(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】IL-2変異体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/55 20060101AFI20241106BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241106BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241106BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241106BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241106BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241106BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241106BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20241106BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241106BHJP
C12N 15/26 20060101ALN20241106BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
A61P37/06
A61P17/06
A61P11/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/14
A61P3/10
A61P21/00
A61P13/12
A61P1/04
A61P1/16
A61P37/02
A61P25/00
A61K38/20
A61K47/68
C12N15/26
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2023515158
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 CN2021116463
(87)【国際公開番号】W WO2022048640
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】202010918842.0
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110932286.7
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523079059
【氏名又は名称】山▲東▼先声生物制▲薬▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Simcere Biopharmaceutical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.1,Heilongjiang Road,Yantai Economic and Technological Development Zone,Yantai,Shandong 264006,China
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲穎▼▲瑩▼
(72)【発明者】
【氏名】曹 卓▲曉▼
(72)【発明者】
【氏名】唐 任宏
(72)【発明者】
【氏名】葛 ▲虎▼
(72)【発明者】
【氏名】付 ▲雅▼媛
(72)【発明者】
【氏名】任 晋生
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110642934(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0142106(US,A1)
【文献】A.Ghelani, et al.,frontiers in Immunology,2020年,Vol.11, Article 1106,p.1-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型IL-2と比較して、
Y31V、A73L、H79Q、及びV91Rを含み、
前記野生型IL-2は、配列番号60又は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する、
IL-2変異体。
【請求項2】
前記IL-2変異体は
、配列番号3
2に示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のIL-2変異体。
【請求項3】
前記IL-2変異体のTm値は、前記野生型IL-2のTm値よりも高い、請求項1
に記載のIL-2変異体。
【請求項4】
前記IL-2変異体は、前記野生型IL-2と比較して、IL-2Rβγサブユニット複合体に対する結合能が低下して
いる、請求項1から3のいずれか一項に記載のIL-2変異体。
【請求項5】
前記IL-2変異体は、野生型IL-2と比較して、非制御性T細胞又はNK(ナチュラルキラー)細胞に対する刺激能が低下しており;前記刺激としては、細胞内STAT5リン酸化又は細胞増殖から選択することができ;
あるいは、前記変異体は、非制御性T細胞又はNK(ナチュラルキラー)細胞よりも末梢血内の制御性T細胞(Treg)又はT細胞集団を優先的に刺激し;前記優先的刺激としては、制御性T細胞においてSTAT5リン酸化を優先的に刺激すること、制御性T細胞の増殖を優先的に刺激すること、非制御性T細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させること、又はNK細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させることから選択することができる、請求項1から
3のいずれか一項に記載のIL-2変異体。
【請求項6】
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む融合タンパク質であって、前記第1のポリペプチドは、請求項
1に
記載のIL-2変異体であり、前記第2のポリペプチドは、
Fcである、融合タンパク質。
【請求項7】
前記Fcは
、ヒトIgGのFc
である、請求項
6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記ヒトIgGのFcは、ヒトIgG1のFcであり、
前記ヒトIgG1のFcは、C220S及びN297Gの変異を含む、
請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記第1のポリペプチドのC末端は、リンカーを介して
、前記第2のポリペプチドのN末端に連結さ
れ;
前記リンカーは、(G
4S)
n、(GGNGT)
n、又は(YGNGT)
nから選択され、前記nは、1、2、3、4、又は5から選択され
る、請求項
6から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記融合タンパク質は
、配列番号5
0に示すアミノ酸配列を含む、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1から
5のいずれか一項に記載のIL-2変異体又は請求項
6から
10のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又はアジュバントと、を含む、医薬組成物であって;
前記医薬組成物は
、静脈注射
用又は皮下注
射用の医薬組成
物である、医薬組成物。
【請求項12】
疾患治療用の薬剤の製造における請求項1から
5のいずれか一項に記載のIL-2変異体又は請求項
6から
10のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用であって;
前記薬剤は
、注射用の薬
剤であり;
前記薬剤は、自己免疫疾
患を治療するために用いられ;
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、ループス腎炎、IgA腎症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、乾癬、尋常性乾癬、円形脱毛症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、自己免疫性肝炎、I型糖尿病、自己免疫性血管炎、湿疹、又は喘息を含
む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物医学の分野に関し、特にIL-2変異体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン2(IL-2)は、当初、T細胞増殖因子(TCGF)として同定されたが、その後の研究において、受容体に結合し、T細胞やNK細胞などの免疫細胞の増殖および活性化を促進することが見出されている。
【0003】
IL-2受容体としては、IL-2Rαサブユニット(CD25)、IL-2Rβサブユニット(CD122)、およびIL-2Rγサブユニット(CD132)が挙げられる。異なるサブユニットによって、高親和性受容体IL-2Rαβγ、中親和性受容体IL-2Rβγ、および低親和性受容体IL-2Rα又はIL-2Rαβなどの親和性の異なる受容体複合体を形成することができる。異なる細胞は、異なる種類のIL-2Rサブユニットを発現する。例えば、休止状態にある従来型のT細胞(CD4+TおよびCD8+T)は、通常、細胞表面にIL-2受容体β(IL-2Rβ、CD122)およびIL-2受容体γ(IL-2Rγ、CD132)を発現するが、IL-2α受容体(IL-2Rα、CD25)はほとんど発現しない。しかしながら、制御性T細胞(Treg)においては、IL-2RβおよびIL-2Rγに加えて、IL-2Rαが構造的に高度に発現される。
【0004】
現在、研究者は、IL-2又はその変異体を用いて免疫細胞又は免疫細胞のサブセットを活性化して、腫瘍又は自己免疫疾患を治療することを試みている。例えば、悪性黒色腫又は転移腎細胞癌の治療用に、高用量のIL-2が承認されており、また、自己免疫疾患の臨床試験に、PEG-IL-2抱合体であるNKTR-358が承認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、IL-2の安定性および収量を向上させ、かつ/又は特定の受容体複合体への結合能を変化させることは、IL-2薬の開発にとって非常に重要である。この点を鑑みて、本開示を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、IL-2変異体、融合タンパク質、抱合体、核酸断片、ベクター、宿主細胞、変異体又は融合タンパク質を調製する方法、当該方法によって調製されたIL-2変異体又は融合タンパク質、医薬組成物、製薬学的使用、治療方法、および制御性T細胞を優先的に刺激する方法を提供する。
【0007】
第1の態様において、本開示は、野生型IL-2と比較して、Q13、L18、G27、Y31、A73、H79、P82、I89、N90、V91、V93、F117、又はR120において1つ以上の変異を含むIL-2変異体を提供する。
【0008】
いくつかの特定の実施形態において、変異は、欠失、挿入、又は置換であり、好ましくは置換である。
【0009】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、Q13L、L18I、G27W、Y31V、A73L、H79Q、P82L、I89L、N90Y、V91A、V93I、F117W、又はR120Fのうちの1つ以上の変異を含む。
【0010】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、(a)群から(h)群のうちの少なくとも1つの群の変異を含む:
(a).Y31/A73/H79における変異;好ましくはY31V/A73L/H79Qにおける変異;
(b).Q13における変異;好ましくはQ13Lにおける変異;
(c).R120における変異;好ましくはR120Fにおける変異;
(d).L18/V91/F117における変異;好ましくはL18I/V91A/F117Wにおける変異;
(e).L18/I89/V93における変異;好ましくはL18I/I89L/V93Iにおける変異;
(f).G27/R120における変異;好ましくはG27W/R120Fにおける変異;
(g).P82/R120における変異;好ましくはP82L/R120Fにおける変異;
(h).N90/R120における変異;好ましくはN90Y/R120Fにおける変異。
【0011】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、配列番号2から配列番号9のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する。
【0012】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体のTm値は、野生型IL-2のTm値よりも高い。
【0013】
いくつかの特定の実施形態において、野生型IL-2は、配列番号60又は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。
【0014】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、H16、D20、N88、V91、又はQ126における変異、例えば、H16E、D20A、D20H、D20Y、N88A、N88I、N88G、N88R、N88D、V91R、V91K、Q126L、又はQ126Fからなる群から選択される1つ以上の変異をさらに含む。
【0015】
好ましくは、IL-2変異体は、(i)群から(iv)群のうちから選択される少なくとも1つの群の変異をさらに含む:
(i).H16における変異;好ましくはH16Eにおける変異;
(ii).D20における変異;好ましくはD20Aにおける変異;
(iii).V91における変異;好ましくはV91Rにおける変異;
(iv).H16/V91における変異;好ましくはH16E/V91Rにおける変異。
【0016】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、(a)群から(n)群のうちの少なくとも1つの群の変異を含む:
(a).H16/Y31/A73/H79における変異;好ましくはH16E/Y31V/A73L/H79Qにおける変異;
(b).H16/R120における変異;好ましくはH16E/R120Fにおける変異;
(c).H16/L18/V91/F117における変異;好ましくはH16E/L18I/V91A/F117Wにおける変異;
(d).H16/L18/I89/V93における変異;好ましくはH16E/L18I/I89L/V93Iにおける変異;
(e).H16/G27/R120における変異;好ましくはH16E/G27W/R120Fにおける変異;
(f).H16/P82/R120における変異;好ましくはH16E/P82L/R120Fにおける変異;
(g).D20/Y31/A73/H79における変異;好ましくはD20A/Y31V/A73L/H79Qにおける変異;
(h).D20/R120における変異;好ましくはD20A/R120Fにおける変異;
(i).V91/Y31/A73/H79における変異;好ましくはV91R/Y31V/A73L/H79Qにおける変異;
(j).V91/Q13における変異;好ましくはV91R/Q13Lにおける変異;
(k).V91/R120における変異;好ましくはV91R/R120Fにおける変異;
(l).V91/L18/I89/V93における変異;好ましくはV91R/L18I/I89L/V93Iにおける変異;
(m).H16/V91/Y31/A73/H79における変異;好ましくはH16E/V91R/Y31V/A73L/H79Qにおける変異;
(n).H16/V91/L18/I89/V93における変異;好ましくはH16E/V91R/L18I/I89L/V93Iにおける変異。
【0017】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、配列番号22から配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号32から配列番号35、配列番号37又は配列番号38のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する。
【0018】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体はN26、N29、N30、N71、Q11、L132、L70、P82、G27、又はF28における変異からなる群から選択される1つ以上の変異をさらに含む。
【0019】
好ましくは、IL-2変異体はN26Q、N29S、N30S、N71Q、Q11C、L132C、L70C、P82C、G27C、又はF78Cからなる群から選択される1つ以上の変異をさらに含む。
【0020】
より好ましくは、IL-2変異体は、(a)群から(g)群における少なくとも1つの群の変異をさらに含む:
(a).N26Q;
(b).N29S;
(c).N30S;
(d).N71Q;
(e).Q11C/L132C;
(f).L70C/P82C;
(g).G27C/F78C。
【0021】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、F42、Y45、又はL72における変異、好ましくはF42A、Y45A、又はL72Gからなる群から選択される1つ以上の変異をさらに含む。
【0022】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rβγサブユニット複合体に対する結合能が低下しており;好ましくは、結合能IL-2Rβγサブユニット複合体/結合能IL-2αβγサブユニット複合体が低下している。
【0023】
いくつかの特定の実施形態において、変異体は、野生型IL-2と比較して、非制御性T細胞又はNK(ナチュラルキラー)細胞に対する刺激能が低下しており;当該刺激としては、細胞内STAT5リン酸化又は細胞増殖から選択することができる。
【0024】
いくつかの特定の実施形態において、変異体は、非制御性T細胞又はNK(ナチュラルキラー)細胞よりも末梢血内の制御性T細胞(Treg)又はT細胞集団を優先的に刺激し;当該優先的刺激としては、制御性T細胞においてSTAT5リン酸化を優先的に刺激すること、制御性T細胞の増殖を優先的に刺激すること、非制御性T細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させること、又はNK細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させることから選択することができる。
【0025】
第2の態様において、本開示は、野生型IL-2と比較して、H16、D20、又はV91において1つ以上の変異を含むIL-2変異体を提供し;好ましくは、IL-2変異体は、(i)群から(iv)群のうちから選択される少なくとも1つの群の変異を含む:
(i).H16における変異;好ましくはH16Eにおける変異;
(ii).D20における変異;好ましくはD20Aにおける変異;
(iii)V91における変異;好ましくはV91Rにおける変異;
(iv).H16/V91における変異;好ましくはH16E/V91Rにおける変異。
【0026】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、配列番号21、配列番号28、配列番号31、又は配列番号36に示すアミノ酸配列を有する。
【0027】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、N26、N29、N30、N71、Q11、L132、L70、P82、G27、又はF28における変異からなる群から選択される1つ以上の変異をさらに含む。
【0028】
好ましくは、IL-2変異体は、N26Q、N29S、N30S、N71Q、Q11C、L132C、L70C、P82C、G27C、又はF78Cからなる群から選択される1つ以上の変異をさらに含む。
【0029】
より好ましくは、IL-2変異体は、(a)群から(g)群における少なくとも1つの群の変異をさらに含む:
(a).N26Q;
(b).N29S;
(c).N30S;
(d).N71Q;
(e).Q11C/L132C;
(f).L70C/P82C;
(g).G27C/F78C。
【0030】
いくつかの特定の実施形態において、IL-2変異体は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rβγサブユニット複合体に対する結合能が低下しており;好ましくは、結合能IL-2Rβγサブユニット複合体/結合能IL-2αβγサブユニット複合体が低下している。
【0031】
いくつかの特定の実施形態において、変異体は、野生型IL-2と比較して、非制御性T細胞又はNK(ナチュラルキラー)細胞に対する刺激能が低下しており、当該刺激としては、細胞内STAT5リン酸化又は細胞増殖から選択することができる。
【0032】
いくつかの特定の実施形態において、変異体は、非制御性T細胞又はNK細胞よりも末梢血内の制御性T細胞(Treg)又はT細胞集団を優先的に刺激し;当該優先的刺激としては、制御性T細胞においてSTAT5リン酸化を優先的に刺激すること、制御性T細胞の増殖を優先的に刺激すること、非制御性T細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させること、又はNK細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させることから選択することができる。
【0033】
いくつかの特定の実施形態において、変異は、欠失、挿入、又は置換を含み、好ましくは置換を含む。
【0034】
いくつかの特定の実施形態において、野生型IL-2は、配列番号60又は配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。
【0035】
第3の態様において、本開示は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む融合タンパク質であって、第1のポリペプチドは、上述したIL-2変異体であり、第2のポリペプチドは、非IL-2ポリペプチドである、融合タンパク質を提供する。
【0036】
いくつかの特定の実施形態において、第2のポリペプチドは、Fc、腫瘍抗原結合分子、又はIL-2受容体サブユニットであり;
Fcは、任意に、ヒトIgGのFc、例えばヒトIgG1のFcであり;
好ましくは、ヒトIgG1のFcは、(a)群から(i)群のうちから選択される少なくとも1つの群の変異を含み:
(a).C220S;
(b).N297G;
(c).C220SおよびN297G;
(d).A327Q;
(e).L234AおよびL235A;
(f).A287CおよびL306C;
(g).A259CおよびL306C;
(h).R292CおよびV302C;
(i).V323CおよびI332C;
より好ましくは、ヒトIgG1のFcは、配列番号11に示すアミノ酸配列を有し;
腫瘍抗原は、EDB-FN(フィブロネクチンのエクストラドメイン)、Muc1、p53、FAP、GD2、EpCAM、テネイシン-C、CD20、CEA、MAdCAM-1、又はWT1(ウィルムス腫瘍タンパク質1)を任意に含み;腫瘍抗原結合分子は、任意に、scFv、sdFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFvなどの抗体であり;
IL-2受容体サブユニットは、任意に、IL-2受容体αサブユニットである。
【0037】
いくつかの特定の実施形態において、第1のポリペプチドのC末端は、リンカーを介して、又はリンカーを介さずに、第2のポリペプチドのN末端に連結され;あるいは、第1のポリペプチドのN末端は、リンカーを介して、又はリンカーを介さずに、第2のポリペプチドのC末端に連結され;
好ましくは、リンカーは、(G4S)n、(GGNGT)n、又は(YGNGT)nから選択され、nは、1、2、3、4、又は5から選択され;
より好ましくは、第1のポリペプチドのC末端は、リンカー(G4S)3によって第2のポリペプチドのN末端に連結されている。
【0038】
いくつかの特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号13から配列番号20又は配列番号39から配列番号56のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含む。
【0039】
第4の態様において、本開示は、上述した変異体又は融合タンパク質を含み、変異体又は融合タンパク質に結合した安定剤、薬物、又はトレーサー分子をさらに含む、抱合体を提供し;安定剤としては、モノメトキシポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール類から選択することができる。
【0040】
第5の態様において、本開示は、上述した変異体又は融合タンパク質をコードする単離核酸断片を提供する。
【0041】
第6の態様において、本開示は、上述した核酸断片を含むベクターを提供する。
【0042】
第7の態様において、本開示は、上述したベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0043】
いくつかの特定の実施形態において、宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり;原核細胞又は真核細胞としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、又は哺乳類細胞から選択することができ、哺乳類細胞としては、CHO細胞系又はHEK293細胞系から選択することができる。
【0044】
第8の態様において、本開示は、上述した変異体又は融合タンパク質を調製する方法を提供し、当該方法は、上記宿主細胞を培養することと、宿主細胞によって発現されたIL-2変異体又は融合タンパク質を単離することと、を含む。
【0045】
第9の態様において、本開示は、上記方法によって調製されたIL-2変異体又は融合タンパク質を提供する。
【0046】
第10の態様において、本開示は、上記変異体、融合タンパク質、抱合体、核酸断片、ベクター、又は宿主細胞と;薬学的に許容される担体、希釈剤、又はアジュバントと、を含む医薬組成物を提供し;
好ましくは、医薬組成物は、例えば静脈注射又は皮下注射などの注射用の医薬組成物であり;より好ましくは、投与1回あたりの医薬組成物は、対象に投与される融合タンパク質を有効量含み;最も好ましくは、有効量は、0.001mpkから10mpk、例えば、0.001mpk、0.002mpk、0.003mpk、0.004mpk、0.005mpk、0.006mpk、0.007mpk、0.008mpk、0.009mpk、0.01mpk、0.02mpk、0.03mpk、0.04mpk、0.05mpk、0.06mpk、0.07mpk、0.08mpk、0.09mpk、0.1mpk、0.2mpk、0.3mpk、0.4mpk、0.5mpk、0.6mpk、0.7mpk、0.8mpk、0.9mpk、1mpk、2mpk、3mpk、4mpk、5mpk、6mpk、7mpk、8mpk、9mpk、又は10mpkである。
【0047】
第11の態様において、本開示は、疾患治療用の薬剤の製造における上記変異体、融合タンパク質、抱合体、核酸断片、ベクター、又は宿主細胞の使用を提供し;
好ましくは、薬剤は、例えば静脈注射又は皮下注射などの注射用の薬剤であり;
好ましくは、投与1回あたりの薬剤は、対象に投与される融合タンパク質を有効量含み;最も好ましくは、有効量は、0.001mpkから10mpk、例えば、0.001mpk、0.002mpk、0.003mpk、0.004mpk、0.005mpk、0.006mpk、0.007mpk、0.008mpk、0.009mpk、0.01mpk、0.02mpk、0.03mpk、0.04mpk、0.05mpk、0.06mpk、0.07mpk、0.08mpk、0.09mpk、0.1mpk、0.2mpk、0.3mpk、0.4mpk、0.5mpk、0.6mpk、0.7mpk、0.8mpk、0.9mpk、1mpk、2mpk、3mpk、4mpk、5mpk、6mpk、7mpk、8mpk、9mpk、又は10mpkであり;
好ましくは、薬剤は、自己免疫疾患、増殖性疾患、又はウイルス感染を治療するために用いられ;
より好ましくは、自己免疫疾患は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、ループス腎炎、IgA腎症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、乾癬、尋常性乾癬、円形脱毛症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、自己免疫性肝炎、I型糖尿病、自己免疫性血管炎、湿疹、又は喘息を含み;
より好ましくは、増殖性疾患は、新生物、固形腫瘍、血液系腫瘍、悪性腹水、又は悪性胸水を含み;固形腫瘍は、良性であっても悪性であっても、原発性であっても転移性であってもよく、悪性固形腫瘍は、がん又は肉腫、例えば、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮細胞癌、奇形腫、肺腫瘍、パピローマウイルス誘発性がん、腺癌、癌腫、黒色腫、血管肉腫、神経芽細胞腫、転移性肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、メルケル細胞がん、卵巣がん、腎細胞がん、転移性腎がん、頭頸部がん、膀胱がん、筋層非浸潤性膀胱がんなどであってもよく;血液系腫瘍は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞大顆粒リンパ球白血病などの白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫であってもよく;
より好ましくは、ウイルス感染は、HIV感染、新型コロナウイルス感染、又はHPVウイルス感染から選択される。
【0048】
第12の態様において、本開示は、自己免疫疾患、増殖性疾患、又はウイルス感染を治療する方法を提供し、当該方法は、上記IL-2変異体、融合タンパク質、抱合体、核酸断片、ベクター、宿主細胞、又は医薬組成物を、対象に有効量投与するステップを含み;
好ましくは、投与するステップは、例えば静脈注射又は皮下注射などの注射を介して行われ;
好ましくは、有効量は、0.001mpkから10mpk、例えば、0.001mpk、0.002mpk、0.003mpk、0.004mpk、0.005mpk、0.006mpk、0.007mpk、0.008mpk、0.009mpk、0.01mpk、0.02mpk、0.03mpk、0.04mpk、0.05mpk、0.06mpk、0.07mpk、0.08mpk、0.09mpk、0.1mpk、0.2mpk、0.3mpk、0.4mpk、0.5mpk、0.6mpk、0.7mpk、0.8mpk、0.9mpk、1mpk、2mpk、3mpk、4mpk、5mpk、6mpk、7mpk、8mpk、9mpk、又は10mpkであり;
好ましくは、自己免疫疾患は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、ループス腎炎、IgA腎症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、乾癬、尋常性乾癬、円形脱毛症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、自己免疫性肝炎、I型糖尿病、自己免疫性血管炎、湿疹、又は喘息を含み;
好ましくは、増殖性疾患は、新生物、固形腫瘍、血液系腫瘍、悪性腹水、又は悪性胸水を含み;固形腫瘍は、良性又は悪性のもの、原発性又は転移性のものから任意に選択され、悪性固形腫瘍は、がん又は肉腫、例えば、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮細胞癌、奇形腫、肺腫瘍、パピローマウイルス誘発性がん、腺癌、癌腫、黒色腫、血管肉腫、神経芽細胞腫、転移性肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、メルケル細胞がん、卵巣がん、腎細胞がん、転移性腎がん、頭頸部がん、膀胱がん、筋層非浸潤性膀胱がんから任意に選択され;血液系腫瘍は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞大顆粒リンパ球白血病などの白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫から任意に選択され;
より好ましくは、ウイルス感染は、HIV感染、新型コロナウイルス感染、又はHPVウイルス感染から選択される。
【0049】
第13の態様において、本開示は、T細胞集団又は末梢血内の制御性T細胞を優先的に刺激する方法を提供し、当該方法は、T細胞集団又は末梢血を、上記IL-2変異体、融合タンパク質、抱合体、核酸断片、ベクター、宿主細胞、又は医薬組成物に接触させるステップを含み;
好ましくは、当該優先的に刺激することは:
(a)非制御性T細胞又はNK細胞よりも制御性T細胞のSTAT5リン酸化を優先的に刺激すること;
(b)非制御性T細胞又はNK細胞よりも制御性T細胞の増殖を優先的に刺激すること;および/又は
(c)非制御性T細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させること、又はNK細胞に対する制御性T細胞の比率を上昇させること、を含む。
[用語および定義]
【0050】
本開示において別途定義されない限り、本開示に関する科学用語および専門用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。
【0051】
本明細書において、「IL2」又は「IL-2」なる語は、特に断りがない限り、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)ならびに飼い慣らされた哺乳類又は家畜化された哺乳類などの哺乳類を含むあらゆる脊椎動物に由来する、あらゆる天然IL-2又は組み換えIL-2のことをいう。本開示における「IL2」又は「IL-2」は、未処理のIL-2(例えば、N末端にシグナルペプチドを含むIL-2)から細胞内の成熟IL-2に及ぶあらゆる形態を含む。本開示における「IL2」又は「IL-2」は、スプライス変異体又は対立遺伝子変異体などの、IL-2の自然変異体および断片も含む。本明細書における「IL2」又は「IL-2」は、遺伝子工学によって人工的に改変されたIL-2変異体などの、非自然発生変異体も含む。
【0052】
「野生型IL-2」なる語は、IL-2変異体の変異位置における各アミノ酸が野生型アミノ酸のまま維持されていること以外は、IL-2変異体と同様である。例えば、IL-2変異体が未処理のIL-2である場合、変異体の野生型形態は、未処理のIL-2であり;IL-2変異体が成熟IL-2である場合、変異体の野生型形態は、成熟IL-2であり;IL-2変異体がIL-2の切断型である場合、変異体の野生型形態は、野生型配列を有するIL-2の対応する切断型である。一例として、本開示における「野生型IL-2」は、以下のようなアミノ酸配列を有していてもよい:
APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFXQSIISTLT(配列番号60);配列中、125番目のアミノ酸残基である「X」は、C、S、A、又はVを表す。
【0053】
本明細書において、「変異」なる語は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、又はこれらの任意の組み合わせを含む。本開示における「変異」は、当該技術分野において公知の遺伝学的方法又は化学的方法によって生成されてもよく、これらの方法としては、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
IL-2変異体の「変異部位」の付番は、配列番号60に示す「野生型IL-2」の1番目のアミノ酸残基(A)から開始される。一例として、「Q13変異」とは、配列番号60に示す野生型IL-2の13位におけるアミノ酸残基(Gln、Q)の変異のことをいう。例えば、「Q13L変異」とは、配列番号60に示す野生型IL-2の13位におけるアミノ酸Q(Gln)がL(Leu)に変異されたIL-2変異体のことをいう。
【0055】
本明細書において、変異部位間に用いられる句読点「/」は、「および」を意味し、これは、「/」の前後の変異が、同じIL-2変異体に同時に共存していることを示す。例えば、「Y31/A73/H79」は、同じIL-2変異体のY31、A73、およびH79において、変異が同時に生じていることを意味し、「Y31V/A73L/H79Q」は、Y31V、A73L、およびH79Qが、同じIL-2変異体において同時に共存していることを意味する。
【0056】
本明細書において、「Tm」(融解温度)なる語は、タンパク質の50%が変性する温度をいう。本開示における「Tm」は、当該技術分野においてよく知られている任意の方法によって決定されてもよい。例えば、タンパク質のTm値は、本開示の実施例3又は実施例6に示される方法によって決定することができる。
【0057】
本開示における「融合タンパク質」なる語は、遺伝的組み換え法、化学的方法、又はその他の適切な方法によって、2つ以上の遺伝子のコード領域を接続し、遺伝的組み換え法によって得たタンパク質産物を同じ制御配列の制御下において発現させることで得たタンパク質産物のことをいう。本開示の融合タンパク質において、2つ以上の遺伝子のコード領域は、(1つ又は複数の)リンカーをコードする配列によって、1箇所又は数箇所で融合させることができる。(1つ又は複数の)リンカーを用いて、本開示の融合タンパク質を構築することができる。
【0058】
本明細書において、「リンカー」なる語は、IL-2を別のタンパク質分子又はタンパク質断片に連結して、タンパク質の正しい折り畳みおよび安定性を確保するのに用いられるペプチドのことをいう。当該別の分子としてはFcが挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、本開示における「リンカー」は、(GGGGS)nであり、式中、nは、0でもよいし、1でもよいし、2でもよいし、3でもよいし、4でもよいし、5でもよい。リンカー配列が短すぎる場合、2つのタンパク質の高次構造の折り畳みに影響する場合があり、このため、2つのタンパク質が互いに干渉し合う。リンカー配列が長すぎる場合、免疫原性を伴うことがあるが、これは、リンカー配列自体が新規の抗原となるためである。
【0059】
本明細書において、「第2のポリペプチド」なる語は、scFv抗体などの単鎖ポリペプチドのことであってもよい。「第2のポリペプチド」は、多連鎖ポリペプチドも含み、この場合、少なくとも1つのポリペプチド鎖がIL-2又はその変異体に融合され、その他の(1つ又は複数の)ポリペプチド鎖は、共有結合又は非共有結合によって、融合された前記少なくとも1つのポリペプチド鎖に連結される。例えば、Fab抗体の場合、Fabの重鎖をIL-2又はその変異体に融合することができ、軽鎖は、ジスルフィド結合によって重鎖に連結される。
【0060】
本明細書において、「Fc」なる語は、イムノグロブリン鎖の定常領域のことをいい、特に、イムノグロブリン重鎖の定常領域のC末端又はその一部のC末端のことをいう。Fcは、抗原結合活性を持たず、抗体が、エフェクター分子又は細胞と相互作用する領域である。本明細書における「Fc」は、ヒト又は非ヒト哺乳類に由来する、あらゆるFc又はその変異体であってもよい。例えば、イムノグロブリンのFcは、2つ以上の重鎖ドメイン(CH1、CH2、CH3、又はCH4)とイムノグロブリンのヒンジ領域との組み合わせを含んでもよい。Fcは、異なる種に由来するものであってもよく、好ましくは、ヒトイムノグロブリンに由来してもよい。重鎖定常領域のアミノ酸配列にしたがって、イムノグロブリンを、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つのイムノグロブリンクラスを主に含む、異なるクラスに区分することができる。そのうちのいくつかは、さらに、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-4や、IgA-1、IgA-2などのサブクラス(アイソタイプ)に区分することができる。好ましくは、「Fc」は、IgGのCH2ドメインおよびCH3ドメインだけでなく、イムノグロブリンヒンジ領域を少なくとも1つ含む。より好ましくは、「Fc」は、IgG1のCH2ドメインと、CH3ドメインと、イムノグロブリンヒンジ領域とを含み、ヒンジ領域の開始アミノ酸位置は変化し得る。特に断りがない限り、本開示のFc、定常領域、又は抗体のアミノ酸残基は、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institutions of Health, Bethesda, Md., 1991に説明されているような、EUインデックスとしても知られているEU付番システムにしたがって付番される。
【0061】
本開示の「抗体」は、最も広い意味で用いられ、所望の抗原結合活性を発揮する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および抗原結合断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。抗体としては、ネズミ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびラクダ抗体が挙げられ得る。具体的には、抗体は、同一の重鎖2つと、鎖間ジスルフィド結合によって結合された同一の軽鎖2つとからなるテトラペプチド鎖構造である、イムノグロブリンであってもよい。イムノグロブリン重鎖の定常領域は、アミノ酸組成およびアミノ酸配列の点で異なっており、そのため、抗原性が異なる。したがって、イムノグロブリンは、5つのクラス、又はイムノグロブリンのアイソタイプ、すなわちIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEに区分することができ、その重鎖は、それぞれ、μ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖、およびε鎖に対応する。ヒンジ領域のアミノ酸組成の相違や重鎖のジスルフィド結合の数および位置の相違に応じて、同じクラスのIgを異なるサブクラスに区分することができ、例えば、IgGをIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に区分することができる。定常領域の相違に応じて、軽鎖をκ鎖又はλ鎖に区分してもよい。Igの5つのクラスは、それぞれ、κ鎖又はλ鎖を有することができる。本開示における「抗体」は、scFv、sdFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvも含む。
【0062】
本明細書において、「単離された」なる語は、ある物質を、その元の環境又は自然環境(例えば、その物質が天然に存在する環境)から取り出すことをいう。したがって、生きている動物に存在する天然ポリヌクレオチド又は天然ポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチド又はポリペプチドが、ヒトが介在することによって、天然系において共存している物質のいくつか又はすべてから単離された場合、これらは単離されている。
【0063】
「単離された核酸断片」とは、一重鎖又は二重鎖であるRNAポリマー又はDNAポリマーであり、合成ヌクレオチド塩基、非天然ヌクレオチド塩基、又は改変ヌクレオチド塩基を任意に含有する。DNAポリマー形態の単離された核酸断片は、1つ以上のcDNA、ゲノムDNA、又は合成DNA断片からなるものであってもよい。本開示の「核酸断片」は、ベクターの一部であってもよく、非相同部位において宿主細胞の染色体に組み込まれてもよい。本開示の「核酸断片」は、組成物の一部であってもよい。このようなベクター又は組成物は、その自然環境の一部ではないので、やはり単離されている。
【0064】
本明細書において、「ベクター」なる語は、DNAベクター(例えば、プラスミド)、RNAベクター、ウイルス、又はその他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)などの核酸ベクターを含む。異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞又は真核細胞に送達するために、様々なベクターが開発されてきた。本開示の「ベクター」は、タンパク質を発現しかつ/又はこれらのポリヌクレオチド配列を哺乳類細胞のゲノムに組み込むための追加の配列要素、遺伝子の転写を誘導するための制御配列(プロモータ領域およびエンハンサー領域など)、あるいは遺伝子の翻訳速度を高める、又は遺伝子の転写によって産生されたmRNAの安定性もしくは核輸送を向上させるための配列を含有していてもよい。配列要素は、発現ベクター上の遺伝子を効率よく転写するために、例えば、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、内部リボソーム進入部位(IRES)、およびポリアデニル化シグナル部位を含む。本開示の「ベクター」は、このようなベクターを含有する細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。適切なマーカーとしては、例えば、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、又はノーセオスリシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0065】
本明細書において、「宿主細胞」なる語は、外因性の核酸が導入された細胞のことをいい、このような細胞の子孫を含む。「子孫」は、核酸成分がその親と全く同じであってもよいし、変異を含有していて、親細胞と全く同じでなくてもよい。「子孫」は、元々の形質転換細胞において選別又は選択された機能又は生物学的活性と同じ機能又は生物学的活性を有する変異型子孫を含む。
【0066】
本明細書において、「医薬組成物」なる語は、本開示のIL-2変異体、融合タンパク質、核酸断片、ベクター、又は宿主細胞のうちの1つ以上を含有する混合物のことをいう。混合物は、他の成分をさらに含んでいてもよく、他の成分としては、薬学的に許容される担体、希釈剤、又はアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物の目的は、生物への薬物の投与を容易にすることであり、これによって、有効成分の吸収が促進されて生物学的活性が発揮される。
【0067】
本開示の「治療」なる語は、外科的治療又は薬学的治療のことをいい、その目的は、治療を必要とする対象において、細胞増殖性障害(例えば、がん、又は感染症)、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス)などの望ましくない生理学的変化又は病変の進行を予防又は緩和(低減)することである。有益な臨床結果又は望ましい臨床結果としては、検出可能であるか不可能であるかにかかわらず、症状の緩和、疾患の重症度の抑制、病状の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患の進行の遅延又は減速、病態の改善又は緩和、および寛解(部分寛解であっても完全寛解であっても)が挙げられるが、これらに限定されない。治療を必要とする対象としては、疾患又は障害を患っている人たち、疾患又は障害に罹りやすい人たち、又は疾患又は障害を予防しようとしている人たちが挙げられる。「抑制(alleviation)」、「低減(reduction)」、「緩和(mitigation)」、「改良(amelioration)」、および「寛解(remission)」なる語が用いられる場合、排除、消滅、不発生なども意味する。
【0068】
本明細書において、「対象」なる語は、本明細書で述べる特定の疾患又は障害(がん、感染症、又は自己免疫疾患など)の治療を受けている生物のことをいう。対象および患者としては、例えば、ヒト、霊長類、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ネコ、イヌ、モルモット、ウシ又はその他のウシ科の動物、ヒツジ、およびウマなどの、疾患又は障害の治療を受けている哺乳類が挙げられる。
【0069】
本明細書において、「有効量」なる語は、細胞、組織、又は対象に、治療薬を単独で、又は別の治療薬と組み合わせて、投与する場合に、疾患の症状又は進行を予防又は抑制するのに効果がある、治療薬の量のことをいう。「有効量」は、症状を緩和する(例えば、関連する医学的状態を治療、治癒、予防、又は緩和する)のに十分な化合物の量、又はそのような状態を治療、治癒、予防、又は緩和する速度を上昇させるのに十分な化合物の量のこともいう。有効成分を個体に一種のみ投与する場合、治療上有効な量は、その有効成分のみをいう。合わせて投与する場合、治療上有効な量とは、治療効果を有する有効成分を組み合わせて連続的に投与するか、同時に投与するかにかかわらず、それらを合わせた量のことである。
【0070】
本開示の「自己免疫疾患」なる語は、対象の細胞、組織、および/又は臓器に対する自身の免疫応答によって引き起こされる細胞、組織、および/又は臓器の損傷を特徴とする病気のことをいう。一例として、自己免疫疾患としては、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、ループス腎炎、IgA腎症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、乾癬、尋常性乾癬、円形脱毛症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、自己免疫性肝炎、I型糖尿病、自己免疫性血管炎、湿疹、又は喘息が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本開示の「増殖性疾患」なる語は、細胞又は組織の増殖が制御不能および/又は異常であり、これが望ましくない病気又は疾患の発症につながり得る、病気のことをいう。癌性であっても、癌性でなくてもよく、その例として新生物、固形腫瘍、血液系腫瘍、悪性腹水、又は悪性胸水が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の「固形腫瘍」は、良性又は悪性のもの、原発性又は転移性のものであってもよく、悪性固形腫瘍は、癌腫又は肉腫であってもよい。一例として、本開示の「固形腫瘍」としては、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮細胞癌、奇形腫、肺腫瘍、パピローマウイルス誘発性がん、腺癌、癌腫、黒色腫、血管肉腫、神経芽細胞腫、転移性肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、乳がん、メルケル細胞がん、卵巣がん、腎細胞がん、転移性腎がん、頭頸部がん、膀胱がん、筋層非浸潤性膀胱がんが挙げられるが、これらに限定されない。一例として、本開示の「血液系腫瘍」としては、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、T細胞大顆粒リンパ球白血病などの白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書において、「CD25」としても知られている、「IL-2受容体αサブユニット」(IL-2Rα)なる語は、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含むあらゆる脊椎動物に由来する、あらゆる天然IL-2受容体αサブユニット又はその変異体のことをいう。「IL-2受容体αサブユニット」は、「全長」未処理IL-2受容体αサブユニット、処理された細胞由来IL-2受容体αサブユニットのあらゆる形態、天然に存在するIL-2受容体αサブユニット変異体(スプライス変異体又は対立遺伝子変異体など)、および天然IL-2受容体αサブユニットを基に人工的に操作された変異体を含む。ある実施形態において、IL-2受容体αサブユニットは、配列番号57に示す例示的な配列を有するヒトIL-2受容体αサブユニットである。
【0073】
本明細書において、「CD122」としても知られている、「IL-2受容体βサブユニット」(IL-2Rβ)なる語は、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含むあらゆる脊椎動物に由来する、あらゆる天然IL-2受容体βサブユニット又はその変異体のことをいう。IL-2受容体βサブユニットは、「全長」未処理IL-2受容体βサブユニット、処理された細胞由来IL-2受容体βサブユニットのあらゆる形態、天然に存在するIL-2受容体βサブユニット変異体(スプライス変異体又は対立遺伝子変異体など)、および天然IL-2受容体βサブユニットを基に人工的に操作された変異体を含む。ある実施形態において、IL-2受容体βサブユニットは、配列番号58に示す例示的な配列を有するヒトIL-2受容体βサブユニットである。
【0074】
本明細書において、「CD132」としても知られている、「IL-2受容体γサブユニット」(IL-2Rγ)なる語は、霊長類(例えば、ヒト)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含むあらゆる脊椎動物に由来する、あらゆる天然IL-2受容体γサブユニット又はその変異体のことをいう。IL-2受容体γサブユニットは、「全長」未処理IL-2受容体γサブユニット、処理された細胞由来IL-2受容体γサブユニットのあらゆる形態、天然に存在するIL-2受容体γサブユニット変異体(スプライス変異体又は対立遺伝子変異体など)、および天然IL-2受容体γサブユニットを基に人工的に操作された変異体を含む。ある実施形態において、IL-2受容体γサブユニットは、配列番号59に示す例示的な配列を有するヒトIL-2受容体γサブユニットである。
【0075】
本明細書において、「制御性T細胞」又は「T制御性細胞」としても知られている、「Treg」なる語は、他のT細胞の応答を阻害することができる、特殊化したCD4+T細胞種のことをいう。Tregは、IL-2受容体αサブユニット(CD25)および転写因子であるフォークヘッドボックスタンパク質P3(FOXP3)を発現することを特徴とし、抗原に対する末梢性自己寛容を誘導および維持するのに重要な役割をはたす。Tregは、その機能を発揮し、阻害性を発現、誘導するために、IL-2を必要とする。
【0076】
本明細書において、「結合能」なる語は、対となる分子の間で発揮される結合又は相互作用のことをいう。対となる一般的な分子としては、リガンドと受容体、抗原と抗体、酵素と基質などが挙げられ、より具体的には、例えば、IL2とIL-2Rβγサブユニット複合体、又はIL-2とIL-2Rαβγサブユニット複合体が挙げられる。本開示の「結合能」は、当該技術分野における従来の方法によって検出することができ、そのような方法としては、ELISA又はFACSが挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は、フローサイトメトリー(FACS)によって検出された、CHO-K1のhIL-2-Rα組み換え細胞系(クローン1A6)におけるヒトIL-2受容体αタンパク質の発現レベルを示し、IL-2受容体αに対する抗体は、バイオレジェンド社から購入したものであり、ネガティブコントロールとは、アイソタイプコントロールのことである。
【
図2】
図2は、フローサイトメトリー(FACS)によって検出された、CHO-K1のhIL-2Rβ組み換え細胞系(クローン2A5)におけるヒトIL-2受容体βタンパク質の発現レベルを示し、IL-2受容体βに対する抗体は、バイオレジェンド社から購入したものであり、ネガティブコントロールとは、アイソタイプコントロールのことである。
【
図3】
図3は、フローサイトメトリー(FACS)によって検出された、CHO-K1のhIL-2Rβγ組み換え細胞系(クローン2E6)におけるヒトIL-2受容体βγタンパク質の発現レベルを示し、IL-2受容体βおよびIL-2受容体γそれぞれに対する抗体は、バイオレジェンド社から購入したものであり、ネガティブコントロールとは、アイソタイプコントロールのことである。
図3Aは、ヒトIL-2受容体βタンパク質の発現レベルを示す。
図3Bは、ヒトIL-2受容体γタンパク質の発現レベルを示す。
【
図4】
図4は、フローサイトメトリー(FACS)によって検出された、CHO-K1のhIL-2Rαβγ組み換え細胞系(クローン2D6)におけるヒトIL-2受容体αβγタンパク質の発現レベルを示し、IL-2受容体α、IL-2受容体β、およびIL-2受容体γそれぞれに対する抗体は、バイオレジェンド社から購入したものであり、ネガティブコントロールとは、親CHO-K1細胞における対応する受容体の発現レベルのことをいう。
図4Aは、ヒトIL-2受容体αタンパク質の発現レベルを示す。
図4Bは、ヒトIL-2受容体βタンパク質の発現レベルを示す。
図4Cは、ヒトIL-2受容体γタンパク質の発現レベルを示す。
【
図5】
図5は、フローサイトメトリー(FACS)によって検出された、CHO-K1のIL-2受容体αβγ組み換え細胞およびIL-2受容体βγ組み換え細胞に対するIL-2変異体タンパク質の結合活性を示す。
図5Aは、CHO-K1のIL-2受容体αβγ組み換え細胞に対するmut7.36-リンカー2-hFc、mut11.08-リンカー2-hFc、mut61-リンカー2-hFc、mut61.08-リンカー2-hFc、又はmut61.46-リンカー2-hFcの結合活性を示す。
図5Bは、CHO-K1のIL-2受容体αβγ組み換え細胞に対するmut11.31-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの結合活性を示す。
図5Cは、CHO-K1のIL-2受容体βγ組み換え細胞に対するmut7.36-リンカー2-hFc、mut11.08-リンカー2-hFc、mut61-リンカー2-hFc、mut61.08-リンカー2-hFc、又はmut61.46-リンカー2-hFcの結合活性を示す。
図5Dは、CHO-K1のIL-2受容体βγ組み換え細胞に対するmut11.31-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの結合活性を示す。
【
図6】
図6は、Treg(
図6Aから
図6C)、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞(
図6Dから
図6F)、およびCD8
+T細胞(
図6Gから
図6I)におけるSTAT5リン酸化レベルに及ぼすIL-2変異体タンパク質の効果を示す。
図6Aは、TregにおけるSTAT5リン酸化レベルに及ぼすmut7.36-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Bは、TregにおけるSTAT5リン酸化レベルに及ぼすmut11.08-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Cは、TregにおけるSTAT5リン酸化レベルに及ぼすmut11.31-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Dは、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞におけるリン酸化レベルに及ぼすmut7.36-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Eは、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞におけるリン酸化レベルに及ぼすmut11.08-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Fは、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞におけるリン酸化レベルに及ぼすmut11.31-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Gは、CD8
+T細胞におけるリン酸化レベルに及ぼすmut7.36-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Hは、CD8
+T細胞におけるリン酸化レベルに及ぼすmut11.08-リンカー2-hFcの効果を示す。
図6Iは、CD8
+T細胞におけるリン酸化レベルに及ぼすmut11.31-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの効果を示す。
【
図7】
図7は、Treg(
図7Aおよび
図7B)、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞(
図7Cおよび
図7D)、およびCD8
+CD25
-T細胞(
図7Eおよび
図7F)の増殖レベルに及ぼすIL-2変異体タンパク質の効果を示す。
図7Aは、Tregの増殖レベルに及ぼすmut7.36-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの効果を示す。
図7Bは、Tregの増殖レベルに及ぼすmut11.08-リンカー2-hFc又はmut11.31-リンカー2-hFcの効果を示す。
図7Cは、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞の増殖レベルに及ぼすmut7.36-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの効果を示す。
図7Dは、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞の増殖レベルに及ぼすmut11.08-リンカー2-hFc又はmut11.31-リンカー2-hFcの効果を示す。
図7Eは、CD8
+CD25
-T細胞の増殖レベルに及ぼすmut7.36-リンカー2-hFc又はmut7.66-リンカー2-hFcの効果を示す。
図7Fは、CD8
+CD25
-T細胞の増殖レベルに及ぼすmut11.08-リンカー2-hFc又はmut11.31-リンカー2-hFcの効果を示す。
【
図8】
図8は、NK細胞の増殖レベルに及ぼすIL-2変異体タンパク質の効果を示す。
【
図9A】
図9Aは、脾臓のCD4
+T細胞におけるTregの百分率を示す。
【
図9B】
図9Bは、脾臓のCD4
+細胞におけるCD4
+CD25
-Foxop3
-細胞の百分率を示す。
【
図9C】
図9Cは、脾臓のCD3
+細胞におけるCD3
+CD4
-細胞の百分率を示す。
【
図10B】
図10Bは、末梢血のCD4
+細胞におけるCD4
+CD25
-Foxop3
-細胞の百分率を示す。
【
図10C】
図10Cは、末梢血のCD3
+細胞におけるCD3
+CD4
-細胞の百分率を示す。
【
図11A】
図11Aは、野生型マウスDTHモデルの異なる群におけるΔ耳厚の変化を示し、Δ耳厚とは、刺激前後における右耳の厚さの変化のことをいう。
【
図11B】
図11Bは、野生型マウスDTHモデルの異なる群における体重の変化を示す。
【
図12A】
図12Aは、野生型マウスDTHモデルの異なる群におけるΔ耳厚の変化を示し、Δ耳厚とは、刺激前後における右耳の厚さの変化のことをいう。
【
図12B】
図12Bは、野生型マウスDTHモデルの異なる群における体重の変化を示す。
【
図13A】
図13Aは、NOGマウスの異なる群におけるTreg/Tconを示す。
【
図13B】
図13Bは、NOGマウスの異なる群におけるTreg/CD8
+を示す。
【
図17】
図17は、静脈投与後の野生型マウスにおける血漿薬物濃度を示す。
【
図18】
図18は、皮下投与後のPBMC接種マウスにおける血漿薬物濃度を示す。
【
図19】
図19は、皮下投与後のカニクイザルにおける血漿薬物濃度を示す。
【
図20B】
図20Bは、皮下投与後のカニクイザルにおけるTreg数の倍率変化を示す。
【
図20C】
図20Cは、皮下投与後のカニクイザルにおけるCD4
+T細胞中のTregの百分率を示す。
【
図20D】
図20Dは、皮下投与後のカニクイザルにおけるKi67
+Tregの百分率を示す。
【
図20E】
図20Eは、皮下投与後のカニクイザルにおけるFoxP3の平均蛍光強度の倍率変化を示す。
【
図20F】
図20Fは、皮下投与後のカニクイザルにおけるCD25の平均蛍光強度の倍率変化を示す。
【
図21A】
図21Aは、皮下投与後のカニクイザルにおけるFoxP3
-CD4
+細胞の数を示す。
【
図21B】
図21Bは、皮下投与後のカニクイザルにおけるFoxP3
-CD4
+細胞数の倍率変化を示す。
【
図21C】
図21Cは、皮下投与後のカニクイザルにおけるCD8
+T細胞の数を示す。
【
図21D】
図21Dは、皮下投与後のカニクイザルにおけるCD8
+T細胞数の倍率変化を示す。
【
図21F】
図21Fは、皮下投与後のカニクイザルにおけるNK細胞数の倍率変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
具体的な実施例を参照して、本開示を以下でさらに説明する。本開示の利点および特徴は、この説明によって明らかになるであろう。実施例において具体的な条件が示されていない場合、従来の条件又は製造業者に提案された条件に従うものとする。製造業者が示されていない場合、用いた試薬類および機器類は、市販されている従来品である。
【0079】
以下の本開示の実施例は、単なる例示であって、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示の技術的解決法の詳細および形態は、本開示の趣旨又は範囲から離れたり、これらを超えたりすることなく、変更又は置換することができ、このような変更および置換は、すべて本開示の保護の範囲内であるということを、当業者は理解するべきである。
【0080】
実施例1-熱安定性が向上したIL-2変異体の設計および発現プラスミドの構築
【0081】
熱安定性が向上したIL-2変異体を得るために、種々のアルゴリズムを用い、対応する配列の設計および合成を行った。野生型IL-2および上記IL-2変異体をコードする核酸断片をFcタグを有するpTT5ベクターにクローニングした後、分子生物学において確立されている標準的な方法によって、以下の融合タンパク質をコードするプラスミドを調製した:IL-2-リンカー2-hFc、mut0.08-リンカー2-hFc、mut0.31-リンカー2-hFc、mut0.36-リンカー2-hFc、mut0.39-リンカー2-hFc、mut0.46-リンカー2-hFc、mut0.57-リンカー2-hFc、mut0.66-リンカー2-hFc、およびmut0.68-リンカー2-hFc。
【0082】
上記融合タンパク質および構成要素の具体的な配列を表1に示す。表中、「IL-2」は、野生型IL-2を表し、「mutXX」は、野生型IL-2と比較して変異が生じているIL-2変異体を表す。
【0083】
表1 安定性が向上したIL-2変異体の配列
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
実施例2-熱安定性が向上したIL-2変異体の産生および精製
【0088】
実施例1で構築したプラスミドを用いてHEK293細胞(中国科学院の細胞バンクから購入)を一過的にトランスフェクトし(PEI、ポリサイエンス社)、その後、フリースタイル(登録商標)293発現培地(ギブコ社から購入)において、37℃で増殖させた。7日後に、細胞培養培地を回収し、細胞成分を遠心分離によって除去して、IL-2-hFc融合タンパク質を含有する培養上清を得た。
【0089】
10mLのプロテインAカラム(ベストクロム社から購入)を用いて、細胞培養上清中の融合タンパク質を精製した。まず、カラムの3倍から5倍の体積の平衡化緩衝液(PBSリン酸緩衝液、pH7.4)でプロテインAカラムを平衡化し、その後、10mL/分の流速で、透明な培養上清をロードした。ロード後、カラムの3倍から5倍の体積の平衡化緩衝液でプロテインAカラムを洗浄した。プロテインAカラムに結合したタンパク質を、溶出緩衝液(0.02Mクエン酸緩衝液、0.1Mグリシン、0.1M塩化ナトリウム、pH3.0)を用いて溶出させ、その溶出を核酸/タンパク質検出器(A280紫外吸収ピーク)でモニターした。溶出タンパク質を回収し、緩衝液(1Mアルギニン、0.4Mコハク酸、pH9.0)を添加して中和した。その後、緩衝システム(20mM PB、200mM塩化ナトリウム、pH6.0からpH6.5)を用いて分子篩(ベストクロム社から購入)を通過させて、標的タンパク質を回収した。0.22μmのフィルターによる無菌ろ過によって精製IL-2変異体融合タンパク質を得、無菌状態で保存した。
【0090】
精製IL-2変異体融合タンパク質について、タンパク質の収量、濃度(A280/1.4)、およびSEC純度の試験および解析を行った。熱安定性が向上した精製IL-2変異体融合タンパク質(mutXX-リンカー2-hFc)を特定した。これらは、野生型IL-2(IL2-リンカー2-hFc)と比較して、収量が有意に多かった。タンパク質の収量、濃度、および純度の結果を表2に示す。
【0091】
表2 熱安定性が向上したIL-2変異体融合タンパク質の検出結果
【0092】
【0093】
実施例3-熱安定性が向上したIL-2変異体の示差走査蛍光定量(DSF)アッセイ
【0094】
50倍希釈したプロテインサーマルシフトダイキット(アプライドバイオシステムズ社から購入、カタログ番号4461146)の緩衝液、0.5mg/mLに希釈したIL-2変異体タンパク質(実施例2に記載の方法で精製)、および2倍希釈した染料を、20μLの反応系に添加した。均一に混合した後、各試料につき二連で、8チューブストリップに混合物を添加した。チューブに蓋をし、遠心分離を5秒から10秒行い、アプライドバイオシステムズ7500で解析した。その後、ボルツマン法を用いて融解曲線を解析することで、Tm値を得た。表3に示すように、野生型IL-2(IL2-リンカー2-hFc)と比較して、IL-2変異体(mutXX-リンカー2-hFc)では3℃よりも大きくTm値が上昇しており、それによって熱安定性が有意に向上していた。
【0095】
表3 熱安定性が向上したIL-2変異体のDSFアッセイの結果
【0096】
【0097】
実施例4-IL-2変異体(βγサブユニットに対する結合能が低下したIL-2変異体、およびβγサブユニットに対する結合能が低下し熱安定性が向上したIL-2変異体)の設計、および発現プラスミドの構築
【0098】
MOEソフトウェアを含む種々のアルゴリズムを用いて、ヒトIL-2と、対応する受容体αサブユニット、受容体βサブユニット、受容体γサブユニットとの間の相互作用をシミュレートし、βγサブユニットに対する結合能が低下した変異部位を得た。βγサブユニットに対する結合活性が低下した変異部位を有するIL-2変異体配列の設計および合成を行い、それとともに、このような変異部位と熱安定性が向上した変異部位との組み合わせを有するIL-2変異体配列の設計および合成を行った。野生型IL-2および上記IL-2変異体をコードする核酸断片を、Fcタグを有するpTT5ベクターにクローニングした後、分子生物学において確立されている標準的な方法にしたがって、以下の融合タンパク質をコードするプラスミドを調製した:IL-2-リンカー2-hFc、mut7-リンカー2-hFc、mut7.08-リンカー2-hFc、mut7.36-リンカー2-hFc、mut7.39-リンカー2-hFc、mut7.46-リンカー2-hFc、mut7.57-リンカー2-hFc、mut7.66-リンカー2-hFc、mut8-リンカー2-hFc、mut8.08-リンカー2-hFc、mut8.36-リンカー2-hFc、mut11-リンカー2-hFc、mut11.08-リンカー2-hFc、mut11.31-リンカー2-hFc、mut11.36-リンカー2-hFc、mut11.46-リンカー2-hFc、mut61-リンカー2-hFc、mut61.08-リンカー2-hFc、およびmut61.46-リンカー2-hFc。融合タンパク質およびその構成要素の具体的な配列を表4に示す。表中、「IL-2」は、野生型IL-2を表し、「mutXX」は、野生型IL-2と比較して変異が生じているIL-2変異体を表す。
【0099】
表4 IL-2変異体の配列
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
実施例5-IL-2変異体の産生および精製
【0107】
実施例4で構築したプラスミドを用いてHEK293細胞(中国科学院の細胞バンクから購入)を一過的にトランスフェクトし(PEI、ポリサイエンス社)、その後、フリースタイル(登録商標)293発現培地(ギブコ社から購入)において、37℃で増殖させた。7日後に、細胞培養培地を回収し、細胞成分を遠心分離によって除去して、IL-2-hFc融合タンパク質を含有する培養上清を得た。
【0108】
10mLのプロテインAカラム(ベストクロム社から購入)を用いて、細胞培養上清中の融合タンパク質を精製した。まず、カラムの3倍から5倍の体積の平衡化緩衝液(PBSリン酸緩衝液、pH7.4)でプロテインAカラムを平衡化し、その後、10mL/分の流速で、透明な培養上清をロードした。ロード後、カラムの3倍から5倍の体積の平衡化緩衝液でプロテインAカラムを洗浄した。プロテインAカラムに結合したタンパク質を、溶出緩衝液(0.02Mクエン酸緩衝液、0.1Mグリシン、0.1M塩化ナトリウム、pH3.0)を用いて溶出させ、その溶出を核酸/タンパク質検出器(A280紫外吸収ピーク)でモニターした。溶出タンパク質を回収し、緩衝液(1Mアルギニン、0.4Mコハク酸、pH9.0)を添加して中和した。その後、緩衝システム(20mM PB、200mM塩化ナトリウム、pH6.0からpH6.5)を用いて分子篩(ベストクロム社から購入)を通過させて、標的タンパク質を回収した。0.22μmのフィルターによる無菌ろ過によって精製IL-2変異体融合タンパク質を得、無菌状態で保存した。
【0109】
精製IL-2変異体融合タンパク質(mutXX-リンカー2-hFc)について、タンパク質の濃度(A280/1.4)およびSEC純度の解析を行った。精製IL-2変異体融合タンパク質を特定した。タンパク質の純度および濃度の結果を表5に示す。
【0110】
表5 IL-2変異体融合タンパク質の検出結果
【0111】
【0112】
実施例6 IL-2変異体のDSFアッセイ
【0113】
50倍希釈したプロテインサーマルシフトダイキット(アプライドバイオシステムズ社から購入、カタログ番号4461146)の緩衝液、0.5mg/mLに希釈したIL-2変異体タンパク質(実施例5において精製)、および2倍希釈した染料を、20μLの反応系に添加した。均一に混合した後、各試料につき二連で、8チューブストリップに混合物を添加した。チューブに蓋をし、遠心分離を5秒から10秒行い、アプライドバイオシステムズ7500で解析した。その後、ボルツマン法を用いて融解曲線を解析することで、Tm値を得た。具体的なTm値を表6に示す。
【0114】
表6に示す結果によると、野生型IL-2(IL2-リンカー2-hFc)と比較して、実施例4および実施例5のIL-2変異体(mutXX-リンカー2-hFc)では5℃よりも大きくTm値が上昇しており、9℃よりも大きくTm値が上昇しているIL-2変異体もあった。以上のように、すべての変異体で熱安定性が有意に向上した。
【0115】
驚くべきことに、βγサブユニットに対する結合能が低下したIL-2変異体では、野生型IL-2と比較して、Tm値が上昇し、熱安定性が向上していた。熱安定変異をさらに組み合わせた変異体は、高いTm値を維持しており、熱安定変異を組み合わせた変異体の中には、βγサブユニットに対する結合能を低下させる変異のみを有するIL-2変異体と比較して、2℃を超えて最大6℃までTm値が上昇したものもあり、熱安定性がさらに向上していた。
【0116】
表6 IL-2変異体のDSFアッセイの結果
【0117】
【0118】
実施例7-ヒトIL-2受容体又はマウスIL-2受容体を過剰発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系の構築
【0119】
A.ヒトIL-2受容体αを過剰発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系の構築
【0120】
ヒトIL-2受容体αサブユニットのアミノ酸配列(NCBIにおける遺伝子登録番号はP01589であり、具体的な配列は配列番号57に示す通りである)を、レンチウイルスパッケージング用のpLVX-IRES-Puroベクター(ユーバイオ社から購入、カタログ番号VT1464)にクローニングした。その後、CHO-K1細胞系(中国科学院の細胞バンクから購入)を、レンチウイルスでトランスフェクトした。ウイルスで72時間トランスフェクトした後、公知のIL-2受容体αサブユニット抗体(商品番号302606、バイオレジェンド社から購入)を用いて、フローサイトメトリーによってCHO細胞を検出した。トランスフェクトされた細胞がヒトIL-2受容体αサブユニットの発現を開始していることが検出されると、スクリーニングのためにピューロマイシン(ギブコ社から購入)を添加した。細胞を回収した後、限界希釈によって96ウェル培養プレートにサブクローニングし、37℃、5%(v/v)CO
2で培養した。約2週間後、いくつかのモノクローナル細胞を選択し、6ウェルプレートへと広げた。公知のIL-2受容体αサブユニット抗体を用いて、フローサイトメトリーによって、増殖させたクローンをさらにスクリーニングした。増殖がより良好で、蛍光強度がより高いモノクローナル細胞系を、さらなる増殖のために選択し、フローサイトメトリーによって再検出し、その後、液体窒素中で凍結して、ヒトIL-2受容体αサブユニットを発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系を得た。具体的な選択結果を表7および
図1に示す。表7の陽性細胞(%)とは、細胞の全数における陽性細胞の百分率のことをいう。表7は、IL-2受容体αサブユニットを過剰発現する一連のCHO-K1細胞系が調製されたことを示す。
【0121】
表7 ヒトIL-2受容体αを発現するCHO-K1細胞のFACS特性評価
【0122】
【0123】
B.ヒトIL-2受容体βを過剰発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系の構築
【0124】
ヒトIL-2受容体βサブユニットのアミノ酸配列(NCBIにおける遺伝子登録番号はP14784であり、具体的な配列は配列番号58に示す通りである)を、レンチウイルスパッケージング用のpLVX-IRES-Puroベクター(ユーバイオ社から購入、カタログ番号VT1464)にクローニングした。その後、CHO-K1細胞系(中国科学院の細胞バンクから購入)を、レンチウイルスでトランスフェクトした。ウイルスで72時間トランスフェクトした後、公知のIL-2受容体βサブユニット抗体(カタログ番号339010、バイオレジェンド社から購入)を用いて、フローサイトメトリーによってCHO-K1細胞を検出した。トランスフェクトされた細胞がヒトIL-2受容体βサブユニットの発現を開始していることが検出されると、スクリーニングのためにピューロマイシン(ギブコ社から購入)を添加した。細胞を回収した後、限界希釈によって96ウェル培養プレートにサブクローニングし、37℃、5%(v/v)CO
2で培養した。約2週間後、いくつかのモノクローナル細胞を選択し、6ウェルプレートへと広げた。公知のIL-2受容体βサブユニット抗体を用いて、フローサイトメトリーによって、増殖させたクローンをさらにスクリーニングした。増殖がより良好で、蛍光強度がより高いモノクローナル細胞系を、さらなる増殖のために選択し、フローサイトメトリーによって再検出し、その後、液体窒素中で凍結して、ヒトIL-2受容体βサブユニットを発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系を得た。具体的な選択結果を表8および
図2に示す。表8の陽性細胞(%)とは、細胞の全数における陽性細胞の百分率のことをいう。表8は、IL-2受容体βサブユニットを過剰発現する一連のCHO-K1細胞系が調製されたことを示す。
【0125】
表8 ヒトIL-2受容体βを発現するCHO-K1細胞のFACS特性評価
【0126】
【0127】
C.ヒトIL-2受容体βγを過剰発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系の構築
【0128】
ヒトIL-2受容体γサブユニットのアミノ酸配列(NCBIにおける遺伝子登録番号はP31785であり、具体的な配列は配列番号59に示す通りである)を、レンチウイルスパッケージング用のpLVX-IRES-Hygroベクターにクローニングした。その後、ヒトIL-2受容体βサブユニットを過剰発現するCHO-K1細胞系(CHO-K1 hIL-2Rβ、クローン2A5)を、レンチウイルスでトランスフェクトした。ウイルスで72時間トランスフェクトした後、公知のIL-2受容体βサブユニット抗体およびIL-2受容体γサブユニット抗体(カタログ番号339010および338608、バイオレジェンド社から購入)を用いて、フローサイトメトリーによってCHO-K1細胞を検出した。トランスフェクトされた細胞がヒトIL-2受容体βγサブユニットの発現を開始していることが検出されると、スクリーニングのためにピューロマイシンおよびハイグロマイシン(ギブコ社およびサーモ社から購入)を添加した。細胞を回収した後、限界希釈によって96ウェル培養プレートにサブクローニングし、37℃、5%(v/v)CO
2で培養した。約2週間後、いくつかのモノクローナル細胞を選択し、6ウェルプレートへと広げた。公知のIL-2受容体βサブユニット抗体およびIL-2受容体γサブユニット抗体を用いて、フローサイトメトリーによって、増殖させたクローンをさらにスクリーニングした。増殖がより良好で、蛍光強度がより高いモノクローナル細胞系を、さらなる増殖のために選択し、フローサイトメトリーによって再検出し、その後、液体窒素中で凍結して、ヒトIL-2受容体βγサブユニットを発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系を得た。具体的な選択結果を表9ならびに
図3Aおよび
図3Bに示す。表9の陽性細胞(%)とは、細胞の全数における陽性細胞の百分率のことをいう。表9は、IL-2受容体βγサブユニットを過剰発現する一連のCHO-K1細胞系が調製されたことを示す。
【0129】
表9 ヒトIL-2受容体βγを発現するCHO-K1細胞のFACS特性評価
【0130】
【0131】
D.ヒトIL-2受容体αβγを過剰発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系の構築
【0132】
ヒトIL-2受容体αサブユニットのアミノ酸配列を、レンチウイルスパッケージング用のpLVX-IRES-zsGreenベクターにクローニングした。ヒトIL-2受容体βγサブユニットを過剰発現するCHO-K1細胞系を、ベンチウイルスでトランスフェクトした。ウイルスで72時間トランスフェクトした後、公知のIL-2受容体αサブユニット抗体、IL-2受容体βサブユニット抗体、およびIL-2受容体γサブユニット抗体(同上、バイオレジェンド社から購入)を用いて、フローサイトメトリーによってCHO-K1細胞を検出した。トランスフェクトされた細胞がヒトIL-2受容体αβγサブユニットの発現を開始していることが検出されると、スクリーニングのためにピューロマイシンおよびハイグロマイシン(ギブコ社およびサーモ社から購入)ならびにGFP(蛍光発現用)を添加した。細胞を回収した後、限界希釈によって96ウェル培養プレートにサブクローニングし、37℃、5%(v/v)CO
2で培養した。約2週間後、いくつかのモノクローナル細胞を選択し、6ウェルプレートへと広げた。公知のIL-2受容体αサブユニット抗体、IL-2受容体βサブユニット抗体、およびIL-2受容体γサブユニット抗体を用いて、フローサイトメトリーによって、増殖させたクローンをさらにスクリーニングした。増殖がより良好で、蛍光強度がより高いモノクローナル細胞系を、さらなる増殖のために選択し、フローサイトメトリーによって再検出し、その後、液体窒素中で凍結して、ヒトIL-2受容体αβγサブユニットを発現する、安定的にトランスフェクトされた細胞系を得た。具体的な選択結果を表10ならびに
図4Aおよび
図4Bに示す。表10の陽性細胞(%)とは、細胞の全数における陽性細胞の百分率のことをいう。表10は、IL-2受容体αβγサブユニットを過剰発現する一連のCHO-K1細胞系が調製されたことを示す。
【0133】
表10 ヒトIL-2受容体αβγを発現するCHO-K1細胞のFACS特性評価
【0134】
【0135】
表11 実施例7(A~D)において、安定的にトランスフェクトされた細胞株の構築に用いた遺伝子、およびそれらがコードするタンパク質の配列情報
【0136】
【0137】
実施例8-フローサイトメトリー(FACS)による、受容体発現細胞に対するIL-2変異体の結合活性の検出
【0138】
IL-2受容体αβγを発現するCHO-K1細胞(CHO-K1 hIL-2Rαβγ 2D6)又はIL-2受容体βγを発現するCHO-K1細胞(CHO-K1 hIL-2Rβγ 2E6)を、T-75細胞培養フラスコにおいて90%コンフルエンスになるまで増殖させた。培地を除去した後、PBS緩衝液(ハイクロン社から購入、カタログ番号SH30256.01)でフラスコを1回洗浄した。0.25%EDTAを含有するトリプシン(インビトロジェン社から購入、カタログ番号25200072)2mLを用いて2分から3分、細胞を処理し、10%(w/w)ウシ胎児血清(ギブコ社から購入、カタログ番号10099-141C)を含有するDMEM/F-12(ギブコ社から購入、カタログ番号12634-010)8mLを用いて中和し、3回から4回ピペッティングを行い、その後、15ml遠心管に回収して計数し、5分間室温にて1000rpmで遠心分離を行った。培養培地を廃棄した後、2%(w/w)ウシ胎児血清を含有するRPMI-1640(ギブコ社から購入、カタログ番号A10491-01)に細胞を再懸濁し、その後、1.43×10
6細胞/mlまで希釈した。細胞を、U底96ウェルFACS反応プレートに1ウェルあたり70μLずつ添加し、後で用いるために4℃又は氷上に置いた。検出しようとするIL-2変異体を2%(w/w)ウシ胎児血清を含有するRPMI-1640で希釈し、1ウェルあたり30μLずつ細胞に添加し、よく混合し、氷上で1時間インキュベートした。その後、プレートをFACS緩衝液(2%(w/w)ウシ血清アルブミンを含有するPBS緩衝液)で2回洗浄した。蛍光標識二次抗体(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号409306)を1ウェルあたり100μLずつプレートに添加し、氷上で30分間インキュベートした。その後、プレートをFACS緩衝液で2回洗浄した。FACS(FACS Canto II、BDカンパニー社から購入)による検出および解析を行った。あるいは、2%(w/w)パラホルムアルデヒド(ディングオ社から購入、カタログ番号AR-0211)を含有するFACS緩衝液100μLに細胞を懸濁し、その後、さらなるFACS検出まで4℃で保管した。FACS検出を行う前に、各ウェルに100μLのPBS緩衝液を添加した。FACSによる検出および解析を行った。結果を
図5Aから
図5Dならびに表12および表13に示す。結果は、IL-2変異体が、細胞表面のヒトIL-2受容体αβγ三量体に結合することができたということを示す。細胞表面のヒトIL-2受容体βγ二量体に対するIL-2変異体の結合活性は、野生型IL-2の結合活性よりも弱かった。CHO-K1 IL-2Rβγ二量体に対するmut61-リンカー2-hFc、mut61.08-リンカー2-hFc、およびmut61.46-リンカー2-hFcの結合活性は、大きく阻害されていた。以下の表におけるMFIは、検出された細胞集団の平均蛍光強度である。
【0139】
表12 FACSによって検出した、CHO-K1のIL2受容体αβγ組み換え細胞系(CHO-K1 IL2Rαβγ)に対するIL-2変異体の結合活性
【0140】
【0141】
表13 FACSによって検出した、CHO-K1のIL2受容体βγ組み換え細胞系(CHO-K1 IL2Rβγ)に対するIL-2変異体の結合活性
【0142】
【0143】
実施例9-STAT5リン酸化アッセイによって検出した、異なる細胞におけるIL-2によるシグナリング経路の活性化
【0144】
凍結されている末梢血単核球(PBMC)(オールセルズ社から購入)を解凍した。5×10
5個のPBMC50μLとIL-2変異体50μLとを各ウェルに添加し、二酸化炭素インキュベーター内で15分間反応させた。反応後、予め冷やしておいたDPBS100μLを各ウェルに添加して反応を停止した。遠心分離後、PBMCをライブデッドバイオレット(インビトロジェン-L34964)を用いて染色し、FixI(BD-557870)を用いて37℃で10分間固定し、PermIII(BD-558050)を用いて氷上で30分間透過処理を行った。その後、室温で1時間、CD3-AF700(BD-557943)、CD4-PerCP Cy5.5(BD-560650)、CD8-FTIC(BD-555366)、CD25-PE(BD-557138)、FoxP3-AF647(BD-560045)、およびpSTAT5-PE Cy7(インビトロジェン-25-9010-42)を用いてPBMCを染色し、検出前に2回洗浄した。結果を
図6Aから
図6Iおよび表14から表16に示す。結果は、IL-2変異体によって活性化されたSTAT5リン酸化のレベルが、Treg細胞においては野生型IL-2と比較して同様であるが、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞又はCD8
+T細胞においては有意に低下していたということを示している。以下の表におけるMFIは、検出された細胞集団におけるSTAT5リン酸化の平均蛍光強度である。
【0145】
表14.FACSによって検出した、TregにおいてIL-2変異体によって活性化されたSTAT5リン酸化シグナル
【0146】
【0147】
表15.FACSによって検出した、CD4+CD25-FoxP3-T細胞においてIL-2変異体によって活性化されたSTAT5リン酸化シグナル
【0148】
【0149】
表16 FACSによって検出した、CD8+T細胞においてIL-2変異体によって活性化されたSTAT5リン酸化シグナル
【0150】
【0151】
実施例10-T細胞の増殖に対するIL-2変異体の調節作用
【0152】
凍結PBMCを解凍し、10%FBS(ギブコ社から購入、カタログ番号10099-141C)を含有するRPMI-1640(ギブコ社から購入、カタログ番号A10491-01)に再懸濁し、100ng/mlのCD3抗体(BD社から購入、カタログ番号566685)でプレコートした6ウェルプレートで2日間培養した。細胞を回収し、PBS緩衝液(ハイクロン社から購入、カタログ番号SH30256.01)で3回洗浄し、10%FBSを含有するRPMI-1640に再懸濁して、6ウェルプレートで5日間培養した。その後、細胞を回収し、PBS緩衝液で1回洗浄し、セルトレースバイオレット(インビトロジェン社から購入、カタログ番号C34557)で染色し、培養培地で1回洗浄し、培養培地に再懸濁して24ウェルプレートに添加し(1ウェルあたり細胞900μL)、IL-2変異体タンパク質試料を100μL添加して、7日間培養した。その後、細胞を回収し、1%BSA(サンゴンバイオテック社から購入、カタログ番号A500023-0100)を含有するPBS(サンゴンバイオテック社から購入、カタログ番号B548117-0500)に再懸濁し、96ウェルプレートに添加した。
【0153】
細胞を、BV605-CD8(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号344742)を用いて室温で30分間染色し、1%BSAを含有するPBSで洗浄し、1ウェルあたり200μLの固定液(eバイオサイエンス社から購入、カタログ番号00-5523-00)を用いて4℃で30分間固定し、1%BSAを含有するPBSで洗浄した。その後、1ウェルあたり200μLの透過処理液(eバイオサイエンス社から購入、カタログ番号00-5523-00)を用いて4℃で30分間、細胞の透過処理を行い、1%BSAを含有するPBSで洗浄した。細胞を、APC-CY7-CD3抗体(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号344818)、CD25抗体(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号302606)、およびFoxp3抗体(サーモフィッシャー社から購入、#17-4777-42)を用いて室温で30分間さらに染色し、1%BSAを含有するPBSで洗浄し、1%BSAを含有するPBS200μLに再懸濁し、FACS(FACS Canto II、BD社から購入)による検出および解析を行った。結果を
図7Aから
図7Fおよび表17から表19に示す。結果は、IL-2変異体のTregの増殖に対する作用は、野生型IL-2と比較して同様であるが、CD4
+CD25
-FoxP3
-T細胞又はCD8
+T CD25
-T細胞に対しては、やや低かったということを示している。以下の表におけるMFIは、検出された細胞におけるセルトレースバイオレットの平均蛍光強度であり、増殖細胞では低下していた。すなわち、同じ検出時間において、細胞の増殖がより速いと、検出される平均蛍光強度はより低くなった。
【0154】
表17 FACSによって検出した、IL-2変異体によって活性化されたTregの増殖
【0155】
【0156】
表18 FACSによって検出した、IL-2変異体によって活性化されたCD4+CD25-FoxP3-T細胞の増殖
【0157】
【0158】
表19 FACSによって検出した、IL-2変異体によって活性化されたCD8+T CD25-T細胞の増殖
【0159】
【0160】
実施例11.NK細胞の増殖に対するIL-2変異体の調節作用
【0161】
NKソーティングキット(ミルテニーバイオテック社から購入、カタログ番号130-092-657)を用いてNK細胞を選別、計数し、その後、25%ウシ血清(ギブコ社から購入、カタログ番号10099-141C)、0.2mMイノシトール(シグマアルドリッチ社から購入、カタログ番号I7508-50G)、0.1mMβ-メルカプトエタノール(シグマアルドリッチ社から購入、カタログ番号M3148-100ML)、および0.02mM葉酸(シグマアルドリッチ社から購入、カタログ番号F8758-5G)を含むMEM培地(ギブコ社から購入、カタログ番号12634-010)に再懸濁した。各ウェルにFcブロッカー(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号422302)およびIL-2変異体を添加した96ウェルプレートに細胞を播種し、3日間培養した。最後の18時間、BrdU(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号423401)を添加した。細胞を回収し、1%BSAを含有するPBSで洗浄、再懸濁し、同体積の4%パラホルムアルデヒド(ディングオ社から購入、カタログ番号AR-0211)を用いて室温で30分間固定し、1%BSAを含有するPBSで洗浄した。0.5%トリトン-X100(サーモフィッシャー社から購入、カタログ番号HFH10)を用いて室温で15分間、細胞の透過処理を行い、1%BSAを含有するPBSで洗浄し、DnaseI(シグマアルドリッチ社から購入、カタログ番号D4513-1VL)を用いて37℃で1時間切断した。1%BSAを含有するPBSで細胞を洗浄、再懸濁し、APC抗BrdU抗体(バイオレジェンド社から購入、カタログ番号339808)を用いて室温で20分間染色し、1%BSAを含有するPBSで洗浄した。1%BSAを含有するPBS200μLに試料を再懸濁し、FACS(FACS Canto II、BD社から購入)による検出および解析を行った。結果を
図8および表20に示す。結果は、IL-2変異体のNK細胞の増殖に対する作用は、野生型IL-2と比較して有意に低下していたということを示している。表20のデータは、NK細胞集団におけるBrdU陽性細胞の割合である。
【0162】
表20 FACSによって検出した、IL-2変異体によって活性化されたNK細胞の増殖
【0163】
【0164】
実施例12.皮下投与後の野生型マウスにおける薬力学(PD)の結果
【0165】
6週齢から8週齢の雌のBalb/cマウスをバイタルリバー社から購入した。Fc-リンカー-IL2_V91Kおよびmut11.08-リンカー2-hFcをPBSで希釈し、マウス1匹あたり200μLをマウスの背中に皮下投与した。投与後、FACS解析のために、マウスの全血試料および脾臓試料を異なる時点において回収した。Fc-リンカー-IL2_V91Kの配列は、配列番号60に示す通りであり、実施例2で説明したように精製した。
PKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPCEEQYGSTYRCVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGGGGGSAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINKIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT(配列番号60)
【0166】
マウス全血を2mLのEDTA/2K抗凝固チューブ(シンカンメディカル社、カタログ番号X424)に回収し、抗凝固剤と完全に接触するようにチューブを上下に傾けて、抗凝固剤とよく混合した。300μLの全血をFACSチューブに移し、染色用抗体の混合溶液を添加して、室温、暗所で20分間インキュベートした。その後、試料に赤血球溶解緩衝液(ハイブリマックス、カタログ番号R7757-100mL)(1試料あたり1mL)を添加して、室温、暗所で5分間放置し、綿状沈殿物を観察した。その後、試料を20℃で6分間、400gで遠心分離した。上清を廃棄した後、細胞を分散させた。赤血球の溶解を繰り返した。細胞の洗浄として、細胞をPBS(1試料あたり4mL)に再懸濁し、4℃で6分間、500gで遠心分離した。上清を廃棄して、細胞を分散させた。固定用緩衝液(1チューブあたり500μL)をチューブに滴下し、滴下する度にFACSチューブを断続的に振盪した。試料を4℃で1時間又は一晩固定した。
【0167】
マウスの脾臓を70μmのセルストレーナー(ファルコンコーニング社、カタログ番号352350)上で粉砕し、500gで遠心分離した。各脾臓に3mLの赤血球溶解緩衝液を添加し、5分間溶解させた後、20mLのPBSを添加して溶解を停止した。混合物を500gで5分間遠心分離した。細胞を5mLのPBSに再懸濁し、70μmのセルストレーナーでスクリーニングした。細胞計数後、各FACSチューブに1×106個の細胞を添加した。Fcブロッカー(バイオレジェンド社、カタログ番号156603)(1チューブあたり5μL)を添加した後、細胞をボルテックして、4℃で20分間インキュベートした(10分毎にボルテックスした)。その後、細胞にFACS洗浄緩衝液(PBS+1%BSA)(1チューブあたり4mL)を添加し、4℃で6分間、400gで遠心分離した。上清を廃棄し、チューブの口を、吸い取り紙を用いて乾燥させた。細胞に抗マウスCD3e(BDバイオサイエンス社、カタログ番号740014)、抗マウスCD4(BDバイオサイエンス社、カタログ番号553407)、および抗マウスCD25(バイオレジェンド社、カタログ番号102008)を添加し、ボルテックスして、4℃で20分間インキュベートした(10分毎にボルテックスした)。その後、細胞にFACS洗浄緩衝液(1チューブあたり4mL)を添加し、4℃で6分間、400gで遠心分離した。上清を廃棄し、チューブの口を、吸い取り紙を用いて乾燥させた。1回ボルテックスした後、固定用緩衝液(1チューブあたり500μL)をチューブに滴下し、滴下する度にチューブを断続的に振盪した。試料を4℃で1時間又は一晩固定した。
【0168】
固定用緩衝液としては、セット3901(eバイオサイエンス社、カタログ番号00-5523-00)の固定/透過処理用濃縮物および固定/透過処理用希釈剤を1:3の比率で混合して、固定用緩衝液を調製した。
【0169】
透過処理用緩衝液およびddH2Oを1:9の比率でよく混合して、透過処理液を調製した。細胞に透過処理液(1チューブあたり2mL)を添加し、4℃で6分間、500gで遠心分離した。上清を廃棄し、チューブの口を、吸い取り紙を用いて乾燥させた。透過処理液(1チューブあたり3mL)を用いて透過プロセスを繰り返した。細胞にFoxp3抗体(eバイオサイエンス社、カタログ番号25-5773-82)(1チューブあたり10μL)を添加し、4℃で40分間保持した(20分毎にボルテックスした)。その後、細胞にFACS緩衝液(1チューブあたり4mL)を添加し、4℃で6分間、500gで遠心分離した。上清を廃棄し、チューブの口を、吸い取り紙を用いて乾燥させた。1回ボルテックスした後、チューブに100μLのFACS緩衝液を添加して、検出用に細胞を再懸濁した。動物群におけるTreg(CD4+CD25+Foxp3+)、CD4+CD25-Foxp3-T細胞、およびCD3+CD4-T細胞の百分率を、平均±標準偏差(平均±SEM)で表し、グラフ化して、グラフパッドプリズム5ソフトウェアを用いて解析した。
【0170】
図9Aから
図9Cおよび
図10Aから
図10Cに示すように、一用量として1mpkを皮下投与した場合、mut11.08-リンカー2-hFcは、マウスの脾臓および末梢血において、Tregの百分率を有意に上昇させ、CD4
+CD25
-Foxp3
-T細胞の百分率を有意に低下させた。CD3
+CD4
-T細胞の百分率は、有意には変化しなかった。mut11.08-リンカー2-hFcの効力は、Fc-リンカー-IL2_V91Kの効力よりも良好であった。
【0171】
実施例13.野生型マウスDTH(遅延型過敏症)モデル
【0172】
感作相は、以下の通りである。抗原を、体積比が1:1:1である3mg/mLのKLH(シグマ社、カタログ番号H7017、50mg)、IFA(シグマ社、カタログ番号F5506、10mL)、およびCFA(シグマ社、カタログ番号F5581、10mL)とともに、ダブルハブニードル法によって乳化させた。抗原を完全に乳化させることで、約1時間で粘性のあるエマルジョンを形成することができた。各マウスに対して、100μLの乳化剤、すなわち100μgのKLHを注射した。各マウスに対して、肩甲骨の中央部の2箇所(各箇所50μL)に乳化させたKLHを皮下注射した。同時に、WT IL-2リンカー2-hFc群、Fc-リンカー-IL2_V91K群、およびmut11.08-リンカー2-hFc群として、それぞれ、マウス1匹あたり1mpk、200μLの用量で、3日に1回、WT IL-2リンカー2-hFc(WT IL-2、配列番号12)、Fc-リンカー-IL2_V91K、又はmut11.08-リンカー2-hFcをマウスに皮下注射した。また、CsA群として、マウス1匹あたり10mpk、200μLの用量で、1日に1回、シクロスポリンA(CsA、シグマ社、カタログ番号F5581、10mL)をマウスに腹腔内注射した。また、賦形剤コントロール群として、PBSをマウスに腹腔内注射した。
【0173】
感作後5日目に刺激を与えた。10mg/mLのKLHをPBSで10倍に希釈し、1μg/μLとした。各マウスに対して、右耳に10μLのKLH(すなわち、10μgのKLH)、コントロールとして左耳に10μLのPBSを皮内注射した。
【0174】
感作前に、各マウスの左右の耳厚をスパイラルマイクロメーター(0mmから25mm、精度:0.001、南京SuCe測定器有限公司から購入)で測定し、記録した。刺激前に、各マウスの左右の耳厚をスパイラルマイクロメーターで測定し、基礎値とした。刺激から24時間後、48時間後、72時間後、および96時間後に、耳厚を測定した。各群における体重および耳厚の変化を、平均±標準偏差(平均±SEM)で表し、グラフ化して、グラフパッドプリズム5ソフトウェアを用いて解析した。
【0175】
結果を
図11Aに示す。1mpkを1回皮下投与した後、WT IL-2群におけるΔ耳厚の変化は、賦形剤コントロール群と比較して有意ではなかったが、mut11.08-リンカー2-hFc群のマウスのΔ耳厚はより小さくなっており、このことは、mut11.08-リンカー2-hFcの抗炎症作用を示唆しており、mut11.08-リンカー2-hFcの抗炎症効力は、Fc-リンカー-IL2_V91KおよびCsAの抗炎症効力よりも良好である。
図11Bに示すように、各群の動物の体重に有意な変化はなかった。
【0176】
2回目の実験の結果を
図12Aに示す。Fc-リンカー-IL2_V91Kの1用量(1mpk)を皮下投与し、一方、mut11.08-リンカー2-hFcは、1用量として、0.04mpk、0.2mpk、1mpk、又は5mpkを皮下投与した。mut11.08-リンカー2-hFcの抗炎症作用は、用量依存的であった。0.2mpkのmut11.08-リンカー2-hFの作用は、1mpkのFc-リンカー-IL2_V91Kと同様であり、この条件下では、体重に異常な点は観察されなかった。
図12Bに示すように、5mpkのmut11.08-リンカー2-hFcを投与した場合、マウスの体重は変動し、減少したが、他の群の体重は正常であった。
【0177】
実施例14.皮下投与後のPBMCマウスにおけるPDの結果
【0178】
11週齢から12週齢の雌のNOGマウスをバイタルリバー社から購入した。1日目に、PBMCを解凍し、CD3(eバイオサイエンス社から購入、カタログ番号16-0037-85/2106800、終濃度12.5ng/mL)およびCD28(eバイオサイエンス社から購入、カタログ番号16-0289-85/2073954、終濃度25ng/mL)を添加することで活性化し、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で16時間、一晩インキュベートした。0日目に、PBMC(マウス1匹あたり20×106個、400μL)を回収し、尾静脈経由でNOGマウスに接種した。体重に基づき、接種マウスを無作為に5群に分けた。その5群には、PBSコントロール群、mut11.08-リンカー2-hFc群(0.3mpk、1mpk)、およびFc-リンカー-IL2_V91K群(0.3mpk、1mpk)が含まれ、各群のマウスは3匹であった。その後、薬物を1用量、首に皮下注射した(0日目)。投与後3日目に、安楽死させたマウスの脾臓をFACS解析のために取り出し、データを記録した。動物群におけるTreg(CD4+CD25+Foxp3+)、Tcon(CD4+CD25-)、およびCD8+T細胞の数および倍率変化をグラフ化し、グラフパッドプリズム8ソフトウェアを用いて解析した。
【0179】
実験結果を
図13Aおよび
図13Bならびに
図14Aから
図14Cに示す。1mpkを1回皮下投与した後、mut11.08-リンカー2-hFcは、3日目に用量依存的にTreg/Tconの比率およびTreg/CD8
+Tの比率を上昇させ、Fc-リンカー-IL2_V91Kよりも良好な結果を示した。投与後3日目には、Tregの数が有意に変化したことを除いて、Tconの数は増加したが有意ではなく、CD8
+T細胞の数は有意には変化しなかった。
【0180】
実施例15.PBMCマウス移植片対宿主疾患(GVHD)モデル
【0181】
13週齢から14週齢の雌のNOGマウスをバイタルリバー社から購入した。プロトコールは実施例14と同様とした。体重に基づき、NOGマウスを3群に分けた。この3群には、G1群(PBS、活性化PBMCは接種せず、3匹のマウス)、G2群(PBS、10匹のマウス)、およびG3群(0.2mpkのmut11.08-リンカー2-hFcを投与、10匹のマウス)が含まれ、G2群およびG3群には、実施例14にしたがって活性化PBMCを接種した。その後、薬物を1用量、首に皮下注射した(0日目)。1週あたり2回、マウスの体重を測定し、現れたGVHDの特徴に基づいて採点を行った[採点システム:体重減少(0:<10%、1:10%~20%、2:>20%、3:>30%);貧血(0:尾が赤色又は桃色、1:尾が白色);姿勢(0:正常、1:猫背);一般活動性(0:正常、1:限定的);排出(0:排出なし、1:排出);および黄疸(0:尾が白色又は赤色、1:尾が黄色);疾患の最高重症度又は死は、8に相当する]。データを記録した。注釈1:マウスのスコアが最高重症度となった場合、他の症状は採点しない;注釈2:死後も、実験終了まで、死亡したマウスの採点を続けた。
【0182】
実験結果を
図15Aおよび
図15Bに示す。PBMC移植後13日目には、G2群の体重は減少しており、また、G2群では、GVHDの症状は早期に現れていた。PBMC移植後17日目には、G3群の体重は減少しており、G3群の全体的な体重減少は、G1群の全体的な体重減少よりも小さく、G3群の体重減少は、G2群の体重減少よりも遅く生じていた。これらは、mut11.08-リンカー2-hFcが、マウスにおいてGVHDが生じることを、薬物学的な期待値に応じて効果的に抑制することを示唆している。mut11.08-リンカー2-hFcは、0.2mpkでは毒性作用および副作用を示さず、体重評価の通りに、良好な抗GVHD能を示した。さらに、G3群の動物の死亡率およびGVHDスコアは、G2群よりも低く、有意な差があった。
【0183】
実施例16.マウスにおける薬物動態
【0184】
本実験のマウス血漿薬物濃度を求める方法は、以下の通りである。1μg/mLのhIL2Rアルファタンパク質(ACROバイオシステムズ社、カタログ番号ILA-H52H9-100μg)で、プレートをコーティングした。ブランク血清中、500ng/mLから3.90625ng/mLにわたる濃度で、薬物の検量線を作成した。高濃度/中濃度/低濃度の品質コントロールを調製し、検出対象の試料すべて、標準品、および品質コントロールを希釈剤で40倍希釈し、その後、プレートに二連で添加した(100μl/ウェル)(実際の状況に応じて、試料をさらに希釈してもよい)。検出抗体である「ペルオキシダーゼ・アフィニピュア・マウス抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的」(ジャクソン社、カタログ番号209-035-098)を10000倍希釈し、その後、プレートに添加した。発色のために、TMB発色溶液をプレートに添加し(100μl/ウェル)、その後、1M硫酸(50μl/ウェル)を用いて発色を停止した。
【0185】
皮下投与(1mpk)の後、野生型マウスにおける血漿薬物濃度を求めた。2つの実験結果を
図16Aおよび
図16Bならびに表21および表22に示す。いずれの実験においても、mut11.08-リンカー2-hFcの曝露量は、Fc-リンカー-IL2_V91K(コントロール群)の曝露量の4倍から6倍高く、T
maxは、Fc-リンカー-IL2_V91Kと比較して遅延した。1回の皮下投与(1mpk)の後、mut11.08-リンカー2-hFcの曝露量は、mut11-リンカー2-hFcの曝露量よりも高かった。
【0186】
表21 皮下投与を1回行った後の野生型マウスにおける薬物動態パラメータ
【0187】
【0188】
表22 皮下投与を1回行った後の野生型マウスにおける薬物動態パラメータ
【0189】
【0190】
静脈投与(1mpk)の後、野生型マウスにおける血漿薬物濃度を求めた。結果を
図17および表23に示す。mut11.08-リンカー2-hFcの曝露量は、Fc-リンカー-IL2_V91Kの曝露量よりも高かったが、皮下投与と比較して、その差は小さくなっていた(C
max:3×→1.3×、AUC:4×→2.4×)。mut11.08-リンカー2-hFcの曝露量は、mut11-リンカー2-hFcの曝露量よりも高かったが、皮下投与と比較して、その差は小さくなっていた(C
max:2.4×→1.2×、AUC:3.2×→1.6×)。
【0191】
したがって、皮下投与されたmut11.08-リンカー2-hFcの生物学的利用能は、Fc-リンカー-IL2_V91Kおよびmut11-リンカー2-hFcの生物学的利用能よりも良好であった。安定化変異は、薬物曝露および生物学的利用能を上昇させた。
【0192】
表23 静脈投与を1回行った後の野生型マウスにおける薬物動態パラメータ
【0193】
【0194】
実施例14で説明した方法によって、マウスにPBMCを接種した。皮下投与(1mpk)の後、野生型マウスにおける血漿薬物濃度を求めた。結果を
図18および表24に示す。PBMCマウスにおいては、1回の皮下投与(1mpk)の後、mut11.08-リンカー2-hFcの曝露量は、Fc-リンカー-IL2_V91Kの曝露量よりも5倍から8倍高く、明らかに有利であり、mut11.08-リンカー2-hFcのT
maxは、Fc-リンカー-IL2_V91KのT
maxよりも遅くなっていた。
【0195】
表24 皮下投与を1回行った後のPBMCマウスにおける薬物動態パラメータ
【0196】
【0197】
実施例17.カニクイザルにおける薬物動態およびPDの結果
【0198】
本実験のカニクイザル血漿薬物濃度を求める方法は、以下の通りである。1μg/mLのhIL2Rアルファタンパク質(ACROバイオシステムズ社、カタログ番号ILA-H52H9-100μg)で、プレートをコーティングした。カニクイザル由来のブランク血清中、15ng/mLから0.11718ng/mLにわたる濃度で、薬物の検量線を作成した。高濃度/中濃度/低濃度の品質コントロールを調製し、検出対象の試料すべて、標準品、および品質コントロールを5倍希釈し、その後、プレートに二連で添加した(100μl/ウェル)。検出抗体である「ヤギ抗ヒトIgG、サルads-BIOT」(サザンバイオテック社、カタログ番号2049-08)を1000倍希釈してからプレートに添加し、その後、5000倍希釈したストレプトアビジン-HRP(サーモ社、カタログ番号21126)をプレートに添加した。最後に、発色のために、TMB発色溶液を添加し(100μl/ウェル)、その後、1M硫酸(50μl/ウェル)を用いて発色を停止した。カニクイザルブランク血清は、上海Hkey生物科技有限公司から購入した。
【0199】
0.05mpkの用量で、IL-2を4匹のカニクイザルに皮下投与した。そのうちの1匹には、WT IL-2-リンカー2-hFc(WT IL-2と略記、配列番号12に示す)を投与し、1匹にはFc-リンカー-IL2_V91Kを投与し、2匹にはmut11.08-リンカー2-hFc(それぞれMut11.08-1およびMut11.08-2と略記)を投与し、投与後に血漿薬物濃度を検出した。結果を
図19および表25に示す。0.05mpkの用量では、WT IL-2分子の終末相半減期は長く、Fc-リンカー-IL2_V91Kおよびmut11.08-リンカー2-hFcの終末相半減期は同程度であった。C
maxおよびAUCの順位は、mut11.08-リンカー2-hFc>Fc-リンカー-IL2_V91K>WT IL2であった。
【0200】
表25 皮下投与を1回行った後のカニクイザルにおける薬物動態パラメータ
【0201】
【0202】
4匹のカニクイザルを用いて、mut11.08-リンカー2-hFcを1回皮下投与した場合のカニクイザル由来のTregの増殖に対する作用を判定した。1匹にはWT IL-2-リンカー2ーhFCを投与し、1匹にはFc-リンカー-IL2_V91Kを投与し、その他の2匹にはmut11.08-リンカー2-hFcを投与した。それぞれ0.05mpkの用量を(1回の皮下投与にて)投与した。投与前ならびに投与後1日目、3日目、5日目、7日目、10日目、及び14日目に、カニクイザルの末梢血を回収した。異なる時点において回収したカニクイザルの血液試料2mLからPBMCを単離し、凍結した。各時点における凍結PBMCのバイアルを取り出し、解析のために一緒に解凍した。解凍したPBMCを1mLの染色緩衝液(2%FBSを含有するDPBS緩衝液)に再懸濁し、その後、各200μLを2枚の96ウェルV底プレートに移し、パネル1およびパネル2とした。2枚のプレートをPBSで1回洗浄し、その後、ライブ/デッド・フィクサブル・ニア-IR(サーモ社、カタログ番号134976)を用いて20分間染色した。染色緩衝液を用いて染色を停止させた後、ヒト・トゥルーステイン・FcX(バイオレジェンド社、カタログ番号422302)をプレートに添加し、20分間インキュベートした。その後、異なる蛍光抗体の混合物を用いて、2枚のプレートを30分間染色した。パネル1では、BV605マウス抗ヒトCD3(BD社、カタログ番号562994)、PerCP-Cy5.5マウス抗ヒトCD4(BD社、カタログ番号552838)、FITCマウス抗ヒトCD8(バイオレジェンド社、カタログ番号301050)、およびBV421マウス抗ヒトCD25(バイオレジェンド社、カタログ番号302630)を、ブリリアント染色緩衝液(BD社、カタログ番号563794)で希釈した。パネル2では、BV605マウス抗ヒトCD3(BD社、カタログ番号562994)、PerCP-Cy5.5マウス抗ヒトCD4(BD社、カタログ番号552838)、FITCマウス抗ヒトCD8(バイオレジェンド社、カタログ番号301050)、およびブリリアントバイオレット421抗ヒトCD16(バイオレジェンド社、カタログ番号302038)を、ブリリアント染色緩衝液で希釈した。染色を停止させた後に細胞を1回洗浄し、Foxp3/転写因子染色緩衝液キット(eバイオサイエンス社、カタログ番号00-5523-00)を用いて固定および透過処理を行った。2枚のプレートに異なる蛍光抗体の混合物を添加して、細胞を45分間染色した。パネル1では、PE抗ヒトFOXP3(バイオレジェンド社、カタログ番号320208)およびKi67モノクローナル抗体APC(eバイオサイエンス社、カタログ番号17-5698-82)を透過処理緩衝液で希釈した。パネル2では、Ki67モノクローナル抗体APCを透過処理緩衝液で希釈した。染色後、透過処理緩衝液で1回洗浄し、400μLの染色緩衝液に再懸濁して、その後、200μLの試料をFACSで解析した。動物群におけるTreg、CD4+Foxp3-T細胞、CD8+T細胞、およびNK細胞の数および倍率変化をグラフ化し、グラフパッドプリズム9ソフトウェアを用いて解析した。
【0203】
実験結果を
図20Aから
図20Fに示す。1回の皮下投与(0.05mpk)の後、mut11.08-リンカー2-hFcは、カニクイザル末梢血中のTregの数および百分率を上昇させた。Treg/CD4
+Tの比率によると、mut11.08-リンカー2-hFcは、Tregの活性化に有利に働き、そのため、Tregの百分率は、Fc-リンカー-IL2_V91Kの約2倍であった。Fc-リンカー-IL2_V91Kと比較して、mut11.08-リンカー2-hFcは、Tregの増殖を向上させる作用がより強く(11.08対Fc-リンカー-IL2_V91Kは、79/55対18)、一方で、Fc-リンカー-IL2_V91Kはこの点においてWTよりも良好であった(18対9.5)。Treg活性化マーカーの解析によると、異なる分子の投与後、Ki67
+Tregの%に差異はほとんどなかった。Treg活性化マーカー(Foxp3およびCD25)の発現は有意に増加しており、これは、Tregの増殖レベルと正に相関していた。
【0204】
図21Aから
図21Fに示すように、Fc-リンカー-IL2_V91K(0.05mpk)を1回皮下投与した後、FoxoP3
-CD4
+T細胞の最大倍率変化は、約2倍であり、CD8
+T細胞ではやや高く、約4倍であった。FoxoP3
-CD4
+T細胞の増殖に対するmut11.08-リンカー2-hFcの作用は、Fc-リンカー-IL2_V91Kの作用よりも約2倍から3倍強く、一方で、CD8
+T細胞の増殖に対する作用は、Fc-リンカー-IL2_V91Kの作用と同様かやや弱く、WTの約1.5倍から2倍であった。Fc-リンカー-IL2_V91Kの投与後、NK細胞の数は有意に変化しなかった。NKの増殖レベルに対するmut11.08-リンカー2-hFcの作用は、Fc-リンカー-IL2_V91Kと同様であった。
【配列表】