(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】原材料のジャストインタイム特性評価のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20241106BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20241106BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 T
G05B23/02 R
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2022511355
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 IN2020050726
(87)【国際公開番号】W WO2021033207
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】201921033532
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
【住所又は居所原語表記】Nirmal Building,9th Floor,Nariman Point,Mumbai 400021,Maharashtra,India.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デオドハール、アニルド マカランド
(72)【発明者】
【氏名】バイカディ、アビシェク
(72)【発明者】
【氏名】ニスタラ、スリハーシャ
(72)【発明者】
【氏名】クマール、ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、アシット
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン、シヴァクマール
(72)【発明者】
【氏名】ランカナ、ヴェンカタラマナ
(72)【発明者】
【氏名】パンディヤ、ローハン
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-224721(JP,A)
【文献】特開2009-151383(JP,A)
【文献】特開平05-012303(JP,A)
【文献】特開2013-114362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0149407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント・データに基づく材料の特性評価のための方法(300)であって、
1つ以上のハードウェア・プロセッサが、前記プラント・データを産業プラントから入力として受信するステップ(302)と、
前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが前記プラント・データを処理することにより、前記産業プラントで使用される1つ以上の原材料の変化を決定するステップ(304)であって、
前記プラント・データを前処理するステップであって、前記プラント・データが、a)産業プラントのセンサから収集されるデータ、b)材料特性のサンプリングされた測定値又は材料バッチ情報に基づく実験データ、及び、c)複数のシミュレータを介して生成されるソフト・センサ・データ及び合成データ、d)プラント設計データ及びメンテナンス・データ、及び、e)環境データのうちの少なくとも1つを含む、前記プラント・データを前処理するステップと、
前処理されたプラント・データをフィルタリングするステップと、
少なくとも1つの機器に関して、フィルタリングされた前記プラント・データの観察されたパターンの変化に基づいて前記原材料のうちの1つ以上の前記変化を決定するステップであって、
前記産業プラントの動作状態における変化、機器の変化、又は機器の劣化があるかどうか検出するために前記前処理されたプラント・データをチェックするステップと、
前記産業プラントの動作状態における変化、機器の変化、又は機器の劣化がない場合に、材料変化検出モデルを使用して、1つ以上の前記原材料の前記変化を識別するステップであって、前記材料変化検出モデルは、前記フィルタリングされた前記プラント・データからの重要な性能指標のセットを継続的に監視する、1つ以上の前記原材料の前記変化を識別するステップと、
一定期間にわたって前記1つ以上の原材料を監視することによって、材料変化の状態が完了した、又は移行中として識別するステップと、
により、前記原材料のうちの1つ以上の前記変化を決定するステップと、
により、前記1つ以上の原材料の前記変化が少なくともプラント・レベル又は機器レベルで検出される、前記産業プラントで使用される1つ以上の原材料の変化を決定するステップ(304)と、
少なくとも1つの材料クラス識別モデルを使用して、前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが、前記材料変化の状態が完了した場合に、前記1つ以上の原材料のそれぞれに一致する少なくとも1つのクラスを決定するステップ(306)であって、前記決定された少なくとも1つのクラスは、新たに規定されるクラスである、又は、所定のクラスのセットからのものであ
る、前記決定するステップ(306)と、
前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが、前記1つ以上の原材料のそれぞれに関して材料特性を予測するステップ(308)と、
前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが、前記1つ以上の原材料の前記予測された材料特性及び前記決定された少なくとも1つのクラスのうちの少なくとも一方と関連付けられている複数の予測モデルのうちの少なくとも1つを選択するステップ(310)と、
前記選択された少なくとも1つの予測モデルを使用して、前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが、前記産業プラントの性能を予測するステップ(312)と、
前記産業プラントの取得された実際の性能が性能の閾値を下回っている場合、前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが、前記予測された性能に基づいて前記産業プラントの性能を最適化するために少なくとも1つの推奨事項を生成するステップ(318)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記原材料と一致する前記少なくとも1つのクラスを決定する前記ステップは、
前記原材料の前記プラント・データが、複数の既存のクラスのうちの1つのクラスと関連付けられているプラント・データと一致している場合に、前記クラスを一致するクラスとして識別するステップと、
前記既存のクラスのいずれにも前記原材料の前記複数のプラント・データに関して一致が見つからない場合に新たなクラスを規定するとともに、前記原材料と関連付けられている前記複数のプラント・データと一致するクラスとして前記新たなクラスを決定するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの原材料と一致する前記少なくとも1つのクラスとして前記新たに規定されるクラスを決定する前記ステップは、
前記原材料の少なくとも1つと関連付けられている前記プラント・データが、前記所定のクラスのいずれに関連付けられているプラント・データとも一致しないと決定するステップと、
前記プラント・データから前記少なくとも1つの原材料の特性を抽出するステップと、
前記少なくとも1つの原材料の前記抽出された特性と、関連するプラント・データとを使用して前記新たなクラスを規定するステップと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の前記クラスに関する情報がデータベースに記憶され、前記複数のクラスのそれぞれは、材料特性、プラント・データ、前記クラスに関連する予測モデル、前記クラスに関連する複数の最適設定、クラスタリング情報、抽出された分類規則、及び、1つ以上の二次情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プラント・データに基づく材料のデータ特性評価のためのシステム(100)であって、
1つ以上のハードウェア・プロセッサ(102)と、
通信インタフェース(103)と、
複数の命令を記憶するメモリ(101)と、
を備え、前記複数の命令が実行されると、前記1つ以上のハードウェア・プロセッサが、
前記プラント・データを産業プラントから入力として受信し、
前記プラント・データを処理することにより、前記産業プラントで使用される1つ以上の原材料の変化を決定し、
前記プラント・データを前処理することであって、前記プラント・データが、a)前記産業プラントのセンサから収集されるデータ、b)材料特性のサンプリングされた測定値又は材料バッチ情報に基づく実験データ、及び、c)複数のシミュレータを介して生成されるソフト・センサ・データ及び合成データ、d)プラント設計データ及びメンテナンス・データ、及び、e)環境データのうちの少なくとも1つを含む、前記プラント・データを前処理することと、
前処理されたプラント・データをフィルタリングすることと、
少なくとも1つの機器に関して、フィルタリングされた前記プラント・データの観察されたパターンの変化に基づいて前記原材料のうちの1つ以上の前記変化を決定することであって、
前記産業プラントの動作状態における変化、機器の変化、又は機器の劣化があるかどうか検出するために前記前処理されたプラント・データをチェックすることと、
前記産業プラントの動作状態における変化、機器の変化、又は機器の劣化がない場合に、材料変化検出モデルを使用して、1つ以上の前記原材料の前記変化を識別することであって、前記材料変化検出モデルは、前記フィルタリングされたプラント・データからの重要な性能指標のセットを継続的に監視する、1つ以上の前記原材料の前記変化を識別することと、
一定期間にわたって前記1つ以上の原材料を監視することによって、材料変化の状態が完了した、又は移行中として識別することと、
により、前記原材料のうちの1つ以上の前記変化を決定することと、
により、前記1つ以上の原材料の前記変化が少なくともプラント・レベル又は機器レベルで検出され、
少なくとも1つの材料クラス識別モデルを使用して、前記材料変化の状態が完了した場合に、前記1つ以上の原材料のそれぞれに一致する少なくとも1つのクラスを決定し、前記決定された少なくとも1つのクラスは、新たに規定されるクラスである、又は、所定のクラスのセットからのものであり
、
前記1つ以上の原材料のそれぞれに関して材料特性を予測し、
前記1つ以上の原材料の前記予測された材料特性及び前記決定された少なくとも1つのクラスのうちの少なくとも一方と関連付けられている複数の予測モデルのうちの少なくとも1つを選択し、
前記選択された少なくとも1つの予測モデルを使用して、前記産業プラントの性能を予測し、
前記産業プラントの測定された実際の性能が性能の閾値を下回っている場合、前記予測された性能に基づいて前記産業プラントの性能を最適化するために少なくとも1つの推奨事項を生成する、
システム。
【請求項6】
前記システムは、
前記原材料の前記プラント・データが、複数の既存のクラスのうちの1つのクラスと関連付けられているプラント・データと一致している場合に、前記クラスを一致するクラスとして識別することと、
前記既存のクラスのいずれにも前記原材料の前記複数のプラント・データに関して一致が見つからない場合に新たなクラスを規定するとともに、前記原材料と関連付けられている前記複数のプラント・データと一致するクラスとして前記新たなクラスを決定することと、
によって、前記原材料と一致する前記少なくとも1つのクラスを決定する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、
前記原材料の少なくとも1つと関連付けられている前記プラント・データが、前記所定のクラスのいずれに関連付けられているプラント・データとも一致しないと決定することと、
前記プラント・データから、前記少なくとも1つの原材料の特性を抽出することと、
前記少なくとも1つの原材料の前記抽出された特性と、関連するプラント・データとを使用して前記新たなクラスを規定することと、
によって、前記少なくとも1つの原材料と一致する前記少なくとも1つのクラスとして前記新たに規定されるクラスを決定する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、複数の前記クラスに関する情報をデータベースに記憶し、前記複数のクラスのそれぞれは、材料特性、プラント・データ、前記クラスに関連する予測モデル、前記クラスに関連する複数の最適設定、クラスタリング情報、抽出された分類規則、及び、1つ以上の二次情報を含む、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月20日に出願されたインド特許出願第201921033532号による優先権を主張する、2020年8月20日に出願された国際出願番号第PCT/IN2020/050726号の日本国への国内移行出願である。
【0002】
本明細書中の開示は、一般に、産業プロセス及び機器の監視に関し、より詳細には、任意のプロセス産業における原材料のジャストインタイム(JIT)特性評価のためのデータ分析に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な種類の原材料を処理して1つ以上の出力を生成するプロセス産業では、処理されている原材料の品質が出力の品質とプラントの効率とに直接に影響する。2つ以上の原材料が互いに混合されるとき、プラントの性能が予測できない非線形の態様で逸脱する場合がある。例えば、石炭火力発電プラントの性能は、2つの異なる石炭が燃料として混合される場合には非線形にシフトする。
【0004】
最適な出力を得るには、使用する原材料の品質に応じてプラント設定を調整する必要がある。しかしながら、従来、産業プラントを監視及び制御する制御システムは、制御パラメータ/ロジックを決定するための設計材料に基づいて機能し、材料の品質及び特性の変動は十分に考慮されない。その結果、プラントの出力の品質及びプラントの全体的な性能は、処理に使用される原材料の品質のばらつきに伴って逸脱する。
【0005】
多くの場合、消費されている原材料の品質は、リアルタイムで測定されない又は使用可能な形式で入手できない。品質測定が可能であっても、リアルタイムで実行するには非常に費用がかかる場合がある。原材料の品質に関するリアルタイムの情報がない場合、プラントを最適に稼働させることは非常に困難である。
【0006】
更に、プラントは、多くの場合、機器のチェーン(直列アーキテクチャ又は並列アーキテクチャ)から成り、この場合、原材料は、様々な割合で様々な時間に消費される。各機器のための原材料の供給ラインは異なる場合があり、その結果、機器の全体にわたって原材料の使用が不均一になり、下流側の処理機器の動作が変更される場合がある。例えば、火力発電プラントでは、様々な粉砕機がそれぞれの石炭供給装置を通じて供給され、石炭供給装置には、様々なレベル及び種類の石炭が搭載される場合があり、したがって、異なる時間に異なる石炭を処理する場合がある。これにより、そのポートにわたって様々な石炭が供給されるボイラーの性能が変化する場合がある。したがって、これらの原材料の品質変化を個々の機器レベルでも追跡することが非常に重要である。
【0007】
多くの場合、原材料は固体の微細な材料の不均一な混合物の形をしている。原材料Aから原材料Bへの移行は、完了するまでに数時間かかる場合がある。原材料のこの移行期間中のプラントの性能は、原材料の品質がこの期間に絶えず変化しているため、異なる方法で対処する必要がある。例えば、異なる石炭A及び石炭Bが次々に石炭バンカー(例えば火力発電プラント)に積み込まれる。この石炭の変化は、石炭Aの初期の高濃度が時間と共に減少し、石炭Bの初期の高濃度が徐々に増大するにつれて、粉砕機で徐々に反映される。しかしながら、材料流れが必ずしも合理化されているとは限らないため、これ自体は20時間もの期間にわたって非常に非線形に起こる場合がある。これはボイラーの性能に直接に影響する。したがって、原材料のこの移行期間をリアルタイムで追跡し、それに応じてプラントの運転に関する推奨事項を提供する必要がある。
【0008】
現在利用可能な高度な予測モデルベースの制御システムにもかかわらず、適切な種類の予測モデルを識別/構築することは、材料品質の固有の変動と、様々な動作状態下でのプラントの出力へのその影響を考えると、課題である。既存のシステムは、プラントの最適な運用のために原材料情報を検出、識別、及び、利用することによってプラントの運用を操作する必要性を十分に満たしていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施例は、従来のシステムにおいて、発明者によって認識される前述の技術的課題のうちの1つ以上に対する解決策として技術的改善を提示する。例えば、一実施例では、プラント・データに基づく材料の特性評価のためのプロセッサ実装方法が提供される。この方法では、最初に1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、プラント・データが産業プラントから入力として受信される。更に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介してプラント・データを処理することにより、産業プラントで使用される1つ以上の原材料の変化が決定され、この場合、1つ以上の原材料の変化は、少なくともプラント・レベル又は機器レベルで検出される。更に、少なくとも1つの材料クラス識別モデルを使用して、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、1つ以上の原材料のそれぞれに一致する少なくとも1つのクラスが決定され、この場合、決定された少なくとも1つのクラスは、新たに規定されるクラスである、又は、所定のクラスのセットからのものである。更に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、原材料のそれぞれに関して材料特性が予測される。その後、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、1つ以上の原材料の予測された材料特性及び決定された少なくとも1つのクラスのうちの少なくとも一方と関連付けられている複数の予測モデルのうちの少なくとも1つが選択され、また、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、選択された少なくとも1つの予測モデルを使用して、産業プラントの性能を予測する。プラントの実際の性能も測定され、実際の性能が性能の閾値を下回っている場合には、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、予測された性能に基づいて産業プラントの性能を最適化するために少なくとも1つの推奨事項が生成される。
【0010】
他の態様では、プラント・データに基づく材料のデータ特性評価のためのシステムが提供される。システムは、1つ以上のハードウェア・プロセッサと、通信インタフェースと、複数の命令を記憶するメモリとを含む。複数の命令が実行されると、1つ以上のハードウェア・プロセッサは、プラント・データを産業プラントから入力として受信する。更に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介してプラント・データを処理することにより、産業プラントで使用される1つ以上の原材料の変化が決定され、この場合、1つ以上の原材料の変化は、少なくともプラント・レベル又は機器レベルで検出される。更に、少なくとも1つの材料クラス識別モデルを使用して、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、1つ以上の原材料のそれぞれに一致する少なくとも1つのクラスが決定され、この場合、決定された少なくとも1つのクラスは、新たに規定されるクラスである、又は、所定のクラスのセットからのものである。更に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、原材料のそれぞれに関して材料特性が予測される。その後、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、1つ以上の原材料の予測された材料特性及び決定された少なくとも1つのクラスのうちの少なくとも一方と関連付けられている複数の予測モデルのうちの少なくとも1つが選択され、また、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、選択された少なくとも1つの予測モデルを使用して、産業プラントの性能を予測する。プラントの実際の性能も測定され、実際の性能が性能の閾値を下回っている場合には、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、予測された性能に基づいて産業プラントの性能を最適化するために、その後少なくとも1つの推奨事項が生成される。
【0011】
更なる他の態様では、プラント・データに基づく材料の特性評価のための非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。非一時的コンピュータ可読媒体は、メモリに記憶される複数の実行可能な命令から構成される。複数の命令が実行されると、1つ以上のハードウェア・プロセッサは、プラント・データに基づく材料の特性評価のための以下の方法を実行する。この方法では、最初に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、プラント・データが産業プラントから入力として受信される。更に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介してプラント・データを処理することにより、産業プラントで使用される1つ以上の原材料の変化が決定され、この場合、1つ以上の原材料の変化は、少なくともプラント・レベル又は機器レベルで検出される。更に、少なくとも1つの材料クラス識別モデルを使用して、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、1つ以上の原材料のそれぞれに一致する少なくとも1つのクラスが決定され、この場合、決定された少なくとも1つのクラスは、新たに規定されるクラスである、又は、所定のクラスのセットからのものである。更に、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、原材料のそれぞれに関して材料特性が予測される。その後、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、1つ以上の原材料の予測された材料特性及び決定された少なくとも1つのクラスのうちの少なくとも一方と関連付けられている複数の予測モデルのうちの少なくとも1つが選択され、また、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、選択された少なくとも1つの予測モデルを使用して、産業プラントの性能を予測する。プラントの実際の性能も測定され、実際の性能が性能の閾値を下回っている場合には、1つ以上のハードウェア・プロセッサを介して、予測された性能に基づいて産業プラントの性能を最適化するために少なくとも1つの推奨事項が生成される。
【0012】
システムは、複数のクラスに関する情報をデータベースに記憶し、この場合、複数のクラスのそれぞれは、材料特性、プラント・データ、クラスに関連する予測モデル、クラスに関連する複数の最適設定、クラスタリング情報、抽出された分類規則、及び、1つ以上の二次情報を含む。「二次情報」という用語は、システムによって実行される原材料の特性評価プロセスの任意の段階で使用される、前述の例以外の任意の情報を指す。
【0013】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明がいずれも例示的で且つ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0014】
この開示に組み込まれてこの開示の一部を構成する添付図面は、典型的な実施例を例示し、明細書本文と共に、開示された原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の幾つかの実施例に係る、材料の特性評価のための典型的なシステムを示す。
【
図2A】本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステムの実装を示すブロック図である。
【
図2B】本開示の幾つかの実施例に係る、デジタルツインとして設定された産業プラントにおける
図2Aのシステムの展開の実例を示すブロック図である。
【
図3】
図3A及び
図3B(まとめて
図3と呼ばれる)は、本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステムを使用する、材料の特性評価に基づいて推奨事項を生成するプロセスに含まれるステップを示すフロー図である。
【
図4】
図4A、
図4B及び
図4C(まとめて
図4と呼ばれる)は、本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステムを使用する、材料の特性評価のプロセスに含まれるステップを示すフロー図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステムを使用する、材料クラス抽出モデルによって実行される自動段階的クラスタリングのプロセスに含まれるステップを示すフロー図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステム内の複数のプラントのための複数のデジタルツイン・システム間で共有されるデータベースの実装の一実例を示す。
【
図7A】
図7Aは、本開示の幾つかの実施例に係る、原材料の移行を示す例図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の幾つかの実施例に係る、原材料の移行を示す例図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、典型的な実施例について説明する。図では、参照番号の左端の数字は、参照番号が最初に表示される図を示す。都合のよい場合はいつでも、同じ又は類似の部分を指すために、図面全体で同じ参照番号が使用される。開示された原理の実例及び特徴が本明細書で説明されるが、修正、適合、及び、他の実装は、開示された実施例の範囲から逸脱することなく可能である。以下の詳細な説明は単なる例示と見なされることが意図されており、真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示されている。
【0017】
ここで、図面、より具体的には
図1~
図7Bを参照し、この場合、類似の参照文字が図全体を通して一貫して対応する特徴を示し、好ましい実施例が示され、これらの実施例は、以下の例示的なシステム及び/又は方法との関連で説明される。
【0018】
図1は、本開示の幾つかの実施例に係る、原材料を特性評価するための例示的なシステムを示す。メモリ・モジュール101は、例えば、静的ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)及び動的ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)などの揮発性メモリ、及び/又は、リード・オンリ・メモリ(ROM)、消去可能プログラマブルROM、フラッシュ・メモリ、ハードディスク、光ディスク、磁気テープなどの不揮発性メモリを含む、当技術分野で知られている任意のコンピュータ可読媒体を含み得る。一実施例では、システム100の1つ以上のモジュール(図示せず)をメモリ101に記憶することができる。メモリ・モジュール101は複数の命令を記憶するように更に構成され、複数の命令が実行されると、1つ以上のハードウェア・プロセッサ102は、システム100によって処理されている自由空間識別に関連する異なる動作を実行する。メモリ・モジュール101は、任意のデータ(入力センサ・データ、任意の中間出力(生成された占有グリッド・マップ、シード情報など)など)及びシステム100によって処理されている材料品質検出に関連する出力(すなわち、識別された自由空間に関連するデータ)を記憶するように更に構成することができる。
【0019】
1つ以上のハードウェア・プロセッサ102は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、状態機械、グラフィック・コントローラ、論理回路、及び/又は、操作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして実装することができる。他の機能の中でも、プロセッサは、メモリに記憶されるコンピュータ可読命令をフェッチして実行するように構成される。一実施例において、システム100は、ラップトップ・コンピュータ、ノートブック、ハンドヘルド・デバイス、ワークステーション、メインフレーム・コンピュータ、サーバ、ネットワーク・クラウドなどのような様々なコンピューティング・システムに実装することができる。1つ以上のハードウェア・プロセッサ102は、必要に応じて、自由空間検出の異なる段階で、データを実行し、信号処理を制御するように構成される。
【0020】
通信インタフェース103は、様々なソフトウェア・インタフェース及びハードウェア・インタフェース、例えば、ウェブ・インタフェース、グラフィカル・ユーザ・インタフェースなどを含むことができ、例えばLAN、ケーブルなどの有線ネットワーク、及び、WLAN、セルラー、又は、衛星などの無線ネットワークを含め、多種多様なネットワークN/W及びプロトコル・タイプ内での複数の通信を促進させることができる。一実施例において、通信インタフェース103は、幾つかのデバイスを互いに又は別のサーバに接続するための、1つ以上のポートを含むことができる。通信インタフェースは、システム100が1つ以上の外部システムと通信するために、適切なプロトコルを備えた1つ以上のチャネルを提供するように構成することができる。例えば、通信インタフェース103は、相互作用して、自由空間検出に必要な入力を1つ以上のセンサから収集し、この場合、センサは、システム100の一部である場合もそうでない場合もある。通信インタフェース103は、更に、許可されたユーザがシステム100と相互作用するのに適したユーザ・インタフェースを提供する。通信インタフェース103は、システム100の異なる構成要素が互いに相互作用してデータを実行し及び/又は転送を制御するための1つ以上のチャネルを提供するように更に構成することができる。
【0021】
システム100は、基本的な機能、すなわち、原材料の特性評価、ひいては、プラント/プロセスの最適化のための推奨事項の生成が同じままであっても、様々な方法で実施することができる。
図1のシステムの実装の一実例が
図2に示される。原材料の特性評価のプロセスに関与する様々なステップが、
図3から
図5におけるフロー図に示される。
【0022】
図2Aは、本開示の幾つかの実施例に係る
図1のシステムの実装を示すブロック図である。
図2Aにおいて見られるようなシステム実装は、データ前処理モジュール201、変化検出モジュール202、クラス識別モジュール203、クラス抽出モジュール204、シミュレーション・モジュール205、予測モデル更新/作成モジュール206、予測モデル選択モジュール207、プラント・アドバイザリ・モジュール208、及び、材料特性評価に必要な様々な情報並びにシステム100による材料特性評価及び推奨事項生成中に及びその結果として生成されたデータを記憶するデータベースを含む。システム100の動作を説明するために、システム100が産業プラント(或いは「プラント」と呼ばれる)に展開されるシナリオが考慮され、また、ステップ/異なる段階が以下に説明される。産業プラント環境におけるシステム100の展開が
図2Bに示される。この実施の実例において、システム100は、プラントのデジタルツインとして機能することができる。システム100の動作を以下に説明する。
図2Bに示される残りのブロック/構成要素(すなわち、システム100を除く)は、任意の産業プラントの標準的な構成要素であってもよく、システム100が展開される産業プラントのタイプに応じて変更されてもよい。また、
図3及び
図4には、原材料の特性評価及び推奨事項の生成に関与するプロセス・ステップも示される。ここで、システム100及びシステム100の各構成要素の動作が、方法300に示されているステップに関連して説明され、逆もまた同様である。
【0023】
システム100は、入力としてプラント・データを収集/受信(302)するために、I/Oインタフェース103によって与えられる1つ以上の適切なチャネルを使用して、プラントと相互作用する。入力として収集されるプラント・データとしては、a)産業プラント・センサから収集されたデータ、b)材料特性又は材料バッチ情報のサンプル測定に基づく実験データ、及び、c)複数のシミュレータを通じて生成されたソフト・センサ・データ及び合成データ、d)プラント設計データ及びメンテナンス・データ、及び、e)環境データのうちの1つ以上を挙げることができる。合成データは、産業プラントの識別された動作状態と、決定された少なくとも1つのクラスから抽出された複数の材料特性とに基づいて生成される。生成された合成データ、実験データ、及び、産業プラントから収集されたリアルタイム・データ、プラント・メンテナンス・データ、及び、環境データは、産業プラントの複数の予測モデルをトレーニングするために使用される。また、システム100は、過去の時点でのプラントの動作に関する情報をフェッチすることもができ、この情報は、履歴情報/データとしてメモリ101内のデータベースに記憶される。このプラント・データは、プラント・センサから得られたデータ、実験情報管理システムからの原材料特性、環境条件、プラント/機器メンテナンス情報、プラント/機器設計情報を含む。一実施例では、プラント・データに加えて、システム100は、材料特性評価、推奨事項生成、及び/又は、システム100によって処理されている任意の他のプロセスに必要な1つ以上のユーザ入力及び/又は命令を収集することができる。データ前処理モジュール201は、プラント・データをリアルタイムでマージ、クリーンアップ、フィルタリング、及び、処理し、更なる使用のためにデータベースに保存する。
【0024】
変化検出モジュール202は、前処理されたプラント・データを受信し、受信したプラント・データを処理して、原材料が変化したかどうかを識別する(304)。ここで、原材料の変化は、以前に使用された原材料のリストと比較して、及び/又はプラントで使用される原材料の初期状態に関する情報に基づいて、システム100によって識別され得る。変化は、プラント内の化学反応の結果として、原材料の追加及び/又は削除、或いは、原材料のある形式から別の形式への変更に起因して起こり得る。
【0025】
変化が起こったことを検出すると、クラス識別モジュール203は、メモリ101内の材料データベースで利用可能な既存のクラスから原材料の1つ以上のクラスを決定する(306)。各原材料は複数の特性を有するため、各材料は1つ以上のクラスに分類され得る。システム100は、収集されたプラント・データにおいて観察されたパターンの変化に基づいて、原材料の変化を決定することができる。産業プラントによって処理されている一連の原材料、実行されているプロセス、及び、任意の所定の時点での他の要因がパターンを形成する。パターンからの任意の変化/変動は、システムによって考慮され、原材料の変化が決定される。また、システム100は、材料特性を予測/定量化(308)することもできる。検討中の原材料が複数の所定のクラスのいずれにも属さない場合、システム100は、クラス抽出モジュール204をトリガする。クラス抽出モジュール204は、検討中の原材料の特性を抽出するように構成され、抽出特性を更に使用して、新たなクラスを規定する又は1つ以上の既存のクラス(つまり、所定のクラス)を更新する。1つ以上の原材料が所定のクラスのいずれにも属していないことが識別される可能性のある幾つかのシナリオ例は、a)以前に見られなかった/使用されなかった材料を使用したプラント、b)機器の変更又は老朽化に起因するプラントの挙動の変化によるもの、c)プラントの動作状態の変更である。クラス抽出モジュール204は、これらに限定されないが、リアルタイム動作データ及び過去の動作データ、材料特性、メンテナンス・データ、設計データ、周囲条件データ、及び、シミュレートされた/ソフト・センシングされたデータなどの異なるタイプのデータを使用して、使用された異なる材料のクラスを自動的に識別する。システム100は、シミュレーション・モジュール205を使用して、原材料の動作レジーム及び既知の性質に基づいて、プラントの合成動作データを生成することができる。システム100は、生成された合成データを、後の任意の時点で、クラス識別及びクラス抽出の目的で使用することができる。新たなクラスの実際の動作データの量が十分な量蓄積されると、使用中にシミュレートされたデータの重みを減らすことができる。材料変化検出モデル、材料クラス識別モデル、及び、材料クラス抽出モデルは、それ自体自動的に再調整できる。
【0026】
更に、予測モデル更新/作成モジュール206は、予測モデル選択モジュール207と共に、原材料のクラスに一致する少なくとも1つの予測モデルを選択する(310)ために使用される。予測モデルへの入力の幾つかは、原材料特性、プラント動作設定ポイント、環境条件、プラント設計及びメンテナンス情報であるが、これらに限定されない。予測モデルは、プロセス、効率、コスト、エネルギー、製品品質、スループット、排出量、及び、安全性に関連するパラメータを含むプラント・パラメータを予測することができる。更に、予測モデルは、プロセス/機器の異常を検出・診断し、傾向を予測し、残りの耐用年数を推定するためのモデルで構成することもできる。予測モデルの選択中に、システムは所定の入力に関する予測モデルのそれぞれの精度を決定し、精度が精度の閾値未満であると識別される場合、いずれかの予測モデルに関し、予測モデルがデータベースに収集された新たなプラント・データで更新される。その後、選択された予測モデルを使用して、産業プラントの性能を予測する(312)。また、システム100は、入力として、産業プラントの実際の性能に関する情報を取得する(314)。産業プラントの実際の性能が性能の閾値と比較され、実際の性能が性能の閾値を下回る場合、プラント・アドバイザリ・モジュール208がトリガされる。実際の性能が性能の閾値を超えていると識別される場合、ステップ302からのプロセスが繰り返される。このトリガは、産業プラント/プロセス/機器の監視を開始するためにシステム100によって必要とされないことに留意すべきである。
【0027】
その後、プラント・アドバイザリ・モジュール208は、少なくとも1つの予測モデルを使用して、産業プラントの予測された性能に基づいて、プラント性能又は異常事象のリアルタイム最適化のための推奨事項を生成する。実施可能な洞察/推奨事項は、通信インタフェース103に戻され、次に、通信インタフェース103は、システム100の出力として、ユーザに推奨事項を提供する。
【0028】
これらに限定されないが、原材料分類を実行するためにシステム100により必要とされる全てのデータ、原材料分類の結果、及び、生成された推奨事項などの情報は、データベースに記憶される。更に、データベースにより、これらに限定されないが、とりわけ、原材料の性質及び使用法(過去及び計画)、動作データ、処理済みデータ、シミュレートされたデータ、モデル(材料変化検出モデル、材料識別モデル、材料クラス抽出モデル、第1の原理モデルを備え得るプラント性能予測モデル、データ駆動型モデル、及び、知識ベース・モデル)、アルゴリズム、最適化及び他の決定、専門知識、機器及びメンテナンス記録、環境条件、及び、プラント情報などの様々な種類のデータ及び情報の記録と再利用とが可能になる。データベースは、一度に複数のプラントからデータを収集、記憶、及び、利用するように構成できる。これが
図6に示される。
図2Aの説明に記載される様々なステップが
図3に示される。方法300に記載されるステップは、示されているのと同じ順序で、又は技術的に実行可能な任意の代替順序で、実行される。また、方法300における1つ以上のステップが省かれてもよい。
【0029】
図4A、
図4B、及び、
図4C(まとめて
図4と呼ばれる)は、本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステムを使用する、材料の特性評価のプロセスに関与するステップを示すフロー図である。
【0030】
システム100によって実行される変化検出は、動作状態が変化した(例えば、火力発電プラントにおける負荷変化又は活性粉砕機の変化、アルミナ・プラントで製造された製品グレードの変化)かどうかを識別するなどの様々な手段を通じて、プラントの現在の状態をチェックすることを伴う。これは、何らかの異常に起因して、又は特定の機器の経年劣化/障害に起因して、動作パラメータが変化したかどうかをチェックするアルゴリズムも伴う場合がある。状態又は機器が変化した場合には、ユーザに通知され、他のデジタルツイン・サービスがトリガされ、このサービスは、そのような変更から生じる課題を軽減するのに役立ち得る。
【0031】
しかしながら、そのような状態/機器の変化が検出されない場合、材料変化検出モデルは、プラント・センサからの重要な性能指標のセットを継続的に監視して、材料変化が発生したかどうかを識別する。材料変化検出モデルは、プラント機器ごとに個別に又は共同で実行され、特定の機器で原材料が変化したかどうかを決定し、その機器を識別する。材料変化検出モデルは、データ駆動型モデル、知識ベース・モデルと組み合わせた物理学ベース・モデルから成ってもよい。材料変化検出モデルの動作の詳細をカバーする実例が以下に与えられる。
【0032】
消費される材料の特性は、多くの場合、機器/プロセスの動作にそれらの形跡を残す。例えば、石炭火ボイラーでは、粉砕がより難しい石炭は、消費電力又は圧力パラメータの観点から、常に粉砕機に痕跡を残す。同様に、水分がより多い石炭は、ボイラーに入る前に水分を蒸発させることができるように、より多くの空気とより高い温度の空気とを必要とする。材料変化検出アルゴリズムは、これらの重要な材料指標パラメータを監視して、原材料に変化が見られるかどうかをチェックする。
図7Aの例に示されるように、変化は非常に遅いか又は非常に速い場合がある。ある材料から別の材料への移行は、特定のパラメータに関してのみ現れ、他のパラメータに関しては現れない場合がある。例えば、機器Aでは24時間にわたって3つの材料が使用される。材料1及び材料2は、同様の硬度を有するが、異なる化学組成を有する。材料3は、大きく異なる硬度を有するが、材料1と非常に似た組成を有する。材料変化検出モデルは、過去のプラント性能パラメータ及び関連する測定された材料特性の履歴データに基づいて、事前に構築される。或いは、材料変化検出モデルをクラス抽出プロセスから自動的に抽出することもできる。材料変化検出モデルは、図に示されるように、重要な材料形跡パラメータを追跡し、それらのうちの1つ以上における重大な変化を識別した後、材料クラスの変化を示す、対応する材料の性質の変化に対して変化を割り当てる。
【0033】
プロセスのもう1つの複雑な部分は、各機器が異なる時間に材料変化を受ける場合があることである。
図7Bに示されるように、機器A及び機器Bは、6:00から開始してIからIIへの材料変化を見るのに対し、機器Cは、18:00まで前の材料Iを使用し続ける。これは、システムにおけるメンテナンスや冗長性のために特定の機器をシャットダウンすることを含む、複数の理由に起因し得る。しかしながら、材料変化検出モデルは、各機器を個別に監視し、材料の変化が発生している機器を識別する。
【0034】
更に、一部の変化はより速く、一部の変化はより遅く現れる場合がある。例えば、材料IからIIへの移行はより迅速であり、IIIからIIIへの移行はより遅い。材料変化検出モデルは、材料の移行期間を識別する。これは、物理学、知識規則、及び、高度データ駆動型時系列手法の組合せによって実現され得る。例えば、動的タイム・ワーピングなどの高度時系列クラスタリング手法を、プラントで測定されたパラメータの選択されたセット(知識に基づいて以前に識別された)及び物理学に基づく計算パラメータのセット(直接測定されない)に適用できる。物理学に基づく計算パラメータの実例は、使用される材料の水分形跡として機能する粉砕機又はボイラーでの熱収支計算となり得る。材料変化検出モデルは、ウィンドウと呼ばれる、以前に識別された期間にわたる複数のプラント・パラメータにおける傾向/パターンを観察した後、これらの連続するウィンドウをリアルタイムで相互に比較し続ける。このような複数のパラメータの連続するウィンドウ間の差が閾値を超えると、原材料の変化が検出される。閾値は、当該分野の専門知識又はプラントの履歴データに基づく統計パラメータに基づいて選択できる。
【0035】
材料の移行期間の検出は、プラントの性能と最適化戦略とに大きな影響を与えるため、重要である。材料変化検出モデルが、材料移行が完了していないことを識別する場合、材料変化検出モデルは、この情報を移行モデルの異なるセットに渡す。しかしながら、材料変化検出モデルが、材料変化の完了とプラントの安定化とを識別する場合、その情報は選択された予測モデルに渡される。移行モデルは、処理中の2つの材料間の移行期間を扱うために特別に構築された、材料識別プラント予測モデルの別個のセットであってもよい。
【0036】
材料変化検出を実行している間、ステップ402で、システム100は、前処理されたデータを処理して、動作状態に変化があるか又は機器の変化/劣化があるかどうかを検出する。例えば、システム100が、製品のグレードAを生産するプラントの材料特性評価のために使用され、その時点で、製品のグレードBを処理しつつ使用されている場合、これは、システム100によって動作状態の変化として識別される場合がある。同様に、機器のうちの1つ以上が変更される場合、又は機器のいずれかが設定された劣化の閾値を超えて劣化する場合、これも「変化」と見なされる。状態/機器の変化がない場合、ステップ404で、システム100は、原材料が変化したかどうかを識別し、そうである場合、材料変化検出モデルを使用して、原材料が変化した(材料変化と呼ばれる)機器を識別する。材料変化が検出される場合、ステップ406で、システム100は、材料変化の状態をチェックする。材料変化の状態は、「材料変化が完了した」及び「材料変化移行中」のいずれかである。一部の材料変化には時間がかかる場合がある。材料変化が完了した場合、ステップ410で、システム100は、1つ以上の材料クラス識別モデルを使用して、原材料(すなわち、変化後に存在する原材料)のクラスを識別する。材料クラス識別モデルは、プラントからの履歴データに基づいて事前に構築されてもよく、データベースに記憶されてもよい。
【0037】
システム100は、1つ以上の適切な材料クラス識別モデルを使用して、原材料のクラスを識別することができる。
【0038】
各材料クラス識別モデルは、プラントのリアルタイム・データを受信し、材料が属するクラスを予測する。材料のクラスは、材料クラス抽出モデルに基づいて事前に決定することができる。材料クラス識別モデルは、事前に構築されたデータ駆動型分類モデル、物理学ベース・モデル、及び、知識ベース・モデルの組合せとなり得る。例えば、材料クラス識別モデルは、プラントの履歴データを使用して構築された機械学習ベースの高度な分類モデルを含んでもよい。しかしながら、材料クラス識別モデルは、精度を向上させるために、物理学ベース・モデル/計算を利用してもよい。一実例として、火力発電プラントにおける高水分又は低水分の材料を識別するために、熱収支モデルが使用される。更に、熱収支モデルは、熱収支モデルに組み込むことができる規則を構築するために、制御ループのプラント固有の知識を使用してもよい。材料識別モデルの開発は、材料クラス抽出モデル及び材料品質予測モデルと緊密に結合される。
【0039】
材料クラス識別モデルが既存の材料を所定のクラスのセットに分類する場合、材料クラス識別モデルは、識別されたクラスを材料に割り当てた後、材料品質予測モデルをトリガして、材料の特性を定量化する。材料品質予測モデルは、プラントからリアルタイム・データ(プロセス・データ及び測定された性質)を受信し、この情報は、材料の特性を推定するために識別されたクラスに関連付けられる。
【0040】
予測/測定され得る原材料の特性の幾つかの実例は、以下のとおりである。
・化学組成(火力発電プラントにおける炭素、窒素、石炭中の揮発性物質などの特定の元素の濃度)
・物理的性質(製鉄プラントにおける鉄鉱石中のマグネタイト、ヘマタイトの濃度)
・物性(火力発電プラントにおける石炭の硬度、水分、コークス・プラントにおけるコークスに関するタンブラ指数)
・材料の形状/サイズ(コークス・プラントにおけるコークス・ペレットのサイズ分布、火力発電プラントにおける微粉炭の細かさ)
・形態/状態(製鉄プラントにおける高炉に積み込む際のコークス、鉄鉱石の状態)
・固有の化学的性質(石炭の燃焼の速度論的パラメータ、石炭の灰溶融温度)
【0041】
特性の幾つかは、システム100によって直接測定できない場合がある。そのような場合、システム100は、直接に測定できない特性の測定又は表示を組み合わせて与えることができる、特定のソフト・センサを使用する。例えば、原材料の水分は、それ自体、材料が燃焼するプラントでの熱吸収の形で現れる。プラントにおける熱伝達を表わすパラメータ又はプラントにおける熱収支を表わす他のソフト・センシング・パラメータは、含水量が異なる材料を分離するために分類アルゴリズム及びクラス抽出アルゴリズムによって使用されてもよい。同様に、火力発電プラントでは、ボイラーの運転中に石炭混合物の灰溶融温度が測定されない。しかしながら、それは、炉の温度が溶融温度を超える場合に灰の溶融がボイラーに恒久的な損傷を与える可能性があるため、重要である。材料品質予測モデルは、動作データと酸化物組成などのオフライン石炭性質データとを使用して、溶融温度をリアルタイムで予測し、プラントの動作を支援することができる。
【0042】
更に、高度なセンサがプラント内の適切な場所に配置されてもよく、その結果、これらの測定値を変化検出及び材料クラスの識別に使用できる。例えば、石炭火力発電プラントでは、煙道ガスの組成を測定するためのリアルタイム・ガス分析装置と、炉の温度を測定するための赤外線温度分析装置とを設置することができる。未燃炭素、灰組成などの煙道ガス中の様々な元素の測定は、石炭のクラスを検出し、その性質をリアルタイムで予測するために使用できる。炉の温度の測定は、灰の化学的性質への洞察をもたらし、それによって発電プラントの石炭のより良い分類を可能にし得る。
【0043】
上記のような材料品質予測モデルは、機械学習/深層学習回帰を使用するデータ駆動型モデル、物理学ベース・モデル、及び、専門知識モデルの組合せを使用することができる。
【0044】
第1の原理に基づく基本モデルを用いた材料品質予測モデルの実例を以下に説明する。速度論的パラメータ(これらの材料が化学反応で反応する方法を表わす)などの原材料の特性の一部は、リアルタイムで測定できない。他の実例は、材料の粒度分布及び物理的組成である。例えば、鉄鉱石の細かさをリアルタイムで測定したり、まったく異なる性質を持つ2つの異なる鉱山からの2つの鉄鉱石の混合比をオンラインで測定したりすることはできない。しかしながら、これらの特性はプラントの性能に大きな影響を及ぼす。これらの特性は、以下の方法を使用して定量化される。
【0045】
一実例として、第1の原理ベースの予測モデルは、原材料の特性とプラントの動作条件とに応じたプラントの性能を予測する物理学ベースのシミュレーション・モデルから構成される。他の材料品質予測モデルによって識別される特性は、未知の特性に関連するデータと共に、この第1の原理ベースの予測モデルに供給される。第1の原理ベースの予測モデルは、動作条件をリアルタイムで読み取り、プラントの性能をリアルタイムで予測する。このプラント性能は、センサからリアルタイムで取得された、測定されたプラント性能と比較される。未知の特性は、予測されたプラント性能が実際に測定されたものと望ましい精度で一致するように調整される。これは、内部最適化ループを介して行なわれる。識別されたこれらの特性は、将来の使用のためにデータベースに記憶される。そのため、システムは原材料の特性を学習して調整し、これはプラント全体の最適化に更に必要とされる。
【0046】
材料識別モデルが現在の材料を既存のクラスのセットに分類できない場合、材料クラス抽出モデルがトリガされる。
【0047】
ステップ412において、原材料がデータベースに記憶された、事前に識別されたクラスのうちの1つに属するものとして識別される場合、ステップ414で、システム100は、1つ以上の材料品質予測モデルを使用して原材料の特性を定量化する。材料品質予測モデルは、データ駆動型モデル、物理学ベースの基本モデル、及び、知識モデルの組合せとなり得る。材料品質予測モデルは、プラントからのリアルタイムの動作データ及び材料特性情報を使用してもよい。別の実施例において、材料品質予測モデルは、データベースからの記憶されたシミュレートされたデータ、並びに、様々なデータベースからのプラントの履歴データを使用してもよい。材料は、特定のクラスに分類することも、クラスごとに適切な類似性指数を割り当てて複数のクラス間で共有することもできる。複数の材料を同じクラスに分類することができる。材料品質予測モデルは、データ駆動型モデル、第1の原理ベース・モデル、知識ベース・モデル、又は、それらの組合せのいずれかで構成される。
【0048】
ステップ412で、原材料が所定のクラスのいずれにも属していないと識別される場合、ステップ422で、システム100は、材料クラス抽出モデルを使用して、その関連する情報の全てを伴う新たなクラスの材料を作成/規定する、或いは既存のクラスを再分類する。新たに規定されたクラスに必要な更なるデータは、ステップ424において、物理学ベース・モデルとプラント性能データを使用して生成される。生成された更なるデータを使用して、既存のクラスのうちの1つ以上が更新され、或いは、ステップ426において、新たなクラスが規定される。再分類は、様々な動作状態やプラント機器の老朽化のために必要になる場合がある。
【0049】
材料クラス及び特性が識別されると、更にステップ416で、システム100は、原材料の識別されたクラスに関して1つ以上の適切な予測モデルが存在するかどうかをチェックする。一致する予測モデルが存在する場合、システム100は、ステップ420で、一致する/関連する予測モデルを選択する。予測モデルは、対象となる特定のプラント出力パラメータに関して、様々なプラント・パラメータ間の関係を捕捉する。例えば、予測モデルは、製品品質を予測するための入力として、原材料の特性、プラント動作設定を受けてもよい。予測モデルは、データ駆動型モデル、第1の原理ベース・モデル、知識ベース・モデル、又はそれらの組合せのいずれかで構成されてもよい。様々な原材料クラスに関して異なる予測モデルを構築することも、全ての原材料クラスに対応する単一の(汎用の)モデルを構築することもできる。異なる予測モデルの場合、原材料クラスが識別された時点で、更なる使用のために適切な予測モデルが選択される。単一のモデルの場合、クラス抽出アルゴリズムから識別された適切なプラント・パラメータが、予測モデルが原材料のその特定のクラスに関して機能するように、予測モデルに入力として供給される。別の実施例において、予測モデルは、予想メンテナンス・タイプ・モデル(障害検出、RUL推定、予測)も含み得る。
【0050】
複数の適した/適切な予測モデルが識別される場合、システム100は、予測モデルのそれぞれの精度を決定し、予測モデルの中から最も精度の高い予測モデルを選択し、プラントの最適化に使用することができる。予測モデルが十分に正確である場合、予測モデルはプラントの最適化のために更に使用される。プラント最適化の一部として、システム100は、警告を生成し、許可されたユーザに対して動作上の推奨事項を提供することができる。適切な予測モデルが得られると、システム100の最適化モデルを使用して、プラントにとって最適な動作設定を識別する。最適化モデルは、データベースからの様々な既存の最適化アルゴリズムと共に選択された予測モデルを使用して、プラントにとって最適な設定を識別する。システムからの最適な設定又は推奨事項は、将来の使用のためにデータベースに記憶される。或いは、識別されたクラス及び特性を動作アドバイザリ及び予測メンテナンス・モデルへの入力としても使用できる。それらは、機器の性能を予測し、また、プロセス/機器の異常な動作を検出・診断するのにも役立ち得る。特定のタイプの原材料クラスの予測モデルが存在しない場合、又は既存の予測モデルが識別されたクラスに適していない場合、ステップ418では、システム100が新たなクラス固有の予測モデルを作成する、或いは、既存の予測モデルのうちの1つ以上が原材料の最新データ及び識別された特性で更新される。更新/作成された予測モデルは、原材料クラスの適切なタグ付け及び関連するタグ付けされた入力パラメータと共に、データベースに記憶される。
【0051】
適切な予測モデルが存在しない場合、及び新たなクラス固有の予測モデルが生成されなかった場合(任意の理由に起因する、例えば、必要なデータが利用できないことに起因する)、システム100がユーザに警告するための警報を生成してもよく、また、詳細及び前記プロセスの結果が、ユーザ・インタフェースを介して1人以上のユーザに表示される。ユーザは、ユーザ・インタフェースを介してシステムからの1つ以上の結末/結果を検証できる。ユーザ入力は、将来の使用のためにデータベースに記憶される。方法400に示されるステップは、示されるのと同じ順序で、又は技術的に実行可能な任意の代替順序で、実行される。また、方法400における1つ以上のステップが省かれてもよい。
【0052】
図5は、本開示の幾つかの実施例に係る、
図1のシステムを使用する、材料クラス抽出モデルによって実行される自動段階的クラスタリングのプロセスに関与するステップを示すフロー図である。
【0053】
最初に、材料形跡パラメータのマスター・リスト(プラント及び当該分野の知識に基づいて事前に選択される)が、ステップ502でデータベースから取得される。材料形跡パラメータは、使用される材料のタイプ又はその性質を直接的/間接的に示すプラント・プロセス変数である。例えば、石炭火力発電プラントでは、排気ガス中の硫黄酸化物の量が原材料炭中の硫黄のレベルを示し、又は石炭粉砕機が消費する電力が石炭の硬度を示す。或いは、粉砕機全体の熱収支など、物理学で計算されたソフト・センサの中には、石炭中の水分量を示すものもある。
【0054】
更に、ステップ504において、システムは、材料形跡パラメータの多数の想定し得る順列及び組合せを作成/準備する。これは、網羅的又は選択的のいずれかとなり得る。一部のパラメータは、組合せを作成するときに一緒にグループ化されてもよい。例えば、石炭火力発電プラントでは、粉砕機全体の熱収支及び気温や空気流量などの粉砕機のパラメータが、一緒にグループ化されてもよい。これは、それらはいずれも材料の水分を有意に表わすからである。パラメータ組合せの全てのセットが作成されてメモリに記憶される。データベースで利用可能な記憶された動作データ及び性質データは、様々な操作状態に分割される。例えば、プラントが100%負荷で稼働している状態の動作データは、50%負荷の場合の動作データから分離される。すると、データは適切に正規化される。更に、ステップ506で、システム100は、処理されたプラント・データのセットに関する機械学習ベースのクラスタリングを使用して、ステップ504で準備された材料形跡パラメータの全ての想定し得る順列及び組合せに関してクラスタリング結果を取得する。このデータは、センサから受信したデータ及びデータベースに記憶されたデータから構成される。十分な量のそのようなデータが利用できない場合には、LIMSからの材料特性データをクラスタリングのために使用することもできる。クラスタリングは、クラスタの数やクラスタリングのタイプ(密度/距離ベース)などのハイパーパラメータを変化させるパラメータの組合せの全てのセットに関して行なわれる。クラスタリング結果の最良のセットは、組合せクラスタリング結果のそれぞれに関して分離指数を比較することによって得られる。最大分離指数を伴うクラスタリング結果は、ステップ508で、その段階で最良のクラスタリングとして識別される。
【0055】
分離指数~関数(完全性スコア、異なる材料バッチに関連付けられたプラント・データ・ポイント間の分離の割合、材料バッチのそれぞれに関連付けられたプラント・データ・ポイント間の分離度などの統計的クラスタリング指数)
【0056】
分離指数は、機械学習/統計的観点及びグラウンド・トゥルースの観点の両方から、プラント・データが多様なクラスタにどれだけうまく分離したかを示す数値である。ここでのグラウンド・トゥルースとは、クラスタリングのために各稼働中のプラント・データ・ポイント・ユーザに対して利用可能な原材料バッチ又は特性の情報を指す。最初に、プラント・データ・パラメータの組合せのそれぞれに関して、クラスタの数を変えることで最良のクラスタリング結果が得られる。これは、機械学習の分野でよく知られている、シルエット法やエルボー・ベンド法などの統計的検定に基づいて取得される。その後、これらのクラスタリング結果のそれぞれが、材料バッチのそれぞれに属するプラント・データがどれだけうまく分離されたかに基づいて互いに比較される。一実例として、材料バッチに関連付けられている全てのプラント・データの90%以上がクラスタのいずれかに蓄積されると、それらのプラント・データは高い分離スコアを受ける。例えば、材料バッチ5に関連付けられたプラント・データが複数のクラスタに分割されるため、材料バッチ1、2、3、4は高い分離スコアを取得し、材料バッチ5は低い分離スコアを取得する(実例の表1を参照)。これは、プラント・データと特定の材料バッチとの誤った関連付け、又はバッチ自体の材料の様々な特性を含む、複数の理由で起こり得る。しかしながら、アルゴリズムはデータを分離することでこれに対応する。その後、クラスタリング結果全体における全てのプラント・データ・ポイントの分離指数が計算される。それは、個々の分離指数の平均、合計、又は、その他の関数のいずれかとなり得る。ステップ508において、最大分離指数を伴うクラスタリング結果が、全ての組合せの中から最良のものとして選択される。
【0057】
次のステップ510は、識別されたクラスタリング結果内で、最良の均質性スコア/指数を伴うクラスタを識別することを伴う。均質性指数/スコアは、プラント・データ・ポイントの類似性、及び、クラスタ内の関連する材料特性を示す。
【0058】
均質性指数~関数(各クラスタに関連するプラント・データ・ポイント内の均一性の程度、各クラスタ内のプラント・データ・ポイントに関連する材料特性内の均一性の程度)。
【表1】
【0059】
例えば、表1のクラスタK3は、それに関連するプラント・データ・ポイントが均一であり、材料バッチ1及び材料バッチ4の特性も類似しているので、高い均質性スコアを有する。プラント・データと材料特性の両方の観点から、このような均質なクラスタは、新たな材料クラスとして分離される。一方、クラスタK2及びクラスタK3は均質性スコアが低く、材料2、3、5は多様な特性を持っているため、更に分離する必要がある。ステップ514において、ステップ504からステップ510は、全てのクラスタが材料クラスに割り当てられるまで、均質性指数の閾値を下回る均質性指数を有する全てのクラスタに対して繰り返される。この段階で、前述のクラスタリング手順が、クラスタK1、K2に(個別に)関連付けられたプラント・データの様々なパラメータで繰り返され、実例の表1に示すように、分離スコアと均一性スコアとに基づいて新たな材料クラスが取得される。
【0060】
更に、クラス名は、ステップ510で純粋なクラスタに自動的に割り当てられる。ステップ512で、システム100は、パラメータ、クラスタの数、クラスタリング技術、及び、使用される特定のクラスタリング・パラメータに基づいて材料識別モデルを生成する。材料識別モデルは、データ駆動型の分類と知識駆動型の分類との組合せで構成される。ここでの知識は、前のステップで実行されたクラスタリング及び分離の演習から抽出された規則を指す。規則は、実行されるクラス抽出ステップと、分離指数に基づいてクラスを分離するために使用される対応する基準とをエンコードする。その後、システム100は、データベース内の材料クラスが割り当てられる、識別された純粋なクラスタに関連するデータを記憶する。このデータは以下を含んでよい。
i.形成される原材料クラス
ii.クラス抽出の各段階で使用される特定の材料形跡及びその他の動作データ
iii.各クラスの原材料の複数の特性の範囲と関連する動作データ、及び、クラスのそれぞれに関連するシミュレートされたデータ
iv.クラスのそれぞれ(各特定の動作状態及びプラント構成に関する)の特性とプラント動作データとの間の関係
v.各サブクラス及び原材料のクラスの動作データに関する数値及び統計情報。これは、中央値などの中心傾向の測定値又は材料の各グループの平均/標準偏差などの基本的な統計で構成される。
vi.生成される材料識別モデル
【0061】
システム100は、全てのクラスタが材料クラスとして割り当てられているかどうかをチェックする。割り当てられている場合、クラスの抽出は完了する。割り当てられていない場合、未分類のクラスタを抽出し、ステップ514のように、それ以上の分類ができなくなるまで、未分類のプラント・データ・ポイントでクラスタリング・プロセスを再度繰り返す。
【0062】
十分なプラント動作データがない場合、原材料の性質又は予測モデル(オフライン・モードで実行される)に基づくシミュレートされたデータのいずれかを使用することができる。例えば、合成データは、事前にサンプリング及び測定された原材料の特性を提供することにより、予測モデルを使用して生成され得る。或いは、異なるが類似した設計プラントからのモデルを、設計及び特定の調整パラメータに適切な修正を加えて使用することもできる。
【0063】
幾つかの場合において、材料は、各クラスの特定の類似性指数を有する複数のクラスを共有することがある。特定のクラスに属していない可能性があるが、近い関係の材料の場合、距離/密度ベースの近接指数を提供して、材料を識別することができる。既存のクラスと新しい特性との間に十分に大きな違いがある場合は、新しいクラスを作成できる。方法500に示されているステップは、示されているのと同じ順序で、又は技術的に実行可能な任意の代替順序で、実行される。また、方法500の1つ以上のステップが省かれてもよい。
【0064】
書かれた説明は、当業者が実施例を作成及び使用することを可能にするために、本明細書の主題を説明する。主題の実施例の範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に生じる他の修正を含み得る。そのような他の修正は、クレームの文字通りの言語と異ならない類似の要素を有する場合、又はクレームの文字通りの言語と実質的に異ならない同等の要素を含む場合、クレームの範囲内にあることを意図している。
【0065】
本明細書中の本開示の実施例は、プラント・データを使用する原材料の特性評価の未解決の問題に対処する。したがって、この実施例は、プラント・データを使用して原材料の特性を評価するためのメカニズムを提供する。更に、本明細書の実施例は、実行された材料特性評価に関する情報に基づいて最適化の推奨事項を生成するためのメカニズムを更に提供する。
【0066】
保護の範囲は、そのようなプログラムに拡張され、更には、メッセージを内部に有するコンピュータ可読手段に拡張されることが理解されるべきである。そのようなコンピュータ可読記憶手段は、プログラムがサーバ又はモバイル・デバイス又は任意の適切なプログラム可能なデバイス上で実行されるときに、方法の1つ以上のステップを実施するためのプログラム・コード手段を含む。ハードウェア・デバイスは、例えば、サーバやパーソナル・コンピュータなどの任意の種類のコンピュータ又はそれらの任意の組合せを含む、プログラムされ得る任意の種類のデバイスとなり得る。また、デバイスは、例えば、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)又はハードウェア手段とソフトウェア手段との組合せ、例えばASIC及びFPGA又はソフトウェア処理コンポーネントが配置された少なくとも1つのマイクロプロセッサ及び少なくとも1つのメモリのようなハードウェア手段となり得る手段を含んでもよい。したがって、手段は、ハードウェア手段とソフトウェア手段の両方を含むことができる。本明細書に記載の方法の実施例は、ハードウェア及びソフトウェアで実施することができる。また、デバイスは、ソフトウェア手段も含み得る。或いは、実施例は、例えば、複数のCPUを使用する、異なるハードウェア・デバイスで実施されてもよい。
【0067】
本明細書の実施例は、ハードウェア要素及びソフトウェア要素を含むことができる。ソフトウェアで実装される実施例には、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で説明される様々なコンポーネントによって実行される機能は、他のコンポーネント又は他のコンポーネントの組合せで実装され得る。この説明の目的のために、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスによって、又はそれらに関連して使用するためのプログラムを含み、記憶し、通信し、伝播し、又は輸送することができる任意の装置であり得る。
【0068】
図示されたステップは、示された例示的な実施例を説明するために設定されており、進行中の技術開発は、特定の機能が実行される方法を変えることが予想されるべきである。これらの例は、限定ではなく、説明の目的で本明細書に提示されている。更に、機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義されている。指定された機能とその関係とが適切に実行される限り、代替境界を定義できる。代替案(本明細書に記載されているものの同等物、拡張、変形、逸脱などを含む)は、本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術分野の当業者には明らかである。そのような代替案は、開示された実施例の範囲内に入る。また、用語「備える」、「有する」、「包含する」、「含む」及び他の同様の形式は、意味が同等であり、これらの用語のうちのいずれか1つに続く1つの項目又は複数の項目が、そのような1つの項目又は複数の項目の包括的なリストであることを意味しない、又はリストされた1つの項目又は複数の項目のみに限定されることを意味しない、という点で非制約的であることが意図される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形の参照を含むことにも留意されたい。
【0069】
更に、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体を、本開示と一致する実施例を実施する際に利用することができる。コンピュータ可読記憶媒体とは、プロセッサで読み取り可能な情報又はデータを記憶できる任意のタイプの物理メモリを指す。したがって、コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書に記載の実施例と一致するステップ又は段階をプロセッサに実行させるための命令を含む、1つ以上のプロセッサによる実行のための命令を記憶することができる。「コンピュータ可読媒体」という用語は、有形の項目を含み、搬送波及び過渡信号を除外する、すなわち非過渡的であると理解されるべきである。実例としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハード・ドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュ・ドライブ、ディスク、及び、その他の既知の物理記憶媒体がある。
【0070】
開示及び実例は例示としてのみ考慮されることが意図されており、開示された実施例の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。