IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローゼンバーガー ホーフフレクベンツテクニーク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲーの特許一覧

特許7583193アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法
<>
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図1
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図2
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図3
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図4
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図5
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図6
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図7
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図8
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図9
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図10
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図11
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図12
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図13
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図14
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図15
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図16
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図17
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図18
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図19
  • 特許-アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、及びアンテナ配置を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20241106BHJP
   H01Q 1/06 20060101ALI20241106BHJP
   H04B 5/43 20240101ALI20241106BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q1/06
H04B5/43
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023577620
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022063995
(87)【国際公開番号】W WO2022263119
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】21180140.2
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322001037
【氏名又は名称】ローゼンバーガー ホーフフレクベンツテクニーク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ルーサー,マックス ステファン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178165(JP,A)
【文献】特開2001-189615(JP,A)
【文献】特開2015-037240(JP,A)
【文献】特開平05-090830(JP,A)
【文献】特表2015-508593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0299789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
H01Q 1/06
H04B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ及び第1のバランを有する送信アンテナ群と、第1の受信アンテナ、第2の受信アンテナ及び第2のバランを有する受信アンテナ群とを有する、トランシーバ配置、特に、高周波トランシーバ配置のためのアンテナ配置であって、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、いずれの場合にも、前記第1のバランの対称接続に接続され、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、いずれの場合にも、前記第2のバランの対称接続に接続され、前記第1のバランの非対称接続は、前記トランシーバ配置の送信信号経路に接続可能であり、前記第2のバランの非対称接続は、前記送信信号経路から独立した前記トランシーバ配置の受信信号経路に接続可能であり、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、前記送信アンテナ群と前記受信アンテナ群との間のクロストークが、それらの各アンテナの差動接続によって少なくとも低減されるように、互いに対する空間位置を有し、前記受信アンテナ群の前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、前記送信アンテナ群の前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナに対して同じ中心間距離を有することを特徴とするアンテナ配置。
【請求項2】
前記送信アンテナ群及び前記受信アンテナ群は、共通の中心点の周りに、好ましくは、共通の仮想円周上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ配置。
【請求項3】
前記送信アンテナ群の前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、前記共通の中心点に関して、互いに対して180°回転して配置され、及び/又は、前記受信アンテナ群の前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、前記共通の中心点に関して、互いに対して180°回転して配置され、前記第1の受信アンテナは、前記共通の中心点に関して、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナに対して90°回転して配置されることを特徴とする、請求項2に記載のアンテナ配置。
【請求項4】
前記受信アンテナ群の前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、いずれの場合にも、前記送信アンテナ群の前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナから、送信される電磁波の自由空間波長の半分未満だけ離間していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ配置。
【請求項5】
前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、平面アンテナとして設計され、その主領域は、共通のベース領域に平行に、好ましくは、電気的及び機械的に接続される電気プリント回路基板の側面領域に平行に整列されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のアンテナ配置。
【請求項6】
前記平面アンテナの前記主領域は、細長い形状、好ましくは、矩形又は楕円形の幾何学的形状を有することを特徴とする、請求項5に記載のアンテナ配置。
【請求項7】
前記平面アンテナの前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、その主領域が有限のゼロでない数の対称軸、好ましくは、正確に2つの対称軸、又は正確に3つの対称軸を有するように設計されることを特徴とする、請求項5または6に記載のアンテナ配置。
【請求項8】
前記平面アンテナは、いずれの場合にも、対応する平面アンテナの対称軸の最長軸を含む主対称軸と、対応する平面アンテナの幾何学的中心と前記平面アンテナの前記共通の中心点との間を通る直線との間の配向角を形成し、前記平面アンテナは、全ての平面アンテナの前記配向角が少なくとも実質的に同一、好ましくは同一であるように、互いに対して整列されることを特徴とする、請求項7に記載のアンテナ配置。
【請求項9】
前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナの周りに配置され、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナが共同配置されるアクセス開口部を有する少なくとも1つの第1の減衰ユニットを有する減衰配置を特徴とし、前記アクセス開口部の中心軸は、前記アンテナ配置の主放射方向に沿って、及び/又は前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナの共通の中心点を通って延在することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のアンテナ配置。
【請求項10】
前記減衰配置は、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナが共同配置されるアクセス開口部を有する第2の減衰ユニットを有し、前記第1の減衰ユニット及び前記第2の減衰ユニットは、同心円状に配置され、前記第1の減衰ユニット及び前記第2の減衰ユニットは、互いに幾何学的に及び/又は各材料組成に関して異なることを特徴とする、請求項9に記載のアンテナ配置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のアンテナ配置と、送信信号経路及び受信信号経路とを有するトランシーバ配置であって、第1バランの非対称接続は、前記送信信号経路に接続され、第2バランの非対称接続は、前記受信信号経路に接続され、前記送信信号経路は、送信ユニットを有し、受信信号経路は、受信ユニットを有するトランシーバ配置。
【請求項12】
請求項11に記載の第1のトランシーバ配置及び第2のトランシーバ配置を有し、前記トランシーバ配置間の無線信号送信を提供する、通信システム。
【請求項13】
前記2つのトランシーバ配置は、共通の回転軸の周りで互いに対して回転可能であり、前記各アンテナ配置の中心点は、好ましくは、互いに同軸に配置され、前記共通の回転軸と一致することを特徴とする、請求項12に記載の通信システム。
【請求項14】
第1のアクチュエータ素子と、第2のアクチュエータ素子と、請求項13に記載の通信システムとを有するアクチュエータデバイス、特に、産業用ロボットシステムであって、
前記第1のトランシーバ配置は、前記第1のアクチュエータ素子に配置され、前記第2のトランシーバ配置は、前記2つのアクチュエータ素子間の無線信号送信を可能にするために、前記第2のアクチュエータ素子に配置される、アクチュエータデバイス。
【請求項15】
トランシーバ配置のアンテナ配置、特に、高周波トランシーバ配置を動作させる方法であって、
a)第1のバランの対称接続に、いずれの場合にも、接続される第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナからなる送信アンテナ群を提供するステップと、
b)第2のバランの対称接続に、いずれの場合にも、接続される第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナからなる受信アンテナ群を提供するステップと、
c)前記第1のバランの非対称接続を介して前記第1のバランに接続される前記トランシーバ配置の送信信号経路を介して前記送信アンテナ群を動作させるステップと、
d)前記送信信号経路から独立し、前記第2のバランの前記非対称接続を介して前記第2のバランに接続される前記トランシーバ配置の受信信号経路を介して前記受信アンテナ群を動作させるステップと
を含み、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、前記送信アンテナ群と前記受信アンテナ群との間のクロストークが、それらの前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナの差動接続によって少なくとも低減されるように、互いに対する空間位置に配置され、前記受信アンテナ群の前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナは、前記送信アンテナ群の前記第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナに対して同じ中心間距離を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欧州特許出願第21 180 140.2号の優先権を主張するものであり、全内容が参照により援用される。
【0002】
本発明は、第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナを有する送信アンテナ群と、第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナを有する受信アンテナ群とを有する、好ましくは、全二重通信チャネル内で使用するための、トランシーバ配置、特に、高周波トランシーバ配置のためのアンテナ配置に関する。
【0003】
本発明はさらに、アンテナ配置と、送信ユニットと、受信ユニットとを有するトランシーバ配置に関する。
【0004】
本発明はさらに、無線信号送信を提供するための、第1のトランシーバ配置及び第2のトランシーバ配置を有する通信システムに関する。
【0005】
本発明はさらに、第1のアクチュエータ素子と、第2のアクチュエータ素子と、第1のトランシーバ配置及び第2のトランシーバ配置を有する通信システムとを有するアクチュエータデバイス、特に、産業用ロボットシステムに関する。
【0006】
最後に、本発明は、トランシーバ配置、特に、高周波トランシーバ配置のアンテナ配置を動作させる方法にも関する。
【背景技術】
【0007】
1つのアンテナ又は複数のアンテナからなるアンテナ配置は、非接触又は無線エネルギー送信及び/又はデータ送信のために使用される。電磁波の同時送信及び受信(全二重動作と呼ばれる)、すなわち、同じ周波数(帯域内全二重)で同時に信号の送信及び受信を提供する通信チャネル内のアンテナ配置の使用について、送信機と受信機との間のクロストーク又は干渉を回避するために、同じトランシーバ内の送信機と受信機との間の高い電磁減衰又は分離は必須である。
【0008】
さらに、レーダ用途において、レーダ送信機がレーダ信号を送信している間、レーダ受信機が受信する準備ができていることが必要なことが多い。レーダ信号は、通常、同じ周波数で送受信されるので、レーダシステムの送信アンテナと受信アンテナとの間に高い電磁減衰又は分離が必要とされる。
【0009】
帯域内全二重通信チャネル内で送信機と受信機との間に適切な電磁分離を提供するための様々な技術的アプローチが既に知られている。1つの可能性としては、異なる偏波(偏波多重/偏波二重)を用いた送信が含まれ、2つの通信相手(以下、「トランシーバ配置」とも呼ぶ)は、いずれの場合にも、異なる回転方向で、例えば、円偏波により、電磁波を送信する。さらなる技術によれば、送信機特性と受信機特性間の干渉を可能な限り回避するために、2つの通信相手から発する電磁波は、特殊な放射パターンで送信される。共通アンテナ配置の送信アンテナと受信アンテナとの間の金属遮蔽について、非特許文献1に提案されているようなさらなる例を挙げることができる。
【0010】
しかしながら、既知のアンテナ配置の分離挙動は、依然として十分ではない場合があり、又は、かなりの製造労力及びコストを要する、非常に複雑なアンテナ及び回路配置によらないと達成することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】"Circularly Polarized PIFA Array For Simultaneous Transmit And Receive Applications", A. Kee, M. Elmansouri, D. S. Filipovic, 2017 IEEE International Symposium on Antennas and Propagation, pp. 2303-2304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
公知の従来技術に照らして、本発明の目的は、従来技術と比較して改善され、好ましくは、複雑性が低く、同じトランシーバ内の送信機と受信機との間に実質的な分離特性を有するアンテナ配置を提供することである。
【0013】
最終的に、本発明の目的はまた、従来技術と比較して改善された、好ましくは、複雑性が低く、同じトランシーバ内の送信機と受信機との間の実質的な分離特性を有する、アンテナ配置を有する、トランシーバ配置、改善された通信システム、及びアクチュエータデバイスを提供することである。
【0014】
本発明の目的はさらに、従来技術と比較して改善された、好ましくは、帯域内全二重送信に適した、トランシーバ配置のアンテナ配置を動作させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
目的は、請求項1に記載の特徴を有するアンテナ配置によって達成される。トランシーバ配置に関して、目的は、請求項20の特徴によって、通信システムに関しては、請求項22によって、及びアクチュエータデバイスに関しては、請求項26によって達成される。アンテナ配置を動作させる方法に関しては、目的は、請求項27の特徴によって達成される。
【0016】
従属請求項及び以下に記載される特徴は、本発明の有利な実施形態及び変形形態に関する。
【0017】
特に、全二重通信チャネル内で使用されるアンテナ配置が提供される。このアンテナ配置は、有利には、トランシーバ配置、特に、例えば、以下に記載する説明による高周波トランシーバ配置での使用に適している。
【0018】
本発明によれば、アンテナ配置は、第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナを有する送信アンテナ群を有する。以下で単に「送信アンテナ」と呼ばれることもある第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナは、好ましくは、平面送信アンテナであるが、適切な場合には、他のアンテナ設計、特に、指向性アンテナで提供することもできる。
【0019】
「平面」アンテナは、上下、主に、平坦な、好ましくは、均等な形状を有するアンテナを意味すると理解され、特に、互いに離れて向き合う、すなわち、例えば、円板、コーティング、又はプレートレットの形態の、2つの好ましくは平行に延在する主領域を有する。特に、平面アンテナは、以下で提案するように、パッチアンテナ又はスロットアンテナとすることができる。
【0020】
本発明によれば、アンテナ配置は、第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナを有する受信アンテナ群をさらに有する。以下で単に「受信アンテナ」と呼ばれることもある第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナは、好ましくは、平面受信アンテナであるが、適切な場合には、他のアンテナ設計、特に、指向性アンテナで提供することもできる。
【0021】
送信アンテナ及び受信アンテナは、時には、「平面」等と特定せずに(任意)、以下で言及されることもあり、さらに、「アンテナ」という用語を使用してまとめられることもある。
【0022】
上述のアンテナ群(送信アンテナ群及び受信アンテナ群)は、各アンテナアレイ、特に、フェーズドアレイである。従って、送信アンテナ群とは、送信アンテナアレイであり、受信アンテナ群とは、受信アンテナアレイである。
【0023】
本発明によれば、送信アンテナは、第1のバラン(バランシングユニットとしても知られる)を有し、第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナは、いずれの場合にも、第1のバランの対称接続(差動接続)に接続されるか、又は両対称接続に接続される。受信アンテナ群は、第2のバランをさらに有し、第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナは、いずれの場合にも、第2のバランの対称接続に接続されるか、又は両対称接続に接続される。第1のバランの非対称接続(シングルエンド接続)は、トランシーバ配置の送信信号経路に接続可能であり、第2のバランの非対称接続は、送信信号経路から独立したトランシーバ配置の受信信号経路に接続可能である。
【0024】
言い換えれば、対称接続は、対称信号送信の接続を指し、非対称接続は、非対称信号送信の接続を指す。
【0025】
従って、送信アンテナは、有利には、差動的に相互接続され、送信信号経路を介して供給され、第1のキャリア周波数帯域を有する送信信号を送信することができる。受信アンテナは、同様に差動的に相互接続され、受信信号経路を介して第2のキャリア周波数帯域を有する受信信号を転送することができる。
【0026】
本発明によれば、アンテナは、送信アンテナ群と受信アンテナ群との間のクロストークが、各アンテナの差動接続によって少なくとも低減されるように、互いに対する空間的位置を有するように提供される。この点において、組み合わせて実施することもできる様々な可能性が、一例として以下に示される。
【0027】
本発明によれば、空間的に近接しているにもかかわらず、送信アンテナと受信アンテナとの間のクロストークを可能な限り抑制するアンテナ配置が提案される。これは、特に、2つの送信アンテナの受信アンテナへのクロストークのレベルが等しく高いが、逆符号を有するように、受信アンテナに対して2つの共同送信アンテナを配置することによって達成することができる。逆符号を有するクロストークは、180°位相シフトされた2つの送信アンテナの励起によって達成することができ、その目的のために、前述のバランシングユニット又はバランを使用することができる。
【0028】
2つの送信アンテナを、受信アンテナから幾何学的に等しい距離に配置することによって、送信アンテナから受信アンテナへの同じレベルのクロストークを達成する可能となる。アンテナは、好ましくは、送信アンテナ及び受信アンテナの等しく大きな有効領域又は有効エッジがそれに応じて互いに対向してさらに位置するように設計することができる。様々な可能性を、以下でさらに説明する。
【0029】
本発明の一実施形態において、送信アンテナ及び受信アンテナは、共通の中心点の周りに配置されるようにすることができる。
【0030】
アンテナの共通の中心点は、以下では「回転中心」とも呼ばれることもあるが、これは、アンテナが実際に回転したり、回転中心や中心点の周りを回転可能であることを意味するものではない(ただし、これは、後述する本発明の1つの有利な使用において、任意で可能である)。
【0031】
2つの送信アンテナ及び2つの受信アンテナは、それらのアンテナメインローブが同じ方向に、好ましくは、平行に向くように配向されるようにすることができる。特に、送信アンテナ群の位相中心は、受信アンテナ群の位相中心と一致し、好ましくは、さらに、共通の中心点と一致するようにすることができる。
【0032】
アンテナの指向性効果は、そのアンテナゲインの観点から説明される。これは、仰角及び方位角に応じて、球面座標の放射図で表されることが多い。放射図では、アンテナゲインの最大値と最小値との交互が「アンテナローブ」を生成し、アンテナゲインの大域的最大値を含むアンテナローブは「アンテナメインローブ」と呼ばれる。
【0033】
送信アンテナ及び受信アンテナが平面アンテナとして設計される限り、アンテナは、共通の回転中心又は共通の中心点の周りの共通のベース領域に平行なそれらの各主領域を伴って配置することができる。
【0034】
アンテナは、ベース領域に位置させる、及び/又はベース領域に取り付けることができる。アンテナはまた、ベース領域から離間させても、あるいは、ベース領域を有する電気アセンブリ、例えば、プリント回路基板に組み込むこともできる。ベース層は、例えば、多層プリント回路基板(GNDプレーン)の接地領域、又は多層プリント回路基板の上部層とすることができる。
【0035】
2つの送信アンテナは、好ましくは、ベース領域から同じ高さ又は同じ距離に配置され、及び/又は、2つの受信アンテナは、ベース領域から同じ高さ又は同じ距離に配置される。全ての送信アンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)は、特に好ましくは、ベース領域から同じ高さ又は同じ距離に配置される。
【0036】
共通回転中心又は共通の中心点は、好ましくは、2つの送信アンテナの2つの中心点又は幾何学的中心の間の仮想接続線の中心点として設計される。従って、回転中心は、好ましくは、2つの送信アンテナの間の中央に位置する。
【0037】
送信アンテナ及び/又は受信アンテナは、回転中心又は共通の中心点の周りで、互いに対して180°回転して配置することができる。アンテナの回転は、特に、アンテナ自体の幾何学的形状(例えば、後述する平面アンテナの主領域の対称軸又は他の軸の相対的アラインメント)、及び/又は各アンテナにつながる給電線の給電点又は経路に関連し得る。
【0038】
本発明の一実施形態において、受信アンテナの各々が、両送信アンテナに対して同じ中心間距離を有するようにすることができる。
【0039】
アンテナの「中心」又は「中心点」とは、例えば、中心間距離が決定されることに基づいて、特に、各アンテナの幾何学的中心を意味するものと理解される。
【0040】
アンテナ配置は、2つの送信アンテナが逆位相で励起される場合に特に有利である。
【0041】
本発明者らは、送信アンテナのペアワイズ差動励起によって、送信機と受信機との間、又は同じトランシーバの送信アンテナと受信アンテナとの間で、非常に有効な分離特性が達成され得ることを認識した。
【0042】
180°位相シフトされた受信アンテナへの送信信号のクロストークに関して、送信アンテナの提案された配置は、送信アンテナからクロストークを生成する電磁波を補正する。
【0043】
提案された発明は、通信相手間のオフセットがあっても、全二重動作でデータの信頼できる送信を可能にする。特に、2つの通信相手について、以下の通りとすることができる。
-互いに対して回転オフセットである、すなわち、一方の通信相手の送信アンテナが、他方の通信相手の受信アンテナと一致するように配向されないように、共通の回転軸の周りに回転する、及び/又は
-互いに対して並進オフセットである、すなわち、各アンテナ配置の2つの中心点の間の目標距離から始まり、互いに離れて移動するか、又は互いに近づく、及び/又は
-他方に対して軸方向オフセットである、すなわち、アンテナ配置の中心軸が同軸アラインメントからずれるように、アンテナ配置の中心点を通って延在する各中心軸間にオフセットがある、及び/又は
-互いに対して半径方向オフセットである、すなわち、アンテナ配置の平行なアラインメントから始まり、傾斜している。
対応するオフセットは、公差に起因して生じる、又は用途関連ベースで明示的に提供される可能性がある。特に、オフセットは、データ送信中にのみ発生するか、又は、例えば、通信相手の目標とする回転を通して意図的に導入するようにすることもできる。
【0044】
同時に、提案されたアンテナ配置の複雑性は低いため、技術的に単純で経済的な実施を可能にする。従って、本発明は、例えば、標準的なプリント回路基板処理を使用して、全二重通信アンテナ配置又はレーダアンテナ配置のコスト最適化設計を可能にする。提案されたアンテナ配置は、任意の電子アセンブリに簡単に一体化可能である。
【0045】
本発明の特に好ましい一実施形態において、2つの送信アンテナは、同一の基本的な幾何学的形状に基づいている。特に、平面送信アンテナは、それらの主領域の同一の基本形状に基づくものとすることができる。2つの送信アンテナは、好ましくは、特に、主領域上の給電点の幾何学的形状、材料、及び/又は位置に関して、同一の設計を有する。
【0046】
しかしながら、2つの送信アンテナは、実質的に異なる設計を有することもできるが、特に技術的に実現可能である限り、少なくとも同様の設計を有することが好ましい。受信アンテナに関する減衰は、送信アンテナの同一又は少なくとも実質的に同一の設計によってさらに改善することができる。
【0047】
また、2つの受信アンテナは、必ずしもではないが、同一の基本幾何学的形状、特に、送信アンテナと同一の基本的形状に基づいているのが好ましい(やはり、好ましくは、平面アンテナの主領域に関連している)。受信アンテナは、好ましくは、同一又は少なくとも実質的に同一の設計を有し、特に好ましくは、アンテナの各主領域上の給電点の幾何学的形状、材料、及び/又は位置に関して、送信アンテナと同一又は少なくとも実質的に同一の設計を有する。
【0048】
本発明は、任意の波長又は周波数を有する任意の電磁波を送信するのに、実質的に適したものとすることができる。しかしながら、本発明は、特に有利には、40GHz~80GHz、好ましくは、50GHz~70GHz、特に好ましくは、55GHz~65GHzの周波数範囲の電磁波を送信するのに適している。高いキャリア周波数は、短距離信号送信において非常に高いデータレートをもたらすことができ、提案されるアンテナ配置を、従来のプラグイン接続に代わるものとして、非接触電気コネクタに特に有利に適したものとさせている。本発明のこの有利な用途について、以下により詳細に検討していく。
【0049】
対応する高周波数での送信は、周波数の増加に伴って自由空間減衰が増加する(自由空間減衰はキャリア周波数の2乗に比例して増加する)という利点をさらに提供する。提案されたアンテナ配置の信号は、環境に逃げるので、比較的急速にフェードする。さらに、帯域幅内で発生する干渉信号は、低い振幅のみでアンテナ配置に到達する。従って、本発明によれば、高周波数で電力密度を急速に失う信号の特性が有利に利用される。
【0050】
送信の帯域幅は、例えば、3GHz~20GHz、特に、約10GHzとすることができる。
【0051】
第1の送信アンテナは、第2の送信アンテナの近接場に、好ましくは、送信される電磁波の自由空間波長の半分の第2の送信アンテナから最大距離に配置することができる。このようにしてアンテナ側ローブの形成を回避することができる。
【0052】
本発明の有利な一実施形態において、各送信アンテナと受信アンテナとの間の中心間距離が、いずれの場合にも、送信される電磁波の波長の半分未満であるように、受信アンテナと送信アンテナとが互いに対して配置されるようにすることができる。
【0053】
第1の受信アンテナ(及び任意で第2の受信アンテナも)は、送信アンテナに対して共通の回転中心又は共通の中心点の周りを90°回転して配置される。
【0054】
送信アンテナ及び受信アンテナは、いずれの場合にも、共通の回転中心又は共通の中心点の周りを循環するように交互に配置され、各アンテナはその上流アンテナに対して90°回転するようにすることができる。円周に沿った全てのアンテナは、好ましくは、同じ回転方向に回転される。
【0055】
全てのアンテナの中心点は、好ましくは、中心点がアンテナの回転中心又は共通の中心点と一致する、共通の仮想円周上に配置される。従って、アンテナの中心点は、好ましくは、共通の中心点に対して同じ半径方向距離を有することができる。
【0056】
本発明の1つの有利な設計において、アンテナ、特に、以下に特定される平面アンテナも、共偏波されるようにすることができる。共偏波は、例えば、全てのアンテナが、右円偏波、左円偏波、垂直直線偏波、又は水平直線偏波のいずれかであることを意味すると理解される。
【0057】
提案されたアンテナ配置に関連して、本発明者らは、意外にも、共偏波が、他の通常の交差偏波と比較して有利であり得ることを認識した。交差偏波は、通常、送信アンテナから受信アンテナへのクロストークを低減するために選択される。しかしながら、受信アンテナが、送信アンテナに比較的近接している場合(距離が、例えば、自由空間波長の半分以下である場合)、受信アンテナは、送信アンテナの近接場に位置する。近接場では、電磁波はまだ横方向電磁波ではなく、そのため、形成された円偏波は近接場にまだ存在し得ない。この点において、交差偏波は、アンテナの分離の改善をもたらさない。しかしながら、共偏波は、反射要素からの改善された分離をもたらし得る。例えば、導電性表面上での単純な反射の場合、回転方向は、円偏波電磁波に対して変化する。送信アンテナ及び受信アンテナが次いで、互いに対して共偏波される場合、受信アンテナに到達する単純な反射要素(例えば、対向する通信相手上の単純な反射による)は、受信アンテナに対して交差偏波され、その結果、反射要素の望ましくない受信が実質的に低減され、従って、受信アンテナは、単一又は奇数の反射点を有する伝搬経路に関して、送信アンテナからより効果的に分離される。
【0058】
特に、そのような反射要素の受信の抑制は、非接触データプラグ又は非接触ベクトルの場合に関連し得る。このタイプの非接触コネクタは、互いに対向して近接して配置され、例えば、10cm未満(又はさらに5cm未満)の距離にある、本発明による2つのトランシーバ配置を含むことができる。短い距離のために、そして、送信アンテナ及び受信アンテナが取り付けられるトランシーバ配置のプリント回路基板の、距離に関して比較的大きい、横方向延在部のために、反射要素は、例えば、非接触コネクタの場合、高い振幅を有することができ、従って、かかる反射要素の望ましくない受信を抑制するのに有利である。
【0059】
送信アンテナ及び/又は受信アンテナは、指向性アンテナとして設計することができ、その主放射方向は、同じ空間方向において整列され、好ましくは、平行に整列される。本発明の一実施形態において、特に、アンテナを平面アンテナとして設計することができ、その主領域が前述のベース領域に平行に、好ましくは、電気的及び機械的に接続される電気プリント回路基板の側面領域に平行に整列される。
【0060】
有利な一実施形態において、平面アンテナの主領域は、細長い幾何学的形状、好ましくは、矩形又は楕円形の幾何学的形状を有するようにすることができる。
【0061】
三角形の幾何学的形状(正三角形、すなわち、細長い三角形でなくてもよい)とすることもできる。さらに、面取りされた角部、インデント、又はスロット等の、目標とされた方法で組み込まれた非対称性を有する幾何学的形状も提供することができ、このタイプの非対称性は、細長い形状を有さない基本的な幾何学的形状でも提供することができる。
【0062】
本発明の一実施形態において、平面アンテナの各々が正確に1つの給電点を有するようにすることができる。
【0063】
アンテナは、特に、アンテナが平面アンテナとして設計される場合、特に、平面アンテナが、いずれの場合にも、正確に1つの給電点のみを有する場合、好ましくは、円偏波とすることができる。アンテナの幾何学的形状及び幾何学的形状に組み込まれた任意の非対称性は、それに応じて設計することができる。
【0064】
送信される電磁波の電場強度及び磁界強度のベクトルが連続的に回転することを意味する円偏波により、通信相手、例えば、2つのトランシーバ配置の回転角度からの信号送信強度の独立性は、例えば、互いに対して10cm未満の非接触電気コネクタの距離で得ることができる。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、平面アンテナの各々は、その主領域が、有限のゼロではない数の対称軸、好ましくは、正確に2つの対称軸、又は正確に3つの対称軸を有するように設計することができる。
【0066】
特に、アンテナが円以外の幾何学的形状を有するようにすることができる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、平面アンテナは、いずれの場合にも、対応する平面アンテナの対称軸(特に、主領域の長手方向に整列された、又は主領域上で斜めに整列された対称軸)のうちの最も長い対称軸である主対称軸と、対応する平面アンテナの幾何学的中心とアンテナの共通中心点との間を通る直線との間の配向角を形成し、平面アンテナは、全ての平面アンテナの配向角が、少なくとも実質的に同一、好ましくは、同一であるように、他方に対して整列されるようにすることができる。
【0068】
全てのアンテナの配向角は、例えば、40°~50°、好ましくは、43°~47°、特に好ましくは、実質的に45°、又は正確に45°とすることができる。
【0069】
この時点で、配向が正確に45°(鈍角、すなわち90°より大きい、及び鋭角、すなわち90°より小さい)ではない場合、互いに異なる2つの角度は、各アンテナの上記で定義された主対称軸と直線との間に実質的に形成されることに留意されたい。この場合、全てのアンテナの「配向角度」を決定するために、同じ選択基準が常に使用されなければならない。すなわち、例えば、全てのアンテナの場合の配向角度は、直線と主対称軸との間の直線から始まる時計回り方向(又は反時計回り方向)に囲まれた角度とする。開始点(すなわち、例えば、直線又は主対称軸)及び回転方向(すなわち、例えば、時計回り方向又は反時計回り方向)は、それらの各配向角度を定義するために、全てのアンテナについて同じものが選択されるべきである。従って、この配向角度は、正に、好ましくは、全てのアンテナについて同一であるか、又は少なくとも実質的に同一である。「反時計回り方向」は、アンテナの共通の中心点に関して理解されるものとする。
【0070】
送信アンテナ及び受信アンテナの主対称軸は、互いに直交するように延在させることができる。個々のアンテナは、好ましくは、送信アンテナ及び受信アンテナが、いずれの場合にも、短辺及び長辺を有して互いに対向して位置するように配置される。
【0071】
本発明のある設計では、アンテナは、各偏心オフセット給電点を有するようにすることができ、各偏心オフセット(中心点までの距離及び/又は主領域上の位置)は、全てのアンテナにおいて同一である。
【0072】
インピーダンスマッチングは、偏心オフセット給電点によって可能にすることができる。給電点は、好ましくは、入力インピーダンスが50オームであるように選択される。
【0073】
各アンテナの給電点は、好ましくは、アンテナの主対称軸上に配置することができる。しかしながら、各アンテナの主領域上の給電点の任意の配置によって、特に、主領域上に延在し、主領域の中心点又は中心を通り、主対称軸に対して45°の角度を形成する直線上の給電点の位置も実質的に設けることができる。
【0074】
本発明の一実施形態において、各給電線は、平面アンテナの各々に容量結合することができる。従って、電磁波は、近接場結合(好ましくは、主に容量)の各給電線から送信アンテナに注入することができ、受信アンテナから近接場結合(好ましくは、主に容量)で抽出することができる。給電線は、特に、ベース領域を形成する電気アセンブリ、特に、プリント回路基板の内部に組み込むことができる。
【0075】
各個々の送信アンテナ及び/又は受信アンテナの最適な円偏波を形成するために、各アンテナに割り当てられた給電線は、各アンテナの主領域の主対称軸に対して実質的に45°の角度で配置することができ、各アンテナに容量結合することができる。
【0076】
好ましくは、電磁近接場結合に基づく電磁波の主容量給電及び送電は、特に臨機応変な方法で給電点を予め規定するために特に有利である。
【0077】
しかしながら、注入及び抽出は、実質的に異なる方法で実施することもできる。
【0078】
例えば、電磁波は、アンテナに直接(特にその主領域に)通じる給電線(例えば、プリント回路基板のマイクロストリップライン)から注入されるようにすることができる。従って、各アンテナへの同一平面上の直接ガルバニック給電及び送電を提供することができる。
【0079】
電磁波は、異なる高さで延在する給電線に直接的又は間接的に接続されるアンテナ(特にその主領域)に直接的に通じる貫通接続(ビア)から注入することもできる。しかしながら、貫通接続を介した結合と比較した上述の容量結合の1つの利点は、この貫通接続の必要性を正に排除できることである。一般的に言えば、プリント回路基板製造におけるエッチング工程は、貫通接続の位置決めよりも正確である。従って、貫通接続の位置決め公差の問題は、容量結合によって回避することができる。貫通接続の製造関連オフセットの場合、アンテナ配置の回転対称性は崩れる可能性があるが、これは第1の送信アンテナから受信アンテナへのクロストークのレベルが、第2の送信アンテナから受信アンテナへのクロストークのレベルに対応することを判断する際に重要となり得る。このため、貫通接続の問題が解消されれば、アンテナ配置の回転対称性をより効果的に確保することができる。これは、最終的に、送信アンテナと受信アンテナとの間の分離を改善することができる。
【0080】
さらに、電磁波は、主領域及び給電線に平行に配置され、主領域と給電線との間の平面に位置する少なくとも1つの中間アンテナによって注入されるようにすることができる。従って、1つ以上の中間アンテナを有する積層配置、例えば、共通プリント回路基板内のパッチアンテナ及び/又はスロットアンテナとして設計された複数の中間アンテナの積層配置を設けることができる。送信帯域は、積層アンテナ配置によって、任意でさらに増やすことができる。
【0081】
円偏波電磁波を生成又は受信することができる任意のアンテナ構造を実質的に使用することができる。しかしながら、特に、通信相手の相反回転が想定されない場合は、直線偏波も実質的に可能である。
【0082】
給電線は、インピーダンス整合を可能にするために、給電点の方向に広げることができる。
【0083】
さらにより有利な放射パターン、特に、主放射方向に沿った電磁波の指向性放射を実現するために、金属又は導電性の基準電極構造又は接地プレートを、所望の主放射方向を背にしたアンテナの側に、すなわち、アンテナの「下」に形成するようにすることができる。接地プレートは、例えば、プリント回路基板の金属化された下面として形成することができ、その上側にアンテナの主領域が形成される。
【0084】
本発明の有利な一実施形態において、アンテナは、パッチアンテナ又はスロットアンテナとして設計されるようにすることができる。
【0085】
アンテナは、好ましくは、パッチアンテナとして設計される。パッチアンテナは、特に、プリント回路基板上又はプリント回路基板内の金属化領域として設計することができる。逆に、スロットアンテナは、プリント回路基板の金属化領域の対応するインデントとして相補的に設計することができる。
【0086】
パッチアンテナ又はスロットアンテナの使用は、本発明によるアンテナ配置を実施するための1つの有利な可能性に過ぎない。例えば、ホーンアンテナの使用も可能である。
【0087】
パッチアンテナ又はスロットアンテナは、好ましくは、付加及び/又は減層技術におけるプリント回路基板製造プロセスによって製造される。しかしながら、個々のアンテナは,
例えば、深絞り、又は打ち抜き、及び曲げ処理によって別々に製造することもできる。
【0088】
本発明の一実施形態において、アンテナの各主領域が楕円形の幾何学的形状を有するようにすることができる。矩形の幾何学的形状(異なる辺の長さを有する、又は正方形)は、同様に、例えば、正確に1対の面取りされた角部が、互いに対向して対角線上に、特に、正方形の幾何学的形状で、与えることができる。
【0089】
さらなる幾何学的形状、例えば、三角形の幾何学的形状、円形の幾何学的形状(特に、打ち抜かれた、又は凹んだ周辺領域、例えば、正方形の打ち抜かれた周辺領域を有する)、又は他の幾何学的形状も、実質的に提供することができる。
【0090】
しかしながら、特に有利な放射パターンが得られるので、楕円形の幾何学的形状が好ましい。特に、好ましくは、完全円偏波電磁波は、理想的には1.0の軸比を有する楕円形の幾何学的形状によって放射され得る。楕円形の幾何学的形状の1つの特定の利点は、一方では、他の幾何学的形状と比較して、小さい面積要件であり、単一の給電点のみで円偏波を生成する可能性である。直線偏波成分は、楕円形の幾何学的形状によって可能な限り回避することができ、このため、楕円形の幾何学的形状は、最もエネルギー効率の良いアンテナ配置を可能にすることもできる。
【0091】
パッチアンテナの場合、金属化領域は、対応する幾何学的形状(楕円形、矩形等)を有することができる。スロットアンテナの場合、金属化領域内の対応するインデントは、上述の幾何学的形状を有することができる。
【0092】
一実施形態において、アンテナ配置が、送信アンテナ及び受信アンテナの周りに配置される遮蔽配置を有するようにすることもできる。
【0093】
遮蔽配置は、好ましくは、アンテナを、ベース領域に直交して延在する実質的に管状の形態で包む遮蔽ケーシングを形成する。遮蔽配置は、特に、ベース領域を形成する電気アセンブリ(例えば、プリント回路基板)を通って延在する個々の貫通接続から、好ましくは、均一な配置で、特に好ましくは、2つ以上の列で、極めて好ましくは、互いに同じ距離で形成することができる。
【0094】
遮蔽配置は、好ましくは、全てのアンテナに対して等しく対称的に配置される。
【0095】
アンテナ配置は、上述の遮蔽配置を有するので、アンテナ配置を環境から遮蔽することができ、さらに、電磁分離をさらに高めることができる。給電及び送電経路のための準同軸構造は、好ましくは、遮蔽配置によって実現可能である。
【0096】
アンテナ配置は、好ましくは、電気プリント回路基板に配置される。プリント回路基板の基板材料は、特に経済的なアンテナ配置を提供するために、例えば、複合材料FR-4(エポキシ樹脂中のガラス繊維からなる複合材料)とすることができる。あるいは、基板材料は、誘電損失を最小限に抑えるために、セラミック粒子(テフロン(登録商標))とエポキシ樹脂中のガラス繊維との複合体として形成することもできる。
【0097】
用途に応じて、2つのトランシーバ配置間に確立された送信チャネルは、データ信号を伝送する電磁波の反射によって引き起こされる歪みに影響を受け得る。反射は、その送信中に電磁波が当たる全ての物体上で起こり得る。反射により、有用な信号は、一方のトランシーバ配置から他方に、視線方向要素を介する直接経路上だけでなく、送信の反射要素によって形成される複数の伝搬経路を介しても送信される。これは、マルチパス伝搬又はマルチパスチャネルと呼ばれる。マルチパス伝搬により、視線方向要素は、反射要素を有する対向するトランシーバ配置の受信アンテナ上で干渉して、受信信号は、量及び位相に関して歪む可能性がある。その結果、受信機が、受信信号を誤りなく検出することがより困難になる。歪みと共に、視線方向要素が、それに対して180°シフトされた反射要素によって打ち消され得るため、かなりの量の電力を失い得るので、マルチパス伝搬はまた、受信機上の相殺的干渉の問題も引き起こす。
【0098】
特に、トランシーバ配置が、例えば、後述する非接触電気コネクタの場合のように、互いに対向して近接して(例えば、10cm未満の間隔で)位置する場合、アンテナが取り付けられる電気アセンブリ(例えば、プリント回路基板)のベース領域上で反射が起こり得るが、それはこのタイプの組立体が時として、良好な反射鏡を構成するからである。従って、第1から第2のトランシーバ配置への送信において、信号は、第2のトランシーバ配置において視線方向要素を介して到着可能であり、そこで、第1のトランシーバ配置の方向に反射される。第1のトランシーバ配置においてもう一度戻ると、信号は、再びそこで反射され、第2のトランシーバ配置の受信アンテナに跳ね返され、最終的に視線方向要素と干渉する。
【0099】
信号送信品質を改善するために、マルチパス伝搬の影響を可能な限り最小限に抑えることを任意で行うことができる。この点に関して、トランシーバ配置の信号処理要素、特に、イコライゼーション又はプリエンファシスのためのデジタル信号処理要素を設けることができる。
【0100】
しかしながら、本発明の有利な一実施形態において、特に、アンテナ配置は、アンテナの周りに配置された減衰配置を有するようにすることができる。減衰配置は、好ましくは、放射方向に、例えば、アンテナの周りに対称な配置で、アンテナを取り囲む。
【0101】
チャネル歪みは、上述の確実に必要とされる信号処理要素を使用することなく、減衰配置によって有利に低減することができることが明らかになった。従って、デジタル信号処理要素に供給するのに必要とされるであろう相当量のエネルギーを、信号送信においてさらに節約することができる。エネルギー効率は、とりわけ、非接触データプラグ又は非接触コネクタの場合に有利であり得るが、それは後者は、受動態であるためエネルギーを必要としないことの多い接触データプラグと競合するからである。エネルギー効率はさらに、非接触コネクタの熱放散を実質的に容易にすることができ、従って、データ送信システムへのその統合を容易にすることができる。
【0102】
高周波減衰材料(RF吸収体とも呼ばれる)が、好ましくは、使用される。吸収体シートの形態で通常使用されるこの減衰材料は、好ましくは、少なくとも1つの、好ましくは、両方の通信相手に、特にそれらのアンテナの周りに取り付けられる。減衰配置は、確実に、放射線が電気アセンブリ又はプリント回路基板の表面上でほとんど又は全く反射されないようにすることができる。
【0103】
減衰配置は、アクセス開口部を有する少なくとも1つの第1の減衰ユニットを有することができ、アンテナは、アクセス開口部の内側に一緒に配置される。アクセス開口部の中心軸は、好ましくは、アンテナ配置の主放射方向に沿って、及び/又はアンテナの共通の中心点を通って延在させることができる。
【0104】
減衰配置又は減衰ユニットは、好ましくは、アンテナ配置のアンテナ間に延在しない。アンテナ間に減衰材料は設けられないのが好ましい。
【0105】
減衰配置は、好ましくは、ベース領域に、特に、アンテナも形成されるプリント回路基板の側部領域に配置される。減衰配置又はその要素(例えば、減衰ユニット)は、例えば、しっかりと結合され、特に接着されるように、ベース領域に取り付けることができ、追加的に又は代替的に、圧力嵌め及び/又は形態嵌めアタッチメントを設けることもできる。
【0106】
減衰配置はまた、ベース領域から軸方向に離間される、又はベース領域内に少なくとも部分に埋め込まれる、すなわち、例えば、プリント回路基板の内部に形成することもできる。
【0107】
この点において、減衰配置がアンテナの周りに配置されるという定義は、好ましくは、減衰配置がアンテナを半径方向に又は環状の形態で取り囲むように、ベース領域又はアンテナ上の上面図を参照するものとして理解されることに留意されたい。減衰配置がアンテナを軸方向又は横方向にも覆うことは必ずしも必要ではない。
【0108】
一実施形態において、減衰配置は、中にアンテナが一緒に配置されたアクセス開口部を有する第2の減衰ユニットを有するようにすることができる。特に、第1の減衰ユニットと第2の減衰ユニットを同心円状に配置させることができる。
【0109】
第1の減衰ユニットと第2の減衰ユニットは、好ましくは、幾何学的に、及び/又は各材料組成/構造組成に関して互いに異なる。
【0110】
例えば、第1の減衰ユニット及び/又は第2の減衰ユニット等の減衰配置又は減衰配置の要素は、主に、平坦な形状、好ましくは、板状、特に、吸収体シートの形態を有することもできる。しかしながら、例えば、ピラミッド形配置又は減衰配置又はその要素の設計等、任意の設計を実質的に提供することができる。
【0111】
第1の減衰ユニット及び/又は第2の減衰ユニットのアクセス開口部は、円形又は正方形の設計を有するようにすることができる。しかしながら、任意の多角形又は他の幾何学的形状を、アクセス開口部のために実質的に提供することができる。円形アクセス開口部は、回転対称性を介して、任意の円形偏波に対する干渉の影響を低減することができるので、通常、好ましい。
【0112】
第1の減衰ユニット及び/又は第2の減衰ユニットのアクセス開口部の周囲、ならびに中心軸に沿った第1の減衰ユニット及び/又は第2の減衰ユニットの延在部は、アンテナのうちの1つのアンテナメインローブが、(アンテナ又はベース領域/プリント回路基板上の上面図において)主放射方向の減衰配置によって覆われないように設計することができる。
【0113】
アンテナへのアクセス開口部は、好ましくは、アンテナメインローブと交差することなく可能な限り小さくなるように設計される。減衰材料の小さな開口部により、アンテナが配置されることが好ましいプリント回路基板上の反射が効果的に抑制されるという利点が提供される。
【0114】
本発明の一実施形態において、第1の減衰ユニット及び/又は第2の減衰ユニットのアクセス開口部の横方向延在部(例えば、円形のアクセス開口部の半径又は正方形のアクセス開口部の対角線)は、アンテナ配置で送信される電磁波の最大2.0自由空間波長とすることができる。
【0115】
有利な一実施形態において、第1の減衰ユニットを、第2の減衰ユニットのアクセス開口部の内側に配置されるようにすることができる。
【0116】
第1の減衰ユニットは、好ましくは、第2の減衰配置の内側に、実質的にカスタムフィット、特に好ましくは、カスタムフィットすることができる。従って、好ましくは、2つの減衰ユニットの間に空隙又は他の間隙が残らない。
【0117】
このようにして、互いに配置された実質的に任意の数の減衰ユニット、すなわち、例えば、第2の減衰ユニットが第1の減衰ユニットと一緒に配置された第3の減衰ユニット等を設けることができる。
【0118】
本発明の一実施形態において、第2の減衰ユニットは、第1の減衰ユニットよりも中心軸に沿って大きい延在部を有するようにすることができる。従って、第2の減衰ユニットは、好ましくは、第1の減衰ユニットよりも高い。これは、第1の減衰ユニットが第2の減衰ユニットの内側に配置される場合に特に有利であり、その理由は、全体的な構造がそれによって、送信アンテナ群及び受信アンテナ群のアンテナローブに、上面図においてアンテナローブが減衰ユニットのうちの1つと交差することなく、主放射方向に膨らむのに十分な空間を与えることができ、減衰ユニットは、同時に、良好な被覆、従って、減衰を提供することができるからである。
【0119】
第1の減衰ユニット及び/又は第2の減衰ユニットは、損失ベースの吸収体(「広帯域吸収体」とも呼ばれる)及び/又は共振ベースの吸収体(「狭帯域吸収体」とも呼ばれる)を有するようにすることができる。
【0120】
損失ベースの材料の場合、反射減衰は、減衰材料内の誘電損失及び/又は磁気損失によって達成することができる。このタイプの減衰材料は、例えば、ポリウレタンから作られた発泡プラスチック、又は、例えば、炭素粉末もしくはフェライト粉末等の損失材料を備えたシリコーンもしくはニトリルポリマー等のエラストマーである。
【0121】
従って、損失ベースの吸収体は、特に、発泡プラスチック、又は粒状の導電性異物、特に、炭素粉末又はフェライト粉末を備えたエラストマーから作られた誘電性担体材料を有することができる。
【0122】
損失ベースの吸収体は、任意で、軸方向に延在する層状又は連続的なインピーダンス勾配を形成することができる。多層構造によって、又は、材料の誘電特性及び/又は磁気特性を材料の深さによって変化させることによって、自由空間特性インピーダンス(約377オーム)を連続的に低減するインピーダンス勾配を設定することができる。このインピーダンス整合により、材料に当たる電磁波は、空気-吸収体界面で反射されない。代わりに、吸収体に誘導され、漸進的な浸透を伴って、吸収体の誘電又は磁気損失の結果として、ますます減衰される。
【0123】
また、実質的に提供され得るピラミッド形状のRF吸収体は、電界特性インピーダンスの漸進的変化の概念にも基づいている。
【0124】
共振ベースの吸収体は、特に、発泡プラスチック又はエラストマーから作製された誘電性キャリア材料を有することができ、アンテナの主放射方向を背にした側面に、導電性反射領域、特に、金属コーティング又は金属箔を形成することができる。
【0125】
同様に、例えば、シリコーン、ニトリル又はポリウレタンをベースとすることができる共振ベースの減衰材料の場合、空気-減衰材料界面で生じる第1の反射要素に対して180°だけ位相シフトされた第2の反射要素を、減衰材料の下に配置された金属化領域に生成することができる。第1の反射要素及び第2の反射要素は、次いで、互いに打ち消し合うことができる。
【0126】
本発明の特に有利な一実施形態において、第2の減衰ユニットは損失ベースの吸収体を有し、第1の減衰ユニットは共振ベースの吸収体を有するようにすることができる。この組み合わせは、特に、第1の減衰ユニットが第2の減衰ユニットの内側に配置されている場合、そして、特に、第2の減衰ユニットが第1の減衰ユニットよりも大きな軸方向延在部を有する場合に、特に有利である。20GHzを超える、特に、50GHzを超えるキャリア周波数では特に、非常に薄い共振ベースの減衰材料を実装することができる。共振ベースの減衰材料が実装された第1の減衰ユニットの結果として生じる小さな軸方向延在部は、第1の減衰ユニットがアンテナの放射場に最小限しか衝突しないので、アンテナの任意の円偏波に好ましい影響を与えることができる。
【0127】
例えば、薄い減衰材料、又は薄い第1の減衰ユニット(例えば、厚さ0.5mm~2mm)は、その薄い設計のために、アンテナ特性(アンテナゲイン及びアンテナの偏波等)にほとんど影響を及ぼさず、アンテナの周囲の第1のリングのすぐ近くに配置することができる。これは、例えば、共振ベースの減衰材料又は薄いエラストマーベースの広帯域減衰材料によって可能にすることができる。共振ベースの減衰材料は、より経済的で薄いという利点を提供する。広帯域材料は、その大きな吸収帯域幅と共に、非直交入射電磁放射線も効果的に吸収することができるという利点を提供する。例えば、広帯域発泡プラスチック吸収体の場合のように、より厚く(例えば、>2mm)、経済的で、かつ非直交入射電磁放射線を効果的に吸収する第2の減衰材料又は第2の減衰ユニットを、アンテナの周りの第2のリングに配置することができる。
【0128】
減衰配置の直径又は辺の長さは、アンテナ配置で送信される電磁波の最大6つの自由空間波長及び少なくとも3つの自由空間波長であるようにすることができる。
【0129】
本発明はまた、上記及び下記の説明によるアンテナ配置、ならびに送信信号経路及び受信信号経路を有するトランシーバ配置に関し、第1のバランの非対称接続は、送信信号経路に接続され、第2のバランの非対称接続は、受信信号経路に接続される。送信信号経路は、送信ユニットを有し、受信信号経路は、共通の回路配置の要素とすることができる受信ユニットを有する。送信ユニットは、2つの送信アンテナの差動励起を通して電磁波を放射するために、第1のバランを介して2つの送信アンテナに接続される。受信ユニットは、受信アンテナを介して電磁波を受信するために、第2のバランを介して受信アンテナに接続される。
【0130】
従って、第1のバランのシングルエンド接続(すなわち、非対称信号送信のための接続)は、好ましくは、送信ユニット又は送信機のHF出力に接続され、第1のバランの差動接続(すなわち、対称信号送信のための接続)は、いずれの場合にも送信アンテナに接続される。第2のバランのシングルエンド接続は、好ましくは、受信ユニット又は受信機のHF入力にさらに接続され、第2のバランの差動接続は、いずれの場合にも受信アンテナに接続される。
【0131】
トランシーバ配置は、有利には、同じ周波数帯域(帯域内全二重)におけるデータ(全二重)の同時双方向送信に適し、通信相手の相反回転又は互いに対するアラインメントとは独立したアンテナ配置を有するように提供することができる。例えば、アンテナの共通の中心点の周りの2つの通信相手の回転は、送信中に可能であり、特に、2つの通信相手が、アンテナの共通の中心点との回転軸と、各他の通信相手の回転軸とが一致して共通の回転対称中心を形成するように、互いに同心円状に配置される場合に可能である。各通信相手は、上記及び下記の説明によるトランシーバ配置を備える。
【0132】
データは、提案されたトランシーバ配置によって、2つの通信相手又は第1及び第2のトランシーバ配置の配向又はアラインメントから独立して、アンテナ配置の同時に単純な技術的設計で送信することができる。本発明は、有利には、従来のプリント回路基板技術を使用して実施することができるが、例えば、導波路を使用した他の製造技術が実質的に可能である。
【0133】
バラン又はバランシングユニットは、好ましくは、180°ハイブリッドカプラ(ラットレースカプラ又はリングカプラとしても知られている)として設計することができる。しかしながら、代替的に、異なる構造、特に、マーチャンドバランを設けることができる。ただし、他の実施形態も可能である。例えば、90°ハイブリッドカプラを第2の出力ゲートに設けることができ、その第2の出力ゲートは、第1の出力ゲートに対して90°位相シフトされ、90°の電気長(すなわち、送信される電磁波の自由空間波長の1/4)を有する線が接続される。第1のアンテナ給電線が接続された第1の出力部に、ウィルキンソン分配器をさらに設けることができ、その電気長は、ウィルキンソン分配器の第2の出力部に接続された第2のアンテナ給電線の電気長よりも180°長い。また、マジックティーを設けることもできる。
【0134】
本発明の特に有利な一実施形態において、送信ユニット及び受信ユニットは、帯域内全二重通信を可能にするように設計することができる。本開示の異なる設計では、送信ユニット及び受信ユニットをレーダシステムの要素とすることができる。
【0135】
送信ユニットは、好ましくは、第1のキャリア周波数帯域を有する送信信号を送信するように設計され、受信ユニットは、第2のキャリア周波数帯域を有する受信信号を受信するように設計され、第1のキャリア周波数帯域及び第2のキャリア周波数帯域は、互いに、少なくとも部分的にスペクトル的に重畳され、好ましくは、完全にスペクトル的に重畳され、受信ユニットは、送信ユニットが送信信号を送信する間に受信信号を受信するように設計される。
【0136】
本発明の一実施形態において、受信ユニットは、インコヒーレント復調を実行するように設計することができる。受信ユニットは、好ましくは、インコヒーレント復調を実行する包絡線検出器を有することができる。
【0137】
特に、信号送信において高いデータレートを達成することを目的とする場合は、コヒーレント送信方法が通常好ましい。しかしながら、本発明者らは、著しく低減された電力消費のために、インコヒーレント復調方法がここではより適切であり得ることを認識した。高いデータレートを同時に保持するために、上記で提案された、本発明によるアンテナ配置の高い減衰特性のために有利に使用可能な帯域内全二重送信を使用することができる。高い減衰特性は、第1の減衰ユニットによって、また、任意で、さらに第2の減衰ユニットによって達成することができる。
【0138】
本発明の一実施形態において、さらに、送信ユニットは、信号送信のためのキャリア周波数を生成する、フリーホイーリング電圧制御発振器を有することができる。
【0139】
フリーホイーリング発振器を使用すると、トランシーバ配置の単純で省電力の設計をもたらすことができる。特に、設置スペース及び電力を必要とする複雑な位相ロックループを省くことができる。トランシーバ配置の受信信号経路は、特に、受信信号経路がインコヒーレント復調を実行し、対応する包絡線検出器を有する場合、発振器なしで対応して得ることができ、それによっても電力及び設置スペースが節約される。
【0140】
トランシーバ配置のさらなる簡略化のために、2段の両側波帯振幅変調のみを使用することができる。特に、直角位相振幅変調等の複素変調方法を省くことができる。
【0141】
送信ユニットの最大送信電力は、好ましくは、30dBm未満、好ましくは、27dBm未満、特に好ましくは、20dBm未満、極めて特に好ましくは、10dBm未満、さらに好ましくは、2dBm未満とすることができる。
【0142】
送信電力は、例えば、送信信号経路の送信信号最終段増幅器の動作点設定を介して設定することができる。
【0143】
トランシーバ配置の送信ユニットは、第1の信号処理要素(より正確には、送信信号処理要素)を備えることができる。この送信信号処理要素は、送信ベースバンド信号をキャリア周波数範囲に変換するアップコンバータを備えることができる。アップコンバータのための局部発振器信号は、送信信号処理要素の発振器回路によって提供することができる。送信信号処理要素は、送信信号処理要素の高周波出力(略してHF出力)に接続される送信信号最終段増幅器をさらに備えることができる。送信信号処理要素は、送信信号最終段増幅器の出力と送信信号処理要素のHF出力との間で接続される送信フィルタ、例えば、バンドパスフィルタを任意で備えることができる。
【0144】
受信ユニットは、第2の信号処理要素(より正確には、受信信号処理要素)を備えることができる。この受信信号処理要素は、その高周波数入力(略してHF入力)に受信フィルタを備えることができ、この受信フィルタは、バンドパスフィルタとして実装することができる。受信信号処理要素は、受信信号処理要素の高周波入力に接続できる低雑音前置増幅器をさらに備えることができる。低雑音前置増幅器は、例えば、受信フィルタの出力に接続される。受信信号処理要素は、キャリア周波数範囲からの受信信号をベースバンド又は中間周波数に変換することができるダウンコンバータをさらに備えることができる。このダウンコンバータは、例えば、包絡線検出器として実施することができ、又は受信信号処理要素の任意の局部発振器回路によって局部発振器信号を供給することができる。
【0145】
例示的な一実施形態において、送信信号処理要素も受信信号処理要素も、送信信号のデジタルプリエンファシス又は受信信号のイコライゼーションのためのデジタル信号処理用デバイス、特に、無線チャネル推定のためのデバイスを備えていない。これは、トランシーバ配置の電力節約をもたらすことができる。
【0146】
特に、10GHz以上、好ましくは、30GHz以上、特に好ましくは、60GHz以上のキャリア周波数をデータ送信のために提供することができる。送信ユニットの電圧制御発振器は、好ましくは、上述のキャリア周波数でキャリア発振を生成するように設計することができる。
【0147】
第1及び第2のトランシーバ配置が互いに対向して配置される非接触電気コネクタの例示的な一実施形態において、それらの間の距離は10cm未満であり、50GHzを超えるキャリア周波数が提供され、最大送信電力は、好ましくは、0dBm未満である。第1及び第2のトランシーバ配置は、好ましくは、帯域内全二重通信によって接続される。
【0148】
アンテナのサイズは、一般に、使用される動作波長でスケーリングされる。前述の比較的高いキャリア周波数の1つの特定の利点は、信号送信の関連する高いデータレートと共に、電磁波の小さな波長にも見出すことができ、従って、包含されるアンテナ及び構造を対応して小さく設計することを可能にし、その結果、本発明は、以下に提案されるように、小さい空間要件を有する非接触コネクタを実装するのに好適であるという利点を有し得る。
【0149】
特に、対応して高いキャリア周波数が選択される場合、信号送信におけるデータレートは、0.2Gbit/sよりも大きく、好ましくは、0.5Gbit/sよりも大きく、特に好ましくは、1.0Gbit/sよりも大きくすることができる。
【0150】
本発明はまた、トランシーバ配置の各回路配置間で無線信号送信を提供するための、特に、トランシーバ配置間で帯域内全二重通信チャネルを提供するための、上記及び下記の説明による、いずれの場合における、第1のトランシーバ配置及び第2のトランシーバ配置を有する通信システムにも関する。
【0151】
コンパクトでエネルギー効率の良い帯域内全二重通信システムは、有利には、各通信相手の、互いに分離された送信及び受信アンテナを備えることができ、このシステムは、限られた設置空間内で非常に短い距離にわたって機械的回転を伴う非常に速いデータ送信を可能にする。
【0152】
本発明による通信システムは、特に有利には、互いに対して移動可能に配置された電気デバイス間の無線送信のために、好ましくは、摺動接点の代替として使用可能である。提案される通信システムは、2つの通信相手、すなわち、第1のトランシーバ配置及び第2のトランシーバ配置が、動作中に互いに対して可変又は未知の回転角度を有し、その結果、送信アンテナ及び受信アンテナが定義された方法で常に互いに整列可能であるとは限らない場合、有利であり得る。
【0153】
本発明による通信システムは、特に、モータ又は回転機械又はリニアアクチュエータと共に使用するのに適している。可能な応用分野は、エネルギー技術(例えば、風力タービン及び発電機)及び車両技術(特に、電動機、発電機、座席、ドアミラー、又は自動車ドア等の調整可能な機器)に関する。本発明はまた、特に有利には、関節接合の分野のロボット工学、医療技術、又は一般に産業において、特に密封されたシステムが提供される場合に使用するのにも適している。
【0154】
有利な一実施形態において、2つのトランシーバ配置は、無線信号送信のために、互いに最大10センチメートル離れて、好ましくは、互いに最大5センチメートル離れて、特に好ましくは、互いに最大2センチメートル離れて、極めて特に好ましくは、互いに最大1センチメートル離れて、さらに好ましくは、互いに最大0.5センチメートル離れて、例えば、互いに1.0ミリメートル~3.0センチメートル離れて配置することができる。
【0155】
トランシーバ配置間の距離は、第1のトランシーバ配置の送信アンテナ群の共通の中心点と第2のトランシーバ配置の受信アンテナ群の共通の中心点との間の最短距離として定義することができる。
【0156】
従って、比較的短い距離での送信のためにアンテナを使用することが提案される。これは、例えば、導波路の使用による、隣接する導体間のクロスカップリングに基づくシステムが、通常、短い送信距離のために使用されるという、既知の技術のアプローチとは対照的である。逆に、アンテナは、線伝導電磁波を自由空間波に、及びその逆に変換する波形変換部である。従って、それらは、通常、非常に短い距離での非接触データ送信には適していない。しかしながら、これらの欠点は、提案されたアンテナ配置によって克服することができ、その結果、低電力消費及び高電磁適合性を有する経済的な小型システムを実現することができる。アンテナ配置の固有の減衰特性及び関連する帯域内全二重動作の可能性により、信号送信において高いデータレートをさらに達成することができる。
【0157】
本発明は、実質的に、近接場での使用、又は短距離での無線送信に特に有利に適している。しかしながら、本発明は、一般に、遠距離場送信、又は上記で指定されたものよりも長い距離での送信にも適し得る。従って、2つのトランシーバ配置間の距離は、実質的に任意とすることができ、例えば、10センチメートルよりも大きく、例えば、20~100センチメートル以上とすることができる。
【0158】
本発明の有利な一実施形態において、2つのトランシーバ配置を、共通の回転軸の周りで互いに対して回転可能とすることができる。
【0159】
従って、各アンテナ配置の中心点又は各アンテナ配置のアンテナの共通の中心点は、好ましくは、互いに同軸に配置され、共通の回転軸と一致する。
【0160】
また、2つのトランシーバ配置は、例えば、ダクトに沿って、特にアンテナの主放射方向に、又は主放射方向とは逆に、互いに対して並進移動可能である。
【0161】
有利な一実施形態において、通信システムは、第1のトランシーバ配置が配置される非接触電気コネクタと、コネクタに機械的に接続可能であり、第2のトランシーバ配置が配置される非接触相手電気コネクタとを有することができる。
【0162】
従って、非接触(特に電気接点に関して)コネクタ又は無線コネクタ、すなわち無線インターフェースを有するコネクタを提供することができる。各トランシーバ配置は、任意で、コネクタ又は相手コネクタ内に密封方式で収容することができる。
【0163】
コネクタ及び相手コネクタは、好ましくは、コネクタ及び相手コネクタが互いに接触しないように、完全に非接触、すなわち機械的及び電気的に非接触であるように設計することができる。従って、コネクタ及び相手コネクタは、互いにガルバニック及び/又は機械的に分離されるように設計することができる。
【0164】
従来の接触形成コネクタとは異なり、電気的、任意で機械的にも非接触のコネクタは、導体接点の機械的摩耗を経時的にもたらすプラグイン手順が必要とされないので、摩耗が少ないという利点を提供する。非接触データプラグ又はコネクタのさらなる利点は、動作中にコネクタ及び相手コネクタが互いに対して動くことができることである(これがアプリケーション内に提供される限り)。従って、摺動接点、例えば、共に移動するため機械的な応力にさらされるケーブルの、特に摩耗に影響される使用を回避することができる。
【0165】
コネクタ及び相手コネクタは、互いにロック可能である。コネクタは、少なくとも1つの第1のロック手段を有することができ、相手コネクタは、第1のロック手段に対応する第2のロック手段を有することができる。ロック手段は、例えば、ロックキャッチ、スナップフック、スプリングクリップ、ロック凹部、雌凹部、又は他のロック機構として設計することができる。閉鎖プラグイン接続のロックレバー又は他の固定も提供することができる。ロックは、好ましくは、コネクタ及び相手コネクタがロック後でさえも互いに対して、例えば、挿入方向に並進的に、又はアンテナの主放射方向に沿って、又は既に上述した回転軸の周りで回転的に、少なくとも1自由度(任意で定義された限界内)で依然として移動可能であるように設計される。
【0166】
コネクタは、好ましくは、少なくともいくつかの領域において、相手コネクタに対して回転可能及び/又は移動可能である(特に接続状態においても)。
【0167】
本発明はまた、上記及び下記の説明による第1のアクチュエータ素子、第2のアクチュエータ素子、及び通信システムを有するアクチュエータデバイス、特に、産業用ロボットシステムに関し、第1のトランシーバ配置は、第1のアクチュエータ素子に配置され、第2のトランシーバ配置は、2つのアクチュエータ素子間のワイヤレス信号送信を可能にするために、第2のアクチュエータ素子に配置される。
【0168】
アクチュエータデバイスのために、特に、多軸産業用ロボットシステムのために、同じ又は少なくとも重複する周波数帯域(帯域内全二重)における非接触双方向データ送信(全二重)を有利に提供することができ、通信は、通信相手の相反回転とは独立して可能にすることができる。
【0169】
最後に、本発明はさらに、少なくとも以下の方法ステップを有する、トランシーバ配置、特に、高周波トランシーバ配置のアンテナ配置を動作させる方法に関する。すなわち、
-第1のバランの対称接続に、いずれの場合にも、接続される第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナからなる送信アンテナ群を提供するステップと、
-第2のバランの対称接続に、いずれの場合にも、接続される第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナからなる受信アンテナ群を提供するステップと、
-第1のバランの非対称接続を介して第1のバランに接続されるトランシーバ配置の送信信号経路を介して送信アンテナ群を動作させるステップと、
-送信信号経路から独立し、第2のバランの非対称接続を介して第2のバランに接続されるトランシーバ配置の受信信号経路を介して受信アンテナ群を動作させるステップと
を含み、第1の送信アンテナ、第2の送信アンテナ、第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナは、送信アンテナ群と受信アンテナ群との間のクロストークが、それらの各アンテナの差動接続によって少なくとも低減されるように、互いに対して空間位置に配置される。
【0170】
送信アンテナと受信アンテナの差動動作によって、バランの非対称接続の調整が個々のアンテナの調整と比較してかなり改善されるという利点が提供される。その結果、改善された調整は、通信相手間の送信チャネルのより均一な周波数応答をもたらし、従って、チャネル歪みがより少なくなる。チャネル歪みがより少なくなることで、最終的に、シンボル間干渉の低減をもたらし、これがより高いデータレートを可能にする。
【0171】
本発明の対象のうちの1つに関連して説明された特徴、すなわち、アンテナ配置、トランシーバ配置、通信システム、アクチュエータデバイス、又は方法を含む特徴は、本発明の他の対象に対しても有利に実施可能である。本発明の対象の1つに関連して言及された利点は同様に、本発明の他の対象にも関連すると理解することができる。
【0172】
加えて、「含む」、「有する」又は「備える」等の用語は、他の特徴又はステップを除外しないことに留意されたい。さらに、ステップ又は特徴の単数を指す「1つの」又は「その」等の用語は、複数のステップ又は特徴を除外せず、逆もまた同様である。
【0173】
しかしながら、本発明の純粋な実施形態において、「含む」、「有する」又は「備える」という用語により、本発明に導入される特徴は網羅的に列挙することもできる。従って、本発明による特徴の1つ以上の列挙は網羅的であると見なすことができ、例えば、いずれの場合にも、各請求項について考慮される。本発明は、例えば、請求項1に記載の特徴のみからなることができる。
【0174】
「第1の」又は「第2の」等の指示は、主に、各デバイス特徴又は方法特徴を区別可能にする理由で使用され、特徴が相互に依存したり、又は互いに関連することを必ずしも示すことを意図するものではないことに留意されたい。
【0175】
さらに、強調すべきこととして、本明細書に記載される値及びパラメータは、実際に本発明の実施においてこれらの偏差が除外されない限り、それぞれ指定された値又はパラメータの±10%以下、好ましくは、±5%以下、さらに好ましくは、±1%以下、及び極めて特に好ましくは、±0.1%以下の偏差又は変動も含むものとする。初期値及び最終値による範囲の指示はまた、それぞれ指定された範囲、特に、初期及び最終値ならびに各平均値に包含される全ての値及び分数も含む。
【0176】
別の発明は、全体的な発明概念の枠内で以下にも記載される。出願人は、以下に記載する対象を別々に請求する権利を明示的に留保する。
【0177】
別の発明は、アンテナ配置のための減衰配置に関し、減衰配置は、アンテナ配置の1つ以上のアンテナの周りに、好ましくは、アンテナが接続されるベース領域(例えば、プリント回路基板の側面領域)に配置可能である。減衰配置は、アクセス開口部を有する少なくとも1つの第1の減衰ユニットを有し、このアクセス開口部内に前記アンテナが共同配置可能であり、アクセス開口部の中心軸は、アンテナ配置の主放射方向に沿って、及び/又は前記アンテナの共通の中心点を通って延在する。
【0178】
別の発明はさらに、1つ以上のアンテナ、好ましくは、ベース領域、及び前述の減衰配置を有するアンテナ配置に関する。
【0179】
以下の特許請求の範囲、特に請求項14~19の特徴、ならびにアンテナ配置、減衰配置、及びさらなる対象に関する本明細書に記載される特徴及び利点は、別の発明の有利な実施形態及び変形として理解されるものとする。
【0180】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0181】
図面は、いずれの場合にも、本発明の個々の特徴が互いに組み合わせて提示される好ましい例示的な実施形態を示す。例示的な一実施形態の特徴はまた、同じ例示的な実施形態の他の特徴とは別に実施可能であり、従って、当業者であれば、他の例示的な実施形態の特徴と容易に組み合わせて、さらなる適切な組み合わせ及びサブコンビネーションを形成することができる。
【0182】
図中、機能的に同一の要素には同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図1】楕円形パッチアンテナを有する本発明によるアンテナ配置の上面図を示す。
図2】正方形の幾何学的形状と、互いに対角線上に対向する2つの面取りされた角部とを有する、本発明によるアンテナ配置で使用するためのさらなるパッチアンテナの例を示す。
図3】正方形の幾何学的形状と、中央のスロット形状のインデントを有する本発明によるアンテナ配置で使用するためのさらなるパッチアンテナの例を示す。
図4】丸い幾何学的形状と、正方形の形状に打ち抜かれた又は凹んだ2つの周辺領域とを有する、本発明によるアンテナ配置で使用するためのさらなるパッチアンテナの例を示す。
図5】三角形の幾何学的形状を有する本発明によるアンテナ配置で使用するためのさらなるパッチアンテナの例を示す。
図6】矩形の細長い幾何学的形状を有する本発明によるアンテナ配置で使用するためのさらなるパッチアンテナの例を示す。
図7】近接場結合又は容量結合を有する本発明によるアンテナ配置の断面図を示す。
図8図7のアンテナ配置の上面図を示す。
図9】貫通接続による直接結合を有する本発明によるアンテナ配置の断面図を示す。
図10】マイクロストリップラインによる直接結合を有する本発明によるアンテナ配置の断面図を示す。
図11】スロットアンテナとして設計された中間アンテナを介して結合する、本発明によるアンテナ配置の断面図を示す。
図12】貫通接続からなる円周方向遮蔽配置を有する本発明によるアンテナ配置の上面図を示す。
図13】本発明によるトランシーバ配置を示す。
図14】電気コネクタ及び相手電気コネクタを有する本発明による通信システムを示す。
図15】互いに対して回転されて配置された通信相手を有する本発明によるさらなる通信システムを示す。
図16】本発明に係る通信システムの透過特性及び分離特性のシミュレーション結果を示す。
図17】本発明の例示的な一実施形態によるアクチュエータ素子を示す。
図18】第1の変形例による各減衰配置を有する、2つの通信相手を有する本発明によるさらなる通信システムを示す。
図19】第2の変形例による減衰配置を有する本発明によるさらなるトランシーバ配置の斜視図を示す。
図20】本発明によるさらなる通信システムにおける図19に示されるトランシーバ配置のうちの2つを示す。
【発明を実施するための形態】
【0184】
図1は、全二重通信チャネル内で使用するための本発明によるアンテナ配置1を概略的に示す。アンテナ配置1は、第1の平面送信アンテナ2及び第2の平面送信アンテナ3から形成された送信アンテナ群と、同一の設計の第1の平面受信アンテナ4及び第2の平面受信アンテナ5とを有し、第1の受信アンテナ4と共に受信アンテナ群を形成する。
【0185】
全ての送信アンテナ2、3は、例示的な実施形態において、同一の設計とすることができる。受信アンテナ4、5は、好ましくは、送信アンテナ2、3と同一の設計とすることができ、すなわち、特に、アンテナ2、3、4、5の幾何学的形状、材料、及び給電点は、それぞれ同一とすることができる。
【0186】
送信アンテナ2、3及び受信アンテナ4、5は、共通の中心点の周り、又は共通の回転中心Zの周りで、共通のベース領域7に平行に各主領域6を伴って配置される。ベース領域7は、好ましくは、アンテナ2、3、4、5を有する電気アセンブリに形成される。ベース領域7は、特に、電気プリント回路基板8の外側金属化領域、例えば、上部層又は下部層とすることができる。回転中心Zは、好ましくは、2つの送信アンテナ2、3間の中央に形成され、例示的な実施形態においては、さらに、2つの受信アンテナ4、5間の中央に形成されるが、これに限定されるものではない。例示的な実施形態において、全てのアンテナ2、3、4、5は、中心点が回転中心Zと一致する共通の仮想円周K上に中心点Mを有するように配置される。
【0187】
送信アンテナ2、3は、回転中心Zの周りに互いに180o回転したように配置される。受信アンテナ4、5もまた、互いに対して180o回転し、受信アンテナ4、5は、円周Kに沿って近接する送信アンテナ2、3に対して90oさらに回転して配置される。アンテナ2、3、4、5は、いずれの場合にも、同じ方向に、回転中心Zの周りに回転、例示的な実施形態において、図1において明確に認識可能であるように、特に、アンテナ2、3、4、5の給電点9の位置に基づいて、時計回りに回転する。
【0188】
他の例示的な実施形態において、アンテナ2、3、4、5の回転は、例えば、容量結合給電線におけるように、アンテナ2、3、4、5の同様に回転された給電線に基づいて認識することもできる(図8も参照されたい)。
【0189】
第1の受信アンテナ4は、2つの送信アンテナ2、3と同じ中心間距離Dを有する。例示的な実施形態において、第2の受信アンテナ5はまた、両方の送信アンテナ2、3に対して同じ中心間距離Dを有し、第2の受信アンテナ5の中心間距離Dは、第1の受信アンテナ4の中心間距離Dと同一である。この全体的な結果が、図1に示される幾何学的配置である。
【0190】
円周Kに沿って近接する受信アンテナ4、5と送信アンテナ2、3との間の中心間距離Dは、好ましくは、送信される電磁波の波長λの半分未満であり、2つの送信アンテナ2、3と2つの受信アンテナ4、5との間の距離は、送信される電磁波の波長λの半分に正確に対応するか、又は同様に波長λの半分未満である。
【0191】
受信アンテナ4、5及び送信アンテナ2、3は、さらに好ましくは、各主対称軸Hが実質的に、又は好ましくは正確に45oの配向角αを形成するように、互いに対して配置される。円周Kに沿って近接するアンテナ2、3、4、5の主対称軸Hは、図示されるように、互いに直交するように整列される。しかしながら、それは必ずしも実際の当該配向角度αであるとは限らず、むしろ、それが全てのアンテナについて同一であるということである。
【0192】
全てのアンテナ2、3、4、5上の同一の配向角αのため、及び/又は全てのアンテナ2、3、4、5の、共通の仮想円周K上の中心点Mによる配置のため、送信アンテナ群と受信アンテナ群との間のクロストークは、各アンテナ2、3、4、5の差動接続によって、少なくとも低減することができる。
【0193】
アンテナ2、3、4、5は、各偏心オフセット給電点9を有し、各偏心オフセットdは、全てのアンテナ2、3、4、5について同一である。給電点9は、好ましくは、主対称軸H上に位置するが、これは必ずしも必要ではない。給電点9は、通常、50オームの入力インピーダンスに整合される。ただし、ここでは複数の可能な給電点9が、各アンテナ2、3、4、5の主領域6上に存在し得ることに留意されたい。このため、例示的な実施形態において示される給電点9は、例に過ぎないことを理解されたい。実質的に、複数の給電点9を同時に使用することができるが、通常は、アンテナ2、3、4、5毎に1つの単一の給電点で十分である。
【0194】
図示されたアンテナ配置1は、送信アンテナ群の送信アンテナ2、3が180°位相シフトされた信号で励起される場合、特に、必ずしも必要ではないが、受信された電磁波が受信アンテナ群の受信アンテナ4、5によって同様に差動的に評価される場合、送信機と受信機との間の非常に効果的な分離を可能にする。それにもかかわらず、アンテナ配置1は、技術的に単純な手段、例えば、単純なプリント回路基板技術を用いて設計することができる。
【0195】
アンテナ2、3、4、5は、大半の例示的な実施形態にあるように、パッチアンテナとして設計されることが好ましい。パッチアンテナは、特に、プリント回路基板8上又はその中の導電性領域又は金属化領域として設計することができる。あるいは、アンテナ2、3、4、5は、スロットアンテナとして設計され、例えば、プリント回路基板8の金属化領域において、金属化領域に対応するインデント10を有する、相補的な配置とすることもできる(例えば、図3及び図11参照)。
【0196】
アンテナ2、3、4、5の各主領域6は、特に好ましくは、図1及び以下の図のいくつかに示されるように、楕円形の幾何学的形状を有する。これにより、図1に示すアンテナ配置1では、特に純粋な円偏波の電磁波を生成することができ、例えば、時計回りの円偏波である(あるいは、アンテナ2、3、4、5をそれぞれ90°回転させた配置の場合には、反時計回りの円偏波も生成することができる)。しかしながら、代替的に、アンテナ2、3、4、5の他の幾何学的形状も提供することができ、そのうちのいくつかは、例として図2図6に示される。
【0197】
図2に示されるように、例えば、互いに対向して対角線上に配置された、正確に1対の打ち抜かれた、又は凹んだ角部を有する正方形の幾何学的形状を提供することができる。この場合、給電点9は、好ましくは、主対称軸H上に位置せず、代わりに、主対称軸Hに対して45°回転し、アンテナ2、3、4、5の中心点Mを通る直線上に位置する。
【0198】
さらに別のアンテナ2、3、4、5が、図3に示されており、このアンテナは、導電性の主領域6内の中央に、スロット形状の斜めに配置されたインデント10を有する。給電点9は、好ましくは、主対称軸Hに対して45°に整列され、アンテナ2、3、4、5の中心点Mを通る直線上に配置される。
【0199】
図4には、さらに別のアンテナの幾何学的形状が示されている。アンテナ2、3、4、5は、円形として設計されており、正確に1対の、互いに対向して対角線上に配置された正方形、打ち抜かれた、又は凹んだ部分を有する。次に、給電点9は、主対称軸Hに対して45°傾斜し、中心点Mを通る直線上に配置される。
【0200】
三角の幾何学的形状を有するアンテナ2、3、4、5は、図5にさらなる例として示されており、給電点9は、対称軸H上で偏心的にオフセットされている。
【0201】
最後に、図6は、アンテナ2、3、4、5の長手方向に矩形の断面を示しており、給電点9は、対称軸H上に配置されている。
【0202】
既に述べたように、さらに別の給電点9を設けることができ、例えば、図2ではアンテナ2、3、4、5の中心点にわたって上方に鏡像化されて示された直線に沿ったさらなる給電点9を設けることができ、又は図3、4、6ではそれぞれ最大4つの給電点9を設けることができる。
【0203】
前述の各アンテナ2、3、4、5は、各スロットアンテナとして相補的に設計することもできる。
【0204】
各アンテナ2、3、4、5に電磁波を注入し、そこから電磁波を抽出する、異なる変形例が可能である。好ましい注入及び抽出技術を、図7及び8に示す。電磁波は、好ましくは、各給電線11から主に容量的に送信アンテナ2、3に注入され、図7の断面図に示されるように、主に容量的に受信アンテナ4、5から抽出される。従って、給電点9は、図8の仮想点に過ぎない。容量的注入の場合、アンテナ2、3、4、5の回転は、実質的に、入ってくる給電線11の角度によって容易に認識可能である。最終的に、入ってくる給電線11の角度は、実質的にアンテナ2、3、4、5の偏波に影響を及ぼす。例えば、図8に示されるアンテナ2、3、4、5について、これは主軸Hに対して45°で届く給電線に起因する右円偏波をもたらす。アンテナ主領域6が、主領域6に垂直に延在し、主領域の中心点を通る仮想軸の周りで90°回転された場合、これはアンテナ2、3、4、5の左円偏波をもたらす。
【0205】
有利なインピーダンス整合のために、給電線11は、各アンテナ2、3、4、5の中心点Mの方向に連続的に広がることができる(図8参照)。
【0206】
1つ以上の中間アンテナ12による、各アンテナ2、3、4、5への、及びそこからの注入及び抽出のための積層配置は、配置の帯域幅をさらに増加させることができる。中間アンテナ12の主領域6は、好ましくは、アンテナ2、3、4、5と比較して拡大される。複数の中間アンテナ12が設けられている限り、それらの主領域6は、対応するアンテナ2、3、4、5からの距離に伴って拡大する。
【0207】
指向性放射パターンを得るために、図7で明確に認識されるように、最終接地プレート13を、対応するアンテナ2、3、4、5の後側に設けることができる。これは、例えば、プリント回路基板8上の金属コーティング及び/又は金属筐体とすることができる。
【0208】
近接場結合の代替として、例えば、プリント回路基板8の図9に示される貫通接続14によって、又は対応するアンテナ2、3、4、5に通じるマイクロストリップラインによる給電によって、直接励起を行うこともできる(図10参照)。さらに、図11に示すように、スロットアンテナとして設計された中間アンテナ12による注入を行うこともできる。
【0209】
アンテナ配置1の分離特性及び遮蔽を増大させ、適切な場合には、放射パターンをさらに最適化するために、図12に例として示すように、遮蔽配置15を設けることができる。
【0210】
遮蔽配置15は、送信アンテナ2、3及び受信アンテナ4、5の周りに配置することができ、アンテナ2、3、4、5を実質的に管状の形態で包囲することができる。遮蔽装置15は、好ましくは、ベース領域7(図12に点線で示す)に直交して延在する遮蔽ケーシング16を形成することができる。遮蔽配置15は、例えば、金属板によって、代替的に、図12に示すように、プリント回路基板8を貫通して延在し、好ましくは、規則的に、特に好ましくは、少なくとも2列に配置された個々の貫通接続14から形成することができる。
【0211】
アンテナ配置1と組み合わせた遮蔽配置15の1つの利点は、アンテナ配置1の周囲に配置されたアンテナ2、3、4、5の放射場から導体構造を遮蔽することにある。非対称に配置された導体構造は、特に、送信アンテナ2、3及び受信アンテナ4、5の放射場に異なる影響を及ぼす可能性があり、従って、送信アンテナ2、3と受信アンテナ4、5との間の不均一なクロストークをもたらす可能性がある。この結果、2つの送信アンテナ2、3から受信アンテナへのクロストークは、もう解消され得ないか、又は部分的にしか解消され得ず、これはアンテナ分離を低減し得る。
【0212】
図13は、例として、本発明によるトランシーバ配置17を示す。トランシーバ配置17は、上述の説明によるアンテナ配置1と、送信ユニット(TX)19及び受信ユニット(RX)20を有する回路配置18とを有する。
【0213】
送信ユニット19は、2つの送信アンテナ2、3の差動励起によって電磁波を放射するために、2つの送信アンテナ2、3に接続される。この目的のために、送信ユニット19は、送信信号経路S内に第1の信号処理要素21を有し、送信アンテナ群は、送信アンテナ2、3を180°にわたって位相シフトされた電気信号で励起するために、第1のバラン又は第1のバランシングユニット22を有する。第1のバランシングユニット22は、好ましくは、180°ハイブリッドカプラとして設計される。第1の送信アンテナ2及び第2の送信アンテナ3は、それぞれ、第1のバラン22の対称接続Aに接続される。送信ユニット19又は送信ユニット19の信号処理要素21は、第1バラン22の非対称接続Aに接続される。
【0214】
2つの受信アンテナ4、5との差動受信について、電磁波を受信し、それを受信信号経路E内の第2の信号処理要素24に転送するために、受信ユニット20は、受信アンテナ群の第2のバランを介して、又は第2のバランシングユニット23、好ましくは、同様に180°ハイブリッドカプラを介して、2つの受信アンテナ4、5に接続される。第1の受信アンテナ3及び第2の受信アンテナ4は、それぞれ、第2のバラン23の対称接続Aに接続される。受信ユニット20又は受信ユニット20の信号処理要素24は、第2バラン23の非対称接続Aに接続される。
【0215】
同じトランシーバ配置17内の送信信号経路Sと受信信号経路E間の非依存性は、例えば、トランシーバ配置17が、異なる、すなわち、相関性のない信号をルーティングするように作用させることができることを意味する。送信信号経路Sは、送信アンテナ2、3を介して送信することができ、第2のトランシーバ配置17に無線で送信することができる送信信号をルーティングすることができる。受信信号経路Eは、第2のトランシーバ配置17から送信され、受信アンテナ4、5を介して受信される受信信号をルーティングすることができる。
【0216】
加えて、また図13に示されるように、送信信号経路S及び受信信号経路Eは、互いにガルバニック絶縁され得る。
【0217】
無線通信システム25は、このタイプの2つのトランシーバ配置17によって形成することができる。このタイプの通信システム25は、第1及び第2の通信相手を備えることができ、第1の通信相手は、第1のトランシーバ配置1、7を備えることができ、第2の通信相手は、本明細書に開示されるタイプの第2のトランシーバ配置17を備えることができる。本発明による通信システム25は、特に有利には、例えば、最大5メートルの近距離無線信号送信に適しており、通常は、例えば最大10センチメートルという短い距離にも適している。本発明により提案されるアンテナ配置1によって、少なくともアンテナ配置1の中心点Zが、プリント回路基板8に対して垂直に整列された共通の回転軸上に位置する場合、近接場においてさえも、ほぼ独立して、好ましくは、完全に独立して、2つのトランシーバ配置17の互いに対するアラインメントから無線通信が可能になり得る。この場合、信号送信は、特に、アンテナ配置1の互いに対する回転からは独立させることができる。
【0218】
1つの有利な用途は、とりわけ、例えば、関節接合の分野における摺動接点の代替として、ロボット工学、又は、特に悪環境条件下で通信接続が確立される、密封遮蔽される用途である。
【0219】
図14は、一例として、第1のトランシーバ配置17が配置された電気コネクタ26を有し、第2のトランシーバ配置17が配置されたコネクタ26に機械的に接続可能な相手電気コネクタ27を有する通信システム25を示す。
【0220】
コネクタ26は、例えば、デバイス筐体28に接続することができる。相手コネクタ27は、例えば、単一の電線30を有する電気ケーブル29が通じるケーブルコネクタとすることができる。コネクタ26及び相手コネクタ27は、接続状態でインターロックするためのロック手段を有することができる。図14は、一例として、互いに対する相手の回転を可能にするコネクタ26及び相手コネクタ27からなるインターロックプラグイン接続を示す。このように、ケーブル29又はケーブル29の電線30とデバイス筐体28内の導電体32との間で電気信号を送信するために、回転方向から独立した非接触又は無線プラグイン接続を有利に設けることができる。コネクタ26及び相手コネクタ27は、好ましくは、完全に非接触、すなわち、電気的及び機械的に非接触であるように設計することができる。
【0221】
しかしながら、実質的に、例えば、エネルギー技術又は車両技術における用途等、任意のさらなる用途が考えられる。
【0222】
さらなる通信システム25は、図15において、互いに対して回転するように配置された通信相手の送信における本発明の特定の利点をもう一度説明するために、一例として、簡略化された図で示されている。図15では、アンテナ配置1が互いに同軸に配置されているが、回転中心の周りに回転して配置されており、それでも、有利な信号送信を、提案されたアンテナ配置1によって行うことができる。アンテナ配置1の互いに対する傾き、そして、各回転中心の偏心オフセットも補うことができる。
【0223】
図16は、本発明によるアンテナ配置1の有利な透過特性及び分離特性を示すために、本発明による通信システム25のシミュレーション結果を示す。図1ならびに図7及び図8に示されるアンテナ配置1は、10GHzの送信帯域及び12ミリメートルの2つのトランシーバ配置17又はアンテナ配置1の間の距離を有するようにシミュレーションされている。2つの曲線アレイの個々の曲線は、2つの通信相手の互いに対する異なる配向/回転角度を有するシミュレーション結果を表す。一方で、同じトランシーバの送信機と受信機との間の高い分離特性が認識可能であり(提案された周波数帯域>50dB内の分離、曲線y1の下側アレイを参照)、他方で、互いに対する2つの通信相手のアラインメント又は配向からの送信特性の高い独立性が明らかである(曲線y2の上側アレイを参照)。
【0224】
既に述べたように、作動中に互いに対して移動可能であるアセンブリにおける提案されたアンテナ配置1の使用は、同様に、近距離にわたって、高いデータレートを有する、高い電磁適合性を有する無線信号送信を可能にするために、非常に有利であり得る。図17は、例証のためのアクチュエータデバイス33を示す。2つの別個の多軸産業用ロボット34からなる産業用ロボットシステムが例として示されているが、これは一例に過ぎない。アクチュエータデバイス33は、第1のアクチュエータ素子35、第2のアクチュエータ素子36、及び通信システム25を有し、2つのアクチュエータ素子35、36間のワイヤレス信号送信を可能にするために、第1のトランシーバ配置17は、第1のアクチュエータ素子35に配置することができ、第2のトランシーバ配置17は、第2のアクチュエータ素子36に配置することができる。図17に示される例示的な実施形態において、アクチュエータ素子35、36は、いずれの場合にも産業用ロボット34のエンドエフェクタであるが、実質的には、一般的なアクチュエータデバイス33の任意の可動又は不可動素子とすることができる。両方のアクチュエータ素子35、36は、例えば、工業用ロボット34の個々の軸に沿った信号送信を可能にするために、例えば、無線で、かつ摺動接点等を使用せずに、関節接合を架橋するために、例えば、同じ装置、すなわち、同じ工業用ロボット34の一部であってもよい。
【0225】
既に上述したように、電磁波の反射は、通信相手間の信号送信中に発生する可能性があり、これは、望ましくないマルチパス伝搬をもたらす可能性がある。特に、例えば、図14図15、及び図17に示される例示的な実施形態のように、通信相手が互いに近接して対向して配置される場合、アンテナ2、3、4、及び5が接続されるプリント回路基板8上で反射が生じ得る。図18の点線矢印によって示されるように、視線方向要素を介する送信と同様に、信号はまた、通信相手間で前後に反射され得、従って、1つ以上の反射要素を介して送信され得、それは、最終的に、所望の視線方向要素と不要な反射要素との間の干渉をもたらし得る。このマルチパス伝搬を可能な限り最小限に抑えるために、デジタル信号処理等の複雑な信号処理要素を使用することなく、図18~20及び以下の説明に基づいて、アンテナ配置のための有利な減衰配置37が提案される(特に、ただし、排他的ではないが、上記のアンテナ配置1について)。
【0226】
図18は、第1及び第2のトランシーバ配置17からなる通信システム25を示す。トランシーバ配置17の各々は、各アンテナ配置1が配置されるプリント回路基板8を有する。例示的な実施形態において、アンテナ配置1のアンテナ2、3、4、5が一緒に配置されるアクセス開口部39を有する吸収体シートである第1の減衰ユニット38を有する減衰配置37が、アンテナ配置1の周りに配置される。アクセス開口39の中心軸Mは、アンテナ配置1の主放射方向又はアンテナメインローブ40に沿って延在し(図20参照)、さらに、アンテナ2、3、4、5の共通の中心点又は回点中心Zを通って延在する。
【0227】
第1の減衰ユニット38のアクセス開口部39の横方向延在部は、送信される電磁波の2,0自由空間波長未満であり、アクセス開口部39は、できる限り狭いが、アンテナ2、3、4、5のアンテナメインローブ40が上面視で覆われないようにすることができる。アクセス開口部39は、図18図20の例示的な実施形態に例として示されるように、実質的に任意の幾何学的形状、例えば、円形(好ましい)又は正方形を有することができる。
【0228】
マルチパス伝搬は、有利には、提案された減衰配置37によって排除され得るか、又は少なくとも大幅に低減され得る。図18の点線によって示される反射は、もう起こり得ないか、又は実質的に縮小された形態でのみ起こり得る。
【0229】
減衰配置37は、さらなる最適化のためにさらなる減衰ユニットで拡張することができる。この原理を、図19及び図20を参照して説明する。例えば、減衰配置37は、アンテナ配置1が配置されるアクセス開口部39をここでも有する第2の減衰ユニット41を有することができる。第1の減衰ユニット38及び第2の減衰ユニット41は、同心円状に配置され、好ましくは(必ずしも必要ではないが)、互いに幾何学的に及び/又は各材料組成の点で異なる。第2の減衰ユニット41は、例えば、好ましくは、損失ベースの吸収体を有し、第1の減衰ユニット38は、好ましくは、共振ベースの吸収体を有する。適切な材料組成は、上記に記載されている。
【0230】
特に、第1の減衰ユニット38は、図示のように、第2の減衰ユニット41のアクセス開口部39の内側に配置するようにすることができる。外側又は第2の減衰ユニット41は、好ましくは、内側又は第1の減衰ユニット38よりも厚く又は高く形成することができる。結果として、送信アンテナ群及び受信アンテナ群のアンテナメインローブ40は、上面図において、アンテナメインローブ40が減衰ユニット38、41のうちの1つと交差することなく、主放射方向に膨らむのに十分な空間を与えることができる。
【0231】
図20は、通信システム25のトランシーバ配置17が送信損失を最小限に抑えるためにどのように整列され得るかを、ごく一般的に説明するために、ここで参照される。第1の通信相手の送信アンテナ2、3及び第2の通信相手の受信アンテナ4、5(及びその逆)のアンテナメインローブ40は、好ましくは、減衰配置の中心軸Mに沿って、又は両方の通信相手のアンテナ配置1の各共通の中心点又は回転中心Zが共通の回転軸又は中心軸を通るように、互いに整列される。パッチアンテナのアンテナメインローブ40は、例えば、パッチアンテナから垂直に離れる方向を向いており、一方、アンテナゲイン最小値は、逆方向に、すなわち、プリント回路基板8内に存在する。従って、図示のように、パッチアンテナが互いに向かい合うように、2つの通信相手のプリント回路基板8を互いに平行に、又は少なくとも実質的に平行に整列させることが有利である。図20に示される例示的な実施形態のトランシーバ配置17は、例えば、互いに対して回転運動を行うことができる作動デバイス33の各アクチュエータ素子35、36に配置することができる。
【0232】
一定幅(例えば、仰角約-20°~+20°)を有するアンテナメインローブ40内では、平行並進オフセットが可能であり得る(上記では通信相手の「軸方向オフセット」、すなわち、アンテナ配置1の中心点Zを通って延在する通信相手の各中心軸間のオフセットと呼ばれる)。通信相手は、互いに直角に、又は互いに離れるように移動することもできる(上記を「並進オフセット」と呼ぶ)。通信相手の傾斜も可能である(上記を「半径方向オフセット」と呼ぶ)。
【0233】
しかしながら、特に、プリント回路基板8に対して直立している仮想軸の周りの互いに対する通信相手の完全な回転(「回転オフセット」)を可能にすることができる(図20では、中心軸M)。これは、例えば、ロボット関節又はアクチュエータ素子35、36が360°回転することが意図され、データがロボット関節の一方の側から他方の側に、非接触、すなわち摩耗のない方法で送信されることが意図される場合、ロボット工学において利用することができる。回転を可能にするために、第1の通信相手の送信アンテナ2、3及び第2の通信相手の受信アンテナ4、5は、好ましくは、円偏波及び共偏波である。しかしながら、回転を可能にするために、送信アンテナ2、3のみ、又は受信アンテナ4、5のみのいずれかが円偏波され、一方、各他のアンテナは直線偏波されるだけであることも考えられる(偏波損失を受け入れつつ)。
【0234】
図20を参照して記載した例示的な実施形態において、第2の減衰ユニット41を選択肢として考えるものとする。
【0235】
第1及び第2のトランシーバ配置17間の距離は、第1のトランシーバ配置17のアンテナ配置1と、中心軸Mに並列な第2のトランシーバ配置17との間の最短距離として定義することができる。第1及び第2のトランシーバ配置17間の距離は、例えば、第1のトランシーバ配置17のアンテナ配置1の共通の中心点Z(図20の左側)と第2のトランシーバ配置17のアンテナ配置1の共通の中心点Z(図20の右側)との間の距離に基づいて定義することができる。
【0236】
図20に示される通信システム25は、非接触データプラグ又は電気コネクタとすることができ、第1及び第2のトランシーバ配置17の間の距離は10cm未満、又は5cm未満である。この非接触コネクタは、データ送信のために、50GHzを超える、例えば、約60GHzのキャリア周波数を使用することができ、これは、小型アンテナ寸法をもたらすことができ、従って、非接触コネクタの良好な一体性を容易に得ることができる。50GHzを超えるキャリア周波数は、高いデータレートをさらに可能にすることができる。非接触コネクタは、帯域内全二重通信を使用することができ、従って、同じトランシーバ配置内で互いに十分に分離された送信アンテナ2、3及び受信アンテナ4、5による高いデータレートも可能にする。トランシーバ配置17の送信ユニット19は、任意で、信号送信のためのキャリア周波数を生成するためのフリーホイーリング電圧制御発振器を有することができる。追加的に又は代替的に、トランシーバ配置17の受信ユニット20は、インコヒーレント復調を実行するように設計することができる。受信ユニット20は、この目的のために包絡線検出器を有することができる。非接触コネクタの電力消費は、フリーホイーリング、電圧制御発振器、及び/又はエンベロープ検出器のために低減することができ、これにより、コネクタの、例えば、工業システムへの組み込みを簡単にすることができる。低減された電力消費はまた、非接触コネクタの熱放散の必要性を実質的に軽減し、このようにしてヒートシンクの必要性を排除することができる。さらなる又は代替的な省電力のために、本明細書に記載される非接触コネクタは、デジタル信号処理、特に、デジタルチャネル推定、デジタル信号プリエンファシス、又はデジタル信号イコライゼーションを任意で省くことができる。良好な無線チャネル特性は、減衰配置37により確立することができ、例えば、信号送信は、主として、第1と第2のトランシーバ配置17との間の視線方向要素を介してのみ行われ、マルチパス要素は、実質的に減衰される。これにより、上述したデジタル信号処理の必要性を排除することができ、省電力化及び放熱の簡略化を図ることができる。第1及び第2のトランシーバ配置17のDC電力消費は、例えば、いずれの場合にも200mW未満とすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20