(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】節足動物誘引または忌避装置、節足動物捕捉装置、および照明装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/04 20060101AFI20241106BHJP
A01M 1/14 20060101ALI20241106BHJP
A01M 29/10 20110101ALI20241106BHJP
【FI】
A01M1/04 A
A01M1/04 Z
A01M1/14 V
A01M29/10
(21)【出願番号】P 2022513615
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 SG2020050246
(87)【国際公開番号】W WO2021040613
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】10201907876U
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10201907879X
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10201907881R
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】522075391
【氏名又は名称】ペストロニクス・イノベーションズ・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャンカル・シータラム
(72)【発明者】
【氏名】カール・バプティスタ
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039390(WO,A1)
【文献】特開2013-127928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0342103(US,A1)
【文献】特開2013-247942(JP,A)
【文献】特開2002-369647(JP,A)
【文献】特許第5535196(JP,B2)
【文献】特許第6272927(JP,B2)
【文献】特開2018-083153(JP,A)
【文献】特開2015-171440(JP,A)
【文献】特開2003-199471(JP,A)
【文献】特開2003-070402(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103392681(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 1/14
A01M 29/00 - 29/34
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
節足動物誘引または忌避装置であって、
基板と、
前記基板に付着させた
、異なる発光スペクトルを同時に生成する異なるフルオロフォア材料を含む蛍光材料と、
第1の波長
を中心とする光によって前記蛍光材料を照明するように配置され
、異なる波長の紫外光を選択的に放出するための複数の発光ダイオード(LED)を含む紫外光源と、
を備え、
前記蛍光材料は、前記第1の波長の前記
紫外光を吸収し
、光を第2の波長で再放出するように配置され、前記第2の波長は前記第1の波長よりも長く、前記第2の波長を中心とする前記蛍光材料によって再放出される前記光のスペクトル帯域幅は、約10nmから約600nmの間であり、前記蛍光材料によって再放出される前記光の前記スペクトル帯域幅は、前記第1の波長の前記
紫外光のスペクトル帯域幅よりも大きく、
前記蛍光材料及び前記紫外光源は、前記紫外光源から放出された光の励起スペクトルと前記蛍光材料によって再放出された光の
生成された異なる発光スペクトルとから構成された結合スペクトルを
選択的に生成して
目標節足動物
群を誘引する正の走光性反応また
は忌避させる負の走光性反応のいずれかを生じさせるように配置されている、節足動物誘引または忌避装置。
【請求項2】
前記
異なるフルオロフォア材料
の少なくとも1つは蛍光増白剤(OBA)を含む、請求項
1に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項3】
前記第2の波長は約300ナノメートル(nm)から約600nmの間である、請求項1
または2に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項4】
前記第2の波長を中心とする前記スペクトル帯域幅は、約20nmから約500nmの間である、請求項1に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項5】
前記第1の波長は約100nmから約400nmの間である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項6】
前記蛍光材料からの前記再放出された光を除外するように構成された1つまたは複数のフィルタをさらに備え、前記1つまたは複数のフィルタは、1つまたは複数の吸収性光学フィルタおよび1つまたは複数の二色性光学フィルタのうちの1つである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項7】
時計および/または環境センサと、
前記時計および/または前記環境センサからの1つもしくは複数の読み取り値に基づいて前記紫外光源の動作を制御するように構成されたプロセッサと、
をさらに備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項8】
前記複数のLEDの少なくとも1つは、365nm励起光源LEDを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の節足動物誘引または忌避装置。
【請求項9】
基板と、
前記基板に付着させ
、異なる発光スペクトルを同時に生成する異なるフルオロフォア材料を含む蛍光材料であって、
前記異なるフルオロフォア材料が、異なる波長の紫外光を受光し、第1の波長の
紫外光を吸収し
、光を第2の波長で再放出して
、受光した前記紫外光の励起スペクトルと
生成された
異なる発光スペクトルとから構成された結合スペクトルを
選択的に生成して
目標節足動物
群を誘引する正の走光性反応を生じさせるように配置され、前記第2の波長が前記第1の波長よりも長く、前記蛍光材料が、約10nmから約600nmの間の前記第2の波長を中心とするスペクトル帯域幅で前記光を再放出するように配置され、前記蛍光材料によって再放出される前記光の前記スペクトル帯域幅が、前記第1の波長の前記
紫外光のスペクトル帯域幅よりも大きい、蛍光材料と、
前記蛍光材料によって誘引された
前記目標節足動物群の一頭または複数
の節足動物を固定化するように配置された節足動物固定化部材と、
を備える、節足動物捕捉装置。
【請求項10】
前記
異なるフルオロフォア材料
の少なくとも1つは蛍光増白剤(OBA)を含む、請求項
9に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項11】
前記第2の波長は約300ナノメートル(nm)から約600nmの間である、請求項9
または10に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項12】
前記第2の波長を中心とする前記スペクトル帯域幅は、約20nmから約500nmの間である、請求項9に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項13】
前記蛍光材料を前記第1の波長の前記
紫外光によって照明するように配置された紫外光源をさらに備える、請求項9から
12のいずれか一項に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項14】
前記紫外光
源は約100nmから約400nmの間
の範囲の異なる波長の紫外光を選択的に放出するための複数の発光ダイオード(LED)を含む、請求項
13に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項15】
前記複数のLEDの少なくとも1つは、365nm励起光源LEDを含む、請求項14に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項16】
前記蛍光材料からの前記再放出された光を除外するように構成された1つまたは複数のフィルタをさらに備え、前記1つまたは複数のフィルタは、1つまたは複数の吸収性光学フィルタおよび1つまたは複数の二色性光学フィルタのうちの1つである、請求項
13から15
のいずれか一項に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項17】
時計および/または環境センサと、
前記時計および/または前記環境センサからの1つもしくは複数の読み取り値に基づいて前記紫外光源の動作を制御するように構成されたプロセッサと、
をさらに備える、請求項
13から16のいずれか一項に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項18】
ハウジングをさらに備え、前記基板、前記節足動物固定化部材、および前記紫外光源は前記ハウジングに収容される、請求項
13から17のいずれか一項に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項19】
前記節足動物固定化部材は、前記基板に隣接する電撃グリッドである、請求項9から18のいずれか一項に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項20】
前記節足動物固定化部材は、前記基板の少なくとも一部を覆うように塗布された接着剤である、請求項9から18のいずれか一項に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項21】
前記接着剤は、前記基板の表面の約25パーセント(%)から約100%の間の部分を覆うように塗布される、請求項20に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項22】
前記蛍光材料は前記接着剤内に配設される、請求項20または21に記載の節足動物捕捉装置。
【請求項23】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容され
、異なる波長の紫外光を選択的に放出するための複数の発光ダイオード(LED)を含む紫外光源と、
前記ハウジングの表面上の蛍光材料であって、
前記蛍光材料が異なる発光スペクトルを同時に生成する異なるフルオロフォア材料を含み、前記紫外光源からの第1の波長の
前記紫外光を吸収し
、光を第2の波長で再放出するように配置され、前記第2の波長が前記第1の波長よりも長く、前記蛍光材料が、約10nmから約600nmの間の前記第2の波長を中心とする第1のスペクトル帯域幅で前記光を再放出するように配置され、前記紫外光源によって放出される前記光が、前記第1の波長の周りに第2のスペクトル帯域幅を有し、前記蛍光材料によって再放出される前記光の前記第1のスペクトル帯域幅が、前記紫外光源によって放出される前記光の前記第2のスペクトル帯域幅よりも大きい、蛍光材料と、
を備え、
前記蛍光材料及び前記紫外光源は、前記紫外光源から放出された光の励起スペクトルと前記蛍光材料によって再放出された光の
生成された異なる発光スペクトルとから構成された結合スペクトルを
選択的に生成
するように配置されている照明装置。
【請求項24】
前記
異なるフルオロフォア材料
の少なくとも1つは蛍光増白剤(OBA)を含む、請求項
23に記載の照明装置。
【請求項25】
前記第2の波長は約300ナノメートル(nm)から約600nmの間である、請求項23
または24に記載の照明装置。
【請求項26】
前記第2の波長を中心とする前記第1のスペクトル帯域幅は、約20nmから約500nmの間である、請求項23に記載の照明装置。
【請求項27】
前記紫外光源によって放出される前記第1の波長の前記
紫外光は、約100nmから約400nmの間である、請求項23から
26のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項28】
前記紫外光源によって放出される前記光の前記第2のスペクトル帯域幅は、約2nmから約100nmの間である、請求項
23に記載の照明装置。
【請求項29】
前記複数のLEDの少なくとも1つは、365nm励起光源LEDを含む、請求項23から28のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、節足動物管理に関し、より詳細には、節足動物誘引または忌避装置、節足動物捕捉装置、および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、蚊およびハエなどのある種の節足動物は、人間に有害である。これらの節足動物は、不快であるだけでなく、病気をまん延させることもわかっている。したがって、節足動物の数を管理するために節足動物誘引または忌避装置、節足動物捕捉装置、および照明装置を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、第1の態様では、本発明は、節足動物誘引または忌避装置を提供する。節足動物誘引または忌避装置は、基板と、基板に付着させた蛍光材料と、第1の波長の光によって蛍光材料を照明するように配置された紫外光源とを含む。蛍光材料は、第1の波長の光を吸収し、その光を第2の波長で再放出するように配置され、第2の波長は第1の波長よりも長い。
【0004】
第2の態様では、本発明は、節足動物捕捉装置を提供する。節足動物捕捉装置は、基板と、基板に付着させた蛍光材料と、蛍光材料によって誘引された1頭または複数の節足動物を固定化するように配置された節足動物固定化部材とを含む。蛍光材料は、第1の波長の光を吸収し、その光を第2の波長で再放出するように配置され、第2の波長は第1の波長よりも長い。
【0005】
第3の態様では、本発明は照明装置を提供する。照明装置は、ハウジングと、ハウジングに収容された紫外光源と、ハウジングの表面上の蛍光材料とを含む。蛍光材料は、紫外光源からの第1の波長の光を吸収し、その光を第2の波長で再放出するように配置され、第2の波長は第1の波長よりも長い。
【0006】
本発明の他の態様および利点は、一例として本発明の原則を示す添付の図面と共に以下の詳細な説明を検討することによって明らかになろう。
【0007】
次に、本発明の実施形態について、例としてのみ、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による節足動物誘引または忌避装置の概略断面図である。
【
図2】
図1の節足動物誘引または忌避装置の励起および発光スペクトルのグラフである。
【
図3】使用時の
図1の節足動物忌避装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の別の実施形態による節足動物誘引または忌避装置の概略斜視図である。
【
図5】
図4の節足動物誘引または忌避装置の電気的要素を示す概略ブロック図である。
【
図6A】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略断面図である。
【
図6B】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略断面図である。
【
図7A】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図7B】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図7C】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図7D】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図7E】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図7F】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図7G】本発明の実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による節足動物捕捉装置の概略上面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態による節足動物捕捉装置の概略斜視図である。
【
図10】本発明のさらに別の実施形態による節足動物捕捉装置の概略斜視図である。
【
図11A】本発明の一実施形態による照明装置の概略斜視図である。
【
図12A】本発明の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図12B】本発明の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図12C】本発明の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図12D】本発明の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図12E】本発明の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図12F】本発明の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図13】本発明の別の実施形態による照明装置の概略断面図である。
【
図14A】本発明のさらに別の実施形態による照明装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面に関連して以下に記載された詳細な説明は、本発明の現在好ましい実施形態の説明を意図したものであり、本発明が実施される場合がある形態のみを表すことを意図したものではない。本発明の範囲に包含されることが意図されるそれぞれに異なる実施形態によって同じまたは同等の機能が実施されてもよいことを理解されたい。図面において、同じ参照符号は同様の要素を示す。
【0010】
次に
図1を参照すると、一実施形態による節足動物誘引または忌避装置10が示されている。節足動物誘引または忌避装置10は、基板12と、基板12に付着させた蛍光材料14と、蛍光材料14を第1の波長18の光によって照明するように配置された紫外光源16とを含む。蛍光材料14は、第1の波長18の光を吸収し、その光を第2の波長20で再放出するように配置され、第2の波長20は第1の波長18よりも長い。
【0011】
節足動物における視覚機能は、2つの異なる器官、すなわち、単眼および複眼によって決定される。
【0012】
単眼は、光の強度を検出し、動きを開始するために他の身体部分の急速な刺激を開始する節足動物の神経節に直接接続されている。単眼は主として、節足動物における任意の走行性反応を制御する器官である。
【0013】
複眼は、節足動物が色を区別するのを可能にし、動きの処理および餌動物または捕食動物の検出にも関与する。複眼は、個眼と呼ばれる基礎的単位で構成される。それぞれに異なる節足動物は、それぞれに異なる数および個眼の構成を有する。各個眼は、表面におけるレンズと、その真下にある8つの光受容体ニューロン(R1~R8)とを含み、光受容体ニューロンは、台形/六角形状に配置され、それによって節足動物の複眼は独特の蜂の巣状をしている。各個眼は、光の特定の波長を吸収するいくつかの光色素で構成される。光色素は、ロドプシン(Rh)と呼ばれ、個眼における各光受容体内に光の特定の波長を吸収する。一例として、Rh1は波長が490ナノメートル(nm)および360nmの光を吸収し、Rh4は波長が375nmの光を吸収し、Rh3は波長が345nmの光を吸収する。光の特定の波長の光子が個眼に進入すると、細胞内反応が生じ、光情報伝達と呼ばれるプロセスにおいて節足動物の神経系への電気信号が生成される。光情報伝達プロセスは、光の光子の波長に応じた生化学反応である。節足動物内に存在するロドプシン色素および存在するレンズに応じて、各個眼は、受容された光の波長に応じて光情報伝達のレベルを変化させることができる。
【0014】
節足動物誘引または忌避装置10は、節足動物のスペクトル感度を利用して、節足動物を誘引するための正の走行性反応を生じさせるかまたは節足動物を忌避させるための負の走行性反応を生じさせる。節足動物誘引または忌避装置10は、節足動物捕捉装置内に配設されてもよい。
【0015】
基板12は、たとえば、紙、段ボール、木材、コルク、プラスチック(たとえば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィンなど)、織布または不織布(たとえば、綿、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロンなど)、金属(たとえば、アルミニウム、鉄など)、ガラス、溶融シリカ、およびセラミックなどの任意の固形材料で作られてもよい。基板12は、目標節足動物を誘引するためにたとえば、黄色、黒色、白色、および/または灰色などの様々な色で設けられてもよい。代替実施形態では、基板12の1つまたは複数の表面は、節足動物を忌避させ、ユーザが任意の所与の位置で節足動物の数を減らすのを可能にする色を備えてもよい。
【0016】
蛍光材料14は、光の光子を吸収し、エネルギーを得て、励起状態に入り、その後、得られたエネルギーを失い解放するために光の代替光子を再放出することにより、紫外光源16によって放出された光に対してストークスシフトを生じさせる。ストークスシフト効果は、蛍光材料14の励起スペクトルにおける最大波長と発光スペクトルにおける最大波長との差として測定されてもよい。シフトのサイズは、蛍光材料14の分子構造に応じて異なってもよく、数ナノメートルから数百ナノメートルを超える範囲であってもよい。それに応じて、各励起波長の「ストークスシフト」は異なってもよい。蛍光材料14によって再放出される光の第2の波長は、約300ナノメートル(nm)から約600nmの間であってもよい。
【0017】
蛍光材料14は、フルオロフォア材料を含んでもよい。フルオロフォア材料は、特定の波長の光エネルギーを吸収し、それよりも長い波長の光を再放出する。したがって、フルオロフォア材料は、波長のあるスペクトルを照射されると、様々な振動エネルギーレベルの励起状態を存在させる新しい範囲の遷移全体を発生させる。フルオロフォア材料の吸収スペクトルと励起スペクトルは異なるが、各波長においてスペクトル強度が異なる平滑広スペクトル帯域幅光源を得るために重なり合うことがある。特定の節足動物群について放出される光の一意のスペクトルを生成するようにフルオロフォア材料を変形し、変更し、整合させてもよい。
【0018】
フルオロフォア材料は蛍光増白剤(OBA)を含んでもよい。「蛍光増白剤」という用語は、電磁波スペクトルの紫外領域または紫色領域(約340nmから約370nmの間)の光を吸収し、蛍光によって青色領域(約420nmから470nmの間)の光を再放出する任意の化学化合物を指す。蛍光増白剤は、たとえば、紙またはプラスチックを「増白」するために使用されるOBAなどの任意の市販のOBAであってもよい。蛍光材料14は、1つまたは複数の蛍光増白剤を含んでもよく、それにより、紫外光源16によって励起されたときに1つまたは複数の異なる波長を生成する能力が蛍光材料14に与えられる。紫外光源16によって励起されたときに蛍光材料14によって生成されるこれらの単一または複数の発光波長は、個々の種または様々な種の節足動物における特定の最適な正の走行性波長と一致するように選択されてもよい。
【0019】
発光面は、基板12と蛍光材料14を組み合わせることによって設けられてもよい。蛍光材料14は、基板12上に表面被覆されてもよく、基板12と共に成形されてもよく、基板12に埋め込まれてもよく、基板12上に印刷されてもよく、基板12上に接着されてもよく、または基板12と共に製造されてもよい。
【0020】
紫外光源16は、蛍光材料14を有する基板12の発光面上に一様な照射を行うための励起光源として働く。紫外光源16は、基本波長においてピークスペクトル強度を有する狭スペクトル帯域幅光を放出してもよい。1つまたは複数の実施形態では、紫外光源16は、波長が約100nmから約400nmの間の光を放射してもよい。したがって、第1の波長は、約100nmから約400nmの間であってもよい。紫外光源16は、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)であってもよい。有利には、これによって、節足動物誘引または忌避装置10の耐久性が強化され、節足動物誘引または忌避装置10が1つまたは複数のLEDを交換する必要なしに数千時間働くことが可能になる。各LEDは、それぞれに異なる波長および/またはスペクトル強度で光を放出するように独立的に調整されてもよい。
【0021】
次に
図2を参照すると、紫外光源16から放出された光の励起スペクトルと蛍光材料14によって再放出された光の発光スペクトルとから構成された結合スペクトルが示されている。本実施形態では、紫外光源16はスペクトル帯域幅が約9nmの365nm励起光源LEDである。代替実施形態では、紫外光源16は、約2nmから約100nmの間の発光波長または第1の波長を中心とするスペクトル帯域幅を有する光を放出してもよい。スペクトル帯域幅は、放射スペクトル強度がその最大値の2分の1以上である波長間隔として定義され、スペクトルの範囲の程度を与える。第2の波長を中心とする蛍光材料14によって再放出される光のスペクトル帯域幅は、約10nmから約600nmの間であってもよい。1つまたは複数の実施形態では、第2の波長を中心とするスペクトル帯域幅は約20nmから約500nmの間であってもよい。
【0022】
図2を見るとわかるように、紫外光源16は、より波長の短い(より周波数またはエネルギーの高い)光を蛍光材料14上に放射し、次いで、蛍光材料14がより波長の長い(より周波数またはエネルギーの低い)光を放出する。このようにして、蛍光材料14によってストークスシフトが生じる。放射スペクトルのスペクトル強度は、単位周波数または波長当たり放射強度として定義され、発光スペクトルによって示されるように再放出されるときにも低下する。発光スペクトルの方がスペクトル強度が低くなるのは、蛍光材料14によって励起エネルギーが吸収されるからであり、したがって、発光スペクトルは、スペクトル強度がより低く、スペクトル帯域幅がより大きくなる。これによって、光の異なる波長の拡散スペクトルが、天然の節足動物誘引物質または忌避物質を模倣するように紫外光源16からの放射スペクトルと蛍光材料14からの発光スペクトルを組み合わせる。有利には、これによって、目標節足動物の走行性反応が強まり、節足動物のスペクトル感度を最大限に利用する助けになる。
【0023】
したがって、再び
図1を参照すると、狭スペクトル帯域幅励起光源LED16を使用して、基板12上に塗布された蛍光材料14上に照射することよって、光の結合スペクトルが生成されてもよい。励起光スペクトルは、蛍光材料14によって部分的に吸収され、次いで、ストークスシフト効果に起因して、蛍光材料14がより広いスペクトル帯域幅を有する光の異なるスペクトルを放出する。
図1を見るとわかるように、本実施形態では、紫外光源16から照射される励起スペクトルと蛍光材料14によって再放出される発光スペクトルはどちらも外側に照射されてよい。励起スペクトルと発光スペクトルで構成された結合スペクトルは、様々な種の目標節足動物を誘引するかまたは忌避させるために光の広い帯域幅スペクトルを形成する。結合スペクトルは、波長が約240nmから約600nmの間であり、スペクトル帯域幅が約20nmから約500nmの間であってもよい。
【0024】
次に
図3を参照すると、節足動物忌避装置10の適用例が示されている。図示の実施形態では、節足動物忌避装置10は、植物22を栽培するための人工照明を施すために植物22の真上に配置される。したがって、節足動物忌避装置10は、人工照明によって植物22を栽培し、同時に、光の結合スペクトルによって節足動物を忌避させるために使用されてもよい。植物22から節足動物忌避装置10までの距離、スペクトル帯域幅、およびスペクトル強度は、たとえば、栽培段階、開花段階、節足動物の負走行性などの特定の植物要件に基づいて異なってもよい。負走行性機能を有する追加の蛍光面24は、負走行性環境を強化し、植物22の葉、花、果実、および茎の上部と下部の両方が確実に負走行性発光波長によって照明されることを確実にするために植物22の下方および/または周りに配置されてもよい。有利には、このことは、節足動物による植物の損傷を低減させる助けになる。追加の蛍光面24は、植物の栽培に影響を与えず、開花段階の間に昆虫の授粉が必要になったときには取り外され、花が首尾よく授粉された後に再配置されてもよい。
【0025】
次に
図4を参照すると、別の実施形態による節足動物誘引または忌避装置30が示されている。本実施形態の節足動物誘引または忌避装置30は、基板12の発光面の一様な照射が施されるように、紫外光源32が、支持構造34上に取り付けられた複数の狭スペクトル帯域幅励起光源LEDの形に設けられる点が前述の実施形態と異なる。
【0026】
基板12の発光面は、昆虫の誘引または忌避を強化するために、たとえば、湾曲面、球、立方体、または錐体などの3次元表面の形に組み立てられてもよく、金属板、金属棒、または金属チューブから作られてもよい。紫外光源32は、基板12の発光面上に3次元での投影を施すように配置されてもよい。基板12の発光面は、励起光源32と実質的に向かい合うようにまたは励起光源32に実質的に垂直に向けられてもよい。
【0027】
適用分野に応じて、節足動物の正または負の走行性反応のいずれかを最大限にするために特定の照明構成が使用されてもよい。各励起光源LED 32は、特定の用途向けに選択されてもよく、互いに適切な距離だけ離間されてもよい。代替実施形態では、励起光源LED 32は、格子構成に設けられてもよい。ストークスシフトを開始するように照明構成を作製することによって、光の特定の波長が目標種の捕捉または忌避を最大限に向上させるようにカスタム化されてもよい。励起光源LED 32の選択は、目標節足動物に対する誘引効果または忌避効果を最大限に向上させるために、たとえば、LEDタイプ、スペクトル強度、スペクトル帯域幅、および視野角などの因子によって行われてもよい。各励起光源LED 32は、様々な種の目標節足動物を誘引するかまたは忌避させるためにそれぞれに異なる光の波長および/またはそれぞれに異なるスペクトル帯域幅を基板12の発光面に放出するように選択されてもよい。LED 32は、結合スペクトルが全方向であるように基板12の発光面の真上に取り付けられるかまたは発光面に対して斜めに取り付けられてもよい。
【0028】
紫外光源32のスペクトル強度は、LEDタイプ以外では、より高い電流によって光のより高いスペクトル強度が生成されるようにLEDを通過する電流(測定単位はミリアンペア)によって決定されてもよい。個々のLED 32のスペクトル強度は、各LED 32を流れる電流を別々に調整することによって互いに別々に調整されてもよい。
【0029】
さらに、必要に応じてスペクトル強度を低減させるように、蛍光材料14から再放出された光を除外するように構成された1つまたは複数のフィルタ36が設けられてもよい。1つまたは複数のフィルタ36は、誘引捕捉装置において忌避光を除去するかまたは忌避製品から誘引光を除去するための1つもしくは複数の吸収性光学フィルタまたは1つもしくは複数の二色性光学フィルタであってもよい。
【0030】
代替実施形態では、支持構造34は、基板12の発光面から、実質的に剛性を有する位置におけるそれぞれに異なる距離および角度に各LED 32を保持するように構成されてもよい。照射角度は、最大結合光スペクトルを生成するように調整されてもよい。一実施形態では、紫外光源16は、垂直な横材上に任意の角度に取り付けられてもよい。
【0031】
当業者には諒解されるように、節足動物誘引または忌避装置30のサイズ要件に応じてそれぞれに異なる構成およびサイズの紫外光源32および支持構造34が使用されてもよい。
【0032】
次に
図5を参照すると、
図3の節足動物誘引または忌避装置30の電気的要素が示されている。
図4を見るとわかるように、節足動物誘引または忌避装置30は、時計38および/または環境センサ40と、時計38および/または環境センサ40からの1つもしくは複数の読み取り値に基づいて紫外光源32の動作を制御するように構成されたプロセッサ42とを含んでもよい。節足動物誘引または忌避装置30は、紫外光源32に電力を供給するように構成された電源44と、プロセッサ42に結合された不揮発性メモリ46と、紫外光源32のスペクトル強度を調整するように構成された1つもしくは複数の定電流ドライバ48とをさらに含んでもよい。
【0033】
節足動物誘引または忌避装置30の動作および制御は、リアルタイム時計38および環境センサ40に接続されたマイクロプロセッサ42を介して管理されてもよい。リアルタイム時計38は、1日のそれぞれに異なる時間に活動するそれぞれに異なる節足動物に適応するようにスペクトルならびにそのスペクトル帯域幅およびスペクトル強度を変更するようにプロセッサ42と協働してもよい。同様に、環境光センサ40は、それぞれに異なる環境光条件において活動するそれぞれに異なる節足動物に適応するようにスペクトルならびにそのスペクトル帯域幅およびスペクトル強度を変更するようにプロセッサ42と協働してもよい。プロセッサ42は、リアルタイム時計38からの情報に基づいて励起光源LED 32のスペクトル強度、励起光源LED 32のスペクトル、オンに切り替える励起光源LED 32の数を連続的に調整し、環境光および1日の時間に基づいて励起光源LED 32の電力使用状況を管理するように構成されてもよい。動作タイミングシーケンスは、不揮発性メモリ46に記憶されてもよい。
【0034】
次に
図6Aを参照すると、一実施形態による節足動物捕捉装置60が示されている。節足動物捕捉装置60は、基板62と、基板62に付着させた蛍光材料64と、蛍光材料64によって誘引される1頭または複数の節足動物を固定化するように配置された節足動物固定化部材66とを含む。蛍光材料64は、第1の波長の光を吸収し、その光を第2の波長で再放出するように配置され、第2の波長は第1の波長よりも長い。
【0035】
本実施形態では、節足動物固定化部材66は、基板62の少なくとも一部を覆うように塗布された接着剤である。したがって、本実施形態の基板62は、蛍光材料14が塗布される粘着板であってもよく、たとえば、紙、段ボール、木材、コルク、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどのプラスチック、綿、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロンなどの織布および不織布、アルミニウム、鉄などの金属、ガラス、溶融シリカ、セラミックなど、ならびに上記の材料から作られた布を含む固体表面などの任意の固体表面を含んでもよい。基板62は、平面状表面を有するように示されているが、代替実施形態では、基板62は湾曲面を有するかまたは3次元構造を形成してもよい。基板62は、目標節足動物を誘引するようにたとえば、黄色、黒色、白色、および/または灰色などの様々な色で設けられてもよい。
【0036】
接着材66は、基板の表面の約25パーセント(%)から100%の間の部分を覆うように塗布されてもよい。接着剤66はUV耐性を有してもよい。有利には、接着剤66はUV光源から放出される強い紫外(UV)光濃度にさらされることがあるので、UV耐性は接着剤66がUV暴露に伴う劣化に耐えるのを助ける。接着剤66は、波長が約200nmから約400nmの間のUV光に対する耐性を有してもよい。
【0037】
蛍光材料64は、目標節足動物が紫外(UV)光源を照射されたときに目標節足動物に正の走行性反応を生じさせる視覚的誘引物質層として働く。より具体的には、蛍光材料64は、UV光源の向きにかかわらず特定のUV光源にさらされたときに「ストークスシフト」の現象を示す。視覚的誘引物質層は、UV光を照射されたときに、UV光を吸収し、目標節足動物を誘引して引き寄せるために食虫植物、たとえばサラセニアによって使用される天然の視覚的誘引物質を模倣した光のスペクトルを再放出し、それによって目標節足動物に正の走行性反応を開始させ、節足動物を基板62の接着面66上に引き寄せ、節足動物はそこに固定化される。したがって、蛍光材料64によって再放出される光の第2の波長は、約300ナノメートル(nm)から約600nmの間であってもよい。蛍光材料64は、光を約10nmから約600nmの間の第2の波長を中心とするスペクトル帯域幅において再放出するように配置されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、第2の波長を中心とするスペクトル帯域幅は約20nmから約500nmの間であってもよい。固定化された節足動物は、最終的に基板62の接着面66上で死に、したがって、一般環境から除去される。
【0038】
蛍光材料は、上述のようにフルオロフォア材料を含んでもよい。フルオロフォア材料は、光励起時に光を再放出することがある蛍光化学化合物であってもよい。フルオロフォアは一般に、いくつかの結合芳香族基、またはいくつかのπ結合を含む平面分子もしくは環状分子を含む。それぞれに異なるフルオロフォア材料のいくつかの組合せが視覚的誘引性接着基板上で同時に使用されてもよく、それによって、それぞれに異なる発光スペクトルが同時に生成される。節足動物の地理的なばらつきはそれぞれに異なる正の走行性反応によって生じるので、いくつかの異なるフルオロフォア材料を使用すると、発光波長の目標とされる組合せが地理的に異なる節足動物に同時に与えられる。
【0039】
フルオロフォア材料は、上述のように蛍光増白剤を含んでもよい。
【0040】
蛍光材料64は、基板62上に印刷されてもよく、基板62上に被覆されてもよく、基板62を覆うように積層されてもよく、基板62によって覆われてもよく、基板62を覆うようにテクスチャ化されてもよく、基板62を覆うようにパターン化されてもよく、または基板62と共に製造されてもよい。
【0041】
次に
図6Bを参照すると、別の実施形態による節足動物捕捉装置80が示されている。本実施形態の節足動物捕捉装置60は、蛍光材料64が接着剤66よりも前に基板62に塗布される点で前述の実施形態と異なる。
【0042】
2つの前述の実施形態では別々の層として設けられるように図示されているが、代替実施形態では、蛍光材料64が接着剤66内に配設されてもよく、必要に応じて基板62の一部に塗布されてもよい。たとえば、蛍光材料64は、フルオロフォアナノ粒子または化合物の形であってもよく、基板62を被覆するために使用される接着剤66内に蛍光材料64を混合、埋め込み、含浸、または分散させてもよい。
【0043】
次に
図7A~
図7Gを参照すると、蛍光材料64および接着剤66は、図示のように基板62の表面上に選択的に被覆されてもよい。
【0044】
図7Aに示す実施形態では、蛍光材料64が基板62上に直接塗布され、接着領域66を囲む。この実施形態では、接着剤66は基板62の表面の少なくとも大部分を被覆し、残りの部分は蛍光材料64によって占有され、蛍光材料64は接着剤66を囲む。
【0045】
図7A~
図7Gは、基板62上の蛍光材料64および接着剤66の例示的なパターン化された被覆領域を示す。
図7A~
図7Gを見るとわかるように、蛍光材料64の様々なパターンは、目標節足動物を誘引し、目標節足動物に正の走行性反応を生じさせる場合があるそれぞれに異なるパターンを割り当てるように対称パターンまたは非対称パターンを形成するように向きを定められてもよい。
【0046】
次に
図8を参照すると、別の実施形態による節足動物捕捉装置90が示されている。本実施形態の節足動物捕捉装置90は、基板62が、節足動物捕捉装置90をそれぞれに異なるサイズに容易に分割するための複数の穿孔92を含むという点で前述の実施形態と異なる。代替実施形態では、適用要件に応じて基板62に穿孔92の様々な組合せが設けられてもよい。
【0047】
節足動物捕捉装置60、80、90は、節足動物に正の走行性反応を生じさせ、節足動物を誘引して接着剤66に接触させ、節足動物を接着剤66上に固定化し、最終的にプロセスにおいて節足動物を殺す節足動物誘引接着板として働いてもよい。
【0048】
次に
図9を参照すると、さらなる実施形態による節足動物捕捉装置100が示されている。本実施形態の節足動物捕捉装置100は、節足動物捕捉装置100が紫外(UV)光源102とハウジング104とを含むという点で前述の実施形態と異なる。紫外(UV)光源102は、第1の波長の光によって蛍光材料64を照明するように配置される。基板62、節足動物固定化部材66、および紫外光源102はハウジング104に収容される。
【0049】
本実施形態では、接着面66は、接着面66に接触するパターン化された発光面64を形成するように蛍光材料64によってパターン化され、それによって、接着面と発光面が、正の走行性機能と固定化機能の両方を有する統合面として組み合わされる。
【0050】
節足動物捕捉装置100は、効果的な節足動物捕捉率を得るために光の結合スペクトルを使用する。紫外(UV)光は、多数の節足動物にとって重要な移動上の視覚的手掛かりである。節足動物の複眼におけるロドプシン色素によって光の特定の波長および強度が吸収され、これによって、節足動物の神経系において電気信号が開始する。神経系が刺激されると、節足動物の脚または翼において筋肉の移動が開始し、節足動物を光源に移動させる(正の走行性)。節足動物捕捉装置100は、紫外光源102を利用して、節足動物を節足動物捕捉装置100内に誘引するために正の走行性反応を開始させ、節足動物は最終的に、節足動物捕捉装置において殺される場合がある。パターン化された発光面64は、UV光を照射されると、節足動物に対する光の自然に生じる誘因性波長を模倣した光のスペクトルを放出することによって目標節足動物に、より強い正の走行性反応を生じさせる。
【0051】
紫外光源102は、基板62上のパターン化された発光面64を一様に照射するように節足動物捕捉装置100内に配置された複数のUV光源であってもよい。各UV光源102は、それぞれに異なる波長および/またはスペクトル強度において光を放出するように別々に調整されてもよい。本実施形態では、紫外光源102は、それぞれに異なる種の目標節足動物を誘引するかまたは忌避させるために使用される特定のスペクトル強度およびスペクトル帯域幅をもたらすように適応されたLEDアレイであってもよい。紫外光源によって放出された第1の波長の光は、約200nmから約400nmの間であってもよい。蛍光材料64は、紫外光源102からの光の狭スペクトル帯域幅の、光の拡張された広帯域スペクトルへの特定のスペクトル変換を行う。このように、節足動物捕捉装置100は、目標節足動物のより高い誘引率を実現するために光の拡張されたスペクトルによって照明される。節足動物捕捉装置100は、紫外光源102を制御するために関連する電子機器を備えてもよい。
【0052】
ハウジング104は、節足動物が節足動物捕捉装置100内の発光面64を見つけるのを可能にする外側を向いた開口部を含む。開口部は、光の結合スペクトルを外側に発光面64から離れた位置に投影するのを容易にし、節足動物による光の結合スペクトルの視認性を向上させる。ハウジング104は、プラスチック材料または金属材料で作られてもよい。有利には、節足動物捕捉装置100をハウジングに収容すると、節足動物捕捉装置100の屋内または屋外での使用への耐久性がより高くなる。
【0053】
本実施形態では、節足動物捕捉装置100内の忌避光を除去するために、蛍光材料64から再放出された光を除外するように構成されたフィルタ106が、パターン化された発光面64と節足動物による第1の視覚化との間に設けられてもよい。フィルタ106は、節足動物捕捉装置100内の忌避光を除去するための吸収性光学フィルタまたは二色性光学フィルタであってもよい。
【0054】
次に
図10を参照すると、別の実施形態による節足動物捕捉装置120が示されている。本実施形態の節足動物捕捉装置120は、本実施形態の節足動物固定化部材66が基板62に隣接する電撃グリッドであるという点で、前述の実施形態と異なる。電撃グリッド66は、蛍光材料64を支持する発光面の前または後ろに配置されてもよい。本実施形態では、電撃グリッド66は発光面64の前に配置される。電撃グリッド66が発光面64の後ろに配置されるとき、基板62は、節足動物が電撃グリッド66へと通過するのを可能にするための複数の空隙(図示せず)を備えてもよく、その場合、節足動物は、電撃グリッド66に接触したときに固定化される。基板62の空隙は、グリッドパターン化されるか、ルーバー状に形成されるか、掘削されるか、または成形されてもよい。パターン化された発光面64は、節足動物の視覚処理に一致するように垂直に配置されてもよい。
【0055】
発光面64は、励起光源102に対して透明、半透明、または不透明なポリマーから作られてもよい。
【0056】
図9および
図10に示す節足動物捕捉装置100および120は、時計および/または環境センサと、時計および/または環境センサからの1つもしくは複数の読み取り値に基づいて紫外光源102の動作を制御するように構成されたプロセッサとを含んでもよい。
【0057】
節足動物が節足動物捕捉装置100および120に進入すると、節足動物は逃げることができず、したがって、一般環境から除去される。節足動物捕捉装置100および120は垂直方向または水平方向に取り付けられるかまたは吊り下げられてよい。
【0058】
次に
図11Aおよび
図11Bを参照すると、一実施形態による照明装置140が示されている。照明装置140は、ハウジング142と、ハウジング142に収容された紫外光源144と、ハウジング142の表面上の蛍光材料146とを含む。蛍光材料146は、紫外光源144から第1の波長148の光を吸収し、その光を第2の波長150で再放出するように配置され、第2の波長150は第1の波長148よりも長い。
【0059】
紫外光源144からの第1の波長148の励起光は蛍光材料146によって部分的に吸収され、次いで、蛍光材料146がその光をスペクトル帯域幅がより広く(「ストークスシフト」効果)スペクトル強度が部分的に低くなる第2の波長150で放出する。励起スペクトル148と発光スペクトル150の結合スペクトルは、それぞれに異なる種または属の目標節足動物を誘引するかまたは忌避させるように光の広帯域スペクトルを形成する。したがって、照明装置140は、スペクトル変換材料146と相互作用して節足動物に所望の走行性反応を生じさせるように紫外光源144からのUV光を操作することによって所望のスペクトル強度およびスペクトル帯域幅で拡張された光スペクトルを生成する。照明装置140は、節足動物を誘引するかまたは忌避させるために使用される従来の蛍光UV管または他のランプと置き換えるために使用されてもよい。
【0060】
本実施形態におけるハウジング142は、第1のエンドキャップ152を備える第1の端部と、第2のエンドキャップ154を備える、第1の端部の反対側の第2の端部とを有する中空の管状ハウジングであってもよい。エンドキャップ152および154の各々は、エンドキャップ152および154の各々から延びる互いに平行な蛍光照明器具電気レセプタクルコネクタ156の対を備えてもよく、電気レセプタクルコネクタ156は、蛍光照明器具の互いに向かい合う電気レセプタクル内に設置されるように構成されてもよい。ハウジング142は、半透明または透明であってもよく、可撓性の飛散防止材料で作られてもよい。ハウジング142は、励起光源144の前に配置されており、結合光スペクトルの視認性の方向が励起光源144からの励起光の方向となる密閉照明システムを形成する。
【0061】
本実施形態における紫外光源144は、複数のUV LEDであってもよく、各UV LEDが電気相互接続されるように管状のハウジング142に沿って配設されたプリント基板(PCB)158上に取り付けられている。UV LED 144は、互いに電気的に接続されるとともに、第1のエンドキャップ152および第2のエンドキャップ154から延びる電気レセプタクルコネクタ156と電気的に接続されている。電子LEDドライバ(図示せず)が、管状のハウジング142の第1のエンドキャップ152および第2のエンドキャップ154の各々を備えてもよい。各UV LED 144は、一様な照射を施し、かつハウジング142の照明面上に投影されるUV光の重なりを最小化するように、所定の距離および角度に配置されてもよい。たとえば、各UV LED 144は、ハウジング142上にUV照明を一様に照射するように直線配列またはマトリックス状に配置されてもよく、UV照明は、3次元において一様にハウジング142の照明面上に投影される。各UV LED 144は、それぞれに異なる波長および/またはスペクトル強度で光を放出するように別々に調整されてもよい。紫外光源144によって放出される第1の波長148の光は、約100nmから約400nmの間であってもよい。紫外光源144によって放出される光は、約2nmから約100nmの間の第1の波長を中心とする第2のスペクトル帯域幅を有してもよい。UV LED 144は、必要なスペクトル強度でUV LED 144を駆動するのに適した内部または外部電力変換システムからの電力によって駆動されてもよい。
【0062】
蛍光材料146は、紫外光源144からの紫外(UV)光を照射されると、紫外光源144からの紫外光を部分的に吸収し、元の紫外光源144からのものとは異なる波長の光150の部分的に変換されたスペクトルを放出する。蛍光材料146に応じて、放出される第2の波長は約300ナノメートル(nm)から約600nmの間であってもよい。蛍光材料146は、約10nmから約600nmの間の第2の波長を中心とする第1のスペクトル帯域幅で光を再放出するように配置されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、第2の波長を中心とする第1のスペクトル帯域幅は約20nmから約500nmの間であってもよい。蛍光材料146は、上述のようにフルオロフォア材料を含んでもよい。フルオロフォア材料は、上述のように蛍光増白剤(OBA)を含んでもよい。有利には、ハウジング142の表面上に蛍光材料146を塗布すると、節足動物を誘引する波長の結合スペクトルを生成する助けになる。UV LED 144からの狭スペクトル波長は、それぞれに異なる種または属の目標節足動物を誘引するかまたは忌避させるように照明装置140から光の拡張され広帯域化されたスペクトルをもたらすように「ストークスシフトされ」変換されてもよい。
【0063】
蛍光材料146は、化合物、材料、ナノ粒子、または生物活性材料から製造されてもよく、ハウジング142上に表面被覆されてもよく、成形されてもよく、含浸されてもよく、被覆されてもよく、埋め込まれてもよく、印刷されてもよく、接着されてもよく、または取り付けられてもよい。
【0064】
図示されていないが、プリント基板158は、回路パッドを有する基板を含んでもよく、ハウジング142に嵌るように形作られてもよい。1つまたは複数の実施形態では、プリント基板158は可撓性のストリップの形であってもよい。接続点電極を介してプリント基板158にエネルギーが加えられてもよい。プリント基板158は、プリント基板158によって発生した熱を放散させるためにヒートシンクを備えてもよい。
【0065】
次に
図12A~
図12Fを参照すると、照明装置140のそれぞれに異なる構成の断面図が示されている。
図12A~
図12Fを見るとわかるように、照明装置140のそれぞれに異なる構成は、それぞれに異なる形状のハウジングまたはカバー142と、それぞれに異なる数および配置の紫外光源144ならびにプリント基板(PCB)158とを有してもよい。
【0066】
次に
図13を参照すると、別の実施形態による照明装置170が示されている。本実施形態の照明装置170は、照明装置170が垂直方向に垂れ下がる管状ランプの形をとり、紫外光源144が、管状の透明ハウジング142の各端部に配設された紫外光発光ダイオード(LED)の形をとるという点で前述の実施形態と異なる。第1のエンドキャップ152および第2のエンドキャップ154はハウジング142のそれぞれの端部に配設される。ハウジング142は中空形態であってもまたは中実形態であってもよい。UV LED 144は、第1のエンドキャップ152および第2のエンドキャップ154の各エンドキャップ上に配設されたプリント基板158上に取り付けられてもよい。第1のエンドキャップ152および第2のエンドキャップ154は、互いに電気的に接触するとともに、第1のエンドキャップ152から延びる電気レセプタクルコネクタ156に電気的に接触している。第1のエンドキャップ152および第2のエンドキャップ154の少なくとも一方にLEDドライバ(図示せず)が含まれてもよい。
【0067】
次に
図14Aおよび
図14Bを参照すると、さらに別の実施形態による照明装置190が示されている。本実施形態の照明装置190は、照明装置190がライトガイドパネルの形をとるという点で前述の2つの実施形態と異なる。ライトガイドパネル190は、実質的に垂直に、かつハウジング142の照明面から離れた位置に配置された複数のUV LED 144を収容するための表面を含む。ハウジング142は、第1の部分と、第1の部分と反対側の第2の部分とを含み、第1の部分および第2の部分は、第1の端部152と第2の端部154との間に延びる。UV LED 144は、プリント基板(PCB)158上の第1の端部152および第2の端部154に取り付けられてもよく、透明なハウジング142を通って投影を施すように向きを定められてもよい。ライトガイドパネル190は中空形態であってもまたは中実形態であってもよく、ハウジング142はUV光を吸収せずに効率的に透過させる、UV光に対する透過率が高い光透過フッ素化エチレンプロピレン(FEP)または同様のポリマーから作られてもよい。1つまたは複数の実施形態では、ハウジング142は、UV光にさらされたときに劣化せずまたは変化しないプラスチック材料で作られてもよい。
【0068】
前述の実施形態を見るとわかるように、ハウジング142は、使用要件に応じてそれぞれに異なる形状および構成を有してもよい。節足動物の誘引を強化するために、ハウジング142は、丸形、楕円形、方形、矩形、または多角形状のチューブの形に構成されてもよい。
【0069】
上記の説明から明らかなように、本発明は、誘引率および忌避率が改善された節足動物誘引または忌避装置、節足動物捕捉装置、および照明装置誘引または忌避装置を提供する。本発明の昆虫捕捉装置または忌避面は、表面上の蛍光材料から反射を生じさせるように配置されたスペクトルが狭帯域であり波長がより短い一連の2つ以上の光源を利用してもよい。反射面は、光源波長を吸収し、光源波長とは異なる新しい範囲の発光波長を再放出する。励起スペクトルと発光スペクトルの得られる組合せは、重なり合う拡張されたスペクトル範囲を形成するように組み合わされており、すべてのスペクトル範囲が、より波長の短い励起光源から得られる。励起光源と得られる発光蛍光面の両方が、発光面上に視認される光の誘引(または忌避)スペクトルの所望の組合せを生成するように操作されてもよい。このように「ストークスシフト」効果を利用することは、節足動物の走行性反応に対して一意であり、目標節足動物に提示される可視波長の混合物を作成するように適切な光源波長および発光蛍光材料を選択することによって制御されてもよい。同様に、本発明の結合照明システムは、捕捉装置または忌避製品に組み込むようにスペクトル強度、誘引(もしくは忌避)のゾーン、放出された光の波長、またはそれらの組合せを変更するように調整されてもよい。それぞれに異なるより波長の短い光源が、それぞれに異なる波長、スペクトル強度、またはそれらの組合せを放出し、より広いスペクトル帯域幅を形成する結合発光および放射スペクトルが得られるように、より波長の短い各光源が互いに別々に調整されてもよい。さらに、蛍光材料を特定の節足動物または節足動物群に対して選択的な一意の結合発光および放射スペクトルを生成するようにより波長の短い光源を用いて変形し、変更し、整合させてもよい。有利には、本発明では、特定の節足動物の眼におけるロドプシン吸収波長と一致するように「ストークスシフト」効果に関連する吸収および発光スペクトルを操作することによって、ある種または属の節足動物に特定的に正または負の走行性反応を開始させることができ、それにより、目的節足動物の天然の視覚誘引物質を模倣することによって目標節足動物の捕捉率または忌避率を向上させる。さらに有利には、本発明では、「ストークスシフト」効果を使用して目標種の捕捉を最大限に向上させるように光のスペクトル帯域幅およびスペクトル強度がカスタム化されてもよい。
【0070】
本発明の好ましい実施形態を図示し説明したが、本発明がこれらの実施形態のみに限定されないことが明らかになろう。当業者には、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱せずに多数の修正例、変更例、変形例、置換例、および均等例が明らかになろう。
【0071】
さらに、文脈に応じて明確に必要である場合を除き、説明および特許請求の範囲全体にわたって、「備える」、「備えている」などの語は、排他的または網羅的な意味ではなく包含的な意味、すなわち、「限定はしないが含む」の意味で解釈されたい。
【符号の説明】
【0072】
10 節足動物誘引または忌避装置
12 基板
14 蛍光材料
16 紫外光源
18 第1の波長
20 第2の波長
22 植物
24 蛍光面
30 節足動物誘引または忌避装置
32 紫外光源、励起光源、LED
34 支持構造
36 フィルタ
38 時計
40 環境センサ、環境光センサ
42 プロセッサ
44 電源
46 不揮発性メモリ
48 定電流ドライバ
60 節足動物捕捉装置
62 基板
64 蛍光材料、発光面
66 節足動物固定化部材、接着剤、接着面、接着領域、電撃グリッド
80 節足動物捕捉装置
90 節足動物捕捉装置
92 穿孔
100 節足動物捕捉装置
102 紫外(UV)光源、励起光源
104 ハウジング
106 フィルタ
120 節足動物捕捉装置
140 照明装置
142 ハウジング
144 紫外光源、励起光源、UV LED
146 蛍光材料、スペクトル変換材料
148 第1の波長、励起スペクトル
150 第2の波長、発光スペクトル
152 第1のエンドキャップ、第1の端部
154 第2のエンドキャップ、第2の端部
156 電気レセプタクルコネクタ
158 プリント基板
170 照明装置
190 照明装置、ライトガイドパネル