(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】不揮発性メモリのためのローカル基準電圧発生器
(51)【国際特許分類】
G11C 11/22 20060101AFI20241106BHJP
G11C 7/14 20060101ALI20241106BHJP
G11C 29/50 20060101ALI20241106BHJP
G11C 29/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G11C11/22 234
G11C7/14
G11C29/50 100
G11C29/02 150
(21)【出願番号】P 2023519852
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2021052784
(87)【国際公開番号】W WO2022072584
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-30
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522029730
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies LLC
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン キム
(72)【発明者】
【氏名】アラン デビルビス
(72)【発明者】
【氏名】カピル ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック エフ オコンネル
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン ブロツキー
(72)【発明者】
【氏名】シャン サン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュー
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0153575(US,A1)
【文献】特表2018-514891(JP,A)
【文献】特開2010-160851(JP,A)
【文献】特開2010-009687(JP,A)
【文献】特開2001-243760(JP,A)
【文献】特表2022-520893(JP,A)
【文献】特表2019-505945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0152287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 11/22
G11C 7/14
G11C 29/50
G11C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体ランダムアクセスメモリ(F-RAM)装置であって、前記F-RAM装置は、
各行がワード線およびプレート線を共有する複数の行として配置されており、各列がビット線を共有する複数の列として配置されているF-RAMセルのアレイであって、前記アレイは、複数のブロックのそれぞれにおけるF-RAMセルの行および列アドレスに基いて複数のブロックに分割されているF-RAMセルのアレイと、
メモリ信号を受信するために読み取られている前記複数のブロックのうちの1つのビット線に結合された第1の入力を有する少なくとも1つの比較器と、少なくとも1つのスイッチング回路を介して前記比較器の第2の入力に結合された電荷共有要素と、を含む検出回路と、
を備えており、
結合された前記電荷共有要素は、読み取られている前記複数のブロックのうちの前記1つに対するアドレスに基いて基準電圧を受信するためにローカル基準電圧発生器にさらに結合されて
おり、
前記F-RAMセルは、1トランジスタ・1コンデンサ(1T1C)F-RAMセルを備え、前記基準電圧は、読み取られている前記複数のブロックのうちの前記1つにおける前記F-RAMセルの最高のUターム(U0)に基いて選択されている、
F-RAM装置。
【請求項2】
前記
ローカル基準電圧発生器は、ベース電圧を提供するベース基準電圧発生回路と、前記検出回路に提供される前記基準電圧を生成するために前記ベース電圧をオフセットするために、前記複数のブロックのうちのどれが読み取られているかに基いて調整電圧を提供する調整基準電圧発生回路と、を備えている、
請求項1に記載のF-RAM装置。
【請求項3】
前記F-RAM装置は、前記
ローカル基準電圧発生器に結合された制御回路をさらに備えており、前記制御回路は、前記ベース基準電圧発生回路を制御する構成回路と、前記調整基準電圧発生回路を制御する調整制御回路と、を備えている、
請求項2に記載のF-RAM装置。
【請求項4】
前記F-RAM装置は、前記調整基準電圧発生回路に結合された監視メモリをさらに備えており、前記監視メモリは、前記複数のブロックのうちのどれが読み取られているかに基いて前記調整電圧を提供するように前記調整基準電圧発生回路を動作することを可能にする情報を保存する1つまたは複数のルックアップテーブルを含む、
請求項3に記載のF-RAM装置。
【請求項5】
前記ベース基準電圧発生回路は、コンデンサの第1のアレイを備え、これらのうちの1つまたは複数を、前記検出回路内の前記電荷共有要素に電荷を転送し、前記電荷共有要素に前記ベース電圧を提供するために結合することができ、
前記調整基準電圧発生回路は、コンデンサの第2のアレイを備え、これらのうちの1つまたは複数を、前記電荷共有要素に電荷を転送し、前記ベース電圧をオフセットし、前記検出回路に提供される前記基準電圧を生成するために結合することができる、
請求項4に記載のF-RAM装置。
【請求項6】
システムであって、前記システムは、
複数のブロックに分割された不揮発性メモリ(NVM)セルのアレイと、
前記アレイに結合され、前記アレイからメモリ信号を受信し、前記メモリ信号を基準電圧と比較して前記NVMセルからデータを読み取る検出回路と、
前記検出回路に結合されており、前記検出回路に基準電圧を提供する
ローカル基準電圧発生器と、
を備えており、
前記
ローカル基準電圧発生器は、前記複数のブロックのうちのどれが読み取られているかに基いて、多数の基準電圧のうちの1つを前記検出回路に提供するように構成されて
おり、
NVMセルは、1トランジスタ・1コンデンサ(1T1C)メモリセルを備え、前記多数の基準電圧のうちの前記1つは、読み取られている前記複数のブロックのうちの前記1つにおける前記NVMセルの最高の消去タームに基いて選択されている、
システム。
【請求項7】
前記複数のブロックのうちの1つを読み取るために前記検出回路に提供される多数の基準電圧のうちの第1の基準電圧は、前記複数のブロックのうちの他の1つを読み取るため
に提供される多数の基準電圧のうちの第2の基準電圧と異なる、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記NVMセルは、それぞれがワード線を共有する複数の行と、それぞれがビット線を共有する複数の列と、として配置されており、
前記アレイは、前記複数のブロックのそれぞれにおけるNVMセルの行および列アドレスに基いて前記複数のブロックに論理的に分割されており、
前記
ローカル基準電圧発生器は、前記複数のブロックのそれぞれにおけるNVMセルの前記行および列アドレスに基いて前記多数の基準電圧のうちの1つを前記検出回路に提供するように構成されている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記
ローカル基準電圧発生器は、ベース電圧を提供するベース基準電圧発生回路と、前記検出回路に提供される前記多数の基準電圧のうちの前記1つを生成するために前記ベース電圧をオフセットするために、前記複数のブロックのうちのどれが読み取られているかに基いて調整電圧を提供する調整基準電圧発生回路と、を備えている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、前記
ローカル基準電圧発生器に結合された制御回路をさらに備えており、前記制御回路は、前記ベース基準電圧発生回路を制御する構成回路と、前記調整基準電圧発生回路を制御する調整制御回路と、を備えている、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、前記調整基準電圧発生回路に結合された監視メモリをさらに備えており、前記監視メモリは、前記複数のブロックのうちのどれが読み取られているかに基いて前記調整電圧を提供するように前記調整基準電圧発生回路を動作することを可能にする情報を保存する1つまたは複数のルックアップテーブルを含む、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記NVMセルは、それぞれがワード線を共有する複数の行と、それぞれがビット線を共有する複数の列と、として配置されており、
前記アレイは、前記複数のブロックのそれぞれにおけるNVMセルの行および列アドレスに基いて前記複数のブロックに論理的に分割されており、
前記システムは、前記複数のブロックのうちのどれが読み取られているかを特定するために前記調整基準電圧発生回路に結合されたアドレスバッファをさらに備えている、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ベース基準電圧発生回路は、コンデンサの第1のアレイを備え、これらのうちの1つまたは複数を、前記検出回路におけるステージングコンデンサに電荷を転送し、前記ステージングコンデンサに前記ベース電圧を提供するために結合することができ、
前記調整基準電圧発生回路は、コンデンサの第2のアレイを備え、これらのうちの1つまたは複数を、前記ステージングコンデンサに電荷を転送し、前記ベース電圧をオフセットし、前記検出回路に提供される前記多数の基準電圧のうちの前記1つを生成するために結合することができる、
請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
メモリ装置を動作する方法であって、前記方法は、
各ブロック内のセルの行および列アドレスに基いて、前記メモリ装置内のメモリセルのアレイを複数のブロックに論理的に分割するステップと、
各ブロックに対して多数のマージンスイープを実行し、各ブロックのローカル基準電圧を決定するステップと、
各ブロックの前記ローカル基準電圧から、前記アレイのベース基準電圧と、各ブロックの調整基準電圧と、を決定するステップと、
各ブロックの前記調整基準電圧をルックアップテーブルに保存するステップと、
前記複数のブロックのうちの1つの読み取り動作中に、前記ブロックの前記調整基準電圧をルックアップして生成し、前記調整基準電圧を前記ベース基準電圧と組み合わせることによって、読み取られている前記ブロックに対して事前に決定された前記ローカル基準電圧を生成するステップと、
読み取られている前記メモリセルのビット線に結合されたセンスアンプの基準ビット線に前記ローカル基準電圧を印加するステップと、
を含
み、
各ブロックに対して前記多数のマージンスイープを実行するステップは、
前記ブロック内の各メモリセルに「0」を書き込み、最初のスイープ基準電圧から始め、前記ブロック内の全てのメモリセルを読み取り、前記最初のスイープ基準電圧を段階的に減少させ、メモリセルを正しく読み取れなくなるまで前記書き込みおよび前記読み取りを繰り返し、前記メモリセルが故障するときの前記スイープ基準電圧を最高の内部「0」として記録することによって、前記ブロックの前記最高の内部「0」を決定することを含む、
方法。
【請求項15】
各ブロックに対して前記多数のマージンスイープを実行するステップは、
前記ブロック内の各メモリセルに「1」を書き込み、最初のスイープ基準電圧から始め、前記ブロック内の全てのメモリセルを読み取り、前記最初のスイープ基準電圧を段階的に増加させ、メモリセルを正しく読み取れなくなるまで前記書き込みおよび前記読み取りを繰り返し、前記メモリセルが故障するときの前記スイープ基準電圧を最低のプログラムタームとして記録することによって、前記ブロックの前記最低のプログラムタームを決定することを含み、
前記ローカル基準電圧は、前記最高の内部「0」
の故障を有す
る前記スイープ基準電圧よりも高い事前に画定された電圧に設定されており、前記ローカル基準電圧と前記最高の内部「0」
の故障を有す
る前記スイープ基準電圧との間の第1のマージンは、前記ローカル基準電圧と前記最低のプログラムターム
の故障を有す
る前記スイープ基準電圧との間の第2のマージンよりも少ない、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記メモリセルは、強誘電体ランダムアクセスメモリ(F-RAM)セルを備えており、前記最高の内部「0」は、最高のUタームであり、前記ローカル基準電圧は、前記最高のUターム
の故障を有す
る前記スイープ基準電圧よりも高い事前に画定された電圧に設定されている、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
各ブロックに対して前記多数のマージンスイープを実行するステップは、前記ブロック内
で最低のプログラムタームを有する前記メモリセルと前記ローカル基準電圧との間のマージンが事前に画定された最小値よりも小さいブロックを特定することを含み、
前記方法は、前記ブロック内で前記最低のプログラムタームを有する前記メモリセルを分離し、その代わりに前記ブロック内のスペアメモリセルを結合することによって前記ブロックを修復するステップをさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年12月15日出願された米国非仮出願第17/122、284号の国際出願であり、本出願は、2020年9月30日に出願された米国仮出願第63/085、823号に対する35USC119(e)に基く優先権を主張するものであり、その全てを参照することにより、その全体を本願明細書に組み込むとする。
【0002】
本開示は、一般的に半導体メモリに関し、より詳細には、セグメントまたはブロックに分割され、かつローカル基準電圧発生器を含む、不揮発性メモリ(NVM)セルのアレイを備えるメモリ装置およびそれを動作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1T1C(1トランジスタ・1コンデンサ)アーキテクチャなど、シングルエンド検出を採用した不揮発性メモリ(NVM)セルのアレイを使用する集積メモリ装置は、高いメモリ密度を提供する。NVMメモリセルは、シリコン-酸化物-窒化物-酸化物-シリコン(SONOS)系の電荷トラップNVMセルなどにおける電荷として、または、強誘電体ランダムアクセスメモリ(F-RAM)セルにおける強誘電体コンデンサの分極状態としてデータを保存する。シングルエンド検出/読み取りにおいて、セルの電荷または分極状態に起因してセルのビット線上に発生した電圧と基準電圧とを比較することにより、セルに保存されたデータが読み取られる。NVMセルは、基準に対するビット線電圧または電流の比較の結果に基いて、プログラミングまたは消去されたとみなされる。例えば、1T1CのF-RAMセルが
図1に示されている。セル100は、プレート線(PL)に接続された第1のプレートと、ワード線(WL)によって制御されるトランジスタ104を介してビット線(BL)に結合された第2のプレートと、を有する強誘電体コンデンサ102を含む。強誘電体コンデンサ102の両側のプレートを充電することによって電場を印加し、強誘電体コンデンサ内の原子を(電荷の極性に応じて)上または下の向きに強制し、この際、Pタームもしくは論理の「1」、またはUタームもしくは論理の「0」が保存されることによって、データがセルに書き込まれる。他の実施形態において、「Pターム」および「Uターム」の論理/バイナリ状態を逆にすることができる。シングルエンド検出において、セル100は、プレート線PLとビット線BLとの間に読み取り電圧を印加するか、プレート線をパルスし、かつ、トランジスタ104を動作することによって読み取られる。「Pターム」または「Uターム」の電圧は、ビット線BLを介して出力され、メモリ装置内のセンスアンプ106を使用して基準電圧(VREF)と比較される。
【0004】
メモリセルのアレイに、プログラミングされたセル(Pターム)および消去されたセル(Uターム)の読み取りから想定されるビット線の電圧を画定するためのマージンスイープを行うことによって、基準電圧(VREF)が生成される。一実施形態によれば、VREFが、メモリアレイの全体において測定された最高のUターム(U0)電圧と最低のPターム(P0)電圧との間にあるように選択されることによって、メモリセル100が読み取られる際に、基準を上回るもたらされたビット線電圧がプログラミングされたものとして認識され、基準を下回る電圧が消去されたものとして認識される。
図2は、F-RAMメモリアレイの例示的なマージンスイープを示し、PタームおよびUタームの読み取りによるビット線電圧(メモリ信号)の統計的な変動を示す。最低のPターム(P0)と最高のUターム(U0)との差は、総体的な検出マージン(Uマージン+Pマージン)に相当する。
【0005】
図2は、NVMにおけるセルのアレイ内の異なるセルによってのPターム電圧およびUターム電圧(ビット線電圧)の統計的な変動が現れているF-RAMアレイ内のメモリセルからのメモリ信号のマージンスイープ、および、NVMの総体的な検出マージンへの影響を示す。
図2を参照すると、1T1CのF-RAMセルのアレイなど、装置内の全てまたは多数のセルに基準ビット線(BLとして言及する)を介して印加されるグローバルVREFを使用するシングルエンド検出を採用する従来のNVM装置に伴う1つの問題が、個々のセルのPタームおよびUタームの値の統計的な変動であることが見受けられる。
図2において、0と約55ミリボルト(mV)との間の各黒点は、1つのセルのプログラミングされていないタームまたはUタームに相当する。NVM装置のUマージン202は、VREFと、NVM装置内の1つまたは複数のセルの最高または最悪の場合のUターム(U0)と、の間の電圧の差に相当する。同様に、約140と200mVとの間の各黒点は、1つのセルのプログラミングされているタームまたはPタームに相当する。NVM装置のPマージン204は、VREFと、NVM装置内のセルの最低または最悪の場合のPターム(P0)と、の間の電圧の差に相当する。これらの統計的な変動は、保持損失およびその他の時間依存的な要因がUタームよりもPタームの劣化(P0の下向きの移動)を引き起こすことが観測されているため、Pマージンにとって特に問題となる。
【0006】
F-RAMアレイにおいて1T1Cセルのアレイを使用するメモリ装置に関するさらなる問題は、PタームおよびUタームの温度依存性を原因とする。
図3は、VREFが最悪の場合のUターム(U0)よりも21mV高く、すなわち、約83mVに設定されているときの、メモリセルのPタームおよびUタームの温度依存性を示すグラフである。
図3を参照すると、NVM装置の温度が上昇するにつれて、Pマージン(最悪の場合のPターム(P0 302)とVREFとの間の差)が減少することが見受けられる。例えば、0℃においてNVM装置のPマージンは約57mVであるが、約125℃においてPマージンは約22mVに低下する。この温度依存性を悪化させるのは、温度に依存するP0 302がNVM装置の寿命にわたって初期の高い電圧から低い電圧に移動していく時間依存的な劣化である。特定の温度でのこの時間依存的な劣化は、垂直な線302によって
図3に示されている。例えば、NVM装置の寿命にわたって、0℃でのP0 302は約155mVの高値から約128mVまで、または、約72mVのPマージンから約45mVまで低下することがある。この時間依存的な劣化と温度依存性とが組み合わさると、Pマージンが高い動作温度において事実上ゼロまで低下することを誘発し、その結果早めに寿命が尽きることがある。寿命が尽きるのは、メモリセルの状態を読み取り動作によって確実に決定するための、想定される最高の動作温度でのP0 302とVREFとの間に充分なPマージンがなくなるときである。
【0007】
再び
図3を参照し、最悪の場合または最高のUターム(U0 306)も温度依存性および時間依存的な劣化の影響を受けることに言及する。ただし、両方の要因によって誘発される劣化は、Pターム(P0 302)よりもUターム(U0 306)において少ないことが観測されている。
【0008】
最後に、個々のセルのPタームおよびUタームの値の幅は統計的な変動の結果であり、かつ、アレイが大きいほど観測される変動が大きくなると想定されるため、アレイ全体にわたって単一のグローバルなVREFが採用されているときに、最悪の場合のメモリセルにおける減少したマージンによってアレイの大きさが制限されることを理解されたい。
【0009】
したがって、より大きなアレイを有するメモリ装置を可能にするためにVREFとPタームおよびUタームとの間のマージンの最適化し、信頼性および歩留まりを向上させ、かつ、装置の動作寿命を延ばすための、1T1CのNVMセルのアレイを含むメモリ装置およびそれを動作する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
セグメントまたはブロックに分割されたセルのアレイを含むメモリ装置またはシステムと、異なるブロックを読み取るためのローカル基準電圧を提供することができる基準電圧発生器と、それを動作する方法と、が開示されている。一般的に、当該装置は、基準電圧発生器と、複数のブロックに分割された不揮発性メモリ(NVM)セルのアレイと、に加えて、セルからデータを読み取るためにアレイからメモリ信号を受信し、かつ、当該メモリ信号をローカル基準電圧と比較するためにアレイに結合された検出回路を含む。基準電圧発生器は、どのブロックが読み取られているかに基いて、多数の基準電圧のうちの1つを検出回路に提供するように構成されている。NVMセルは、それぞれがワード線およびプレート線を共有する複数の行と、それぞれがビット線を共有する複数の列と、から構成され、アレイは、各ブロックにおけるNVMセルの行アドレスおよび列アドレスに基いて複数のブロックに論理的に分割され、基準電圧発生器は、複数のブロックにおけるNVMセルの行アドレスおよび列アドレスに基いて多数の基準電圧のうちの1つを検出回路に提供するように構成されている。
【0011】
複数のブロックに分割されたメモリセルのアレイと、各ブロックに最適化されたローカル基準電圧を提供することができる基準電圧発生器と、を含むメモリ装置を動作する方法も開示されている。一般的に、当該方法は、各ブロックにおけるセルの行アドレスおよび列アドレスに基いて、メモリ装置内のメモリセルのアレイを複数のブロックに論理的に分割することから始まる。次に、各ブロックにおける最適化されたローカル基準電圧を決定するために、各ブロックに対して多数のマージンスイープを実行する。各ブロックのローカル基準電圧から、アレイのためのベース基準電圧と、各ブロックのための調整基準電圧と、が決定され、当該調整基準電圧は、各ブロックにおけるローカル基準電圧を提供するためにベース基準電圧がオフセットされる電圧に相当する。各ブロックのための調整基準電圧は、メモリ装置または基準電圧発生器に結合されたルックアップテーブルに保存される。複数のブロックのうちの1つにおけるメモリセルの読み取り動作中に、ブロックの調整基準電圧をルックアップテーブルから参照し、かつ、それをベース基準電圧と組み合わせることによって、当該ブロックの最適化されたローカル基準電圧に実質的に等しい最終基準電圧またはローカル基準電圧が生成される。当該ローカル基準電圧は、読み取られているメモリセルのビット線に結合されたセンスアンプの基準ビット線における入力に印加される。
【0012】
本開示の基準電圧発生器および方法は、アレイが1トランジスタ・1コンデンサ(1T1C)強誘電体ランダムアクセスメモリ(F-RAM)セルを含み、かつ、ブロックのうちの1つを読み取るために使用される基準電圧が、読み取られているブロックにおけるF-RAMセルの最低のPターム(P0)または最高のUターム(U0)に基いて選択される場合、特に有用である。
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を、単なる例示として、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しつつ説明する。さらに、本願明細書に組み込まれ、記載の一部である添付の図面は、本発明の実施形態を示し、記載と共に、本発明の原理を説明し、関連する(1つまたは複数の)技術分野の当業者が本発明を作成および使用できるようにすることに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】1トランジスタ・1コンデンサ(1T1C)強誘電体ランダムアクセスメモリ(F-RAM)セルの概略図である。
【
図2】PタームおよびUタームの統計的な変動ならびに総体的な検出マージンへの影響を表す、F-RAMアレイにおけるメモリセルからのメモリ信号のマージンスイープを示す図である。
【
図3】F-RAMアレイにおけるメモリセルのPタームおよびUタームの温度依存性および時間依存的な劣化を示すグラフである。
【
図4】メモレイアレイと、アドレスに依存するローカル基準電圧発生器と、を含むシステムのブロック図である。
【
図5】いくつかのブロックに分割されたメモリアレイのブロック図であって、当該いくつかのブロックのためには、アドレスに依存する基準電圧が生成される。
【
図6A】ベースVREF発生回路とオンザフライ調整VREF回路とを含む基準電圧発生器を示す概略ブロック図である。
【
図6B】ベースVREF発生回路とオンザフライ調整VREF回路とを含む基準電圧発生器を示す概略ブロック図である。
【
図6C】ベースVREF発生回路とオンザフライ調整VREF回路とを含む基準電圧発生器を示す概略ブロック図である。
【
図7】
図6のローカル基準電圧発生器をシステムにおけるメモリアレイに結合する検出回路およびスイッチの概略図である。
【
図9A】メモリアドレスに基いた監視メモリに保存されたルックアップテーブルからVREF調整値を取得するためのローカル基準電圧選択回路の概略図である。
【
図9B】メモリアドレスに基いた監視メモリに保存されたルックアップテーブルからVREF調整値を取得するためのローカル基準電圧選択回路の概略図である。
【
図10】複数のブロックを含むメモリ装置またはシステムのベース電圧および調整電圧を決定し、かつアドレスに依存するローカル基準電圧を使用し、かつメモリ装置またはシステムを動作するための方法のフロー図である。
【
図11A】単一のグローバル基準電圧を使用して動作するメモリシステムのメモリマージンの結果を示すグラフである。
【
図11B】単一のグローバル基準電圧を使用して動作するメモリシステムのメモリマージンの結果を示すグラフである。
【
図12A】アドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作するメモリシステムのメモリマージンの結果を示すグラフである。
【
図12B】アドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作するメモリシステムのメモリマージンの結果を示すグラフである。
【
図13】ローカルVREFセグメント(LVS)修復方法を使用してメモリ装置の不良ビットを修復するための方法のフロー図である。
【
図14】修復されていないメモリ装置と、グローバル修復方法を使用して修復された当該メモリ装置と、LVS修復方法を使用して修復されたメモリ装置と、のP-マージンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
セグメントまたはブロックに分割されたセルのアレイを含むメモリ装置またはシステムと、異なるブロックを読み取るためのローカル基準電圧を提供することができる基準電圧発生器と、それらを動作するための方法と、が提供される。当該メモリ装置および方法は、歩留まりと信頼性とを向上させ、装置の動作寿命を延長および温度範囲を拡大し、1T1C強誘電体ランダムアクセスメモリ(F-RAM)などのシングルエンド検出を採用する不揮発性メモリ(NVM)においてまたはとともに使用するのに特に有用である。
【0016】
以下の記載では、説明を目的として、本発明の完全な理解を促すために多くの具体的な詳細が示される。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施できることが自明であろう。他の事例では、本願明細書の理解を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の構造および技術は詳細には示されないか、ブロック図の形で示される。
【0017】
本願明細書における一実施形態または実施形態への言及は、その実施形態に関連して説明される特定な特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。本願明細書の様々な箇所に記載されている、一実施形態によるという語句は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。本願明細書で用いる結合という用語は、2つ以上の構成要素または要素を直接電気的に接続することと、1つ以上の介在する構成要素を介して間接的に接続することと、の両方を含むことがある。
【0018】
手短に言えば、メモリ装置は、複数のブロックに分割された不揮発性メモリ(NVM)セルのアレイと、当該アレイからの信号を受信し、かつ、メモリ信号を基準電圧と比較してNVMセルからデータを読み取るためにアレイに結合された検出回路と、を含む。メモリ装置は、検出回路に基準電圧を提供する基準電圧発生器をさらに含むか、当該基準電圧発生器に結合されている。基準電圧発生器は、どのブロックが読み取られているかに基いて、多数の基準電圧のうちの1つを検出回路に提供するように構成されている。読み取られているブロックは、アドレスまたは読み取られている(1つまたは複数の)NVMセルのアドレスによって特定することができる。
【0019】
図4は、複数のセグメントまたはブロック406に分割されたメモリアレイ404を有するメモリ装置402と、アドレスに依存するローカル基準電圧(VREF)発生器408と、を含むシステム400のブロック図を示す。
図4によれば、メモリ装置402は、本実施形態においてメモリアレイ404とローカル基準電圧発生器408との間に結合されたいくつかの検出回路410をさらに含む。検出回路410は、ローカル基準電圧発生器408からアドレスに依存するローカル基準電圧を受信し、読み取られているブロック406におけるメモリセルのバイナリ状態または論理状態(すなわち、プログラミングまたは消去されてた状態)を決定し、インターフェースまたはデータパス412を介して読み取られたデータを出力する。一実施形態において、メモリアレイ404は、1T1CのF-RAMセルを含むことができ、F-RAMセルのPタームまたはUタームがローカル基準電圧発生器408によって提供されるローカル基準電圧と比較されることによって、それらのバイナリ状態(論理的な1でプログラミングされているか否か)が決定される。他の実施形態において、メモリ装置は、電荷トラップのシリコン-酸化物-窒化物-酸化物-シリコン(SONOS)系セル、浮遊ゲートセル、R-RAMセル、M-RAMセルなどのシングルエンド検出の構成を採用する他の種類のNVMセルを含むことができる。
【0020】
システム400は、ローカル基準電圧発生器408を動作または制御するための基準電圧選択回路414をさらに含み、基準電圧選択回路414は、読み取られているブロック406に対して最適化された、アドレスに依存する基準電圧を提供する。本実施形態において、これらの回路は、メモリアレイ404内の全てのブロック406にわたって共通または実質的に同様であるベース基準電圧(VREF)設定をローカル基準電圧発生器408に提供するための構成回路416と、ローカル基準電圧発生器に調整基準VREFを提供するためのデジタル制御回路418と、を含む。以下、より詳細に説明するように、調整VREF設定により、ローカル基準電圧発生器408は、読み取られている特定のブロック406に対して最適化された、アドレスに依存する基準電圧を生成するために、ベース基準電圧と組み合わせるか、ベース基準電圧をオフセットするために使用される調整基準電圧を生成することができるようになる。
【0021】
一般的に、本実施形態のように、システム400はまた、デジタル制御回路418に結合されたアドレスバッファ420および不揮発性的な監視メモリ422も含む。アドレスバッファ420は、読み取られている(1つまたは複数の)NVMセルアドレスを受信し、デジタル制御回路418と通信し、デジタル制御回路が、読み取られている(要求された(1つまたは複数の)NVMセルが配置されている)ブロック406を特定することを可能にする。監視メモリ422は、調整基準電圧設定を生成するために、デジタル制御回路418によって使用される情報を保存する1つまたは複数のルックアップテーブルを含む。
【0022】
上述の
図4のシステム400の回路および要素は、別個のブロックとして示されているが、メモリ装置402を含むこれらの各回路および各要素は、図示されていないメモリ装置またはシステムの他の要素とともに、単一の半導体基板またはチップ上に一体形的に形成されているか、単一のマルチチップパッケージにおいてパッケージングされている、また、システムがメモリ装置と同じものを意味していてもよいことは自明であろう。
【0023】
図4のシステム400の回路および要素、ならびにそれらの動作を、
図5から
図9を参照しつつより詳細に説明する。
【0024】
図5は、多数のセグメントまたはブロック502に分割されたメモリアレイ500のブロック図であって、当該多数のセグメントまたはブロック502のために、アドレスに依存する基準電圧が提供される。各セグメントまたは各ブロック502は、メモリ装置(図示せず)内の列および行アドレスのデコーダによってアドレス指定することができ、また、メモリアレイ500内のメモリセルの列および行アドレスの範囲によって特定または画定される。例えば、メモリアレイ500は、十六(16)の256Kbサブアレイ504に分割された4Mbメモリアレイを含むことができ、各サブアレイは、1つまたは複数のブロック502を含む。各ブロック502に対してマージンスイープが実行され、また、最適化されたローカル基準電圧が各ブロック502に対して個別に決定される。これらのローカル基準電圧から、各ブロック502の適切な調整基準電圧とともに、メモリアレイ500全体またはメモリアレイ500内の全てのブロック502のためのベース基準電圧が決定される。
【0025】
追加的または代替的に、メモリアレイ500は、物理的に(論理的にではなく)多数の物理的に分離されたブロック502に分割することができ、個々のブロックのそれぞれには、1つまたは少数の個別のより小さいブロック502に結合された多数のローカル基準電圧発生器のうちの1つからのローカル基準電圧が提供される。
【0026】
図6Aから
図6Cを参照しつつ、以下、基準電圧発生器の実施形態を、より詳細に説明する。
図6Aは、ベース基準電圧(VREF)発生器または発生回路602およびオンザフライ調整VREF発生回路604を含む基準電圧発生器の実施形態の一部の詳細な概略図である。一般的に、基準電圧発生器は、バイナリグループ状に配置された金属酸化物シリコン(MOS)コンデンサのアレイを含み、当該コンデンサのそれぞれは、多数の第1のMOSスイッチ606を介して正の電圧供給または電圧源(Vdd)および負の供給電圧(Vss)または接地に結合されることによってコンデンサをプリチャージし、かつ、多数の第2のMOSスイッチ608を介して分配バス618に結合されることによってベースVREF発生回路602内のコンデンサ上の電荷を共有してベース基準電圧を生成する。コンデンサは、ベースVREF発生回路602と調整VREF発生回路604との間で分割される。コンデンサの総数は、VddおよびVssの値と、潜在的な基準電圧のために選択されたVddとVssとの間の増加電圧の数と、に依存する。同様に、ベースVREF発生回路602および調整VREF発生回路604内に含まれるコンデンサの数は、調整基準電圧のために選択されたVddとVssとの間の増加電圧の数に依存する。
【0027】
本実施形態によれば、ベースVREF発生回路602は、バイナリグループ状に配置された225の金属酸化物シリコン(MOS)コンデンサ603から成る第1のアレイを含む。要するに、単一のコンデンサ(X1)、2つのコンデンサのグループ(X2)、4つのコンデンサから成る第2のグループ(X4)などがあり、連続するグループごとにコンデンサの数が2倍になる。以下、詳細に説明するように、この構成の唯一の例外は、最大のセットまたはグループ(X113)が128ではなく113のコンデンサを有することであって、残りのコンデンサが調整VREF発生回路604内の15のコンデンサから成る第2のアレイ605に含まれていることによって、基準電圧のアドレスに依存する調整が容易になる。
【0028】
入力信号pVdd[0:7]およびpVss[0:7]は、ベースVREF発生回路602内のスイッチ606を制御することによって、コンデンサのセットをそれぞれVddまたはVssにプリチャージする。MOSコンデンサのバイナリ状の配置により、pVdd[0:7]およびpVss[0:7]信号によって提供されるベースVREFの設定の状態に基いて、1から255のコンデンサの個々のステップでコンデンサを増加的に制御することができる。pVdd[0:7]およびpVss[0:7]信号は、
図6Bに示されており、かつ、基準電圧発生器に含まれているような第1の論理回路610によって生成される。
図6Bによれば、プリチャージ信号(prch)が、第1および第2のANDゲート612、614の第1の入力に供給されている。次に、ベースVREF設定信号が構成回路(
図4の構成回路416)から第1のAND612ゲートの第2の入力に供給され、かつ、第1のインバータ616を介して第2のAND614ゲートの第2の入力に供給されることによって、それぞれpVdd[0:7]およびpVss[0:7]信号を生成する。
図6Bには第1の論理回路610が1つだけ示されているが、基準電圧発生器は、MOSコンデンサX1からX113の各グループに1つずつ、複数の論理回路を含むことを理解されたい。
【0029】
基準電圧発生器の設計の利点の1つは、コンデンサがVddまたはVssに確実にプリチャージされ、かつ、次のメモリサイクルの準備が整うまでに多少の時間がかかることに基く。そのため、pVdd[0:7]およびpVss[0:7]信号は、着信アドレスに基いてオンザフライで設定することができない。図示の設計で、これらの入力設定(pVdd[0:7]およびpVss[0:7])は、ベースVREF発生回路602がメモリアレイ内の全てのブロックに共通またはベース基準電圧を提供することができるように設定される。プリチャージステップの後に、共有信号によって制御されるスイッチ608を閉じることによって、ベースVREF発生回路602内の全てのコンデンサは互いに接続され、かつ、基準電圧発生器から出る分配バス618上に接続(電荷共有)される。
【0030】
調整VREF発生回路604は、それぞれがバイナリグループX1、X2、X4およびX8から成る、15のコンデンサの2セットから成る第2のアレイまたはブロックを含む。これらのコンデンサのセットまたはグループは、プリチャージ信号(prch)によって制御されるスイッチ620によってプリチャージされる。第1セットの15のコンデンサ全てはVddにプリチャージされ、第2セットの全てはVssにプリチャージされる。プリチャージステップの後に、これらの15のコンデンサのセットから選択されたグループは、sVdd[0:3]およびsVss[0:3]入力信号によって選択的に制御されるスイッチ622によって分配バス618上で共有される。sVdd[0:3]およびsVss[0:3]信号は、
図6Cに示されているような基準電圧発生器に含まれる第2の論理回路624によって生成される。
図6Cによれば、ベースVREF発生回路602内のコンデンサを分配バス618に結合するために使用されるのと同じ共有信号が、第3のANDゲート626の第1の入力に印加される。次に、デジタル制御回路418によって供給される調整VREF設定信号が、第3のANDゲート626の第2の入力に印加されることによってsVdd[0:3]信号を生成し、かつ、第2のインバータ628を介してsVss[0:3]信号を生成する。ここでも、
図6Cには第2の論理回路624が1つだけ示されているが、基準電圧発生器は、sVdd[0]からsVdd[3]までの信号およびsVss[0]からsVss[3]までの信号を生成するための複数の論理回路を含むことを理解されたい。
【0031】
当該設計の重要な特徴は、遅延なく分配バス618に選択的に共有される準備ができている、VddおよびVssにプリチャージされた15のコンデンサの完全なセットがあるため、sVdd[0:3]およびsVss[0:3]信号を着信アドレスに基いてオンザフライで変更できることである。
【0032】
図7は、
図6Aから
図6Cのローカル基準電圧発生器を検出回路に結合し、検出回路を介してメモリアレイ内のビット線(BL)に結合するための回路を示す概略図である。
図7によれば、回路700は、基準電圧発生器からの分配バス618をバスコンデンサ704に結合するための第1のMOSスイッチ702と、バスコンデンサを検出回路710内のステージングコンデンサ708に結合するための第2のMOSスイッチ706と、を含む。共有からバスへ(share-to-bus)の信号が第1および第2のMOSスイッチ702、706に印加またはアサートされている間に、基準電圧発生器のコンデンサアレイ上で発生した電荷がステージングコンデンサ708上で共有される。検出回路710は、ステージングコンデンサ708と、検出回路710内の比較器またはセンスアンプ(センスアンプ714)と、の間に結合された第3のスイッチをさらに含む。共有から基準へのBL信号(share-to-ref-BL)がアサートされている間に、および、一般的に共有からバスへの信号がアサート解除された後に、ステージングコンデンサ708上で共有される電荷によって生成されるアドレスに依存するローカル基準電圧がセンスアンプ714の基準ビット線(BL)入力に印加される。
図7の左側に示されている要素、すなわち、第1および第2のMOSスイッチ702、706、ならびにバスコンデンサ704は、ローカル基準電圧発生器または検出回路710の内側に含まれていてもよいことを理解されたい。
【0033】
図7には検出回路710が1つだけ示されているが、メモリ装置またはシステム(図示せず)は、一般的に、1からxまでの複数の検出回路を含むことができ、xは、読み取られるべきメモリアレイの各ブロック内のビット線(BL)の数に等しいことを理解されたい。
【0034】
以下、アドレスに依存するローカル基準電圧を生成するためのローカル基準電圧発生器に関する実施形態の動作を、
図6Aから
図6Cおよび
図7、ならびに、
図6Aから
図6Cおよび
図7に示されている信号のタイミング図を示す
図8を参照しつつ説明する。
図8によれば、動作は、調整VREF発生回路604内のコンデンサをプリチャージするためにt0からt1までの間でプリチャージ信号(prch802)をアサートすることから始まる。この時間の間に、ベースVREF設定または信号(ベースVREF[0:7]804)は静的であり、プリチャージ信号とともに論理回路610に結合され、ベースVREF発生回路602内のコンデンサをプリチャージするために信号pVdd[0:7]およびpVss[0:7]を生成する。時間t1において、プリチャージ信号がアサート解除され、時間t1とt2との間において、読み取られているブロック内のアドレスに基く調整VREF設定(adj.VREF[0:3]806)は、調整VREF発生回路604内の多数のコンデンサを分配バス618に選択的に共有するための準備として、第2の論理回路624に結合される。時間t2において、共有信号808がアサートされ、ベースVREF発生回路602内のコンデンサ上の電荷を分配バス618に共有するために第2のスイッチ608を閉じる。実質的に同時に、第2の論理回路624における第3のANDゲート626に印加される共有信号は、sVdd[0:3]信号およびsVss[0:3]信号を生成してスイッチ622を閉じ、調整VREF発生回路604内の選択されたコンデンサ上の電荷を分配バス618に共有する。時間t3において、共有信号がアサート解除され、スイッチ608および622が開く。時間t4から時間t5までの間に、共有からバスへの信号810がアサートされ、第1のスイッチ702および第2のスイッチ706を閉じ、かつ、基準電圧発生器のコンデンサアレイ上に発生した電荷をステージングコンデンサ708上で共有できるようにする。時間t6から時間t7までの間に、share-to-ref-BL信号812がアサートされ、ステージングコンデンサ708上で共有される電荷によって生成されるアドレスに依存するローカル基準電圧が、センスアンプ714の基準BL入力に印加されることを可能にする。
【0035】
図9Aおよび
図9Bの概略図を参照しつつ、以下、メモリアドレスに基いてルックアップテーブルからVREF調整値を取得し、かつ、オンザフライで基準電圧を調整またはトリムするための、基準電圧選択回路414とともに使用されるか、基準電圧選択回路414内に含まれるローカル基準電圧選択回路について説明する。
図9Aによれば、選択回路900は、調整信号902を、メモリアレイの各セグメントまたは各ブロックに対して事前に決定された調整値を含むベクターとして受信する。各セグメントは、調整のために同じ数のビットを使用する。ベクター信号は、セグメントのアドレスがメモリアレイに現れる順序で全ての調整値を連結したものである。調整信号またはベクターは、偶数調整値ルックアップテーブル904および奇数調整値ルックアップテーブル906に結合される。偶数調整値ルックアップテーブル904は、セグメントアドレスが偶数番号であるセグメントのみに関する、そのベクターの選択されたサブセットを保存する。奇数調整値ルックアップテーブル906は、セグメントアドレスが奇数番号であるセグメントのみに関する、そのベクターの選択されたサブセットである。live_segment_addr信号908は、アクティブにアクセスされているセグメントのアドレスを含むベクターとして受信される。当該信号は、トランザクションが起動されたとき、および、バーストトランザクションがセグメント間のアドレス境界をまたいだときのみに更新される。当該信号は、リセットにより消去されない限り、トランザクションの終わりに静的なままである。buffer_segment_addr信号910は、まだ起動されていないセグメントのアドレスを含むベクター信号として受信され、当該アドレスがアドレス源から選択回路900にまだ送信されている途中であるという点で、まだ完全な値ではないかもしれないが、値全体が選択回路によって一旦受信されると、常に利用可能になり、かつ静的なままになる。第1のマルチプレクサ912は、
図9Bに示されている選択回路の一部から受信されるlive_select信号914に基いて、live_segment_addrとbuffer_segment_addrとの間で選択し、かつ選択されたアドレスを出力する。バーストトランザクションは、バーストプログレスなどのデータフェーズの間にアドレスを自然と増加させる。バーストトランザクションを容易にするために、選択回路900は、受信されたcr_decrement信号918の状態に基いて、現在選択されているアドレスの後続アドレスを算出するための増加/減少ブロック916を含む。アサートされると、cr_decrement信号918は、後続アドレスがこのバーストトランザクションにおいて現在のアドレスからの減少動作であるべきことを示す。増加/減少ブロック916は、偶数調整値ルックアップテーブル904に結合された第2のマルチプレクサ920と、奇数調整値ルックアップテーブル906に結合された第3のマルチプレクサ922と、に後続アドレスを提供する。
【0036】
現在選択されているアドレスの最下位ビット(LSb)によって、そのセグメントが偶数または奇数とみなされるかが決定される。LSbは、第2および第3のマルチプレクサ920、922のセレクタとして使用される。LSbが0である場合、偶数調整値ルックアップテーブル904に結合された第2のマルチプレクサ920が現在のアドレスを選択し、LSbが切り捨てられた、選択されたアドレスがインデックスとして偶数調整値ルックアップテーブル904内に提供される。LSbが1である場合、偶数調整値ルックアップテーブル904に結合された第2のマルチプレクサ920が後続アドレスを選択し、LSbが切り捨てられた、選択されたアドレスがインデックスとして偶数調整値ルックアップテーブル904内に提供される。ルックアップの結果は、even_Vrefベクター信号924上に提供される。LSbが0である場合、奇数調整値ルックアップテーブル906に結合された第3のマルチプレクサ922が後続アドレスを選択し、LSbが切り捨てられた、選択されたアドレスがインデックスとして奇数調整値ルックアップテーブル906内に提供される。LSbが1である場合、奇数調整値ルックアップテーブル906に結合された第3のマルチプレクサ922が選択され、LSbが切り捨てられた、選択されたアドレスがインデックスとして奇数調整値ルックアップテーブル906内に提供される。ルックアップの結果は、odd_Vrefベクター信号926上に提供される。
【0037】
live_select信号914の状態は、
図9Bに示されている選択回路によって決定される。
図9Bによれば、test_scan_mode信号928は、選択回路900の動作モードを選択する。test_scan_mode信号928が1の場合、モードはテストスキャンモードであり、全てのフリップフロップ930、932が同期クロック信号を用いて動作し、機能パス内の他の全ての要素が動作しないことが想定される。test_scan_mode信号928が0の場合、選択回路900は動作モードであり、フリップフロップ930、932へのクロック信号は非同期であってもよい。第1のマルチプレクサ934は、test_scan_mode信号928に基いて、フリップフロップ930、932、および他の要素に伝達されるべきクロック信号を選択する。test_scan_mode信号928が1である場合、第1のマルチプレクサ934は、クロック信号のアクティブエッジが立下りエッジ上にある、同期されたclk_tc_ms_tileクロック信号936を伝達する。test_scan_mode信号928が0である場合、第1のマルチプレクサ934を通過する信号は、マクロ読み取り動作の開始を示すアクティブ読み取りストローブ信号(tc_ms_rd_strb_b1クロック信号940およびtc_ms_rd_strb_b0クロック信号942)の論理NOR938の結果である。第1のマルチプレクサ934の出力は、インバータ944を介して、test_scan_mode信号928によって有効にされたクロックゲーティングセル(scan_gater946)に伝達される。scan_gater946からの出力は、インバータ948によって反転され、スキャン制御/観測フリップフロップ930に提供され、選択回路900がスキャンモードで動作しているときにのみフリップフロップをトグルする。
【0038】
ローカルVREFルックアップ動作は、local_vref_en信号950によって有効にされ、当該信号は、クロックゲーティングセル(rd_gater952)を介してlive_selectフリップフロップ932へのクロック信号を有効にすることによって、live_select信号914を生成するために提供される制御信号である。rd_gater952は、第1のマルチプレクサ934を通過するクロック信号の反転を受信する。続いて、rd_gater952の出力は、出力の位相が第1のマルチプレクサ934を通過したクロックの位相と一致するようにインバータ954によって反転され、live_selectフリップフロップ932へのクロックは、local_vref_en信号950が1であるときにのみトグルする。local_vref_enable信号950が1であるときのtc_ms_rd_strb_b1信号940の立上りエッジまたはtc_ms_rd_strb_b0信号942の立上りエッジの場合、インバータ955を介して動作するフリップフロップ930のQ出力により、フリップフロップ932はそのD入力でデータを取り込み、したがって、live_select信号914上で、その時点で使用するべきアドレスがlive_segment_address信号908であることを示す。
【0039】
新しいトランザクションが開始されると、それは読み取りトランザクションであるか、またはそうではないかが判断され、読み取りトランザクションである場合は、アドレスフェーズを含むか、または含まないかが判断される。現在のトランザクションがアドレスフェーズを含まない読み取りトランザクションである場合、目的のアドレスはアドレスゼロであり、長さが1クロック周期のパルスであるtc_ms_opc_rcont信号956が受信され、当該信号は、ゼロの開始アドレスが、
図9Aに示されているbuffer_segment_addr信号910上に見出されることを示す。現在のトランザクションがアドレスフェーズを含む読み取りトランザクションである場合、長さが1クロック周期のパルスであるtc_ms_addr_ld1信号958が受信され、当該信号は、トランザクションの開始アドレスがbuffer_segment_addr信号910上に見出されることを示す。新しいトランザクションが読み取りトランザクションでない場合、tc_ms_opc_rcont信号956もtc_ms_addr_ld1信号958もアサートされず、トランザクションの開始アドレスはlive_segment_addr信号908上に見出される。
【0040】
tc_ms_opc_rcont信号956およびtc_ms_addr_ld1信号958が、ORゲート960による論理OR演算で組み合わされることによってreturn_to_buf_adr信号が生成され、当該信号は、インバータ962を介して反転され、ANDゲート966でアクティブローリセット信号(rst_tc_ms_tile_n964)と組み合わされる。結果として得られる論理ANDは、第2のマルチプレクサ968に入力され、選択されると、tc_ms_opc_rcont信号956またはtc_ms_addr_ld1信号958が受信される場合、live_selectフリップフロップ932を消去またはリセットする。ANDゲート966からの出力はまた、排他的ORゲート970においてNORゲート938からの出力とも組み合わされ、スキャン制御/観測フリップフロップ930へのデータ入力を提供する。スキャン制御/観測フリップフロップ930へのデータ入力は、次のように論理的に表現することができる:((NOT(return_to_buf_adr) AND rst_tc_ms_tile) XOR (tc_ms_rd_strb_b0 NOR tc_ms_rd_strb_b1))。その結果、900がスキャンモードで動作している場合、この回路への入力として使用される任意の信号で縮退故障を観測することができる。スキャン制御/観測フリップフロップ930の出力のリセット状態は0であり、また、test_scan_mode信号928が0である場合、live_selectフリップフロップ932へのD入力(インバータ955を介して動作するフリップフロップ930のQ出力から結合される)のデフォルト状態は1である。test_reset_control信号972は、アサートされると、後続のアクティブローリセット信号を非アクティブハイ状態に強制する。test_scan_modeが1である場合、第2のマルチプレクサ968は、test_reset_controlとrst_tc_ms_tile_n964との論理ORを選択する。test_scan_mode928が0である場合、第2のマルチプレクサ968は、rst_tc_ms_tile_n964と(NOT(return_to_buf_adr))との論理ANDを選択する。第2のマルチプレクサ968の出力はrst_local_async_nと呼ばれる。これは、アクティブローリセット信号をlive_selectフリップフロップ932に提供する。
【0041】
図10のフロー図を参照しつつ、以下、ベース電圧および調整電圧を決定し、アドレスに依存するローカル基準電圧を使用してメモリ装置またはシステムを動作する方法を説明する。
図10によれば、一般的に、この方法は、メモリ装置内のメモリアレイを各ブロックにおけるセルの行および列アドレスに基いて複数のブロックに分割することから始まる(1002)。上述のように、このことは、アレイを単に論理的に分割すること、またはアレイを物理的に分割することを含むことができ、これによって、各個々のブロックに、より大きなメモリアレイにおける1つまたは少数のブロックに結合された多数のローカル基準電圧発生器のうちの1つから最適化されたローカル基準電圧が提供される。当該分割は、より大きなメモリアレイを、それぞれが1つまたは複数のブロックを含む複数のサブアレイに論理的または物理的に分割することも含むことができる。
【0042】
次に、各ブロックに対して多数のマージンスイープが実行され、各ブロックに対して最適化されたローカル基準電圧が決定される(1004)。ローカル基準電圧は、ローカル基準電圧とブロックにおける最高の消去タームまたはUタームとの間の事前に決定または画定された最小マージン(Uマージン)を提供する電圧である。上述のように、消去タームまたはUタームは、一般的に統計的な変動の影響を受けにくく、時間的におよび温度に対してより安定していることが観測されているため、所定の最小マージンは、一般的に、ローカル基準電圧とブロックにおける最低のプログラムタームまたはPタームとの間のマージン(Pマージン)よりも実質的に小さくなるように選択される。
【0043】
マージンスイープとは、メモリアレイまたはブロックに印加される基準電圧を掃引または単調にかつ徐々に増加もしくは減少させ、読み取りと、プログラムまたはPタームと、消去またはUタームと、からのビット線信号または電圧を決定するためにメモリセルを繰り返し読み取ることを意味する。上述のように、プロセス、電圧および温度に起因して、異なるメモリセルを読み取ることにより、ビット線信号が統計的に変動することが予想される。特に、F-RAMにおいては、強誘電体コンデンサの強誘電体層の寸法または誘電率の変動により、PタームおよびUタームに統計的な変動が予想される。
【0044】
マージンスイープを実行するには、アレイまたはブロック全体がPターム(内部の1)に書き込まれ、メモリは、Pタームに予想される統計的な変動の最小値より低いレベルに設定された基準電圧を使用して読み取られる。この基準電圧において、100%がパスするべきであり、すなわち、全てのセルがプログラムまたはPタームであるとして正しく読み取られるべきである。基準電圧を段階的に上げていき、書き込みおよび読み取りを繰り返す。ある時点で、基準電圧がブロックにおける最低のPターム(P0)を上回り、関連するメモリセルが故障する、すなわち、当該メモリセルが消去またはUタームとして誤って読み取られる。基準電圧が増加するにつれて、ますます多くのプログラムイングされたセルが消去されたと誤って読み取られ、すなわち、(統計的な変動によって予想される)読み取りエラーが生ずる。Pタームのビットフェイルカウントを掃引された基準電圧の関数として示すグラフを作成することができる。所定数のビットフェイルカウント、または、Pタームの全てもしくは実質的に全てが故障した後に、当該プロセスは、消去されたタームまたはUタームをアレイまたはブロック全体に書き込み、基準電圧を、Uタームに予想される統計的な変動の最大値より高い最初の高電圧からより低い電圧まで掃引することによって繰り返され、基準電圧の関数としてのUタームビットフェイルカウントのグラフを作成する。これらの2つのグラフは、上述の
図2に示すように組み合わせることができる。最低のPターム(P0)と特定の基準電圧との間隔は、当該基準電圧のPマージンを示す。最高のUターム(U0)と基準電圧との間隔は、Uマージンを示す。
【0045】
次いで、アレイ全体のベース基準電圧が、前のステップで各ブロックに対して見つけられたローカル基準電圧から決定され、各ブロックのためにベース基準電圧からのオフセットに対する調整基準電圧を決定する(1006)。一実施形態によれば、ベース基準電圧は、ベース基準電圧をアレイ全体において最高の内部「0」またはUタームから事前に決定または画定された量だけ離れた電圧に設定することによって決定または選択される。次いで、調整基準電圧は、ブロックごとに見つけられたローカル基準電圧を実現または取得するために、各ブロックに対してベース基準電圧を調整しなければならない電圧を算出することによって決定することができる。このことにより、アドレスに依存する最終またはローカル基準電圧と、アレイ全体にわたって各ブロックの最高の内部「0」またはUタームと、の間に、一定またはほぼ一定のマージン(Uマージン)が生じる。さらに、当該マージンは、ローカル基準電圧と各ブロックの最低のプログラムタームまたはPタームとの間のマージン(Pマージン)よりも実質的に低いため、Pマージンも最大化される。
【0046】
次いで、各ブロックの調整基準電圧は、基準電圧発生器に結合された監視メモリにおけるルックアップテーブルに保存される(1008)。次に、ブロックのうちの1つにおけるメモリセルの読み取り動作中に、ベース基準電圧を生成し、読み取られているブロックの調整基準電圧をルックアップし、また調整基準電圧を生成しかつベース基準電圧と結合することにより、最終またはローカル基準電圧が生成される(1010)。最後に、ローカル基準電圧は、読み取られているメモリセルのビット線に結合されたセンスアンプの基準ビット線に結合または印加される(1012)。
【0047】
図11Aおよび
図11Bならびに
図12Aおよび
図12Bを参照しつつ、単一のグローバル基準電圧を使用して動作する従来のメモリシステムに対する、アドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作するメモリ装置またはシステムのメモリマージンの改善について説明する。
【0048】
図11Aおよび
図11Bは、十六の256Kbブロックに分割された4MbのF-RAMアレイを含み、単一のグローバル基準電圧を使用して従来通り動作するメモリ装置のメモリマージ結果を示す図である。
図11Aは、アレイにおける各ブロックの最低のPターム(P0)1102のグラフと、最高のUターム(U0)1104のグラフと、アレイにおける全てのブロックからの読み取りに使用される単一のグローバル基準電圧1106と、を示す。グローバル基準電圧は、アレイにおける最高のUターム(U0)または最低のPターム(P0)から固定されたオフセットとして選択することによる従来の方法によって選択される。本実施例によれば、グローバル基準電圧は、ここではブロック10内にあるものとして示されている最高のUタームから19mVの固定されたオフセットを有するように選択される。
図11Bは、単一のグローバル基準電圧1106を使用して従来通り動作するメモリ装置における各ブロックにわたって得られるPマージンおよびUマージンを示す。
図11Bにおいて、線1108はPマージンを表し、線1110はUマージンを表す。結果として得られるの最小、最大および平均のPマージンとUマージンとを以下の表1に示す。なお、単一のグローバル基準電圧を使用して動作すると、Pマージンが18mVと低くなり、このことは問題であるため、温度が上昇した場合にビットまたは読み取りの障害につながる可能性があり、メモリ装置の動作寿命を短縮する可能性がある。
【表1】
【0049】
図12Aおよび
図12Bは、本願明細書で説明する、アドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作した同じメモリ装置のメモリマージンの結果を示す図である。
図12Aは、アレイにおける各ブロックの最低のPターム(P0)1202と、最高のUターム(U0)1204と、十六(16)のアドレスに依存するローカル基準電圧1206と、の図を示す。上述のように、アドレスに依存するローカル基準電圧1206は、上述の方法を使用して決定される。つまり、ベース基準電圧は、アレイにおける最高のUターム(U0)から事前に画定されたオフセットに、すなわち、ブロック10のU0よりも19mV高く設定することによって決定され、16のセグメントのそれぞれの調整基準電圧を決定し、16のセグメントまたはブロックのそれぞれに対するローカル基準電圧を生成する。
図12Bは、アドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作するメモリ装置における各ブロックにわたって結果として得られるPマージン1208およびUマージン1210を示す。結果として得られる最小、最大および平均のPマージンとUマージンとを以下の表2に示す。なお、アドレスに依存するローカル基準電圧は、全てのセグメントまたはブロックにわたって実質的に一定のUマージンをもたらす。さらに、アドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作すると、最小のPマージンが63%増加し、平均のPマージンが33%増加することに留意されたい。
【表2】
【0050】
他の実施形態では、複数のブロックに分割され、かつ、ローカル基準電圧発生器を含むNVMセルのアレイを有するメモリ装置の不良ビットを修復するためのローカルVREFセグメント(LVS)修復方法が開示される。
【0051】
従来のグローバル修復方法では、アレイ内の全てのメモリセルにおいて最低のプログラムタームまたはPタームを有するビットまたはメモリセルは、アレイにおける以前使用されていないスペアのビットまたはメモリセルと置換されるか、アレイとともにダイまたはチップ上に製造される。簡単に言えば、修復および置換は、一般的に、アレイ内のワード線、プレート線およびビット線から置換されるべきメモリを分離するリンクを、ダイをパッケージングする前に開くことによって達成される。通常、置換されているメモリセルのものと同じワード線、プレート線およびビット線のうちの1つまたは複数に結合されて形成されているスペアメモリセルは、メモリ装置内の行および列デコーダを更新することにより、故障したメモリセルの代わりにアレイに結合され、故障したメモリセルにアドレス指定されたビットが代わりにスペアメモリセルに向けられる。
【0052】
グローバル修復方法は、単一の大きなアレイを有する、および/または、単一のグローバル基準を使用するメモリ装置にとって充分である。しかしながら、複数のブロックに分割された1T1Cセルのアレイを含み、かつ、上述のようなローカル基準電圧発生器を使用するメモリ装置では、最低のプログラムタームまたはPマージンの間のマージンは、ブロックまたはセグメント内の最低のプログラムタームまたはP0と、アドレスに依存するローカルVREFと、の差によって決定される。したがって、ローカルVREFは全てのローカルのブロックまたはセグメントにおいて同じでないため、アレイ全体において最低のプログラムタームまたはP0は、関連するセルまたはビットが最低のPマージンを有することを意味しない。そのため、複数のブロックを含むメモリ装置に対してグローバル修復方法を使用し、ローカル基準電圧発生器を使用すると、より低い基準を有する一部のセグメントでは過剰修復になり、また、より高い基準を有する一部のセグメントでは修復不足になる。
【0053】
対照的に、LVS修復方法では、プログラムタームのマージンまたはPマージンが事前に画定された値未満であるブロックまたはセグメント内に限って、最低のプログラムタームまたはPターム(P0)を有するビットが修復される。したがって、LVS修復方法を使用することにより、強いセグメントの過剰修復が回避され、弱いセグメントの修復不足が回避され、かつ、プログラムタームのマージンまたはダイのPマージンが最大化される。
【0054】
図13は、複数のブロックに分割された1T1CのNVMセルのアレイを含み、かつ、上述のローカル基準電圧発生器をさらに含むメモリ装置における不良ビットを修復するためのLVS修復方法の実施形態のフロー図である。
図13によれば、一般的に、当該方法は、メモリ装置内のメモリセルのアレイを、各ブロックにおけるセルの行および列アドレスに基いて複数のブロックに分割することから始まる(1302)。各ブロックに対して多数のマージンスイープが実行され、各ブロックに対して最適化されたローカル基準電圧が決定される(1304)。次に、ブロックにおいて最低のプログラムタームまたはP0を有するメモリセルとローカル基準電圧との間のマージンが事前に画定された最小値を下回るブロックが特定される(1306)。次いで、ブロックは、事前に画定された最小値を下回るマージンを有する特定されたブロック内の最低のプログラムタームまたはP0を有するメモリセルを分離し、その代わりに当該ブロック内でスペアメモリセルを結合することによって修復される(1308)。
【0055】
図14に示されたグラフを参照しつつ、以下、複数のブロックに分割された1T1Cセルのアレイを有するメモリ装置の不良ビットを修復するための従来のグローバル修復方法に対するLVS修復方法の利点および改良点を説明する。
図14のグラフは、修復されていないメモリ装置と、40ビットグローバル修復方法を使用して修復された当該メモリ装置と、LVS修復方法を使用して修復されたメモリ装置と、のPマージンを示す。
図14に示すグラフのデータは、十六(16)のアドレスに依存するローカル基準電圧を使用して動作される、十六の256Kbセグメントまたはブロックに分割された4MbのF-RAMアレイを使用して取得された。Pタームが故障したビットまたはメモリセルは、最初にグローバル修復方法を使用して修復され、LVS修復方法を使用して修復された。どちらの場合も、Uタームが故障したビットは、3ビットのグローバル置換を使用して修復された。
図14によれば、線1402は、各ブロックまたは修復されていないメモリ装置のブロックのPマージンを示している。線1404は、各ブロックまたはグローバル修復方法を使用して修復された同じメモリ装置のブロックのPマージンを示し、線1406は、各ブロックまたはLVS修復方法を使用して修復されたメモリ装置のブロックのPマージンを示す。その結果得られた平均のPマージン、最小のPマージン、最大のPマージンおよびメモリ装置のマージンを以下の表3に示す。なお、表3の全ての値は、ローカル基準電圧のVREFを単位として表示されている。さらに、メモリ装置のマージンは、メモリ装置内のブロックの最も制限的なPマージン、すなわち、最小のPマージンに実質的に等しいことに留意されたい。
図14を参照すれば、LVS修復方法を適用することによって、(Pターム1408によって示される)修復不足のセグメントが除去され、(Pターム1410によって示される)過剰修復が実質的に最小化されることが分かる。表3を参照すれば、LVS修復方法を使用して修復されたメモリ装置のPマージンは、グローバル修復方法と比較して(44から49VREF単位へ)11%改善されることが分かる。
【表3】
【0056】
以下、各ブロックまたはセグメントで独立したn段階のPマージン二分探索を遂行することによって1T1CのF-RAMのLVS修復を実行する方法について説明する。この方法では、次のステップに進む前に、n段階のPマージン二分探索の各ステップが全てのセグメントにおいて実行される。最終的な修復解決は、修復不足のセグメントがなく、セグメントの過剰修復が最小限に抑えられるために最終ステップにおいて取得される。
【0057】
LVS修復を実行する前に、次の3つの値を決定する必要がある。
1.各セグメントの最高のUターム(U0)。この値は、修復中に各LVSの開始点として使用され、かつPマージンの算出に使用される。
2.事前に画定された最小の1T1Cマージン制限(P0-U0)。これは、信頼性と歩留まりの評価とに基く。特定の部分に対して修復解決が見つからない場合は、これらの部分は拒否される。最小の1T1Cマージン制限(P0-U0)により、合格した部分の信頼性が保証される。
3.事前に画定されたPマージン探索範囲。これは、装置のPマージン分布の統計が分布の6シグマを含むことに基く。探索範囲によって探索ステップの数が決まる。例えば、25すなわち32および26すなわち64VREF単位の探索範囲の二分探索を実行するには、それぞれ5および6の探索ステップが必要とされる。
【0058】
一般的に、修復探索はVREF=U0+マージン制限+Nステップの二分検索の最初の間隔から開始される。最初の間隔は、二分探索範囲の中間点に相当する。各間隔で、全てのセグメントに対して修復が試行される。特定の間隔は、全てのセグメントが修復可能である場合にのみ修復可能とみなされる。以下、5段階の二分探索が説明の目的で用いられる。この例では、8セグメントから成る装置のU0に対して次の値が用いられる。
【表4】
【0059】
1T1Cマージン制限(P0-U0)は事前に画定されているか、32VREF単位に設定されており、二分探索範囲は32VREF単位に設定されている。したがって、この例では5段階の二分探索が必要とされる。最初の間隔において、VREF=U0+32での各セグメントの修復が試行される。成功した場合、2番目の間隔は最初の間隔に8を加算することによって算出される。失敗した場合、2番目の間隔は最初の間隔から8を減算することによって算出される。
【0060】
VREF=U0+32+2番目の間隔で各LVSの修復が試行される。成功した場合、3番目の間隔は2番目の間隔に4を加算することによって算出される。失敗した場合、3番目の間隔は2番目の間隔から4を減算することによって算出される。このシーケンスはさらに2つの間隔分続く:±2および±1。修復可能な最高のVREFで決定された修復解決が装置に保存される。
【0061】
以上、本発明の実施形態が、当該実施形態に関する特定の機能および関係性の実装を示す機能ブロック図および概略ブロック図を用いて説明された。これらの機能構成ブロックの境界は、説明の便宜上、本願明細書において任意に画定された。当該実施形態に関する特定の機能および関係性が適切に実行される限り、他の境界を画定することができる。
【0062】
特定の実施形態に関する前述の説明は、本発明の一般的な性質を充分に明らかにするため、他人が、当業者が有する範囲の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなく、かつ本発明の一般的な概念から逸脱することなく、特定の実施形態を様々な用途のために容易に変形および/または適応することができる。そのため、このような適応および変形は、本明細書で提示されている教示およびガイダンスに基いて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲に含まれることが意図される。本願明細書の語句または用語は、説明を目的としておりかつ限定的なものではなく、本願明細書の用語または語句は、当業者により教示およびガイダンスと照らし合わせながら解釈されるべきであることを理解されたい。
【0063】
概要および要約のセクションではなく、詳細な説明のセクションが特許請求の範囲を解釈するために用いられることを意図していることを理解されたい。概要および要約のセクションは、(一人または複数の)発明者がもくろむ、本発明の全てではないが1つまたは複数の例示的な実施形態を記載することがあり、したがって、本発明および添付の特許請求の範囲を限定するものとして意図されていない。
【0064】
本発明の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれかによっても限定されるべきでなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ画定されるべきである。