(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】キーボード装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/02 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G06F3/02 400
(21)【出願番号】P 2023113664
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2022073292の分割
【原出願日】2022-04-27
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂薗 賢
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-129870(JP,A)
【文献】特開2020-113096(JP,A)
【文献】特開2019-074984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
H01H 13/00ー13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボード装置であって、
複数のキートップと、
前記複数のキートップを支持するベースプレートと、
上部接点シートと、下部接点シートと、前記上部接点シートと前記下部接点シートとの間に挟まれたスペーサシートとを有し、前記ベースプレートの上面側に積層されたメンブレンシートと、
上下方向に沿う複数の貫通孔と、
前記貫通孔に挿通される突出部を有し、前記複数のキートップの相互間を仕切るフレームと、
を備え、
前記貫通孔は、前記上部接点シート及び前記下部接点シートの一方に設けられた第1孔部での内径が、前記上部接点シート及び前記下部接点シートの他方に設けられた第2孔部での内径よりも小さ
く、且つ、前記第1孔部での内径が前記突出部の外周面の外径より小さい
ことを特徴とするキーボード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、筐体の上面に臨むように搭載されたキーボード装置の下方にマザーボードやスピーカー等の各種コンポーネントを配置している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコンポーネントの筐体内での支持構造として、例えばキーボード装置のベースプレートにボス状のスタッドを固定して下方に突出させ、これにコンポーネントをねじ止めする構造がある。
【0005】
しかしながら、この構成は、金属製のスタッドを金属製のベースプレートに固定する工程、例えばかしめ工程が必要であり、そのための金型も必要であるため、製造コストが増大する。また、電子機器の機種毎にコンポーネントのねじ止め位置が異なる。一方、上記のようなキーボード装置は、1つの機種に対応する位置にしかスタッドを設置できず、汎用性が乏しい。そして、このようなキーボード装置は、異なる機種に適用させるべくスタッドの位置を変更しようとすると新たな金型が必要となり、製造コストが一層増大する。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、コストの増大を抑え、さらにキーボード装置の汎用性を向上させることができるキーボード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、複数のキートップと、前記複数のキートップを支持するベースプレートと、前記ベースプレートの上面側に積層されたメンブレンシートとを有するキーボード装置と、前記複数のキートップの相互間を仕切るフレームと、前記キーボード装置の下方に配置されるコンポーネントと、を備え、前記メンブレンシートは、上部接点シートと、下部接点シートと、前記上部接点シートと前記下部接点シートとの間に挟まれたスペーサシートと、を有し、前記キーボード装置は、上下方向に沿う複数の貫通孔を有し、前記フレームは、前記貫通孔に挿通され、先端に前記コンポーネントが連結される複数の突出部を有し、前記上部接点シート及び前記下部接点シートの一方は、前記貫通孔に挿通された前記突出部の外周面に密着するシール部を有する。
【0008】
本発明の第2態様に係る電子機器の製造方法は、複数のキートップと、前記複数のキートップを支持するベースプレートと、前記ベースプレートの上面側に積層されたメンブレンシートとを有するキーボード装置と、前記複数のキートップの相互間を仕切るフレームと、を互いに固定する際、前記キーボード装置の上下方向に沿う複数の貫通孔に対し、前記フレームから下方に突出した複数の突出部を挿通させ、同時に、前記突出部の外周面に対し、前記メンブレンシートを構成する上部接点シート及び下部接点シートの一方に設けられたシール部を密着させる第1工程と、前記貫通孔を通して前記キーボード装置の下面側に突出した前記突出部の先端にコンポーネントを連結する第2工程と、を有する。
【0009】
本発明の第3態様に係るキーボード装置は、複数のキートップと、前記複数のキートップを支持するベースプレートと、上部接点シートと、下部接点シートと、前記上部接点シートと前記下部接点シートとの間に挟まれたスペーサシートとを有し、前記ベースプレートの上面側に積層されたメンブレンシートと、上下方向に沿う複数の貫通孔と、を備え、前記貫通孔は、前記上部接点シート及び前記下部接点シートの一方に設けられた第1孔部での内径が、前記上部接点シート及び前記下部接点シートの他方に設けられた第2孔部での内径よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、コストの増大を抑え、さらにキーボード装置の汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すフレームに対するキーボード装置及びコンポーネントの取付方法の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、電子機器の製造方法の一手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変形例に係るシール部を備える筐体の模式的な側面断面図である。
【
図8】
図8は、プレート状部材を備えるキーボード装置を搭載した筐体の模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るキーボード装置、電子機器、及びその製造方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の平面図である。
【0014】
図1に示すように、電子機器10は、キーボード装置12を搭載した筐体14と、ディスプレイ16を搭載したディスプレイ筐体18とを備える。本実施形態では、筐体14とディスプレイ筐体18とをヒンジ20で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである電子機器10を例示する。
図1は、ディスプレイ筐体18を筐体14から開いた使用形態を示す。電子機器10は、キーボード装置を搭載した電子機器であれば、クラムシェル型に限定されない。
【0015】
以下、筐体14及びこれに搭載されたキーボード装置12等の各要素について、ディスプレイ16を見ながらキーボード装置12を使用するユーザから見た方向を基準とし、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。
【0016】
ディスプレイ筐体18は、筐体14よりも薄い扁平な箱体であり、前面にディスプレイ16を有する。ディスプレイ16は、例えば有機ELや液晶等で構成される。ディスプレイ筐体18は、下端部が筐体14の後端部とヒンジ20を介して連結されている。
【0017】
筐体14は、薄い扁平な箱体であり、キーボード装置12が上面14aに臨んでいる。筐体14の内部には、CPUやメモリ等を実装したマザーボード22(
図3参照)、スピーカー装置、冷却装置、及びバッテリ装置等の各種のコンポーネントCが収容されている。
【0018】
キーボード装置12は、筐体14の上部にて支持されている。キーボード装置12は、複数のキースイッチ24を有する。キーボード装置12は、各キースイッチ24の操作面となるキートップ24aの周囲をフレーム(アイソレーションフレーム)26で仕切ったアイソレーション型のキーボード装置である。
【0019】
フレーム26は、樹脂や金属等で形成された網目状の枠体である。本実施形態の筐体14は、上面14a及び四周側面を形成するカバー部材27と、カバー部材27の下面開口を閉じるカバー部材28とで構成されている。フレーム26は、上面14aを形成するカバー部材27に一体成形されている。フレーム26は、カバー部材27と別体に構成されてもよい。フレーム26は、各キートップ24aが上下動可能に挿入される複数のキー孔26aを有する。フレーム26は、左右方向に延びた横枠部26bと、前後方向に延びた縦枠部26cとで囲まれた部分がキー孔26aとなる。
【0020】
図2は、キーボード装置12の底面図である。
図3は、
図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
図4は、
図2中のIV-IV線に沿う模式的な断面図である。
図5は、
図3に示すフレーム26に対するキーボード装置12及びコンポーネントCの取付方法の一例を示す図である。
【0021】
図2~
図4に示すように、キーボード装置12は、複数のキースイッチ24と、ベースプレート30と、メンブレンシート31と、発光モジュール32と、を備える。
【0022】
各キースイッチ24は、キートップ24aと、ガイド機構24bと、ラバードーム24cとを有する。ガイド機構24bは、キートップ24aをベースプレート30の上面30a側で上下動可能に支持するシザー機構である。ラバードーム24cは、シリコーンゴム等の可撓性を有する弾性材料で形成されたドーム形状部材である。ラバードーム24cは、キートップ24aが押下された場合にメンブレンシート31を押圧し、キートップ24aの押下操作が解除された際にキートップ24aを元の位置に復帰させる弾性部材である。
【0023】
ベースプレート30は、各キースイッチ24やフレーム26の取付用のプレートである。ベースプレート30は、薄いステンレス板やアルミニウム板等、金属製の板状部材に切り起こし成形や打ち抜き成形を施したものである。
【0024】
メンブレンシート31は、押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートである。メンブレンシート31は、ベースプレート30の上面30aに積層されている。メンブレンシート31は、上部接点シート33と、下部接点シート34と、接点シート33,34間に挟まれたスペーサシート35とを有する。
【0025】
接点シート33,34は、スペーサシート35によって形成された空間を挟んで対向する互いの対向面にそれぞれ所定の導電パターンを有する。接点シート33,34は、例えばPETフィルム等の表面に銀ペースト或いはカーボンペースト等の導電インクをプリントした構造である。接点シート33,34の厚みは、例えば0.05~0.5mm程度と極めて薄く形成され、高い可撓性を有する。スペーサシート35は、接点シート33,34間を絶縁するものであり、例えばPETフィルムで形成される。
【0026】
メンブレンシート31は、キートップ24aが押下操作された場合に、ラバードーム24cによって押下された上部接点シート33が弾性変形する。その結果、上部接点シート33側の導電パターン(可動接点)が下部接点シート34側の導電パターン(固定接点)に当接して接点を閉じ、これによりキー種類に応じた所定の入力信号が出力される。メンブレンシート31は各所に孔部を有し、この孔部を通してガイド機構24bやフレーム26がベースプレート30の上面30aに支持される。
【0027】
発光モジュール32は、各キートップ24aを発光させるためのものである。発光モジュール32は、ベースプレート30の下面30bに積層されている。発光モジュール32は、導光板36と、導光板36の上面36aに積層された第1反射シート37と、導光板36の下面36bに積層された第2反射シート38とを有する。
【0028】
導光板36は、例えばPET、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する樹脂製のプレートやシートである。導光板36には、光源部32aが取り付けられている(
図2参照)。光源部32aは、例えば導光板36の左右中央部に取り付けられ、LED素子等で構成された複数の光源が前後方向に並んでいる。光源部32aは、例えばフレキシブル基板39を用いてマザーボード22と接続される。導光板36は、光源部32aから発せられた光を左右方向に導き、各キートップ24aを裏面から照射する。
【0029】
反射シート37,38は、導光板36の外面を覆うことで導光板36内を拡散する光が外部に漏れることを抑制し、導光の効率を向上させるためのものである。反射シート37,38は、例えば高い反射性能を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエステル、或いはポリオレフィン等の樹脂製の反射シートでよく、多重積層構造のものでもよい。反射シート37,38は、導光板36の外面のうち、キートップ24aに光を照射する領域と、光源部32aからの光を受光する領域とを除いた部分を覆っている。
【0030】
図2~
図4に示すように、キーボード装置12は、複数の取付孔40と、複数の貫通孔42とがそれぞれ上下方向に沿って貫通形成されている。
【0031】
取付孔40は、
図2中に貫通孔42よりも小径の円で図示した孔部である。取付孔40は、キーボード装置12をフレーム26に固定するためのねじが挿通される。フレーム26の下面26dには、キーボード装置12の下から上に取付孔40を貫通したねじが螺合されるねじ穴が形成されている。キーボード装置12は、各取付孔40に通されたねじにより、フレーム26の下面26dに固定される。
【0032】
貫通孔42は、キーボード装置12の下方でマザーボード22等のコンポーネントCをフレーム26に連結するために用いられる(
図3参照)。
図3に示すように、フレーム26の下面26dには、軸方向にねじ穴44aが形成された複数の円柱状の突出部44が設けられている。
【0033】
突出部44は、キーボード装置12の上下方向に沿う貫通孔42に挿通され、その先端44bがキーボード装置12の下面12aよりも下に配置される。
図3に示す構成例では、キーボード装置12の下面12aにシート状部材52が積層されているため、先端44bはシート状部材52よりも下に配置される。突出部44の先端44bには、ねじ穴44aに螺合されるねじ46を用いてマザーボード22等のコンポーネントCが連結される。
【0034】
図2に示すように、本実施形態の貫通孔42は、突出部44が挿通される一部の貫通孔42Aと、突出部44が挿通されない残りの貫通孔42Bとを有してもよい。貫通孔42A,42Bは、キーボード装置12を筐体14に搭載する前、つまりキーボード装置12がフレーム26に固定される前の状態では互いに同一構造である。そこで、以下では原則として、貫通孔42と呼ぶときは貫通孔42A,42Bの共通部分について説明し、貫通孔42A,42Bを分けて呼ぶときはそれぞれで異なる特徴部分について説明するものとする。
【0035】
図3及び
図4に示すように、貫通孔42は、キーボード装置12の上から下に向かって順に、孔部33aと、孔部35aと、孔部34aと、孔部30cと、孔部32bとで構成されている。
【0036】
孔部33aは、上部接点シート33に形成されたものである。孔部35aは、スペーサシート35に形成されたものである。孔部34aは、下部接点シート34に形成されたものである。孔部30cは、ベースプレート30に形成されたものである。孔部32bは、発光モジュール32に形成されたものである。これら孔部33a,35a,34a,30c,32bは、同軸上に配置されて互いに連通し、これにより貫通孔42を形成している。
【0037】
なお、発光モジュール32は、貫通孔42が形成された部分では、導光板36に形成された孔部36cが反射シート37,38同士を接着した耳状部分32cで封止されている。発光モジュール32は、反射シート37,38を接着した耳状部分32cに孔部32bが形成されている。その結果、発光モジュール32は、導光板36から貫通孔42への光漏れが防止されている。
【0038】
図3及び
図4に示すように、上部接点シート33は、孔部33aの周縁部に形成され、貫通孔42の内側に向かって延びたシール部50を有する。シール部50は、上側の上部接点シート33を下側の下部接点シート34よりも貫通孔42の内側に向かって延在させた部分である。シール部50は、突出部44の外周面に密着し、貫通孔42Aを止水する。
【0039】
図5に示すように、上部接点シート33の孔部33aの内径D1は、下部接点シート34及びスペーサシート35の孔部34a,35aの内径D2より小さい。そして、シール部50が形成された上部接点シート33における孔部33aの内径D1は、突出部44の外径Dより小さい。一方、シール部50が形成されない下部接点シート34における孔部34aの内径D2は、突出部44の外径Dより大きい。つまりキーボード装置12の貫通孔42は、上部接点シート33に設けられた孔部33aでの内径D1が、下部接点シート34に設けられた孔部34aでの内径D2よりも小さいことで、孔部33aの周縁部がシール部50を構成する。
【0040】
これにより、薄く可撓性を有する上部接点シート33に形成されたシール部50は、突出部44が貫通孔42Aに挿通された際、その外周面に柔軟に密着する。その結果、シール部50は、貫通孔42Aを止水し、キーボード装置12の上方から貫通孔42Aを通して筐体14内に液体が浸入することを抑制する。なお、発光モジュール32の孔部32bの内径D3は、孔部33aの内径D1及び突出部44の外径Dより大きい。
【0041】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の電子機器10は、キーボード装置12の下面12aにシート状部材52を積層している。シート状部材52は、樹脂製の薄いフィルム状シートであり、例えばマイラーシート又はPET(ポリエチレンテレフタレート)シート等でよい。
図2では、シート状部材52の図示を省略している。
【0042】
図3に示すように、シート状部材52は、貫通孔42Aとオーバーラップする部分には孔部52aを有する。孔部52aは、貫通孔42Aの直下に同軸形成され、孔部33aの内径D1及び突出部44の外径Dより大きな内径を有する。
図4に示すように、シート状部材52は、貫通孔42Bとオーバーラップする部分には孔部52aが形成されず、貫通孔42Bを塞いでいる。これによりシート状部材52は、貫通孔42Bを止水し、キーボード装置12の上から貫通孔42Bを通して筐体14内に液体が浸入することを防止する。
【0043】
次に、電子機器10の製造方法の一手順について、特にフレーム26に対するキーボード装置12及びコンポーネントCの取付手順に着目して説明する。
図6は、電子機器10の製造方法の一手順を示すフローチャートである。
【0044】
ここでは、キーボード装置12が予めアセンブリされ、筐体14とディスプレイ筐体18がヒンジ20で予め連結されているものとする。なお、ヒンジ20は、キーボード装置12等を筐体14に搭載した後に連結してもよい。
【0045】
先ず、
図6中のステップS1において、フレーム26をキーボード装置12の上に配置する。つまりキーボード装置12をフレーム26の下面26dに押し当てる。この際、各突出部44は、貫通孔42Aと対応する位置にそれぞれ配置されている。このため、フレーム26とキーボード装置12とを互いに位置合わせして押し付けると、各突出部44が円滑に各貫通孔42Aに差し込まれる。
【0046】
ここで、メンブレンシート31の上部接点シート33は、上記したように、突出部44の外径Dより小さい内径D1の孔部33aを有し、この孔部33aの周縁部がシール部50となる。一方、貫通孔42のうち、孔部33a以外の孔部35a,34a,30c,32bの内径は、突出部44の外径Dより大きい。また、シート状部材52の孔部52aの内径も突出部44の外径Dより大きい。
【0047】
従って、突出部44は、貫通孔42Aに差し込まれると、先ず、先端44bがシール部50に接触する。突出部44は、そのまま下方に押し込まれると、その外周面でシール部50を押し下げる。これによりシール部50は、下方へと膨らみつつ変形し、突出部44の外周面に密着する。その結果、シール部50は、貫通孔42Aを上下方向に塞ぐ防水構造を構築する(
図3参照)。さらに突出部44は、他の孔部35a,34a,30c,32b,52aを円滑に挿通し、その先端44bが貫通孔42A及び孔部52aよりも下方に配置される。
【0048】
図6中のステップS2において、取付孔40を用いてキーボード装置12をフレーム26にねじ止め固定する。なお、シート状部材52は、取付孔40に挿通されるねじにより、キーボード装置12の下面12aに共締めされるとよい。
【0049】
図6中のステップS3において、突出部44にコンポーネントCを連結する。具体的には、キーボード装置12よりも下方に突出した突出部44の先端44bにねじ46を用いてマザーボード22等のコンポーネントCを締結する(
図3及び
図5参照)。なお、これらステップS1~S3の各工程と前後して、バッテリ装置等を筐体14内に収容する。そして、全ての部品の取付完了後、カバー部材28をカバー部材27に連結し、筐体14の下面を閉じることで、電子機器10の製造が完了する。
【0050】
図7は、変形例に係るシール部54を備える筐体14の模式的な側面断面図である。
【0051】
図7に示すように、電子機器10において、貫通孔42Aを止水するシール部は、下部接点シート34に設けてもよい。すなわち、
図7に示すシール部54は、下部接点シート34の孔部34aの周縁部に形成され、貫通孔42の内側に向かって延びている。シール部54は、下側の下部接点シート34を上側の上部接点シート33よりも貫通孔42の内側に向かって延在させた部分である。シール部54も突出部44の外周面に密着し、貫通孔42Aを止水する。
【0052】
この場合、
図7に示すメンブレンシート31では、下部接点シート34の孔部34aの内径D2が上部接点シート33の孔部33aの内径D1より小さく構成される。そして、シール部54が形成された下部接点シート34における孔部34aの内径D2は、突出部44の外径Dより小さく構成される。一方、シール部54が形成されない上部接点シート33における孔部33aの内径D1は、突出部44の外径Dより大きく構成される。つまりキーボード装置12の貫通孔42は、下部接点シート34に設けられた孔部34aでの内径D2が、上部接点シート33に設けられた孔部33aでの内径D1よりも小さいことで、孔部34aの周縁部がシール部54を構成するものとしてもよい。これにより薄く可撓性を有する下部接点シート34に形成されたシール部54は、上記したシール部50と同様、貫通孔42Aに挿通された突出部44の外周面に密着し、貫通孔42Aを止水する。
【0053】
図8は、プレート状部材56を備えるキーボード装置12を搭載した筐体14の模式的な側面断面図である。
【0054】
図8に示すように、キーボード装置12は、発光モジュール32に代えて、プレート状部材56を備えた構成であってもよい。ノート型PCのような電子機器10は、発光モジュール32の有無が選択可能な製品ラインナップを採用する場合がある。この場合にも、電子機器10は、部品共用のため、発光モジュール32の有無にかかわらず、同一のフレーム26を用いることが好ましい。
【0055】
そこで、キーボード装置12は、発光モジュール32を搭載しない構成では、プレート状部材56を発光モジュール32に代えてベースプレート30の下面30bに積層するとよい。プレート状部材56は、所定の樹脂プレートであり、発光モジュール32と略同一の板厚を有する。その結果、キーボード装置12は、発光モジュール32の有無にかかわらず、その全体の板厚が変わらなくなる。このため、電子機器10は、キーボード装置12の汎用性が向上し、同時にフレーム26や第1筐体11の汎用性も向上して製品コストが低下する。
【0056】
勿論、プレート状部材56も貫通孔42に対応する孔部56aを有し、この孔部56aの内径は突出部44の外径Dよりも大きく構成されるとよい。プレート状部材56は、
図7に示すキーボード装置12に適用してもよいことは言うまでもない。
【0057】
以上のように、本実施形態の電子機器10において、キーボード装置12は、上下方向に沿う複数の貫通孔42を有し、フレーム26は、貫通孔42(42A)に挿通され、先端44bにコンポーネントCが連結される複数の突出部44を有する。そして、上部接点シート33及び下部接点シート34の一方は、貫通孔42(42A)に挿通された突出部44の外周面に密着するシール部50,54を有する。
【0058】
このように、当該電子機器10は、キーボード装置12に形成された貫通孔42と、貫通孔42に挿通されたフレーム26の突出部44の外周面に密着するシール部50,54とを有する。従って、電子機器10は、キーボード装置12のベースプレート30にスタッドを固定する必要がなく、そのための金型や固定作業が不要となり、製造コストが低減される。また、貫通孔42は、キーボード装置12を上下方向に貫通しているが、シール部50,54によって防水されるため、筐体14内のマザーボード22の電子部品が漏水することを抑制できる。ここで、シール部50,54は、メンブレンシート31を構成する薄い接点シート33又は34で形成している。このため、シール部50,53は、突出部44の外面に対する追従性がよく、密着度が高いため、防水性が高い。なお、突出部44の形状は円柱状に限られず、例えば角柱状でもよい。要は、シール部50,54を形成する孔部33a,34aの内縁が突出部44の外縁よりも小さく、シール部50,54が突出部44の外面に確実に密着できればよい。
【0059】
さらに、当該電子機器10では、突出部44は、複数の貫通孔42のうちの一部の貫通孔42Aにのみ挿通される構成とすることが好ましい(
図2~
図4参照)。つまり貫通孔42は、当該キーボード装置12の搭載が想定される複数機種の電子機器での突出部44の各配置をカバーできる位置に形成しておくとよい。そうするとキーボード装置12は、電子機器の機種毎に必要な貫通孔42を選択的に利用することで、複数機種への搭載が可能となり、汎用性が向上する。なお、突出部44が挿通されていない貫通孔42Bは、シート状部材52で塞がれることで、ここからの浸水の問題も防止できる。
【0060】
但し、キーボード装置12は、例えば1機種の突出部44の配置のみに対応する位置に貫通孔42を形成しておき、全ての貫通孔42に突出部44が挿通される構成としてもよい。この場合、キーボード装置12は、1機種のフレーム26専用となり、一見すると、汎用性の向上効果が得られないようにも思える。しかしながら、上記したように、当該電子機器10は金型によるスタッドの固定作業がない。このため、キーボード装置12は、ベースプレート30、メンブレンシート31、発光モジュール32(又はプレート状部材56)等の各構成部品について、その製造時に貫通孔42の設置位置をコントロールするだけで、突出部44の配置が異なる複数機種に柔軟に対応できるため、実質的な汎用性は十分に高い。
【0061】
図3及び
図7に示すように、シール部は、接点シート33,34のいずれに設けてもよいが、上側の上部接点シート33に設けることが好ましい。すなわち、
図7に示すシール部54は、下側の下部接点シート34に形成されている。このため、シール部54は、貫通孔42に挿通される突出部44によって下に引っ張られる際、下部接点シート34をスペーサシート35から剥離する方向の力を生じる。これに対し、
図3に示すシール部50は、上側の上部接点シート33に形成されている。このため、シール部50は、貫通孔42に挿通される突出部44によって下に引っ張られたとしても、メンブレンシート31の各層間が剥離される方向の力は生じないという利点がある。
【0062】
また、本実施形態の電子機器10の製造方法によれば、フレーム26とキーボード装置12とを固定する際、両者を当接させるだけで突出部44が貫通孔42に挿通され、自動的にシール部50,54が止水構造を構築する。このため、当該方法によれば、上記したように低コストで汎用性が高い電子機器10を効率よく製造することができる。
【0063】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10 電子機器
12 キーボード装置
14 筐体
22 マザーボード
26 フレーム
30 ベースプレート
30c,32b,33a,34a,35a,36c,52a,56a 孔部
31 メンブレンシート
32 発光モジュール
33 上部接点シート
34 下部接点シート
35 スペーサシート
40 取付孔
42,42A,42B 貫通孔
50,54 シール部
52 シート状部材
56 プレート状部材
C コンポーネント