(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】選択的粉末溶融用の設備に使用するための支持装置
(51)【国際特許分類】
B22F 10/47 20210101AFI20241106BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241106BHJP
B22F 12/10 20210101ALI20241106BHJP
B22F 12/30 20210101ALI20241106BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20241106BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241106BHJP
【FI】
B22F10/47
B22F10/28
B22F12/10
B22F12/30
B28B1/30
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2022518363
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2020075133
(87)【国際公開番号】W WO2021058279
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】102019214489.6
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518171878
【氏名又は名称】リアライザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Realizer GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 35, 33178 Borchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギード アーダム
(72)【発明者】
【氏名】マイノルフ テッパー
(72)【発明者】
【氏名】マーク ティマー
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-506553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065301(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0030806(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015015328(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015211170(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/28,10/47,12/10,12/13,
12/17,12/30
B28B 1/30
B29C 64/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的粉末溶融法により粉末状の材料(P)から1層ずつ積層することによって対象物(G)を製造する設備(100)に使用するための支持装置(11
0)であって、
製造される前記対象物(G)を積層するために設けられている造形プレート(11
2)と、
前記設備(100)の外部の構成要素(130)に不動に割り当てられているベースプレート(116)と、
緊締システム(114,11
8)であって、緊締された状態で前記造形プレート(11
2)が前記ベースプレート(116)の上方に配置されているように、前記造形プレート(11
2)を解離可能に前記ベースプレート(116)に緊締位置で結合しかつ位置決めするために設けられている緊締システム(114,11
8)と、
加熱システム(12
2)であって、熱を放出するための少なくとも1つの加熱要素(12
2)を備え、前記造形プレート(11
2)を加熱するように構成されている加熱システム(12
2)と、
を備え、
前記少なくとも1つの加熱要素(12
2)は、前記緊締位置の上方に配置されてい
て、前記緊締システム(114,118)は、前記造形プレート(112)に割り当てられた緊締ピン(114)と、前記ベースプレート(116)に設けられた切欠き(120)とを備え、前記造形プレート(112)の緊締された状態で、前記緊締ピン(114)は、対応する緊締装置(118)によって前記切欠き(120)内に緊締されており、前記緊締位置は、緊締平面によって形成されている、
支持装置(110)において、
前記加熱要素(122)として加熱線材が設けられていて、前記加熱線材は、ベースプレート(116)の上側全体にわたってメアンダ状に案内されており、前記加熱線材は、前記切欠き(120)の周囲にのみ相応の空所を形成しつつ案内されていることを特徴とする、
支持装置(11
0)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの加熱要素(122)は、前記ベースプレート(116)の上側(116a)の領域に配置されていて、空所を有し、前記造形プレート(11
2)の緊締された状態で、前記緊締ピン(114
)は、前記空所を貫通していることを特徴とする、請求項
1記載の支持装置(110)。
【請求項3】
緊締された状態で、前記少なくとも1つの加熱要素(12
2)は、完全に前記緊締装置(118)の上方に配置されていることを特徴とする、請求項
2記載の支持装置(11
0)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの加熱要素(12
2)は、少なくとも1つの側で少なくとも部分的に断熱要素によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項記載の支持装置(11
0)。
【請求項5】
選択的粉末溶融法により粉末状の材料(P)から1層ずつ積層することによって対象物(G)を製造する設備(100)であって、
製造される前記対象物(G)を収容するように構成されている造形室(132)と、
材料粉末(P)を前記造形室(132)内に供給するように構成されている粉末供給装置と、
供給された前記材料粉末(P)の連続した層を準備するように構成されている粉末層準備ユニット(134)と、
直前に準備された粉末層に照射を行い、これによって、該粉末層を局所的に溶融させるように構成されている照射装置(138)と、
高さ調整可能に前記造形室(132)内に配置された、請求項1から
4までのいずれか1項記載の支持装置(110)と、
を備える、設備(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的粉末溶融法により粉末状の材料から1層ずつ積層することによって対象物を製造する設備に使用するための支持装置であって、製造される対象物を積層するために設けられている造形プレートと、設備の外部の構成要素に不動に割り当てられているベースプレートと、緊締システムであって、緊締された状態で造形プレートがベースプレートの上方に配置されているように、造形プレートを解離可能にベースプレートに緊締位置で結合しかつ位置決めするために設けられている緊締システムと、加熱システムであって、熱を放出するための少なくとも1つの加熱要素を備え、造形プレートを加熱するように構成されている加熱システムとを備える、支持装置に関する。
【0002】
レーザ光源を使用する選択的粉末溶融法によって、例えば機械部品、工具、補綴物、装飾具などの成形体を、相応の成形体の幾何学形状記述データに基づき、金属またはセラミックの材料粉末から1層ずつ積層することによって製造することが知られている。このような製造プロセスでは、複数の粉末層が順次に互いに上下に被着され、次に続く粉末層が被着される前に、各々の粉末層の、成形体のモデルの選択された横断面領域に相応する予め規定された領域が、合焦されたレーザビームにより加熱されることによって、照射された領域の材料粉末が溶融させられて、連続形態に固化された区分が形成される。この分野に関する先行技術として、例えば独国特許出願公開第19905067号明細書、独国特許出願公開第10112591号明細書、国際公開第98/24574号、独国特許出願公開第102009038165号明細書、独国特許出願公開第102012221641号明細書、欧州特許出願公開第2052845号明細書、独国特許出願公開第102005014483号明細書および国際公開第2017/084781号を参照されたい。
【0003】
このような方法を実施するための設備では、製造される対象物が、造形プレート上に積層される。造形プレートは、設備の連続運転中、昇降装置によって順次降下させられ、これによって、造形プレート上に積層中である対象物の増加していく高さが補償されて、後続の層への照射を常に実質的に同じ鉛直方向高さで行うことができる。本発明の文脈において、昇降装置は、ベースプレートが不動に割り当てられている「設備の外部の構成要素」として作用する。こうして、一方では、照射プロセス自体が簡易化され、他方では、特に、専用に設けられている粉末準備装置による後続の粉末層の準備が簡易化される。
【0004】
製造される対象物における構成部分公差を維持するかもしくは構成部分誤差を低減するためには、造形プレートを加熱システムにより加熱することによって、溶融した構成部分と造形プレートとの間の温度差を低減することが有利であることが判った。これまで知られている設備では、例えば先行技術に基づく冒頭に記載の支持装置を概略的に示す
図1から判るように、対応する加熱要素を備える加熱システムが、ベースプレートの領域もしくはベースプレートの下方に配置された機械テーブルの領域に設けられていた。
【0005】
先行技術に基づく支持システム10は、鉛直方向で上から下に向かって見て、まず造形プレート12を有し、この造形プレート12上に、設備の運転中、製造される対象物が積層される。造形プレート12の下面には、造形プレート12を緊締するための緊締ピン14が設けられている。ここに挙げた緊締ピン14は、設備の運転中、ベースプレート16に割り当てられた緊締装置18によって緊締され、緊締ピン14は、ベースプレート16に設けられた対応する切欠き20内に突出している。この場合、緊締位置は、緊締装置18と緊締ピン14との実際の係合が行われる平面によって形成されている。ここで「平面」という用語は、当然のことながら厳密に幾何学的に理解されるものではなく、係合が、緊締システムの高さ方向で一定の高さ領域にわたって行われることを含むものとする。
【0006】
次に、ベースプレート16の下方に、ベースプレート16を支持する機械テーブル24に埋め込まれた加熱要素22が設けられている。加熱要素22は、図示の先行技術に基づく実施形態では、例えば面状のセラミック製の加熱要素であってよく、既知のように、造形プレート12を加熱するための熱を放射する。造形プレート12上の対象物の製造プロセスが終了した後、緊締装置は解除され、造形プレート12を、対象物と一緒に、対象物の更なる加工のためにベースプレート16から、そして設備から取り出すことができる。
【0007】
しかし、先行技術に基づき公知の冒頭に記載の支持装置10は、運転中、幾つかの欠点を有することが判った。例えば1つには、加熱要素の予め規定された幾何学形状に基づき、造形プレート全体にわたって完全に均一な温度を調整することができない。なぜならば、加熱要素の配置に起因して、造形領域全体をカバーしない加熱ゾーンしか実現することができないからである。さらに、緊締システムの使用により、造形プレート自体と加熱システムもしくは個々の加熱要素との間の距離が比較的大きいので、造形プレートに有効に作用する加熱出力が著しく低減される。さらに、加熱システムと造形プレートとの間に設けられた構成要素としての緊締システム自体も、加熱システムの加熱出力に曝されるので、造形プレートへの不均一な熱伝達に加えて、緊締システムによる必然的な熱の吸収に基づき、緊締システムにおいて大きな熱的負荷も生じる。この熱的負荷は、設備の寿命にも精度にも悪影響を及ぼす。
【0008】
したがって、本発明の課題は、選択的粉末溶融法により粉末状の材料から1層ずつ積層することにより対象物を製造する設備に使用するための冒頭に記載の支持装置を改良して、一方では、改善されたエネルギー効率、他方では、支持装置の構成要素に対して穏やかな加熱運転の点で優れている支持装置を提供することである。この目的およびこの課題の解決のために、本発明に係る支持装置では、少なくとも1つの加熱要素が、緊締位置の上方に配置されている。
【0009】
この場合、当然ながら、「上」および「下」という用語は、設備によって製造される対象物が下から上に向かって積層され、したがって、製造される対象物を最終的に支持する造形プレートが、支持装置の一番上側の構成要素であるのに対して、ベースプレートは、常に造形プレートよりも下方に配置されていなければならないことを意味している。これに相応して、緊締位置は、特に高さ方向にも関連しており、したがって、相応の係合の高さ位置を表している。
【0010】
したがって、本発明によれば、少なくとも1つの加熱要素が、緊締位置の上方に配置されていることによって、加熱されるべき構成部材、つまり、造形プレートと少なくとも1つの加熱要素との間の間隔が著しく低減され、これによって、一方では、より効率的な加熱を行うことができ、他方では、支持装置の、加熱要素と造形プレートとの間に存在する構成要素の数および質量が低減される。したがって、これらの構成要素が共に加熱される必要がなく、ひいては、低減された熱的負荷に曝されている。
【0011】
このことは、特に支持装置の緊締システムに当てはまる。本発明の1つの実施形態では、緊締システムが、造形プレートに割り当てられた緊締ピンと、ベースプレートに設けられた切欠きとを備え、造形プレートの緊締された状態で、緊締ピンが、対応する対応する緊締装置によって切欠き内に緊締されており、緊締位置が、緊締平面によって形成されていてよい。なお、「平面」という用語は、改めて厳密に幾何学的に解釈されるものではない。
【0012】
この場合、少なくとも1つの加熱要素が、特にベースプレートの上側の領域に配置されていて、空所(Durchbrechungen)も有し、造形プレートの緊締された状態で、緊締ピンが、空所を貫通していてよい。こうして、上述した、緊締ピンの緊締された状態で、緊締ピンの全体または少なくとも大部分が少なくとも1つの加熱要素よりも下方に位置しており、したがって、少なくとも1つの加熱要素の加熱出力によって加熱される部分を極めて少なくすることが達成される。この結果、このような実施形態では、緊締システムの熱的負荷が低減されており、加熱システムの効率が、上述した先行技術に比べて高められている。
【0013】
上述した有利な効果は、緊締された状態で、少なくとも1つの加熱要素が、完全に緊締システムの、ベースプレートに割り当てられた緊締装置の上方に配置されていることによって最大化することができる。
【0014】
しかし、代替的な実施形態では、少なくとも1つの加熱要素が、造形プレート内に組み込まれていてもよく、この場合には、造形プレートの緊締された状態で少なくとも1つの加熱要素をエネルギー源に接続することができるエネルギーインタフェースがさらに設けられていなければならない。エネルギー源は、加熱システムの一部も形成する。特に、造形プレートは、互いに上下に位置する2つの領域から構成されており、これら2つの領域は、互いに結合可能かつ互いに解離可能であり、少なくとも1つの加熱要素は、下側の領域内に組み込まれていてよい。したがって、造形プレートの下側の領域から解離可能な上側の領域のみが、製造される対象物用の支持体として直接使用される。製造プロセスの終了後、上側の領域は下側の領域から取り外し、交換することができる。この場合、両方の領域の解離可能な結合は、任意の適切な手段、例えばねじ締結によって行われてよい。
【0015】
上に挙げた両方の実施形態において、少なくとも1つの加熱要素は、好ましくはループ形状またはメアンダ形状(Schleifen- oder Maeanderform)で1つの平面内に敷設されている加熱線材によって形成されていてよい。この場合、組付け時に支持用の構成要素に適切な形状で適合させられる柔軟な加熱線材が設けられてもよいし、予め規定された形状に従って予備成形され、その後、完全に成形された形状で相応の構成要素に割り当てられさえすればよい加熱線材が設けられてもよい。加熱線材によって形成された加熱要素は、知られている一般的な形式で電流によって運転することができる。この電流は、線材のオーム抵抗に相応して熱に変換される。
【0016】
本発明に係る支持装置の加熱システムの効率をさらに高め、さらには、望ましくない熱的負荷から支持装置の構成要素を一層良好に保護することができるようにするために、少なくとも1つの加熱要素が、少なくとも1つの側で少なくとも部分的に断熱要素によって取り囲まれていてよい。こうして、熱の放出が、そのために特定された、加熱されるべき造形プレートに向かう方向に集中する。この場合、例えばセラミックタイルまたは可能な限り低い熱伝導率を有する別の材料のような自体公知の断熱要素が設けられていてよい。
【0017】
別の1つの態様によれば、本発明は、選択的粉末溶融法により粉末状の材料から1層ずつ積層することによって対象物を製造する設備であって、製造される対象物を収容するように構成されている造形室と、材料粉末を造形室内に供給するように構成されている粉末供給装置と、供給された材料粉末の連続した層を準備するように構成されている粉末層準備ユニットと、直前に準備された粉末層に照射を行い、これによって、この粉末層を局所的に溶融させるように構成されている照射装置と、高さ調整可能に造形室内に配置された本発明に係る支持装置とを備える、設備に関する。
【0018】
本発明の別の特徴および利点は、添付の図面と一緒に考察すれば、以下の実施形態の説明から一層明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】先行技術に基づく冒頭に記載の支持装置を示す概略的な側方断面図である。
【
図2】本発明に係る支持装置の実施形態を示す概略的な側方断面図である。
【
図3】
図2に示した実施形態を示す概略的な平面図である。
【
図4】本発明に係る支持装置の第2の実施形態の一部を示す概略的な側方断面図である。
【
図5】
図2に示した実施形態を有する、選択的粉末溶融用の本発明に係る設備を示す概略的な側方断面図である。
【0020】
選択的粉末溶融法により対象物を製造する設備に使用するための、先行技術に基づく冒頭に記載の支持装置を示した、すでに上述した
図1を参照しながら、
図2に類似の図で示した本発明に係る支持装置を説明する。
【0021】
この支持装置は、全体として参照符号110で示してあり、同様に造形プレート112を有する。造形プレート112は、図示の支持装置を備える設備における運転中、製造される対象物を造形プレート112上に積層するために設けられている。一般に、このような造形プレートは、選択的に溶融させられた粉末の最下層がこの造形プレートに付着することを可能にしかつ粉末の溶融時に発生する熱の良好な導出を保証する適切な金属から成る。製造プロセスの終了後、このように製造された対象物は、次いで最終的に造形プレートから分離されるので、この造形プレートを、場合によっては適切な準備を経て、再び使用することができる。
【0022】
造形プレート112は、
図1で説明された先行技術に基づく支持装置と同様に、下面に緊締ピン114を有する。緊締ピン114は、ベースプレート116に設けられた切欠き120内に位置しており、そこで、対応する緊締装置118によって緊締されている。緊締ピン114と緊締装置118とは、共に本願の意味での緊締システムを形成し、緊締位置は、緊締装置118と緊締ピン114とが実際に接触している領域によって形成されている。この緊締位置は、図示の実施形態では、本願の広い意味での平面によって形成されている。
【0023】
ベースプレート116の一番上側の領域116a内、つまり、造形プレート112のすぐ下方の、切欠き120によって貫通されている面内に、加熱線材122が導入されており、
図2に示した本発明に係る支持装置110の実施形態では、この加熱線材122が加熱要素を形成している。さらに、
図3に示した概略的な平面図から判るように、加熱線材122は、ベースプレート116の上側全体にわたってメアンダ状に案内されている。この場合、加熱線材122は、切欠き120の周囲にのみ相応の空所を形成しつつ適切に案内されている。
【0024】
設けられたこれらの切欠き120にもかかわらず、加熱線材122によって達成可能な面積カバー率、もしくはベースプレート116の平面図で見た、加熱線材122によってカバーされている面積全体の割合は、
図1に示した先行技術に基づく支持装置10の加熱要素22によって達成され得る面積よりもはるかに大きい。さらに、加熱線材122は、
図1に示した加熱要素22に比べて、加熱されるべきベースプレート112に極めて近づけて位置決めされているので、一方では、加熱要素122から加熱されるべき造形プレート112への熱の輸送時に発生する熱損失が大幅に低減され、ひいては、加熱装置122の効率が改善され、他方では、支持装置110の他の構成要素、例えば緊締ピン114および緊締装置118に供給される熱が大幅に減少するので、これらの部材が曝される熱的負荷が大幅に低減される。
【0025】
図2および
図3に示した加熱線材122へのエネルギー供給が、ベースプレート116の領域およびその機械テーブル(図示せず)から、適切に敷設された電気線路を介して、問題なく下から実現できるのに対して、
図4に単に一部を示した本発明に係る支持装置の第2の実施形態210では、エネルギーインタフェース224が設けられていなければならない。このエネルギーインタフェース224は、
図4に同様に示した交換可能な造形プレート212が緊締された状態で、エネルギーを加熱線材222に供給することができるようにするために、対応要素(図示せず)に差込み接続されなければならない。
【0026】
つまり、
図4に示した実施形態では、加熱線材222が造形プレート212の下側の領域212aに直接組み込まれており、これによって、加熱線材222を完全に障害物なしに造形プレート212の水平面全体にわたって案内することができる。特にこの場合、完全に加熱線材222の下方に配置された緊締ピン214による影響がない。ここに挙げた緊締ピン214は、支持装置210の運転状態において、ここでもベースプレート(
図4には図示せず)内に緊締されている。このベースプレートは、これ自体加熱要素を有していない点においてのみ、これまでに説明したベースプレートと相違している。
【0027】
エネルギーインタフェース224を設けることが必須であること以外の、
図4に示した実施形態の唯一の欠点は、加熱線材222が造形プレート212自体に設けられており、この造形プレート212が、上述したように、製造される対象物の積層に後続する方法ステップにおいて、この対象物から分離されなければならないということにある。しかし、このためには、造形プレート212自体も2つの部材から構成されており、下側の領域212aのほかに、さらに上側の領域212bを有している。2つの領域212a,212bは、適切な手段、例えば
図4に略示したねじ締結部材212cによって、互いに解離可能に結合されている。したがって、上側の領域212bを、相応の対象物の製造プロセスの終了後に交換することができる犠牲構成要素として使用することができる。
【0028】
図4に示した実施形態の変化形態では、加熱要素を装備したベースプレート全体が犠牲構成要素として使用され、したがって、一体形に形成されていてもよい。しかし、これによって、設備の運転におけるコストが高まってしまう。なぜならば、加熱要素を装備したがために著しく高価なベースプレートを1回の使用後に交換しなければならないからである。
【0029】
最後に
図5は、選択的粉末溶融法により粉末状の材料を1層ずつ積層することにより対象物を製造するための本発明に係る設備を示している。設備は、全体として参照符号100で示してあり、この設備に、
図2に示した本発明に係る支持装置110の実施形態が使用されている。この
図2を参照することで、支持装置110の再度の説明は省略することとし、同様にすでに上述した、
図5の矢印Vにより略示した支持装置110の鉛直方向での変位が、
図5に単に極めて概略的に示した対応する機械テーブル130によって行われることのみ指摘しておく。
【0030】
さらに、設備100は造形室132を有する。この造形室132内に、造形プレート112上に積層される製造される対象物Gが設けられている。この対象物Gは、粉末Pから1層ずつ、粉末を選択的に溶融させ凝固させることによって積層される。粉末Pの各々の層が溶融および凝固した後、対象物Gの1つの層を形成するために、粉末供給ユニット(図示せず)から新しい粉末が造形室132内に装入され、そこで粉末層準備ユニット134によって適切に準備される。
【0031】
対象物Gの製造中に粉末Pが酸化することを防止するために、保護ガスシステムがさらに設けられており、
図5では、単に保護ガス入口136aおよび保護ガス出口136bによって略示されている。最後に、設備100は照射装置138を有する。照射装置138は、レーザ装置と光学構成要素とを有していて、制御装置(図示せず)によって制御され、これによって、対象物Gの各層の製造時に、照射装置138の合焦されたレーザビームが、準備された粉末Pを辿って、対象物Gの相応の層が所望のように形成される。
【0032】
図5に示してはいないが、任意選択的にこのような設備に使用可能なものとして、赤外線加熱装置がさらに設けられていてよい。この赤外線加熱装置は、上から粉末Pを加熱し、製造プロセスの開始時にある程度造形プレート112を上から加熱する。