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特許7583109眼内レンズ及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】眼内レンズ及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20241106BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20241106BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/02
G02C13/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023085242
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2020524266の分割
【原出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2023104998
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】62/579,971
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ヒューン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーヒェン ケーラー
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04029351(US,A)
【文献】特開平04-183568(JP,A)
【文献】特開2003-103646(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第748138(GB,A)
【文献】米国特許第4184292(US,A)
【文献】米国特許第3897968(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
G02C 7/02
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズ用のベルヌーイグリッパであって、
形状が眼用レンズの光学部に対応する第1空洞を備えたグリッパ本体と、
前記グリッパ本体内に形成された第1チャネルであって、前記第1チャネルの一方の端部において前記第1空洞を貫通し、前記第1チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第1ポートを備える第1チャネルと、
前記グリッパ本体内に形成された第2チャネルであって、前記第2チャネルの一方の端部において前記グリッパ本体を貫通し、前記第2チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第2ポートを備える、第2チャネルと、
を備え、
前記第1チャネルが、前記光学部が前記第1空洞に近接した状態で位置決めされた前記眼用レンズに、ベルヌーイ効果により前記第1空洞に対して第1圧力をかけることができ、
前記第2チャネルが、前記第2チャネルに近接して配置された前記眼用レンズの少なくとも一部に第2力を加えることができる、ベルヌーイグリッパ。
【請求項2】
前記第1圧力が、前記グリッパ本体が対応して位置決めされるとき前記眼用レンズの位置決めを可能にするように、前記第1空洞において前記眼用レンズを把持するのに十分である、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項3】
前記第1空洞が、前記第1圧力が前記第1空洞に対して作用するとき、前記光学部が前記第1空洞に接触することなく、前記眼用レンズを把持することができる、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項4】
前記第1チャネルが、静電的に帯電した体媒体を供給することができる、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項5】
前記第1チャネルが、空気を供給することができる、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項6】
前記眼用レンズが、前記光学部及び支持部を備える眼内レンズであり、前記ベルヌーイグリッパが、前記支持部を拘束し且つ前記眼用レンズの回転を阻止する、機械的止め具をさらに備える、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項7】
前記機械的止め具が、前記支持部の先端部分を受け入れるように対応して形成された第2空洞をさらに備え、
前記第2チャネルが、前記一方の端部において前記第2空洞を貫通し、
前記第2チャネルが、前記第2空洞に近接して位置決めされた前記支持部が、ベルヌーイ効果により前記第2空洞に対する第2圧力を受けるように、ある速度で、前記第2ポートから前記第2空洞に体媒体を供給することができ、前記第2力は第2圧力を含む、請求項6に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項8】
前記第2チャネルが、前記一方の端部において前記機械的止め具を貫通し、前記ベルヌーイグリッパが、前記第2チャネルが機械的止め具を貫通する第3ポートをさらに備え、
前記第3ポートが、前記支持部が前記機械的止め具によって拘束されるとき前記支持部に前記第2力を加えるための真空ポートであり、前記第2力は負圧を含む、請求項6に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項9】
前記第1チャネルが、前記第1空洞の中心部分で前記第1空洞を貫通し、
前記第2チャネルが、前記一方の端部において、前記第1空洞の縁部分を貫通し、
前記光学部が前記第1空洞に近接した状態で位置決めされた眼レンズが、ベルヌーイ効果により第1空洞内で横方向に第2力を受けるように、前記第2チャネルが、ある速度で、前記第2ポートから前記第1空洞の縁部分に、流体媒体を供給することができる、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項10】
前記眼レンズが、前記光学部及び支持部を備えた眼内レンズであり、前記ベルヌーイグリッパが、前記第2チャネルが前記グリッパ本体を貫通する第3ポートをさらに備え、前記第3ポートが、前記光学部が第1空洞内に拘束されるとき、前記支持部に第2力を加えるための真空ポートであり、前記第2力は負圧を含む、請求項1に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項11】
眼内レンズ用のベルヌーイグリッパであって、
形状が眼内レンズの光学部に対応する空洞を備えたグリッパ本体と、
前記グリッパ本体内に形成された第1チャネルであって、前記第1チャネルの一方の端部において前記空洞を貫通し、前記第1チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第1ポートを備える第1チャネルと、
前記眼内レンズの回転を防ぐために前記眼内レンズの支持部を拘束できる機械的止め具と、
を備え、
前記第1チャネルが、前記光学部が前記空洞に近接して配置された前記眼内レンズが、ベルヌーイ効果により前記空洞に対する第1圧力を受けるように、前記第1ポートから前記空洞に第1流体媒体を第1速度で供給することができる、ベルヌーイグリッパ。
【請求項12】
前記機械的止め具が前記グリッパ本体から突出しており、
前記機械的止め具の側部が、前記眼内レンズを拘束するために前記支持部の側部と係合することができる、請求項11に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項13】
前記第1圧力は、前記グリッパ本体が対応して位置決めされるとき前記眼内レンズの位置決めを可能にするように、前記空洞で前記眼内レンズを把持するのに十分である、請求項11に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項14】
前記空洞が、前記第1圧力が前記空洞に対して作用するとき、前記光学部が前記空洞に接触することなく、前記眼内レンズを把持することができる、請求項11に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項15】
前記第1チャネルが、前記第1流体媒体が静電的に帯電されているときに前記第1流体媒体を供給することができる、請求項11に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項16】
前記グリッパ本体内に形成された第2チャネルをさらに備え、
前記第2チャネルが、該第2チャネルの一方の端部において前記機械的止め具を貫通し、
前記第2チャネルが、前記第2チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第2ポートを備え、前記第2ポートは前記第1ポートとは異なり、
前記第2チャネルが、前記機械的止め具によって拘束される前記支持部が第2力を受けるように、前記第2ポートから前記機械的止め具に第2流体媒体を第2速度で供給することができる、請求項11に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項17】
前記第2チャネルが前記機械的止め具を貫通する第3ポートをさらに備え、
前記第3ポートが、前記支持部が前記機械的止め具によって拘束されるとき前記支持部に第2力を加えるための真空ポートであり、第2力は負圧を含む、請求項16に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項18】
前記グリッパ本体内に形成された第2チャネルをさらに備え、
前記第2チャネルが、該第2チャネルの一方の端部において前記空洞の縁部分を貫通し、
前記第2チャネルが、前記第2チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第2ポートを備え、前記第2ポートは前記第1ポートとは異なり、
前記光学部が前記空洞に近接した状態で位置決めされた前記眼内レンズが、ベルヌーイ効果により前記空洞内で横方向に第2力を受けるように、前記第2チャネルが、第2速度で、前記第2ポートから前記空洞の縁部分に第2流体媒体を供給することができ、
前記第1チャネルは、前記空洞の中心部分で前記空洞を貫通する、請求項11に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項19】
前記グリッパ本体内に形成された第3チャネルをさらに備え、
前記第3チャネルが、該第3チャネルの一方の端部において前記機械的止め具を貫通し、
前記第3チャネルが、前記第3チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第3ポートを備え、前記第3ポートは前記第1ポート及び前記第2ポートとは異なり、
前記第3チャネルが、前記機械的止め具によって拘束される前記支持部が第3チャネル力を受けるように、第3チャネル速度で、第3チャネルポートから前記機械的止め具に第3流体媒体を供給することができる、請求項18に記載のベルヌーイグリッパ。
【請求項20】
眼用レンズを把持する方法であって、
前記眼用レンズに近接してグリッパ本体を配置するステップであって、前記グリッパ本体が、
形状が前記眼用レンズの光学部に対応する第1空洞と、
前記グリッパ本体内に形成された第1チャネルであって、前記第1チャネルが、前記第1チャネルの一方の端部において前記第1空洞を貫通し、前記第1チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第1ポートを備える、第1チャネルと、
前記グリッパ本体内に形成された第2チャネルであって、記第2チャネルの一方の端部において前記グリッパ本体を貫通し、前記第2チャネルの別の端部において前記グリッパ本体の第2ポートを備える、第2チャネルと、
を備える、グリッパ本体を配置するステップと、
前記光学部が前記第1空洞に近接した状態で位置決めされた前記眼用レンズが、ベルヌーイ効果により前記第1空洞に対する第1圧力を受けるステップと、
前記第2チャネルに近接した状態で位置決めされた前記眼用レンズの少なくとも一部に、前記第2チャネルを介して第2力を加えるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスの製造及び取扱いに関し、より具体的には、眼内レンズ及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼は、眼の瞳孔に入る光を網膜上に集束させるように意図されている角膜及び水晶体を含む。しかしながら、眼は、光が網膜に適切に集束しなくなり、視力を低下させる可能性がある、さまざまな屈折異常を示す場合がある。眼の収差は、近視、遠視又は正乱視をもたらす比較的単純な球面及び円柱面の異常から、たとえば、人の視野に光輪及びスターバーストをもたらす可能性がある、より複雑な屈折異常までの範囲にわたる可能性がある。
【0003】
さまざまな眼の収差を補正するために、長年、多くの介入が開発されてきた。これには、眼鏡、コンタクトレンズ、生体内レーザー角膜切開手術(LASIK)又は角膜移植等の角膜屈折手術、及び眼内レンズ(IOL)が挙げられる。近視、遠視及び乱視の治療のための球面円柱眼鏡及びコンタクトレンズの診断及び仕様もまた、十分に確立されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、IOL及びコンタクトレンズは、小型であり、精密であり、且つ傷つきやすい光学部品である。製造中等、IOL及びコンタクトレンズの取扱い及び移送は、コンタクトレンズ又はIOLが物理的に操作される、種々の作業を伴う可能性がある。IOL及びコンタクトレンズで使用される材料は、物理的接触に対して非常に傷つきやすい可能性がある。取扱い及び移送作業中、コンタクトレンズ又はIOLとのいかなる物理的接触によっても、レンズに対する、特にレンズの表面に対する損傷がもたらされる可能性があり、それは望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、開示するベルヌーイグリッパは、IOL及びコンタクトレンズ等の眼用レンズを把持するためのものである。ベルヌーイグリッパは、形状が眼用レンズの光学部に対応する第1空洞を備えたグリッパ本体と、グリッパ本体内に形成された第1チャネルであって、第1チャネルの一方の端部において第1空洞を貫通し、第1チャネルの別の端部においてグリッパ本体の第1ポートを備える第1チャネルとを含むことができる。ベルヌーイグリッパにおいて、第1チャネルは、光学部が第1空洞に近接した状態で位置決めされた眼用レンズが、ベルヌーイ効果により第1空洞に対する第1圧力を受けるように、第1ポートから第1空洞に第1速度で流体媒体を供給することができる。
【0006】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、圧力は、グリッパ本体が対応して位置決めされるとき眼用レンズの位置決めを可能にするように、第1空洞において眼用レンズを把持するのに十分であり得る。
【0007】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、第1空洞は、第1圧力が第1空洞に対して作用するとき、光学部が第1空洞に接触することなく、眼用レンズを把持することができ得る。
【0008】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、第1チャネルは、流体媒体が静電的に帯電されているときに流体媒体を供給することができ得る。
【0009】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、流体媒体は空気であり得る。
【0010】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、眼用レンズは、光学部及び支持部を備える眼内レンズとすることができ、一方で、ベルヌーイグリッパは、支持部を拘束し且つ眼用レンズの回転を阻止する、機械的止め具をさらに含む。ベルヌーイグリッパにおいて、機械的止め具は、支持部の先端部分を受け入れるように対応して形成された第2空洞をさらに含むことができ、一方で、ベルヌーイグリッパは、グリッパ本体内に形成された第2チャネルをさらに含み、第2チャネルは、第2チャネルの一方の端部において第2空洞を貫通し、第2チャネルの別の端部においてグリッパ本体の第2ポートを備え、第2ポートは第1ポートとは異なる。ベルヌーイグリッパにおいて、第2チャネルは、第2空洞に近接して位置決めされた支持部が、ベルヌーイ効果により第2空洞に対する第2圧力を受けるように、第2ポートから第2空洞に第2速度で流体媒体を供給することができ得る。ベルヌーイグリッパにおいて、機械的止め具は、支持部が機械的止め具によって拘束されるとき支持部に負圧を印加する第1真空ポートをさらに含むことができ、一方で、第1真空ポートは、グリッパ本体に形成された第3チャネルの一方の端部にあり、第3チャネルは、第3チャネルの別の端部に第3ポートを備え、第3ポートは第1ポートとは異なる。
【0011】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、第1チャネルは、第1空洞の中心部分において第1空洞を貫通することができ、一方で、ベルヌーイグリッパは、グリッパ本体内に形成された第4チャネルをさらに含むことができ、第4チャネルは、第4チャネルの一方の端部において第1空洞の縁部分を貫通し、第4チャネルの別の端部においてグリッパ本体の第4ポートを備える。ベルヌーイグリッパにおいて、第4チャネルは、光学部が第1空洞に近接した状態で位置決めされた眼用レンズが、ベルヌーイ効果により第1空洞内で横方向に第3圧力を受けるように、第4ポートから第1空洞の縁部分に第3速度で流体媒体を供給することができ得る。
【0012】
ベルヌーイグリッパの開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、眼用レンズは、光学部及び支持部を備える眼内レンズとすることができ、一方で、ベルヌーイグリッパは、光学部が第1空洞内で拘束されるとき支持部に負圧を印加する第2真空ポートをさらに含む。ベルヌーイグリッパにおいて、第2真空ポートは、グリッパ本体に形成された第5チャネルの一方の端部とすることができ、第5チャネルは、第5チャネルの別の端部に第5ポートを備え、第5ポートは第1ポートとは異なる。
【0013】
別の開示する態様では、眼用レンズを把持する方法を開示する。本方法は、眼用レンズに近接してグリッパ本体を配置するステップを含むことができ、グリッパ本体は、形状が眼用レンズの光学部に対応する第1空洞と、グリッパ本体内に形成された第1チャネルとを有し、第1チャネルは、第1チャネルの一方の端部において第1空洞を貫通し、第1チャネルの別の端部においてグリッパ本体の第1ポートを備える。本方法はまた、光学部が第1空洞に近接した状態で位置決めされた眼用レンズが、ベルヌーイ効果により第1空洞に対する第1圧力を受けるように、第1ポートから第1空洞に第1チャネルを通して第1速度で流体媒体を供給するステップも含むことができる。
【0014】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、圧力は、本体が対応して位置決めされるとき眼用レンズの位置決めを可能にするように、第1空洞において眼用レンズを把持するのに十分とすることができ、一方で、本方法は、グリッパ本体を移動させることによりグリッパ本体を位置決めするステップと、第1空洞への流体媒体の供給を中断するステップであって、それにより、グリッパ本体から眼用レンズが解放される、ステップとをさらに含むことができる。
【0015】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、流体媒体を供給するステップは、第1圧力が第1空洞に対して作用するとき、光学部が第1空洞と接触することなく眼用レンズを把持することをさらに含むことができる。
【0016】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、流体媒体を供給するステップは、流体媒体が静電的に帯電されているとき、第1チャネルを通して流体媒体を供給することをさらに含むことができる。
【0017】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、流体媒体は空気であり得る。
【0018】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、眼用レンズは、光学部及び支持部を備える眼内レンズとすることができ、一方で、本方法は、光学レンズの回転を阻止するように、グリッパ本体内に形成された機械的止め具を用いて支持部を拘束するステップをさらに含むことができる。
【0019】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、機械的止め具は、支持部の先端部分を受け入れるように対応して形成された第2空洞をさらに含むことができ、一方で、本方法は、第2空洞に近接して支持部の先端部分を配置するステップをさらに含むことができ、第2空洞は、グリッパ本体内に形成された第2チャネルを備え、第2チャネルは、第2チャネルの一方の端部において第2空洞を貫通し、第2チャネルの別の端部においてグリッパ本体の第2ポートを備え、第2ポートは第1ポートとは異なる。本方法はまた、第2空洞に近接して位置決めされた支持部の先端部分が、ベルヌーイ効果により第2空洞に対する第2圧力を受けるように、第2ポートから第2空洞に第2チャネルを通して第2速度で流体媒体を供給するステップも含むことができる。本方法は、支持部が機械的止め具によって拘束されるとき、機械的止め具とともに含まれる第1真空ポートから支持部に負圧を印加するステップをさらに含むことができ、一方で、第1真空ポートは、本体に形成された第3チャネルの一方の端部にあり、第3チャネルは第3チャネルの別の端部に第3ポートを備え、第3ポートが第1ポートとは異なる。
【0020】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、第1チャネルは、第1空洞の中心部分において第1空洞を貫通し、一方で、本方法は、本体内に形成された第4チャネルに近接して光学部を配置するステップであって、第4チャネルが、第4チャネルの一方の端部において第1空洞の縁部分を貫通し、第4チャネルの別の端部において本体の第4ポートを備える、ステップと、光学部が第1空洞及び第4空洞に近接した状態で位置決めされた眼用レンズが、ベルヌーイ効果により第1空洞内で横方向に第3圧力を受けるように、第4ポートから第1空洞の縁部分に第4チャネルを通して第3速度で流体媒体を供給するステップとをさらに含むことができる。
【0021】
本方法の開示する実施態様のうちの任意のものにおいて、眼用レンズは、光学部及び支持部を備える眼内レンズとすることができ、一方で、本方法は、光学部が第1空洞内で拘束されるとき第2真空ポートにおいて支持部に負圧を印加するステップをさらに含むことができ、第2真空ポートは、本体に形成された第5チャネルの一方の端部であり、第5チャネルは第5チャネルの別の端部に第5ポートを備え、第5ポートは第1ポートとは異なる。
【0022】
本発明並びにその特徴及び利点がより完全に理解されるように、ここで、添付図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、コンタクトレンズ及びIOLの図である。
図2A-2F】図2A図2Fは、IOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパの異なる実施態様の選択された要素の図である。
図3図3は、眼用レンズでベルヌーイグリッパを操作する方法の選択された要素のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、開示する主題の考察を容易にするために例として詳細を示す。しかしながら、当業者には、開示する実施形態が例示的なものであり、すべてのあり得る実施形態を網羅するものではないことが明らかなはずである。
【0025】
この開示を通して、参照数字のハイフンでつないだ形式は、要素の具体例を指し、参照数字のハイフンでつながれていない形式は、要素を包括的に又はまとめて参照する。したがって、例(図面には示さない)として、デバイス「12-1」は、まとめてデバイス「12」と呼ぶものとし且ついずれも包括的にデバイス「12」と呼ぶものとするデバイスクラスの具体例を指す。図及び説明において、同様の数字は同様の要素を表すように意図されている。
【0026】
上述したように、IOL及びコンタクトレンズ等の眼用レンズは、小型の精密な部品であり、他の作業もあるが特に製造、試験及び包装等の間、取扱い及び操作においていくつかの難題を提示する可能性がある。たとえば、IOL及びコンタクトレンズ等の眼用レンズは、約6mm幅程度に小さい光学部を有する場合があり、約30mg未満の質量を有する場合がある。特に、眼用レンズ、及びホルダ又はグリッパ等の特定の製造機器との物理的接触を用いて実施される、取扱い、操作、移送又は他の処理作業は不都合である可能性がある。たとえば、いくつかのIOLは、表面上で粘着性があり、したがって、いくつかの製造ステップ中は接触に対して影響を受けやすい可能性がある。別の例では、抽出、コーティング又は洗浄等いくつかの作業は、眼用レンズの一部が製造機器と接触しており、自由に露出していないか又は部分的に覆われているときには、適切に実施されない可能性がある。さらに、抽出後の眼用レンズの乾燥、又は静的に帯電した眼用レンズを解放する等、いくつかの製造作業は、製造機器へのレンズの接触により悪影響を受ける可能性があり、レンズに対して望ましくない損傷をもたらす可能性がある。
【0027】
本明細書においてさらに詳細に説明するように、IOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパを開示する。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパは、レンズを非接触に把持することができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用ベルヌーイグリッパは、さまざまな製造作業中等、粘着性があり他の点では傷つきやすいレンズを保持し、輸送し、解放するために使用することができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用ベルヌーイグリッパは、取扱い、位置決め、又はコーティング及び乾燥等の他の製造作業中に、レンズに対する損傷を防止することができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用ベルヌーイグリッパは、回転、横方向、方位及び軸方向の位置合わせを含む、レンズを位置合わせするか又は正確に位置決めするために、レンズを隔離し拘束するために使用することができる。
【0028】
本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパは、実施されている特定の作業の改善を促進するようにレンズの所望の表面を露出したままにするために、抽出又はコーティング作業中に使用することができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパは、グリッパ又はキャリアへの付着に起因して発生する可能性がある表面のきず等、製造中のレンズに対する損傷を回避することができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパは、レンズに対する乾燥作業で使用することができ、そこでは、レンズの表面から抽出媒体が蒸発し、レンズは、縮んで、グリッパ又はキャリアの表面に付着する可能性があり、これが、ベルヌーイグリッパの非接触動作によって回避される。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパを用いて、レンズ表面を露出したままにすることにより、レンズのための乾燥作業の均質性を向上させることができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパを用いて、静電引力のために、グリッパ又はキャリアから解放することが困難である可能性がある、静電的に帯電したレンズを放電又は中和することができる。本明細書で開示するIOL及びコンタクトレンズ用のベルヌーイグリッパは、レンズ上のいかなる静電荷も中和するイオン化空気を含む流体媒体と使用することができる。
【0029】
ここで図面を参照すると、図1は、コンタクトレンズ100及びIOL101の例示的な図を示す。図1は、説明の目的で概略図であり、正確な尺度又は遠近法では描かれていない。
【0030】
図1において、コンタクトレンズ100は、視力矯正のために使用される任意の種類のコンタクトレンズを表すことができる。たとえば、コンタクトレンズ100は、特に、ハイドロゲルレンズ又はシリコーンハイドロゲルレンズ等のソフトコンタクトレンズであり得る。コンタクトレンズ100は、特に、シリコーンアクリレートレンズ又はフルオロシリコーンアクリレートレンズ等のガス透過性ハードレンズであり得る。場合により、コンタクトレンズ100は、中心のハードなガス透過性光学部、及びソフトコンタクトレンズ材料から形成される外周部等を有するハイブリッドレンズであり得る。コンタクトレンズ100の直径は、角膜径等、患者の生体測定寸法に対応するように選択することができる。いくつかの実施態様では、コンタクトレンズ100は、両面成形(DSM)プロセスを用いて製造することができる。コンタクトレンズ100は、所望の光学特性を達成するために特定の形状及び厚さを有することができる。コンタクトレンズ100の外面形状又は輪郭により、コンタクトレンズ100は、本明細書に記載するベルヌーイグリッパで使用することができる。
【0031】
また図1において、IOL101は、眼科で使用される任意の種類のIOLを表すことができる。図示するように、IOL101は、光学部110と2つの支持部112-1、112-2とを含み、それらは、説明の目的で例示的な構成で示されている。さまざまな実施態様において、IOL101は、異なるタイプ及び数の支持部112を含むことができる。光学部110及び支持部112に使用される材料は変更することができる。たとえば、IOL101は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)レンズを備える光学部110等を有する非折畳み式硬質IOLであり得る。いくつかの実施態様では、IOL101は、軟質IOLとすることができ、そこでは、光学部110は、シリコーン、疎水性アクリル樹脂、親水性アクリル樹脂、ハイドロゲル、コラマー(collamer)又はそれらの組合せ等、さまざまな材料から構成され得る。IOL101では、支持部112は、ポリプロピレン、PMMA、疎水性アクリル樹脂、親水性アクリル樹脂、シリコーン又はそれらの組合せ等、さまざまな材料から構成され得る。IOL101の外面形状又は輪郭により、IOL101は本明細書に記載するベルヌーイグリッパで使用することができる。
【0032】
ここで図2Aを参照すると、ベルヌーイグリッパ200の図が示されている。ベルヌーイグリッパ200は、コンタクトレンズ100を把持位置で保持しているように示されている。説明を明確にするために、ベルヌーイグリッパ200がコンタクトレンズ100を保持しているように示し且つ以下に言及するが、本明細書に記載するように、ベルヌーイグリッパ200はさまざまな異なる種類のレンズを把持し且つ解放することができる。ベルヌーイグリッパ200は、内部に形成されたグリッパ空洞211を有するグリッパ本体210から構成されている。グリッパ空洞211は、特定のレンズ又は特定のタイプのレンズを把持するように異なる実施態様では異なる形状を有することができる。たとえば、他の実施態様では、グリッパ空洞211は、凹状面上でコンタクトレンズ100を把持する等、さまざまな種類のレンズを把持するために、異なる形状を有することができ、空洞ではなく、凸状突出部(図示せず)等、突出部であり得る。ベルヌーイグリッパ200はまた、グリッパ空洞211に流体的に結合され且つグリッパ空洞211を貫通する、流体ライン212も含む。流体ライン212には、たとえば、対応するレセプタクルを受け入れるグリッパ本体210内に形成されたポートにおいて、流動空気等、流体媒体を供給することができる。
【0033】
ベルヌーイグリッパ200及び本明細書に開示する他のベルヌーイグリッパは、高速流体流は低い静圧を有するという事実に基づくベルヌーイ効果を用いて、動作することができる。注意深い設計により、高速流体流における圧力を大気圧より低くすることができる。高速流体流に対して物体が配置されると、物体の一方の側における大気圧と物体の他方の側における高速流体流からの低下した圧力との差により、高速流体流に向かう方向において物体に作用する正味圧力をもたらすことができ、それがベルヌーイ効果として知られている。
【0034】
ベルヌーイグリッパは、グリッパ面と保持されている物体との間に空隙を維持しながら、グリッパ面において周囲圧力と比較して低下した圧力を維持することにより、ベルヌーイ効果を利用する。このように、レンズは、いかなる物理的接触もなしに、又は散発的な若しくは偶発的な接触のみで、保持し、保管し、取り扱うことができる。低下した圧力を維持するために、レンズは、特に流体ラインを用いて、ベルヌーイグリッパを通して流体媒体(たとえば、空気)の一方向の流れを受ける。グリッパは、(たとえば、グリッパ本体を位置決めすることにより)レンズに近接して配置され、対応して、流れ側においてレンズの形状に輪郭が合致する。流体媒体は、流体ラインを通って流れ、レンズの流れ側の面とグリッパ面の表面との間の経路に沿って、高速でグリッパ面から出る。対照的に、グリッパに面していないレンズの外側では、いかなる識別可能な媒体流も発生せず、大気圧が観察される。レンズの流れ側の面において、ベルヌーイ効果に従って圧力降下がもたらされる。レンズの外側に作用している大気圧を通して、正味圧力が流動流体の方向においてレンズに作用し、それにより、レンズがグリッパ面に対して適所に保持され、非接触式にレンズが把持される結果となる。
【0035】
ベルヌーイグリッパ200の動作において、グリッパ本体210に形成されたグリッパ空洞211(すなわち、グリッパ面)は、加圧空気が、グリッパ空洞211に向かう方向において流体ライン212を通して供給されて、コンタクトレンズ100を把持するための圧力を発生させる間、コンタクトレンズ100を適所に保持する。グリッパ空洞211においてグリッパ本体210を貫通する流体ライン212を通る加圧空気流が中断されると、コンタクトレンズ100に対する圧力が除去され、コンタクトレンズ100が解放されてグリッパ空洞211内で適所に保持されなくなる。したがって、加圧空気流をオン及びオフに切り替えることにより、ベルヌーイグリッパ200の把持及び解放制御を達成することができる。動作時、ベルヌーイグリッパ200は、ピックアンドプレースロボット等、特別な装備で実施することができ、そうした装備は、コンタクトレンズ100を把持するときにベルヌーイグリッパ200を対応して移動させることにより、回転、横方向、方位及び軸方向位置合わせ又は位置決め等、コンタクトレンズ100を位置合わせするか又は正確に位置決めすることができる。
【0036】
図2Bに、ベルヌーイグリッパ201の図を示す。ベルヌーイグリッパ201は、IOL101を把持位置で保持しているように示されている。説明を明確にするために、ベルヌーイグリッパ201がIOL101を保持しているように示し且つ以下に言及するが、ベルヌーイグリッパ201は、本明細書に記載するように、さまざまな異なる種類のレンズを把持し解放することができる。ベルヌーイグリッパ201は、内部に形成されたグリッパ空洞211を有するグリッパ本体214から構成され、図2Aにおいてベルヌーイグリッパ200に対して上述したものと実質的に同様に動作することができる。さらに、ベルヌーイグリッパ201は機械的止め具216を含むように示されており、機械的止め具216は、グリッパ空洞211における又はグリッパ空洞211に隣接するグリッパ本体214内の機械的突出部である。機械的止め具216は、ベルヌーイグリッパ201によって把持されるときのIOL101の回転を阻止又は制御するために、支持部112に対して機械的拘束を提供することができる。いくつかの実施態様では、機械的止め具216は、IOL101の半径方向のすべりをさらに阻止することができ、そのため、グリッパ空洞211内のIOL101の横方向位置合わせを維持することができる。たとえば、IOL101が支持部を含まない場合、IOL101は、機械的止め具216により横方向位置合わせを維持しながら回転することができる。機械的止め具216と支持部112の縁部との間の偶発的接触は、さまざまな工業的作業に対して許容可能である可能性があり、ベルヌーイグリッパ201によって把持されているとき、IOL201に悪影響を与える可能性はない。したがって、機械的止め具216は、たとえば、支持部112の厚さに対応する長さで寸法を決めることができる。図2Bには4つの機械的止め具216を示すが、ベルヌーイグリッパ201のさまざまな設計においてより少ないか又はより多くの機械的止め具を実施することができることが理解されよう。
【0037】
図2Cに、ベルヌーイグリッパ202の図を示す。ベルヌーイグリッパ202は、IOL101を把持位置で保持しているように示されている。説明を明確にするために、ベルヌーイグリッパ202がIOL101を保持しているように示し且つ以下に言及するが、ベルヌーイグリッパ202は、本明細書に記載するように、さまざまな異なる種類のレンズ、特に、異なる種類の支持部112を備えたさまざまな異なる種類のIOL101を把持し解放することができる。ベルヌーイグリッパ202は、内部に形成されたグリッパ空洞211を有するグリッパ本体218から構成され、図2Aにおいてベルヌーイグリッパ200に対して上述したものと実質的に同様に動作することができる。さらに、ベルヌーイグリッパ202は、2つの機械的止め具220を含むように示されており、それらは、グリッパ本体218から突出し且つIOL101の支持部112に対応する、2つのアームとして形成されている。具体的には、機械的止め具220の形状及び位置は、支持部112の形状及び長さと嵌合するように設計することができる。動作時、図2Cに示すように、IOL101がベルヌーイグリッパ202によって把持される際、IOL101の両側の支持部112は、機械的止め具220とそれぞれ係合し、IOL101を回転しないように所定位置で固定する。
【0038】
さらに、ベルヌーイグリッパ202は、各機械的止め具220に真空ポート222を含むように示されている。真空ポート222の各々に、流体ライン212からは独立している対応する流体ラインを通して、負圧又は真空を供給することができる。したがって、図示するように、ベルヌーイグリッパ202は、把持するための1つの加圧流体ラインと、機械的止め具220において支持部112を固定するための2つの真空ラインとを使用することができる。流体ライン212、及び真空ポート222用の真空ラインは、たとえば、対応するレセプタクルを受け入れるグリッパ本体218内に形成されたそれぞれのポートに供給されることができる。動作時、IOL101がベルヌーイグリッパ202によって把持され、IOL101の両側の支持部112がそれぞれ機械的止め具220と係合すると、支持部112を機械的止め具220に固定された状態で保持する付着力を提供するために、真空ポート222において真空又は負圧をオンに切り替えることができる。したがって、真空ポート222を用いて、ベルヌーイグリッパ202を使用してIOLを位置決めすることに関する安定性及び位置精度を向上させることができ、それは、機械的止め具220及び真空ポート222が、把持されているIOL101が回転するのを阻止することができ、IOL101を固定され且つ画定された位置で保持することができるためである。機械的止め具222と支持部112の面との間の偶発的接触は、さまざまな工業的作業には許容可能である可能性があり、ベルヌーイグリッパ202によって把持されているとき、IOL101に悪影響を与える可能性はない。支持部112は機械的止め具220と接触する可能性があるが、光学部110を含むIOL101の残りの部分は、グリッパ本体218と物理的に接触しないままとすることができる。いくつかの実施態様では、機械的止め具220は、真空ポート222なしに使用することができることに留意されたい。
【0039】
図2Dに、ベルヌーイグリッパ203の図を示す。ベルヌーイグリッパ203は、IOL101を把持位置で保持しているように示されている。説明を明確にするために、ベルヌーイグリッパ203がIOL101を保持しているように示し且つ以下に言及するが、ベルヌーイグリッパ203は、本明細書に記載するように、さまざまな異なる種類のレンズ、特に、異なる種類の支持部112を備えたさまざまな異なる種類のIOL101を把持し解放することができる。ベルヌーイグリッパ203は、内部に形成されたグリッパ空洞211を有するグリッパ本体218から構成され、図2Aにおいてベルヌーイグリッパ200に対して上述したものと実質的に同様に動作することができる。さらに、ベルヌーイグリッパ203は、支持部112の位置に対応する、グリッパ本体218の各側部に2つの真空ポート222を含むように示されている。真空ポート222の各々には、流体ライン212からは独立している対応する流体ラインを通して負圧又は真空を供給することができる。したがって、図示するように、ベルヌーイグリッパ203は、把持するための1つの加圧流体ラインと、真空ポート222において支持部112を固定するための2つの真空ラインとを使用することができる。流体ライン212、及び真空ポート222用の真空ラインは、たとえば、対応するレセプタクルを受け入れるグリッパ本体218内に形成されたそれぞれのポートに提供することができる。動作時、IOL101がベルヌーイグリッパ203によって把持されると、IOL101の両側の支持部112は、支持部112を真空ポート222において固定された状態で保持する付着力を提供するために、真空ポート222においてオンに切り替えることができる真空又は負圧を受ける。したがって、真空ポート222を用いて、ベルヌーイグリッパ203を使用してIOLを位置決めすることに関する安定性及び位置精度を向上させることができ、それは、真空ポート222が、把持されているIOL101が回転するのを阻止することができ、IOL101を固定され且つ画定された位置で保持することができるためである。真空ポート222と支持部112の面との間の偶発的接触は、さまざまな工業的作業には許容可能である可能性があり、ベルヌーイグリッパ203によって把持されているとき、IOL101に悪影響を与える可能性はない。支持部112は真空ポート222と接触する可能性があるが、光学部110を含むIOL101の残りの部分は、グリッパ本体218と物理的に接触しないままとすることができる。
【0040】
図2E及び図2Fに、ベルヌーイグリッパ204の図を示す。ベルヌーイグリッパ204は、2つの図、すなわち、IOLのない図(図2F)とIOL101を把持位置で保持している図(図2E)とで示す。説明を明確にするために、ベルヌーイグリッパ204がIOL101を保持しているように示し且つ以下に言及するが、ベルヌーイグリッパ204は、本明細書に記載するように、さまざまな異なる種類のレンズ、特に、異なる種類の支持部112を備えたさまざまな異なる種類のIOL101を把持し解放することができる。ベルヌーイグリッパ204は、内部に形成された主グリッパ空洞211と2つの支持部空洞235-1及び235-2とを有するグリッパ本体230から構成され、図2Aにおいてベルヌーイグリッパ200に対して上述したものと実質的に同様に動作することができる。
【0041】
ベルヌーイグリッパ204では、したがって、主グリッパ空洞211は、上述したように、ベルヌーイ効果を使用して光学部110においてIOL101を把持するために使用することができ、主グリッパ空洞211内では、主グリッパ空洞211を貫通する中心開口部への流体ライン232によって、流体媒体(たとえば、空気)が供給される。したがって、主グリッパ空洞211及び流体ライン232は、主グリッパ空洞211に対して垂直である第1圧力をIOL101に提供するように動作可能である。さらに、主グリッパ空洞211にさらなる流体ライン238を備えることができ、さらなる流体ライン238は、IOL101がグリッパ本体230によって把持されるときにIOL101の横縁に対応する位置で、主グリッパ空洞211の周縁部に形成されている。さらなる流体ライン238を用いて、主グリッパ空洞211内のIOL101の中心合わせ又は位置合わせを容易にするために、IOL101に横方向圧力を与える、流体媒体のさらなる流れを供給することができる。具体的には、流体媒体が流体ライン238の周縁ポートから離れる際、IOL101の横縁と主グリッパ空洞211の横縁との間に圧力降下がもたらされ、IOL101は、主グリッパ空洞211の横縁に対して横方向に押し付けられる。主グリッパ空洞211の異なる側部における流体ライン238が、流体媒体の流れを受ける際、横方向の力は互いを抑制し、流体ライン238におけるそれぞれの流量が対称動作に対して調整されるとき、IOL101を中心位置で維持するのに役立つ。このように、IOL101が、IOL101の横縁において主グリッパ空洞211と接触するのを防止することができる。
【0042】
さらに、ベルヌーイグリッパ204では、支持部空洞235-1及び235-2は、それぞれ、IOL101の支持部112の先端部分を受け入れることができる。したがって、支持部空洞235-1及び235-2は、支持部112の先端部分に対応するような形状及び寸法とすることができる。支持部112の先端部分のベルヌーイ把持を提供するために、支持部空洞235-1及び235-2に、支持部流体ライン234も備えることができる。たとえば、各支持部空洞235は、流体ライン232から独立した1つ又は複数の流体ライン234を含むことができる。支持部流体ライン234-1及び234-2は、図2Eに示すように、流体ライン232が光学部110に対して動作する際、ベルヌーイ効果を使用して、グリッパ本体230に対して垂直であり且つ各それぞれの支持部112を支持部空洞235-1及び235-2内で適所に保持する圧力を、支持部112において発生させることにより、支持部112に対して同様に動作することができる。たとえば、対応するレセプタクルを受け入れるグリッパ本体230内に形成されたそれぞれのポートに、流体ライン232、234-1、234-2及び238を提供することができる。流体ライン232、234-1、234-2及び238における流体媒体の流量は、独立して制御し操作することができ、対応して、要求に応じて、異なるレベルの圧力を提供するために使用することができることに留意されたい。
【0043】
ベルヌーイグリッパの上記例に示すように、特に、さまざまなIOL及びコンタクトレンズ等、さまざまな異なる種類の眼用レンズを、実質的に非接触に把持することができる。コンタクトレンズ又はIOLは、損傷を受けるとレンズを使用不可能にする可能性がある非常に傷つきやすい表面を有するため、こうしたレンズを把持し保持することは概して技術的難題である。本明細書で開示したベルヌーイグリッパを使用する非接触把持により、レンズの表面に対する損傷を回避することができる。本明細書で開示したベルヌーイグリッパを使用する把持は、工業的プロセスに対して固定されたレンズを位置決めし、輸送し、又は保管若しくは保持するために実施することができる。レンズが粘着性又は接着性の表面を有し、製造プロセス中に接触に対して傷つきやすい表面である場合に、たとえば、5~10秒毎に又はそれより長い間隔で繰り返すピックアンドプレースプロセス動作等、レンズを1つのプロセスステーションから別のプロセスステーションに誘導し、レンズを正確に下に置き、損傷なしにレンズを解放するために、本明細書で開示したベルヌーイグリッパを有利に使用することができる。
【0044】
本明細書で開示したベルヌーイグリッパは、レンズの表面部分を覆い隠すか又は遮蔽することなく、抽出又はコーティングプロセス中にレンズを媒体内に保持することも可能である。同時に、いかなる局所的な遮蔽もなしに、媒体によってレンズを洗うことができ、これは、たとえば、実質的に非接触に実施される洗浄、乾燥又は脱気作業等のための、媒体とレンズとの間の分子の交換に有利である。具体的には、IOLの製造中、IOLを保持するために接触式キャリアが使用されるとき、表面損傷が発生する可能性がある。本明細書で開示したベルヌーイグリッパは、コンタクトレンズ及びIOLを実質的に非接触で乾燥させることができるように有利に使用され、それにより、キャリアとの望ましくない接触からのあり得る表面損傷のいかなる問題も回避することができる。一方、本明細書で開示したベルヌーイグリッパによって可能とされる非接触乾燥により、レンズの貼付き及び損傷が防止される。さらに、接触式グリッパを使用してレンズを把持することとは対照的に、本明細書で開示したベルヌーイグリッパにより、レンズが自由に空気に露出するため、より均質な乾燥作業が可能である。
【0045】
さらに、静電荷の出現により、従来の真空グリッパを使用するレンズの把持及び配置は、両面成形(DSM)プロセスによるコンタクトレンズの製造等により、困難となる可能性がある。ここでは、グリッパとの間隙が最小限であるために、静的引力は非常に大きい可能性があり、後の配置プロセスにおいてレンズが貼り付くことになる可能性がある。本明細書で開示したベルヌーイグリッパは、レンズの帯電状態により従来のグリッパから解放することが困難であるか又は不可能である、静電的に帯電したレンズを保持するようにも使用することができる。たとえば、ベルヌーイグリッパにおいて流体媒体としてイオン化空気を用いることにより、レンズ表面を、さらなるプロセスステップのために同時にイオンにより放電することができる。本明細書で開示したベルヌーイグリッパを用いることにより、一方では、グリッパとレンズとの間の直接接触が阻止され、それにより、誘導された静電力が比較的小さく維持され、他方では、イオン化空気を用いてレンズを中和し、さらなるプロセスステップのために取扱いをより容易にすることができる。流体媒体としてイオン化空気を用いることにより、レンズ表面を静電的に中和することができ、それにより取扱いがさらに改善され、汚物粒子の蓄積が低減し、それは、光学レンズのために特に有利であり得る。
【0046】
本明細書で開示したベルヌーイグリッパの有利な使用のさらなる特別な例は、IOLの製造中の乾燥プロセスである。抽出後、IOLは、静的に帯電している可能性がある非常に粘着性の高い表面を有するとともに、吸収された抽出媒体から膨張する。IOLの乾燥中、本明細書で開示したベルヌーイグリッパを使用するIOLの非接触把持により、グリッパ表面への接触又は付着なしにIOLが収縮することができ、これは、IOLに対する損傷を防止し且つIOLを保護するために望ましい。
【0047】
ここで図3を参照すると、本明細書に開示するような眼用レンズでベルヌーイグリッパを動作させる方法300の実施形態の選択された要素フローチャート。方法300に記載するいくつかの動作は、任意選択的であり得るか、又は、異なる実施形態では再配置することができることに留意されたい。方法300は、本明細書で開示したベルヌーイグリッパのうちの任意のものを使用して実施することができる。
【0048】
方法300は、ステップ302において、眼用レンズに近接してグリッパ本体を配置することによって開始することができる。眼用レンズは、特に、IOL又はコンタクトレンズであり得る。グリッパ本体は、眼用レンズに対して1mm未満まで近接する範囲内に配置することができる。ステップ304において、眼用レンズに対応する空洞に通じるグリッパ本体のポートに、流体媒体が供給される。上述したように、グリッパ本体は、凹状空洞であり得る、把持されている眼用レンズの表面に対応するように形成されている空洞を有することができる。他の場合では、グリッパ本体は、凹状空洞の代わりに凸状突出部を有することができる。流体媒体は、たとえば、空気若しくはイオン化空気又は別の気体であり得る。ステップ306において、ベルヌーイ効果により、眼用レンズを非接触で把持するように、眼用レンズにおいて空洞に対して圧力が生成される。圧力により、眼用レンズは流動流体媒体に押し付けられるため、眼用レンズは、空洞及びグリッパ本体に物理的に接触しないままである。ステップ308において、眼用レンズを位置決めするために、眼用レンズがグリッパ本体によって把持されるときにグリッパ本体を移動させることにより、グリッパ本体が位置決めされる。ステップ308における位置決め及び移動は、並進若しくは回転又はそれらの任意の組合せを含むことができる。ステップ310において、空洞への流体媒体の供給が中断され、グリッパ本体から眼用レンズが解放される。
【0049】
本明細書で開示したように、ベルヌーイグリッパは、IOL及びコンタクトレンズ等の眼用レンズを、実質的に非接触で隔離して移送するように特に設計されている。
【0050】
上に開示した主題は、制限するものではなく例示的であるとみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内にあるすべてのこうした変更形態、改善形態及び他の実施形態を包含するように意図されている。したがって、法律によって許可される最大の範囲まで、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の許容される最も広い解釈によって決定されるべきであり、上述した詳細な説明によって制限も限定もされるものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3