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特許7583183ジベンゾイルメタン副構造を有する光開始剤樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ジベンゾイルメタン副構造を有する光開始剤樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20241106BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20241106BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20241106BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20241106BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20241106BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20241106BHJP
   C07C 69/738 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F4/00
C08F20/00
C08J7/04 CEY
C09D11/101
C09D4/02
C09J4/02
C07C69/738 Z
【請求項の数】 57
(21)【出願番号】P 2023550120
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022054975
(87)【国際公開番号】W WO2022180269
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】63/154,089
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/281,211
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506397202
【氏名又は名称】サン ケミカル ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディエカー、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】マエシング、フロリアン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-151691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296485(US,A1)
【文献】特表2021-522360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08J
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
i)2つ以上の活性メチレン水素及び少なくとも2つの任意に置換されたベンゾイル部分を含み、ジベンゾイルメタン、置換ジベンゾイルメタン誘導体またはそれらの組合せである、1つまたは複数の芳香族マイケル付加ドナー材料と、
ii)単官能性、二官能性、三官能性、または多官能性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びハロゲン化有機酸またはエステルからなる群から選択される、1つまたは複数のマイケル付加アクセプター材料と、
の反応生成物であって、
相乗剤と組み合わせて使用される場合、フリーラジカル重合反応を開始することができる、前記反応生成物;ならびに
b)アミン、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される相乗剤
を含む、キットであって、
前記反応生成物a)及び前記相乗剤b)が単一の組成物に組み込まれるか、または前記反応生成物a)及び前記相乗剤b)が別々の組成物中にあり、前記反応生成物中に存在する各マイケル付加ドナー材料由来部分は、単一のマイケル付加アクセプター由来部分に共有結合している、
前記キット。
【請求項2】
前記反応生成物a)及び前記相乗剤b)が単一の組成物に組み込まれる、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記ハロゲン有機酸またはエステルが、α-炭素原子上にハロゲン置換基を有するカルボニル基を含む、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記ベンゾイル部分が少なくとも1つのアミノ置換基で置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記ベンゾイル部分が少なくとも1つのフェニル置換基で置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
ケト型である場合、前記反応生成物が、前記マイケル付加ドナー材料のメチレン基に由来する部分上に1つの水素置換基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記マイケル付加ドナー材料が、1-(4-ビフェニリル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオンである、請求項1~6のいずれか1項に記載のキット。
【請求項8】
前記マイケル付加アクセプター材料が、前記マイケル付加ドナー材料と反応することができる2つ以上の官能基を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
前記マイケル付加アクセプター材料が、単官能性、二官能性、三官能性、多官能性(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せである、請求項1~8のいずれか1項に記載のキット。
【請求項10】
前記反応生成物が、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド基から選択される、共有結合した少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のキット。
【請求項11】
前記相乗剤が、三級アミン、アミノアクリレート、またはそれらの組合せからなる群から選択されるアミン相乗剤である、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記相乗剤が1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)ではない、請求項1~11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
前記相乗剤が、アルカノールアミン、アミノアクリレート、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載のキット。
【請求項14】
前記マイケル付加アクセプター材料が、アミノ(メタ)アクリレートまたはアミノ(メタ)アクリルアミドである、請求項1~13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
前記マイケル付加アクセプター材料がジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)である場合、それはアルコキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)である、請求項1~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
前記反応生成物a)が式1の化合物であり、前記式1の化合物は、次式のケト及びエノール互変異性形態を含み、
【化1】

式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐のC~C12アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルコキシ基、及びC~C10アリールからなる群から選択され;
p及びqは独立して0~5の整数であり;
は、直鎖または分岐C~C12アルキル、C~C12アルコキシからなる群から選択され;
Zは、エステル官能基が生じるO、またはアミド官能基が生じるNHのいずれかであり;
は、以下:
a)任意に少なくとも1つのCH単位が-O-によって置換されて、少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;
b)任意にCH単位が-O-で置換されて、少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;
c)任意に、CH単位が-O-によって置換されて複素環を生じる、C~C12-シクロアルキル;
d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;
e)C~C12-アルコキシ基;
f)ヒドロキシル基;
g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;
h)アミド基;
i)Yがヒドロキシル基、-OR基またはSR基を表し、RがC~Cアルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;
j)H;
からなる群から選択され、
rは存在する末端(メタ)アクリレート基の数に関係し、0~10の整数であり、
式中、RはHまたはメチルのいずれかであり、
式中、sは、存在するジベンゾイルメタン由来部分の数に関係し、1~10の整数である、
請求項1~15のいずれか1項に記載のキット。
【請求項17】
及びRが、それぞれ独立して、ジアルキルアミノ及びC~C10アリールからなる群から選択される、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記反応生成物a)が式2の化合物であり、
【化2】

式中、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐のC1~C12アルキル、C3~C6-シクロアルキル、C1~C12-アルコキシ基からなる群から選択され、
p及びqは0~5の整数であり、
は、C1~C12アルキル、C1~C12アルコキシからなる群から選択され、
Zは、エステル官能基をもたらすO、またはアミド官能基をもたらすNHのいずれかであり、
は、以下:
a)任意にCH単位が-O-によって置換されて、ポリエーテル鎖を生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;
b)任意にCH単位が-O-で置換されて、ポリエーテル鎖を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;
c)任意に、CH単位が-O-によって置換されて複素環を生じる、C3~C12-シクロアルキル;
d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;
e)C1~C12-アルコキシ基;
f)ヒドロキシル基;
g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;
h)アミド基;
i)Yがヒドロキシル基、-OR基またはSR基を表し、RがC1~C4アルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;
からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを表し、
任意にr個の末端メタ(アクリレート)官能基を有し、これは、rが0~10の整数であることを意味する、
請求項1~17のいずれか1項に記載のキット。
【請求項19】
sが1~5の整数である、請求項16に記載のキット。
【請求項20】
がHである、請求項16または19のいずれか1項に記載のキット。
【請求項21】
が、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基であり、任意に少なくとも1つのCH単位が-O-で置換されて、前記鎖中に少なくとも1つのエーテル結合が生じる、請求項16~20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
が、1個~200個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基であり、少なくとも2個のCH単位が-O-で置換されてポリエーテル鎖を生じる、請求項16~21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
r≧1である、請求項16~22のいずれか1項に記載のキット。
【請求項24】
が、メチル(-CH-)、エチル(-CH-CH-)基またはイソプロピル基を表す、請求項16~23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
前記R基がヒドロキシル及びアミンによる置換を含む、請求項16~24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項26】
が、1~200個の炭素原子を含有する、任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基である、請求項16~25のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
r≧3の場合、Rが、少なくとも2つの繰り返し単位を含有する、任意に置換された直鎖または分岐ポリエーテル鎖である、請求項16~26のいずれか1項に記載のキット。
【請求項28】
前記反応生成物中のマイケルドナー材料とマイケルアクセプター材料とのモル比が1:1~6:1である、請求項1~27のいずれか1項に記載のキット。
【請求項29】
前記相乗剤が、650gmol-1未満の分子量を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載のキット。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか1項に記載の反応生成物a)と、相乗剤と、を含む放射線硬化性インク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物。
【請求項31】
前記相乗剤が任意の水素ドナーであり、任意に、前記相乗剤が、アミン、エーテル、エステル、チオール、アルコール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項32】
1つまたは複数の単官能性、二官能性、三官能性、または多官能性(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せを含む、請求項30または31に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の前記(メタ)アクリレートが、
a)モノマー及び/またはオリゴマー;及び/または
b)ポリエステルアクリレート及び/またはメタクリレート
である、請求項30~32のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項34】
7重量%以下の1つまたは複数の追加の光開始剤を含む、請求項30~33のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項35】
前記1つまたは複数の追加の光開始剤が、分割(ノリッシュI型)光開始剤または増感剤を含む、請求項34に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項36】
最大15重量%の水を含む、請求項30~35のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項37】
顔料、着色剤、またはそれらの組合せを更に含む、請求項30~36のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項38】
前記相乗剤が、請求項1~28のいずれか1項に記載の相乗剤であり、任意に、前記相乗剤が前記組成物中に5~15重量%の量で存在する、請求項30~37のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項39】
本発明で使用するための前記反応生成物が、0.1~30重量%の量で存在する、請求項30~38のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項40】
前記1つまたは複数の単官能性、二官能性、三官能性、または多官能性(メタ)アクリレートが、30重量%~90重量%の量で存在する、請求項32~39のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項41】
本発明で使用するための前記反応生成物が、共有結合した少なくとも1つの重合性(メタ)アクリレート基を更に含む、自己硬化性である、請求項30~40のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項42】
本発明で使用するための前記反応生成物が、30重量%~90重量%の量で前記組成物に組み込まれる、請求項41に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項43】
EITからのPower Puck IIによって測定して500mJ/cm未満のUV線量(UV-A、UV-B及びUV-C照射の和)によって硬化可能である、請求項30~42のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
【請求項44】
インクまたはコーティング組成物である、請求項30~43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
UVフレキソインク、UVインクジェットインク、UVグラビアインクまたはUVオフセットインクである、請求項30~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
請求項30~45のいずれか1項に記載の硬化インク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物を含む印刷基材。
【請求項47】
食品用の包装物品である、請求項46に記載の印刷基材。
【請求項48】
印刷され硬化されたインク膜を提供するためのプロセスであって、請求項30~45のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物を基材上に適用することと、前記インクまたはコーティングを硬化させることとを含む、前記プロセス。
【請求項49】
硬化が、200nm~450nmの領域の放射線への曝露時に行われる、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
硬化が、レーザー、UV発光ダイオード(UV-LED)、水銀電球またはドープされた水銀電球によって放射されるUV光に曝露されると実行される、請求項48または49に記載のプロセス。
【請求項51】
前記得られた硬化したインクまたはコーティング膜が、10ppm未満の抽出可能物を含む、請求項48~50のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項52】
前記インクまたはコーティングが、500mJ/cm以下のUV線量で硬化される、請求項48~51のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項53】
a)請求項1、4~5、又は7のいずれか1項に記載の前記マイケル付加ドナー材料を、請求項1、3、8~9、又は14~15のいずれか1項に記載の前記マイケル付加アクセプター材料と反応させて、請求項1、2、6、10、又は16~28のいずれか1項に記載の前記反応生成物を得る工程と、
b)更なる成分を添加する工程と、次いで
c)前記成分を一緒に混合して、前記インク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物を製造する工程と、
を含む、請求項30~45のいずれか1項に記載のインク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物を製造する方法。
【請求項54】
前記更なる成分が、重合性モノマー及び/またはオリゴマーを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
工程a)が工程b)の前に行われる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
工程b)が、工程a)の前に、または工程a)と同時に行われる、請求項53または54に記載の方法。
【請求項57】
基材を印刷またはコーティングする方法における、請求項30~45のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願US63/154,089及び米国仮出願US63/281,211の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、エチレン性不飽和モノマーを硬化するための光開始剤組成物の分野に関する。本発明はまた、移行性が低く、したがって食品包装等の敏感な用途での使用に適したII型光開始剤に関する。本発明はまた、本発明の組成物が光開始剤として使用される場合を含み、自己硬化組成物も含む、それから作製される重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
化学線(UV、UV-C、EB、UV-VIS)により硬化可能な(メタ)アクリロイル基を1個または複数個有する樹脂を含有する光硬化性組成物は、硬化速度が速いこと、省エネルギー性、低揮発性有機化合物(VOC)、及び得られる製品の高品質等の利点のために、塗料、印刷インク、成形品、及び接着剤の分野で広く用いられている。この硬化システムでは、一般に、アクリロイル基含有樹脂とともに1つまたは複数の光開始剤(PI)が使用される。光開始剤は照射されるとフリーラジカルを生成し、これにより(メタ)アクリロイル基のフリーラジカル重合が開始され、樹脂が硬化する。
【0004】
フリーラジカルを生成するには、まず光開始剤が光源からのエネルギーを吸収しなければならない。ほとんどの市販の光開始剤は、200nm~400nmのUV領域のエネルギーを吸収し、励起種を形成するのに十分なエネルギーを吸収できる。これを効率的に行う発色団の1つは、アリールケトン基である(“Industrial Photoinitiators-A Technical Guide,CRC Press,2010,page 18ffを参照されたい)。本出願の文脈において、発色団とは、上述のUV領域で吸収できる部分を指す。
【0005】
印刷インクまたはコーティングのフリーラジカル硬化での使用に適した光開始剤は、次の2つの主要なグループを含む。
【0006】
i.ノリッシュI型光開始剤は、照射されると、均一結合開裂を介して分解して、アクリレート及びメタクリレート等のビニル含有モノマーのラジカル連鎖反応を直接開始するラジカルを与える。I型光開始剤の代表的な例には、α-ヒドロキシルアセトフェノン及びα-アミノアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体が含まれる。これらの化合物の化学構造は、Ar-C=O基に隣接する四置換炭素原子(すなわち、水素置換基を含まない炭素原子)を含む。C=O-基とα-炭素原子間の効率的な光化学的開裂によりラジカルが形成され、重合性成分(モノマーまたはポリマー)の二重結合が付加され、重合が開始される。I型開始剤の例は、US7407707B2、US7232540及びUS7291658B2に開示されている。記載されている化合物は、脂肪族ベータ-ケトエステル、ベータ-ジケトン(例えば、2,4-ペンタンジオン)、及びマイケル付加反応に関与し得るその他のベータ-ジ-カルボニル化合物とのアクリレートモノマー及びオリゴマーのマイケル付加によって形成される。マイケル付加ドナー成分上のベンゾイル部分を欠き、マイケルドナーのメチレン炭素原子に由来する部分上に2つの置換基を含む開示された生成物は、アセチルラジカルを介した光開裂(すなわち、分割)タイプの機構を受ける。
【0007】
I型光開始剤を含む上述の放射線硬化系には、いくつかの問題がある。たとえば、未反応の光開始剤及びそれらの開裂生成物が硬化コーティング内に残る可能性があり、それらが表面に移動し、隣接する材料を汚染する可能性がある。未反応の光開始剤とその開裂生成物が移動し、食品を汚染する可能性があるため、これは食品の包装用コーティングの場合に特に問題となる。更に、光開始剤残基、例えばベンゾフェノン等の芳香族残基及びベンズアルデヒド等の揮発性開裂生成物は、光開始剤の光誘起ホモリシス開裂によるラジカル形成/開始中に形成される。これらの切断生成物は、硬化製品の品質に悪影響を与える臭気を有する可能性があるため、食品の包装には望ましくない。
【0008】
ii.ノリッシュII型光開始剤は本質的に光増感剤であり、例えばベンゾフェノンまたはチオキサントン部分を含み、UV光を吸収して電子を基底状態から励起三重項状態に励起する。三重項状態それ自体はモノマーのラジカル重合を開始するのに十分な反応性を持たないが、その代わりに相乗剤、例えば三級アミン等のアミンの存在を必要とする。相乗剤の存在下では、相乗剤(窒素上の非共有電子対等)から励起三重項状態への電子移動が起こり、その後プロトンが引き抜かれてラジカル種、例えばα-アミノアルキルラジカルを形成し、モノマーのラジカル、連鎖成長、重合を開始させるのに十分に反応性である。相乗剤が存在しない場合、励起三重項状態は崩壊して基底状態に戻り、初期分子が生成され、重合は開始されない。
【0009】
I型光開始剤に対するII型光開始剤の利点は、光開裂(すなわち、分割)生成物が存在しないことである。したがって、II型光開始剤は、光切断生成物が存在しないことで移行性成分の量を減らすことができる、敏感なパッケージング用途での使用に適している。しかし、II型タイプの光開始剤であっても、移動性種、特に低分子量の種が存在する可能性がある。更に、ベンゾフェノンまたは4-フェニルベンゾフェノン等のその誘導体等、低分子量の多くのII型光開始剤及び光増感剤、ならびにエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2-エチルヘキシル-4-ジメチル-アミノ-ベンゾアート等の相乗剤は、深刻な健康上の問題を引き起こす疑いがある。実際、これらの種の一部は発がん性の可能性があるものとして再分類されており、これらの小分子は移動性も高く、移動する傾向が高いという事実と相まって、これらの化合物は、特にデリケートな包装(食品等)用の包装及び印刷用途での使用には適していないことを意味する。
【0010】
移行可能な種の問題を克服するために提案された1つの解決策は、それらの高分子量に起因して、光分解生成物(及びさもなければ低分子量である追加の種)の移行を減少させ、したがって臭気も減少させる光開始剤(複数可)をオリゴマーまたはポリマーにすることである。提案されている別の解決策は、光硬化性アクリロイル基含有樹脂系を提供することである。しかし、小分子PIを高分子種にするには、精製工程を含む追加の合成工程が必要となり、そのような光開始剤の製造コストが増加し、特定の用途には不向きになる。更に、PIをポリマーまたは反応性にするために必要な化学修飾のいくつかは、それらが組み込まれるインク及びコーティングのリソグラフィー特性及び/または接着特性、ならびにこれらの光開始剤の吸収スペクトルに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
US7446230B2は、光活性化可能な日焼け止めとして使用されるジベンゾイルメタン(DBM)ベースの化合物及びそれを含有する化粧品組成物に関する。WO2020249760は、DBMのマイケル付加反応を含む、アスタシンプロテイナーゼのヘテロ芳香族阻害剤の調製に関する。CN103806120は、DBMとヘキサンジオール-ジアクリレート(HDDA)の付加物を含むエルビウム錯体に由来する蛍光特性を有するエレクトロスピニングされたナノファイバーの調製に関する。
【0012】
酸性水素の置換を伴うヨウ化メチルまたは1-ブロモデカンとの反応による、アボベンゾンのメチレン炭素に由来する部分のモノ付加物(DBM誘導体)の合成及び評価は、それぞれ、Miranda et al(Photochemistry and Photobiology,2009,85,178-184)及びF.Wetz and I.Rico-Lattes et al in J.Cosmet.Sci.56,2005,135-148によって記載される。どちらの論文も、化合物のUV吸収安定性に関する。エチレン性不飽和化合物の光開始剤としての付加物の使用は開示されておらず、また当該付加物とアミン等の相乗剤との組合せも開示されていない。
【0013】
アセチルアセトン(すなわち、フェニル基を持たない1,3-ジケトン)及びそのアクリレート付加物がPIとして使用されている。しかしながら、そのような化合物は、発色団を含まないので、インクに使用することができない。したがって、そのような化合物は、本発明の化合物の機構(ノリッシュII型のPI)とは異なる開始機構(ノリッシュI型のPIの分割)をUV-C光によって引き起こす。更に、それらの低い(モル)吸光係数のために、アセチルアセトン系化合物は透明なコーティングでのみ機能し、インクでは機能しない。これは、スペクトルのUV-Vis領域の光を吸収する顔料等が組成物中に存在すると、開始剤に入射する光の量が減少し、アセチルアセトン系化合物等の吸光係数の低い脂肪族種に対する活性が失われるためである。更に、これらの化合物は酸素によって強く阻害され、したがって、高速印刷機で典型的に利用可能な標準UV条件下(すなわち、UV線量=100~150mJ/cm2)で完全な表面硬化をもたらさない。更に、アクリレートを有するアセチルアセトン付加マイケル付加物は、多くの場合二置換されており、これは、1,3-ジケトン官能基間のメチレン炭素上の両方の酸性水素のアクリレート置換から生じる。
【0014】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)とDBMとのマイケル反応は、US9340644B2に記載されている。しかし、請求項1に記載のインクまたはコーティング配合物、すなわち相乗剤も含むインクまたはコーティング配合物の開示はない。その代わりに、US9340644B2は主に、脂肪族β-ジカルボニル化合物(ドナー)と多官能性アクリレートDPHA(アクセプター)とのマイケル反応生成物を対象としている。酸性α-水素の1つのみがアクリレートアクセプターと反応するDBMとは対照的に、脂肪族β-ジカルボニル化合物中の両方の酸性α-水素は(メタ)アクリレートアクセプターと反応し、その結果、β-ジカルボニル化合物は二置換され、DPHA等の多官能性アクリレートの架橋剤として作用し得る。更に、上で議論したように、脂肪族β-ジカルボニル化合物の二置換から形成される反応生成物は、I型(分割)光開始剤である。したがって、US9340644B2は、II型光開始剤としてのマイケル付加生成物の使用には関係しておらず、従って、これらのタイプの光開始剤による重合を開始するために必要とされる(アミン)相乗剤を含む配合物を開示していない。更に、より低いUV線量の使用も開示されていない。
【0015】
したがって、モノマーまたはオリゴマーの重合を開始するのに適した新しい化合物が常に求められている。特に好ましいのは、毒性が低い構造である。更により好ましいのは、硬化性組成物のポリマー主鎖に共有結合することができる光硬化性アクリロイル基含有樹脂系を提供する構造であり、これにより光開始剤の移行が更に低減される。更に、化学線で処理したときに光開裂性化合物を生成しない新しい構造が必要である。光開始剤は、理想的には電子硬化性(EC)コーティング、UVインク及び接着剤、及びUV-LED用途での使用に適しているべきである。
【0016】
したがって、本発明の目的は、低毒性の化合物から作製されたベンゾフェノン系光開始剤及び光増感剤の代替物を提供することであり、これは、オリゴマーベンゾフェノン等のベンゾフェノンを含む組成物と比較して、硬化時に移動可能な種の量が減少した光硬化性樹脂を提供する。本発明の組成物は、365~395nmの波長で発光するUV-LEDデバイスに適している可能性がある。
【0017】
本発明の更なる目的は、構造中にベンゾフェノン部分を含まずに、優れた感光性を示し、開始硬化性コーティング及び接着剤の放射線に使用可能な光開始剤を提供することである。本発明の組成物は、低移行性用途で使用するための化学線照射により硬化可能なインク、コーティングまたは接着剤等の用途に使用することができる。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、芳香族及び/または脂肪族アミン化合物等の相乗剤化合物を、マイケルドナーとマイケルアクセプターとの付加生成物、及び(メタ)アクリレート官能基を任意に含む樹脂と組み合わせて含む、光硬化性化学組成物を提供する。
【0019】
本発明は、a)i)2つ以上の活性メチレン水素及び少なくとも2つの任意に置換されたベンゾイル部分を含む1つまたは複数の芳香族マイケル付加ドナー材料と、ii)単官能性、二官能性、三官能性または多官能性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びハロゲン化有機酸またはエステルからなる群から選択される1つまたは複数のマイケル付加アクセプター材料と、を含む、反応生成物であって、相乗剤と組み合わせて使用される場合、フリーラジカル重合反応を開始することができる、反応生成物と、b)アミン、エーテル、エステル、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される相乗剤と、を含むキットであって、反応生成物a)及び相乗剤b)が単一の組成物に組み込まれるか、;または反応生成物a)及び相乗剤b)が別々の組成物中にある、キットを提供する。
【0020】
本発明は更に、a)式1の化合物と、b)アミン、エーテル、エステル、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される相乗剤と、を含むキットを提供し、ここで、式1の化合物a)及び相乗剤b)は、単一の組成物に組み込まれるか、または式1の化合物a)及び相乗剤b)は別個の組成物中にある。式1の化合物は、以下のケト及びエノール互変異性体を含む:
【化1】

及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐のC~C12アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルコキシ基、及びC~C10アリールから選択される。p及びqは、独立して、0~5の整数である。Rは、直鎖または分岐のC~C12アルキル、C~C12アルコキシからなる群から選択される。Zは、エステル官能基をもたらすO、またはアミド官能基をもたらすNHのいずれかである。
は、
a)任意に少なくとも1つのCH単位が-O-によって置換され、少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;b)任意にCH単位が-O-で置換され、少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;c)任意に、CH単位が-O-によって置換されて複素環を生じる、C~C12-シクロアルキル;d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;e)C~C12-アルコキシ基;f)ヒドロキシル基;g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;h)アミド基;i)Yがヒドロキシル基、-OR基またはSR基を表し、RがC~Cアルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;j)Hからなる群から選択され、rは存在する末端(メタ)アクリレート基の数に関係し、0~10の整数である。Rは、Hまたはメチルのいずれかである。sは、存在するジベンゾイルメタン由来の部分の数に関係し、1~10の整数である。
【0021】
本発明はまた、反応生成物a)及び相乗剤を含む放射線硬化性インク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物を提供する。本発明はまた、式1の化合物a)及び相乗剤を含む放射線硬化性インク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物を提供する。

本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
a)
i)2つ以上の活性メチレン水素及び少なくとも2つの任意に置換されたベンゾイル部分を含む1つまたは複数の芳香族マイケル付加ドナー材料と、
ii)単官能性、二官能性、三官能性、または多官能性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びハロゲン化有機酸またはエステルからなる群から選択される、1つまたは複数のマイケル付加アクセプター材料と、
の反応生成物であって、
相乗剤と組み合わせて使用される場合、フリーラジカル重合反応を開始することができる、前記反応生成物;ならびに
b)アミン、エーテル、エステル、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される相乗剤
を含む、キットであって、
前記反応生成物a)及び前記相乗剤b)が単一の組成物に組み込まれるか、または前記反応生成物a)及び前記相乗剤b)が別々の組成物中にある、
前記キット。
[2]
前記反応生成物a)及び前記相乗剤b)が単一の組成物に組み込まれる、[1]に記載のキット。
[3]
前記ハロゲン有機酸またはエステルが、α-炭素原子上にハロゲン置換基を有するカルボニル基を含む、[1]または[2]に記載のキット。
[4]
前記マイケル付加ドナー材料が、ジベンゾイルメタン、置換ジベンゾイルメタン誘導体またはそれらの組合せである、[1]~[3]のいずれかに記載のキット。
[5]
ケト型である場合、前記反応生成物が、前記マイケル付加ドナー材料のメチレン基に由来する部分上に1つの水素置換基を含む、[4]に記載のキット。
[6]
前記反応生成物中に存在する各マイケル付加ドナー材料由来部分が、単一のマイケル付加アクセプター由来部分に共有結合している、[4]または[5]に記載のキット。
[7]
前記マイケル付加ドナー材料が、1-(4-ビフェニリル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオンである、先行のいずれかに記載のキット。
[8]
前記マイケルアクセプター材料が、前記マイケル付加ドナー材料と反応することができる2つ以上の官能基を含む、先行のいずれかに記載のキット。
[9]
前記マイケル付加アクセプター材料が、単官能性、二官能性、三官能性、多官能性(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せである、先行のいずれかに記載のキット。
[10]
前記反応生成物が、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド基から選択される、共有結合した少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和基を含む、先行のいずれかに記載のキット。
[11]
前記相乗剤が、三級アミン、脂肪族アミノアクリレート等のアミノアクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミノベンゾエート、アルカノールアミン、またはそれらの組合せからなる群から選択されるアミン相乗剤である、[10]に記載のキット。
[12]
前記相乗剤が1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)ではない、先行のいずれかに記載のキット。
[13]
前記相乗剤が、アルカノールアミン、アミノアクリレート、またはそれらの組合せからなる群から選択される、先行のいずれかに記載のキット。
[14]
前記マイケル付加アクセプター材料が、アミノ(メタ)アクリレートまたはアミノ(メタ)アクリルアミドである、先行のいずれかに記載のキット。
[15]
前記マイケル付加アクセプター材料がジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)である場合、それはアルコキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、例えばエトキシル化DPHAまたはプロピル化DPHAである、先行のいずれかに記載のキット。
[16]
前記反応生成物が式1の化合物であり、前記式1の化合物は、次式のケト及びエノール互変異性形態を含み、
【化1】

式中、R 及びR は、それぞれ独立して、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐のC ~C 12 アルキル、C ~C -シクロアルキル、C ~C 12 -アルコキシ基、及びC ~C 10 アリールからなる群から選択され;
p及びqは独立して0~5の整数であり;
は、直鎖または分岐C ~C 12 アルキル、C ~C 12 アルコキシからなる群から選択され;
Zは、エステル官能基が生じるO、またはアミド官能基が生じるNHのいずれかであり;
は、以下:
a)任意に少なくとも1つのCH 単位が-O-によって置換されて、少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;
b)任意にCH 単位が-O-で置換されて、ビニル-エーテル基等の少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;
c)任意に、CH 単位が-O-によって置換されて複素環を生じる、C ~C 12 -シクロアルキル;
d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;
e)C ~C 12 -アルコキシ基;
f)ヒドロキシル基;
g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;
h)アミド基;
i)Yがヒドロキシル基、-OR 基またはSR 基を表し、R がC ~C アルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;
j)H
からなる群から選択され、
rは存在する末端(メタ)アクリレート基の数に関係し、0~10の整数であり、
式中、R はHまたはメチルのいずれかであり、
式中、sは、存在するジベンゾイルメタン由来部分の数に関係し、1~10の整数である、
先行のいずれかに記載のキット。
[17]
前記反応生成物が式2の化合物であり、
【化2】

式中、R 及びR は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐のC1~C12アルキル、C3~C6-シクロアルキル、C1~C12-アルコキシ基からなる群から選択され、
p及びqは0~5の整数であり、
は、C1~C12アルキル、C1~C12アルコキシからなる群から選択され、
Zは、エステル官能基をもたらすO、またはアミド官能基をもたらすNHのいずれかであり、
は、以下:
a)任意にCH 単位が-O-によって置換されて、ポリエーテル鎖を生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;
b)任意にCH 単位が-O-で置換されて、例えばビニルエーテル官能基を有するポリエーテル鎖を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;
c)任意に、CH 単位が-O-によって置換されて複素環を生じる、C3~C12-シクロアルキル;
d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;
e)C1~C12-アルコキシ基;
f)ヒドロキシル基;
g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;
h)アミド基;
i)Yがヒドロキシル基、-OR 基またはSR 基を表し、R がC1~C4アルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;
からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを表し、
任意にr個の末端メタ(アクリレート)官能基を有し、これは、rが0~10の整数であることを意味する、
先行のいずれかに記載のキット。
[18]
sが1~5の整数、例えば1~4、2~4、1~3、または1もしくは2である、[16]に記載のキット。
[19]
がHである、[16]または[18]のいずれかに記載のキット。
[20]
が、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基であり、任意に少なくとも1つのCH 単位が-O-で置換されて、前記鎖中に少なくとも1つのエーテル結合が生じる、[16]~[19]のいずれかに記載のキット。
[21]
が、1個~200個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基であり、少なくとも2個のCH 単位が-O-で置換されてポリエーテル鎖を生じ、例えば、少なくとも3個のCH 単位、少なくとも4個のCH 単位、少なくとも5個のCH 単位、少なくとも10個のCH 単位、または少なくとも20個のCH 単位が-O-で置換される、[16]~[20]のいずれかに記載のキット。
[22]
r≧1、例えば、r≧2、またはr≧3である、[16]~[21]のいずれかに記載のキット。
[23]
が、メチル(-CH -)、エチル(-CH -CH -)基またはイソプロピル基を表す、[16]~[22]のいずれかに記載のキット。
[24]
前記R 基がヒドロキシル及びアミンによる置換を含む、[16]~[23]のいずれかに記載のキット。
[25]
が、1~200個の炭素原子を含有する、任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基である、[16]~[24]のいずれかに記載のキット。
[26]
r≧3の場合、R が、少なくとも2つの繰り返し単位を含有する、任意に置換された直鎖または分岐ポリエーテル鎖である、[16]~[24]のいずれかに記載のキット。
[27]
前記反応生成物中のマイケルドナー材料とマイケルアクセプター材料とのモル比が1:1~6:1である、先行のいずれかに記載のキット。
[28]
前記相乗剤が、650gmol -1 未満、例えば500gmol -1 未満、400gmol -1 未満、または200gmol -1 未満の分子量を有する、先行のいずれかに記載のキット。
[29]
先行のいずれかに記載の反応生成物a)と、相乗剤と、を含む放射線硬化性インク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物。
[30]
前記相乗剤が任意の水素ドナーであり、任意に、前記相乗剤が、アミン、エーテル、エステル、チオール、アルコール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、[29]に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[31]
1つまたは複数の単官能性、二官能性もしくは多官能性(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せを含む、[29]または[30]に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[32]
前記(メタ)アクリレートが、
a)モノマー及び/またはオリゴマー;及び/または
b)ポリエステルアクリレート及び/またはメタクリレート
である、[29]~[31]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[33]
7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下の1つまたは複数の追加の光開始剤を含む、[29]~[32]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[34]
前記1つまたは複数の追加の光開始剤が、分割(ノリッシュI型)光開始剤または増感剤を含む、[33]に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[35]
最大15重量%の水、例えば最大10重量%の水、最大8重量%の水、最大6重量%の水、最大5重量%の水、最大3重量%の水、または最大2重量%の水を含む、[29]~[34]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[36]
顔料、着色剤、またはそれらの組合せを更に含む、[29]~[35]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[37]
前記相乗剤が、[1]~[27]のいずれかに記載の相乗剤であり、任意に、前記相乗剤が前記組成物中に5~15重量%の量で存在する、[29]~[36]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[38]
本発明で使用するための前記反応生成物が、0.1~30重量%、例えば0.1~10重量%、5~25重量%、10~20重量%、10~18重量%、12~18重量%、5重量~15重量%、または10~15重量%の量で存在する、[29]~[37]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[39]
前記1つまたは複数の単官能性、二官能性または多官能性(メタ)アクリレートモノマー等の前記1つまたは複数の単官能性、二官能性または多官能性(メタ)アクリレートが、30重量%~90重量%、例えば40~80重量%、45~70重量%、35~60重量%、35~50重量%、または40~60重量%の量で存在する、[31]~[38]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[40]
本発明で使用するための前記反応生成物が、共有結合した少なくとも1つの重合性(メタ)アクリレート基を更に含む等、自己硬化性である、[29]~[39]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[41]
本発明で使用するための前記反応生成物が、30重量%~90重量%、例えば50重量%~90重量%、または60重量%~90重量%の量で前記組成物に組み込まれる、[40]に記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[42]
EITからのPower Puck IIによって測定して500mJ/cm 未満のUV線量(UV-A、UV-B及びUV-C照射の和)によって硬化可能である、[29]~[41]のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物。
[43]
インクまたはコーティング組成物である、[29]~[42]のいずれかに記載の組成物。
[44]
UVフレキソインク、UVインクジェットインク、UVグラビアインクまたはUVオフセットインクである、[29]~[43]のいずれかに記載の組成物。
[45]
先行のいずれかに記載の硬化インク、コーティング、ワニス、または接着剤組成物を含む印刷基材。
[46]
食品用の包装物品である、[45]に記載の印刷基材。
[47]
印刷され硬化されたインク膜を提供するためのプロセスであって、[29]~[44]のいずれかに記載のインクまたはコーティング組成物を基材上に適用することと、前記インクまたはコーティングを硬化させることとを含む、前記プロセス。
[48]
硬化が、200nm~450nmの領域の放射線への曝露時に行われる、[47]に記載のプロセス。
[49]
硬化が、レーザー、UV発光ダイオード(UV-LED)、水銀電球またはドープされた水銀電球によって放射されるUV光に曝露されると実行される、[47]または[48]に記載のプロセス。
[50]
前記得られた硬化したインクまたはコーティング膜が、10ppm未満の抽出可能物を含む、[47]~[49]のいずれかに記載のプロセス。
[51]
前記インクまたはコーティングが、500mJ/cm 以下のUV線量で硬化される、[48]~[50]のいずれかに記載のプロセス。
[52]
a)先行のいずれかに記載の前記マイケル付加ドナー材料を、先行のいずれかに記載の前記マイケル付加アクセプター材料と反応させて、先行のいずれかに記載の前記反応生成物を得る工程と、
b)更なる成分を添加する工程と、次いで
c)前記成分を一緒に混合して、前記インク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物を製造する工程と、
を含む、先行のいずれかに記載のインク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物を製造する方法。
[53]
前記更なる成分が、重合性モノマー及び/またはオリゴマーを含む、[52]に記載の方法。
[54]
工程a)が工程b)の前に行われる、[52]または[53]に記載の方法。
[55]
工程b)が、工程a)の前に、または工程a)と同時に行われる、[52]または[53]に記載の方法。
[56]
基材を印刷またはコーティングする方法における、先行のいずれかに記載の組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の他の特徴は、以下により詳細に定義される。
図1】式1は、(メタ)アクリレートへの(任意に置換された)DBMのマイケル付加によって調製できる1,3-ジケトンである。
図2】互変異性エノール型の式1。
図3】Rの分岐及びポリエーテル鎖を示す式1の具体例。
図4】工程1:塩基との反応による1,3-ジカルボニル化合物のエノラートの形成。
図5】工程2:マイケル付加アクセプター(アクリレート)に対するマイケル付加ドナー(エノラート)の攻撃。
図6】工程3:再プロトン化と最終生成物の形成(任意にこれを単離することもできるが、ほとんどの場合、アクリレートモノマーの樹脂として使用される)。
図7】塩基MLにより形成される式1の塩の構造。
図8】ハロゲン含有有機化合物(ハロゲン化有機エステル)へのマイケルドナー(DBM)のマイケル付加。
図9】トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)との反応による中間体化合物の形成。
図10】アクリレート含有ビニルエーテル(図示=[2-(ビニルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート)を使用したアクリレートによる中間体化合物の官能化。
図11】ケト型及びその互変異性エノール型のDPGDAへのDBM付加物。
図12】ジメチルアミノ置換DBMの調製。
図13
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明において、エトキシル化という用語は、エチレンオキシドの使用によって鎖延長された化合物を指し、プロポキシル化とは、プロピレンオキシドの使用によって鎖延長された化合物を指し、アルコキシル化という用語は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのいずれかまたは両方を使用して鎖延長された化合物を指す。
【0024】
(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド及びメタクリルアミドの両方を指す。
【0025】
特に明記しない限り、重量%は、組成物中の全成分の総質量に対する特定の成分の質量を指す。
【0026】
特に明記されていない限り、「XとYの間」として定義される範囲には、範囲内の終点X及びYが含まれる。
【0027】
「置換された」という用語は、特定の基または部分が1つまたは複数の置換基を有することを意味する。「非置換の」という用語は、明記された基が置換基を担持しないことを意味する。「任意に置換されている」という用語は、特定の基が非置換であるか、または1つまたは複数の置換基によって置換されていることを意味する。「置換された」という用語が構造系を説明するために使用される場合、置換は系上の任意の原子価が許容される位置で起こることを意味する。特定の部分または基が任意に置換されているか、または任意の特定の置換基で置換されていると明示的に記載されていない場合、そのような部分または基は非置換であることが意図されることが理解される。
【0028】
「アルキル」という用語は、鎖中に1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基を指す。アルキル基の例には、メチル(Me、記号「/」で構造的に示される場合もある)、エチル(Et)、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル(tBu)、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、及び当業者及び本明細書に提供される教示に照らして、前述の例のいずれか1つと同等であると考えられる基であり得る。
【0029】
本発明は、フリーラジカル重合を開始することができる新しい種類の光開始剤及び自己硬化性樹脂に関する。開示された化合物は、光開始剤または自己硬化性樹脂として使用でき、250~475nmの波長で吸収を示し、水銀-UV、UV-LED、UV-VIS及びVISを含む化学線が、エチレン性不飽和化合物の硬化に使用される多くの用途に適している。本発明は、本発明で使用するための1つまたは複数の反応生成物を相乗剤とともに含む光硬化性組成物を提供する。したがって、本発明の組成物は、(メタ)アクリレート等のモノマーを含む硬化性組成物に組み込むことができる。
【0030】
本発明の樹脂は、低移行性用途での使用に適している。本発明で使用するための反応生成物は、硬化した(メタ)アクリレート含有組成物のポリマー骨格にPI化合物を固定できる少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を含んでもよい。本発明で使用する反応生成物は、高収率で容易に入手でき、さまざまな化学物質目録に記載されている既知の低毒性物質から一工程で製造することができる。例えば、アボベンゾンはスイスインク法に記載されており、これは、食品接触材料の非食品接触面に適用される印刷インクに関する規定を定義しており、したがって、インクに含める前に毒性試験を必要としない。
【0031】
本出願は、ジベンゾイルメタンまたはその誘導体等のマイケル付加ドナー材料と、(メタ)アクリレート含有部分等のマイケル付加アクセプター材料とのマイケル付加から形成される反応生成物を含むPI系に関する。光開始剤系は、アミン、エーテル、エステル、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される相乗剤を更に含む。
【0032】
本発明で使用する反応生成物
本発明で使用する反応生成物は、以下から製造される。
【0033】
(a)2つ以上の活性メチレン水素及び少なくとも2つの任意に置換されたベンゾイル部分(例えば、ジベンゾイルメタン)を含む少なくとも1つの芳香族マイケル付加ドナー材料。本明細書で使用される場合、「活性メチレン水素」は、原則として塩基(すなわち、酸性水素)との反応でカルバニオンを形成することができるメチレン水素を意味する。活性メチレン水素を有する適切な基の非限定的な例は、ジベンゾイルメタン(DBM)基である。
(b)少なくとも1つのマイケル付加アクセプター材料であって、マイケル付加アクセプター材料は、単官能性、二官能性、三官能性、または多官能性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びハロゲン化有機酸またはエステルからなる群から選択されて、
相乗剤と組み合わせてフリーラジカル重合を開始できる反応生成物を提供する。
【0034】
本発明で使用するための反応生成物は、式1の1,3-ジケトンを含むことができる(図1を参照)。
図1:式1は、(メタ)アクリレートへの(任意に置換された)DBMのマイケル付加によって調製できる1,3-ジケトンである。
【0035】
式1の化合物は、互変異性エノール型をとることができる(図2を参照)。
図2:互変異性エノール型の式1;
式中、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐のC~C12アルキル、C~C-シクロアルキル、C~C12-アルコキシ基、及びC~C10アリールからなる群から選択され;
pとqは独立して0~5の整数であり;
は、C~C12アルキル、C~C12アルコキシからなる群から選択され;
Zは、エステル官能基をもたらすO、またはアミド官能基をもたらすNHのいずれかであり;Rは以下:
a)任意に少なくとも1つのCH単位が-O-によって置換され、少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;
b)任意にCH単位が-O-で置換され、ビニル-エーテル基等の少なくとも1つのエーテル結合が生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;
c)任意に、CH単位が-O-によって置換されて複素環が生じる、C~C12-シクロアルキル;
d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;
e)C~C12-アルコキシ基;
f)ヒドロキシル基;
g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;
h)アミド基;
i)Yがヒドロキシル基、-OR基またはSR基を表し、RがC~Cアルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;
j)H
からなる群から選択され、
式中、rは存在する末端(メタ)アクリレート基の数に関係し、0~10の整数であり、
式中、RはHまたはメチルのいずれかであり、
ここで、sは反応生成物上に存在するジベンゾイルメタン由来の部分の数に関係し、1~10の整数である。
【0036】
は、以下:a)任意に少なくとも1つのCH単位が、-O-によって置換されて、少なくとも1つのエーテル結合が生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基;及びb)任意にCH単位が-O-で置換され、ビニル-エーテル基等の少なくとも1つのエーテル結合を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;c)CH単位が-O-によって任意に置換され、複素環が生じる、C~C12-シクロアルキル;d)CH単位がOで任意に置換される、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;e)C~C12アルコキシ基;及びf)Hからなる群から選択され得る。
【0037】
は、1~200個の炭素原子、例えば、2~150個の炭素原子、3~120個の炭素原子、5~100個の炭素原子、10~100個の炭素原子、20~80個の炭素原子、または20~50個の炭素原子を含有する、任意に置換された直鎖または分岐のアルキル基であってよい。直鎖または分岐アルキル鎖の、任意に、少なくとも1つのCH単位、例えば、少なくとも2つのCH単位、少なくとも3つのCH単位、少なくとも5つのCH単位、少なくとも10のCH単位、または少なくとも20のCH単位が-O-に置換され、ポリエーテル鎖が生成される。例えば、Rは、少なくとも2つのCH単位が-O-によって置換されてポリエーテル鎖を形成している、2~50個の炭素を含有する直鎖または分岐のアルキル基であり得る。Rは、1~200個の炭素原子、例えば2~150個の炭素原子、3~120個の炭素原子、5~100個の炭素原子、10~100個の炭素原子、20~80個の炭素原子、または20~50個の炭素原子を含有する、任意に置換された直鎖または分岐ポリエーテル鎖であってもよい。例えば、Rは、少なくとも3つの繰り返し単位、少なくとも4つの繰り返し単位、少なくとも5つの繰り返し単位、少なくとも10個の繰り返し単位、または少なくとも20個の繰り返し単位等の少なくとも2つの繰り返し単位を有する、ポリエチレングリコール鎖、または直鎖もしくは分岐ポリプロピレングリコール鎖、または直鎖もしくは分岐ポリブチレングリコール鎖、例えばポリテトラメチレングリコール鎖であり得る。RはHであってもよい(すなわち、r=0)。
【0038】
の任意の置換基には、-C1-C10アルキル、-C2-C10アルケニル、ハロ、-C1-4アルキル、-CD、-D、-C1-4アルコキシ、COH、-CHOH、-CF、-CN、-OH、-NO、及びフェニルからなるリストから独立して選択される基が含まれる。Rの任意の置換基は、メチルまたはエチル等の-C1~4アルキル等のC1~C10アルキルであってもよい。
【0039】
本発明で使用するための反応生成物は、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド基から選択される少なくとも1つの共有結合した重合可能なエチレン性不飽和基を含み得る。例えば、本発明で使用するための反応生成物は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むことができる。このような基を含む反応生成物は自己硬化性であるため、追加のモノマーを必要とせずに自己硬化性組成物を形成することができる。換言すれば、r≠0の場合、式1の反応生成物は自己硬化性であり、自己硬化性組成物に組み込むことができる。
【0040】
本発明で使用するための例示的な反応生成物
式1による本発明で使用するための例示的な反応生成物を以下に示す:
図3:Rの分岐及びポリエーテル鎖を示す式1の具体例。上:図10に概要を示した合成経路から得られた化合物。左下:PEG-ジアクリレートへのジベンゾイルメタンのモノ付加物。右下:PEG-ジアクリレートへのジベンゾイルメタンの二付加物。多官能性アクリレートと反応するDBM化合物の数は、2つの化合物の比率を変えることで制御できる(下記を参照)。
【0041】
本発明で使用する反応生成物の例示的な合成手順
本発明で使用する反応生成物を合成するための例示的な反応スキームを以下に概説する。この合成は3つの工程で示されているが、工程1または2で形成された中間体の単離または精製は必要ないため、合成はワンポット反応であることに留意されたい。したがって、この合成方法は産業上の利用可能性が高い。
図4:工程1:塩基との反応による1,3-ジカルボニル化合物のエノラートの形成。
【0042】
図5:工程2:マイケル付加アクセプター(アクリレート)に対するマイケル付加ドナー(エノラート)の攻撃。
【0043】
図6:工程3:再プロトン化と最終生成物の形成(任意にこれを単離することもできるが、ほとんどの場合、アクリレートモノマーの樹脂として使用される)。
【0044】
マイケル付加ドナー部分とマイケル付加アクセプター基の比率
複数のマイケル付加アクセプター基を含むマイケル付加アクセプター材料(例えば、ジ、トリ、及び多官能性(メタ)アクリレート種)の使用により、反応生成物上に存在する複数のジベンゾイルメタン由来部分を含む反応生成物が得られる可能性がある(すなわち、式1:s≧2)。更に、マイケルアクセプター材料としてジ、トリ、及び多官能性(メタ)アクリレート種を使用すると、反応生成物中に末端メタ(アクリレート)基が存在する可能性がある(つまり、r≧1)。
【0045】
マイケル付加アクセプター材料が(メタ)アクリレートである場合、当業者であれば、マイケル付加アクセプター材料上に存在する(メタ)アクリレート基の数に対して、マイケル付加ドナー材料の化学量論を変更することによって、化合物上に存在するジベンゾイルメタン由来の部分の数を所望通りに制御できることを理解するであろう。例えば、反応生成物中のマイケルドナー材料とマイケルアクセプター材料とのモル比は、1:1~6:1、例えば1:1~4:1、1:1~3:1、1:1~2:1、2:1~6:1、2:1~4:1、または2:1~3:1であり得る。換言すれば、本発明で使用するための反応生成物は、マイケル付加ドナー材料に由来する部分で少なくとも一置換、例えば少なくとも二置換、少なくとも三置換-置換されているか、またはマイケル付加ドナー材料に由来する部分で少なくとも四置換されている、マイケル追加アクセプター材料に由来する部分を含んでもよい。
【0046】
あるいは、本明細書で議論するように、追加の(メタ)アクリレート基を後続の工程でマイケル付加反応生成物に付加することができる(ハロゲン含有有機化合物のセクションを参照)。このシナリオでは、反応生成物中のジベンゾイル由来の基の数は、依然としてマイケル付加ドナー材料とマイケルアクセプター基(例えば、ハロゲン化有機酸またはエステル基)の数の化学量論に依存する。ただし、最終製品の(メタ)アクリレート基の数は、マイケル付加後の修飾工程で増やすことができる。
【0047】
各マイケル付加アクセプター材料中に存在するマイケルアクセプター基の数は理論的には制限されないが、本発明で使用するための反応生成物中の残留(メタ)アクリレート基の数を増加させると、反応性に悪影響を与える可能性があることが判明した。マイケルドナー材料をマイケルアクセプター材料に結合する部分(すなわちR)のアルコキシル化は、本発明で使用するための反応生成物を含むインクまたはコーティングの硬化特性を改善することが見出された。
【0048】
複数の(メタ)アクリレート基を含む反応生成物については、(メタ)アクリレート基間の結合が少なくとも2つの繰り返し単位を含むポリエーテルを含むことが好ましい。言い換えれば、r≧3の場合、例えばr≧4、r≧5、またはr≧6の場合、または(r+s)≧3、(r+s)≧4、(r+s)≧5、(r+s)≧6の場合、Rは、1~200個の炭素原子、例えば2~150個の炭素原子、3~120個の炭素原子、5~100個の炭素原子、10~100個の炭素原子、20~80個の炭素原子、または20~50個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐アルキル基であることが好ましく、直鎖または分岐アルキル鎖中の少なくとも2つのCH単位、例えば少なくとも3単位、少なくとも5単位、少なくとも10単位、または少なくとも20単位は、ポリエーテル鎖をもたらす-O-で置換される。
【0049】
例えば、(r+s)≧4の場合、またはr≧4の場合、Rは、1~200個の炭素原子、例えば2~150個の炭素原子、3~120個の炭素原子、5~100個の炭素原子、10~100個の炭素原子、20~80個の炭素原子、または20~50個の炭素原子を含有する、任意に置換された直鎖または分岐ポリエーテル鎖であってもよい。
【0050】
例えば、(r+s)≧4の場合、またはr≧4の場合、Rは、少なくとも3つの繰り返し単位、少なくとも4つの繰り返し単位、少なくとも5つの繰り返し単位、少なくとも10個の繰り返し単位、または少なくとも20個の繰り返し単位等の少なくとも2つの繰り返し単位を有する、ポリエチレングリコール鎖、直鎖もしくは分岐ポリプロピレングリコール鎖、または直鎖もしくは分岐ポリブチレングリコール鎖、例えばポリテトラメチレングリコール鎖であり得る。
【0051】
本発明で使用するための反応生成物は、好ましくは(r+s)≦5、例えば(r+s)≦4、または(r+s)≦3である式1の化合物であり得る。本発明における使用のための反応生成物は、好ましくはr≦4、例えばr≦3、またはr≦2である式1の化合物であり得る。
【0052】
ケト/エノール互変異性化
いかなる理論にも束縛されるつもりはないが、本発明で使用する反応生成物は、ケト及びエノール互変異性体の両方で存在する能力により、有益なUV吸収特性を示すと考えられる。
【0053】
ジベンゾイルメタンを例にとると、エノール型の場合、両方の芳香環が交差共役二重結合によって接続され、両方の芳香環を含むπ系を形成する。この共役により、吸収スペクトルはベンゾフェノン等の種で観察されるものよりも高い波長にシフトする。更に、二置換反応生成物はエノール互変異性体を形成できないため、吸収スペクトルのこのシフトは、両方の酸性メチレン水素がマイケルアクセプターで二置換を受けるマイケル付加ドナー材料から形成される類似の反応生成物では観察されない。両方のメチレン水素の二置換を受けるマイケル付加ドナー材料には、アセチルアセトン(すなわち、フェニル基を含まない1,3-ジケトン)が含まれる。
【0054】
本発明では、マイケル付加体材料及びマイケルアクセプター化合物は、マイケル付加ドナー材料の両方の酸性メチレン水素の二置換が起こらず、代わりに一置換反応生成物のみが生じるように選択される(例えば、ジベンゾイルメタンベースの反応生成物;Ph-C(=O)CHRC(=O)Ph;ここで、R=マイケルアクセプターに由来する置換基)。換言すれば、ケト型である場合、本発明で使用するための反応生成物は、マイケル付加ドナー材料のメチレン基に由来する部分に1つの水素置換基を含む。したがって、反応生成物中に存在する各マイケル付加ドナー材料由来部分は、単一のマイケル付加アクセプター由来部分に共有結合している。
【0055】
反応生成物は塩である場合があり、反応生成物のケト-エノール互変異性に影響を及ぼし、この影響により光開始の効率に影響を与える可能性がある(“The Composition,Structure and Hydrogen Bonding of the beta-diketones”,John Emsley,Structure and Bonding,57,1984,especially page 156、特に156ページを参照されたい)。特に、図7に示されるように、式1の塩は、エノール互変異性体に有利であり、したがって、論じられる理由から、より良好な光開始剤である。
図7:塩基MLにより形成される式1の塩の構造。Mは窒素またはリンであることが好ましい。Lは、アルキル基またはアルコキシ基(例えば、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ等)であり、nは置換基の数で、通常窒素の場合は3、リンの場合は3または5である。
【0056】
J.Photochem.Photobiol.A:Chem.,73(1993),197-204(dibromo)及びJ.Photochem.Photobiol.A:Chem,78(1994),79-84(dihydroxy)“New cleavage photoinitiators for radical polymerization:synthesis and photochemical study of dibromo(dihydroxy)derivatives of dibenzoylmethane”に記載の化合物は、本発明による使用に不適切である。これは、これらの種が二置換されているため、反応生成物中に酸性メチレン水素が残らず、したがってエノール互変異性体を形成できないためである。
【0057】
光開始メカニズム
本発明者らは、驚くべきことに、(a)2つの活性メチレン水素を含む少なくとも1つの芳香族マイケル付加ドナー材料(例えば、ジベンゾイルメタン等の1,3-ジケトンまたは2つのフェニル環のいずれかまたはそれぞれに5個までの類似または異なる置換基を有するジベンゾイルメタン誘導体);及び(b)(a)で使用されるマイケル付加ドナーと反応することができる、単官能性、二官能性、三官能性または多官能性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びハロゲン化有機酸またはエステルから選択される1つまたは複数のマイケル付加アクセプター材料から調製される反応生成物は、化学線に曝露された場合、相乗剤、例えば脂肪族アミンと組み合わせて優れた光活性を示す反応生成物をもたらす。重合反応を開始することができるUV線を使用すると、特に良好な光活性が達成される。したがって、本発明で使用するための反応生成物及び相乗剤を含む本発明の組成物は、例えばラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の光重合系における重合開始剤としての使用によく適している。
【0058】
本発明の組成物の改善された光活性は、組成物が組み込まれた重合性組成物の改善された硬化をもたらし、改善された耐性を有する硬化生成物を提供する。特に、ジベンゾイルメタン及びその誘導体に由来する反応生成物を含む本発明の組成物について観察された光活性及び硬化結果は、非官能化ジベンゾイルメタン及びその誘導体と比較して著しく改善された。
【0059】
この改善は、ジベンゾイルメタン及びその誘導体とマイケル付加アクセプター材料との反応が、これらの種の光活性にとってどのように重要であるかを示している。これらの改善は、とりわけ、実施例9(ジプロピレングリコールジアクリレートで官能化されたジベンゾイルメタンを含む)と比較例10(光開始剤として作用しない非官能化ジベンゾイルメタンを含む)との比較を通じて実証される。
【0060】
興味深いことに、本発明で使用するための反応生成物の光開始機構は、当技術分野の関連化合物について記載されている分割(ノリッシュI型)機構とは異なる。この点に関して、関連材料は、EP454624B1(Ciba-Geigy AG)に記載されており、これは、発色団を含まず、したがってUV-C光によって活性化されたときに分割タイプ(ノリッシュI型)機構によって光開始を開始するアセチルアセトン(すなわち、ベンゾイル基を含まない)に基づく化合物を含む、そのような化合物の合成のための参照として使用される。
【0061】
対照的に、本発明で使用するための反応生成物は、UV-LEDの波長を含む標準UV波長領域で強い吸収を示す共役π系を含む。論じたように、これは、本発明の反応生成物を製造するために使用される芳香族β-ジカルボニル化合物の2つの酸性メチレン水素のうちの1つの一置換によって達成される。得られた反応生成物は酸性水素を保持しているため、エノール互変異性体を形成して共役π系を形成することができる。
【0062】
本発明で使用される化合物の光開始の機構はノリッシュII型機構であり、化合物は相乗剤(例えばアミン相乗剤)と反応して開始種を与える。本発明で使用する化合物は、分割生成物の形成をもたらさないため、敏感な用途に非常に適している。更に、本発明で使用する化合物は、任意に、光硬化性組成物の硬化時に形成されるポリマーマトリックスにこれらの化合物を組み込むことを可能にする重合性(例えば、(メタ)アクリレート)官能基を保持してもよい。この特徴は、PI反応生成物の移行性を更に低減する。
【0063】
マイケルドナー材料(ジベンゾイルメタンを含む):
本明細書で使用する場合、芳香族「マイケル付加ドナー材料」は、2つのアリールケトン基(Ar-C=O、すなわち、少なくとも2つの任意に置換されたベンゾイル部分)及び2つの活性メチレン水素を有する構造を有する化合物を意味する。この化学物質群の最も簡単な代表例は、ジベンゾイルメタンである。活性メチレン水素は脱プロトン化を非常に受けやすい。電子吸引基は、求核剤として作用するカルボアニオンの安定化に役立ち、アルファ、ベータ不飽和カルボニル化合物の共役結合を攻撃することができる。そのような適切な電子吸引基の非限定的な例としては、カルボニル基、シアノ基及びスルホニル基が挙げられる。マイケル付加ドナー材料は、これらの電子求引基の1つまたは複数を有することができ、最も好ましいのはカルボニル基である。
【0064】
ジベンゾイルメタンは市販されており、登録されている物質である。アボベンゾン等のジベンゾイルメタンの誘導体は、日焼け止め製品に応用されている。ジベンゾイルメタンは、安息香酸エチルとアセトフェノンとの縮合によって調製される。ジベンゾイルメタンは、本発明で使用するための反応生成物中のマイケル付加ドナーとして使用することができる。
【0065】
反応生成物の吸収スペクトルをシフトさせるために、例えば、商業的印刷プロセスで使用されるLEDまたは可視光の発光スペクトルとよりよく一致させるために、ジベンゾイルメタンの誘導体を使用することができる。ジベンゾイルメタン誘導体には、1~10個のベンゾイル環置換基、例えば1~8個の置換基、2~8個の置換基、2~6個の置換基、3~6個の置換基、または4個の置換基を含むジベンゾイルメタンが含まれる。各ベンゾイル環は、同じ数の環置換基を含むことができる。あるいは、ベンゾイル環は異なる数の環置換基を含むことができる。置換基は、独立して、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐C~C12アルキル、C~C-シクロアルキルまたはC~C12-アルコキシ基からなる群から選択することができる。
【0066】
ベンゾイル環は、アルキル基及びアルコキシ基、例えばtert-ブチル基及びメトキシ基で置換することができる。ベンゾイル環は、少なくとも1つのフェニル置換基で置換され得る。ベンゾイル環は、少なくとも1つのアミノ置換基で置換することができる。
【0067】
4-フェニル-ジベンゾイルメタン(1-(4-ビフェニリル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン)、1,3-ビス(4-ビフェニリル)-1,3-プロパンジオン等のジベンゾイルメタンの誘導体は、アセトフェノン自体または置換アセトフェノン、例えば4-ジメチルアミノアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、4-フェニル-アセトフェノン(1-(4-ビフェニリル)-1-エタノン)、2’,4’,6’-トリメチルアセトフェノン(2-アセチルメシチレン)、ヒドロキシアセトフェノン、及びメトキシ-アセトフェノン、例えば4-メトキシ-アセトフェノンと、置換ベンゾエート、例えばエチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、及びメトキシ安息香酸アルキルエステル、例えば4-メトキシ安息香酸メチルエステルとの反応によって形成することができる。
【0068】
ジベンゾイルメタン誘導体のフェニル環(複数可)に対する置換基(複数可)の深色効果または淡色効果は、時間依存密度汎関数理論(TD-DFT)法等の計算技術を使用して予測することができる。そのような方法は当技術分野で既に知られている。ジベンゾイルメタン誘導体のUV吸収波長は、これらの化合物が保護日焼け止め製品に使用される場合に重要な特性である。
【0069】
ジベンゾイルメタン誘導体を調製するための合成手順は、EP0114607B1(Haarmann&ReimerGmbH)及びEP1349823B1 Chemtura Corp)ならびにそこに引用されている参考文献に提供されている。4,4’-ジメチルアミノ-ジベンゾイルメタンの合成手順は、European Journal of Inorganic Chemistry,2008,(9),1523-1529に与えられている。ジベンゾイルメタンの1つの市販の誘導体は、FDA及びEUによって承認されたアボベンゾン(3-(4-tert-ブチルフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン)である。アボベンゾンは、商品名Parsol1789及びEusolex9020で知られている。特により高い波長で硬化する場合、例えば365から395nmで発光するUV-LEDを使用する場合、マイケルドナーとしてアボベンゾンを使用することが好ましい。本発明における使用のための別の好ましいマイケルドナーは、4-フェニル-ジベンゾイルメタン(1-(4-ジフェニルイル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン)である。
【0070】
マイケルアクセプター材料
本発明の文脈において、マイケルアクセプター材料は、マイケルドナーと反応して反応生成物を形成することができるカルボニル基を含む化合物である。これには、求電子性β炭素で反応を受ける(メタ)アクリレート等のα、β-不飽和カルボニル化合物を含む従来のマイケルアクセプター化合物が含まれる。そのような適切なマイケルアクセプター材料の例としては、アクリレート、メタクリレート、及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。更に、本発明で使用するためのマイケルアクセプター材料には、例えば、以下に記載されるハロゲン化有機酸及びエステル等のハロゲン含有有機化合物に見られるような求電子性α-炭素を含むカルボニル含有化合物も含まれる。
【0071】
α,β-不飽和カルボニル化合物
単官能アクリレートモノマーは、マイケルアクセプター材料として使用することができる。しかしながら、得られた反応生成物(例えば、式1のもの)において、アクリレート官能基は保持されず(すなわち、r=0)、これは、そのような化合物自体が重合反応に関与することができず、したがって硬化後に移動しやすいことを意味することに留意すべきである。このため、マイケル付加アクセプター材料として単官能性(メタ)アクリレートを用いることはあまり好ましくない。
【0072】
マイケルアクセプターとして使用することができる適切な単官能エチレン性不飽和モノマーの例としては、限定されないが、以下(及びその組合せ)のイソブチルアクリレート;シクロヘキシルアクリレート;イソオクチルアクリレート;n-オクチルアクリレート;イソデシルアクリレート;イソノニルアクリレート;オクチル/デシルアクリレート;ラウリルアクリレート;2-プロピルヘプチルアクリレート;トリデシルアクリレート;ヘキサデシルアクリレート;ステアリルアクリレート;イソステアリルアクリレート;ベヘニルアクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;4-t.ブチルシクロヘキシルアクリレート;3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート;イソボルニルアクリレート;ジシクロペンチルアクリレート;ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート;ジシクロペンタニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェノキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート;アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート;クミルフェノキシエチルアクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート;ポリプロピレングリコールモノアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート;メトキシトリエチレングリコールアクリレート;トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート;ジエチルグリコールブチルエーテルアクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;エトキシル化エチルヘキシルアクリレート;アルコキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;プロポキシ化ノニルフェノールアシレート;ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート;エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;アルコキシル化ラウリルアクリレート;エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート;N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド;N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)エチルカルバメート;コハク酸水素アクリロイルオキシエチル;オクトキシポリエチレングリコールアクリレート;オクタフルオロペンチルアクリレート;2-イソシアナトエチルアクリレート;アセトアセトキシエチルアクリレート;アクリル酸2-メトキシエチル;ジメチルアミノエチルアクリレート;アクリル酸2-カルボキシエチル;4-ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
【0073】
同等のメタクリレート化合物も使用することができる。当業者であれば、メタクリレート化合物は、同等のアクリレート化合物よりも反応性が低いことを理解するであろう。
【0074】
多官能性マイケルアクセプター化合物を使用して、本発明で使用するための反応生成物を製造することができる。多官能マイケルアクセプター化合物を使用する利点は、反応生成物が、反応生成物に共有結合した重合性エチレン性不飽和基を保持し得ることである。したがって、反応生成物は両方とも重合開始剤として作用し、重合反応にも関与することができ、したがって硬化生成物中に存在する移動可能な種の量を更に減少させる。例えば、マイケルアクセプター化合物として多官能性マイケルアクセプター化合物を使用すると、自己硬化性樹脂を作製することができる。
【0075】
適切な二官能性または三官能性または多官能性アクリレートの例には、限定されないは、以下(及びそれらの組合せ)、1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;プロポキシ化ヘキサンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジオールジアクリレート;1,10デカンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;プロポキシ化エチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;アルコキシル化ジプロピレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;アルコキシル化トリプロピレングリコールジアクリレート;ポリプロピレングリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ポリブタジエンジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバリン酸ジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;2-ヒドロキシ-3-{4-[2-ヒドロキシ-3-(ビニルカルボニルオキシ)プロポキシ]ブトキシ}プロピルアクリレート(好ましい実施形態である-Sartomer/ArkemaグループからCN132として市販);エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート;アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;グリセロールプロポキシレートトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;アルコキシル化ペタエリスリトールトリアクリレート及びテトラアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;アルコキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;メラミンアクリレートオリゴマー;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、200~2000Daの分子量を有する任意のポリエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート;200~2000Daの分子量を有するポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ならびにポリエポキシドをアクリル酸(エポキシアクリレート)と反応させることによって得られる、またはポリエステルポリオールをアクリル酸及び/または単量体アルキルアクリレート(ポリエステルアクリレート)と反応させることによって得られるアクリレート基含有オリゴマー及びポリマーが挙げられる。
【0076】
本発明で使用するためのマイケル付加アクセプター材料は、好ましくは、ジプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,4-ブタンジオール-ジ-グリシジルエーテル-ジアクリレート、またはそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0077】
同等のメタクリレート化合物も使用することができる。当業者であれば、メタクリレート化合物は、同等のアクリレート化合物よりも反応性が低いことを理解するであろう。
【0078】
本発明で使用するための反応生成物中のマイケル付加アクセプター材料は、アミノ(メタ)アクリレートまたはアミノ(メタ)アクリルアミドであり得る。例えば、本発明で使用するための反応生成物中のマイケル付加アクセプター材料は、アミノアクリレートであり得る。アミノアクリレート等の種を使用する利点は、請求項1に記載のマイケルドナーとの反応時に、1分子中にアクリレート官能基、アミン-相乗剤及びベンゾイル構造を有する完全な自己硬化樹脂が形成されることである。結果として、本発明によって必要とされる相乗剤は、反応生成物に共有結合し、特に反応生成物中にいくつかの(メタ)アクリレート官能基を保持する複数のアクリレート官能基を有するアミノ(メタ)アクリレートが使用される場合、存在する移動可能な種の量の更なる減少をもたらし得る。
【0079】
アミン変性ポリエーテルアクリレート等の適切なアミノアクリレートには、ALLNEXから入手可能なEBECRYL 80、EBECRYL 81、EBECRYL 83、EBECRYL 85、EBECRYL 880、EBECRYL LEO 10551、EBECRYL LEO 10552、EBECRYL LEO 10553、EBECRYL 7100、EBECRYL P115及びEBECRYL P116;全てSartomerから入手可能なCN501、CN550、CN UVA421、CN3705、CN3715、CN3755、CN381 及びCN386;RAHNから入手可能なGENOMER 5142、GENOMER 5161、GENOMER 5271 及びGENOMER 5275;IGMから入手可能なPHOTOMER 4771、PHOTOMER 4967、PHOTOMER 5006、PHOTOMER 4775、PHOTOMER 5662、PHOTOMER 5850、PHOTOMER 5930、及びPHOTOMER 4250;全てBASFから入手可能なLAROMER LR8996、LAROMER LR8869、LAROMER LR8889、LAROMER LR8997、LAROMER PO 83F、LAROMER PO 84F、LAROMER PO 94F、LAROMER PO 9067、LAROMER PO 9103、LAROMER PO 9106 及びLAROMER PO77F;AGISYN 701、AGISYN 702、AGISYN 703、NeoRad P-81及びNeoRad P-85 ex DSM-AGIが含まれる。
【0080】
ハロゲン含有有機化合物
マイケル付加アクセプター化合物は、ハロゲン化有機酸またはエステル(例えば、ブロモ酢酸またはブロモ酢酸アルキル等のそのエステル)であってもよい。ハロゲン含有有機化合物は、α-炭素原子にハロゲン置換基を有するカルボニル基を含む。ハロゲン含有有機化合物は、アクリレート基で任意に官能化されていてもよい。ハロゲン置換基は、クロロ、ブロモ、またはヨードであり得る。
【0081】
反応生成物をアクリレート基で官能化するために、反応生成物をトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)と更に反応させて中間体(図9を参照されたい)を得、次いで、これをアクリレート含有ビニルエーテル、例えば[2-(ビニルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート(図示されている-図10参照)と反応させることができる。反応スキームを以下に示す。もちろん、任意の他の置換ジベンゾイルメタンまたは任意のハロゲン-有機酸自体または任意の他のエステルを合成に使用することができることに留意されるべきである。
図8:ハロゲン含有有機化合物(ハロゲン化有機エステル)へのマイケルドナー(DBM)のマイケル付加。反応生成物はまた、式1の化合物の例であるが、アクリレート基等の重合性エチレン性不飽和基を含まず、したがって重合に関与することができず、したがって低移行性用途にはあまり適していない。しかしながら、配合物中に存在することが必要とされるPIの質量比は、PIがより低い分子量であるので、更なる嵩高い重合性置換基を含まないので、低減され得る。
【0082】
図8に示す反応生成物を、任意のジ-またはポリオールとエステル交換反応で更に反応させて、拡散障害型光増感剤化合物を得ることができる。
図9:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)との反応による中間体化合物の形成。
【0083】
図10:アクリレート含有ビニルエーテル(図示=[2-(ビニルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート)を使用したアクリレートによる中間体化合物の官能化。これは、アミド官能基を有する式1の例である。
【0084】
ジベンゾイルメタン系PI種を重合性種に変換する反応に適した反応条件は、EP2684876A1(Agfa Graphics N.V.)に開示されており、及び/またはチオキサントンについて同じ官能化が記載されている。引用された文献及び参考文献は、本発明で使用するための化合物の十分な開示を提供する目的で、その全体が参照により組み込まれる。ブロモ酢酸エステルとジベンゾイルメタンとの反応は、EP2684876A1の実施例に開示されている。
【0085】
相乗剤(水素ドナー材料):
本発明で使用するための反応生成物(例えば、式1の化合物)は、相乗剤、例えばアミン化合物と組み合わせて光開始剤として使用される。
【0086】
理論に束縛されることを意図しないが、本発明で使用するための式1の形成された化合物のC(=O)-アリール結合エネルギーは、従来の硬化プロセスで使用されるUVエネルギーが均一結合開裂を誘導するには高すぎると考えられる。これはベンゾフェノンと同様であり、ベンゾフェノンも照射時に均一結合開裂を受けない。更に、カルボニル炭素とα-炭素との間のC-C結合はまた、エノール特性を有するために、均一開裂を受けるにはエネルギーが高すぎ、これは単結合よりも強いことを意味する。したがって、励起時に、本発明で使用するための反応生成物の励起三重項状態は、スピッティング型機構を受けない。
【0087】
驚くべきことに、本発明で使用するための反応生成物は、II型光開始剤であることが分かった。論じられるように、II型光開始剤は、フリーラジカル重合プロセスを開始するために水素引き抜きを受け、したがって相乗剤と組み合わせて使用される。相乗剤は、通常、α位に活性水素原子を有するヘテロ原子、例えば第三級アミン、アルコール、エーテル、エステル及びチオールを含有する。
【0088】
本発明のキットで使用するための反応生成物と共に使用するための相乗剤は、アミン、エーテル、エステル、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される。本発明のキットで使用するための反応生成物と共に使用するための相乗剤は、好ましくは、アミン、チオール、及びそれらの組合せからなる群から選択され得る。相乗剤は、より好ましくは、アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミンであり得る。
【0089】
そのような水素ドナー分子は、通常、α位に活性(すなわち、酸性)水素原子を有するヘテロ原子を含有する。第三級アミン、アルコール、エーテル、エステル、チオール等がしばしば水素ドナーとして使用される。ドナーは、水素原子を励起された光開始剤に移動させ、非常に活性なドナーラジカルになり、アクリレート等のエチレン性不飽和モノマーのフリーラジカル重合を開始することができる(Industrial Photoinitiators-A Technical Guide,W.Arthur Green,CRC Press,page 24-26を参照されたい)。直接水素引き抜きは、エーテルまたはアルコール等のドナーから行われる。第三級アミンは、最初にドナー窒素原子で起こる電子移動機構を介してより効率的に反応する。
【0090】
本発明のインク、コーティング、ワニスまたは接着剤組成物において、本発明で使用するための式1の化合物は、相乗剤(すなわち、水素ドナー材料)と共に適用される。水素ドナー材料(相乗剤)は、式1の構造の共有結合/一部であり得る。これは、例えば、ジベンゾイルメタンとアミノアクリレートとの反応によって達成される。
【0091】
相乗剤はまた、本発明で使用するための反応生成物に非共有結合的に連結されてもよく、これにより、本発明で使用するための相乗剤と反応生成物との間の比の調整が可能になる。化合物は、均質な混合物を形成するために当業者に公知の通常の技術によって混合される。混合プロセスは、化合物の分解または予備重合をもたらさない任意の温度または圧力で行うことができる。好ましくは、混合は、室温(すなわち、20~25℃)またはわずかに高い温度で、最大100℃で行われる。一例の方法では、均質な混合物が得られるまで、攪拌バー付きマグネチックスターラーを使用して化合物を室温で約20分間攪拌する。
【0092】
適切な相乗剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:芳香族アミン、例えば、;2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート;N-フェニルグリシン;安息香酸、4-(ジメチルアミノ)-、1,1’-[(メチルイミノ)ジ-2,1-エタンジイル]エステル;及び4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸の単純アルキルエステル、エチル、アミル、2-ブトキシエチル及び2-エチルヘキシルエステルが特に好ましく、N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エステルの他の位置異性体も好適である。N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等の脂肪族アミンも適切な相乗剤である。
【0093】
アミノアクリレート及びアミン変性ポリエーテルアクリレートはまた、適切な相乗剤であり、ALLNEXから入手可能なEBECRYL 80、EBECRYL 81、EBECRYL 83、EBECRYL 85、EBECRYL 880、EBECRYL LEO 10551、EBECRYL LEO 10552、EBECRYL LEO 10553、EBECRYL 7100、EBECRYL P115及びEBECRYL P116;全てSartomerから入手可能なCN501、CN550、CN UVA421、CN3705、CN3715、CN3755、CN381 及びCN386;RAHNから入手可能なGENOMER 5142、GENOMER 5161、GENOMER 5271 及びGENOMER 5275;IGMから入手可能なPHOTOMER 4771、PHOTOMER 4967、PHOTOMER 5006、PHOTOMER 4775、PHOTOMER 5662、PHOTOMER 5850、PHOTOMER 5930、及びPHOTOMER 4250;全てBASFから入手可能なLAROMER LR8996、LAROMER LR8869、LAROMER LR8889、LAROMER LR8997、LAROMER PO 83F、LAROMER PO 84F、LAROMER PO 94F、LAROMER PO 9067、LAROMER PO 9103、LAROMER PO 9106 及びLAROMER PO77F;AGISYN 701、AGISYN 702、AGISYN 703、NeoRad P-81及びNeoRad P-85 ex DSM-AGIが含まれる。
【0094】
相乗剤の重要性を表4及び表5に示し、式1の化合物を相乗剤の添加なしで硬化性組成物に適用し、硬化に供した場合に硬化が観察されない。
【0095】
放射線硬化性組成物に組み込まれる場合、本発明で使用するための反応生成物に対する相乗剤の重量パーセント比(例えば、式1の化合物)は、50:1と1:100との間、好ましくは10:1と1:50との間、最も好ましくは3:1と1:10との間であり得る。本発明で使用するための反応生成物に対する相乗剤の重量パーセント比は、1:15~5:1、例えば1:12~3:1、1:10~2:1、1:8~1:1、1:8~1:1.1、1:5~1:1.1、または1:3~1:1.1、または1:2~1:1.1の間であり得る。論じられるように、本発明で使用するための反応生成物を形成するために、アミノ(メタ)アクリレートまたはアミノ(メタ)アクリルアミド、例えばアミノアクリレートが使用される場合、本発明で使用するための反応生成物に共有結合していない相乗剤の使用を省略することができるのは、相乗剤が本発明で使用するための反応生成物の共有結合成分として存在するからである。しかしながら、それにもかかわらず、この反応生成物を含む本発明の組成物に追加のアミン相乗剤を添加してもよい。
【0096】
本発明のインク、コーティング、ワニス、及び接着剤組成物に使用するための相乗剤は、任意の水素ドナーである。本発明のインク、コーティング、ワニス、及び接着剤組成物に使用するための相乗剤は、第三級アミン、アルコール、エーテル、エステル、及びチオールを含むα位に活性水素原子を有し得る。本発明のインク、コーティング、ワニス及び接着剤組成物に使用するための相乗剤は、好ましくはアミン、例えば第三級アミンまたはチオールであり得る。
【0097】
キットで使用するための相乗剤、ならびに本発明のインク、コーティング、ワニス、及び接着剤組成物は、750gmol-1未満、例えば650gmol-1未満、500gmol-1未満、400gmol-1未満、または200gmol-1未満の分子量を有し得る。相乗剤は、本明細書で定義される分子量を有するアミン相乗剤であってもよい。本発明で使用するための反応生成物が、(r+s)≧6またはr≧5を有する式1の化合物である場合、相乗剤(例えば、アミン)は、好ましくは500gmol-1未満、例えば400gmol-1未満、例えば200gmol-1未満の分子量を有する。
【0098】
本発明の組成物及び追加のモノマーを含む重合性混合物
本発明の組成物は、自己硬化性樹脂として使用することができる(本発明で使用するための反応生成物は、エチレン性不飽和モノマー基を更に含む)。少なくとも1つの(メタ)アクリレート基(すなわち、r≠0である)を含む反応生成物を含む本発明の組成物が特に好ましい。代替的または追加的に、本発明の組成物は、エチレン性不飽和モノマーを含む組成物中の光開始剤として使用することができる。
【0099】
重合開始剤として使用される場合、本発明で使用するための反応生成物は、重合性光開始剤、多官能性光開始剤、ポリマーまたはオリゴマー光開始剤からなる群から選択される拡散障害光開始剤である。
【0100】
相乗剤と組み合わせて使用される場合、式1の化合物は光開始剤として作用し、(メタ)アクリレート等の追加のモノマー種を含む光硬化性組成物に組み込まれて、化学線を使用して硬化可能なインク、コーティング、ワニス、及び接着剤を形成することができる。相乗剤及びエチレン性不飽和化合物と組み合わせた式1の化合物を含むそのような重合性組成物の硬化は、組成物を硬化条件、例えば200~450nmの波長の光の照射に供することによって達成することができる。
【0101】
驚くべきことに、式1の化合物を相乗剤及び任意にエチレン性不飽和化合物(例えば、(メタ)アクリレート)と組み合わせて含む硬化性組成物は、アクリレートのフリーラジカル重合に使用される先に記載された芳香族非含有マイケル付加生成物よりも反応性が高く、異なる機構によって反応することが見出された。これに関して、US2003/0225180A1は、ベンゾイル基を含まない二置換脂肪族β-ケトエステル及びβ-ジケトンを開示している。前述のように、ベンゾイル基の非存在及びα-炭素の二置換は、開示された化合物がエノール互変異性体を形成することができず、したがって共役π系を含まず、II型の光開始を受けることができないことを意味する。上述のUS7407707B2、US7232540及びUS7291658B2も、そのような種に関する。
【0102】
式1の化合物上の(メタ)アクリレート基の任意の存在により、化合物は、相乗剤単独と組み合わせて硬化性組成物を形成することができる。しかし、ほとんどの場合、硬化性組成物は、意図された用途のために、粘度、硬度及び接着性等の特性を調整するために、他のエチレン性不飽和化合物を更に含む。
【0103】
エチレン性不飽和モノマー
適切な単官能エチレン性不飽和モノマーの例としては、以下(及びそれらの組合せ)が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、エトキシ化という用語は、エチレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、プロポキシ化は、プロピレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、アルコキシル化は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのいずれかまたは両方を使用する鎖延長化合物を指す。当業者は、メタクリレート化合物がそれらの同等のアクリレート対応物:イソブチルアクリレート;シクロヘキシルアクリレート;イソオクチルアクリレート;n-オクチルアクリレート;イソデシルアクリレート;イソノニルアクリレート;オクチル/デシルアクリレート;ラウリルアクリレート;2-プロピルヘプチルアクリレート;トリデシルアクリレート;ヘキサデシルアクリレート;ステアリルアクリレート;イソステアリルアクリレート;ベヘニルアクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;4-t.ブチルシクロヘキシルアクリレート;3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート;イソボルニルアクリレート;ジシクロペンチルアクリレート;ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート;ジシクロペンタニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェノキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート;アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート;クミルフェノキシエチルアクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート;2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート;ポリプロピレングリコールモノアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート;メトキシトリエチレングリコールアクリレート;トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート;ジエチルグリコールブチルエーテルアクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;エトキシル化エチルヘキシルアクリレート;アルコキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;プロポキシ化ノニルフェノールアシレート;ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート;エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;アルコキシル化ラウリルアクリレート;エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート;N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド;N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)エチルカルバメート;コハク酸水素アクリロイルオキシエチル;オクトキシポリエチレングリコールアクリレート;オクタフルオロペンチルアクリレート;2-イソシアナトエチルアクリレート;アセトアセトキシエチルアクリレート;アクリル酸2-メトキシエチル;ジメチルアミノエチルアクリレート;アクリル酸2-カルボキシエチル;4-ヒドロキシブチルアクリレートよりも低い反応性を有することを理解するであろうが、同等のメタクリレート化合物も使用することができる。
【0104】
本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。適切な二官能性または三官能性または多官能性エチレン性不飽和モノマーの例としては、以下(及びそれらの組合せ)が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、エトキシ化という用語は、エチレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、プロポキシ化は、プロピレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、アルコキシル化は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのいずれかまたは両方を使用する鎖延長化合物を指す。同等のメタクリレート化合物も使用することができるが、当業者は、メタクリレート化合物がそれらの同等のアクリレート対応物よりも低い反応性を有することを理解するであろう:1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;プロポキシ化ヘキサンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジオールジアクリレート;1,10デカンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;プロポキシ化エチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ポリプロピレングリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ポリブタジエンジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバリン酸ジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;2-ヒドロキシ-3-{4-[2-ヒドロキシ-3-(ビニルカルボニルオキシ)プロポキシ]ブトキシ}プロピルアクリレート(好ましい実施形態である-SartomerからCN132として市販);エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート;アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;グリセロールプロポキシレートトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;メラミンアクリレートオリゴマー;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、200~2000の分子量を有する任意のポリエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート;200~2000の分子量を有するポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート。
【0105】
これらの製剤に部分的に使用することができる他の官能性モノマークラスとしては、N-ビニルカプロラクタム等の環状ラクタム、N-ビニルオキサゾリジノン及びN-ビニルピロリドン、ならびにアクリロイルモルホリン等の2級または3級アクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;N-メチルアクリルアミド;N-エチルアクリルアミド;N-イソプロピルアクリルアミド;N-t.ブチルアクリルアミド;N-ヘキシルアクリルアミド;N-シクロヘキシルアクリルアミド;N-オクチルアクリルアミド;N-t.オクチルアクリルアミド;N-ドデシルアクリルアミド;N-ベンジルアクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド;N-イソブトキシメチルアクリルアミド;N-ブトキシメチルアクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド;N,N-ジエチルアクリルアミド;N,N-プロピルアクリルアミド;N,N-ジブチルアクリルアミド;N,N-ジヘキシルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド;N,N-ジエチルアミノメチルアクリルアミド;N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド;N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド;及びN,N’-メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0106】

本発明で使用するための反応生成物は、インク、コーティングまたは接着剤等の本発明の重合性混合物中に30重量%までの量で存在し得る。本発明で使用するための反応生成物は、本発明の重合性混合物、例えばインク、コーティングまたは接着剤中に、0.1から30重量%、例えば5~25重量%、10~20重量%、10~18重量%、12~18重量%、または10~15重量%の量で存在することが好ましい。本発明で使用するための反応生成物は、最大10重量%、例えば0.1~10重量%の量で存在し得る。
【0107】
本発明で使用するための反応生成物が自己硬化性である場合、すなわち、本発明で使用するための反応生成物が、(メタ)アクリレート基または(メタ)アクリルアミド基から選択される少なくとも1つの共有結合した重合性エチレン性不飽和基を含む場合、反応生成物は、自己硬化性組成物中に90%までの量で存在し得る。例えば、本発明の自己硬化反応生成物は、10~90重量%、20~90重量%、40~90重量%、60~90重量%、70~80重量%、または70~90重量%の量で存在することができる。
【0108】
アミン相乗剤等の相乗剤は、本発明の重合性混合物、例えばインク、コーティングまたは接着剤中に、1~30重量%、例えば3~25重量%、5~20重量%、7~15重量%、または5~10重量%の量で存在し得る。アミン相乗剤は、本発明の重合性混合物、例えばインク、コーティングまたは接着剤中に、5~15重量%、例えば約10重量%の量で存在することが好ましい。
【0109】
追加のモノマーは、本発明の重合性混合物、例えばインク、コーティングまたは接着剤中に、30重量%~90重量%、例えば40~80重量%、45~70重量%、35~60重量%、35~50重量%、または40~60重量%の量で存在してもよい。
【0110】
例えば、本発明の硬化性組成物は、30重量%~90重量%、例えば40~80重量%、45~70重量%、35~60重量%、35~50重量%、または40~60重量%、または二官能性、三官能性または多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含み得る。本発明の硬化性組成物は、30重量%~90重量%、例えば40~80重量%、45~70重量%、35~60重量%、35~50重量%、または40~60重量%、または二官能性及び三官能性(メタ)アクリレートモノマーを含み得る。
【0111】
重量比
先に記載された成分(相乗剤及び式1の化合物)の混合物と追加の(メタ)アクリレートモノマーとの間の重量比は、放射線硬化性組成物の配合物中の化合物の100:1~1:500、好ましくは20:1~1:100、最も好ましくは1:1~1:50であり得る。式1の化合物が残りのアクリレート官能基を含む場合、アクリレートの使用は省略されてもよいことに留意されたい。
【0112】
水分量
硬化性組成物は、実施例に示すように、任意に0~40重量%の水を含有してもよい。多量の水は、硬化性組成物の表面張力に悪影響を及ぼし得る。本発明のインクまたはコーティングは、30重量%未満の水、例えば20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、または2重量%未満の水を含むことが好ましい。
【0113】
界面活性剤
ほとんどの場合、無傷の膜を形成するには、1つまたは複数の界面活性剤(Solvay社のAerosol OT-75等)の組合せが必要になる。界面活性剤は、硬化性組成物の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは3重量%未満の量で使用される。
【0114】
顔料及び着色剤
本発明のエネルギー硬化性インクは、その中に分散された染料または顔料の形態の1つまたは複数の着色剤を含有してもよい。本発明での使用に適した顔料には、従来の有機または無機顔料が含まれる。代表的な顔料は、例えば、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー63、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー106、ピグメントイエロー111、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー121、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー136、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー188、ピグメントイエロー194、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ61、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ64、ピグメントレッド2、ピグメントレッド9、ピグメントレッド14、ピグメントレッド17、ピグメントレッド22、ピグメントレッド23、ピグメントレッド37、ピグメントレッド38、ピグメントレッド41、ピグメントレッド42、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド81:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド170、ピグメントレッド184、ピグメントレッド210、ピグメントレッド238、ピグメントレッド266、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー61、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントバイオレット1、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントブラック7の群から選択され得る。
【0115】
樹脂/不活性樹脂
本発明の放射線硬化性組成物は、しばしばアクリル樹脂(スチレンを含む)、ポリ(エステル)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アミド)ケトン樹脂、エポキシ、アルデヒド樹脂(メラミン-ホルムアルデヒドを含む)、尿素、アルキド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ロジン樹脂、炭化水素樹脂、ニトロセルロース、ビニル樹脂、スチレンまたは上記の混合物と呼ばれるポリ(アクリレート)等の、1000~30000ダルトン、好ましくは1000~4000ダルトンの重量数平均の硬化性アクリル基を有さない不活性非硬化性樹脂を含有してもよい。このような樹脂は、接着性、光沢、レオロジー及び柔軟性を改善する。
【0116】
添加剤
本発明の放射線硬化性組成物及びインクは、硬化したコーティングまたは印刷されたインクの流れ、表面張力、光沢及び耐摩耗性を改変するための通常の添加剤を含有してもよい。本発明のインクまたはコーティングに組み込むことができる添加剤の例としては、界面活性剤、ワックス、またはそれらの組合せが挙げられる。更なる添加剤としては、レベリング剤、湿潤剤、スリップ剤、防曇剤、分散剤及び脱気剤が挙げられる。好ましい添加剤としては、フルオロカーボン界面活性剤、シリコーン及び有機ポリマー界面活性剤、ならびにタルク等の無機材料が挙げられる。そのような添加剤の市販例としては、Tegorad製品ライン(Tegoradは商標であり、Tego Chemie,Essen,Germanyから市販されている製品である)及びSolsperse製品ライン(Solsperseは商標であり、Lubrizol社の市販品である)が挙げられる。
【0117】
追加の光開始剤
本発明の放射線硬化性組成物に組み込むことができる更なる任意の添加剤には、追加の光開始剤が含まれる。論じたように、本発明の組成物は、他のモノマーの光開始剤として、または自己硬化性樹脂として作用することができるため、本発明の硬化性組成物には追加の光開始剤は必要ない。しかしながら、追加の光開始剤が存在する場合、それらは5重量%未満、例えば2重量%未満、1.5重量%未満、より好ましくは1重量%以下、例えば1重量%未満の量で組み込まれることが好ましく、特に分子量が約500ダルトン未満の光開始剤の場合に適している。
【0118】
低分子量の追加の光開始剤の例としては、α-ヒドロキシケトン、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン;2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-tert-ブチル-プロピオフェノン;2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチル-プロピオフェノン;2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-メチル-プロピオフェノン;オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチル-ビニル)フェニル]プロパノン;ビス[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)フェニル]メタン;2-ヒドロキシ-1-[1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]-1,3,3-トリメチルインダン-5-イル]-2-メチルプロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。
【0119】
更なる例には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド;エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸;及びビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシドが含まれる。更なる例としては、α-アミノケトン、例えば、2-メチル-1-[4-メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン;及び2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。更なる例としては、2-4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のチオキサントンが挙げられる。
【0120】
更なる例としては、ベンゾフェノン、例えば、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、及び4-メチルベンゾフェノン;メチル-2-ベンゾイルベンゾエート;4-ベンゾイル-4-メチルジフェニルスルフィド;4-ヒドロキシベンゾフェノン;2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;ベンゾフェノン-2-カルボキシ(テトラエトキシ)アクリレート;4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレート及び1-[-4-[ベンゾイルフェニルスルホ]フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オンが挙げられる。
【0121】
更なる例としては、フェニルグリオキシレート、例えば、フェニルグリオキシル酸メチルエステル;オキシ-フェニル-酢酸2-[ヒドロキシル-エトキシ]エチルエステル、またはオキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステルが挙げられる。更なる例としては、オキシムエステル、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム;[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾエート、または[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]-エチリデンアミノ]アセタートが挙げられる。
【0122】
他の適切な光開始剤の例としては、ジエトキシアセトフェノン、ベンジル;ベンジルジメチルケタール;チタン-ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]等のチタノセンラジカル開始剤;9-フルオレノン;カンファーキノン;2-エチルアントラキノン等が挙げられる。
【0123】
例えば、ポリマーまたはオリゴマーアミン相乗剤、例えば、IGMからのOmnipol894、アミノベンゾエート(RAHN製のGENOPOL AB-1またはAB-2、IGM製のOmnipol ASA、またはLambson製のSpeedcure7040)、ポリマーベンゾフェノン誘導体(RAHN製のGENOPOL BP-1またはBP-2、IGM製のOmnipol BP、Omnipol BP2702またはOmnipol682、またはLambson製のSpeedcure7005)ポリマーチオキサトン誘導体(RAHN製のGENOPOL TX-1またはTX-2、IGM製のOmnipol TX、またはLambson製のSpeedcure7010)、IGMからのOmnipol910等のポリマーアミノアルキルフェノン;IGMからのOmnipol2712等の高分子ギ酸ベンゾイルエステル;及びIGM製のポリマー増感剤Omnipol SZを含むポリマー光開始剤及び増感剤も適している。
【0124】
好ましくは、本発明の放射線硬化性組成物は、十分な硬化性を提供し、その結果、高度に着色されたUVインクにおいて、硬化を促進するために一般に必須であるモノマー光開始剤を回避することができる。
【0125】
本発明の放射線硬化性組成物は、硬化したコーティングまたは印刷されたインクの流れ、表面張力、光沢及び耐摩耗性を改変するための通常の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、レベリング剤、缶内安定剤、湿潤剤、スリップ剤、流動剤、分散剤及び脱気剤として機能し得る。好ましい添加剤としては、フルオロカーボン界面活性剤、シリコーン及び有機ポリマー界面活性剤、ならびにタルク等の無機材料が挙げられる。例えば、Tegorad製品ライン(Tegoradは商標であり、Tego Chemie,Essen,Germanyから市販されている製品である)及びSolsperse製品ライン(Solsperseは商標であり、Lubrizol社の市販品である)が挙げられる。
【0126】
本発明の放射線硬化性組成物及びインクは、吸水、ミスチング及び着色強度を調整するために、粘土、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたはシリカ等の通常の増量剤を含有してもよい。
【0127】
オリゴマーは、UVインクのためのビヒクルを提供する物質である。それらは、それらが既に部分的に重合されており、それらをより粘性にすることを除いて、モノマーと同様である。硬化中、モノマーはオリゴマーと反応して三次元の鎖を生成する。印刷業界では、主にアクリレート官能基を有する樹脂/オリゴマーが、現代の高速プレスのための適切な硬化を可能にするために必要な反応性を提供するために使用される。
【0128】
アクリル化オリゴマーの主なクラスには、エポキシアクリレート;ウレタンアクリレート;ポリエステルアクリレート;アクリルアクリレート;高分岐ポリエステルアクリレート;水系UVポリウレタン分散物及び有機-無機ハイブリッド材料が含まれる。
【0129】
ジベンゾイル化合物とマイケルアクセプターとのマイケル付加のための反応条件。
化学量論
論じられるように、本発明で使用するための反応生成物は、アクリレート等のエチレン性不飽和化合物を含むインク、コーティングまたはワニス中の光開始剤として使用することができる。したがって、マイケルアクセプター化合物がエチレン性不飽和重合性モノマーの形態である場合、化学量論的に過剰のマイケルアクセプターを添加することは、残留マイケルアクセプターをインク、コーティングまたはワニスのモノマー成分として使用することができるので、重要ではない。対照的に、本発明で使用するための最終反応生成物中に残留(すなわち未反応)ジベンゾイルメタンまたはその誘導体を有することは望ましくなく、なぜならそのような種は光開始剤として作用せず、潜在的に移動可能な成分として硬化生成物中に存在するからである(例えば、表4及び表5を参照されたい)。更に、アボベンゾン等の種は、広い吸収スペクトル及び高い吸光係数を有するため、PI種に利用可能な光を減少させることさえあり得、多くの日焼け防止ローションにおけるそれらの使用の理由である。
【0130】
合成手順の工程を以下に定義する。完全を期すために、各工程を単一の反応容器内で行うことができる。以下の合成手順は、精製、単離を必要とせず、または記載された工程のいずれかの間の更なる処理工程を含む。しかしながら、そのような追加の工程は、本方法から除外されない。
【0131】
工程1-マイケルドナーの脱プロトン化(上記の図4を参照)
マイケルドナー材料であるジベンゾイルメタンまたはその誘導体と、マイケルアクセプター化合物、例えば(メタ)アクリレートとの反応は、好ましくは、ジベンゾイルメタンまたはその誘導体と塩基性触媒とを反応させて、ジベンゾイルメタンの安定化されたドナーアニオンまたはその誘導体を形成することによって開始される。塩基性触媒は、化学量論量または準化学量論量で使用することができる。好ましい塩基性触媒には、アミンまたはアミドが含まれる。第二級または第三級アミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)を含むアミド等の非求核性塩基、カリウムまたはナトリウムtert-ブトキシド等のアルコラート、イソプロポキシド、メタノレートまたはエタノールレート、及び水素化ナトリウムも好ましい。塩基性触媒は、ジベンゾイル種の質量に対して約0.5~25wt%の触媒量で使用することが好ましい。
【0132】
本発明で使用するための反応生成物の合成のための温度は重要ではない。通常、合成は、0℃~160℃の間、好ましくは60℃~145℃の間の温度で行われる。合成は、マイケルアクセプター基、例えば(メタ)アクリレート基または(メタ)アクリルアミド基等のアクリル酸由来の基と、マイケルドナー種、例えばジベンゾイルメタン種との比が1:1~100:1、より好ましくは1:1~50:1の比で行われてもよい。
【0133】
本発明で使用するための反応生成物の形成に溶媒を任意に使用することができる。溶媒を使用する場合、溶媒は、好ましくは、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン、メタノール等のアルコール等の有機溶媒、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及び/またはジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒、またはそのための組合せである。本発明で使用する生成物の形成は、溶媒の除去が不必要であるように、溶媒の非存在下で行われることが好ましい。
【0134】
任意に、反応生成物の形成時の混合物の予備重合を避けるために、本発明で使用する反応生成物を製造するために使用される成分の混合物に、HQME(4-メトキシフェノール)等の抑制剤/安定剤が添加される。
【0135】
塩基の使用は、マイケル付加反応を行うための1つの可能な合成手順である。更に、FeClまたはZnCl等のルイス酸を含む酸触媒も付加反応に使用することができる。例えば、CN103806120には、FeClを使用したジベンゾイルメタンへのHDDAの添加が記載されている。しかしながら、ルイス酸の使用は、一般に、所望の反応生成物の収率を低下させ、ならびにはるかに多くの着色生成物を与え、不純物の存在を示す。したがって、塩基、特にDBU及びDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)等の非求核性塩基の使用が好ましい。
【0136】
工程2:マイケルアクセプターとの反応(上記の図5を参照されたい)
工程1で形成されたアニオンへの、アクリレート基含有材料等のマイケルアクセプター材料のその後の添加は容易に起こり、式1の化合物の形成をもたらす。
【0137】
溶媒、好ましくはトルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等の有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の任意のアルコール、またはジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒を任意に使用することができる。しかしながら、この工程は、溶媒の除去が不必要であるように、溶媒の非存在下で実施されることが好ましい。
【0138】
反応は、0℃~180℃の間の好ましい温度及び大気圧未満または大気圧以上の圧力で行うことができる。好ましくは、反応は、大気圧及び60~140℃の温度で行われる。反応の進行に続いて、GPC等の一般的な分析装置を使用することができ、これは、それぞれの出発物質よりも高分子量の新しいピークとして付加生成物の形成を示す。出発材料及び反応条件に応じて、プロセスのこの工程は、マイケルドナー材料が完全に消費される前の1時間未満から最大20時間までかかり得る。好ましくは、反応混合物を1~10時間、より好ましくは1~5時間反応させる。
【0139】
興味深いことに、ジベンゾイルメタン及びその誘導体は、単官能性、二官能性、三官能性または多官能性(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び/またはハロゲン化有機酸またはエステル等のマイケルアクセプターによるα-炭素での単一置換のみを受けることが見出された。ジベンゾイルメタンまたはその誘導体の酸性メチレン水素の両方が置換されて、エノール形成が不可能な生成物が得られる望ましくない二置換類似体の形成は観察されなかった。
【0140】
本発明で使用するための単一置換反応生成物は、α-炭素での二置換が生じる脂肪族β-ジカルボニル化合物と類似の反応を行う場合に得られる反応生成物とは著しく対照的である。実施された実験のいずれにおいても、電子スプレーイオン化(ESI)を使用する飛行時間(TOF)質量分析(MS)等の非常に高度な分析方法を使用した場合でも、二置換ジベンゾイルメタン生成物は検出されなかった。
【0141】
工程3(任意):再プロトン化:(上記の図6を参照されたい)
この工程は、なぜこのプロセスに触媒量の塩基(または酸)のみが必要なのかを示している。この工程では、本発明で使用するための反応生成物がプロトン化され、塩の代わりに、中性生成物がプロセスの最終生成物として得られる。ほとんどの場合、この工程は特別な条件または反応物を必要としない。しかしながら、工程1で使用される塩基の量及び種類に応じて、酢酸、アクリル酸またはリン酸等の無機または有機酸の添加によって塩基を中和することが有利であり得る。硬化性組成物のpH値の調整は、レトロマイケル付加反応を防止し得るので有利であり得る。
【0142】
式1の最終生成物は、更なる処理または精製を行わずに得られたまま使用することができる。しかしながら、所望であれば、化合物は、再結晶、蒸留、洗浄工程等の当技術分野で公知の典型的な精製手順によって、及び/またはクロマトグラフィー分離もしくは当技術分野の他の精製方法によって精製することができる。溶媒が使用される場合、化合物は、例えばロータリーエバポレーターまたは薄膜エバポレーターでの蒸発等の当技術分野の従来の乾燥方法によって溶媒から分離することができる。得られた式1の化合物は、典型的には無色~黄色または褐色の液体であり、好ましくは約500~5,000Da(より好ましくは約800~2,500Da)の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有し、好ましくは最も一般的な(メタ)アクリレートと可溶性または相溶性である(これは、それらが均一な溶液を形成することを意味する)。粘度を調整するために、化合物を任意のエチレン性不飽和化合物と混合して重合性組成物を得ることができる。
【0143】
硬化メカニズム
本発明の放射線硬化性組成物は、例えば、高電圧水銀灯、中電圧水銀灯、キセノン電球、カーボンアークランプ、メタルハライド電球、UV-LEDランプまたは太陽光によって提供されるUV光等の化学線光源によってUV硬化することができる。適用される照射波長は、200nm~500nm程度が好ましく、250nm~400nm程度がより好ましい。UV線量は、好ましくは約30~3000mJ/cmの範囲内、より好ましくは約50~500mJ/cmの範囲内である。本発明の放射線硬化性組成物は、500mJ/cm未満、例えば400mJ/cm未満、300mJ/cm未満、250mJ/cm未満、200mJ/cm未満、150mJ/cm未満または100mJ/cm未満のUV線量で硬化することができる。また、電球は、放射線硬化性組成物の吸収スペクトルに応じて適宜選択することができる。更に、本発明の硬化性組成物は、不活性条件下で硬化させることができる。
【0144】
あるいは、本発明の放射線硬化性組成物は、電子ビーム(EB)によって硬化させることができる。市販のEB乾燥機は、例えば、WilmingtonのEnergy Science,Inc.またはWilmingtonのAdvanced Electron Beams Inc.(AEB)から入手可能である。線量としても知られる吸収エネルギーは、キログレイ(kGy)の単位で測定され、1kGyはキログラム当たり1,000ジュールに等しい。通常、完全な硬化のためには、電子線線量は10kGy~約40kGyの範囲内であるべきである。本発明の放射線硬化性組成物では、200ppm未満の酸素レベルで20~30kGyの放射線量が通常、乾燥した耐溶剤性コーティングまたはインクを得るのに十分である。
【0145】
ほとんどのタイプの市販のジベンゾイルメタンは、日焼け止め剤中または可塑剤製品としての高い光安定性及びUV吸収特性のために使用されるので、背景技術の文献は本発明の放射線硬化性組成物を開示せず、そのような組成物も当業者には自明ではない。したがって、そのような化合物が、ジベンゾイル部分の両方のカルボニル官能基に隣接するメチレン基での一置換後及びH-ドナー(相乗剤)と混合した後に光開始剤に変わることは非常に予想外であった。
【0146】
硬化性組成物の硬化特性:
表9の実験では、一般式1の化合物を表すジベンゾイルメタン自体とアルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートとの付加物(フォトマー4172F)を三官能性アクリレート(GPTA、例えばベルギーのAllnex社のOTA480として市販)に溶解し、表に示す相乗剤(アミン成分として、Allnexの反応性アミン添加剤Ebecryl P116またはトリエタノールアミンを使用した)。60℃で短時間撹拌した後、混合物は均質になった。
【0147】
表9は、一般式1の化合物を含有する本発明の放射線硬化性組成物がベンゾフェノンと同様に非常に良好な硬化特性を示すことを明確に示している。
【0148】
更に、表5及び表6は、放射線硬化性組成物が相乗剤が存在しない場合には無効であることを示す。
【0149】
コーティング及びインクにおける硬化性組成物の使用:
本発明の放射線硬化性組成物の高い反応性のために、本発明の放射線硬化性組成物は、放射線硬化性印刷インク及びコーティング、例えばUV-フレキソインク、UV-インクジェットインク、UV-グラビアインクまたはUVオフセットインクに特に適している。顔料及び染料は通常、重合のためのラジカルを形成するために必要とされる光を吸収するので、高反応性放射線硬化性組成物が特にインクに好ましい。インクは、通常、乾燥顔料をその中に粉砕することによって、または顔料プレスケーキをその中にフラッシングすることによって作製される。低移行性インクの場合、ミルビーズからの摩耗材料がインクを汚染する可能性があるため、乾式粉砕が好ましい。インクの典型的な製造手順では、必要量の乾燥顔料を、一般式1の化合物のアクリレート溶液と、相乗剤と共にミキサーで15~30分間混合して、全ての顔料を濡らす。次いで、分散した顔料を、所望の粉砕仕様が満たされるまで3本ロールミルで粉砕する。次いで、モノマー、オリゴマー、及び添加剤(複数可)、例えばワックス、タルク等を含有する催乳ビヒクルをこのミルベースに添加し、所望の粒径及び色強度が達成されるまで、3本ロールミルに1回または2回通過させる。
【0150】
インクの粘着性及び粘度は、レオメーター及びタックオスコープでこれらの値を測定し、適切な量のモノマーを添加して完成したインクに到達させることによって調整される。
【0151】
25℃で20~50Pas(D=501/s)の粘度を有する、乾式粉砕法によって調製されたオフセットインク配合物は、表1の以下の成分を含有する。
【0152】
【表1】
【0153】
ミルベースから調製され、25℃で0.5~2Pas(D=50 1/s)の粘度を有するUV-フレキソインク配合物は、表2の成分を含有する。
【0154】
【表2】
【0155】
インクジェットプリンターによって適用することができ、25℃で1~800mPa・s(D=501/s)の粘度を有し、表3の成分を含むUV-デジタルインク配合物。
【0156】

【表3】
【0157】
25℃で15~30Pas(D=50 1/s)の粘度を有する3-3ロールミルで調製されたUVスクリーンインク配合物は、表4の成分を含有する。
【0158】
【表4】
【0159】
本発明の放射線硬化性組成物は、ワニスならびに着色インクにおいて高い硬化性を提供する。本発明の高反応性放射線硬化性組成物を、表1に記載の着色された実験用インク中で使用することによって、低分子量I型光開始剤分子を回避することが可能であることが観察された(本発明の硬化性組成物を光開始剤として使用するだけで2つのUVオフセットインクが配合物中で硬化される実施例43及び実施例44を参照のこと)。これは、低分子量光開始剤の総量をかなり低減するか、または完全に省略することができるので、低移行性インクにとって特に有益である。
【0160】
これは、当技術分野で知られているものに対して本発明の1つの価値を明らかに示す。(高分子量または残留アクリレート官能性のいずれかによって)拡散が妨げられた光開始剤を製造する既存の技術があるが、LM用途のためにこれらの光開始剤を形成するプロセスははるかに複雑であり(2つ以上の合成工程;多くの場合、複雑な精製工程が必要である)、このような化合物の用途を制限している。
【0161】
基材
印刷される基材は、紙、プラスチック、金属、及び複合材料等の任意の典型的な基材材料から構成されてもよい。基材は、出版物に典型的に使用される印刷ストックであってもよく、またはシート、ボトルもしくは缶等の容器の形態の包装材料等であってもよい。ほとんどの場合、包装材料は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、またはアルミニウム箔、金属化ポリエステル、または金属容器等の金属である。
【0162】
本発明の放射線硬化性組成物は、移動する傾向があるかまたは健康リスクを引き起こす疑いがある低分子量分子、例えば500ダルトン未満が好ましくは存在しないような用途に特に適している。このような用途は、例えば、特に小さな光開始剤分子が望ましくない(食品)包装物品のコーティングである。エネルギー硬化性組成物が包装材料に適用され、完全に硬化されると、それは食品、飲料、化粧品、生物学的材料または標本、医薬品等の任意の種類の液体または固体材料を含有するために使用され得る。
【0163】
以上、本発明をその好ましい実施形態を含めて詳細に説明した。しかしながら、本開示を考慮すると、本発明は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正、置換、部品の再配置及び/または改良が可能であることが当業者には明らかであろう。
【0164】
本発明は、以下の番号付き段落によって更に説明される。
【0165】
1.
a)2つ以上の活性メチレン水素及び少なくとも2つの任意に置換されたベンゾイル部分を含む1つまたは複数の芳香族マイケル付加ドナー材料と、
b)1つまたは複数のマイケル付加アクセプター材料と、
を含む、組成物であって、
相乗剤と組み合わせて使用された場合にフリーラジカル重合反応を開始することができる反応生成物である、前記組成物。
【0166】
2.前記相乗剤がアミン相乗剤である、段落1に記載の組成物。
【0167】
3.前記マイケル付加ドナー材料が、ジベンゾイルメタンまたは置換ジベンゾイルメタンである、段落1に記載の組成物。
【0168】
4.前記ジベンゾイルメタンまたは置換ジベンゾイルメタンが、4-フェニル-ジベンゾイルメタン(IUPAC名:1-(4-ビフェニリル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン)である、段落2に記載の組成物。
【0169】
5.EITからのPower Puck IIによって測定される500mJ/cm未満のUV線量(UV-A、UV-B及びUV-C照射の和)によって硬化可能である、段落1の組成物。
【0170】
6.前記マイケル付加アクセプター材料が、単官能性、二官能性、三官能性もしくは多官能性アクリレートもしくはポリエステルアクリレート、またはマイケル付加ドナーと反応することができるハロゲン-有機化合物からなる群のいずれかから選択される、段落1の組成物。
【0171】
7.前記反応生成物が式2の1,3-ジケトン(そのケト互変異性体及び/またはエノール互変異性体のいずれかまたは両方)であり、
【化2】

式中、R及びRは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、任意に置換された直鎖または分岐C1~C12アルキル、C3~C6-シクロアルキル、C1~C12-アルコキシ基からなる群から選択され、
p及びqは0~5の整数であり、
は、C1~C12アルキル、C1~C12アルコキシからなる群から選択され、
Zは、エステル官能基をもたらすO、またはアミド官能基をもたらすNHのいずれかであり、
は、以下:
a)任意にCH単位が-O-で置換されて、ポリエーテル鎖が生じる、1~200個の炭素原子を含有する任意に置換された直鎖または分岐アルキル基;
b)任意にCH単位が-O-で置換されて、例えばビニルエーテル官能基を有するポリエーテル鎖を生じる、1~20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルケニル基;
c)任意に、CH単位が-O-によって置換されて複素環が生じる、C3~C12-シクロアルキル;
d)任意にCH単位がOで置換された、1~12個の炭素原子を含有する任意に置換されたアリール基;
e)C1~C12-アルコキシ基;
f)ヒドロキシル基;
g)第一級、第二級、または第三級アミノ基;
h)アミド基;
i)Yがヒドロキシル基、-OR基またはSR基を表し、RがC1~C4アルキル基を表す、式-CO-Yのカルボニル基;
からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを表し、
任意にr個の末端メタ(アクリレート)官能基を有し、これは、rが0~10の整数であることを意味する、
任意の前の段落の組成物。
【0172】
8.Rがメチル(-CH2-)またはエチルCH-CH基を表す段落5の組成物。
【0173】
9.Rがヒドロキシル及びアミンによる置換を含む、段落5に記載の組成物。
【0174】
10.相乗剤と組み合わせて、任意の前の段落の組成物を含む放射線硬化性インクまたはコーティング組成物。
【0175】
11.前記相乗剤が任意の水素ドナーである、段落8に記載のインクまたはコーティング組成物。
【0176】
12.1つまたは複数の単官能性、二官能性または多官能性アクリレートを更に含む、段落8に記載のインクまたはコーティング組成物。
【0177】
13.前記アクリレートがポリエステルアクリレート及びメタクリレートである、段落10に記載のインクまたはコーティング組成物。
【0178】
14.7重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下の1つまたは複数の追加の光開始剤を含む、段落8~11のいずれか1つに記載のインクまたはコーティング組成物。
【0179】
15.前記1つまたは複数の追加の光開始剤が分割型光開始剤または増感剤を含む、段落12に記載のインクまたはコーティング組成物。
【0180】
16.印刷され硬化されたインク膜を提供するためのプロセスであって、段落8~11のいずれか1つまたは複数のインクまたはコーティング組成物を基材上に適用することと、前記インクまたはコーティングを硬化させることとを含むプロセス。
【0181】
17.200nm~450nmの領域の放射線に曝露すると硬化が行われる、段落14に記載のプロセス。
【0182】
18.硬化が、レーザー、発光ダイオード(UV-LED)、水銀電球、またはドープ水銀電球によって発せられるようなUV光に曝露されると行われる、段落14に記載のプロセス。
【0183】
19.得られた硬化したインクまたはコーティング膜が抽出可能物を含み、10ppm未満である、段落14に記載のプロセス。
【0184】
以上、本発明をその好ましい実施形態を含めて詳細に説明した。しかし、当業者であれば、本開示を考慮すれば、本発明の範囲及び精神の範囲内で本発明に修正及び/または改良を加えることができることが理解されよう。
【実施例
【0185】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明され、これらの実施例は本発明を更に説明するものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、本発明の範囲を限定するものでもない。
【0186】
特に明記しない限り、「分子量」または「平均分子量」への言及は数平均分子量(M)である。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC-下記参照)等の当技術分野で公知の技術によって測定することができる。
【0187】
定義
AVO アボベンゾン(1-[p-(tert-ブチル)フェニル]-3-(p-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオン
CN-132 脂肪族ジアクリレートオリゴマー:1,4-ブタンジオール-ジ-グリシジルエーテル-ジアクリレート(2-ヒドロキシ-3-{4-[2-ヒドロキシ-3-(ビニルカルボニルオキシ)プロポキシ]ブトキシ}プロピルアクリレート)を含有する市販品
CN-386 単官能性アクリル化アミン相乗剤。以下を含有する市販製品:2-プロペン酸、(1-メチル-1,2-エタンジイル)ビス[オキシ(メチル-2,1-エタンジイル)]エステルとジエチルアミンの反応生成物
DPGDA ジプロピレングリコールジアクリレート
DPHA ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
DBM ジベンゾイルメタン
4-Ph-DBM 1-(4-ビフェニリル)-3-フェニル-1,3-プロパンジオン
DBU 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
Genopol AB2 多官能性アミノ安息香酸誘導体
GPTA グリセロールプロポキシトリアクリレート
HDDA ヘキサンジオールジアクリレート
PPTTA Laromerとしても知られている、PPTTA=アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Mn=860g/mol)
SR259 ポリエチレングリコールジアクリレート
【0188】
試験方法:
粘度
粘度は、ISO3219に従い、コーンアンドプレート型レオメーターMCRシリーズ(Anton Paar-Physika)を使用して測定される。硬化性組成物、コーティング及びインクを測定するための測定幾何学的形状は、直径25mm(CP-25)及び円錐の角度1°であった。測定は、D=0s-1(0粘度)、D=50s-1の範囲の制御された剪断速度での流動曲線であり、これは表に与えられており、23℃でD=100s-1であった。
【0189】
ASTMD4752に準拠した耐溶剤摩擦試験
この試験方法は、硬化度の尺度として、特定の溶剤に対する硬化膜の膜抵抗を測定するために使用される。溶剤摩擦テストは、2-ブタノン(MEK)またはイソプロピルアルコール(IPA)を溶剤として使用して実行される。MEK耐性または硬化度は、コーティング(またはインク)に適用される。膜の表面を、膜の破損または破過が起こるまで、溶媒を浸したチーズクロスまたは綿布で擦る。チーズクロスの種類、ストローク距離、ストローク速度、及び摩擦のおおよその印加圧力は、試験に影響を及ぼす。標準化されていても、このテストではオペレーターごとにわずかな違いが依然としてある。実施例では、試験は常に、標準及び実験的コーティングまたは硬化性組成物の両方が互いに隣接している1つのBYKチャートを用いて同じ操作者によって行われた。これにより、実験的コーティングと参照コーティングとの良好な比較が達成される。摩擦は、二重摩擦としてカウントされる(1回の前方摩擦及び1回の後方摩擦は二重摩擦を構成する)。80回のダブル摩擦後に故障または破過が起こらない場合、耐性試験を停止し、80超を表に示す。試験は24時間行う。硬化後。本発明の硬化性組成物は、20回以上の二重摩擦、より好ましくは30回以上の二重摩擦、より好ましくは40回以上の二重摩擦、より好ましくは50回以上の二重摩擦、より好ましくは60回以上の二重摩擦、より好ましくは70回以上の二重摩擦、最も好ましくは80回以上の二重摩擦の二重摩擦に耐えることができる。
【0190】
GPC
これは、単分散ポリスチレン換算分子量較正標準及びGPCカラム(PSS(Polymer Standards Service-USA,Inc)によって製造)、適用カラム組合せ:SDV5μm 1000Å、SDV 5μm 500Å、SDV 5μm 100Å)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー、特にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。カラム流量は1.0ml/minとし、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃、示差屈折率検出器(RI)及びUV検出器(254nm)を用いた。分散性DISP=(Mw/Mn)は分子量平均及び数平均の商であり、測定結果から算出した。
【0191】
実施例に記載の未反応物の量は、GPCピーク面積に基づいて決定される。
【0192】
EITのPower Puck IIによるUV線量測定:
全ての硬化実験において、UVA線量、UVB線量、UVC線量及びUVV線量(mJ/cm)を、EIT Inc.,Sterling,VA20164,USA製のUV Power Puck IIを使用して測定した。実験は以下のように行った:UV線量測定の前に硬化ユニットのUVランプ強度及びベルト速度を調整した。次いで、硬化部のベルト上にパワーパックを載せてUV線量を測定した。測定されたUVA線量、UVB線量、UVC線量及びUVV線量を合計して、最終UV線量を得る。特に明記しない限り、以下の値が得られた:
【0193】
従来のUV光(H電球、35%ランプ強度、60m/分ベルト速度)の場合。通過当たりのUV線量は、パワーパック:UVA:9.8mJ/cm、UVB:7.5mJ/cm、UVC:3.2mJ/cm、UVV:9.0mJ/cmによって与えられる。
【0194】
UV吸収
スペクトルは、Unicam UV2 UV/VIS分光光度計を使用して取得した。全ての吸収スペクトルは、200nm~800nmの範囲内で走査しながら、1cmのキュベットを用いて得た。THF中の10-4mol・dm-3の溶液を100cmメスフラスコ中で調製し、その後、必要に応じて、約1の最大吸光度が得られるように10倍に希釈した。
【0195】
アセトン二重摩擦
アセトン二重摩擦試験は、メチルエチルケトン(MEK)の代わりにアセトンを使用することを除いて、ASTM D4752に概説されている手順に従う。
【0196】
表面硬化
特に明記しない限り、放射線硬化性組成物を6μmワイヤアプリケータ(Kバー#2)で厚紙にコーティングし、m/分で100~150mJ/cmのUV線量でUV硬化した。
【0197】
UV硬化は、表面の状態に関して次のように評価した。
1=未硬化(湿潤);
2=わずかに硬化した(脂っぽい);
3=硬化ほぼ完了(slt.粘着性);
4=硬化(非粘着性)、表面硬化不完全(汚れ表面層);
5=硬化(タックフリー)、表面硬化完了(表面層に汚れなし)
【0198】
タルク試験及び金色粉末試験による表面硬化
コーティングの表面硬化は、移行性試験を行う前にタルク試験によって試験及び比較された。タルクは、さまざまなUV線量(33/66/99/132mJ/cm)で硬化した後、表面に配置される。表面に付着していないタルクを除去し、タルク変色のΔEを測定し、ここでΔEは基準及び試料の光学密度の差である。変色が少ないということは、表面硬化が良好であることを意味する。分析は、BYKチャートの黒い部分に対してのみ実行される。
【0199】
BYKチャートの白色部分にわたる硬化を評価するために、及びインクの表面硬化を評価するために、「Golden Powder」試験が使用される。試験はタルクによる表面硬化試験と同様であるが、平均粒径35μmの真鍮粉末(Cu、Zn合金)を用いた。Eckart:STANDART(登録商標)Goldbronzepulver L900 Beichgoldの顔料を使用した。カラーはE5である。粉末は、コーティング/インク上に適用され、表面に付着する。タルクと同様に、インク/コーティングの表面に付着する材料が少ないことは、より良好な表面硬化を意味する。報告された光学密度は、Gretag社のSpectroeyeスペクトル光度計で測定した黄色について得られた値である。
【0200】
オフセット試験
全てのインクのUV硬化性能は、いわゆる「セットオフ」試験によって測定される:同等の密度で印刷されたUV硬化試料の着色印刷を、UV硬化直後に白色対向紙(インカダ・エクセルまたは絹;3×3cm)で覆った。次いで、10トンの圧力(IR分光法で使用されるようなSpecacペレットプレス)で、印刷された基材及び対向紙を一緒にプレスした。圧力に達した直後に、印刷が解除され、印刷から反対紙が除去された。対向紙上の転写されたインクの量を濃度計で測定した。一般に、転写されるインクの量が少ないほど、濃度計の測定値は低く、硬化は良好である。
【0201】
色測定は、Gretag社のSpectoeyeスペクトル光度計を用いて行った。
【0202】
移行性分析:
包装材料から食品への移行性の程度を決定するために、実際の食品ではなく食品模擬物が使用される。食物模擬物は、移動の化学分析が単純化されるため、より良好である。食品模擬物は、それらの化学的特性に関して様々であり、したがって、いくつかの異なる食品タイプ:親水性(水系);親油性(脂肪食品);及び親水性と疎水性の両方の特性を有する食品を表す。例えば、油状食品への移行性は、食品模擬植物油を用いて測定される。例えば、水性の飲食品には、水性エタノールまたは希酢酸等の食品模擬物が使用されている。乾燥食品は、規定の孔径を有する合成ポリマー、Tenax(登録商標)(ポリ(2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキサイド)によってシミュレートされる。
【0203】
移行性試験のために、印刷物(100cm)の食品接触面を密封した食品模擬物と接触させ、Tenaxまたは95%エタノールを用いて40または60℃で10日間保存する。10日後、エタノールを細胞から除去し、自動蒸発器を用いて1mlに濃縮し、得られた濃縮物をGC-MS(方法IM304)によって分析した。
【0204】
次いで、純粋なアクリレートモノマーの較正曲線を用いて、移動体(アクリレート)を定量的に決定する。通常、エタノール中での移行性試験は、より厳しい試験であり、合格するのがより困難であると見なされる。表13Aに示される値は、エタノール中での移行性試験からのものである。
【0205】
本出願では、移行は、EN 1186 Materials and articles in contact with foodstuffs-Plastics,May 2002に従って行った。
【0206】
表14に記載されるように、本発明のUVコーティングは非常に良好に機能し、非常に少量の残留アクリレート移行体が検出され、すなわち特定の移行限界未満であった。
【0207】
本発明で使用するための反応生成物の調製
実施例1~8では、芳香族マイケル付加ドナー(ジベンゾイルメタン種)とマイケル付加アクセプター(主にアクリレート)との間の異なるマイケル付加反応が示されている。得られた生成物は、式1の構造の例である。
【0208】
実施例1:DPGDAへのジベンゾイルメタンの付加生成物の合成
図11:ケト型及びその互変異性エノール型のDPGDAへのDBM付加物。
【0209】
上の左側の構造はケト型を表しており、エノール型と平衡状態にあり、平衡の位置は溶媒の種類等の要因によって異なる。エノールは非局在化二重結合により対称であるため、2つのメソマー構造が示されている。
【0210】
ジベンゾイルメタン(20.0g、89.2mmol、1.0当量)、DPGDA(54.0g、223mmol、2.5当量)及びDBU(0.400g、2.63mmol、3mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を120℃で12時間撹拌した。追加のDBU(0.400g、2.63mmol、3mol%)を加え、反応混合物を120℃で更に10時間撹拌した。生成物を淡黄色の油として得た(73.0g、99%)。
【0211】
分析特性評価:GPC:M 500 g/mol,M 700 g/mol,PDI 1.4.高分解能エレクトロスプレーイオン化質量スペクトルHRMS(ESI):m/z calculated for [C2730Na]489.1883;found 489.1885.DMB付加物は、未消費アクリレート及びジベンゾイルメタンとの混合物(<9%)中で得られる。H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.01-7.99(m),7.58-7.41(m),6.43-6.31(m),6.17-6.04(m),5.50(m),5.11(m),4.09(m),3.54(m),2.50(m),2.34(m),1.24-1.10(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.9,185.7,173.1,172.7,165.9,165.6,135.8,133.6,130.6,128.9,128.6,128.2,127.1,74.0,73.5,69.4,67.3,54.8,31.7,31.4,24.2,16.5.
【0212】
実施例2A:CN-132へのジベンゾイルメタンの付加生成物の合成
CN-132(50.0g)、ジベンゾイルメタン(45.4g、0.203mol、1.0当量)、及びDBU(1.00g、6.57mmol、3.2mol%)を丸底フラスコに加え、混合物を120℃で3時間加熱した。次いで、追加のCN-132(14.0g)及びDBU(1.00g、6.57mmol、3.2モル%)を加え、混合物を120℃で更に3時間撹拌した。マイケル付加生成物がオレンジ色の油として得られた(105g、95%)。
【0213】
生成物のGPC:M970g/mol、M1120g/mol、PDI1.16;GPCによるジベンゾイルメタンの転化率は>99%であった。アセトニトリル中20ppmでのUV/Vis:lmax=241nm。HRMS(ESI):m/z:[C465012Na]に対する計算値=817.3192,実測値:817.3178.(二付加物);m/z:[C313810Na]+に対する計算値=593.2355,実測値:593.2344(単付加物).H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.04-7.90(m),7.57-7.40(m),6.38(m),6.14(m),5.84(m),5.52(m),4.50-3.40(m),3.03(m),2.55-2.38(m),2.05(m),1.60(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.9,173.2,135.6,133.6,133.0,128.8,128.5,127.9,71.2,68.6,54.7,37.3,33.1,31.4,26.1,24.1,19.2.
【0214】
実施例2B:CN-132へのアボベンゾンの付加生成物の合成
CN-132(64.0g)、アボベンゾン(63.0g、0.203mol、1.0当量)及びDBU(1.00g、6.57mmol、3.2mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を6時間120℃に加熱した。次いで、更なるDBU(1.00g、6.57mmol、3.2mol%)を添加し、混合物を120℃で更に4時間撹拌した。マイケル付加生成物を橙色油状物として得た(108g、84%)。
【0215】
生成物のGPC:M1250g/mol、M1420g/mol、PDI1.14;GPCによるアボベンゾンの変換率は>99%であった。アセトニトリル中20ppmでのUV/Vis:lmax=261nm。HRMS(ESI):m/z:[C567014Na]に対する計算値=989.4656,実測値:989.4617.(二付加物);m/z:[C364811Na]+に対する計算値=679.3087,実測値:679.3088(単付加物).H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.01-7.91(m),7.44-7.41(m),6.92-6.89(m),5.41(m),4.25-3.40(m),2.60-2.25(m),1.60(m),1.28(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.5,194.6,173.3,163.8,157.3,133.1,131.0,128.5,125.8,125.4,114.0,113.6,113.5,71.2,68.5,65.6,64.1,55.4,54.7,35.0,31.5,30.9,26.1,24.2.
【0216】
試験-例2A及び例2Bから調製したコーティング(6μm)を標準水銀電球(133mJ/cm)で硬化させた。
【0217】
【表5】
【0218】
実施例3:HDDAへのジベンゾイルメタンの付加生成物の合成
ジベンゾイルメタン(20.0g、89.2mmol、1.0当量)、HDDA(50.5g、223mmol、2.5当量)及びDBU(0.400g、2.63mmol、3mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を120℃で8時間撹拌した。生成物を淡黄色の油として得た(69.1g、97%)。
【0219】
分析特性評価:GPC:M470g/mol、M660g/mol、PDI1.4.DBM付加物は、未消費のアクリレートとの混合物として得られる。未消費のジベンゾイルメタンの量は、GPCによれば7%未満である。アセトニトリル中20ppmでのUV/Vis:lmax=246nm。HRMS(ESI):m/z:[C4242Na]に対する計算値=697.2770,実測値:697.2824(二付加物);m/z calculated for:[C2730Na]+=473.1935,実測値:473.1973(単付加物).H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.01-7.98(m),7.55-7.40(m),6.39-6.34(m),6.14-6.03(m),5.80-5.76(m),5.52(m),4.14-4.05(m),2.50-2.34(m),1.65-1.35(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.8,185.6,173.3,166.1,135.7,133.5,132.3,130.4,128.8,128.4,127.1,93.0,64.3,54.8,31.4,28.4,25.5,24.2.
【0220】
実施例4:PPTTAへのジベンゾイルメタンの付加生成物(DBM-PPTTA)の合成(PPTTA当たり約1.2DBM単位)
ジベンゾイルメタン(20.0g、89.2mmol、1.0当量)、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートPPTTA(51.1g、92.9mmol、1.04当量)、及びDBU(0.6g、3.9mmol、4.4mol%)を丸底フラスコに加え、混合物を120℃で7時間撹拌した。生成物を黄色の油として得た(57.3g、80%)。
【0221】
分析特性評価:GPC:M960g/mol、M1350g/mol、PDI1.4.DBM付加物は、未消費のアクリレートとの混合物として得られる。未消費のジベンゾイルメタンの量は、GPCによれば2%未満である。20ppmでアセトニトリル中UV/Vis:lmax=246nm.H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.01-7.99(m),7.55-7.44(m),6.38(m),6.25(m),5.84-5.80(m),5.50(m),4.22(m),3.62(m),2.66(m),2.53(m),2.35(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.9,173.2,166.1,135.7,133.6,128.9,128.6,128.2,71.0,70.5,69.0,63.6,54.8,31.4,24.1.
【0222】
例4B)PPTTAへのDBMの追加(PPTTA当たり約2.4DBMユニット)
ジベンゾイルメタン(40.0g、178mmol、1.0当量)、PPTTA(51.1g)及びDBU(1.0g、6.60mmol、3.7mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を120℃で5時間撹拌した。次いで、追加のDBU(0.5g、3.30mmol、1.8モル%)を加え、混合物を120℃で1時間加熱した。生成物を黄色の油として得た(78g、85%)。分析特性評価:GPC:M1650g/mol、M2170g/mol、PDI1.3
【0223】
未消費のジベンゾイルメタンの量は、GPCによれば1%未満である。
【0224】
実施例4C)PPTTAへのDBMの添加(PPTTA当たり約3.1DBM単位)
ジベンゾイルメタン(50.0g、223mmol、1.0当量)、PPTTA(50.0g)及びDBU(1.5g、9.85mmol、4.4mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を120℃で5時間撹拌した。生成物を黄色油状物として得た(86.0g、85%)。
【0225】
分析特性評価:GPC:M1750g/mol、M2270g/mol、PDI1.3
未消費のジベンゾイルメタンの量は、GPCによれば1%未満である。
【0226】
実施例5:アボベンゾン(4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン)からPPTTAへの付加生成物の合成
アボベンゾン(20.0g、89.2mmol、1.0当量)、PPTTA(51.1g)及びDBU(0.6g、3.9mmol、4.4mol%)を丸底フラスコに加え、混合物を120℃で7時間撹拌した。生成物を黄色の油として得た(57.3g、80%)。
【0227】
分析特性評価:GPC:M1375g/mo、M1655g/mol、PDI1.2.付加物は、未消費のアクリレートとの混合物として得られる。未消費のアボベンゾンの量は約12%である。
【0228】
実施例6:GPTAへのジベンゾイルメタンの付加生成物(DBM-GPTA)の合成
ジベンゾイルメタン(20.0g、89.2mmol、1.0当量)、GPTA(38.2g)及びDBU(0.600g、3.9mmol、4.4mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を120℃で19時間撹拌した。生成物を茶色の油として得た(56.0g、80%)。
【0229】
分析特性評価:GPC:M760g/mol、M1050g/mol、PDI1.38.DBM付加物は、未消費のアクリレートとの混合物として得られる。未消費のジベンゾイルメタンの量は、GPCによれば3%未満である。アセトニトリル中20ppmでのUV/Vis:lmax=246nm。HRMS(ESI):m/z:[C364411Na]+に対する計算値=675.2775,実測値:675.2763(単付加物).H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.01-7.98(m),7.58-7.40(m),6.41-6.36(m),6.14-6.05(m),5.81-5.77(m),5.53(m),5.09(m),3.50-3.46(m),2.51-2.35(m),1.25-1.10(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.9,172.7,165.6,135.7,133.6,130.6,128.9,128.6,73.7,72.7,71.3,69.9,54.8,31.7,24.2,16.7.
【0230】
実施例7:ブロモ酢酸エチルへのジベンゾイルメタンの付加生成物(3-ベンゾイル-4-オキソ-4-フェニル酪酸エチル)の合成
ジベンゾイルメタン(20.0g、89.2ミリモル、1.0当量)、KCO(0.600g、3.9ミリモル、4.4モル%)及びテトラヒドロフラン(100mL)を丸底フラスコに加えた。混合物を室温で撹拌し、ブロモ酢酸エチル(14.9g、89.2mmol、1.0当量)を加えた。混合物を還流下で9時間撹拌した。室温まで冷却した後、水(50mL)を加え、有機化合物をEtOAcで抽出した。有機相を水で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、生成物を茶色の固体として得た(21.2g、77%)。
【0231】
分析特性評価:融点:77℃(lit.:82-83℃;Journal of the Chemical Society,Transactions(1912),101,989-98).HRMS(ESI):m/z:m/z:[C1918Na]+に対する計算値=333.1097,実測値:333.1083.H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=7.98(d,4H),7.57(t,2H),7.45(t,4H),5.80(t,1H),4.15(q,2H),3.09(d,2H),1.23(t,3H).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.2,171.3,135.4,133.7,128.9,128.6,61.2,52.3,33.5,14.0.
【0232】
実施例8:CN-386へのジベンゾイルメタンの付加生成物の合成
ジベンゾイルメタン(20.0g、89.2mmol、1.0当量)、CN-386(93.4g、223mmol、2.5当量)及びDBU(0.400g、2.6mmol、3mol%)を丸底フラスコに添加し、混合物を120℃で7時間撹拌した。更なるDBU(0.400g、2.6mmol、3mol%)を添加し、混合物を120℃で13時間更に撹拌した。生成物を黄色の油として得た(111g、97%)。
【0233】
分析特性評価:GPC:M300g/mol、M500g/mol、PDI1.67.DBM付加物は、未消費アクリレート(約50%)との混合物で得られる。ジベンゾイルメタンの転化率は、GPCによると約50%である。
【0234】
ラジカル硬化用のPIとしてDBM付加物及び任意に水を使用した硬化性組成物/テストコーティングの調製。
【0235】
DBM自体と比較した、実施例1のDBM付加物を使用した試験用コーティングの調製及び評価:
室温で成分を撹拌及び混合することによって、さまざまなテストコーティングを調製した。組成物に使用される各成分の量は、以下の表に示される。コーティングは、約6μmの湿潤膜厚でBykチャート上に適用され、従来のUV光(H電球、35%のランプ強度、60m/分のベルト速度、3パス)の下で硬化した。パス当たりのUV線量:UVA:11.1mJ/cm、UVB:8.3mJ/cm、UVC:3.4mJ/cm、UVV:10.6mJ/cm
【0236】
UV硬化は、表面の状態に関して次のように評価した。
1=未硬化(湿潤)
2=わずかに硬化した(脂っぽい)
3=硬化ほぼ完了(slt.粘着性)
4=硬化(非粘着性)、表面硬化不完全(slt.汚れ表面層)
5=硬化(タックフリー)、表面硬化完了(表面層に汚れなし)
【0237】

【表5】
【0238】
表5は、最初に水性分散液が試験コーティングとしてどのように調製されたかを示す。水の添加は、酸素阻害を減少させ、化学線光照射(H電球)下でのコーティングの硬化を改善するのに役立つと考えられた。実施例1から得られた生成物は、アミン相乗剤なしではPIとして機能しない(実施例11)。アミン相乗剤であるトリエタノールアミンと組み合わせると(実施例9及び12)、実施例1の生成物はPI官能性を有する。DBM自体及びトリエタノールアミン(実施例10)は、PIとして機能しない。
【0239】
実施例9~12の水性分散液はあまり安定ではなく、水相と有機相の分離を示した。
【0240】
したがって、実施例13~16には追加の水を添加しなかった(トリエタノールアミン中には常にある程度の水が存在する)。実施例13~16は安定であり、UV光による処理後も十分に硬化した。実施例13及び16の両方において、実施例1とアミン相乗剤であるトリエタノールアミンとの組合せを使用した。DBM自体とトリエタノールアミンの組合せ(実施例14)、または実施例1に記載のように得られた生成物単独(実施例15、アミンなし)は、PIとして作用せず、コーティングは硬化しなかった。全ての実験は、実施例1で得られたDBM付加物がノリッシュII型光開始剤として機能することを明確に示している。更に、DBMのノリッシュII型反応性を除外することができ、実施例1で得られた生成物のノリッシュI型反応性も除外することができる。
【0241】
【表6】
【0242】
さまざまなDBM付加物を使用したテストコーティングの調製及び評価、ならびに市販のコーティングとの比較。
【0243】
PIとしてDBM付加物を含むさまざまなテストコーティングを調製し、その組成を表7に示す。コーティングをBykチャート上に湿潤膜厚6μmで適用し、従来のUV光(H電球、35%ランプ強度、60m/分ベルト速度、4パス)下で硬化した。パスごとのUV線量:UVA:9.8mJ/cm、UVB:7.5mJ/cm、UVC:3.2mJ/cm、UVV:9.0mJ/cm
【0244】
コーティングの硬化性能は、前述の1~5の評価システムに従って評価した。
【0245】

【表7】
【0246】
対照例でPIとして使用されるOmnirad BPを置換するために、異なるDBM付加物を調査した。ベンゾフェノン(オムニラッドBP)とは対照的に、表7の実施例17~19の生成物は全て、少なくとも1つの残存アクリレート官能基を有し、したがって、分子量が高いため、ベンゾフェノンよりも低い観察レベルの移行をもたらすと仮定される。特に、DBM付加物の分子量は、OmniradBPの分子量の約2倍である。
【0247】
したがって、8%OmniradBPの代わりに15%のPIを使用した。ベンゾフェノンを使用した対照例は、例17~19よりもわずかに良好に硬化した。実施例1で得られた生成物を用いた実施例18は、新たに開発されたPIの中で最も優れた性能を有しており、表8に示す実施例1の生成物を用いて更なる実験を行った。
【0248】
硬化性能に対するPI濃度の影響を調査するために、実施例1の生成物(DBM-DPGDA)の濃度を増加させた。しかしながら、PI濃度の増加は硬化性能に有害であった。特にMEK(メチルエチルケトン)耐性が低下した。PI濃度が高くなるとポリマー鎖が短くなり、こすり落とされやすくなるようである。表面硬化は、PI濃度を増加させることによって本質的に改善されなかった。
【0249】
【表8】
【0250】
実施例4のDBM付加物による試験コーティングの調製及び評価、ならびにベンゾフェノンがPIとして使用される基準コーティングとの比較。
【0251】
実施例4で得られた生成物をPIとして使用して、異なる硬化性組成物を試験した。組成物を作製するために使用した重量%を表9に示す。コーティングは、6μmの湿潤膜厚でBykチャート上に適用され、従来のUV光(H電球、35%ランプ強度、60m/分ベルト速度、4パス)下で硬化された。1パス当たりのUV線量:UVA:10.5mJ/cm、UVB:8.3mJ/cm、UVC:3.6mJ/cm、UVV:10.0mJ/cm
【0252】
コーティングの硬化性能は、前述の1~5の評価システムに従って評価した。
【0253】
DBM-PPTTA付加物(実施例4)は、DBM-DPGDAと比較してコーティングの硬化特性を改善する(硬化性能の行を参照)。説明としては、分子構造中に残存する重合性アクリレート基の数が多いことが挙げられる。硬化後、コーティングの表面には汚れはほとんど観察されなかった(実施例24~27、表9)。ここでも、コーティング中のPI濃度を増加させても硬化性能は改善されない。また、耐溶剤性も許容できなかった。アミン相乗剤をエベクリルP116からトリエタノールアミンに変更することにより、コーティングの性能が大幅に改善された(実施例28)。化学線照射後の表面硬化は完全であった。更に、耐溶剤性は、今や参照コーティングに匹敵する。
【0254】

【表9】
【0255】
DBM付加物DBM-GPTAを用いた試験用コーティングの調製及び評価ならびに市販のコーティングとの比較。
【0256】
PIとしてDBM-GPTAを使用した異なるテストコーティングを調製し、組成を以下の表に示す。コーティングは、約6μmの湿潤膜厚でBykチャート上に適用され、従来のUV光(H電球、35%のランプ強度、60m/分のベルト速度、4パス)の下で硬化した。パス当たりのUV線量:UVA:11.8mJ/cm、UVB:9.4mJ/cm、UVC:4.0mJ/cm、UVV:11.4mJ/cm
【0257】
コーティングの硬化性能は、前述の1~5の評価システムに従って評価した。
【0258】
また、DBM-GPTA(DBM-GPTA-実施例6)付加物をPIとして調査した(実施例29~33)。硬化性能はDBM-PPTTA付加物に匹敵し、改善は観察できなかった。DBM-GPTAは暗褐色のオイルであるため、若干の黄変が観察される。DBM-GPTAは、その性能がDBM-PPTTAの性能より優れていないため、更なる調査には考慮されなかった(実施例4)。
【0259】
【表10】
【0260】
表11は、少量(ちょうど1重量%)の分割型光開始剤、例えばDarocure1173(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)の存在による表面硬化の利点が、MEK耐性をわずかに改善することを示す。この実施例は、本発明の組成物と少量の既知の光開始剤との組合せが、得られる硬化膜/製品の特性を更に改善できることを実証する。
【0261】
【表11】
【0262】
エチル3-ベンゾイル-4-オキソ-4-フェニルブチレートの硬化性能(実施例7)
表12は、r=0の式1の候補を使用した電子硬化性(EC)コーティングの配合を示し、これは、残存(メタ)アクリレート基がないことを意味する。コーティングの硬化は完了しており、表面は汚れていない。しかしながら、MEK抵抗には限界がある。製剤中のエチル3-ベンゾイル-4-オキソ-4-フェニルブチレートの10重量%を超える濃度は、溶解性の問題のために不可能である。したがって、アクリル化(移行性を低減するためにも)が望ましいが、この例に示すように、必ずしも必要というわけではない。
【0263】
【表12】
【0264】
PI種として本発明の硬化性組成物のみを用いてUVオフセットインクとして調製されたインクの例。
【0265】
本発明の組成物を含有する2つのUVオフセットインク(マゼンタ及びブラック)の硬化性を試験する。
【0266】
電子硬化性(EB)オフセットベースマゼンタ及びブラックインク(市販のSun Beam Advancedインク)を実施例37(マゼンタ)及び実施例38(ブラック)の出発点として使用した。EBインクは従来のPIを含まないため、本発明の組成物を使用するだけで試験を低温で行うことができる。光開始剤(PI)を含有しない限り、事実上どのEBオフセットインクでもこの実験に使用できる。
【0267】
実施例37及び38の均質なペーストインクを製造するために、PIフリーのオフセットベースインクを10重量%のトリエタノールアミン(15%の水を含有)及び10重量%のDBM-PPTTA(実施例4)と厳密に混合した。インクを一晩沈降させた。
【0268】
実施例37及び38のインクは、フルスケールの化学物理印刷プロセスをエミュレートするオフセットされた強力な実験室規模の測定及び分析ツールであるPrufbau印刷適性試験システムを使用して、一般的な光学密度で紙に印刷された。
【0269】
ラダー実験を使用して紙縞を硬化させ、各パスは33mJ/cmのUV線量を印刷物に提供した。印刷は4パス後にほぼ乾燥しており、本発明の組成物(ここでは実施例4のDBM-PPTTA)がECコーティングだけでなく着色または染色インクも硬化できることを実証している。本発明の硬化性組成物の低移行性用途での使用に対する適合性を評価するために、印刷物を分析した。
【0270】
LED硬化に適したDBM-誘導体の調製
実施例1の構造に基づく誘導体は、UV-LEDに作用し得る。以下の反応スキームは、ジメチルアミノ置換DBMの合成を示す。
図12:ジメチルアミノ置換DBMの調製。
【0271】
この合成戦略の利点は、2つの登録化合物:アセトフェノン及びEDBの使用である。EP0114607B1及びEP1349823B1は、そのような置換ジベンゾイルメタンの合成を記載している2つの特許である。
【0272】
実施例39:PEG200DAへのDBMのマイケル付加(例えば、Sartomer(Arkema group)から市販されているSR259)。
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた4つ口丸底フラスコに、ジベンゾイルメタン(289g、1.29mol、1.0当量)、ポリエチレングリコールジアクリレート(SR259、300g)及びジアザビシクロウンデセン(5.0g、32.8mmol、2.5mol%)を添加した。PEGDAに対するDBMの等価物は、DBMの二付加物が形成されるようなものである(以下のスキームを参照されたい)。反応混合物を加熱するために油浴を使用した。混合物を100℃に5時間加熱し、次いで、更なるジアザビシクロウンデセン(1.0g、6.57mmol、0.5mol%)を添加した。混合物を100℃で1時間加熱した。そして室温まで冷却した。生成物を橙色/褐色の油状物として得た(584g、98%)。
【0273】
実施例39の合成の反応スキーム:
【化3】
【0274】
説明のため:SR259は実際には約1.5官能性しかなく、アクリル化されていないOH官能性がいくらか残っている。
【0275】
GPC:M850g/mol、M970g/mol、PDI1.14、不純物または未反応ジベンゾイルメタンの量は、GPC分析によれば<1%である。
【0276】
20ppmでのアセトニトリル中のUV/Vis:lmax=246nm、281nmで小さなショルダー。
HRMS(ESI):m/z:[C465012Na]に対する計算値=817.3192,実測値:817.3165(Di-付加物);m/z:[C313810Na]+に対する計算値=593.2356,実測値:593.2340(単付加物).
【0277】
H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.01-7.99(m),7.56-7.54(m),7.45-7.40(m),6.43-6.38(m),6.15-6.08(m),5.81-5.71(m),5.56-5.51(m),4.30-4.21(m),3.65-3.55(m),2.55-2.54(m),2.36-2.34(m).13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.8,173.1,135.6,133.5,130.9,128.8,128.5,70.4,68.9,63.6,54.7,31.4,24.1.
【0278】
実施例39A
約1つの等価なDBMのPEG200DA(例えば、Sartomer(Arkema基)のSR259市販品)へのマイケル付加。DBM対アクリレートの相対比は、この実施例では実施例39の比に対して異なり、残りのアクリレート基をもたらす。撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた4つ口丸底フラスコに、ジベンゾイルメタン(43.44g、0.19mol、1.0当量)、ポリエチレングリコールジアクリレート(SR259、86.88g)及びジアザビシクロウンデセン(1.5g)を添加した。反応混合物を加熱するために油浴を使用した。混合物を100℃に5時間加熱し、次いで、更なるジアザビシクロウンデセン(1.0g)を添加した。混合物を100℃で1時間加熱した。そして室温まで冷却した。生成物を琥珀色の油状物(128g)として得た。
GPC:Mn=799g/mol
粘度:2.74Pa・s@25℃、剪断速度50/s。
【0279】
39Aの反応スキーム
【化4】
【0280】
説明のため:SR259は実際には約1.5官能性しかなく、アクリル化されていないOH官能性がいくらか残っている。
【0281】
実施例39及び39AにおけるDBM対PEGDAの異なるモル比は、反応生成物中に存在する残留アクリレート基の数をどのように変更できるかを示している。したがって、実施例39では、全てのアクリレート官能基がDBMと反応する。ただし、ジベンゾイルメタン出発物質が残らないように、比率を正確に一致させることが重要である。実施例39Aでは、減少した比のDBM:PEDGAが使用され、その結果、本発明で使用するための反応生成物(式1の代表)中にアクリレート官能基が保持される。
【0282】
実施例39B:DPHA-DBMの調製(US9340644B2も参照)
ジベンゾイルメタン(37.5g、0.167mol、1.0当量)、DPHA(112.5g)及び4-メトキシフェノール(0.15g、1.21mmol、0.7mol%)を丸底フラスコに添加し、120℃に加熱した。ジベンゾイルメタンをDPHAで希釈した場合、DBU(1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン;1.50g、9.85mmol、6mol%)を添加し、混合物を120℃で5時間加熱した。更なるDBU(1.00g、6.57mmol、4mol%)を添加し、混合物を120℃に7.5時間加熱した。DPHA-DBM添加生成物を橙色油状物として得た(137g、90%)。分析特性評価:GPC:Mn1330g/mol、Mw1730g/mol、PDI1.3.
【0283】
実施例39C:EO24-DPHA-DBMの調製
ジベンゾイルメタン(48g、0.214mol)、エトキシル化DPHA(EO24-DPHA)(Miramer6240、62.0g)及び4-メトキシフェノール(0.15g、1.21mmol、0.7mol%)を丸底フラスコに加え、100℃に加熱した。ジベンゾイルメタンをDPHAに溶解したら、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(0.60g)を加え、混合物を100℃で5時間加熱した。追加のDBU(0.6g)を加え、混合物を100℃で2時間加熱した。EO24DPHA-DBM付加生成物が液体として得られ、高温で最終容器に注いだ(108g)。分析特性評価:GPC:Mn3538g/mol、Mw5522g/mol。
【0284】
実施例39D及びE:DPHA及びEO24-DPHAを含む組成物
DPHA及びEO24-DPHAは、上記の実施例39B及び39Cに記載された手順を使用して合成され、以下の組成物に組み込まれた。
【0285】
【表13】
【0286】
移行性分析に提出したPEG200DA-2DBM(実施例39)を用いたUVコーティングの調製及び硬化試験

【表13A】
【0287】
コーティングの表面硬化は、移行性試験を行う前にタルク試験によって試験及び比較された。タルクを硬化後の表面に異なるUV線量(33/66/99/132mJ/cm)で配置する。表面に付着していないタルクを除去し、タルク変色のDEを測定する。変色が少ないということは、表面硬化が良好であることを意味する。これは、BYKチャートの黒い部分でのみ行われる。
【0288】
上記の表に示すように、本発明で使用するための脂肪族アミン相乗剤及び20重量%の反応生成物の組合せは、市販のオリゴマーベンゾフェノン系PIと比較して同等に有効であることが分かった。
【0289】
【表14】
【0290】
表14は、本発明の実施例41で使用されたPIの量が多く、GPTAの割合が高いにもかかわらず、オリゴマーベンゾフェノン系PIを含む比較例8と比較して、アクリレートの量が減少して移動したことが見出されたことを示す。結果は、本発明の組成物が改善された移行性(すなわち、移行可能な種の結果の量が減少する)を有することを示している。好ましい移行限界は、40℃でアクリレートに対して≦10ppb、40℃でブチル化ヒドロキシトルエンに対して≦50ppbである。
【0291】
実施例42:PPTTAへの4Ph-DBMの添加
【化5】
【0292】
PPTTA(45.0g)及び4Ph-DBM(15.0g、0.05モル、1.0当量)を丸底フラスコに加え、混合物を110℃に加熱した。4Ph-DBMをPPTTAに溶解したとき、DBU(0.600g、3.94mmol、7.9mol%)を添加し、混合物を110℃で6時間加熱した。次いで、DBU(0.250g、1.64mmol、3.3mol%)を添加し、混合物を110℃で更に3.5時間撹拌した。マイケル付加生成物を、4Ph-DBM-PPTTAの橙色油状物(58.2g、96%)として得た。
【0293】
GPC:M980g/mol、M1220g/mol、PDI1.24;未反応の4Ph-DBMの量は3%未満であった(*未反応物質の量はGPCピーク面積に基づいて決定された)。20ppmのアセトニトリル中のUV/Vis:lmax=288nm、249nm。HRMS(ESI):Laromer PPTTAへの4Ph-DBMの1倍添加のナトリウム付加物の正確な質量が検出される。
【0294】
図13を参照されたい。
【0295】
H-NMR(300MHz,CDCl):d(ppm)=8.15-8.00(m),7.70-6.60(m),6.40-6.30(m),6.20-6.00(m),5.83-5.79(m),5.50(m),4.30-4.05(m),3.70-3.4(m),2.55(m),2.55(m).
【0296】
13C-NMR(75MHz,CDCl):d(ppm)=195.9,195.4,173.2,166.0,165.9,165.7,146.2,139.5,135.7,133.6,130.9,128.9,128.2,127.1,71.0,70.3,63.6,54.8,44.6,43.7,31.4,31.3,24.1.
【0297】
本発明の組成物を含むオフセットインクの調製

【表15】
【0298】
セットオフ試験は、アミン相乗剤と組み合わせた本発明の4Ph-DBM-PPTTA以外の追加の光開始剤を必要とせずに、プレスで利用可能な線量である66~150mJ/cmのUV線量でインクを乾燥(0.35以下のセットオフ;より好ましくは0.25以下;最も好ましくは0.1以下)できることを明確に実証している。
【0299】
実施例45:PEG2000DA-AVOの調製
【化6】
【0300】
アボベンゾン(300g、0.97モル、1.0当量)を、スターラー及び冷却器を備えた丸底フラスコに添加する。PEG200DA(SartomerSR259、225g)及び4-メトキシフェノール(0.300g、2.41mmol、0.25モル%)を添加する。反応混合物を120℃に加熱し、アボベンゾンがPEG200DAに完全に溶解するまで撹拌する。次に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(4.50g、0.03mol、3mol%)を加え、反応混合物を120℃で4時間撹拌する。DBUの第2の部分(1.00g、6.57mmol、0.7mol%)を添加し、混合物を120℃で4時間撹拌する。DBUの第3の部分(1.00g、6.57mmol、0.7mol%)を添加し、混合物を再び120℃で4時間撹拌する。遊離アボベンゾンの量が1%未満である場合(GPCによって決定される面積%)、混合物を室温に冷却し、生成物を褐色油状物として得る(512g、96%)。GPC:M1180g/mol、M1280g/mol、PDI1.08未反応ジベンゾイルメタンの量は、GPC分析によると1%(面積%)未満である。
アセトニトリル中20ppmでのUV/Vis:λmax=262nm。HRMS(ESI):m/z:[C567014Na]に対する計算値=989.4656,実測値:989.4627(二付加物);m/z:[C364811Na]+に対する計算値=679.3087,実測値:679.3062(単付加物).
【0301】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=8.03-8.00(m),7.94-7.92(m),7.44-7.41(m),6.92-6.89(m),6.42-6.37(m),6.18-6.08(m),5.82-5.79(m),5.45-5.41(m),4.29-4.21(m),3.82(m),3.61-3.57(m),2.55-2.30(m),1.29(s).13C-NMR(75MHz,CDCl):δ(ppm)=195.5,194.5,173.3,163.8,157.2,133.2,131.0,128.5,125.8,114.0,70.4,68.9,63.6,55.4,54.6,35.0,30.9,24.2.
【0302】

【表16】

【表16】
【0303】
上記のデータは、アミン相乗剤と組み合わせて本発明で使用するための反応生成物を含む本発明の組成物が、オリゴマー光開始剤を含む比較組成物として、最終硬化及び移動可能なスペイスの量に関してどのように同等の結果を与えることができるかを実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13