(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】圧延機
(51)【国際特許分類】
B21B 31/18 20060101AFI20241106BHJP
B21B 13/14 20060101ALI20241106BHJP
B21B 29/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B21B31/18 A
B21B13/14 D
B21B13/14 F
B21B29/00 A
(21)【出願番号】P 2024105686
(22)【出願日】2024-06-28
【審査請求日】2024-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592042727
【氏名又は名称】日本センヂミア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】乗鞍 隆
(72)【発明者】
【氏名】高木 道正
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315084(JP,A)
【文献】国際公開第2012/8030(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/204070(WO,A1)
【文献】米国特許第4462236(US,A)
【文献】米国特許第4531394(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/221056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板を圧延する1対の作業ロールと、
前記作業ロールを支持する1対の中間ロール群と、
前記中間ロール群を支持する1対の補強ロールと、
前記中間ロール群をそれぞれ独立してロール軸方向にシフトさせるシフト装置と、
前記作業ロールの入側及び/又は出側にて前記作業ロールを支持する支持ロール群又は支持ベアリングと、を備え、
前記支持ロール群又は支持ベアリングは、アームにより保持されており、
前記アームは、前記中間ロール群の各々の中間ロールの操作側及び駆動側の中間ロール軸受に対して連結軸を介して搖動及び軸方向摺動可能に連結され、
前記アームのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロックにより調整支持され、
各々の前記中間ロールの前記ロール軸方向へのシフト時に、
前記中間ロールは、前記中間ロール軸受及び前記連結軸と共に前記ロール軸方向にシフトされ、
前記アームは、前記連結軸にて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まる
圧延機。
【請求項2】
請求項1に記載の圧延機において、
前記連結軸の前記ロール軸方向の長さが、前記アームの前記ロール軸方向の長さより前記中間ロールのシフト量だけ長い
圧延機。
【請求項3】
請求項1に記載の圧延機において、
前記アームと前記連結軸との間に配置された摺動ライナを更に備える
圧延機。
【請求項4】
請求項1に記載の圧延機において、
前記サイドブロックに設けられており、前記アームの前記中間ロールの軸方向への移動を防ぐストッパを更に備える
圧延機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯板を圧延する中間ロールシフト機能を装備した圧延機に係り、特に硬質材を高い生産性で、かつ高い製品品質で得るのに好適な圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1対のハウジングと、1対の小さな垂直方向にインライン状態になった自由に浮遊する作動ロールと、垂直方向にインライン状態になったチョックに取付けられたバックアップロールと、作動ロールおよびバックアップロールに対してインライン状態にこれらの作動ロールとバックアップロールとの間に配置されてチョックに取付けられた中間ロールと、各々の作動ロールの両側に取付けられた横方向支持ロール組立体と、各々の横方向支持ロール組立体を支持する支持アームとを有し、各支持アームは横方向支持ロール組立体が作動ロールに向かって横方向に運動できるようになっており、この横方向支持ロール組立体の横方向の位置を調節するためのスペーサと、スペーサおよび支持アームのための支持体を提供する側部支持ビームを有している型の6段圧延機にして、横方向支持アームは中間ロールのチョックにこれと一体に組み立てられており、横方向支持ロール組立体と支持アームとは中間ロールのチョックの幅の中に適合する寸法になっている、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、硬質材圧延用の小径作業ロールを用いた圧延機として、特許文献1の圧延機が考案された。この圧延機は、中間ロール駆動による駆動接線力が小径作業ロールに掛かるため、その小径作業ロールの撓み防止のために、小径作業ロールの入側及び出側に支持ロールが設けられている。この特許文献1の6段圧延機では、板形状制御のために中間ロールが軸方向にシフトできる構造となっている。
【0005】
特許文献1の6段圧延機では、中間ロールの軸方向シフト時、支持ロール群及びこれらが固定されているアームは、中間ロール軸受に対して支持軸を介して軸方向に固定されており、中間ロールのみが軸方向にシフトする構造となっている。
【0006】
この構造の場合、中間ロール軸受を内蔵したベアリングは、通常のインナーレース構造が適用できず、そのベアリングのコロと中間ロールネック軸部とで軸中心回転及び軸方向に摺動する必要がある。
【0007】
このため、中間ロールネック軸部表面は高い硬度が必要であり、その中間ロールネック軸部表面をそのまま熱処理で高い硬さを確保するか、もしくは表面が高硬度のインナーレースの焼き嵌めを実施することで対応してきた。
【0008】
しかしながら、最近の板幅増加(4フィートから5フィート)のニーズに伴い、中間ロールの全長も長くなってきた。このため、上述の特殊対応による中間ロールの製作上の困難さが増加し、その分大きなコストアップの原因となり、場合によっては製作困難となる問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決すべく、高い製品品質の硬質材を効率的に圧延可能な圧延機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、帯板を圧延する1対の作業ロールと、前記作業ロールを支持する1対の中間ロール群と、前記中間ロール群を支持する1対の補強ロールと、前記中間ロール群をそれぞれ独立してロール軸方向にシフトさせるシフト装置と、前記作業ロールの入側及び/又は出側にて前記作業ロールを支持する支持ロール群又は支持ベアリングと、を備え、前記支持ロール群又は支持ベアリングは、アームにより保持されており、前記アームは、前記中間ロール群の各々の中間ロールの操作側及び駆動側の中間ロール軸受に対して連結軸を介して搖動及び軸方向摺動可能に連結され、前記アームのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロックにより調整支持され、各々の前記中間ロールの前記ロール軸方向へのシフト時に、前記中間ロールは、前記中間ロール軸受及び前記連結軸と共にロール軸方向にシフトされ、前記アームは、前記連結軸にて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い製品品質の硬質材を効率的に圧延可能な圧延機を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施例に係る6段圧延機の正面図である。
【
図2】
図1のA-A矢視断面図であり、中間ロールのシフト前後の位置を示した図である。
【
図3】従来の6段圧延機での
図1のA-A矢視断面に相当する図であり、中間ロールのシフト前後の位置を示している。
【
図6】本発明の第2実施例に係る8段圧延機の正面図である。
【
図8】本発明の第3実施例に係る6段圧延機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の圧延機の実施例を、図面を用いて説明する。
【0014】
なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図中、「()」を用いて示している符号は、その背面側にある構成を示している。
【0015】
<第1実施例>
本発明の圧延機の第1実施例について
図1乃至
図5を用いて説明する。
図1は本第1実施例に係る6段圧延機を操作側から駆動側を見た時の正面図、
図2は
図1のA-A矢視断面図であり、本発明での中間ロールのシフト前後の位置を示した図、
図3は従来の6段圧延機での
図1のA-A矢視断面に相当する図であり、中間ロールのシフト前後位置を示した図、
図4は
図1のB-B矢視断面図、
図5は
図1のC-C矢視断面図である。
【0016】
最初に、圧延機の全体構成について
図1を用いて説明する。
【0017】
図1や
図4に示すように、第1実施例の圧延機100は6段圧延機であり、被圧延材である帯板1は、上下1対の作業ロール2a,2bにて圧延される。
【0018】
これら上下1対の作業ロール2a,2bは、各々が上下1対の中間ロール3a,3bに接触支持される。このため、本実施例では、中間ロール群は作業ロール2a,2bを支持する1対の中間ロール3a,3bで構成される。
【0019】
さらに、これら上下1対の中間ロール3a,3bは、各々上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持される。
【0020】
更に、鉛直方向上側の補強ロール5aは、図示の都合で省略されているベアリング及び補強ロール軸受箱6a,6bに支持される。これらの補強ロール軸受箱6a,6bは、ウォームジャッキ又はテーパウエッジ及び段付ロッカープレート等で構成されるパスライン調整装置7a,7bを介してハウジング9a,9bに支持されている。ここで、パスライン調整装置7a,7bの内部にはロードセルを内蔵させて、圧延荷重を計測させることができる。
【0021】
また、鉛直方向下側の補強ロール5bは、図示の都合で省略されているベアリング及び補強ロール軸受箱6c,6dに支持される。これらの補強ロール軸受箱6c,6dは、圧下油圧シリンダ8a,8bを介してハウジング9a,9bに支持されている。
【0022】
ここで、上下1対の中間ロール3a,3bは、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩3c,3dをそれぞれ有している。また、上側の中間ロール3aのロールネック部には、ベアリング22a,22bを介して中間ロール軸受4a,4bが取り付けられており、また、下側の中間ロール3bのロールネック部には、ベアリングを介して中間ロール軸受4c,4dが取り付けられている。
【0023】
また、中間ロール3aは、駆動側の中間ロール軸受4bを収容する軸受箱に取り付けられたフック27a,27b、シフトフレームフック25a,25b、シフトブロック24を介して、シフトシリンダ26a,26bにより、シフトフレーム23a,23bをガイドとし、軸方向にシフト可能となっている。同様に、中間ロール3bも、駆動側の中間ロール軸受4dを収容する軸受箱に取り付けられたフック、シフトフレームフック、シフトブロックを介して、シフトシリンダにより、シフトフレームをガイドとし、軸方向にシフト可能となっている。
【0024】
中間ロール3aの中間ロール軸受4a,4bには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダ30a,30bがそれぞれ備え付けられている。これにて中間ロール3aにロールベンディングを付与する。同様に、中間ロール3bの中間ロール軸受4c,4dには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダ30c,30dがそれぞれ備え付けられている。これにて中間ロール3bにロールベンディングを付与する。
【0025】
これらの中間ロール3a,3bの先細り状のロール肩3c,3dのシフトとロールベンディングにより板形状品質が改善する。
【0026】
上下1対の作業ロール2a,2bは、それぞれ、操作側軸端でスラストベアリング10aに、駆動側軸端でスラストベアリング10bに支持されている。スラストベアリング10a,10bは、それぞれ軸11a,11bを介して図示の都合で省略されているブラケットに回転可能に取り付けられている。
【0027】
上側の作業ロール2aは、帯板1の出側では支持ロール12aにて板幅方向全長にて回転可能に支持され、帯板1の入側では支持ロール12bにて板幅方向全長にて回転可能に支持される。支持ロール12aは支持ベアリング13a,13bにて回転可能に支持され、支持ロール12bは支持ベアリング13c,13dにて回転可能に支持される。支持ベアリング13a,13bはそれぞれ軸14a,14bを介してアーム15aに回転可能に支持されており、支持ベアリング13c,13dはそれぞれ軸14c,14dを介してアーム15bに回転可能に支持されている。
【0028】
下側の作業ロール2bは帯板1の出側では支持ロール12cにて板幅方向全長にて回転可能に支持され、帯板1の入側では支持ロール12dにて板幅方向全長にて回転可能に支持される。支持ロール12cは支持ベアリング13e,13fにて回転可能に支持され、支持ロール12dは支持ベアリング13g,13hにて回転可能に支持される。支持ベアリング13e,13fはそれぞれ軸14e,14fを介してアーム15cに回転可能に支持されており、支持ベアリング13g,13hはそれぞれ軸14g,14hを介してアーム15dに回転可能に支持されている。
【0029】
図2に示すように、帯板1の鉛直方向上方側では、アーム15aは中間ロール3aの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4a,4bに対して連結軸16aを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結され、アーム15bは中間ロール3aの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4a,4bに対して連結軸16bを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結されている。
【0030】
また、帯板1の鉛直方向下方側では、アーム15cは中間ロール3bの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4c,4dに対して連結軸16cを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結され、アーム15dは中間ロール3bの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4c,4dに対して連結軸16dを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結されている。
【0031】
アーム15a,15b,15c,15dと連結軸16a,16b,16c,16dとの間には、それぞれ摺動ライナ41a,41b,41c,41dが配置されている。
【0032】
本実施例では、連結軸16a,16b,16c,16dのロール軸方向の長さが、各々が支持しているアーム15a,15b,15c,15dのロール軸方向の長さより中間ロール3a,3bのシフト量だけ長いものとなっている。
【0033】
アーム15aのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロック17aにより調整支持され、アーム15bのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロック17bにより調整支持される。
【0034】
更に、サイドブロック17aは、テーパウエッジ18a,18b及びテーパウエッジ19a,19bを介して、ハウジング9a,9bに支持されており、サイドブロック17bは、テーパウエッジ18c,18d及びテーパウエッジ19c,19dを介して、ハウジング9a,9bに支持されている。
【0035】
同様に、アーム15cのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロック17cにより調整支持され、アーム15dのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロック17dにより調整支持される。
【0036】
また、サイドブロック17cは、テーパウエッジ18e,18f及びテーパウエッジ19e,19fを介して、ハウジング9a,9bに支持されており、サイドブロック17dは、テーパウエッジ18g,18h及びテーパウエッジ19g,19hを介して、ハウジング9a,9bに支持されている。
【0037】
テーパウエッジ18aは油圧シリンダ20aにて抜き差しされ、テーパウエッジ18bは油圧シリンダ20bにて抜き差しされ、テーパウエッジ18cは油圧シリンダ20cにて抜き差しされ、テーパウエッジ18dは油圧シリンダ20dにて抜き差しされ、テーパウエッジ18eは油圧シリンダ20eにて抜き差しされ、テーパウエッジ18fは油圧シリンダ20fにて抜き差しされ、テーパウエッジ18gは油圧シリンダ20gにて抜き差しされ、テーパウエッジ18hは油圧シリンダ20hにて抜き差しされ、それぞれの厚みを変えることができるようになっている。
【0038】
例えば、径の大きな作業ロールから径の小さな作業ロールへ交換する場合、テーパウエッジ18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18hを押し込むとその厚みが厚くなり、その分だけサイドブロック17a,17b,17c,17dはミル内側に移動し、アーム15a,15b,15c,15d、連結軸16a,16b,16c,16d、支持ベアリング13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13hを介して支持ロール12a,12b,12c,12dもミル内側に閉まり、作業ロール2a,2bに接触支持させる。
【0039】
サイドブロック17aには、図示の都合で省略されているシリンダ等で着脱可能なストッパ21a,21bが設けられている。このストッパ21a,21bは、アーム15aが中間ロール3aの軸方向へシフトすることを防ぐために設けられており、ストッパ21a,21bを着することによりアーム15aの軸方向位置が固定される。
【0040】
サイドブロック17bには、図示の都合で省略されているシリンダ等で着脱可能なストッパ21c,21dが設けられている。このストッパ21c,21dは、アーム15bが中間ロール3aの軸方向へシフトすることを防ぐために設けられており、ストッパ21c,21dを着することによりアーム15bの軸方向位置が固定される。
【0041】
サイドブロック17cには、図示の都合で省略されているシリンダ等で着脱可能なストッパ21e,21fが設けられている。このストッパ21e,21fは、アーム15cが中間ロール3bの軸方向へシフトすることを防ぐために設けられており、ストッパ21e,21fを着することによりアーム15cの軸方向位置が固定される。
【0042】
サイドブロック17dには、図示の都合で省略されているシリンダ等で着脱可能なストッパ21g,21hが設けられている。このストッパ21g,21hは、アーム15dが中間ロール3bの軸方向へシフトすることを防ぐために設けられており、ストッパ21g,21hを着することによりアーム15dの軸方向位置が固定される。
【0043】
そして、中間ロール3a,3bの交換時には、中間ロール3a,3bは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d、支持ロール12a,12b,12c,12d、アーム15a,15b,15c,15dとの組立て体でハウジング9a,9bから抜き出し、または挿入される。その際にこれらのストッパ21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21hは脱となり、アーム15a,15b,15c,15dは軸方向移動が可能となる。
【0044】
本実施例では、
図2に示すように、各々の中間ロール3a,3bが軸方向にδだけシフトする時には、中間ロール3a,3bは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4dやこれらを連結する連結軸16a,16b,16c,16dと共にロール軸方向にシフトされる。
【0045】
これに対し、アーム15a,15b,15c,15dは、その連結された連結軸16a,16b,16c,16dで摺動するため、軸方向にはシフトせずにそのままの位置に留まる。同様に、アーム15a,15b,15c,15dに保持された支持ロール12a,12b,12c,12dや支持ベアリング13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13hについても、アーム15a,15b,15c,15dと同様に軸方向にはシフトせずにそのままの位置に留まる。
【0046】
この構造によれば、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d内蔵のベアリング22a,22bは、通常のインナーレース構造が適用でき、そのベアリング22a,22bのインナーレースと中間ロール3a,3bのネック軸部での軸中心回転のみで軸方向に摺動する必要がなくなる。このため、中間ロール3a,3bのネック軸部表面は、通常の硬度でよく、特殊な熱処理が不要となり、また表面が高硬度のインナーレースの焼き嵌めも不要となる。従って、最近の板幅増加のニーズに伴い、中間ロールもその全長が長くなっても、この特殊対応が不要となるため、この分のコストアップが抑えられ、また製作困難となることがなくなった。これにより、従来に比べて本発明の圧延機100は、特に硬質材に関して、高い生産性や高い製品品質の帯板を得るのに好適な圧延機となる。
【0047】
ここで、比較のために、従来の構造例を
図3に示す。
図3では帯板1の鉛直方向上方側の中間ロール103aのみ示すが、鉛直方向下方側の中間ロールでもその構造は同じなため、詳細は省略する。
【0048】
図3では、まず中間ロール103aのロールネック部には、ベアリング38a,38bを介して中間ロール軸受104a,104bが取り付けられている。また中間ロール103aは、駆動側でスラストベアリング28aを介して別の軸受箱29aに取り付けられたフック39a,39b、シフトフレームフック25a,25b、シフトブロック24を介して、シフトシリンダ26a,26bにより、シフトフレーム23a,23bをガイドとし、軸方向に移動可能となっている。
【0049】
この従来例の構造の場合、中間ロール3aが軸方向にδだけシフトする際には、支持ロール12a,12b及びこれらが固定されているアーム115a,115bは、中間ロール軸受104a,104bに対して支持軸116a,116bを介して軸方向に固定されていることから、中間ロール103aのみが軸方向にシフトする。
【0050】
このとき、中間ロール軸受104a,104b内蔵のベアリング38a,38bは、通常のインナーレース構造が適用できないことから、そのベアリング38a,38bのコロと中間ロール103aのネック軸部40a,40bとで駆動時の軸中心回転及びシフト時の軸方向の摺動を担う必要があった。
【0051】
このため、中間ロール3a,3bのネック軸部40a,40bの表面は非常に高い硬度が必要であり、その中間ロール3a,3bのネック軸部40a,40bの表面をそのまま熱処理で高い硬さを確保するか、もしくは表面が高硬度のインナーレースの焼き嵌めを実施することで対応してきた。
【0052】
しかしながら、最近の板幅増加のニーズに伴い、中間ロール3a,3bの全長も長くなってきた。このため特殊対応による製作上の困難さが増加し、その分大きなコストアップの原因となり、場合によっては製作困難となる問題があった。
【0053】
これに対し、上述した本発明の第1実施例の圧延機100では、各々の中間ロール3a,3bのロール軸方向へのシフト時に、中間ロール3a,3bは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d及び連結軸16a,16b,16c,16dと共にロール軸方向にシフトされ、アーム15a,15b,15c,15dは、連結軸16a,16b,16c,16dにて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まるため、これらの問題が生じることはない。
【0054】
また、連結軸16a,16b,16c,16dのロール軸方向の長さが、アーム15a,15b,15cのロール軸方向の長さより中間ロール3a,3bのシフト量だけ長いため、簡易な構造にて中間ロール3a,3bのロール軸方向へのシフト時に、アーム15a,15b,15c,15dを連結軸16a,16b,16c,16dにて摺動させて軸方向にシフトせずに留めることが可能となる。
【0055】
更に、アーム15a,15b,15c,15dと連結軸16a,16b,16c,16dとの間に配置された摺動ライナ41a,41b,41c,41dを更に備えることで、中間ロール3a,3bのロール軸方向へのシフト時におけるアーム15a,15b,15c,15dと連結軸16a,16b,16c,16dとの摩擦による損耗の影響を軽減して、長期間の使用にも耐えうる仕様とすることができる。
【0056】
また、サイドブロック17a,17b,17c,17dに設けられており、アーム15a,15b,15c,15dの中間ロール3a,3bの軸方向への移動を防ぐストッパ21a,21b,21c,21dを更に備えることにより、アーム15a,15b,15c,15dのシフトをより確実に防ぐことが可能となる。
【0057】
<第2実施例>
本発明の第2実施例の圧延機について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は本第2実施例に係る8段圧延機の正面図、
図7は
図6のD-D矢視断面図である。
【0058】
図6及び
図7に示す本第2実施例の圧延機100Aでも、8段圧延機であり、被圧延材である帯板1は、上下1対の作業ロール2a,2bにて圧延される。
【0059】
この上下1対の作業ロール2a,2bは、各々上下1対の中間ロール3a,3bに接触支持され、これらの上下1対の中間ロール3a,3bは、各々上下1対の第2中間ロール31a,31bに接触支持される。すなわち、本実施例では、中間ロール群は、作業ロール2a,2bを支持する上下1対の中間ロール3a,3b(第1中間ロール)、及び中間ロール3a,3bを支持する上下1対の第2中間ロール31a,31bで構成される。
【0060】
更に、これらの上下1対の第2中間ロール31a,31bは、各々上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持される。
【0061】
上述の作業ロール2a,2b、中間ロール3a,3b、補強ロール5a,5b周りの構造は第1実施例の圧延機100と同じであり、その詳細は省略する。
【0062】
上下1対の第2中間ロール31a,31bは、中間ロール3a,3bと板幅方向逆方向の点対称位置で、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩31c,31dをそれぞれ有している。
【0063】
又、第2中間ロール31aのロールネック部には、図示の都合で省略されているベアリングを介して第2中間ロール軸受け32a,32bがそれぞれ取り付けられており、第2中間ロール31bのロールネック部には、図示の都合で省略されているベアリングを介して第2中間ロール軸受け32c,32dが取り付けられている。
【0064】
第2中間ロール31aは、図示の都合で省略されているシフトシリンダにより、駆動側の第2中間ロール軸受32bを収容する軸受を介して軸方向に移動可能となっており、第2中間ロール31bは、図示の都合で省略されているシフトシリンダにより、駆動側の第2中間ロール軸受32dを収容する軸受箱を介して軸方向に移動可能となっている。
【0065】
第2中間ロール軸受32a,32b,32c,32dには、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダ33a,33b,33c,33dがそれぞれ備え付けられている。これにて第2中間ロール31a,31bにロールベンディングを付与する。この第2中間ロール31a,31bの先細り状のロール肩31c,31dのシフトとロールベンディングを加えることにより板形状品質が更に改善する。
【0066】
ただこの第2中間ロール31a,31bの先細り状のロール肩31c,31dやそのシフトは、必須ではなく、場合によっては無くても良い。
【0067】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機100と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0068】
すなわち、各々の中間ロール3a,3b、第2中間ロール31a,31bのロール軸方向へのシフト時に、中間ロール3a,3b、第2中間ロール31a,31bは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d、第2中間ロール軸受32a,32b,32c,32d及び連結軸16a,16b,16c,16dと共にロール軸方向にシフトされ、アーム15a,15b,15c,15dは、連結軸16a,16b,16c,16dにて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まる点や、連結軸16a,16b,16c,16dのロール軸方向の長さが、アーム15a,15b,15c,15dのロール軸方向の長さより中間ロール3a,3b、第2中間ロール31a,31bのシフト量だけ長いものとすることができる点、摺動ライナ41a,41b,41c,41dを更に備えることができる点、ストッパ21a,21b,21c,21dを更に備えることができる点については第1実施例の圧延機100と同じである。
【0069】
このような本発明の第2実施例の圧延機100Aにおいても、前述した第1実施例の圧延機100とほぼ同様な効果が得られる。
【0070】
<第3実施例>
本発明の第3実施例の圧延機について
図8乃至
図10を用いて説明する。
図8は本第3実施例に係る6段圧延機の正面図、
図9は
図8のE-E矢視断面図、
図10は
図8のF-F矢視断面図である。
【0071】
図8乃至
図10に示す本実施例の圧延機100Bは、
図8及び
図9に示すように、6段圧延機であり、被圧延材である帯板1は、上下1対の作業ロール2a,2bにて圧延される。
【0072】
作業ロール2aは、帯板1の出側では操作側及び駆動側に設置された支持ベアリング34a,34bに回転可能に支持されており、帯板1の入側では操作側及び駆動側に設置された支持ベアリング34c,34dに回転可能に支持されている。これら支持ベアリング34a,34bは各々が軸35a,35bを介してアーム36aに回転可能に支持されており、支持ベアリング34c,34dは各々が軸35c,35dを介してアーム36bに回転可能に保持されている。
【0073】
同様に、作業ロール2bは、帯板1の出側では操作側及び駆動側に設置された支持ベアリング34e,34fに回転可能に支持されており、帯板1の入側では操作側及び駆動側に設置された支持ベアリング34g,34hに回転可能に保持されている。
【0074】
アーム36aは、中間ロール3aの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4a,4bに対して連結軸37aを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結されており、アーム36bは、中間ロール3aの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4a,4bに対して連結軸37bを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結されている。
【0075】
同様に、アーム36cは、中間ロール3bの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4c,4dに対して連結軸37cを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結されており、アーム36dは、中間ロール3bの操作側及び駆動側の中間ロール軸受4c,4dに対して連結軸37dを介して搖動及び軸方向摺動可能に連結されている。
【0076】
また、アーム36a,36b,36c,36dのパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロック17a,17b,17c,17dによりそれぞれ調整支持されている。
【0077】
本実施例の圧延機100Bでは、中間ロール3a,3bの軸方向シフトδ時、中間ロール3a,3bは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d及び連結軸37a,37b,37c,37dと共にロール軸方向にシフトされるが、アーム36a,36b,36c,36dは、連結軸37a,37b,37c,37dにて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まる。同様に、支持ベアリング34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hは、アーム36a,36b,36c,36dが連結軸37a,37b,37c,37dで摺動するため、軸方向にはシフトせずそのままの位置に留まる。
【0078】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機100と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0079】
すなわち、各々の中間ロール3a,3bのロール軸方向へのシフト時に、中間ロール3a,3bは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d及び連結軸37a,37b,37c,37dと共にロール軸方向にシフトされ、アーム36a,36b,36c,36dは、連結軸37a,37b,37c,37dにて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まる点や、連結軸37a,37b,37c,37dのロール軸方向の長さが、アーム36a,36b,36c,36dのロール軸方向の長さより中間ロール3a,3bのシフト量だけ長いものとすることができる点、摺動ライナ41a,41b,41c,41dを更に備えることができる点、ストッパ21a,21b,21c,21dを更に備えることができる点、については第1実施例の圧延機100と同じである。
【0080】
このような本発明の第3実施例の圧延機100Bにおいても、前述した第1実施例の圧延機100とほぼ同様な効果が得られる。
【0081】
また、本実施例の圧延機100Bでは、支持ベアリング34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hが、作業ロール2a,2bの操作側及び駆動側に設置されているため、支持ベアリング34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hによるマークが帯板1に転写する懸念がなくなる。
【0082】
なお、中間ロール群が中間ロール3a,3b、第2中間ロール31a,31bにより構成される、すなわち第2実施例の圧延機100Aのような8段圧延機においても、本実施例の圧延機100Bのように作業ロール2a,2bの入側、及び/又は出側にて作業ロール2a,2bを支持する支持ベアリング34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hを備える形態とすることができる。
【0083】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0084】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1;帯板
2a,2b;作業ロール
3a,3b;中間ロール
3c,3d;ロール肩
4a,4b,4c,4d;中間ロール軸受
5a,5b;補強ロール
6a,6b,6c,6d;補強ロール軸受箱
7a,7b;パスライン調整装置
8a,8b;圧下油圧シリンダ
9a,9b;ハウジング
10a,10b;スラストベアリング
11a,11b;軸
12a,12b,12c,12d;支持ロール(支持ロール群)
13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h;支持ベアリング(支持ロール群)
14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h;軸
15a,15b,15c,15d;アーム
16a,16b,16c,16d;連結軸
17a,17b,17c,17d;サイドブロック
18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18h,19a,19b,19c,19d,19e,19f,19g,19h;テーパウエッジ
20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h;油圧シリンダ
21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g,21h;ストッパ
22a,22b;ベアリング
23a,23b;シフトフレーム
24;シフトブロック
25a,25b;シフトフレームフック
26a,26b;シフトシリンダ
27a,27b;フック
28a;スラストベアリング
29a;軸受箱
30a,30b,30c,30d;ベンディングシリンダ
31a,31b;第2中間ロール
31c,31d;ロール肩
32a,32b,32c,32d;第2中間ロール軸受
33a,33b,33c,33d;ベンディングシリンダ
34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g,34h;支持ベアリング
35a,35b,35c,35d;軸
36a,36b,36c,36d;アーム
37a,37b,37c,37d;連結軸
38a,38b;ベアリング
39a,39b;フック
40a,40b;ネック軸部
41a,41b,41c,41d;摺動ライナ
100,100A,100B;圧延機
【要約】
【課題】高い製品品質の硬質材を効率的に圧延可能な圧延機を提供する。
【解決手段】アーム15は、中間ロール3の操作側及び駆動側の中間ロール軸受4に対して連結軸16を介して搖動及び軸方向摺動可能に連結され、アーム15のパス方向位置は、そのパス方向位置を調整可能なサイドブロック17により調整支持され、各々の中間ロール3のロール軸方向へのシフト時に、中間ロール3は、中間ロール軸受4及び連結軸16と共にロール軸方向にシフトされ、アーム15は、連結軸16にて摺動することで軸方向にはシフトせずに留まる。
【選択図】
図1