(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】細長いSiC燃料要素
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20241106BHJP
G21C 3/07 20060101ALI20241106BHJP
G21C 3/58 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G21C3/06 200
G21C3/07
G21C3/58
(21)【出願番号】P 2022500142
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2020040654
(87)【国際公開番号】W WO2021003364
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-30
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521219442
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WESTINGHOUSE ELECTRIC COMPANY LLC
【住所又は居所原語表記】1000 Westinghouse Drive, Suite 141, Cranberry Township, Pennsylvania 16066 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン ロング
(72)【発明者】
【氏名】ペン シェイ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ラホダ
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513099(JP,A)
【文献】国際公開第2018/031596(WO,A2)
【文献】特開2016-200465(JP,A)
【文献】特表2018-529095(JP,A)
【文献】米国特許第03244599(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00- 3/64
G21C 21/00- 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で使用するための細長い燃料要素であって、
炭化ケイ素クラッディングと、
核燃料と、を備えており、
前記炭化ケイ素クラッディングは、対向する2つの細長い壁と、前記細長い壁よりも短い対向する2つの端壁と、を有し、
前記細長い壁と前記端壁は、エンクロージャを画定し、
前記エンクロージャは、端壁から端壁までの長さと、細長い壁から細長い壁までの幅と、を有し、
前記クラッディングは、長手軸と、前記長手軸に直交する横軸を有し、
前記核燃料は、前記エンクロージャ内に配置されており、
前記燃料は、2つの細長い表面と、前記細長い表面よりも短い2つの端面と、を有し、
前記2つの細長い表面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記細長い壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第1の距離だけ最小限に間隔を空けており、
前記端面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記端壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第2の距離だけ間隔を空けており、
前記第2の距離は、前記第1の距離よりも大きく、
前記第1及び第2の距離は、使用により前記燃料がスウェリングするときに、スウェリングする前記燃料が、前記第1の距離を超えて前記第2の距離以下までスウェリングして、前記クラッディングの前記端壁を変形させることなく、かつ前記クラッディングを0.1%を超えて歪ませることなく、前記クラッディングの前記細長い壁を変形させるように、寸法取りされ
、
前記燃料は、断面において、より短い前記端面と凸状に湾曲した2つの細長い表面のそれぞれに頂点を画定する長円形状に構成され、
前記長円形状は、頂点から頂点まで延在する長軸と、前記長軸に直交する短軸と、を有する、燃料要素。
【請求項2】
凸状に湾曲した細長い表面のそれぞれは、前記短軸に副頂点を画定しており、前記副頂点から各頂点まで湾曲して各頂点と交わり、
前記第1の距離は、前記副頂点と前記クラッディングの前記細長い壁との間で最小である、請求項
1に記載の燃料要素。
【請求項3】
原子炉で使用するための細長い燃料要素であって、
炭化ケイ素クラッディングと、
核燃料と、を備えており、
前記炭化ケイ素クラッディングは、対向する2つの細長い壁と、前記細長い壁よりも短い対向する2つの端壁と、を有し、
前記細長い壁と前記端壁は、エンクロージャを画定し、
前記エンクロージャは、端壁から端壁までの長さと、細長い壁から細長い壁までの幅と、を有し、
前記クラッディングは、長手軸と、前記長手軸に直交する横軸を有し、
前記核燃料は、前記エンクロージャ内に配置されており、
前記燃料は、2つの細長い表面と、前記細長い表面よりも短い2つの端面と、を有し、
前記2つの細長い表面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記細長い壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第1の距離だけ最小限に間隔を空けており、
前記端面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記端壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第2の距離だけ間隔を空けており、
前記第2の距離は、前記第1の距離よりも大きく、
前記第1及び第2の距離は、使用により前記燃料がスウェリングするときに、スウェリングする前記燃料が、前記第1の距離を超えて前記第2の距離以下までスウェリングして、前記クラッディングの前記端壁を変形させることなく、かつ前記クラッディングを0.1%を超えて歪ませることなく、前記クラッディングの前記細長い壁を変形させるように、寸法取りされ
、
前記クラッディングの前記細長い壁は、使用による変形の前は、前記燃料に向かって内方に凹状に湾曲しており、使用時には外方に変形される、燃料要素。
【請求項4】
前記燃料の前記細長い表面は、使用によるスウェリングの前は、互いに向かって内方に凹状に湾曲しており、使用時には外方にスウェリングして、前記第1の距離を超えて延在して前記クラッディングの前記細長い壁を変形させる凸状に湾曲した細長い表面を形成する、請求項
3に記載の燃料要素。
【請求項5】
前記燃料の前記端面は、使用によるスウェリングの前は平坦であり、使用時には外方にスウェリングして、凸状に湾曲した端面を形成する、請求項
4に記載の燃料要素。
【請求項6】
前記燃料の前記端面は、使用によるスウェリングの前は平坦であり、使用時には前記端面が平坦なままである、請求項
4に記載の燃料要素。
【請求項7】
前記クラッディングの前記端壁は、使用によるスウェリングの前は平坦である、請求項
3に記載の燃料要素。
【請求項8】
前記端壁は、使用時に平坦なままである、請求項
7に記載の燃料要素。
【請求項9】
原子炉で使用するための細長い燃料要素であって、
炭化ケイ素クラッディングと、
核燃料と、を備えており、
前記炭化ケイ素クラッディングは、対向する2つの細長い壁と、前記細長い壁よりも短い対向する2つの端壁と、を有し、
前記細長い壁と前記端壁は、エンクロージャを画定し、
前記エンクロージャは、端壁から端壁までの長さと、細長い壁から細長い壁までの幅と、を有し、
前記クラッディングは、長手軸と、前記長手軸に直交する横軸を有し、
前記核燃料は、前記エンクロージャ内に配置されており、
前記燃料は、2つの細長い表面と、前記細長い表面よりも短い2つの端面と、を有し、
前記2つの細長い表面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記細長い壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第1の距離だけ最小限に間隔を空けており、
前記端面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記端壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第2の距離だけ間隔を空けており、
前記第2の距離は、前記第1の距離よりも大きく、
前記第1及び第2の距離は、使用により前記燃料がスウェリングするときに、スウェリングする前記燃料が、前記第1の距離を超えて前記第2の距離以下までスウェリングして、前記クラッディングの前記端壁を変形させることなく、かつ前記クラッディングを0.1%を超えて歪ませることなく、前記クラッディングの前記細長い壁を変形させるように、寸法取りされ
、
前記燃料の前記細長い表面は、使用によるスウェリングの前は、互いに向かって内方に凹状に湾曲しており、使用時には、外方にスウェリングして、凸状に湾曲した細長い表面を形成し、前記凸状に湾曲した細長い表面は、前記第1の距離を超えて延在して前記クラッディングの前記細長い壁を変形させ、
前記燃料は、端面から端面まで延在する長軸と、前記長軸に直交する短軸と、を有する、燃料要素。
【請求項10】
凹状に湾曲した表面のそれぞれは、前記短軸に副頂点を画定し、前記副頂点から各端面まで湾曲して各端面と交わる、請求項
9に記載の燃料要素。
【請求項11】
前記燃料の前記端面は、使用によるスウェリングの前は、平坦な表面を画定しており、使用時には外方にスウェリングして、凸状に湾曲した端面を形成する、請求項
10に記載の燃料要素。
【請求項12】
前記燃料の前記端面は、使用によるスウェリングの前は、平坦な表面を画定しており、使用時には前記端面が平坦なままである、請求項
10に記載の燃料要素。
【請求項13】
原子炉で使用するための細長い燃料要素であって、
炭化ケイ素クラッディングと、
核燃料と、を備えており、
前記炭化ケイ素クラッディングは、対向する2つの細長い壁と、前記細長い壁よりも短い対向する2つの端壁と、を有し、
前記細長い壁と前記端壁は、エンクロージャを画定し、
前記エンクロージャは、端壁から端壁までの長さと、細長い壁から細長い壁までの幅と、を有し、
前記クラッディングは、長手軸と、前記長手軸に直交する横軸を有し、
前記核燃料は、前記エンクロージャ内に配置されており、
前記燃料は、2つの細長い表面と、前記細長い表面よりも短い2つの端面と、を有し、
前記2つの細長い表面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記細長い壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第1の距離だけ最小限に間隔を空けており、
前記端面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、前記クラッディングの前記端壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第2の距離だけ間隔を空けており、
前記第2の距離は、前記第1の距離よりも大きく、
前記第1及び第2の距離は、使用により前記燃料がスウェリングするときに、スウェリングする前記燃料が、前記第1の距離を超えて前記第2の距離以下までスウェリングして、前記クラッディングの前記端壁を変形させることなく、かつ前記クラッディングを0.1%を超えて歪ませることなく、前記クラッディングの前記細長い壁を変形させるように、寸法取りされ
、
前記燃料は、使用によるスウェリングの前は、断面において、平坦な端面と、平坦な細長い表面と、を画定する直線的な形状に構成されており、
前記直線的な形状は、端面から端面まで延在する長軸と、前記長軸に直交する短軸と、を有する、燃料要素。
【請求項14】
前記燃料は、使用時には前記長軸と前記短軸の両方に沿って外方にスウェリングして、断面において長円形の構成を形成する、請求項
13に記載の燃料要素。
【請求項15】
前記クラッディングは、使用によるスウェリングの前は、断面において、平坦な端壁と、平坦な細長い壁と、を画定する直線的な形状に構成されており、
前記細長い壁は、使用により前記燃料がスウェリングするときに、外方に変形する、請求項
13に記載の燃料要素。
【請求項16】
前記燃料は、UO
2、U
3Si
2、UN、及びウラニウム合金から成る群から選択される、請求項1
~15のいずれか一項に記載の燃料要素。
【請求項17】
前記燃料は、UO
2である、請求項1
~15のいずれか一項に記載の燃料要素。
【請求項18】
前記クラッディングの前記端壁は、断面において、前記クラッディングの前記細長い壁よりも厚い、請求項1
~15のいずれか一項に記載の燃料要素。
【請求項19】
前記燃料のスウェリングに起因する前記クラッディングの前記歪みは、0.05%以下である、請求項1
~15のいずれか一項に記載の燃料要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、「Elongate SIC Fuel Elements」と題され2019年7月2日に出願された16/459,764の便益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府の権利の記載)
本発明は、エネルギー省によって与えられた契約番号第DE-NE0008824号の下で政府支援により成された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、原子力発電所のための燃料要素に関し、より詳細には、細長いSiCクラッディング内に収容される細長い燃料セグメントに関する。
【背景技術】
【0004】
炭化ケイ素(SiC)は、非常に有望な事故耐性燃料(ATF)クラッディングであることが示されてきたが、SiCの主要な課題のうちの1つは、SiCクラッディングにおける密封性(hermeticity)を失うリスクを冒さずには、SiCクラッディング管内に収容された燃料ペレットがクラッディングとの強い接触を有することができないことである。
【0005】
UO2燃料は、原子力産業において長期かつ上首尾の使用歴を有する。UO2は、軽水クーラントとの低い反応性、適度なスウェリング(swelling)、及び放射中の安定した構造を有するが、低い熱伝導性に見舞われ、そのことが、UO2の使用を小径の燃料棒に限定する。使用時には核分裂生成物がUO2のスウェリングを引き起こし、燃料ペレットとSiCなどの非延性クラッディングとの間に十分な大きさの初期間隙が存在しない限り、必然的なスウェリングが、ペレットとクラッディングとの間の強い機械的相互作用(PCMI)によるクラッディング破損をもたらす。PCMI問題を解決するために初期ペレット-クラッディング間隙を増大させることは、間隙内のヘリウムガスの低い熱伝導性及びウラニウム装填量の減少に起因する、さらに高い燃料中心線温度を生じさせることになる。この欠点は、亀裂及び密封性の損失を回避するために最小限の燃料-クラッディング機械的相互作用を必要とするSiCなどの高度な事故耐性クラッディングを含む燃料棒内でUO2が使用される場合に明らかになる。従って、SiCクラッディング内でのUO2の使用は、厳しい経済的不利益を伴わずには、円筒形の燃料棒幾何形状に対しては不可能である。
【0006】
一方、U3Si2、UN、及びウラニウム合金などの燃料は、それらの高い燃料熱伝導性、及びより大きなペレット-クラッディング間隙を残すことによる燃料中心線温度の低下により、PCMI問題を緩和することができるが、ウラニウム装填量の減少を犠牲にする。さらに、これらの燃料は、耐水腐食性が不十分であり、これは、燃料の事故耐性を損なうため、軽水炉でのリーク燃料事象中に悪影響をもたらす。
【0007】
2から4%の歪み能力(strain capability)を有するZrなどの金属クラッディングの場合、間隙は、PCMI問題ではないが、燃料ペレットを装填するのに十分な大きさであることだけを必要とする。しかし、漏れが発生した場合、例えば、U3Si2は酸化して、Zrクラッディング内で内部体積を増大させる。増大した体積は、クラッディングを膨らませて、クーラント経路の閉塞をもたらす。
【0008】
SiCクラッディングは、従来のZrベースの材料と比べて、事故状態中に、向上された高い温度性能を有する。しかし、SiCは、局部応力の蓄積を軽減し、かつ燃料とクラッディングとの間の機械的相互作用を最小限に抑えるために、限られた歪み能力(~0.04から0.1%)を有するので、棒型燃料設計は、SiC材料の潜在性を制限してきた。この問題を解決するための取り組みは、大きな燃料-クラッディング間隙を残すことであった。しかし、大きな間隙は、特にUO2などの低熱伝導性材料の場合に、燃料中心線温度を著しく高めて、大量の核分裂ガスの放出及び/又はスウェリングをもたらし、また、ウラニウム装填量を減少させて、厳しい経済的不利益をもたらす。
【0009】
1960年代及び1970年代に最初に開発された、米国特許第3,173,843号、第3,297,543号、第3,586,745号、第3,855,061号、第4,038,135号、及び第4,224,106号で開示されているものなどの板状燃料は、金属クラッディング(例えば、アルミニウム又はジルコニウム合金)、及び、金属燃料又は金属マトリクス(例えば、UZr若しくはUMo)中に分散した燃料を使用した。そのような板状燃料は、実用炉には適していないことが分かり、見捨てられたが、現在は、試験炉で使用されており、小型モジュール炉での使用を評価されている。Mark D.DeHart、「Fuel Element Design and Analysis for Potential LEU Conversion of the Advanced Test Reactor」、INL/JOU-17-41538 Revision 0、2018年4月、Samuel J.Millerら、「Evaluation of U10Mo Fuel Plate Irradiation Behavior Via Numerical and Experimental Benchmarking」INL/CON-12-25074、2012年11月、及び、Min-Gil Kimら、「Comparison of Thermal Hydraulic Performances of Rod Type Fuel to Plate-Type Fuel for Small Modular Reactor Application」、ICAPPの議事録、2014年4月を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下の概要は、開示される実施形態に特有の革新的特徴のうちのいくつかの理解を促進するために提供されるものであり、完全な説明であることを意図されたものではない。実施形態の様々な態様の完全な認識は、明細書全体、特許請求の範囲、及び要約をまとめて解釈することによって得られ得る。
【0011】
特に軽水炉においてより大きなウラニウム装填量及びより良好な安全マージンを提供すると同時に、SiCクラッディングと核燃料との間のペレットクラッディング機械的相互作用に起因する問題に対処するために、細長い形状のSiCクラッディングを有する細長い形状の燃料から成る新規な燃料要素が、本明細書において説明される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
様々な態様では、原子炉で使用するための燃料要素は、炭化ケイ素クラッディングと、クラッディング内に収容された核燃料と、を含む。クラッディングは、対向する2つの細長い壁と、細長い壁よりも短い対向する2つの端壁と、を有する。細長い壁と端壁は、一緒にエンクロージャを画定する。エンクロージャは、端壁から端壁までの長さと、細長い壁から細長い壁までの幅と、を有し、クラッディングは、長手軸と、長手軸に直交する横軸と、を有する。核燃料は、2つの細長い表面と、細長い表面よりも短い2つの端面と、を有する。2つの細長い表面のそれぞれは、使用によるスウェリングの前は、クラッディングの細長い壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第1の距離だけ最小限に間隔を空けており(例えば、約0.05から2.0mmの間)、また、端面のそれぞれは、クラッディングの端壁のうちの異なる1つから、対向した関係で、第2の距離だけ間隔を空けている。第2の距離は、第1の距離よりも大きい。第1及び第2の距離は、使用時に燃料がスウェリングするときに、スウェリングする燃料が、第1の距離を超えて第2の距離以下までスウェリングして、クラッディングの端壁を変形させることなく、かつクラッディングを0.1%を超えて歪ませることなく、クラッディングの細長い壁を変形させるように、寸法取りされる。
【0013】
燃料のスウェリングに起因するクラッディングの歪みは、様々な態様では、0.05%以下である。
【0014】
第2の距離は、燃料端面とクラッディング端壁との間の間隙を画定し、この間隙は、使用時に生成される核分裂ガスのための空間に加えて選択された燃料の最大スウェリングを可能にする寸法とされる。当業者は、選択された燃料が使用時に経験するスウェリングの最大量と、使用時に生成されるであろう核分裂ガスの量を、既知の手段によって計算するか又は歴史的使用によって判定して、第2の距離を決定することができる。第1の距離は、クラッディングの細長い壁のそれぞれと燃料の対向する細長い表面との間の間隙を画定する。第1の距離の間隙は、使用の前に燃料がクラッディングに挿入されることを可能にするのに十分なものであり、典型的には約0.07mmである。
【0015】
いくつかの態様では、燃料は、断面において、より短い端面のそれぞれに頂点を画定する長円形状に構成され得、2つの細長い表面は、凸状に湾曲している。長円形状は、頂点から頂点まで延在する長軸と、長軸に直交する短軸と、を有する。凸状に湾曲した表面のそれぞれは、短軸に副頂点(co-vertex)を有しており、副頂点から各頂点まで湾曲して各頂点と交わる。この実施形態における第1の距離は、副頂点とクラッディングの細長い壁との間で最小である。
【0016】
燃料要素のいくつかの態様では、クラッディングの細長い壁は、燃料に向かって内方に湾曲し得る。クラッディングの細長い壁は、使用による変形の前は、燃料に向かって内方に凹状に湾曲しており、使用時には外方に変形され得る。様々な態様におけるクラッディングの端壁は、使用の前は平坦であり、かつ、使用時に平坦のままであり得る。
【0017】
燃料の細長い表面は、使用によるスウェリングの前は、互いに向かって内方に凹状に湾曲しており、使用時には外方にスウェリングして、凸状に湾曲した細長い表面を形成することができ、凸状に湾曲した細長い表面は、第1の距離を超えて延在して、クラッディングの細長い壁を変形させる。各凹状に湾曲した細長い表面は、短軸に副頂点を画定しており、副頂点から各端面まで湾曲して各端面と交わる。燃料の端面は、使用によるスウェリングの前は、平坦であり、使用時には外方にスウェリングして、凸状に湾曲した端面を形成し得る。代替的には、燃料の端面は、使用によるスウェリングの前は平坦であり、使用時に平坦のままであり得る。
【0018】
様々な態様では、燃料は、使用によるスウェリングの前は、断面において、第1の端面と平坦な細長い表面とを画定する直線的な形状に構成され得る。直線的な形状は、端面から端面まで延在する長軸と、長軸に直交する短軸と、を画定する。燃料は、使用時には長軸と短軸の両方に沿って外方に膨張して、断面において長円形の構造を形成する。クラッディングは、使用によるスウェリングの前は、断面において、平坦な端壁と、平坦な細長い壁と、を画定する直線的な形状に構成されていてよく、これらの壁は、使用時に燃料がスウェリングするときに外方に変形する。
【0019】
様々な態様では、クラッディングの端壁は、クラッディングの細長い壁よりも断面が厚い。
【0020】
燃料は、UO2、U3Si2、UN、及びウラニウム合金から成る群から選択される核分裂性物質であり得る。
【0021】
細長い形状のSiCクラッディングを含む細長い形状の燃料は、正常運転中と過渡条件下の両方での燃料性能を損なうことなく、SiCクラッディング材料の事故耐性特徴に加えて、UO2などの燃料の証明済みの便益の利用を可能にする。細長い形状の燃料と、燃料膨張を可能にする端部間隙と、を含む、提案される細長い形状のSiCクラッディングは、燃料とクラッディングとの間の小さな間隙又は直接接触による改善された熱伝達などの便益を提供する。細長い燃料を含む細長いSiCクラッディングはまた、燃料の寿命にわたって最小限の間隙により、より低い燃料温度をもたらし、それにより、より少ない核分裂ガス放出及びスウェリングと、低い温度上昇に起因する過渡事象中のクラッディングのより少ない変形と、許容されるクラッディングの膨らみの増大されたスパンに起因する燃料とクラッディングとの間の激しい接触時の引張り応力の減少と、がもたらされる。細長いクラッディング表面は、場合により、局部応力の蓄積をさらに軽減するために、事前に湾曲され得る。本明細書において説明される、SiCで覆われる細長い燃料は、UO2の経済性又はSiCの事故耐性特徴を損なうことなく、UO2燃料の使用を可能にする。
【0022】
本開示の特徴及び利点は、添付の図を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】細長い燃料要素の一実施形態のその初期構成における上面平面断面図の概略図である。
【0024】
【
図2】凸形状の燃料セグメントと細長いクラッディングを、使用時にスウェリングした燃料セグメント(破線)と変形したクラッディング(破線)の構成と比較される初期構成(実線)で示す、細長い燃料要素の代替的な一実施形態の上面平面断面図の概略図である。
【0025】
【
図3】初期構成(破線)における事前に湾曲されたクラッディング壁及び事前に湾曲された燃料セグメントと、スウェリング後の燃料及び変形後のクラッディング(実線)と、を示す燃料要素の別の実施形態の上面平面断面図の概略図である。
【0026】
【
図4A】燃料が一体品(D)として又は積重ねセグメント(A)として製作されてクラッディング内に挿入され得る組立体における燃料セグメントの一実施形態の正面断面図の概略図である。
【
図4B】燃料が一体品(D)として又は積重ねセグメント(A)として製作されてクラッディング内に挿入され得る組立体における燃料セグメントの一実施形態の上面断面図の概略図である。
【
図4C】燃料が一体品(D)として又は積重ねセグメント(A)として製作されてクラッディング内に挿入され得る組立体における燃料セグメントの一実施形態の側断面の概略図である。
【
図4D】燃料が一体品(D)として又は積重ねセグメント(A)として製作されてクラッディング内に挿入され得る組立体における燃料セグメントの一実施形態の別の正面断面図の概略図である。
【0027】
【
図5A】炉心に挿入された
図4の燃料要素組立体の正面断面図の概略図である。
【
図5B】炉心に挿入された
図4の燃料要素組立体の上面断面図の概略図である。
【
図5C】炉心に挿入された
図4の燃料要素組立体の側断面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで使用される単数形の「a」、「an」、及び、「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数を含む概念である。従って、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法オブジェクトの1つ又は複数(即ち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an element」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0029】
ここで使用される方向表現、例えば、それらに限定されないが、上、下、左、右、下方、上方、前、後、及びそれらの変形形態は、添付の図面に示される要素の向きに関係し、特に明記しない限り、特許請求の範囲を限定しない。
【0030】
請求項を含む本願においては、別段の指示がない限り、量、値又は特性を表わす全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきであり、従って、「約」という用語がその数字で明示的に表されていなくても、数字は「約」という用語の前にあるかのように読み取ることができる。従って、反対に示されない限り、以下の説明に記載される任意の数値パラメータは、本開示による組成物及び方法において得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低限でも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、本明細書に記載される各数値パラメータは、少なくとも有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0031】
さらに、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含される全てのサブ範囲を含むことが意図される。例えば、「1~10」の範囲は、最小値1と最大値10との間の(及びそれを含む)、即ち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有する任意の全てのサブ範囲を含むことが意図される。
【0032】
図1を参照すると、使用の前に最初に構成されたときの燃料要素10が示されている。燃料要素10は、核燃料セグメント14を封入する細長い形状のSiCクラッディング12を含む。クラッディング12は、断面において、細長い燃料セグメント14を収容するための細長い矩形の形状として示されている。クラッディング12は、初期構成において、対向する2つの細長い壁18と、対向する2つのより短い端壁16と、を有する。燃料セグメント14はまた、最初は平行又は実質的に平行な2つの細長い側面20と、セグメントの細長い側面に対して相対的に短い2つの端面22と、を有する。燃料セグメント14は、クラッディングの細長い壁18と燃料セグメント14の細長い側面20との間の第1の距離に小さな間隙32が存在して、セグメントがクラッディング12内に装填されて積み重ねられるのに辛うじて足りるだけの空間を可能にするように、クラッディング12に対してサイズ決めされる。クラッディング12の各端部において、クラッディング12の端壁16とセグメント14の端面22との間の第2の距離に、より大きな間隙34が存在する。より大きな間隙34は、小さな間隙32よりも大きい。間隙34は、反応炉の設計圧力(例えば、従来の加圧水型炉(PWR)の場合、320℃において2200psia)未満の圧力において核分裂ガスが集積することを可能にするようにサイズ決めされる。
【0033】
使用時には、燃料寿命サイクルの初めに、燃料セグメント14はスウェリングする。燃料は等方性であり、そのため、燃料は、あらゆる方向に均等に膨張する。本明細書において説明される細長いクラッディングと燃料の構成によれば、細長い壁18は、燃料が横断方向に(即ち、
図1と
図2に示されたY軸に沿って)自由にスウェリングするのを防ぐ力を提供する。壁18の長い縁部に沿ったより小さな間隙32により、膨張する燃料は、まず、クラッディング12の壁18を圧迫して、細長い壁18を外方に変形させる。しかし、細長い壁18に由来するスウェリングへの抵抗により、燃料は異方性になり、クラッディングの長手軸に沿って(即ち、
図1及び2に示されたX軸に沿って)より抵抗のない方向により膨張することになると考えられる。より大きな端部間隙34と、クラッディング12の細長い壁18の長さにより、スウェリングする燃料セグメント14は、間隙34内へ膨張し、スウェリングするセグメント14により軸44に沿って細長い壁18に及ぼされる力は、より長い距離にわたって(軸44から端壁16まで)広がり、結果として、クラッディング12上の軸44から端壁16までの距離にわたる全体的な歪みが少なくなる。より大きな端部間隙34は、セグメント14の端面22とクラッディング12の端壁16との間に相当な力又は強い接触を働かせることなく、セグメント14の長手方向の膨張を可能にする。本明細書において、強い接触(hard contact)とは、セグメント14とクラッディングとの間の接触、具体的にはクラッディング壁に対抗する何らかの力を及ぼす接触を意味する。SiCは、亀裂が生じるまでに約0.04%から0.1%の歪みに耐えることができ、様々な態様では約0.05%から0.07%の歪みに耐えることができ、そのため、燃料セグメント14のスウェリングによって引き起こされる歪みをより長い長さの壁18にわたって拡散させることにより、適用可能なパーセンテージ閾値を超える全体的な歪みの増大が制限される。
【0034】
様々な態様では、クラッディング壁18の中心は、燃料の(軸44から端壁16への方向における)幅に起因する軸44に沿ったY方向への大きな変位に耐えることができるので、燃料セグメントは、
図2に示されるように凸形状を有することができる。
【0035】
図2を参照すると、燃料要素100の代替的な一実施形態が示されている。この実施形態では、クラッディング12は、
図1に示された燃料要素10のクラッディング12と同じである。燃料要素100のクラッディング12は、断面において細長い矩形の構造であり、やはりSiCから形成され、かつ、その初期構成において、実線で示された対向する2つの細長い壁18と、対向するより短い2つの端壁16と、を有する。その初期構成における燃料要素100の燃料セグメント114は、断面において、凸状に湾曲した2つの細長い表面120と、2つの端部曲線又は頂点122と、を有する、楕円形又は長円形である。長軸が、頂点から頂点122までの長円形セグメント114の長さに沿って画定され、より短くかつ長軸に対して直交する短軸が、長円の幅にわたって画定される。
【0036】
好ましい装填様式では、セグメント114の長軸は、クラッディング12の長手軸40と整列しかつ長手軸40と同軸であり、短軸は、クラッディングの横軸44と同軸に整列する。上記のように、端部間隙34がクラッディング12の歪みを増大させることなくセグメント114のスウェリングを可能にする限り、好ましい配置からのある程度の逸脱が許容され得る。
【0037】
燃料セグメント114は、クラッディングの細長い壁18と燃料セグメント114のより長い凸状に湾曲した細長い表面120の最大幅領域(短軸に沿った長円の副頂点と見なされる領域)との間に小さな間隙32が存在して、装填中にクラッディング12の内部表面28に対して接触圧力を印加することなくセグメント114がクラッディング12内に装填され、積み重ねられるのに辛うじて足りるだけの空間をペレットの最大幅領域に可能とするように、クラッディング12に対してサイズ決めされる。長円形の形状により、間隙32は、セグメント114が各副頂点から端部又は頂点122に向かって湾曲するにつれて、間隙36へと広がる。燃料セグメント114は、クラッディング12の端壁16とセグメント114の端部曲線又は頂点122との間のクラッディング12の各端部に、小さな間隙32と比較してより大きな間隙34が存在するように、クラッディング12に対してサイズ決めされる。この形状は、端部間隙34に向かう燃料114の側方膨張を促進し、燃料装填量を最大限に高める。端部間隙34には燃料が存在しないので、SiCクラッディング12は、端壁16において、熱伝達と燃料温度に影響を及ぼすことなく厚くされ、強化され得る。
【0038】
図2はまた、セグメント114がスウェリング済み構成(swollen configuration)124にスウェリングしてクラッディング12の細長い壁18を変形構成26に変形させる燃料寿命サイクルの始まりでの使用期間後のクラッディング12と燃料セグメント114の構成を破線で示す。燃料セグメント114がスウェリングするにつれて、凸状に湾曲した細長い側120は、外方に膨張し、接触領域30においてクラッディング12の細長い側壁18に接触して、セグメント114の幅に沿った最大幅点(副頂点)においてクラッディング壁を外方に押す。セグメント頂点122とクラッディング端壁16との間のより大きな間隙34は、セグメント114がその最大寸法にスウェリングするときに、頂点122が、端壁16にちょうど接触し得る(しなくてもよい)が、クラッディング12の歪みを増大させるであろう相当な又は有効な力をクラッディング12の端壁16に印加しないように、寸法取りされる。代替的には、セグメント114がその最大寸法にスウェリングするときに、頂点122は、端壁16に接触せずに、より小さな間隙34’を残す。どちらの場合でも、端壁16は、セグメント114のスウェリングによって変形されない。セグメント114の湾曲した形状は、たとえ矩形のクラッディング12内で膨張した場合でも、燃料要素100を使用した反応炉の動作中に放出される核分裂ガスに対応するための間隙36を残す。
【0039】
スウェリングする前の初期構成における燃料端面22/122とクラッディング端壁16との間の間隙34を画定する第2の距離は、使用時に生成される核分裂ガスのための空間に加えて、選択された燃料の最大のスウェリングを可能にする寸法とされる。当業者は、選択された燃料が使用時に経験するスウェリングの最大量と、使用時に生成されるであろう核分裂ガスの量を、既知の手段によって計算するか又は歴史的使用によって判定して、第2の距離を決定することができる。間隙34は、反応炉の設計圧力(例えば、従来のPWRの場合、320℃において2200psia)未満の圧力において核分裂ガスが集積することを可能にするようにサイズ決めされる。
【0040】
第1の距離は、スウェリングする前の初期構成におけるクラッディング12の細長い壁18と燃料の細長い表面20/120との間の間隙32を画定する。第1の距離の間隙32は、使用の前に燃料がクラッディング内に挿入されることを可能にするのに十分なものであり、典型的には0.07mmである。
【0041】
SiCクラッディング12は短い放射時間の後に外方に膨らむので、様々な態様において、クラッディングの細長い壁18は、放射中の変位に適応し、局部応力の蓄積を軽減するために、燃料セグメントに向かって凹形状に、内方に事前に湾曲され得る。局部応力の蓄積は、燃料セグメントの初期膨張が張力よりもむしろ圧縮力をクラッディングに加えるために起こる。初期構成としての凹状湾曲は、SiCスウェリング勾配に由来する応力の蓄積を軽減する。さらに、又は代替的に、燃料は、短軸44の方向における応力を最小限に抑えるために、凹状に成形され得る。
【0042】
図3を参照すると、燃料要素200の代替的な初期構成が、破線で示されており、スウェリング後の構成が、実線で示されている。様々な態様では、燃料要素200は、初期構成において凹状に成形された細長い表面220を有する燃料セグメント214を含み、細長い表面220は、凸状の表面220’にスウェリングする。燃料要素214は、平坦な又は湾曲した端面222を有し、この端面222は、膨張時に平坦な表面222’へと外方にスウェリングする。クラッディング212は、燃料要素10におけるような直線的な平坦な壁を有するか、又は、初期凹状構成(破線)を有する細長い壁218を含むことができ、初期凹状構成は、壁218をより平坦な細長い壁218’構成(実線)に移動させるようにスウェリングして、クラッディング212に全体的に矩形の形状を与える。壁218はまた、凸形状へと外方に膨張されてよく、その場合、最終形状は、レンズ形状とされ、直線的ではない。
図3は、クラッディングと燃料要素の両方を、初期の凹状に成形された構成で示す。しかし、燃料要素214は、
図1と
図2に示されたようなクラッディング12内に燃料要素の頂部を通して挿入され得る。
【0043】
燃料要素10、100と同様に、より小さな間隙232が、初期構成におけるクラッディングの細長い壁218と燃料セグメントの細長い表面220との間に設けられる。スウェリングすると、燃料要素の細長い凹状表面220がY方向に膨張して細長い凸状表面220’になるので、間隙232は、横軸44に沿った壁218’と表面220’との間の接触領域230において閉じる。初期構成では、クラッディング214の各端壁16と燃料セグメント214の対向する端面222との間に、より大きな間隙234が設けられる。スウェリングすると、燃料要素214がX方向において長手軸40に沿って膨張するので、各端部上のより大きな端部間隙234は、より小さいが依然として存在する間隙234’へと閉じる。クラッディング壁218の中心は、燃料セグメント214の(軸44から端壁16への方向における)幅に起因する軸44に沿ったY方向への大きな変位に耐えることができる。この形状は、端部間隙234に向かう燃料214の側方膨張を促進し、かつ、燃料装填量を最大限に高める。端部間隙234には燃料が存在しないので、SiCクラッディング212は、端壁16において、熱伝達及び燃料温度に影響を及ぼすことなく厚くされかつ強化され得る。
【0044】
SiCクラッディングは、好ましくは、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,246,740号、第5,391,428号、第5,338,576号、及び第5,182,077号と、米国特許出願公開第2006/0039524号、第2007/0189952号、及び第2015/0078505号と、での教示のように、SiCモノリス、SiC繊維、又はそれら2つの組み合わせなどの材料で作られ得る。様々な態様では、セラミック糸は、SiC繊維から形成される。SiC繊維は、好ましくは、SiとCを主に含み、かつ微量の又は比較的少量のOを含むSiC繊維であり得る。例示的な量は、
Si:重量で50%から70%(より好ましくは68%から70%)
C:重量で30%から40%(より好ましくは30%から32%)
O:重量で0.01%から14%(より好ましくは0.01%から0.5%)
を含み得る。SiC繊維クラッディングは、トウ1つ当たり500本から5000本の間の繊維と100ミクロンから600ミクロンの間の厚さとを有する繊維トウの形態のSiCを利用するであろう。
【0045】
燃料セグメント10、100、又は200で使用される燃料は、これらに限定されないが、UO2、U3Si2、UN、及びウラニウム合金と他の酸化物燃料などのエネルギー生産のための商業用原子炉で使用するための知られた核分裂性物質から選択され得る。本明細書において説明される燃料要素設計は、任意の適切な知られた燃料に適応することができるが、これまでSiCクラッディングとともに使用するのに不適当であったUO2に、特に有用である。
【0046】
図4Dに示されるように、燃料セグメントが1つの単体である実施形態における燃料セグメント14(又は、114若しくは214)が、細長いクラッディング12カラム内に挿入されるか、又は
図4Aに示されるように、複数の燃料セグメント14が、細長いクラッディング12カラム内に上下に積み重ねられる。どちらの場合にも、燃料セグメント14、114、又は214は、垂直軸(軸40、44に対して直交するZ方向に延びる軸)並びに横軸44(クラッディング12とペレット14の幅に沿っており、クラッディング12とペレット14の中央を通って延びる軸)に沿って概ね中心に置かれる。複数の燃料要素10、100、又は200が、
図5A~Cに示されるように、原子炉の炉心において燃料組立体50に挿入される。
【0047】
上記のように、炭化ケイ素は、非常に有望な事故耐性燃料クラッディングであるが、従来の棒型燃料においてSiCを実装することには、本明細書において説明される燃料要素構成が克服する課題が存在した。円筒形の棒型クラッディングの過度の歪みを防止するために、円筒棒クラッディングと円筒形燃料ペレットとの間に均一な環状間隙が存在し、この環状間隙は、典型的には6カ月を超える反応炉内でのある程度の時間後に径方向にスウェリングする燃料に適応するために、十分な大きさでなければならない。SiCクラッディングが燃料寿命サイクルの初めにスウェリングするときに、それはクラッディングをさらに膨張させて、初期の環状間隙を増大させる。寿命サイクルの初めに、燃料は収縮する。核分裂性内容物は、寿命の初めにその最高の状態にあるので、燃料ペレットは、その時点で最も多くの熱を生成し、また、初期に収縮するペレットとスウェリングするクラッディングと相まって、拡大する初期の間隙は、燃料ペレット中心線温度が寿命の早期にその融点を超える危険性を提示する。燃料サイクルが進行するにつれて、ペレットは収縮を停止して、元のウラニウム燃料よりも密度が低い核分裂生成物の蓄積により、膨張し始める。クラッディングのスウェリングは、寿命の早期に停止するので、膨張するペレットは、SiCクラッディングに接触してそれを破壊する可能性を有する。UO2などの燃料は、熱伝導性があまり良くないので、より幅広の間隙は、低出力で稼働することを反応炉に求めることにより、エネルギー生産に悪影響を及ぼす。
【0048】
本明細書において示される実施形態では、燃料-クラッディング間隙は最小化され、それにより、過渡中の中心温度の上昇が最小限に抑えられ、また、燃料中の蓄積エネルギーが減少される。さらに、本明細書において説明される燃料要素10、100、200は、さもなければ従来の棒型の構成におけるクラッディングに対して及ぼされる力と、結果として生じる高度の歪みとによる機械的な破損に見舞われることなく、燃料の熱膨張とスウェリングに適応するための機構を、クラッディング12に提供する。
【0049】
クラッディング12は、横方向に(Y方向における軸44の方向に)移動する自由を有しており、細長いクラッディングの幅(軸44から各端壁16までの距離)にわたる大きな広がりにより燃料14/114/214からかなりの範囲まで歪みに耐えることができるので、本明細書において説明される、間隙34、234を有する細長い形状の燃料14、114、214と、細長いSiCクラッディング12は、スウェリングした燃料とクラッディングの細長い壁18との間の接触に適応することができる。本明細書において説明される細長い燃料設計はまた、(2つの端壁16上の端部間隙34の長さに依存する)接触下においてクラッディング12のより長い壁18内の燃料セグメント14/114/214に(X方向における軸40の方向に)より多くの膨張を提供する。
図1、2、3にそれぞれ示される燃料要素10、100、200の様々な実施形態は、燃料温度を著しく低下させ、したがって過渡中のクラッディングに対する接触荷重を減少させる可能性を有する。クラッディングと燃料との間の全体的な間隙は最小化され得るので、本明細書において説明される細長い設計は、より多くの燃料を装填して燃料サイクル費を改善する可能性を有する。
【0050】
要約すると、燃料要素10、100、200は、以下の便益を提供する:
1.円筒形燃料棒と比較して、燃料とクラッディングとの間のより小さな間隙又は直接接触による改善された熱伝達、
2.将来の燃料のスウェリングに適応するための過度の初期間隙がないことに起因する反応炉容積当たりのより大きな燃料体積、
3.より少ない核分裂ガス放出とスウェリングをもたらす、より小さな間隙に起因するより低い燃料温度、
4.クラッディングの面のより大きなスパンに起因する過渡中のクラッディングの局部的な変形におけるより少ない歪み、
5.燃料とクラッディングとの間の強い接触中の減少された引張り応力、
6.クラッディング表面の長い壁は、局部応力の蓄積をさらに軽減するために、事前に湾曲されてよく、又は、燃料は、凸状に成形され得る、
7.事故耐性特徴上の熱伝導性を高めるための添加物と追加の製造費を伴わずに、UO2燃料を使用することを可能にする、
8.U3Si2、UN、及びU合金などの他の革新的な燃料物質によって動作する、
9.凹状設計の場合、密封性のための外側層における圧縮応力を確保するために、接触圧力が、特に端部において曲げ応力に変換される。
【0051】
本明細書において説明される燃料要素10、100、200は、クラッディングと燃料との間に最小限の初期間隙を有して、UO2燃料とともにSiCクラッディングを利用することができる。燃料要素10/100/200の端部上の間隙34/234は、核分裂ガスと長軸40に沿った燃料セグメント14/114/214の膨張とのための体積を提供し、それにより、燃料セグメント14/114/214とクラッディング12とが接触しているときに、棒設計と比較して、クラッディング12に対する応力が減少する。特定の態様では、SiCクラッディングの細長い側壁18は、SiCスウェリング勾配に由来する応力の蓄積を軽減するために、事前に湾曲されてよく、及び/又は、燃料は、短軸44の方向における応力を最小限に抑えるために、凸状に又は凹状に成形されてよい。
【0052】
本明細書において説明される燃料要素10、100、及び200は、SiCクラッディングにおける応力の蓄積を著しく減少させ、燃料-クラッディング機械的相互作用に由来するSiCの機械的な破損を軽減することができる。燃料要素10、100、200は、軽水炉におけるUO2とのSiCクラッディングの適合性を可能にし、また、U3Si2、UN、及びウラニウム合金などの他の高熱伝導性燃料とともに動作する。
【0053】
本発明は、いくつかの実施例に従って記載されており、これらの実施例は、限定的ではなく、全ての局面において例示的であることが意図される。したがって、本発明は、詳細な実施において多くの変形が可能であり、それらは、当業者によって本明細書に含まれる説明から導き出すことができる。
【0054】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、刊行物、又は他の開示材料は、それぞれの個々の参考文献がそれぞれ参照により明確に組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照によって本明細書に組み込まれると言われる全ての参照、及び任意の材料、又はその一部は、組み込まれる材料が、本開示で説明される既存の定義、ステートメント、又は他の開示材料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。したがって、必要な範囲で、本明細書に記載される開示は、参照により本明細書に組み込まれる任意の矛盾する材料、及び本出願の制御に明示的に記載される開示に取って代わる。
【0055】
本発明は、様々な例示的かつ例示的な実施形態を参照して説明されてきた。本明細書に記載された実施形態は、開示された発明の様々な実施形態の様々な詳細の例示的な特徴を提供するものとして理解され、したがって、特に指定されない限り、可能な範囲で、開示された実施形態の1つ又は複数の特徴、要素、構成要素、構成要素、成分、構造、モジュール、及び/又は態様は、開示された発明の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態の1つ又は複数の他の特徴、要素、構成要素、構成要素、成分、構造、モジュール、及び/又は態様と組み合わされ、分離され、交換され、及び/又は再配置され得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態のいずれかの様々な置換、修正、又は組み合わせを行うことができることが、当業者には理解されよう。さらに、当業者は、本明細書を検討する際に、本明細書に記載される本発明の様々な実施形態と同等の多くを認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確かめることができるであろう。したがって、本発明は、様々な実施形態の説明によって限定されず、むしろ特許請求の範囲によって限定される。