(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車載機器制御装置および車両用冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20241106BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241106BHJP
F25B 27/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B60H1/32 623B
F25B1/00 101F
F25B1/00 101H
F25B1/00 341U
F25B1/00 361Z
F25B27/00 B
F25B27/00 C
(21)【出願番号】P 2022206412
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】511211162
【氏名又は名称】杉谷 康和
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 康和
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196171(JP,A)
【文献】特開平6-115346(JP,A)
【文献】特開2003-104046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F25B 1/00
F25B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれている場合、前記ガソリンエンジン(2)に負荷をかける車載機器(4、21)を停止させる車載機器停止制御を行う制御部(40)を備え、
前記制御部(40)は、車載機器停止制御が行われている場合、車速が0になったら前記車載機器(4、21)を再稼働させて車載機器停止制御を終了する車載機器制御装置。
【請求項2】
前記車載機器は、前記ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷凍サイクル装置の冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)であり、
前記制御部(40)は、前記ブレーキペダルが踏まれている場合、前記ガソリンエンジン(2)から前記圧縮機(21)へ伝達される駆動力を断続するマグネットクラッチに対して前記駆動力が遮断されるように制御することによって車載機器停止制御を行う請求項1に記載の車載機器制御装置。
【請求項3】
ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)と、
前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒を放熱させる放熱器(22)と、
前記放熱器(22)で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(23)と、
前記減圧部(23)で減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器(123)と、
前記ガソリンエンジン(2)から前記圧縮機(21)へ伝達される駆動力を断続するマグネットクラッチを制御する制御部(40)とを備え、
前記制御部(40)は、
前記ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれている場合、前記駆動力が遮断されて前記圧縮機(21)が停止するように前記マグネットクラッチを制御する圧縮機停止制御を行い、
車速が0になったら前記駆動力が前記圧縮機(21)に伝達されるように前記マグネットクラッチを制御して前記圧縮機停止制御を終了する車両用冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒を、前記放熱器(22)および前記減圧部(23)をバイパスさせて前記蒸発器に導くバイパス部(27)と、
前記バイパス部(27)を開閉するバイパス弁(25)とを備え、
前記制御部(40)は、前記ブレーキペダルが踏まれている場合、前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒が前記放熱器(22)および前記減圧部(23)をバイパスして前記蒸発器(123)に導かれるように前記バイパス弁(25)を開弁させる開弁制御を行う請求項3に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とを連通させて均圧化させる均圧部(28)と、
前記均圧部(28)を開閉する均圧弁(26)とを備え、
前記制御部(40)は、前記開弁制御では、前記バイパス弁(25)を開弁させるとともに、前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とが連通するように前記均圧弁(26)を開弁させる請求項4に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とを連通させて均圧化させる均圧部(28)と、
前記均圧部(28)を開閉する均圧弁(26)とを備え、
前記制御部(40)は、前記ブレーキペダルが踏まれている場合、前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とが連通するように前記均圧弁(26)を開弁させる開弁制御を行う請求項3に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部(40)は、前記圧縮機停止制御および前記開弁制御が行われている場合、前記圧縮機(21)の停止時間が所定停止時間(T1)以上になり且つ前記車速が0になったら前記駆動力が前記圧縮機(21)に伝達されるように前記マグネットクラッチを制御して前記圧縮機停止制御を終了する請求項4ないし6のいずれか1つに記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記制御部(40)は、前記開弁制御において、開弁時間が、前記所定停止時間(T1)よりも長い所定開弁時間(T2)以上になったら前記開弁制御を終了する請求項7に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンで走行する車両に搭載された車載機器を制御する車載機器制御装置、およびガソリンエンジンで走行する車両に用いられる冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の車両用冷凍サイクル装置は、ブレーキブースタを有する車両に搭載されている。ブレーキブースタは、車両のガソリンエンジンの吸気系に生ずる負圧をブレーキ負圧として蓄圧して、そのブレーキ負圧によって駆動されることで運転手のブレーキペダル操作力を軽減する。
【0003】
ここで、車両のガソリンエンジンには走行負荷のみならず、オートマチックトランスミッション、圧縮機、オルタネータ等の車載機器の負荷がかかる。車両のガソリンエンジンがアイドリング状態であるときにこれらの負荷が大きくなると、車両のガソリンエンジンの回転数を維持するようにスロットルバルブが開く方向にアイドルスピードコントロールが働くため、吸気の負圧が小さくなり、ブレーキ負圧も小さくなる。
【0004】
特に、冷凍車のように、車室空調用冷凍サイクル装置と荷室空調用冷凍サイクル装置という2つの冷凍サイクル装置を有する車両では、車室空調用冷凍サイクル装置の圧縮機と荷室空調用冷凍サイクル装置の圧縮機という2つの圧縮機があるので、車両のガソリンエンジンの負荷が大きくなりやすい。そのため、吸気の負圧が小さくなりやすく、ブレーキ負圧も小さくなりやすい。
【0005】
この点、上記特許文献1に記載の車両用冷凍サイクル装置は、ブレーキ負圧がブレーキブースタを作動させるのに必要な値に達していない時に車両用冷凍サイクル装置の駆動が停止されるようになっている。
【0006】
具体的には、車両のガソリンエンジンによって駆動される圧縮機を停止させることで車両エンジンの負荷を低減させるので、車両のガソリンエンジンの吸入空気量が減少してスロットルバルブが閉じ側へ制御される。これにより、吸気の負圧が大きくなり、ブレーキブースタを駆動するのに必要なブレーキ負圧が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術では、ブレーキ負圧がブレーキブースタを作動させるのに必要な値に達していない時にはブレーキペダルが踏まれていなくても圧縮機を停止させるので、圧縮機(換言すれば、車載機器)を必要以上に停止させることになってしまう。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、ブレーキ負圧を確保するための車載機器の停止頻度を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車載機器制御装置は、
ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれている場合、ガソリンエンジン(2)に負荷をかける車載機器(4、21)を停止させる車載機器停止制御を行う制御部(40)を備え、
制御部(40)は、車載機器停止制御が行われている場合、車速が0になったら車載機器(4、21)を再稼働させて車載機器停止制御を終了する。
【0011】
これによると、ブレーキペダルが踏まれている場合に車載機器(4、21)を停止させるので、ブレーキペダルが踏まれていないときに車載機器(4、21)を停止させることを回避できる。しかも、車速が0になったら車載機器(4、21)を再稼働させるので、ブレーキ負圧が必要ないときまで車載機器(4、21)を停止させることを回避できる。したがって、ブレーキ負圧を確保するための車載機器(4、21)の停止頻度を低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の車載機器制御装置は、請求項1に記載の車載機器制御装置において、
車載機器は、ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷凍サイクル装置の冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)であり、
制御部(40)は、ブレーキペダルが踏まれている場合、ガソリンエンジン(2)から圧縮機(21)へ伝達される駆動力を断続するマグネットクラッチに対して駆動力が遮断されるように制御することによって車載機器停止制御を行う。
【0013】
これによると、車載機器停止制御において、圧縮機(21)を停止させることによってブレーキ負圧を確実に確保することができる。
【0014】
上記目的を達成するため、請求項3に記載の車両用冷凍サイクル装置は、
ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)と、
圧縮機(21)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(22)と、
放熱器(22)で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(23)と、
減圧部(23)で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器(123)と、
ガソリンエンジン(2)から圧縮機(21)へ伝達される駆動力を断続するマグネットクラッチを制御する制御部(40)とを備え、
制御部(40)は、
ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれている場合、駆動力が遮断されて圧縮機(21)が停止するようにマグネットクラッチを制御する圧縮機停止制御を行い、
車速が0になったら駆動力が圧縮機(21)に伝達されるようにマグネットクラッチを制御して圧縮機停止制御を終了する。
【0015】
これによると、ブレーキペダルが踏まれている場合に圧縮機(21)を停止させるので、ブレーキペダルが踏まれていないときに圧縮機(21)を停止させることを回避できる。しかも、車速が0になったら圧縮機(21)を再稼働させるので、ブレーキ負圧が必要ないときまで圧縮機(21)を停止させることを回避できる。したがって、ブレーキ負圧を確保するための車載機器、具体的には圧縮機(21)の停止頻度を低減することができる。
【0016】
請求項4に記載の車両用冷凍サイクル装置は、請求項3に記載の車両用冷凍サイクル装置において、
圧縮機(21)から吐出された冷媒を、放熱器(22)および減圧部(23)をバイパスさせて蒸発器に導くバイパス部(27)と、
バイパス部(27)を開閉するバイパス弁(25)とを備え、
制御部(40)は、ブレーキペダルが踏まれている場合、圧縮機(21)から吐出された冷媒が放熱器(22)および減圧部(23)をバイパスして蒸発器(123)に導かれるようにバイパス弁(25)を開弁させる開弁制御を行う。
【0017】
これによると、圧縮機停止制御が行われて圧縮機(21)が停止している間に冷凍サイクルの高圧と低圧とを均圧化できる。そのため、圧縮機(21)内の圧力が極力低い状態で圧縮機(21)を再稼働できるので、マグネットクラッチでガソリンエンジン(2)と圧縮機(21)とを連結させる際に大きな作動音がしたり、マグネットクラッチが滑って摩耗してしまうことを抑制できる。
【0018】
請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置は、請求項4に記載の車両用冷凍サイクル装置において、
圧縮機(21)の吸入側と吐出側とを連通させて均圧化させる均圧部(28)と、
均圧部(28)を開閉する均圧弁(26)とを備え、
制御部(40)は、開弁制御では、バイパス弁(25)を開弁させるとともに、圧縮機(21)の吸入側と吐出側とが連通するように均圧弁(26)を開弁させる。
【0019】
これにより、開弁制御において、冷凍サイクルの高圧と低圧とを均圧部(28)をも通じて均圧化できるので、冷凍サイクルの高圧と低圧とを確実かつ短時間に均圧化できる。
【0020】
請求項6に記載の車両用冷凍サイクル装置は、請求項3に記載の車両用冷凍サイクル装置において、
圧縮機(21)の吸入側と吐出側とを連通させて均圧化させる均圧部(28)と、
均圧部(28)を開閉する均圧弁(26)とを備え、
制御部(40)は、ブレーキペダルが踏まれている場合、圧縮機(21)の吸入側と吐出側とが連通するように均圧弁(26)を開弁させる開弁制御を行う。
【0021】
これによると、圧縮機停止制御が行われて圧縮機(21)が停止している間に冷凍サイクルの高圧と低圧とを均圧化できる。そのため、圧縮機(21)内の圧力が極力低い状態で圧縮機(21)を再稼働できるので、マグネットクラッチでガソリンエンジン(2)と圧縮機(21)とを連結させる際に大きな作動音がしたり、マグネットクラッチが滑って摩耗してしまうことを抑制できる。
【0022】
請求項7に記載の車両用冷凍サイクル装置は、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の車両用冷凍サイクル装置において、
制御部(40)は、圧縮機停止制御および開弁制御が行われている場合、圧縮機(21)の停止時間が所定停止時間(T1)以上になり且つ車速が0になったら駆動力が圧縮機(21)に伝達されるようにマグネットクラッチを制御して圧縮機停止制御を終了する。
【0023】
これによると、圧縮機停止制御において、圧縮機(21)が所定停止時間(T1)未満で再稼働することを回避できるので、冷凍サイクルの高圧と低圧とが確実に均圧化した状態で圧縮機(21)を再稼働することができる。
【0024】
請求項8に記載の車両用冷凍サイクル装置は、請求項7に記載の車両用冷凍サイクル装置において、
制御部(40)は、開弁制御において、開弁時間が、所定停止時間(T1)よりも長い所定開弁時間(T2)以上になったら開弁制御を終了する。
【0025】
これにより、圧縮機(21)を再稼働させる前に開弁制御が終了することを回避できるので、冷凍サイクルの高圧と低圧とが一層確実に均圧化した状態で圧縮機(21)を再稼働することができる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態における輸送用車両を示す模式図である。
【
図2】
図1の輸送用車両に用いられる荷室空調冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図3】
図2の荷室空調冷凍サイクル装置における電子制御部を示すブロック図である。
【
図4】
図3の制御装置が実行するエンジン負荷制御を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の制御装置が実行する均圧制御を示すフローチャートである。
【
図6】
図3の制御装置が実行するエンジン負荷制御および均圧制御の一具体例を説明するタイムチャートである。
【
図7】
図3の制御装置が実行するエンジン負荷制御および均圧制御の他の具体例を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の車両用冷凍サイクル装置が搭載される輸送用車両1を模式的に示す断面図である。
図1中、上下前後の矢印は、輸送用車両1の上下前後方向を示している。
【0029】
本実施形態の輸送用車両1は、車両最前部に配置された運転室10の後方側に荷台11を有している。この荷台11は、断熱材等により箱形状に形成されている。荷台11内には荷室111が形成されている。
【0030】
運転室10の下部には、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン2、変速機構であるオートマチックトランスミッション3、発電機であるオルタネータ4が搭載されている。ガソリンエンジン2は、吸気量を調整するスロットルバルブを有する内燃機関である。車両には、運転手がブレーキペダル(図示せず)を踏込操作する時の操作力を軽減するブレーキブースタ(図示せず)が設けられている。
【0031】
ブレーキブースタは、ガソリンエンジン2の吸気の負圧を利用してブレーキペダルを踏込操作する時の操作力を軽減する。ブレーキブースタにはガソリンエンジン2の吸気管から延びる負圧通路が接続されている。負圧通路は、ガソリンエンジン2の吸気管のうちスロットルバルブよりも下流側の部位から延びている。
【0032】
吸気通路内の負圧によってブレーキブースタ内から負圧通路を介して空気が吸引され、その空気の吸引によってブレーキブースタ内に負圧が生じる。ブレーキブースタ内に生じる負圧によってブレーキブースタが駆動される。
【0033】
図示を省略しているが、荷台11の側面部や後面部等には、荷物を搬入出するための開口部と、この開口部を開閉する開閉扉とが設けられている。荷室111には荷室空調ユニット12が配置されている。
【0034】
図1中の矢印A1、A2に示すように、荷室空調ユニット12は、荷室111の空気を吸い込んで冷却して荷室111に吹き出す。荷室空調ユニット12から吹き出された空気によって、荷室111内が温度調整される。
【0035】
荷室空調ユニット12のユニットケース121には、第1室内送風機122および第1蒸発器123等が収容されている。第1室内送風機122は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0036】
第1室内送風機122が作動することにより、荷室111の空気がユニットケース121内に吸い込まれて第1蒸発器123を通過して冷却され、第1蒸発器123を通過した冷風は、ユニットケース121から荷室111に吹き出される。これにより、荷室111内の空気が冷却されて荷室111内の荷物が冷蔵・冷凍される。
【0037】
運転室10には、運転室空調ユニット13が配置されている。運転室空調ユニット13は、運転室10内の空気または外気を吸い込んで冷却または加熱して運転室10に吹き出す。運転室空調ユニット13から吹き出された空気によって、運転室10が温度調整される。
【0038】
運転室空調ユニット13のユニットケース131には、第2室外送風機132および第2蒸発器133等が収容されている。第2室外送風機132は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0039】
第2室外送風機132が作動することにより、運転室10内の空気または外気がユニットケース131内に吸い込まれて第2蒸発器133を通過して冷却される。
【0040】
ユニットケース131には、図示しないヒータコアや図示しないエアミックスドア等も収容されている。ヒータコアは、第2蒸発器133を通過した空気をエンジン冷却水と熱交換させて加熱する。エアミックスドアは、ヒータコアを流れる空気と、ヒータコアをバイパスして流れる空気との風量割合を調整することによって、車室内へ吹き出される空気の温度を調整する。
【0041】
第2蒸発器133およびヒータコアを通過した空気は、
図1中の矢印A3に示すように、ユニットケース131から運転室10に吹き出される。
【0042】
図2は、
図1の輸送用車両1に搭載される荷室空調冷凍サイクル装置20の全体構成図である。荷室空調冷凍サイクル装置20は、第1圧縮機21、第1凝縮器22、第1膨張弁23、第1蒸発器123、第1バイパス弁25および第1均圧弁26を備えている。
【0043】
第1圧縮機21は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。例えば、第1圧縮機21は車両のエンジンルームに配置されている。
【0044】
例えば、第1圧縮機21は、第1マグネットクラッチ(図示せず)を介してガソリンエンジン2によって回転駆動されるエンジン駆動式圧縮機である。第1マグネットクラッチは、ガソリンエンジン2から第1圧縮機21へ伝達される駆動力を断続する駆動力断続部である。
【0045】
荷室空調冷凍サイクル装置20では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R404a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、第1圧縮機21を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともに冷凍サイクル装置の冷媒回路を循環する。
【0046】
第1圧縮機21の吐出側には第1凝縮器22が接続されている。第1凝縮器22は第1圧縮機21から吐出された高圧冷媒(ガス冷媒)と、第1室外送風機(図示せず)によって送風される外気(車室外空気)とを熱交換させて高圧冷媒を冷却・凝縮させる。第1凝縮器22は、冷媒を放熱させる放熱器である。第1室外送風機は、例えば、電動モータによって駆動される電動送風機である。第1室外送風機は、油圧によって駆動される送風機であってもよい。
【0047】
第1凝縮器22の出口側には第1膨張弁23が接続されている。第1膨張弁23は、第1凝縮器22で凝縮された高圧冷媒(液冷媒)を減圧する第1減圧部である。
【0048】
例えば、第1膨張弁23は、温度式膨張弁であり、第1蒸発器123出口側冷媒の温度および圧力に基づいて第1蒸発器123出口側冷媒の過熱度を検出する感温部を有し、第1蒸発器123出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように機械的機構によって絞り通路面積を調節する。第1膨張弁23は、電気的機構によって絞り通路面積を調節する電気式膨張弁であってもよい。
【0049】
第1膨張弁23の出口側には第1蒸発器123が接続されている。第1蒸発器123には第1膨張弁23で減圧された低圧冷媒(液冷媒)が流入し、この低圧冷媒が第1室内送風機122による送風空気から吸熱して蒸発することによって送風空気を冷却する。第1蒸発器123で蒸発した低圧冷媒(ガス冷媒)は、第1圧縮機21に吸入される。
【0050】
第1圧縮機21の吐出側および第1蒸発器123の入口側には第1バイパス流路27が接続されている。第1バイパス流路27は、第1圧縮機21から吐出された高温冷媒(ホットガス)が第1凝縮器22および第1膨張弁23をバイパスして流れるバイパス部である。第1バイパス流路27には第1バイパス弁25が配置されている。第1バイパス弁25は、第1バイパス流路27を開閉するバイパス開閉部である。
【0051】
第1圧縮機21の吸入側と第1圧縮機21の吐出側との間には、第1均圧流路28が接続されている。第1均圧流路28は、第1圧縮機21の吸入側と第1圧縮機21の吐出側とを連通させて均圧化する均圧部である。第1均圧流路28には第1均圧弁26が配置されている。第1均圧弁26は、第1均圧流路28を開閉する均圧流路開閉部である。
【0052】
第1バイパス弁25および第1均圧弁26は、制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁である。
【0053】
図1の輸送用車両1に搭載される運転室空調冷凍サイクル装置30の構成は荷室空調冷凍サイクル装置20の構成と同様である。そこで、
図2の括弧内に、運転室空調冷凍サイクル装置30に対応する符号を示し、運転室空調冷凍サイクル装置30の図示を省略する。
【0054】
運転室空調冷凍サイクル装置30は、第2圧縮機31、第2凝縮器32、第2膨張弁33、第2蒸発器133、第2バイパス弁35および第2均圧弁36を備えている。
【0055】
第2圧縮機31は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。例えば、第2圧縮機31は、車両のエンジンルームに配置されている。
【0056】
例えば、第2圧縮機31は、第2マグネットクラッチ(図示せず)を介して車両エンジン(図示せず)によって回転駆動されるエンジン駆動式圧縮機である。第2マグネットクラッチは、ガソリンエンジン2から第2圧縮機31へ伝達される駆動力を断続する駆動力断続部である。
【0057】
運転室空調冷凍サイクル装置30では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R404a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、第2圧縮機31を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともに冷凍サイクル装置の冷媒回路を循環する。
【0058】
第2圧縮機31の吐出側には第2凝縮器32が接続されている。第2凝縮器32は第2圧縮機31から吐出された高圧冷媒(ガス冷媒)と、第2室外送風機(図示せず)によって送風される外気(車室外空気)とを熱交換させて高圧冷媒を冷却・凝縮させる。第2凝縮器32は冷媒を放熱させる放熱器である。第2室外送風機は、電動モータによって駆動される電動送風機である。
【0059】
第2凝縮器32の出口側には第2膨張弁33が接続されている。第2膨張弁33は、第2凝縮器32で凝縮された高圧冷媒(液冷媒)を減圧する第2減圧部である。
【0060】
例えば、第2膨張弁33は、温度式膨張弁であり、第2蒸発器133出口側冷媒の温度および圧力に基づいて第2蒸発器133出口側冷媒の過熱度を検出する感温部を有し、第2蒸発器133出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように機械的機構によって絞り通路面積を調節する。第2膨張弁33は、電気的機構によって絞り通路面積を調節する電気式膨張弁であってもよい。
【0061】
第2膨張弁33の出口側には第2蒸発器133が接続されている。第2蒸発器133には第2膨張弁33で減圧された低圧冷媒(液冷媒)が流入し、この低圧冷媒が第2室外送風機132による送風空気から吸熱して蒸発することによって送風空気を冷却する。第2蒸発器133で蒸発した低圧冷媒(ガス冷媒)は、第2圧縮機31に吸入される。
【0062】
第2圧縮機31の吐出側と第2蒸発器133の入口側との間には、第2バイパス流路37が接続されている。第2バイパス流路37は、第2圧縮機31から吐出された高温冷媒(ホットガス)が第2凝縮器32および第2膨張弁33をバイパスして流れるバイパス部である。第2バイパス流路37には第2バイパス弁35が配置されている。第2バイパス弁35は、第2バイパス流路37を開閉するバイパス開閉部である。
【0063】
第2圧縮機31の吸入側および第2圧縮機31の吐出側には第2均圧流路38が接続されている。第2均圧流路38は、第2圧縮機31の吸入側と第2圧縮機31の吐出側とを連通させて均圧化する均圧部である。第2均圧流路38には第2均圧弁36が配置されている。第2均圧弁36は、第2均圧流路38を開閉する均圧流路開閉部である。
【0064】
第2バイパス弁35および第2均圧弁36は、制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁である。
【0065】
制御装置40は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0066】
制御装置40は、出力側に接続された第1室内送風機122、第1室外送風機、第1圧縮機21、第1バイパス弁25、第1均圧弁26、第2室外送風機132、第2室外送風機、第2圧縮機31、第2バイパス弁35および第2均圧弁36等の作動を制御する制御部である。制御装置40は、第1圧縮機21および第2圧縮機31等の車載機器を制御する車載機器制御装置を構成している。
【0067】
図3に示すように、制御装置40の入力側には、種々の制御用センサ群および種々の制御用スイッチ群が接続されている。種々の制御用センサ群は、荷室内温度センサ41、車室内温度センサ42、外気温度センサ43、日射量センサ44、第1蒸発器温度センサ45、第2蒸発器温度センサ46、車速センサ47等を含んでいる。種々の制御用スイッチ群は、ブレーキスイッチ48等を含んでいる。
【0068】
荷室内温度センサ41は荷室111内の温度を検出する。車室内温度センサ42は車室内の温度を検出する。外気温度センサ43は外気温を検出する。日射量センサ44は車室内の日射量を検出する。
【0069】
第1蒸発器温度センサ45は、第1蒸発器123における冷媒蒸発温度(第1蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出部である。第1蒸発器温度センサ45は、第1蒸発器123の熱交換フィン温度や第1蒸発器123の出口側冷媒の温度を検出している。
【0070】
第2蒸発器温度センサ46は、第2蒸発器133における冷媒蒸発温度(第2蒸発器温度)を検出する蒸発器温度検出部である。第2蒸発器温度センサ46は、第2蒸発器133の熱交換フィン温度や第2蒸発器133の出口側冷媒の温度を検出している。
【0071】
車速センサ47は、車速(すなわち車両の速度)を検出する車速検出部である。ブレーキスイッチ48は、運転手によるブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキ踏込検出部である。
【0072】
制御装置40には、操作パネル50から種々の操作信号が入力される。操作パネル50は、車室内の計器盤付近に配置されている。操作パネル50には、荷室空調冷凍サイクル装置20の運転・停止(具体的には、第1圧縮機21の稼動・停止)を切り替える荷室空調運転スイッチや、運転室空調冷凍サイクル装置30の運転・停止(具体的には、第2圧縮機31の稼動・停止)を切り替える運転室空調運転スイッチ、荷室111内の目標温度を設定する荷室目標温度設定スイッチ、運転室10内の目標温度を設定する運転室目標温度設定スイッチ等が設けられている。
【0073】
次に、上記構成における作動を説明する。操作パネル50の荷室空調運転スイッチがオンされると荷室空調冷凍サイクル装置20を運転させるために第1圧縮機21が稼働する。荷室空調冷凍サイクル装置20の通常運転時には、第1バイパス弁25および第1均圧弁26は閉弁されている。
【0074】
第1圧縮機21が稼働すると、第1圧縮機21から吐出されたガス冷媒が第1凝縮器22に流入して凝縮液化された後、第1膨張弁23で減圧されて第1蒸発器123に供給されるので、第1蒸発器123で荷室111への送風空気を冷却できる。
【0075】
第1圧縮機21の冷媒吐出量(換言すれば、冷媒吐出能力)は、荷室内温度センサ41が検出した荷室111内の温度、および第1蒸発器温度センサ45が検出した第1蒸発器123の温度等に基づいて制御される。
【0076】
第1蒸発器123に着霜が生じたと判定された場合、除霜運転を行う。例えば、第1蒸発器温度センサ45で検出した第1蒸発器123の温度が着霜判定温度以下となっている時間が着霜判定時間以上となった場合、第1蒸発器123に着霜が生じたと判定される。
【0077】
除霜運転では第1バイパス弁25が開弁される。これにより、第1圧縮機21から吐出された高温のガス冷媒が第1バイパス流路27を通じて第1蒸発器123に導入されるので、第1蒸発器123が除霜される。
【0078】
操作パネル50の運転室空調運転スイッチがオンされると運転室空調冷凍サイクル装置30を運転させるために第2圧縮機31が稼働する。運転室空調冷凍サイクル装置30の通常運転時には、第2バイパス弁35および第2均圧弁36は閉弁されている。第2圧縮機31から吐出されたガス冷媒が第2凝縮器32に流入して凝縮液化された後、第2膨張弁33で減圧されて第2蒸発器133に供給されるので、第2蒸発器133で運転室10への送風空気を冷却できる。
【0079】
第2圧縮機31の冷媒吐出量(換言すれば、冷媒吐出能力)は、車室内温度センサ42が検出した車室内の温度、外気温度センサ43が検出した外気温、日射量センサ44が検出した車室内の日射量、および第2蒸発器温度センサ46が検出した第2蒸発器133の温度等に基づいて制御される。
【0080】
第2蒸発器133に着霜が生じたと判定された場合、除霜運転を行う。例えば、第2蒸発器温度センサ46で検出した第2蒸発器133の温度が着霜判定温度以下となっている時間が着霜判定時間以上となった場合、第2蒸発器133に着霜が生じたと判定される。
【0081】
除霜運転では第2バイパス弁35が開弁される。これにより、第2圧縮機31から吐出された高温のガス冷媒が第2バイパス流路37を通じて第2蒸発器133に導入されるので、第2蒸発器133が除霜される。
【0082】
次に、
図4のフローチャートに示すエンジン負荷制御、および
図5のフローチャートに示す均圧制御およびについて説明する。エンジン負荷制御は、ブレーキペダルが踏まれている際に第1圧縮機21を停止させることによってガソリンエンジン2の負荷を小さくして吸気圧を正常な負圧に戻すための制御である。均圧制御は、エンジン負荷制御で第1圧縮機21を停止させている際に第1均圧弁26および第1バイパス弁25を開弁させることによって荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを均圧化するための制御である。
【0083】
制御装置40は、車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンされると
図4および
図5に示すフローチャートにしたがって、ROMに記憶されるコンピュータプログラムを実行する。
【0084】
図4のフローチャートにおいて、ステップS100では、ブレーキペダルが踏まれているか否かが判定される。本例では、ブレーキスイッチ48の検出信号に基づいて、ブレーキペダルが踏まれているか否かが判定される。
【0085】
ステップS100にてブレーキペダルが踏まれていると判定された場合、ステップS110へ進み、運転室空調冷凍サイクル装置30の第2圧縮機31が停止しているか否かが判定される。
【0086】
ステップS110にて運転室空調冷凍サイクル装置30の第2圧縮機31が停止していないと判定された場合、ステップS120へ進み、圧縮機停止制御(換言すれば、車載機器停止制御)を行う。圧縮機停止制御では、車載機器である第1圧縮機21を停止させる。これによりガソリンエンジン2の負荷が小さくなるので、吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。したがって、運転手がブレーキペダルを踏込操作する時の操作力がブレーキブースタによって軽減される。
【0087】
続くステップS130では、第1圧縮機21を停止させてからの経過時間が所定停止時間T1以上になっており且つ車速が0であるか否かが判定される。所定停止時間T1は、
図5のフローチャートに示す均圧制御によって荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを均圧させるために要する時間として予め設定されている。所定停止時間T1は、例えば2~3秒程度である。本例では、車速センサ47の検出信号に基づいて、車速が0であるか否かが判定される。
【0088】
ステップS130にて第1圧縮機21を停止させてからの経過時間が所定停止時間T1以上になっていない、または車速が0でないと判定された場合、ステップS130を繰り返す。ステップS130にて第1圧縮機21を停止させてからの経過時間が所定停止時間T1以上になっており且つ車速が0であると判定された場合、ステップS140へ進み、第1圧縮機21を稼働させて圧縮機停止制御を終了する。
【0089】
ステップS100にてブレーキペダルが踏まれていないと判定された場合は圧縮機停止制御を行わない。ブレーキペダルが踏まれていない場合はブレーキブースタでガソリンエンジン2の吸気の負圧を利用しないので、第1圧縮機21を停止させてガソリンエンジン2の負荷を小さくする必要がないからである。
【0090】
ステップS110にて運転室空調冷凍サイクル装置30の第2圧縮機31が停止していると判定された場合も圧縮機停止制御を行わない。第2圧縮機31が停止しているときは第1圧縮機21および第2圧縮機31の両方が稼動しているときと比較してガソリンエンジン2の負荷が小さいので、ガソリンエンジン2の負荷を小さくするために第1圧縮機21を停止させる必要性が低いからである。
【0091】
図5のフローチャートにおいて、ステップS200では、ブレーキペダルが踏まれているか否かが判定される。本例では、ブレーキスイッチ48の検出信号に基づいて、ブレーキペダルが踏まれているか否かが判定される。
【0092】
ステップS200にてブレーキペダルが踏まれていると判定された場合、ステップS210へ進み、運転室空調冷凍サイクル装置30の第2圧縮機31が停止しているか否かが判定される。
【0093】
ステップS210にて運転室空調冷凍サイクル装置30の第2圧縮機31が停止していないと判定された場合、ステップ220へ進み、開弁制御を行う。開弁制御では、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を開弁させる。これにより、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化されるので、圧縮機制御の終了時、すなわち第1圧縮機21を再稼働させるときにマグネットクラッチで大きな作動音がしたりマグネットクラッチが滑って摩耗したりすることを抑制できる。
【0094】
続くステップS230では、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を開弁させてからの経過時間が所定開弁時間T2以上になっているか否かが判定される。所定開弁時間T2は所定停止時間T1よりも長い時間である。所定開弁時間T2は、例えば5秒程度である。
【0095】
ステップS230にて第1均圧弁26および第1バイパス弁25を開弁させてからの経過時間が所定開弁時間T2以上になっていないと判定された場合、ステップS230を繰り返す。ステップS230にて第1均圧弁26および第1バイパス弁25を開弁させてからの経過時間が所定開弁時間T2以上になっていると判定された場合、ステップS240へ進み、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を閉弁させて開弁制御を終了する。
【0096】
ステップS200にてブレーキペダルが踏まれていないと判定された場合は開弁制御を行わない。ブレーキペダルが踏まれていないときは圧縮機停止制御を行わない、すなわち第1圧縮機21を再稼働させることがないので、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを均圧化させる必要性が低いからである。
【0097】
ステップS210にて第2圧縮機31が停止していると判定された場合も開弁制御を行わない。第2圧縮機31が停止しているときも圧縮機停止制御を行わないからである。
【0098】
次に、エンジン負荷制御および均圧制御の具体例を
図6~
図7のタイムチャートに基づいて説明する。
図6のタイムチャートは、ブレーキペダルが踏まれて第1圧縮機21が停止してから所定停止時間T1が経過する前に車速が0(すなわち車両が停止)になった場合の制御例を示している。
図7のタイムチャートは、ブレーキペダルが踏まれて第1圧縮機21が停止してから所定停止時間T1が経過した後に車速が0(すなわち車両が停止)になった場合の制御例を示している。
【0099】
まず
図6の制御例について説明する。運転手がブレーキペダルを踏み込んでおり且つ第2圧縮機31が稼動していると判定された場合、制御装置40は圧縮機停止制御と開弁制御とを行う。
【0100】
圧縮機停止制御では、まず第1圧縮機21を停止させる。これによりガソリンエンジン2の負荷が小さくなるので、吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。したがって、運転手がブレーキペダルを踏込操作する時の操作力がブレーキブースタによって軽減される。開弁制御では、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を所定開弁時間T2の間、開弁させる。これにより、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化される。
【0101】
図6の制御例では、第1圧縮機21を停止させてから所定停止時間T1が経過する前に車速が0になったので、所定停止時間T1が経過したときに第1圧縮機21を再稼働させて圧縮機停止制御を終了する。荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化された状態で第1圧縮機21が再稼動されるので、第1圧縮機21を稼働させるときにマグネットクラッチで大きな作動音がしたりマグネットクラッチが滑って摩耗したりすることを抑制できる。
【0102】
第1均圧弁26および第1バイパス弁25の開弁時間が所定開弁時間T2になったら、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を閉弁させて開弁制御を終了する。
【0103】
次に
図7の制御例について説明する。
図7の制御例においても
図6の制御例と同様に、運転手がブレーキペダルを踏み込んでおり且つ第2圧縮機31が稼動していると判定された場合、制御装置40は圧縮機停止制御と開弁制御とを行う。
【0104】
圧縮機停止制御では、まず第1圧縮機21を停止させる。これによりガソリンエンジン2の負荷が小さくなるので、吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。したがって、運転手がブレーキペダルを踏込操作する時の操作力がブレーキブースタによって軽減される。開弁制御では、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を所定開弁時間T2の間、開弁させる。これにより、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化される。
【0105】
図7の制御例では、第1圧縮機21を停止させてから所定停止時間T1が経過した後に車速が0になったので、車速が0になったときに第1圧縮機21を再稼働させて圧縮機停止制御を終了する。荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが均圧化された状態で第1圧縮機21が再稼動されるので、第1圧縮機21を稼働させるときにマグネットクラッチで大きな作動音がしたりマグネットクラッチが滑って摩耗したりすることを抑制できる。
【0106】
第1均圧弁26および第1バイパス弁25の開弁時間が所定開弁時間T2になったら、第1均圧弁26および第1バイパス弁25を閉弁させて開弁制御を終了する。
【0107】
本実施形態では、制御装置40は、ブレーキペダルが踏まれている場合、圧縮機停止制御(換言すれば、車載機器停止制御)を行う。圧縮機停止制御は、第1圧縮機21を停止させる制御である。そして、制御装置40は、圧縮機停止制御が行われている場合、車速が0になったら第1圧縮機21を再稼働させて圧縮機停止制御を終了する。
【0108】
これによると、ブレーキペダルが踏まれている場合に第1圧縮機21を停止させるので、ブレーキペダルが踏まれていないときに第1圧縮機21を停止させることを回避できる。しかも、車速が0になったら第1圧縮機21を再稼働させるので、ブレーキ負圧が必要ないときまで第1圧縮機21を停止させることを回避できる。したがって、ブレーキ負圧を確保するための第1圧縮機21の停止頻度を低減することができる。
【0109】
また、車速が0になったら第1圧縮機21を再稼働させるので、第1圧縮機21を再稼働させるか否かを、既存の車速センサ47の検出信号を用いて判定することができる。したがって、第1圧縮機21を再稼働させるか否かの判定を行うために新規なセンサを追加する必要がないので、部品点数の削減および構成の簡素化を図ることができる。
【0110】
具体的には、制御装置40は、ブレーキペダルが踏まれている場合、マグネットクラッチに対して駆動力が遮断されるように制御することによって圧縮機停止制御を行う。
【0111】
これによると、圧縮機停止制御において、第1圧縮機21を停止させることによってブレーキ負圧を確実に確保することができる。
【0112】
本実施形態では、制御装置40は、ブレーキペダルが踏まれている場合、開弁制御を行う。開弁制御は、第1圧縮機21から吐出された冷媒が第1凝縮器22および第1膨張弁23をバイパスして第1蒸発器123に導かれるように第1バイパス弁25を開弁させる制御である。
【0113】
これによると、圧縮機停止制御が行われて第1圧縮機21が停止している間に荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを均圧化できる。そのため、第1圧縮機21内の圧力が極力低い状態で第1圧縮機21を再稼働できるので、マグネットクラッチでガソリンエンジン2と第1圧縮機21とを連結させる際に大きな作動音がしたり、マグネットクラッチが滑って摩耗してしまうことを抑制できる。
【0114】
本実施形態では、制御装置40は、開弁制御において、第1バイパス弁25を開弁させるとともに、第1圧縮機21の吸入側と吐出側とが連通するように第1均圧弁26を開弁させる。
【0115】
これにより、開弁制御において、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを第1均圧流路28をも通じて均圧化できるので、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とを確実かつ短時間に均圧化できる。したがって、ステップS120における所定停止時間T1を極力短くすることができる。
【0116】
本実施形態では、制御装置40は、圧縮機停止制御が行われている場合、第1圧縮機21の停止時間が所定停止時間T1以上になり且つ車速が0になったら第1圧縮機21を再稼働させて圧縮機停止制御を終了する。
【0117】
これによると、圧縮機停止制御において、第1圧縮機21が所定停止時間T1未満で再稼働することを回避できるので、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが確実に均圧化した状態で第1圧縮機21を再稼働することができる。
【0118】
本実施形態では、制御装置40は、開弁制御において、第1均圧弁26の開弁時間が、所定停止時間T1よりも長い所定開弁時間T2以上になったら開弁制御を終了する。
【0119】
これにより、第1圧縮機21を再稼働させる前に開弁制御が終了することを回避できるので、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧とが一層確実に均圧化した状態で第1圧縮機21を再稼働することができる。
【0120】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のごとく種々変形可能である。
【0121】
(1)上述の実施形態では、
図4のフローチャートに示す圧縮機停止制御を、所定停止時間T1が経過し且つ車速が0になったら終了するが、ガソリンエンジン2の吸気の負圧が所定値以上になったら圧縮機停止制御を終了するようにしてもよい。
【0122】
上述の実施形態では、
図4のタイムチャートに示す開弁制御を所定開弁時間T2で終了するが、荷室空調冷凍サイクル装置20の高圧と低圧との差圧が所定圧力以下になったら開弁制御を終了するようにしてもよい。
【0123】
(2)上述の実施形態では、
図4のフローチャートに示すエンジン負荷制御のステップS110、および
図5のフローチャートに示す均圧制御のステップS210において、運転室空調冷凍サイクル装置30の第2圧縮機31が停止しているか否かが判定されるが、ステップS110およびステップS210を省略してもよい。すなわち、ブレーキペダルが踏まれている場合、第2圧縮機31が停止していてもステップS120の圧縮機停止制御およびステップ220の開弁制御を行ってもよい。
【0124】
これによると、ブレーキペダルが踏まれている場合に第1圧縮機21を停止させてガソリンエンジン2の負荷を確実に小さくできるので、運転手がブレーキペダルを踏込操作する時の操作力をブレーキブースタによって確実に軽減できる。
【0125】
(3)上述の実施形態では、
図4~5のフローチャートに示すエンジン負荷制御および均圧制御を荷室空調冷凍サイクル装置20に対して実行する。すなわち、エンジン負荷制御では第1圧縮機21を制御し、均圧制御では第1均圧弁26および第1バイパス弁25を制御する。
【0126】
これに対して、
図4~5のフローチャートに示すエンジン負荷制御および均圧制御を運転室空調冷凍サイクル装置30に対して実行してもよい。すなわち、エンジン負荷制御では第2圧縮機31を制御し、均圧制御では第2均圧弁36および第2バイパス弁35を制御してもよい。
【0127】
図4~5のフローチャートに示すエンジン負荷制御および均圧制御を荷室空調冷凍サイクル装置20および運転室空調冷凍サイクル装置30の両方に対して実行してもよい。すなわち、エンジン負荷制御では第1圧縮機21および第2圧縮機31を制御し、均圧制御では第1均圧弁26、第1バイパス弁25、第2均圧弁36および第2バイパス弁35を制御してもよい。この構成においては、運転室空調冷凍サイクル装置30が停止している場合、エンジン負荷制御および均圧制御を荷室空調冷凍サイクル装置20に対して実行すればよい。
【0128】
(4)上述の実施形態では、荷室空調冷凍サイクル装置20において、第1バイパス弁25、第1均圧弁26、第1バイパス流路27および第1均圧流路28を設けることによって所定停止時間T1を極力短くしているが、所定停止時間T1を長く設定すれば第1均圧弁26および第1均圧流路28を必ずしも設ける必要はない。
【0129】
また、除霜運転を行わない荷室空調冷凍サイクル装置20においては、第1均圧弁26および第1均圧流路28が設けられていれば、第1バイパス弁25および第1バイパス流路27を必ずしも設ける必要はない。
【0130】
(5)上述の実施形態のエンジン負荷制御では第1圧縮機21または第2圧縮機31を制御するが、エンジン負荷制御ではオルタネータ4、サブオルタネータ、油圧ポンプ(図示せず)、ウォーターポンプ(図示せず)等の車載機器を制御してもよい。
【0131】
オルタネータ4は、ガソリンエンジン2によって駆動される発電機である。オルタネータ4で発電された電力は車載バッテリの充電に用いられる。サブオルタネータは、ガソリンエンジン2によって駆動される発電機である。サブオルタネータで発電された電力は車載サブバッテリの充電に用いられる。油圧ポンプは、ガソリンエンジン2によって駆動されて油圧を発生させるポンプである。ウォーターポンプは、ガソリンエンジン2によって駆動されて冷却水を循環させるポンプである。
【0132】
すなわち、エンジン負荷制御は、ガソリンエンジン2に負荷をかける車載機器を制御ですればよい。これにより、ブレーキペダルが踏まれている場合に車載機器が停止されることによってガソリンエンジン2の負荷が小さくなるので、吸気圧の負圧が大きくなって正常な負圧に戻る。
【0133】
エンジン負荷制御において制御される車載機器は、停止させても車両の走行に直ちに影響が出ない機器であるのが望ましい。これにより、車両の走行の安全を損なうことなく車載機器の停止頻度を低減させることができる。
【0134】
エンジン負荷制御において、マグネットクラッチを介さずにガソリンエンジン2によって駆動される車載機器を制御する場合、ステップS120において所定停止時間T1を用いなくてもよい。すなわち、ステップS120において車速が0になったら車載機器を再稼働するようにしてもよい。再稼働する際にマグネットクラッチの作動音や摩耗の問題が生じないので、冷凍サイクルの高圧と低圧とを均圧させるための所定停止時間T1が必要とされないからである。
【0135】
(6)上述の実施形態では、冷凍サイクル装置の冷媒として、オゾン層破壊能力が低いHFC系冷媒(具体的には、R404a)を採用しているが、これに限定されるものではなく、他の種々の冷媒(例えば、地球温暖化係数が小さい、いわゆる新冷媒)を採用してもよい。
【0136】
(7)上述の実施形態では、冷凍サイクル装置として荷室空調冷凍サイクル装置20および運転室空調冷凍サイクル装置30を備えているが、これに限定されるものではなく、種々の用途の冷凍サイクル装置を備えていてもよい。
【0137】
また、上述の実施形態では、冷凍サイクル装置を輸送用車両1に適用した例について説明したが、これに限定されることなく、冷凍サイクル装置を種々の車両に適用可能である。
【0138】
本明細書に開示された車載機器制御装置および車両用冷凍サイクル装置の特徴を以下のとおり示す。
(項目1)
ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれている場合、前記ガソリンエンジン(2)に負荷をかける車載機器(4、21)を停止させる車載機器停止制御を行う制御部(40)を備え、
前記制御部(40)は、車載機器停止制御が行われている場合、車速が0になったら前記車載機器(4、21)を再稼働させて車載機器停止制御を終了する車載機器制御装置。
(項目2)
前記車載機器は、前記ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷凍サイクル装置の冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)であり、
前記制御部(40)は、前記ブレーキペダルが踏まれている場合、前記ガソリンエンジン(2)から前記圧縮機(21)へ伝達される駆動力を断続するマグネットクラッチに対して前記駆動力が遮断されるように制御することによって車載機器停止制御を行う項目1に記載の車載機器制御装置。
(項目3)
ガソリンエンジン(2)によって駆動され、冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(21)と、
前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒を放熱させる放熱器(22)と、
前記放熱器(22)で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(23)と、
前記減圧部(23)で減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器(123)と、
前記ガソリンエンジン(2)から前記圧縮機(21)へ伝達される駆動力を断続するマグネットクラッチを制御する制御部(40)とを備え、
前記制御部(40)は、
前記ガソリンエンジン(2)の吸気の負圧を利用するブレーキブースタによって操作力が軽減されるブレーキペダルが踏まれている場合、前記駆動力が遮断されて前記圧縮機(21)が停止するように前記マグネットクラッチを制御する圧縮機停止制御を行い、
車速が0になったら前記駆動力が前記圧縮機(21)に伝達されるように前記マグネットクラッチを制御して前記圧縮機停止制御を終了する車両用冷凍サイクル装置。
(項目4)
前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒を、前記放熱器(22)および前記減圧部(23)をバイパスさせて前記蒸発器に導くバイパス部(27)と、
前記バイパス部(27)を開閉するバイパス弁(25)とを備え、
前記制御部(40)は、前記ブレーキペダルが踏まれている場合、前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒が前記放熱器(22)および前記減圧部(23)をバイパスして前記蒸発器(123)に導かれるように前記バイパス弁(25)を開弁させる開弁制御を行う項目3に記載の車両用冷凍サイクル装置。
(項目5)
前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とを連通させて均圧化させる均圧部(28)と、
前記均圧部(28)を開閉する均圧弁(26)とを備え、
前記制御部(40)は、前記開弁制御では、前記バイパス弁(25)を開弁させるとともに、前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とが連通するように前記均圧弁(26)を開弁させる項目4に記載の車両用冷凍サイクル装置。
(項目6)
前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とを連通させて均圧化させる均圧部(28)と、
前記均圧部(28)を開閉する均圧弁(26)とを備え、
前記制御部(40)は、前記ブレーキペダルが踏まれている場合、前記圧縮機(21)の吸入側と吐出側とが連通するように前記均圧弁(26)を開弁させる開弁制御を行う項目3に記載の車両用冷凍サイクル装置。
(項目7)
前記制御部(40)は、前記圧縮機停止制御および前記開弁制御が行われている場合、前記圧縮機(21)の停止時間が所定停止時間(T1)以上になり且つ前記車速が0になったら前記駆動力が前記圧縮機(21)に伝達されるように前記マグネットクラッチを制御して前記圧縮機停止制御を終了する項目4ないし6のいずれか1つに記載の車両用冷凍サイクル装置。
(項目8)
前記制御部(40)は、前記開弁制御において、開弁時間が、前記所定停止時間(T1)よりも長い所定開弁時間(T2)以上になったら前記開弁制御を終了する項目7に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【符号の説明】
【0139】
2 ガソリンエンジン
4 オルタネータ(車載機器)
21 第1圧縮機(車載機器、圧縮機)
22 第1凝縮器(放熱器)
23 第1膨張弁(減圧部)
25 第1バイパス弁(バイパス弁)
26 第1均圧弁(均圧弁)
27 第1バイパス流路(バイパス部)
28 第1均圧流路(均圧部)
40 制御装置(制御部)
123 第1蒸発器(蒸発器)