(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】グリーン匂い物質
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20241106BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241106BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20241106BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C11B9/00 K
C11D3/50
A61Q13/00 101
A61Q5/02
A61Q19/10
A61Q15/00
D06M13/00
(21)【出願番号】P 2022535554
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2021051242
(87)【国際公開番号】W WO2021148491
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2024-01-19
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ モシマン
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー アレクサンダー バークベック
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0090390(US,A1)
【文献】特表2020-502083(JP,A)
【文献】特開昭50-094143(JP,A)
【文献】特開2001-011485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
C11D 3/50
A61Q 13/00
A61Q 5/02
A61Q 19/10
A61Q 15/00
D06M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)40~60%(w/w)の式
【化1】
の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形態またはその混合物[式中、シクロヘキセニル基の炭素5はR絶対配置を有し、点線は炭素-炭素単結合または炭素-炭素二重結合を表し、R
1は水素原子またはC
1-3アルキル基を表す]と、
ii)40~60%(w/w)の式
【化2】
の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形態またはその混合物[式中、点線およびR
1は、式(I)におけるのと同じ意味を有する]と
から構成される組成物の付香成分としての使用であって、そのパーセンテージは前記組成物の総重量に対するものである、使用。
【請求項2】
前記点線が炭素-炭素単結合である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
R
1が水素原子またはメチル基である、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が、
i)40~60%(w/w)の式
【化3】
[式中、シクロヘキセニル基の炭素5はR絶対配置を有する]の化合物と、
ii)40~60%(w/w)の式
【化4】
[式中、シクロヘキセニル基の炭素4はS絶対配置を有する]の化合物と
から構成され、そのパーセンテージは前記組成物の総重量に対するものである、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記式(III)の化合物が少なくとも80%のeeを有する、請求項4記載の使用。
【請求項6】
前記式(IV)の化合物が少なくとも50%のeeを有する、請求項4記載の使用。
【請求項7】
付香組成物または着香物品の匂い特性を付与、強化、改善または修正する方法であって、前記方法が、前記組成物または物品に、有効量の請求項1から6において定義される組成物を添加するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項1から6において定義される40~60%(w/w)の式(I)の化合物と請求項1から6において定義される40~60%(w/w)の式(II)の化合物とを含み、そのパーセンテージは前記組成物の総重量に対するものである、組成物。
【請求項9】
i)請求項1から6までのいずれか1項において定義される少なくとも組成物と、
ii)香水担体および香水ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に、少なくとも1種の香料アジュバントと
を含む、付香組成物。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項において定義される組成物、または請求項9において定義される付香組成物を含む、着香消費者製品。
【請求項11】
前記香料消費者製品が、香水、布地ケア製品、ボディケア製品、化粧品、スキンケア製品、エアケア製品またはホームケア製品であることを特徴とする、請求項10記載の着香消費者製品。
【請求項12】
前記香料消費者製品が、高級香水、スプラッシュまたはオードパルファム、コロン、シェーブもしくはアフターシェーブローション、液体または固体洗剤、布地柔軟剤、布地リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品、シャンプー、着色調製物、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラントまたは制汗剤、脱毛剤、タンニング製品または日焼け用製品、ネイル製品、スキンクレンジング、メーキャップ、香料入り石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、またはフット/ハンドケア製品、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー、カビ取り剤、調度品ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面洗剤、皮革ケア製品、カーケア製品であることを特徴とする、請求項11記載の着香消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料の分野に関する。より詳細には、以下に定義した式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含む組成物(composition of matter)の付香成分としての使用に関するものであり、グリーン、フローラル/ロージータイプの香料成分として有用である。したがって、本明細書に記載されたことに従い、本発明は、本発明の組成物を、付香組成物または着香消費者製品の一部として含むものである。
【0002】
発明の背景
香料産業では、貴重で強力な官能刺激特性を有する新規の付香成分を開発することが常に求められている。これと並行して、このような成分の製造中に、許容され得るコストを維持しながら環境フットプリントを最小化することが非常に望まれている。これを達成する1つの方法は、石油化学製品または化石燃料由来の構成要素を、生物起源炭素を含有する出発材料、すなわち再生可能な資源から置き換えることである。
【0003】
グリーン、フローラルタイプの匂いノートを付与する国際公開第2017046071号で報告されたシクロヘキセニルプロパナール誘導体、特に3-[5-(2-プロパニル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと3-[3-(2-プロパニル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとの1:1混合物の環境への影響を制限/最小限に抑えようと取り組む中で、式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含む新規の組成物が見出された。
【0004】
米国特許出願公開第20130090390号明細書では、(R)-3-(4-イソプロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールおよび(S)-3-(4-イソプロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールが、それぞれリリーオブザバレー、フローラル、スイート、ウォータリー、パウダリーおよびオゾン様のノート、ならびにリリーオブザバレー、フルーティー、グリーン、ウォータリー、アルデハイディック様のノートを付与することが開示されている。
【0005】
驚くべきことに、式(I)の化合物と式(II)の化合物との間の相乗効果が発見され、その結果、国際公開第2017046071号に開示された化合物に特徴的なグリーンおよびフローラル全体のノートを維持しながら、ロージーの様相(aspect)と結びついたより新鮮でより自然な特徴を有する本発明の組成物が得られる。先行技術は、本組成物がこのような性能の増加を提供することを予期していない。
【0006】
発明の概要
本発明は、式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含み、香料において非常に高く評価される匂いを付与する組成物に関する。
【0007】
そのため、本発明の第1の対象は、
i)40~60%(w/w)の式
【化1】
の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形態またはその混合物[式中、シクロヘキセニル基の炭素5はR絶対配置を有し、点線は炭素-炭素単結合または炭素-炭素二重結合を表し、R
1は水素原子またはC
1-3アルキル基を表す]と、
ii)40~60%(w/w)の式
【化2】
の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形態またはその混合物[式中、点線およびR
1は、式(I)におけるのと同じ意味を有する]と
から構成される組成物であって、そのパーセンテージは組成物の総重量に対するものである、組成物の付香成分としての使用である。
【0008】
本発明の第2の対象は、付香組成物または着香物品の匂い特性を付与、強化、改善または修正する方法であって、この方法は、前述の組成物または物品に、有効量の上記で定義される組成物を添加するステップを含む。
【0009】
本発明の第3の対象は、上記で定義される40~60%(w/w)の式(I)の化合物と上記で定義される40~60%(w/w)の式(II)の化合物とを含み、そのパーセンテージは組成物の総重量に対するものである、組成物である。
【0010】
本発明の別の対象は、付香組成物であって、
i)上記で定義される少なくとも組成物と、
ii)香水担体および香水ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に少なくとも1種の香料アジュバントと
を含む、付香組成物である。
【0011】
本発明の更なる対象は、上記で定義される組成物、または上記で定義される付香組成物を含む、着香消費者製品である。
【0012】
発明の説明
驚くべきことに、式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含む組成物が、非常に高く評価されるグリーンおよびフローラル/ロージーノートを有することが、今になって発見された。さらに、この組成物は、これまで開示されたことがない。
【0013】
本発明の第1の対象は、
i)40~60%(w/w)の式
【化3】
の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形態またはその混合物[式中、シクロヘキセニル基の炭素5はR絶対配置を有し、点線は炭素-炭素単結合または炭素-炭素二重結合を表し、R
1は水素原子またはC
1-3アルキル基を表す]と、
ii)40~60%(w/w)の式
【化4】
の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形態またはその混合物[式中、点線およびR
1は、式(I)におけるのと同じ意味を有する]と
から構成される組成物であって、そのパーセンテージは組成物の総重量に対するものである、組成物である。
【0014】
前述の組成物は、例えば、ロージーのコノテーションとともにグリーン、フローラルタイプの匂いノートを付与するために、付香成分として使用することができる。
【0015】
明確にするために、「組成物」等の表現によって、当業者に理解される通常の意味、すなわち、少なくとも2つの異なる化合物(これらは立体異性体ではなく、位置異性体である)が存在することが意味される。上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、40%(w/w)~60%(w/w)で構成される量の式(I)の少なくとも1種の化合物と、40%(w/w)~60%(w/w)で構成される量の式(II)の少なくとも1種の化合物とを含んでいてよい。特に、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、45%(w/w)~55%(w/w)で構成される量の式(I)の化合物と、40%(w/w)~50%(w/w)で構成される量の式(II)の化合物とを含んでいてよい。本発明の組成物はさらに、最大でも5%の3-[(1S,6R)-7,7-ジメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-エン-3-イル]プロパナールを含んでいてよい。
【0016】
明確にするために、「その立体異性体のいずれか1つまたはその混合物」等の表現によって、当業者に理解される通常の意味、すなわち、式(I)および(II)の化合物は、式(I)の化合物のシクロヘキセニル基の炭素5がR絶対配置を有することは当然として、純粋であり得るか、エナンチオマーまたはジアステレオ異性体の混合物の形態であり得ることが意味される。換言すれば、式(I)および(II)の化合物は、いくつかの立体中心を有していてよく、前述の立体中心の各々は、2つの異なる立体化学/配置(例えば、RまたはS)を有することができる。式(I)および(II)の化合物はさらに、純粋なエナンチオマーの形態であってもよいし、エナンチオマーまたはジアステレオ異性体の混合物の形態であってもよい。本発明の組成物に含まれる式(I)の化合物および式(II)の化合物は、ラセミ体またはスカレミック(scalemic)体であり得る。したがって、式(I)および(II)の化合物は、各々が1つの立体異性体であるか、または様々な立体異性体を含むか、もしくはこれらを含む組成物の形態であり得る。
【0017】
明確にするために、「点線は炭素-炭素単結合または炭素-炭素二重結合を表す」等の表現によって、当業者に理解される通常の意味、すなわち、前述点線によって連結された炭素原子間の結合(実線および点線)全体が炭素-炭素単結合または二重結合であることが意味される。
【0018】
明確にするために、「点線およびR1は式(I)におけるのと同じ意味を有する」等の表現によって、当業者に理解される通常の意味、すなわち、本発明の組成物は、式(I)の化合物のR1基が式(II)の化合物のR1基と同一であり、式(I)の化合物の点線が式(II)の化合物の点線と同一である式(I)および(II)の化合物を含むことが意味される。すなわち、式(I)の化合物の置換基は、式(II)の化合物の置換基と同一である。
【0019】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、前述の化合物(I)および(II)は、C12-C15化合物、特にC12化合物である。
【0020】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、前述の点線は、炭素-炭素単結合であってよい。
【0021】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、前述のR1は、水素原子またはメチル基であってよい。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、前述のR1は、水素原子であってもよい。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、
i)40~60%(w/w)の式
【化5】
[式中、シクロヘキセニル基の炭素5はR絶対配置を有する]の化合物と、
ii)40~60%(w/w)の式
【化6】
[式中、シクロヘキセニル基の炭素4はS絶対配置を有する]の化合物と
から構成されていてよく、そのパーセンテージは組成物の総重量に対するものである。
【0024】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、式(III)の化合物は、少なくとも80%、さらに少なくとも85%、さらに少なくとも90%、さらに少なくとも95%、さらに少なくとも98%のeeを有する。
【0025】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、式(IV)の化合物は、少なくとも50%のee、さらに少なくとも55%のee、さらに少なくとも60%のeeを有する。
【0026】
明確にするために、式「ee」は「エナンチオマー過剰」を表し、これは、他方のエナンチオマーに対する一方のエナンチオマーの過剰として定義され、全体に対するパーセンテージで表され、以下のように計算される、ここで、RおよびSは、混合物中のエナンチオマーのそれぞれの画分である:
ee=((R-S)/(R+S))×100
換言すれば、80%のエナンチオマー過剰、すなわち80%のeeが、9:1のエナンチオマー比に相当する。
【0027】
上述したように、本発明の組成物は、フローラル(リリーオブザバレーであるがロージータイプでもある)ノートとともに粘り強いグリーンの匂いを有する。全体的なプロファイルは、先行技術のラセミまたはエナンチオピュア類似体と比較した場合、調香師の創造性に新しい展望を開くことから、調香師にとって高い関心事であることを実証している。
【0028】
本発明の組成物の具体例としては、非限定的な例として、46%の3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと、48%の3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとを含む組成物を挙げることができる。他の例としては、44%の3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールと、49%の3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールとを含む組成物を挙げることができる。いずれの例も、上記で報告した匂いを有する。
【0029】
本発明の組成物の匂いを、先行技術の化合物である国際公開第2017046071号で報告された3-[5-(2-プロパニル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと3-[3-(2-プロパニル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとの1:1混合物、または米国特許出願公開第20130090390号明細書で報告された(S)-3-(4-イソプロピルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナールと比較した場合、本発明の組成物は、ロージーの様相を呈する明らかによりフレッシュなグリーンノートを有することと、先行技術の化合物に特徴的なピラジンおよびアルデハイディックノートが無いこととによって、秀でている。本発明の組成物によって付与されるグリーンノートは、先行技術の化合物がよりグリーン/ハーブ調のノートを伝えるのに対し、よりグリーン/フローラル/ベジタブルな印象をもたらす傾向にある。本発明の化合物の匂いは、国際公開第2017046071号で報告された先行技術の化合物に特徴的である有意なシトラスおよびバイオレットリーフのアンダーノートが無いか、または有していない。さらに、本発明の組成物は、米国特許出願公開第20130090390号明細書で報告された先行技術の化合物に特徴的である有意なスイート、フルーティーなノートを欠いている。本発明の組成物および両先行技術の化合物は、異なる様相を呈するグリーンおよびフローラルノートを付与する。国際公開第2017046071号で報告された先行技術の化合物がより香りの強いノートを付与し、米国特許出願公開第20130090390号明細書で報告された先行技術の化合物がテルペン系およびファッティーノートを付与するのに対し、本発明の組成物はロージーノートを有する唯一のものであり、グリーンノートがよりフレッシュであるという点で独特である。
【0030】
換言すれば、両先行技術の化合物は、主にグリーンおよびリリーオブザバレーノートを付与するものとして記載されており、そのため、先行技術の化合物を含む任意の組成物は、シトラス、バイオレットリーフ/ピラジン、フルーティー、ウォータリーおよびアルデハイディックなどの先行技術の化合物について報告された何らかのファセットとともに、強化された(より顕著な)グリーンおよび/またはリリーオブザバレーノートを有するはずである。しかしながら、予想外にも、式(I)の化合物と式(II)の化合物との組み合わせは、予想外のロージー特徴とともにフローラルノートを豊かにしつつ、これらの上記のファセットのいずれも有しない本発明の組成物をもたらす。バイオレットリーフ/ピラジン様相の喪失は、本発明の組成物をよりフレッシュにし、特に国際公開第2017046071号で報告された化合物よりもフレッシュにするものである。
【0031】
前述の相違により、本発明の化合物と先行技術の化合物とがそれぞれ異なる用途に適していること、すなわち異なる官能刺激的な印象を付与することを可能にする。
【0032】
上述のように、本発明は、式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含む組成物の付香成分としての使用に関するものである。換言すれば、付香組成物または着香物品または表面の匂い特性を付与、強化、改善または修正する方法またはプロセスに関するものであり、この方法は、前述の組成物または物品に、例えばその典型的なノートを付与するために、有効量の本発明の組成物を添加するステップを含む。最終的な快楽的効果は、正確な投与量および本発明の組成物の官能刺激特性に依存し得るが、いずれにしても本発明の組成物の添加は、投与量に依存するノート、タッチまたは様相の形態で最終製品にその典型的なタッチを付与すると理解される。
【0033】
「本発明の組成物の使用」とは、ここでは、式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含有し、香料産業において有利に採用することができる任意の組成物の使用も理解されなければならない。
【0034】
実際に付香成分として有利に使用され得る上記組成物も、本発明の対象である。
【0035】
したがって、本発明の別の対象は、
i)付香成分として、上記で定義した少なくとも本発明の組成物と、
ii)香料担体および香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に少なくとも1種の香料アジュバントと
を含む付香組成物である。
【0036】
「香料担体」とは、本明細書では、香料の観点から実質的に中性である、すなわち付香成分の感覚刺激特性を大きく変化させない材料を意味する。上記担体は、液体または固体であり得る。
【0037】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、または香料に一般的に使用される溶媒が挙げられ得る。香料で一般的に使用される溶媒の性質および種類の詳細な説明は、網羅することができない。しかしながら、非限定的な例として、ブチレンまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、クエン酸トリエチルまたはそれらの混合物などの、最も一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料担体と香料ベースとの両方を含む組成物の場合、先に特定されたもの以外の適切な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えばIsopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)という商標で知られているもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば、Dowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)という商標で知られているもの、または硬化ヒマシ油、例えばCremophor(登録商標)RH 40(製造元:BASF)という商標で知られているものであってもよい。
【0038】
固体担体とは、付香組成物または付香組成物のいくつかの要素が化学的または物理的に結合され得る材料を指すことを意味する。一般に、このような固体担体は、組成物を安定化するために、または組成物もしくはいくつかの成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体は、当該技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果を達成する方法を知っている。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、吸収性ガムもしくはポリマーまたは無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木質材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルクまたはゼオライトを挙げることができる。
【0039】
固体担体の他の非限定的な例として、封入材料を挙げることができる。このような材料の例は、壁形成および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類もしくは三糖類、天然デンプンもしくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチン、またはさらに参考文献、例えば、H. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996に引用された材料を含み得る。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集またはさらに押出などの技術を使用して実施され得るか;またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0040】
固体担体の非限定的な例として、特に、任意にポリマー安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で、重合、界面重合、コアセルベーションによってまたはすべて一緒にして(前述の技術はすべて先行技術に記載されている)誘発される相分離プロセスのような技術を用いたアミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素またはポリウレタン型の樹脂またはそれらの混合物(前述の樹脂はすべて当業者によく知られている)を含むコアシェル型カプセルを挙げることができる。
【0041】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)と、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなどのアミン、ならびにそれらの混合物との重縮合により生成され得る。代替的には、予備形成された樹脂アルキロール化ポリアミン、例えばUrac(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF)という商品名で市販されているものが使用され得る。
【0042】
他の樹脂は、ポリオール、例えばグリセロールと、ポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットもしくはキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体(Takenate(登録商標)の商品名で知られる、製造元:Mitsui Chemicals)との重縮合によって生成されるものであり、その中でも、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとの重縮合によって生成されるものが好ましい。
【0043】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関するいくつかの影響力のある文献として、K. Dietrichらによって公開された論文、Acta Polymerica, 1989年, 第40巻, 243頁, 325頁および683頁ならびに1990年, 第41巻, 91頁などの論文が挙げられる。このような論文には、従来技術の方法に従ってこのようなコアシェルマイクロカプセルの調製に影響を及ぼす様々なパラメータがすでに記載されており、これらも特許文献にさらに詳述され、例示されている。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4396670号明細書は、後者の適切な初期の例である。それ以来、他の多くの著者がこの分野の文献を充実させており、ここで公開されたすべての開発をカバーすることは不可能であろうが、カプセル化技術の一般的な知識は非常に重要である。このようなマイクロカプセルの適切な使用を開示しているより最新の関連刊行物は、例えば、K. BruyninckxおよびM. Dusselier, ACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2019年, 第7巻, 8041~8054頁の論文に代表されている。
【0044】
本明細書で意味する「香料ベース」とは、少なくとも1種の付香補助成分を含む組成物である。
【0045】
前述の付香補助成分は、式(I)または(II)のものではない。さらに、「付香補助成分」とは、ここでは、付香調剤または組成物において快楽的効果を付与するために使用される化合物を意味する。換言すれば、付香成分であると考えられるべきこのような補助成分は、単に匂いを有しているものとしてではなく、組成物の匂いをポジティブにまたは心地良いように付与または変更できるものとして、当業者には認識されなければならない。
【0046】
ベース中に存在する付香補助成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、これらはいずれの場合も網羅的ではなく、当業者は、その一般的な知識に基づいて、かつ意図された使用または用途および所望の感覚刺激効果に従ってこれらを選択することができる。一般論として、これらの付香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫黄複素環式化合物および精油などの様々な化学クラスに属し、上記付香補助成分は、天然または合成由来であり得る。
【0047】
特に、香料配合物に一般的に使用される付香補助成分、例えば:
- アルデヒド成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、ノナナールおよび/またはノネナール;
- アロマティック-ハーバル成分:ユーカリ油、カンファー、ユーカリプトール、5-メチルトリシクロ[6.2.1.0~2,7~]ウンデカン-4-オン、1-メトキシ-3-ヘキサンチオール、2-エチル-4,4-ジメチル-1,3-オキサチアン、2,2,7/8,9/10-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-8-エン-1-オン、メントールおよび/またはアルファ-ピネン;
- バルサミコ成分:クマリン、エチルバニリンおよび/またはバニリン;
- シトラス成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、リナリルアセテート、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-p-メンテン-8-イルアセテートおよび/または1,4(8)-p-メンタジエン;
- フローラル成分:メチルジヒドロジャスモネート、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルサリチレート、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、ベータイオノン、メチル2-(メチルアミノ)ベンゾエート、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、(1E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-1-ペンテン-3-オン、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-[2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル]-2-ブテン-1-オン、(2E)-1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシレート、3-(4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)プロパナール、ヘキシルサリチレート、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、ベルジルアセテート、ゲラニオール、p-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、アミルサリチレート、ハイシスメチルジヒドロジャスモネート、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベルジルプロピオネート、ゲラニルアセテート、テトラヒドロリナロール、シス-7-p-メンタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、8-デセン-5-オリド、4-フェニル-2-ブタノン、イソノニルアセテート、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、ベルジルイソブチレートおよび/またはメチルイオノン異性体の混合物;
- フルーツ成分:γ-ウンデカラクトン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、4-デカノリド、エチル2-メチル-ペンタノエート、酢酸ヘキシル、エチル2-メチルブタノエート、γ-ノナラクトン、アリルヘプタノエート、2-フェノキシエチルイソブチレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテート、3-(3,3/1,1-ジメチル-5-インダニル)プロパナール、ジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、3-メチル-2-ヘキセン-1-イルアセテート、1-[3,3-ジメチルシクロヘキシル]エチル[3-エチル-2-オキシラニル]アセテートおよび/またはジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
- グリーン成分:2-メチル-3-ヘキサノン(E)-オキシム、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
- ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン、3-メチルシクロペンタデカノン、1-オキサ-12-シクロヘキサデセン-2-オン、1-オキサ-13-シクロヘキサデセン-2-オン、(9Z)-9-シクロヘプタデセン-1-オン、2-{1S)-1-[(1R)-3,3-ジメチルシクロヘキシル]エトキシ}-2-オキソエチルプロピオネート3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、オキサシクロヘキサデカン-2-オンおよび/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
- ウッディー成分:1-[(1RS,6SR)-2,2,6-トリメチルシクロヘキシル]-3-ヘキサノール、3,3-ジメチル-5-[(1R)-2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル]-4-ペンテン-2-オール、3,4’-ジメチルスピロ[オキシラン-2,9’-トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ[4]エン、(1-エトキシエトキシ)シクロドデカン、2,2,9,11-テトラメチルスピロ[5.5]ウンデカ-8-エン-1-イルアセテート、1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチュリー油、パチュリー油のテルペン画分、clearwood(登録商標)、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンおよび/または酢酸イソボルニル;
- 他の成分(例えば、アンバー、パウダリースパイシーまたはウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フランおよびその立体異性体のいずれか、ヘリオトロピン、アニシックアルデヒド、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、クローブオイル、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2-ナフタレノール、1-フェニルビニルアセテート、6-メチル-7-オキサ-1-チア-4-アザスピロ[4.4]ノナンおよび/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール
を挙げることができる。
【0048】
本発明による香料ベースは、上記の付香補助成分に限定されなくてもよく、これらの補助成分の他の多くは、いずれの場合も、S. Arctanderによる書籍、Perfume and Flavor Chemicals(1969年、ニュージャージー州モントクレア、米国)もしくはその最新版、または同様の性質の他の論文、ならびに香料分野の豊富な特許文献などの参考文献に列記されている。上記補助成分が、制御された方法で、プロパフュームまたはプロフレグランスとしても知られている様々な種類の付香化合物を放出することが知られている化合物であってもよいことも理解されている。適切なプロパフュームの非限定的な例としては、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、4-(ドデシルチオ)-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノン、トランス-3-(ドデシルチオ)-1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-ブタノン、2-(ドデシルチオ)-オクタン-4-オン、2-フェニルエチルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルオキソ(フェニル)アセテート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イルヘキサデカノエート、ビス(3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-イル)スクシネート、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(3-メチル-4-フェンエトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、(3-メチル-4-フェンエトキシブタ-3-エン-1-イル)ベンゼン、1-(((Z)-ヘキサ-3-エン-1-イル)オキシ)-2-メチルウンデカ-1-エン、(2-((2-メチルウンデカ-1-エン-1-イル)オキシ)エトキシ)ベンゼン、2-メチル-1-(オクタン-3-イルオキシ)ウンデカ-1-エン、1-メトキシ-4-(1-フェンエトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、1-メチル-4-(1-フェンエトキシプロパ-1-エン-2-イル)ベンゼン、2-(1-フェンエトキシプロパ-1-エン-2-イル)ナフタレン、(2-フェンエトキシビニル)ベンゼン、2-(1-((3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-イル)オキシ)プロパ-1-エン-2-イル)ナフタレン、(2-((2-ペンチルシクロペンチリデン)メトキシ)エチル)ベンゼンまたはそれらの混合物を挙げることができる。
【0049】
「香料補助剤」とは、本明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性等の付加的に追加される利点を付与することができる成分を意味する。付香組成物に一般的に使用されるアジュバントの性質および種類の詳細な説明は、網羅できないが、上記成分が当業者によく知られていることは言及されなければならない。具体的な非限定的な例としては、以下のものを挙げることができる:粘性剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化および/またはレオロジー調整剤)、安定剤(例えば、保存剤、抗酸化剤、熱/光および/または緩衝剤またはキレート剤、例えば、BHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、保存剤(例えば、抗菌剤または抗細菌剤または抗真菌剤または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、定着剤、防虫剤、軟膏剤、ビタミンおよびそれらの混合物。
【0050】
当業者は、単に当該技術分野の標準的な知識を適用することによってのみならず試行錯誤法によっても付香組成物の上記成分を混合することによって、所望の効果に最適な配合物を完全に設計することができることが理解される。
【0051】
少なくとも本発明の組成物と少なくとも1種の香料担体とからなる本発明の組成物は、少なくとも本発明の組成物と少なくとも1種の香料担体と少なくとも1種の香料ベースと任意に少なくとも1種の香料アジュバントとを含む付香組成物と同様に本発明の特定の実施形態からなる。
【0052】
特定の実施形態によれば、上記の組成物は、式(I)の2種以上の化合物と式(II)の2種以上の化合物とを含み、調香師が、様々な本発明の組成物の匂いの調性を有するアコードまたは香料を調製し、ひいては創造目的のための新しい構成要素を作製することを可能にする。
【0053】
明確にするために、化学合成、例えば適切な精製を行わない反応媒体から直接得られる任意の混合物であって、本発明の組成物が出発、中間または最終生成物として関与するであろうものは、前述の混合物が香料に適した形態で本発明の組成物を提供しない限り、本発明による付香組成物としてみなされないことも理解される。したがって、特に明記しない限り、未精製の反応混合物は、概して本発明から除外される。
【0054】
また、本発明の組成物は、現代香料のすべての分野、すなわち、高級香料または機能性香料において、前述の本発明の組成物が添加される消費者製品の匂いを積極的に付与または修正するために有利に使用することができる。したがって、本発明の別の対象は、上記で定義した少なくとも式(I)の化合物と式(II)の化合物とを含む本発明の組成物を付香成分として含む着香消費者製品からなる。
【0055】
本発明の組成物は、そのままで、または本発明の付香組成物の一部として添加され得る。
【0056】
明確にするために、「着香消費者製品」は、それが適用される表面または空間(例えば、皮膚、毛髪、テキスタイル、または家庭表面)に少なくとも心地良い付香効果をもたらす消費者製品を指すことを意味する。換言すれば、本発明による着香消費者製品は、所望の消費者製品に対応する機能性配合物、ならびに任意に追加の有益剤、および少なくとも本発明の組成物の嗅覚有効量を含む着香消費者製品である。明確にするために、上記着香消費者製品は、非食用製品である。
【0057】
着香消費者製品の成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく(いずれの場合も網羅的ではないであろう)、当業者は、一般的な知識に基づいて、かつ上記製品の性質および所望の効果に従ってこれらを選択することができる。
【0058】
適切な着香消費者製品の非限定的な例としては、香水、例えば、高級香水、スプラッシュまたはオードパルファム、コロンまたはシェーブもしくはアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば、液体または固体洗剤、布地柔軟剤、液体または固体の芳香増強剤、布地リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えば、ヘアケア製品(例えば、シャンプー、着色調製物またはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品)、消毒剤、インティメイトケア製品;化粧品(例えば、スキンクリームまたはローション、バニシングクリームまたはデオドラントまたは制汗剤(例えば、スプレーまたはロールオン)、脱毛剤、タンニング製品または日焼け用製品または日焼け後製品、ネイル製品、スキンクレンジング、メーキャップ);またはスキンケア製品(例えば、石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、または衛生製品もしくはフット/ハンドケア製品);エアケア製品、例えば、家庭空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/または公共空間(ホール、ホテル、モール等)で使用することができるエアフレッシュナーまたは「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば、カビ取り剤、調度品ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面(例えば、床、浴槽、サニタリーまたは窓洗浄)洗剤;皮革ケア製品;カーケア製品、例えば、ポリッシュ、ワックスまたはプラスチッククリーナーが挙げられる。
【0059】
上記の着香消費者製品のいくつかは、本発明の組成物にとって攻撃的な媒体となる可能性があり、そのため、例えばカプセル化することによって、または酵素、光、熱もしくはpHの変化などの適切な外部刺激により本発明の組成物を放出するのに適した別の化学物質に化学結合することによって、後者を早期分解から保護する必要があり得る。
【0060】
本発明による組成物を様々な前述の製品または組成物に組み込むことができる割合は、広範囲の値の範囲内で変化する。これらの値は、本発明による組成物が、当該技術分野で一般的に使用される付香補助成分、溶媒または添加剤と混合される場合、付香されるべき物品の性質および所望の感覚刺激効果ならびに所与のベース中の補助成分の性質に依存する。
【0061】
例えば、付香組成物の場合、典型的な濃度は、それらが組み込まれる組成物の重量に基づいて、本発明の組成物の0.001重量%~10重量%、またはこれを超えるオーダーである。着香消費者製品の場合、典型的な濃度は、それらが組み込まれる消費者製品の重量に基づいて、本発明の組成物の0.0001重量%~1重量%、またはそれを超えるオーダーである。
【0062】
本発明の組成物は、文献に報告されている方法または本明細書の以下で記載されるような当該技術分野で既知の標準的な方法に従って調製することができる。
【0063】
実施例
本発明は、ここで以下の実施例によってさらに詳細に説明されることになるが、略語は、当該技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏(℃)で示される。NMRスペクトルを、400MHz、(1H)および100MHz(13C)で動作するBruker Avance II Ultrashield 400 plus、または500MHz(1H)および125MHz(13C)で動作するBruker Avance III 500、または600MHz(1H)および150MHz(13C)で動作するBruker Avance III 600クライオプローブのいずれかを使用して取得した。スペクトルは、テトラメチルシラン0.0ppmに対して内部参照した。1H NMRシグナルシフトは、δppmで表され、カップリング定数(J)は、以下の多重度:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;b、ブロード(未解明のカップリングを示す)を用いてHzで表され、Bruker Topspinソフトウェアを使用して解釈した。13C NMRデータは、DEPT 90およびDEPT 135実験からの化学シフトδppmおよびハイブリダイゼーションで表し、sは第四級、dはメチン、tはメチレン、qはメチルである。
【0064】
実施例1
3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールおよび3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールを含む本発明の組成物の合成
ステップ1:m-メンテン/p-メンテンの混合物:
リモネン/シルベストレン混合物(シルベストレン43%、リモネン48%、350.0g、2.28mol、1.0当量)、エタノール(100.0g、28.6%(w/w))およびラネーニッケル(3.5g)をオートクレーブ1Lに投入した。オートクレーブを窒素でパージし、水素で加圧(2.0bar)し、40℃まで加熱した。10時間後、水素の圧力を解放し、混合物を冷却し、オートクレーブを窒素でパージした。混合物をフリット付き漏斗で濾過した。水(186.4g)を加え、混合物を5分間撹拌し、次いでデカンテーションさせた。水相を廃棄した。白色鉱油(37.2g)を加え、混合物を減圧下で共沸乾燥させた(150mbar)。次いで生成物を蒸留(p=150~30mbar、Tvap=112~55℃)し、無色液体(343g、収率96%)を得た。
【0065】
【0066】
ステップ2:(4S)-1,2-エポキシ-p-メンタンと(5R)-1,2-エポキシ-m-メンタンとの混合物
m/p-メンテン(200.0g、1.25mol、1.0当量)と炭酸水素カリウム(25.0g、0.25mol、0.2当量)との混合物を撹拌下に30℃に加熱した。過酢酸水溶液(34.2%、152.5g、0.69mol、0.55当量)を1.5時間かけてゆっくりと添加した。添加終了から1時間後に水(50.0g)を投入し、混合物を5分間撹拌した。混合物を沈降させた。水相を除去し、廃棄した。有機相を10%炭酸ナトリウム水溶液(100.0g)および水(100.0g)で洗浄した。炭酸水素カリウム(25.0g、0.25mol、0.2当量)を投入した。過酢酸水溶液(34.2%、171.5g、0.77mol、0.62当量)を1.5時間かけて添加した。添加終了から1.5時間後に水(50.0g)を投入し、混合物を5分間撹拌した。混合物を沈殿させた。水相を除去し、廃棄した。有機相を10%炭酸ナトリウム水溶液(100.0g)および水(100.0g)で洗浄した。粗生成物(210.1g)を、エポキシ化亜麻仁油(10.75g)の添加後にフラッシュ蒸留(p=10~1mbar、Tvap=54~89℃)して、無色液体(201.3g、純度:84%、収率88%)を得た。この生成物を、エポキシ化亜麻仁油の添加後にSulzer DXガーゼを充填した80cmカラムで蒸留(p=20mbar、Tvap=75~76℃)することにより、さらに精製した。
【0067】
ステップ3:(5S)-5-イソプロピル-2-メチレンシクロヘキサン-1-オールと(4R)-4-イソプロピル-2-メチレンシクロヘキサノールとの混合物
白色鉱油(20.0g)、2-エチルヘキサン酸クロム(III)(鉱油中70%、1.49g、2.16mmol、0.0035当量)および2-アミノフェノール(0.84g、7.73mmol、0.0125当量)を撹拌しながら210℃に加熱し、(4S)-1,2-エポキシ-p-メンタンと(5R)-1,2-エポキシ-m-メンタンとの混合物(100.0g、618mmol、1.0当量)を6時間かけて添加した。添加終了から1.5時間後に混合物を25℃に冷却した。粗生成物(119.8g)をフラッシュ蒸留(p=1mbar、Tvap=54~96℃)して、次のステップでそのまま使用される黄色液体(90.4g、純度:90%、収率85%)を得た。
【0068】
【0069】
ステップ4:3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとの混合物
前のステップからの生成物(20.0g、117mmol、1.0当量)と、トリエチレングリコールジビニルエーテル(28.3g、140mmol、1.2当量)と、酢酸水銀(II)(1.86g、5.8mmol、0.05当量)との混合物を4時間撹拌しながら140℃に加熱した。混合物を25℃に冷却し、酢酸(20.0g)と水(5.0g)と酢酸ナトリウム(5.0g)との混合物を添加した。混合物を還流下で1時間加熱し、25℃に冷却した。ヘプタン(40.0g)および水(40.0g)を加え、混合物を沈降させた。水相および少量の液体水銀を除去し、廃棄した。有機相を水(40.0g)で洗浄した。溶媒を蒸発させ、粗生成物(24.9g)をバルブツーバルブ(bulb to bulb)蒸留した(p=0.2mbar)。生成物(17.1g、純度:72%、収率62%)を、46%の3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと48%の3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとを含む組成物を提供する白色鉱油を加えた後に、ガラスリングを充填した12cmカラムで蒸留(p=0.1mbar、Tvap=40~48℃)することにより、さらに精製した。
【0070】
【0071】
実施例2
3-[(5R)-(5-(プロパ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル]プロパナールと3-[(4S)-4-(プロパ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン-1-イル]プロパナールとを含む本発明の組成物の合成
ステップ1:(4S)-1,2-エポキシ-p-メンテンと(5R)-1,2-エポキシ-m-メンテンとの混合物
リモネン/シルベストレン混合物(シルベストレン43%、リモネン48%、500.0g、3.23mol、1.0当量)と炭酸水素カリウム(49.0g、0.48mol、0.3当量)を撹拌下に30℃に加熱し、過酢酸水溶液(32.9%、280.3g、1.21mol、0.375当量)を1.5時間かけて添加した。添加終了から1時間後に水(125.0g)を投入し、5分間撹拌した。混合物を沈降させた。水相を除去し、廃棄した。有機相を10%炭酸ナトリウム水溶液(250.0g)および水(166.0g)で洗浄した。炭酸水素カリウム(49.0g、0.48mol、0.3当量)を投入した。過酢酸水溶液(32.9%、280.3g、1.21mol、0.375当量)を1.5時間で添加した。添加終了から1.5時間後に水(125.0g)を投入し、混合物を5分間撹拌した。混合物を沈降させた。水相を除去し、廃棄した。有機相を10%炭酸ナトリウム水溶液(250.0g)および水(250.0g)で洗浄した。粗生成物(507.3g)を、エポキシ化亜麻仁油(26.3g)の添加後にフラッシュ蒸留(p=10~1mbar、Tvap=83~99℃)して、無色液体(472.7g、純度48%、リモネン/シルベストレン39.4%を含有)を得た。この生成物を、エポキシ化亜麻仁油 (30.1g)の添加後にSulzer DXガーゼを充填した80cmカラムで蒸留(p=20mbar)することにより、さらに精製した。2つの生成物を回収した:
- リモネン/シルベストレン混合物(沸点:59~62℃):178.8g(純度:86%、収率34%)
- エポキシドの混合物(沸点:77~79℃):209.0g(純度:99%、収率:42%)。
【0072】
ステップ2:(5S)-5-イソプロペニル-2-メチレンシクロヘキサン-1-オールと(4R)-4-イソプロペニル-2-メチレンシクロヘキサノールとの混合物
実施例1におけるステップ3の手順を、前のステップの生成物を出発点として用いた(85.0g、554mmol)。フラッシュ蒸留(p=1mbar、Tvap=55~68℃)後、黄色液体(77.9g、純度:91%、収率84%)を得て、次のステップでそのまま使用した。
【0073】
【0074】
ステップ3:3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとの混合物
実施例1におけるステップ4の手順を、前のステップの生成物を出発点として用いた(20.0g、554mmol)。バルブツーバルブ(bulb to bulb)蒸留(p=0.1mbar)後、淡黄色液体(13.1g、純度:84%、収率:49%)を得た。この生成物を、15cmのFischerカラムで蒸留(p=0.2mbar、Tvap=38~42℃)することにより、さらに精製して、44%の3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと50%の3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとを含む組成物を提供した。
【0075】
【0076】
実施例3
2-メチル-3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと2-メチル-3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとを含む本発明の組成物の合成
ステップ1:エチル3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチルプロパノエートとエチル3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチルプロパノエートとの混合物:
オルトプロピオン酸トリエチル(56.2g、316mmol、1.3当量)とピバリン酸(0.99g、9.72mmol、0.04当量)との混合物を撹拌しながら130℃に加温した。(5S)-5-イソプロペニル-2-メチレンシクロヘキサン-1-オールと(4R)-4-イソプロペニル-2-メチレンシクロヘキサノール(40.0g、243mmol、1.0当量)との混合物を5時間かけて添加した。添加中、さらにピバル酸を加えた(2時間後0.50g、4時間後0.50g、合計0.04当量)。エタノールを、それが形成されたときに蒸留した。添加終了から1時間後に、この混合物を25℃に冷却した。粗生成物(69.4g、純度:87%)を、ガラスリングを充填した12cmカラムで蒸留(p=0.5mbar、Tvap=88~89℃)し、無色液体(48.5g、純度:97%、収率82%)を得た。
【0077】
【0078】
ステップ2:3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールと3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールとの混合物:
エチル3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチルプロパノエートとエチル3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチルプロパノエートとの混合物(45.0g、186mmol、1.0当量)、トルエン(67.5g、150%(w/w))およびジエチル酢酸亜鉛とN,N-ジメチルエタノールアミン(4.72g)との錯体を撹拌しながら100℃に加熱した。ポリメチルヒドロシロキサン(28.8g)を2時間かけて添加した。添加終了から30分後に、この混合物を25℃に冷却し、60℃で水酸化カリウム溶液(45%、61.3g、483mmol、2.6当量)を30分で添加した。混合物を30分間撹拌し、沈殿させた。水相を除去し、廃棄した。有機相を10%塩化ナトリウム水溶液(60.0g)、5%硫酸水溶液(60.0g)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(60.0g)および水(60.0g)で順次洗浄した。この溶液を減圧下で濃縮し、粗生成物(36.6g、純度:93%)をフラッシュ蒸留(p=1mbar、Tvap=96~99℃)して、無色液体(33.3g、純度:93%、収率86%)を得た。この生成物を50cmのFischerカラムで蒸留(p=1mbar、Tvap=96~99℃)することにより、さらに精製した。
【0079】
【0080】
ステップ3:3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールと3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールとの混合物:
3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールと3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールとの混合物(15.0g、77mmol、1.0当量)のジクロロメタン(30.0g)中溶液を、25℃でクロロクロム酸ピリジニウム(28.9g、134mmol、1.75当量)のジクロロメタン(120.0g)中撹拌懸濁液に30分かけて添加した。添加終了から5時間後にシリカゲル(30.0g)を添加した。この混合物を10分間撹拌した後、セライトのショートパッドで濾過した。固形セライトパッドはジクロロメタンで洗浄した。溶液を減圧下で濃縮し、粗生成物(12.6g、純度:93%)をバルブツーバルブ(bulb to bulb)蒸留(p=0.1mbar)して、無色液体(11.4g、純度:95%、収率73%)を得た。この生成物を15cmのFischerカラムで蒸留(p=0.2mbar、Tvap=41~43℃)することにより、さらに精製して、48%の3-[(5R)-5-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールと50%の3-[(4S)-4-イソプロペニル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールとを含む組成物を提供した。
【0081】
【0082】
実施例4
2-メチル-3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと2-メチル-3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとを含む本発明の組成物の合成
ステップ1:エチル3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチルプロパノエートおよびエチル3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチルプロパノエートとの混合物:
実施例3におけるステップ1の手順を、(5S)-5-イソプロピル-2-メチレンシクロヘキサン-1-オールと(4R)-4-イソプロピル-2-メチレンシクロヘキサノールとの混合物(48.0g、純度:89%、276mmol)を出発点として用いた。粗生成物(86.1g、純度:80%)を、ガラスリングを充填した12cmカラムで蒸留(p=0.5mbar、Tvap=79~80℃)して、無色液体(46.4g、純度:93%、収率66%)を得た。
【0083】
【0084】
ステップ2:3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールと3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパノールとの混合物:
実施例3におけるステップ2の手順を、前のステップの生成物(43.0g、168mmol)を出発点として用いた。粗生成物(35.0g、純度:86%)をフラッシュ蒸留(p=1mbar、Tvap=97~100℃)して、無色液体(31.9g、純度:91%、収率:88%)を得た。この生成物を50cmのFischerカラムで蒸留(p=1mbar、Tvap=98~100℃)することにより、さらに精製した。
【0085】
【0086】
ステップ3:3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールと3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールとの混合物:
実施例3におけるステップ2の手順を、前のステップの生成物(13.0g、62.8mmol)を出発点として用いた。バルブツーバルブ蒸留(p=0.1mbar)後、44%の3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールと49%の3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]-2-メチル-1-プロパナールとを含む無色液体(8.6g、純度:93%、収率66%)が得られた。
【0087】
【0088】
実施例5
付香組成物の調製
以下の成分を混和することにより、布地用エンハンサー用の付香組成物を調製した。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
上記組成物に、実施例1で調製した3-[(5R)-5-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとを含む本発明の組成物200重量部を加えることにより、後者にフレッシュでナチュラルでありながらグリーンステム方向のコノテーションが付与された。本発明の組成物は、組成物のフレッシュフローラルなファセットを強化するものである。本発明の組成物は、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、(+-)-3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール、および2-フェニルエタノールなどの組成物のフローラル/ロージー要素と特によく調和していた。
【0094】
本発明の組成物の代わりに、3-[5-(2-プロパニル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールと3-[3-(2-プロパニル)-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールとの先行技術の1:1混合物を同じ量添加することで、よりファッティー/グリーンのコノテーションがよりアグレッシブに、あまりナチュラルでなく提供された。前述の先行技術の混合物は、本発明の組成物のように組成物の爽やかさを高めることはなかった。先行技術の混合物は、アリル(2/3-メチルブトキシ)アセテートおよび2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒドなどの組成物のグリーン要素と特によく調和した。
【0095】
本発明の組成物の代わりに同じ量の先行技術の3-[(4S)-4-イソプロピル-1-シクロヘキセン-1-イル]プロパナールを添加すると、ややグリーンが強く、よりシトラス-テルペン系のコノテーションが提供された。組成物への影響はより弱いものであった。
【0096】
実施例6
本発明の組成物を含むオードトワレの調製
オードトワレは、オードトワレの全重量に対して12重量%の実施例5の本発明の組成物をエタノールに添加することにより調製する。
【0097】
実施例7
本発明の化合物を含む液体洗剤の調製
【表2】
【0098】
液体洗剤は、液体洗剤の全重量に対して0.5~1.5重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第1表の無香料液体洗剤配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製した。
【0099】
実施例8
本発明の化合物を含む布地用柔軟剤の調製
【表3】
【0100】
柔軟剤を、65℃に加熱したメチルビス[エチル(タロウェート)]-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートを秤量することにより調製する。次いで、水および1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンを反応器に入れ、撹拌しながら65℃に加熱する。上記混合物に、メチルビス[エチル(タロウェート)]-2-ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートを添加する。混合物を15分間撹拌し、CaCl2を添加する。次いで、柔軟剤の全重量に対して0.5~2重量%の実施例5の本発明の付香組成物を添加する。混合物を15分間撹拌し、撹拌しながら室温まで冷却する(粘度測定:結果35+/-5mPas.(剪断速度106sec-1))。
【0101】
実施例9
本発明の組成物を含む透明な等方性シャンプーの調製
【表4】
【0102】
シャンプーを、ポリクオタニウム-10を水に分散させることによって調製する。相Aの残りの成分を、各添加後に十分に混合しながら順々に添加することによって別々に混合する。この予混合物を、ポリクオタニウム-10分散液に添加し、さらに5分間混合する。次いで、予混合した相Bおよび予混合した相Cを、撹拌しながら添加する(Monomuls 90L-12を加熱してTexapon NSO ISに溶解させる)。相Dおよび相Eを、撹拌しながら添加する。クエン酸溶液でpH:5.5~6.0になるまでpHを調整し、無香料シャンプー配合物にする。
【0103】
香料入りシャンプーは、シャンプーの全重量に対して0.4~0.8重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第3表の無香料シャンプー配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製する。
【0104】
実施例10
本発明の組成物を含む構造化シャワージェルの調製
【表5】
【0105】
シャワージェルは、シャワージェルの全重量に対して0.5~1.5重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第4表の無香料シャワージェル配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製する。
【0106】
実施例11
本発明の組成物を含む透明シャワージェルの調製
【表6】
【0107】
透明なシャワージェルは、シャワージェルの全重量に対して0.5~1.5重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第5表の無香料シャワージェル配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製する。
【0108】
実施例12
本発明の組成物を含む乳白色シャワージェルの調製
【表7】
【0109】
透明なシャワージェルは、シャワージェルの全重量に対して0.5~1.5重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第6表の無香料シャワージェル配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製する。
【0110】
実施例13
本発明の組成物を含むパール様シャンプーの調製
【表8-1】
【0111】
【0112】
シャンプーを、水およびEDTA四ナトリウムに、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびポリクオタニウム-10を分散させることによって調製する。相Aが均質になったら、NaOH 10%溶液(相B)を添加する。次いで、予混合された相Cを添加する。そして混合物を75℃に加熱する。相D成分を添加し、均質になるまで混合する。混合物を冷却する。45℃で、相E成分を混合しながら添加する。最終粘度を25%NaCl溶液で調整し、10%NaOH溶液でpHを5.5~6に調整する。
【0113】
香料入りパール様シャンプー(pearly shampoo)は、シャンプーの全重量に対して0.4~0.8重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第7表の無香料シャンプー配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製する。
【0114】
実施例14
本発明の組成物を含む構造化シャワージェルの調製
【表9】
【0115】
透明なシャワージェルは、シャワージェルの全重量に対して0.5~1.5重量%の実施例5の本発明の付香組成物を、第8表の無香料シャワージェル配合物に穏やかに振とうしながら添加することにより調製する。
【0116】
実施例15
本発明の組成物を含む無水制汗スプレー配合物の調製
【表10】
【0117】
無水制汗スプレー配合物を、高速撹拌機を用いて調製する。シリカおよびクオタニウム-18-ヘクトライトを、ミリスチン酸イソプロピルとシクロメチコンとの混合物に添加する。完全に膨潤したら、アルミニウムクロロハイドレートを、混合物が均質でダマのない状態になるまで、撹拌しながら一部ずつ(portion-wise)添加する。実施例5の本発明の付香組成物である香油を添加する。
【0118】
実施例16
本発明の組成物を含むデオドラントスプレーエマルション配合物の調製
【表11】
【0119】
デオドラントスプレーエマルション配合物を、すべての成分を第10表の順序に従って混合し、溶解することにより調製する。エアゾール缶を充填し、噴射剤を圧縮し、添加する。エアロゾル充填:40%の活性溶液60%のプロパン/ブタン(2.5バール)。
【0120】
実施例17
本発明の組成物を含むデオドラントスティック配合物の調製
【表12】
【0121】
デオドラントスティック配合物を、パートAのすべての成分を秤量し、70~75℃に加熱することによって得る。他のパートAの成分を混合し、加熱したら、セテアレス-25を添加する。セテアレス-25を溶解する際に、ステアリン酸を添加する。パートBを、トリクロサンを1,2-プロピレングリコールに溶解することによって調製する。蒸発した水を補う。次いで、ゆっくりと混合しながら、パートBをパートAに注ぐ。実施例5の本発明の付香組成物である香油(C相)を、穏やかに振とうしながら添加する。保管するには、冷却後にプラスチック袋をバケツに入れて密閉する。型を約70℃で充填した。
【0122】
実施例18
本発明の組成物を含むデオドラントロールオン配合物の調製
【表13】
【0123】
ヒドロキシエチルセルロースが完全に膨潤して透明なゲルが得られるまでタービンで高速撹拌しながら、ヒドロキシエチルセルロースを少しずつ水に投入することによってパートAを調製する。混合物全体が均質になるまで撹拌を続けながら、パートBをゆっくりとパートAに注ぐ。次いで、パートCおよびDを、穏やかに振とうしながら添加する。
【0124】
実施例19
本発明の組成物を含むデイクリームベースのO/Wエマルションの調製
【表14】
【0125】
デイクリームベースのO/Wエマルションを、相AおよびBを別々に70~75℃に加熱することによって調製する。相Aを相Bに添加し、次いで真空を適用する。混合物を撹拌し、15分間55℃に冷却する。室温に冷却した後、45℃の温度に達した際に、フェノキシエタノール(および)ピロクトンオラミン(パートC)を添加する。この混合物を5分間撹拌し、その後カルボマーナトリウム(パートD)および実施例5の本発明の付香組成物である香油(パートE)を添加する。混合物を3分間撹拌した後、撹拌を15分間停止した。混合物の温度が30℃に達したら、クリームが均質で光沢があり、ダマのない状態になるまで、さらに15分間撹拌を再開する。必要に応じて、pHを、Glydant、PhenonipまたはNipaguard PO5で6.70~7.20に調整するか、またはNikkoguardで6.30~7.00に調整する。