(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20241106BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/1226 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/124 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241106BHJP
C25B 1/042 20210101ALN20241106BHJP
C25B 1/23 20210101ALN20241106BHJP
C25B 9/00 20210101ALN20241106BHJP
C25B 9/23 20210101ALN20241106BHJP
C25B 9/60 20210101ALN20241106BHJP
C25B 11/042 20210101ALN20241106BHJP
C25B 13/04 20210101ALN20241106BHJP
C25B 13/07 20210101ALN20241106BHJP
【FI】
H01M4/86 T
H01M8/1213
H01M8/1226
H01M8/124
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102C
C25B1/042
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B9/23
C25B9/60
C25B11/042
C25B13/04 301
C25B13/07
(21)【出願番号】P 2024520629
(86)(22)【出願日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2023039211
(87)【国際公開番号】W WO2024095998
(87)【国際公開日】2024-05-10
【審査請求日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022174989
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 一成
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-152585(JP,A)
【文献】国際公開第2022/092235(WO,A1)
【文献】特開平08-213029(JP,A)
【文献】特開平03-095859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 8/12
C25B 1/00
C25B 9/00
C25B 11/00
C25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む固体電解質層と、
希土類元素を含み、前記固体電解質層に接する第1面および該第1面とは反対側の第2面を有する第1電極と
を備え、
前記第1電極
に含まれる前記希土類元素は、第1希土類元素と第2希土類元素とを含み、
前記第1電極の前記第2面側は、前記第1面側より前記希土類元素の含有率が大きく、
前記第1電極は、前記第2面側より前記第1面側で前記第1希土類元素の含有率が大きい
電気化学セル。
【請求項2】
前記第1電極は、前記希土類元素の含有率が前記第1面から前記第2面に向けて漸増している
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記第1面と前記第2面との間に位置し、前記第1希土類元素の含有率が前記第1面より大きい部位を有する
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項4】
希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む固体電解質層と、
希土類元素を含み、前記固体電解質層に接する第1面および該第1面とは反対側の第2面を有する第1電極と
を備え、
前記第1電極に含まれる前記希土類元素は、第1希土類元素と第2希土類元素とを含み、
前記第1電極の前記第2面側は、前記第1面側より前記希土類元素の含有率が大きく、
前記固体電解質層および前記第1面において、前記第1希土類元素は、前記第2希土類元素より含有率が大きい
電気化学セル。
【請求項5】
前記第1電極に含まれる前記希土類元素は、第1希土類元素と第2希土類元素とを含み、
前記固体電解質層および前記第1面において、前記第1希土類元素は、前記第2希土類元素より含有率が大きい
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記第1電極に含まれる前記希土類元素の酸化物または前記固体電解質層に含まれる前記希土類元素が固溶した前記第1材料を含み、前記第2面上に位置するセラミック支持体を備える
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記第2希土類元素の酸化物を含み、前記第2面上に位置するセラミック支持体を備える
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の電気化学セルを含むセルスタックを有する
電気化学セル装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気化学セル装置と、
前記電気化学セル装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数有する燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができる電気化学セルの一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係る電気化学セルは、固体電解質層と、第1電極とを備える。固体電解質層は、希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む。第1電極は、希土類元素を含み、前記固体電解質層に接する第1面および該第1面とは反対側の第2面を有する。前記第1電極の前記第2面側は、前記第1面側より前記希土類元素の含有率が大きい。
【0005】
また、本開示の電気化学セル装置は、上記に記載の電気化学セルを含むセルスタックを有する。
【0006】
また、本開示のモジュールは、上記に記載の電気化学セル装置と、前記電気化学セル装置を収納する収納容器とを備える。
【0007】
また、本開示のモジュール収容装置は、上記に記載のモジュールと、前記モジュールの運転を行うための補機と、前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
【
図1B】
図1Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図である。
【
図1C】
図1Cは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す上面図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの他の一例を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る電気化学セル装置の断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
【
図9A】
図9Aは、第3の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す斜視図である。
【
図10A】
図10Aは、第4の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
【
図10B】
図10Bは、第4の実施形態に係る電気化学セルの他の一例を示す横断面図である。
【
図10C】
図10Cは、第4の実施形態に係る電気化学セルの他の一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の燃料電池セルスタック装置では、性能を向上させる点で改善の余地があった。
【0010】
そこで、性能を向上することができる電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置の提供が期待されている。
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの開示が限定されるものではない。
【0012】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係、比率などが異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
[第1の実施形態]
<電気化学セルの構成>
まず、
図1A~
図1Cを参照しながら、第1の実施形態に係る電気化学セル装置を構成する電気化学セルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。電気化学セル装置は、複数の電気化学セルを有するセルスタックを備えていてもよい。複数の電気化学セルを有する電気化学セル装置を、単にセルスタック装置と称する。
【0014】
図1Aは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
図1Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図である。
図1Cは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。なお、
図1A~
図1Cは、電気化学セルの各構成の一部を拡大して示している。以下、電気化学セルを単にセルという場合もある。
【0015】
図1A~
図1Cに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。
図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが、たとえば1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは、たとえば1mm~5mmである。
【0016】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部3と、インターコネクタ4とを備えている。支持基板2は、一対の対向する第1面n1、第2面n2、およびかかる第1面n1および第2面n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0017】
素子部3は、支持基板2の第1面n1上に設けられている。かかる素子部3は、燃料極層5と、固体電解質層6と、空気極層8とを有している。また、
図1Aに示す例では、セル1の第2面n2上にインターコネクタ4が位置している。なお、セル1は、固体電解質層6と空気極層8との間に中間層7を備えていてもよい。
【0018】
また、
図1Bに示すように、空気極層8はセル1の下端まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層6のみが第1面n1の表面に露出している。また、
図1Cに示すように、インターコネクタ4がセル1の下端まで延びていてもよい。セル1の下端部では、インターコネクタ4および固体電解質層6が表面に露出している。なお、
図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層6が露出している。インターコネクタ4は、セル1の下端まで延びていなくてもよい。
【0019】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0020】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。
図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aを流れる燃料ガスを燃料極層5まで透過させる。支持基板2は、導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、素子部3で生じた電気をインターコネクタ4に集電する。
【0021】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。鉄族金属成分は、たとえば、Ni(ニッケル)および/またはNiOであってもよい。無機酸化物は、たとえば、特定の希土類元素酸化物であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでもよい。
【0022】
燃料極層5は、多孔質の導電性セラミックス、たとえば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2などのイオン伝導性を有する酸化物と、Niなどの電子伝導性を有する金属とを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される複数の希土類元素を含んでもよい。酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2を安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含んでもよい。導電性セラミックスは、たとえば後述する固体電解質層6に用いられる材料と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスであってもよい。なお、燃料極層5の詳細については、後述する。
【0023】
固体電解質層6は、電解質であり、燃料極層5と空気極層8との間でイオンの受け渡しをする。同時に、固体電解質層6は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0024】
固体電解質層6は、希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む。第1材料は、たとえば、酸化物イオン伝導性を有する酸化物イオン伝導体であってもよく、プロトン伝導性を有するプロトン伝導体であってもよい。酸化物イオン伝導体としては、たとえば、ZrO2またはCeO2であってもよい。プロトン伝導体としては、たとえば、Zrおよび/またはCeを含むペロブスカイト構造を有する材料のうち1種以上であってもよい。
【0025】
希土類元素は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の元素を含む。かかる希土類元素は、希土類酸化物として存在してもよい。希土類元素は、Ceを含まなくてもよい。
【0026】
固体電解質層6の材料は、たとえば、3モル%~25モル%の希土類元素酸化物が固溶したZrO2またはCeO2であってもよい。固体電解質層6の材料は、たとえばYbを含有する安定化ジルコニアであってもよい。固体電解質層6は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Ybなどの希土類元素が固溶したBaZrO3、SrZrO3などのペロブスカイト型化合物を含んでもよい。
【0027】
空気極層8は、ガス透過性を有している。空気極層8は、第2電極層の一例である。空気極層8の開気孔率は、たとえば20%~50%、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0028】
空気極層8の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極層8の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物など導電性セラミックスでもよい。
【0029】
空気極層8の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0030】
また、素子部3が中間層7を有する場合、中間層7は、拡散抑制層としての機能を有する。空気極層8に含まれるSr(ストロンチウム)などの元素が固体電解質層6に拡散すると、かかる固体電解質層6にたとえばSrZrO3などの抵抗層が形成される。中間層7は、Srを拡散させにくくすることで、SrZrO3その他の電気絶縁性を有する酸化物が形成されにくくする。
【0031】
中間層7の材料は、一般的に空気極層8と固体電解質層6との間の元素の拡散を生じにくくするものであれば特に制限はない。中間層7の材料は、たとえば、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウム(CeO2)を含んでもよい。かかる希土類元素としては、たとえば、Gd(ガドリニウム)、Sm(サマリウム)などを用いてもよい。
【0032】
また、インターコネクタ4は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ4は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0033】
インターコネクタ4の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO3系酸化物)などを用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガスなどの燃料ガスおよび空気などの酸素含有ガスと接触しても還元も酸化もされにくい。また、インターコネクタ4の材料として金属または合金を用いてもよい。
【0034】
<電気化学セル装置の構成>
次に、上述した電気化学セルを用いた本実施形態に係る電気化学セル装置について、
図2A~
図2Cを参照しながら説明する。
図2Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示すX-X線の断面図である。
図2Cは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す上面図である。
【0035】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、セル1の厚み方向T(
図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。
【0036】
固定部材12は、固定材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。固定材13は、セル1を支持部材14に固定する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、たとえば金属製であり導電性を有している。
【0037】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、固定材13で接合されている。
【0038】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された接合材21によって、ガスタンク16と接合されている。
【0039】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(
図4参照)で生成される。
【0040】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0041】
図2Aに示す例では、セルスタック装置10は、2列のセルスタック11、2つの支持体15、およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11はそれぞれ、複数のセル1を有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
図2Aでは、2列のセルスタック11を有するセルスタック装置10を示したが、セルスタック装置は1列のセルスタック11を有してもよいし、3列以上のセルスタック11を有してもよい。
【0042】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離より大きくてもよい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(
図1A参照)の長さより大きくてもよい。
【0043】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部には、固定材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0044】
固定材13および接合材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。固定材13および接合材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0045】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO2-CaO系、MgO-B2O3系、La2O3-B2O3-MgO系、La2O3-B2O3-ZnO系、SiO2-CaO-ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO2-MgO系の材料を用いてもよい。
【0046】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、導電部材18が介在している。導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極層5と他方のセル1の空気極層8とを電気的に直列に接続する。より具体的には、導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極層5と電気的に接続されたインターコネクタ4と、他方のセル1の空気極層8とを接続している。なお、インターコネクタ4が金属または合金である場合、インターコネクタ4と導電部材18とが一体化していてもよいし、導電部材18がインターコネクタ4を兼ねてもよい。
【0047】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1に、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、
図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0048】
また、
図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続され、一つの電池として機能する。そのため、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとに区別される。
【0049】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0050】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0051】
<燃料極層の詳細>
つづいて、第1の実施形態に係る第1電極としての燃料極層5の詳細について、
図3Aを参照しながら説明する。
図3Aは、
図1Aに示す領域R1を拡大した断面図である。
【0052】
図3Aに示すように、燃料極層5は、第1面5Aおよび第2面5Bを有している。第1面5Aは、固体電解質層6に接するように位置している。第2面5Bは、第1面5Aとは反対側に位置している。第2面5Bは、支持基板2に接するように位置している。燃料極層5の厚みは、たとえば、40μm以下、さらに30μm以下であってもよい。
【0053】
燃料極層5は、希土類元素を含む。燃料極層5は、たとえば、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Ybなどが固溶したCeO2を含んでもよい。燃料極層5は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Ybなどの希土類元素が固溶したBaMO3、SrMO3(ただし、MはZrおよび/またはCe)などのペロブスカイト型化合物を含んでもよい。
【0054】
燃料極層5は、たとえば、ジルコニア系化合物またはペロブスカイト型化合物を含んでもよい。燃料極層5は、たとえば、Ybを含有する安定化ジルコニアを含んでもよい。燃料極層5は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Ybなどの希土類元素が固溶したBaZrO3、SrZrO3などのペロブスカイト型化合物を含んでもよい。
【0055】
燃料極層5の第2面5B側は、第1面5A側より希土類元素の含有率が大きい。燃料極層5は、たとえば、5原子%~60原子%の希土類元素を含有する。燃料極層5の第1面5A側は、たとえば、5原子%~30原子%の希土類元素を含有する。燃料極層5の第2面5B側は、たとえば、10原子%~60原子%の希土類元素を含有する。なお、ここに示す燃料極層5中の希土類元素の含有率(原子%)は、イオン伝導性を有する酸化物を構成する元素の総量(ただし、固溶した希土類元素を含み、酸素は含まない)を分母とし、希土類元素の量を分子とした比率とする。以下、イオン伝導性を有する酸化物を単にイオン伝導性酸化物という。なお、イオン伝導性を有する酸化物に複数の希土類元素が固溶している場合は、複数の希土類元素の含有率を合計して比較すればよい。
【0056】
このように、燃料極層5の第2面5B側において、希土類元素の含有率を第1面5A側より大きくすることにより、セル1の発電性能を高めることができる。たとえば、固体電解質層6から離れた第2面5B側では、希土類元素の含有率が比較的高いことにより、発電時に燃料極層5で生成したH2Oの排出が促進される。一方、固体電解質層6に近い第1面5A側では、希土類元素の含有率が比較的低いことにより、発電時における燃料極層5での反応が促進される。このため、本実施形態に係るセル1によれば、発電性能が向上する。
【0057】
燃料極層5の第2面5B側と第1面5A側とで希土類元素の含有率を異ならせることにより、セル1の発電性能が向上する要因としては、希土類元素の固溶量により、希土類元素が固溶したイオン伝導性酸化物に含まれる酸素空孔の量が変化するためと考えられる。第1面5A側では、希土類元素の含有率、すなわちイオン伝導性酸化物に固溶した希土類元素が比較的少なく、イオン伝導性酸化物に含まれる酸素空孔の量が比較的少ない。そのため、第1面5A側のイオン伝導性酸化物は比較的高いイオン伝導性を有し、固体電解質層6近傍で酸化物イオンの供給量が増加する。その結果、水素の酸化反応が促進され、大量のH2Oが生成する。一方、第2面5B側では、希土類元素の含有率、すなわちイオン伝導性酸化物に固溶した希土類元素が比較的多く、イオン伝導性酸化物に含まれる酸素空孔の量が比較的多い。そのため、燃料極層5で生成されたH2Oが、第2面5B側の酸素空孔に引き寄せられて移動しやすくなる。その結果、H2Oが燃料極層5の外部へ排出されやすくなり、燃料極層5の内部の空隙がH2Oで閉塞される不具合が生じにくくなる。このように、水素の酸化反応、および生成したH2Oの排出が共に促進されることで、セル1の発電性能が向上する。特に、燃料ガスの利用率が比較的高い条件下での発電時においては、セル1の発電性能の向上に対する影響は顕著となる。
【0058】
ここで、燃料極層5における希土類元素の含有率は、たとえば、EPMAを用いた元素分析により確認できる。具体的には、たとえば素子部3の積層方向の断面を鏡面研磨し、第1面5Aを含む燃料極層5の所定の面積と第2面5Bを含む燃料極層5の所定の面積で、1または複数の希土類元素をそれぞれ半定量分析する。第1面5A側、第2面5B側それぞれについて、単位面積当たりの希土類元素の含有率を算出し、原子%単位にそれぞれ換算することにより、その大小を比較することができる。このとき、たとえば、第1面5Aから燃料極層5の平均厚さの20%以下の領域を第1面5A側とし、第2面5Bから燃料極層5の平均厚さの20%以下の領域を第2面5B側として、各領域の希土類元素の含有率を比較してもよい。また、燃料極層5の任意の複数の断面において希土類元素の含有率を測定し、その平均値を比較してもよい。
【0059】
燃料極層5は、希土類元素の含有率が第1面5Aから第2面5Bに向けて漸増していてもよい。これにより、セル1の発電性能がさらに向上する。
【0060】
また、燃料極層5は、複数種類の希土類元素を含んでもよい。燃料極層5は、第1希土類元素と第2希土類元素とを含んでいてもよい。第1希土類元素は、たとえば、Ybであってもよい。第2希土類元素は、たとえば、Yであってもよい。
【0061】
燃料極層5は、希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含んでもよい。第1希土類元素が固溶した第1材料は、第2希土類元素が固溶した第1材料より高いイオン伝導性を有する。燃料極層5が異なるイオン伝導性を有する第1材料を含むことにより、燃料極層5におけるイオン伝導性の向上が期待できる。
【0062】
また、燃料極層5が上記した第1希土類元素と第2希土類元素とを含む場合、燃料極層5は、第2面5B側より第1面5A側で第1希土類元素の含有率が大きくてもよい。これにより、セル1の発電性能が向上する。
【0063】
また、燃料極層5が上記した第1希土類元素と第2希土類元素とを含む場合、固体電解質層6および燃料極層5の第1面5Aにおいて、第1希土類元素は、第2希土類元素より含有率が大きくてもよい。これにより、セル1の発電性能が向上する。
【0064】
図3Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの他の一例を示す拡大断面図である。
図3Bに示すように、燃料極層5は、第1面5Aと第2面5Bとの間に位置する部位5aを有してもよい。部位5aは、第1希土類元素の含有率が第1面5Aより大きくてもよい。これにより、燃料極層5内の電気化学的に活性な反応場において、水素の酸化反応をより促進できる。
【0065】
なお、
図3Bでは、部位5aが燃料極層5の第1面5Aより第2面5Bに近い部分に位置しているが、第2面5Bより第1面5Aに近い部分に位置してもよく、第1面5Aと第2面5Bの中間部分に位置してもよい。また、第1面5Aと第2面5Bとの間に部位5aが位置しない部分を有してもよい。
【0066】
支持基板2は、第2面5B上に位置する。支持基板2は、燃料極層5を支持するセラミック支持体であってもよい。かかる支持基板2は、燃料極層5に含まれる希土類元素の酸化物または固体電解質層6に含まれる希土類元素が固溶した第1材料を含んでもよい。これにより、燃料極層5と支持基板2との間で元素拡散が軽減され、燃料極層5の導電性および水素の酸化反応の低下を抑えることができる。
【0067】
また、支持基板2は、第2希土類元素の酸化物を含んでもよい。これにより、希土類酸化物の粒子成長が抑えられ、支持基板の強度を向上できる。
【0068】
<モジュール>
次に、上述した電気化学セル装置を用いた本実施形態に係るモジュールについて、
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図である。
図4では、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0069】
図4に示すように、モジュール100は、収納容器101と、収納容器101内に収納されたセルスタック装置10とを備えている。また、セルスタック装置10の上方には、改質器102が配置されている。
【0070】
かかる改質器102は、天然ガス、灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成し、セル1に供給する。原燃料は、原燃料供給管103を通じて改質器102に供給される。なお、改質器102は、水を気化させる気化部102aと、改質部102bとを備えていてもよい。改質部102bは、図示しない改質触媒を備えており、原燃料を燃料ガスに改質する。このような改質器102は、効率の高い改質反応である水蒸気改質を行うことができる。
【0071】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20、ガスタンク16、および支持部材14を通じて、セル1のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。
【0072】
また、上述の構成のモジュール100では、ガスの燃焼およびセル1の発電に伴い、通常発電時におけるモジュール100内の温度が500℃~1000℃程度となる。
【0073】
このようなモジュール100においては、上述したように、発電性能を向上するセルスタック装置10を収納して構成されることにより、発電性能を向上するモジュール100とすることができる。
【0074】
<モジュール収容装置>
図5は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。本実施形態に係るモジュール収容装置110は、外装ケース111と、
図4で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補機は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補機は、外装ケース111内に収容されている。なお、
図5においては一部構成を省略して示している。
【0075】
図5に示すモジュール収容装置110の外装ケース111は、支柱112と外装板113とを有する。仕切板114は、外装ケース111内を上下に区画している。外装ケース111内の仕切板114より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室115であり、外装ケース111内の仕切板114より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室116である。なお、
図5では、補機収容室116に収容する補機を省略して示している。
【0076】
また、仕切板114は、補機収容室116の空気をモジュール収容室115側に流すための空気流通口117を有している。モジュール収容室115を構成する外装板113は、モジュール収容室115内の空気を排気するための排気口118を有している。
【0077】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、発電性能を向上するモジュール100をモジュール収容室115に備えていることにより、発電性能を向上するモジュール収容装置110とすることができる。
【0078】
なお、上述の実施形態では、中空平板型の支持基板を用いた場合を例示したが、円筒型の支持基板を用いたセルスタック装置に適用することもできる。
【0079】
[第2の実施形態]
つづいて、第2の実施形態に係る電気化学セルおよび電気化学セル装置について、
図6~
図8を参照しながら説明する。
【0080】
上述の実施形態では、支持基板の表面に燃料極層、固体電解質層および空気極層を含む素子部が1つのみ設けられたいわゆる「縦縞型」を例示したが、支持基板の表面の互いに離れた複数個所にて素子部がそれぞれ設けられ、隣り合う素子部の間が電気的に接続されたいわゆる「横縞型」の電気化学セルを配列した横縞型の電気化学セル装置に適用することができる。
【0081】
図6は、第2の実施形態に係る電気化学セル装置の断面図である。
図7は、第2の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
【0082】
図6に示すように、第2の実施形態に係るセルスタック装置10Aは、燃料ガスを流通させる配管22aから複数のセル1Aが長さ方向Lに延びている。セル1Aは、支持基板2上に複数の素子部3を有している。支持基板2の内部には、配管22aからの燃料ガスが流れるガス流路2aが設けられている。
【0083】
また、各セル1Aは、接続部材31を介して互いに電気的に接続されている。接続部材31は、各セル1Aがそれぞれ有する素子部3の間に位置しており、隣り合うセル1Aを接続している。具体的には、接続部材31は、隣り合うセル1Aのうち一方のセル1Aの空気極層8と、他方のセル1Aの燃料極層5と電気的に接合されたインターコネクタ4とを接続している。
【0084】
また、
図7に示すように、セル1Aは、支持基板2と、一対の素子部3と、封止部30とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面である第1面n1および第2面n2、およびかかる第1面n1および第2面n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0085】
一対の素子部3は、支持基板2の第1面n1および第2面n2上に、互いに対向するように位置している。また、封止部30は、支持基板2の側面mを覆うように位置している。
【0086】
セル1Aは、厚み方向Tの中心を通り且つ支持基板2の第1面n1および第2面n2に平行な面に対して対称の形状である。素子部3は、燃料極層5、固体電解質層6、中間層7および空気極層8を有している。
【0087】
図8は、
図7に示す領域R2を拡大した断面図である。
図8に示すように、燃料極層5は、第1面5Aおよび第2面5Bを有している。第1面5Aは、固体電解質層6に接するように位置している。第2面5Bは、第1面5Aとは反対側に位置している。第2面5Bは、支持基板2に接するように位置している。
【0088】
固体電解質層6は、希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む。燃料極層5は、希土類元素を含む。燃料極層5の第2面5B側は、第1面5A側より希土類元素の含有率が大きい。これにより、セル1Aの発電性能を高めることができる。たとえば、固体電解質層6から離れた第2面5B側では、希土類元素の含有率が比較的高いことにより、発電時に燃料極層5で生成したH2Oの排出が促進される。一方、固体電解質層6に近い第1面5A側では、希土類元素の含有率が比較的低いことにより、発電時における燃料極層5での反応が促進される。このため、本実施形態に係るセル1Aによれば、発電性能が向上する。
【0089】
[第3の実施形態]
図9Aは、第3の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す斜視図である。
図9Bは、
図9Aに示す電気化学セルの部分断面図である。
【0090】
図9Aに示すように、セル1Bは、燃料極層5、固体電解質層6および空気極層8が積層された素子部3Bを有している。素子部3Bは、固体電解質層6が、燃料極層5および空気極層8に挟まれた部位である。素子部3Bは、固体電解質層6と空気極層8との間に位置する中間層を有してもよい。複数の平板型セルを積層させた電気化学セル装置は、たとえば複数のセル1Bが、互いに隣り合う金属層である導電部材91,92により電気的に接続されている。導電部材91,92は、隣接するセル1B同士を電気的に接続するとともに、燃料極層5または空気極層8にガスを供給するガス流路を有している。
【0091】
図9Bに示すように、平板型セルスタックの燃料ガスの流路98と酸素含有ガスの流路97とを気密に封止する封止材を有している。封止材はセルの固定部材96であり、接合材93およびフレームである支持部材94,95を有する。接合材93は、ガラスであってもよいし、銀ロウなどの金属材料であってもよい。
【0092】
支持部材94は、燃料ガスの流路98と酸素含有ガスの流路97とを区画するいわゆるセパレータであってもよい。支持部材94,95の材料は、例えば導電性の金属であってもよいし、絶縁性のセラミックスであってもよい。支持部材94,95は、両方またはいずれか一方が絶縁性の材料であってもよい。支持部材94が金属であった場合、支持部材94は導電部材92と一体化していてもよい。支持部材95が金属であった場合、支持部材95は導電部材91と一体化していてもよい。
【0093】
接合材93、支持部材94,95のうちいずれか1つは絶縁性であり、平板型セルを挟む2つの導電部材91,92を互いに電気的に絶縁している。
【0094】
図9Cは、
図9Bに示す領域R3を拡大した断面図である。
図9Cに示すように、燃料極層5は、第1面5Aおよび第2面5Bを有している。第1面5Aは、固体電解質層6に接するように位置している。第2面5Bは、第1面5Aとは反対側に位置している。第2面5Bは、導電部材91に接するように位置している。
【0095】
固体電解質層6は、希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む。燃料極層5は、希土類元素を含む。燃料極層5の第2面5B側は、第1面5A側より希土類元素の含有率が大きい。これにより、セル1Bの発電性能を高めることができる。たとえば、固体電解質層6から離れた第2面5B側では、希土類元素の含有率が比較的高いことにより、発電時に燃料極層5で生成したH2Oの排出が促進される。一方、固体電解質層6に近い第1面5A側では、希土類元素の含有率が比較的低いことにより、発電時における燃料極層5での反応が促進される。このため、本実施形態に係るセル1Bによれば、発電性能が向上する。
【0096】
【0097】
図10A~
図10Cに示すように、セル1Cは、燃料極層5、固体電解質層6、中間層7および空気極層8が積層された素子部3Cと、支持基板2とを有している。支持基板2は、素子部3Cと接する部位に貫通孔または細孔を有するとともに、ガス流路2aの外側に位置する部材120を有する。支持基板2は、ガス流路2aと素子部3Cとの間でガスを流通させることができる。支持基板2は、例えば、1または複数の金属板で構成されてもよい。金属板の材料は、クロムを含有していてもよい。金属板は、導電性の被覆層を有していてもよい。支持基板2は、隣接するセル1C同士を電気的に接続する。素子部3Cは、支持基板2上に直接形成されていてもよいし、接合材により支持基板2に接合されていてもよい。
【0098】
図10Aに示す例では、燃料極層5の側面は固体電解質層6により被覆され、燃料ガスが流れるガス流路2aを気密に封止している。
図10Bに示すように、燃料極層5の側面はガラスまたはセラミックを含む緻密な封止材9で被覆され、封止されていてもよい。燃料極層5の側面を被覆する封止材9は、電気絶縁性を有していてもよい。
【0099】
また、支持基板2のガス流路2aは、
図10Cに示すように凹凸を有する部材120により形成されていてもよい。
【0100】
図11は、
図10Aに示す領域R4を拡大した断面図である。
図11に示すように、燃料極層5は、第1面5Aおよび第2面5Bを有している。第1面5Aは、固体電解質層6に接するように位置している。第2面5Bは、第1面5Aとは反対側に位置している。第2面5Bは、支持基板2に接するように位置している。
【0101】
固体電解質層6は、希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む。燃料極層5は、希土類元素を含む。燃料極層5の第2面5B側は、第1面5A側より希土類元素の含有率が大きい。これにより、セル1Cの発電性能を高めることができる。たとえば、固体電解質層6から離れた第2面5B側では、希土類元素の含有率が比較的高いことにより、発電時に燃料極層5で生成したH2Oの排出が促進される。一方、固体電解質層6に近い第1面5A側では、希土類元素の含有率が比較的低いことにより、発電時における燃料極層5での反応が促進される。このため、本実施形態に係るセル1Cによれば、発電性能が向上する。
【0102】
[その他の実施形態]
つづいて、その他の実施形態に係る電気化学セル装置について説明する。
【0103】
上記した各実施形態では、「電気化学セル」、「電気化学セル装置」、「モジュール」および「モジュール収容装置」の一例として燃料電池セル、燃料電池セルスタック装置、燃料電池モジュールおよび燃料電池装置を示したが、他の例としてはそれぞれ、電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置であってもよい。電解セルは、第1電極および第2電極を有し、電力の供給により水蒸気を水素と酸素に分解する、または二酸化炭素を一酸化炭素と酸素に分解する。
【0104】
このような電解セル、電解セルスタック装置、電解モジュールおよび電解装置によれば、第1電極の第2面側が、第1面側より希土類元素の含有率が大きいことにより、電気化学セルの電解性能を高めることができる。たとえば、固体電解質層から離れた第2面側では、希土類元素の含有率が比較的高いことにより、第1電極の内部へのH2Oの供給が促進される。一方、固体電解質層に近い第1面側では、希土類元素の含有率が比較的低いことにより、電解時における第1電極での反応が促進される。このため、本実施形態に係る電気化学セルによれば、電解性能が向上する。特に、H2Oの供給量が比較的高い条件下での電解時においては、電気化学セルの電解性能の向上に対する影響は顕著となる。
【0105】
以上、本開示について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0106】
一実施形態において、(1)電気化学セルは、
希土類元素が固溶した、イオン伝導性を有する第1材料を含む固体電解質層と、
希土類元素を含み、前記固体電解質層に接する第1面および該第1面とは反対側の第2面を有する第1電極と
を備え、
前記第1電極の前記第2面側は、前記第1面側より前記希土類元素の含有率が大きい。
【0107】
(2)上記(1)の電気化学セルにおいて、
前記第1電極は、前記希土類元素の含有率が前記第1面から前記第2面に向けて漸増していてもよい。
【0108】
(3)上記(1)または(2)の電気化学セルにおいて、
前記第1電極は、第1希土類元素と第2希土類元素とを含み、
前記第1電極は、前記第2面側より前記第1面側で前記第1希土類元素の含有率が大きくてもよい。
【0109】
(4)上記(3)の電気化学セルにおいて、
前記第1面と前記第2面との間に位置し、前記第1希土類元素の含有率が前記第1面より大きい部位を有してもよい。
【0110】
(5)上記(1)~(4)の電気化学セルにおいて、
前記第1電極に含まれる前記希土類元素は、第1希土類元素と第2希土類元素とを含み、
前記固体電解質層および前記第1面において、前記第1希土類元素は、前記第2希土類元素より含有率が大きくてもよい。
【0111】
(6)上記(1)~(5)の電気化学セルにおいて、
前記第1電極に含まれる前記希土類元素の酸化物または前記固体電解質層に含まれる前記希土類元素が固溶した前記第1材料を含み、前記第2面上に位置するセラミック支持体を備えてもよい。
【0112】
(7)上記(3)~(5)の電気化学セルにおいて、
前記第2希土類元素の酸化物を含み、前記第2面上に位置するセラミック支持体を備えてもよい。
【0113】
一実施形態において、(8)電気化学セル装置は、上記(1)~(7)のいずれかに記載の電気化学セルを含むセルスタックを有する。
【0114】
一実施形態において、(9)モジュールは、上記(8)に記載の電気化学セル装置と、
前記電気化学セル装置を収納する収納容器とを備える。
【0115】
一実施形態において、(10)モジュール収容装置は、上記(9)に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースとを備える。
【0116】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,1A,1B,1C セル
2 支持基板
3,3B,3C 素子部
4 インターコネクタ
5 燃料極層
6 固体電解質層
7 中間層
8 空気極層
10,10A セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 固定材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
17 端部集電部材
18 導電部材
100 モジュール
110 モジュール収容装置