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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ポジショナー装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20241106BHJP
   B23K 37/047 20060101ALI20241106BHJP
   B23Q 5/40 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B23P19/06 Z
B23K37/047 501B
B23Q5/40 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024113198
(22)【出願日】2024-07-16
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠介
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082214(JP,A)
【文献】中国実用新案第217452791(CN,U)
【文献】特開2015-134371(JP,A)
【文献】特開2005-211961(JP,A)
【文献】特開2013-188798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
B23K 37/047
B23Q 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、このベースに立てられ上横桁が渡されている枠体と、前記上横桁に回転自在に取付けられ鉛直軸沿って下へ延ばされるボールねじと、このボールねじに嵌まるナットと、このナットに固定されるブラケットと、このブラケットから横に前記枠体の正面を貫通して外まで延ばされ且つ前記ブラケットに水平軸回りに旋回可能に支持されている昇降腕とを備え、
前記ボールねじが回されると前記ナットが昇降し、このナットと共に前記ブラケット及び前記昇降腕が昇降することで、加工対象物を多次元的に移動し位置決めするポジショナー装置であって、
前記ブラケットは、前記ボールねじが通過し得る幅の切欠きを有し、この切欠きは前記枠体の背面側へ開口しており、
前記ボールねじを、前記切欠きを通して前記枠体の背面から外へ取出すことができるようにし、
前記ボールねじは、前記上横桁に設けた上方ベアリングに下から差し込み前記上方ベアリングの内輪に固定される形態で前記上横桁に取付けられ、
前記ボールねじは、このボールねじの上に配置される駆動源で回され、
この駆動源は、カップリングを介して前記ボールねじに連結され、
前記ベースに、門型ステーが取付けられ、
この門型ステーは、前記ベースにボルト止めされる左右一対の脚部と、これらの脚部の上部に掛け渡され前記脚部にボルト止めされるクロス部とを有し、
前記クロス部に、前記ボールねじを上から差し込むことのできる下方ベアリングが固定されている、ポジショナー装置。
【請求項2】
請求項記載のポジショナー装置であって、
前記ボールねじは、前記下方ベアリングより下へ延びる延長部を有し、
この延長部に、羽根を有するプロペラ部材を取付け、
このプロペラ部材の下位置にて前記左右一対の脚部に、プレートを渡し、
このプレートは、上面に前記プロペラ部材が落下してきたときに前記プロペラ部材の旋回を抑制するストッパ片を有し、
前記プロペラ部材が落下する前は、前記ストッパ片と前記プロペラ部材とに高さ方向で隙間を保つようにした、ポジショナー装置。
【請求項3】
請求項記載のポジショナー装置であって、
前記延長部は断面が多角形断面であり、前記プロペラ部材は前記多角形断面に嵌まる多角形穴を有し、前記プロペラ部材は、前記延長部に嵌められた後に、ボルトで固定されている、ポジショナー装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のポジショナー装置であって、
前記ベースは、前記昇降腕を仮に支える支え棒を受ける座を有する、ポジショナー装置。
【請求項5】
請求項1記載のポジショナー装置であって、
前記ナットは、筒部と、この筒部の下端から水平に張出す鍔部とを有し、
前記ブラケットは、前記筒部を収納し、底に前記鍔部を当ててボルトで固定することができる箱型ブラケットであり、この箱型ブラケットに前記切欠きを設けた、ポジショナー装置。
【請求項6】
請求項1記載のポジショナー装置であって、
前記枠体の背面は、背面カバーで塞がれ、前記背面カバーを取外すと、前記ボールねじの長さに対応する縦長の開口部が現われるようにし、この開口部に中間桟を設けないようにした、ポジショナー装置。
【請求項7】
ベースと、このベースに立てられ上横桁が渡されている枠体と、前記上横桁に回転自在に取付けられ鉛直軸沿って下へ延ばされるボールねじと、このボールねじに嵌まるナットと、このナットに固定されるブラケットと、このブラケットから横に前記枠体の正面を貫通して外まで延ばされ且つ前記ブラケットに水平軸回りに旋回可能に支持されている昇降腕とを備え、
前記ボールねじが回されると前記ナットが昇降し、このナットと共に前記ブラケット及び前記昇降腕が昇降することで、加工対象物を多次元的に移動し位置決めするポジショナー装置であって、
前記ブラケットは、前記ボールねじが通過し得る幅の切欠きを有し、この切欠きは前記枠体の背面側へ開口しており、
前記ボールねじを、前記切欠きを通して前記枠体の背面から外へ取出すことができるようにし、
平面視で互いに直交する軸を横行き軸と走行軸と定め、前記走行軸は前記昇降腕に沿って延び、前記横行き軸は前記昇降腕に直角に延びるように定めるとき、
前記枠体の上端に、さらに前記横行き軸に沿って延びる横行き軸部材を備え、この横行き軸部材に前記横行き軸に沿って移動する第1スライダを備え、この第1スライダに前記走行軸に沿って延びる走行軸部材を備え、この走行軸部材に前記走行軸に沿って移動する第2スライダを備え、この第2スライダに作業ロボットを備え、
さらに、第1落下防止部材と第2落下防止部材との一方または両方を備え、
前記第1落下防止部材は、前記第1スライダと前記横行き軸部材との間に配置され、前記第1スライダが前記横行き軸部材から落下することを防止する部材であり、
前記第2落下防止部材は、前記第2スライダと前記走行軸部材との間に配置され、前記走行軸部材から前記第2スライダが落下することを防止する部材である、ポジショナー装置。
【請求項8】
請求項記載のポジショナー装置であって、
前記第1落下防止部材は、通常は前記第1スライダの移動を許容し、前記横行き軸部材から前記第1スライダが離れたときに前記第1スライダの落下を抑制ことができるように前記第1スライダから前記横行き軸部材へ延ばした第1フックである、ポジショナー装置。
【請求項9】
請求項記載のポジショナー装置であって、
前記第2落下防止部材は、通常は前記第2スライダの移動を許容し、前記走行軸部材から前記第2スライダが離れたときに前記第2スライダの落下を抑制ことができるように前記第2スライダから前記走行軸部材へ延ばした第2フックである、ポジショナー装置。
【請求項10】
請求項記載のポジショナー装置であって、
前記箱型ブラケットは、上面に前記ボールねじに沿って延びるカバーを備え、このカバーにも切欠きが設けられている、ポジショナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物を多次元的に移動し位置決めするポジショナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多軸ロボットのアームに、ナットランナーや溶接ガンなどの加工具を取付け、この加工具で車体部品などの加工対象物にボルトの締付けや溶接などを施すことが、広く行われている。
多軸ロボットの負担を軽減するなどの理由から、加工対象物を多次元的に移動(回転や旋回を含む。)することが望まれる。
このような移動に供するポジショナー装置が、各種提案されてきた(例えば、特許文献1(図6図7図8)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図14は従来のポジショナー装置の側面図である。
図14に示すように、ポジショナー装置200は、ベース201と、このベース201に立てられた枠体202と、この枠体202の上横桁203から吊り下げられたボールねじ204と、このボールねじ204に嵌まる(ねじ結合される)ナット205と、このナット205に固定されるブラケット206と、このブラケット206から横に延びる昇降腕207とを備える。
【0004】
枠体202に減速機208と電動モータ209とが載っている。そして、減速機208とボールねじ204とがカップリング211で連結されている。
電動モータ209の出力は、減速機208で減速され、ボールねじ204の回転に供される。
ボールねじ204が回されると、ナット205が上又は下へ移動し、昇降腕207が昇降する。この昇降腕207の先端に加工対象物がセットされる。
【0005】
図14の15a部拡大図が図15(a)で示され、図14の15b部拡大図が図15(b)で示される。
図15(a)に示すように、ボールねじ204は、上横桁203を上下に貫通しつつ、軸受ユニット213を介して上横桁203で支持される。軸受ユニット213は、フランジ214を有する。このフランジ214は、上横桁203に載せられ、ボルト215で固定される。
【0006】
また、図15(b)に示すように、ナット205もフランジ216を有する。このフランジ216は、ブラケット206に載せられ、ボルト217で固定される。ボールねじ204とナット205の間にボール(鋼球)218が介在している。
【0007】
ところで、ころ軸受は、寿命時間が定められている。この寿命時間は、使用頻度が高くなることや、使用荷重が大きくなると、短くなる。また、予期せぬ衝撃力が加わると寿命はさらに短くなる。
ボールねじ204は、ころ軸受の一種であるため、寿命があり、消耗品であるといえる。寿命に達する又は達する前に、ボールねじ204及びナット205は、新品と交換される。
【0008】
特許文献1では、ボールねじの交換についての説明はないが、前方の昇降腕207など落下する物を外してから、ボールねじ204を分離することが通常である。
【0009】
しかし、狭いスペースでの作業となるため、交換に時間がかかっていた。結果、作業コストが嵩んでいた。
【0010】
諸々のコストの低減が求められ中、ボールねじの取外しが容易で、ボールねじの交換作業に係る作業コストを低減することができるポジショナー装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第4371835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ボールねじの取外しが容易で、ボールねじの交換作業に係る作業コストを低減することができるポジショナー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、ベースと、このベースに立てられ上横桁が渡されている枠体と、前記上横桁に回転自在に取付けられ鉛直軸沿って下へ延ばされるボールねじと、このボールねじに嵌まるナットと、このナットに固定されるブラケットと、このブラケットから横に前記枠体の正面を貫通して外まで延ばされ且つ前記ブラケットに水平軸回りに旋回可能に支持されている昇降腕とを備え、
前記ボールねじが回されると前記ナットが昇降し、このナットと共に前記ブラケット及び前記昇降腕が昇降することで、加工対象物を多次元的に移動し位置決めするポジショナー装置であって、
前記ブラケットは、前記ボールねじが通過し得る幅の切欠きを有し、この切欠きは前記枠体の背面側へ開口しており、
前記ボールねじを、前記切欠きを通して前記枠体の背面から外へ取出すことができるようにし、
前記ボールねじは、前記上横桁に設けた上方ベアリングに下から差し込み前記上方ベアリングの内輪に固定される形態で前記上横桁に取付けられ、
前記ボールねじは、このボールねじの上に配置される駆動源で回され、
この駆動源は、カップリングを介して前記ボールねじに連結され、
前記ベースに、門型ステーが取付けられ、
この門型ステーは、前記ベースにボルト止めされる左右一対の脚部と、これらの脚部の上部に掛け渡され前記脚部にボルト止めされるクロス部とを有し、
前記クロス部に、前記ボールねじを上から差し込むことのできる下方ベアリングが固定されている
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ブラケットに、ボールねじが通過し得る幅の切欠きを設けた。この切欠きの存在により、ボールねじを枠体の背面から外へ取出すことができる。しかも、背面での作業であるため、昇降腕などがない分作業スペースが広くなる。
よって、本発明により、ボールねじの取外しが容易で、ボールねじの交換作業に係る作業コストを低減することができるポジショナー装置が提供される。
加えて、上方ベアリングの内輪に、ボールねじを回転自在に固定し、このボールねじを上横桁に吊り下げることができる。また、駆動源とボールねじとの連結を解除することで、ボールねじを下へ抜くことができる。
さらに加えて、下方ベアリングで、ボールねじの心ずれを抑制することができる。一対の脚部を外すことで、ボールねじから下方ベアリングを下へ抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明に係るポジショナー装置の正面視斜視図、(b)は(a)のb部の拡大分解図、(c)はポジショナー装置の背面視斜視図である。
図2】本発明に係るポジショナー装置の背面図である。
図3図2の3部拡大図である。
図4図2の4部拡大図である。
図5】本発明に係るブラケットの分解図である。
図6】(a)は図5の6a-6a線断面図、(b)は図5の6b-6b矢視図、(c)はナットの断面図、(d)~(e)は別の形態を説明する図である。
図7図2の7部拡大図である。
図8】ねじ落下防止機構の断面図である。
図9】(a)は図7の9a-9a線断面図、(b)は図7の9b-9b矢視図である。
図10】本発明に係るボールねじ取出し方法を説明するフロー図である。
図11】横行き軸部材及び走行軸部材が追加されたポジショナー装置の要部の斜視図である。
図12】(a)は図11の12a矢視図、(b)は図11の12b矢視図である。
図13】(a)はブラケットの変更例を説明する図、(b)は(a)のb-b線断面図、(c)は(a)のc-c線断面図である。
図14】従来のポジショナー装置の側面図である。
図15】(a)は図14の15a部拡大図、(b)は図14の15b部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0017】
[ポジショナー装置]
図1(a)に示すように、ポジショナー装置10は、床11に設置するベース12と、このベース12から立てられた枠体40と、この枠体40の正面41Fから水平に延びる昇降腕20と、この昇降腕20の先端に設けられ加工対象物を支えるターンテーブル30とを備える。
この例では、ベース12にサブベース13を載せ、このサブベース13に枠体40を立てたが、サブベース13を省いて、直接ベース12に枠体40を立てることは差し支えない。
【0018】
[昇降腕]
昇降腕20は、例えば、枠体40の正面41Fに沿う面板21と、この面板21に回転自在に取付けられる回転板22と、この回転板22から水平に延びる角柱23とからなる。
【0019】
[支え棒]
図1(b)に示すように、ベース12には所定箇所に座14が設けられており、ボールねじ交換作業の前に、座14へ支え棒15を載せ、ボルト16で固定することができる。
この支え棒15は、重い昇降腕20を仮置きする台の役割を果たす。
作図の都合で、図1(a)に支え棒15を描いたが、支え棒15は、ボールねじの交換時にのみ必要であり、それ以外のときは外され、治具置き場などで保管される。
【0020】
[背面カバー]
図1(c)に示すように、枠体40の背面41Bが背面カバー42で塞がれている。
この例では、5枚の背面カバー42で枠体40の背面41Bを塞ぐようにしたが、枚数は任意である。背面カバー42は、1枚当たり4本のボルトで枠体40に止められている。
【0021】
[ポジショナー装置の詳細]
図2はポジショナー装置10の背面図である。
図2に示すように、ポジショナー装置10は、ベース12にサブベース13を介して立てられ上部に上横桁43が渡されている枠体40と、上横桁43に鉛直軸回りに回転自在に取付けられ下へ延ばされるボールねじ60と、このボールねじ60に嵌まるナット65と、このナット65に固定されるブラケット80と、このブラケット80に固定される面板21と、この面板21に中空軸27を介して支持される回転板22と、この回転板22で支持され図面奥へ延ばされる昇降腕(図1(a)、符号20)とを備える。
【0022】
面板21に旋回用モータ24が取付けられ、この旋回用モータ24にピニオンギヤ25が設けられ、回転板22にリングギヤ26が設けられている。
旋回用モータ24、ピニオンギヤ25、リングギヤ26の順で回転力が伝達され、回転板22は中空軸27を中心に回転する。
【0023】
回転板22と同様に、図1(a)に示すターンテーブル30は、ターン用モータ31により、回される。ターン用モータ31の給電及び制御用のケーブル32は、角柱23を通って枠体40内に達する。
【0024】
[枠体の背面]
図1(c)に示す背面カバー42を外すと、図2に示すように大きな縦長矩形の開口部44が現われ、開口部44を囲うように、枠体40に20個(4本×5枚=20個)の雌ねじ部40aが現われる。開口部44には中間桟を設けない。そのため、開口部44を介してボールねじ60がよく見える。
【0025】
[ボールねじ]
図2に示すように、ボールねじ60は、上横桁43で支えられ下へ延びる。
上横桁43より上に枠体40の天板45が配置され、この天板45に減速機軸46が下へ延びるようにして減速機47が載せられ、この減速機47に昇降用モータ48が一体的に載せられている。
【0026】
すなわち、ボールねじ60を回す駆動源49としては、いわゆる減速機付き電動モータが好適である。しかし、駆動源49は油圧モータや電動サーボモータでもよく、減速機付き電動モータに限定されない。
減速機軸46は、カップリング51を用いてボールねじ60に連結される。
【0027】
[ナット]
ボールねじ60には、ナット65がねじ込まれる。ナット65の構造は、後述の図6(c)で詳しく説明する。
【0028】
[ねじ落下防止機構]
好ましくは、ボールねじ60の下に、ボールねじ60の過度な落下を防止するねじ落下防止機構90を設ける。ねじ落下防止機構90の構成は、後述の図7図9(a)、(b)で詳しく説明する。
【0029】
以下、ポジショナー装置10の要部の構造を、図面に基づいて、詳しく説明する。
【0030】
[上方ベアリング]
図3に示すように、ボールねじ60は、上端に、一般部よりも小径とされた中径部61及びこの中径部61より小径とされた小径部62とを下から上へ順に有する。
上横桁43に上方ベアリング55が上から嵌め込まれている。
【0031】
上方ベアリング55は、スラスト荷重とラジアル荷重が負担できる軸受であれば1個でも差し支えない。軸受に内蔵される転動体はボール、テーパーロールの何れでもよい。
【0032】
または、複数個(この例では2個。好ましくは4個)のアンギュラー玉軸受を上下に重ねてもよい。さらには、複数個のアンギュラー玉軸受に少なくとも1個の上向きスラスト荷重を受ける軸受を含めてもよい。よって、上方ベアリング55の構成は任意であり、実施例に限定されない。
【0033】
上方ベアリング55は、例えば、内輪56と、外輪57と、これらで挟まれる鋼球58とを備える。
【0034】
内輪56に下から中径部61を差し込む。次に、中径部61に下ロックナット71をねじ込む。下ロックナット71を回すと、ボールねじ60が徐々に上昇する。一般部と中径部61との境目の段部が内輪56に当たる。
【0035】
さらに、下ロックナット71を若干回して、テンションを掛ける(軸力を付与する)。この状態で、上ロックナット72をねじ込む。この上ロックナット72で下ロックナット71の緩みを防止する。
【0036】
また、小径部62は、カップリング51に下から差し込んだ後に、止めねじ73で固定される。これで、減速機軸46がボールねじ60に機械的に連結される。
【0037】
[ブラケット]
図2に示すブラケット80は、横に延びる1枚の厚板ブラケットでも差し支えないが、好ましくは図4に示すように、立体的な箱型ブラケット81とする。
箱型ブラケット81は中抜き構造(中空構造)であるため、厚板ブラケットと同等の重量に留めることができる。箱型ブラケット81は、高さが稼げるため、ねじり剛性及び曲げ剛性を、厚板ブラケットより格段に高めることができる。
【0038】
図4の理解を促すために、図4の分解図を図5で提示する。
図5に示すように、箱型ブラケット81は、例えば、底板82と、この底板82の左右辺から上へ延びる左右の側板83と、これらの側板83の上端又は上部に掛け渡すブリッジ板84とからなる。好ましくは、このブリッジ板84に上へ延びる筒状のカバー85を備える。
【0039】
この例では、底板82に側板83を溶接で固定し、側板83にブリッジ板84をボルト86で止めるようにした。底板82に側板83をボルトで固定することは差し支えない。
【0040】
図6(a)に示すように、ブリッジ板84は、想像線で示すボールねじ60より若干大径の半円穴84aを有し、この半円穴84aから延びる切欠き84bを有する。この切欠き84bはボールねじ60が通過し得る幅とされ、背面41Bへ開口する。
筒状のカバー85も一部分が切欠き85aとされる。
【0041】
なお、半円穴84aは、図6(d)に示すような角穴84cに変更してもよい。角穴84cは正方形穴や六角形穴や八角形穴などの多角形穴であればよく、角の数は任意である。
そして、角穴84cから切欠き84bが延ばされる。角穴84cの一辺の長さ(図では横幅)は切欠き84bの幅と同じであることが望ましいが、切欠き84bの幅と異なっていてもよい。
【0042】
図6(b)に示すように、底板82は、想像線で示すナット65より若干大径の丸穴82aを有し、この丸穴82aから延びる切欠き82bを有する。この切欠き82bはボールねじ60が通過し得る幅とされ、背面41Bへ開口する。
【0043】
なお、丸穴82aは、図6(e)に示すような角穴82cに変更してもよい。
角穴82cは正方形穴や六角形穴や八角形穴などの多角形穴であればよく、角の数は任意である。
そして、角穴82cから切欠き84bが延ばされる。
【0044】
図6(c)に示すように、ナット65は、筒部66と、この筒部66の下端から水平に張出す鍔部67とを有する。
ボールねじ60の溝とナット65の溝との間に鋼製ボール68が介在するため、ボールねじ60を回すと極めて滑らかにナット65が上又は下へ移動する。ただし、鋼製ボール68は寿命時間が決まっている消耗品である。
【0045】
図5において、底板82に下から鍔部67を当てる。この状態でボルト87で、ナット65を底板82に固定する。
結果、図4に示すように、ナット65の大部分が、左右一対の側板83の間に収納される。
また、カバー85の切欠き85aを通してボールねじ60が見える。
【0046】
[カバーの役割]
図1(a)で説明したケーブル32は、図2に示すように、中空軸27を通って枠体40内に敷設される。ケーブル32とボールねじ60の接触は避けなければならない。そこで、カバー85を立て、このカバー85でケーブル32とボールねじ60の接触を防止するようにした。
【0047】
[ねじ落下防止機構の詳細]
図8に示すように、ねじ落下防止機構90は、ベース12に取付けられる門型ステー91と、この門型ステー91に収納され且つボールねじ60の下端にボルト96で固定されるプロペラ部材97と、このプロペラ部材97の下方に配置されるプレート98と、このプレート98の上面に設けられるストッパ片99とを備える。
【0048】
好ましくは、ボルト96の頭の幅より広幅の横溝98aを、プレート98に設ける。横溝98aの存在により、プレート98の抜き差しが容易になるからである。中央穴を有すると尚よい。
【0049】
[門型ステーの詳細]
門型ステー91は、構造は任意であるが、好ましくは、サブベース13(又はベース12)にボルト92で止められる左右一対の脚部93と、これらの脚部93の上部(又は上端)に掛け渡され脚部93にボルト94で止められるクロス部95とからなる。
以上の構成からなるねじ落下防止機構90の正面図は、図7で示される。
【0050】
[プレートの詳細]
図9(b)に示すように、プレート98は、中央穴を有する略正方形の板であり、左右一対の脚部93にボルト101で止められている。
プレート98には、想像線で示すプロペラ部材97の旋回円102に沿って1個又は複数個(この例では4個)のストッパ片99が配置される。
【0051】
ストッパ片99は、単なる突起で差し支えないが、図8に示すように、プレート98に半没状態且つ取外し可能に取付ける。旋回中のプロペラ部材97が、仮に落下すると、プロペラ部材97の羽根(図9(a)、(b)、符号97a)が強くストッパ片99に衝突する。半没状態であれば、ストッパ片99は大きな衝突力を受け止め得る。
また、取外し可能であれば、ストッパ片99はプレート98とは別の材質(高硬度材など)とすることができ、ストッパ片99の耐久性を高めることができる。加えて、取外し可能であれば、プレート98はそのままで、傷んだストッパ片99だけを交換することができる。
【0052】
[下方ベアリング]
図2において、ボールねじ60を支える上方ベアリング55は必須であるが、ナット65での支持作用が期待できるため図8に示す下方ベアリング105を設けるか否かは任意である。
しかし、ボールねじ60の下端の心ずれ(ボールねじ60の下端が図面で左右や表裏方向に振れること)を、積極的に防止することがさらに望まれ、この場合には下方ベアリング105を設ける。
下方ベアリング105の種類、構造は任意に選択できるが、この例では、自動調心式軸受を採用した。
【0053】
図8に示すように、下方ベアリング105は、例えば、フランジが付いた軸受箱106と、この軸受箱106に収納される玉軸受107とからなる。玉軸受107の外輪は、外周面が球面である。この球面により、自動調心作用が発揮される。
【0054】
すなわち、ボールねじ60は横荷重を受けると、僅かではあるが湾曲になる。この湾曲により、ボールねじ60の下端部は、図面左又は右へ傾く。このときに、軸受箱106内を玉軸受107がボールねじ60に倣って傾く。この倣って傾く作用が、自動調心作用と呼ばれる。
【0055】
このような下方ベアリング105は、門型ステー91のクロス部95を利用して、このクロス部95に載せて、ボルト108で固定する。
そして、ボールねじ60において、下方ベアリング105より下へ突き出た延長部63に、プロペラ部材97を嵌め、ボルト96で固定する。
【0056】
[プロペラ部材]
図9(a)に示すように、プロペラ部材97は、4本の羽根97aを有する。羽根97aの数は任意であり、2本や3本であってもよい。
プロペラ部材97の中央に多角形穴97bが設けられている。ボールねじの延長部63は多角形断面を呈する。多角形穴97bへ延長部63を嵌めることができる。多角形は四角形の他、六角形、八角形でもよい。
【0057】
[ねじ落下防止機構の作用]
図8において、ストッパ片99とプロペラ部材97との間に数mm程度の隙間tが確保されている。この位置でプロペラ部材97は鉛直軸回りに回転可能となる。この状態でポジショナー装置10の位置決め作用が継続される。
【0058】
図2において、ボールねじ60がナット65より上の位置で破断すると、破断箇所から下のボールねじ60はナット65で案内されつつ回転しながら落下し始める。すなわち、ナット65に固定されたブラケット80を介して支持される昇降腕20およびターンテーブル30の自重によりボールねじ60が回転しながら落下する。
【0059】
すると、図8において、隙間tは、徐々に小さくなり、ゼロを超えてマイナスになる。
すると、図9(b)において、プロペラ部材97に羽根97aの少なくとも1つが、ストッパ片99に衝突する。衝突すると、プロペラ部材97は回転が止められ、ボールねじ(図8、符号60)は、それ以上の落下が阻止される。
【0060】
図8において、仮に、ねじ落下防止機構90が無ければ、ボールねじ60は少なくとも数十mmは落下する。すると、昇降腕20やターンテーブル30や下方ベアリング105が傷むなどの不具合が起こる。
対して、図8の構造であれば、ボールねじ60は数mm程度落下するだけであり、昇降腕20やターンテーブル30や下方ベアリング105が傷むなどの不具合は回避される。
【0061】
[ポジショナー装置の作用]
図1(a)において、ターンテーブル30に載せられる加工対象物は、ターンテーブル30の中心を通る回転軸Ax1回りに回され、回転板22の中心を通る水平軸Ax2回りに回され、鉛直軸Ax3に沿って上又は下へ移動される。よって、加工対象物は三次元的に移動され、位置決めされる。
【0062】
[ボールねじの取外し]
次に、ボールねじ60の交換工事における、ボールねじ60の取外し手順を、図10に基づいて説明する。
図10のステップ番号(以下、STと略記する。)01にて、支え棒をベースの所定位置に固定する。具体的には、図1(b)に示すように、支え棒15を座14に載せてボルト16で固定する。この例では、支え棒15を2本用意したが1本または複数本用意してもよく、座14の一面を覆うように支え台を載せてもよい。
【0063】
次に、昇降腕20を下げて支え棒15に載せる(ST02)。支え棒15に昇降腕20を預けることで、ボールねじの負担を大幅に軽減することができる。また、ボールねじ60を引き抜く際にブラケット80や昇降腕20を取り外さずに済むので、ボールねじ60の交換作業に係る作業工数を削減できる。
次に、図1(c)に示す背面カバー42を外す(ST03)。
【0064】
ST03が終了した時点では、図2に示す上方ベアリング55と、ブラケット80と、ねじ落下防止機構90とが、ボールねじ60の取外しを妨げている。
そこで、ST04にて、ねじ落下防止機構90を撤去する。
【0065】
具体的には、図8において、ボルト101を外してプレート98を図面表側へ引き抜く。
次に、ボールねじ60からボルト96を外してプロペラ部材97を下げ、図面表側へ引き抜く。
【0066】
次に、ボルト94を外して、クロス部95から脚部93をフリーにする。
次に、ボルト92を外して左の脚部93を左に移動し、右の脚部93を右に移動しつつ、左右の脚部93を撤去する。
【0067】
次に、クロス部95と共に下方ベアリング105を下げ、下方ベアリング105をボールねじ60から抜く。そして、クロス部95と共に下方ベアリング105を撤去する。
以上により、図2において、ねじ落下防止機構90が撤去された。
【0068】
図10のST05にて、ブラケットとナットの連結を解き、ナットを下げる。
具体的には、図4において、ボルト87を緩めて、底板82から外す。すると、ナット65は自重によりボールねじ60に沿って自由に回転しつつ下がる。この下がりにより、ナット65は底板82から下へ完全に抜ける。
【0069】
次に、図10のST06にて、カップリングとボールねじの連結を解く。
具体的には、図3において、止めねじ73を緩める。
次に、上ロックナット72をカップリング51に当たる(又は、カップリング51の近傍に達する)まで緩める(ST07)。
【0070】
次に、下ロックナット71をゆっくりと回す(ST08)。すると、中径部61が内輪56から抜けるようにして、ボールねじ60が徐々に下がる。
下がった時点で、上ロックナット72をボールねじ60から外す(ST09)。
さらに、下ロックナット71を緩めてボールねじ60から外す(ST10)。
これで、ボールねじ60が上横桁43から外れる。
【0071】
この時点では、図2において、ねじ落下防止機構90及びナット65は撤去され、ボールねじ60は上端が上横桁43より下位位置にある。
そこで、図10のST11にて、ボールねじを横に移送しつつブラケットから外す。
具体的には、図4において、ナット65が撤去されているため、ボールねじ60を図面表側へ引く。すると、ボールねじ60は切欠き82b、84b、85aを通過する。結果、ブラケット80からボールねじ60が外れる。
【0072】
図2において、ボールねじ60を、枠体40の背面の開口部44から取出す(図10、ST12)。
新品のボールねじ60は、以上に述べた順とは逆の手順により、セットすることができる。
【0073】
図2において、ポジショナー装置10の高さをH2とする。ボールねじ60の取外し作業は、この高さH2の範囲で行われる。H2は例えば2m程度であるから、作業は低所作業となる。低所作業であれば、格別な足場は必要がない。また、天板45と減速機47と昇降用モータ48とは、外す必要がない。
よって、本発明によれば、ボールねじ60の取外しが容易で、ボールねじ60の交換作業に係る作業コストを低減することができるポジショナー装置10が提供される。
【0074】
以上に述べたポジショナー装置10は、図1(a)で説明したように、回転軸Ax1と、水平軸Ax2と、鉛直軸Ax3とに基づいて、加工対象物を回転し、旋回し、昇降することができる3軸ポジショナー装置である。
しかし、加工対象物の形状、構造や加工の種類によっては、4軸ポジショナー装置や5軸ポジショナー装置が必要にある。そこで、5軸ポジショナー装置の具体例を、次に説明する。
【0075】
[横行き軸部材と走行軸部材とが付加されたポジショナー装置]
図11に示すように、平面視で互いに直交する軸を横行き軸Ax4と走行軸Ax5と定め、走行軸Ax5は昇降腕20に沿って延び、横行き軸Ax4は昇降腕20に直角に延びるように定める。
枠体40の上端に、さらに横行き軸Ax4に沿って延びる横行き軸部材110を備える。
【0076】
好ましくは、横行き軸部材110の一端及び他端の上下変位を、支柱111で抑える。支柱111の形態、形状、構造は任意である。
【0077】
さらに、横行き軸部材110に横行き軸Ax4に沿って移動する第1スライダ112を備え、この第1スライダ112に走行軸Ax5に沿って延びる走行軸部材120を備える。
この走行軸部材120に走行軸Ax5に沿って移動する第2スライダ121を備え、この第2スライダ121に作業ロボット122を備える。
以上により、横行き軸部材110と走行軸部材120とが付加されたポジショナー装置10が得られる。
【0078】
[第1スライダ]
図12(a)に示すように、第1スライダ112は、横行き軸部材110の正面に敷設された第1レール113、及び第1レール113で案内される第1スライドブロック114を介して、移動自在に横行き軸部材110に取付けられる。
【0079】
横行き軸部材110から第1レール113が外れることや、第1レール113から第1スライドブロック114が外れることや、第1スライドブロック114から第1スライダ112が外れることがないように、各要素間の取付け構造は決定される。しかし、さらなる対策を講じることは、より好ましいことである。
そこで、第1スライダ112と横行き軸部材110との間に、第1スライダ112が横行き軸部材110から落下することを防止する第1落下防止部材115を備える。
【0080】
[第1落下防止部材]
第1落下防止部材115の構造は任意であるが、例えば、横行き軸部材110の上面と下面とに各々敷設する角バー116と、第1スライダ112から延びて先端が角バー116を回り込むような第1フック117とで構成する。
【0081】
なお、角バー116は、必須ではなく、横行き軸部材110に穿った溝であってもよい。
ただし、溝は横行き軸部材110の強度を低下させる要素となる。一方、角バー116は横行き軸部材110の強度を高める要素となるため、角バー116がより好ましい。
【0082】
第1フック117と角バー116との間に、通常時は摺動可能かつ落下した時に引っかかる程度のクリアランスC1が確保されている。あるいは、横行き軸部材110に穿った溝と第1フック117との間にクリアランスが確保されている。
通常は、クリアランスC1が確保されているため、第1スライダ112の移動は妨げられずに許容される。第1スライダ112が横行き軸部材110から離れたとき(外れそうになったとき)、クリアランスC1がゼロになり、それ以上の第1スライダ112の落下(外れ)が防止(抑制)される。
【0083】
すなわち、第1落下防止部材115は、好ましくは、通常は第1スライダ112の移動を許容し、横行き軸部材110から第1スライダ112が離れたときに第1スライダ112の落下を抑制ことができるように第1スライダ112から横行き軸部材110へ延ばした第1フック117である。
【0084】
[第2スライダ]
図12(b)に示すように、走行軸部材120の下面に帯鋼123を貼り、この帯鋼123に第2レール124を敷設し、この第2レール124に第2スライドブロック125を移動自在に嵌め、この第2スライドブロック125に第2スライダ121を取付ける。
すなわち、第2スライダ121は、例えば、帯鋼123、第2レール124及び第2スライドブロック125を介して、移動自在に走行軸部材120に取付けられる。
【0085】
なお、帯鋼123は、一部分が走行軸部材120からはみ出るようにして走行軸部材120に貼られている。
そして、このような第2スライダ121においても、第2落下防止部材126を備えることが望まれる。
【0086】
[第2落下防止部材]
第2落下防止部材126の構造は任意であるが、例えば、帯鋼123のはみ出し部分123aと、第2スライダ121から延びて先端が帯鋼123のはみ出し部分123aを回り込むような第2フック127とからなる。
【0087】
なお、帯鋼123及びはみ出し部分123aは、必須ではなく、走行軸部材120に穿った溝であってもよい。
ただし、溝は走行軸部材120の強度を低下させる要素となる。一方、帯鋼123は走行軸部材120の強度を高める要素となるため、帯鋼123がより好ましい。
【0088】
第2フック127と帯鋼123との間に、通常時は摺動可能かつ落下した時に引っかかる程度のクリアランスC2が確保されている。あるいは、走行軸部材120に穿った溝と第2フック127との間にクリアランスが確保されている。
通常は、クリアランスC2が確保されているため、第2スライダ121の移動は妨げられずに許容される。第2スライダ121が走行軸部材120から離れたとき(外れそうになったとき)、クリアランスC2がゼロになり、それ以上の第2スライダ121の落下(外れ)が防止(抑制)される。
【0089】
すなわち、第2落下防止部材126は、好ましくは、通常は第2スライダ121の移動を許容し、走行軸部材120から第2スライダ121が離れたときに第2スライダ121の落下を抑制ことができるように第2スライダ121から走行軸部材120へ延ばした第2フック127である。
【0090】
5軸のポジショナー装置10に、以上に述べた第1落下防止部材115と第2落下防止部材126の両方を備えることが望ましいが、何方か一方のみを備えてもよい。
【0091】
[ブラケットの変更例]
図4で説明したブラケット80の変更例を、図13(a)~(c)に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、補強板88を、底板82の背面側とブリッジ板84の背面側とに渡し、ボルト89で固定した。その他は、図4と同じであるため、図4の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
補強板88は、ボールねじ60を交換するときに取外され、それ以外のときは取付けられたままとされる。
【0092】
図13(b)に示すように、ブリッジ板84に設けた切欠き84bの開口が補強板88で塞がれつつ補強されている。
ブリッジ板84に曲げ力やねじれ力が加わっても、切欠き84bの開口が開くことはない。
【0093】
図13(c)に示すように、底板82に設けた切欠き82bの開口が補強板88で塞がれつつ補強されている。
底板82に曲げ力やねじれ力が加わっても、切欠き82bの開口が開くことはない。
この変形例によれば、箱型ブラケット81の剛性をさらに高めることができる。
【0094】
以上の述べた事項に基づき、本発明は次のように纏めることができる。
ベース12と、このベース12に立てられ上横桁43が渡されている枠体40と、前記上横桁43に回転自在に取付けられ鉛直軸Ax3沿って下へ延ばされるボールねじ60と、このボールねじ60に嵌まるナット65と、このナット65に固定されるブラケット80と、このブラケット80から横に前記枠体40の正面41Fを貫通して外まで延ばされ且つ前記ブラケット80に水平軸Ax2回りに旋回可能に支持されている昇降腕20とを備え、
前記ボールねじ60が回されると前記ナット65が昇降し、このナット65と共に前記ブラケット80及び前記昇降腕20が昇降することで、前記加工対象物を多次元的に移動し位置決めするポジショナー装置10であって、
前記ブラケット80は、前記ボールねじ60が通過し得る幅の切欠き82bを有し、この切欠き82bは前記枠体40の背面41B側へ開口しており、
前記ボールねじ60を前記切欠き82bを通して前記枠体40の背面41Bから外へ取出すことができるようにした。
【0095】
好ましくは、前記ボールねじ60は、前記上横桁43に設けた上方ベアリング55に下から差し込み前記上方ベアリング55の内輪56に固定される形態で前記上横桁43に取付けられ、
前記ボールねじ60は、このボールねじ60の上に配置される駆動源49で回され、
この駆動源49は、カップリング51を介して前記ボールねじ60に連結されるようにする。
【0096】
上方ベアリング55の内輪56に、ボールねじ60を回転自在に固定し、このボールねじ60を上横桁43に吊り下げることができる。また、駆動源49とボールねじ60との連結を解除することで、ボールねじ60を下へ抜くことができる。
【0097】
好ましくは、前記ベース12に、門型ステー91が取付けられ、
この門型ステー91は、前記ベース12にボルト92で止めされる左右一対の脚部93と、これらの脚部93の上部に掛け渡され前記脚部93にボルト94で止めされるクロス部95とを有し、
前記クロス部95に、前記ボールねじ60を上から差し込むことのできる下方ベアリング105を固定する。
【0098】
下方ベアリング105で、ボールねじ60の心ずれを抑制することができる。一対の脚部93を外すことで、ボールねじ60から下方ベアリング105を下へ抜くことができる。
【0099】
好ましくは、前記ボールねじ60は、前記下方ベアリング105より下へ延びる延長部63を有し、
この延長部63に、羽根97aを有するプロペラ部材97を取付け、
このプロペラ部材97の下位置にて前記左右一対の脚部93に、プレート98を渡し、
このプレート98は、上面に前記プロペラ部材97が落下してきたときに前記プロペラ部材97の旋回を抑制するストッパ片99を有し、
前記プロペラ部材97が落下する前は、前記ストッパ片99と前記プロペラ部材97とに高さ方向で隙間tを保つようにする。
【0100】
仮に、ボールねじ60が折れると、プロペラ部材97は回転しながら落下する。プロペラ部材97が落下すると、それの羽根97aがストッパ片99に当たりプロペラ部材97の旋回、及びボールねじ60の回転が抑制される。結果、ボールねじ60の過度な落下が防止される。
【0101】
好ましくは、前記延長部63は断面(平面断面)が多角形断面であり、前記プロペラ部材97は前記多角形断面に嵌まる多角形穴97bを有する。前記プロペラ部材97は、前記延長部63に嵌められた後に、ボルト96で固定する。
【0102】
確実に、プロペラ部材97をボールねじ60と一緒に回すことができる。
【0103】
好ましくは、前記ベース12は、前記昇降腕20を仮に支える支え棒15を受ける座14を有する。
【0104】
ボールねじ60を外す際に、座14に支え棒15を載せて固定する。昇降腕20の重量を支え棒15で受けさせる。結果、ボールねじ60にかかる負荷を無くすることができ、ボールねじ60を容易に外すことができる。
【0105】
好ましくは、前記ナット65は、筒部66と、この筒部66の下端から水平に張出す鍔部67とを有し、
前記ブラケット80は、前記筒部66を収納し、底に前記鍔部67を当ててボルト87で固定することができる箱型ブラケット81であり、この箱型ブラケット81に前記切欠き82bを設ける。
【0106】
箱型ブラケット81は剛性が高い。高剛性の箱型ブラケット81で、重い昇降腕20を安定的に支えることができる。加えて、切欠き82bの存在により、箱型ブラケット81からボールねじ60を横へ移動しつつ外すことができる。
【0107】
好ましくは、前記枠体40の背面41Bは、背面カバー42で塞がれ、前記背面カバー42を取外すと、前記ボールねじ60の長さに対応する縦長の開口部44が現われるようにし、この開口部44に中間桟を設けないようにする。
【0108】
枠体40の背面41Bには邪魔な物が無いため、背面41Bの開口部44からボールねじ60を容易に取出すことができる。
【0109】
好ましくは、前記箱型ブラケット81は、上面に前記ボールねじ60に沿って延びるカバー85を備え、このカバー85にも切欠き85aを設ける。
【0110】
箱型ブラケット81の近傍にケーブル32が布設され、このケーブル32がボールねじ60に接近する虞がある場合、カバー85でケーブル32とボールねじ60を分離することができる。
【0111】
好ましくは、前記ブラケット80と前記ナット65の連結を解く工程(図10、ST05)と、
前記上横桁43と前記ボールねじ60の連結を解く工程(図10、ST06~ST10)と、
前記ボールねじ60を横に移動しながら前記ブラケット80から外す工程(図10、ST11)と、
前記枠体40の背面41Bから前記ボールねじ60を取出す工程(図10、ST12)とからなる、ボールねじ取出し方法を提供する。
【0112】
ボールねじ60を下げて横に移動することで、ボールねじ60の取出しが完了する。
ボールねじ60の交換作業に係る作業コストを低減することができるボールねじ60の取出し方法が提供される。
【0113】
尚、本発明のポジショナー装置10は、金属加工ラインの他、溶接ラインや組立ラインに適用することは差し支えない。
【0114】
また、請求項1の「切欠き」は、実施例に記載のブラケット80の底板82の切欠き82bの他、ボールねじ60を背面側に引き抜き可能な分離構造、例えば、固定ブロックなどを外すことでボールねじ60を背面側に引き抜ける、すべてのブラケット構造を含む。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、作業ロボットと併せて使用するポジショナー装置に好適である。
【符号の説明】
【0116】
10…ポジショナー装置、12…ベース、14…座、15…支え棒、20…昇降腕、40…枠体、41F…正面、41B…背面、42…背面カバー、43…上横桁、44…開口部、49…駆動源、51…カップリング、55…上方ベアリング、56…内輪、60…ボールねじ、63…延長部、65…ナット、66…筒部、67…鍔部、80…ブラケット、81…箱型ブラケット、82…底板、82a…丸穴、82b…切欠き、83…側板、84…ブリッジ板、84a…半円穴、84b…切欠き、85…カバー、85a…切欠き、90…ねじ落下防止機構、91…門型ステー、93…脚部、95…クロス部、96…ボルト、97…プロペラ部材、97a…羽根、97b…多角形穴、98…プレート、99…ストッパ片、105…下方ベアリング、110…横行き軸部材、112…第1スライダ、115…第1落下防止部材、117…第1フック、120…走行軸部材、121…第2スライダ、122…作業ロボット、126…第2落下防止部材、127…第2フック、H2…高さ、C1、C2…クリアランス、t…隙間、Ax1…回転軸、Ax2…水平軸、Ax3…鉛直軸、Ax4…横行き軸、Ax5…走行軸。
【要約】
【課題】ボールねじ60の取外しが容易で、ボールねじ60の交換作業に係る作業コストを低減することができるポジショナー装置を提供する。
【解決手段】ポジショナー装置は、ボールねじ60と、ナット65と、このナット65を収納するブラケット80を備える。ブラケット80は、ボールねじ60が通過し得る幅の切欠き82bを有し、この切欠き82bは図面表側へ開口している。ボルト87を外し、ナット65をブラケット80より下へ外すことで、ボールねじ60を図面表側へ取出すことができる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15