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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】植物の生育方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20241106BHJP
   A01G 24/18 20180101ALI20241106BHJP
   A01G 24/20 20180101ALI20241106BHJP
   C05D 9/00 20060101ALI20241106BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 5/353 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 7/10 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A01G31/00 615
A01G24/18
A01G24/20
C05D9/00
C05F11/00
C08K5/20
C08K5/353
C08K7/10
C08L97/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022560148
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2020059653
(87)【国際公開番号】W WO2021197631
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】500336306
【氏名又は名称】ロックウール アクティーゼルスカブ
【住所又は居所原語表記】Hovedgaden 584, 2640 Hedehusene, DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,フランク ヘンドリクス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,ドルテ バートニク
(72)【発明者】
【氏名】ニコリッチ,ミロスラフ
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291126(JP,A)
【文献】特表2011-515103(JP,A)
【文献】特開2006-217915(JP,A)
【文献】特表2015-512967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0159768(US,A1)
【文献】特表2013-536677(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G,C05,C08K,C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含む、少なくとも1つのコヒーレント成長基材製品を提供する工程;
1種以上の種子、苗、挿し木又は植物を、前記成長基材製品と接触させて配置する工程;及び
前記成長基材製品に潅水する工程;
を含み、硬化する前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、コヒーレント成長基材製品中で植物を生育させる方法。
【請求項2】
前記成分(i)が、1種以上のアンモニア-酸化リグニン(AOLs)の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成分(ii)が、β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤及び/又はオキサゾリン架橋剤から選択される1種以上の架橋剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記成分(ii)が、
ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、脂肪族アミンからなる群から選択される1種以上の架橋剤;及び/又は
脂肪族アミドの形態の1種以上の架橋剤;及び/又は
ジメトキシエタナール、グリコールアルデヒド、グリオキシル酸からなる群から選択される1種以上の架橋剤;及び/又は
ポリカプロラクトン、ポリエステルポリオールから選択される1種以上の架橋剤;及び/又は
デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群から選択される1種以上の架橋剤;及び/又は
脂肪族多官能性カルボジイミドの形態の1種以上の架橋剤;及び/又は
ヘキサキス(メチルメトキシ)メラミン(HMMM)系の架橋剤、メラミン系の架橋剤から選択される1種以上の架橋剤;
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記成分(ii)を、前記成分(i)の乾燥重量を基準にして、1~40重量%含、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記成分(iii)が、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエーテル、水素化糖、フタル酸エステル、アジピン酸、バニリン酸、乳酸、フェルラ酸、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン分散液、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ラクトン、ラクタム、ラクチド、フリーカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー並びにフリーカルボキシ基を有するポリウレタン分散液、からなる群から選択される1種以上の可塑剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記成分(iii)が、
脂肪族アルコール、ペンタノール、モノヒドロキシアルコール、及びステアリルアルコール、からなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
ブトキシトリグリコール、ブタノールエトキシレート、エトキシレート、
ルコキシレートからなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
プロピレングリコールの形態の1種以上の可塑剤;並びに/又は
グリコールエステルの形態の1種以上の可塑剤;並びに/又は
アジペート、アセテート、ベンゾエート、シクロベンゾエート、シトレート、ステアレート、ソルベート、セバケート、アゼレート、ブチレート、及びバレレートからなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
アルキル若しくはアリール置換フェノール、フェノール誘導体からなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
シラノール、及びシロキサンからなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
アルキル硫酸塩、硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホン酸塩、からなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
リポリリン酸塩、リン酸塩;並びに/又は
ヒドロキシ酸の形態の1種以上の可塑剤;並びに/又は
アセトアミド、ベンズアミド、トール油アミド、脂肪酸アミド、モノマーアミドからなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
トリメチルグリシン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
ヒマシ油、パーム油、亜麻仁油、トール油、大豆油、植物油からなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
水素化油、及びアセチル化油からなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
脂肪酸メチルエステルから選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
アルキルポリグルコシド、グルコンアミド、アミノグルコシアミド、ショ糖エステル、及びソルビタンエステルからなる群から選択される1種以上の可塑剤;並びに/又は
ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択される1種以上の可塑剤、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記成分(iii)が、前記成分(i)の乾燥重量を基準にして、0.5~50重量%存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水性バインダー組成物が、さらに1種以上のカップリング剤の形態の成分(iv)
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水性バインダー組成物が、アンモニア、アミン及びそれらの任意の塩の群から選択される1種以上の成分の形態の成分(v)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性バインダー組成物が、前記成分(i)の乾燥重量を基準にして、5~40重量%の量の、尿素の形態の成分をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バインダー組成物が、実質上、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
種以上のカップリング剤の形態の成分(iv);
水;
(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)から選択される1種以上の成分;
(a)アンモニア、アミン又はそれらの任意の塩の群から選択される1種以上の化合物の形態の成分;
(b)尿素の形態の成分;
(c)より高反応性の又は非反応性のシリコーンの形態の成分;
(d)炭化水素油;
(e)1種以上の表面活性剤;
らなる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記コヒーレント成長基材製品が、水との接触角が90°未満である人造ガラス質繊維を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記コヒーレント成長基材製品が、1.5~10ミクロンの範囲の幾何平均繊維径を有する人造ガラス質繊維を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記成長基材製品が、0.003リットル~87リットルの範囲の体積を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記コヒーレント成長基材製品が液体不透過性の被覆を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記コヒーレント成長基材製品が10mm~150mmの高さを有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記コヒーレント成長基材製品が、いかなる湿潤剤も含まない、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、
前記硬化前の水性バインダー組成物が、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、コヒーレント成長基材製品。
【請求項20】
請求項2~18のいずれか一項に記載の特徴をさらに含む、請求項19に記載のコヒーレント成長基材製品。
【請求項21】
2種以上のコヒーレント成長基材製品のアレイであって、前記コヒーレント成長基材製品が、硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物が、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、2種以上のコヒーレント成長基材製品のアレイ。
【請求項22】
植物を生育させるためのコヒーレント成長基材製品の使用であって、前記コヒーレント成長基材製品が、硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物が、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、植物を生育させるためのコヒーレント成長基材製品の使用。
【請求項23】
前記コヒーレント成長基材が、請求項2~18のいずれか一項に記載の特徴をさらに備える、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
(i)MMVFを提供する工程;
(ii)前記MMVFに水性バインダー組成物を噴霧する工程;
(iii)前記MMVFを回収し、固化させる工程;及び
(iv)前記水性バインダー組成物を硬化させる工程;
を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物が、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、成長基材製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント成長基材を用いた植物の生育方法、コヒーレント成長基材製品、及びコヒーレント成長基材の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、植物を人造ガラス質繊維(MMVF)で形成したコヒーレント成長基材中で生育することが知られている。このために使用するMMVF製品は、通常、コヒーレントプラグ、ブロック又はスラブとして提供され、一般に製品を構造的に補強するためのバインダーを含む。
【0003】
歴史的には、選択される主要なバインダーとしては、国際公開第2009/090053号明細書、国際公開第2008/009467号明細書、国際公開第2008/009462号明細書、国際公開第2008/009461号明細書、国際公開第2008/009460号明細書及び国際公開第2008/009465号明細書に開示されるようなフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びフェノール-ホルムアルデヒド尿素樹脂があった。これらのバインダーの製造は経済的であり、優れた機械的取り扱い性を有するが、このことは、ハンドリング時に自動装置が使用され、基材に多量の水が保持されるため、植物成長基材にとって非常に重要である。基材がハンドリング中に破損したり、基材が水を保持する際に剛性や形状が損なわれるのは好ましくない。
【0004】
しかしながら、ホルムアルデヒド排出量の低下又は排除に向けられた既存の法律及び新たに法律が制定されたことで、国際公開2017/114723号明細書、国際公開2017/114724号明細書、国際公開第2012/028650号明細書に記載されているような、ホルムアルデヒドフリーのバインダーの開発へとつながっている。
【0005】
少なくとも、植物成長基材用の従来知られているバインダー組成物の大部分は、化石燃料に由来する出発材料からなる。消費者の間では、完全に又は少なくとも部分的に再生可能な材料から製造される製品を好む傾向が続いており、したがって、少なくとも部分的に再生可能な材料から製造される植物成長基材用バインダーを提供する必要性が存在する。
【0006】
再生可能な材料に基づくバインダー組成物は、以前から、例えば国際公開2017/114723号明細書及び国際公開2017/114724号明細書において提案されている。しかしながら、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を用いて調製されたMMVF製品と比較した場合、機械的特性の点で、これらのバインダーを用いて調製されたMMVF製品に関連するいくつかの不利な点が依然として存在する。加えて、このようなバインダーは、多くの場合高価な出発材料から作られる。
【0007】
さらに、保水性又は高さ方向における水の分布のような植物成長基材の保水性を改善したいという継続的な願望が存在する。また、植物成長基材に使用されるバインダーの植物毒性の低減に対する要望も継続的に存在する。
【0008】
生育プロセスにおいて、水と養分をできるだけ効率的に使用したいという願望がある。これは、コストと環境の両方の理由からである。特に、養分を含む排水は、環境法制の関係で処分が困難である。そのため、排水(ドレンともいう)の量が少なくなるように保水性を向上させることが望まれている。
【0009】
さらに、植物成長基材を製造するのに必要な成分の量や数を減らすことが望まれている
。一般に、植物成長基材には、親水性を向上させるために湿潤剤などの添加剤が添加される。しかしながら、環境及びコスト効率の観点から、湿潤剤をさらに添加する必要のないバインダーを提供することが望まれる。
【0010】
機械的特性を考慮しないで、他のバインダーよりも少量で使用できるバインダーを製造するのも望ましいことであろう。したがって、ホルムアルデヒドを含まず、フェノール-ホルムアルデヒドバインダーと同等又は優れた機械的取り扱い性(例えば圧縮強度)を有する植物成長基材用のバインダーを製造することが望ましいであろう。このようなバインダーは、保水性(例えば、保水性、高さ方向の水分分布)が改善されているため、水の浪費が少なく、植物毒性が低いことが好ましいと思われる。さらに、このようなバインダーは、製造が経済的であり、主に再生可能な資源に基づくことが望ましいであろう。最後に、このようなバインダーは、使用量を減らし、湿潤剤のさらなる添加を必要としないことが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0011】
本発明で用いる植物成長基材は、上記課題を解決するものである。
【0012】
本発明の第1の態様では、コヒーレント成長基材製品中で植物を生育させる方法が提供され、該方法は、
硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含む、少なくとも1つのコヒーレント成長基材製品を提供する工程;
1種以上の種子、苗、挿し木又は植物を、前記成長基材製品と接触させて配置する工程;及び
前記成長基材製品に潅水する工程;
を含み、硬化する前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の複数の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む。
【0013】
本発明の第2の態様では、硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含むコヒーレント成長基材製品が提供され、硬化前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種上の複数の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む。
【0014】
本発明の第3の態様では、2種以上のコヒーレント成長基材製品のアレイが提供され、前記コヒーレント成長基材製品は、硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む。
【0015】
本発明の第4の態様では、植物を生育させるためのコヒーレント成長基材製品の使用が提供され、前記コヒーレント成長基材製品は、硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む。
【0016】
本発明の第5の態様では、
(i)MMVFを提供する工程;
(ii)前記MMVFに水性バインダー組成物を噴霧する工程;
(iii)前記MMVFを回収し、固化させる工程;及び
(iv)前記水性バインダー組成物を硬化させる工程;
を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物が、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、成長基材製品の製造方法が提供される。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、フェノール-ホルムアルデヒドバインダーと同等又はさらに優れた機械的取り扱い性(例えば、圧縮強度)を有する成長基材をもたらす、ホルムアルデヒドを含まないバインダーを製造することが可能であることを発見した。本発明者らは又、植物の成長及び発達に非常に望ましい、改善された保水特性(例えば、保水性)及び低い植物毒性レベルを有する成長基材をもたらす、そのようなバインダーを製造した。その結果、水の浪費(ドレン)を減らすことができる。本発明者らは、経済的で、主に再生可能な資源に基づく、このようなバインダーを製造した。最後に、本バインダーは、少量で使用することができ、成長基材に湿潤剤を添加する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】圧縮強度試験の結果を示す図である。
図1B】圧縮強度試験の結果を示す図である。
図1C】圧縮強度試験の結果を示す図である。
図1D】圧縮強度試験の結果を示す図である。
図1E】圧縮強度試験の結果を示す図である。
図2】保水性試験の結果を示す図である。
図3】高さ方向の水分分布試験の結果を示す図である。
図4】リグニン構造の断面の一例を示す図である。
図5】リグニン前駆体及び共通のユニット間結合を示す。
図6】市場で入手可能な工業リグニンの4つのグループを示す。
図7】工業リグニンの特性の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、コヒーレント成長基材製品中で植物を生育させる方法に関するものであり、該方法は、
硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含む、少なくとも1つのコヒーレント成長基材製品を提供する工程;
1種以上の種子、苗、挿し木又は植物を、前記成長基材製品と接触させて配置する工程;及び
前記成長基材製品に潅水する工程;
を含み、硬化する前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の複数の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む。
【0020】
本発明の方法には、人造ガラス質繊維(MMVF)を含むコヒーレント成長基材製品が含まれる。人造ガラス質繊維(MMVF)は、任意の適切な酸化物組成を有することができる。この繊維は、ガラス繊維、セラミックファイバー、バサルトファイバー、スラグ繊維、又はロック若しくはストーンファイバーであり得る。この繊維は、好ましくは、一般にロックファイバー、ストーンファイバー又はスラグ繊維として知られている種類のものであり、最も好ましくはストーンファイバーである。
【0021】
石材繊維は、一般に、酸化物を以下の重量パーセントで含む。
SiO: 30~51
CaO:8~30
MgO:2~25
FeO(Feを含む): 2~15
NaO+KO:10以下
CaO+MgO:10~30
【0022】
好ましい実施形態では、MMVFは、酸化物の重量%として計算される、以下のレベルの元素を有する。
SiO:少なくとも30、32、35又は37;51、48、45又は43以下
Al:少なくとも12、16又は17;30、27又は25以下
CaO:少なくとも8又は10;30、25又は20以下
MgO:少なくとも2又は5;25、20、15以下
FeO(Feを含む):少なくとも4又は5;15、12又は10以下
FeO+MgO:少なくとも10、12、15;30、25、20以下
NaO+KO:0又は少なくとも1;10以下
CaO+MgO:少なくとも10又は15;30又は25以下
TiO:0又は少なくとも1;6、4又は2以下
TiO+FeO:少なくとも4又は6;18又は12以下
:少なくとも0又は1;5又は3以下
P2O5:0又は少なくとも1;8又は5以下
その他:0又は少なくとも1;8又は5以下
【0023】
本発明の方法によって製造されたMMVFは、好ましくは重量%で以下の組成:
SiO 35~50
Al 12~30
TiO 最大2
Fe 3~12
CaO 5~30
MgO 最大15
NaO 0~15
O 0~15
最大3
MnO 最大3
最大3
を有する。
【0024】
MMVFの別の好ましい組成は、重量%で以下の通りである:
SiO 39~55%、好ましくは39~52%
Al 16~27%、好ましくは16~26%
CaO 6~20%、好ましくは8~18%
MgO 1~5%、好ましくは1~4.9%
NaO 0~15%、好ましくは2~12%
O 0~15%、好ましくは2~12%
O(NaO+KO) 10~14.7%、好ましくは10~13.5%
0~3%、好ましくは0~2%
Fe(全鉄) 3~15%、好ましくは3.2~8%
0~2%、好ましくは0~1%
TiO 0~2%、好ましくは0.4~1%
その他0~2.0%
【0025】
ガラス繊維は、通常、重量パーセントで以下の酸化物を含む。
SiO:50~70
Al:10~30
CaO:27以下
MgO:12以下
【0026】
ガラス繊維には、重量パーセントで次の酸化物も含有し得る。
NaO+KO:8~18、特にNaO+KOは、CaO+MgOより多い。
:3~12
【0027】
ガラス繊維組成物は、Alを2%未満含んでいてもよい。
【0028】
幾何平均繊維径は、多くの場合1.5~10ミクロン、特に2~8ミクロン、好ましくは2~5ミクロンの範囲にある。本発明者らは、幾何学的繊維径がこのような範囲にあることにより、毛細管現象に良好な影響を及ぼし、よって高さ方向の水の分布と、成長基材における水の取り込みが改善されることを見出した。
【0029】
本発明に係る成長基材は、硬化前に、以下を含む水性バインダー組成物:
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の複数の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む。
【0030】
好ましい実施形態において、バインダーはホルムアルデヒドを含まない。
【0031】
本願の目的上、用語「ホルムアルデヒドフリー」とは、岩綿製品からのホルムアルデヒドの放出が、5μg/m/h以下、好ましくは3μg/m/h以下の特徴的な岩綿製品でもって定義される。好ましくは、この試験は、アルデヒド放散量試験用の、ISO 16000に準じて実施される。
【0032】
成分(i)
成分(i)は、1種以上の酸化リグニンの形態をとる。
【0033】
リグニン、セルロース及びヘミセルロースは、植物細胞壁における3つの主要な有機化合物である。リグニンは、セルロース繊維を一緒に保持する接着剤と考えることができる。リグニンは、親水基と疎水基の両方を含む。リグニンはセルロースに次いで世界で2番目に多く存在する天然高分子で、バイオマスに含まれる全炭素量の20~30%にも相当すると推定され、その量は世界で10億トン以上と言われている。
【0034】
図4は、リグニン構造の断面の一例を示す。
【0035】
市場で入手可能な工業リグニンには、少なくとも4つのグループがある。これらの4つのグループを、図6に示す。考えられる第5のグループであるバイオリファイナリーリグニンは、抽出プロセス上には記載されず、代わりにプロセス起源、例えばバイオリファイニング上に記載されるため、少し異なり、したがって、言及した他のグループのすべてに類似しているか、又は異なっている可能性がある。各グループは互いに異なっており、それぞれが異なる用途に適す。リグニンは、原料によって異なるが、最大3種類のフェニルプロパンモノマーを含む複雑で不均一な物質である。針葉樹リグニンは、ほとんどがコニフェリルアルコールのユニットでできており(図5参照)、その結果、シリンギルアルコールの含有量が多い広葉樹リグニンよりも均質である(図5参照)。これらのリグニンの外観と粘性はそれぞれ異なり、又プロセスにより大きく左右される。
【0036】
これらの工業リグニンの特性の概略を図7に示す。
【0037】
亜硫酸塩パルプ工程から得られるリグノスルホン酸塩は、依然として商業的に利用可能な最大のリグニン源であり、その容量は140万トンである。しかし、これらを除けば、クラフトプロセスが、現在最も使用されているパルプ化プロセスであり、徐々に亜硫酸塩プロセスに取って代わろうとしている。クラフトパルプの生産により、世界全体で年間78百万トンのリグニンが生成されていると推定されるが、そのほとんどは燃やされて蒸気やエネルギー源となっている。現在のクラフト回収能力は16万トンと推定されているが、情報筋によると現在の回収量は約7万5千トンに過ぎない。クラフトリグニンは、硫酸塩法又はクラフト法で得られる、使用済み液である黒液から開発される。現在、クラフトリグニンの製造には、3つの有名なプロセス:LignoBoost、LignoForce、SLRP、が採用されている。これら3つのプロセスは、COを添加してpHを9~10に下げ、次に酸性化してpHを約2に下げる、という点で共通している。最終工程では、洗浄、浸出、ろ過を組み合わせて灰分やその他の汚染物質を除去する。この3つのプロセスは、世界各地でさまざまな形で商業化されている。
【0038】
クラフト工程では、チオール基、スチルベンが導入されるが、一部の炭水化物は残存する。硫酸ナトリウムは、硫酸によって酒類から沈殿するリグニンの不純物としても存在するが、リグニンの単離方法を変更することによって回避できる可能性がある。クラフト工程では、フェノール性水酸基が多量に発生するので、リグニンは、これらの基がイオン化している場合(pH~10以上)、水に可溶となる。
【0039】
市販のクラフトリグニンは、一般にリグノスルホン酸塩よりも純度が高い。分子量は1000~3000g/mol.sである。
ソーダリグニンは、水酸化ナトリウムパルプ化工程由来のもので、主に麦わら、バガス及び亜麻に使用される。ソーダリグニンの特性は、溶解度やTgの点でクラフトリグニンと類似している。当該プロセスでは硫黄は使用されず、共有結合性の硫黄は存在しない。灰分は非常に少ない。ソーダリグニンは、中性及び酸性媒体への溶解度は低いが、pH12以上では完全に溶解する。
【0040】
リグノスルホン酸塩化プロセスにおいて大量のスルホン酸基を導入することにより、リグニンを水だけでなく酸性水溶液にも可溶化させる。クラフトリグニンには1~2%の硫黄が含まれているが、リグノスルホン酸塩には最大8%の硫黄がスルホン酸塩として含まれており、そのほとんどはリグニンに結合している。リグノスルホン酸塩の分子量は15,000~50,000g/molである。このリグニンは他の種類に比べ、残存炭水化物を多く含み、平均分子量が高い。リグニンの典型的な疎水性コア部と多数のイオン化スルホネート基により、このリグニンは界面活性剤として有用となり、セメントなどの分散によく利用される。
【0041】
利用可能になりつつあるリグニンのさらなるグループは、炭水化物が化学的又は生化学的プロセスによってリグニンから分離され、炭水化物に富むフラクションを生成するバイオリファイニングプロセスから生じるリグニンである。この残存リグニンは、バイオリファイナリーリグニンと呼ばれる。バイオリファイナリーでは、リグニンだけでなく、エネルギーの生産や、化石燃料や石油化学製品から得られる製品の代替品生産に重点を置いている。このプロセスから得られるリグニンは、一般に、主に熱燃焼用に使用されるか、低級飼料として使用されるか、でなければ廃棄されるかの、低価値製品又は廃棄物とさえ考えられている。
【0042】
オルガノソルブリグニンの利用可能性は、依然としてパイロットスケールで検討されている。このプロセスには、様々な有機溶媒(最も頻繁にエタノール)及びいくつかの有機酸とともに水を使用することによって、リグニンを抽出することが含まれる。このプロセスの利点は、得られたリグニンの純度が高いことではあるが、他の工業グニンと比較してはるかにコストが高く、又水中ではなく有機溶媒に溶解する点が問題である。
【0043】
鉱物繊維用バインダー組成物の基本化合物として、リグニンを使用する試みは失敗に終わった、というのは、硬化した岩綿製品が望ましい機械的特性を有すること、と同時に有害かつ/又は腐食性でない適切な架橋剤を見つけるのが困難であることが判明したためである。現在、リグニンは、バインダー用途のフェノール樹脂やアスファルトに含まれるフェノールなどの石油由来の化学物質の代替品として使用されている。又、セメントやコンクリート添加剤、ある分野では分散剤としても使用されている。
【0044】
一般にポリマー架橋により、機械的、化学的及び熱的耐性等の改善された特性がもたらされる。リグニンは、自身に架橋構造がもたらされる反応を引き起こせる、フェノール及び脂肪族ヒドロキシル基を特に豊富に含んでいる。又、リグニンの種類によっては、他の官能基を持つものもあり、それらを利用することもできる。これらの官能基の存在は、リグニンがセルロースやヘミセルロース(クラフトリグニンのチオール、リグノスルホン酸塩のスルホン酸塩など)から分離された方法に大きく依存し、又供給元にも依存する。
【0045】
酸化リグニンを使用することにより、製造される岩綿製品に優れた特性をもたらすことができる、鉱物繊維用バインダー組成物を調製することが可能なことが見いだされた。
【0046】
一実施形態では、成分(i)は、1種以上の酸化クラフトリグニンの形態である。
【0047】
一実施形態では、成分(i)は、1種以上の酸化されたソーダリグニンの形態である。
【0048】
一実施形態では、成分(i)は、1種以上のアンモニア-酸化リグニンの形態である。本発明の目的上、用語「アンモニア-酸化リグニン」とは、アンモニアの存在下で酸化剤によって酸化されたリグニンと理解される。用語「アンモニア-酸化リグニン」は、AOLと略称される。
【0049】
代わりに実施形態において、アンモニアは、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムによって部分的又は完全に置換される。
【0050】
酸化リグニンを調製するために使用される典型的な酸化剤は、過酸化水素である。
【0051】
一実施形態では、アンモニア-酸化リグニンは、アンモニア、アミン、水酸化物又はそれらの任意の塩の群から選択される化合物を1種以上含む。
【0052】
一実施形態において、成分(i)は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、0.05~10mmol/g、例えば、0.1~5mmol/g、例えば0.20~1.5mmol/g、例えば0.40~1.2mmol/g、例えば0.45~1.0mmol/g、のカルボン酸基含有量を有する。
【0053】
一実施形態では、成分(i)は、成分(i)の1高分子あたり、1.5基超、例えば2基超、2.5基超、の平均カルボン酸基含有量を有する。
【0054】
酸化リグニンのカルボン酸基含有量は、本発明に係る鉱物繊維用水性バインダー組成物が驚くべき利点を有する上で重要な役割を果たすと信じられている。特に、酸化リグニンのカルボン酸基は、架橋特性を改善し、したがって、硬化した鉱物繊維製品がより良い機械的特性を発現できると信じられている。
【0055】
成分(ii)
成分(ii)は、1種以上の架橋剤の形態をとる。
【0056】
一実施形態において、成分(ii)は、β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤及び/又はオキサゾリン架橋剤から選択される1種以上の架橋剤を含む。
【0057】
β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤は、酸官能性高分子のための硬化剤である。これにより、硬く、耐久性があり、耐腐食性があり、耐溶剤性のある架橋ポリマーネットワークがもたらされる。β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤は、複数のエステル結合を形成するエステル化反応により硬化すると考えられている。β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤のヒドロキシ官能基数は、最適な硬化反応を得るために、少なくとも平均2個、好ましくは2超、より好ましくは2~4である。
【0058】
オキサゾリン基含有架橋剤は、1分子中に1種以上のオキサゾリン基を含有するポリマーであり、一般に、オキサゾリン誘導体を重合することにより、容易にオキサゾリン基含有架橋剤を得ることができる。特許米国特許第6818699(B2)明細書には、このようなプロセスに関する開示がある。
【0059】
一実施形態では、成分(ii)は、脂肪酸トリグリセリド系のエポキシ化油である。
【0060】
脂肪酸トリグリセリド系のエポキシ化油は危険物とはみなされず、したがって、本発明のバインダー組成物用にこれらの化合物を使用すれば、これらの組成物は危険物として取り扱われなくてもよい。
【0061】
一実施形態において、成分(ii)は、3個以上のエポキシ基を有する分子である。
【0062】
一実施形態では、成分(ii)は、1種以上の柔軟なオリゴマー又はポリマー、例えば、低Tgアクリル系ポリマー、低Tgビニル系ポリマー、低Tgポリエーテル、であり、該成分は反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば酸無水物、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基などを含む。
【0063】
一実施形態では、成分(ii)は、ヒドロキシアルキルアミド、アルカノールアミン、アルカノールアミンとポリカルボン酸との反応生成物などの、硬化反応に関与する架橋剤からなる群から選択される。アルカノールアミンとポリカルボン酸の反応生成物は、米国特許第6706853(B1)明細書に記載されている。
【0064】
特定の理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、水性バインダー組成物の非
常に有利な特性は、成分(i)として用いられる酸化リグニンと、上記の架橋剤との相互作用によるものであると信じている。酸化リグニンにカルボン酸基が存在することにより、酸化リグニンが非常に効果的に架橋することができる。
【0065】
一実施形態では、成分(ii)は、多官能性有機アミン、例えばアルカノールアミン、ジアミン、例えばヘキサメチルジアミン、トリアミンなどからなる群から選択される1種以上の架橋剤である。
【0066】
一実施形態では、成分(ii)は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、脂肪族アミンからなる群から選択される1種以上の架橋剤である。
【0067】
一実施形態では、成分(ii)は、1種以上の脂肪族アミドである。
【0068】
一実施形態において、成分(ii)は、ジメトキシエタナール、グリコールアルデヒド、グリオキシル酸からなる群から選択される1種以上の架橋剤である。
【0069】
一実施形態において、成分(ii)は、ポリカプロラクトンのようなポリエステルポリオールから選択される1種以上の架橋剤である。
【0070】
一実施形態では、成分(ii)は、デンプン、変性デンプン、CMCからなる群から選択される1種以上の架橋剤である。
【0071】
一実施形態では、成分(ii)は、脂肪族多官能性カルボジイミドの形態をとる1種以上の架橋剤である。
【0072】
一実施形態では、成分(ii)は、メラミン系の架橋剤、例えばヘキサキス(メチルメトキシ)メラミン(HMMM)系の架橋剤など、から選択される1種以上の架橋剤である。
【0073】
このような化合物の例としては、Picassian XL 701、702、725(Stahl Polymers社)、例えばZOLDINE(登録商標)XL-29SE(Angus Chemical Company社)、例えばCX300(DSM)、例えばCarbodilite V-02-l2(日清紡ケミカル株式会社)等が挙げられる。
【0074】
成分(ii)は又、上記の化合物の任意の混合物とすることができる。
【0075】
一実施形態では、本発明によるバインダー組成物は、成分(ii)を、成分(i)の乾燥重量を基準にして、1~40重量%、例えば4~20重量%、例えば6~12重量%等含む。
【0076】
成分(iii)
成分(iii)は、1種以上の可塑剤の形態をとる。
【0077】
一実施形態では、成分(iii)は、ポリオール、例えば炭水化物、水素化糖、例えばソルビトール、エリスリトール、グリセロール、モノエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエーテル、フタル酸エステル並びに/又はアジピン酸、バニリン酸、乳酸及び/若しくはフェルラ酸などの酸、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン分散液、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ラクトン、ラクタム、ラクチド、フリーカルボキシ基を有するアクリル系
ポリマー並びに/又はフリーカルボキシ基を有するポリウレタン分散液、ポリアミド、カルバミド/尿素などのアミド、又はこれらの任意の混合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態をとる。
【0078】
一実施形態において、成分(iii)は、カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ラクトン、ラクタム、ラクチド、バニリンのようなリグニンと類似の構造を有する化合物、アセトシリンゴン、アルコールエーテルのような合体剤として用いられる溶剤、ポリビニルアルコール等からなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態をとる。
【0079】
一実施形態において、成分(iii)は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエーテル、水素化糖、フタル酸エステル及び/又は他のエステル、アルコールエーテルのような合体剤として用いられる溶剤、アクリルポリマー、ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上の非反応性可塑剤の形態をとる。
【0080】
一実施形態において、成分(iii)は、カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ラクトン、ラクタム、ラクチド、ジ-又はトリカルボン酸、例えばアジピン酸、又は乳酸、及び/又はバニリン酸及び/又はフェルラ酸、ポリウレタン分散液、フリーカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー、バニリンのようなリグニンと同様の構造を有する化合物、アセトシリンゴンからなる群から選ばれる1種以上の反応性可塑剤である。
【0081】
一実施形態では、成分(iii)は、脂肪族アルコール、ペンタノールなどのモノヒドロキシアルコール、及びステアリルアルコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態をとる。
【0082】
一実施形態において、成分(iii)は、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態を含む。
【0083】
本発明における、他の特に驚くべき態様としては、100℃以上、特に140~250℃の沸点を有する可塑剤を使用することによって、本発明による鉱物繊維製品の機械的特性が著しく改善することであるが、その沸点の観点からは、これらの可塑剤は、鉱物繊維と接触する水性バインダーが硬化する間に少なくとも部分的に蒸発していると思われる。
【0084】
一実施形態では、成分(iii)は、100℃超、例えば110~280℃、より好ましくは120~260℃、より好ましくは140~250℃、の沸点を有する1種以上の可塑剤を含む。
【0085】
水性バインダー組成物におけるこれらの可塑剤の効果は、硬化プロセス中に酸化リグニンの移動度を向上させる効果によるものと考えられている。硬化プロセス中のリグニン又は酸化リグニンの移動度の向上により、架橋が効果的に促進されると考えられている。
【0086】
一実施形態において、成分(iii)は、150~50000g/molの平均分子量、特に150~4000g/mol、より具体的には150~1000g/mol、好ましくは150~500g/mol、より好ましくは200~400g/molを有する、1種以上のポリエチレングリコールを含む。
【0087】
一実施形態では、成分(iii)は、4000~25000g/molの平均分子量、特に4000~15000g/mol、より具体的には8000~12000g/molを有する1種以上のポリエチレングリコールを含む。
【0088】
一実施形態では、成分(iii)は、硬化プロセス中に、成分(i)及び/又は成分(ii)と共有結合を形成することが可能である。そのような成分は、蒸発せず、組成物の一部として残るが、硬化した製品に望ましくない副作用、例えば吸水性をもたらさないように効果的に変性するであろう。そのような成分の非限定的な例として、フリーカルボキシル基を有するカプロラクトン及びアクリル系ポリマーがある。
【0089】
一実施形態では、成分(iii)は、脂肪族アルコール、モノヒドロキシアルコール、例えばペンタノール、ステアリルアルコールなど、からなる群から選択される。
【0090】
一実施形態では、成分(iii)は、ブトキシトリグリコールなどのブタノールエトキシレートなどのエトキシレートなどのアルコキシレートからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0091】
一実施形態では、成分(iii)は、1種以上のプロピレングリコールから選択される。
【0092】
一実施形態では、成分(iii)は、1種以上のグリコールエステルから選択される。
【0093】
一実施形態では、成分(iii)は、アジペート、アセテート、ベンゾエート、シクロベンゾエート、シトレート、ステアレート、ソルベート、セバケート、アゼレート、ブチレート、及びバレレートからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0094】
一実施形態では、成分(iii)は、アルキル又はアリール置換フェノールなどのフェノール誘導体からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0095】
一実施形態において、成分(iii)は、シラノール、及びシロキサンからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0096】
一実施形態では、成分(iii)は、アルキル硫酸塩などの硫酸塩、アルキルスルホン酸塩などのアルキルアリールスルホン酸塩などのスルホン酸塩、及びトリブチルリン酸塩などのトリポリリン酸塩などのリン酸塩、からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0097】
一実施形態では、成分(iii)は、1種以上のヒドロキシ酸から選択される。
【0098】
一実施形態では、成分(iii)は、アセトアミド、ベンズアミド、トール油アミドなどの脂肪酸アミドなどのモノマーアミドからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0099】
一実施形態では、成分(iii)は、トリメチルグリシン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0100】
一実施形態では、成分(iii)は、ヒマシ油、パーム油、亜麻仁油、トール油、大豆油などの植物油からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0101】
一実施形態では、成分(iii)は、水素化油、及びアセチル化油からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0102】
一実施形態において、成分(iii)は、1種以上の脂肪酸メチルエステルから選択される。
【0103】
一実施形態では、成分(iii)は、アルキルポリグルコシド、グルコンアミド、アミノグルコシアミド、ショ糖エステル、及びソルビタンエステルからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0104】
驚くべきことに、水性バインダー組成物中に可塑剤を含有させることにより、本発明に係る成長基材の機械的特性が著しく改善されることが見出された。
【0105】
可塑剤という用語は、材料をより柔らかくし、より柔軟にし(ガラス転移温度Tgを低下させることによって)、加工しやすくするために材料に添加される基材を意味する。
【0106】
成分(iii)は又、上記の化合物の任意の混合物とすることができる。
【0107】
一実施形態において、成分(iii)は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、0.5~50重量%、好ましくは2.5~25重量%、より好ましくは3~15重量%の量で存在する。
【0108】
成分(i)及び(iia)を含む鉱物繊維用水性バインダー組成物
本発明の一実施形態は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i)、
1種以上の改質剤の形態の成分(iia)、
を含む鉱物繊維用の水性バインダー組成物に関する。
【0109】
本発明者らは、優れたバインダー特性は、1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i)及び1種以上の改質剤の形態の成分(iia)、並びに任意選択で、上記及び下記の他の成分のいずれかを含む2成分系によっても達成できることを見いだした。
【0110】
一実施形態では、成分(iia)は、脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油からなる群から選択される1種以上の化合物の形態の改質剤である。
【0111】
一実施形態において、成分(iia)は、3個以上のエポキシ基を有する分子から選択される1種以上の化合物の形態における改質剤である。
【0112】
一実施形態では、成分(iia)は、1種以上の柔軟なオリゴマー又はポリマー、例えば、カルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基などの反応性官能基を含む、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテルなどのの形態の改質剤である。
【0113】
一実施形態において、成分(iia)は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、脂肪族アミンからなる群から選択される1種以上の改質剤である。
【0114】
一実施形態では、成分(iia)は、脂肪族多官能性カルボジイミドから選択される1種以上の改質剤である。
【0115】
成分(iia)は又、上述した化合物の任意の混合物とすることができる。
【0116】
特定の理論に拘束されることを望むことないが、本発明者らは、優れたバインダー特性が、成分(i)及び(iia)、並びに任意選択のさらなる成分を含む、鉱物繊維用バイ
ンダー組成物によって達成されるのは、成分(iia)として用いられる改質剤が少なくとも部分的に可塑剤及び架橋剤の機能を果たす効果によるものであると信じている。
【0117】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、成分(iia)を、成分(i)の乾燥重量に基づいて、1~40重量%、例えば4~20重量%、例えば6~12重量%含む。
【0118】
さらなる成分
一部の実施形態では、水性バインダー組成物は、さらなる成分を含む。
【0119】
一実施形態では、水性バインダー組成物は無機酸、例えば硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、次亜リン酸、及び/若しくはリン酸、並びに/又は次亜リン酸ナトリウムなどのそれらの任意の塩、並びに/又はアンモニウム塩、例えば硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、次亜リン酸、及び/又はリン酸、のアンモニウム塩などを含む。このような触媒が存在すると、水性バインダー組成物の硬化性を向上させることができる。
【0120】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、例えばZnCl、Mg(ClO、Sn[N(SO-n-C17などのルイス付加物を形成するドナー化合物から電子対を受け入れることができるルイス酸から選択される触媒、などを含む。
【0121】
一実施形態では、水性バインダー組成物は金属塩化物、例えばKCl、MgCl、ZnCl、FeCl及びSnClなどから選択される触媒を含む。
【0122】
一実施形態では、水性バインダー組成物は有機金属化合物、例えばチタネート系触媒及びスタンナム系触媒などから選択される触媒を含む。
【0123】
一実施形態において、水性バインダー組成物はキレート剤、例えば遷移金属、例えば鉄イオン、クロムイオン、マンガンイオン、銅イオンなどから選択される触媒を含む。
【0124】
一実施形態において、水性バインダー組成物は、1種以上のシランの形態の、さらなる成分(iv)を含む。
【0125】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、有機官能性シランなどの1種以上のカップリング剤の形態の、さらなる成分(iv)を含む。
【0126】
一実施形態では、成分(iv)は、有機官能性シラン、例えば一級又は二級アミノ官能性シラン、エポキシ官能性シラン、例えばポリマー又はオリゴマーエポキシ官能性シラン、メタクリレート官能性シラン、アルキル及びアリール官能性シラン、尿素官能性シラン又はビニル官能性シランからなる群から選択される。
【0127】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、アンモニア、アミン又はそれらの任意の塩の群から選択される1種以上の形態の成分(v)をさらに含む。
【0128】
本発明者らは、さらなる成分としてアンモニア、アミン又はそれらの任意の塩を含むことが、特に、成分(i)において酸化リグニンを使用する場合に有用であり、この酸化リグニンはアンモニアの存在下で酸化されていないことを見出した。
【0129】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、尿素の形態のさらなる成分を、成分(i)の乾燥重量を基準にして、特に5~40重量%、例えば10~30重量%、15~25重量%の量さらに含む。
【0130】
一実施形態において、水性バインダー組成物は、スクロース、還元糖、特にデキストロース、多糖類、及びそれらの混合物、好ましくはデキストリン及びマルトデキストリン、より好ましくはグルコースシロップ、さらに好ましくは、デキストロース当量値 DE=30~100未満、例えば、DE=60~100未満、例えばDE=60~99、例えばDE=85~99、例えばDE=95~99、のグルコースシロップ、からなる群より選ばれる1種以上の糖質の形態のさらなる成分を含む。
【0131】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、5~50重量%、例えば5~50重量%未満、例えば10~40重量%、例えば15~30重量%の量の、スクロース及び還元糖からなる群から選択される1種以上の炭水化物の形態のさらなる成分を含む。
【0132】
本発明の文脈において、バインダー成分の総乾燥重量に基づいて、50重量%以上の糖含量を有するバインダー組成物は、糖系のバインダーであるとみなされる。本発明の文脈において、バインダー成分の総乾燥重量に基づいて、50重量%未満の糖含量を有するバインダー組成物は、非糖類系のバインダーと見なされる。
【0133】
一実施形態では、水性接着剤は非イオン性及び/又はイオン性乳化剤の形態である、例えばポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、例えば大豆レシチン、例えばドデシル硫酸ナトリウムなどの、1種以上の表面活性剤の形態のさらなる成分を含む。
【0134】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、以下を含む。
成分(i)の乾燥重量を基準にして、0.05~10mmol/g、例えば0.1~5mmol/g、例えば0.20~1.5mmol/g、例えば0.40~1.2mmol/g、例えば0.45~1.0mmol/gのカルボン酸基含量である、1種以上のアンモニア-酸化リグニンの形態の成分(i)。
β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤及び/若しくはオキサゾリン架橋剤から選択される1種以上の架橋剤、並びに/又はアルカノールアミン、ジアミン、例えばヘキサメチルジアミン、トリアミンなどの多官能性有機アミンからなる群から選択される1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)。
平均分子量が150~50000g/mol、特に150~4000g/mol、より特に150~1000g/mol、好ましくは150~500g/mol、より好ましくは150~300g/molである、1種以上のポリエチレングリコールの形態、又は平均分子量が4000~25000g/mol、特に4000~15000g/mol、より特に8000~12000g/mである、1種以上のポリエチレングリコールの形態、の成分(iii)であって、ここで、好ましくは、水性バインダー組成物は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、1~40重量%の量、例えば4~20重量%、6~12重量%の量で成分(ii)を含み、及び(iii)は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、0.5~50重量%、好ましくは2.5~25重量%、より好ましくは3~15重量%存在する。
【0135】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、以下を含む。
成分(i)の乾燥重量を基準にして、カルボン酸基を0.05~10mmol/g、例えば0.1~5mmol/g、例えば0.20~1.5mmol/g、例えば0.40~1.2mmol/g、例えば0.45~1.0mmol/g、含む、1種以上のアンモニア-酸化リグニンの形態の成分(i)。
脂肪酸トリグリセリドをベースとするエポキシ化油から選択される1種以上の改質剤の形態の成分(iia)。
【0136】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、以下を含む。
成分(i)の高分子あたり1.5基超の平均カルボン酸基含有量、例えば2基超、例えば2.5基超、有する1種以上のアンモニア-酸化リグニンの形態である成分(i)。
β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤及び/又はオキサゾリン架橋剤から選択される1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)、並びに/又はアルカノールアミン、ジアミン、例えばヘキサメチルジアミン、トリアミンなどの多官能有機アミンからなる群から選択される1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)。
平均分子量が150~50000g/mol、特に150~4000g/mol、より特に150~1000g/mol、好ましくは150~500g/mol、より好ましくは150~300g/molである、1種以上のポリエチレングリコールの形態、又は平均分子量が4000~25000g/mol、特に4000~15000g/mol、より特に8000~12000g/mである、1種以上のポリエチレングリコールの形態の成分(iii)であって、ここで、好ましくは、水性バインダー組成物は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、1~40重量%の成分(ii)の量、例えば4~20重量%、6~12重量%の量で含み、及び(iii)は、成分(i)の乾燥重量を基準にして、0.5~50、好ましくは2.5~25、より好ましくは3~15重量%の量で存在する。
【0137】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、以下を含む。
成分(i)の1高分子あたり1.5基超の平均カルボン酸基含有量、例えば2基超、例えば2.5基超の含有量含む、1種以上のアンモニア-酸化リグニンの形態である成分(i)。
脂肪酸トリグリセリドをベースとするエポキシ化油から選択される1種以上の改質剤の形態の成分(iia)。
【0138】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、実質上、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
有機官能性シランなどの1種以上のカップリング剤の形態の成分(iv);
任意に、アンモニア、アミン又はそれらの塩の群から選択される1種以上の化合物の形態の成分;
任意に、尿素の形態の成分;
任意に、より高反応性の又は非反応性のシリコーンの形態の成分;
任意に、炭化水素油;
任意に1種以上の表面活性剤;
水、
からなる。
【0139】
一実施形態では、水性バインダー組成物は、本質的に、
1種以上の酸化されたリグニンの形態の成分(i);
脂肪酸トリグリセリドをベースとするエポキシ化油から選択される1種以上の改質剤の形態の成分(iia);
有機官能性シランなどの1種以上のカップリング剤の形態の成分(iv);
任意に、アンモニア、アミン又はそれらの塩の群から選択される1種以上の化合物の形態の成分;
任意に、尿素の形態の成分;
任意に、より反応性の高い又は非反応性のシリコーンの形態の成分;
任意に、炭化水素油;
任意に1種以上の表面活性剤;
水;
からなる。
【0140】
成長基材は、好ましくは、硬化したバインダー組成物を、成長基材の重量基準で、1.0重量%~6.0重量%、好ましくは2.0重量~4.5重量%、最も好ましくは2.5重量%~3.5重量含む。バインダー含有量の測定は、DS/EN13820:2003に従って行われる。バインダー含有量は、強熱減量とされる。バインダーの中身には、あらゆるバインダー添加物が含まれる。
【0141】
水性バインダー組成物中の上記酸化リグニンは、以下のように調製することができる。
【0142】
酸化リグニンを調製する方法I
本発明で使用するバインダーの成分として使用できる酸化リグニンは、
1種以上のリグニンを含む成分(a)、
アンモニア、1種以上のアミン成分、及び/又はその塩を含む成分(b)、
1種以上の酸化剤を含有する成分(c)、
を接触させることを含む方法によって調製することができる。
【0143】
成分(a)
成分(a)は、1種以上のリグニンを含む。
【0144】
一実施形態では、成分(a)は、1種以上のクラフトリグニン、1種以上のソーダリグニン、1種以上のリグノスルホン酸塩リグニン、1種以上のオルガノソルブリグニン、リグノセルロース系原料のバイオリファイニングプロセスからのリグニン、又はそれらの任意の混合物を含む。
【0145】
一実施形態において、成分(a)は、1種以上のクラフトリグニンを含む。
【0146】
成分(b)
一実施形態において、成分(b)は、アンモニア、1種以上のアミノ成分、及び/又はその任意の塩を含む。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、リグニンを、従来から知られている酸化処理する場合に使用される水酸化アルカリを、アンモニア、1種以上のアミノ成分、及び/又はその任意の塩で置換することが、本発明の方法に従って調製される酸化リグニンの特性の改善に重要な役割を果たすと信じている。
【0147】
本発明者らは、驚くべきことに、アンモニア又はアミンの存在下で、酸化剤によって酸化されたリグニンが、酸化されたリグニンの構造の一部として、有意な量の窒素を含むことを見出した。特定の理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、酸化リグニンがバインダー組成物中に含まれる製品に使用される場合における、本明細書に記載の方法によって調製された前記酸化リグニンの耐火性特性が改善されるのは、少なくともその一部は、酸化リグニンの構造に含まれる窒素に起因するものであると信じている。
【0148】
一実施形態では、成分(b)は、アンモニア及び/又はその任意の塩を含む。
【0149】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、本発明に従って調製された誘導体化リグニンの安定特性が改善されるのは、アンモニアが揮発性化合物であり、最終製品から蒸発し、又は容易に除去され再利用されるという事実によるところが少なくとも一部あると信じている。それとは対照的に、従来知られている酸化工程で使用された水酸化アルカリの残留分を除去することは困難であることが判明している。
【0150】
それにもかかわらず、成分(b)に、アンモニア、1種以上のアミノ成分、並びに/又
はその任意の塩の他に、比較的少量のアルカリ及び/又は土類アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウムが含まれることは、本方法において有利となり得る。
【0151】
成分(b)が、アンモニア、1種以上のアミノ成分、並びに/又はその任意の塩に加えて、成分として、アルカリ及び/又は土類アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウムなど、を含む実施形態では、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の量は、通常、アンモニアに基づいて5~70重量部、例えば、10~20重量部のアルカリ及び/又は土類アルカリ金属水酸化物といった程度の量である。
【0152】
成分(c)
本明細書に記載の方法において、成分(c)は、1種以上の酸化剤を含む。
【0153】
一実施形態では、成分(c)は、過酸化水素、有機若しくは無機の過酸化物、分子状酸素、オゾン、空気、ハロゲン含有酸化剤、又はそれらの任意の混合物の形態の1種以上の酸化剤を含む。
【0154】
酸化の初期段階において、酸化剤からの活性ラジカルは、通常、フェノール基からプロトンを引き抜く。この結合がリグニンにおいて最も低い解離エネルギーを有するからである。リグニンはメソメリズムによってラジカルを安定化させ、反応を継続(終了もさせる)させるための経路を複数有するので、さまざまな中間生成物や最終生成物が得られる。平均分子量は、この複雑さ(及び選択された条件)により増加及び減少することができ、本発明者らの実験では、通常、約30%の、適度な平均分子量の増加が見られた。
【0155】
一実施形態では、成分(c)は、過酸化水素を含む。
【0156】
過酸化水素は、低価格で、良好な効率かつ比較的低レベルの環境への影響という点が重複することから、おそらく酸化剤の中で最も一般的に採用されているものである。過酸化水素を触媒なしで使用する場合、以下のようなラジカル形成につながる反応が起こるため、アルカリ条件と温度が重要となる。
【0157】
【化1】
【0158】
本発明者らは、本明細書に記載の方法で調製された誘導体化リグニンが、酸化プロセスの結果として、増加した量のカルボン酸基を含むことを見出した。特定の理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、本工程で調製される酸化リグニンのカルボン酸基含有量が、本明細書に記載の方法で調製される誘導体化リグニンの望ましい反応性特性において重要な役割を果たすと信じている。
【0159】
酸化プロセスの別の利点は、酸化リグニンがより親水性であることである。より高い親水性は、水への溶解性を高め、鉱物繊維のような極性基材への接着を促進できる。
【0160】
さらなる成分
一実施形態において、酸化リグニンを調製する方法では、好ましくは、さらなる成分、特に、酸化触媒、例えば1種以上の遷移金属触媒、例えば硫酸鉄、例えばマンガン、パラ
ジウム、セレン、タングステン含有触媒など、の形態の成分(d)が含有される。
【0161】
このような酸化触媒は、反応の速度を増加させ、それによって酸化リグニンの特性を向上させることができる。
【0162】
成分の質量比
当業者は、成分(a)、(b)及び(c)を、所望するリグニンの酸化程度が達成されるような、それぞれの相対量で使用することになる。
【0163】
一実施形態において、
成分(a)が、1種以上のリグニンを含み、
成分(b)がアンモニアを含み、
成分(c)が過酸化水素の形態の1種以上の酸化剤を含むが、
ここで、リグニン、アンモニア及び過酸化水素の質量比は、アンモニアの量が、リグニンの乾燥重量を基準にして、0.01~0.5重量部、例えば0.1~0.3、例えば0.15~0.25重量部のアンモニアであり、過酸化水素の量は、リグニンの乾燥重量を基準にして、0.025~1.0重量部、例えば0.05~0.2重量部、例えば0.075~0.125重量部の過酸化水素である。
【0164】
プロセス
成分(a)、(b)及び(c)を接触させて所望の酸化反応を行わせる可能性は1つ以上である。
【0165】
一実施形態において、本方法は、以下の工程:
成分(a)を1種以上のリグニンの水溶液及び/又は分散液の形態で提供する工程であって、水溶液のリグニン含有量は、水溶液の総重量を基準にして、1~50重量%、例えば5~25重量%、例えば15~22重量%、例えば18~20重量%であり;
アンモニア、1種以上のアミン成分、及び/又はその塩の水溶液を含む成分(b)を添加することによってpHを調整する工程;
酸化剤を含む成分(c)を添加する酸化工程;
を含む。
【0166】
一実施形態では、pH調整工程は、得られる水溶液及び/又は分散液のpHが、pH≧9、例えば≧10、例えば≧10.5となるように行われる。
【0167】
一実施形態では、pH調整工程は、得られる水溶液及び/又は分散液のpHが10.5~12の範囲内になるように行われる。
【0168】
一実施形態では、pH調整工程は、温度を≧25℃まで上昇させ、その後、25~50℃、例えば30~45℃、例えば35~40℃の範囲に制御するように行われる。
【0169】
一実施形態では、酸化工程の間、温度を≧35℃まで上昇させ、次いで35~150℃、例えば40~90℃、例えば45~80℃の範囲に制御する。
【0170】
一実施形態では、酸化工程は、1秒~48時間、例えば10秒~36時間、例えば1分~24時間、例えば2~5時間の時間にわたって実施される。
【0171】
酸化リグニンを調製するための方法II
本発明で使用されるバインダーの成分として使用される酸化リグニンは、
1種以上のリグニンを含む成分(a);
アンモニア並びに/又は1種以上のアミン成分、並びに/又はその塩、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウムなど、を含む成分(b);
1種以上の酸化剤を含む成分(c);
1種以上の可塑剤の形態の成分(d);
を接触させることを含む方法によって調製することができる。
【0172】
成分(a)
成分(a)は、1種以上のリグニンを含む。
【0173】
酸化リグニンを調製する方法の一実施形態において、成分(a)は、1種以上のクラフトリグニン、1種以上のソーダリグニン、1種以上のリグノスルホン酸塩リグニン、1種以上のオルガノソルブリグニン、リグノセルロース系供給原料のバイオリファイニングプロセスで得られたリグニン、又はそれらの任意の混合物を含む。
【0174】
一実施形態において、成分(a)は、1種以上のクラフトリグニンを含む。
【0175】
成分(b)
酸化リグニンを調製する一実施形態において、成分(b)は、アンモニア、1種以上のアミノ成分、並びに/又はその任意の塩、並びに/又はアルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウムなど、を含む。
【0176】
「アンモニア-酸化リグニン」は、アンモニアの存在下で酸化剤によって酸化されたリグニンとして理解される。用語「アンモニア-酸化リグニン」は、AOLと略称される。
【0177】
一実施形態において、成分(b)は、アンモニア及び/又はその任意の塩を含む。
【0178】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、アンモニア及び/又はその任意の塩である、成分(b)を使って本発明に従って調製された誘導体化リグニンが改善された安定性を有することは、アンモニアが揮発性化合物であるため、最終製品から蒸発又は容易に除去され再利用され得る、という事実によるところが少なくとも一部にはあると信じている。
【0179】
それにもかかわらず、酸化リグニンの調製方法のこの実施形態では、成分(b)が、アンモニア、1種以上のアミノ成分、及び/又はその任意の塩の他に、比較的に少量のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウム等を含むことが有利となり得る。
【0180】
成分(b)が、アンモニア、1種以上のアミノ成分、及び/又はそれらの任意の塩に加えて、成分として、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウム等を含む実施形態において、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の配合量は、通常アンモニアに基づいて、5~70重量部、例えば、10~20重量部などと少量である。
【0181】
成分(c)
酸化リグニンの調製方法において、成分(c)は、1種以上の酸化剤を含む。
【0182】
一実施形態では、成分(c)は、過酸化水素、有機若しくは無機の過酸化物、分子状酸素、オゾン、空気、ハロゲン含有酸化剤、又はそれらの任意の混合物の形態の1種以上の酸化剤を含む。
【0183】
酸化の初期段階において、酸化剤からの活性ラジカルは、その結合がリグニンにおいて最も低い解離エネルギーを有するため、通常、フェノール基からプロトンを引き抜く。リグニンはメソメリズムによってラジカルを安定化させることができるため、反応を継続(終了)させるための経路を複数有し、これにより様々な中間生成物や最終生成物が得られる。平均分子量は、この複雑さ(及び選択された条件)故に増加及び減少し、本発明者らの実験では、通常、約30%の平均分子量の妥当な増加が見られた。
【0184】
一実施形態では、成分(c)は、過酸化水素を含む。
【0185】
過酸化水素は、低価格で、良好な効率かつ比較的低レベルの環境への影響という点が重複することから、おそらく酸化剤の中で最も一般的に採用されているものである。過酸化水素を触媒なしで使用する場合、以下のようなラジカル形成につながる反応が起こるため、アルカリ条件と温度が重要となる。
【0186】
【化2】
【0187】
本発明者らは、本明細書に記載の方法で調製された誘導体化リグニンが、酸化プロセスの結果として、増量したカルボン酸基を含むことを見出した。特定の理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、本発明によるプロセスで調製された酸化リグニンのカルボン酸基含有量が、本明細書に記載の方法で調製された誘導体化リグニンの所望する反応性特性において重要な役割を果たすと考える。
【0188】
酸化プロセスの別の利点は、酸化されたリグニンがより親水性であることである。より高い親水性は、水への溶解性を高め、鉱物繊維のような極性基材への接着を促進できる。
【0189】
成分(d)
成分(d)は、1種以上の可塑剤を含む。
【0190】
一実施形態では、成分(d)は、以下の形態の1種以上の可塑剤:
ポリオール、例えば炭水化物、水素化糖、例えばソルビトール、エリスリトール、グリセロール、モノエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエーテル、フタル酸エステル並びに/又は酸、例えばアジピン酸、バニリン酸、乳酸及び/若しくはフェルラ酸、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン分散液、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ラクトン、ラクタム、ラクチド、フリーカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー及び/又はフリーカルボキシ基を有するポリウレタン分散液、ポリアミド、カルバミド/尿素などのアミド類、又はそれらの任意の混合物、の形態で含む。
【0191】
本発明者らは、1種以上の可塑剤の形態で成分(d)を含むことにより、反応混合物の粘度の低下がもたらされ、これにより、酸化リグニンを製造する非常に効率的な方法を可能にすることを見出した。
【0192】
本発明に係る一実施形態において、成分(d)は、1種以上の可塑剤:ポリオール、例えば炭水化物、水素化糖、例えばソルビトール、エリスリトール、グリセロール、モノエ
チレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、フリーカルボキシ基を有するアクリル系ポリマー及び/又はフリーカルボキシ基を有するポリウレタン分散液、ポリアミド、カルバミド/尿素などのアミド又はこれらの任意の混合物、の形態で含む。
【0193】
本発明による一実施形態では、成分(d)は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、尿素又はそれらの任意の混合物の群から選択される1種以上の可塑剤を含む。
【0194】
さらなる成分
一実施形態において、酸化リグニンを調製する方法は、好ましくは、さらなる成分、特に、酸化触媒、例えば1種以上の遷移金属触媒、例えば硫酸鉄、例えばマンガン、パラジウム、セレン、タングステン含有触媒など、の形態の成分(v)を含む。
【0195】
このような酸化触媒は、反応の速度を増加させ、それによって、本方法によって調製された酸化リグニンの特性を向上させることができる。
【0196】
成分の質量比
当業者は、成分(a)、(b)、(c)及び(d)を、所望するリグニンの酸化度を達成できるような各相対量でもって使用する。
【0197】
一実施形態において、本方法は、
成分(a)が、1種以上のリグニンを含み;
成分(b)がアンモニアを含み;
成分(c)が、過酸化水素の形態の1種以上の酸化剤を含み、
成分(d)が、ポリエチレングリコールの群から選択される1種以上の可塑剤;
を含むように行われることを含み、
ここで、リグニン、アンモニア、過酸化水素及びポリエチレングリコールの質量比は、リグニンの乾燥重量を基準にして、アンモニアの量が、リグニンの乾燥重量を基準にして、0.01~0.5重量部、例えば0.1~0.3、例えば0.15~0.25重量部(水中25重量%溶液)、及び過酸化水素の量(水中30重量%溶液)が、リグニンの乾燥重量を基準にして、0.025~1.0重量部、例えば0.07~0.50重量部、例えば0.15~0.30重量部の過酸化水素であり、ポリエチレングリコールの量は、リグニンの乾燥重量を基準にして、0.03~0.60重量部、例えば0.07~0.50重量部、例えば0.10~0.40重量部のポリエチレングリコールのようなものである。
【0198】
本発明の目的上、「リグニンの乾燥重量」は、好ましくは、供給された形態のリグニンの重量として定義される。
【0199】
プロセス
成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を接触させて所望の酸化反応を達成する可能性は1つより多い。
【0200】
一実施形態において、本方法は、
成分(a)を、1種以上のリグニンの水溶液及び/又は分散液の形態で提供する工程であって、前記水溶液のリグニン含量が、前記水溶液の総重量を基準にして、5~90重量%、例えば10~85重量%、例えば15~70重量%などであり;
成分(b)を添加してpHを調整する工程;
成分(d)を添加する工程;
酸化剤を含む成分(c)を添加する酸化工程;
を含む。
【0201】
一実施形態において、pH調整工程は、得られる水溶液及び/又は分散液のpHが、pH≧9、例えば≧10、例えば≧10.5となるように行われる。
【0202】
一実施形態では、pH調整工程は、得られる水溶液及び/又は分散液のpHが、9.5~12の範囲内になるように行われる。
【0203】
一実施形態では、pH調整工程では、温度を≧25℃まで上昇させ、その後、25~50℃、例えば30~45℃、例えば35~40℃の範囲に制御して実施される。
【0204】
一実施形態では、酸化工程間、温度を≧35℃まで上昇させ、次いで35~150℃、例えば40~90℃、例えば45~80℃の範囲に制御する。
【0205】
一実施形態では、酸化工程は、1秒~24時間、例えば1分~12時間、例えば10分から8時間、例えば5分~1時間にわたって実施される。
【0206】
本発明者らは、本明細書に記載のプロセスにより、高い乾物含量の反応混合物を製造することができ、したがって、酸化リグニンの形態の反応生成物を、鉱物繊維製品のような工業的大量生産製品の成分として使用できる、本発明に係るプロセスにおいて、高いスループットを達成できることを見いだした。
【0207】
一実施形態において、本方法は、反応混合物の乾物含量が20~80重量%、例えば40~70重量%となるように実施される。
【0208】
一実施形態では、本方法は、酸化リグニンの粘度が100cP~100,000cPの値、例えば500cP~50,000cPの値、例えば1,000cP~25,000cPの値をなるように実施される。
【0209】
本発明の目的上、粘度は動的粘度であり、液体/ペーストの形状の変化、又は隣接する部分との相対的な動きに対する抵抗として定義される。粘度は、1mPa・s(ミリパスカル・秒)に相当するセンチポイズ(cP)で測定される。粘度は、粘度計を用いて20℃で測定される。本発明の目的上、動的粘度は、コーンプレート型のウェルズブルックフィールド粘度計によって20℃で測定することができる。
【0210】
一実施形態において、本方法では、ローター/ステータ装置が含まれるように実施される。
【0211】
一実施形態において、本方法においては、本発明は連続又は半連続プロセスとして行われる。
【0212】
本方法を実施する装置
本発明は又、上記の方法を実施するための装置にも関する。
【0213】
一実施形態では、本方法を実行するための装置は、
ローター/ステータ装置;
成分(a)、(b)、(d)のための予備混合装置;
水用の1種以上の入口、成分(a)、(b)、(c)、及び(d);
酸化されたリグニン用の1種以上の出口;
を含む。
【0214】
一実施形態では、装置は、成分(a)、(b)及び(d)の予備混合のための入口がローター/ステータ装置の方向に向くように構成され、装置はさらにチャンバを備え;
成分(c)用の入口を有する前記チャンバ;
酸化リグニン用の出口を有する前記チャンバ;
を含む。
【0215】
ローター/ステータ装置は、ギアリングを備えるインナーコーンとして構成されたステータを含む材料を処理するための装置である。このステータは、ハブから突出したアームを有するローターと協働する。これらのアームはそれぞれ、ステータのギアリングの歯と噛み合う歯を有している。ローターが回転するたびに、処理対象物は1段分外側に運ばれ、激しい剪断を受け、混合、再分配される。直立型装置のローターアームと隣接する容器室により、内部から外部への材料の永久的な再配列が可能となり、これらによって、工業生産において重要な、集中混合、混練、繊維化、分解及び同様の処理に優れた実用性が発揮されるように、多重処理された乾燥物質及び/又は高粘性物質が提供される。ハウジングを直立配置することで、材料を周辺部から装置の中心部に向かって落下させやすくしている。
【0216】
一実施形態では、本発明に係る方法において使用されるローター/ステータ装置は、ギアリングを有するステータと、ステータの歯と噛み合う歯を有するローターとを含む。本実施形態では、ローター/ステータ装置は、以下の特徴:ローターのアーム間には、上方から入ってくる材料流を容器の中央領域に集中させるガイドファンネルが突出している。ガイドファンネルの外側には、材料フローを絞る環状の隙間が設けられている。ローターには、装置の作業領域に向かって送り出すフィードスクリューが設けられている。ガイドファンネルは、装置の作用領域において製品を保持し、フィードスクリューは、中央部において材料圧力を上昇させる。
【0217】
本方法の一実施形態で使用するローター/ステータ装置の詳細については、米国特許出願公開第2003/0042344(A1)号明細書を参照することができるが、これは参照により援用される。
【0218】
一実施形態では、本方法は、1つのローター/ステータ装置を使用するように実施される。この実施形態では、成分の混合及び成分の反応は、同じローター/ステータ装置で実施される。
【0219】
一実施形態では、本方法は、2つ以上のローター/ステータ装置を使用するように実施され、少なくとも1つのローター/ステータ装置が成分の混合に使用され、少なくとも1つのローター/ステータ装置が成分を反応させるために使用される。
【0220】
このプロセスは、2つの工程に分けることができる。
1.リグニン塊(a)+(b)+(d)の調製。
2.リグニン塊の酸化
【0221】
典型的には、2つの異なるタイプのローター/ステータ機械が使用される。
1.リグニン粉末を非常に高濃度(30~50重量%)で水中に混合するのに適しているオープンローター/ステータ機。高粘度材料に対応するため、特殊な補助装置(インレットファンネル、スクリューなど)を使用し、あまり集中的な混合を行わない。周速は低速(15m/sまで)。バッチ式、連続式として使用できる。
2.剪断力が非常に高く(周速55m/sまで)、非常に速い化学反応に対して好適な条件を作り出すインラインローター/ステータ機。この機械は連続的に使用される。
【0222】
オープンローター/ステータシステムでは、高濃度(45~50重量%)のリグニン/水の塊が調製される。リグニン粉末は、適量の水性アンモニア及び/又はアルカリ塩基を添加した温水(30~60℃)中にゆっくりと添加される。バッチ式で行うこともできるが、間欠的・連続的に添加し、次の工程へ連続的に流すこともできる。
【0223】
作成された塊は、粘度をできるだけ低く保ち、材料をポンプ搬送可能にするために、約60度の温度で維持するようにする。pH9~12のリグニン/水の高温塊は、次に、適当なポンプ、例えばスネークポンプ又は他の容積式ポンプを用いて、酸化工程へ移送される。
【0224】
一実施形態では、酸化は、閉鎖型ローター/ステータシステムにおいて、連続的なインライン反応にて行われる。アンモニア及び/又はアルカリ塩基の水溶液を、最高乱流/剪断を発生させるという観点から、ローター/ステータチャンバにドージングポンプを使って投入する。これにより、迅速な酸化反応が行われる。酸化された物質(AOL)はインラインリアクターから出て、適切なタンクに回収される。
【0225】
反応生成物
本発明者らは、驚くべきことに、調製された酸化リグニンが、非常に望ましい反応特性を有し、さらに、バインダー組成物中に含まれる製品中で使用された場合に、耐火性特性が改善され、従来既知の酸化リグニンよりも長期安定性が改善されることを見出した。
【0226】
また、酸化リグニンは、親水性を向上させる。
【0227】
調製された酸化リグニンの反応性に関する重要なパラメータは、酸化リグニンのカルボン酸基含有量である。
【0228】
一実施形態では、調製された酸化リグニンは、成分(a)の乾燥重量を基準にして、0.05~10mmol/gのカルボキシル酸基含量、例えば0.1~5mmol/g、例えば0.20~2.0mmol/g、例えば0.40~1.5mmol/g、例えば0.45~1.0mmol/gなど、を有す。
【0229】
カルボン酸基含有量を表す別の方法として、次式によるリグニン1高分子あたりの平均カルボン酸基含有量を用いることができる。
【0230】
平均COOH官能基量=(全COOHモル数)/(全リグニンモル数)
【0231】
一実施形態において、調製された酸化リグニンは、成分(a)の1高分子あたりの平均カルボン酸基含有量が、1.5基超、例えば2基超、例えば2.5基超などである。
【0232】
酸化リグニンを調製する方法III
本発明で用いられるバインダー用の成分として用いられる酸化リグニンは、
1種以上のリグニンを含む成分(a);
アンモニア並びに/又は1種以上のアミン成分、並びに/又はその塩、並びに/又はアルカリ及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/若しくは水酸化カリウム等、を含む成分(b);
1種以上の酸化剤を含む成分(c);
任意に、1種以上の可塑剤の形態の成分(d);
を接触させることを含む方法によって調製することができるが、ここで混合/酸化工程では、酸化された混合物が生成され、次いで酸化工程では、酸化された混合物が1秒~10時間、例えば10秒~6時間、例えば30秒~2時間の滞留時間でもって、反応し続けら
れるようにする。
【0233】
成分(a)、(b)、(c)及び(d)は、上記の酸化リグニンを調製するための方法IIで定義された通りである。
【0234】
一実施形態では、プロセスは、成分を互いに接触させる予備混合工程を含む。
【0235】
予備混合工程においては、以下の成分
成分(a)及び成分(b)、又は
成分(a)及び成分(b)及び成分(c)、又は
成分(a)及び成分(b)及び成分(d)、又は
成分(a)及び成分(b)及び成分(c)及び成分(d)、
を互いに接触させることができる。
【0236】
一実施形態において、予備混合工程が別の工程として行われ、そして予備混合工程に引き続いて混合/酸化工程が行われることが可能である。本発明のそのような実施形態では、成分(a)と成分(b)及び任意に成分(d)を、予備混合工程で互いに接触させることが特に有利となる。その後の混合/酸化工程において、成分(c)を、次に予備混合工程で生成した予備混合物に添加する。
【0237】
一実施形態においては、予備混合工程を混合/酸化工程に対応するものとしてもよい。本発明の本実施形態では、成分、例えば成分(a)、成分(b)及び成分(c)を混合すると同時に酸化工程を開始させる。その後の滞留は、混合/酸化工程を行うのに使用する装置と同じ装置中で行うことができる。本発明のこのような実施態様は、成分(c)が空気である場合に特に有利である。
【0238】
本発明者らは、混合/酸化工程の後に、好ましくは反応混合物を継続的に混合しないで酸化工程を行わせることにより、非常に効率的に酸化速度を制御できることを見出した。同時に、混合/酸化工程に続く酸化工程は、複雑な装置を必要としないので、この方法を実施する上でのコストが削減される。
【0239】
別の利点は、生成する酸化リグニンが、特に安定であることである。別の驚くべき利点は、生成する酸化リグニンが、粘度を非常に容易に調整することができることである。別の驚くべき利点として、酸化リグニンの濃度を非常に高くすることができる。
【0240】
一実施形態では、滞留時間は、酸化反応が所望する到達度、好ましくは完全到達するように選択される。
【0241】
方法IIIを実施するためのシステムI
一実施形態において、本方法を実施するシステムは、
少なくとも1つのローター/ステータ装置;
水と成分(a)及び(b)用の1つ以上の入口;
ローター/ステータ装置の1つ以上の出口;
少なくとも1つの反応装置、特に少なくとも1つの反応管であって、プロセス流れ方向の下流にある、少なくとも1つ以上の出口に配置されるもの;
を含む。
【0242】
一実施形態では、システムは、成分(c)及び/又は成分(d)用の1つ以上の入口を含む。
【0243】
一実施形態では、システムは、予備混合装置を含む。
【0244】
予備混合装置は、水及び/又は成分(a)及び/又は成分(b)及び/又は成分(c)及び/又は成分(d)用の1つ以上の入口を備え得る。
【0245】
本発明の一実施形態では、予備混合装置は、水と成分(a)と成分(b)用の入口を含む。
【0246】
予備混合工程において、成分(c)も上記3つの成分(水、成分(a)及び成分(b))と混合することが可能である。その場合、予備混合装置が、成分(c)用にさらなる入口を持つことが可能である。成分(c)が空気である場合、予備混合装置は開放型混合容器を具備することが可能であり、この場合、成分(c)は、容器の開口部を介して他の成分(水、成分(a)及び成分(b))と既に接触していることになる。又、本発明の本実施形態では、予備混合装置は任意に成分(d)用の入口を含み得る。
【0247】
一実施形態では、本システムは構成として、
成分(a)、(b)及び(d)用の入口は、予備混合装置、特に開放型ローター/ステータ装置の入口であり;
前記システムが、さらに、追加のローター/ステータ装置を含み;
前記追加のローター/ステータ装置は、成分(c)用の入口を持ち、前記追加のローター/ステータ装置は、酸化されたリグニン用の出口を持つ。
【0248】
予混合工程と混合/酸化工程とは同時に行うことが可能である。この場合、予備混合装置と混合/酸化装置は、単一の装置、すなわちローター/ステータ装置である。
【0249】
一実施形態では、本発明に係る方法において使用される1つのローター/ステータ装置は、ギアリングを有するステータと、ステータの歯と噛み合う歯を有するローターとを含む。本実施形態では、ローター/ステータ装置は、以下の特徴:ローターのアーム間には、上方から入ってくる材料流を容器の中央領域に集中させるガイドファンネルが突出している。ガイドファンネルの外面には、材料フローを絞る環状の隙間が設けられている。ローターには、装置の作業領域に向かって送り出すフィードスクリューが設けられている。ガイドファンネルは装置の作動領域で製品を保持し、フィードスクリューは中心部で材料圧を上昇させる、といった特徴を有する。
【0250】
方法IIIを実行するためのシステムII
一実施形態では、本方法を実行するためのシステムは、
水、成分(a)及び(b)用の1つ以上の入口;
1つ以上の出口を有する少なくとも1つの混合・酸化装置、及び
プロセス流れ方向の下流の、少なくとも1つ以上の出口に配置される少なくとも1つの混合器/熱交換器であり、この混合器/熱交換器は温度制御装置を含む、
を含む。
【0251】
一実施形態では、本システムは、成分(c)及び/又は成分(d)用の追加の1つ以上の入口を含む。
【0252】
一実施形態では、本システムは、予備混合装置を含む。
【0253】
予備混合装置は、水及び/又は成分(a)及び/又は成分(b)及び/又は成分(c)及び/又は成分(d)用の1つ以上の入口を含み得る。
【0254】
一実施形態では、予備混合装置は、水と成分(a)及び成分(b)用の入り口を含む。
【0255】
予備混合工程において、成分(c)を前述した3つの成分(水、成分(a)及び成分(b))とも混合することができる。そのとき、予備混合装置は、成分(c)用のさらなる入口を備え得る。成分(c)が空気である場合、予備混合装置は開放型混合容器でできていてよく、この場合、成分(c)は、容器の開口部を介して他の成分(水、成分(a)及び成分(b))と既に接触してることになる。又、本発明の本実施形態では、予混合装置は任意に成分(d)用の入口を含み得る。
【0256】
一実施形態では、本システムは、成分(a)、(b)及び(d)用の入口が、開放型ローター・ステータ装置の入口になるように構成されていて、
それによって、本システムはさらに、成分(c)用の入口及び酸化リグニン用の出口を有する、混合器/熱交換器を含む。
【0257】
予備混合工程と混合/酸化工程を同時に行うことは可能である。この場合、予備混合装置と混合/酸化装置は、単一の装置である。
【0258】
一実施形態では、本発明に係る方法で使用される1つのローター/ステータ装置は、ギアリングを有するステータと、ステータの歯と噛み合う歯を有するローターを含む。本実施形態では、ローター/ステータ装置は、以下の特徴:ローターのアーム間には、上方から入ってくる材料流を容器の中央領域に集中させるガイドファンネルが突出している。ガイドファンネルの外面には、材料フローを絞る環状の隙間が存在する。ローターには、装置の作業領域に向かって送り出すフィードスクリューが設けられている。ガイドファンネルは、装置の作動領域で製品を保持し、フィードスクリューにより、中央部において材料圧力が上昇する、を有する。
【0259】
もちろん、他の装置も予混合装置として使用することができる。さらに、予備混合工程を混合・酸化装置内で行うこともできる。
【0260】
一実施形態では、混合及び酸化装置は、スタティックミキサーである。スタティックミキサーは、可動部品を使用せずに、流体材料を連続的に混合するための装置である。スタティックミキサーの1つとして、プレート型ミキサーがあり、別の一般的な装置の種類には、円筒形(チューブ)又は四角いハウジングに含まれるミキサー要素からなるものがある。
【0261】
一実施形態では、混合器/熱交換器は、混合要素を有する多管式熱交換器として構成される。混合要素は、好ましくは、混合物がその中を流れるようにした固定設置物であり、それによって、混合は、流れることの結果としてなされる。混合器/熱交換器は、プラグフロー反応器として構築することができる。
【0262】
好ましくは、本発明に係る成長基材製品は、成長基材の全固形分重量に対して少なくとも90重量%の人造ガラス質繊維を含む。成長基材製品にそのような量の繊維が存在することの利点は、繊維の間に形成される十分な孔があって、成長基材製品が水及び栄養素を保持できて切削に好都合である一方で、植物の根が成長基材製品を透過できるよう維持できる点である。残りの固形分は、主にバインダーで構成されてもよい。
【0263】
成長基材製品は、コヒーレント塊の形態をとる。すなわち、成長基材は、一般に、人造ガラス質繊維からなるコヒーレントマトリックスであり(そのように製造されている)、岩綿のスラブを造粒し、その造粒物を固めることによっても形成することが可能である。コヒーレントな基材とは、単一かつ統合された基材である。
【0264】
本発明に係る成長基材製品は、任意に、湿潤剤を含んでいてもよい。
【0265】
湿潤剤とは、当該技術分野における通常使われているものであり、カチオン性、アニオン性又は非イオン性の界面活性剤であってもよい。
【0266】
成長基材製品は、Rewopal(登録商標)のような非イオン性湿潤剤を含んでいてもよい。
【0267】
成長基材製品は、イオン性界面活性剤、より好ましくはアルキルエーテル硫酸塩界面活性剤湿潤剤を含んでもよい。湿潤剤は、アルカリ金属アルキルエーテル硫酸塩又はアルキルエーテル硫酸アンモニウムであってもよい。好ましくは、湿潤剤は、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムである。アルキルエーテル硫酸塩界面活性剤の湿潤剤は、市販されている。湿潤剤は又、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩アニオン性界面活性剤であってもよい。
【0268】
非イオン性湿潤剤の中には、経時的にMMVF基材から洗い流されるものがある。したがって、イオン性湿潤剤、特に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩のようなアニオン性湿潤剤を使用することが好ましい。
【0269】
好ましくは、成長基材製品は、0.01~1重量%の湿潤剤、好ましくは0.05~0.5重量%の湿潤剤、より好ましくは0.1~0.3重量%の湿潤剤を含む。
【0270】
しかしながら、本発明者らは、本発明による成長基材製品に湿潤剤は必須ではないことを発見した。このことは、バインダー組成物の性質に起因すると考えられる。したがって、好ましくは、成長基材は、湿潤剤を含まない。これは、成長基材が好ましくは湿潤剤を含まない、すなわち湿潤剤が0重量%であることを意味する。
【0271】
これにはいくつかの利点がある。まず、成長基材製品中の添加物の数を減らすことができ、これは環境的に有利であり、またコストを削減することができる。多くの場合、湿潤剤は非再生可能な資源から作られるので、それらの使用を避けることは有益である。さらに、湿潤剤は成長基材製品から洗い流されることがある。これは、湿潤剤が水源を汚染する可能性があるため問題であり、環境規制に従って適切に廃棄する必要がある。又、湿潤剤が流出すると、成長基材製品の性質が変化するため、生育プロセスにばらつきが生じる可能性がある。又、湿潤剤は使用中に製品から泡が出るという欠点がある。湿潤剤を使用しないことで、これらの問題を回避することができる。
【0272】
MMVF基材サンプルの親水性は、サンプルの沈降時間を決定することによって測定することができる。沈降時間の測定には、100×100×65mmの寸法のMMVF基材が必要である。200×200×200mm以上の容器に水を入れる。沈降時間とは、試料が最初に水面に接触してから、完全に水没するまでの時間である。最初に、100×100mmの試料の断面を水面に接するように置く。その後、完全に水没するまでには65mm強の距離だけ沈降することが求められる。沈む速度が速いほど、親水性が高いということになる。MMVF基材は、沈降時間が120秒未満の場合は親水性であるとみなされる。好ましくは、沈降時間は60秒未満である。実際には、MMVF基材の沈降時間は、10秒未満など、数秒とすることができる。
【0273】
成長基材製品の親水性は、水との接触角の観点から定義することができる。好ましくは、成長基材製品のMMVFは、水との接触角が90°未満である。接触角は、液滴測定法により測定される。液滴法は任意の方法を用いることができ、例えば、接触角ゴニオメー
タを用いることができる。実際には、固体表面上に液滴を置き、液滴の画像を時間的に記録する。静的接触角は、液滴の周囲にヤング-ラプラス方程式を当てはめることで定義される。接触角は、計算された液滴形状関数と試料表面との間の角度で与えられ、液滴画像におけるその投影はベースラインと呼ばれる。平衡接触角は、Owens、Wendt、Rabel、Kaeble法を用いて表面自由エネルギーをさらに評価・算出するために使用される。当業者にとって、材料と水の接触角を計算する方法はよく知られている。
【0274】
本発明に係る方法において、成長基材製品は、40~100kg/m、好ましくは45~80kg/mの範囲の密度を有する。この密度範囲は、根の生育及び製品の取扱い上最適であり、この密度範囲にあることによって、根が浸透し、取扱い中に製品が損傷しないことが保証されることが分かった。
【0275】
本発明の方法において、好ましくは、成長基材製品は、0.003~87リットル、例えば0.005~30リットル、好ましくは0.008~20リットルの範囲の体積を有する。成長基材製品は、従来からプラグとして知られている製品の形態であってもよいし、従来からブロックとして知られている製品の形態であってもよいし、従来からスラブとして知られている製品の形態であってもよい。
【0276】
好ましくは、成長基材製品は、10mm~200mmの範囲内の高さを有する。
【0277】
成長基材製品は、一般にプラグとして知られている製品のような、従来の寸法を有していてもよい。寸法として、20~35mm、多くの場合25~28mmの高さ、及び15~25mm、多くの場合20mm前後の範囲の長さ及び幅であってよい。この場合、基材は実質的に円筒形であることが多く、円筒の端面が成長基材の上面及び下面を形成している。
【0278】
プラグ形態の成長基材製品の体積は、好ましくは150cm以下である。一般に、プラグ形態の成長基材製品の体積は、3~150cmの範囲であり、好ましくは100cm以下、より好ましくは80cm以下、特に好ましくは75cm以下、最も好ましくは70cm以下である。プラグの上面と下面との最短距離は、好ましくは60mm以下、より好ましくは50mm以下、特に好ましくは40mm以下である。
【0279】
プラグの別の実施形態は、高さが30~50mm、多くの場合40mm程度であり、長さと幅が20~40mmの範囲、多くの場合30mm程度である。この場合の成長基材は、多くの場合、立方体の形状である。最初のケースでは、成長基材の体積は、50cm以下の場合があり、好ましくは40cm以下である。
【0280】
成長基材は、当出版物、国際公開第2010/003677号明細書において第1のコヒーレントMMVF成長基材として記載されたタイプのプラグであってもよい。この場合、成長基材製品の体積は、最も好ましくは、10~40cmの範囲である。
【0281】
成長基材製品は、一般にブロックとして知られている製品のような、従来の寸法を有していてもよい。それは、5~20cm、多くの場合6~15cmの高さ、及び4~30cm、多くの場合10~20cmの範囲の長さと幅を有してもよい。この場合、基材は実質的に立方体であることが多い。ブロック形態の成長基材製品の体積は、好ましくは64~8000cmの範囲である。
【0282】
成長基材製品は、一般にスラブとして知られている製品のような、従来の寸法を有していてもよい。それは、5~15cm、多くの場合7.5~12.5cmの高さ、5~30cmの範囲の幅、多くの場合12~24cm、及び30~240cmの範囲の長さ、多く
の場合40~200cmとすることができる。この場合、基材は実質的に立方体であることが多い。スラブ形態の成長基材製品の体積は、好ましくは750~86,400cmの範囲である。
【0283】
成長基材製品は、3~300cmの範囲の体積を有していてもよい。4cm×4cm×4cmの寸法を有する立方体であってもよい。成長基材製品は又、円筒形であってもよい。好ましくは、それは、長さ50mm及び直径又は46mm、又は長さ40mm及び直径36mm、又は長さ27mm及び直径22mmを有する。
【0284】
一般に、成長基材製品は、円筒形、立方体状及び立方体を含む任意の適切な形状であってよい。通常、上面及び下面は実質的に平面である。
【0285】
本発明において、「高さ」という用語は、基材が使用されているときの底面から上面までの距離を意味する。上面とは、製品を使用することを意図して配置したときに上方を向く面であり、下面とは、製品を使用することを意図して配置したときに下方を向く面(及び製品が載っている面)である。「長さ」とは、2つの側面間の最長距離、すなわち、基材を使用しているときの一端から他端までの距離を意味する。「幅」という用語は、長さに垂直な2つの辺の間の距離を意味する。これらの用語は、当技術分野における通常の意味を有する。
【0286】
本発明に係る成長基材製品は、種穴を有していてもよい。あるいは、種穴を有さなくてもよい。種穴という用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、プラントホール又は空洞とも呼ぶことができる。種穴は、成長基材の上面にあるくぼみであり、その中に、種、苗、挿し木又は植物が置かれる。
【0287】
好ましくは、成長基材製品は、基材の少なくとも側面を囲む液体不透過性の被覆を含む。好ましくは、液体不透過性被覆はプラスチックである。成長基材製品は、基材全体を包む液体不透過性の被覆を含んでいてもよく、被覆は、ドレインホール用の少なくとも1つの開口部と、成長基材とさらなる成長基材との間を接触させ得る、上面上の少なくとも1つの開口部とを有する。
【0288】
種子、苗、挿し木及び植物という用語は、当該技術分野における通常の意味を有する。種子、苗、挿し木及び植物は、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、イチゴ、レタス、バラなどの多年生植物;ガーベラ又は薬用大麻のそれであってもよい。
【0289】
本発明の方法において、成長基材製品を灌水する。好ましくは、水と養分とで灌水する。これは、当業者に既知の方法のいずれかを用いて行うことができる。
【0290】
本発明において、種子、苗、挿し木又は植物を、成長基材製品と接触して配置する。これは、種子、苗、挿し木又は植物を、基材内に直接、例えば種穴に配置することができることを意味する。あるいは、例えば、さらなる成長基材から基材内で生育するように配置することができる。種子、苗、挿し木又は植物のあらゆる部分も、成長基材製品のどの部分と接触していてもよい。
【0291】
本発明は又、硬化したバインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含む、コヒーレント成長基材製品に関し、硬化前のバインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)。
を含む。
【0292】
コヒーレント成長基材製品は、上述の通りである。本実施形態は、本発明の方法について上述した好ましい特徴のいずれかを有することができる。
【0293】
本発明は又、2つ以上のコヒーレント成長基材製品のアレイに関し、前記コヒーレント成長基材製品は、硬化したバインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、硬化する前の前記バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)。
を含む。
【0294】
本実施形態において、1種以上のコヒーレント成長基材製品は、本発明の方法について上述した好ましい特徴のいずれかを有することができる。
【0295】
本発明に係るアレイにおいて、少なくとも2つのコヒーレント成長基材製品は同一であってもよい。例えば、互いの横に配置された2つの同一のコヒーレント成長基材製品であってもよい。あるいは、少なくとも2つの成長基材製品は同一でなくてもよい。
【0296】
好ましくは、アレイは、第2の成長基材製品と接触して位置決めされた1つの成長基材製品を含む。好ましくは、1つの成長基材は、例えば、プラグ/ブロック、ブロック/スラブ、ブロック/ブロック、プラグ/ブロック/スラブ又はプラグ/ブロック/ブロック配置で、第2の成長基材の上面に位置決めされる。プラグ/ブロック配置では、上記プラグとして説明した基材が、上記ブロックとして説明した基材と接触するように配置される。例えば、プラグは、ブロックの空洞に挿入されてもよい。ブロック/スラブ配置では、上記ブロックとして説明された基材を、上記スラブとして説明された基材と接触するように位置決めされる。例えば、ブロックは、スラブの上面上に配置される。ブロック、ブロック配置では、ブロックは、他のブロックと接触して位置決めされ、例えば、他のブロックの上面に位置決めされてもよい。プラグ、ブロック、スラブ配置では、プラグはブロックに接触して配置され、ブロックはスラブに接触して配置される。これは、プラグ/ブロック/ブロックの配置でも同様である。プラグは他のブロックと接触して配置され、そのブロックは次にブロックと接触して配置される。
【0297】
本発明は又、植物を生育させるためのコヒーレント成長基材製品の使用に関し、コヒーレント成長基材製品は、硬化した水性バインダー組成物と結合した人造ガラス質繊維(MMVF)を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物は、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)。
を含む。
【0298】
本発明の本実施形態は、本発明の方法について上述した追加の特徴のいずれかを有していてもよい。
【0299】
本発明は又、
(i)MMVFを提供する工程;
(ii)前記MMVFに水性バインダー組成物を噴霧する工程;
(iii)前記MMVFを回収し、固化させる工程;及び
(iv)前記水性バインダー組成物を硬化させる工程;
を含み、硬化前の前記水性バインダー組成物が、
1種以上の酸化リグニンの形態の成分(i);
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii);
1種以上の可塑剤の形態の成分(iii);
を含む、成長基材製品の製造方法に関する。
【0300】
本発明のこの実施形態は、本発明の方法又は本発明の成長基材について上述した追加の特徴のいずれかを有することができる。
【0301】
人造ガラス質繊維は、鉱物溶融物から製造することができる。鉱物溶融物は、まず鉱物材料が提供され、炉でそれらを溶融することによって得られる、従来の方法で提供される。この炉は、MMVF用の鉱物溶融液を製造する、既知のタイプの炉のいずれでもよく、例えば、キュポラ炉、タンク炉、又はサイクロン炉などのシャフト炉である。
【0302】
繊維化によって鉱物溶融物からMMVFを形成するのに、任意の適切な方法を採用することができる。繊維化は、回転するカップ(スピニングカップ、内部遠心分離としても知られている)の壁のオリフィスを通して溶融物を遠心的に押し出す、スピニングカッププロセスにより行うことができる。あるいは、繊維化は、溶融物を1つの繊維化ローターの外面に投射して回転させる遠心繊維化、又は略水平な軸を中心に回転する複数の繊維化ローターのカスケード(カスケードスピナー)により行うこともできる。
【0303】
このようにして、溶融物は、空気中に巻き込まれ、繊維雲状に形成され、コンベア上にウェブとして集められ、繊維化装置から運び出される。次いで、繊維ウェブを、交差ラッピング及び/又は縦圧縮及び/又は垂直圧縮及び/又はマンドレルに巻付けにより固めて、パイプ断熱材用の円筒形製品を製造する。他の固化工程も実施することができる。
【0304】
バインダー組成物は、好ましくは、繊維が空気中に巻き込まれて雲状になるような場合に、繊維に適用される。あるいは、コンベア上で収集した後に塗布することもできるが、これはあまり好ましくない。
【0305】
固化した後で、繊維同士が固化したウェブは、バインダーを硬化させるために硬化装置に通される。
【0306】
一実施形態では、硬化は、100~300℃、例えば170~270℃、例えば180~250℃、例えば190~230℃の温度で行われる。
【0307】
好ましい実施形態において、硬化は、好ましくは150~300℃、例えば170~270℃、例えば180~250℃、例えば190~230℃の温度で作動する、岩綿製造用の従来の硬化オーブンで行われる。
【0308】
一実施形態では、硬化は、30秒~20分、例えば1~15分、例えば2~10分の時間行われる。
【0309】
典型的な実施形態では、硬化は、150~250℃の温度で、30秒~20分行われる。
【0310】
硬化プロセスは、バインダーを繊維に適用した直後に開始してもよい。硬化は、バインダー組成物が物理的及び/又は化学的反応を受けるプロセスとして定義され、化学反応の場合、通常はバインダー組成物中の化合物の分子量を増加させ、それによってバインダー組成物の粘度を増加させ、通常はバインダー組成物が固体状態に到達するまで行われる。硬化したバインダー組成物は、繊維を結合して、繊維同士が凝集した構造のマトリックス
を形成する。
【0311】
一実施形態では、鉱物繊維と接触しているバインダーの硬化は、熱プレスで行われる。
【0312】
熱プレス時に、鉱物繊維と接触したバインダーを硬化させることは、高密度製品の製造が可能になるという特別な利点を有する。
【0313】
一実施形態では、硬化工程は、圧力による乾燥することを含む。圧力は、鉱物繊維とバインダーの混合物を通して/その上に空気又はガスを吹き付けることによって適用することができる。
【実施例
【0314】
実施例1-植物毒性
本発明に係るバインダーの植物毒性を、PUFバインダーと比較した。各バインダーを栄養溶液で様々な濃度に希釈した。そして、これらの溶液を用いて、キュウリの植物を栽培した。その結果を以下の表1に示す。
【0315】
本試験では、キュウリ苗の最初の2枚の葉の長さを測定した。この一対の葉の長さを子葉長と呼ぶ。バインダーを添加していないものを基準として測定し、100%とした。バインダーを添加することで植物の成長が抑制されれば、一対の葉の長さは短くなり、その減少分を算出する(成長抑制欄を参照)。
【0316】
本発明のバインダーは以下のように製造した:
AOL(アンモニア-酸化リグニン):1000kg(リグニン UPM BioPiva 100 284kg、H(35%)57kg、NHOH(24.7%)53kg、水506kg)。
可塑剤(PEG200):44kg
架橋剤(Primid XL552-EMS-Chemie AGにより供給されるβ-ヒドロキシアルキルアミド(HAA)架橋剤):22kg
PUFバインダーは次のように製造した。
フェノール尿素ホルムアルデヒド樹脂:329リットル
水:1337リットル
アンモニア水:13リットル
硫酸アンモニウム:30.5リットル
モメンティブ社製のアミノシラン VS-142:1.6リットル
Primid XL552の構造は次のとおり。
【0317】
【化3】
【0318】
【表1】
【0319】
結果から、使用したすべての希釈液のpHは、試験した両方のバインダータイプについて同様であるため、pHの影響はなかったことがわかる。したがって、結果を直接比較することができる。
【0320】
植物毒性に関して、本発明の全ての試験した希釈液での成長は、PUFバインダーの場合よりも良好であった。
【0321】
数値が高いほど、成長阻害が大きい。例えばPUFを4%添加した場合、成長阻害は100%であり、植物は発芽しなかった。新しいバインダー4%では、成長阻害は31.7%であり、これは、葉の対の長さが基準植物の葉の長さの68.3%であることを意味するので、PUFと比較して大きな改善である。
【0322】
高濃度での植物毒性は、本発明のバインダーでは低い。6%及び4%希釈の両方において、成長が観察された。しかし、PUFバインダーは、これらの希釈に対して全く成長を示さない。
【0323】
より低い濃度では、本発明のバインダーは、PUFバインダーと比較してわずかに良好に機能する。
【0324】
実施例2-圧縮強度
6種類の異なる基材を用意し、圧縮強度を分析した。
【0325】
製品1:本発明に係る、ホルムアルデヒドを含まないバインダー2.1重量%;密度76kg/m;湿潤剤(Texapon(登録商標))3.5リットル/トン(0.15重量%)を含むMMVF成長基材。この製品のバインダーは、上記の実施例1において記載したように製造した。
【0326】
製品2:本発明に係る、ホルムアルデヒドを含まないバインダー2.1重量%;密度76kg/m;湿潤剤なし、を含むMMVF成長基材。この製品中のバインダーは、上記の製品1において記載したものと同じである。
【0327】
比較製品1:2.6重量%のPUFバインダー;密度77kg/m;湿潤剤(線状アルキルスルホネート)5.7リットル/トンを含むMMVF成長基材。この製品のバインダーは、上記の実施例1に記載したように製造した。
【0328】
比較製品2:2.6重量%のPUFバインダー;密度77kg/m;3.5リットル/トンの湿潤剤(Texapon(登録商標))を含むMMVF成長基材。この製品のバインダーは、上記比較製品1について記載したものと同じである。
【0329】
比較製品3:ホルムアルデヒドを含まないバインダー2.8重量%;密度78kg/m;湿潤剤(直鎖アルキルスルホネート)6.7リットル/トンを含むMMVF成長基材。この製品のバインダーは、以下のものを一緒に反応させることによって作製した。
【0330】
185kg AAA樹脂:239kgのデキストロース:575kgの水:1.1kgのシラン。
【0331】
AAA樹脂は以下のように製造した。
ジエタノールアミン(DEA)90kgを400I反応器に装入し、60℃に加熱する。次いで、75kgのテトラヒドロフタル酸無水物(THPA)を添加する。昇温し、130℃で1時間保持した後、無水トリメリット酸(TMA)50kgを添加する。反応混合物を95℃に冷却し、水を加え、1時間攪拌する。
【0332】
比較製品4:ホルムアルデヒドを含まないバインダー2.8重量%;密度78kg/m;湿潤剤(Texapon(登録商標))3.5リットル/トン、を含むMMVF成長基材。この製品のバインダーは、上記の比較製品3と同じである。
【0333】
その結果を図1A図1Eに示す。圧縮は、断熱材に関する規格EN826(1996年)に従って、湿式、乾式ともに測定したが、以下のような違いがある。
EN826では、初期変形Xと限界圧縮強度σ、σは計算されていない。
断熱材のEN規格では、試験片は(23±5)℃で保管・測定されなければならない。なお、紛争が生じた場合は、岩綿には影響がないと考えられるので、(23±2)℃及び(50±5)%R.H.で保管及び測定を行うものとする。
【0334】
本発明の製品1及び2に使用したバインダー量は、比較製品1~4に使用した量より著しく少ないが、にもかかわらず、PUFバインダー及び別のホルムアルデヒドを含まない
バインダーと比較した場合、同等の圧縮結果が見られる。したがって、より少ない量の本発明のバインダーを使用することで、同等の圧縮強度が達成される。本発明のバインダー量を2.8重量%に増やすと、圧縮強度が向上することが予想される。しかし、より少ない量で同等の圧縮結果が得られることで、製品中のバインダーの総量を減らすことができるという利点もある。
【0335】
実施例3-水分保持力
上記実施例2において定義した6つの製品について、保水性を試験した:製品1、製品2、比較製品1、比較製品2、比較製品3、及び比較製品4。
【0336】
保水性は、以下の試験方法に従って測定した。
【0337】
定義
含水率、WC:水の含有量(単位:体積%)。
(初期)飽和度、WC-1/2h:完全に飽和させた試験片を「半分厚みの水柱」と同じ圧力下で2時間リークさせた後の水の含有量(体積%)である。
【0338】
WC-10:10cmの水柱と同じ圧力下で、完全に飽和させた試験片が安定になった時の水の含有量(体積%)。
【0339】
再飽和:50体積%の試験片を0.5cmの水中で24時間再飽和させた時の含水率(体積%)である。
【0340】
水柱:試験片又はブロックの厚みの半分から始まる水柱の高さ。
【0341】
装置
pF-判定用砂型(pFの範囲0~2.0(0~100cm)、精度:ゼロ設定2mm/平坦度6mm/目盛1mm)。
使用する砂の種類は、一般的にサンドブラスト品質(FEPAグレードF100)である。
デジタル高度計(高さ)(精度0.1mm、範囲0~200mm)
天秤(精度A:0.5~600g±0.01g、B:600~3000g±0.01g)
バンドソー
25リットル以上のバケツ
プラスチック容器
水切り格子
ウェット鉱物綿柱 高さ1000mm、幅200mm
【0342】
方法
水没直後の重量(mwet)、高さ(hwet)を測定する。
【0343】
圧0(レベルコントローラー 100)下の砂場上に、ユーザー方向に試料を置く。水柱の水位は、砂の表面と同じ高さにする。2時間後の試料の重量を測定する。
【0344】
試料を砂場上でユーザー方向に戻し、10cmの水柱と同じ圧を24±2時間かける。圧力のかけ方は3段階(ほぼ同じ)に分けて行い、各段階の後に5分間の安定時間を設ける。レベルコントローラーの高さは、サンプルの高さに依存する。
【0345】
結果を図2に示す。
【0346】
製品1と製品2の結果は同等であり、したがって、湿潤剤の添加は保水性に大きな影響を及ぼさないようである。
【0347】
WC-10まで、本発明に係る製品1及び製品2の両方は、PUF含有製品(比較製品1及び2)と比較して、有意により濡れている。
【0348】
製品1及び製品2の水特性は、比較製品3及び4の、他のホルムアルデヒドを含まないバインダーと同等である。
【0349】
試験したすべての製品の再飽和度は、ほぼ等しい。
【0350】
したがって、本発明の製品は、PUFバインダーと比較して、保水性が改善され、別のホルムアルデヒドを含まないバインダーと比較して同等の保水性を示す。
【0351】
実施例4-高さ方向の水の分布
実施例1の下で上記定義された6つの製品を、高さ方向の水の分布について試験した。その結果を図3に示す。水分布は、以下の方法に従って測定した。
【0352】
水道水(20℃±1℃)の入った容器に試料を沈める。その後、鉱物綿柱と天秤を用いて、サンプルの含水率が50%(v/V)になるようにする。50%(v/v)の重量は、試料の体積をもとに、湿潤サンプルの重量と高さを用いて算出する。
【0353】
水分センサーとハンドリーダーを使用して、サンプルの高さ方向で1.5cmごとに水分を測定する。
【0354】
図から分かるように、本発明の製品の高さ方向の水分分布は、PUFバインダー又は別のホルムアルデヒドを含まないバインダーを用いた製品と同等であった。
【0355】
実施例5
本発明の成長基材に使用されるようなバインダーを以下のように調製した。
3267kgの水を6000lの反応器に投入し、次いで287kgのアンモニア水(24.7%)を投入する。次に、1531kgのリグニンUPM BioPiva 100を30分から45分かけてゆっくりと添加する。この混合物を40℃に加熱し、その温度で1時間保持する。1時間後、不溶化したリグニンを確認する。ガラス板又はヘグマンゲージに溶液を載せて確認する。不溶化したリグニンは、茶色のバインダーの中、小粒子に見える。溶解工程では、リグニン溶液は褐色から光沢のある黒色に変化する。
【0356】
リグニンが完全に溶解した後、1リットルの泡消火剤(NCÅ-Verodan社製のSkumdaemper 11-10)を加える。バッチの温度は40℃に維持する。
【0357】
次に、307.5kgの35%過酸化水素を添加し始める。過酸化水素は200~300リットル/時間の割合で投入される。過酸化水素の最初の半分は200リットル/時間の速度で添加し、その後、投与速度を300リットル/時間に上げる。
【0358】
過酸化水素の添加の間、反応混合物中の温度は、最終反応温度が65℃に達するように加熱又は冷却することによって制御する。
【0359】
65℃で15分間反応させた後、反応混合物を50℃以下に冷却する。これにより、COOH価 1.2mmol/(g固形分)の樹脂が得られる。
【0360】
上記のAOL樹脂から、270kgのポリエチレングリコール200と433kgのPrimid XL-552の31%水溶液を添加してバインダーを調合した。
【0361】
最終バインダーは、以下の分析データを示した。
固形分含有量:18.9%;pH:9.7;粘度:25.5mPas.s;密度:1.066kg/l
【0362】
リグニン酸化例
実施例I
実施例IA-過酸化水素によるアンモニア水溶液中のリグニン酸化
実施例IAに従って使用される成分の量は、表IA 1.1及びIA 1.2に示す。
クラフトリグニンは比較的高いpHで水に可溶であるが、ある重量パーセントで溶液粘度が著しく上昇することが知られている。この粘度上昇の理由は、一般に、リグニン中に存在する多数の芳香環の強い水素結合とπ電子の相互作用の組み合わせにあると考えられている。クラフトリグニンでは水中21~22重量%付近で急激な粘度上昇が認められ、本例では19重量%のクラフトリグニンを使用した。
【0363】
pH調整工程では、塩基としてアンモニア水溶液を使用した。その量は、反応総重量に基づいて4重量%に固定した。pH調整工程の後、酸化開始時のpHは10.7であった。
【0364】
表IA2に、クラフトリグニンの酸化前後におけるCHNS元素分析の結果を示す。分析前に、吸着したアンモニアを除去するために160℃で熱処理を行った。分析の結果、酸化の過程で一定量の窒素が酸化リグニンの構造の一部となったことが確認された。
【0365】
バッチ実験での試験中に、過酸化水素を長時間にわたって少しずつ添加するのとは異なり、短い時間間隔で全量を添加することが、酸化に有益であることが判明した。本実施例では、反応総重量に基づいて2.0重量%のHが使用された。
【0366】
酸化は発熱反応であり、過酸化物の添加により温度上昇が認められる。本実施例では、3時間の反応の間、温度を60℃に保持した。
【0367】
酸化後、31P-NMR及び水溶液滴定によって決定した、試料1グラム当たりのリグニン官能基の量は増加した。31P-NMRのための試料は、リン酸化試薬として2-クロロ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサホスホラン(TMDP)、内部標準としてコレステロールを使用して調製した。酸化前後のクラフトリグニンのNMRスペクトルを得、その結果を表IA3にまとめた。
【0368】
COOH基の変化は、水溶液滴定と次式を用いて決定した。
【0369】
【数1】
【0370】
ここで、V2SとV1Sは試料の終点体積であり、V2bとV1bはブランクの体積で
ある。Cacidはこの場合0.1MのHClであり、mは試料の重量である。酸化前後の水溶液滴定で得られた値を表IA4に示す。
【0371】
平均COOH官能基は、1gのリグニンを鹸化するのに必要なKOHのmg数を表す鹸化価によって定量することも可能である。このような方法は、AOCS Official Method Cd 3-25に見出すことができる。
【0372】
平均分子量も、PSS PolarSilカラム(9:1(v/v)ジメチルスルホキシド/水溶媒、0.05M LiBr)と280nmの紫外線検出器を使って、酸化前と酸化後のものを測定した。COOH濃度と平均分子量の組み合わせにより、リグニン高分子あたりの平均カルボン酸基含有量を算出することもでき、この結果を表IA5に示す。
【0373】
実施例IB-過酸化水素によるアンモニア中でのリグニン酸化をパイロットスケールにアップスケールした場合
過酸化水素によるリグニン酸化は発熱プロセスであり、ラボスケールでも過酸化物の添加に伴い著しい温度上昇が見られた。これは、化学プロセスのスケールアップでは当然の懸念事項である。というのも、発熱量は3乗(体積)に関係する一方で、冷却の方は通常2乗(面積)でしか増加しないためである。さらに、接着剤中間体の粘度が高いため、プロセス機器は慎重に選択・設計する必要がある。このように、スケールアップは慎重になされ、いくつかの工程で実行された。
【0374】
最初のスケールアップ工程は、非常に効率的に機械的混合が行える、ステンレス鋼製の専用ミキサーを使用して、1L(ラボスケール)から9Lまで行われた。スケールアップの結果、ラボスケールの場合よりわずかに高い最終温度となったが、これは反応器の効率的な空冷と過酸化水素をゆっくりと添加したことに起因するものであった。
【0375】
次のスケールアップ工程では、高効率な水ジャケットと高効率なプロペラ攪拌機を備えた200Lの密閉型反応器で行った。この時のスケールは180Lで、過酸化水素は約30分の間隔で、2段階で添加した。このアップスケールは比較的うまくいったが、反応器への充填量が多かったこともあり、かなり発泡することが問題となった。発泡を制御するために、少量の食品用消泡剤を発泡中に噴霧した。最も重要なことは、温度制御が可能であり、外部水冷を使用して70℃以下の最終温度を得ることができたことである。
【0376】
パイロットスケール反応は、水冷ジャケット及びツインブレードプロペラ攪拌を有する800L反応器中で実施した。乾燥物含有率67重量%のリグニン(UPM LignoBoost TM BioPiva 100)158kgを、224kgの水に脱塊して懸濁し、撹拌して均質な懸濁液を形成した。攪拌を続けながら、103kgの25%アンモニア水溶液を反応器に投入した、さらに2時間攪拌して濃色のリグニン粘性溶液を得た。
【0377】
攪拌後のリグニン溶液に、20~25℃の7.5重量%過酸化水素140kgを15分かけて添加した。過酸化水素の添加中及び添加後の温度と泡レベルを注意深く監視し、許容できる泡レベル及び毎分4℃未満の温度上昇並びに70℃未満の最終温度を維持するために、冷却ジャケットに冷却水を添加した。温度上昇が止まった後、冷却を止め、製品混合物をさらに2時間撹拌した後、輸送容器に移し替えた。
【0378】
スケールアップを実施した結果、反応が発熱性であるにもかかわらず、大部分の反応熱は、水の持つ熱容量によって実際に吸収され(水温を室温から約60℃に上昇させるだけの熱容量)、最後の部分のみが冷却によって除去されなければならないと結論づけることができる。このことと、反応時間が短いことから、当プロセスは、インラインミキサー、
チューブラーリアクター、CSTRタイプのリアクターなどの連続反応器を用いた、スケールアップやプロセス強化に理想的であることに留意すべきである。これにより、良好な温度制御が可能な、より明確に定義された反応プロセスを確保することができる。
【0379】
スケールアップのバッチ試験により、製造された酸化リグニンが、実験室のバッチ方式で製造されたものに準じた特性を有することが示された。
【0380】
【表2】
【0381】
【表3】
【0382】
【表4】
【0383】
【表5】
【0384】
【表6】
【0385】
【表7】
【0386】
実施例II
以下の実施例において、いくつかの酸化リグニンを調製した。酸化リグニンについて、以下の特性を決定した。
成分固形分:
所定の酸化リグニン溶液中の各成分の含有量は、成分の無水質量に基づくか、又は以下に記載される通りである。
【0387】
クラフトリグニンは、乾燥粉末としてBioPiva100TMとしてUPM社から供給された。NHOH 25%はSigma-Aldrichから供給され、供給された形態のまま使用した。H、30%(Cas no 7722-84-1)は、Sigma-Aldrichから供給され、供給された形態のまま又は水で希釈した使用した。PEG 200はSigma-Aldrichから供給され、便宜上無水と仮定して使用した。PVA(Mw 89,000~98,000、Mw 85,000~124,000、Mw 130,000、Mw 146,000~186,000)(Cas no
9002-89-5)は、Sigma-Aldrichから供給され、便宜上無水と仮定して使用した。尿素(Cas no 57-13-6)は、Sigma-Aldrichから供給され、供給形態のまま、又は水で希釈して使用した。グリセロール(Cas no 56-81-5)は、Sigma-Aldrichから供給され、便宜上無水と仮定して使用した。
【0388】
酸化リグニン固形分
200℃で1時間加熱した後の酸化リグニンの含有量を「乾燥固形分」と呼び、加熱後の残存重量%で記載する。
【0389】
鉱物綿から、円盤状の鉱物綿サンプル(直径:5cm、高さ1cm)を切り出し、580℃で少なくとも30分以上熱処理して、有機物を除去した。バインダー混合物の固形分は、バインダー混合物のサンプル(約2g)を錫箔容器内の熱処理した鉱物綿ディスク上に分配することによって測定された。鉱物綿ディスクを入れた錫箔容器の重量を、バインダー混合物の添加前と添加後に直接計量した。このような錫箔容器に入ったバインダー混合物担持鉱物綿ディスクを2枚製造し、それらを200℃で1時間加熱処理した。冷却後、室温で10分間保管した後、サンプルを秤量し、2つの乾燥固形分の結果からその平均値を計算した。
【0390】
COOH基含有量
又、COOH基含有量の変化は、水溶液滴定と次式を使って求めた。
【0391】
【数2】
【0392】
ここで、V2SとV1S は試料の終点体積、V2bとV1bはブランク試料の体積である。Cacidはこの場合0.1M HCl、ms,gは試料の重量である。
【0393】
酸化リグニンの製造方法
1)水とリグニンを3つ首付きガラス製フラスコに入れ、コンデンサーと温度記録装置を接続した水浴中で、攪拌しながら室温(20~25℃)で混合した。1時間攪拌した。2)撹拌中にアンモニアを1回分添加した。
3)アンモニアとの微発熱反応故に温度が上昇しない場合は、加熱により35℃まで昇温させた。
4)pHを測定した。
5)可塑剤PEG200を添加し、10分間攪拌した。
6)約1時間後にリグニンが完全に溶解した後、30%Hをゆっくりと1回で添加した。
7)Hの添加による発熱反応により、ガラス底フラスコ内の温度が上昇した。反応温度が60℃より低い場合は、60℃まで温度を上げ、60℃で1時間静置した。
8)その後、丸底フラスコを水浴から取り出し、室温まで冷却した。
9)試料を取り出して、乾燥固形分、COOH、粘度、密度及びpHを測定した。
【0394】
酸化リグニン組成物
以下、酸化リグニン実施例の項目番号は、表IIで使用する項目番号に対応する。
【0395】
実施例IIA
71.0gのリグニンUPM Biopiva 100を、20℃で149.0gの水に溶解し、13.3gの25%NHOHを加え、マグネティックスターラーにより1時間撹拌し、その後16.8gのH(30%)を撹拌中にゆっくりと加えた。ウォーターバスで60℃まで昇温した。1時間の酸化の後、水浴を冷却し、反応を停止させた。
得られた材料について、COOH、乾燥固形物、pH、粘度及び密度を分析した。
【0396】
実施例IIE
71.0gのリグニンUPM Biopiva 100を20℃で88.8gの水に溶解し、13.3gの25%NHOHを加え、マグネティックスターラーで1時間攪拌した。PEG 200、22.8gを加え、10分間撹拌した後、16.7gのH(30%)を撹拌しながらゆっくりと加えた。ウォーターバスで60℃まで昇温した。1時間の酸化の後、水浴を冷却し、反応を停止された。得られた材料の、COOH、乾燥固形物、pH、粘度及び密度を分析した。
【0397】
実施例IIC
71.0gのリグニンUPM Biopiva 100を20℃で57.1gの水に溶解し、13.3gの25%NHOHを加え、メカニカルスターラーにより1時間撹拌し、その後16.6gのH(30%)を撹拌中にゆっくりと加えた。ウォーターバスで60℃まで昇温した。1時間の酸化の後、水浴を冷却し、反応を停止させた。得られた材料について、COOH、乾燥固形物、pH、粘度及び密度を分析した。
【0398】
実施例IIF
71.0gのリグニンUPM Biopiva 100を20℃で57.1gの水に溶解し、13.3gの25%NHOHを加え、メカニカルスターラーで1時間攪拌した。PEG 200、19.0gを加え、10分間撹拌した後、16.6gのH(30%)を撹拌しながらゆっくりと添加した。ウォーターバスで60℃まで昇温した。1時間の酸化の後、水浴を冷却し、反応を停止させた。得られた材料について、COOH、乾燥固形物、pH、粘度及び密度を分析した。
【0399】
【表8】
【0400】
実施例III
8.5lの熱水(50℃)及び1.9lのNHOH(24.7%)を混合し、ここで9.0kgリグニン(UPM biopiva 100)を高撹拌(660rpm、44Hz)で10分間かけてゆっくりと加えた後、9.0kgリグニンを加えた。
【0401】
高い剪断力によって温度が上昇した。30分後、4lの熱水を加え、材料をさらに15
分間撹拌した後、熱水の残り部分(5l)を加えた。ヘグマンスケールを用いた未溶解リグニンの分析及びpH測定のために試料を取り出した。
【0402】
この事前混合物を次にローター/ステータ装置と反応装置に移し、そこでH(17.5体積%)を用いて酸化を行った。この場合に使用する反応装置は、少なくとも部分的に反応管及び反応容器を有する。事前混合物の用量は150l/hであり、Hは18l/hで投入した。
【0403】
本実施例では、混合/酸化工程を実施するために、Cavitron CD1000ローター/ステータ装置を使用した。ローター/ステータ装置は、250Hz(周速55m/s)で運転し、カウンター圧は2barであった。反応管内の滞留時間は3.2分、反応容器内の滞留時間は2時間であった。
【0404】
事前混合物の温度は62℃、酸化工程では70℃に上昇した。
【0405】
最終生成物について、COOH基含有量、乾燥固形物、pH、粘度、及び残存Hを分析した。
【0406】
【表9】
【0407】
実施例IV
484lの熱水(70℃)及び47.0lのNHOH(24.7%)を混合し、そこに224.0kgのリグニン(UPM biopiva 100)を高撹拌で15分かけてゆっくりと添加した後、224.0kgのリグニンを添加した。未溶解リグニンのヘグマンスケール分析とpH測定のために、サンプルを取り出した。
【0408】
この予備混合物を、次にスタティックミキサー及びミキサー/熱交換器に移し、そこでH(35体積%)を用いて酸化を行った。プレミックスの投与量は600l/hであり、Hは17.2l/hで投与した。ミキサー/熱交換器での滞留時間は20分であった。
【0409】
混合物の温度は、酸化工程の間、95℃まで上昇した。
【0410】
最終生成物について、COOH基含有量、乾燥固形物、pH、粘度及び残存Hを分析した。
【0411】
このAOLを基にしてバインダーを製造した。49.3gのAOL(19.0%固形分)、0.8gのprimid XL552(100%固形分)及び2.4gのPEG200(100%固形分)を0.8gの水と混合して19%固形分を得;そしてバー試験における機械特性試験に使用した。
【0412】
バー試験
バインダーの機械強度は、バー試験により求めた。各バインダーについて、バインダー
と鉱物綿紡績製造時の鉱物綿ショットの混合物から16本のバーを製造した。
【0413】
15%の乾燥固形物を有するこのバインダー溶液のサンプル(16.0g)をショット(80.0g)とよく混合した。次に、得られた混合物を、小さなバーを作るための、耐熱性シリコーンフォームの4つのスロットに充填した(フォームあたり4×5スロット;スロット上部寸法:長さ=5.6cm、幅=2.5cm;スロット下部寸法:長さ=5.3cm、幅=2.2cm;スロット高さ=1.1cm)。次に、スロットに入れた混合物を、適切な大きさの平らな金属棒でプレスして、棒の表面を均等にした。各バインダーから16本のバーをこの方法で作製した。次に、得られたバーを200℃で硬化させた。硬化時間は1時間とした。室温まで冷却した後、容器から慎重に取り出した。このうち5本を80℃の水浴中で3時間エージングした。
【0414】
1~2日間乾燥させた後、熟成バー及び5本の未熟成バーを3点曲げ試験(試験速度:10.0mm/分、破断レベル:50%、公称強度:30N/mm、支持距離:40mm、最大たわみ長:20mm、公称eモジュール10000N/mm)を行い、その機械的強度を調べた。バーは、「上面」を上にして(すなわち、寸法が長さ=5.6cm、幅=2.5cmの面)、機械に配置した。
【0415】
【表10】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7