合、判定部18は、三次元モデルを用いて、上述した実施形態に従って、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との衝突の有無を判定する。
【0089】
図11を参照して、二次元モデルを用いた衝突判定について説明する。図11には、Y-Z平面内から見たときの構造物が示されている。静的オブジェクト56は、静的オブジェクト48をY-Z平面内で見たときのオブジェクトである。動的オブジェクト58は、動的オブジェクト50をY-Z平面内で見たときのオブジェクトである。例えば、生成部14は、二次元の静的オブジェクト56と二次元の動的オブジェクト58とを多角形で表現し、判定部18は、Y-Z平面内にて、静的オブジェクト56と動的オブジェクト58とが重なるか否かを判定する。
【0090】
Y-Z平面内にて、二次元の静的オブジェクト56と二次元の動的オブジェクト58とが重なったと判定された場合、判定部18は、三次元の静的オブジェクト48のボクセル群情報と三次元の動的オブジェクト50の点群情報とを照合することで、静的オブジェクト48と動的オブジェクト50との重なりの有無を判定する。
【0091】
Y-Z平面内にて、二次元の静的オブジェクト56と二次元の動的オブジェクト58とが重ならないと判定された場合、判定部18は、三次元モデルから生成された点群とボクセル群との重なりの有無を判定しない。
【0092】
このように、まず、二次元モデルを用いて衝突の有無を判定することで、その判定のための計算量を減らして、判定の処理に要する時間を短縮することができる。また、二次元モデルを用いた判定によって衝突が発生していると判定された場合に、次に、三次元モデルを用いた判定によって衝突の有無を判定することで、衝突の有無を正確に判定することができる。
【0093】
なお、荷電粒子線装置12の種類によっては、各軸の配置が異なることがある。例えば、SEMでは、T軸ステージの下にZ軸ステージが配置される。T軸を中心とした動的オブジェクトの傾斜によって、Z軸ステージの移動方向は変わらないが、Z軸ステージの配置位置に応じてT軸ステージの位置が変わる。生成部14は、この変化が反映された点群情報を生成し、判定部18は、その点群情報を用いて衝突の有無を判定する。
【0094】
(実施例2)
実施例2では、動的オブジェクトに搭載される試料のサイズを入力するためのユーザーインターフェースが、ユーザーに提供され、ユーザーによって、試料のサイズが入力される。生成部14は、その入力されたサイズが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。例えば、動的オブジェクトは試料ホルダであり、生成部14は、試料ホルダと当該試料ホルダ上に搭載された試料とを含む動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。判定部18は、試料のサイズが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群を示すボクセル群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0095】
以下、図12から図15を参照して、実施例2について詳しく説明する。
【0096】
図12には、試料ホルダ60が示されている。試料ホルダ60は、複数の試料を搭載することが可能な試料ホルダである。例えば、複数の載置部62(図12に示す例では、5つの載置部62)が、試料ホルダ60に設置されており、各載置部62上に試料が搭載される。例えば、各載置部62の表面の中心に試料が搭載される。各載置部62上に搭載される試料は、それぞれサイズや形状の異なる試料であってもよいし、サイズや形状が同じ試料であってもよい。
【0097】
図13には、画面64が示されている。画面64は、試料のサイズを入力するためのユーザーインターフェースの一例であり、表示部24を構成するディスプレイに表示される。画面64には、試料ホルダの候補の一覧66が表示される。図13に示す例では、4つの試料ホルダが、候補として一覧66に含まれており、各候補を表す画像が、画面64に表示される。例えば、ユーザーが、UI28を操作して画面64の表示を指示すると、プロセッサ32は、画面64をディスプレイに表示させる。
【0098】
一覧66の中から試料ホルダがユーザーによって選択されると、プロセッサ32は、選択された試料ホルダを表す画像68を画面64に表示する。
【0099】
また、試料を模式的に表す画像70と、試料のサイズを入力するための入力欄72とが、画面64に表示される。ここでは、試料のサイズは試料の高さであり、入力欄72は、試料の高さを入力するための欄である。具体的には、入力欄72は、試料の高さを調整するためのバーであり、ユーザーがバーを調整することで、試料の高さが入力される。
【0100】
生成部14は、ユーザーによって入力された高さが反映された動的オブジェクトの点群を表す点群情報を生成する。ここでは一例として、動的オブジェクトは、試料ホルダ60と載置部62と試料とを含み、生成部14は、試料の高さが反映された当該動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。例えば、生成部14は、試料の高さの分だけ載置部62の高さを増大させ、その増大した高さが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。
【0101】
また、プロセッサ32は、図14に示すように、ユーザーによって入力された試料の高さが反映された動的オブジェクトを表す画像74を、ディスプレイに表示させてもよい。例えば、試料ホルダ60と載置部62とが画像74に表されており、入力された高さを有する物体を表す画像76が、画像74に含まれる。当該物体は、入力された高さの分だけ載置部62の高さが増大した部分に相当する。当該物体の形状は、円柱や直方体等の形状であってもよい。
【0102】
図15に示すように、複数の試料78が試料ホルダ60に搭載されてもよい。各試料78のサイズ及び形状は互いに異なってもよいし、同じであってもよい。図15に示す例では、各試料78のサイズ及び形状は互いに異なる。
【0103】
例えば、ユーザーは、画面64上で、複数の試料78の中で高さが最も高い試料78の高さを入力する。生成部14は、その入力された高さを各試料78の高さとして定義し、その高さが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。
【0104】
別の例として、ユーザーは、画面64上で、各試料78の高さを入力してもよい。この場合、生成部14は、各試料78の高さが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。
【0105】
判定部18は、ユーザーによって入力された試料の高さが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群を示すボクセル群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。また、実施例2においても、判定部18は、実施例1と同様に、二次元モデルを用いた判定を行い、その後、三次元モデルを用いた判定を行ってもよい。
【0106】
実施例2によれば、ユーザーによって入力された高さが反映された点群情報を用いて衝突の有無が判定されるので、任意の高さに対応して衝突の有無を判定することができる。
【0107】
上述した例では、試料ホルダ上に試料が搭載される場合について説明したが、試料以外の部品が、試料ホルダに取り付けられた場合に実施例2に係る処理が実行されてもよい。これにより、その取り付けられた部品のサイズが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報が生成され、その点群情報と静的オブジェクトのボクセル群情報とが照合される。
【0108】
(実施例3)
実施例3では、算出部22が用いられ、試料の高さが算出部22によって算出される。
【0109】
以下、図16から図18を参照して、実施例3について説明する。図16から図18には、試料ホルダ80と、試料ホルダ80上に設置された試料82と、試料82の表面82a上に存在する対象物84と、が示されている。図16から図18には、Y-Z平面内で見た各オブジェクトが示されている。実施例3では、試料ホルダ80を傾斜させながら(つまり、ステージを傾斜させながら)、電子像上の対象物を追跡することで、試料82の高さが算出される。以下、具体的な手順について説明する。
【0110】
(1)まず、荷電粒子線装置12において、試料ホルダ80が搭載されたステージが、傾斜していない状態で、水平に移動させられる。
【0111】
(2)ユーザーは、荷電粒子線装置12による撮像によって生成された電子像を観察し、電子像上で対象物84を決定する。そして、図16に示すように、ユーザーは、対象物84が電子像上で中央に写るように、ステージを移動させる。これにより、試料ホルダ80及び試料82が移動させられる。このとき、ステージは傾斜していない。
【0112】
(3)次に、図17に示すように、荷電粒子線装置12は、傾斜軸であるT軸を中心としてステージを傾斜させることで、試料ホルダ80を傾斜させる。傾斜角度は、例えば、予め定められた角度である。Y軸及びZ軸は、ステージを基準に定められているため、ステージの傾斜に伴って、Y軸及びZ軸も同じ傾斜角度だけ傾斜する。
【0113】
(4)次に、ユーザーは、電子像を観察し、電子像上の対象物84の位置を指定し、その位置を示す情報を荷電粒子線装置12に入力する。例えば、UIを介して、その位置を示す情報が荷電粒子線装置12に入力される。
【0114】
(5)次に、図18に示すように、荷電粒子線装置12は、ユーザーによって入力された位置に基づいて、対象物84が電子像上で中央に写るようにステージをZ軸に沿って移動させる。ステージの移動によって、試料ホルダ80と試料82は、Z軸に沿って移動させられる。
【0115】
(6)試料ホルダ80を傾斜させたときに対象物84が電子像上で移動しなくなるまで、上記の(3)から(5)の処理が繰り返される。例えば、図18に示されている状態が、試料ホルダ80を傾斜させたときに対象物84が電子像上で移動しなくなる状態である。
【0116】
(7)次に、算出部22は、試料82の表面82aのZ座標を特定し、そのZ座標に基づいて、試料82の高さを算出する。
【0117】
以下では、T軸上にZ軸が存在する場合の試料82の高さを算出する方法について説明する。試料ホルダ80を傾斜させても対象物84が電子像上で移動しない状態は、図18に示すように、対象物84の位置とT軸の位置とが一致し、試料82の表面82aとT軸とが接している状態である。この場合、T軸を中心として試料ホルダ80を傾斜させても、対象物84は移動しない。算出部22は、試料82の高さが「0」のときの表面82aとT軸とが接しているときの表面82aのZ座標を算出し、その算出されたZ座標と(7)にて算出されたZ座標との差分を、試料82の高さとして算出する。これにより、より正確に高さを算出することができる。
【0118】
以上のようにして試料82の高さが算出されると、生成部14は、その高さが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。判定部18は、その高さが反映された動的オブジェクトの点群を示す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群を示すボクセル群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0119】
なお、対象物84がユーザーによって指定され、算出部22は、電子像に表された対象物84にパターンマッチングを適用することで、傾斜操作後の対象物84の位置を追跡してもよい。
【0120】
(実施例4)
実施例4では、生成部14は、荷電粒子線装置12による観察の条件に応じた動的オブジェクトの点群を示す点群情報を生成する。判定部18は、その観察条件に応じた点群情報と静的オブジェクトのボクセル群を示すボクセル群情報とを照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0121】
例えば、観察の条件は、観察の対象である試料に印加される電圧に関する条件である。試料に電圧を印加している状態で、試料と対物レンズとが接近すると、放電が発生する可能性がある。これを回避するために、生成部14は、動的オブジェクト、静的オブジェクト、又は、動的オブジェクトと静的オブジェクトの両方に、電圧の大きさに応じた放電危険領域を設定する。つまり、生成部14は、試料ホルダと試料とを含む動的オブジェクトの三次元モデルを覆うように放電危険領域を設定してもよいし、静的オブジェクトの三次元モデルを覆うように放電危険領域を設定してもよいし、動的オブジェクトと静的オブジェクトのそれぞれの三次元モデルを覆うように放電危険領域を設定してもよい。放電危険領域が設定されるオブジェクトは、ユーザーによって設定されてもよいし、予め設定されてもよい。
【0122】
ここでは、一例として、生成部14は、試料ホルダと試料とを含む動的オブジェクトの三次元モデルを覆うように、電圧の大きさに応じた放電危険領域を設定する。もちろん、生成部14は、対物レンズを含む静的オブジェクトの三次元モデルを覆うように放電危険領域を設定してもよいし、動的オブジェクトと静的オブジェクトの両方に放電危険領域を設定してもよい。放電が発生する可能性がある領域が、放電危険領域として設定される。生成部14は、試料ホルダと試料と放電危険領域とを含む動的オブジェクトの三次元モデルを生成する。例えば、生成部14は、試料ホルダと試料とを表す元々の三次元モデルに対して放電危険区域を設定することで、試料ホルダと試料と放電危険領域とを含む三次元モデルを生成する。
【0123】
生成部14は、電圧が高いほど放電危険領域のサイズを大きくして動的オブジェクトの三次元モデルを生成する。例えば、生成部14は、電圧が5kVのときの放電危険領域のサイズを、電圧が2kVのときの放電危険領域のサイズよりも大きくして、動的オブジェクトの三次元モデルを生成する。生成部14は、電圧の大きさに応じて放電危険領域の形状を変えてもよい。
【0124】
生成部14は、試料ホルダと試料と放電危険領域とを含む三次元モデルに基づいて、試料ホルダと試料と放電危険領域とを含む動的オブジェクトを点群で示す点群情報を生成する。つまり、放電危険領域は、動的オブジェクトとして扱われることになる。
【0125】
判定部18は、試料ホルダと試料と放電危険領域とを含む動的オブジェクトを点群で表す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群を示すボクセル群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0126】
以上のように、放電危険領域を設定することで、放電が発生し得るような観察条件の下で観察が行われる場合であっても、放電の発生を防止することができる。
【0127】
(実施例5)
実施例5では、荷電粒子線装置12の試料室内の様子が三次元モデルで表示される。以下、図19及び図20を参照して、実施例5について説明する。図19及び図20には、画面86が示されている。
【0128】
画面86は、表示部24に含まれるディスプレイに表示される。プロセッサ32は、試料室内に存在する構造物を表す三次元モデルを生成し、その三次元モデルを画面86に表示する。例えば、対物レンズ、試料ホルダ及び試料が、試料室内に存在する構造物であり、これらを表す三次元モデルが生成されて、画面86に表示される。
【0129】
図19は、ズームアウトした状態の三次元モデルが示されており、図20には、ズームインした状態の三次元モデルが示されている。例えば、拡大表示又は縮小表示を指示するためのバーが画面86に表示され、ユーザーは、そのバーを操作することで、ズームイン又はズームアウトを指示することができる。
【0130】
試料室内に存在する構造物を表す三次元モデルを表示することで、ユーザーは、構造物の位置関係等を確認することができる。例えば、ユーザーは、対物レンズと試料の表面との間の位置関係を確認することができる。
【0131】
また、検出器等の構造物を表す三次元モデルが生成されて表示されてもよい。この場合、ユーザーは、検出器と試料の表面との間の位置関係を確認することができる。
【0132】
(実施例6)
実施例6では、静的オブジェクトの状態毎にボクセル群が予め生成され、静的オブジェクトの状態毎にボクセル群情報が予め生成されてデータベース16に格納される。判定部18は、静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報をデータベース16から読み出し、静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報と、動的オブジェクトを点群で表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0133】
具体的には、静的オブジェクトは、予め定められた軌道に沿って往復移動することが可能な構造物を含む。当該構造物は、往復移動する物体であるが、予め定められた軌道に沿って移動する物体であるため、その軌道上に存在する静的オブジェクトとみなすことができる。
【0134】
例えば、構造物は、第1位置と第2位置との間を往復移動する物体である。静的オブジェクトの状態は、構造物が当該第1位置にある状態(以下、「第1状態」と称する)、構造物が当該第2位置にある状態(以下、「第2状態」と称する)、又は、構造物が当該第1位置と前記第2位置との間を往復移動中にある状態(以下、「第3状態」と称する)、である。例えば、第1位置又は第2位置のいずれか一方は、往復移動の開始位置に相当し、他方は、往復移動の終了位置に相当する。
【0135】
生成部14は、構造物が第1位置にあるときの静的オブジェクトを表す三次元モデル(以下、「第1三次元モデル」と称する)に基づいて、構造物が第1位置にあるときの静的オブジェクトを点群で表す点群情報を予め生成し、その点群情報に基づいて、構造物が第1位置にあるときの静的オブジェクトをボクセル群で表すボクセル群情報を予め生成する。以下、構造物が第1位置にあるときの静的オブジェクトを表すボクセル群を、「第1ボクセル群」と称し、第1ボクセル群を表すボクセル群情報を、「第1ボクセル群情報」と称する。
【0136】
また、生成部14は、構造物が第2位置にあるときの静的オブジェクトを表す三次元モデル(以下、「第2三次元モデル」と称する)に基づいて、構造物が第2位置にあるときの静的オブジェクトを点群で表す点群情報を予め生成し、その点群情報に基づいて、構造物が第2位置にあるときの静的オブジェクトをボクセル群で表すボクセル群情報を予め生成する。以下、構造物が第2位置にあるときの静的オブジェクトを表すボクセル群を、「第2ボクセル群」と称し、第2ボクセル群を表すボクセル群情報を、「第2ボクセル群情報」と称する。
【0137】
また、生成部14は、構造物が第1位置と第2位置との間を往復移動中にあるときの静的オブジェクトを表す三次元モデル(以下、「第3三次元モデル」と称する)に基づいて、構造物が第1位置と第2位置との間を往復移動中にあるときの静的オブジェクトを点群で表す点群情報を予め生成し、その点群情報に基づいて、構造物が第1位置と第2位置との間を往復移動中にあるときの静的オブジェクトをボクセル群で表すボクセル群情報を予め生成する。以下、構造物が第1位置と第2位置との間を往復移動中にあるときの静的オブジェクトを表すボクセル群を、「第3ボクセル群」と称し、第3ボクセル群を表すボクセル群情報を、「第3ボクセル群情報」と称する。
【0138】
第3三次元モデルは、構造物の移動の軌跡を表す三次元モデルである。従って、第3ボクセル群は、構造物の移動の軌跡を表すボクセル群である。つまり、第3三次元モデルは、構造物が第1位置と第2位置との間を移動したときの構造物の移動の軌跡を表す三次元モデルであり、第3ボクセル群は、構造物が第1位置から第2位置との間を移動したときの構造物の移動の軌跡を表すボクセル群である。
【0139】
第1ボクセル群情報、第2ボクセル群情報、及び、第3ボクセル群情報は、予め生成されてデータベース16に格納される。
【0140】
以下、図21から図23を参照して、実施例6について説明する。図21から図23には、静的オブジェクトの三次元モデルと動的オブジェクトの三次元モデルとが示されている。
【0141】
図21から図23には、対物レンズの三次元モデルと検出器の三次元モデルが、静的オブジェクトの三次元モデルとして示されており、試料ホルダの三次元モデルが、動的オブジェクトの三次元モデルとして示されている。
【0142】
三次元モデル88は、対物レンズの三次元モデルであり、三次元モデル90A,90B,90Cは、検出器の三次元モデルであり、三次元モデル92は、試料ホルダの三次元モデルである。
【0143】
検出器は、予め定められた軌道に沿って往復移動することが可能な構造物の一例である。具体的には、検出器は、図21中の矢印Aが指し示す方向に沿って往復移動することができる。つまり、矢印Aが指し示す方向に沿った軌道が定められており、検出器は、その軌道上を往復移動することができる。
【0144】
図21に示されている三次元モデル90Aは、第1位置に存在する検出器を表す三次元モデルである。三次元モデル88,90Aは、検出器が第1位置にあるときの静的オブジェクト(つまり対物レンズと検出器)を表す三次元モデルである。検出器が第1位置にあるときの静的オブジェクトの状態は、検出器が対物レンズと試料ホルダとの間に挿入された状態(イン状態)である。図21に示されている三次元モデル88,90Aは、第1三次元モデルの一例に相当する。生成部14は、図21に示されている三次元モデル88,90Aに基づいて、検出器が第1位置にあるときの静的オブジェクトを点群で表す点群情報を予め生成し、その点群情報に基づいて、検出器が第1位置にあるときの静的オブジェクトをボクセル群(第1ボクセル群)で表す第1ボクセル群情報を予め生成する。第1ボクセル群情報は、イン状態を示す情報(つまり第1位置を示す情報)に紐付けられてデータベース16に格納される。
【0145】
図22に示されている三次元モデル90Bは、第2位置に存在する検出器を表す三次元モデルである。三次元モデル88,90Bは、検出器が第2位置にあるときの静的オブジェクト(つまり対物レンズと検出器)を表す三次元モデルである。検出器が第2位置にあるときの静的オブジェクトの状態は、検出器が対物レンズと試料ホルダとの間の領域から外部領域に退避した状態(アウト状態)である。図22に示されている三次元モデル88,90Bは、第2三次元モデルの一例に相当する。生成部14は、図22に示されている三次元モデル88,90Bに基づいて、検出器が第2位置にあるときの静的オブジェクトを点群で表す点群情報を予め生成し、その点群情報に基づいて、検出器が第2位置にあるときの静的オブジェクトをボクセル群(第2ボクセル群)で表す第2ボクセル群情報を予め生成する。第2ボクセル群情報は、アウト状態を示す情報(つまり第2位置を示す情報)に紐付けられてデータベース16に格納される。
【0146】
図23に示されている三次元モデル90Cは、検出器が第1位置と第2位置との間を往復移動したときの状態を表す三次元モデルである。つまり、三次元モデル90Cは、検出器が往復移動したときの軌跡を表す三次元モデル(つまり、検出器の往復移動の経路を表す三次元モデル)である。三次元モデル90Cには、検出器に含まれる突起物(例えばネジ等)の往復移動の軌跡等も表されている。このときの静的オブジェクト(つまり対物レンズと検出器)の状態は、インアウト中の状態、つまり、検出器の状態がイン状態からアウト状態に切り替わる状態、又は、アウト状態からイン状態に切り替わる状態である。図23に示されている三次元モデル88,90Cは、第3三次元モデルの一例に相当する。生成部14は、図23に示されている三次元モデル88,90Cに基づいて、検出器が第1位置と第2位置との間を往復移動したときの静的オブジェクトを点群で表す点群情報を予め生成し、その点群情報に基づいて、検出器が第1位置と第2位置との間を往復始動したときの静的オブジェクトをボクセル群(第3ボクセル群)で表す第3ボクセル群情報を予め生成する。第3ボクセル群情報は、インアウト中の状態を示す情報に紐付けられてデータベース16に格納される。
【0147】
以上のように、静的オブジェクトの状態毎のボクセル群情報が予め生成され、データベース16に格納される。つまり、静的オブジェクトがイン状態のときのボクセル群情報、静的オブジェクトがアウト状態のときのボクセル群情報、及び、静的オブジェクトがインアウト中の状態のときのボクセル群情報が、データベース16に予め格納される。
【0148】
判定部18は、静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0149】
例えば、分析前等の段階で、検出器の状態がアウト状態のときにステージ(試料ホルダが搭載されるステージ)を移動させる場合、判定部18は、静的オブジェクトの状態がアウト状態のときのボクセル群情報と、動的オブジェクトの点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。このとき、静的オブジェクトの状態がイン状態のときのボクセル群情報、及び、静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群情報は、使用されない。
【0150】
分析のタイミング等に応じて、検出器の状態がアウト状態からイン状態に切り替えられる場合、判定部18は、静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群情報と、動的オブジェクトの点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。このとき、静的オブジェクトの状態がイン状態のときのボクセル群情報、及び、静的オブジェクトの状態がアウト状態のときのボクセル群情報は、使用されない。動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なると判定された場合、検出器は、対物レンズと試料ホルダとの間に挿入されない。動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なると判定されない場合、検出器は、対物レンズと試料ホルダとの間に挿入される。
【0151】
検出器の状態がイン状態であるときにステージを移動させる場合、判定部18は、静的オブジェクトの状態がイン状態のときのボクセル群情報と、動的オブジェクトの点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。このとき、静的オブジェクトの状態がアウト状態のときのボクセル群情報、及び、静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群情報は、使用されない。
【0152】
分析後等の段階で、検出器の状態がイン状態からアウト状態に切り替えられる場合、判定部18は、静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群情報と、動的オブジェクトの点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0153】
このように、実施例6では、静的オブジェクトの状態毎のボクセル群情報が予め生成され、静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報と動的オブジェクトの点群情報とが照合される。これにより、静的オブジェクトの状態に対応するボクセル群情報を、照合の都度、生成する場合と比べて、重なりの判定に要する時間を短縮させることができる。
【0154】
例えば、比較例として、検出器が移動して、検出器の状態がイン状態からアウト状態、又は、アウト状態からイン状態に切り替えられる場合、移動中の検出器の位置毎のボクセル群情報を生成し、検出器の位置に対応するボクセル群情報と動的オブジェクトの点群情報とを照合することが考えられる。この場合、検出器が移動しているときに、検出器の位置毎のボクセル群情報を生成する必要がある。しかし、検出器の位置毎のボクセル群情報を、都度生成すると、その生成に時間を要し、その分、重なりの判定に要する時間が長くなる。これに対して、実施例6によれば、静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群情報が予め生成されているため、検出器が移動中にボクセル群情報を都度生成する場合と比べて、判定に要する時間を短縮させることができる。静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群は、検出器の移動の軌跡、つまり、検出器が移動したときの経路を表すボクセル群を含む。そのため、静的オブジェクトの状態がインアウト中の状態のときのボクセル群情報を用いることで、検出器が往復移動しているときの衝突の有無を判定することができる。
【0155】
図24を参照して、実施例6の別の例について説明する。図24には、通常状態の対物レンズを表す点群94と接近禁止領域を表す点群96とが示されている。
【0156】
観察モードによっては、対物レンズに動的オブジェクトを通常状態よりも近づけないようにしたいということがある。この場合、生成部14は、通常状態の対物レンズを表す点群94と、接近禁止領域を表す点群96と、合成することで、対物レンズと接近禁止領域とを表す合成点群98を生成する。接近禁止領域は、予め設定されてもよいし、ユーザーによって設定されてもよい。生成部14は、合成点群98に基づいてボクセル群情報を生成する。
【0157】
接近禁止領域を必要とする観察モードが実行される場合、判定部18は、合成点群98に基づいて生成されたボクセル群情報と、動的オブジェクトの点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0158】
(実施例7)
実施例7では、判定部18は、動的オブジェクトの移動経路上に存在する静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0159】
例えば、互いに直交する三つの座標軸から構成される三次元直交座標系を含む座標系が定められる。判定部18は、座標軸毎に、動的オブジェクトの移動経路上に存在する静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0160】
また、上記の座標系は、動的オブジェクトの傾斜軸を更に含む。動的オブジェクトが傾斜軸を中心として傾斜した場合、判定部18は、座標軸毎に、傾斜した状態の動的オブジェクトの移動経路上に存在する静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0161】
以下、図25から図30を参照して、実施例7について説明する。図25には、静的オブジェクト100と動的オブジェクト102とが示されている。静的オブジェクト100は、例えば対物レンズを含む。動的オブジェクト102は、例えば、ステージ、ステージ上に搭載された試料ホルダ、及び、試料ホルダ上に搭載された試料を含む。
【0162】
図10を参照して説明したように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が定められており、ステージは、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに沿って移動可能な構造物である。また、ステージは、R軸を回転軸として回転可能であり、T軸を傾斜軸として傾斜可能である。ここでは一例として、X軸とT軸とが一致している。例えば、ステージは、X軸ステージ、Y軸ステージ、Z軸ステージ、T軸ステージ及びR軸ステージを含む。図25には、X-Z平面内で見たときのオブジェクトが示されている。
【0163】
動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりを判定するにあたり、ボクセル群を平面上で見ることが考えられる。この平面は、例えば、X-Z平面又はY-Z平面である。平面上でボクセル群を見た場合、ボクセル群は正方形の集合として扱うことができる。判定部18は、X軸、Y軸、Z軸及びT軸のそれぞれの軸において、動的オブジェクトの移動経路上に、値「1」が紐付けられているボクセルが存在するか否かを判定する。値「1」が紐付けられているボクセルが、動的オブジェクトの移動経路上に存在する場合、判定部18は、値「1」が紐付けられているボクセルの位置にて動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なると判定する。値「0」が紐付けられているボクセルが、動的オブジェクトの移動経路上に存在する場合、判定部18は、値「0」が紐付けられているボクセルの位置にて動的オブジェクトと静的オブジェクトは重ならないと判定する。判定部18は、座標軸毎に重なりの有無を判定する。
【0164】
図26を参照して、動的オブジェクトがT軸を中心として回転していない場合(つまり、傾斜角度が=0°である場合)について説明する。図26には、X-Z平面又はY-Z平面が示されている。ここでは、X-Z平面内における移動について説明する。図26においては、ボクセルは、二次元の正方形のマス目として表現されている。
【0165】
X軸ステージ、Y軸ステージ及びZ軸ステージのそれぞれの移動方向は、三次元座標系を規定するX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれと一致する。そのため、判定部18は、動的オブジェクト102を表す点群の現在位置を示す座標を算出し、動的オブジェクト102の移動量をその座標に加算することで、目標位置の座標を算出することができる。例えば、荷電粒子線装置12において、動的オブジェクト102の移動量及び移動方向が指定されて移動の指示が与えられると、その移動量及び移動方向を示す情報が、荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力される。判定部18は、その情報に基づいて、目標位置の座標を算出する。
【0166】
例えば、現在位置から目標位置までの移動経路をX-Z平面上で見ると、X軸に沿った移動経路及びZ軸に沿った移動経路は、それぞれ、2つの点を結んだ線分として表現される。例えば、X軸に沿った移動経路は、現在位置104から目標位置106までの移動経路として示されており、X-Z平面上で見ると、その移動経路は、2つの点を結んだ線分108として表現される。値「1」が紐付けられているボクセル(図26では二次元の正方形で表現されているマス目)が線分108上に存在する場合、判定部18は、X-Z平面内にて動的オブジェクト102がX軸に沿って移動するときに、動的オブジェクト102と静的オブジェクト100とが重なると判定する。値「1」が紐付けられているボクセルが線分108上に存在しない場合、判定部18は、X-Z平面内にて動的オブジェクト102がX軸に沿って移動するときに、動的オブジェクト102と静的オブジェクト100とが重ならないと判定する。Z軸に沿った移動についても同様に重なりの有無が判定される。また、Y-Z平面内での重なりの有無についても同様に判定される。
【0167】
図27及び図28を参照して、動的オブジェクト102がT軸を中心として傾斜している場合(つまり、傾斜角度>0の場合)について説明する。図27には、傾斜した状態の動的オブジェクト102が示されている。図28には、Y-Z平面が示されている。図28には、ボクセルは二次元の正方形のマス目として表現されている。
【0168】
X軸ステージの移動方向とT軸は平行であるため、T軸を中心とした傾斜は、X軸ステージの移動方向に影響を与えない。そのため、X軸上での重なりの有無の判定は、動的オブジェクト102がT軸を中心として傾斜していないときの判定と同じ方法によって実現される。一方、Y軸、Z軸及びT軸のそれぞれの軸上における移動方向は、T軸を中心とした動的オブジェクト102の傾斜に応じて傾斜する。
【0169】
Y軸ステージ及びZ軸ステージのそれぞれの移動方向は、T軸を中心とした動的オブジェクト102の傾斜に応じて変化するが、どちらの軸ステージも、X軸ステージの移動方向には移動しない。そのため、Y軸及びZ軸のそれぞれの軸上における重なりの有無は、動的オブジェクト102がT軸を中心として傾斜していないときと同様に、Y-Z平面上にて斜めの線上のボクセルを調べることで判定することができる。
【0170】
判定部18は、ボクセルをY-Z平面上でピクセルとみなして近似直線を引き、斜めの線上のボクセルに紐付けられている値が、「1」又は「0」のいずれであるのかを調べる。図28においては、Y-Z平面内における動的オブジェクトの移動経路が、現在位置110から目標位置112までの移動経路として示されている。その移動経路は、Y-Z平面内で見ると、2つの点を結んだ線分114として表現される。
【0171】
値「1」が紐付けられているボクセル(図28中の正方形のマス目)が線分114上に存在する場合、判定部18は、Y-Z平面内にて動的オブジェクト102が移動するときに、動的オブジェクト102と静的オブジェクト100とが重なると判定する。値「1」が紐付けられているボクセルが線分114上に存在しない場合、判定部18は、Y-Z平面内にて動的オブジェクト102が移動するときに、動的オブジェクト102と静的オブジェクト100とが重ならないと判定する。
【0172】
なお、近似直線を用いる場合、厳密には誤差が生じ得る。しかし、点群をボクセル群に変換するときに、図29に示すように、点群に含まれる各点110を球113として扱うことで、オブジェクトが存在する領域115を拡張することができる。例えば、球113の内部、及び、球113の表面に重なる部分が、オブジェクトが存在する領域115に含まれる。この拡張によって、線上のボクセルを調べるときの誤差を無視することができる。これにより、線上に存在する全てのボクセルを調べなくても、重なりの有無を判定することができる。その結果、判定に要する時間を短縮させることができる。
【0173】
以下、T軸を中心にした傾斜移動について説明する。X軸ステージとT軸は平行であるため、T軸を中心とした傾斜移動は、X軸ステージの移動方向に影響を与えない。そのため、判定部18は、動的オブジェクト102の現在位置の座標を算出した後、Y-Z平面内でT軸を中心として移動量の分だけ動的オブジェクト102を回転させることで、目標位置の座標を算出することができる。
【0174】
図30には、このときの傾斜移動の経路が示されている。このときの傾斜移動の経路は、現在位置116と目的位置118とを結ぶ円弧状の線分120で表現される。この線分120は、Y-Z平面内でT軸を回転中心とした円弧を示す線分である。
【0175】
例えば、判定部18は、ボクセルをY-Z平面内でピクセルとみなして近似の円弧曲線を引き、線分120上のボクセルに紐付けられている値が、「1」又は「0」のいずれであるのかを調べる。
【0176】
値「1」が紐付けられているボクセル(図30中の正方形のマス目)が線分120上に存在する場合、判定部18は、Y-Z平面内にて動的オブジェクト102がT軸を中心として傾斜するときに、動的オブジェクト102と静的オブジェクト100とが重なると判定する。値「1」が紐付けられているボクセルが線分120上に存在しない場合、判定部18は、Y-Z平面内にて動的オブジェクト102がT軸を中心として傾斜するときに、動的オブジェクト102と静的オブジェクト100とが重ならないと判定する。
【0177】
なお、T軸の下にZ軸が配置される装置(例えばSEM)においては、T軸を中心とした動的オブジェクトの傾斜によってZ軸ステージの移動方向は変わらないため、斜めの線上に存在するボクセルを調べる必要がなく、縦方向にボクセルを調べるだけで済む。T軸がX軸と平行でない場合においても、T軸がY軸と平行であれば、X-Z平面上で衝突の有無を判定すればよい。
【0178】
(実施例8)
図31を参照して、R軸を中心とした回転移動について説明する。図31には、動的オブジェクトが回転移動するときの経路122が示されている。ここでは一例として、動的オブジェクトに含まれるステージにおいて、座標軸のうちR軸が最上位に配置されるものとする。
【0179】
R軸が最上位に配置される場合、回転移動の最中、試料ホルダとR軸ステージとが移動するだけで、R軸ステージの下に配置されている各軸ステージは移動しない。そのため、回転移動中の重なりの有無を判定する場合、試料ホルダ及びR軸ステージと、静的オブジェクトと、の重なりの有無を判定すれば済む。一方で、T軸を中心とした傾斜移動が発生する場合、回転移動中の重なりの有無を二次元の平面上で判断することは困難となる。
【0180】
そこで、回転移動の経路を埋める点群(つまり、動的オブジェクトの回転移動の軌跡を表す点群)を算出し、その点群の座標を、任意の軸ステージの位置を示す座標に変換し、その後、点群情報とボクセル群情報とを照合することが考えられる。この場合、点群とボクセル群とを照合するためには、ボクセルのサイズ(換言すると密度)以下の間隔で、点群に含まれる各点の位置を算出する必要がある。しかし、回転する点群に含まれる点の位置が、R軸から遠いほど、回転移動の経路は長くなるため、その分、算出すべき点の個数が増大する。また、R軸を中心とした回転量、及び、試料ホルダやR軸ステージを表現する点の総数、等の要素に応じて計算量は増大する。計算量が増えると、その分、重なりの有無の判定に要する時間が増大し、その判定の速度が低下する。
【0181】
これに対処するために、実施例8では、生成部14は、動的オブジェクトの三次元モデルに基づいて、軸Rを中心とした予め定められた回転角度の範囲毎に、動的オブジェクトを表す点群情報を生成する。具体的には、生成部14は、動的オブジェクトの三次元モデルを、R軸を中心として予め定められた回転角度だけ回転させ、その回転移動の軌跡を表す三次元モデルを生成する。生成部14は、回転移動の軌跡を表す三次元モデルに基づいて、回転移動の軌跡を表す点群を生成し、その点群を表す点群情報を生成する。回転移動の軌跡は、回転移動の経路を表しているため、回転移動の軌跡を表す三次元モデルは、回転移動の経路を埋めるモデルである。従って、回転移動の軌跡を表す点群は、回転移動の経路を埋める点群である。以下では、回転移動の軌跡を表す三次元モデルを「回転モデル」と称し、その回転モデルに基づいて生成された点群を「回転点群」と称することとする。また、回転していないときの動的オブジェクトの三次元モデルを「標準モデル」と称する。
【0182】
図32を参照して、実施例8の具体例について説明する。図32には、動的オブジェクトの標準モデル124、回転モデル126及び回転点群128が示されている。
【0183】
標準モデル124は、R軸を中心として回転していないときの試料ホルダを表す三次元モデルである。つまり、標準モデル124は、回転角度が0°のときの試料ホルダを表す三次元モデルである。
【0184】
回転モデル126は、R軸を中心として標準モデル124を90°回転させたときの回転移動の軌跡(つまり、標準モデル124の回転移動の経路)を表す三次元モデルである。回転モデル126は、0°~90°の回転角度の範囲における回転移動の軌跡を表す三次元モデル、つまり、0°~90°の範囲を網羅する三次元モデルである。回転モデル126は、生成部14によって生成される。
【0185】
生成部14は、回転モデル126に基づいて、回転移動の軌跡を表す回転点群128を生成し、その回転点群128を表す点群情報を予め生成する。回転点群128は、0°~90°の回転角度の範囲における回転移動の軌跡を表す点群であり、0°~90°の範囲を網羅する点群である。回転点群128を表す点群情報は、記憶装置30に予め記憶される。
【0186】
動的オブジェクトの回転角度の範囲が0°~90°の範囲であるときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する場合(0°~90°の範囲内で重なりの有無を判定する場合)、判定部18は、回転点群128を表す点群情報と静的オブジェクトのボクセル群情報とを照合することで、その回転角度の範囲における動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。これにより、動的オブジェクトが回転する範囲での重なりの有無を判定することができる。
【0187】
以下、予め想定された回転量よりも動的オブジェクトの回転量が多いときの判定について説明する。例えば、回転角度が0°~90°の範囲に対応する回転点群128が、予め生成されており、0°~360°の範囲で重なりの有無を判定するものとする。
【0188】
生成部14は、回転点群128の座標を目的の角度範囲内の座標に変換することで、その目的の角度範囲を網羅する回転点群を生成する。
【0189】
具体的には、生成部14は、R軸を中心として回転点群128を90°回転させることで、90°~180°の範囲を網羅する回転点群を生成し、回転点群128を180°回転させることで、180~270°の範囲を網羅する回転点群を生成し、回転点群128を270°回転させることで、270°~360°の範囲を網羅する回転点群を生成する。これにより、0°~360°の範囲を網羅する回転点群が生成され、判定部18は、その回転点群を表す点群情報と静的オブジェクトのボクセル群情報とを照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。
【0190】
以下、図33を参照して、0°~140°の範囲で重なりの有無を判定する例について説明する。図33には、動的オブジェクトの点群が示されている。
【0191】
上述したように、回転点群128は予め生成されている。生成部14は、R軸を中心として回転点群128を50°回転させることで、50°~140°の範囲を網羅する回転点群130を生成する。回転点群132は、回転点群128,130からなる点群である。判定部18は、回転点群132を表す点群情報と静的オブジェクトのボクセル群情報とを照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。このように、回転点群128が予め生成されている場合、1回の計算で、0°~140°の範囲を網羅する回転点群132を生成することができる。回転点群128を計算する回数も含めると、合計で2回の計算で済む。
【0192】
これに対して、回転モデルに基づいて生成された回転点群を用いずに、標準モデルに基づいて生成された点群を用いる場合、単位回転角度毎(例えば、0.1°や1°等)に、R軸を中心として標準モデルを回転させて点群を都度生成し、その生成された点群を用いて重なりの有無を判定することになる。例えば、0°~140°の範囲で重なりの有無を判定する場合において、単位回転角度が1°である場合、141回の計算が必要となる。単位回転角度を小さくするほど計算量が増大し、その結果、重なりの判定に要する時間が増大する。実施例8では、そのような計算が不要となるため、判定に要する時間を短縮することができる。
【0193】
回転モデルが網羅する回転角度の範囲が狭いほど、座標変換の回数が増大するため、計算量が増大し、判定に要する時間が増大する。例えば、0°~10°の範囲を網羅する回転モデルが予め生成されている場合において、0°~360°の範囲で重なりの有無を判定する場合、座標変換の回数は36回となる。このように、座標変換の回数が増大するが、回転モデルを用いずに、回転移動の経路を埋めるための点群を算出する場合と比べて、計算時間は短い。そのため、回転モデルを用いない場合と比べて、判定に要する時間を短縮することができる。
【0194】
また、回転角度の範囲の異なる複数の回転モデルを予め生成してもよい。例えば、生成部14は、0°~90°の範囲を網羅する回転モデルと、0°~10°の範囲を網羅する回転モデルと、を生成し、0°~90°の範囲を網羅する回転点群と、0°~10°の範囲を網羅する回転点群と、を生成する。
【0195】
動的オブジェクトの回転角度の範囲が90°未満である場合、生成部14は、0°~10°の範囲を網羅する回転点群に基づいて、その回転角度の範囲を網羅する回転点群を生成する。判定部18は、生成部14によって生成された回転点群を表す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群情報と、を照合する。これにより、最大で9回の座標変換を行うことで、90°未満の範囲で重なりの有無を判定することができる。
【0196】
例えば、0°~80°の範囲で重なりの有無を判定する場合、生成部14は、0°~10°の範囲を網羅する回転点群を、10°ずつ、合計で8回回転させることで、0°~80°の範囲を網羅する回転点群を生成する。判定部18は、0°~80°の範囲を網羅する回転点群を表す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群情報と、を照合することで、重なりの有無を判定する。
【0197】
一方で、90°以上の範囲で重なりの有無を判定する場合、判定部18は、0°~90°の範囲を網羅する回転点群を表す点群情報と、静的オブジェクトのボクセル群情報と、を照合することで、重なりの有無を判定する。
【0198】
また、生成部14は、動的オブジェクト(例えば試料ホルダ)の用途や特性に応じた回転点群を生成してもよい。
【0199】
例えば、試料ホルダが、回転角度が0°~90°の範囲内で使用されることが想定される場合、生成部14は、当該試料ホルダ用の回転点群として、0°~90°の範囲を網羅する回転点群を予め生成する。当該試料ホルダが用いられる場合、判定部18は、0°~90°の範囲を網羅する回転点群を用いて、重なりの有無を判定する。
【0200】
試料ホルダが、回転角度が0°~50°の範囲で使用されることが想定される場合、生成部14は、当該試料ホルダ用の回転点群として、0°~50°の範囲を網羅する回転点群を予め生成する。当該試料ホルダが用いられる場合、判定部18は、0°~50°の範囲を網羅する回転点群を用いて、重なりの有無を判定する。
【0201】
以下、予め想定された回転量よりも動的オブジェクトの回転量が小さいときの判定について説明する。回転位置の精度として高い精度が要求され、計算速度が重視されない場合、生成部14は、標準モデルを回転させることで、回転移動の経路を埋める三次元モデルを生成し、その三次元モデルに基づいて点群情報を生成する。
【0202】
回転位置の精度として高い精度が要求されておらず、計算速度が重視される場合、判定部18は、予め生成された複数の回転点群の中で、網羅する角度の範囲が最も小さい回転点群を用いて、重なりの有無を判定する。例えば、0°~90°の範囲を網羅する回転点群と、0°~10°の範囲を網羅する回転点群と、が予め生成されている場合において、回転角度が3°のときの重なりの有無の判定について説明する。この場合、判定部18は、0°~10°の範囲を網羅する回転点群を用いて、重なりの有無を判定する。この結果、回転角度は7°超過するが、計算コストが低くなり、判定に要する時間を短縮することができる。
【0203】
生成部14は、更に細かい範囲を網羅する回転点群を予め生成してもよい。例えば、生成部14は、0°~1°の範囲を網羅する回転点群を予め生成する。この回転点群を用いることで、回転位置の精度を向上させつつ、判定に要する時間を短縮することができる。
【0204】
上述した試料ホルダは、R軸を中心として非対称の形状を有する構造物である。このような構造物が動的オブジェクトに含まれる場合、動的オブジェクトの回転によって動的オブジェクトと静的オブジェクトとが衝突するか否かを細かく判定する必要がある。上述した例では、判定の速度の低下を防止しつつ、判定の精度を高めるために、回転角度の範囲が異なる複数の回転点群が予め生成される。
【0205】
一方で、回転対称の形状を有する試料ホルダが用いられる場合において、その形状が衝突の判定に与える影響が小さい場合がある。この場合、生成部14は、0°~360°の範囲を網羅する点群情報を生成してもよい。例えば、図34に示すように、回転対称の形状を有する試料ホルダ134が動的オブジェクトに含まれる場合、生成部14は、試料ホルダ134の三次元モデルを、R軸を中心として360°回転させることで、0°~360°の範囲を網羅する回転モデルを生成する。図35には、0°~360°の範囲を網羅する回転モデル136が示されている。回転モデル136を用いることで、回転角度の範囲を細かく設定する必要がなくなり、計算量が減るため、重なりの有無をより高速に判定することができる。
【0206】
(実施例9)
実施例9では、判定部18は、座標軸毎に、順番に、動的オブジェクトの移動経路上に存在する静的オブジェクトを表すボクセル群情報と、動的オブジェクトを表す点群情報と、を照合することで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。ある座標軸についての判定において、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なっていると判定された場合、判定部18は、照合する座標軸を変えて、座標軸毎に、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。このように、判定部18は、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なっている場合に、照合する座標軸を変えて判定を行うことで、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならない経路を探索する。出力部20は、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならない経路を示す情報を、ディスプレイに表示させてもよい。
【0207】
例えば、X軸、Y軸及びR軸の順番で、動的オブジェクトが移動又は回転させられるものとする。つまり、動的オブジェクトが、X軸に沿ってX軸上の目的位置まで移動させられ、次に、Y軸に沿ってY軸上の目的位置まで移動させられ、次に、R軸を中心として目的角度まで回転させられるものとする。この場合、判定部18は、その順番に従って、座標軸毎に、動的オブジェクトと静的オブジェクトとの重なりの有無を判定する。例えば、荷電粒子線装置12において、X軸に沿った移動量とその移動方向、Y軸に沿った移動量とその移動方向、及び、R軸回りの移動量(つまり回転量)とその移動方向(つまり回転方向)が、入力されると、これらの移動量及び移動方向を示す情報が、荷電粒子線装置12から衝突判定装置10に出力される。判定部18は、その情報に基づいて、X軸に沿った移動の目標位置、Y軸に沿った移動の目標位置、及び、R軸を中心とした回転の目標角度を算出する。
【0208】
判定部18は、動的オブジェクトがX軸に沿って目的位置まで移動するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なるか否かを判定する。X軸に沿った移動によって動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならない場合、次に、判定部18は、動的オブジェクトがY軸に沿って目的位置まで移動するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なるか否かを判定する。Y軸に沿った移動によって動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならない場合、次に、判定部18は、動的オブジェクトがR軸を中心として目的角度まで回転するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なるか否かを判定する。出力部20は、各判定中、判定結果を示す情報をディスプレイに表示させる。
【0209】
例えば、Y軸に沿って動的オブジェクトが移動するときに動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なると判定された場合、出力部20は、Y軸に沿った移動に起因して、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なることを示す情報をディスプレイに表示させる。出力部20は、動的オブジェクトの移動経路をY軸に沿った移動経路からR軸に沿った移動経路に変更することをユーザーに促す情報を、ディスプレイに表示させてもよい。
【0210】
次に、判定部18は、動的オブジェクトがR軸を中心として目的角度まで回転するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なるか否かを判定する。その回転移動によって動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならないと判定された場合、判定部18は、Y軸に沿って動的オブジェクトが移動したときに動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なるか否かを判定する。また、出力部20は、R軸を中心に動的オブジェクトを回転させた後に動的オブジェクトをY軸に沿って移動させることをユーザーに促す情報をディスプレイに表示させてもよい。
【0211】
例えば、X軸、Y軸及びR軸の順番で動的オブジェクトが移動するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならないと判定された場合、出力部20は、その旨を示す情報をディスプレイに表示させる。この場合、X軸、Y軸及びR軸の順番で動的オブジェクトが移動させられると、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが衝突せずに、動的オブジェクトを目的位置及び目的角度まで移動させることができる。
【0212】
一方、X軸、Y軸及びR軸の順番で動的オブジェクトが移動するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重なると判定されたが、X軸、R軸及びY軸の順番で動的オブジェクトが移動するときに、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが重ならないと判定された場合、出力部20は、その旨を示す情報をディスプレイに表示させる。その情報に従って、X軸、R軸及びY軸の順番で動的オブジェクトが移動させられると、動的オブジェクトと静的オブジェクトとが衝突せずに、動的オブジェクトを目的位置及び目的角度まで移動させることができる。
【0213】
上述した各実施例は、それぞれ単独で実行されてもよいし、複数の実施例が組み合わせされて実行されてもよい。
【符号の説明】
【0214】
10 衝突判定装置、12 荷電粒子線装置、14 生成部、16 データベース、18 判定部、20 出力部、22 算出部、24 表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
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