(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/00 20060101AFI20241106BHJP
B23Q 15/22 20060101ALI20241106BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B23Q15/00 J
B23Q15/22
G05B19/18 C
(21)【出願番号】P 2022555445
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036470
(87)【国際公開番号】W WO2022075223
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020168677
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古山 貴之
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/068675(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/043171(WO,A1)
【文献】特許第4823471(JP,B2)
【文献】特開2002-254273(JP,A)
【文献】特開平5-42452(JP,A)
【文献】特開平8-249028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00 ~ 15/28
G05B 19/00 ~ 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの回転軸と2つの直線軸とを備え、加工プログラムに基づいて
ワークを載置したテーブルを前記回転軸に沿って回転させながらその角度に応じて工具を前記2つの直線軸上で移動させることにより、前記工具と
前記ワークとを相対的に移動させて加工する機械を制御する制御装置であって、
所定の媒介変数表示の関数で平面加工線を表した加工線情報と、その加工線の各位置の接線方向を示す接線情報とを記憶する加工線データ記憶部と、
前記加工線情報と前記接線情報とに基づいて、指令周期ごとに、前記媒介変数を所定量だけ変化させた場合の前記加工線上の位置を加工位置とする前記回転軸及び2つの前記直線軸の位置指令を作成する切削点一定指令作成部と、
を備え、
前記切削点一定指令作成部が作成する位置指令は、前記加工位置の接線が、前記直線軸のいずれかに対して予め定めた所定の角度となる前記回転軸の位置を指令すると共に、その回転軸の位置に位置決めした時の前記加工位置に工具が位置するように2つの前記直線軸の位置を指令して、加工中における工具とワークの接触する角度を前記所定の角度に保つものである、
制御装置。
【請求項2】
前記ワークと前記工具との指令周期ごとの相対的な移動量を一定に保てるように、前記媒介変数の所定量の変化を制御する周速一定制御部を更に備える、
請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関し、特に任意の加工形状を加工する際に切削点一定制御を可能とする制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの回転軸Cと1つの直線軸Xを備えた機械で、C軸を回転させながらその角度に応じてX軸を制御することで様々な曲線を加工することができる。例えば、カム等の非真円形状、又はクランクピン等の偏心形状の加工を行う場合、主軸回転角に対するタレット刃物台のX軸位置を指定し、主軸回転とタレット刃物台のX軸移動との同期制御で非真円面又は偏心面の加工が実現される。
【0003】
しかしながら、上記した構成では、中心がC軸の回転中心と一致する真円を除いて、工具のワークに対する接触点が一定にならないという問題がある。例えば
図6A-
図6Cに示されるように、C軸の回転中心を軸として回転するテーブル80にワーク81が偏心して載置されている場合、
図6Aの回転位置で加工をする際には、ワーク81には工具82の刃がワーク81に対して略垂直に接触するが、
図6Bの回転位置で加工をする際には、ワーク81には工具82の刃の上側が接触し、
図6Cの回転位置で加工をする際には、ワーク81には工具82の刃の下側が接触する。そのため、加工箇所によって加工面の仕上がりにむらが出来たり、工具82が摩耗していると加工箇所によって加工精度にばらつきができたりする、といった問題が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1では、工具の向きを制御する回転軸CtとX軸と直交する直線軸Yを用いて工具のワークに対する向き一定を実現している。また、特許文献2では、X軸と直交する直線軸Yを用いて、切削点一定制御という制御方法を説明している。切削点一定制御は、直交する2つの直線軸上の機械位置を示す座標系において工具中心からみた切削点の方向を常に一定方向に保つようにする制御方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-42452号公報
【文献】特開平8-249028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献では、工具側に回転軸を設ける構造は開発やメンテナンスのコストが増加するという問題が生じ、また、工具の回転軸をどのように制御するのかという点において具体的な手法が示されていない。また、一般的な切削点一定制御については直線や円弧、インボリュートの加工に対して具体的な制御方法が示されているものの、それら以外の加工形状、例えば楕円形上の加工や、C軸の回転中心から偏心している加工形状を加工する方法が示されているわけではない。
そのため、任意の加工線を加工する際に簡単な構造で切削点一定制御を可能とする方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による制御装置は、
図7~9に例示するように、加工プログラムにより指令された任意の加工線p(λ)について、媒介変数λによる表示情報と接線方向情報を記憶部から読み込む。次に、加工線p(λ)の始点から終点まで媒介変数λを変化させた際の加工線上の点P
λを求め、求めた点P
λにおける接線情報からその接線方向が一定になるような回転軸Cの角度を計算する。そして、このようにして求めた回転軸Cの角度と指令点P
λとから、2つの直線軸の位置を計算し、計算した値をサーボモータへ通知することで、任意の加工線に対する切削点一定制御を実現する。
【0008】
そして、本発明の一態様は、少なくとも1つの回転軸と2つの直線軸を備え、加工プログラムに基づいてワークを載置したテーブルを回転軸に沿って回転させながらその角度に応じて工具を2つの直線軸上で移動させることにより、工具とワークとを相対的に移動させて加工する機械を制御する制御装置であって、所定の媒介変数表示の関数で平面加工線を表した加工線情報と、その加工線の各位置の接線方向を示す接線情報とを記憶する加工線データ記憶部と、前記加工線情報と前記接線情報に基づいて、指令周期ごとに、前記媒介変数を所定量だけ変化させた場合の前記加工線上の位置を加工位置とする前記回転軸及び2つの前記直線軸の位置指令を作成する切削点一定指令作成部と、を備え、前記切削点一定指令作成部が作成する位置指令は、前記加工位置の接線が、前記直線軸のいずれかに対して予め定めた所定の角度となる前記回転軸の位置を指令すると共に、その回転軸の位置に位置決めした時の前記加工位置に工具が位置するように2つの前記直線軸の位置を指令して、加工中における工具とワークの接触する角度を前記所定の角度に保つものである、制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様により、1つの回転軸と2つの直線軸で、任意の加工線を加工する際に工具とワークの当たる角度を一定に保つ制御が簡単に指令可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態による制御装置の概略的なハードウェア構成図である。
【
図2】第1実施形態による制御装置の機能を示す概略的なブロック図である。
【
図3】図形の極座標原点がC軸の回転中心と一致する場合の加工方法について説明する図である。
【
図4】偏心している場合の加工方法について説明する図である。
【
図5】第2実施形態による制御装置の機能を示す概略的なブロック図である。
【
図6A】従来の加工方法の問題点について説明する図である。
【
図6B】従来の加工方法の問題点について説明する図である。
【
図6C】従来の加工方法の問題点について説明する図である。
【
図7】本発明による切削点一定制御について説明する図である。
【
図8】本発明による切削点一定制御について説明する他の図である。
【
図9】本発明による切削点一定制御について説明する他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の第1実施形態による工具診断装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本発明の制御装置1は、例えば加工プログラムに基づいて加工を行う機械3を制御する制御装置として実装することができる。
【0012】
本実施形態による制御装置1が備えるCPU11は、制御装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って制御装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データ等が一時的に格納される。
【0013】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれた加工プログラムやデータ、入力装置71を介して入力された加工プログラムやデータ、ネットワーク5を介して他の装置から取得された加工プログラムやデータ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶された加工プログラムやデータは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0014】
インタフェース15は、制御装置1のCPU11とUSB装置等の外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば機械3の制御に用いられる加工プログラムや設定データ等が読み込まれる。また、制御装置1内で編集した加工プログラムや設定データ等は、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)16は、ラダープログラムを実行して機械3及び該機械3の周辺装置(例えば、工具交換装置や、ロボット等のアクチュエータ、機械3に取付けられている温度センサや湿度センサ等のセンサ)にI/Oユニット19を介して信号を出力し制御する。また、機械3の本体に配備された操作盤の各種スイッチや周辺装置等の信号を受け取り、その信号に必要な信号処理を施した後、CPU11に渡す。
【0015】
インタフェース20は、制御装置1のCPUと有線乃至無線のネットワーク5とを接続するためのインタフェースである。このネットワーク5には、他の機械やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が接続され、制御装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0016】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ等がインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、作業者による操作に基づく指令,データ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0017】
機械3が備える軸を制御するための軸制御回路30はCPU11からの軸の移動指令量を受け取って、軸の指令をサーボアンプ40に出力する。サーボアンプ40はこの指令を受けて、機械3が備える駆動部を軸に沿って移動させるサーボモータ50を駆動する。軸のサーボモータ50は位置・速度検出器を内蔵し、この位置・速度検出器からの位置・速度フィードバック信号を軸制御回路30にフィードバックし、位置・速度のフィードバック制御を行う。なお、
図1のハードウェア構成図では軸制御回路30、サーボアンプ40、サーボモータ50は1つずつしか示されていないが、実際には制御対象となる機械3に備えられた軸の数だけ用意される。例えば、本実施形態による制御装置1が制御する機械3は、直線軸2軸(X軸,Y軸)と、回転軸1軸を備えており、これら軸を制御することでワークと工具とを相対的に移動させる。そのため、軸制御回路30、サーボアンプ40、及びサーボモータ50の組みが3つ用意される。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態による制御装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による制御装置1が備える各機能は、
図1に示した制御装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、制御装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0019】
本実施形態の制御装置1は、解析部100及び切削点一定指令作成部120を備える。また、制御装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、機械3を制御するための加工プログラム200が記憶されると共に、平面における一媒介変数表示の加工線情報とその加工線の接線情報とを記憶するための領域である加工線データ記憶部210が設けられている。
【0020】
解析部100は、
図1に示した制御装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。解析部100は、加工プログラム200を解析してサーボモータ50を備えた機械3及び該機械3の周辺装置を制御するための指令データを作成する。加工プログラム200には、機械3の制御に一般的に用いられる指令に加えて、切削点一定制御の開始を指令する「切削点一定制御開始指令」と、切削点一定制御の終了を指令する「切削点一定制御終了指令」とを含めることができる。
さらに、解析部100は、加工プログラム200により一般的な指令がされると、従来通りの指令の解析を行い、解析した指令データに基づいて機械3の制御を行う。一方、解析部100は、加工プログラム200により「切削点一定制御開始指令」が指令されると、加工線データ記憶部210から平面における一媒介変数表示の加工線情報と、その加工線の接線情報とを読み出し、読み出した加工線情報及び接線情報に基づいた切削点一定制御を開始するように、切削点一定指令作成部120に指令する。
【0021】
加工線データ記憶部210には、予めワークの加工形状を表す加工線を示す加工線情報と、その加工線の接線情報とが記憶されている。ワークが載置されたテーブル面をC軸の軸線方向から見た平面を考えた時、加工形状を示す加工線Cの加工線情報は、加工線情報が描く図形の中心位置を原点とした極座標で、回転角度θを媒介変数とする関数r=p(θ)(θ0≦θ≦θ1)として定義できる。加工線情報は、CAD等で作成された加工に係る情報に基づいて予め作成して加工線データ記憶部210に記憶しておくと良い。接線情報については、加工線情報と同様にCAD等で作成された加工に係る情報に基づいて予め作成しておいても良いし、制御装置1上で加工線情報に基づいて演算して求めても良い。一般に、加工線C(r=p(θ))上の任意の点P=(rcosθ,rsinθ)における接線vと、極座標原点Opから点PへのベクトルOpPに対する点Pを通る法線uとの為す角度ψは以下の数1式で計算することができる。なお、数1式において、ドット付きのrはrをθで微分したものである。
【0022】
【0023】
例えば、
図3に示すように、楕円曲線を加工する場合を考える。この時、楕円曲線は回転角度θを媒介変数とする以下の数2式で表すことができるので、これを加工線情報として予め加工線データ記憶部210に記憶しておく。
【0024】
【0025】
一方、接線情報は加工線情報として登録される関数r(θ)に基づいて、以下の数3式で表すことができる。
【0026】
【0027】
このように、加工線データ記憶部210に予め加工対象となる加工線を示す加工線情報と、その接線情報と記憶しておくことで、これら情報を用いた切削点一定制御を行うことができる。
なお、直線を含む加工線情報を用いることも可能である。例えば、一辺の長さが2Lで図形の極座標原点がC軸の回転中心と一致する正方形の加工線に沿って加工する場合を考える。この場合、4つの加工線を用いて加工を行う。4つの加工線C0~C3は、以下の数4式で示すようにそれぞれ構成する。
【0028】
【0029】
そして、各加工線についてθを変化させながら加工を行い、1つの加工線について加工が終了したら次の加工線へと切り替えていくことで、直線を交えた加工線の加工を行うことができる。
【0030】
切削点一定指令作成部120は、
図1に示した制御装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、軸制御回路30を用いた軸制御処理とを行うことで実現される。切削点一定指令作成部120は、解析部100から入力された加工線情報及び接線情報に基づいて、指令周期ごとの、回転軸(C軸)の位置指令(角度指令)と、2つの直線軸(X軸,Y軸)の位置指令とを作成する。
切削点一定指令作成部120が作成する回転軸の位置指令は、加工線情報で示される加工線Cにおいて媒介変数θで示される位置の接線が、直線軸に対して所定の角度(例えば、媒介変数で示される加工線C上の位置における接線がX軸に対して直交する角度)となるC軸の位置を指令するものである。また、切削点一定指令作成部120が作成する2つの直線軸の位置指令は、加工線情報で示される加工線Cにおいて媒介変数θで示される位置を指令するものである。切削点一定指令作成部120が指令する回転軸の角度及び2つの直線軸の位置の指令は、例えば加工線情報が描く図形の極座標原点がC軸の回転中心と一致するものとした場合、以下の数5式で示すことができる。数5式において、cはC軸の位置指令、x,yはそれぞれX軸及びY軸の位置指令である。
【0031】
【0032】
切削点一定指令作成部120は、切削点一定指令制御が開始されると、加工線情報の媒介変数θを加工線の開始位置を示す角度θ0から、加工線の終了位置を示す角度θ1まで、指令周期毎に加工位置の変化量Δθだけ変化させた場合の各軸の位置を演算し、その位置を各軸に対して指令する。指令周期毎の加工位置の変化量Δθは、求める表面品質やサイクルタイムを考慮して、工具、機械3の仕様の範囲でワークと工具とが相対移動するように決定すればよい。
【0033】
なお、切削点一定指令作成部120は、加工線情報が描く図形の極座標原点と、C軸の回転中心とが一致しない(偏心している)場合であっても、回転軸の角度及び2つの直線軸の位置を作成して指令することができる。この場合、加工線の接線方向一定の処理と偏心成分の計算を分離して行えば良い。例えば、
図4に示すように、加工線情報が描く図形の極座標原点が、C軸の回転中心から距離R、角度c
0だけシフトした場合を考える。この時、図形の極座標系でr=p(θ)(θ
0≦θ≦θ
1)で表現される加工線Cが加工線情報として与えられたとする。その場合、加工線C(r=p(θ))上の任意の点Pにおける接線vと、極座標原点O
pから点PへのベクトルO
pPに対する点Pを通る法線uとの為す角度ψは、上記と同様に数1式で計算することができる。そうすると、切削点一定指令作成部120は、点Pを切削するときの位置指令を以下の数6式で演算することができる。
【0034】
【0035】
このような加工をする場合には、予め加工線情報に加えてC軸の回転中心からのシフト量として距離R、角度c0を設定しておけばよい。
【0036】
上記構成を備えた制御装置1は、1つの回転軸と2つの直線軸で、任意の加工線を加工する際に工具とワークの当たる角度を一定に保つ制御が簡単に指令可能になる。加工する加工線の極座標原点がC軸の回転中心とずれていたとしても、すなわち偏心した加工線を加工する場合であっても、簡単に指令をすることが可能となる。カム形状のリフトデータにも容易に適用することができる。更に、工具径補正などの各補正を容易に行うことが可能となる。
【0037】
図5は、本発明の第2実施形態による制御装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による制御装置1が備える各機能は、
図1に示した制御装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、制御装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0038】
本実施形態の制御装置1は、解析部100、切削点一定指令作成部120に加えて、更に周速一定制御部140を備える。また、制御装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、機械3を制御するための加工プログラム200が記憶されると共に、平面における一媒介変数表示の加工線情報とその加工線の接線情報を記憶するための領域である加工線データ記憶部210が設けられている。
【0039】
本実施形態による解析部100は、加工プログラム200により「切削点一定制御開始指令」が指令されると、加工線データ記憶部210から加工線情報と、その加工線の接線情報とを読み出し、読み出した加工線情報及び接線情報とに基づいた切削点一定制御を開始するように、切削点一定指令作成部120及び周速一定制御部140へと指令する。
【0040】
周速一定制御部140は、
図1に示した制御装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。周速一定制御部140は、解析部100から入力された加工線情報及び接線情報に基づいて、加工線情報により表される加工線のワークと工具との相対速度が一定となるように、指令周期毎の加工位置の変化量Δθを計算する。周速一定制御部140は、例えば予め定められた指令周期毎の加工距離Δdを用いて、以下の数7式を満足するΔθを計算する。
【0041】
【0042】
周速一定制御部140は、以下の数8,9式を用いて、Δθを計算するようにしても良い。
【0043】
【0044】
【0045】
いずれの数式を用いてΔθを計算するかについては、計算時間、精度に応じて適宜決定すればよい。周速一定制御部140は、このようにして算出したΔθを切削点一定指令作成部120へと出力する。
【0046】
切削点一定指令作成部120は、切削点一定指令制御が開始されると、加工線情報の媒介変数θを加工線の開始位置を示す角度θ0から、加工線の終了位置を示す角度θ1まで、周速一定制御部140が計算した指令周期毎の加工位置の変化量Δθだけ変化させた場合の各軸の位置を演算し、その位置を各軸に対して指令する。その他の機能に関しては、第1実施形態による切削点一定指令作成部120と同様の機能を備える。
【0047】
上記構成を備えた制御装置1は、第1の実施形態と同様に、1つ回転軸と2つの直線軸で、任意の加工線を加工する際に工具とワークの当たる角度を一定に保つ制御が簡単に指令可能になる。また、ワークと工具の相対速度を一定とすることができるため、加工面の仕上がりを一様に保ち品質を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
上記した実施形態では特に加工が極座標で表示される場合の動作について示したが、座標変換を通じて異なる座標系で記述された平面上の加工線についても同様に本発明を適用することができる。例えば直交座標で表示される加工線p(λ)=(px(λ),py(λ))に適用する場合よく知られる座標変換式として、以下に示す数10式が挙げられる。数10式において、プライム付きのpxとpyは、それぞれpxとpyを微分したものである。
【0049】
【0050】
この数10式を数1式、数5式、数6式に適用することで、直交座標で示される加工線p(λ)に対しても、本願発明の手法を適用することができる。他の座標系で表現される加工線についても、それぞれの座標系と極座標系との間の座標変換式を用いることで、適宜適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 制御装置
3 機械
5 ネットワーク
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,17,18,20 インタフェース
16 PLC
19 I/Oユニット
22 バス
30 軸制御回路
40 サーボアンプ
50 サーボモータ
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
100 解析部
120 切削点一定指令作成部
140 周速一定制御部
200 加工プログラム
210 加工線データ記憶部