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特許7583036僧帽弁逆流を緩和するためのデバイス、システム、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】僧帽弁逆流を緩和するためのデバイス、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022520479
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 IB2020059290
(87)【国際公開番号】W WO2021064689
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】62/909,929
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/086,710
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522329744
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュン ホン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/103540(WO,A1)
【文献】特表2013-537084(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0029548(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0269503(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03158940(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0136910(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61B 17/00
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の保護チューブと第2の保護チューブとを備える、僧帽弁逆流を緩和するためのデバイスであって、前記デバイスは前記第1の保護チューブ及び前記第2の保護チューブの中に配設されているサークラージロープを有し、前記第1の保護チューブ及び前記第2の保護チューブは近位端と遠位端とを各々有し、前記2本の保護チューブの近位部分は前記2本の保護チューブの長さの少なくとも一部に沿って隣り合って固着されて幹部分を画定しており、前記2本の保護チューブの遠位部分はその後分離されてヒンジ部分を画定しており、前記デバイスは、前記第2の保護チューブの前記遠位端に固着されると共に前記第2の保護チューブの心筋内への更なる前進を防止するように構成されたストッパーを有し、前記サークラージロープは前記2本の保護チューブの前記遠位端同士の間に配置されているアーチ部分を有し、前記第1の保護チューブは前記ヒンジ部分と前記第1の保護チューブの前記遠位端の間に配設されている少なくとも1つのアンカーを有し、前記アンカーは冠状静脈洞内に留まり前記デバイスを所定位置に維持するように構成されており、
前記アンカーは、前記第1の保護チューブの周面に取り付けられたアンカーヘッドと、前記アンカーヘッドから前記第1の保護チューブと交差する方向に沿って延在するアンカーアームと、を有する、デバイス。
【請求項2】
前記第1の保護チューブは冠状静脈洞を通して挿入されて僧帽弁の少なくとも一部を包囲するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の保護チューブは、前記第1の保護チューブが冠状静脈洞を通過して移動するときに前記第1の保護チューブが事前形成された形状を維持するよう構成されるように、前記事前形成された形状を有している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の保護チューブは、三尖弁を通過し、心室中隔の右心室側に当接して静止するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の保護チューブは、前記第2の保護チューブが三尖弁を通過して移動するときに前記第2の保護チューブが事前形成された形状を維持するよう構成されるように、前記事前形成された形状を有している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2の保護チューブは、張力が加わったときに内向きに曲がらないよう抵抗するのに十分な剛性を有する、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は心臓弁逆流を緩和するためのデバイス、システム、及び方法に関し、より詳細には、僧帽弁逆流の治療のための経カテーテルのデバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]僧帽弁逆流は、接合不全の原因となる心筋症、僧帽弁輪拡張、及び弁葉牽引を特徴とする。経カテーテル僧帽弁ループサークラージ(「MLC」)デバイスは、冠状静脈洞を通り心室中隔にまたがるループを作り出すことによって、僧帽弁輪の周縁に圧迫力を加える。僧帽弁ループサークラージデバイスは、冠状静脈洞内に押し戻されないようにその位置を維持できるようになっている必要がある。
【発明の概要】
【0003】
[0003]僧帽弁逆流を緩和するためのMLCデバイスは、第1の保護チューブと第2の保護チューブとを備える。MLCデバイスは、第1の保護チューブ及び第2の保護チューブの中に配設されているサークラージロープを有する。第1の保護チューブ及び第2の保護チューブは、近位端と遠位端とを各々有する。2本の保護チューブの近位部分は、2本の保護チューブの長さの少なくとも一部に沿って隣り合って固着されて、幹部分を画定している。2本の保護チューブの遠位部分はその後分離されて、ヒンジ部分を画定している。
【0004】
[0004]MLCデバイスは、第2の保護チューブが心筋内への更なる前進を防止するように構成するために第2の保護チューブの遠位端に固着されているストッパーを有する。サークラージロープは2本の保護チューブの遠位端同士の間に配置されているアーチ部分を有する。第1の保護チューブは、ヒンジ部分と第1の保護チューブの遠位端の間に配設されている少なくとも1つのアンカーを有する。アンカーは冠状静脈洞内に留まり組織保護デバイスを所定位置に維持すように構成されている。
【0005】
[0005]第1の保護チューブは、冠状静脈洞を通して挿入されて、僧帽弁の少なくとも一部を包囲するように構成されている。第1の保護チューブは、第1のチューブが冠状静脈洞を通過して移動するときに第1のチューブが事前形成された形状を維持するよう構成されるように、事前形成された形状を有している。
【0006】
[0006]第2の保護チューブは、三尖弁を通過し、心室中隔の右心室側に当接して静止するように構成されている。第2の保護チューブは、第2のチューブが三尖弁を通過して移動するときに第2のチューブが事前形成された形状を維持するよう構成されるように、事前形成された形状を有している。第2の保護チューブは、張力が加わったときに内向きに曲がらないよう抵抗するのに十分な剛性を有する。
【0007】
[0007]MLCデバイスを使用して患者の僧帽弁逆流を治療する方法は、(a)大腿静脈にシースイントロデューサを挿入するステップと、(b)冠状静脈洞内に係合するガイドカテーテルを大腿鞘を通して挿入するステップと、(c)ガイドワイヤを心室中隔内へと移動させ右心室(RV)空洞内へと出すステップと、(d)ガイドワイヤ捕捉器を大腿鞘を通して右心室空洞内に配置し、出て来るガイドワイヤを把持するステップと、(e)ガイドワイヤが、下大静脈(IVC)-冠状静脈洞(CS)-右心室(RV)空洞-右心房(RA)-下大静脈(IVC)-大腿静脈である大腿静脈の経路を構成するように、ガイドワイヤ捕捉器を用いてガイドワイヤを大腿鞘まで引き出すステップと、(f)ガイドワイヤの近位端を張力ロックデバイスを用いてサークラージロープに接続するステップと、(g)ガイドワイヤの遠位端を引くことによってガイドワイヤをサークラージロープと所定位置で入れ替えるステップと、(h)送達システムを用いて大腿鞘の中でMLCデバイスをサークラージロープ上で前進させるステップと、(i)MLCデバイスの張力が最適であるときに、MLCデバイスを所定位置に保持するためのアンカーを固定するステップと、(j)MLCデバイスが所定位置にあるときに、心エコー図などのリアルタイムイメージングを指針として張力ロックデバイスを通して好適な張力を伝えるステップと、(k)切断デバイスによってサークラージロープを切断するステップと、を含む。
【0008】
[0008]特許請求される主題の特徴及び利点は、それらに従う実施形態の以下の説明から明らかになろう。この説明は以下の添付の図面と併せて考慮されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】幹部分と第1のチューブと第2のチューブとを含むMLCデバイスの実施形態の図である。
【0010】
図2】ヒンジ部分及び第2のアーム上のストッパーを示す、MLCデバイスの実施形態の図である。
【0011】
図3】ストッパーのルーメン及び第1のアームのルーメンを示す、MLCデバイスの実施形態の図である。
【0012】
図4】アーチ部分及び外側層を含むサークラージロープの実施形態の図である。
【0013】
図5】アーチ部分及び外側層を含むサークラージロープの実施形態の図である。
【0014】
図6】MLCデバイスをサークラージロープに沿って前進させたときのMLCデバイスの実施形態の図である。
【0015】
図7】MLCデバイスをサークラージロープに沿って前進させたときのMLCデバイスの実施形態の図である。
【0016】
図8】MLCデバイスをサークラージロープに沿って前進させたときのMLCデバイスの実施形態の図である。
【0017】
図9】どのようにMLCデバイスをサークラージロープに沿って前進させるかを描いたMLCデバイスの実施形態の図である。
【0018】
図10A】バルーンウェッジカテーテルを介した冠静脈造影によって、ガイドワイヤが中を前進する基本的な中隔穿通冠静脈を識別する、ある手順の図である。
【0019】
図10B】冠静脈から渡ってきたガイドワイヤを捕捉するために標的捕捉デバイスが右心室流出路内に配置されている、ある手順の図である。
【0020】
図10C】ガイドワイヤを一体化した冠静脈保護要素を含む張力デバイスと入れ替えられる、ある手順の図である。
【0021】
図10D】張力がかっている間、保護要素によって、捕捉された冠静脈回旋枝の圧迫が防止される、ある手順の図である。
【0022】
図10E】この尾側左前斜位方向投影において僧帽弁ループサークラージシステムが僧帽弁輪平面を取り囲むように示されている、ある手順の図である。
【0023】
図10F】張力ロックデバイスが左鎖骨下ポケットに埋め込まれている、ある手順の図である。
【0024】
図11】張力ロックデバイスが左鎖骨下ポケットに埋め込まれているのを示す図である。
【0025】
図12】張力が緩いときのMLCデバイスの実施形態の図である。
【0026】
図13】張力が加わったときのMLCデバイスの実施形態の図である。
【0027】
図14】ストッパーがIVSの壁上に配置されているのを描いた図である。
【0028】
図15】第1のアームが僧帽弁を包囲するのを描いた図である。
【0029】
図16】アンカーが第1のアーム上に設置されているのを描いた図である。
【0030】
図17】アンカーが第1のアーム上に設置されているのを描いた図である。
【0031】
図18】アンカーが第1のアーム上に設置されているのを描いた図である。
【0032】
図19】アンカーの実施形態を描いた図である。
【0033】
図20】アンカーが冠状静脈洞内に配置されているのを描いた図である。
【0034】
図21】好ましい係留部位を描いた図である。
【0035】
図22】好ましい他の可能な係留部位を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
開示
[0036]図面では全体を通して同様の数字は同様の要素を示す。本明細書で使用される特定の専門用語は単に便宜上のものであり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。用語「遠位」及び「近位」はそれぞれ、患者にイントロデューサシースを挿入する医師の体「から離れる」及び「に近付く」方向を指す。これら専門用語には、上で特に述べた単語、その派生語、及び同様の重要度の単語が含まれる。
【0037】
[0037]僧帽弁ループサークラージ(「MLC」)デバイス10は、図1に示すように、第1のチューブ20と第2のチューブ30とを備え得る。第1のチューブ20は冠状静脈洞(CS)と係合するように構成され得る。第2のチューブ30は三尖弁(TV)と係合するように構成され得る。
【0038】
[0038]図2に示すように、第1のチューブ20は、近位端22及び遠位端23と、拡張するルーメン24と、を有する。第2のチューブ30も同様に、近位端32及び遠位端33と、これらの間で拡張するルーメン34と、を有する。第1のチューブ20及び第2のチューブ30の近位部分は、2本のチューブ20、30の長さの少なくとも一部に沿って長手方向に隣り合って固着されて幹部分14を画定することができ、第1のチューブ20及び第2のチューブ30の遠位部分はその後分離されて、ヒンジ部分16を画定することができる。第1のチューブ20及び第2のチューブ30は、例えば合成物質、ゴム、軟質プラスチック等の軟質材料、又は例えばコイルばね等の金属材料で形成され得る。
幹部分
【0039】
[0039]図1図2に示すように、MLCデバイス10は幹部分14を含み得る。第1のチューブ20及び第2のチューブ30の近位部分を長手方向に隣り合わせて固着し、その後遠位側で互いから分離することができる。第1のチューブ20と第2のチューブ30の間の固着された部分は、幹部分14として画定される。2本のチューブ20、30が分離し始める部分は、ヒンジ部分16として画定される。幹部分14の長さは必要に応じて変化し得る。
【0040】
[0040]幹部分14の役割は、第1のチューブ20及び第2のチューブ30をそれらの位置が維持され得るように安定させることである。ヒンジ部分16が冠状静脈洞の入口に接して静止すると、MCLデバイス10は冠状静脈洞内にも三尖弁内にも前進しないようになる。
ヒンジ部分
【0041】
[0041]図1図2に示すように、MLCデバイス10はヒンジ部分16を含み得る。ヒンジ部分16は、第1のチューブ20と第2のチューブ30が互いから分離し始める部分として画定される。図12図13に示すように、ヒンジ部分16は、冠状静脈洞の入口に又はその近くに配置され得る。
【0042】
[0042]ヒンジ部分16の役割は、第1のチューブ20及び第2のチューブ30をそれらの位置が維持され得るように安定させることである。ヒンジ部分16が冠状静脈洞の入口に接して静止すると、MCLデバイス10は冠状静脈洞内にも三尖弁内にも前進しないようになる。
僧帽弁用の第1のアーム
【0043】
[0043]第1のチューブ20は、近位端22と遠位端23の間に延びるルーメン24を含み得る。図2に示すように、第1のチューブ20の第1のアーム部分21は、ヒンジ部分16から遠位端23までの部分として画定される。図1図2に示すように、第1のアーム部分21は、これが冠状静脈洞を通過して移動するときに事前形成された形状を維持するように、例えば合成物質、ゴム、軟質プラスチック等の軟質材料、又は例えばコイルばね等の金属材料で事前成形されてもよい。図12図13は、冠状静脈洞を通過して移動する第1のアーム部分21を示す。
【0044】
[0044]第1のアーム部分21は、冠状静脈洞を通して挿入されて、僧帽弁の少なくとも一部を包囲するように構成されている。図13に示すように、第1のアーム部分21は、張力が加わると僧帽弁の弁輪を締め付けて、逆流を緩和するように構成されている。
【0045】
[0045]サークラージロープ50がMLCデバイス10に挿入されるとき、第1のアーム部分21によってサークラージロープ50の直接接触が防止され、冠状静脈洞及びその周囲の組織が損傷から保護される。第1のアーム部分21の長さは患者ごとに必要に応じて異なっていてもよい。長さは、個々の患者の事前の撮像からの推定に基づいて決定され得る。
三尖弁用の第2のアーム
【0046】
[0046]第2のチューブ30は、近位端32と遠位端33の間で拡張するルーメン34を含み得る。図2に示すように、第2のチューブ30は、ヒンジ部分16と第2のチューブ30の遠位端33の間の部分として画定される、第2のアーム部分31を含む。
【0047】
[0047]第2のアーム部分31は、三尖弁を通過するように構成されている。図1図2に示すように、第2のアーム部分31は、これが三尖弁を通過するときに事前形成された形状を維持するように、例えば合成物質、ゴム、軟質プラスチック等の軟質材料、又は例えばコイルばね等の金属材料で事前成形されてもよい。第2のアーム部分31は、サークラージロープ54に張力が加わったときに曲がらないよう抵抗するのに十分な剛性を有し得る。図12図14は、三尖弁を通過する第2のアーム部分31を示す。第2のアーム部分31の長さは患者ごとに必要に応じて異なっていてもよい。長さは、個々の患者の事前の撮像からの推定に基づいて決定され得る。
ストッパー
【0048】
[0048]第2のチューブ30はストッパー40も含む。ストッパー40は第2のチューブ30の遠位部分に固着され得る。ストッパー40は、図1図2に示すように、第2のチューブ30の遠位端33にしっかりと固着され得るのが好ましい。ストッパー40は、図12図14に示すように、心室中隔の右心室側に当接して静止するように構成される。ストッパー40は、心室中隔に当接して静止することによって、第2のアーム部分31にその事前形成された形状及び位置を維持させ続けるように構成されている。ストッパー40はまた、サークラージロープ50に張力が加わったときに、第2のアーム部分31を、三尖弁と直接接触させるのではなく浮動状態に保持する。更に、ストッパー40は、第2のチューブ30の遠位端33が心室中隔内へと前進するのを防止する。
【0049】
[0049]図7図8に示すように、ストッパー40は、中央にルーメン41を含むことができ、この場合、サークラージロープ50がルーメンを通過して移動することができる。ストッパー41のサイズ、形状、及び体積は、患者ごとに必要に応じて異なっていてもよいが、第2のアーム部分31よりも直径が大きいべきである。当業者は、ストッパー40が、図7に示すような円盤以外の形状を有し得ることを認識するであろう。
張力用サークラージロープ
【0050】
[0050]図4はサークラージロープ50を示す。サークラージロープ50はアーチ部分51を備える。図4図5に示すように、アーチ部分51は外側層52によって覆われる。外側層52はアーチ部分51上に一体に被覆される。外側層は、図8に示すように、より長く被覆されストッパー40に向かって先細にされ得るのが好ましい。アーチ部分51及びその外側層52は、サークラージロープ50に張力が加わったときに冠静脈及びその周囲の心臓組織を保護するように構成されている。
【0051】
[0051]サークラージロープ50は、ナイロンなどの合成材料、金属(すなわちステンレス鋼)、又はナイロンで被覆された金属、等で製作され得る。被覆部分52は生体適合性合成樹脂で製作され得る。
アンカー
【0052】
[0052]MLCデバイス10の好ましい実施形態は、アンカー70を更に備える。図16図17に示すように、アンカー70は、第1のアーム部分21上でヒンジ部分16の近くに配置されるのが好ましい。アンカー70は第1のアーム部分21に沿った他の場所にも配置され得る。
【0053】
[0053]図21図22は、第1のアーム部分21及び/又は第2のアーム部分31のいずれかに沿った、複数のアンカー40の位置を示す。好ましいアンカー40の位置がヒンジ部分16の近くの第1のアーム部分21に沿った円でマークされている。第1のアーム部分21及び第2のアーム部分31上の他の可能なアンカー場所が正方形でマークされている。アンカー70は、サークラージロープ50によって張力が加わり得る場合に、MLCデバイス10を所定位置に維持し、デバイス10の冠状静脈洞内への更なる前進を防止するように構成される。
【0054】
[0054]図17図19に示すように、アンカー70は、少なくとも1つのアンカーヘッド71と少なくとも1つのアンカーアーム72とを含み得る。アンカーヘッド71は図21に示すような好ましい係留部位に留まるように構成されている。係留アーム72は、第1のアーム部分21及び/又は第2のアーム部分31上にしっかりと固着されるように構成されている。複数のアンカー70が、第1のアーム部分及び/又は第2のアーム部分31上にしっかりと固着され得る。
僧帽弁ループサークラージ(MLC)手順
【0055】
[0055]意識下鎮静(n=3)又は全身麻酔(n=2)下で、(ペースメーカのようなポケットを介して)左鎖骨下静脈内及び大腿静脈内の両方に、19F×15cmイントロデューサシース(Oscor、Palm Harbor、フロリダ州)が配置され得る。この場合、操作者は右鼠径部のところに立つことができる。MRを緩和すべく相互作用的に張力を調整するために、麻酔下で経食道心エコー法(TEE)を、又は鎮静下で経胸壁心エコー法を使用してもよい。300秒を超える活性凝固時間を達成するためにヘパリンを投与してもよい。
【0056】
[0056]バルーン先端部冠状静脈洞案内カテーテル(Cello、Medtronic)が左鎖骨下静脈から大心静脈内へと配置され、加圧造影剤静脈造影法が実施される。冠状静脈洞ガイドを通して基本的な中隔穿通冠静脈内に2ルーメン0.014インチのマイクロカテーテル(Crusade、カネカメディックス、大阪府、日本)を軟質0.014インチガイドワイヤ(Whisper、Abbott、シカゴ、イリノイ州)に沿って配置し、その後これを使用して、剛直な先端部の0.014インチ末梢ガイドワイヤ(Astato XS20、朝日インテック株式会社、日本)を心室中隔を横切りRVOTに入るように導いてもよい。図10Aに示すように、バルーンウェッジカテーテルを介した冠静脈造影によって、ガイドワイヤが中を前進し得る基本的な中隔穿通冠静脈(矢じりマーク)を識別することができる。
【0057】
[0057]経大腿バルーンウェッジエンドホール型カテーテルを、大きい三尖弁口を通過させて肺動脈内へと前進させ、その後、右心室流出路(RVOT)内で標的及び捕捉システムとして機能するウォールステント/スネアの組合せと入れ替えることができる。移動するガイドワイヤはRVOTの中に入ると捕捉され、大腿静脈を介して外部化され得る。図10Bに示すように、冠静脈から渡ってきたガイドワイヤを捕捉するために、RVOT内に標的捕捉デバイスが配置され得る。
【0058】
[0058]サークラージロープ50は熱収縮管材(ポリエーテルブロックアミド、Cobalt Polymers、Cloverdale、カリフォルニア州)を使用してガイドワイヤに接続され、その後冠状静脈洞及び心室中隔を通って所定位置まで引き入れられる。このガイドワイヤの遠位先端部は、ループスネアを使用して大腿鞘から鎖骨下鞘へと移送され得る。図10Cに示すように、ガイドワイヤを、一体化したアーチ部分51(矢じりマーク)を含むサークラージロープ50と入れ替えることができる。
【0059】
[0059]次に、サークラージロープ50の2つの自由端55、56に沿ってMLCデバイス10を前進させることができる。図9は、シース内に収容されている第1のチューブ20及び第2のチューブ30の真っ直ぐにした第1のアーム部分21及び第2のアーム部分31を示す。サークラージロープ50が所定位置に入ると、MLCデバイス10の真っ直ぐにした第1のアーム部分21及び第2のアーム部分31は、第1のチューブ20のその遠位端23及び第2のチューブ30のその遠位端33を起点としてサークラージロープ50の2つの端部55、56を覆うように送られる。図11に示すように、MLCデバイス10が心臓内の所定位置にあるとき、第1のアーム部分21及び第2のアーム部分31は、その事前形成された形状に復元される。
【0060】
[0060]診断冠静脈造影によって、サークラージロープ50に組み込まれたアーチ状部分51の精密な位置決めが可能に成り得る。図10Dに示すように、張力がかかっている間、アーチ部分51によって、捕捉された冠静脈回旋枝の圧迫を防止することができる。
【0061】
[0061]意図する僧帽弁輪寸法の縮小及び僧帽弁逆流の緩和を達成するために、経胸壁心エコー法又はTEE中に、相互作用的に張力を加えてもよい。図10Eに示すように、この尾側左前斜位方向投影では、MLCデバイス10は僧帽弁輪平面を取り囲むように示されている。最後に、張力を左鎖骨下ポケットにおいてロックし、皮膚切開部を閉じることができる。図10Fに示すように、張力ロックデバイス58を左鎖骨下ポケットに埋め込むことができる。
MLC経大腿手順
【0062】
[0062]上述した手順に加えて、MLCの経大腿手順も実施可能であり得る。経大腿手順は以下のステップを含み得る:(1)大腿静脈にシースイントロデューサを挿入するステップ、(2)冠状静脈洞内に係合する案内カテーテルを大腿鞘を通して挿入するステップ、(3)0.014インチガイドワイヤを心室中隔内へと移動させ、右心室(RV)空洞内へと出すステップ、(4)ワイヤ捕捉器を大腿鞘を通してRV空洞内に配置し、出て来るガイドワイヤを把持するステップ、(5)ガイドワイヤが、大腿静脈の経路:下大静脈(IVC)-冠状静脈洞(CS)-RV空洞-右心房(RA)-IVC-大腿静脈を構成するように、捕捉器を用いてガイドワイヤを大腿鞘まで引き出すステップ、(6)ガイドワイヤの近位端を張力ロックシステム58を用いてサークラージロープ50に接続するステップ、(7)ガイドワイヤの遠位端を引くことによってガイドワイヤをサークラージロープ50と所定位置で入れ替えるステップ、(8)送達システムを用いて大腿鞘の中でMLCデバイスをサークラージロープ50上で前進させるステップ、(9)MLC10の張力が最適であるときに、MLCを所定位置に保持するためのアンカー70を固定するステップ、(10)MLCデバイスが所定位置にあるときに、心エコー図などのリアルタイム画像化を指針にして張力ロックデバイス58を通して好適な張力が伝えられるステップ、(11)特別な切断デバイスによってサークラージロープ50を切断するステップ。
【0063】
[0063]本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下に詳細に記載する実施形態を添付の図面と併せて参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本発明は以下で開示する実施形態に限定されず、様々な異なる形態で実施され得る。これらの実施形態は本発明の開示を完成させるために及び本発明の属する分野の当業者に本発明の範囲を完全に伝えるために提供されており、本発明は特許請求の範囲によってのみ規定される。
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