IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤田 文彦の特許一覧

<>
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図1
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図2
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図3
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図4
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図5
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図6
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図7
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図8
  • 特許-赤道儀用極軸合わせ支援装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】赤道儀用極軸合わせ支援装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 1/00 20060101AFI20241106BHJP
   G02B 23/16 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01C1/00 B
G02B23/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024118420
(22)【出願日】2024-07-24
【審査請求日】2024-08-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521382986
【氏名又は名称】藤田 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 文彦
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-33829(JP,A)
【文献】特開平8-201703(JP,A)
【文献】実開昭54-123844(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00- 1/14
5/00-15/14
G02B 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の支脚が120°ピッチで配された三脚に搭載される赤道儀の極軸合わせを支援する赤道儀用極軸合わせ支援装置であって、
前記3本の支脚は、それぞれ天体観測の際に、天の極軸の方向に配される極軸側支脚、該極軸側支脚より東方に配される東側支脚、および、前記極軸側支脚より西方に配される西側支脚からなり、
前記東側支脚及び前記西側支脚がライン上に配される東西線を示す水平ラインと、前記極軸側支脚がライン上に配される南北線を示す垂直ラインとのライン付けが可能なクロスラインレーザ光を利用して、前記赤道儀の極軸合わせを支援する装置本体を有し、
該装置本体は、
地磁気を利用して方位を計る電子コンパスと、
水平を基準とした上下方向の角度を計る角度計と、
前記電子コンパスを利用して、前記水平ラインと前記垂直ラインとが直交する線状部分の光軸を天の極の方位に向けた状態で、前記クロスラインレーザ光を照射口から照射するクロスラインレーザ発振器とを具備したことを特徴とする赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【請求項2】
前記赤道儀に取り付けられ、かつ前記水平ラインとの位置合わせ用の横線と、前記垂直ラインとの位置合わせ用の縦線とを十字状に配置して、前記クロスラインレーザ光の的となる十字ターゲットが形成されたレーザ照射ガイドを有したことを特徴とする請求項1に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【請求項3】
前記レーザ照射ガイドは、前後方向に長く、かつこの前後方向が赤経軸と平行になるように前記赤道儀に取り付けられて、上面と左,右側面とがそれぞれ後方に向かって徐々に広がった台形体で、
前記レーザ照射ガイドの前面には、前記十字ターゲットが形成される一方、前記レーザ照射ガイドの上面には、前記十字ターゲットの縦線を延長した縦線延長ラインが形成されるとともに、前記レーザ照射ガイドの左,右側面には、前記十字ターゲットの横線を延長した横線延長ラインがそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項2に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【請求項4】
前記赤道儀の赤経体の外周面に、それぞれ赤経軸と平行で、かつ前記クロスラインレーザ光の水平ライン及び垂直ラインと位置合わせをするための複数本のガイド線が、前記赤経体の周方向へ所定間隔をあけて表示されたことを特徴とする請求項1に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三脚に搭載された赤道儀において、極軸を地軸と平行にセッティングする極軸合わせを、クロスラインレーザ光を利用して支援するための赤道儀用極軸合わせ支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天体望遠鏡(鏡筒)の架台として、3本の支脚が120°ピッチで配された三脚上に搭載される赤道儀が知られている(例えば、特許文献1など)。この赤道儀は、3本の支脚を有する三脚の上部台(雲台)に赤経体と赤緯体とを介して天体望遠鏡を載置したものである。なお、3本の支脚は、極軸側支脚(北半球では北側支脚、南半球では南側支脚)と、西側支脚と、東側支脚とからなる。以下、ここでは北半球での天体観測を例とする。
天体観測時には、赤経体の中心を通る極軸(赤径軸)と、赤経体の先端部に軸支された赤緯体の中心を通る赤緯軸の2軸を調整しながら、天体望遠鏡により所望の天体を視界に導入し、その後、日周運動(地球の自転速度)に合わせて天体望遠鏡を極軸の回りにモータ回転させることで、所望の天体を自動追尾する。
その際、天体望遠鏡にカメラを装着すれば、所望の天体の追尾撮影が可能となる。
【0003】
ところで、赤道儀を利用した天体観測では、赤道儀の極軸を地球の自転軸(地軸)と平行にセッティングする“極軸合わせ”を行う必要がある。極軸合わせでは、まず、天体望遠鏡により北天を観察し、北極星が赤緯体の一端部に装着され、かつ赤経軸と平行に設置された天体望遠鏡の視界中心から所定距離に位置するように、赤道儀の方位および高度調整を行う。
なお、赤道儀用の三脚は、例えば、上部台の上面から突出した水平支点ピンを介して、3本の支脚のうちの1本(以下、北側支脚)が、赤道儀搭載時に、平面視して赤緯体の極軸上に配されるように構成されている。南半球での天体観測時には、北側支脚ではなく南側支脚がこの極軸上に配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-201703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な赤道儀のセッティング時には、方位磁石を用いて、赤道儀の(極軸の)方位を真北に向ける必要がある。
しかしながら、赤道儀は電動モータを内蔵しており、かつ赤道儀を構成する多数の金属部品(ねじを含む)も、帯磁しているものがある。
そのため、赤道儀の周辺で方位磁石を使用すれば、これら電動モータや帯磁部品の磁界の影響で、極軸の方位を知ることは困難であった。これにより、例えば、使用者は手持ちしたり、離れた場所に置いた方位磁石を見ながら、北側支脚を真北に向ける調整作業が面倒で、その方位の調整精度も低かった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、120°ピッチの三脚に搭載された赤道儀は、天体観測時に、クロスラインレーザ光を利用して、2本の支脚を真東と真西とに向ければ、残り1本の支脚(北側支脚)は必ず真北に向けられることに着目した。
【0007】
すなわち、天体観測時、角度計によって水平出しされた装置本体において、まず電子コンパスを利用して、光軸を天の極軸(以下、単に極軸という場合がある)の方向に向けて、クロスラインレーザ発振器から赤道儀の設置面にクロスラインレーザ光を照射する。これにより、この設置面には東西線を示す水平ラインと、南北線を示す垂直ラインとがそれぞれ投射される。その後、水平ライン上に三脚の東側支脚及び西側支脚を配置する一方、垂直ライン上に極軸側支脚を配置すれば、上述した課題は全て解消されることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
また、三脚に搭載された赤道儀の極軸合わせを行う際には、まず赤道儀に取り付けられたレーザ照射ガイドの十字ターゲットに向けて、光軸が極軸と平行なクロスラインレーザ光を照射する。その後、十字ターゲットの横線にクロスラインレーザ光の水平ラインを位置合わせする一方、十字ターゲットの縦線にクロスラインレーザ光の垂直ラインを位置合わせすれば、より高精度な赤道儀の極軸合わせの支援を行うことができることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたもので、電動モータ付きの赤道儀の磁界の影響を受けることなく、クロスラインレーザ光を利用して、簡単かつ高精度に、三脚の極軸側支脚を極軸(北半球では真北、南半球では真南)方向に向ける一方、東,西側支脚を対応する真東又は真西に向けることで、赤道儀の極軸合わせを支援できる赤道儀用極軸合わせ支援装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、このように三脚に搭載された赤道儀の極軸合わせを行う際に、光軸の方位を極軸としたままのクロスラインレーザ光を、レーザ照射ガイドの十字ターゲットに照射することで、より高精度な赤道儀の極軸合わせの支援ができる赤道儀用極軸合わせ支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、3本の支脚が120°ピッチで配された三脚に搭載される赤道儀の極軸合わせを支援する赤道儀用極軸合わせ支援装置であって、前記3本の支脚は、それぞれ天体観測の際に、天の極軸の方向に配される極軸側支脚、該極軸側支脚より東方に配される東側支脚、および、前記極軸側支脚より西方に配される西側支脚からなり、前記東側支脚及び前記西側支脚がライン上に配される東西線を示す水平ラインと、前記極軸側支脚がライン上に配される南北線を示す垂直ラインとのライン付けが可能なクロスラインレーザ光を利用して、前記赤道儀の極軸合わせを支援する装置本体を有し、該装置本体は、地磁気を利用して方位を計る電子コンパスと、水平を基準とした上下方向の角度を計る角度計と、前記電子コンパスを利用して、前記水平ラインと前記垂直ラインとが直交する線状部分の光軸を天の極の方位に向けた状態で、前記クロスラインレーザ光を照射口から照射するクロスラインレーザ発振器とを具備したことを特徴とする赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
【0012】
ここでいう赤道儀用極軸合わせ支援装置とは、天体観測時、赤道儀の極軸合わせに伴い、電子コンパスを利用して、主に、三脚の極軸側支脚(北半球での北側支脚、南半球での南側支脚)を天の極(北半球では真北、南半球では真南)の方位に向けるとともに、東側支脚を極軸側支脚より東方(真東)に配置し、西側支脚を極軸側支脚より西方(真西)に配置する作業を支援するための装置である。
【0013】
“極軸合わせ”とは、赤道儀の極軸である赤経軸を、天の極軸(略地球の自転軸(地軸))と一致させる作業をいう。
なお、例えば磁北と真北(磁南と真南の場合も同じ)との間には、場所や時間によって所定のずれ(偏角)が生じている。そのため、電子コンパスにより真北(または真南)を求める際には、当然ながら磁北(または磁南)の方角から偏角分の補正が必要となる。
【0014】
三脚の種類は、上部台(雲台)の周りに3本の支脚(極軸側支脚、東側支脚および西側支脚)が120°ピッチで配されたものであれば任意である。
各支脚としては、例えば、テレスコピック方式などの各種の伸縮構造を有して、高さ(長さ)調整可能なものを採用してもよい。
極軸側支脚とは、北半球での天体観測時(極軸合わせ時)に、真北に向けられる北側支脚、または、南半球での天体観測時に、真南に向けられる南側支脚である。
【0015】
東側支脚とは、3本の支脚のうち、南半球または北半球での天体観測時に、真東(極軸側支脚より東方)に配される支脚である。
西側支脚とは、南半球または北半球での天体観測時に、真西(極軸側支脚より西方)に配される支脚である。なお、3本の支脚は、いずれを軸側支脚、東側支脚、西側支脚としてもよい。
赤道儀の種類は、日周運動(地球の自転速度)に合わせて天体望遠鏡を天の極軸(以下、単に極軸という場合がある)の回りにモータ回転させることで、所望の天体を自動追尾するものであれば限定されない。
【0016】
装置本体は、少なくとも電子コンパスと、角度計と、クロスラインレーザ発振器とを備えていればよい。これらを収納する本体ケースの素材、形状及びサイズ等は任意である。
電子コンパスの種類は任意である。例えば、3軸マグネットメータと2軸傾斜センサを組合せた一体化型のものでもよい。電子コンパスを利用して、例えば、クロスラインレーザ光の光軸(レーザの照射口)の方向を、天の極軸の方向等に向ける。
角度計の種類は任意である。例えば、各種のデジタル角度計等でもよい。この角度計を利用して、例えば装置本体の水平出し等を行う。
【0017】
クロスラインレーザ発振器で使用されるレーザの種類は任意である。例えば、各種の気体レーザ(COレーザ、エキシマレーザ等)、各種の固体レーザ(ルビーレーザ、Nd:YAGレーザ等)、各種の液体レーザ(色素レーザ等)、各種の半導体レーザ(レーザダイオード等)を採用することができる。
クロスラインレーザ光の光軸とは、クロスラインレーザ発振器から照射された水平ラインと垂直ラインとが交わることで現出した、クロスラインレーザ光の照射方向に延びる光のラインである。
【0018】
また、請求項2に記載の本発明は、前記赤道儀に取り付けられ、かつ前記水平ラインとの位置合わせ用の横線と、前記垂直ラインとの位置合わせ用の縦線とを十字状に配置して、前記クロスラインレーザ光の的となる十字ターゲットが形成されたレーザ照射ガイドを有したことを特徴とする請求項1に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
レーザ照射ガイドの素材、形状及びサイズは限定されない。例えばレーザ照射ガイドの形状は、板状、ブロック状、ボックス状でもよい。
また、十字ターゲットの素材、形状及びサイズも任意である。
さらに、十字ターゲットに配される横線及び縦線の幅も任意である。
【0019】
さらに、請求項3に記載の本発明は、前記レーザ照射ガイドは、前後方向に長く、かつこの前後方向が赤経軸と平行になるように前記赤道儀に取り付けられて、上面と左,右側面とがそれぞれ後方に向かって徐々に広がった台形体で、前記レーザ照射ガイドの前面には、前記十字ターゲットが形成される一方、前記レーザ照射ガイドの上面には、前記十字ターゲットの縦線を延長した縦線延長ラインが形成されるとともに、前記レーザ照射ガイドの左,右側面には、前記十字ターゲットの横線を延長した横線延長ラインがそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項2に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
【0020】
ここでいう台形体とは、例えば、台形ボックス(台形容器)や台形柱等である。
レーザ照射ガイドの赤道儀上の取り付け位置は任意である。例えば、赤経体の外周面でも、赤緯体の先端部に天体望遠鏡の鏡筒をクランプするための筒受ユニットの望遠鏡取り付け面でもよい。
縦線延長ライン及び横線延長ラインの幅は任意である。例えば、十字ターゲットの対応する横線又は縦線の幅に合わせてもよい。
【0021】
さらにまた、請求項4に記載の本発明は、前記赤道儀の赤経体の外周面に、それぞれ赤経軸と平行で、かつ前記クロスラインレーザ光の水平ライン及び垂直ラインと位置合わせをするための複数本のガイド線が、前記赤経体の周方向へ所定間隔をあけて表示されたことを特徴とする請求項1に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
【0022】
各ガイド線としては、例えば、透明又は非透明のシールにプリントされたものでも、赤経体の外周面に直接線引き又は刻設されたものでもよい。
ガイド線の本数は任意である。
隣接するガイド線の間隔も任意である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の本発明にあっては、例えば、北半球での天体観測時において、小型三脚等に搭載された装置本体を角度計により水平出しし、その後、電子コンパスを用いて、この装置本体のクロスラインレーザ光の照射口を真北に向ける。
その後、クロスラインレーザ発振器から赤道儀の設置面に向けてクロスラインレーザ光を照射する。これにより、設置面には、東西線を示す水平ラインと、南北線を示す垂直ラインとがそれぞれ投射される。
次いで、垂直ライン上の光軸より北方に三脚の極軸側支脚を配置する一方、水平ライン上の光軸より東方に三脚の東側支脚を配置するとともに、水平ライン上の光軸より西方に西側支脚を配置する。
【0024】
これにより、電動モータ付きの赤道儀の磁界の影響を受けることなく、クロスラインレーザ光を利用して、簡単かつ高精度に三脚の極軸側支脚の方位を極軸(北半球では真北、南半球では真南)方向に向ける一方、東,西側支脚の方位を対応する真東又は真西に向けて、赤道儀の極軸合わせを支援することができる。
これは、例えば単に真北用の1本のレーザ光を利用した場合に比べても、クロスラインレーザ光の垂直ラインと直交する水平ラインを利用して、東側支脚の方位を真東とし、西側支脚の方位を真西とすることで、赤道儀の極軸合わせの精度が高まる。その後、三脚の上部台(雲台)に赤道儀を設置することで、赤経軸が天の極軸の方向に向けられる。
【0025】
特に、請求項2に記載の本発明によれば、設置面で三脚に搭載された赤道儀の極軸合わせを行う際には、まず赤経軸(赤道儀の極軸)と平行な状態で赤道儀に取り付けられたレーザ照射ガイドの十字ターゲットに向けて、光軸を天の極軸に合わせたクロスラインレーザ光を照射する。
その後、赤道儀を適宜微動操作して、十字ターゲットの横線にクロスラインレーザ光の水平ラインを位置合わせするとともに、十字ターゲットの縦線にクロスラインレーザ光の垂直ラインを位置合わせすれば、より高精度に赤道儀の極軸合わせを支援することができる。
【0026】
また、請求項3に記載の本発明によれば、クロスラインレーザ光をレーザ照射ガイドの前面の十字ターゲットに照射するにあたって、前面からはみ出した水平ラインの左,右部分が、前面の左,右端に連結され、かつ後方へ向かって徐々に広がった(外方傾斜した)左,右側面にそれぞれ照射される。一方、この前面からはみ出した垂直ラインの上部分が、前面の上端に連結され、かつ後方へ向かって徐々に広がった上面に照射される。
【0027】
その後、赤道儀を適宜微動操作して、クロスラインレーザ光の水平ラインに対して、十字ターゲットの横線と、レーザ照射ガイドの左,右側面の横線延長ラインとをそれぞれ位置合わせするとともに、クロスラインレーザ光の垂直ラインに対して、十字ターゲットの縦線と、レーザ照射ガイドの上面の縦線延長ラインとをそれぞれ位置合わせする。
このように、レーザ照射ガイドの前面からはみ出したクロスラインレーザ光の水平及び垂直ラインの各一部を、レーザ照射ガイドの前面からはみ出した左,右側面と上面とにそれぞれ照射することで、横延長ライン及び縦延長ラインを利用して、上述した各位置合わせの精度をさらに高めることができる。
【0028】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、赤道儀の赤経体の外周面に、周方向へ所定間隔をあけて表示された、赤経軸と平行な複数本のガイド線を利用して、クロスラインレーザ光の水平ライン及び垂直ラインと位置合わせを行う。
これにより、レーザ照射ガイドのターゲットにクロスラインレーザの交点を一致させる場合に比べて、赤道儀の極軸合わせが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置の斜視図である。使用状態の斜視図である。
図2】赤道儀の設置面に照射されたクロスラインレーザ光への三脚の配置状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置のレーザ照射ガイドを利用した極軸合わせの作業状態を示す要部拡大側面図である。
図4】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置の一部構成体を示すレーザ照射ガイドの拡大斜視図である。
図5】(a)は、図4に示すレーザ照射ガイドの本体部分の拡大展開図である。(b)は、レーザ照射ガイドの底板部分の拡大展開図である。
図6】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置から設置面へのクロスラインレーザ光の照射状態を示す斜視図である。
図7】(a)は、レーザ照射ガイドを利用した赤道儀の極軸合わせにおける赤経軸の仰角の微調整の作業を示す要部拡大側面図である。(b)は、レーザ照射ガイドを利用した赤道儀の極軸合わせにおける赤経軸の方位の微調整の作業を示す要部拡大平面図である。
図8】本発明の実施例2に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置において、赤経体の外周面に表示されたガイド線を利用した赤道儀の極軸合わせにおける赤経軸の方位合わせ作業を示す要部側面図である。
図9】本発明の実施例2に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置において、赤経体の外周面に表示されたガイド線を利用した赤経軸の仰角合わせ作業を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、北半球(日本)での天体観測に使用される場合を例とする。
【実施例
【0031】
図1図3において、10は本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置で、この赤道儀用極軸合わせ支援装置10は、3本の支脚11~13が120°ピッチで配された三脚14に搭載される赤道儀15の極軸合わせを、装置本体から照射されるクロスラインレーザ光を利用して支援するものである。
【0032】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
まず、図2及び図3を参照して、赤道儀15および三脚14について説明する。
図3に示すように、赤道儀15は、3本の支脚11~13を有する三脚14の上部台(雲台)50に赤経体16と赤緯体17とを介して、図示しない天体望遠鏡を載置するものである。この赤道儀15は、内蔵の電動モータ(図示せず)により、日周運動(地球の自転速度)に合わせて天体望遠鏡を天の極軸(赤経軸d)aの回りにモータ回転させて、所望の天体を自動追尾する。このとき、天体望遠鏡にカメラを装着することで、所望の天体の追尾撮影が可能となる。
【0033】
図2に示すように、三脚14は、それぞれ天体観測の際に天の極軸aの方向に配される極軸側支脚11と、極軸側支脚11より西方に配される西側支脚12と、極軸側支脚11より東方に配される東側支脚13と、これら3本の支脚11~13が、周方向に120°ピッチで軸支される前記上部台50とを有している。
各支脚11~13は、各断面矩形状の上段筒部18に下段支柱部19が突没可能に挿入された2段式のテレスコピック構造のものである。各上段筒部18の中間高さ部分には、各支脚11~13が均等に広がるように支持するスリーポインテッド・スター形の支持部20が配されている。
各上段筒部18の開口する下端には、それぞれ略矩形枠状の筒端カバー21が外嵌されている。各筒端カバー21の内側枠部には、下段支柱部19の突出長さを調整する高さ調整ねじ22が配されている。
【0034】
次に、図1及び図3図5を参照して、実施例1の赤道儀用極軸合わせ支援装置10を具体的に説明する。
図1及び図3図5に示すように、この赤道儀用極軸合わせ支援装置10は、東側支脚13及び西側支脚12がライン上に配置される東西線を示す水平ラインL1と、極軸側支脚11がライン上に配置される南北線を示す垂直ラインL2とのライン付けを行うクロスラインレーザ光30を利用して、赤道儀15の極軸合わせを支援する装置本体31と、赤道儀15に取り付けられ、かつ水平ラインL1の位置合わせ用の横線bと、垂直ラインL2の位置合わせ用の縦線cとを十字状に配置して、クロスラインレーザ光30の的となる十字ターゲット32が形成されたレーザ照射ガイド33とを備えている。
【0035】
このうち、図1に示す装置本体31は、前後方向に長尺な矩形状のケーシング34を有している。ケーシング34の先部には、地磁気を利用して方位を計る電子コンパス35が設けられ、ケーシング34の長さ方向の中間部には、水平を基準とした上下方向の角度を計るデジタル角度計36が設けられている。また、ケーシング34の先部内には、電子コンパス35を利用して、ケーシング34の先端面の照射口37aからクロスラインレーザ光30を照射するクロスラインレーザ発振器37が内蔵されている。
【0036】
図4に示すように、レーザ照射ガイド33は、前後方向に長く、かつ上面と左,右側面とがそれぞれ後方に向かって徐々に広がった、紙製又はプラスチックシート製のボックス状の台形体である。レーザ照射ガイド33の後端面は解放され、前後方向が赤経軸dと平行になるように赤道儀15に取り付けられる。なお、図5(a),(b)にレーザ照射ガイド33の展開図を示す。このうち、図5(b)は底板33eである。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、レーザ照射ガイド33の外面は黒色で、その前面33aには、中心部に〇が付いた幅広で白抜きの十字ターゲット32が形成されている。一方、レーザ照射ガイド33の上面には、十字ターゲット32の縦線cを延長した幅広で白抜きの縦線延長ラインc1が形成されるとともに、レーザ照射ガイド33の左,右側面33c、33dには、十字ターゲット32の横線bを延長した幅広で白抜きの横線延長ラインb1がそれぞれ形成されている。
【0038】
次に、図1図6を参照して、本発明の実施例1に係る極軸合わせ支援装置10の使用方法の一例を説明する。なお、本発明の使用方法は、要旨を逸脱しなければこれに限定されない。
図1及び図6に示すように、天体観測時には、まず装置本体31を小型三脚38に取り付け、デジタル角度計36を用いて小型三脚38の上部台(装置本体31)39の水平出しを行う。その後、電子コンパス35を用いて、ケーシング34の先端面に配された照射口37aを真北に向ける。なお、磁北と真北との間には、場所や時間によって所定のずれ(偏角、ここでは北7°)が生じている。そのため、電子コンパス35により真北を求める際には、当然ながら磁北の方角から偏角分の補正が必要となる。
【0039】
次いで、小型三脚38を操作し、照射口37aを真北に向けたまま装置本体31を下方傾斜させて、クロスラインレーザ発振器37から照射されたクロスラインレーザ光30を、赤道儀15の設置面(天体観測地)に照射する。これにより、設置面には、東西線を示す水平ラインL1と、南北線を示す垂直ラインL2とがそれぞれ直交状態で投射される。
【0040】
次に、図2及び図6に示すように、垂直ラインL2上の光軸L3より北方に三脚14の極軸側支脚11を配置する一方、水平ラインL1上の光軸L3より西方に西側支脚12を配置し、水平ラインL1上の光軸L3より東方に東側支脚13を配置する。その後、三脚14の上部台50の水平出しを行った後、これに赤道儀15を設置する。このとき、赤道儀15の高度目盛を用いて、赤道儀15の仰角を大まかに合わせておく。
【0041】
これにより、電動モータ付きの赤道儀15の磁界の影響を受けることなく、クロスラインレーザ光30を利用して、簡単かつ高精度に三脚14の極軸側支脚11の方位を真北(光の極軸a)の方向に向けて、赤道儀15の極軸合わせを支援することができる。
これは、例えば、単に真北用の1本のレーザ光を利用した場合よりも、クロスラインレーザ光30の垂直ラインL2と直交する水平ラインL1を利用して、東側支脚13の方位を真東、西側支脚12の方位を真西とすることで、赤道儀15の極軸合わせの精度が高まる。
【0042】
次いで、図3に示すように、赤道儀15の赤経軸dと平行になるように、赤経体16の外周面の上端部にレーザ照射ガイド33を設置する。その他、赤緯体17の先端部に天体望遠鏡(図示せず)の鏡筒をクランプするために配された筒受ユニット40の望遠鏡取り付け面でもよい(図3の二点鎖線を参照)。
その後、デジタル角度計36を利用して、観測地の緯度(ここでは24°)に合わせて、装置本体31の仰角を設定する。
次いで、小型三脚38のクロスラインレーザ光30の交点(光軸L3)がレーザ照射ガイド33の十字ターゲット32の中央部の“〇”に一致するように、装置本体31の高さを調節する。なお、必要により装置本体31の水平方向の微調整を行ってもよい。
【0043】
その後、レーザ照射ガイド33の十字ターゲット32に向けて、光軸L3が天の極軸aに向いたクロスラインレーザ光30を照射する。
このとき、例えば、図7(a)に示すように、クロスラインレーザ光30の水平ライン(東西線)L1に対して、赤道儀15の赤経軸dと平行な線eが一致していなければ、赤道儀15の高度調整ツマミを操作して、この水平ラインL1と、十字ターゲット32の横線b及びレーザ照射ガイド33の左,右側面の横線延長ラインb1とが一致するように、赤道儀15の仰角を微調整する。
【0044】
一方、図7(b)に示すように、クロスラインレーザ光30の垂直ライン(南北線)L2に対して、赤道儀15の赤経軸dと平行な線fが一致していなければ、赤道儀15の方位調整ツマミを操作して、この垂直ラインL2と、十字ターゲット32の縦線c及びレーザ照射ガイド33の上面33bの縦線延長ラインc1とが一致するように、赤道儀15の方位角を微調整する。
【0045】
このように、赤道儀15を適宜に微動操作して、十字ターゲット32の横線bにクロスラインレーザ光30の水平ラインL1を位置合わせするとともに、十字ターゲット32の縦線cにクロスラインレーザ光30の垂直ラインL2を位置合わせすれば、より高精度に赤道儀15の極軸合わせを支援することができる。
【0046】
また、クロスラインレーザ光30をレーザ照射ガイド33の前面33aの十字ターゲット32に照射するにあたって、このように、前面33aからはみ出したクロスラインレーザ光30の水平及び垂直ラインL1,L2の各一部を、この前面33aからはみ出した上面33bと左,右側面33c,33dとにそれぞれ照射することで、横延長ラインb1及び縦延長ラインc1を利用して、それぞれの位置合わせの精度をさらに高めることができる。
【0047】
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施例2に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置を説明する。
図8に示すように、実施例2の赤道儀用極軸合わせ支援装置10Aの特長は、赤道儀15の極軸合わせの容易性を高めるため、実施例1のレーザ照射ガイド33に代えて、円筒形状を有する赤経体16の外周面に、赤経軸dと平行な複数のガイド線gが、赤経体16の周方向へ所定ピッチ(所定間隔)でプリントされた矩形状のシールSを貼着した点である。
【0048】
ここで使用される小型三脚38としては、上部台39にリニアガイドを介して、装置本体31が直線移動可能に搭載されたエレベータ三脚が採用されている(図示せず)。リニアガイドは、上部台39に取り付けられたガイドレールに沿って、装置本体31を搭載したスライダを、直線的(ここでは東西方向)に移動させるものである。
【0049】
次に、本発明の実施例2に係る極軸合わせ支援装置10Aの使用方法を説明する。
図8に示すように、天体観測時には、まず装置本体31をエレベータ三脚のリニアガイドのスライダに搭載し、クロスラインレーザ光30の交点が赤道儀15の後面に当たるようにエレベータ三脚を設置する(装置本体31を赤道儀15の真後ろに配置する)。この位置Aでは、クロスラインレーザ光30の垂直ライン(南北線)L2の全てが遮られるか通過する。
【0050】
次いで、デジタル角度計36を用いて、エレベータ三脚の上部台39の水平出しを行った後、電子コンパス35により、ケーシング34の先端面に配された照射口37aを真北に向ける。このとき、磁北の方角から偏角分の補正も行う。
その後、エレベータ三脚をハンドル操作して、上部台(装置本体31)39を上方の位置Bまで移動させると、クロスラインレーザ光30の垂直ラインL2の一部が、赤経体16の外周面の上部分に照射されて輝線を描く。この輝線を利用して、赤道儀15の方位合わせを行う(同図を参照)。
【0051】
次に、エレベータ三脚を反対にハンドル操作して、装置本体31を元の位置Aに戻す。ここでは、クロスラインレーザ光30の水平ライン(東西線)L1の全てが遮られるか通過する。その後、デジタル角度計36を利用して、観測地の緯度に合わせて、装置本体31の仰角を設定する。
次いで、リニアガイドを利用して、装置本体31を東(右)または西(左)(ここでは東方の位置C)にスライドさせることで、クロスラインレーザ光30の水平ライン(東西線)L1が赤経体16の外周面の対応する側部分に照射されて輝線を描く。この輝線を利用して、赤道儀15の仰角合わせを行う(図9を参照)。
これにより、実施例1のレーザ照射ガイド33の十字ターゲット32にクロスラインレーザ30の交点を一致させる場合に比べて、赤道儀15の極軸合わせが容易となる。
その他の構成、作用及び効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、三脚に搭載される赤道儀の極軸合わせに有用な技術である。
【符号の説明】
【0053】
10 赤道儀用極軸合わせ支援装置
11 極軸側支脚
12 西側支脚
13 東側支脚
14 三脚
15 赤道儀
16 赤経体
30 クロスラインレーザ光
31 装置本体
32 十字ターゲット
33 レーザ照射ガイド
33a 前面
33b 上面
33c 左側面
33d 右側面
35 電子コンパス
36 デジタル角度計(角度計)
37 クロスラインレーザ発振器
L1 水平ライン
L2 垂直ライン
a 天の極軸
b 横線
b1 横線延長ライン
c 縦線
c1 縦線延長ライン
d 赤経軸(赤道儀の極軸)
g ガイド線
【要約】
【課題】モータ付赤道儀の磁界の影響を受けず、クロスラインレーザ光を利用して、簡単かつ高精度に三脚の極軸側支脚の方位を極軸方向に向けて、赤道儀の極軸合わせを支援できる赤道儀用極軸合わせ支援装置を提供する。
【解決手段】装置本体31のデジタル角度計36による水平出し後、電子コンパス35によりクロスラインレーザ光30の照射口37aを真北に向ける。その後、クロスラインレーザ発振器37から赤道儀15の設置面にクロスラインレーザ光30を照射する。よって、設置面には、水平ラインL1と垂直ラインL2とが投射される。次に、垂直ラインL2上の光軸L3より北方に三脚14の極軸側支脚11を配する一方、水平ラインL1上の光軸L3より西方に西側支脚12を配するとともに、水平ラインL1上の光軸L3より東方に東側支脚13を配する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9