(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ポリエステルカーペットタイルまたはポリエステルカーペットストリップおよびポリエステルカーペットタイルまたはポリエステルカーペットストリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20241106BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20241106BHJP
D06M 17/04 20060101ALI20241106BHJP
E04F 15/10 20060101ALI20241106BHJP
D03D 15/283 20210101ALN20241106BHJP
D03D 15/513 20210101ALN20241106BHJP
D03D 15/587 20210101ALN20241106BHJP
D03D 1/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
A47G27/02 101A
A47G27/02 102
D06M17/00 C
D06M17/00 H
D06M17/04
E04F15/10 104A
D03D15/283
D03D15/513
D03D15/587
D03D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2022522254
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2020079239
(87)【国際公開番号】W WO2021074395
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-27
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】522148112
【氏名又は名称】ドゥ ポルテール デコ エスアー
【氏名又は名称原語表記】DE POORTERE DECO SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ベール スクリエ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-152159(JP,A)
【文献】特開2000-282347(JP,A)
【文献】特開2000-308604(JP,A)
【文献】特表2007-537379(JP,A)
【文献】特表2001-524610(JP,A)
【文献】特公平03-001966(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0233040(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03196344(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03192906(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03199678(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/076348(WO,A2)
【文献】特開2012-097373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G27/00-27/06
D03D15/00-15/68
D03D 1/00
D06M17/00-17/10
E04F15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
契約市
場に適したカーペットタイルまたはカーペットストリップであって、
本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)の縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンを含み、かつ、使用面としての前面および裏面を含む、機械的に織られた布地と、
本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)のニードルフェルトと、
前記ニードルフェルトと前記機械的に織られた布地との間の中間層と、を含み、
前記機械的に織られた布地の前記裏面にある一部の縦糸スレッドが、互いに少なくとも部分的に融合していることを特徴とする、カーペットタイルまたはカーペットストリップ。
【請求項2】
前記縦糸スレッドおよび横糸スレッドのスレッド糸番手が、1100dtex~4400dtexであることを特徴とする、請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
布地1cmあたりの縦糸スレッドの数が8~30の間であり、かつ布地1cmあたりの横糸スレッドの数が3~10の間であることを特徴とする、請求項1または2に記載のカーペット。
【請求項4】
前記カーペットタイルまたは前記カーペットストリップの重量が、最大で2000g/m
2であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項5】
前記機械的に織られた布地および前記ニードルフェルトが、前記中間層を補助的に利用して互いに積層されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項6】
前記中間層がPES接着剤を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項7】
前記カーペットタイルまたは前記カーペットストリップが、前記中間層において熱可逆性の共有相互作用を形成するための反応性分子を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項8】
前記機械的に織られた布地の前記裏面にある一部の前記横糸ヤーンが、一部の前記縦糸ヤーンと少なくとも部分的に融合していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項9】
前記カーペットタイルまたは前記カーペットストリップが、前記機械的に織られた布地と前記中間層との間に本質的に100%ポリエステル(PES)のメンブレンを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のカーペット。
【請求項10】
契約市
場に適したカーペットタイルまたはカーペットストリップの製造方法であって、
本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)の縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンを含み、かつ、使用面としての前面および裏面を含む布地を機械的に織るステップと、
本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)のニードルフェルトを製造するステップと、
中間層を用いて前記ニードルフェルトを前記布地に積層するステップと、
カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断するステップと、を含み、
前記積層する前に、加熱面に沿って機械的に織られた前記布地の前記裏面を向けて、機械的に織られた前記布地の前記裏面で一部の縦糸スレッドを少なくとも部分的に溶融するさらなるステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記積層するステップが、前記中間層において接着剤としてのPESの使用を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記積層するステップが、反応性分子を使用して、前記中間層において熱可逆性の共有相互作用を形成することを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記積層する前に、加熱面に沿って機械的に織られた前記布地の前記裏面を向けて、機械的に織られた前記布地の前記裏面で一部の前記横糸ヤーンを一部の前記縦糸ヤーンと共に、少なくとも部分的に溶融する追加のステップを含むことを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記カーペットタイルまたは前記カーペットストリップに切断するステップが、該カーペットタイルまたは該カーペットストリップの端部で前記縦糸スレッドおよび横糸スレッドの少なくとも一部を溶融することを含むことを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記積層する間に、本質的に100%ポリエステル(PES)メンブレンを機械的に織られた前記布地の前記裏面に積層する追加のステップを含むことを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、契約市場、特にオフィスおよび商業ビルに適したカーペットタイルまたはカーペットストリップに関する。
【0002】
第2の態様では、本発明はまた、契約市場、特にオフィスおよび商業ビルに適したカーペットタイルまたはカーペットストリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーペットは床の敷物としてよく知られており、オフィスおよび商業ビルの広いエリアで床の敷物としてよく利用される。通常、カーペットタイルまたはカーペットストリップが提供される。カーペットタイルは、長方形または正方形に切断され、並置させるように床面に取り付けられる。場合によっては、カーペットストリップは、幅の広いカーペットロールを縦に切断することによって得られる。カーペットストリップは、現場で床面に隣り合わせの形式で広げられる。しばしば、カーペットタイルまたはカーペットストリップは、現場でサイズに合わせて切断される必要がある。これは、例えば、カーペットタイルまたはカーペットストリップを部屋の隅または端に設置する場合に必要となる。オフィスおよび商業ビルでは、設置中または設置後にカーペットタイルまたはカーペットストリップを、ある形状で切り抜くのは珍しいことではない。これは、例えば、床領域にソケットまたは追加のネットワークアクセスを設置するため、カーペットタイルまたはカーペットストリップにくぼみを要する場合に必要となり得る。
【0004】
オフィスおよび商業ビルのカーペットタイルおよびカーペットストリップには、重い負荷がかかっている。毎日多くの人が、カーペットタイルまたはカーペットストリップの上を歩行する。これには、契約市場用のカーペットタイルまたはカーペットストリップが高い耐摩耗性を有する必要がある。オフィスまたは商業ビルのレイアウトも頻繁に変更され得る。スペースには他の用途が与えられ得る。したがって、カーペットタイルまたはカーペットストリップは、容易に設置、交換およびリサイクルできることが好ましい。
【0005】
オフィスまたは商業ビルのフレキシブルなデザインのため、実際の床面よりも高い位置に上げ床が選択されることがしばしばある。実際の床面と上げ床との間のスペースには、すべてのユーティリティのための空間がある。この上げ床の存在のために、該上げ床をできるだけ緩和する目的で、カーペットタイルまたは軽いカーペットストリップを使用することが推奨される。さらには、軽量のカーペットタイルまたはカーペットストリップは、設置者が持ち運びするのにより人間工学的である。
【0006】
オフィスまたは商業ビルでは、多くの場合、防火に関する厳しい要件があり、カーペットタイルおよびカーペットストリップは耐火性であることが要求される。カーペットタイルまたはカーペットストリップは、少なくとも火災基準EN13501-12007に準拠したCfl-s1分類の要件を満たしていなければならない。
【0007】
準拠しなければならない他の規格は、せん断強度の決定のためのEN15114、オフィスチェアの試験方法のためのEN985、繊維および積層床材に静電気を発生させる傾向に関するISO6356、さまざまな水条件および熱条件による寸法変化の決定に関するISO2551である。
【0008】
EP0176346は、カーペットタイルを記載している。カーペットタイルは、そこから立ち上がるパイルヤーンを備えた一次カーペットベースと、一次カーペットベースの下の発泡ベース層と、一次カーペットベースを発泡ベース層に付け合わせる熱可塑性材料とを含み、熱可塑性材料は、安定化材料の一体層を有し、発泡ベース層は、バッキング材料と、バッキング材料に積層された高密度発泡体とを含む。
【0009】
JP2000308604は、防塵カーペット用のベース布を記載している。
【0010】
JP2000282347は、パイルカーペットを記載している。
【0011】
JP2005152159は、織りカーペットを記載している。
【0012】
WO2005/113229は、ビニール床およびソフトパッド入りカーペットのハイブリッドを記載している。
【0013】
EP3192906は、可融性のスレッドを用いたほつれにくいカーペットを記載している。
【0014】
WO2012/076348は、繊維製品を製造するためのプロセス、および成果物である繊維製品を記載している。
【0015】
EP3196344は、天然のヤーンを用いたほつれにくいカーペットを記載している。
【0016】
EP0176346はいくつかの欠点を有する。そのようなカーペットタイルの場合、一次カーペットベースは、パイルヤーンがPVC接着剤(adhesive)または融合によって結合されたタフテッドカーペットまたはボンデッドカーペットを含む。設置中にカーペットタイルのサイズまたは切断形状に切断すると、タフテッドカーペットおよびボンデッドカーペットの両方の切端でパイルヤーンを集める層が損傷する。パイルヤーンの中には端部で解けるものがあり、カーペットタイルは切端でほつれる。これにより、接合箇所が顕わになり、カーペットタイルの損傷を引き起こす。
【0017】
パイルヤーンを使用すれば、厚くて心地良い一次カーペットベースが得られる。その欠点は、パイルヤーンは、カーペットがオフィスおよび商業ビルなどのような重い負荷がかかっている状況での使用にはそれほど適していないことである。パイルヤーンは、頻繁にカーペットの上を歩いた結果、急速に摩耗し、例えば手押し車を使って書類を運ぶことを困難にする。
【0018】
発泡ベース層および熱可塑性材料を使用することで、EP0176346に準拠した重いカーペットタイルとなってしまう。これら2つの層のみを一緒に用いるだけで、2900g/m2の重量のカーペットタイルとなり得る。これは上げ床にとって重い負荷である。安定化材料の一体層を有する支持材料および熱可塑性材料を含む発泡ベース層の使用は、それらに様々な材料が用いられているため、カーペットタイルをリサイクルすることを困難にする。これは、オフィスおよび商業ビルのカーペットタイルがしばしば交換されることを考慮すると、大きな欠点である。パイルヤーンのタフティングまたは結束(binding)をすることで、潜在的にパイルヤーンのリサイクルを複雑にするか、または部分的に不可能にする可能性がある。
【0019】
最後に、発泡ベース層は非常に可燃性であり、オフィスや商業ビルの使用には適していない。
【0020】
本発明はこれらの不利益に対する解決策を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0021】
第1の態様において、本発明は請求項1に記載の発明品に関する。
【0022】
そのようなカーペットタイルまたはカーペットストリップの利点は、機械的に織られた布地の裏面にある一部の縦糸スレッドが少なくとも部分的に互いに融合していることである。カーペットタイルまたはカーペットストリップを設置中または形状の切断中にそれらを所定のサイズに切断する場合、縦糸スレッドの少なくとも一部は互いに結束したままであるため、カーペットタイルまたはカーペットストリップの強度が維持され、カーペットタイルまたはカーペットストリップの切端でのほつれが少なくなる。この利点は、製造プロセス中にカーペットタイルまたはカーペットストリップを切断する場合にも当てはまる。
【0023】
第2の利点は、布地自体がすでに非常に強く、寸法安定性が高いため、オフィスまたは商業ビルを繰り返し通過したり、手押し車を用いたりした結果かかる負荷に対して、ほつれる速度が遅くなることである。縦糸スレッド、したがって横糸スレッドも、互いの動きの自由度が制限されているため、耐摩耗性が増加する。
【0024】
布地はすでに融着継手(fusion joints)で補強されているため、布地を補強したり、布地およびニードルフェルトを積層したりするための重い中間層を用いる必要がない。より軽い中間層が、布地およびニードルフェルトのみを積層するために用いられ得る。これにより、カーペットタイルまたはカーペットストリップの単位面積あたりの重量の低減につながる。接着剤を縦糸スレッドおよび横糸スレッドと部分的に混合する必要がないため、布地とニードルフェルトとの分離およびリサイクルがより容易になる。
【0025】
さらに、本発明は、布地およびニードルフェルトの両方に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)を使用する。その結果、カーペットタイルまたはカーペットストリップは可燃性に関するFAR25.853を満たす。
【0026】
カーペットタイルまたはカーペットストリップはまた、少なくとも火災基準EN13501-12007に準拠したCfl-s1分類の要件も満たす。さらなる利点は、難燃性ポリエステル(PES)のみを使用しているため、布地およびニードルフェルトのリサイクル処理が同時に行われることである。
【0027】
発明品の好ましい実施形態は、請求項2から9に記載されている。
【0028】
特別な実施形態において、本発明は、請求項7に記載の発明品に関する。中間層では、PESは、布地およびニードルフェルトを積層するための接着剤としても使用される。これにより、リサイクル性がさらに向上する。もはや、布地とニードルフェルトとを分離する必要さえない。中間層は、布地およびニードルフェルトと一緒に処理してリサイクルすることもできる。
【0029】
第2の態様において、本発明は請求項10に記載の方法に関する。布地およびニードルフェルトが積層される前に、布地は加熱面に沿って導入され、相互的機械織り、すなわち機械的に織られた布地の裏面にある縦糸スレッドの一部を少なくとも部分的に溶融させるため、前記方法は、カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断するときに、カーペットタイルまたはカーペットストリップが切端でほつれにくいという他の利点を有する。さらに、十分に強く、寸法安定性を有する布地が得られる。布地は、軽い中間層を用いてニードルフェルトに積層され得、布地およびニードルフェルトは後にリサイクルのために容易に分離され得る。
【0030】
発明品の好ましい実施形態は、従属請求項11から15に記載されている。
【0031】
特別な実施形態において、本発明は請求項14に記載の発明品に関する。カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断中、縦糸ヤーンと横糸ヤーンの一部が少なくとも部分的に互いに融合する。これにより、切端がさらに強化され、切端のほつれがさらに低減される。
【0032】
第3の態様において、本発明は、第2の態様に係る方法を用いた、第1の態様に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップの製造に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】本発明の一実施形態に係る布地とニードルフェルトとの間の結合の分子モデルを概略的に示した図である。
【
図3】本発明の方法の一実施形態に係る、一部の縦糸スレッドを互いに少なくとも部分的に融合するのに適したデバイスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
特に明記しない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の説明で使用されるすべての用語は、本発明の技術分野の当業者によって一般的に理解される意味で使用される。本発明の説明をよりよく判断するために、以下の用語が明示的に説明される。
【0035】
「One」、「a」、および「the」は、文脈で明確に別のことを暗示していない限り、本書では単数形および複数形の両方を指す。「区分(segment)」とは、例えば、1つ以上の区分を意味する。
【0036】
本書で「約(about)」または「おおよそ(approximately)」を使用する場合、測定可能な量、パラメータ、時間またはモーメントなどは、引用符の+/-20%以下、好ましくは引用符の+/-10%以下、より好ましくは引用符の+/-5%以下、さらにより好ましくは引用符の+/-1%以下、およびさらにより好ましくは引用符の+/-0.1%以下の変動を意味するが、そのような変動は上記の発明に適用される限りにおいてである。ただし、「約」または「おおよそ」という用語を用いて使用される量の値は、それ自体で具体的に表現されなければならない。
【0037】
「含む(comprise)」、「~構成される(composed of)」、「含む(include)」、「提供される(provided for)」、「含有する(contain)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」という用語は同義語であり、以下の存在を示す包括的またはオープン形式の用語であり、先行技術に知られている、または記載されている他の構成要素、特徴、要素、部材、フェーズを除外または排除しない。
【0038】
終点による数値間隔の引用は、これらの終点を含む、終点間のすべての整数、分数および/または実数を含む。
【0039】
「熱可塑性」という用語は、特定の温度より高い温度で屈曲、混錬または液化することができ、かつ、冷却後に実質的に硬化するポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーの例として、これらに限定されないが、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、および他のビニル樹脂およびビニリデン樹脂、ならびにそれらのコポリマーなどのビニル含有熱可塑性プラスチック;低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンならびにそれらのコポリマーなどのポリエチレン化合物;ABS、SAN、ポリスチレンおよびそのコポリマーなどのスチレン化合物;ポリプロピレンおよびそのコポリマー;飽和および不飽和ポリエステル;アクリル;ポリアミド;アセチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂および硫化物樹脂などのエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0040】
「フロート(float)」という用語は、布地の表面に現れるヤーンのセクションを指す。フロートは、上部フロートおよび/または下部フロートであり得る。「上部フロート」という用語は、布地の上部に現れるヤーンのセクションを指す。上部フロートは、縦糸:横糸の結束密度が2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1またはそれ以上の結束パターンで形成される。これは、各横糸スレッドは少なくとも2本、少なくとも3本などの縦糸スレッドの上に浮いている(float)ことを意味する。あるいは、各縦糸スレッドは少なくとも2本、少なくとも3本などの横糸スレッドの上に浮いている。「下部フロート」という用語は布地の下部に現れるヤーンのセクションを指す。下部フロートは、縦糸:横糸の結合密度が1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10以下の結合パターンで形成される。これは、各横糸ヤーンは少なくとも2本、少なくとも3本などの縦糸ヤーンの下に浮いていることを意味する。あるいは、各縦糸スレッドは少なくとも2本、少なくとも3本などの横糸スレッドの下に浮いている。「結束」という用語は、縦糸スレッドと横糸スレッドとを織り合わせて布地を形成することを指すのに用いられる。
【0041】
「横糸フロート」という用語は、横糸スレッドによって形成されるフロートを指す。「縦糸フロート」という用語は、縦糸スレッドによって形成されるフロートを指す。
【0042】
ヤーン糸番手は、ヤーンの厚さを表す。その測定値は、1本のヤーンの重量と長さとの比率として示される。重量のナンバリングでは、固定された1本のヤーンの長さの重量が決定される。長さのナンバリングでは、固定された1本のヤーンの重さの長さが決定される。Texが、重量ナンバリングの例であり、texは、1000mのヤーンのグラム単位の重量を示す。Dtxが、より頻繁に使用され、10,000mのヤーンのグラム単位の重量である。重量ナンバリングの別の例は、デニールであり、denと表示され、9000mのヤーンのグラム単位の重量が示される。フィラメントを含むヤーンの場合、フィラメントにはデニールの重量ナンバリングも用いられる。ラスト・パー・フィラメント( Last per filament)またはDPFは、ヤーンにおける1つのフィラメントの重量ナンバー(weight number)を指す。
【0043】
「ほつれ(fraying)」という用語は、本願明細書では、カーペットの側面のスレッドが、剥がされて明確に見えるようになる現象を描写するために用いられる。カーペットの切断は、ほつれの高いリスクを招く。これは、切断プロセス中、スレッドおよび/またはスレッド間の接続部が切断され、その結果、切断面内のスレッドがより容易かつ明確に見えるようになり得るからである。
【0044】
第1の態様において、本発明は契約市場、特にオフィスおよび商業ビルに適したカーペットタイルまたはカーペットストリップに関する。
【0045】
一実施形態によれば、発明品は、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)の縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンを含み、かつ、使用面としての前面および裏面を含む、機械的に織られた布地(machine or mechanically woven fabric)と、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)のニードルフェルトと、該ニードルフェルトと該機械的に織られた布地との間の中間層と、を含み、該機械的に織られた布地の裏面にある一部の縦糸スレッドは、互いに少なくとも部分的に融合している。
【0046】
布地は、前面および裏面からなる。前面は、オフィスまたは商業ビルディングで通行人が歩いたり、手押し車が進んだりする使用面である。設置後、カーペットタイルまたはカーペットストリップの見える部分である。
【0047】
織られた布地は、布地またはニードルフェルトのようなベースを必要とせず、それによって、パイルスレッドが貫通するというタフテッドカーペットに優る利点を有する。布地にベースが存在しないことによって、タフテッドカーペットと比較して重量を低減させることができる。さらに、タフテッドカーペットはしばしば長パイルであり、カートで進むのを困難にする。さらには、そのような長パイルのマットはより早く摩耗する。
【0048】
布地は、滑らかな布地であることが好ましい。パイル布地は、手押し車を使用するときに長パイルのタフテッドカーペットと同じ欠点を有する。パイル布地は、より早く摩耗することになる。パイル布地の第2の欠点は、パイルを形成するために使用されるパイルヤーンのほかに、縦糸ヤーンもまた、パイルを結束するための追加のスレッドを含むということである。その結果、滑らかな布地と比較して布地が重くなる。
【0049】
布地は、滑らかな結合を有することが好ましい。滑らかな結合では、各横糸スレッドは縦糸スレッドの上下に交互に延在し、各縦糸スレッドは横糸スレッドの上下に交互に延在する。これが最も簡単かつ考えうる強力な連結である。オフィスおよび商業ビルの通行人による、ならびに手押し車による布地への日常的な重い負荷が、縦糸スレッドおよび横糸スレッドを引き離し、寸法安定性を低減させ得る。強い結合はこれに対抗するのに有利である。さらに、強い結合は、オフィスまたは商業ビルの通行人の負荷、ならびに手押し車の負荷の影響下において、確実に縦糸ワイヤーおよび横糸ワイヤーを互いに対してあまり動かなくさせ、そのため、ワイヤー間に摩擦が少ないので、摩耗が少ない。これは、例えば通行人の靴や手押し車の車輪での摩擦によるワイヤーの摩耗に影響を与えない。
【0050】
別の実施形態では、布地内の結合は横糸スレッドである。各横糸スレッドは、2本の並置された縦糸スレッドの上と下とを交互に延在し、各縦糸スレッドは、1本の横糸スレッドの上と下とを交互に延在する。これが滑らかな結合とは異なる視覚効果を提供する。横糸スレッドのみが、1本の横糸ループにおいて2本の並置された縦糸スレッドの上または下を通過するため、一層強い結合となる。
【0051】
布地は、上部および下部の両方のフロートとも、限られた数のフロートを有することが好ましい。フロートは、パターン、エンブレムまたはしるしを布地へ織り込むために、様々に色付けされたヤーンと組み合わせて使用され得る。フロートを使用することの欠点は、滑らかな結合から偏りを生じさせ、したがって布地の結合を局所的に弱めてしまうことである。フロートは、好ましくは5:1以下かつ1:5以上の結合密度、より好ましくは3:1以下かつ1:3以上の結合密度、さらにより好ましくは2:1以下かつ1:2以上の結合密度を有する。
【0052】
一実施形態では、布地はジャカード布地である。ジャカード布地は、織機上のフレームでは織られ得ない複雑なパターンおよび/またはエンブレムを含む。フレームを用いて織るということは、単一のフレームを通過するすべての縦糸スレッドが、布地の各横糸スレッドの位置で、全てが横糸スレッドの一方の側か、または全てが横糸スレッドの他方の側か、のいずれか一方に配置されていることを意味する。ジャカード布地は、ジャカード織機を使用して織られる。ジャカードは、他の縦糸スレッドの位置と独立して、個々の縦糸スレッドを横糸スレッドの片側または他方の側に位置させることを可能にする。
【0053】
布地は、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)の縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンからなる。PESは非常に強く、硬質であり、寸法安定性が良く、低いクリープ性を有する。したがって、高負荷の下での使用に適している。該ヤーンはカビおよび細菌によって攻撃されない。このことは、例えば、オフィスまたは商業ビル内で、コーヒーまたは他の飲料をこぼす可能性があり、それによってカビおよび細菌を招き得るので有利である。PESは液体をほぼ吸収しない。酸、酸化剤および希釈アルカリ洗剤に対しては十分に耐性がある。PESは蒸気で滅菌され得る。これらの特徴のおかげで、布地は効率的かつ迅速な洗浄に適している。これは、洗浄業者にとっては稼働時間が限られるために、オフィスまたは商業ビルにとって有利である。
【0054】
難燃性PESは優れた耐熱性を有する。それはほぼ可燃性ではなく、火炎を消滅させ、結果、煙の発生を制限する。これらの特徴のおかげで、少なくとも火災基準EN13501-12007に準拠したCfl-s1分類の要件を満たすことができる。
【0055】
難燃性PESは優れた耐熱性を有する。難燃性PESはほぼ可燃性ではなく、火炎を消滅させ、結果、煙の発生を制限する。これらの特徴のおかげで、可燃性に関してFAR25.853に準拠することが可能となる。カーペットタイルまたはカーペットストリップは、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)のニードルフェルトからなる。したがって、ニードルフェルトは、少なくとも火災基準EN13501-12007に準拠したCfl-s1分類の要件を満たす。
【0056】
カーペットタイルまたはカーペットストリップは、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)のニードルフェルトからなる。したがって、ニードルフェルトは可燃性に関するFAR25.853基準を満たす。
【0057】
ニードルフェルトは不織布である。ニードルフェルトの厚さは、1mm~8mm、好ましくは1mm~6mm、より好ましくは1mm~5mm、さらにより好ましくは1mm~4mmである。
【0058】
ニードルフェルトは、中間層を補助的に利用して布地の裏面に取り付けられる。ニードルフェルトは、布地を機械的に補強するのに適している。ニードルフェルトは、薄い端部を有するカーペットタイルまたはカーペットストリップに剛性を与え、カーペットタイルまたはカーペットストリップに高い寸法安定性を与え、カーペットタイルまたはカーペットストリップ上を歩く快適性を高め、オフィスまたは商業ビルの遮音性、ひいては音響効果を改善するのに適している。
【0059】
ニードルフェルトは不織布であるため、そのカーペットタイルまたはカーペットストリップは、オフィスまたは商業ビルでの迅速な設置および交換に適している。カーペットタイルまたはカーペットストリップは、ベルクロストリップを使用して床面または上げ床に取り付けられ得る。ベルクロストリップは、床面または上げ床に接着される。ベルクロストリップのホック部が、ニードルフェルトのスレッドに引っ掛けられ、カーペットタイルまたはカーペットストリップは固定されている。カーペットタイルまたはカーペットストリップは、ベルクロストリップからカーペットタイルまたはカーペットストリップを引っ張り取ることで簡単に取り外すことができる。ベルクロストリップは再利用可能で、床面または上げ床に接着したままの状態である。本発明に係る新しいカーペットタイルまたはカーペットストリップは、すでに存在するベルクロストリップに接着することによって容易に設置することができ、その結果、該新しいカーペットタイルまたはカーペットストリップは固定される。本発明に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップはまた、接着剤、両面接着剤によって床面もしくは上げ床に設置することも、または床面もしくは上げ床から容易に引き剥がすこともできることは当業者には明らかである。
【0060】
ベルクロテープは難燃性材料から作製されており、可燃性に関するFAR25.853(a)(1)(ii)基準を満たす。適切な材料の非限定的な例として、ポリアミドPA6がある。その重量は、好ましくは0.60kg/m2未満、より好ましくは0.55kg/m2未満、さらにより好ましくは0.45kg/m2未満である。ベルクロテープは、テープの片側に、スレッドを引っ掛けるように構成されたホック部と、反対側に接着剤とを備えている。該接着剤の接着強度は、少なくとも10.0N/cm、好ましくは少なくとも12.0N/cm、さらにより好ましくは少なくとも13.0N/cmである。ベルクロストリップのホック部からカーペットタイルを引っ張るのに必要な力は、少なくとも0.60N/cm、好ましくは少なくとも0.70N/cm、さらにより好ましくは少なくとも0.80N/cmである。ベルクロテープのせん断力は、少なくとも20N/cm2、好ましくは少なくとも25N/cm2、さらにより好ましくは少なくとも29N/cm2である。ループ張力は、少なくとも5N/cm2、好ましくは少なくとも7N/cm2、さらにより好ましくは少なくとも8N/cm2である。適切なベルクロテープの非限定的な例として、ベルクロ社のHTH577がある。
【0061】
布地の最大重量は、1100g/m2である。ニードルフェルトの最大重量は、900g/m2である。中間層の重量は、最大で250g/m2である。したがって、カーペットタイルまたはカーペットストリップの総重量は、最大で2250g/m2である。標準のカーペットタイルまたはカーペットストリップの重量は、最大で3000g/m2以上となり得る。これにより、本発明に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップは、オフィスまたは商業ビル、特に上げ床での使用に適したものとなる。該カーペットタイルまたはカーペットストリップはまた、設置者が持ち運びするのにより人間工学的である。
【0062】
機械的に織られた布地の縦糸スレッドの一部は、裏面で少なくとも部分的に一緒に溶融している。1本の縦糸スレッドが、並置された縦糸スレッドと好ましくはその長さの少なくとも10%にわたって、より好ましくはその長さの少なくとも20%にわたって、さらにより好ましくは少なくとも30%にわたって、さらにより好ましくはその長さの少なくとも50%にわたって融合している。カーペットタイルまたはカーペットストリップを設置中またはカーペットタイルまたはカーペットストリップの形状の切断中に所定のサイズに切断する場合、縦糸スレッドの少なくとも一部は相互に結束したままであるため、カーペットタイルまたはカーペットストリップの強度および寸法安定性が維持され、カーペットタイルまたはカーペットストリップの切端でのほつれが少なくなる。この利点は、製造プロセス中にカーペットタイルまたはカーペットストリップを切断する場合にも当てはまる。
【0063】
一部の縦糸スレッドは融合しているため、縦糸スレッドは限られた範囲でしか相互に移動できない。その結果、スレッド間の摩擦が減り、摩耗が少なくなる。これにより、布地およびカーペットタイルもしくはカーペットストリップが強化される。先行技術によるカーペットタイルまたはカーペットストリップの場合、布地は、布地の結び目に接着する接着剤の層または融着(fusion)コーティングを適用することによって補強される。次いで、接着剤または融着コーティングが布地のスレッドの間に浸透しなければならないので、単に布地をニードルフェルトに取り付けるよりも多くの接着剤または融着コーティングが必要である。したがって、本発明に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップの場合、先行技術と比較して追加の重量が減少する。さらなる利点は、接着剤または融着コーティングがスレッドの間に浸透する必要がないため、布地スレッドおよびニードルフェルトのリサイクルが容易になることである。
【0064】
一実施形態によれば、縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンの一部は、カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部で互いに少なくとも部分的に融合している。これにより、切端がさらに強化され、切端でのほつれがさらに少なくなる。カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部をステッチもしくは追加の接着剤の層、または端部へのコーティングによって補強する必要がないため、結果として重量が低減される。
【0065】
縦糸スレッドおよび横糸スレッドは、好ましくは縦糸スレッドと横糸スレッドとの間の交差部分の少なくとも10%、より好ましくは該交差部分の少なくとも20%、さらにより好ましくは該交差部分の少なくとも30%、さらにより好ましくは該交差部分の少なくとも50%が融合している。
【0066】
一実施形態によれば、縦糸スレッドおよび横糸スレッドのスレッド糸番手は、1100dtex~4400dtexである。
【0067】
ヤーン糸番手が高いほど、より重くてより厚いヤーンであることを意味する。高い寸法安定性を備えた重くて強い布地には、高いヤーン糸番手が示される。軽くて柔らかい布地には、低いスレッド糸番手が示される。カーペットタイルまたは輸送用カーペットは、好ましくは、軽くて強く、オフィスまたは商業ビルにおいて通行人による日常的な負荷の下でその形状を保持する。カーペットタイルまたはカーペットベルトの場合、1100dtex~4400dtex、好ましくは1500dtx~3700dtex、さらにより好ましくは1800dtex~3100dtexのヤーン糸番手が示される。上記の場合、カーペットタイルまたはカーペットストリップは十分に軽くて強い。
【0068】
縦糸スレッドおよび横糸スレッドは、フィラメントを含む。軽量の布地を得るために、軽量のフィラメントが示される。フィラメントの重量ナンバーは、2DPF~20DPF、好ましくは2DPF~15DPF、より好ましくは2DPF~10DPF、さらにより好ましくは2DPF~5DPFである。
【0069】
代替の実施形態では、十分な寸法安定性を達成するために布地をより強くする必要がある。この場合、わずかに強いフィラメントが示される。フィラメントの重量ナンバーは、2DPF~20DPF、好ましくは5DPF~20DPF、より好ましくは8DPF~20DPF、さらにより好ましくは10DPF~20DPFである。
【0070】
一実施形態によれば、横糸スレッドおよび縦糸スレッドはいわゆる連続フィラメントスレッドと呼ばれており、該スレッドは連続フィラメントを含む。
【0071】
一実施形態によれば、横糸ヤーンおよび縦糸ヤーンはいわゆる連続フィラメントヤーンと呼ばれており、該ヤーンは連続フィラメントを含み、ヤーンのテクスチャーは、小さなループが形成されるエアジェットの助けを借りて改変される。これにより、さらなる断熱性および強度が付与される。
【0072】
一実施形態において、布地1cmあたりの縦糸スレッドの数は8~30の間であり、かつ布地1cmあたりの横糸スレッドの数は3~10の間である。
【0073】
布地1cmあたりの縦糸スレッドの数はまた、布地の密度も決定する。密度のより高い布地はより強く、寸法安定性がより高くなるが、より重くもなる。布地1cmあたりの縦糸スレッドの数が少ないと、布地は軽くて柔らかくなるが、強度が低下し、寸法安定性が低下する。布地1cmあたりの縦糸スレッドの数は8~30、好ましくは13~25、より好ましくは15~20である。その場合、カーペットタイルまたはカーペットストリップは十分に軽くて強い。
【0074】
布地1cmあたりの横糸スレッドの数もまた、布地の密度を決定する。密度のより高い布地はより強く、寸法安定性がより高くなるが、より重くもなる。布地1cmあたりの横糸スレッドの数が少ない場合、布地は軽くて柔らかくなるが、強度が低下し、寸法安定性が低下する。布地1cmあたりの横糸スレッドの数は3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~7である。その場合、カーペットタイルまたはカーペットストリップは十分に軽くて強い。
【0075】
一実施形態において、カーペットタイルまたはカーペットストリップの単位面積あたりの重量は、最大2000g/m2である。
【0076】
カーペットタイルまたはカーペットストリップの重量は、布地、中間層およびニードルフェルトの重量によって決まる。カーペットタイルまたはカーペットストリップの重量は、布地、中間層およびニードルフェルトを慎重に選択することで最適化され得る。より重い布地は先天的に強く、良好な寸法安定性のためにより薄いニードルフェルトを必要とする。機械的に織られた布地の縦糸スレッドの一部は、裏面で少なくとも部分的に互いに融合しているため、中間層は最小限である。中間層は、布地とニードルフェルトとの間の接続部分である。布地が軽いほど、寸法安定性を高めるためにわずかに厚いニードルフェルトが必要である。中間層は常に最小限であり得る。スレッド糸番手、布地1cmあたりの縦糸スレッドの数および布地1cmあたりの横糸スレッドの数、ならびに適切なニードルフェルトによって決定される布地の厚みの良好な選択をすることによって、カーペットタイルまたはカーペットストリップの重量は、最大2000g/m2、好ましくは最大1900g/m2、さらにより好ましくは最大1800g/m2、さらにより好ましくは1700g/m2である。
【0077】
一実施形態において、機械的に織られた布地およびニードルフェルトは、中間層を補助的に利用して互いに積層される。
【0078】
機械的に織られた布地およびニードルフェルトは、相互に結束している。ニードルフェルトは布地に結合されているため、寸法安定性を提供し、布地を強化する。布地およびニードルフェルトは、中間層を補助的に利用して互いに積層される。
【0079】
一実施形態において、中間層はPES接着剤を含む。
【0080】
PESを接着剤として用いることにより、カーペットタイルまたはカーペットストリップは簡単にリサイクルされ得る。布地、ニードルフェルトの両方、および中間層の接着剤にPESが含有されているため、カーペットタイルまたはカーペットストリップ全体がまとめてリサイクルされ得る。布地とニードルフェルトとを分離する必要はない。PES接着剤は、例えば、PES融合接着剤フィルム、PES融合粉末または他の適切な手段である。
【0081】
一実施形態によれば、カーペットタイルまたはカーペットストリップは、中間層において熱可逆性の共有相互作用(thermoreversible covalent interactions)を形成するための反応性分子を含む。
【0082】
この実施形態において、共有相互作用は、カーペットタイルまたはカーペットストリップを加熱することによって逆転する。これが、カーペットタイルまたはカーペットストリップの単純なリサイクルに寄与する。反応性分子間の反応を逆転させることにより、布地とニードルフェルトとを結束している中間層の元来の結合構造が、より小さな分子に分解される。上記のより小さな分子は、従来の接着剤または融着コーティングよりも、布地およびニードルフェルトから容易に取り除くことができる。例えば、残存した該より小さな分子を穏やかな溶媒に溶解してから、これらの分子を該溶媒から回収することができる。また、例えば、分子を布地のスレッドおよび/またはニードルフェルトフィラメントと混合することによって、該分子を該布地および/または該ニードルフェルトと一緒にリサイクルすることも考えられる。
【0083】
熱可逆性の共有反応はすでに化学分野で知られている。非網羅的な例のリストは、マイケル反応、ニトロソ二量化反応、エステル化合物が形成される環状無水物反応、ウレタン形成反応、脂肪族イオン形成反応、およびフェノール-アズラクトン付加物形成(adduction formation)反応である。
【0084】
別の実施形態によれば、反応は、共役ジエン基を含む第1の分子と、ジエノフィル基を含む第2の分子との間で生じる。共役ジエン基とジエノフィル基との間のこのような反応は、ディールス・アルダー反応と呼ばれる。ディールス・アルダー反応の利点は、比較的低温で熱可逆性が生じ得ることである。これにより、布地およびニードルフェルトへの物理的および化学的損傷を防ぐことができる。
【0085】
共役ジエンは、単結合によって隔てられた2つの二重結合を含む分子構造を有する非環式水素である。共役ジエン基は、炭素および水素以外の原子を含む分子の一部であり得る。ジエノフィルは、アルケンとジエンとの反応のアルケン成分(炭素の二重結合)である。ジエノフィル基は、炭素および水素以外の原子を含む分子の一部であり得る。
【0086】
別の実施形態によれば、ジエン基は、フラン(フルフリルなど)、アントラセン、チオフェンまたはピロールである。ジエノフィル基は、マレイミド、フマル酸塩、マレイン酸塩またはアルキレンである。ジエノフィル基は、マレイミド、フマル酸塩、マレイン酸塩またはアルキレンである。上記の基は、本発明での使用に適している。明らかに、この実施形態は、他のジエン基および/またはジエノフィル基の使用を排除するものではない。
【0087】
一実施形態において、機械的に織られた布地の裏面の一部の横糸ヤーンは、少なくとも部分的に一部の縦糸ヤーンと溶け合っている。
【0088】
横糸スレッドの一部は縦糸スレッドと溶け合っているため、横糸スレッドおよび縦糸スレッドは、限られた範囲でしか相互に移動し得ない。したがって、横糸スレッドおよび縦糸スレッドの交点の一部は固定される。これにより、寸法安定性が高まり、相互のスレッド間の摩擦が減少し、摩耗も減少する。これにより、布地ならびにカーペットタイルまたはカーペットストリップが強化される。先行技術による布地を補強するための解決策では、布地は、布地の結び目に接着する接着剤の層または融着コーティングを付与することによって補強される。次いで、接着剤または融着コーティングが布地のスレッドの間に浸透しなければならないので、単に布地をニードルフェルトに取り付けるよりも多くの接着剤または融着コーティングが必要である。したがって、本発明に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップの場合、先行技術と比較して追加の重量が減少する。さらなる利点は、接着剤または融着コーティングがスレッドの間に浸透する必要がないため、布地のスレッドおよびニードルフェルトのリサイクルが容易になることである。
【0089】
一実施形態において、カーペットタイルまたはカーペットウェブは、機械的に織られた布地と中間層との間に本質的に100%ポリエステル(PES)のメンブレンを含む。
【0090】
メンブレンもまた不織布あり、とても薄い。メンブレンの厚さは、最大で0.5mm、好ましくは最大で0.3mm、さらにより好ましくは最大で0.2mm、さらにより好ましくは最大で0.1mmである。メンブレンの重量は、最大で150g/m2、好ましくは最大で100g/m2、さらにより好ましくは最大で50g/m2、さらにより好ましくは最大で40g/m2である。
【0091】
100%ポリエステル(PES)のメンブレンは、カーペットタイルまたはカーペットストリップの完全なリサイクルを保証する。
【0092】
カーペットタイルの寸法が限られているため、機械的に織られた布地の寸法安定性は、カーペットの寸法安定性よりもさらに制限され得る。その結果、カーペットタイルは設置後に収縮し、カーペットタイル間の接合箇所が顕わになる可能性がある。これは、カーペットストリップの長手方向を横切る方向にあるカーペットストリップの場合にも当てはまる。設置後のカーペットストリップの収縮の結果として、カーペットストリップ間の通路がより顕わになる。機械的に織られた布地と中間層との間のメンブレンは、カーペットタイルまたはカーペットストリップの作業面に平行な全方向におけるカーペットタイルまたはカーペットストリップの寸法安定性を高めるのに適している。
【0093】
第2の態様において、本発明は、契約市場、特にオフィスおよび商業ビルに適したカーペットタイルまたはカーペットストリップの製造方法に関する。
【0094】
一実施形態によれば、該方法は、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)の縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンを含み、かつ、使用面としての前面および裏面を含む布地を機械的に織るステップと、本質的に100%熱可塑性難燃性ポリエステル(PES)のニードルフェルトを製造するステップと、中間層を用いてニードルフェルトを前記布地に積層するステップと、カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断するステップと、を含む方法であって、積層する前に前記ニードルフェルトを前記布地に導入し、中間層を補助的に利用して該ニードルフェルトを該布地に積層して、カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断するさらなるステップを含み、かつ、積層する前に加熱面に沿って布地の裏面を導入し、機械的に織られた布地の裏面の一部の縦糸スレッドを少なくとも部分的に溶融する追加のステップを含む、方法である。
【0095】
布地の最大重量は、1100g/m2であることが好ましい。ニードルフェルトの最大重量は900g/m2である。中間層の最大重量は250g/m2である。
【0096】
織機を使用した布地の機械織りは、先行技術で知られている。
【0097】
フィラメントからニードルフェルトの形成は、先行技術で知られている。これは、連続法および不連続法の2つの方法で実行され得る。連続法の場合、フィラメントは粒子(grain)からの押し出し加工による連鎖型プロセスにおいて直接形成され、ニードルフェルトが形成され、該フィラメントは該ニードルフェルト内に結束される。不連続法の場合、フィラメントヤーンが、スプールからニードルフェルトマシンに供給される。そこで、フィラメントヤーンが解かれ(opened)、所望の形状のニードルフェルトを形成し、次いで結束される。好ましくは、フィラメントをニードルフェルトに結束するために、機械的方法が使用される。一例として、針を有するニードルフェルトのニードリングである。ニードリングによってフィラメントは混合されるが、床面または上げ床に取り付ける際に、ベルクロテープのホック部に引っかかる可能性のある緩いフィラメントの端部またはループも未だ多く残っている。ニードルフェルトの化学的補強は、ニードルフェルトのリサイクルに影響を与え得るため、あまり好ましくない。ニードルフェルトの熱補強は、ベルクロテープのホック部に引っかかる可能性のあるループまたは緩いフィラメントの端部の数を低減させることができる。
【0098】
ニードルフェルトは布地に積層される。積層フェーズでは、布地の裏面は、加熱面を通過して移動させられ、縦糸ヤーンの一部とお互いに少なくとも部分的に溶融し合っている。布地は、一連の支持ロールを通過して移動させられる。2つの支持ローラーの間に加熱面がある。加熱面は布地の裏面を押し付ける。加熱面は、布地の裏面を多少なりとも押し付けることができるように調整可能であることが好ましい。ここで、裏面とは、布地の一方の面を示しており、布地に対する加熱面の位置のことではない。加熱面は、布地の上下左右、前後に水平または垂直に位置付けられ得る。加熱面が布地の裏面を押し付けるように、支持ローラーの配置および布地の向きをどのように適合させるべきかについては、当業者にとって明らかである。
【0099】
一実施形態において、加熱面とは、ホットプレート、ホットローラー、チップを備えた金属シート、別の適切な表面、または上記の組み合わせである。
【0100】
布地は、その裏面が加熱面を通って導入されるため、縦糸スレッドの一部は少なくとも部分的に互いに溶融し合う。加熱面を縦糸スレッドに多少なりとも押し付けることで、縦糸スレッドの溶融度を変化させ得る。影響を与える他のパラメータは、加熱面の温度および布地が加熱体を通過して移動させられる速度である。
【0101】
布地は、縦糸スレッドの一部が互いに融合する所望の程度に応じて、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の加熱体を通過して移動させられ得る。
【0102】
布地の他方の側で、加熱体に面して追加の支持ローラーを位置付けられ得る。この支持ローラーは、加熱体が布地の裏面を押し付ける間、該布地を支持する。加熱体に面した支持ローラーを用いることにより、布地を引き裂くことなく、加熱面を布地により強く押し付けることができる。
【0103】
一実施形態において、積層することは、中間層において接着剤としてのPESの使用を含む。
【0104】
一実施形態において、PES溶融接着フィルムが積層中に使用される。布地は第1のロールから巻き解かれ(unwound)、PES融着自己接着フィルムは第2のロールから、およびニードルフェルトは第3のロールから巻き解かれる。布地、自己接着フィルムおよびニードルフェルトをつなぎ合わせ、そこで、自己接着フィルムは、布地の裏面およびニードルフェルトに接触する。全体が加熱され、PES溶融接着フィルムは粘着性になり、2つのローラーの間で一緒にプレスされる。冷却後、布地およびニードルフェルトは自己接着フィルムによりつなぎ合わせられる。自己接着フィルムは中間層を形成する。
【0105】
一実施形態において、PES溶融粉末が積層中に使用される。布地は第1のロールから巻き解かれ、ニードルフェルトは第2のロールから巻き解かれる。PES溶融粉末は、適切なディスペンサーによって、布地の裏面もしくはニードルフェルトの片側、または、布地の裏面およびニードルフェルトの片側のいずれかを通して与えられる。布地およびニードルフェルトはつなぎ合わせられ、そこで、布地の裏面はニードルフェルトに面し、PES溶融粉末は布地およびニードルフェルトの間に存在する。これが加熱され、PES融着粉末は粘着性になり、2つのローラーの間で一緒にプレスされる。冷却後、布地およびニードルフェルトはPES融着粉末によりつなぎ合わせられる。PES融着粉末は中間層を形成する。
【0106】
一実施形態において、積層することは、反応性分子を使用して、中間層において熱可逆性の共有相互作用を形成することを含む。
【0107】
一実施形態によれば、反応性分子Aを含む組成物が、布地の裏面に適用される。ニードルフェルトの面に、反応性分子Bを含む組成物が適用される。布地およびニードルフェルトが組み立てられ、そこでは、布地の裏面および、組成物を自身の面に有するニードルフェルトの面が互いに接触し、分子Aおよび分子Bが反応して熱可逆性の共有相互作用を形成するような状況である。布地およびニードルフェルトをつなぐ薄い中間層が形成される。
【0108】
別の実施形態によれば、反応性分子Bを含む組成物が布地の裏面に適用される。ニードルフェルトの片面にも、反応性分子Bを含む組成物が適用される。布地およびニードルフェルトが組み立てられ、そこでは、布地の裏面および、組成物を自身の面に有するニードルフェルトの面が互いに向かい合わせになっている。布地およびニードルフェルトの間に、反応性分子Aを含む薄い中間層が適用される。分子Aおよび分子Bが反応して熱可逆性の共有相互作用を形成するような状況である。薄い中間層は、布地およびニードルフェルトをつなぐ。
【0109】
一実施形態において、該方法は、積層の前に、加熱面に沿って機械的に織られた布地の裏面を向けて、該布地の裏面で、一部の横糸ヤーンを、あるいは一部の縦糸ヤーンと共に、少なくとも部分的に溶融するさらなるステップを含む。
【0110】
少なくとも1つの加熱面の温度を上げることによって、または布地が加熱面に沿って移動させられる速度の結果として、または、例えば、加熱面が布地の裏面を押し付ける圧力の結果として、縦糸スレッドの一部だけでなく、縦糸スレッドに対して横糸スレッドの少なくとも一部までも、少なくとも部分的に溶融させることが可能である。カーペットタイルまたはカーペットストリップを設置中またはカーペットタイルまたはカーペットストリップの形状の切断中にそれらを一定のサイズに切断する場合、縦糸スレッドおよび横糸スレッドの少なくとも一部は互いに結束したままであるため、カーペットタイルまたはカーペットストリップの強度および寸法安定性が維持され、カーペットタイルまたはカーペットストリップの切端でのほつれが少なくなる。この利点は、製造プロセス中にカーペットタイルまたはカーペットストリップを切断する場合にも当てはまる。
【0111】
さらには、より強力な布地を提供し、その布地の横糸スレッドと縦糸スレッドとは相互に移動しにくく、そのことで相互の摩擦を減らして摩耗を低減させる。
【0112】
一実施形態によれば、カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断することは、カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部で縦糸スレッドおよび横糸スレッドの一部を少なくとも部分的に溶融することを含む。
【0113】
カーペットタイルまたはカーペットストリップに切り詰めるために、いくつかの解決策が知られている。切断は、自動化されているかどうかにかかわらず従来のはさみを用いて、好ましくは円形またはその他の適切な形状を有する回転切断刃を用いて、もしくは超音波切断機を用いてなされ、または加熱されたフィラメントまたはナイフを用いて行うことができ、加熱されたフィラメントまたはナイフは、溶融したカーペットタイルまたはカーペットストリップをカットスルー(cuts through)する。
【0114】
フィラメントまたはナイフは加熱されているため、縦糸スレッドおよび横糸スレッドの一部は、カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部で少なくとも部分的に溶融する。これにより、切端がさらに強化され、切端のほつれをさらに低減させる。カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部をステッチもしくは追加の接着剤の層、または端部へのコーティングによって補強する必要がないため、結果として重量が低減される。
【0115】
一実施形態によれば、例えば従来のはさみ、回転切断刃、または超音波切断機を用いてカーペットタイルまたはカーペットストリップに切断した後、縦糸スレッドおよび横糸スレッドの一部は、フィラメント、加熱ナイフ、レーザー、またはその他の適切なデバイスを使用して、カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部で少なくとも部分的に互いに融合する。結果として、カーペットタイルまたはカーペットストリップに切断するためにフィラメントまたは加熱ナイフを使用する場合と同じ端部の補強効果が達成される。
【0116】
一実施形態によれば、該方法は、積層する間での、実質的に100%ポリエステル(PES)メンブレンを機械的に織られた布地の裏面に積層する追加のステップを含む。
【0117】
縦糸スレッドが少なくとも部分的に溶融した後、または縦糸スレッドおよび横糸スレッドが少なくとも部分的に溶融した後に、機械的に織られた布地の裏面へのメンブレンの積層がなされる。
【0118】
一実施形態において、メンブレンの積層は、接着剤としてのPESの使用を含む。これにより、カーペットタイルまたはカーペットストリップが完全にリサイクル可能となる。
【0119】
一実施形態において、メンブレンの積層は、反応性分子を使用して、布地の裏面とメンブレンとの間に熱可逆性の共有相互作用を形成することを含む。これにより、カーペットタイルまたはカーペットウェブが完全にリサイクル可能となる。
【0120】
布地の裏面へのメンブレンの積層の結果として、カーペットタイルまたはカーペットウェブの寸法安定性は、カーペットタイルまたはカーペットウェブの作業面に平行な全方向において増加する。
【0121】
第3の態様において、本発明は、第2の態様に係る方法を使用した、第1の態様に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップの製造に関する。
【0122】
本発明に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップは、オフィスおよび商業ビルだけでなく、病院、学校、さらには住宅などの他の建物にも使用できることが当業者には明らかであろう。
【0123】
本発明を非限定的な例または図を参照して、より詳細に説明する。
【0124】
[図面の説明]
図1は、本発明の一実施形態の断面を示している。
【0125】
ポリエステルカーペットタイルまたはカーペットウェブは、中間層2によって滑らかな布地6に積層されたニードルフェルト1を含む。中間層2は、熱可逆性の共有相互作用を形成するためのPES接着剤または反応性分子を含む。滑らかな布地6は、縦糸スレッド3の第1のグループおよび縦糸スレッド4の第2のグループを含む。縦糸スレッド3および縦糸スレッド4は、布地の長手方向に交互に並置される。滑らかな布地6は横糸スレッド5を含む。横糸スレッド5は、縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の方向に対して横方向にある。第1の横糸スレッド5は、縦糸スレッド3の下および縦糸スレッド4の上にある。次いで、次の横糸スレッド5は、縦糸スレッド3の上および縦糸スレッド4の下にある。このようにして布地は構築される。結果として得られる結合は、平坦な結合である。2本の縦糸スレッド3のグループおよび2本の縦糸スレッド4のグループが、布地の長手方向に交互に並置される場合、同様の方法で横糸の繰り返しを得ることができる。縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の一部は、滑らかな布地6の裏面で少なくとも部分的に互いに融合している。これは
図1に示されている。好ましくは、縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の一部が、滑らかな布地6の裏面で少なくとも部分的に横糸スレッド5の一部に融合している。好ましくは、縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の一部、ならびに横糸スレッド5の一部が、ポリエステルカーペットタイルまたはカーペットストリップの端部で少なくとも部分的に互いに融合している。
【0126】
図2は、本発明の一実施形態に係る、布地とニードルフェルトとの間の結合分子モデルを概略的に示している。
【0127】
反応性分子Bを含む組成物が、布地6の裏面およびニードルフェルト1の片面に適用される。布地6の裏面および、ニードルフェルト1上の反応性分子Bを含む組成物が付与された面が、これらの面の間に反応性分子Aを有する中間層と共に一緒にされる。分子Aと分子Bとの間の反応が起こった後、布地6とニードルフェルト1との間に結合7が形成される。結合7は、分子Aと分子Bとの間の共有相互作用を利用する。
【0128】
図3は、本発明の方法の一実施形態に係る、縦糸スレッドの一部を互いに少なくとも部分的に融合するのに適したデバイスを示している。
【0129】
布地50’は、支持ロール41および42を通過して移動させられる。その方向は、支持ローラー41から支持ローラー42への方向である。2つの支持ローラー41と42との間に、加熱面30が配置されている。加熱面は、ポイント33で布地50’の裏面を押し付ける。縦糸スレッドの一部は、布地50’の裏面で少なくとも部分的に一緒に溶融している。溶融した縦糸スレッドは、加熱面30の先端33を通る動きによって本質的に平坦な表面に分配される。次いで、冷却され、布地50を形成し、これが布地50’よりも強く、寸法安定性が高く、摩耗および引裂きに対してより耐性があり、端部でのほつれが少ない。
【0130】
加熱面30は、距離dにわたって移動することができる。この距離dは、例えば0mm~50mmである。0mmより大きい距離dを取ることにより、加熱面30の先端33は、布地の裏面を押し付ける。要求される距離dは、加熱面30およびその先端33の温度、および布地50’が先端33および布地50’自体を通過して移動させられる速度によって得られる、縦糸スレッドの一部の少なくとも部分的な溶融の所望される結果によって決定される。もし、布地50’が大きな距離dに耐性がない場合は、パラメータ速度、距離d、および加熱面30およびその先端33の温度の他の変動により、所望の結果を達成することができる。
【0131】
【0132】
ポリエステルカーペットタイルは、中間層2によって滑らかな布地6に積層されたニードルフェルト1を含む。滑らかな布地6は、縦糸スレッド3の第1のグループおよび縦糸スレッド4の第2のグループを含む。縦糸スレッド3および縦糸スレッド4は、布地の長手方向に交互に並置されている。滑らかな布地6は、横糸スレッド5を含む。横糸スレッド5は、縦糸スレッド3および縦糸スレッド4方向に対して横方向にある。第1の横糸スレッド5は、縦糸スレッド3の下および縦糸スレッド4の上にある。横糸スレッド5は、縦糸スレッド3によって完全に隠され、かつ縦糸スレッド4は、縦糸スレッド3および横糸スレッド5によって完全に隠される。次いで、次の横糸スレッド5は、縦糸スレッド3の上および縦糸スレッド4の下に配置される。横糸スレッド5は、縦糸スレッド4によって完全に隠され、かつ縦糸スレッド3は、縦糸スレッド4および横糸スレッド5によって完全に隠される。このようにして布地は形成される。結果として得られる結合は、平坦な結合である。
【0133】
ある場所では、滑らかな結合からの局所的な逸脱があった。上部フロート9は、縦糸:横糸の結合密度が2:1の結合パターンによって形成されている。横糸5は、2本の縦糸スレッド4の上に浮いている。上部フロート8は、縦糸:横糸の結束密度が3:1の結束パターンによって形成されている。横糸5は、3本の縦糸スレッド4の上に浮いている。
【0134】
縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の一部は、滑らかな布地6の裏面で少なくとも部分的に一緒に融合している。好ましくは、縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の一部は、滑らかな布地6の裏面で少なくとも部分的に横糸スレッド5の一部に融合している。好ましくは、縦糸スレッド3および縦糸スレッド4の一部、ならびに横糸スレッド5の一部が、ポリエステルカーペットタイルの端部で少なくとも部分的に互いに融合している。これは、例えばカーペットタイルに切断するときにフィラメントを使用することで可能になる。これにより、直線的な端部が提供され、切断された縦糸スレッドおよび/または横糸スレッドのほつれが少なくなるか、もしくは全く無くなる。
【0135】
この例がカーペットストリップにも当てはまることは当業者には明らかである。
【実施例】
【0136】
次に、以下の実施例を使用して本発明を説明するが、これに限定されるものではない。
【0137】
本実施例は、本発明に係る、契約市場、より具体的にはオフィスおよび商業ビルに適したポリエステルカーペットタイルまたはカーペットストリップの実施形態に関する。カーペットタイルまたはカーペットストリップは、滑らかな布地、中間層およびニードルフェルトを含む。
【0138】
滑らかな布地およびニードルフェルトの両方とも100%難燃性PESを含む。中間層はPES接着剤を含有する。したがって、カーペットタイルまたはカーペットストリップは、オフィスまたは商業ビルにおいて新しいカーペットタイルまたはカーペットストリップと交換した後、単純な方法で100%リサイクル可能である。
【0139】
ニードルフェルトは不織布である。オフィスや商業ビルの床面または上げ床には、HTH577タイプのベルクロストリップが接着されている。ニードルフェルトにある多くの緩いフィラメント端部またはループが、ベルクロテープのホック部に引っ掛かる。したがって、カーペットタイルまたはカーペットストリップはすばやく設置でき、床面または上げ床に交換することもできる。カーペットタイルまたはカーペットストリップは、ベルクロストリップから容易に引き剥がされなければならず、かつ、新しいカーペットタイルまたはカーペットストリップが、ベルクロストリップに接着されなければならない。床面や上げ床には、除去する必要のある接着剤の残留物は一切ない。ニードルフェルトにも接着剤の残留物がないため、リサイクルが容易になる。本発明に係るカーペットタイルまたはカーペットストリップはまた、接着剤、両面接着剤によって床面もしくは上げ床に設置することも、または床面もしくは上げ床から容易に引き剥がすこともできることは当業者には明らかである。
【0140】
布地は、2200dtexのヤーン糸番手を有する縦糸ヤーンおよび横糸ヤーンからなる。該ヤーンは、ISO2062に従った試験から、30%の平均破断伸び、および3g/denの最小引張強度を有する。該ヤーンの平均煮沸収縮率(average boil shrinkage)は、ISO12590に従うと、1.5%である。布地1cmあたり17本の縦糸スレッドおよび布地1cmあたり5本の横糸スレッドがある。これにより、強い布地となり軽量にもなる。布地の重量は570g/m2に制限される。
【0141】
別の実施例の布地は、3300dtexのスレッド糸番手を有する縦糸スレッドおよび横糸スレッドからなる。布地1cmあたり17本の縦糸スレッドおよび布地1cmあたり6本の横糸スレッドがある。この場合の布地の重量は、950g/m2に制限される。
【0142】
縦糸スレッドおよび横糸スレッドの一部は、布地の裏面で少なくとも部分的に互いに融合している。これにより、布地が強化され、寸法安定性が高まる。カーペットタイルまたはカーペットストリップを切断する際、端部はほつれないか、またはほとんどほつれない。また、設置時にカーペットタイルまたはカーペットストリップをあるサイズまたはある形状に切断する際も、カーペットタイルまたはカーペットストリップは切端でのほつれが少なくなる。
【0143】
縦糸ワイヤーおよび横糸ワイヤーが互いに対してあまり動かなくなる、そのため、縦糸ワイヤーおよび横糸ワイヤー間の摩擦が少なくなり、したがって、オフィスまたは商業ビルの通行人による、ならびに手押し車による日常的な負荷時の摩耗および引き裂きも少なくなる。縦糸スレッドおよび横糸スレッドが少なくとも部分的に溶融した結果、布地はより強く、かつ寸法安定性がより高くなるため、縦糸スレッドと横糸スレッドとの間の結び目を固定するために接着剤を使用する必要がなくなる。したがって、接着剤を含む中間層はより軽い。該中間層の重量は130g/m2に制限される。
【0144】
カーペットタイルまたはカーペットストリップは、超音波切断機を用いてカーペットから切断される。その後、切端で、横糸スレッドの一部と縦糸スレッドの一部とが、レーザーを用いて少なくとも部分的に融合される。これにより、切端がさらに強化され、切端のほつれがさらに低減する。カーペットタイルまたはカーペットストリップの端部をステッチもしくは追加の接着剤の層、または端部へのコーティングによって補強する必要がないため、結果として重量が低減される。ニードルフェルトは、カーペットタイルまたはカーペットストリップに対して必要な寸法安定性を与えるのに適している。ニードルフェルトは、オフィスビルまたは商業ビルの通行人の歩行快適性を高め、かつ遮音材として使用するのに適している。縦糸スレッドおよび横糸スレッドが少なくとも部分的に溶融した結果、布地はより強くなるため、布地はすでに一定の寸法安定性を有する。したがって、カーペットタイルまたはカーペットストリップには、より薄いニードルフェルトを使用することが可能である。該ニードルフェルトの最大重量は150g/m2である。その場合、カーペットタイルまたはカーペットストリップの単位面積あたりの総重量は、850g/m2になる。
【0145】
カーペットタイルまたはカーペットストリップは、可燃性についてFAR25.853、特にFAR25.853(A)-App.F Part I para(a)(1)(ii)航空機材料の可燃性の測定に従って試験している。試験は、連邦試験方法基準191、方法5903.2に従って、ドラフトフリーのキャビネット内で実施した。75mm×305mmのカーペットタイルまたはカーペットストリップの3つのサンプルを、少なくとも843℃の温度のブンゼンバーナー炎に60秒間さらした。サンプルを、ブンゼンバーナーの先端から20mm上に長手方向に垂直に吊るした。ブンゼンバーナーの炎の高さは、バーナーの先端から40mmである。次いで、カーペットタイルまたはカーペットストリップを、80mm未満の長さおよび幅で平均2秒間以内燃焼した。カーペットタイルまたはカーペットストリップの焼けた部分が脱落することはなかった。したがって、カーペットタイルまたはカーペットストリップは基準を満たしており、この基準では、炎から取り除いた後、該カーペットタイルまたはカーペットストリップは最大15秒間燃焼し続け、該カーペットタイルまたはカーペットストリップが最大長152mmで燃焼し、かつ、該カーペットタイルまたはカーペットストリップの燃焼部分は、最大5秒間燃焼することが要求される。
【0146】
該カーペットタイルまたはカーペットストリップは、少なくとも火災基準EN13501-12007に準拠した分類Cfl-s1の要件を満たす。
【0147】
カーペットタイルまたはカーペットストリップを、Vetterman試験およびLisson試験に供した。Vetterman試験は、実験室条件下での摩耗をシミュレートする。Lisson試験は、カーペットタイルまたはカーペットベルトが所定の回数だけ四足ホイールの往復運動(double passes)を受けた後の、質量の損失およびファイバーまたはスレッドの結合を決定する。どちらの試験でも、カーペットタイルまたはカーペットベルトは33の最高分類を達成した。これは、酷使に耐える使用に適していることを意味する。カーペットタイルまたはカーペットストリップはまた、せん断強度の決定のためのEN15114基準、オフィスチェアの試験方法のためのEN985基準、繊維および積層床材に静電気を発生させる傾向に関するISO6356基準、およびさまざまな水条件および熱条件による寸法変化の決定に関するISO2551基準に従って試験に供し、それら基準を満たしている。これらすべての基準に準拠することで、該カーペットタイルまたはカーペットストリップは、オフィスまたは商業ビルの通行人による、ならびに手押し車による日常的な負荷に適していることが保証される。