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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】極低温貯蔵用の格納・搬送システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20241106BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20241106BHJP
   B65D 39/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61M5/315
A61J3/00 301
B65D39/00 100
A61J1/05 315A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022548429
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021017065
(87)【国際公開番号】W WO2021162984
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】62/975,878
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ロートン・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ライネス・アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ルアン・ティー.・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】エバンス・クリストファー
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61J 3/00
B65D 39/00
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を格納し、又は搬送するためのシステムであって、
内面がある容器と、
少なくとも一部が前記容器の中に収められることにより、前記容器を閉じるように構成されている閉塞具と
を備え、
前記閉塞具が、
エラストマー体と、
前記エラストマー体の外面の中に設置されている熱膨張係数が負の物質と
を含み、
前記エラストマー体の外面が、少なくとも一部を前記容器の内面の少なくとも一部に接触させるように構成されており、
前記物質の内部には、前記エラストマー体に穴を開けるための針を収めるように構成されている貫通穴がある
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記物質が固体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記物質が、0℃よりも高い温度では液体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記物質が、0℃よりも高い温度ではゲルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記物質の熱膨張係数が0℃以下の温度では負である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記閉塞具が瓶の栓を形作っている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記容器が、首部がある瓶であり、
前記瓶の栓の外周部と前記首部の少なくとも一部との周りにシールを更に備えている、
請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の様々な実施形態は格納・搬送システムを対象とし、より具体的には、極低温において容器の中にシールを維持するように構成されているエラストマー製の部品を含むものを対象とする。
【背景技術】
【0002】
生物学的で薬学的な物質用に梱包部品が選択される際には、容器と閉塞具との間のシールの完全性が考慮される。これらの物質は、典型的には、エラストマー製の閉塞具で栓がされているガラス製又はプラスチック製の容器(例えばガラス製又はプラスチック製の瓶又は注射筒)の中に保存される。これらの物質には、例えば、血液、血清、タンパク質、ペプチド、幹細胞、DNA、及び他の傷みやすい生物学的な液体、並びにフリーズドライ薬品、すなわち凍結乾燥薬品が含まれる。
【0003】
容器には、微生物の侵入、湿気、及びガス交換等、汚染の源となりうる様々なものから物質を保護する機能が不可欠である。主要なシールはエラストマー製のシール部品と容器との接続部に形成される。個々の梱包部品には欠陥がないという仮定の下では、主にこの接続部に梱包不良が現れやすい。薬品用の容器を適切に閉塞するシステムが選択されて適用される際、満足のいくような閉塞の完全性が保証されるには、複数の要因が考慮されねばならない。
【0004】
誤った組み立て、圧着力の過不足、又は設計ミスなどの製造上の不具合は容器の閉塞システムの完全性を損なわせかねない。したがって、エラストマー製のシール部品が容器と寸法を正しく合わせてシールの完全性を十分に確立すること、その保証が必要不可欠である。真空度の低下、ガスの侵入及び交換、pHの適応、並びに汚染はシールの完全性を損なわせかねず、薬品の無菌状態を失わせて薬品の効能に影響を及ぼし、患者の安全が脅かされる可能性を高めるかも知れない。
【0005】
高価な生物製剤、細胞療法、遺伝子療法、及び他の高価な薬品が増加する傾向に伴い、信頼できる閉塞システムの必要性がますます重大になっている。そのような生物製剤及び薬品は概して温度に敏感であり、適切な条件で保存されなければ劣化する可能性が極めて高い。生物製剤及び薬品の中には、例えば材質の劣化又は蒸発による逸失を避ける目的で密封容器の中に0℃程度の低温で、好ましくは-80℃で保存されるべきものがあることも珍しくはない。それらが更に低い極低温(例えば-150℃以下、好ましくは-180℃以下、更に好ましくは-196℃以下)で保存されるべき場合も多い。
【0006】
上記のように、薬容器のほとんどではシール部品がエラストマー製である。すべてのエラストマーに共通する物理的な性質にガラス転移温度(Tg)がある。それよりも低い温度ではすべてのエラストマーが物理的に変化して弾性を変化させる結果、ガラスのようになる。室温では分子の熱運動が定常状態であり、分子の配置が常に変化し続けるので、エラストマーは柔軟であり、別の表面とシールを形成できる。しかし、ガラス転移温度では分子の移動度が著しく低下するので、エラストマーが脆くなり、ガラスのようになる。例えば、一般的なブチルゴムのガラス転移温度は約-65℃である。また、シール部品の形成に利用されるエラストマー材は、熱膨張係数が容器の材料(例えばガラス又はプラスチック)の熱膨張係数とは大きく異なるので、容器の開口部よりも収縮率が大きいかも知れない。以下、この明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって使用されるように、「熱膨張係数」は体積膨張率を意味する。その結果、既存のエラストマー製のシール部品には、極低温において閉塞の完全性を維持する機能がないかも知れず、容器の中に保存されている生物学的製品又は薬品の無菌状態を損なわせかねない。したがって、極低温用の格納・搬送システム、及びそのシステムのうち、容器の完全な閉塞を保証する主要なシールを与える部品には、改善の必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態の第1の態様によれば、製品を格納し、又は搬送するためのシステムは、内面がある容器と、外面がある閉塞具とを備えていてもよい。閉塞具は、エラストマー体と、エラストマー体の中にある熱膨張係数が負の物質とを含んでもよい。閉塞具の少なくとも一部が容器の中に挿入されて、閉塞具の外面の少なくとも一部を容器の内面の少なくとも一部に接触させていてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、熱膨張係数が負の物質が固体を含んでもよく、0℃よりも高い温度では液体又はゲルを含んでもよい。他の実施形態ではその物質の熱膨張係数が、0℃以下の温度で負であってもよい。
【0009】
その上、本発明の様々な実施形態によるシステムのうちいくつかでは閉塞具が、注射器のプランジャ、瓶の栓、及びカートリッジのピストンのうち少なくとも1つを形作っていてもよい。他のシステムでは容器が首部のある瓶であってもよく、そのシステムが更に、瓶の栓の形をした閉塞具の外周部と容器の首部の少なくとも一部との周りにシールを備えていてもよい。
【0010】
本発明の実施形態の別の態様によれば、製品を格納し、又は搬送するためのシステムが容器、閉塞具、挿入材、アクチュエータ、および弾性材を備えていてもよい。容器には内面がある。閉塞具は、外面があるエラストマー体を含む。エラストマー体の外面の少なくとも一部は容器の内面に接触している。挿入材は少なくとも一部がエラストマー体の中に埋め込まれている。アクチュエータは、挿入材に移動可能に取り付けられている遠位端を有する。弾性材はアクチュエータの遠位端と挿入材との間に挟まれている。アクチュエータの遠位端が挿入材へ向かって移動すると、弾性材が容器の内面へ向かって径方向に膨張してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、弾性材の少なくとも一部がエラストマー体の中にある。他の実施形態では弾性材は、熱膨張係数が負の物質を含む。この物質は、0℃よりも高い温度では液体又はゲルであってもよい。また、この物質の熱膨張係数が0℃以下の温度で負であってもよい。
【0012】
本発明の実施形態の更に別の態様によれば、製品を格納し、又は搬送するためのシステムが、内面及び首部がある瓶と、外面があるエラストマー体を含む栓と、熱膨張係数が負の物質を含む挿入材と、栓の外周部と瓶の首部の少なくとも一部とを囲むシールとを備えていてもよい。挿入材が栓の表面とシールの表面との間に位置してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記の物質が固体を含んでもよく、0℃よりも高い温度では液体またはゲルを含んでもよい。さらに、この物質の熱膨張係数が0℃以下の温度で負であってもよい。
【0014】
以下の説明を考慮すれば、本発明のこれらの態様だけでなく他の態様も明らかだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面が参照されながら、本願の様々な態様及び実施形態が説明される。図面が必ずしも正しい縮尺で描かれていないことは、理解されるべきである。図面は、本発明の概念に従って実施されたものを1以上示すが、あくまでも例示のみを目的とし、限定を目的とはしない。図面では同様な参照番号が同じ又は類似の要素を表す。
図1】本発明の第1実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図2A】本発明の第2実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図2B】本発明の第2実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図3A】本発明の第3実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図3B】本発明の第3実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図4A】本発明の第4実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図4B】本発明の第4実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図4C】本発明の第4実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図5A】本発明の第5実施形態によるシステムの正面図である。
図5B図5Aのシステムの中にある閉塞具の正面から見える拡大斜視図である。
図5C図5Aのシステムに組み込み可能な挿入材の別の実施形態である。
図5D図5Aのシステムに組み込み可能な挿入材の別の実施形態である。
図6A】本発明の第6実施形態によるシステムの正面図である。
図6B図6Aのシステムの中にある閉塞具の正面から見える拡大斜視図である。
図7A】本発明の第7実施形態によるシステムの正面図である。
図7B図7Aのシステムの中にある閉塞具の正面から見える拡大斜視図である。
図8A】本発明の第8実施形態による閉塞具の正面から見える模式的な斜視図である。
図8B図8Aの閉塞具を含むシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図9A】本発明の第9実施形態による閉塞具の正面から見える模式的な斜視図である。
図9B図9Aの閉塞具を含むシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図10A】本発明の第10実施形態による閉塞具の正面から見える模式的な斜視図である。
図10B図10Aの閉塞具の正面から見える断面図である。
図11】本発明の第11実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図12】本発明の第12実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図13】本発明の第13実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
図14】本発明の第14実施形態によるシステムの正面から見える断面の一部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に、本発明の様々な実施形態によるシステムは閉塞具を含む。閉塞具は、エラストマー体と、熱膨張係数がエラストマー体の熱膨張係数よりも小さい物質とを含む。好ましくはその物質の熱膨張係数が0℃以下、更に好ましくは-80℃以下の温度で負である。その熱膨張係数は、多くの場合、更に低い極低温(-150℃以下、好ましくは-180℃以下、更に好ましくは-196℃以下)で負である。いくつかの実施形態ではその物質の熱膨張係数が極低温(例えば-150℃を下回る温度)で負であってもよい。熱膨張係数が大きく異なる物質は、低温での保存時に容器の閉塞の完全性を損なわせかねない不具合を防ぎ、容器の内容物を保護することにより、システム内のシールの維持に役立つ。システムが室温まで温められると、閉塞具のうちエラストマー製の部分が膨張してシールを維持してもよい。熱膨張係数が小さく、又は負である物質が、閉塞具の本体の形成に利用されるエラストマー材と混ぜ合わされ、又は組み合わされていてもよい。その他に、その物質で満たされている部屋を含むエラストマー体を閉塞具が含んでもよい。その部屋は、好ましくは、エラストマー体によって囲まれている内部の空洞である。
【0017】
例えば図1を参照すると、本発明の第1実施形態によるシステムの縦断面の一部が図示されている。製品を低温貯蔵の間保持することを目的とするシステムは、密封されている瓶、カートリッジ、又は注射筒であってもよい。システムは内面がある容器10と外面がある閉塞具11とを含む。閉塞具11は少なくとも一部が容器10に挿入され、閉塞具11の外面の少なくとも一部を容器10の内面に接触させて容器10の内面とシールを形成する。閉塞具11は複数の材料を含んでもよい。好ましくは閉塞具11が少なくとも、エラストマー材から成る本体12と、熱膨張係数がエラストマー材の熱膨張係数よりも小さい副材料14とを備えている。
【0018】
副材料14は、好ましくは、エラストマー製の本体12の収縮に逆らうような態様で閉塞具11の中に配置されている。例えばシステムには中心軸A-Aがあってもよい。閉塞具11及び容器10は組み立てられると、中心軸A-Aに軸を揃えている。これらが低温で、特に極低温で保存される場合、本体12のエラストマー材には中心軸A-Aへ向かって径方向に収縮する可能性がある。しかし、好ましくは、エラストマー材よりも熱膨張係数が小さい副材料14が、エラストマー材ほどには収縮しない。更に好ましくは、副材料14の熱膨張係数が貯蔵温度では負である。そうであれば、副材料14が中心軸A-Aから径方向に離れるように膨張し得る。閉塞具11の中に組み込まれる副材料14の量は、副材料14とエラストマー製の本体12との間での熱膨張係数の差に依存する。例えば、副材料14の熱膨張係数がエラストマー材の熱膨張係数よりもはるかに小さければ、想定されるエラストマー材の収縮に対して所望の抵抗作用を実現するのに必要な副材料14の量が少なめでよい。しかし、2つの材料の間での熱膨張係数の差が小さければ、エラストマー材の収縮に対して同程度の抵抗作用を実現するのに、より多量の副材料14が必要であろう。
【0019】
本発明の様々な実施形態によるシステムの閉塞具が、例えば、注射器のプランジャ、瓶の栓、又はカートリッジのピストンとして形作られてもよい。したがって、容器が、注射筒、瓶、又はカートリッジとして設けられてもよい。図1に示されているように、閉塞具11がカートリッジのピストン又は注射器のプランジャとして形作られてもよい。閉塞具11には複数のリブ16a、16b、16cがあり、それぞれが中心軸A-Aに対してほぼ垂直な平面の中で径方向に広がっている。複数のリブ16a、16b、16cの少なくとも1つは外周が容器10の内面とシールを形成する。熱膨張係数が小さめである副材料14は、好ましくはエラストマー製の本体12の中に、シールを形成する1つ以上のリブ16a、16b、16cとほぼ同じ平面に沿って配置されている。図1の実施形態では副材料14が、エラストマー製の本体12の中にある単一の部屋を塞いでいる。他の実施形態では副材料14が複数の部屋を塞いでいてもよい。例えば副材料がエラストマー材とは混ざらない場合、エラストマー材を硬化させる前にエラストマー材に副材料を乳化させ、又は混ぜてもよい。これにより、エラストマー材が硬化すると、副材料を不連続相として含有する連続相が形成される。その他に、閉塞具の本体の外側に、熱膨張係数が小さめである副材料が設けられることによってシステムが構成されてもよい。これについては後でより詳しく説明する。
【0020】
本発明の様々な実施形態によるシステムは薬品の格納及び/又は搬送に使用されてもよい。注射器のプランジャ又はカートリッジのピストンを形作っている閉塞具については、低温で、特に極低温で閉塞具全体の収縮が阻止されるように材料が選択されているが、より高い室温ではそれらの材料が直径方向において過度に干渉すべきではない。例えば、充填ラインでは室温で薬品が容器に充填されるが、室温において注射器のプランジャ又はカートリッジのピストンを挿入するのに必要な力が許容限界を超えるべきではない。また、薬品が医療専門家の手で投与されるときに、注射器又はカートリッジの操作に必要な力が許容限界を超えるべきではない。言い換えれば、室温で閉塞具を動かすのに過度の力が必要とされるべきではない。
【0021】
必要に応じ、熱膨張係数が小さめである副材料とシステム内に含まれる薬品との間に相互作用が生じる可能性を制限し、又はなくす目的で、閉塞具の外面にバリア層、例えば図1のバリア層17が設けられてもよい。バリア層は、好ましくは、閉塞具の外面のうち少なくとも、システムの容器内の薬品に最も接触しやすい部分を覆い、薬品内へ副材料を浸出させない。当業者には理解されるであろうように、バリア層は図1に示されている実施形態には限定されない。必要であれば、本発明の実施形態のいずれの表面にもバリア層が貼られてもよい。
【0022】
好ましい実施形態では、バリア層17が不活性物質製のフィルムであり、好ましくはフルオロポリマー製のフィルムである。フルオロポリマーは本発明の属する技術分野ではすでに周知であるので、それらの詳細な説明は本発明の完全な理解には不要である。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレンの単独重合体と共重合体(TFE)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(PECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びこれらの誘導体が挙げられる。しかし、これらには限定されない。好ましくは、バリア層17がPTFE又はETFEで形成されている。
【0023】
本発明の様々な実施形態による閉塞具の本体を形成するためのエラストマー材の例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、フルオロエラストマー(例えば、FKM、パーフルオロエラストマー(FFKM)、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴム(FEPM))、合成又は天然のゴム(例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えばブロモブチルゴム)、エチレンプロピレン三元重合体、シリコーンゴム)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。しかし、これらには限定されない。好ましくは、エラストマー材はブチルエラストマー又はハロブチルエラストマーである。エラストマー材が更に、その特性の改良又は増強を目的として1種類以上の添加剤、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性剤、加工助剤、充填剤、及び補強剤を含んでもよい。
【0024】
前述のように、本発明の様々な実施形態によるシステムに含まれる容器は、例えば、注射筒、瓶、又はカートリッジを形作っていてもよい。当業者には周知である様々な普通の材料が容器の作製に使用されてもよい。その材料としては、ポリプロピレン、COP、COC、ガラス、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。必要に応じてシステムの他の器具、例えば、注射器を操作するためのプランジャロッドも、当業者には周知である普通の材料から作製されてもよい。その材料が金属又はポリマーを含んでもよい。その金属又はポリマーとしては、ステンレス鋼、アルミニウム、HDPE、LDPE、COP、COC、POM、ナイロン、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態では副材料が、凝固点が所望の値である液体又はゲルであってもよい。凝固点は、想定されるシステムの貯蔵温度に基づいて選択される。副材料は凍結後、貯蔵温度での熱膨張係数を示すはずである。その熱膨張係数はエラストマー材の熱膨張係数よりも小さく、更に好ましくは負である。上記の液体又はゲルは1種類以上の溶媒で構成されていてもよく、必要であれば1種類以上の溶質を含んでもよい。これらの溶質が溶かされると、上記の液体又はゲルの凝固点及び熱膨張係数が所望の値を示す。1種類以上の溶媒としては水及び水性混合物が挙げられるが、これらには限定されない。1種類以上の溶質としては、塩、糖、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせの他、溶液の凝固特性を変え得る他の賦形剤が挙げられる。しかし、これらには限定されない。他の実施形態では副材料が1種類以上の固体材料を含んでもよく、好ましくは熱膨張係数が負の物質を含む。1種類以上の固体材料としては、ジルコニウム又はハフニウムとモリブデン又はタングステンとの合金、チタン系合金(例えば、ALLVAR社製のチタン合金)、シリケート(例えば、β-ユークリプタイト、β-リシア輝石、コーディエライト)、グラフェン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。しかし、これらには限定されない。
【0026】
図1を再び参照すると、熱膨張係数の小さい副材料が液体又はゲルの形態で提供される場合、例えばエラストマー製の本体12が内部に部屋を含むように成形され、その部屋の中に液体が注入されることにより、その部屋が副材料14で満たされてもよい。液体を部屋へ充填可能にするように作られていた注入口はいずれも、充填後には閉鎖可能である。その他に、副材料14が挿入材であってもよい。挿入材は、空気袋又は風船の中に固体材料又は液体材料のいずれかが注入されたもので構成されており、エラストマー材に挿入され、又はエラストマー材と共に型で成形されることにより、閉塞具11を形成する。いくつかの実施形態では、例えば図5A及び図5Bに示されている実施形態のように、閉塞具が部屋又は挿入材を複数含んでもよい。図5A及び図5Bに示されている実施形態では閉塞具54がプランジャロッド52の遠位端53に取り付けられており、注射器のシリンダ50に挿入される。閉塞具54がエラストマー材で作製され、複数の円盤状の挿入材又は部屋56a、56b、56cを含んでもよい。これらは、注射器が低温(例えば極低温)で保存されるときに負の熱膨張係数を示す物質を含んでもよい。好ましい実施形態では閉塞具が部屋又は挿入材を1つだけ含んでもよい。例えば、図5Cに示されている挿入材58は、複数の円盤状の要素がスペーサで分離されている形をしており、図5Dに示されている挿入材59は複数巻きのバネの形をしている。挿入材が1つだけ使用されることにより、エラストマー製の閉塞具の作製に必要な成形工程数が、複数の膨張可能な挿入材が間隔を開けて含まれている閉塞具のそれよりも減少するだろう。
【0027】
同様に、図6A図7Bに示されている実施形態が含む閉塞具でも、膨張可能な挿入材が1つだけである。図6A及び図6Bでは閉塞具がエラストマー製の外鞘64を含む。外鞘64は、熱膨張係数が負の物質を含む単一の挿入材66を内側に囲むように形成されている。挿入材66はプランジャロッド60の遠位端61に、ねじ、締まり嵌め、又はスナップフィットなど、本発明の属する技術分野では周知である様々な手段を使って取り付け可能である。図7A及び図7Bの実施形態も同様に、熱膨張係数が負の物質を含む挿入材76を含み、挿入材76がプランジャロッド72の遠位端に固定されていてもよい。挿入材76には更にねじが設けられており、それに対応する雌ねじがあるエラストマー製の外鞘74に挿入材76が締結可能である。挿入材76は、好ましくは低温貯蔵の前に外鞘74にねじ込まれる。これにより、挿入材76の径方向への膨張を利用して外鞘74と挿入材76との間の締まり嵌めを促す。
【0028】
いくつかの実施形態では、まず、閉塞具の外面の形をしている型に挿入材が挿入されてもよい。次に、その型にエラストマー材が射出され、又はエラストマー材の層が複数圧縮されることにより、その型にエラストマー材が充填され、挿入材がエラストマー材で完全に閉じ込められてもよい。好ましくは、挿入材が耐熱材から成る。しかし、風船又は空気袋の形をしている挿入材が成形工程の間に熱的な損傷を受けることを防ぐ目的で、閉塞具11の一部を硬化させた後で必要に応じ、オーブン硬化、マイクロ波硬化、電子ビーム硬化などの二次加工により、閉塞具11にポストキュアを行ってもよい。例えば図5A及び図5Bに示されている実施形態のように、挿入材を様々な深さに含む閉塞具を提供する目的で、閉塞具の成形を部分ごとに複数の段階に分けて行ってもよい。例えば、最初の段階では、エラストマー部品の第1部分を成形してその一部を硬化させ、挿入材用の切り欠きを持たせてもよい。次に、エラストマー部品の第1部分の上に第2部分を成形した後、それら2つの部分の中間に位置する挿入材と共に硬化させてもよい。この処理は、当業者には周知であるように、2段階以上の圧縮成形工程で行われてもよい。その他に、単一の部品を硬化してその中に隙間を残し、その隙間に液体又は未重合の物質を充填してもよい。エラストマー部品の外側に熱膨張係数が負の物質が位置するシステムについては、その物質が、エラストマー部品の上に取り付けられる固体の覆いの形で提供されてもよい。
【0029】
エラストマー製品の中に部品を埋め込む方法として当該技術分野では、国際公開第2018/226780号(その内容の全体が、参照により、この明細書に組み込まれる。)に記載されている方法などの様々なものが知られている。
【0030】
他の実施形態では、製品の格納用及び/又は搬送用のシステムが、閉塞具の少なくとも一部をシール面へ向けて、すなわち外周方向へ選択的に膨張させることのできる構造を含むように構成されていてもよい。これにより、容器の内面にシール部品を押し付ける径方向の力を機械的に調整する手段が与えられる。この構造は、例えば注射筒の形をしているシステム用のプランジャロッドのような固い部品で設けられていてもよい。例えば、図2A及び図2Bを参照すると、本発明の第2実施形態の側面から見える断面の一部が図示されている。このシステムは、内面がある容器10と、外面がある閉塞具20とを含む。閉塞具20は注射器のピストンの形をしており、好ましくはエラストマー材から成る。閉塞具20の外面の少なくとも一部が容器10の内面に接触してシールを形成する。閉塞具20の第1端部には薬品接触面27があり、反対側の第2端部には穴がある。閉塞具20の中には挿入材24が埋め込まれている。挿入材24の中央にはピン25があり、閉塞具20の穴の中へ軸方向に伸びている。ピン25の周りには、膨張可能なOリングの形をしている弾性材が配置されている。このOリングは、閉塞具20と同じ又は同様なエラストマー材で作製されていてもよく、他の弾性材で作製されていてもよい。プランジャロッド22の形をしているアクチュエータが先端に雌型の接続具を含んでもよい。この雌型の接続具は、ピン25を収容するように、好ましくはねじによってそれに接続されるように構成されている。同様に、閉塞具20の穴が、プランジャロッド22の外周面に沿ったねじに対応するねじを含んでもよい。プランジャロッド22の遠位端部が閉塞具20及び挿入材24に結合すると、プランジャロッド22の遠位端と、挿入材24のピン25を囲む環状面との間でOリング26が圧縮される。これにより、Oリング26の両側に固い面が形成される。Oリング26は圧縮されると、図2Bに矢印で表されているように、容器10の内面へ向かって径方向に膨張する。これにより、Oリング26を含む平坦な空間(すなわち、閉塞具20の長軸に対して垂直に広がっている空間)では、閉塞具20と容器10の内面との間で径方向のシール力が増大する。望みであれば、Oリング26が必要に応じ、熱膨張係数が負の物質を含み、低温において径方向の膨張を更に促してシール性を保ってもよい。必要であれば、不活性物質製のフィルム27が前述のように、容器10の内容物に接触するかも知れない閉塞具の表面の少なくとも一部に、例えば、閉塞具20の最も遠位側の表面から、Oリング26を含む平坦な空間までにわたって貼られていてもよい。システムが冷蔵庫から取り出され、室温で内容物を患者に投与するように準備される際、プランジャロッド22とピン25との締結が外され、Oリング26をその弾性によって弛緩させ、システムを、図2Aに示されている元の状態に戻してもよい。これにより、過剰な径方向の力がどの程度であっても除去されるので、プランジャロッド22を押下して閉塞具20を容器10の内面に沿って摺動させることが、確実に容易である。
【0031】
図3A及び図3Bには、容器の内面にシール部品を押し付ける径方向の力の選択を機械的に調整するように構成されている別の実施形態が示されている。図3A及び図3Bの実施形態は図2A及び図2Bの実施形態とは、Oリング36が閉塞具30の外側に設けられている点で異なる。閉塞具30の中に埋め込まれている挿入材34が中央に、軸方向に伸びているピン35を含んでもよい。そのピン35を囲む環状面の上にOリング36が位置する。しかし、図2A及び図2Bの実施形態とは異なり、ピン35と空気袋36とはいずれも、閉塞具30の中に位置する部分を持たない。プランジャロッド32の遠位端は、上記のものと同様、好ましくはねじでピン35に結合可能な雌型の接続具を含んでもよい。プランジャロッド32が挿入材34に接続されると、プランジャロッド32の遠位端とピン35の周りの環状面との間でOリング36が圧縮され、Oリング36の外周面を容器10の内面に接触させてシールを形成する。Oリング36の圧縮量が増えると、それに比例して、Oリング36の外周面から容器10の内面に加わる径方向の力が増大する。Oリング36は、前述の実施形態と同様に、必要に応じて熱膨張係数が負の物質を含み、低温において径方向の膨張を更に促してシール性を保ってもよい。また、閉塞具30、挿入材34、及びOリング36の表面が容器10の内容物に接触する可能性があるので、これらの部品がすべて不活性物質から成ること、又は少なくとも不活性物質製のフィルムで覆われていることも好ましい。
【0032】
更に別の実施形態では、製品の格納用及び/又は搬送用のシステムを形成し、又は組み立てる方法が提供される。例えば図4A図4Cを参照すると、閉塞具40が挿入材42を含むように、型で成形されてもよい。挿入材42は閉塞具40の中に埋め込まれる。閉塞具40の表面の少なくとも一部には不活性物質製のフィルムが貼られる。図2A及び図2Bの実施形態と同様に、挿入材42の中央には、軸方向に伸びているピン45があってもよい。そのピン45は、閉塞具40のうち薬品には接触しない側に位置する穴44の中へ伸びている。穴44の底部46は穴44の上部よりも直径が狭く、ピン45の周りに井戸のような凹みを作っていてもよい。閉塞具40は後で容器10に挿入可能である。次の段階では、図4Bに示されているように、凹みに、前述の圧縮可能なOリングなどの挿入材、又は熱膨張係数が負の材料48のいずれかが充填されてもよい。その材料48は、例えば、熱膨張係数が負の物質から成る水性液体、ゲル、又は、(金属製の円盤若しくはワッシャなどの)固形物である。凹みが材料48で満たされた後、遠位端に雌型の接続具があるプランジャロッド49がピン45に、好ましくはねじで接続され、材料48を凹みの中に密封してもよい。プランジャロッド49の遠位端の外周面にもねじが設けられ、プランジャロッド49が穴44の上部に取り付けられてもよい。
【0033】
当業者には理解されるであろうように、図2A図4Cに示されている実施形態は、プランジャロッドの遠位端の中央にピンが設けられ、対応する雌型の接続具が挿入材の中に設けられるように再構成されてもよい。
【0034】
前述のとおり、本発明の様々な実施形態による格納及び搬送システムが瓶及び瓶の栓を備えていてもよい。例えば図8A及び図8Bを参照すると、瓶の栓81の形をしている閉塞具はエラストマー製の本体82と熱膨張係数が負の物質84とを含んでもよい。物質84は、例えば、固体、液体、又はゲルであってもよい。物質84は成形後の栓81の内部の部屋に配置され(例えば液状であれば、その部屋の中に注入され)、その部屋を満たしている。又は、物質84を含む挿入材が、例えばオーバーモールドによってエラストマー製の本体82を形成してもよい。物質84は、好ましくは栓81のうち、フランジ83の下に位置して瓶80の首部85の中に挿入される部分の中に配置される。貯蔵時の低温、例えば極低温では物質84が膨張してエラストマー製の本体82の径方向における収縮に逆らい、栓81の外面と、それが接触している瓶80の首部85の内面との間のシールを確実に保つ。この場合も、必要に応じて不活性物質製のフィルム87が栓の外面の少なくとも一部に、最も好ましくは、瓶80の内容物と最も接触しやすい表面部分に貼られてもよい。
【0035】
図8A及び図8Bに示されているように、物質84を含む栓内の部屋又は挿入材は、例えば球形であってもよい。しかし、その形状には限定されない。部屋又は挿入材(空気袋)は好ましくは、例えば図9A図10Bの挿入材94又は102の形のような管形、環形、コイル形、又は螺旋形である。これらの実施形態はすべて、閉塞具(81、91、100)の主要部の外面と、それらが接触している容器(80、90)の内面との間に、径方向に加圧し合うシール面を確実に維持するであろう。内部に貫通穴がある形に挿入材が作られることにより、容器の内容物を引き出す目的で注射針が栓に穴を開ける際、挿入材の中を通ることなく閉塞具の中に挿入可能である。これにより、熱膨張係数が負の物質に容器内の薬品が曝される可能性が抑えられる。図9A及び図9Bに示されているように、熱膨張係数が負の物質は、単一の環形又は管形の挿入材ではなく、複数の環形の挿入材94a、94bの中に組み込まれていてもよい。
【0036】
本発明の様々な実施形態による格納及び搬送システムが更に、例えば図11図14の実施形態のように、閉塞具を容器の開口部の中で捕捉し、又はその中に保持するように構成されている封を備えていてもよい。これらの実施形態はすべて、閉塞具のフランジの底面と容器の上面との間に、軸方向に加圧し合うシール面を確実に維持するであろう。例えば図11を参照すると、栓112の形をしている閉塞具が瓶の開口部及び首部110に挿入されてもよい。栓112が更に、瓶の上面に載せられるフランジ部117を含んでもよい。熱膨張係数が負の物質を含む環形の挿入材114が、フランジ部117の上方で栓112の上面に配置されてもよい。最後に封、好ましくはアルミニウム製などの金属製の封116が環形の挿入材114の上と瓶の環形のカラー115の下とに圧着されてもよい。圧着により封116には、瓶の開口部を囲む環形のカラー115に接触する環形のリップ118が形成される。環形のリップ118は環形のカラー115の下側に接触するので、栓112の上面に対する軸方向の力を維持するのに役立つ。格納及び搬送システムが低温(例えば極低温)で保存される際、挿入材114が軸方向に膨張し、栓112のフランジ部117(低温で収縮する。)の上面に加えられる軸方向の力を増強し、又は維持する。更に、挿入材114は、熱膨張係数が負の物質が径方向ではなく軸方向に膨張するのを促すように構成されていてもよい。例えば環形の挿入材が、断面が長方形の空気袋であってもよい。この場合、環形の内周壁と外周壁、すなわち垂直方向の壁が固い物質から成る一方、環形の上壁と底壁、すなわち水平方向の壁がより柔軟な物質から成り、空気袋の内部の物質を主に軸方向に膨張させてもよい。別の例では、固い物質から成る一対の環が封の底面に、同心に配置された状態で取り付けられてもよい。封が環形の挿入材に取り付けられた状態では、挿入材が同心の環の間に挿入されて入れ子になってもよい。
【0037】
別の実施形態では、例えば図12の実施形態のように、熱膨張係数が負の物質を含む環形の挿入材124が、栓122のフランジ部127の中に配置されていてもよい。好ましくは、環形の挿入材124の内径が瓶の首部110の内径よりも広い。先に説明されたように、環形の挿入材124が、圧着している封116に対して軸方向に膨張することにより、封116の環形のリップ128と、瓶の開口部を囲むカラー125の下側の環状面との密着が維持されると共に、栓122のフランジ部127を瓶の上面に押し付ける力が維持される。必要であれば、環形の挿入材124が軸方向に膨張するのを促す目的で、固い物質から成る環が栓122のフランジ部127の外周面の周りに設置されてもよい。
【0038】
更に別の実施形態では、例えば図13の実施形態のように、栓132の上部にあるフランジ部が環形の凹み138を備えていてもよい。栓132が瓶の首部110の開口部に挿入された後、凹み138に熱膨張係数が負の物質(固体、液体、又はゲルなど)が挿入され、又は注入されてもよい。栓132の上面に固いカバー136が取り付けられた後に封116が圧着され、瓶の首部110の中に栓132を閉じ込めると共に、凹み138の中に熱膨張係数が負の物質を閉じ込める。
【0039】
図11図13に記載されているシステムの各々では、必要に応じて栓が更に、その本体の中に熱膨張係数が負の物質を、図8A図10Bの実施形態と同様な形で含んでもよい。これにより栓は、フランジ部の下にある栓の本体の外面と瓶の首部の内面との間のシールを維持する。
【0040】
さて、図14を参照すると、別の格納及び搬送システムが栓142を含んでもよい。栓142には穴148があり、栓142の本体の中心軸に沿って伸びている。カバー146は固い物質から成り、穴148の中に伸びている軸方向の突起を有する。カバー146を使って、その軸方向の突起の外面と穴148の内面との隙間が密封されてもよい。カバー146の軸方向の突起は、好ましくは、軸方向に伸びている貫通穴149を含む。貫通穴149は、注射器の針を栓142の中に通し、栓142で密封されている瓶110の内容物に到達させる。上記の隙間に、熱膨張係数が負の材料147が充填されてもよい。システムが更に封116を備えていてもよい。封116は、前述のように、カバー146には上から圧着され、瓶110の開口部を囲むカラー145の下側の環状面には下から圧着される。瓶110が低温で保存されるとき、固いカバー146によって穴148の中の材料147が外周方向へ膨張するように促されてもよい。これは、瓶110の首部の内面と、それに接触している栓142の外面との間のシールを維持するのに役立つ。当業者には理解されるであろうように、例えば図13の凹み138のような環形の凹みが図14の栓142のフランジ部に組み込まれ、その凹みに熱膨張係数が負である上記と同じ材料147又は同様な材料が充填されてもよい。本発明の他の好ましい実施形態では、カバー146が、熱膨張係数が負である固体(例えば、テキサス州、College StationのALLVAR社によって製造された合金)で形成され、オーバーモールドによってエラストマー材に取り付けられ、栓を形作ってもよい。そのような実施形態では、上記の隙間が排除されてもよい。また、図8Bの実施形態と同様に、必要に応じて不活性物質製のフィルムが、開示されている実施形態に含まれる栓のいずれの外面に対しても、その少なくとも一部、最も好ましくは、瓶の内容物と接触する可能性が最も高い表面部分に貼られていてもよい。
【0041】
本発明の様々な実施形態に従って作製された格納及び搬送システムは、各部品が前述のように製造されてもよく、大量の部品がまとめて、部品の無菌状態及び清浄度の維持に適した二次包装に梱包されてもよい。部品はその後、蒸気、エタノール、ガンマ線照射、又は電子ビーム照射によって滅菌されてもよい。滅菌後のバルク梱包品はその後、例えば、薬品の充填が行われる無菌環境の中に導入されてもよい。
【0042】
上記の実施形態に、発明の広範な概念から逸脱することなく変更を加えられることは、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明が、開示されている特定の実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の趣旨及び範囲の中での修正にも及ぶことを意図していることは、理解される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14