(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】剛性を低減したトラックローラー
(51)【国際特許分類】
B62D 55/104 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B62D55/104
(21)【出願番号】P 2022526800
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 US2020057590
(87)【国際公開番号】W WO2021096680
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイクス、デイヴィッド ジェイ.
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-176379(JP,U)
【文献】特開2000-159159(JP,A)
【文献】中国実用新案第205044842(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/00-55/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックローラー部材(400)であって、
回転軸(304)、半径方向(308)、および前記回転軸(304)の周りに配置された円周方向(306)を画定する環状構成を含む本体(406)を備え、前記本体(406)が、
前記回転軸(304)の中心にある前記本体(406)を貫通して軸方向に延在するスルーホール(316)と、
前記スルーホール(316)の中心から離れる方向に、前記スルーホール(316)に沿って前記本体(406)から延在するカンチレバー部分(320)を形成し、
前記本体(406)および前記カンチレバー部分(320)は、前記回転軸(304)の周りに環状に配置されるブラインド空隙(318)を画定し、
前記ブラインド空隙(318)は前記カンチレバー部分(320)を取り囲む、トラックローラー部材(400)。
【請求項2】
前記スルーホール(316)が、スルーホール直径(334)を画定し、前記スルーホール直径(334)の
所定の最小距離(408)に対する比が5.0~10.0の範囲であり、前記スルーホール直径(334)の
変曲半径方向距離(328)に対する比が4.0~9.0の範囲である、請求項1に記載のトラックローラー部材(400)。
【請求項3】
前記本体(406)が、前記回転軸(304)に沿って配置される第一の軸端(410)、前記回転軸(304)に沿って配置される第二の軸端(412)を画定し、および前記第一の軸端(410)で段付き開口(414)をさらに画定し、前記本体(406)が、
前記第一の軸端(410)から延在する第一の円周方向壁(416)と、前記第一の円周方向壁(416)から半径方向に内向きに延在する第一の半径方向に延在する面(418)であって、前記第一の半径方向に延在する面(418)が、前記第一の軸端(410)から第一の軸方向距離(420)だけ軸方向に離間しているものと、
前記第一の半径方向に延在する面(418)から延在する第二の円周方向壁(422)と、前記第二の円周方向壁(422)から半径方向に内向きに延在する第二の半径方向に延在する面(424)と、を含む、請求項2に記載のトラックローラー部材(400)。
【請求項4】
前記ブラインド空隙(318)が前記段付き開口(414)と連通し、前記第二の半径方向に延在する面(424)によって少なくとも部分的に画定され、前記所定の最小距離(408)が5.0mm~15.0mmの範囲であり、前記変曲半径方向距離(328)が7.0mm~20.0mmの範囲である、請求項3に記載のトラックローラー部材(400)。
【請求項5】
前記本体(406)が、前記回転軸(304)に沿って配置される第一の軸端(410)、前記回転軸(304)に沿って配置される第二の軸端(412)、および前記第一の軸端(410)での外部(314’)を画定し、前記ブラインド空隙(318)が前記外部(314’)と連通し、また前記半径方向(308)および前記回転軸(304)を含む平面において、
前記スルーホール(316)から
所定の最小距離(408)に配置される第一の線形セグメント(426)と、
前記ブラインド空隙(318)の半径方向寸法(430)を前記第一の線形セグメント(426)から半径方向に離間した第二の線形セグメント(428)と、
前記第一の線形セグメント(426)を前記第二の線形セグメント(428)に結合する弓状セグメント(432)と、を画定する、請求項1に記載のトラックローラー部材(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無限軌道ドライブを使用する重機の下部走行体で使用されるトラックローラーに関する。具体的には、本開示は、こうした下部走行体で使用されるトラックローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の多くの用途では、トラックローラーは、土運搬業、建設業、採鉱業などの分野で無限軌道ドライブを使用するような重機の重量を支援する。多くの場合、トラックローラーが回転するシャフトと、トラックローラーとの間にベアリングが供給される。ベアリングにかかる圧力により、ベアリングが摩耗することがありうる。
【0003】
最終的に、ベアリングは摩耗して機械の運転が中止となり、ベアリングを交換するか、またはその他の方法で機械の下部走行体のメンテナンスを実施することになる。この結果、機械を使用する経済的努力のためのコストの増加および生産量の不要な減少をもたらしうる。
【0004】
米国特許第7,033,078号(Murabe et al.)は、ロバストな剛性を有する安定した様式で高い回転速度を提供する流体ベアリングアセンブリを開示している。流体ベアリングアセンブリは、スラストベアリング上の接触を防止するために、3ミクロン以下の総ラジアルギャップを有する。ラジアルベアリングは、その表面上にオフセット溝を有し、流体の流れをスラストベアリングに十分に供給する。ベアリングの直径に対する深さの比は、好ましくは0.005以下であり、並進剛性の減少を回避する。ラジアルギャップは、軸に沿って中心から両端まで滑らかに拡大され、シャフトは、シャフトがロバストな剛性で回転できるように、シャフトをスリーブに対して傾斜させるために付勢される。また、一対のスラストベアリングが、ラジアルベアリングの両端に提供され、ロバストな剛性を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
理解されうるように、‘078特許は、低荷重を高速回転で支持することを意図した流体ベアリングを対象とする。一方で、土運搬業、建設業、採鉱業などで使用される重機の下部走行体に使用されるベアリングは、低速回転で高荷重を受ける。したがって、重荷重および低速回転に適したトラックローラーのジョイントアセンブリを開発する必要性がある。
【0006】
本開示の実施形態によるトラックローラー部材が提供される。トラックローラーは、回転軸、半径方向、および回転軸の周りに配置される円周方向を画定する環状構成を含む本体を含みうる。本体はまた、回転軸の中心にある本体を貫通して軸方向に延在するスルーホールを画定してもよい。ブラインド空隙は、回転軸の周りに環状に配置され、ブラインド空隙がスルーホールから半径方向に所定の最小距離だけ離間し、変曲点と、変曲点からスルーホールまで半径方向に測定された変曲半径方向距離とを画定する、カンチレバー部分を形成する。
【0007】
本開示の別の実施形態によるトラックローラー部材が提供される。トラックローラー部材は、回転軸、半径方向、および回転軸の周りに配置される円周方向を画定する環状構成を含む本体を含みうる。本体は、外部と、外部と連通し、かつ本体を貫通して軸方向に延在するスルーホールと、回転軸の周りに環状に配置されるブラインド空隙とを画定しうる。本体は、半径方向および回転軸を含む平面内に、スルーホールに半径方向に隣接して配置され、スルーホールから離れて第一の半径方向距離だけ間隔を置いている、第一の軸方向に延在するセグメントと、第一の軸方向に延在するセグメントから半径方向寸法だけ離間している第二の軸方向に延在するセグメントと、第一の軸方向に延在するセグメントを第二の軸方向に延在するセグメントに接続する弓状セグメントとを含む、複数のセグメントをさらに含みうる。弓状セグメントは、ブラインド空隙の軸方向の底部先端を画定しうる。
【0008】
本開示の実施形態によるトラックローラーのジョイントアセンブリが提供される。アセンブリは、回転軸を画定する環状本体、回転軸の周りに配置される円周方向、回転軸に垂直に延在する半径方向、回転軸に沿って配置される第一の軸端、および回転軸に沿って配置される第二の軸端を含む、トラックローラーを含みうる。環状本体はさらに、外部、外部と連通し、環状本体を通して軸方向に延在するスルーホール、および回転軸の周りに環状に配置されるブラインド空隙を画定してもよく、ブラインド空隙は、スルーホールから離間し、自由端を含むカンチレバー部分を形成する。シャフトは、スルーホール内に配置されてもよく、またラジアルベアリングは、シャフトとトラックローラーのカンチレバー部分に半径方向に接触するスルーホール内に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示のいくつかの実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による剛性を低減したトラックローラーを有するトラックアセンブリ(また、下部走行体アセンブリと呼んでもよい)を採用しうるショベルなどの機械の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の機械用の下部走行体アセンブリの側面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による剛性を低減したトラックローラーと嵌合するトラックアセンブリの斜視図である。
【
図5】
図5は、その線5‐5に沿って切り取られた、
図4のトラックローラーの断面図である。
図5の左側は、本開示の原理に従ってトラックローラーの剛性を低減させる空隙を示し、一方、
図5の右側は、当該技術分野で以前から知られているような空隙のないトラックローラーを示す。
【
図6】
図6は、空隙の形状をより詳細に示す、
図5のトラックローラーの空隙の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
参照の例が添付図面に図示される、本開示の特定の実施形態または特徴を詳細に参照する。可能な限り、同一または類似部品に言及するのに、図面全体を通して同一の参照番号を使用するであろう。一部の事例では、参照番号が本明細書で示され、図面はその後に文字が続く、例えば、100a、100b、または例えば100′、100′′などの参照番号を示す。参照番号の直後に文字またはプライム記号を使用することは、これらの特徴が同様の形状であり、幾何学が対称面の周りにミラーリングされる場合によくあるのと同様の機能を有することを示すことを理解されたい。本明細書での説明を容易にするために、文字および素数はしばしば本明細書に含まれないが、特徴の重複を示すために図面に示され得、この書面による仕様内で説明される、類似または同一の機能または形状を有する。
【0012】
本開示のさまざまな実施形態によるトラックローラーまたはトラックローラー部材を使用しうるローラーのジョイントアセンブリをこれから説明する。一部の実施形態では、トラックローラーは、固体本体(例えば、単一構造を有する)である。他の実施形態では、トラックローラーは、トラックローラーまたはトラックローラーのジョイントアセンブリなどを形成するために一緒に組み立てられる二つ以上のトラックローラー部材に分割される。本開示の他の実施形態では、トラックローラー、トラックローラー部材、およびトラックローラーのジョイントアセンブリのための他の構成が可能である。
【0013】
図1は、本開示の原理に従って構築されたトラックローラーのジョイントアセンブリ200の実施形態を含む、掘削機の形態の軌道機械20の実施形態を示す。他の用途の中でも特に、掘削機を使用して、作業現場からバケットを使用して材料を除去することができる。
【0014】
より具体的には、
図1は、本開示の特定の実施形態と一致する、トラックアセンブリ24を備える下部走行体システム22を含む機械20を示す。当然のことながら、機械20は、掘削機として図示されているが、機械20は、軌道下部走行体システム22を含む任意の他のタイプの機械であってもよい。本明細書で使用される場合、「機械」という用語は、土木、建設、造園、林業、農業など、特定の産業に関連する物理的移動を伴う運転操作を行う移動機械を指す。
【0015】
配置は掘削機に関連して図示されているが、本明細書に開示される配置は、車輪ではなく、一般的にトラックシステムを用いるさまざまな他のタイプの機械において普遍的な適用性を有する。「機械」という用語は、採掘、土運搬、建設、または当技術分野で既知の任意の他の業界など、業界に関連するいくつかの種類の動作を実施する任意の機械を指してもよい。例えば、機械は、油圧鉱業ショベル、ホイールローダー、ケーブルショベル、トラックタイプのトラクター、ドーザ、またはドラグラインなどであってもよい。さらに、一つ以上の器具が、機械に接続されてもよい。こうした器具は、例えば、持ち上げおよび荷積みを含む、さまざまな作業に利用されうる。
【0016】
下部走行体システム22は、機械20を支持し、地面、道路、および他のタイプの地形に沿って機械20を移動させるように構成されうる。
図2および
図3に示すように、下部走行体システム22のトラックアセンブリ24は、トラックローラーフレーム26、トラックローラーフレーム26に接続されたさまざまなガイド構成要素、およびガイド構成要素と係合する無限軌道28を含みうる。ガイド構成要素は、軌道28を誘導し、駆動スプロケット30、アイドラー32、ローラー34、トラックガイド36、およびキャリア38を含みうるが、他の構成要素が使用されてもよい。
【0017】
トラック28は、複数のシュー42がそれに固定されたリンクアセンブリ40を含みうる。リンクアセンブリ40は、トラック28の可撓性骨格を形成してもよく、シュー42は、さまざまなタイプの地形で牽引力を提供しうる。リンクアセンブリ40は、駆動スプロケット30、ローラー34、アイドラー32、およびキャリア38の周りにエンドレスチェーンで延在しうる。
【0018】
図2および3に示すように、トラックシュー42は、リンクアセンブリ40の周囲に固定されてもよい。例えば、一つのシュー42は、横方向に間隔を置いた対のリンク44に取り付けられうる。トラックシュー42は、さまざまな方法(例えば、溶接、締結など)を介してリンク44に接続されてもよい。
【0019】
図1および4を参照して最も良く理解されるように、トラックチェーンアセンブリをガイドする複数のトラックローラーのジョイントアセンブリ200が提供されてもよい。トラックローラーのジョイントアセンブリ200は、トラックローラー300が回転する機械20の下部走行体システム22のフレーム(
図4には図示せず)から延在するシャフト202を含む。
【0020】
ここで
図5を見ると、トラックローラー300は、回転軸304を画定する環状本体302(例えば、少なくとも部分的に円筒形、少なくとも部分的に円錐形など)、回転軸304の周りに配置された円周方向306、および回転軸304に垂直に延在する半径方向308を含みうることが分かる。第一の軸端310は、回転軸304に沿って配置され、第二の軸端312は、回転軸304に沿って配置される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「軸方向」または「軸方向に」という用語は、軸方向と45度未満の角度をなす方向を含み、「半径方向」または「半径方向に」という用語は、半径方向に45度未満の角度をなす方向を含む。本明細書で使用される場合、冠詞「一つの(a)」および「一つの(an)」は一つ以上の項目を含むことが意図されており、「一つ以上の」と交換可能に使用されうる。1つの項目のみが意図される場合、「1つ(one)」または類似の言語が使用される。また、本明細書で使用される場合、「有する(has)」、「有する(have)」、「有する(having)」、「含めて(with)」またはこれに類する用語は制約のない用語であることが意図されている。さらに、「に基づく」という語句は、別段の明示がない限り、「少なくとも部分的に基づく」を意味することを意図する。
【0022】
トラックローラー300の環状本体302はさらに、外部314、外部314と連通し、環状本体302を通って軸方向に延在するスルーホール316を画定してもよく、ブラインド空隙318は、回転軸304の周りに環状に配置されてもよい。ブラインド空隙318は、スルーホール316から離間し、自由端322を含むカンチレバー部分320を形成する。シャフト202は、スルーホール316内に配置され、またラジアルベアリング204(
図6で最もよく分かる)は、シャフト202およびトラックローラー300のカンチレバー部分320に半径方向に接触するスルーホール316内に配置されてもよい。
【0023】
図6に焦点を当てると、ブラインド空隙318は、ブラインド空隙318の底部で回転軸304に沿って軸方向先端324を画定し、これは、カンチレバー部分320の変曲点326として作用しうる。したがって、変曲半径方向距離328は、ブラインド空隙318の軸方向先端324からスルーホール316までが半径方向に測定されうる。同様に、カンチレバーの軸方向寸法330は、カンチレバー部分320の自由端322からブラインド空隙318の軸方向先端324まで軸方向に測定されうる。
【0024】
この構造の結果として、
図5に示すように、トラックローラー300の剛性または剛直性が減少されてもよく(
図5の左側を参照)、これにより、カンチレバー部分320、シャフト202、およびラジアルベアリング204が上方に移動し、より剛直なトラックローラーを備える以前の設計(
図5の右図を参照)と比較して、ベアリング圧力および結果として生じる摩耗が減少する。
【0025】
図6に示すような特定の実施形態では、ブラインド空隙318は、半径方向最小距離332で、スルーホール316から半径方向に離間し、スルーホール316は、スルーホール直径334を画定する(
図5を参照)。スルーホール直径334の変曲半径方向距離328に対する比は、4.0~9.0の範囲であってもよく、カンチレバーの軸方向寸法330の変曲半径方向距離328に対する比は、0.75~5.0の範囲であってもよい。
【0026】
こうした実施形態では、半径方向最小距離332は、5.0mm~20.0mmの範囲であってもよく、スルーホール直径334は、35.0mm~230.0mmの範囲であってもよく、変曲半径方向距離328は、7.0mm~30.0mmの範囲であってもよく、カンチレバーの軸方向寸法330は、10.0mm~120.0mmの範囲であってもよい。
【0027】
本開示の他の実施形態では、これらの比および寸法範囲が異なるように変更されうることに注目すべきである。
【0028】
図5および
図6を引き続き参照すると、トラックローラー300の環状本体302は、環状本体302の外部314とブラインド空隙318との間に軸方向に配置される段付きポケット336を画定しうる。段付きポケット336は、カンチレバー部分320の自由端322から軸方向に10.0mm~60.0mmの範囲の軸方向逃げ距離338だけ離間されてもよい(
図6を参照)。すなわち、段付きポケット336の底面340は、ブラインド空隙318が加えられる時、底面340が分割されて、カンチレバー部分320の自由端322を形成するように、逃げを設けることができる。一部の実施形態では、嵌合保持スラストベアリングは、ポケット内に配置されてもよい。これは、本開示の他の実施形態では当てはまらない場合がある。
【0029】
図6のブラインド空隙に焦点を合わせると、ブラインド空隙318は、カンチレバー部分320を少なくとも部分的に画定する第一の円筒面342と、第一の円筒面342と平行であり(
図6では平坦に見えるが、回転軸304の周りで環状であると理解される)、第一の円筒面342から変曲半径方向距離328よりも大きい距離346だけ離間されている、第二の円筒面344と、第一の円筒面342と第二の円筒面344との間に少なくとも部分的に半径方向に介在される弓状表面348と、を含む、少なくとも三つの表面によって画定されることが理解される。弓状表面348は、第一の円筒面342および第二の円筒面344に直接接続してもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。例えば、軸方向に対して角度をなす線(円錐表面を形成する)および/または半径(放射状表面を形成する)など、一つ以上の曲線が、弓状表面348を第一の円筒面342および第二の円筒面344に接続しうる。
【0030】
図6に示すように、弓状表面348は、弓状表面348と第一および第二の円筒面342、344との間の平面における接線経路に従うスプラインまたは多項式によって、半径方向308および回転軸304を含む平面内に画定されうる。本開示の他の実施形態では、他の構成が可能である。
【0031】
図5を再び参照すると、トラックローラー300の環状本体302は、回転軸304に沿って中央平面350を、および中央平面350上で軸方向に中心とし、シャフト202の周りに円周方向に配置された環状潤滑空隙352を画定しうる。同様に、第一の円周方向トラックリンク支持面354、第二の円周方向トラックリンク支持面356、および中央平面350上で軸方向に中心に位置する第一の円周方向トラックリンク支持面354と第二の円周方向トラックリンク支持面356との間に軸方向に配置される逃げ溝358も画定される。実際には、これらの特徴は、中央平面について対称であってもよいが、必ずしも対称ではなくてもよい。機械の負荷(力)は、第一の円周方向トラックリンク支持面354および第二の円周方向トラックリンク支持面356を通過し、本明細書に記載されるベアリング圧力を生成する。
【0032】
図5に示すような特定の実施形態では、トラックローラー300は、第一のトラックローラー部材400および第二のトラックローラー部材400’に分割されてもよい。第一のトラックローラー部材400は、中央平面350に配置された第一の軸方向に延在するリッジ402を含んでもよく、第二のトラックローラー部材400’は、第一のトラックローラー部材400の第一の軸方向に延在するリッジ402に少なくとも半径方向または軸方向に当接する第二の軸方向に延在するリッジ402’を含んでもよい。第一のリム404は、第一の円周方向トラックリンク支持面354に軸方向に近接する第一の軸端310に配置されてもよく、第二のリム404’は、第二の円周方向トラックリンク支持面356に軸方向に近接する第二の軸端312に配置されてもよい。第一および第二のリム404、404’は、トラックローラー300上にトラックチェーンのアセンブリを維持するように構成されうる。これらのリム404、404’はまた、中央平面350について対称であってもよいが、必ずしも対称ではなくてもよい。
【0033】
逃げ溝358と連通し、第一の軸方向に延在するリッジ402および第二の軸方向に延在するリッジ402’の上方にある、溶接溝360も提供されうる。第一のトラックローラー部材400と第二のトラックローラー部材400’を一緒に保持するために、溶接のビードが溶接溝360に入れられてもよい。
【0034】
交換部品として、または別の方法でトラックローラー300を組み立てるために使用されうる、本開示の実施形態によるトラックローラー部材400について、ここで
図5および6を参照して説明されれる。トラックローラー部材400は、回転軸304、半径方向308、および本明細書で前述の様式と類似した様式で回転軸304の周りに配置された円周方向306を画定する環状構成を含む本体406を備えてもよい。
【0035】
本体406は、回転軸304の中心にある本体406を軸方向に延在するスルーホール316、および回転軸304の周りに環状に配置されるブラインド空隙318を画定しうる。ブラインド空隙318は、所定の最小距離408でスルーホール316から半径方向に離間してもよく、変曲点326を画定するカンチレバー部分320、および変曲点326からスルーホール316まで半径方向に測定された変曲半径方向距離328を形成する。
【0036】
特定の実施形態では、スルーホール316は、スルーホール直径334を画定しうる。スルーホール直径334の所定の最小距離408に対する比率は、5.0~10.0の範囲であってもよく、一方でスルーホール直径334の変曲半径方向距離328に対する比率は、4.0~9.0の範囲であってもよい。特定の実施形態では、所定の最小距離408は、5.0mm~15.0mmの範囲であってもよく、変曲半径方向距離328は、7.0mm~20.0mmの範囲であってもよい。本開示の他の実施形態では、これらの比および寸法について他の範囲が可能である。
【0037】
図5で最もよく分かるように、本体406は、回転軸304に沿って配置される第一の軸端410、回転軸304に沿って配置される第二の軸端412を画定してもよく、さらに第一の軸端410に段付き開口414を画定する。
【0038】
図6で最もよく分かるように、本体406は、第一の軸端410から延在する第一の円周方向壁416と、第一の円周方向壁416から半径方向に内向きに延在する第一の半径方向に延在する面418とを含みうる。第一の半径方向に延在する面418は、第一の軸方向距離420で第一の軸端410から軸方向に離間してもよい。第二の円周方向壁422は、第一の半径方向に延在する面418から延在してもよく、第二の半径方向に延在する面424は、第二の円周方向壁422から半径方向に内向きに延在してもよい。その他の構成も可能である。
【0039】
図6に示すように、ブラインド空隙318は、段付き開口414と連通し、第二の半径方向に延在する面424によって少なくとも部分的に画定される(例えば、ブラインド空隙318の周囲を画定する)。ブラインド空隙318および段付き開口414は両方とも、外部314’と連通してもよい。これは、本開示の他の実施形態では当てはまらないことがある。
【0040】
半径方向308および回転軸304(
図6の場合と同様)を含む平面内で、ブラインド空隙318は、スルーホール316から所定の最小距離408に配置された第一の線形セグメント426、およびブラインド空隙318の半径方向寸法430の第一の線形セグメント426から半径方向に離間した第二の線形セグメント428によって画定される。弓状セグメント432は、第一の線形セグメント426を第二の線形セグメント428に結合してもよい。これは、本開示の他の実施形態では当てはまらない場合がある。
【0041】
交換部品として、または別の方法でトラックローラー300を組み立てるために提供されうるトラックローラー部材400の別の実施形態も、
図5および
図6を参照して説明される。
【0042】
トラックローラー部材400は、外部314’、および本体406を貫通して軸方向に延在する外部314’と連通するスルーホール316を有してもよい。
【0043】
図6で最もよく分かるように、本体406は、半径方向308および回転軸304を含む平面内に、スルーホール316に半径方向に隣接して配置され、スルーホール316から離れて第一の半径方向距離436だけ間隔を置いている、第一の軸方向に延在するセグメント434と、第一の軸方向に延在するセグメント434から半径方向寸法430だけ離間している第二の軸方向に延在するセグメント438と、第一の軸方向に延在するセグメント434を第二の軸方向に延在するセグメント438に接続する弓状セグメント432とを含む、ブラインド空隙318を画定する複数のセグメントをさらに含みうる。弓状セグメント432は、ブラインド空隙318の軸方向の底部先端440を画定しうる。
【0044】
本明細書で前述したように、スルーホール316は、スルーホール直径334を画定してもよく、また本開示の特定の実施形態では、スルーホール直径334のブラインド空隙318の半径方向寸法430に対する比率は、0.7~14.0の範囲であってもよい。このような場合、半径方向寸法430は、15.0mm~50.0mmの範囲でありうる。本開示の他の実施形態では、他の比および寸法が可能である。
【0045】
本体406はまた、ブラインド空隙318に向かって半径方向に内向きに延在するブラインド空隙画定表面442と、ブラインド空隙画定表面442からブラインド空隙318の軸方向の底部先端440まで軸方向に測定されるブラインド空隙の軸方向深さ444とを含んでもよい。第一の軸方向に延在するセグメント434は、第一の軸方向長さ446を画定してもよく、第二の軸方向に延在するセグメント438は、第二の軸方向長さ448を画定してもよい。ブラインド空隙軸方向深さ444の、ブラインド空隙318の半径方向寸法430に対する比は、0.35~7.0の範囲であってもよく、特定の実施形態では、第一の軸方向長さ446の第二の軸方向長さ448に対する比は、0.5~1.0の範囲であってもよい。
【0046】
このような場合、ブラインド空隙の軸方向深さ444は、17.5mm~100.0mmの範囲であってもよく、ブラインド空隙318の半径方向寸法430は、15.0mm~50.0mmの範囲であってもよく、第一の軸方向長さ446は、15.0mm~75.0mmの範囲であってもよく、第二の軸方向長さ448は、17.5mm~100.0mmの範囲であってもよい。
【0047】
多くの実施形態で、トラックローラーまたはトラックローラー部材は、鉄、ねずみ鋳鉄、鋼、または他の適切な材料を使用して鋳造されてもよい。他の材料、ならびに任意のタイプの機械加工、鍛造など、トラックローラーまたはトラックローラー部材を作るための他の製造工程も使用されうる。また、本明細書で論じる特徴、ならびにその寸法、および/またはそれらの寸法の比率の構成は、意図された用途に応じて、本明細書で具体的に述べられているものとは異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
実際には、本明細書に記載される任意の実施形態によるトラックローラー、トラックローラー部材、トラックローラーのジョイントアセンブリおよび下部走行体アセンブリは、OEM(相手先商標製造会社)またはアフターマーケットの文脈で、販売、購入、製造、またはその他の方法で取得されうる。
【0049】
トラックローラーまたはトラックローラー部材のさまざまな実施形態は、より可撓性のある形状をローラーに提供することによって、トラックローラーのジョイントアセンブリに採用された時に、ラジアルベアリングの寿命を改善しうる。
【0050】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本明細書で論じられるような装置および組み立て方法の実施形態に対してさまざまな修正および変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。本開示のその他の実施形態は、本明細書に開示されるさまざまな実施形態の仕様および実践を考慮することで、当業者には明らかであろう。例えば、いくつかの機器は、本明細書に記載されたものとは異なる構造および機能を有し得、任意の方法の特定のステップは省略され、具体的に言及されたものとは異なる順序で実行され、または場合によっては同時にまたはサブステップで実行される。さらに、さまざまな実施形態の特定の態様または特徴に対する変形または修正を行って、さらなる実施形態を作成することができ、さらにさらなる実施形態を提供するために、さまざまな実施形態の特徴および態様を、他の実施形態の他の特徴または態様に追加または置換することができる。
【0051】
従って、本明細書および実施例は、以下の請求項およびその均等物によって示される本発明の真の範囲および精神を有する単なる例示とみなされることが意図される。