(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】油劣化判定システム、油劣化判定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/03 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01N33/03
(21)【出願番号】P 2024048396
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324006809
【氏名又は名称】株式会社アドテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆彦
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/113755(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/200103(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/163435(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/059742(WO,A1)
【文献】特開2020-038207(JP,A)
【文献】特開2017-049030(JP,A)
【文献】特開2006-226735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/03
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得する情報取得部と、
揚げ物調理器の油槽内の前記食用油と前記油槽の周囲を含む食用油画像を取得する画像取得部と、
前記揚げ物調理に関する情報と、前記食用油の劣化度と前記食用油の色調に関する相関関係と、前記食用油画像とに基づいて前記食用油の劣化度を判定する判定部と、
前記油槽内で未使用状態で貯留されている前記食用油の食用油初期画像を記憶する初期画像記憶部と、
前記食用油初期画像を記憶する前に、前記食用油初期画像の撮影時における撮影環境が所定の範囲内であるか否かを判定する事前判定部と、
を備
え、
前記揚げ物調理に関する情報は、前記食用油の種類に関する情報、前記揚げ物調理器の種類に関する情報、揚げ物の種類に関する情報、調理温度、前記油槽の容量および前記揚げ物調理器の設置場所のうちの少なくとも一つを含み、
前記事前判定部は、前記食用油の前記食用油初期画像の撮影時の照度と、前記食用油画像との撮影時の照度とを比較し、撮影時の照度が前記所定の範囲内から外れているか否かを判定する、
油劣化判定システム。
【請求項2】
前記食用油画像、前記食用油の画像の撮影日時、前記食用油の劣化度、前記食用油の状態に関する情報、前記食用油の交換に関する情報、および前記油槽への足し油に関する情報のうちから少なくとも二つ以上の情報を関連付けて記憶する管理情報記憶部を備える、
請求項
1に記載の油劣化判定システム。
【請求項3】
前記食用油の表面温度の情報を含む前記食用油画像を生成する撮像部と、
前記食用油画像から前記食用油の表面温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記食用油の状態に関する情報には、前記温度取得部が取得した前記食用油の表面温度の情報が含まれている、
請求項
2に記載の油劣化判定システム。
【請求項4】
前記管理情報記憶部は、複数の所定期間のうちから選択された一の所定期間内において、一つの前記揚げ物調理器で使用された前記食用油の合計使用量を記憶する、
請求項
2に記載の油劣化判定システム。
【請求項5】
前記事前判定部は、前記食用油の前記食用油初期画像の撮影環境と、前記食用油画像との撮影環境を比較し、撮影環境が前記所定の範囲内から外れているか否かを判定する、
請求項
1に記載の油劣化判定システム。
【請求項6】
前記食用油の表面温度の情報を含む前記食用油画像と、前記食用油の表面温度の情報を含む前記食用油初期画像とを生成する撮像部と、
前記食用油画像と前記食用油初期画像から前記食用油の表面温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記事前判定部は、前記温度取得部が前記食用油初期画像から取得した前記食用油の表面温度と、前記温度取得部が前記食用油画像から取得した前記食用油の表面温度とが所定の温度範囲内から外れているか否かを判定する、
請求項
1に記載の油劣化判定システム。
【請求項7】
前記食用油の劣化度は、前記食用油に含まれる極性化合物の含有量(%)、前記食用油のAV値、前記食用油のカルボニル価、または前記食用油の過酸化物価で示される劣化指標のことである、
請求項1
から6のいずれか一項に記載の油劣化判定システム。
【請求項8】
食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得することと、
揚げ物調理器の油槽内の前記食用油と前記油槽の周囲を含む食用油画像を取得することと、
前記揚げ物調理に関する情報と、前記食用油の劣化度と前記食用油の色調に関する相関関係と、前記食用油の画像とに基づいて前記食用油の劣化度を判定することと、
前記油槽内で未使用状態で貯留されている前記食用油の食用油初期画像を記憶することと、
前記食用油初期画像を記憶する前に、前記食用油初期画像の撮影時における撮影環境が所定の範囲内であるか否かを事前判定することと、
を含み、
前記揚げ物調理に関する情報は、前記食用油の種類に関する情報、前記揚げ物調理器の種類に関する情報、揚げ物の種類に関する情報、調理温度、前記油槽の容量および前記揚げ物調理器の設置場所のうちの少なくとも一つを含み、
前記事前判定では、前記食用油の前記食用油初期画像の撮影時の照度と、前記食用油画像との撮影時の照度とを比較し、撮影時の照度が前記所定の範囲内から外れているか否かを判定する、
油劣化判定方法。
【請求項9】
コンピュータに、
食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得させる処理と、
揚げ物調理器の油槽内の前記食用油と前記油槽の周囲を含む食用油画像を取得させる処理と、
前記揚げ物調理に関する情報と、前記食用油の劣化度と前記食用油の色調に関する相関関係と、前記食用油の画像とに基づいて前記食用油の劣化度を判定させる処理と、
前記油槽内で未使用状態で貯留されている前記食用油の食用油初期画像を記憶させる処理と、
前記食用油初期画像を記憶する前に、前記食用油初期画像の撮影時における撮影環境が
所定の範囲内であるか否かを事前判定する処理と、
を実行さ
せ、
前記揚げ物調理に関する情報は、前記食用油の種類に関する情報、前記揚げ物調理器の種類に関する情報、揚げ物の種類に関する情報、調理温度、前記油槽の容量および前記揚げ物調理器の設置場所のうちの少なくとも一つを含み、
前記事前判定する処理では、前記食用油の前記食用油初期画像の撮影時の照度と、前記食用油画像との撮影時の照度とを比較し、撮影時の照度が前記所定の範囲内から外れているか否かを判定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油劣化判定システム、油劣化判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやフライドポテトなどの揚げ物は、世間一般に広く浸透している。揚げ物に使用される食用油は、加熱されることで劣化する。例えば、特許文献1には、食用油の劣化によって生じる極性化合物(TPM:Total Polar Material)の割合(%)を計測するフライ油計測器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食用油中の極性化合物の計測結果は、計測時の食用油の温度に左右される。例えば、適切な計測温度として40℃~200℃が推奨されており、この温度範囲内から外れた状態で極性化合物を計測すると、正確な計測結果が得られない。極性化合物の割合を正確に測定できない場合には食用油の劣化度を判定することが困難である。
【0005】
本開示は、食用油の劣化度を容易に判定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の油劣化判定システムは、
食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得する情報取得部と、
揚げ物調理器の油槽内の前記食用油と前記油槽の周囲を含む食用油画像を取得する画像取得部と、
前記揚げ物調理に関する情報と、前記食用油の劣化度と前記食用油の色調に関する相関関係と、前記食用油画像とに基づいて前記食用油の劣化度を判定する判定部と、
を備えていてもよい。
【0007】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記揚げ物調理に関する情報は、前記食用油の種類に関する情報、前記揚げ物調理器の種類に関する情報、揚げ物の種類に関する情報、調理温度、前記油槽の容量および前記揚げ物調理器の設置場所のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0008】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記食用油画像、前記食用油の画像の撮影日時、前記食用油の劣化度、前記食用油の状態に関する情報、前記食用油の交換に関する情報、および前記油槽への足し油に関する情報のうちから少なくとも二つ以上の情報を関連付けて記憶する管理情報記憶部を備えていてもよい。
【0009】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記食用油の表面温度の情報を含む前記食用油画像を生成する撮像部と、
前記食用油画像から前記食用油の表面温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記食用油の状態に関する情報には、前記温度取得部が取得した前記食用油の表面温度
の情報が含まれていてもよい。
【0010】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記管理情報記憶部は、複数の所定期間のうちから選択された一の所定期間内において、一つの前記揚げ物調理器で使用された前記食用油の合計使用量を記憶してもよい。
【0011】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記油槽内で未使用状態で貯留されている前記食用油と前記油槽の周囲を含む食用油初期画像を記憶する初期画像記憶部と、
前記食用油初期画像を記憶する前に、前記食用油初期画像の撮影時における撮影環境が所定の範囲内であるか否かを判定する事前判定部を備えていてもよい。
【0012】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記事前判定部は、前記食用油の前記食用油初期画像の撮影環境と、前記食用油画像との撮影環境を比較し、撮影環境が前記所定の範囲内から外れているか否かを判定してもよい。
【0013】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記食用油の表面温度の情報を含む前記食用油画像と、前記食用油の表面温度の情報を含む前記食用油初期画像とを生成する撮像部と、
前記食用油画像と前記食用油初期画像から前記食用油の表面温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記事前判定部は、前記温度取得部が前記食用油初期画像から取得した前記食用油の表面温度と、前記温度取得部が前記食用油画像から取得した前記食用油の表面温度とが所定の温度範囲内から外れているか否かを判定してもよい。
【0014】
上記の油劣化判定システムにおいて、
前記食用油の劣化度は、前記食用油に含まれる極性化合物の含有量(%)、前記食用油のAV値、前記食用油のカルボニル価、または前記食用油の過酸化物価で示される劣化指標のことであってもよい。
【0015】
また、本開示は油劣化判定方法またはプログラムの側面からも捉えることができる。
例えば、本開示の油劣化判定方法は、
食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得することと、
揚げ物調理器の油槽内の前記食用油と前記油槽の周囲を含む食用油画像を取得することと、
前記揚げ物調理に関する情報と、前記食用油の劣化度と前記食用油の色調に関する相関関係と、前記食用油の画像とに基づいて前記食用油の劣化度を判定することと、
を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、食用油の劣化度を容易に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、揚げ物の調理に使用される揚げ物調理器の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る油劣化判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る油劣化判定システムのサーバコンピュータの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る油劣化判定システムの端末の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る油劣化判定システムによる処理フローに関する図である。
【
図6】
図6は、実施形態の油劣化判定システムの端末で食用油を撮影する時の表示部を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る油劣化判定システムが生成する管理テーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る油劣化判定システムによる処理フローに関する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る油劣化判定システムが生成する管理テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る油劣化判定システムについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本開示において、数値範囲を表す「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0019】
<実施形態>
図1は、揚げ物の調理に使用される揚げ物調理器100の外観斜視図である。揚げ物調理器100は、ステンレスなどの金属で形成された直方体状の筐体101と、筐体101内に形成された所定容量の油槽102を備えている。揚げ物調理器100は、油槽102内に食用油を貯留させ、130℃~180℃程度に加熱した食用油で揚げ物を調理する。揚げ物調理器100には、電力供給によって食用油を加熱する電気式や、ガスを燃料とする火力で食用油を加熱するガス式などが知られている。揚げ物調理器100で使用される食用油は、例えば、サラダ油、菜種油、キャノーラ油、ラードなどである。揚げ物は、例えば、天ぷら、フライドポテト、とんかつなどである。
【0020】
本実施形態に係る油劣化判定システムは、揚げ物を揚げる際に用いられる食用油の劣化度を判定するシステムである。油劣化判定システムは、油槽102内に貯留されている食用油の画像を解析することによって、食用油の劣化度を判定する。
【0021】
また、本実施形態では、油劣化判定システムを複数の飲食店を運営する飲食チェーン店に導入した場合を例示して説明する。油劣化判定システムは、各店舗に設置された揚げ物調理器100の油槽102内に貯留された食用油の劣化度を判定する。さらに、油劣化判定システムは、飲食チェーン店の本部勤務の管理者にとって有用な各店舗での食用油の管理情報を提供することができる。以下、本実施形態に係る油劣化判定システムについて詳細に説明する。
【0022】
図2は、本実施形態に係る油劣化判定システムの構成を示すブロック図である。油劣化判定システムは、サーバコンピュータ1と、各店舗に設置された揚げ物調理器100の使用者(例えば、店長)が有する端末2とを備える。サーバコンピュータ1と端末2とは通信ネットワーク3を介して接続されている。本実施形態では、端末2は、例えば、カメラ付きのスマートフォンやタブレット端末などである。油劣化判定システムは、サーバコンピュータ1と端末2が協働することによって、食用油の劣化度を判定する。
【0023】
なお、
図2では、端末2を一つのみ例示しているが、油劣化判定システムは、複数の端末2を含んで構成されていてもよい。例えば、本実施形態に係る油劣化判定システムによって、複数店舗に設置された揚げ物調理器100で使用される食用油を飲食チェーン本部
が管理することが想定される。この場合には、油劣化判定システムは、各飲食チェーン店用の端末2を含んで構成される。
【0024】
通信ネットワーク3は、例えば、インターネット回線である。なお、通信ネットワーク3は、専用回線であってもよい。
【0025】
図3は、本実施形態に係る油劣化判定システムのサーバコンピュータ1の構成を示すブロック図である。サーバコンピュータ1は、制御部10、記憶部11(記録媒体の一例)、表示部12、通信部13、および操作部14を備える。制御部10は、Central
Processing Unit(CPU)を含み、サーバコンピュータ1内の各部を制御する。記憶部11は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)やElectrically Erasable Programmable Read-Only Memory(EEPROM)などの不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリを含む。記憶部11は、サーバコンピュータ1における制御プログラムやその他のプログラム(アプリケーションソフトウェアを含む)、揚げ物調理に関する情報、および種々の処理を実行した際に得られるデータを記憶する。制御部10では、記憶部11に記憶されているプログラム(例えば、アプリケーションソフトウェア)をCPUが実行することにより、情報取得部10A、画像取得部10B、判定部10Cの各機能部が実現される。情報取得部10Aは、食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得する。画像取得部10Bは、揚げ物調理器100の油槽102内に貯留された食用油画像を取得する。この画像は、端末2で油槽102を撮影することによって得られる。なお、画像取得部10Bは、後述する食用油初期画像を取得してもよい。判定部10Cは、食用油の画像等に基づいて食用油の劣化度を判定する。これらの機能部の詳細については後述する。
【0026】
また、記憶部11には、管理情報記憶部11Aが含まれる。管理情報記憶部11Aは、不揮発性メモリ内に設けられており、飲食チェーン本部の管理者が各店舗での食用油の管理に有用な複数の情報を関連付けて記憶する。管理情報記憶部11Aの詳細については後述する。
【0027】
表示部12は、液晶表示装置や有機EL表示装置などで構成されている。サーバコンピュータ1は、表示部12に食用油の劣化度の判定結果や管理情報記憶部11Aが記憶している食用油の管理に有用な複数の情報を表示する。
【0028】
通信部13は、通信ネットワーク3を介して端末2や他のコンピュータとデータ通信を行う。操作部14は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成される。使用者が、操作部14を操作することによって、食用油の劣化度の判定結果などの種々の情報を閲覧することができる。
【0029】
図4は、本実施形態に係る油劣化判定システムの端末2の構成を示すブロック図である。端末2は、制御部20、記憶部21(記録媒体の一例)、カメラ部22(撮像部の一例)、表示部23、通信部24、および操作部25を備える。制御部20は、CPUを含み、端末2内の各部を制御する。記憶部21は、HDDやSSDやEEPROMなどの不揮発性メモリとRAMなどの揮発性メモリを含む。記憶部21は、端末2における制御プログラムやその他のプログラム(アプリケーションソフトウェアを含む)、食用油の画像データなどを記憶する。制御部20では、記憶部21に記憶されているプログラム(例えば、アプリケーションソフトウェア)をCPUが実行することにより、事前判定部20A、再取得通知部20B、および温度取得部20Cの各機能部が実現される。事前判定部20Aは、食用油の初期画像の撮影環境と、食用油の画像との撮影環境を比較し、撮影環境が所定の範囲内から外れているか否かを判定する。また、事前判定部20Aは、食用油画像
や食用油初期画像の撮影時の食用油の表面温度が適切であるか否かを判定する。再取得通知部20Bは、食用油初期画像や食用油画像の再取得を通知する。温度取得部20Cは、サーモグラフィー機能を備えるカメラ部22によって撮影することにより生成した食用油画像および食用油初期画像から食用油の表面温度を取得する。これらの機能部の詳細については後述する。
【0030】
また、記憶部21には、初期画像記憶部21Aが含まれる。初期画像記憶部21Aは、不揮発性メモリ内に設けられており、油槽102内で未使用状態で貯留されている食用油の初期画像(以下、「食用油初期画像」と称する)を記憶する。食用油初期画像の詳細については後述する。なお、初期画像記憶部21Aは、サーバコンピュータ1の記憶部11内に設けられていてもよい。
【0031】
カメラ部22は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を含んで構成されている、端末2の使用者が油槽102内の食用油を撮影することで、端末2は食用油の画像を取得する。また、カメラ部22は、サーモグラフィー機能を備えるカメラである。端末2は、サーモグラフィー機能を備えるカメラ部22で撮影することによって食用油の表面温度の情報を含む食用油画像と食用油初期画像を取得することができる。
【0032】
表示部23は、液晶表示装置や有機EL表示装置などで構成されている。端末2は、カメラ部22による撮影画像や、保存した画像などを表示部23に表示することができる。通信部24は、通信ネットワーク3を介して端末2や他のコンピュータとデータ通信を行う。操作部25は、例えば、タッチパネルで構成されている。
【0033】
図5は、本実施形態に係る油劣化判定システムによる処理フローの一例を示している。
図5では、油劣化判定に必要な初期情報を設定する処理フローについて説明する。端末2においては、まず、油劣化判定に使用する専用のアプリケーション(以下、単に「アプリ」と称する)を起動する(ステップS101)。ステップS101の次のステップS102では、アプリによってカメラ部22が起動され、端末2によって油槽102内に貯留されている未使用状態の食用油が撮影される。未使用状態の食用油の画像を食用油初期画像とする。食用油初期画像は、記憶部21の初期画像記憶部21Aに記憶される。
【0034】
図6は、端末2で揚げ物調理器100の油槽102に貯留されている食用油と油槽102の周囲を含む画像(本開示の「食用油画像」または「食用油初期画像」の一例)を撮影する時の端末2の表示部23を示す図である。油槽102には食用油103が貯留されており、端末2は画像解析を行うことで油槽102の枠を認識し、表示部23に当該枠に合った撮影ガイド線23Aを表示する。撮影者は、撮影ガイド線23A内に油槽102が収まるように調整し食用油103を撮影する。これによって、油劣化判定システムは、適切な食用油画像と食用油初期画像を取得することができる。なお、食用油画像および食用油初期画像は、油槽102の周囲を含むことで、後述するステップS303での判定を行うことができる。
【0035】
図5に戻り、ステップS102の次のステップS103では、事前判定部20Aが食用油初期画像からの撮影時における撮影環境が所定の範囲内であるか否かを判定する。例えば、撮影環境には、画像撮影時の照度が含まれる。照度が不適切であると、後述するステップS403での劣化度の判定を正確に行うことができなくなる。例えば、照度の範囲は、事務作業で推奨されている150lx以上に設定されていてもよい。照度は、画像解析によって取得される。なお、撮影環境の所定の範囲内には、食用油の状態が含まれていてもよい。例えば、撮影環境の所定の範囲内には食用油からの泡立ちの無いことや、食用油
から白煙発生はないことが含まれていてもよい。
【0036】
また、撮影環境の所定の範囲内には、食用油の表面温度が含まれていてもよい。事前判定部20Aは、温度取得部20Cが取得した食用油の表面温度が所定の範囲内であるか否かを判定する。食用油初期画像に含まれる食用油の表面温度の情報は、サーモグラフィー機能を備えるカメラ部22によって測定される。ここで、食用油初期画像に所定の範囲内は、食用油が調理時の温度範囲(本例では、160℃~180℃)程度の範囲である。事前判定部20A部は、食用油初期画像の撮影時における撮影環境が所定の範囲内であると判定した場合には(ステップS103のNO)、再取得通知部20Bが食用油初期画像の再撮影を通知する(ステップS104)。ステップS104では、再取得通知部20Bは、表示部23に「再撮影してください」などの文字列画像を表示することで、再撮影を通知する。
【0037】
ここで、食用油初期画像での食用油の表面温度は、後述するステップS303で撮影する食用油画像と同程度の温度の範囲(所定の温度範囲)であることが好ましい。例えば、食用油が、ショートニングやラードである場合に食用油の温度がその食用油での調理温度よりも低い温度(例えば、室温程度)であると、食用油内に油の固形成分が浮遊してしまい、食用油の劣化度を適切の判定することができなくなる。そこで、本実施形態に係る油劣化判定システムは、食用油初期画像を取得する時の食用油の表面温度が所定の温度範囲内であるか否かを判定し、不適切な初期画像を取得することを防止している。なお、所定の温度範囲内は、食用油の固形成分が浮遊することのない温度範囲(例えば、食用油の融点以上)に設定されていてもよい。
【0038】
ステップS102で撮影された食用油初期画像の撮影時における撮影環境が所定の範囲内であると判定した場合には(ステップS103のYES)、ステップS105の処理に進む。ステップS105では、アプリ内の初期設定画面に揚げ物調理に関する情報を入力する。揚げ物調理に関する情報には、揚げ物調理器100を設置した店舗の業態および店舗名(揚げ物調理器の設置場所)、使用する食用油の種類、揚げ物調理器100の種類、調理される揚げ物の種類、揚げ物調理器100の油槽102の容量、未使用状態での食用油の油量、揚げ物調理器100の加熱時の設定温度(調理温度)などが含まれる。なお、店舗の業態とは、例えば、すし屋、とんかつ屋、唐揚げ屋、天ぷら屋などの和食、洋食屋、居酒屋、ファストフード店などの業務形態のことである。店舗の業態の情報は、飲食チェーン店の本部の管理者にとって食用油の管理に必要な情報である。
【0039】
なお、本実施形態では、撮影のステップS102の後に入力のステップS105を実行しているが、入力のステップS105を先に実行し、次いで、撮影のステップS102を実行してもよい。
【0040】
ステップS105の次のステップS106では、端末2はステップS105で入力された揚げ物調理に関する情報をサーバコンピュータ1に送信する。サーバコンピュータ1では、予めアプリが起動されており(ステップS201)、ステップS201の次のステップS202では、サーバコンピュータ1の情報取得部10Aは、端末2から送信された揚げ物調理に関する情報を取得する。なお、揚げ物調理に関する情報には食用油初期画像が含まれていてもよく、端末2はステップS104でサーバコンピュータ1に食用油初期画像を送信し、サーバコンピュータ1はステップS202で食用油の初期画像を取得してもよい。揚げ物調理に関する情報は、記憶部11の管理情報記憶部11Aに記憶される。
【0041】
ステップS202の次のステップS203では、サーバコンピュータ1は、各種情報に基づいて当該店舗用の管理テーブルを生成する。
図7は、管理テーブルの一例を示す図である。
図7に示すように、管理テーブルは、「日付」、「曜日」の欄を有している。本例
では、5月1日(月曜日)~5月8日(月曜日)までの食用油の管理情報を例に挙げて説明する。管理テーブルは、5月1日~5月8日までの各行に各欄に示す種々の情報が入力される。
【0042】
管理テーブルは、更に、「時刻」、「油温度(℃)」、「設定温度(℃)」の欄を有している。「時刻」の欄には、端末2で食用油を撮影した時刻が入力される。「油温度(℃)」の欄には、端末2で食用油を撮影した時の食用油の温度が入力される。この時点では、サーバコンピュータ1には、端末2から食用油の画像が送信されていないので、これらの欄は空欄である。「設定温度(℃)」の欄には、ステップS202で取得した揚げ物調理器100の加熱時の設定温度が入力されている。
【0043】
管理テーブルは、更に、「画像」、「TPM(%)」、「油の色」、「泡立ち」、「白煙」、「油交換・足し油」、「画像撮影者」、「備考欄」の欄を有する。「画像」の欄には、端末2で撮影した油槽102内での食用油の画像が入力される。「TPM(%)」の欄には、食用油の画像を画像解析することで測定される極性化合物の含有量(%)が入力される。画像解析の詳細については後述する。「油の色」、「泡立ち」、「白煙」、「油交換・足し油」の欄には、端末2による食用油の撮影者によって端末2から送信された情報が入力される。「油の色」の欄には、5段階で食用油の色が評価され、色が薄い順に1~5の数値が入力される。「泡立ち」の欄には、食用油表面での泡の有無が入力される。「白煙」の欄には、食用油からの白煙発生の有無が入力される。食用油の色、泡立ちの有無、および白煙発生の有無の情報は、撮影者の主観に基づく情報であり、これらの撮影者が入力した情報は食用油劣化度の判定の参考情報である。油劣化判定システムは、食用油画像を解析することで食用油の劣化度を判定する。また、油劣化判定システムは、食用油を用いた店舗の営業日数から油の劣化推移も推定することができ、営業日数から推測した食用油の劣化度と、食用油画像に基づいて判定した食用油の劣化度とを照らし合わせることで、食用油の劣化度を判定することもできる。「油交換・足し油」の欄には揚げ物調理器100の稼働開始前での食用油を交換の有無または足し油の有無と、油槽に注がれた食用油量(L)が入力される。「画像撮影者」の欄には、食用油の画像および各情報を入力した人物の氏名が入力される。「備考欄」には、当該人物や飲食チェーン店本部の管理者によってその他の必要な情報が入力される。
【0044】
また、管理テーブルの欄外に当該揚げ物調理器100で使用された食用油の一カ月での合計使用量が表示されている。一つの揚げ物調理器100で使用された食用油の一カ月での合計使用量は、飲食チェーン店の本部の管理者にとって有用な情報である。なお、管理テーブルの欄外に表示される食用油の使用量は、複数の所定期間(例えば、1週間、1カ月、半年、1年など)のうちから選択された一の所定期間内において、一つの揚げ物調理器100で使用された使用量であってもよい。本実施形態に係る油劣化判定システムのユーザである飲食チェーン店の本部の管理者や店長は、複数の所定期間のうちから一の所定期間を選択し、その所定期間内での食用油の使用量を管理することができる。なお、複数の所定期間の選択は、
図5に示すステップS105で端末2から選択されてもよいし、サーバコンピュータ1から選択されてもよい。
【0045】
管理テーブルは、
図3に示す管理情報記憶部11Aに記憶される。管理情報記憶部11Aは、食用油の画像、食用油の画像の撮影日時、食用油の劣化度を示すTPMの含有量、および食用油の状態に関する情報、食用油の交換に関する情報、油槽102への足し油に関する情報のうち二つ以上の情報を関連付けた管理テーブルで記憶する。本実施形態では、これらの情報の全てを関連付けた管理テーブル内で記憶している。なお、食用油の状態に関する情報には、食用油の温度が含まれる。食用油の温度は、撮影者が温度計を用いて測定してもよいし、端末2の温度取得部20Cが画像から取得した食用油の表面温度であってもよい。
【0046】
図8は、本実施形態に係る油劣化判定システムによる処理フローの一例を示している。
図8では、油劣化判定の処理フローについて説明する。端末2においては、まず、アプリを起動する(ステップS301)。ステップS301の次のステップS302では、アプリによってカメラ部22が起動され、端末2によって油槽102内の食用油が撮影される。この撮影時にも
図6に示す撮影ガイド線23Aが表示部23に表示される。
【0047】
ステップS301の次のステップS302では、ステップS301で撮影した食用油画像が適切であるか否かを判定する。端末2は、食用油初期画像を初期画像記憶部21Aに記憶している。事前判定部20Aは、食用油初期画像の撮影環境と、ステップS302で撮影された食用油の画像との撮影環境を比較し、撮影環境が所定の範囲内から外れていると判定した場合には(ステップS303のNO)、再取得通知部20Bが食用油の画像の再撮影を通知する(ステップS304)。ステップS304では、再取得通知部20Bは、表示部23に「再撮影してください」などの文字列画像を表示することで、再撮影を通知する。
【0048】
ここで、撮影環境が所定の範囲内から外れていると判定する場合には、両撮影時の照度が異なり食用油の色の変化を解析できない場合、ステップS302で撮影した時の食用油が泡立っている場合、揚げ物を揚げている状態、固形油が溶けておらず固形物が浮いている状態などが挙げられる。食用油初期画像および食用油画像は、油槽102の周囲の画像を含んでいるので、事前判定部20Aが、油槽102の周囲の画像から両撮影時の照度を比較することができる。本実施形態に係る油劣化判定システムは、未使用状態の食用油の初期画像と、取得した食用油の画像とを比較することで油の劣化度を判定するため、上記の所定の範囲内から外れている食用油の画像を取得した場合には、食用油の画像の再取得を通知する。この所定範囲は、食用油の劣化度を判定できる範囲を適宜設定可能である。
【0049】
また、事前判定部20Aは、温度取得部20Cが食用油画像から取得した食用油の表面温度が所定の範囲内から外れているか否かを判定する。ここで、所定の温度範囲は、その食用油での調理温度の範囲内であることが好ましい。本実施形態に係る油劣化判定システムは、食用油画像を取得する時の食用油の表面温度がその食用油での調理温度程度の範囲内であるか否かを判定し、不適切な画像を取得することを防止している。
【0050】
一方、事前判定部20Aが、食用油初期画像の撮影環境と、ステップS302で撮影された食用油の画像との撮影環境を比較し、撮影環境が所定の範囲内であると判定した場合には(ステップS303のYES)、ステップS305の処理に進む。ステップS305では、撮影時の食用油の管理情報が端末2に入力される。この管理情報は、
図7に示す管理テーブルに入力される油の色、泡立ち、白煙の有無、油交換または足し油の有無、画像撮影者の情報である。ステップS305の次のステップS306では、端末2はステップS302で撮影した食用油の画像と、ステップS305で入力された管理情報をサーバコンピュータ1に送信する。なお、
図7に示す管理テーブルの「油温度(℃)」の欄に入力される食用油の温度は、温度取得部20Cが食用油画像から取得した食用油の表面温度であってもよい。この場合には、端末2は、食用油画像から温度取得部20Cが取得した食用油の表面温度をステップS306でサーバコンピュータ1に送信してもよい。
【0051】
なお、食用油の温度と当該温度時における食用油の状態との関係する情報が油劣化判定システムに蓄積されていくと、撮影環境の所定の範囲を広げていってもよい。例えば、食用油の温度と固形成分有無の関係や、食用油の温度と食用油の色の関係、食用油の温度と食用油の泡立ちの有無などの情報が蓄積されることで、油劣化判定システムは、それの関係が蓄積された温度帯における食用油画像や食用油初期画像との比較を行うことで後述するステップS403での判定を行ったり、ステップS103やステップS303での画像
が適切であるか否かの判定を行ったりすることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、撮影のステップS302の後に入力のステップS305を実行しているが、入力のステップS305を先に実行し、次いで、撮影のステップS302を実行してもよい。
【0053】
サーバコンピュータ1では、予めアプリが起動されており(ステップS401)、ステップS401の次のステップS402では、サーバコンピュータ1の画像取得部10Bが食用油の画像を取得し、サーバコンピュータ1の情報取得部10Aが管理情報を取得する。
【0054】
ステップS402の次のステップS403では、判定部10Cは、食用油の画像解析を行うことによって油の劣化度を判定する。具体的には、判定部10Cは、揚げ物調理に関する情報と、食用油の劣化度と食用油の色調に関する相関関係と、ステップS302で撮影した食用油の画像とに基づいて食用油の劣化度を判定する。サーバコンピュータ1は、食用油の劣化度と食用油の色調に関する相関関係の情報を予め記憶部11に記憶している。ここで、本実施形態における食用油の劣化度は、食用油の極性化合物の含有量(%)で示される劣化指標であり、この含有率を画像解析による理論値で算出する。サーバコンピュータ1は、各種油における色調と極性化合物の含有量(%)との相関関係の情報を有しており、判定部10Cは、取得した食用油の画像と、予め記憶している食用油の画像とを比較する画像解析を行うことによって食用油の極性化合物の含有量を算出する。
【0055】
ステップS403の次のステップS404では、サーバコンピュータ1は
図7に示す管理テーブルを更新する。
図9は、更新された管理テーブルの一例を示す図である。
図9に示す例では、5月8日までの撮影情報、画像、管理情報が入力されている。なお、TPM(%)は、画像解析で推定された数値であるが、計測器で測定した場合のTPMの誤差が2%前後であることから、画像解析による算出でも2%の数値範囲で表示している。なお、食用油の管理テーブルは、端末2からも閲覧可能である。
【0056】
なお、本実施形態に係る油劣化判定システムは、食用油画像に基づいて判定した劣化度のデータが増えるほど、食用油の劣化度の精度を高めることができる。食用油の劣化度は、その食用油を用いた店舗の営業日数からも推定することができ、営業日数から推測した食用油の劣化度と、食用油画像に基づいて判定した食用油の劣化度とを照らし合わせることで、TPMの誤差を2%より小さくすることができる。食用油の劣化度は、1日の営業部での調理時間からどの程度のTPM含有量が増加するかのデータを過去の劣化度の記録などからサーバコンピュータ1に入力しておくことで、サーバコンピュータ1は、食用油を用いた店舗の営業日数から食用油の劣化度を推定することができる。
【0057】
一般的には、食用油の劣化度判定には、計測器を使用して極性化合物の含有量を計測する手法や、AV試験紙を使用して食用油のAV値(参加値)を計測する手法が挙げられる。極性化合物の含有量を計測する計測器は、高価であり、当該計測器を用いた計測では、40℃~200℃の計測温度での計測を求められる。例えば、飲食チェーン店の店舗のスタッフは、仕込みや調理等で多忙であり、適正な温度範囲での極性化合物の計測を毎営業日求めるのは困難である。また、AV試験紙の一枚の単価は安価であるが、AV試験紙を毎営業日に使用する場合には、一カ月での使用量を考慮するとランニングコストが高く、また、20℃~30℃や160℃~180℃等の範囲内での計測が求められる。
【0058】
これに対し、本実施形態に係る油劣化判定システムは、油槽102内の食用油の温度が適正な調理温度(本例では、160℃~180℃)になった時点で食用油を撮影し、その撮影画像に基づいて食用油の劣化度を判定することができる。このように、本実施形態に
係る油劣化判定システムは、食用油の劣化度を容易に判定できる。また、本実施形態に係る油劣化判定システムは、計測器やAV試験紙が不要であるので食用油の劣化度判定のコストを抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る油劣化判定システムは、
図9に示す食用油の管理テーブルを生成することができる。飲食チェーン店の本部の管理者や各店舗の店長は当該管理テーブルを閲覧することによって、食用油を交換した時期、足し油量と食用油の劣化度を関連付けて把握することができる。これにより、本実施形態に係る油劣化判定システムは、食用油の管理を容易に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態に係る油劣化判定システムでは、食用油の劣化度を食用油に含まれる極性化合物の含有量(%)で示される劣化指標で判定しているが、その他の劣化指標で食用油の劣化度を判定してもよい。例えば、食用油の劣化指標としては、食用油のAV(酸化)値、食用油のカルボニル価、または前記食用油の過酸化物価で示される劣化指標を用いてもよい。これらの劣化指標を用いる場合であっても、サーバコンピュータ1は、食用油の劣化度と食用油の色調に関する相関関係の情報を予め記憶部11に記憶しており、これらの劣化指標を画像解析による理論値で算出する。本実施形態に係る油劣化判定システムは、食用油の劣化度を容易に判定できる。
【0061】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態および変形例は可能な限り組み合わせることができる。例えば、上記実施形態では、飲食チェーン店で油劣化判定システムを導入した事例を例に挙げて説明したが、本実施形態に係る油劣化判定システムは、食用油を揚げ物調理に使用する食品製造工場等でも使用可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、油劣化判定システムを構成する装置としてサーバコンピュータ1と端末2を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、油槽102を撮影するネットワークカメラを店舗などに設置し、油劣化判定システムをサーバコンピュータ1とネットワークカメラとで構成してもよい。また、例えば営業開始時に食用油を撮影することで調理開始前且つ設定温度到達時点での食用油の画像を取得する。サーバコンピュータ1は、この食用油の画像に基づき、油の劣化度を判定することができる。また、例えば、ネットワークカメラはサーバコンピュータ1に常時動画像(映像)を送信し、サーバコンピュータ1は、1日で最初に食用油の表面温度が設定温度に到達した時点の食用油の画像を取得し、この食用油の画像に基づき、油の劣化度を判定してもよい。
【0063】
本発明に係る油劣化判定システムは、食用油を揚げ物調理に使用する営業形態の店舗や工場に広く適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1・・サーバコンピュータ
2・・端末
3・・通信ネットワーク
10・・制御部
10A・・情報取得部
10B・・画像取得部
10C・・判定部
11・・記憶部
11A・・管理情報記憶部
12・・表示部
13・・通信部
14・・操作部
20・・制御部
20A・・事前判定部
20B・・再取得通知部
20C・・温度取得部
21・・記憶部
21A・・初期画像記憶部
22・・カメラ部
23・・表示部
23A・・撮影ガイド線
24・・通信部
25・・操作部
100・・揚げ物調理器
101・・筐体
102・・油槽
103・・食用油
【要約】
【課題】本開示は、食用油の劣化度を容易に判定できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】油劣化判定システムは、食用油を用いた揚げ物調理に関する情報を取得する情報取得部と、揚げ物調理器の油槽内の食用油と油槽の周囲を含む食用油画像を取得する画像取得部と、揚げ物調理に関する情報と、食用油の劣化度と食用油の色調に関する相関関係と、食用油の画像とに基づいて食用油の劣化度を判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図2