(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】インジェクタ制御装置
(51)【国際特許分類】
F02M 51/00 20060101AFI20241107BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20241107BHJP
F02D 41/20 20060101ALI20241107BHJP
F02D 41/30 20060101ALI20241107BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F02M51/00 A
F02M51/06 M
F02D41/20
F02D41/30
F02D45/00 380
(21)【出願番号】P 2021209981
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】松尾 成浩
(72)【発明者】
【氏名】今原 裕章
(72)【発明者】
【氏名】野村 友樹
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-232249(JP,A)
【文献】特開2012-057581(JP,A)
【文献】特開2021-060006(JP,A)
【文献】特開2006-161578(JP,A)
【文献】特開2002-327652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0109873(US,A1)
【文献】特開2008-196449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/00 ~ 51/08
F02D 41/00 ~ 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1サイクル中に燃料噴射を複数回に分割する多段噴射を行うインジェクタの駆動を制御するインジェクタ制御装置であって、
前記インジェクタから噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する演算部と、
前記演算部により実行された前記演算の結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記噴射時期および前記噴射量に基づいて前記インジェクタの駆動を制御するインジェクタ駆動部と、
を備え、
前記記憶部は、
前記演算部により実行された前記演算の結果として前記燃料の前記噴射時期を記憶する第1レジスタと、
前記演算部により実行された前記演算の結果として前記燃料の前記噴射量を記憶する第2レジスタと、
を有し、
前記演算部は、前記多段噴射のうちの第1噴射が終了した時
であって前記インジェクタを流れる電流の波形の立ち下がり時に、前記第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される前記燃料の前記噴射時期および前記噴射量の前記演算を実行
して、前記噴射時期を前記第1レジスタに格納し、前記噴射量を前記第2レジスタに格納し、
前記インジェクタ駆動部は、前記第1レジスタに記憶された前記噴射時期および前記第2レジスタに記憶された前記噴射量に関する制御信号を1つのポートのみを使用して前記インジェクタに送信することを特徴とするインジェクタ制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記第2噴射が終了した時であって前記インジェクタを流れる電流の波形の立ち下がり時に、前記第2噴射の次に実行される第3噴射において噴射される前記燃料の前記噴射時期および前記噴射量の前記演算を実行して、前記噴射時期を前記第1レジスタに格納し、前記噴射量を前記第2レジスタに格納し、
前記インジェクタ駆動部は、前記第2噴射が終了した時に前記第1レジスタに記憶された前記噴射時期および前記第2レジスタに記憶された前記噴射量に関する制御信号を1つの前記ポートのみを使用して前記インジェクタに送信することを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射するインジェクタの駆動を制御するインジェクタ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置が開示されている。特許文献1に記載されたディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置は、各気筒への燃料噴射量の演算を行う演算部と、各気筒に対応する記憶エリアを有し、記憶エリアに演算部による演算結果を記憶する記憶部と、を備える。ここで、各気筒には、ディーゼルエンジンの運転状態によっては、メイン噴射やポスト噴射等のように複数回に分割して燃料が噴射されるので、分割された噴射の回数、タイミング、量も、各気筒への燃料噴射量に含まれることが、特許文献1に記載されている。
【0003】
このように、ディーゼルエンジンでは、例えば騒音低減等を目的として1サイクル中に燃料噴射を複数回に分割する多段噴射が実行される場合がある。この場合において、一般的に、インジェクタの駆動を制御する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)は、燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号を複数(例えば2つ)のポートを使用して1つのインジェクタに送信する。これにより、ECUは、多段噴射のうちの第1噴射が実行される直前に割り込み処理を実行し、第1噴射の次に実行される第2噴射の設定を行うことができる。すなわち、ECUは、第1噴射が実行される直前に第2噴射の事前設定を行うことにより、第1噴射と第2噴射との間の期間が比較的短い場合であっても第1噴射および第2噴射を確実に実行することができる。
【0004】
しかし、ECUが複数のポートを使用して1つのインジェクタに制御信号を送信すると、ECUの回路が複雑化したり大型化したりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、回路を簡易化あるいは小型化することができるインジェクタ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分割する多段噴射を行うインジェクタの駆動を制御するインジェクタ制御装置であって、前記インジェクタから噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する演算部と、前記演算部により実行された前記演算の結果を記憶する記憶部と、を備え、前記演算部は、前記多段噴射のうちの第1噴射が終了した時に、前記第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される前記燃料の前記噴射時期および前記噴射量の前記演算を実行することを特徴とする本発明に係るインジェクタ制御装置により解決される。
【0008】
本発明に係るインジェクタ制御装置によれば、演算部は、インジェクタから噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。記憶部は、演算部により実行された演算の結果を記憶する。そして、演算部は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分割する多段噴射のうちの第1噴射が終了した時に、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。そのため、本発明に係るインジェクタ制御装置は、第1噴射が実行される直前に割り込み処理を実行しなくとも、第1噴射の次に実行される第2噴射の設定を行うことができる。そのため、本発明に係るインジェクタ制御装置は、燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号を複数のポートを使用してインジェクタに送信しなくとも、第1噴射および第2噴射を確実に実行することができる。これにより、本発明に係るインジェクタ制御装置は、回路を簡易化あるいは小型化することができる。
【0009】
本発明に係るインジェクタ制御装置において、好ましくは、前記演算部は、前記インジェクタを流れる電流の波形の立ち下がり時を前記第1噴射が終了した時として検知することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るインジェクタ制御装置によれば、演算部は、インジェクタを流れる電流の波形の立ち下がり時を第1噴射が終了した時として検知する。つまり、演算部は、インジェクタを流れる電流の波形の立ち下がり時を起点にして、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。これにより、演算部は、第1噴射が終了した時をより確実に検知し、第1噴射が終了した時を起点にして第2噴射の設定を行うことができる。
【0011】
本発明に係るインジェクタ制御装置において、好ましくは、前記記憶部に記憶された前記噴射時期および前記噴射量に基づいて前記インジェクタの駆動を制御するインジェクタ駆動部をさらに備え、前記インジェクタ駆動部は、1つのポートのみを使用して前記噴射時期および前記噴射量に関する制御信号を前記インジェクタに送信することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るインジェクタ制御装置によれば、インジェクタ駆動部は、記憶部に記憶された噴射時期および噴射量に基づいてインジェクタの駆動を制御し、1つのポートのみを使用して燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号をインジェクタに送信する。これにより、本発明に係るインジェクタ制御装置は、回路をより一層簡易化あるいは小型化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路を簡易化あるいは小型化することができるインジェクタ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るインジェクタ制御装置の概要を説明するブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るインジェクタ制御装置の制御を説明するタイミングチャートである。
【
図3】比較例に係るインジェクタ制御装置の制御を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本発明に係るインジェクタ制御装置の概要を説明するブロック図である。
本実施形態に係るインジェクタ制御装置2は、例えば産業用機械のエンジン3に搭載され、燃料を噴射するインジェクタ31の駆動を制御する。
図1に表したように、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の一部として機能する。なお、
図1に表した例では、3つのインジェクタ31がエンジン3に設けられている。但し、インジェクタ31の設置数は、3つに限定されるわけではなく、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。すなわち、エンジン3の気筒数は、3つに限定されるわけではなく、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0017】
図1に表したインジェクタ制御装置2は、演算部21と、記憶部22と、インジェクタ駆動部23と、を備える。
図1に表したように、エンジン回転数に関する検出信号およびクランク角度に関する検出信号が、エンジン3からインジェクタ制御装置2に入力される。また、アクセル開度に関する検出信号が、スロットルセンサ4からインジェクタ制御装置2に入力される。
【0018】
演算部21は、インジェクタ31から噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。例えば、演算部21は、エンジン3から送信されたエンジン回転数に関する検出信号と、スロットルセンサ4から送信されたアクセル開度に関する検出信号と、に基づいて、予め設定されたガバナマップ(図示せず)を用いて燃料の噴射量の演算を実行する。また、演算部21は、例えばガバナマップを用いて設定した燃料の噴射量に基づいて、予め設定された噴射期間マップ(図示せず)を用いてインジェクタ31の通電期間(すなわち通電時間)の演算を実行する。このように、燃料の噴射量は、例えばインジェクタ31の通電期間により制御される。本実施形態の演算部21としては、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)などが挙げられる。本実施形態の演算部21は、単に演算するだけでなく演算の結果を記憶部22に格納する(すなわち書き込む)機能も有している。
【0019】
記憶部22は、演算部21により実行された演算の結果を記憶する。具体的には、記憶部22は、演算部21により実行された演算の結果として、インジェクタ31から噴射される燃料の噴射時期および噴射量(すなわちインジェクタ31の通電時間)を記憶する。記憶部22としては、例えばレジスタなどが挙げられる。
【0020】
インジェクタ駆動部23は、演算部21により記憶部22に格納された(すなわち書き込まれた)燃料の噴射時期および噴射量に基づいて、インジェクタ31の駆動を制御する。例えば、インジェクタ駆動部23は、演算部21により記憶部22に格納された燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号をインジェクタ31に送信する。あるいは、例えば、インジェクタ駆動部23は、演算部21により記憶部22に格納された燃料の噴射時期および噴射量に基づいて、昇圧回路(図示せず)により生成される昇圧電圧(例えばコンデンサのチャージ電圧)やバッテリ(図示せず)から供給される電圧をインジェクタ31に供給する。これにより、インジェクタ31のニードル弁が開き、燃料噴射が開始する。そして、インジェクタ31の通電を開始した時点から演算部21により設定されたインジェクタ31の通電期間が経過すると、インジェクタ駆動部23は、インジェクタ31に対する電圧の供給を停止する。これにより、インジェクタ31のニードル弁が閉じ、燃料噴射が終了する。
【0021】
また、インジェクタ駆動部23は、例えばエンジン3の騒音低減等を目的として、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分割する多段噴射を行うようにインジェクタ31の駆動を制御する。例えば、インジェクタ31は、メイン噴射と、メイン噴射における噴射量よりも少ない噴射量の燃料をメイン噴射よりも先に噴射するパイロット噴射およびプレ噴射と、を1サイクル中に行う。「パイロット噴射」は、本発明の「第1噴射」の一例である。「パイロット噴射」が本発明の「第1噴射」である場合において、「プレ噴射」は、本発明の「第2噴射」の一例である。あるいは、「プレ噴射」は、本発明の「第1噴射」の一例であってもよい。「プレ噴射」が本発明の「第1噴射」である場合において、「メイン噴射」は、本発明の「第2噴射」の一例である。
【0022】
なお、インジェクタ31が1サイクル中に行う燃料噴射は、パイロット噴射とプレ噴射とメイン噴射とに限定されるわけではない。インジェクタ31は、メイン噴射よりも後に、アフター噴射とポスト噴射とを1サイクル中にこの順序で行ってもよい。あるいは、インジェクタ31は、メイン噴射よりも先に、パイロット噴射とプレ噴射とを1サイクル中にこの順序で行うとともに、メイン噴射よりも後に、アフター噴射とポスト噴射とを1サイクル中にこの順序で行ってもよい。本発明の「第2噴射」は、本発明の「第1噴射」の次に実行される噴射である。
【0023】
ここで、インジェクタ駆動部23が、演算部21により記憶部22に記憶された燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号を複数(例えば2つ)のポートを使用してインジェクタ31に送信すると、多段噴射のうちの第1噴射が実行される直前に割り込み処理を実行し、第1噴射の次に実行される第2噴射の設定を行うことができる。すなわち、インジェクタ駆動部23は、第1噴射が実行される直前に第2噴射の事前設定を行うことにより、第1噴射と第2噴射との間の期間が比較的短い場合であっても第1噴射および第2噴射を確実に実行することができる。しかし、そうすると、ECUの一部として機能するインジェクタ制御装置2の回路が複雑化したり大型化したりすることがある。
【0024】
これに対して、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2の演算部21は、多段噴射のうちの第1噴射が終了した時に、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第2噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量を記憶部22に格納する(すなわち書き込む)。以下、この詳細について、図面を参照して詳しく説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るインジェクタ制御装置の制御を説明するタイミングチャートである。
図3は、比較例に係るインジェクタ制御装置の制御を説明するタイミングチャートである。
なお、
図2および
図3に表した第1噴射、第2噴射および第3噴射のそれぞれに関する波形は、インジェクタを流れる電流すなわちインジェクタ電流を例示している。
【0026】
まず、比較例に係るインジェクタ制御装置2Aの制御を、
図3を参照して説明する。
図3に表したインジェクタ制御装置2Aは、第1噴射、第2噴射および第3噴射の制御をこの順に実行する。
【0027】
演算部21は、第1噴射が実行される前のタイミングT21において、第1噴射を開始するクランク角度すなわち第1噴射の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第1噴射を開始するクランク角度(
図3に表した例では圧縮行程の上死点前60°)を第1角度指定レジスタ221に格納する。例えば、「第1角度指定レジスタ221」は、インジェクタ駆動部23の第1ポートに対応する記憶エリアであって記憶部22のうちクランク角度を記憶する記憶エリアである。
【0028】
また、演算部21は、第1噴射が実行される前のタイミングT21において、第1噴射におけるインジェクタの通電時間(すなわち燃料の噴射量)の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第1噴射におけるインジェクタの通電時間(
図3に表した例では、300マイクロ秒)を第1通電時間レジスタ222に格納する。例えば、「第1通電時間レジスタ222」は、インジェクタ駆動部23の第1ポートに対応する記憶エリアであって記憶部22のうちインジェクタの通電時間(すなわち燃料の噴射量)を記憶する記憶エリアである。
【0029】
そして、インジェクタ駆動部23は、タイミングT21において第1角度指定レジスタ221に記憶されたクランク角度および第1通電時間レジスタ222に記憶されたインジェクタの通電時間に関する制御信号を第1ポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。
【0030】
続いて、演算部21は、第1噴射が実行される直前のタイミングT22において割り込み処理を実行し、第2噴射を開始するクランク角度すなわち第2噴射の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第2噴射を開始するクランク角度(
図3に表した例では圧縮行程の上死点前30°)を第2角度指定レジスタ223に格納する。例えば、「第2角度指定レジスタ223」は、インジェクタ駆動部23の第2ポートに対応する記憶エリアであって記憶部22のうちクランク角度を記憶する記憶エリアである。
【0031】
また、演算部21は、第1噴射が実行される直前のタイミングT22において割り込み処理を実行し、第2噴射におけるインジェクタの通電時間の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第2噴射におけるインジェクタの通電時間(
図3に表した例では、500マイクロ秒)を第2通電時間レジスタ224に格納する。例えば、「第2通電時間レジスタ224」は、インジェクタ駆動部23の第2ポートに対応する記憶エリアであって記憶部22のうちインジェクタの通電時間を記憶する記憶エリアである。
【0032】
そして、インジェクタ駆動部23は、タイミングT22において第2角度指定レジスタ223に記憶されたクランク角度および第2通電時間レジスタ224に記憶されたインジェクタの通電時間に関する制御信号を第2ポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。
【0033】
続いて、演算部21は、第2噴射が実行される直前のタイミングT23において割り込み処理を実行し、第3噴射を開始するクランク角度すなわち第3噴射の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第3噴射を開始するクランク角度(
図3に表した例では圧縮行程の上死点前0°)を第1角度指定レジスタ221に格納する。
【0034】
また、演算部21は、第2噴射が実行される直前のタイミングT23において割り込み処理を実行し、第3噴射におけるインジェクタの通電時間の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第3噴射におけるインジェクタの通電時間(
図3に表した例では、500マイクロ秒)を第1通電時間レジスタ222に可能する。
【0035】
そして、インジェクタ駆動部23は、タイミングT23において第1角度指定レジスタ221に記憶されたクランク角度および第1通電時間レジスタ222に記憶されたインジェクタの通電時間に関する制御信号を第1ポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。
【0036】
仮に、第4噴射が第3噴射の次に実行される場合には、演算部21は、第3噴射が実行される直前のタイミングT24において、タイミングT22に関して前述した制御と同様の制御を実行する。
【0037】
ここで、
図3に表したインジェクタ制御装置2Aの制御では、インジェクタ駆動部23が、各レジスタに記憶されたクランク角度およびインジェクタの通電時間に関する制御信号を2つのポート(第1ポートおよび第2ポート)を使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信している。これにより、インジェクタ駆動部23は、対象の噴射が実行される直前に対象の噴射の次に実行される噴射の事前設定を行うことにより、対象の噴射と、対象の噴射の次に実行される噴射と、の間の期間が比較的短い場合であっても、対象の噴射と、対象の噴射の次に実行される噴射と、を確実に実行することができる。しかし、そうすると、ECUの一部として機能するインジェクタ制御装置2Aの回路が複雑化したり大型化したりすることがある。
【0038】
これに対して、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2の演算部21は、対象の噴射が終了した時に、対象の噴射の次に実行される噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量(すなわちインジェクタの通電時間)の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、対象の噴射の次に実行される噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量(すなわちインジェクタの通電時間)を記憶部22に格納する。以下、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2の制御を、
図2を参照してさらに説明する。
【0039】
図2に表したインジェクタ制御装置2は、
図3に関して前述したインジェクタ制御装置2Aと同様に、第1噴射、第2噴射および第3噴射の制御をこの順に実行する。
【0040】
演算部21は、第1噴射が実行される前のタイミングT11において、第1噴射を開始するクランク角度すなわち第1噴射の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第1噴射を開始するクランク角度(
図2に表した例では圧縮行程の上死点前60°)を第1角度指定レジスタ221に格納する。「第1角度指定レジスタ221」は、
図3に関して前述した通りである。
【0041】
また、演算部21は、第1噴射が実行される前のタイミングT11において、第1噴射におけるインジェクタの通電時間(すなわち燃料の噴射量)の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第1噴射におけるインジェクタの通電時間(
図2に表した例では、300マイクロ秒)を第1通電時間レジスタ222に格納する。「第1通電時間レジスタ222」は、
図3に関して前述した通りである。
【0042】
そして、インジェクタ駆動部23は、タイミングT11において第1角度指定レジスタ221に記憶されたクランク角度および第1通電時間レジスタ222に記憶されたインジェクタの通電時間に関する制御信号を第1ポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。
【0043】
続いて、演算部21は、第1噴射が終了した時(タイミングT12)に、第2噴射を開始するクランク角度すなわち第2噴射の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第2噴射を開始するクランク角度(
図2に表した例では圧縮行程の上死点前30°)を第1角度指定レジスタ221に格納する。
【0044】
また、演算部21は、第1噴射が終了した時(タイミングT12)に、第2噴射におけるインジェクタの通電時間の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第2噴射におけるインジェクタの通電時間(
図2に表した例では、500マイクロ秒)を第1通電時間レジスタ222に格納する。
【0045】
ここで、演算部21は、インジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)を流れる電流の波形の立ち下がり時を第1噴射が終了した時として検知している。つまり、演算部21は、インジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)を流れる電流の波形の立ち下がり時を起点にして、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、燃料の噴射時期を第1角度指定レジスタ221に格納する。また、演算部21は、インジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)を流れる電流の波形の立ち下がり時を起点にして、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射量(すなわちインジェクタの通電時間)の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として燃料の噴射量を第1通電時間レジスタ222に格納する。これにより、演算部21は、第1噴射が終了した時をより確実に検知し、第1噴射が終了した時を起点にして第2噴射の設定を行うことができる。
【0046】
そして、インジェクタ駆動部23は、タイミングT12において第1角度指定レジスタ221に記憶されたクランク角度および第1通電時間レジスタ222に記憶されたインジェクタの通電時間に関する制御信号を第1ポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。
【0047】
続いて、演算部21は、第2噴射が終了した時(タイミングT13)に、第3噴射を開始するクランク角度すなわち第3噴射の噴射時期の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第3噴射を開始するクランク角度(
図2に表した例では圧縮行程の上死点前0°)を第1角度指定レジスタ221に格納する。
【0048】
また、演算部21は、第2噴射が終了した時(タイミングT13)に、第3噴射におけるインジェクタの通電時間の演算を実行する。また、演算部21は、演算結果として、第3噴射におけるインジェクタの通電時間(
図2に表した例では、500マイクロ秒)を第1通電時間レジスタ222に格納する。
【0049】
ここで、演算部21は、タイミングT12に関して前述した場合と同様に、インジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)を流れる電流の波形の立ち下がり時を第2噴射が終了した時として検知している。これにより、第1噴射に関して前述した効果と同様に、演算部21は、第2噴射が終了した時をより確実に検知し、第2噴射が終了した時を起点にして第3噴射の設定を行うことができる。
【0050】
そして、インジェクタ駆動部23は、タイミングT13において第1角度指定レジスタ221に記憶されたクランク角度および第1通電時間レジスタ222に記憶されたインジェクタの通電時間に関する制御信号を第1ポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。
【0051】
仮に、第4噴射が第3噴射の次に実行される場合には、演算部21は、第3噴射が終了した時(タイミングT14)に、タイミングT12およびタイミングT13に関して前述した制御と同様の制御を実行する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2によれば、演算部21は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分割する多段噴射のうちの第1噴射が終了した時に、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。そのため、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2は、第1噴射が実行される直前に割り込み処理を実行しなくとも、第1噴射の次に実行される第2噴射の設定を行うことができる。そのため、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2は、燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号を複数のポートを使用してインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信しなくとも、第1噴射および第2噴射を確実に実行することができる。これにより、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2は、回路を簡易化あるいは小型化することができる。
【0053】
ここで、演算部21は、インジェクタ31を流れる電流の波形の立ち下がり時を第1噴射が終了した時として検知する。つまり、演算部21は、インジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)を流れる電流の波形の立ち下がり時を起点にして、第1噴射の次に実行される第2噴射において噴射される燃料の噴射時期および噴射量の演算を実行する。これにより、演算部21は、第1噴射が終了した時をより確実に検知し、第1噴射が終了した時を起点にして第2噴射の設定を行うことができる。
【0054】
また、インジェクタ駆動部23は、演算部21により記憶部22に記憶された噴射時期および噴射量に基づいてインジェクタ31の駆動を制御し、1つのポートのみを使用して燃料の噴射時期および噴射量に関する制御信号をインジェクタ31(
図1に表した例では3つのインジェクタ31のうち対応する1つ)に送信する。これにより、本実施形態に係るインジェクタ制御装置2は、回路をより一層簡易化あるいは小型化することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0056】
2:インジェクタ制御装置、 2A:インジェクタ制御装置、 3:エンジン、 4:スロットルセンサ、 21:演算部、 22:記憶部、 23:インジェクタ駆動部、 31:インジェクタ、 221:第1角度指定レジスタ、 222:第1通電時間レジスタ、 223:第2角度指定レジスタ、 224:第2通電時間レジスタ