IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デンティス カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7583110複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法
<>
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図1
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図2
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図3
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図4a
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図4b
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図5
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図6
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図7
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図8
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図9
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図10
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図11
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図12
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図13
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図14
  • 特許-複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/00 20060101AFI20241106BHJP
   A61C 7/36 20060101ALI20241106BHJP
   A61C 7/08 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61C7/00
A61C7/36
A61C7/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023085937
(22)【出願日】2023-05-25
(65)【公開番号】P2024037131
(43)【公開日】2024-03-18
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0112775
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523196541
【氏名又は名称】デンティス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シム ギ ボン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒ ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク ウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウォン ゴン
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0302742(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0157962(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0113651(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0237478(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0117450(KR,A)
【文献】特表2022-505404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0266577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00
A61C 7/36
A61C 7/08
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用矯正シートであって、
第1シート層及び第2シート層と、
前記第1シート層と前記第2シート層との間に形成された中間シート層と、を含み、
前記中間シート層は、
前記第1シート層及び前記第2シート層に比べてソフト(soft)な素材から形成され、メッシュ構造に形成されたマット部と、
前記マット部のメッシュの間に前記第1シート層及び前記第2シート層の材料が充填されて前記第1シート層及び前記第2シート層を結着させる結着部と、を含むことを特徴とする、複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項2】
前記第1シート層及び前記第2シート層は、
同種または異種の材料から形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項3】
前記第1シート層及び前記第2シート層は、
グリコール変形ポリエチレンテレフタレート(glycolmodified polyethylene terephthalate(PETG))、ポリエステル(polyester)、コポリエステル(co-polyester)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、アクリル(acrylic)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリアミド(polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate)、及び熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)のうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項2に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項4】
前記第1シート層及び前記第2シート層は、互いに同じまたは異なる厚さを有するように形成されたことを特徴とする、請求項2に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項5】
前記第1シート層及び前記第2シート層は、200~700μmの厚さを有するように形成されたことを特徴とする、請求項4に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項6】
前記中間シート層のマット部は、
シリコンゴム(silicone rubber)、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、ポリオレフィンブレンドエラストマー(polyolefin blend elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(thermoplastic polyamide elastomer)、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane(TPU))、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、及びポリエステルエラストマー(polyester elastomer)のうちの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項7】
前記中間シート層は、50~500μmの厚さを有するように形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項8】
前記マット部のメッシュ構造は、規則的または不規則的パターンに形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項9】
前記中間シート層は、前記マット部に対する前記結着部の面積の比が30~70%であることを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項10】
前記マット部のメッシュ構造は、稠密構造が繰り返されて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項11】
前記マット部のメッシュ構造は、上下非対称状に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項12】
前記マット部は、前記メッシュ構造の表面に緩衝コーティング層がさらに形成されることを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項13】
前記緩衝コーティング層は、前記第1シート層及び前記第2シート層の強度と同じかまたはその強度より小さい材料でコーティングされることを特徴とする、請求項12に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項14】
前記中間シート層は、前記マット部の表面にプラズマ処理されたことを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項15】
前記第1シート層及び前記第2シート層の曲げ強度は30~60MPaであり、前記中間シート層の曲げ強度は15~25MPaであることを特徴とする、請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シート。
【請求項16】
請求項1に記載の歯科用矯正シートの製造方法であって、
前記第1シート層、前記中間シート層、及び前記第2シート層を積層し、ホットプレスローリング工程を実施することによって形成することを特徴とする、歯科用矯正シートの製造方法
【請求項17】
請求項1に記載の複合構造の歯科用矯正シートを用いた、歯科用矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異種素材を積層及び結着して複合構造を成した歯科用矯正シート及び矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、整っていない歯列、不正咬合、顔面非対称、しゃくれた顎などは、歯牙や顎骨の発育異常、歯牙に影響を及ぼす悪い習慣、または遺伝などによって歯牙及び口腔顎などが定位置で正しく育つことができなくて発生するものが大部分である。
【0003】
このようなさまざまな異常コンディションは個人の第一印象に多少否定的な影響を及ぼし、飲食物摂取などの日常生活で不便さを引き起こす。これは、歯矯正や上下顎整形に対する関心が持続する理由である。
【0004】
歯牙の矯正原理は、歯牙がある力を受けるとき、かかった力によって移動する性質を用いるものである。歯矯正のための方法にはさまざまのものがある。そのうちの一つは、歯牙にブラケットを固定し、ブラケットをワイヤで連結する方法がある。ところで、ブラケットやワイヤは金属からなっているので、易しく目立つというのはもちろんのこと、管理が不便であるという欠点がある。
【0005】
歯矯正方法の他の一つは、透明矯正装置を用いる方法である。透明矯正装置は外部からよく見えなく、必要に応じて装着及び脱着が自由であって大人を対象として多く使用されている。
【0006】
一般的に、透明矯正装置の製作過程は、まず歯科患者の初期歯牙状態をスキャンした後、矯正歯牙を生成するプログラムによって歯牙スキャンデータを加工して設定の最終歯牙位置まで徐々に歯牙を移動させるデジタル歯矯正モデルを段階別に生成する。その後、3次元プリンターによって段階別歯矯正モデルを歯牙金型として出力し、出力された歯牙金型に熱成形プラスチックを圧着方式で成形することで、透明矯正装置を製作する方式である。
【0007】
このような透明矯正装置の製作の際に使用される熱成形プラスチックの場合、シート(sheet)状として提供された後、圧着方式で成形され、基本的に透明矯正シートに要求される物性がある。
【0008】
すなわち、透明矯正シートは、一定の強度を有するように形成されて矯正装置に矯正力が付与することができなければならなく、それによる維持力が高くなければならない。また、長期間にかけて装着及び脱着が行われるので、耐久性も保障しなければならない。
【0009】
既存の透明矯正シートの場合、単層または多層として提供されて来た。
【0010】
単層シートの場合、単一の素材であって、矯正力を付与するためにハード(hard)な素材が使用されて来た。これは、着用の初期に患者にかかる苦痛が大きい欠点があり、時間が経つにつれて矯正力が低下して維持力が低くなる問題点がある。これにより、予想できない歯牙移動の結果をもたらすから、歯矯正が正常にできない問題点がある。
【0011】
このような問題点を解決するために、ハードな素材の間に相対的にソフト(soft)な素材のソフト層が形成された多層シートが提供されたが、図1に示すように、異種素材の間の界面での接着力が弱くて剥離現象が発生するので、耐久性の問題がある。
【0012】
また、一定の強度の矯正力及び歯牙間の反発力によってシートに力がかかることがあり、図2に示すように、中問層が全体的に連結されているので、時間が経つにつれてシートの変形または延伸を引き起こすことになる。
【0013】
特に、ソフト層を含む多層シートの場合、ソフト素材の変形率が高く、延伸による回復率が徐々に低下し、結局延伸限界点を超える場合には、矯正力を発揮することができなくなる問題点がある。また、ソフトな素材の変形または延伸による異種素材間の接着力低下の問題が一層ひどくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はメッシュ構造のソフト(soft)な素材及びハード(hard)な素材を積層及び結着することで、矯正力及び維持力、かつ耐久性を向上させた複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は前記目的を達成するために導出されたものであり、歯科用矯正シートであって、第1シート層及び第2シート層と、前記第1シート層と前記第2シート層との間に形成された中間シート層とを含み、前記中間シート層は、前記第1シート層及び前記第2シート層に比べてソフト(soft)な素材から形成され、メッシュ構造に形成されたマット部と、前記マット部のメッシュの間に前記第1シート層及び前記第2シート層の材料が充填されて前記第1シート層及び前記第2シート層を結着させる結着部とを含むことを特徴とする複合構造の歯科用矯正シート及びこれを用いた歯科用矯正装置を技術的要旨とする。
【0016】
前記第1シート層及び前記第2シート層は、同種または異種の材料から形成されることができる。
【0017】
ここで、前記第1シート層及び前記第2シート層は、グリコール変形ポリエチレンテレフタレート(glycolmodified polyethylene terephthalate(PETG))、ポリエステル(polyester)、コポリエステル(co-polyester)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、アクリル(acrylic)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリアミド(polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate)、及び熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)のうちの1種以上を含むことができる。
【0018】
また、前記第1シート層及び前記第2シート層は、互いに同じまたは異なる厚さを有することができ、200~700μmの厚さを有するように形成されることができる。
【0019】
また、前記中間シート層のマット部は、シリコンゴム(silicone rubber)、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、ポリオレフィンブレンドエラストマー(polyolefin blend elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(thermoplastic polyamide elastomer)、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane(TPU))、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、及びポリエステルエラストマー(polyester elastomer)のうちの1種以上を含むことができる。
【0020】
また、前記中間シート層は、50~500μmの厚さを有するように形成されることができる。
【0021】
また、前記マット部のメッシュ構造は、規則的または不規則的パターンに形成されることができ、前記マット部のメッシュ構造は、稠密構造が繰り返されて形成されるが、または上下非対称状に形成されることができる。
【0022】
また、前記中間シート層は、前記マット部に対する前記結着部の面積の比が30~70%であることが好ましい。
【0023】
また、前記マット部は、前記メッシュ構造の表面に緩衝コーティング層がさらに形成されることができ、前記緩衝コーティング層は、前記第1シート層及び前記第2シート層の強度と同じかまたはその強度より小さい材料でコーティングされることができる。
【0024】
ここで、前記中間シート層は、前記マット部の表面にプラズマ処理されることができる。
【0025】
また、前記第1シート層及び前記第2シート層の曲げ強度は30~60MPaであり、前記中間シート層の曲げ強度は15~25MPaであることが好ましい。
【0026】
また、前記歯科用複合矯正シートは、前記第1シート層、前記中間シート層、及び前記第2シート層を積層し、ホットプレスローリング工程を実施することによって形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は異種素材を積層及び結着して複合構造を成した歯科用矯正シートに関するものであり、ソフト(soft)な素材及びハード(hard)な素材をハイブリッド化した複合構造の歯科用矯正シートを提供することができる。
【0028】
特に、本発明は、相対的に強度差がある2種以上の材料を互いに結着させるためにメッシュ構造を導入し、ハードな材料とソフトな材料とを適切に混合して使用することで、強度及び柔軟性を相補的に補強することにより、必要な矯正力及び維持力、及び異種材料間の浮き上がりや剥離現象を減らして耐久性を改善させた複合構造の矯正シートを提供することができる。
【0029】
また、本発明は、矯正シートの外部は相対的にハードな素材から形成されることで、矯正力を付与して歯牙に所望の方向に力を加えるようにし、矯正シートの内部は相対的にソフトな素材から形成されて柔軟性を付与することで、維持力及び変形力に対する復元力を有するようにして維持力の減少を最小化することができる。
【0030】
また、本発明による中間シート層はソフトな材料のマット部とメッシュ構造の間に充填されたハードな材料の結着部とからなり、ハードな材料とソフトな材料とが反復的にまたは複合的に具現されることで、最良の矯正のための矯正力及び維持力は維持しながら柔軟性を付与することにより、矯正初期の過度な矯正力による患者の苦痛を最小化し、柔軟性及び復元力によって維持力減少を最小化し、目的とする矯正治療に適した結果をもたらして矯正成功に至るようにするものである。
【0031】
また、前記ハードな材料とソフトな材料とが繰り返される中間シート層の構成は、前記第1シート層と前記第2シート層とを互いに連結しながら、ソフトな材料のマット部の変形による延伸限界点に到逹することを防ぐ役割を果たすことにより、維持力の維持期間を一層延ばすようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来の歯科用矯正シートの断面を示す模式図である。
図2】従来の歯科用矯正シートの断面を示す模式図である。
図3】本発明の一実施例による歯科用矯正シートの断面を示す模式図である。
図4a】本発明の一実施例による歯科用矯正シートの断面を電子燎微鏡で撮影した写真である。
図4b】本発明の一実施例による歯科用矯正シートの断面を電子燎微鏡で撮影した写真である。
図5】本発明の多様な実施例による歯科用矯正シートの断面を示す模式図である。
図6】本発明の多様な実施例による歯科用矯正シートの断面を示す模式図である。
図7】本発明の多様な実施例による歯科用矯正シートの断面を示す模式図である。
図8】本発明による中間シート層のマット部の多様な実施例を示す模式図である。
図9】本発明の一実施例及び従来技術による曲げ強度データを示す図である。
図10】本発明の一実施例及び従来技術による牽引力試験データを示す図である。
図11】本発明の一実施例及び従来技術による剥離強度を示す図である。
図12】従来技術のストロークによる剥離強度を示す図である。
図13】本発明のストロークによる剥離強度を示す図である。
図14】本発明の一実施例による歯科用矯正シートの実際写真である。
図15】本発明の一実施例による歯科用矯正シートを用いて製作された歯科用矯正装置の実際写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は異種素材を積層及び結着して複合構造を成した歯科用矯正シートに関するものであり、特にソフト(soft)な素材とハード(hard)な素材とをハイブリッド化した複合構造の歯科用矯正シートに関するものである。
【0034】
以下では、添付図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0035】
図3は本発明の一実施例による歯科用矯正シートの断面を示す模式図であり、図4a及び図4bは本発明の一実施例による歯科用矯正シートの断面を電子燎微鏡で撮影した写真であり、図5図7は本発明の多様な実施例による歯科用矯正シートの断面を示す模式図であり、図8は本発明による中間シート層のマット部の多様な実施例を示す模式図であり、図9は本発明の一実施例及び従来技術による曲げ強度データを示す図であり、図10本発明の一実施例及び従来技術による牽引力試験データを示す図であり、図11は本発明の一実施例及び従来技術による剥離強度を示す図であり、図12は従来技術のストロークによる剥離強度を示す図であり、図13は本発明のストロークによる剥離強度を示す図であり、図14は本発明の一実施例による歯科用矯正シートの実際写真であり、図15は本発明の一実施例による歯科用矯正シートを用いて製作された歯科用矯正装置の実際写真である。
【0036】
図示のように、本発明による歯科用複合矯正シート100は、第1シート層110と、第2シート層120と、前記第1シート層110と前記第2シート層120との間に形成された中間シート層130とを含むものであり、異種の材料が互いに結着して単一のシートとして提供されるものである。
【0037】
本発明は、前記中間シート層130がメッシュ構造を含むことで、前記第1シート層110と前記第2シート層120とが前記メッシュ構造を介して互いに連結され、前記第1シート層110、前記第2シート層120、及び前記中間シート層130が互いに堅固に結着することにより、異種材料間の接着不良や剥離現象などを最小化させる。
【0038】
ここで、前記中間シート層130は、前記第1シート層110及び前記第2シート層120に比べてソフト(soft)な素材から形成され、メッシュ構造に形成されたマット部131と、前記マット部131のメッシュの間に前記第1シート層110及び前記第2シート層120の材料が充填されて前記第1シート層110と前記第2シート層120とを結着させる結着部132とを含んでなる。
【0039】
本発明の前記中間シート層130は前記第1シート層110と前記第2シート層120との間に形成されるものであり、全体矯正シート100の中心部に形成されることができる。
【0040】
また、歯列異常、不正咬合、顔面非対称、しゃくれた顎などによる歯牙及び口腔顎の異常咬合によって、前記中間シート層130は前記第1シート層110に近く形成されるか、または前記第2シート層120に近く形成されることができる。
【0041】
本発明の一実施例として、前記第1シート層110が、透明矯正装置において外側に露出される部分であれば、前記第2シート層120は、透明矯正装置において歯牙に接する部分であり得る。その反対にも具現可能であり、歯列や咬合状態などによって、前記中間シート層130を外側部(第1シート層110)に近くに位置させるか、または歯牙に接する部分(第2シート層120)に近くに位置させることができる。
【0042】
前記中間シート層130のマット部131は、前記第1シート層110及び前記第2シート層120に比べてソフト(soft)な素材から形成され、メッシュ構造を成す。前記中間シート層130の結着部132は、前記マット部131のメッシュの間に前記第1シート層110及び前記第2シート層120の材料が充填されて前記第1シート層110と前記第2シート層120とを結着させるようになる。
【0043】
すなわち、第1シート層110及び第2シート層120からなったマトリックス内にメッシュ構造の中間シート層130が形成され、前記中間シート層130を介して前記第1シート層110及び第2シート層120が互いに連結され、異種の材料が互いに堅固に結着して単一のシートを成すようになる。
【0044】
本発明による前記第1シート層110及び前記第2シート層120、その間の中間シート層130は、別途の接着剤または接着層の必要なしに、その材料自体の性質によって互いに結着するものであり、第1シート層110、第2シート層120、及びマット部131が形成された中間シート層130を積層し、ホットプレスローリング工程によって適正の温度及び圧力(温度:150~200℃、カレンダー圧力0~10KN、速度:1~10m/min)で押圧することで、メッシュ構造に前記第1シート層110及び前記第2シート層120が自然に充填されることによって互いに連結され、マット部131、第1シート層110及び第2シート層120が結着するようになる。
【0045】
このように、本発明は、矯正シートの外部は相対的にハードな素材から形成されて矯正力を付与することで、歯牙に所望の方向に力を加えるようにし、矯正シートの内部は相対的にソフトな素材から形成されて柔軟性を付与することで、維持力及び変形力に対する復元力を有するようにすることにより、維持力の減少を最小化することができる。
【0046】
また、本発明は、相対的に強度差がある2種以上の材料を互いに結着させるためにメッシュ構造を導入し、ハードな材料とソフトな材料とを適切に混合して使用することで、強度及び柔軟性が相補的に必要な矯正力及び維持力、かつ異種材料間の浮き上がりや剥離現象を減らして耐久性を改善させた複合構造の矯正シートを提供するものである。
【0047】
また、前記中間シート層はソフトな材料のマット部とメッシュ構造の間に充填されたハードな材料の結着部とから具現され、ハードな材料とソフトな材料とが反復的にまたは複合的に具現されることで、最良の矯正のための矯正力及び維持力は維持しながら柔軟性を付与することにより、矯正初期の過度な矯正力による患者の苦痛を最小化し、柔軟性及び復元力によって維持力の減少を最小化することにより、目的とする矯正治療に適した結果をもたらして矯正成功に至るようにするものである。
【0048】
また、前記ハードな材料と前記ソフトな材料とが繰り返される中間シート層の構成は前記第1シート層と前記第2シート層とを互いに連結しながら、ソフトな材料のマット部の変形による延伸限界点に到逹することを防ぐ役割を果たすことにより、維持力の維持期間を延ばすようになる。
【0049】
図3は本発明の一実施例を示すものであり、図示の矢印は、結着部132によってソフトな材料が延伸限界点に到逹することを防ぐ役割、及び第1シート層110と第2シート層120とを互いに連結させる役割を説明するために示すものである。
【0050】
図4a及び図4bは本発明の一実施例による歯科用矯正シートの断面を電子燎微鏡で撮影したものであり、結着部132によって第1シート及び第2シート層120が単一の構造体のように見えることを確認することができる。
【0051】
本発明による前記第1シート層110及び前記第2シート層120は、同種または異種の材料から形成されることができる。すなわち、前記第1シート層110と前記第2シート層120とは互いに同じ素材から形成されるかまたは互いに異なる素材から形成され、強度が互いに同一であるかまたは異なることができる。例えば、矯正装置の外側部である外部に露出される部分は第1シート層110よりハードな素材から形成され、内部の歯牙と接触する部分である第2シート層120はよりソフトな素材から形成されることができる。矯正の目的及び方向によって、これと反対に具現されることもできる。
【0052】
本発明による前記第1シート層110及び前記第2シート層120は熱可塑性高分子物質を使用することができ、例えば、グリコール変形ポリエチレンテレフタレート(glycolmodified polyethylene terephthalate(PETG))、ポリエステル(polyester)、コポリエステル(co-polyester)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、アクリル(acrylic)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリアミド(polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate)、及び熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)のうちの1種以上を選択して使用することができる。前記の材料のうちのいずれか1種を第1シート層110及び第2シート層120に一緒に使用することができ、必要に応じて、互いに異なる材料を選択するかまたは適切に混合してシート状に製造して使用することができる。
【0053】
また、上述したように、前記第1シート層110及び前記第2シート層120は歯列や咬合の状態、口腔顎状態などによって、互いに同じ厚さまたは互いに異なる厚さに形成されることができる。これは図5に示した。
【0054】
すなわち、矯正治療設計による矯正力の強度によって、第1シート層110及び第2シート層120の厚さを調節することができ、より高い矯正力が必要な場合、前記第1シート層110及び第2シート層120の厚さをより厚くすることができる。
【0055】
前記第1シート層110の厚さ及び前記第2シート層120の厚さは200~700μmの厚さに形成することが好ましい。より好ましくは200~450μmの厚さに形成することができる。前記第1シート層110及び前記第2シート層120の厚さは、矯正力の強度及び前記中間シート層130の厚さによって適切に調節して形成することができる。すなわち、矯正力の強度が大きい場合、相対的に第1シート層110及び第2シート層120の厚さを大きくする。
【0056】
このような前記第1シート層110及び前記第1シート層110は、曲げ係数:≧1,000MPa、曲げ強度:30~60MPa、破断伸度:≧100%、透過率:≧70.0%の物性を有し、ある程度の強度を有しながら透明な素材から形成される。
【0057】
本発明による中間シート層130のマット部131は前記第1シート層110及び前記第2シート層120に比べて相対的にソフトな材料からなり、シリコンゴム(silicone rubber)、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、ポリオレフィンブレンドエラストマー(polyolefin blend elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(thermoplastic polyamide elastomer)、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane(TPU))、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、及びポリエステルエラストマー(polyester elastomer)のうちの1種以上を選択して使用することができる。前記の材料のうちのいずれか1種、または必要に応じて、互いに異なる材料を選択するかまたは適切に混合してメッシュ構造のマット部131を製造することができる。
【0058】
前記中間シート層130のマット部131の厚さは、歯列や咬合の状態、口腔顎状態などによって、前記第1シート層110及び前記第2シート層120の厚さと一緒に調節して矯正力を調節し、維持力を改善するようにする。
【0059】
前記中間シート層130の厚さは50~500μmの厚さに形成することが好ましい。より好ましくは50~250μmの厚さに形成することができる。前記中間シート層130の厚さは、矯正力の強度及び柔軟性の調節のために、前記中間シート層130の厚さによって適切に調節して形成することができる。すなわち、矯正力の強度が大きい場合は、相対的に中間シート層130の厚さを小さくし、柔軟性が必要な場合には、中間シート層130の厚さを大きくする。
【0060】
このような前記中間シート層130のマット部131は、硬度:70~90HRA(ロックウェル硬度)、曲げ強度:15~25MPa、破断伸度:≧200%、透過率:≧70.0%の物性を有し、前記第1シート層110及び第2シート層120よりソフトでありながら透明な素材から形成される。
【0061】
前記中間シート層130のマット部131にはメッシュ構造が形成され、上述したように、前記第1シート層110及び前記第2シート層120に対するホットプレスローリング工程によって、前記第1シート層110及び前記第2シート層120の材料がメッシュの間に充填されることにより、前記第1シート層110及び前記第2シート層120が互いに連結され、前記マット部131と結着させる結着部132が形成される。すなわち、前記第1シート層110及び第2シート層120からなるマトリックス内に前記中間シート層130が形成されるものである。
【0062】
前記結着部132は前記第1シート層110及び第2シート層120の材料が充填され、前記第1シート層110及び第2シート層120の厚さや素材の種類によって、結着部132に充填される材料が占める面積を調節する。すなわち、前記結着部132に充填される材料は前記第1シート層110及び第2シート層120の混合物からなることができるが、それぞれの物性によって、いずれか一材料の量がより多く占有することができる。
【0063】
また、混合領域(第1シート層110の材料と第2シート層120の材料とが混合される領域)と非混合領域(第1シート層110の材料と第2シート層120の材料とが混合されない領域)とが区分されるか、または境界がグラデーションの形態に変化するように結着部132を具現することができる。これは、前記第1シート層110及び前記第2シート層120の材料またはホットプレスローリング工程の条件に依存するようになる。
【0064】
本発明の一実施例では、前記混合領域が前記結着部132内の高さの20~80%の領域内に位置するようにすることで、第1シート層110及び第2シート層120の結着力をもっと改善することができる。すなわち、混合領域がメッシュ構造のあまりにも上側(高さの80%以上)に位置するかまたはあまりにも下側(高さの20%以下)に位置すれば、メッシュ構造との結着力が低下することもある。
【0065】
前記第1シート層110、第2シート層120及び中間シート層130を用いた本発明による複合構造の歯科用矯正シート100は、引張強度:25~50Mpa、曲げ係数:≧800Mpa、厚さ:300~1500μm(より好ましくは500~1000μm)、透過率:≧80.0%を満たし、牽引力回転力24時間の後、平均50%のレベルを維持した。
【0066】
本発明による歯科用矯正シートの厚さは、患者のケース及び矯正装置の着用期間によって、300~1500μmにすることができ、より好ましい厚さは500~1000μmにすることができる。
【0067】
これは、矯正シートの厚さが1500μmを超えれば、矯正治療段階で歯牙を1.0mm以上に移動させるとき、患者の歯牙に過度な荷重がかかり、歯牙及び歯牙周囲の組職が損傷されて矯正失敗につながることがあり、患者の痛症しきい値以上に矯正力がかかることによって患者の痛症を引き起こすおそれがある。
【0068】
一方、矯正シートの厚さが300μmより薄い場合は、矯正力を支持する力が弱くなって正常に矯正できないことがある。また、本発明による歯科用矯正シートは、患者のケースによって、または着用期間や治療期間によって適切に厚さを調節して使用し、一般的に初期の歯牙配列のための矯正の際には500~750μm程度の厚さのものを使用し、矯正治療の後、歯牙の位置を維持するためには、1000μm程度の厚さのものを使用することができる。
【0069】
このように、本発明による中間シート層130はマット部131及び結着部132を含み、ソフトな材料とハードな材料とが互いに交互に結着することで、異種材料である第1シート層110及び第2シート層120と中間シート層130との間の結合力を一層高めて変形や長期使用による剥離を最小化し、マット部131及び結着部132の占有率を調節して矯正力及び柔軟性を調節することができる。
【0070】
本発明の一実施例では、前記マット部131に対する前記結着部132の面積の比が30~70%を満たすようにすることで、すなわち、中間シート層130のマット部131の面積を100とすると、結着部132の面積比は30~70%になるようにすることで、最適の柔軟性及び結着力を図ることができる。
【0071】
一方、本発明によるマット部131のメッシュ構造は、前記第1シート層110及び前記第2シート層120の材料が充填されて互いに連結できる結着部132の具現のためのどの形態であっても構わなく、規則的または不規則的パターンに具現できる。
【0072】
また、前記マット部131のメッシュ構造は、稠密構造が繰り返されるように形成されることができる。すなわち、矯正力や柔軟性を調節するために、中間シート層130の一領域は小さいメッシュサイズを有し、他の領域は大きいメッシュサイズを有することで、メッシュ構造が位置によって異なる密度を有するようにすることができる。
【0073】
また、前記マット部131のメッシュ構造は、図6に示すように、上下が非対称に形成されることができる。これは、表面と内部とに矯正力及び柔軟性の差を置く必要があるときに有用に適用することができる。
【0074】
また、前記マット部131は、前記メッシュ構造の表面に緩衝コーティング層133がさらに形成されることができ、前記緩衝コーティング層133は、前記第1シート層110及び前記第2シート層120の強度と同じかまたはその強度より小さい材料でコーティングできる。
【0075】
図7は前記緩衝コーティング層133が形成されたマット部131を示すものである。これは、前記第1シート層110及び前記第2シート層120の強度と同じかまたはその強度より小さい材料(マット部131の強度よりは大きい材料)から形成されることで、マット部131と前記第1シート層110及び第2シート層120との間の結着力を一層改善させるようにしたものである。すなわち、マット部131と第1シート層110及び第2シート層120との間の強度を有する物質で形成することで、第1シート層110及び第2シート層120の間の結着の際、異種材料間の界面物性差を緩和する役割を果たすようにするものである。
【0076】
前記緩衝コーティング層133は、グリコール変形ポリエチレンテレフタレート(glycolmodified polyethylene terephthalate(PETG))、ポリエステル(polyester)、コポリエステル(co-polyester)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、アクリル(acrylic)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリアミド(polyamide)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate)、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)、シリコンゴム(silicone rubber)、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、ポリオレフィンブレンドエラストマー(polyolefin blend elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(thermoplastic polyamide elastomer)、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane(TPU))、弾性合金(elastomeric alloy)、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer(TPE))、熱可塑性加硫物エラストマー(thermoplastic vulcanizate(TPV) elastomer)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(thermoplastic co-polyester elastomer)、及びポリエステルエラストマー(polyester elastomer)のうちの1種以上を使用し、前記マット部131の浸漬またはスプレーコーティングなどによって形成することができる。その厚さは5~10μm程度が適切である。
【0077】
図8は多様な実施例によるメッシュ構造を示すものであり、その他にもストライプパターン、曲線パターンなど、結着部132を具現することができるどの形態でも構わなく、メッシュの稠密程度は矯正力及び柔軟性によって調節する。
【0078】
本発明による中間シート層130は、前記マット部131の表面にプラズマ処理をさらに実施することができ、マット部131の表面接触角を調節して前記第1シート層110及び第2シート層120の結合力を調節するかまたはもっと改善させるものである。
【0079】
一般的に、前記表面処理は公知の多様な方法によって具現することができる。例えば、親水性表面処理はマット部131上に酸化物層を形成するか、または酸素プラズマ表面処理などを実施して具現することができ、疎水性表面処理は疎水性物質のコーティングまたはプラズマ処理によって具現することができる。
【0080】
以下では、本発明の一実施例及びそれによる矯正シートの多様な物性を測定したデータについて説明する。
【0081】
本発明の一実施例として、前記第1シート層及び第2シート層は同じ素材としてグリコール変形ポリエチレンテレフタレート(glycolmodified polyethylene terephthalate(PETG))を使用し、その物性は、曲げ係数:2000~2200MPa、曲げ強度:50~55Mpa、破断伸度:150%、透過率:≧80.0%、表面張力(Surface Tension):36dynes/cm、105℃で5分間試験した収縮率(Shrinkage tested at 105℃ for 5min):MD:≧-2.0%、TD:≦+2.0%、Vicat:69.0±2.0であった。そして、前記第1シート層の厚さは300μm、前記第2シート層の厚さは350μmであった。
【0082】
そして、本発明の一実施例として、前記中間シート層のマット部の素材としては熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane(TPU))を使用し、その物性は、硬度:80±2HRA、曲げ強度:25~30Mpa、破断伸度:550%、引き裂き強度:60kg/cm、紫外線抵抗(UV Resistance):グレースケール(Grey scale)3.5であり、その厚さは100μmであった。
【0083】
これにより製造された本発明の一実施例による透明矯正シートの物性は、曲げ強度:32~39Mpa、曲げ係数:1200~1300Mpa、透過率:90%、厚さ:750μm(ハード素材650μm、ソフト素材100μm)、剥離強度:0.3N/cm以上であり、牽引力回転力24時間の後、平均60%のレベルを維持した。
【0084】
図9は本発明の一実施例及び従来技術による曲げ強度データを示す図であり、従来技術1はグリコール変形ポリウレタンテレフタレート(glycolmodified polyethylene terephthalate(PETG))からなった単層シート、従来技術2はPETG/TPU(単一ソフト素材)/PETGからなった多層シート(図1及び図2の構造)である。
【0085】
図9に示すように、本発明の一実施例は、単層シートに比べて低い強度を有し、多層シートに比べて類似した強度を有することを確認することができた。これは、従来の矯正シートの場合、初期着用の際、過度な矯正力によって患者に苦痛を引き起こすことになるが、これを軽減させることで、患者が着用するとき、安定感を付与する。
【0086】
図10は本発明の一実施例及び従来技術による牽引力試験データを示す図であり、前記従来技術1及び従来技術2と比較した。
【0087】
図10に示すように、本発明の一実施例は、単層シートに比べて矯正力が相対的に遅く減少して最終矯正力に優れることを確認することができた。すなわち、従来の素材に比べて、歯牙の変形位置で変形が少なくて矯正維持力が改善された。
【0088】
すなわち、本発明による実施例は従来技術に比べて初期に適正使用レベルの強度を有するとともに、ソフトな素材である中間シート層を導入することで、維持力が高くて最終矯正力に優れることを確認することができる。
【0089】
図11は本発明の一実施例及び前記従来技術(従来技術1aはポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate)/TPU/ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate)の多層シートである)による剥離強度を示す図である。
【0090】
図11に示すように、単一ソフト素材を含む多層シート(従来技術1a及び従来技術2)に比べて、本発明の一実施例はソフトな素材でありながらメッシュ構造を有する中間シート層を使用することで、接着力が向上することを確認することができた。これにより、本発明は、矯正維持力を高めながら優れた層間接着力及び耐久性を有することを確認することができた。
【0091】
図12は従来技術2(多層シート)のストロークによる剥離強度を示す図である。図13は本発明の一実施例のストロークによる剥離強度を示す図であり、メッシュ構造のソフトな素材の中間シート層を使用することで、矯正装置の成形の際、メッシュの間にハードな素材が充填され、ハードな素材によって完全に連結されることにより、従来の多層シートの剥離現象及び軟質素材の延びの問題点を改善し、矯正維持力を高めることができるようになった。
【0092】
図14は本発明の一実施例による歯科用矯正シートの実際写真であり、図15は本発明の一実施例による歯科用矯正シートを用いて製作された歯科用矯正装置の実際写真である。
【0093】
図14に示すように、ホットプレスローリング工程によって本発明による歯科用矯正シートを製作した後、歯牙をスキャンし、3Dプリンターによって歯牙模型を製作する。その後、バイオスター(Biostar)を使用して本発明による複合構造の歯科用矯正シートを前記歯牙模型によって熱成形し、アライナーを介して最終の歯牙模型に加工することで、本発明による歯科用矯正装置の製作を完了する。図15はこのように製作された本発明による歯科用矯正装置の実際製品を示す写真である。
【符号の説明】
【0094】
100 矯正シート
110 第1シート層
120 第2シート層
130 中間シート層
131 マット部
132 結着部
133 緩衝コーティング層
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15