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特許7583031種子および肥料用の放出制御型生分解性コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】種子および肥料用の放出制御型生分解性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/30 20200101AFI20241106BHJP
   C05G 3/60 20200101ALI20241106BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20241106BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20241106BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20241106BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241106BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241106BHJP
   A01C 1/06 20060101ALI20241106BHJP
   A01C 21/00 20060101ALI20241106BHJP
   A01M 17/00 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 67/04 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C05G5/30 ZBP
C05G3/60
A01N25/12
A01N25/10
A01P13/00
A01P1/00
A01P3/00
A01C1/06 Z
A01C21/00 Z
A01M17/00 B
C08L67/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022515972
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020033947
(87)【国際公開番号】W WO2020242872
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】62/852,440
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523348656
【氏名又は名称】ダニマー・アイピーシーオー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン・トランプ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グラブス,ジョー・ビー,ザサード
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アダム
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-097561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334564(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0189414(US,A1)
【文献】特開平07-133179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00 - 21/00
C05C 1/00 - 13/00
C05D 1/00 - 11/00
C05F 1/00 - 17/993
C05G 1/00 - 5/40
A01N 1/00 - 65/38
A01P 1/00 - 23/00
A01M 1/00 - 99/00
A01C 1/00 - 1/08
A01C 3/00 - 3/08
A01C 15/00 - 23/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物に適用された第1の生分解性コーティング層と第1の生分解性コーティング層に適用された第2の生分解性コーティング層とを少なくとも有する複数の粒状物を含んでなる農業用の使用のための粒状組成物であって:
粒状物が、種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料を含んでなり、
第1の生分解性コーティング層が、ポリヒドロキシアルカノエートが70モルパーセントから90モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー残基、および1モルパーセントから30モルパーセントの5から22個の炭素原子を有する異なるヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含んでなり、そして
第2の生分解性コーティング層が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、メソラクチド、ポリブチレンアジペート(テレフタレート)共重合体、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含んでなる、
前記粒状組成物。
【請求項2】
ポリヒドロキシアルカノエートが、70モルパーセントから99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項3】
ポリヒドロキシアルカノエートが、1モルパーセントから30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項4】
粒状物が種子を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項5】
粒状物が肥料を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項6】
粒状物が有害生物防除剤を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項7】
第1の生分解性コーティング層が、50,000から2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項8】
ポリヒドロキシアルカノエートが、3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび/または5-ヒドロキシバレレートのモノマー残基をさらに含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項9】
ポリヒドロキシアルカノエートが、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項10】
粒状物が、コーティング前に1mmから25mmの平均粒子サイズを有する請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項11】
第1の生分解性コーティング層が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリブチレンアジペート(ブチレンテレフタレート)共重合体、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくともポリマーをさらに含んでなる、請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項12】
第1の生分解性コーティング層が、5重量パーセントから95重量パーセントのポリカプロラクトンをさらに含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項13】
第1の生分解性コーティング層が、1重量パーセント未満のポリウレタンを含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項14】
第1の生分解性コーティング層が50重量パーセントから95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエート、およびポリヒドロキシアルカノエート以外の5重量パーセントから50重量パーセントの生分解性ポリマーを含んでなり、そして少なくとも第1の生分解性コーティング層が、-5から60℃の温度および2から9のpHの環境条件に3日から21日間暴露された後に溶解し始める、請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項15】
粒状物質の制御された放出のための方法であって:
請求項1~14のいずれかに記載の粒状組成物を準備し;
粒状組成物を小区画の土壌に散布し;
小区画の土壌およびその中に分散されている粒状組成物を湿気に暴露することにより、第1の生分解性コーティング層中の少なくともポリヒドロキシアルカノエートを溶解する;
工程を含んでなり、ポリヒドロキシアルカノエートの分解で、粒状物が土壌に放出される、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性高分子組成物に関する。より詳細には本開示は種子および肥料用の放出制御型(controlled release)生分解性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
植物は環境条件に基づき様々な速度で栄養を摂取するが、栄養を摂取するための最も重要な時期は植物の初期発生の期間であり、この時期には栄養が十分でなければならない。しかし過剰な窒素の取り込みは栄養成長を刺激しすぎ、そして作物の熟成を遅らせる恐れがある。このように栄養の摂取時期は作物の収穫を最大にするために重要である。
【0003】
このような課題に取り組むため、放出制御型肥料(CRF)が生産され、ここで肥料は、土壌に肥料をゆっくりと放出する石油系ポリマーコーティングにカプセル化されている。すなわち栄養は植物の代謝の必要により適したペースで送達されることができる。しかし温度、湿度または土壌の生物活性の変化がこの速度を予期せずに変え、正しくない時期に正しくない栄養量を提供することにより作物の収量に良くない影響をもたらす。すなわちこれまで、CRFの商業的適用は、様々な環境条件での放出の動力学に関するデータの不足により限定されている。さらに肥料に適用される石油系コーティングは環境に優しくなく、しかも肥料を与えた後何年も環境に存続する可能性がある。
【0004】
このように環境に無害で、しかも成長時期が過ぎたら存続しない新規な放出制御型の肥料配合物を提供することが望まれる。またより予測可能で、しかも制御可能な肥料の放出速度を有する新規な放出制御型の肥料配合物を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
前記および他のニーズは、本開示に従い農業用に使用するための粒状組成物により満たされる。1つの態様によれば、この粒状組成物は粒状物(granulates)に適用された第1の生分解性コーティング層を有する複数の粒状物により構成されている。これらの粒状物は今度は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。第1の生分解性コーティングはポリヒドロキシアルカノエートから構成され、そしてこれらのポリヒドロキシアルカノエートは、約70モルパーセントから約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー残基、および5から22個の炭素原子を有する約1モルパーセントから約30モルパーセントの異なるポリヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含む。
【0006】
幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基から構成されている。また幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくは約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されている。
【0007】
特定の態様では、組成物の粒状物は種子から構成されることが好ましい。他の態様では、組成物の粒状物は肥料から構成されることが好ましく、尿素系肥料がより好ましい。さらなる態様では、組成物の粒状物は有害生物防除から構成されることが好ましい。
【0008】
特定の態様では、好ましくは第1の生分解性コーティング層が、約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含む。
【0009】
特定の態様では、粒状物が好ましくはコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有する。
【0010】
特定の態様では、ポリヒドロキシアルカノエートが3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび/または5-ヒドロキシバレレートのモノマー残基も含むことができる。
【0011】
さらに幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは、好ましくはそれぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成される。
【0012】
特定の態様では第1の生分解性コーティング層が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリブチレンアジペート(ブチレンテレフタレート)共重合体、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーも含む。
【0013】
特定の態様では、第1の生分解性コーティング層が、約5重量パーセントから約95重量パーセントのポリカプロラクトンも含む。
【0014】
好適な態様では、第1の生分解性コーティング層が、1重量パーセント未満のポリウレタンから構成される。より好ましくは第1の生分解性コーティング層はポリウレタンを全く含まない。
【0015】
特定の態様では、第1の生分解性コーティング層は約50重量パーセントから約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエート、およびポリヒドロキシアルカノエート以外の約5重量パーセントから約50重量パーセントの生分解性ポリマーから構成される。
【0016】
さらに少なくとも第1の生分解性コーティング層は、約-5から約60℃の温度および約2から9のpHの環境条件に約3日から約21日間暴露された後、溶解(dissolve)し始める。より好ましくは、少なくとも10重量パーセントの第1の生分解性コーティング層は約60から約100°F(約16から約38℃)の温度の環境条件に約3日から約21日間暴露された後、溶解される。
【0017】
特定の態様では、粒状組成物(granular composition)は第1の生分解性コーティング層に適用された第2の生分解性コーティング層も含むことができる。この第2の生分解性コーティング層は、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、メソラクチドおよびポリブチレンアジペート(テレフタレート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくともポリマーから構成されることが好ましい。
【0018】
さらなる観点では、本開示は粒状物質(granular material)の制御された放出法を提供する。1つの態様によれば、この方法は粒状物に適用された第1の生分解性コーティングを有する複数の粒状物から構成される粒状組成物を準備する最初の工程を含む。これらの粒状物は今度は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。生分解性コーティングはポリヒドロキシアルカノエートから構成され、そしてこれらのポリヒドロキシアルカノエートは、約70モルパーセントから
約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー残基、および5から22個の炭素原子を有する約1モルパーセントから約30モルパーセントの異なるヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含む。
【0019】
第2の工程では、粒状組成物が小区画の土壌に散布される。
【0020】
次いで第1の生分解性コーティング層中の少なくともポリヒドロキシアルカノエートは、小区画の土壌およびその中に分散された粒状組成物を湿気に暴露することにより溶解される。ポリヒドロキシアルカノエートの分解で、粒状物質が土壌に放出される。
【0021】
幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基から構成されていることが好ましい。また幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは、約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されていることが好ましい。
【0022】
この方法の特定の態様では、組成物の粒状物は種子から構成されることが好ましい。この方法の他の態様では、組成物の粒状物は肥料から構成されることが好ましく、尿素系肥料がより好ましい。さらなる態様では、組成物の粒状物は有害生物防除から構成されることが好ましい。
【0023】
この方法の特定の態様では、ポリヒドロキシアルカノエートは3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび/または5-ヒドロキシバレレートのモノマー残基も含むことができる。
【0024】
さらに幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成されることが好ましい。
【0025】
この方法の特定の態様では第1の生分解性コーティング層が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリブチレンアジペート(ブチレンテレフタレート)共重合体、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくともポリマーも含む。
【0026】
この方法の特定の態様では、第1の生分解性コーティング層が約5重量パーセントから約95重量パーセントのポリカプロラクトンも含む。
【0027】
この方法の好適な態様では、第1の生分解性コーティング層が1重量パーセント未満のポリウレタンを含んでなる。より好ましくは第1の生分解性コーティング層はポリウレタンを全く含まない。
【0028】
この方法の特定の態様では、第1の生分解性コーティング層が約50重量パーセントから約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエート、およびポリヒドロキシアルカノエート以外の約5重量パーセントから約50重量パーセントの生分解性ポリマーから構成される。
【0029】
さらに少なくとも第1の生分解性コーティング層は、約-5から約60℃の温度および約2から9のpHの環境条件に約3日から約21日間暴露された後、溶解し始める。より
好ましくは、少なくとも10重量パーセントの第1の生分解性コーティング層が、60から約100°F(約16から約38℃)の温度の環境条件に約3日から約21日間暴露された後、溶解される。
【0030】
この方法の特定の態様では、粒状組成物は第1の生分解性コーティング層に適用された第2の生分解性コーティング層も含むことができる。この第2の生分解性コーティング層は、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、メソラクチド、ポリブチレンアジペート(テレフタレート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリブチレンアジペート(ブチレンテレフタレート)共重合体、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくともポリマーから構成されることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
粒状組成物
本開示によれば、農業用の使用のための粒状組成物が提供される。この粒状組成物は、粒状物に適用された少なくとも第1の生分解性コーティングを有する複数の粒状物から構成されている。
【0032】
粒状物は、農業的に有用な物質である様々な材料から構成されることができる。一般に、粒状物は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成されることができる。組成物の粒状物が種子から構成されることが好ましい場合もある。粒状組成物に使用され得る種子の例には、草の種、果樹および堅果樹の種、作物の種および野菜の種を含む。
【0033】
他の態様では、組成物の粒状物は肥料から構成されることが好ましい。本開示に従いコーティングされた粒状組成物として提供され得る肥料は、窒素、リンおよびカリウム系肥料を含む。特に好適な例では、肥料は尿素系肥料であることができる。
【0034】
さらに他の場合では、粒状物は有害生物防除剤から構成されることができる。一般に、任意の固体有害生物防除剤材料を、本開示に従いコーティングされた粒状組成物として提供でき、それらには無機有害生物防除剤、有機有害生物防除剤および生物有害生物防除剤を含む。そのような有害生物防除剤の例には限定するわけではないが、硝酸アンモニウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸カルシウムを含む有害生物防除剤、クロルピリホス、メトリブジン、クロリムロンエチル、アトラジン、S-メトラクロル、シアナジン、ウイルス系生物有害生物防除剤、およびバクテリア系生物有害生物防除剤を含む。
【0035】
粒状物のサイズは、粒状物材料の性質に依存して変動することになる。一般に、粒状物はコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有することになる。種子に関して、より具体的には粒状物は好ましくはコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有することができる。肥料に関して、好ましくは粒状物はコーティング前に約1mmから8.5mmの平均粒子サイズを有することができる。有害生物防除剤に関して、好ましくは粒状物はコーティング前に約1mmから約10mmの平均粒子サイズを有することができる。
【0036】
本開示に従い、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)を含む第1の生分解性コーティングが粒状物に適用される。これらのポリヒドロキシアルカノエートは、約70モルパーセントから約99モルパーセントのヒドロキシブチレートのモノマー残基、および5から22個の炭素原子を有する約1モルパーセントから約30モルパーセントの異なるヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含む。
【0037】
より好適な態様では、ポリヒドロキシアルカノエートは約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基から構成されることが好ましい。また幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることが好ましい。
【0038】
この方法の幾つかの態様では、ポリヒドロキシアルカノエートは、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成されることができる。例えば幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートが3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基、および3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることができる。
【0039】
他の場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、4-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、3-ヒドロキシオクタノエートのモノマー残基、および3-ヒドロキシデカノエートのモノマー残基からなる群から選択される少なくとも3種のモノマー残基から構成されることができる。
【0040】
特定の態様では、第1の生分解性コーティングが約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含むことが好ましい。
【0041】
また特定の態様では、ポリヒドロキシアルカノエートは3-ヒドロキシバレレート、4-ヒドロキシバレレートおよび/または5-ヒドロキシバレレートのモノマー残基も含むことができる。
【0042】
幾つかの場合では、第1の生分解性コーティング層は1もしくは複数の追加のポリマーを含んでもよい。例えば第1の生分解性コーティング層は、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、メソラクチド、ポリブチレンアジペート(テレフタレート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくともポリマーも含むことができる。1つのより好適な態様では、第1の生分解性コーティング層は約5重量パーセントから約95重量パーセントのポリカプロラクトンを含むことができる。
【0043】
さらに幾つかの態様では、粒状組成物は第1の生分解性コーティング層に適用された第2の生分解性コーティング層も含むことができる。この第2の生分解性コーティング層は、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート(アジペート)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、セルロースエステル、ポリサッカサイド、ポリブチレンアジペート(ブチレンテレフタレート)共重合体、ポリグルコール酸、ポリマレイン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくともポリマーから構成されることが好ましい。
【0044】
幾つかの場合では、粒状組成物は第1および第2の生分解性コーティング層に加えてさらなるコーティング層を含むことができる。これらの任意の追加コーティング層は第1のコーティング層の下、第1と第2のコーティング層の間、および/または第2のコーティング層の上に適用されることができる。
【0045】
この方法の特定の態様では、第1の生分解性コーティング層は約50重量パーセントか
ら約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエート、およびポリヒドロキシアルカノエート以外の約5重量パーセントから約50重量パーセントの生分解性ポリマーから構成される。第1の生分解性コーティング層用の組成物の適切な例には以下を含む:
【表1】
【0046】
幾つかの態様では、生分解性コーティングは相対的に少量の0.3から10重量%の他の添加剤、例えばポリビニルアセテート、クレイ、カルシウム、タルク、澱粉、ペンタエリスリトール、および硫黄を含んでもよい。
【0047】
本明細書で使用するように、用語「生分解性」とは土壌中の微生物または生物により分解(decomposed)または崩壊(broken down)されることができる物質を記載する。一般に、少なくとも約50重量パーセントのコーティングが生分解性である物質により構成されることが好ましい。より好ましくは、コーティングを構成する物質の100パーセントが生分解性である。
【0048】
また生分解性コーティングは、約1.0重量パーセント未満のポリウレタンを含むことが好ましい。より好ましくは、生分解性コーティングはポリウレタンを全く含まない。
【0049】
粒状組成物の調製
別の観点では、本開示はコーティングされた粒状組成物の作成法を提供する。1つの態様では、方法はポリヒドロキシアルカノエート、および任意に他のポリマーおよび/または溶媒を、約25℃から約170℃の温度で混合して第1のコーティング混合物を提供する工程を含む。次いでこの第1のコーティング混合物を複数の粒状物の外面に適用する。また方法は、コーティング混合物を凝固して複数の粒状物の外面に第1の生分解性コーティングを作成する工程を含む。この方法に従いコーティングされた粒状物は、種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。
【0050】
任意に第2のコーティング混合物が同様な様式で調製され、そして第1の生分解性コーティングに適用されて第2の生分解性コーティングを提供することができる。さらに任意の他の層も同じ様式で適用することができる。
【0051】
この方法の特定の態様では、組成物の粒状物が好ましくは種子から構成される。この方法の他の態様では、組成物の粒状物が好ましくは肥料から構成され、より好ましくは尿素系肥料から構成される。
【0052】
粒状組成物の用途
本開示のコーティングされた粒状組成物は、農業用の目的の使用に適している。特に、本開示の粒状組成物は、粒状物質の制御された放出法を提供するために使用できる。
【0053】
この方法によれば、コーティングされた粒状組成物は上で検討したように提供される。ここでも粒状物は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成され得る。
【0054】
この粒状組成物は、組成物で処理することになる土壌の小区画に散布される。適用率は適用する粒状物の性質に依存して変動することができる。コーティングされた肥料粒状物については、粒状組成物を土壌に1エーカーあたり約10ポンドから50ポンドの率で散布することができる。コーティングされた有害生物防除剤粒状物については、粒状組成物を土壌に1エーカーあたり約1ポンドから10ポンドの率で散布することができる。
【0055】
いったん土壌に散布されれば、土壌の小区画は雨、灌漑および/または周辺の水蒸気の形で湿度に暴露される。結果としてコーティングされた粒状組成物の粒状物が同様に湿気に暴露される。
【0056】
この湿気ならびに環境中に自然に存在している小球への暴露は、少なくとも生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートが加水分解により分解を受け始めることを引き起こす。このように少なくともポリヒドロキシアルカノエートは次第により小さいオリゴマーおよびモノマーに溶解する。幾つかの場合では、生分解性コーティングに存在する他のポリマーも、加水分解により減成(degrade)することができる。
【0057】
この分解が進行すると、より低分子量の分解産物は水に溶解されるか、またはそうではなく粒状物から漏れ出る可能性があり、これにより生分解性コーティング内にずれ(gap)を作り、そしてコーティング下の粒状物材料の一部を露出する。この粒状物材料の露出部分は、次いで生分解性コーティング中のずれを介して土壌中に放出される。
【0058】
粒状物はコーティング中のずれまたは開口を通って放出されるので、粒状物材料の放出速度は環境湿度に暴露された時のポリヒドロキシアルカノエートの分解速度によりほぼ定まる。その結果として、分解の速度は、コーティングに使用した具体的なポリヒドロキシアルカノエート(3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、4-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、および最高22個の炭素原子を有するなど)、およびポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量のような因子により影響を受け得る。
【0059】
その結果有利には、当業者は生分解性コーティング用に適切な種類および量のポリヒドロキシアルカノエートを選択することにより、粒状物材料(種子、肥料、有害生物防除剤等)の放出速度を効果的に制御することができる。
【0060】
この方法の特定の態様では、少なくとも第1の生分解性コーティング層が約―5から約60℃の温度および約2から9のpHでの環境条件に約3日から約21日間暴露された後に溶解し始める。より好ましくは、少なくとも約10重量パーセントの第1の生分解性コーティング層が、約60から約100°F(約16から約38℃)の温度で、約3日から約21日間、環境条件に暴露された後、溶解される。
【0061】
本発明に関する好適な態様の前記説明は、具体的説明および記載の目的で提示した。それらは網羅的であること、または開示する厳密な形態に本発明を限定することを意図していない。明らかな修飾または変更が、前記教示に照らして可能である。態様は本発明の原
理の最も良い説明、およびその実践的応用を提供するために、そしてそれにより当業者が本発明を様々な態様で、様々な修飾を用いて意図する特定の使用に適するように利用できるようにするために選択し、そして記載するものである。すべてのそのような修飾および変更は、それらが適正に、合法的かつ公平に権利を与えられる幅に従い解釈される場合に、添付する請求の範囲により定められる本発明の範囲内にある。