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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】クーラント供給装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20241106BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20241106BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
B01D21/24 H
B01D21/24 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023215466
(22)【出願日】2023-12-21
【審査請求日】2024-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】大川原 康仁
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/275992(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/21700(WO,A1)
【文献】特開2011-51055(JP,A)
【文献】特開2015-196209(JP,A)
【文献】国際公開第2012/150625(WO,A1)
【文献】特開2009-56532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10
B23Q 11/00
B01D 21/24
B24B 55/02
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の機内で吐出させるクーラントを供給するクーラント供給装置であって、
前記機内から排出されたクーラントを貯留するクーラントタンクと、
前記クーラントタンクに設けられた第1排出口と前記機内に設けられる第1吐出部とをつなぎ、前記第1排出口から排出されるクーラントを前記第1吐出部へ導く第1流路と、
前記クーラントタンクに設けられた第2排出口と前記機内に設けられる第2吐出部とをつなぎ、前記第2排出口から排出されるクーラントを前記第2吐出部へ導く第2流路と、
を備え、
前記クーラントタンクは、
立型のタンク本体と、
前記機内から排出されたクーラントを前記タンク本体の内周面に沿って旋回させる旋回流生成構造と、
を含み、
前記タンク本体において、クーラントの旋回流によりそのクーラントに含まれるスラッジが集められる集約箇所に前記第1排出口が設けられる一方、前記集約箇所から離隔した箇所に前記第2排出口が設けられ、
前記第1吐出部は、クーラントを吐出させるための内部通路が形成された工具を保持し、前記内部通路と前記第1流路とを連通させる連通路が形成された主軸ユニットであり、
前記第2吐出部は、前記工具の吐出口よりも大きな吐出口を有する吐出装置であり、
前記第1流路にスラッジを遠心分離する機能を有する遠心分離フィルタが設けられる一方、前記第2流路には前記遠心分離フィルタが設けられない、クーラント供給装置。
【請求項2】
前記第2吐出部が機内洗浄用のノズルである、請求項1に記載のクーラント供給装置。
【請求項3】
前記遠心分離フィルタがサイクロンフィルタである、請求項1又は2に記載のクーラント供給装置。
【請求項4】
前記第1排出口が前記タンク本体の底面中央部に設けられる一方、前記第2排出口が前記タンク本体の周縁部に設けられる、請求項1又は2に記載のクーラント供給装置。
【請求項5】
前記旋回流生成構造は、前記タンク本体の下部領域に配置され、前記機内から排出されたクーラントを前記タンク本体の内周面に沿って旋回させるよう吐出する吐出口を有する、請求項1又は2に記載のクーラント供給装置。
【請求項6】
前記機内から排出されたクーラントを貯留する一次タンクと、
前記クーラントタンクとして前記一次タンクの下流側に設けられた二次タンクと、
前記吐出口を有し、前記一次タンクと前記二次タンクとをつなぐ配管と、
前記配管に設けられ、前記一次タンクからクーラントをくみ上げて前記二次タンクの前記タンク本体に供給するポンプと、
を備え、
前記吐出口からのクーラントの吐出量を調整することで、前記タンク本体の下部領域にクーラントの旋回流が形成される、請求項5に記載のクーラント供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の機内にクーラントを供給するクーラント供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、機内で吐出するクーラントを供給するクーラント供給装置が設けられる。クーラントは、加工時における工具およびワークの除熱や潤滑のための切削油として用いられるが、機内に飛散した切屑を除去するための洗浄液としても用いられる(特許文献1参照)。工作機械にはクーラントを清浄に保ちつつ循環させるためのクーラント循環路が設けられる。
【0003】
クーラント循環路には、機内から排出されたクーラントを一時貯留するクーラントタンクが設けられる。機内から排出されるクーラントにはスラッジが含まれるため、タンク内でそのスラッジが凝固しないうちに排出し、タンク外で除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6887033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、工具の先端からクーラントを吐出する、いわゆるスルースピンドルクーラント装置を備えるクーラント供給装置も提案されている。工具とそれを支持する主軸ユニットがクーラントを流通させる内部通路を有し、その内部通路がクーラントタンクと連通する。工具の先端にはクーラントを吐出する吐出口が設けられる。このような装置によれば、加工時に工具の先端からクーラントを吐出することで、加工精度の向上、加工時間の短縮、工具の長寿命化および切屑排出性能の向上等を図ることができる。
【0006】
しかしながら、工具の先端に設けられる吐出口が狭小となるため、クーラントに含まれる小さなスラッジでさえ流路の詰まりを生じさせる可能性がある。このため、クーラント循環路に高性能なスラッジ除去装置を設けて、機内に戻るクーラントの全量についてスラッジが含まれないようにすることが試みられている。また、工作機械においては自動化の妨げとなる切屑を徹底的に機外に排出できるようにするためにクーラントは主軸ユニット以外の機内に設置されたノズルなどからも供給される。このため、加工以外の目的でもクーラントは大量に使用される傾向にある。クーラントの大流量化の要望に答えつつ、クーラントの全量についてスラッジを完全に除去できるようにすると、高性能で処理能力も高いスラッジ除去装置が必要となりコスト面で不利となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、工作機械の機内で吐出させるクーラントを供給するクーラント供給装置である。このクーラント供給装置は、機内から排出されたクーラントを貯留するクーラントタンクと、クーラントタンクに設けられた第1排出口と機内に設けられる第1吐出部とをつなぎ、第1排出口から排出されるクーラントを第1吐出部へ導く第1流路と、クーラントタンクに設けられた第2排出口と機内に設けられる第2吐出部とをつなぎ、第2排出口から排出されるクーラントを第2吐出部へ導く第2流路と、を備える。クーラントタンクは、立型のタンク本体と、機内から排出されたクーラントをタンク本体の内周面に沿って旋回させる旋回流生成構造と、を含む。タンク本体において、クーラントの旋回流によりそのクーラントに含まれるスラッジが集められる集約箇所に第1排出口が設けられる一方、集約箇所から離隔した箇所に第2排出口が設けられる。第1吐出部は、クーラントを吐出させるための内部通路が形成された工具を保持し、内部通路と第1流路とを連通させる連通路が形成された主軸ユニットである。第2吐出部は、工具の吐出口よりも大きな吐出口を有する吐出装置である。第1流路にスラッジを遠心分離する機能を有する遠心分離フィルタが設けられる一方、第2流路には遠心分離フィルタが設けられない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工具からクーラントを吐出可能な工作機械において、高い清浄度が要求される主軸ユニットには遠心分離フィルタを通過したクーラントを供給し、それ以外のそれほど高い清浄度が要求されない用途については旋回流生成構造により所定の清浄度が実現されたクーラントを供給できる。したがって、スラッジ分離に関する構成の製造コストを抑制しつつ、使用されるクーラントの流量を増加させることができ、自動化等に対する要求に答えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る工作機械の外観を表す斜視図である。
図2】工作機械のハードウェア構成図である。
図3】加工室内の構成を表す斜視図である。
図4】クーラント供給装置の構成を模式的に表す図である。
図5】二次タンクの構造を表す図である。
図6】二次タンクの構造を表す図である。
図7】二次タンクの構造を表す図である。
図8】吐出管部の構成を表す図である。
図9】吐出管部の構成を表す図である。
図10図6のB-B矢視断面図である。
図11】タンク本体における旋回流の生成原理を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る工作機械の外観を表す斜視図である。
工作機械1は、工具を適宜交換しながらワークを所望の形状に加工する複合加工機として構成されている。工作機械1は、装置筐体の内部(機内)に加工室2が設けられる。加工室2には、ワークを加工する加工装置が設けられる。装置筐体の側面には、加工装置を操作するための操作盤4が設けられる。
【0011】
工作機械1には、加工室2にクーラントを供給するクーラント供給装置5が設けられる。クーラント供給装置5のクーラント循環路には、加工室2から排出されたクーラントを一時貯留するためのクーラントタンク(一次タンク6,二次タンク8)が設けられる。一次タンク6は加工室2の下方に設置され、二次タンク8は加工室2の後方に設置されている。本実施形態では二次タンク8を立型タンクとし、タンク内にクーラントの旋回流を生成しつつ、淀みの発生を低減することで、クーラントに含まれるスラッジを効率よく排出可能な構造を採用する。以下、これらの詳細について説明する。
【0012】
図2は、工作機械1のハードウェア構成図である。
工作機械1は、情報処理装置100、加工制御装置102、加工装置104、工具交換部106、工具格納部108および撮像部110を含む。加工制御装置102は、数値制御部として機能し、加工プログラム(NCプログラム)にしたがって加工装置104に制御信号を出力する。加工装置104は、加工制御装置102からの指示にしたがって工具主軸(後述の「主軸ユニット」)を動かしてワークを加工する。
【0013】
加工装置104は、主軸を駆動する機構のほか、加工室2にクーラントを供給するクーラント供給装置5を備える。クーラントは、加工時における工具およびワークの除熱や潤滑のための切削油として用いられるが、加工室2内に飛散した切屑を除去するための洗浄液としても用いられる。クーラント供給装置5は、クーラントタンク112、クーラント吐出部114、ポンプ116、制御弁118およびサイクロンフィルタ120をクーラント循環路に配置して構成される。
【0014】
クーラントタンク112は、クーラントを貯留するタンクであり、一次タンク6および二次タンク8を含む。クーラント吐出部114は、加工室2内にクーラントを吐出するノズルと、ノズルを駆動するアクチュエータを含む「吐出装置」である。ポンプ116の駆動によりクーラントが循環し、クーラント吐出部114に供給される。制御弁118は、後述する複数の開閉弁を含み、クーラントの流路を切り替える。サイクロンフィルタ120は、クーラント循環路を流れるクーラントからスラッジを遠心分離して回収可能な遠心分離フィルタである(詳細後述)。
【0015】
情報処理装置100は、操作盤4を含み、オペレータの操作入力に基づいて加工制御装置102に制御指令を出力する。情報処理装置100は、また、オペレータの操作入力に応じて操作盤4のモニタに表示される画面を制御する。工具格納部108は工具を格納する。工具交換部106は、いわゆるATC(Automatic Tool Changer)に対応し、加工制御装置102からの交換指示にしたがって、工具格納部108から工具を取り出し、工具主軸にある工具と交換する。
【0016】
情報処理装置100は流量制御部101を含む。流量制御部101は、ポンプ116および制御弁118を制御する。それにより、クーラントタンク112内でのクーラントの吐出量を調整し、またクーラント吐出部114からのクーラントの吐出量を調整する。
【0017】
撮像部110は、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を備えたカメラであり、加工室2内に設定された撮像エリアを撮像する。「撮像エリア」として、ワークの加工により発生する切屑の存在が想定される領域が予め設定される。加工室2内の広い範囲で切屑の分布や堆積状況が把握できるよう、カメラの画角が設定されている。撮像部110は、撮像した画像を情報処理装置100へ出力する。
【0018】
図3は、加工室2内の構成を表す斜視図である。図3(A)は斜め上方からみた様子を示し、図3(B)は斜め下方からみた様子を示す。
図3(A)に示すように、加工室2は、4つの側面に囲まれており、その一側面において主軸ユニット10が上下および左右に移動可能に設けられている。主軸ユニット10は、水平方向の回転軸を有し、先端に工具Tが同軸状に取り付けられる。主軸ユニット10と軸線方向に対向する側面は旋回扉12を有する。旋回扉12から水平に支持プレート14が延出している。旋回扉12は、鉛直方向の軸を中心に回転できる扉である。
【0019】
支持プレート14の下方にテーブル16が設けられている。テーブル16にはパレット18が着脱可能に取り付けられ、パレット18にワークが載置され固定される。ワークを固定したパレット18を複数用意しておくことで、パレット18の交換によりワークを変更でき、時間の効率化を図ることができる。
【0020】
テーブル16は、主軸ユニット10の軸線方向に移動可能であり、また水平面内で回転できる。テーブル16を回転駆動することで、パレット18上のワークを回転させることができる。テーブル16を直線駆動することで、ワークが工具Tに近接又は離間する。すなわち、テーブル16の回転および移動と、主軸ユニット10の移動を制御することにより、ワークを所望に形状に加工できる。
【0021】
テーブル16が主軸ユニット10から最も離間する位置において、支持プレート14がパレット18と嵌合する。この状態で旋回扉12を回転させることで、支持プレート14がパレット18をテーブル16から分離させ、パレット18と一体に回転する。それにより、ワークの加工が終了したパレット18を加工室2から搬出するとともに、次に加工するワークが固定されたパレット18を加工室2に搬入できる。
【0022】
テーブル16および主軸ユニット10の下方には、切屑を加工室2の外に搬送するためのチップコンベア20が設けられている。テーブル16は、チップコンベア20の上方を移動する。テーブル16の下方にはシュータ22が設けられている。シュータ22は、洗浄によって上方から流れてくる切屑をチップコンベア20上に導く。
【0023】
加工室2においてテーブル16の両サイドに位置する底面は斜面24となっており、加工中に飛散した切屑がシュータ22へ流れやすくなるよう、シュータ22へ向けて下向きに傾斜している。加工室2の下方には一次タンク6が配置されているとともに、当該一次タンク6内に設置されているチップコンベア20へは機内から切屑を流し終えたクーラントが流れ込んで回収されるようにしてある。そして、チップコンベア20内のドラムフィルタ44を通過したクーラントは一次タンク6内へ流れ一時貯留する(詳細後述)。
【0024】
図3(B)に示すように、加工室2の天井や側面の所定箇所には、クーラントを供給するためのノズル28が設置される。ノズル28は、クーラント吐出部114を構成し、図示しない配管を介して二次タンク8に接続される(詳細後述)。ノズル28は、三次元的に回転可能に構成されている。ノズル28を回転させることで、クーラントの吐出方向を制御できる。ノズル28の向きを特定することにより、加工室2内の目標に向けてクーラントを吐出できる。ワークの加工により生じた切屑は、クーラントにより洗い流され、チップコンベア20により加工室2の外に搬出される。
【0025】
加工室2の上部にはまた、加工室2内を上方から撮像する複数のカメラ30が設置されている。カメラ30は、撮像部110を構成し、工具Tによるワークの加工状況を撮像するとともに、加工により生じた切屑を撮像する(図2参照)。撮像部110は、撮像した画像を情報処理装置100へ出力する。
【0026】
情報処理装置100の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
【0027】
クーラントによる機内の清掃制御がなされる場合、情報処理装置100は、撮像部110から取得した撮像画像に基づき、クーラントを吐出する目標位置を設定する。そして、加工制御装置102に対し、目標位置に向けたクーラントの吐出指令を出力する。この吐出指令には、クーラントを吐出する位置を特定する情報(吐出経路を特定する情報など)が含まれる。加工制御装置102は、この吐出指令を受けてクーラント吐出部114を駆動し、クーラントの吐出を制御する。
【0028】
主軸ユニット10は、いわゆるスルースピンドルクーラント装置であり、クーラントを吐出させるための内部通路32が形成された工具Tを保持する。工具Tの先端には、内部通路32の一端を形成し、クーラントを吐出する吐出口34が設けられる。主軸ユニット10には、工具Tの内部通路32とクーラント循環路とを連通させる連通路36(図3参照)が形成されている。加工時に工具Tの先端からクーラントを吐出することで、加工精度の向上、加工時間の短縮、工具の長寿命化および切屑排出性能の向上等を図ることができる。工具Tが取り付けられた主軸ユニット10が「第1吐出部」として機能する。
【0029】
図4は、クーラント供給装置5の構成を模式的に表す図である。
クーラント供給装置5は、加工室2、一次タンク6および二次タンク8を配管等で接続したクーラント循環路を有する。加工室2には、クーラントを吐出可能な主軸ユニット10および複数のノズル28が設けられている。本実施形態では、加工室2の天面にノズル28aが配設されている。また、主軸ユニット10が設けられる第1側面にノズル28bが配設され、第1側面と対向する第2側面にノズル28cが配設されている。これらのノズル28は機内洗浄用のノズルであり、「第2吐出部」として機能する。
【0030】
加工室2の底面中央部がチップコンベア20に向けて開放されている。チップコンベア20は、中空のハウジング40に一対の無端チェーン42、ドラムフィルタ44および駆動機構46を収容して構成される。駆動機構46は、無端チェーン42が架け渡される複数のスプロケット含む。複数のスプロケットの一つであるスプロケット48が図示略のモータにより回転駆動され、スプロケット50がドラムフィルタ44と一体に設けられる。一対の無端チェーン42間には無端チェーン42の長手方向に対して所定間隔ごとに図示しない掻き板が設けられており、スプロケット50の回転によりハウジング40内を掻き板が回転動作するように構成されている。ドラムフィルタ44は、濾過機能を有するドラム状のフィルタであり、クーラントに含まれる異物を捕獲可能に構成されている。スプロケット48の回転により無端チェーン42が駆動され、またドラムフィルタ44が回転する。
【0031】
ハウジング40の一端側が斜め上方に向けて延出し、その先端に切屑排出部52が設けられている。無端チェーン42は、切屑排出部52に達するように設けられている。切屑排出部52の直下には切屑を回収するための図示しないチップバケットが設置される。
【0032】
ハウジング40を下方から収容するように一次タンク6が設置される。一次タンク6は、上端が開放された平面視長方形状の容器であり、平面視においてハウジング40よりも十分に大きい。ハウジング40の側面には、クーラントを一次タンク6へ排出するための排出口54が設けられている。排出口54は、ドラムフィルタ44の内部と連通する。
【0033】
加工室2から排出された切屑は、無端チェーン42により切屑排出部52へ搬送される。切屑は切屑排出部52により排出されてチップバケットに回収される。一方、加工室2内で切屑を洗い流したクーラントは、ハウジング40内に導入され、回転するドラムフィルタ44の内部に導かれる。このクーラントは、ドラムフィルタ44の表面を通過することで濾過される。このとき、クーラントに含まれる切屑等の比較的大きな異物がドラムフィルタ44により捕獲される。濾過されたクーラントは、排出口54を介して一次タンク6に排出される。
【0034】
一次タンク6は、配管60を介して二次タンク8に接続される。配管60は、一次タンク6の上方に引き回され、分岐点P1にて第1配管62と第2配管64とに分岐し、一次タンク6内に垂れ下がるように挿入される。配管60には、その上流側からポンプ116a、逆止弁68および開閉弁70が設けられる。開閉弁70は、本実施形態ではソレノイド駆動の電磁弁であるが、モータ駆動の電動弁としてもよい。
【0035】
配管60の上流端が、クーラントの吸込口72となる。一次タンク6には、吸込口72を囲むようにメッシュ状のフィルタ73が設けられている。フィルタ73は、一次タンク6から吸込口72への異物の侵入を防止又は抑制する。開閉弁70を開いてポンプ116aを駆動することにより、一次タンク6からクーラントをくみ上げて二次タンク8に導入できる。逆止弁68は、配管60におけるクーラントの逆流を防止する。
【0036】
二次タンク8の底面中央部に排出口74(第1排出口)が設けられ、配管76の一端が接続されている。配管76の他端は主軸ユニット10の連通路36に連通する。配管76内の流路が「第1流路」として機能し、排出口74から排出されるクーラントを主軸ユニット10へ導く。配管76には、上流側から開閉弁78、ポンプ116b、サイクロンフィルタ120、ポンプ116c、逆止弁86および開閉弁88が設けられている。
【0037】
サイクロンフィルタ120は、二次タンク8から排出されたクーラントからスラッジを遠心分離して回収可能な遠心分離フィルタである。開閉弁78,88は、本実施形態では電磁弁であるが、電動弁としてもよい。開閉弁78,88を開いてポンプ116b,116cを駆動することにより、主軸ユニット10にクーラントを供給できる。逆止弁86は、配管76におけるクーラントの逆流を防止する。
【0038】
配管76におけるサイクロンフィルタ120とポンプ116cとの間に分岐点P2が設けられ、配管90が分岐している。配管90の先端は一次タンク6内に開口する。配管90には、開閉弁92が設けられている。開閉弁92は、本実施形態では電磁弁であるが、電動弁としてもよい。開閉弁92を開くことで、二次タンク8から配管76に導出されたクーラントの一部を、配管90を介して一次タンク6に戻すことができる。
【0039】
また、二次タンク8の周縁部に排出口94(第2排出口)が設けられ、配管96の一端が接続されている。配管96の他端はノズル28cに接続されている。配管96には、上流側から開閉弁91およびポンプ116dが設けられている。配管96の他端部(ノズル28cの上流側)には開閉弁98cが設けられている。配管96におけるポンプ116dの下流側に分岐点P3,P4が設けられ、配管95,97が分岐している。配管97の先端がノズル28aに接続されている。配管97には開閉弁98aが設けられている。配管95の先端がノズル28bに接続されている。配管95には開閉弁98bが設けられている。配管96内の流路が「第2流路」として機能し、排出口94から排出されるクーラントをノズル28へ導く。
【0040】
開閉弁91を開いてポンプ116dを駆動することにより、二次タンク8からノズル28へクーラントを供給できる。開閉弁98aを開くことでノズル28aからクーラントを吐出でき、開閉弁98bを開くことでノズル28bからクーラントを吐出できる。開閉弁98cを開くことでノズル28cからクーラントを吐出できる。その際、各ノズル28の向きを設定することで、加工室2内におけるクーラントの吐出位置を制御できる。
【0041】
以上の構成において、主軸ユニット10およびノズル28から吐出されたクーラントは、加工室2の底部からチップコンベア20に導かれ、ドラムフィルタ44にて濾過された後、一次タンク6に一時貯留される。一次タンク6のクーラントは、ポンプ116aによりくみ上げられて二次タンク8に導入され、一時貯留される。二次タンク8ではクーラントの旋回流が生成される(詳細後述)。この旋回流により、クーラントに含まれるスラッジが二次タンク8の底面中央部(中央近傍)に集約される。そのため、二次タンク8におけるスラッジの濃度は、底面中央部において相対的に高くなり、周縁部(周縁近傍)において相対的に低くなる。
【0042】
二次タンク8のクーラントは、底面中央部の排出口74に接続された配管76と、底面周縁部の排出口94に接続された配管96の二系統に分かれて排出され、加工室2へ供給される。配管76に排出されたクーラントは、ポンプ116bの動力によりサイクロンフィルタ120に導かれ、スラッジが遠心分離されて除去された後、ポンプ116cの動力により主軸ユニット10へ導かれる。そして、工具Tの吐出口34から吐出される。工具Tから吐出されたクーラントは、再び加工室2の底部からチップコンベア20へ導かれる。このように、クーラント供給装置5では、配管76の流路を含むクーラント循環路(第1循環路)が形成される。
【0043】
工具Tに設けられる内部通路32は狭小であるものの、サイクロンフィルタ120によりスラッジが除去されたクーラントが供給されるため、スラッジにより流路がつまる等の問題も生じ難い。一方、スラッジそのものについては、二次タンク8の底面中央部に集約されたものがサイクロンフィルタ120に積極に導かれるため、回収効率を向上させることができる。
【0044】
一方、配管96に排出されたクーラントは、ポンプ116dの動力により各ノズル28へ導かれ、加工室2内に吐出される。ノズル28から吐出されたクーラントは、再び加工室2の底部からチップコンベア20へ導かれる。このように、クーラント供給装置5ではさらに、配管96の流路を含むクーラント循環路(第2循環路)が形成される。配管96から排出されるクーラントはスラッジの濃度が低いため、ノズル28に導かれるスラッジの量も少ない。また、ノズル28の吐出口は、工具Tの吐出口34よりも十分に大きいため、スラッジにより流路がつまる等の問題も生じ難い。
【0045】
以上のように、本実施形態では本実施形態では主軸ユニット10(スルースピンドルクーラント装置)を経由するクーラント循環路、つまりクーラントに高い清浄度が求められる第1循環路に一般的に高価となるサイクロンフィルタ120(遠心分離フィルタ)を設けた。一方、ノズル28を経由するクーラント循環路、つまりスルースピンドルクーラント装置ほどクーラントに高い清浄度が求められない第2循環路には遠心分離フィルタを設けない。それにより、クーラント供給装置5の全体としてコストを抑制できる。
【0046】
次に、二次タンク8(クーラントタンク)の具体的構造について説明する。
図5図7は、二次タンク8の構造を表す図である。図5は上方からみた斜視図であり、図6は正面図である。図7は、図6のA-A矢視断面図である。説明の便宜上、図5は、二次タンク8において上面と正面を開放した状態を示す。図6は、二次タンク8において正面を開放した状態を示す。
【0047】
図5および図6に示すように、二次タンク8は、クーラントを一時貯留する立型のタンク本体150と、タンク本体150の上方から垂れ下がるように設けられた第1配管62および第2配管64を備える。タンク本体150は平面視長方形状かつ側面視長方形状の中空直方体形状をなし、その内壁面の上部、中央部および下部に補強用のリブ152a,152b,152cが設けられている。タンク本体150の底面を下方から支えるように脚部154が設けられている。
【0048】
図7にも示すように、上述した配管60の先端部61がタンク本体150の側壁上部を貫通して水平に延びている。先端部61は、タンク本体150の右側面近傍を背面から正面に向けて延び、その先端を分岐点P1として第1配管62と第2配管64に分岐している。配管60における吸込口72から先端部61までが「一次タンク6から延びる共用配管」として機能する。第1配管62は、分岐点P1から後方に折り返して右側面および背面に沿うようにしてほぼ水平に延びる曲管部62aと、曲管部62aの先端からタンク本体150の底面に向けて垂下する直管部62bを有する。
【0049】
図6に戻り、直管部62bの下端に吐出管部62cが設けられている。第1配管62は、固定金具160によりリブ152bに固定され安定に支持されている。
【0050】
一方、第2配管64は、分岐点P1から垂下する直管部64bを有し、その直管部64bの下端に吐出管部64cが設けられている。第2配管64は、固定金具162によりリブ152bに固定され、安定に支持されている。第1配管62の直管部62bと、第2配管64の直管部64bは、タンク本体150において対角となる位置に配置される(図7参照)。タンク本体150の底面中央部に排出口74が設けられ、底面周縁部に排出口94が設けられている。
【0051】
タンク本体150は、幅および奥行よりも高さ方向に大きい立型タンク構造を有する。第1配管62の吐出管部62cと、第2配管64の吐出管部64cは、それぞれ配管60により供給されるクーラントの吐出口を有し、それらの吐出口の向きを調整することにより、タンク本体150内にクーラントの旋回流を生成する。各吐出管部がタンク本体150の底面156から所定高さh1の位置に配置されており、各吐出口はタンク本体150の下部に位置し、タンク本体150の底面からは離隔する。旋回流は、タンク本体150内の下部に形成されることとなる。
【0052】
なお、本実施形態では、各吐出口をタンク本体150の高さh0の1/4以下の高さに位置させているが、旋回流をタンク本体150内の下部に形成するためには、少なくともタンク本体150の高さh0の1/2以下の高さに位置させることが好ましい。
【0053】
第1配管62が曲管部62aおよび直管部62bを有する一方、第2配管64は直管部64bのみ有する。このため、分岐点P1を基点とした第1配管62と第2配管64の長さが異なる。第1配管62のほうが第2配管64よりも長い。このため、第1配管62の吐出口から吐出されるクーラントの流れと、第2配管64の吐出口から吐出されるクーラントの流れには、流動抵抗の違いによる不均衡が生じ、その不均衡がタンク本体150における淀みの発生を助長させる可能性がある。この点、第1配管62に設けた二股配管構造が、その淀み発生を低減することとなる(詳細後述)。
【0054】
タンク本体150の底部の下方(脚部154の内側)にポンプ116bが設けられている。なお、ポンプ116bの構造および機能等については上記特許文献2にも記載のように公知であるため、その説明については省略する。
【0055】
本実施形態では、第1配管62の吐出管部62cが二股構造を有する、つまり吐出口を2つ有することで、各吐出口からのクーラントの吐出方向を異ならせる。それにより、一方の吐出口からの吐出により旋回流を生成しつつ、他方の吐出口からの吐出により淀みの生成を回避又は低減する。以下、まず第1配管62の構造について説明し、続いてその構造による機能について説明する。
【0056】
図8および図9は、吐出管部62cの構成を表す図である。図8(A)は斜視図であり、図8(B)は正面図であり、図8(C)は平面図である。図9(A)は図8(B)のA-A矢視断面図であり、図9(B)は図8(B)のB-B矢視断面図である。図9(C)は図8(C)のC-C矢視断面図である。
【0057】
図8(A)~(C)に示すように、吐出管部62cは有底筒状をなし、第1配管62の下端に接続される管本体164と、管本体164から二股に分岐する分岐管部166,168を有する。吐出管部62cは、例えば金属又は樹脂による積層造形、樹脂材の射出成形、あるいは金属材のダイカスト成形等により得ることができる。管本体164の上端開口部と直管部62bの下端開口部とが同軸状に接続される。本実施形態では、直管部62bが鉛直方向に延びるように第1配管62をタンク本体150に設置する(図6参照)。このため、吐出管部62cを直管部62bに組み付けた際には、管本体164の軸線Lが鉛直方向に延びることとなる。
【0058】
分岐管部166,168は、管本体164の下部から水平方向やや下向きに突出するように設けられている。分岐管部166は吐出口166aを有し、分岐管部168は吐出口168aを有する。吐出口166aが「第1吐出口」として機能し、吐出口168aが「第2吐出口」として機能する。すなわち、吐出管部62cは、クーラントの流入口が1つ、クーラントの吐出口が2つあり、第1吐出口と第2吐出口とが一体に設けられている。吐出口166a,168aは、それぞれ水平面Hに対して角度をなすよう下方に向けて開口する。
【0059】
図9(A)~(C)に示すように、分岐管部166の流路166bと、分岐管部168の流路168bとが、管本体164の下部にて連通している。流路166bと流路168bとは、平面視において角度θをなす(図9(B))。本実施形態では角度θを鋭角(θ<90度)としているが、これに限らず、旋回流の生成促進と淀み低減の観点から適宜設定できる。
【0060】
吐出口166aは、水平面Hに対して角度θ1をなすように下方に向けて開口する(図9(A))。一方、吐出口168aは、水平面Hに対して角度θ2をなすように下方に向けて開口する(図9(C))。本実施形態ではこれらの角度を一致させているが(θ1=θ2)、変形例においては異ならせてもよい。
【0061】
吐出口166a,168aは、第1配管62を流れるクーラントをタンク本体150内に吐出する。これらの吐出口が開口する方向、つまり各吐出口からのクーラントの吐出方向をそれぞれ調整することで、タンク本体150内に生成される旋回流の生成状態を良好に維持できる。すなわち、吐出口166aの向きを最適化することで、旋回流の生成を促進できる。一方、吐出口168aの向きを最適化することで、旋回流生成時における淀みの発生を低減できる。
【0062】
なお、吐出管部64cは吐出管部62cとは異なり、分岐はしておらず二股構造を有しない(図6参照)。吐出管部64cは、具体的には、図8(a)に示した吐出管部62cにおいて分岐管部168をなくし、分岐管部166の吐出口166aをより大きくしたような構造を有するが、その詳細な説明については省略する。
【0063】
図10は、図6のB-B矢視断面図である。
タンク本体150は4つの平坦な内側面を含む角型タンクであり、第1配管62の吐出口166a,168aが、一つの内側面に近接配置されている。第2配管64の吐出口169が、もう一つの内側面に近接配置されている。吐出口169は「第3吐出口」として機能する。
【0064】
より詳細には、タンク本体150の下部の四隅(角隅部)には、それぞれ曲面状のガイド部170がけられている(図6参照)。ガイド部170は、平面視においてタンク本体150の4つの内側面(平坦面)と滑らかにつながるように設けられている。ガイド部170は、吐出管部62cおよび吐出管部64cの各吐出口を高さ方向に含む大きさ(高さ)を有する。その結果、タンク本体150は、各吐出口の高さ位置において、内周面がR形状(曲面形状)の角隅部を有することとなる。ガイド部170は、タンク本体150の下部を流れるクーラントを内周方向に誘導し、クーラントの旋回流が生成され維持されることを促す。排出口74は、クーラントの旋回中心が位置するタンク本体150の底面中央部に設けられている。
【0065】
吐出管部62cは、タンク本体150における一つの角隅部近傍であって、ガイド部170の内側に配置される。より具体的には、吐出管部62cは、ガイド部170の曲面とタンク本体150の平坦な内側面との接続部近傍に配置されている。一方、吐出管部64cは、タンク本体150の中心に対して吐出管部62cとほぼ対称な位置、つまりタンク本体150において吐出管部62cと対角となる位置に配置される。吐出管部64cもガイド部170の内側に位置する。
【0066】
図中の二点鎖線矢印は、平面視において各吐出口が開口する方向、つまり各吐出口におけるクーラントの吐出方向を示す。図中の一点鎖線は、吐出管部62c,64cの下流側近傍にそれぞれ位置するタンク本体150の内側面(平坦な内側面150a,150b)と平行な方向を示す。
【0067】
すなわち、第1配管62について、吐出口166aがタンク本体150の内側面150aに向けて開口する一方、吐出口168aがその内側面150aとは反対側に向けて開口する。図示のように、内側面150aと平行な方向を基準として、吐出口166aは内側面150a側に角度θ3をなす方向に開口し、吐出口168aは内側面150aとは反対側に角度θ4をなす方向に開口している。本実施形態ではこれらの角度を一致させているが(θ3=θ4)、異ならせてもよく、タンク本体150における旋回流の生成促進と淀み低減の観点から適宜設定できる。
【0068】
一方、第2配管64については、吐出口169がタンク本体150の内側面150bに向けて開口する。図示のように、内側面150bと平行な方向を基準として、吐出口169は内側面150b側に角度θ5をなす方向に開口している。本実施形態では、吐出口166aの角度θ3と吐出口169の角度θ5とを一致させているが(θ5=θ3)、異ならせてもよく、タンク本体150における旋回流の生成促進の観点から適宜設定できる。
【0069】
図11は、タンク本体150における旋回流の生成原理を模式的に表す図である。図11(A)は正面視を示し、図11(B)は平面視(図10に対応)を示す。
上述のように、第1配管62の吐出口166a,168aと第2配管64の吐出口169をタンク本体150の下部領域に配置し、吐出口166a,169をそれぞれが近接する内側面150a,150bに向けて開口させた。それにより、タンク本体150の下部にクーラントの旋回流を生成できる。すなわち、第1配管62の吐出口166aおよび第2配管64の吐出口169が、クーラントをタンク本体150の内周面に沿って旋回させる「旋回流生成構造」を構成する。
【0070】
しかし、発明者の検証により、吐出口166a,169をこのように開口させるだけでは、旋回流がタンク本体150の内周面側に偏り、その内側に淀みを発生させる傾向があることが分かった。その場合、タンク本体150の底面中央部にスラッジを十分に集約させ難い。この点、本実施形態では、第1配管62に吐出口168aをさらに設け、クーラントの一部をタンク本体150の内側に向けて吐出する。それにより、旋回流の内周面側への偏りを崩して淀みを解消し、内側(タンク本体150の中央部)にも旋回流を生成できる。その結果、タンク本体150の底面中央部に設けた排出口74からスラッジを効率良く排出できる。
【0071】
また、各吐出口をタンク本体150の下部領域に設けることで、旋回流をタンク本体150の下半部に集中させることができる。さらに各吐出口をやや下方に向けることで、旋回流を各吐出口の下方、つまりタンク本体150の底部にわたって生成しやすくなる。具体的には、排出口74からのクーラントの排出による吸引作用も相俟って、タンク本体150の下部領域において旋回流が逆円錐状(側面視逆三角形状)ないしすり鉢状(下方から上方に向かって旋回半径が大きくなる形状)となる。言い換えれば、下方に向かうほど旋回半径が小さくなり、スラッジが中央部に集まりやすくなる。つまり、底面中央部に設けられた排出口74にスラッジを誘導することができ、排出口74からのスラッジの排出効率を向上できる。
【0072】
このような構成を前提に、流量制御部101は、ポンプ116a(図4参照)を駆動し、クーラントの旋回流がタンク本体150における下部に形成される一方、上部液面には形成されないようにクーラントの吐出量を制御する。クーラントにはスラッジのほか、潤滑油(機械油)が含まれるが、クーラントよりも比重の小さい潤滑油Ocはタンク本体150の上部に集まるようになる。そこで、本実施形態では、タンク本体150にフロート式のオイルスキマ180が設けられる。オイルスキマ180は、クーラントの液面に追従するように浮く吸引部を有し、クーラントから分離されて液面に向けて浮上してきた潤滑油Ocをその吸引部から吸引して回収し、図示略の廃油ボックスに導く。オイルスキマ180は、油分を凝集して排出するコアレッサを含む。
【0073】
以上、実施形態に基づいて工作機械について説明した。
本実施形態では、立型のクーラントタンク(二次タンク8)において、クーラントの旋回流を生成するためにタンクの内側面に向けて開口する吐出口166a,169と、旋回流生成時の淀みの発生を低減するためにタンクの内側面とは反対側に向けて開口する吐出口168aを設けた。すなわち、吐出口166a,169から内側面に向けてクーラントを吐出することで旋回流の生成を促進する一方、吐出口168aからは内側面と反対側に向けてクーラントを吐出することで淀みを解消する。それにより、タンク内のクーラントに含まれるスラッジをタンクの底面中央部に集約でき、効率よく排出できる。
【0074】
吐出口166aと吐出口168aとを一体に形成することで、配管におけるクーラント吐出部の製造コストを低減することもできる。樹脂材の射出成形、あるいは金属材のダイカスト成形により吐出口166aと吐出口168aとを含む吐出管部62cを製造できる。その吐出管部62cを直管部62bの下端に組み付けることで第1配管62を簡易に実現できる。
【0075】
また、図11に示したように、二次タンク8が高さ方向に大きい立型タンクであることを利用し、各吐出口をタンク下部に配置することで、タンク本体150の下部領域に旋回流を集中的に形成させることとした。つまり、タンク本体150の上部領域には実質的に旋回流が形成されないため、液面に浮かせたオイルスキマ180により、クーラントに含まれる油分を安定に回収できる。すなわち、クーラントよりも比重が大きいスラッジについては下方の排出口74から積極的に排出し、クーラントよりも比重が小さい油分については上方の液面に配置された180により積極的に回収することとした。それにより、全体としてクーラントを清浄に保ちやすくなる。
【0076】
本実施形態では、第1配管62および第2配管64をタンク本体150の上方から垂下させ、その下端部に各吐出口を設けることとした。さらに、各吐出口をやや下方に向けてクーラントを吐出させることとした。それにより、タンク本体150の下部領域に旋回流を生成できることはもちろん、下部領域におけるクーラントの流れを各配管が阻害し難くなる。その結果、旋回流の形成を安定させることができる。また、各配管を上方から垂下させたことで、タンク本体150から配管への逆流も防止できる。
【0077】
また、図4に示したように、本実施形態では主軸ユニット10を経由するクーラント循環路、つまりクーラントに高い清浄度が求められる循環路に一般的に高価となるサイクロンフィルタ120(遠心分離フィルタ)を設けることとした。一方、ノズル28を経由するクーラント循環路、つまりスルースピンドルクーラント装置ほどクーラントに高い清浄度が求められない循環路には遠心分離フィルタを設けないこととした。遠心分離フィルタを限定的に設けることで、クーラント供給装置の製造コストを抑制できる。
【0078】
清浄度の高いクーラントを供給する観点からはむしろ、二次タンク8においてスラッジが低濃度となる底面周縁部から排出したクーラントを主軸ユニット10へ供給するのが自然と考えられる。しかし、本実施形態ではあえてスラッジが高濃度となる底面中央部から排出したクーラントを主軸ユニット10へ供給する。この点で一見矛盾するが、このスラッジが高濃度となるクーラントがサイクロンフィルタ120を経由することで、主軸ユニット10には清浄度の高いクーラントを供給できる。また、スラッジを多く含ませたクーラントをサイクロンフィルタ120に導くことで、結果的に、二次タンク8内のスラッジを効率良く回収および除去できるようになる。
【0079】
また、ノズル28による機内洗浄など、高い清浄度を必要としない用途については立型タンク内でスラッジが溜まり難い周縁部近傍からクーラントを排出するようにした。このため、工作機械の加工用途だけでなく自動化のための切屑流し等に必要なクーラント供給量を十分に確保しやすい。また、主軸ユニット10を経由しないクーラント循環路においては遠心分離フィルタが設けられていないため、スラッジの分離に必要となる滞留時間が削減されるため、単位時間当たりに供給可能なクーラント流量も大きくできる。したがって、自動化の要望等によりさらにクーラントの吐出する箇所や量が増えたとしても対応しやすい。
【0080】
[変形例]
上記実施形態では、工作機械1を複合加工機として説明したが、ターニングセンタであってもよいし、マシニングセンタであってもよい。
【0081】
上記実施形態では、工作機械の機内として加工室2を例示した。変形例においては、パレット交換室その他の機内においてクーラントを吐出し、循環させてもよい。その場合のクーラント循環路にも上記実施形態と同様のシステムおよびクーラントタンクを採用してよい。パレット交換室は、ワークを取り付けたパレットを交換する空間である。
【0082】
上記実施形態では、図5に示したようにタンク本体150の上方から第1配管62および第2配管64を垂下し、各配管の下端部にクーラントの吐出口を設ける構成を例示した。変形例においては、各配管をタンク本体の底部から突出するように設け、その上部に吐出口を設けてもよい。あるいは、各配管をタンク本体の側部から突出するように設け、その先端部に吐出口を設けてもよい。ただし、各吐出管が開口する向きは、上記実施形態と同様とする。
【0083】
上記実施形態では、タンク本体150における対角位置に第1配管62と第2配管64を設けた。そして、第1配管62を二股構造にして吐出口166a(第1吐出口)と吐出口168a(第2吐出口)を設け、第2配管64には単一の吐出口169を設けた。変形例においては、第1配管62と第2配管64の双方を二股構造にして第1吐出口と第2吐出口を設けてもよい。その場合、第2配管64についても第1吐出口がタンク本体の内側面に向けて開口する一方、第2吐出口がその内側面とは反対側に向けて開口するようにするとよい。それにより、旋回流に伴う淀みの生成をさらに低減できる可能性がある。
【0084】
上記実施形態では、第1配管62を二股構造にして吐出口166a(第1吐出口)と吐出口168a(第2吐出口)を設ける構成を例示した。変形例においては、タンク本体の内側面に向けて開口する第1吐出口と、その内側面とは反対側に向けて開口する第2吐出口とが、第1配管62の高さ方向にずれるように構成してもよい。
【0085】
上記実施形態では、吐出口166a(第1吐出口)と吐出口168a(第2吐出口)とが第1配管62に一体に設けられる構成を例示した。変形例においては、タンク本体の内側面に向けて開口する第1吐出口と、その内側面とは反対側に向けて開口する第2吐出口とが、別の配管にそれぞれ設けられる構成を採用してもよい。また、吐出口166a及び吐出口168aが第1配管62に一体に設けられる場合には上記実施形態で示した製造方法により形成された二股構造以外のものであってもよい。例えば配管継手により二股に分岐させ、当該配管継手に開口径等を調節するための吐出口形成部材を取り付けてもよい。
【0086】
上記実施形態では、タンク本体150内において対角位置となる2箇所に配管の吐出口を設け、旋回流の生成を促す構成を例示した。変形例においては、タンク本体150の残る2つの角隅部の一方又は双方にも配管の吐出口を設け、旋回流の生成をさらに促進してもよい。その場合も、タンク本体の内側面に向けて開口する第1吐出口と、その内側面とは反対側に向けて開口する第2吐出口を設けてもよい。
【0087】
上記実施形態では、第1配管62において、タンク本体150の内側面に向けて開口する吐出口166a(第1吐出口)と、その内側面とは反対側に向けて開口する吐出口168a(第2吐出口)を設ける構成を例示した。変形例においては、第2吐出口が内側面と平行な方向に開口する構成を採用してもよい。あるいは、第2吐出口が第1吐出口と同様にタンク本体の内側面に向けて開口するが、第1吐出口よりもタンク本体の内側に向けて開口する構成を採用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、旋回流を利用してスラッジを効率良く回収する観点から、タンク本体150における底面中央部に排出口74(第1排出口)を設け、底面周縁部に排出口94(第2排出口)を設ける構成を例示した。タンク本体150の底部における旋回流の半径が小さい場合など、底部におけるクーラントの旋回半径によっては、底面周縁部よりも内側に排出口94(第2排出口)を設けてもよい。すなわち、クーラントの旋回流によりそのクーラントに含まれるスラッジが集められる集約箇所に第1排出口を設け、集約箇所から離隔した箇所に第2排出口を設ければよい。
【0089】
上記実施形態では、配管76(第1流路)にサイクロンフィルタ120(遠心分離フィルタ)を設ける一方、配管96(第2流路)にはフィルタを設けない構成を例示した。変形例においては、配管96に多孔質体やメッシュ構造による濾過フィルタなど、遠心分離フィルタよりも低コストで実現できるフィルタを設けてもよい。
【0090】
上記実施形態では、タンク本体150として平面視長方形状の角型タンクを例示したが、平面視多角形状の角型タンクとしてもよい。あるいは、平面視円形状の円筒型タンクとしてもよい。その場合も、タンク本体の内周面に向けて開口する第1吐出口と、その内周面よりもタンク本体の内側(内周面とは反対側)に向けて開口する第2吐出口を設けるとよい。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 工作機械、2 加工室、5 クーラント供給装置、6 一次タンク、8 二次タンク、10 主軸ユニット、18 パレット、20 チップコンベア、22 シュータ、28 ノズル、30 カメラ、32 内部通路、34 吐出口、36 連通路、40 ハウジング、42 無端チェーン、44 ドラムフィルタ、46 駆動機構、52 切屑排出部、54 排出口、60 配管、62 第1配管、62c 吐出管部、64 第2配管、64c 吐出管部、68 逆止弁、70 開閉弁、72 吸込口、73 フィルタ、74 排出口、76 配管、78 開閉弁、86 逆止弁、88 開閉弁、90 配管、91 開閉弁、92 開閉弁、94 排出口、95 配管、96 配管、97 配管、98a 開閉弁、98b 開閉弁、98c 開閉弁、100 情報処理装置、101 流量制御部、102 加工制御装置、104 加工装置、112 クーラントタンク、114 クーラント吐出部、116 ポンプ、118 制御弁、120 サイクロンフィルタ、150 タンク本体、150a 内側面、150b 内側面、156 底面、164 管本体、166 分岐管部、166a 吐出口、168 分岐管部、168a 吐出口、169 吐出口、170 ガイド部、180 オイルスキマ、Oc 潤滑油、T 工具。
【要約】
【課題】工具からクーラントを吐出可能な工作機械において、コストを抑制しつつ、循環するクーラントからスラッジを効率よく回収可能な技術を提供する。
【解決手段】ある態様のクーラント供給装置は、タンク本体の第1排出口から排出されるクーラントを主軸ユニットへ導く第1流路と、タンク本体の第2排出口から排出されるクーラントを吐出装置へ導く第2流路と、を備える。主軸ユニットは、クーラントを吐出させる工具を保持する。吐出装置は、工具よりも大きな吐出口を有する。タンク本体において、第1排出口は、クーラントの旋回流によりそのクーラントに含まれるスラッジが集められる集約箇所に設けられる。一方、第2排出口は、その集約箇所から離隔した箇所に設けられる。第1流路にスラッジを遠心分離する機能を有する遠心分離フィルタが設けられる一方、第2流路には遠心分離フィルタが設けられない。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11