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  • 特許-複合樹脂成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】複合樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241106BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20241106BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20241106BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20241106BHJP
   D04H 3/153 20120101ALI20241106BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B5/26
D04H3/16
D04H3/14
D04H3/153
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023508909
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009446
(87)【国際公開番号】W WO2022202229
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2021051587
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯濱 翔
(72)【発明者】
【氏名】関岡 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119924(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0375167(US,A1)
【文献】特開平09-011622(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221169(WO,A1)
【文献】特表2009-507556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0087566(US,A1)
【文献】特開平08-027653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C53/00-53/84
B29C57/00-59/18
B32B1/00-43/00
D04H1/00-18/04
D06M17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂、及び発色剤を含有する第1樹脂成形体と、
第2熱可塑性樹脂、及び前記発色剤の発色又は変色を促す呈色剤を含有する第2樹脂成形体と、
前記第1樹脂成形体の一部と前記第2樹脂成形体の一部とが融着した融着部と、を備え
前記融着部は、前記第1樹脂成形体に含まれる前記第1熱可塑性樹脂と、前記第2樹脂成形体に含まれる前記第2熱可塑性樹脂とが互いに混ざり合っている部位を示し、
前記融着部は、少なくともその内部に、前記発色剤と前記呈色剤との反応により前記発色剤が発色又は変色してなる発色化合物を含み、
前記第1樹脂成形体は、第1繊維を含む第1スパンボンドウェブであり、
前記第2樹脂成形体は、第2繊維を含む第2スパンボンドウェブであり、
前記第1スパンボンドウェブは、前記第2スパンボンドウェブの一方の主面上に積層されており、
前記第1繊維は、前記第1熱可塑性樹脂を含み、
前記第2繊維は、前記第2熱可塑性樹脂を含む、複合樹脂成形体。
【請求項2】
第1熱可塑性樹脂、及び発色剤を含有する第1樹脂成形体と、
第2熱可塑性樹脂、及び前記発色剤の発色又は変色を促す呈色剤を含有する第2樹脂成形体と、
前記第1樹脂成形体の一部と前記第2樹脂成形体の一部とが融着した融着部と、を備え、
前記融着部は、前記第1樹脂成形体に含まれる前記第1熱可塑性樹脂と、前記第2樹脂成形体に含まれる前記第2熱可塑性樹脂とが互いに混ざり合っている部位を示し、
前記融着部は、少なくともその内部に、前記発色剤と前記呈色剤との反応により前記発色剤が発色又は変色してなる発色化合物を含む、
前記第1樹脂成形体は、第1繊維であり、
前記第2樹脂成形体は、第2繊維であり、
前記第1繊維及び前記第2繊維は、混繊スパンボンドウェブを構成する、複合樹脂成形体。
【請求項3】
前記第1樹脂成形体は、前記呈色剤を含有せず、
前記第2樹脂成形体は、前記発色剤を含有しない、請求項1又は請求項2に記載の複合樹脂成形体。
【請求項4】
前記発色剤は、前記第1繊維内に含まれ、
前記呈色剤は、前記第2繊維内に含まれる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複合樹脂成形体。
【請求項5】
前記融着部は、少なくともその内部に、前記発色剤と前記呈色剤との発色化合物を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の複合樹脂成形体。
【請求項6】
前記発色剤は、ロイコ色素を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の複合樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルボンド不織布は、通気性、及び柔軟性に優れることから、吸収性物品用の表面シートとして幅広く使用されている。吸収性物品は、紙オムツ、及び生理用ナプキンを含む。
サーマルボンド不織布は、熱可塑性樹脂からなる繊維を含むウェブを、加熱されたエンボスロールと平滑なロールとの間に挟み込んで、繊維の一部を溶融させて繊維間を結合させることで得られることが知られている。
一方、凹凸模様とその周辺部とのコントラストを強めることによって装飾効果を高める技術として、谷染めが知られている(特許文献1)。谷染めは、エンボスロールの模様凸部に着色塗料を付着させて基材に模様付けを行い、同時に基材の模様凹部を着色する方法である。
【0003】
特許文献1:特開昭53-24365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装飾効果を高めるために、サーマルボンド不織布の製造方法に谷染めを採用すると、エンボスロールの模様凸部に付着した着色塗料が、エンボスロールの熱によって分解するおそれがある。そのため、サーマルボンド不織布の融着部に所望の色付けをすることができないおそれがある。融着部に付着した着色塗料は、融着部から脱落するおそれがある。これらの結果、谷染めにより色付けされた融着部は、視認されにくい場合がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑み、融着部が外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい複合樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 第1熱可塑性樹脂、及び発色剤を含有する第1樹脂成形体と、
第2熱可塑性樹脂、及び前記発色剤の発色又は変色を促す呈色剤を含有する第2樹脂成形体と、
前記第1樹脂成形体の一部と前記第2樹脂成形体の一部とが融着した融着部と、を備える、複合樹脂成形体。
<2> 前記第1樹脂成形体は、前記呈色剤を含有せず、
前記第2樹脂成形体は、前記発色剤を含有しない、前記<1>に記載の複合樹脂成形体。
<3> 前記第1樹脂成形体は、第1繊維を含み、
前記第2樹脂成形体は、第2繊維を含む、前記<1>又は<2>に記載の複合樹脂成形体。
<4> 前記第1樹脂成形体は、前記第1繊維を含む第1スパンボンドウェブであり、
前記第2樹脂成形体は、前記第2繊維を含む第2スパンボンドウェブであり、
前記第1スパンボンドウェブは、前記第2スパンボンドウェブの一方の主面上に積層されている、前記<3>に記載の複合樹脂成形体。
<5> 前記第1樹脂成形体は、第1繊維であり、
前記第2樹脂成形体は、第2繊維であり、
前記第1繊維及び前記第2繊維は、混繊スパンボンドウェブを構成する、前記<3>に記載の複合樹脂成形体。
<6> 前記発色剤は、前記第1繊維内に含まれ、
前記呈色剤は、前記第2繊維内に含まれる、前記<3>~<5>のいずれか1つに記載の複合樹脂成形体。
<7> 前記融着部は、少なくともその内部に、前記発色剤と前記呈色剤との発色化合物を含む、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合樹脂成形体。
<8> 前記発色剤は、ロイコ色素を含む、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の複合樹脂成形体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、融着部が外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい複合樹脂成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係る多層スパンボンド不織布の製造装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る混繊スパンボンド不織布の製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る複合樹脂成形体の実施形態について説明する。図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。本開示において含有成分量を示す「%」は、特に断らない限り質量基準である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
[複合樹脂成形体]
本開示の一実施形態に係る複合樹脂成形体は、第1樹脂成形体と、第2樹脂成形体と、融着部と、を備える。第1樹脂成形体は、第1熱可塑性樹脂、及び発色剤を含有する。第2樹脂成形体は、第2熱可塑性樹脂、及び呈色剤を含有する。呈色剤は、発色剤の発色又は変色を促す。融着部は、第1樹脂成形体の一部と第2樹脂成形体の一部とが融着している。第1樹脂成形体は、第1熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。第2樹脂成形体は、第2熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。第1樹脂成形体は、呈色剤を含有しないことが好ましい。第2樹脂成形体は、発色剤を含有しないことが好ましい。
【0011】
「発色剤」とは、呈色剤との化学的相互作用により化学構造が変化し、発色又は変色する化合物を示す。
「呈色剤」とは、それ自体は無色であり、発色剤との化学的相互作用により発色剤の化学構造を変化させ、発色剤を発色させ、又は発色剤の発色色相を変色させる化合物を示す。
「第1熱可塑性樹脂を主成分とする」とは、第1樹脂成形体において、第1樹脂成形体の総量に対して、第1熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以上であることを示す。
第1樹脂成形体が「呈色剤を含有しない」とは、第1樹脂成形体において、第1樹脂成形体の総量に対して、呈色剤の含有量が発色剤との共存下でも第1樹脂成形体の色調を変化させない程度に十分に低く、好ましくは0.005質量%以下であり、0質量%を含むことを示す。
「第2熱可塑性樹脂を主成分とする」とは、第2樹脂成形体において、第2樹脂成形体の総量に対して、第2熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以上であることを示す。
第2樹脂成形体が「発色剤を含有しない」とは、第2樹脂成形体において、第2樹脂成形体の総量に対して、発色剤の含有量が呈色剤との共存下でも第2樹脂成形体の色調を変化させない程度に十分に低く、好ましくは0.005質量%以下であり、0質量%を含むことを示す。
「相溶性を有する」とは、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂が溶融する雰囲気下において、第1熱可塑性樹脂の溶融物と第2熱可塑性樹脂の溶融物とが分離せずに混ざり合うことを示す。第1樹脂成形体に含有される発色剤と第2樹脂成形体に含有される呈色剤との化学的相互作用を効率的に発現させる観点から、第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂との相溶性は高いことが好ましい。
「融着」とは、第1樹脂成形体の一部及び第2樹脂成形体の一部が溶融して互いに混ざり合って、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の各々の溶融した部位同士が一体化していることを示す。
「融着部」とは、第1樹脂成形体に含まれる第1熱可塑性樹脂と、第2樹脂成形体に含まれる第2熱可塑性樹脂とが互いに混ざり合っている部位を示す。
【0012】
本開示の一実施形態の複合樹脂成形体は、第1樹脂成形体の一部と第2樹脂成形体の一部とが融着している融着部を備える。そのため、融着部が外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい。これは、下記の理由によると推測される。
発色剤及び呈色剤が混合すると、発色剤は発色又は変色しやすい。
本開示の一実施形態では、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体において、発色剤及び呈色剤は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂によって分離した状態で保持されている。そのため、発色剤と呈色剤との化学的相互作用は働きにくい。これにより、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体は、発色剤によって発色又は変色しにくい。
一方、融着部は、第1樹脂成形体の一部と第2樹脂成形体の一部とが熱により融着されている。つまり、加熱によって融着部が形成される際、融着部において発色剤及び呈色剤が一時的に共存する状態が形成される。そのため、発色剤と呈色剤との化学的相互作用が働きやすくなることにより、融着部は、発色剤が呈色剤の作用を受けて発色又は変色する。
その結果、複合樹脂成形体において、融着部と非融着部とは色調が異なる。非融着部は、複合樹脂成形体のうち融着部でない部位を示す。それゆえ、融着部が外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい。
【0013】
<樹脂成形体>
視認性の観点から、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の各々は、いずれの形状に成形された成形体であってもよい。
第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の少なくとも一方は、シート状物であってもよい。つまり、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体が、シート状物であってもよいし、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の一方のみが、シート状物であってもよい。
シート状物としては、例えば、樹脂フィルム、不織布シート等が挙げられる。
第1樹脂成形体が短尺のシート状物(以下、「第1短尺シート」という。)で、第2樹脂成形体が短尺のシート状物(以下、「第2短尺シート」という。)である場合、複合樹脂成形体は袋体であってもよい。袋体は、第1短尺シートと、第2短尺シートと、融着部とを備える。融着部は、重ね合わせ体の主面の外周周縁に沿って連続的に形成されていてもよい。重ね合わせ体は、第1短尺シート及び第2短尺シートの各々の主面同士が対向するように、第1短尺シート及び第2短尺シートが重ね合わせられている。これにより、ユーザーは、袋体が密閉されているか否かを、融着部と非融着部との色調の違いによって容易に知ることができる。主面とは、シート状物においては最も広い面積を有する一対の面の各々を示す。
第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の一方がシート状物で、他方がシート状物でない物である場合、複合樹脂成形体は、包装容器であってもよい。包装容器は、樹脂フィルムと、シート状物でない物の一例であるトレイと、融着部とを備えるものでもよい。トレイは、物品を収容するための凹部を有する。樹脂フィルムは、樹脂フィルムとトレイの凹部との間に物品の収容空間を形成するように凹部の開口部全体を覆っている。融着部は、凹部を囲うようにして連続的に形成されていてもよい。これにより、ユーザーは、包装容器が密閉されているか否かを、融着部と非融着部の色調の違いによって容易に知ることができる。トレイとしては、食品トレイ等が挙げられる。
【0014】
視認性の観点から、第1樹脂成形体は、第1繊維を含み、第2樹脂成形体は、第2繊維を含むことが好ましい。
第1樹脂成形体が第1繊維を含み、第2樹脂成形体が第2繊維を含む場合、複合樹脂成形体は、不織布であってもよいし、織布であってもよいし、編物であってもよい。視認性の観点から、これらの中でも、複合樹脂成形体は、不織布であることが好ましい。「不織布」とは、繊維シート、ウェブ又はバットで、繊維が一方向又はランダムに配向しており、物理的交絡又は融着によって繊維間が結合されたものをいう。不織布は、紙、織物、編物、タフト及び縮じゅうフェルトを含まない。不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、フラッシュ紡糸不織布等が挙げられる。「スパンボンド不織布」とは、熱可塑性樹脂組成物の溶融又は溶解によって,紡糸口金から紡糸された連続繊維(フィラメント)群を移動捕集部材上に積層し,一つ又は二つ以上の結合方法で作られた不織布を示す。結合方法は、後述する熱圧着を含む。熱可塑性樹脂組成物、紡糸口金、及び移動捕集部材については、後述する。織布としては、平織物、綾織物、朱子織物等が挙げられる。第1繊維及び第2繊維の各々は、長繊維であってもよいし、短繊維であってもよい。
【0015】
発色剤は、第1繊維内に含まれ、呈色剤は、第2繊維内に含まれていることが好ましい。これにより、融着部は、その内部に、発色剤の反応物及び呈色剤の反応物を含む。その結果、融着部の発色又は変色は、融着部が外部から着色塗料等を用いて着色されている場合よりも、融着部の摩耗によって変化しにくい。
【0016】
視認性の観点から、第1樹脂成形体は、第1繊維を含有する第1スパンボンドウェブを含有し、第2樹脂成形体は、第2繊維を含有する第2スパンボンドウェブを含有することが好ましい。「スパンボンドウェブ」とは、溶融又は溶解された熱可塑性樹脂組成物を紡糸口金から押し出し,連続繊維(フィラメント)を移動捕集部材上に積層することによって作られたウェブを示す。スパンボンドウェブは、スパンボンドウェブを構成する繊維同士が結合されていない点で、スパンボンド不織布と異なる。第1樹脂成形体が、第1繊維を含有する第1スパンボンドウェブを含有し、第2樹脂成形体が、第2繊維を含有する第2スパンボンドウェブを含有する場合、複合樹脂成形体は、多層スパンボンド不織布であってもよい。多層スパンボンド不織布は、第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維と、第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維と、融着部とを備えるものでもよい。第1スパンボンドウェブは、第2スパンボンドウェブの一方の主面上に積層されていることが好ましい。第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維、及び第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維の各々は、長繊維である。長繊維の定義については後述する。
多層スパンボンド不織布の詳細については後述する。
以下、複合樹脂成形体が多層スパンボンド不織布である場合、複合樹脂成形体を「多層スパンボンド不織布」という場合がある。
【0017】
視認性の観点から、複合樹脂成形体は、混繊スパンボンドウェブであることが好ましい。混繊スパンボンドウェブは、第1繊維及び第2繊維の各々によって構成されてもよい。混繊スパンボンドウェブは、第1繊維及び第2繊維を含む。第1繊維及び第2繊維の各々が混繊スパンボンドウェブを構成する場合、複合樹脂成形体は、混繊スパンボンド不織布であることが好ましい。混繊スパンボンド不織布は、混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維及び第2繊維と、融着部とを備える。混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維、及び混繊スパンボンドウェブを構成する第2繊維の各々は、長繊維である。
混繊スパンボンド不織布の詳細については後述する。
以下、複合樹脂成形体が混繊スパンボンド不織布である場合、複合樹脂成形体を「混繊スパンボンド不織布」という場合がある。
【0018】
<融着部>
融着部は、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体とを結合するとともに、非融着部とは色調が異なる部位である。
融着部は、発色剤の反応物及び呈色剤の反応物を含む。融着部は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂を含んでもよい。融着部は、発色剤の未反応物及び呈色剤の未反応物を含んでもよい。
融着部は、複合樹脂成形体のうち、1か所に形成されていてもよいし、複数個所に形成されていてもよい。融着部が形成される部位、融着部の形状等は、複合樹脂成形体の用途等に応じて適宜調整すればよい。
複合樹脂成形体が不織布である場合、融着部は非融着部に対して薄肉(フィルム状)である。
融着部の面積率は、100%でなければ、複合樹脂成形体の用途等に応じて適宜調整される。融着部の面積率は、複合樹脂成形体が不織布である場合、好ましくは7%~20%である。融着部の面積率は、複合樹脂成形体から10mm×10mmの大きさの試験片を採取し、試験片のエンボスロールとの接触面を、電子顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、観察した複合樹脂成形体の面積に対する、融着部の面積の割合である。
【0019】
融着部は、少なくともその内部に、発色剤と呈色剤との発色化合物(即ち、発色剤と呈色剤とが反応して発色又は変色した反応物であり、発色剤が発色又は変色をしている化合物を指す。)を含むことが好ましい。これにより、融着部の発色又は変色は、加熱時の反応によって生成した発色化合物に起因するものであるため、融着部が外部から着色塗料等を用いて着色されている場合よりも、融着部の摩耗によって変化しにくい。
【0020】
<色差(ΔE)>
融着部と非融着部との色調の差は、CIE(国際照明委員会)で規格化されたLa色空間(以下、「CIELab色空間」という。)による色差(ΔE)を用いて定量化され得る。なお、融着部の融着前の構成は、非融着部の構成と同様であるため、融着部と非融着部との色調の差を、融着前後の色調の差とみなすことができる。
CIELab色空間は、L軸、a軸及びb軸が互いに直交した三次元座標系で表される。L軸は明度を表す。L値は0~100の範囲内であり、L値が大きいほど明るいことを示す。a軸の+方向は赤みを表す。a軸の-方向は/緑を表す。b軸の+方向は黄色さを表す。b軸の-方向は青さを表す。CIELAB色空間による2色の間の色差(ΔE)は、CIELab色空間の色座標(表色系)間のユークリッド距離を定義する。
【0021】
融着前後のΔEは、分光測色計を用いて測定され得る。詳しくは、非融着部の反射光のL1値、a1値、b1値と、融着部の反射光のL2値、a2値、b2値をそれぞれ測定し、これらの測定値を下式(A)に当てはめることで、ΔEは求められる。
ΔEは、発色剤の発色又は変色による色調変化の指標である。ΔEの値が大きいほど視覚的なコントラストに優れていることを示す。
【0022】
式(A):ΔE=((L1-L2+(a1-a2+(b1-b21/2
【0023】
分光測色計としては、例えば、コニカミノルタ株式会社製の「CM-3700A」等が挙げられる。
【0024】
視認性の観点から、ΔEは、好ましくは3~120、より好ましくは6~120、さらに好ましくは8~120、特に好ましくは10~120、一層好ましくは15~120、より一層好ましくは20~120である。
【0025】
ΔLの好ましい範囲は、発色又は変色する前の状態の発色剤(以下、「第1発色剤」という。)が無彩色及び有彩色のどちらであるかによって異なる。「無彩色」とは、白、灰色又は黒を示す。「有彩色」とは無彩色以外の全ての色を示し、例として、赤、黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、又は赤紫が挙げられる。
融着前後の明度差の観点から、第1発色剤が無彩色である場合、ΔLは、好ましくは-100~-15、より好ましくは-100~-20、さらに好ましくは-100~-25、特に好ましくは-100~-30、一層好ましくは-100~-35である。
融着前後の明度差の観点から、第1発色剤が有彩色である場合、ΔLは、好ましくは-100~-90、より好ましくは-100~-80、さらに好ましくは-100~-70、特に好ましくは-100~-60である。
【0026】
Δaの好ましい範囲は、第1発色剤の色によって異なる。
第1発色の色彩が赤色系である場合、Δaは、好ましくは+15以上、より好ましくは+20以上、さらに好ましくは+25以上、特に好ましくは+30以上である。第1発色剤の色彩が緑色系である場合、Δaは、好ましくは-15以下、より好ましくは-20以下、さらに好ましくは-25以下、特に好ましくは-30以下である。
【0027】
Δbの好ましい範囲は、第1発色剤の色によって異なる。
第1発色剤の色彩が青色系である場合、Δbは、-15以下が好ましく、-20以下がより好ましく、-25以下がさらに好ましく、-30以下が特に極めて好ましい。
【0028】
(発色剤及び呈色剤)
発色剤及び呈色剤の組合せは、発色剤が呈色剤との化学的相互作用により発色又は変色し、かつ、第1樹脂成形体、第2樹脂成形体、及び複合樹脂成形体の成形を正常に実施できる限りにおいて、自由に選択してよい。具体的には、酸化剤と還元剤、酸と塩基、などが挙げられる。安全性や取り扱いの簡便さの観点から、酸と塩基の組み合わせが好ましい。すなわち、発色剤と呈色剤との化学的相互作用は、酸塩基反応を含むことがより好ましく、酸塩基反応であることがより好ましい。
【0029】
(発色剤)
発色剤は、複合樹脂成形体の用途、及び呈色剤との化学的相互作用によって発色する色調等に応じて適宜選択される。複合樹脂成形体の融着部と非融着部との色調差を強調する観点から、発色剤は、有色から有色へと変色する色素よりも、無色から有色へと発色する色素であることが好ましく、ロイコ色素を含むことがより好ましく、ロイコ色素であることがさらに好ましい。
【0030】
酸塩基反応によって発色するロイコ色素としては、例えば、インドリルフタリド系化合物、インドールフタリド系化合物、フルオラン系化合物、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルアザフタリド系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スピロピラン系化合物、トリアゼン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物等が挙げられる。インドリルアザフタリド系化合物は、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-3-インドリル)-4-アザフタリドを含む。インドールフタリド系化合物は、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリドを含む。これらのロイコ色素は、分子内にラクトン環を有する無色又は淡色の塩基性化合物である。これらのロイコ色素は、酸によってラクトン環が開裂して発色し、塩基によってラクトン環の閉環構造が変化し無色又は淡色になる。すなわち、ロイコ色素の呈色反応は、可逆的である。これらのロイコ色素は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
複合樹脂成形体がスパンボンド不織布である場合、ロイコ色素は、250℃において熱分解しない化合物であることが好ましい。スパンボンド不織布は、後述する多層スパンボンド不織布、及び後述する混繊スパンボンド不織布を含む。スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布の製造過程において、250℃の雰囲気下に曝される場合がある。そのため、ロイコ色素が、250℃において熱分解しない化合物であれば、融着部が外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい。
250℃において、熱分解しないロイコ色素としては、例えば、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-3-インドリル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド等が挙げられる。
【0031】
発色剤の含有量は、第1樹脂成形体の形状等に応じて適宜選択される。
第1樹脂成形体が繊維である場合、発色剤の含有量は、第1樹脂成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。発色剤の含有量が上記範囲内であれば、糸切れ等の成形不良の発生を抑制することができる。発色剤の含有量が上記範囲内であれば、複合樹脂成形体の融着部に十分な視認性を与えることができる。
第1樹脂成形体がシート状物である場合、発色剤の含有量は、第1樹脂成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。発色剤の含有量が上記範囲内であれば、シート破れ等の成形不良の発生を抑制することができる。発色剤の含有量が上記範囲内であれば、複合樹脂成形体の融着部に十分な視認性を与えることができる。
【0032】
(呈色剤)
呈色剤は、発色剤の種類等に応じて、適宜選択される。
塩基性ロイコ色素を発色させうる呈色剤としては、フェノール性化合物、高級脂肪酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。フェノール性化合物としては、例えば、ビスフェノールS、4-イソプロポキシフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ステアリン酸等が挙げられる。これらの呈色剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
複合樹脂成形体がスパンボンド不織布である場合、呈色剤は、250℃において熱分解しない化合物であることが好ましい。スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布の製造過程において、250℃の雰囲気下に曝される場合がある。そのため、呈色剤が、250℃において熱分解しない化合物であれば、融着部が外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい。
250℃において、熱分解しない呈色剤としては、例えば、ビスフェノールS、4-イソプロポキシフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホン、ステアリン酸等が挙げられる。
呈色剤の融点は、複合樹脂成形体の融着部を形成する温度(以下、「融着温度」という。)よりも低いことが好ましい。これにより、第1樹脂成形体の一部及び第2樹脂成形体の一部が融着温度で加熱された際、呈色剤は、融解しやすい。そのため、融着部において、発色剤及び呈色剤は、融点が融着温度以上の呈色剤を用いる場合よりもより混合された状態で保持される。つまり、融着部は、より発色しやすくなる。その結果、融着部は、外部から着色されていなくても色調によってより視認されやすい。
複合樹脂成形体がスパンボンド不織布である場合、呈色剤の融点は、150℃以下であることが好ましい。融点が150℃以下の呈色剤としては、4-イソプロポキシフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホン、ステアリン酸等挙げられる。
複合樹脂成形体がスパンボンド不織布である場合、第2樹脂成形体の成形性の観点から、呈色剤は、高級脂肪酸であることが好ましい。
発色剤が塩基性ロイコ色素であり、融着部をより強く発色させたい場合、呈色剤の酸性度が高いこと、すなわち酸解離定数(pKa)が低いことが好ましい。これにより、ロイコ色素と呈色剤が混合すると、ロイコ色素のラクトン環は開環しやすくなる。つまり、ロイコ色素は発色しやすくなる。
【0033】
呈色剤の含有量は、第2樹脂成形体の形状等に応じて適宜選択される。
第2樹脂成形体が繊維である場合、呈色剤の含有量は、第2樹脂成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。呈色剤の含有量が上記範囲内であれば、糸切れ等の成形不良の発生を抑制することができる。呈色剤の含有量が上記範囲内であれば、複合樹脂成形体の融着部に十分な視認性を与えることができる。
第2樹脂成形体がシート状物である場合、呈色剤の含有量は、第2樹脂成形体の総量に対して、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。呈色剤の含有量が上記範囲内であれば、シート破れ等の成形不良の発生を抑制することができる。呈色剤の含有量が上記範囲内であれば、複合樹脂成形体の融着部に十分な視認性を与えることができる。
【0034】
第1樹脂成形体は、呈色剤を含有せず、第2樹脂成形体は、前記発色剤を含有しないことが好ましい。これにより、融着部と非融着部とのコントラストをより強めることができる。その結果、融着部は、外部から着色されていなくても色調によってより視認されやすい。
【0035】
(第1熱可塑性樹脂)
第1熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、複合樹脂成形体の用途等に応じて適宜選択される。なかでも、第1熱可塑性樹脂は、透明であることが好ましい。このような透明な熱可塑性樹脂としては、「プラスチック材料活用事典」(版数:初版,発行所:産業調査会事典出版センター、発行年月日:2001年10月20日)に記載の樹脂を参照してもよい。具体的に、透明な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、汎用ポリスチレン(GPPS:General Purpose Polysthylene)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、メタクリル樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、プロピレン系重合体、低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE:Linear Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)等が挙げられる。プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0036】
中でも、第1樹脂成形体が繊維である場合、成形時の紡糸安定性や不織布の延伸加工性の観点から、第1熱可塑性樹脂は、プロピレン系重合体を含むことが好ましく、プロピレン系重合体であることが特に好ましい。
プロピレン単独重合体の融点(Tm)は、好ましくは155℃以上、より好ましくは157℃~165℃である。プロピレン共重合体の融点(Tm)は、好ましくは130℃以上155℃未満、より好ましくは130℃~150℃である。
プロピレン共重合体は、プロピレンと、1種又は2種以上のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。α-オレフィンとしては、炭素数2以上(但し炭素数3を除く)のα-オレフィン、好ましくは炭素数2~8(但し炭素数3を除く)のα-オレフィンである。炭素数2以上のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、溶融紡糸し得る限り、特に限定はされないが、通常、1g/10分~1000g/10分、好ましくは5g/10分~500g/10分、さらに好ましくは10g/10分~100g/10分である。
プロピレン系重合体のメルトフローレートは、ASTMD-1238、230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0037】
第1熱可塑性樹脂の含有量は、第1樹脂成形体の総量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0038】
(第2熱可塑性樹脂)
第2熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、複合樹脂成形体の用途等に応じて適宜選択される。第2熱可塑性樹脂としては、第1熱可塑性樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第2熱可塑性樹脂は、プロピレン系重合体を含むことが好ましく、プロピレン系重合体であることが特に好ましい。
【0039】
第2熱可塑性樹脂の含有量は、第2樹脂成形体の総量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0040】
第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂は、上述した透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン)を含むことが好ましい。これにより、第1樹脂成形体、第2樹脂成形体、及び融着部は、第1構成よりも透明になりやすい。第1構成では、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の各々は、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン)を含まない。つまり、発色剤の発色又は変色に起因する、融着部と非融着部とのコントラストをより強めることができる。その結果、融着部は、外部から着色されていなくても色調によってより視認されやすい。
【0041】
第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の各々は、必要に応じて、本開示の一実施形態の効果を損なわれない範囲で、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、増感剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、分散剤、核剤、柔軟剤、撥水剤、充填剤、天然油、合成油、エチレン系重合体ワックス以外のワックス、抗菌剤、防腐剤、艶消し剤、防錆剤、芳香剤、消泡剤、防黴剤、防虫剤等が挙げられる。これら他の成分は、複合樹脂成形体の内部に含まれていてもよく、複合樹脂成形体の表面に付着していてもよい。
【0042】
[多層スパンボンド不織布]
次に、多層スパンボンド不織布について、説明する。
多層スパンボンド不織布は、上述したように、第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維と、第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維と、融着部とを備える。第1スパンボンドウェブは、第2スパンボンドウェブの一方の主面上に積層されている。融着部では、第1繊維の一部と第2繊維の一部とが融着している。
第1スパンボンドウェブは、第1樹脂成形体の一例である。第2スパンボンドウェブは、第2樹脂成形体の一例である。
【0043】
多層スパンボンド不織布は、第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維の一部と第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維の一部とが融着している融着部を備える。そのため、融着部は、外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい。その結果、多層スパンボンド不織布は、意匠性に優れる。
【0044】
発色剤は、第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維に含まれ、呈色剤は、第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維に含まれることが好ましい。これにより、融着部は、その内部に、発色剤の反応物及び呈色剤の反応物を含む。その結果、融着部の発色又は変色は、融着部が外部から着色塗料等を用いて着色されている場合よりも、融着部の摩耗によって変化しにくい。
【0045】
<第1スパンボンドウェブ>
第1スパンボンドウェブの目付は、好ましくは360g/m以下、より好ましくは240g/m以下、さらに好ましくは150g/m以下、特に好ましくは15g/m~120g/m、さらに好ましくは8g/m~25g/mである。目付の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0046】
第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径は、好ましくは1μm~50μm、より好ましく1μmは~40μm、さらに好ましくは1μm~30μmである。第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径が小さいと、発色剤を含む繊維全体が溶融しやすくなり、融着部の色調視認性を向上できる観点で好ましい。
平均繊維径は、次のようにして求められる。得られたスパンボンド不織布から、10mm×10mmの試験片を10点採取し、Nikon社製ECLIPSE E400顕微鏡を用いて、倍率20倍で、繊維の直径をμm単位で小数点第1位まで読み取る。1試験片毎に任意の20箇所の径を測定し、平均値を求める。
【0047】
第1スパンボンドウェブの厚みは、多層スパンボンド不織布の用途等に応じて適宜選択され、好ましくは0.1mm~1.0mm、より好ましくは0.2mm~0.5mmである。第1スパンボンドウェブの厚みが上記範囲内であれば、スパンボンドウェブの溶融効率を高め融着部の形成を促進することができるとともに、観点及び融着部に適切な厚みを与え色調視認性を向上させることができる。
第1スパンボンドウェブの厚みの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0048】
<第2スパンボンドウェブ>
第2スパンボンドウェブの目付は、第1スパンボンドウェブの目付として例示したものと同様である。第2スパンボンドウェブの目付は、第1スパンボンドウェブの目付と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維の平均繊維径は、第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径として例示したものと同様のものが挙げられる。第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維の平均繊維径は、第1スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第2スパンボンドウェブを構成する第2繊維の平均繊維径が小さいと、発色剤を含む繊維全体が溶融しやすくなり、融着部の色調視認性を向上できる観点で好ましい。
【0050】
第2スパンボンドウェブの厚みは、多層スパンボンド不織布の用途等に応じて適宜選択され、好ましくは0.1mm~1.0mm、より好ましくは0.2mm~0.5mmである。第2スパンボンドウェブの厚みが上記範囲内であれば、スパンボンドウェブの溶融効率を高め融着部の形成を促進することができるとともに、融着部に適切な厚みを与え色調視認性を向上させることができる。
第2スパンボンドウェブの厚みの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0051】
<他の層>
多層スパンボンド不織布は、第1スパンボンドウェブ、第2スパンボンドウェブ、及び融着部に加えて、他の層を備えていてもよい。他の層の構成は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。他の層は、第1スパンボンドウェブ及び第2スパンボンドウェブの一方にのみ隣接する面に配されていてもよい。第1スパンボンドウェブ及び第2スパンボンドウェブの融着部の形成を阻害しない限りにおいて、第1スパンボンドウェブ及び第2スパンボンドウェブの間に配されていてもよい。
【0052】
他の層としては、例えば、繊維集合体、樹脂シート、樹脂フィルム等が挙げられる。
繊維集合体としては、例えば、編物、織物、本開示の一実施形態に係る多層スパンボンド不織布以外の不織布(以下、単に「不織布」という。)等が挙げられる。
【0053】
不織布としては、短繊維不織布、長繊維不織布等が挙げられる。
「短繊維」とは、平均繊維長200mm以下の繊維を示す。
「長繊維」とは、不織布便覧(INDA米国不織布工業会編、株式会社不織布情報、1996年)等、当技術分野で一般的に用いられている「連続長繊維(continuous filament)」を示す。
不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等が挙げられる。繊維集合体は、コットン等の天然繊維のシート状物であってもよい。
樹脂フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等が挙げられる。
これらの他の層は組み合わせて、多層スパンボンド不織布に積層されていてもよい。例えば、多層スパンボンド不織布と、樹脂フィルムと、コットン等の天然繊維の繊維集合体とがこの順で積層されたものであってもよい。
【0054】
多層スパンボンド不織布と積層する樹脂フィルムとしては、多層スパンボンド不織布が通気性を必要とする場合には、通気性フィルム、又は透湿性フィルムが好ましい。
通気性フィルムとしては、例えば、熱可塑性エラストマーのフィルム、多孔フィルム等が挙げられる。熱可塑性エラストマーのフィルムとしては、透湿性を有するポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。多孔フィルムは、無機粒子又は有機粒子を含む熱可塑性樹脂フィルムを延伸して多孔化してなる。多孔フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、これらの組み合わせ等のポリオレフィンが挙げられる。
多層スパンボンド不織布と積層する樹脂フィルムとしては、多層スパンボンド不織布が通気性を必要としない場合には、多孔化されていない熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられる。多孔化されていない熱可塑性樹脂フィルムの材質としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリアミドから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0055】
多層スパンボンド不織布に他の層を積層する(貼り合せる)方法としては、特に制限されず、熱融着法、機械的交絡法、接着剤を用いる方法、押出しラミネート等が挙げられる。熱融着法は、熱エンボス加工、及び超音波融着を含む。機械的交絡法は、ニードルパンチ、及びウォータージェットを含む。接着剤は、ホットメルト接着剤、及びウレタン系接着剤を含む。
【0056】
<多層スパンボンド不織布の用途>
多層スパンボンド不織布は、繊維製品に用いられ得る。繊維製品は、特に限定されず、吸収性物品、衛生物品、医療物品、衣料素材、包装材などが挙げられる。吸収性物品としては、例えば、使い捨てオムツ、生理用品等が挙げられる。衛生物品としては、衛生マスク等が挙げられる。医療物品としては、例えば、包帯等が挙げられる。
【0057】
[混繊スパンボンド不織布]
次に、混繊スパンボンド不織布について、説明する。
混繊スパンボンド不織布は、上述したように、混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維及び第2繊維と、融着部とを備える。
混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維は、第1樹脂成形体の一例である。混繊スパンボンドウェブを構成する第2繊維は、第2樹脂成形体の一例である。
【0058】
混繊スパンボンド不織布は、混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維の一部と、混繊スパンボンドウェブを構成する第2繊維の一部とが融着している融着部を備える。そのため、融着部は、外部から着色されていなくても色調によって視認されやすい。その結果、混繊スパンボンド不織布は、意匠性に優れる。
【0059】
<混繊スパンボンドウェブ>
第1熱可塑性樹脂の混繊率は、混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維の発色剤の含有量及び混繊スパンボンドウェブを構成する第2繊維の呈色の含有量等に応じて適宜選択される。第1熱可塑性樹脂の混繊率は、好ましくは20質量%~80質量%、より好ましくは40質量%~60質量%である。
【0060】
「混繊率」とは、2種以上の繊維を混合してなる不織布層における、ある特定の種類の繊維が含まれている割合、又は当該不織布層における各種繊維の混合割合を示す。すなわち、第1繊維と第2繊維とからなる混繊スパンボンド不織布層における「第1繊維の混繊率」とは、{第1熱可塑性樹脂の第1繊維の質量÷(第1繊維の質量+第2繊維の質量)}である。「第2繊維の混繊率」とは、{第2繊維の質量÷(第1繊維の質量+第2繊維の質量)}である。第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂とからなるスパンボンド不織布層間において「混繊率が異なる」とは、各不織布層における第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂との混合割合が異なることを示す。
【0061】
混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。第1繊維の平均繊維径が小さいと、発色剤を含む繊維全体が溶融しやすくなり、融着部の色調視認性を向上できる観点で好ましい。
【0062】
混繊スパンボンドウェブを構成する第2繊維の平均繊維径は、混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径として例示したものと同様のものが挙げられる。混繊スパンボンドウェブを構成する第2繊維の平均繊維径は、混繊スパンボンドウェブを構成する第1繊維の平均繊維径と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第2繊維の平均繊維径が小さいと、発色剤を含む繊維全体が溶融しやすくなり、融着部の色調視認性を向上できる観点で好ましい。
【0063】
発色剤は、混載スパンボンドウェブを構成する第1繊維に含まれ、呈色剤は、混載スパンボンドウェブを構成する第2繊維に含まれることが好ましい。これにより、融着部は、その内部に、発色剤の反応物及び呈色剤の反応物を含む。その結果、融着部の発色又は変色は、融着部が外部から着色塗料等を用いて着色されている場合よりも、融着部の摩耗によって変化しにくい。
【0064】
混繊スパンボンドウェブの目付は、混繊スパンボンド不織布の用途に応じて選択され得る。例えば、オムツ等の衛生材用途においては、柔軟性及び通気性の観点から、混繊スパンボンド不織布の目付は、好ましくは200g/m以下、より好ましくは100g/m以下、さらに好ましくは80g/m以下、特に好ましくは15g/m~60g/mである。
【0065】
混繊スパンボンドウェブの厚みは、混繊スパンボンド不織布の用途等に応じて適宜選択され、好ましくは0.1mm~1.0mm、より好ましくは0.2mm~0.5mmである。混繊スパンボンドウェブの厚みが上記範囲内であれば、スパンボンドウェブの溶融効率を高め融着部の形成を促進することができるとともに、融着部に適切な厚みを与え色調視認性を向上させることができる。
混繊スパンボンドウェブの厚みの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0066】
<他の層>
混繊スパンボンド不織布は、混繊スパンボンドウェブ、及び融着部に加えて、他の層を備えていてもよい。他の層の構成は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0067】
他の層としては、多層スパンボンド不織布において説明した他の層として例示したものと同様のものが挙げられる。
混繊スパンボンド不織布に他の層を積層する(貼り合わせる)方法としては、多層スパンボンド不織布において説明した多層スパンボンド不織布に他の層を積層する(貼り合せる)方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0068】
<混繊スパンボンド不織布の用途>
混繊スパンボンド不織布は、繊維製品に用いられ得る。繊維製品は、特に限定されず、吸収性物品、衛生物品、医療物品、衣料素材、包装材などが挙げられる。吸収性物品としては、例えば、使い捨てオムツ、生理用品等が挙げられる。衛生物品としては、衛生マスク等が挙げられる。医療物品としては、例えば、包帯等が挙げられる。
【0069】
<多層スパンボンド不織布の製造方法>
次に、図1を参照して、多層スパンボンド不織布の製造方法の一例について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る多層スパンボンド不織布の製造装置の一例を示す概略図である。
【0070】
本開示の一実施形態に係る多層スパンボンド不織布の製造方法は、第1紡糸工程と、第1ウェブ形成工程と、第2紡糸工程と、第2ウェブ形成工程と、熱圧着工程と、巻取工程とを有する態様が好ましい。第1紡糸工程、第1ウェブ形成工程、第2紡糸工程、第2ウェブ形成工程、熱圧着工程、及び巻取工程は、この順に実行される。
【0071】
<多層スパンボンド不織布の製造装置>
本開示の一実施形態に係る多層スパンボンド不織布の製造方法には、多層スパンボンド不織布の製造装置100が好適に用いられる。
多層スパンボンド不織布の製造装置100は、図1に示すように、第1紡糸部10と、第1ウェブ形成部20と、第2紡糸部30と、第2ウェブ形成部40と、熱圧着部50と、巻取部60を備える。
第1紡糸部10は、第1押出機11と、第1紡糸口金12と、第1エジェクター13とを有する。第1押出機11は、第1熱可塑性樹脂組成物を溶融混練して、第1熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第1紡糸口金12に押し出す。第1熱可塑性樹脂組成物は、第1樹脂成形体の原料を示す。第1紡糸口金12は、第1熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して、第1連続繊維群1を形成する。第1エジェクター13は、第1連続繊維群1を延伸する。
第1ウェブ形成部20は、移動捕集部材21と、第1サクションユニット22と、一対の第1コンパクションロール23とを有する。移動捕集部材21は、第1連続繊維群1を堆積するための捕集面を有する。第1サクションユニット22は、第1連続繊維群1を移動捕集部材21の捕集面上に効率よく捕集するために用いられる。第1サクションユニット22は、移動捕集部材21の補集面の下部に設けられている。一対の第1コンパクションロール23は、第1連続繊維群1を押圧して、第1スパンボンドウェブ2を形成する。
第2紡糸部30は、第2押出機31と、第2紡糸口金32と、第2エジェクター33とを有する。第2押出機31は、第2熱可塑性樹脂組成物を溶融混練して、第2熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第2紡糸口金32に押し出す。第2熱可塑性樹脂組成物は、第2樹脂成形体の原料を示す。第2紡糸口金32は、第1熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して、第2連続繊維群3を形成する。第2エジェクター33は、第2連続繊維群3を延伸する。
第2ウェブ形成部40は、第2サクションユニット41と、一対の第2コンパクションロール42とを有する。第2サクションユニット41は、第2連続繊維群3を第1スパンボンドウェブ2の表面上に効率よく捕集するために用いられる。第2サクションユニット41は、移動捕集部材21の補集面の下部に設けられている。一対の第2コンパクションロール42は、軽い繊維同士(第1スパンボンドウェブ2及び第2連続繊維群3)を一体化し、後工程(例えば、エンボスロール51による熱圧着等)に繊維が耐えられるようにする。具体的に、一対の第2コンパクションロール42は、第1スパンボンドウェブ2及び第2連続繊維群3を押圧して、積層ウェブ4を形成する、積層ウェブ4は、第1スパンボンドウェブ2と、第2スパンボンドウェブとを有する。第1スパンボンドウェブ2は、第2スパンボンドウェブの一方の主面に積層されている。
熱圧着部50は、エンボスロール51と、平滑ロール52とを有する。エンボスロール51及び平滑ロール52は、積層ウェブ4を熱圧着する。エンボスロール51は、ロール表面に彫刻が施された金属製ロールである。平滑ロール52は、ロール表面が平滑な金属製ロールである。
巻取部60は、ワインダー61を有する。ワインダー61は、多層スパンボンド不織布5を巻き取る。
【0072】
<第1紡糸工程>
第1紡糸工程では、第1熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して第1連続繊維群1を形成する。第1紡糸工程では、移動捕集部材の捕集面上に第1連続繊維群1を堆積させるまでの間に、第1連続繊維群1を冷却して延伸する公知の過程が含まれる。
【0073】
具体的に、第1熱可塑性樹脂組成物を第1押出機11に投入し、第1熱可塑性樹脂の溶融物を第1紡糸口金12に押し出す。この際、第1押出機11の加熱温度は、第1熱可塑性樹脂組成物の融点等に応じて適宜調整され、好ましくは200℃~250℃である。第1熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第1押出機11から押し出す際の圧力は、好ましくは20MPa~80MPaである。
次いで、第1熱可塑性樹脂組成物は第1紡糸口金12によって溶融紡糸され、第1連続繊維群1が形成される。第1連続繊維群1は、冷却風14によって冷却され、第1エジェクター13により延伸される。
冷却風14の温度は、好ましくは5℃~50℃である。冷却風14の風速は、好ましくは100m/分~10,000m/分である。
【0074】
<第1ウェブ形成工程>
第1ウェブ形成工程では、移動捕集部材21の捕集面上に、第1連続繊維群1を堆積させて、第1スパンボンドウェブ2を形成する。
【0075】
具体的に、延伸された第1連続繊維群1は、第1サクションユニット22によって、移動捕集部材21の捕集面上に効率よく補集される。捕集された第1連続繊維群1は一対の第1コンパクションロール23の間に挟み込まれて、第1スパンボンドウェブ2が形成される。
第1連続繊維群1を押圧するときの一対の第1コンパクションロール23の温度は、好ましくは100℃~120℃である。第1連続繊維群1を押圧するときのコンパクションロールの温度は、第1熱可塑性樹脂の融点よりも低いことが好ましい。
【0076】
<第2紡糸工程>
第2紡糸工程では、第2熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して、第2連続繊維群3を形成する。
第2紡糸工程も同様に、第1スパンボンドウェブ2上に第2連続繊維群3を堆積させるまでの間に、第2連続繊維群3を冷却して延伸する公知の過程が含まれる。
【0077】
具体的に、第2熱可塑性樹脂を第2押出機31に投入し、第2熱可塑性樹脂の溶融物を押し出す。この際、第2押出機31の加熱温度は、第2熱可塑性樹脂の融点等に応じて適宜調整され、好ましくは200℃~250℃である。第2熱可塑性樹脂の溶融物を第2押出機31から押し出す際の圧力は、好ましくは20MPa~80MPaである。
次いで、第2熱可塑性樹脂を第2紡糸口金32から溶融紡糸して、第2連続繊維群3が形成される。第2連続繊維群3は、冷却風34によって冷却され、第2エジェクター33により延伸される。
冷却風34の温度は、好ましくは5℃~50℃である。冷却風34の風速は、好ましくは100m/分~10,000m/分である。
【0078】
<第2ウェブ形成工程>
第2ウェブ形成工程では、第1スパンボンドウェブ2上に、第2連続繊維群3を堆積させて第2スパンボンドウェブを形成して、積層ウェブ4を形成する。
【0079】
具体的に、延伸された第2連続繊維群3は、第2サクションユニット41によって、第1スパンボンドウェブ2上に効率よく補集される。捕集された第2連続繊維群3は一対の第2コンパクションロール42の間に挟み込まれて、積層ウェブ4が形成される。
第2連続繊維群3を押圧するときの一対の第2コンパクションロール42の温度は、好ましくは100℃~120℃である。第2連続繊維群3を押圧するときのコンパクションロールの温度は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の各々の融点よりも低いことが好ましい。
【0080】
<熱圧着工程>
熱圧着工程では、積層ウェブ4を熱圧着する。これにより、多層スパンボンド不織布5が得られる。換言すると、積層ウェブ4に融着部が形成される。
【0081】
具体的に、積層ウェブ4はエンボスロール51と平滑ロール52との間に挟み込まれて、多層スパンボンド不織布5が形成される。
積層ウェブ4を押圧するときエンボスロール51及び平滑ロール52の各々の表面温度は、好ましくは140℃~150℃である。
積層ウェブ4を押圧するときの圧力は、好ましくは700MPa~1200MPaである。
【0082】
<巻取工程>
巻取工程では、多層スパンボンド不織布5を巻き取って、回収する。
【0083】
具体的に、多層スパンボンド不織布5は、ワインダー61によって巻き取られる。
【0084】
(混繊スパンボンドの製造方法)
次に、図2を参照して、混繊スパンボンド不織布の製造方法の一例について説明する。図2は、本開示の一実施形態に係る混繊スパンボンド不織布の製造装置の一例を示す概略図である。
【0085】
本開示の一実施形態に係る混繊スパンボンド不織布の製造方法は、混繊紡糸工程と、混繊ウェブ形成工程と、熱圧着工程と、巻取工程とを有する。混繊紡糸工程、混繊ウェブ形成工程、熱圧着工程、及び巻取工程は、この順に実行される。
【0086】
<混繊スパンボンド不織布の製造装置>
本開示の一実施形態に係る混繊スパンボンド不織布の製造方法には、混繊スパンボンド不織布の製造装置200が好適に用いられる。
混繊多層スパンボンド不織布の製造装置200は、図2に示すように、混繊紡糸部10Aと、混繊ウェブ形成部20Aと、熱圧着部50と、巻取部60を備える。
混繊紡糸部10Aは、第1押出機11と、第2押出機15と、第3紡糸口金16と、第1エジェクター13とを有する。第1押出機11は、第1熱可塑性樹脂組成物を溶融混練して、第1熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第3紡糸口金16に押し出す。第2押出機15は、第2熱可塑性樹脂組成物を溶融混練して、第2熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第3紡糸口金16に押し出す。第3紡糸口金16は、第1熱可塑性樹脂組成物及び第2熱可塑性樹脂組成物の各々を個別に多数の紡糸孔(ノズル)を有する。第3紡糸口金16は、第1熱可塑性樹脂組成物と第2熱可塑性樹脂組成物とを異なる紡糸孔から独立に同時に吐出して、第3連続繊維群6を形成する。第1エジェクター13は、第3連続繊維群6を延伸する。
混繊ウェブ形成部20Aは、移動捕集部材21と、第1サクションユニット22と、一対の第1コンパクションロール23とを有する。
【0087】
<混繊紡糸工程>
混繊紡糸工程では、第1熱可塑性樹脂組成物及び第2熱可塑性樹脂組成物の各々を溶融紡糸して第3連続繊維群6を形成する。混繊紡糸工程では、移動捕集部材21の捕集面上に第3連続繊維群6を堆積させるまでの間に、第3連続繊維群6を冷却して延伸する公知の過程が含まれる。
【0088】
具体的に、第1熱可塑性樹脂組成物を第1押出機11に投入し、第1熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第3紡糸口金16に押し出す。同時に、第2熱可塑性樹脂組成物を第3押出機15に投入し、第2熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第3紡糸口金16に押し出す。
この際、第1押出機11及び第3押出機15の各々の加熱温度及び圧力は、上述した第1紡糸工程で例示した加熱温度及び圧力と同様であってもよい。
次いで、第1熱可塑性樹脂組成物及び第2熱可塑性樹脂組成物の各々を第3紡糸口金16から溶融紡糸して、第3連続繊維群6を形成する。第3連続繊維群6は、冷却風14によって冷却され、第1エジェクター13により延伸される。
【0089】
<混繊ウェブ形成工程>
混繊ウェブ形成工程では、移動捕集部材21の捕集面上に、第3連続繊維群6を堆積させて混繊スパンボンドウェブ7を形成する。
【0090】
混繊ウェブ形成工程は、上述した第1ウェブ形成工程と同様に実行され得る。
【0091】
<熱圧着工程>
熱圧着工程では、混繊スパンボンドウェブ7を熱圧着する。これにより、混繊スパンボンド不織布8が得られる。換言すると、混繊スパンボンドウェブ7に融着部が形成される。
【0092】
熱圧着工程は、上述した多層スパンボンド不織布の製造装置の熱圧着工程と同等にして実行される。
【0093】
<巻取工程>
巻取工程では、混繊スパンボンド不織布8を巻き取って、回収する。
【0094】
巻取工程は、上述した多層スパンボンド不織布の製造装置の巻取工程と同等にして実行される。
【実施例
【0095】
以下、実施例により、本開示の複合樹脂成形体について説明するが、本開示の複合樹脂成形体は、以下の実施態様により何ら限定されるものではない。
【0096】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0097】
(1)目付〔g/m
実施例及び比較例で得られた不織布から、100mm(流れ方向:MD)×100mm(流れ方向と直交する方向:CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とした。次いで、20℃、相対湿度50%RH環境下で、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量〔g〕に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの目付〔g/m〕とした。
【0098】
(2)厚み〔mm〕
実施例及び比較例で得られた不織布から、100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を10点採取した。試験片の採取場所は、目付け測定用の試験片と同様の場所とした。次いで、採取した各試験片に対して荷重型厚み計(尾崎製作所社製)を用いて、JIS L 1096:2010に記載の方法で厚み〔mm〕を測定した。各試験片の厚みの平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの厚み〔mm〕とした。
【0099】
(3)色差〔-〕
コニカミノルタ株式会社製の分光測色計「CM-3700A」(SCE方式、視野角2度、光源:CIE D65)にて、非融着部および融着部における反射光のL値、a値、及びb値を測定し、JIS-P8150に規定されたCIELab色空間による色差式により、融着前後の色差を算出した。
【0100】
(4)摩耗性試験〔-〕
学振型摩擦堅牢度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製、新型NR-100)を用い、JIS L 0849の摩擦堅牢度試験法に準拠して、積層ウェブの融着部に対して摩擦試験を行った。詳しくは、摩擦子側には布テープ(株式会社寺岡製作所製、No.1532)を貼付し、荷重300gをかけた状態で、融着部をMD方向に50回往復させて擦り、融着部の青色の耐摩耗性を以下の基準で評価した。
評価A:融着部の青色の損傷を確認できなかった。
評価B:融着部の青色の損傷を確認した。
【0101】
実施例及び比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
<熱可塑性樹脂>
・プロピレン単独重合体(MFR:60g/10分、融点:162℃)
<発色剤>
・青色ロイコ色素:山本化成株式会社製の「Blue-63」(3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-3-インドリル)-4-アザフタリド)
・赤色ロイコ色素:山本化成株式会社製の「Red-40」(3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド)
<呈色剤>
・第1呈色剤:ビスフェノールS(融点:247℃、酸解離定数:4.5)
・第2呈色剤:4-イソプロポキシフェニル-4-ヒドロキシフェニルスルホン(融点129℃、酸解離定数:4.5)
・第3呈色剤:ステアリン酸(融点70℃、酸解離定数:5.0)
【0102】
(比較例1)
プロピレン単独重合体(100部)、及び青色ロイコ色素(1部)を混ぜ合わせて、第1原料を得た。
第1原料をプレスフィルム作成機で190℃にて成形し、厚さ100μmの第1樹脂シートを得た。
第1樹脂シートを目視で観察したところ、第1樹脂シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
第1樹脂シートの一部をバッチ式シーラーに挟み込み、熱圧着して、融着部を形成した。バッチ式シーラーは、一対の金属板を備える。一対の金属板の各々の表面温度は、190℃であった。第1樹脂シートに掛かる圧力は、3MPaであった。
第1樹脂シートの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0103】
(比較例2)
第1原料の代わりに、プロピレン単独重合体(100部)、及び赤色ロイコ色素(1部)を混ぜ合わせた第2原料を用いた他は、比較例1と同様にして、厚さ100μmの第2樹脂シートを得た。
第2樹脂シートを目視で観察したところ、第2樹脂シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第2樹脂シートの一部に融着部を形成した。
第2樹脂シートの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0104】
(比較例3)
第1原料の代わりに、プロピレン単独重合体(100部)、及び第1呈色剤(2部)を混ぜ合わせた第3原料を用いた他は、比較例1と同様にして、厚さ100μmの第3樹脂シートを得た。
第3樹脂シートを目視で観察したところ、第3樹脂シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第3樹脂シートの一部に融着部を形成した。
第3樹脂シートの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0105】
(比較例4)
第1原料の代わりに、プロピレン単独重合体(100部)、及び第2呈色剤(2部)を混ぜ合わせた第4原料を用いた他は、比較例1と同様にして、厚さ100μmの第4樹脂シートを得た。
第4樹脂シートを目視で観察したところ、第4樹脂シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第4樹脂シートの一部に融着部を形成した。
第4樹脂シートの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0106】
(比較例5)
第1原料の代わりに、プロピレン単独重合体(100部)、及び第3呈色剤(2部)を混ぜ合わせて第5原料を用いた他は、比較例1と同様にして、厚さ100μmの第5樹脂シートを得た。
第5樹脂シートを目視で観察したところ、第5樹脂シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第5樹脂シートの一部に融着部を形成した。
第5樹脂シートの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0107】
(比較例6)
第1原料の代わりに、プロピレン単独重合体(100部)、青色ロイコ色素(1部)、及び第2呈色剤(2部)を混ぜ合わせた第6原料を用いた他は、比較例1と同様にして、厚さ100μmの第6樹脂シートを得た。
第6樹脂シートを目視で観察したところ、第6樹脂シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調(無色透明)と異なり、樹脂シート全体が青色であった。
比較例1と同様にして、第6樹脂シートの一部に融着部を形成した。
第6樹脂シートの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(青色)と同様に、青色であった。
【0108】
(実施例1)
比較例1と同様にして、青色ロイコ色素を含む第1樹脂シートを得た。比較例3と同様にして、第1呈色剤を含む第3樹脂シートを得た。第1樹脂シートと第3樹脂シートを重ね合わせて、第1積層シートを得た。
第1積層シートを目視で観察したところ、第1積層シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第1積層シートの一部に融着部を形成して、第1複合樹脂成形体を得た。
第1複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、青色であった。
【0109】
(実施例2)
比較例1と同様にして、青色ロイコ色素を含む第1樹脂シートを得た。比較例4と同様にして、第2呈色剤を含む第4樹脂シートを得た。第1樹脂シートと第4樹脂シートを重ね合わせて、第2積層シートを得た。
第2積層シートを目視で観察したところ、第2積層シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第2積層シートの一部に融着部を形成して、第2複合樹脂成形体を得た。
第2複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、濃青色であった。
第2複合樹脂成形体の融着部の色調は、第1複合樹脂成形体の融着部の色調よりも濃かった。
【0110】
(実施例3)
比較例1と同様にして、青色ロイコ色素を含む第1樹脂シートを得た。比較例5と同様にして、第3呈色剤を含む第5樹脂シートを得た。第1樹脂シートと第5樹脂シートを重ね合わせて、第3積層シートを得た。
第3積層シートを目視で観察したところ、第3積層シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第3積層シートの一部に融着部を形成して、第3複合樹脂成形体を得た。
第3複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、薄青色であった。
第3複合樹脂成形体の融着部の色調は、第1複合樹脂成形体の融着部の色調よりも薄かった。
【0111】
(実施例4)
比較例2と同様にして、赤色ロイコ色素を含む第2樹脂シートを得た。比較例3と同様にして、第1呈色剤を含む第3樹脂シートを得た。第2樹脂シートと第3樹脂シートを重ね合わせて、第4積層シートを得た。
第4積層シートを目視で観察したところ、第4積層シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第4積層シートの一部に融着部を形成して、第4複合樹脂成形体を得た。
第4複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、赤色であった。
【0112】
(実施例5)
比較例2と同様にして、赤色ロイコ色素を含む第2樹脂シートを得た。比較例4と同様にして、第2呈色剤を含む第4樹脂シートを得た。第2樹脂シートと第4樹脂シートを重ね合わせて、第5積層シートを得た。
第5積層シートを目視で観察したところ、第5積層シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第5積層シートの一部に融着部を形成して、第5複合樹脂成形体を得た。
第5複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、濃赤色であった。
第5複合樹脂成形体の融着部の色調は、第4複合樹脂成形体の融着部の色調よりも濃かった。
【0113】
(実施例6)
比較例2と同様にして、赤色ロイコ色素を含む第2樹脂シートを得た。比較例5と同様にして、第3呈色剤を含む第5樹脂シートを得た。第2樹脂シートと第5樹脂シートを重ね合わせて、第6積層シートを得た。
第6積層シートを目視で観察したところ、第6積層シートの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる透明樹脂シートの色調と同様に、無色透明であった。
比較例1と同様にして、第6積層シートの一部に融着部を形成して、第6複合樹脂成形体を得た。
第6複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、薄赤色であった。
第6複合樹脂成形体の融着部の色調は、第4複合樹脂成形体の融着部の色調よりも薄かった。
【0114】
(実施例7)
実施例1と同様にして、第1積層シートを得た。
第1積層シートの一部をロール型プレス機に挟み込んで、融着部を形成して、第7複合樹脂成形体を得た。ロール型プレス機は、彫刻ロールと、平滑ロールとを備える。彫刻ロールは、ロール表面に彫刻が施された金属製ロールである。平滑ロールは、ロール表面が平滑な金属製ロールである。彫刻ロール及び平滑ロールの各々の表面温度は、190℃であった。第1積層シートに掛かる圧力は、700MPaであった。
第7複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、青色であった。換言すると、第7複合樹脂成形体の彫刻ロールの彫刻が転写された部位(融着部)のみが青色であった。
【0115】
(実施例8)
実施例2と同様にして、第2積層シートを得た。
実施例7と同様にして、第2積層シートの一部に融着部を形成して、第8複合樹脂成形体を得た。
第8複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、濃青色であった。換言すると、第8複合樹脂成形体の彫刻ロールの彫刻が転写された部位(融着部)のみが濃青色であった。
第8複合樹脂成形体の融着部の色調は、第7複合樹脂成形体の融着部の色調よりも濃かった。
【0116】
(実施例9)
実施例3と同様にして、第3積層シートを得た。
実施例7と同様にして、第3積層シートの一部に融着部を形成して、第9複合樹脂成形体を得た。
第9複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、薄青色であった。換言すると、第9複合樹脂成形体の彫刻ロールの彫刻が転写された部位(融着部)のみが薄青色であった。
第9複合樹脂成形体の融着部の色調は、第7複合樹脂成形体の融着部の色調よりも薄かった。
【0117】
(実施例10)
実施例4と同様にして、第4積層シートを得た。
実施例7と同様にして、第4積層シートの一部に融着部を形成して、第10複合樹脂成形体を得た。
第10複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、赤色であった。換言すると、第10複合樹脂成形体の彫刻ロールの彫刻が転写された部位(融着部)のみが赤色であった。
【0118】
(実施例11)
実施例5と同様にして、第5積層シートを得た。
実施例7と同様にして、第5積層シートの一部に融着部を形成して、第11複合樹脂成形体を得た。
第11複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、濃赤色であった。換言すると、第11複合樹脂成形体の彫刻ロールの彫刻が転写された部位(融着部)のみが濃赤色であった。
第11複合樹脂成形体の融着部の色調は、第10複合樹脂成形体の融着部の色調よりも濃かった。
【0119】
(実施例12)
実施例6と同様にして、第6積層シートを得た。
実施例7と同様にして、第6積層シートの一部に融着部を形成して、第12複合樹脂成形体を得た。
第12複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、薄赤色であった。換言すると、第12複合樹脂成形体の彫刻ロールの彫刻が転写された部位(融着部)のみが薄赤色であった。
第12複合樹脂成形体の融着部の色調は、第10複合樹脂成形体の融着部の色調よりも薄かった。
【0120】
(比較例7)
比較例1と同様にして、第1原料を得た。
第1原料を200℃にて溶融混練し、スパンボンド法にて紡糸を行った。得られた繊維を補集面上に堆積させて、第1ウェブを得た。第1ウェブの目付は、10g/mとなるように調整されていた。第1ウェブを構成する繊維の平均繊維径は、19μmであった。
第1ウェブを目視で観察したところ、第1ウェブの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる不織布の色調と同様に、無色透明であった。
第1ウェブの一部をエンボスロール装置に挟み込んで、融着部を形成した。エンボスロール装置は、エンボスロール51と、平滑ロール52とを備える。エンボスロール51及び平滑ロール52の各々の表面温度は、130℃であった。第1ウェブに掛かる圧力は、700MPaであった。エンボスロール51の彫刻面積率は、10%であった。エンボスロール51の彫刻面積率は、エンボスロール51のロール表面の全面積に対する、彫刻部(凸部)の面積の割合を示す。
第1ウェブの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0121】
(比較例8)
比較例4と同様にして、第4原料を得た。
第1原料の代わりに、第4原料を用いた他は、比較例7と同様にして、第2ウェブを得た。
第2ウェブを目視で観察したところ、第2ウェブの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる不織布の色調と同様に、無色透明であった。
比較例7と同様にして、第2ウェブに融着部を形成した。
第2ウェブの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と同様に、無色透明であった。
【0122】
(比較例9)
プロピレン単独重合体(100部)、青色ロイコ色素(1部)、及び第2呈色剤(1部)を混ぜ合わせて第7原料を得た。
第1原料の代わりに、第7原料を用いた他は、比較例7と同様にして、第3ウェブを得た。
第3ウェブを目視で観察したところ、第3ウェブの色調は、プロピレン単独重合体のみからなる不織布の色調と異なり、第3ウェブの全体が青色であった。
比較例7と同様にして、第3ウェブに融着部を形成した。
第3ウェブの融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(青色)と同様に、青色であった。
【0123】
<実施例13>
比較例7と同様にして、第1ウェブを得た。比較例8と同様にして、第2ウェブを得た。第1ウェブと第2ウェブを重ね合わせて、ウェブ積層体を得た。ウェブ積層体の総目付20g/mであった。
比較例7と同様にして、ウェブ積層体の一部に融着部を形成して、第13複合樹脂成形体を得た。
第13複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、青色であった。換言すると、第13複合樹脂成形体のエンボスロール51の彫刻が転写された部位(融着部)のみが青色であった。
【0124】
<実施例14>
比較例1と同様にして、第1原料を得た。プロピレン単独重合体(100部)、及び第2呈色剤(1部)を混ぜ合わせて第8原料を得た。
図8に示すように、第1押出機11に第1原料を投入し、第3押出機15に第8原料を投入して、別々に200℃にて溶融混練した。
第3紡糸口金16を有するスパンボンド不織布成形機を用いて、第3紡糸口金16の樹脂温度とダイ温度がともに200℃、冷却風14の温度25℃、延伸エア風速3500m/分の条件でスパンボンド法により溶融紡糸し、混合長繊維からなる第3連続繊維群6を移動捕集部材21の捕集面上に堆積させ、混繊スパンボンドウェブ7を得た。混繊スパンボンドウェブ7は発色繊維:呈色繊維が40:60(質量%)の混合繊維からなる。混繊スパンボンドウェブ7の目付は、20g/mであった。
第3紡糸口金16は、第1原料用の吐出孔と第8原料用の吐出孔とが交互に配列されたノズルパターンを有する。ノズル径は0.60mmφであり、ノズル数の比は、第1原料からなる繊維用ノズル:第6原料からなる繊維用ノズル=40:60であった。
混繊スパンボンドウェブ7を目視で観察したところ、混繊スパンボンドウェブ7の色調は、プロピレン単独重合体のみからなる繊維の色調と同様に、無色であった。
次いで、比較例7と同様にして、混繊スパンボンドウェブ7の一部に融着部を形成して、第14複合樹脂成形体を得た。
第14複合樹脂成形体の融着部と非融着部とを目視で観察したところ、融着部の色調は、非融着部の色調(無色透明)と異なり、青色であった。換言すると、第14複合樹脂成形体のエンボスロール51の彫刻が転写された部位(融着部)のみが青色であった。
【0125】
実施例1~実施例14、及び比較例1~比較例9における、目視による融着部の色調と非融着部の色調を表1及び表2に示す。
【0126】
<実施例15>
実施例2と同様にして、青色ロイコ色素を含むシートと呈色剤を含むシートが重なった、積層シートを得た。比較例1と同様にして、第3積層シートの一部に融着部を形成して、幅10mmの帯状の融着部を形成した。
【0127】
<実施例16>
実施例13と同様にして、青色ロイコ色素を含むウェブと呈色剤を含むウェブが重なった、総目付20g/mのウェブ積層体を得た。比較例7と同様にして、ウェブ積層体の一部に融着部を形成して、幅10mmの帯状の融着部を形成した。
【0128】
実施例15及び実施例16における、融着部の色調と非融着部の色差を表3に示す。
【0129】
<実施例17>
実施例16と同様にして、融着部が形成されたウェブ積層体を得た。
【0130】
<比較例10>
第1原料の代わりに、プロピレン単独重合体のみを原料として用いた他は、比較例7と同様にして、プロピレン単独重合体からなる目付10g/mの第4ウェブを得た。第4ウェブを2枚重ねて総目付20g/mのウェブ積層体を得た。
このウェブ積層体の一部をバッチ式シーラーに挟み込み、積層された第4ウェブ同士を熱圧着して幅10mmの帯状の融着部を形成した。バッチ式シーラーの一対の金属板の各々の表面温度は、190℃であった。積層ウェブに掛かる圧力は、3MPaであった。
融着部が形成されたウェブ積層体の融着部に対して、実施例17の融着部と同様の色調となるよう、青色油性塗料を塗布・乾燥した。これにより、融着部に青色塗膜を形成した。
【0131】
実施例17及び比較例10について、摩耗性試験を行った。摩耗性試験の評価結果を表4に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
実施例1~実施例14の複合樹脂成形体は、第1樹脂成形体と、第2樹脂成形体と、融着部と、を備える。第1樹脂成形体は、主成分であるプロピレン単独重合体、及びロイコ色素を含有し、呈色剤を含有しない。第2樹脂成形体は、主成分であるプロピレン単独重合体、及び呈色剤を含有し、ロイコ色素を含有しない。融着部は、第1樹脂成形体の一部と第2樹脂成形体の一部とが融着している。そのため、融着部の色調と、非融着部の色調とは、異なっていた。その結果、実施例1~実施例14の複合樹脂成形体では、融着部は外部から着色されていなくても色調によって視認されやすいことがわかった。
【0137】
第1呈色剤の融点は、融着温度よりも高かった。第2呈色剤の融点は、融着温度よりも低かった。第2呈色剤を含む実施例2、実施例5、実施例8、及び実施例11の複合樹脂成形体の融着部は、第1呈色剤を含む実施例1、実施例4、実施例7、及び実施例10の複合樹脂成形体の融着部よりも強く発色していた。これにより、融点が融着温度よりも低い呈色剤を用いることで、複合樹脂成形体において、融着部はより強く発色し得ることがわかった。
【0138】
第1呈色剤の酸性度は、第3呈色剤の酸性度よりも高かった。第1呈色剤の融点は、融着温度よりも高かった。第3呈色剤の融点は、融着温度よりも低かった。第1呈色剤を含む実施例1、実施例4、実施例7、及び実施例10の複合樹脂成形体の融着部は、第3呈色剤を含む実施例3、実施例6、実施例9、及び実施例12の複合樹脂成形体の融着部よりも強く発色していた。これにより、融点が熱融着温度よりも低い呈色剤であっても、呈色剤の酸性度が高いと、融着部は、酸性度が低い呈色剤を用いた場合より強く発色し得ることがわかった。
【0139】
一方、比較例1~比較例6の樹脂シート、及び比較例7~比較例9のウェブは、第1樹脂成形体及び第2樹脂成形体の一方を備えていなかった。そのため、融着部の色調と、非融着部の色調とは、同一であった。比較例1~比較例6の樹脂シート、及び比較例7~比較例9のウェブでは、融着部は、外部から着色されていなくても色調によって視認されやすいものではないことがわかった。
【0140】
実施例15の複合樹脂成形体の形態は、積層シートである。実施例16の複合成形体は、その形態が多層スパンボンド不織布であることの他は、実施例15と同様である。
実施例15と実施例16とを対比すると、実施例16の多層スパンボンド不織布の色差(ΔE)は23.37であったのに対し、実施例15の積層シートの色差(ΔE)は5.85であった。この結果から、実施例16の多層スパンボンド不織布は、実施例15の積層シートよりも非融着部と融着部の視覚的なコントラストは向上したことがわかった。
実施例16の多層スパンボンド不織布の融着前後のL値の変化量は、実施例15の積層シートの融着前後のL値の変化量よりも大きかった。これは、スパンボンド不織布の非融着部は繊維で構成されていることが主要因であると推測される。詳しくは、繊維は可視光を散乱しやすいため、繊維で構成された非融着部のL値は、比較的大きい。その結果、繊維で構成された非融着部のL値と、樹脂が融解しフィルム化された融着部とのLとの差が大きくなると推測される。
実施例16の多層スパンボンド不織布の融着前後のb値の変化量は、実施例15の積層シートの融着前後のb値の変化量よりも大きかった。これは、実施例16では、発色剤を含む第1樹脂成形体の形態及び呈色剤を含む第2樹脂成形体の形態が共に繊維であるため、融着の際に、溶融・混合が起こりやすいことが主要因であると推測される。
【0141】
2021年3月25日に出願された日本国特許出願2021-051587の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2