(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】電磁アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/121 20060101AFI20241107BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20241107BHJP
H01F 7/126 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01F7/16 F
H01F7/16 K
(21)【出願番号】P 2020188647
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】原 昌之
(72)【発明者】
【氏名】古野 貴広
(72)【発明者】
【氏名】河原 寛之
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-077841(JP,A)
【文献】特開昭51-114553(JP,A)
【文献】実開昭56-091910(JP,U)
【文献】実開平04-121512(JP,U)
【文献】特開2007-132365(JP,A)
【文献】特開2005-300922(JP,A)
【文献】特開2015-137722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0333863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/121
H01F 7/126
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの周囲に配置されたコイルと、
前記コイルによって作動されるプランジャと、
前記シャフトを巻回し該シャフトとの間に楔空間を形成する楔部材と、
前記楔空間に配置された転動体と、
前記転動体の配置を保持するリテーナと、
前記リテーナを付勢する弾性部材と、
前記リテーナに形成され前記プランジャと係合される係合部とを備え、
前記プランジャによって前記弾性部材とは逆方向に前記リテーナを移動させる電磁アクチュエータにおいて、
前記楔部材にはシャフト軸方向に複数段の楔空間が形成されていて、前記リテーナにはシャフト軸方向に複列の転動体が保持されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記リテーナは、
前記シャフトを挿通する略円筒形の第1リテーナと、
前記第1リテーナの側面に嵌合される複数の第2リテーナとを含み、
前記第2リテーナは第1リテーナに対してシャフト軸方向に摺動可能であって、
前記リテーナを付勢する弾性部材は、
前記第1リテーナを付勢する第1弾性部材と、
前記第2リテーナを付勢する第2弾性部材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2弾性部材は、前記第1リテーナに対して前記第2リテーナを突っ張って付勢することを特徴とする請求項2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記第2弾性部材は、前記プランジャに対して前記第2リテーナを突っ張って付勢することを特徴とする請求項2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記第2リテーナは、前記第1リテーナの対向する2面を連結した枠形状をしていることを特徴とする請求項
2から4のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐荷重軸保持機構を備えた電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁アクチュエータはソレノイドを用いて様々な動作を行うものであるが、その一つにシャフトの直線運動の保持(拘束)または開放を行うものがある。特許文献1に記載の拘束機構は、電磁アクチュエータにおいて好適に使用されるものであり、非通電時はシャフトを拘束し、通電時は拘束を解除する。特許文献1の第1図を参照して説明すると、本体1と軸6の間の円錐内面に球3を挿入し、本体1の円錐状穴の表面と軸6との間の狭い箇所(楔空間)に球3を食い込ませることで軸6と本体1の相対運動を拘束する(ワンウェイクラッチ)。球3は玉押しばね4によって狭い箇所に付勢されている。ソレノイド7によって拘束制御用キャップ7を本体側に吸引すると、球3を押して拘束を妨げるか、あるいは解除する。特許文献1に記載の拘束機構によれば、楔機構を利用して、シャフトの拘束と解除を電気的に行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保持機構(拘束機構)であるからには、耐荷重を高めたいという要請がある。しかしながら、楔機構を採用する上では、玉または軸の降伏点を越える荷重は拘束できないため、全体としての耐荷重は玉数に比例するということができる。そして特許文献1の構造では、シャフトの軸径や玉の寸法により配置できる玉数が制限されるため、耐荷重を向上させることが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、楔機構を用いた軸保持機構を備え、その耐荷重を高めた電磁アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電磁アクチュエータの代表的な構成は、シャフトと、シャフトの周囲に配置されたコイルと、コイルによって作動されるプランジャと、シャフトを巻回し該シャフトとの間に楔空間を形成する楔部材と、楔空間に配置された転動体と、転動体の配置を保持するリテーナと、リテーナを付勢する弾性部材と、リテーナに形成されプランジャと係合される係合部とを備え、プランジャによって弾性部材とは逆方向にリテーナを移動させる電磁アクチュエータにおいて、楔部材にはシャフト軸方向に複数段の楔空間が形成されていて、リテーナにはシャフト軸方向に複列の転動体が保持されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、楔空間を複数段にし、それに応じて楔である転動体も複列としたことにより、耐荷重を任意に増大させることが可能となる。したがって、楔機構を用いた軸保持機構を備えた電磁アクチュエータにおいて、耐荷重を飛躍的に高めることができる。
【0008】
リテーナは、シャフトを挿通する略円筒形の第1リテーナと、第1リテーナの側面に嵌合される複数の第2リテーナとを含み、第2リテーナは第1リテーナに対してシャフト軸方向に摺動可能であって、リテーナを付勢する弾性部材は、第1リテーナを付勢する第1弾性部材と、第2リテーナを付勢する第2弾性部材とを含んでいてもよい。
【0009】
上記構成によれば、複列の転動体をそれぞれ楔空間の斜面に当接させることができるため、各列の転動体を楔として確実に機能させることができる。
【0010】
第2弾性部材は、第1リテーナに対して第2リテーナを突っ張って付勢していてもよい。また、第2弾性部材は、プランジャに対して第2リテーナを突っ張って付勢していてもよい。いずれの場合も、第1リテーナの転動体が楔空間の斜面に突き当たっているときに第2リテーナの転動体を斜面に突き当てることができると共に、第1リテーナをプランジャで引けば第2リテーナの転動体を斜面から離すことができる。
【0011】
第2リテーナは、第1リテーナの対向する2面を連結した枠形状をしていてもよい。これにより第2リテーナの転びを防止することができ、第2リテーナをシャフト軸方向に確実に摺動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、楔機構を用いた軸保持機構を備え、その耐荷重を高めた電磁アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態にかかる電磁アクチュエータ100を説明する図である。
【
図2】リテーナと転動体を説明する側面図および断面図である。
【
図5】第2実施形態にかかる電磁アクチュエータ300を説明する図である。
【
図6】リテーナと転動体を説明する側面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0015】
図1は第1実施形態にかかる電磁アクチュエータ100を説明する図である。電磁アクチュエータ100は、下記に述べる機構によって、シャフト110の直線運動の保持(拘束)または開放を行う機能を有する。
【0016】
概略円筒形のボディ120の内部には、シャフト110の周囲に配置されたコイル130と、コイル130とシャフト110の間に配置された円筒形のヨーク140(固定鉄心)と、コイル130によって作動されるプランジャ150(可動鉄心)とを備えている。ボディ120の後端側(図示下側)の開口(プランジャ150の移動方向の端の開口)には、プランジャ150の移動を制限するストッパ160を備えている。
【0017】
ボディ120の先端側(図示上側)の開口には、ガイド部材170が取り付けられている。ガイド部材170の上端の開口172はシャフト110の移動をガイドする。ガイド部材170の両側の羽根174には、不図示の装置本体に締結するためのボルト穴174aが形成されている。
【0018】
ガイド部材170の円筒部分は楔部材176となっていて、楔部材176は内面に多段の円錐台形状が形成されていて、これによりシャフト軸方向に複数段の楔空間178が形成されている。すべての楔空間の斜面178aは電磁アクチュエータ100の先端側に向かって隙間が狭くなる方向に向いている。
【0019】
多段の楔空間178の内部には、楔空間178の段数に応じた数の複列の転動体180がシャフト軸方向に配置されている。転動体180は、第1リテーナ200および複数の第2リテーナ210によって配置が保持される。
【0020】
図2はリテーナと転動体を説明する側面図および断面図であり、
図3はリテーナと転動体を説明する斜視図である。
【0021】
図2に示す例では、第1リテーナ200には1列の転動体180が保持されていて、第2リテーナ210は3列備えられているため、転動体180は合計4列になっている。本実施形態において転動体180はころ(ほぼ円柱形)であり、中央部はシャフト110に沿うようにくびれている。
【0022】
第1リテーナ200はシャフト110を挿通する略円筒形の長い筒(スリーブ)である。
図2(b)に示すように、第1リテーナ200のポケット202に1列の転動体180(本実施形態では6個)を保持している。
【0023】
また
図2(a)および
図3に示すように、第1リテーナ200の側面には横穴204が形成されていて、複数の第2リテーナ210が嵌合される。第2リテーナ210の配置(すなわち横穴204の配置)は、第1リテーナ200の対向する2面に取り付けられて転動体1列をなし、これを3列繰り返して、都合6つの第2リテーナ210が取り付けられている。
【0024】
図2(c)に示すように、本実施形態では、1つの第2リテーナ210には2つのポケット212が形成されている。1つの第2リテーナ210に保持される転動体180は2個である。したがって一列の転動体180は4個である。
【0025】
第2リテーナ210のシャフト軸方向の側辺にはリブ214が形成されている。一方、第1リテーナ200の横穴204の側辺には溝204aが形成されている。そして横穴204のシャフト軸方向の幅は、第2リテーナ210のそれよりも大きくなっている。これにより、第2リテーナ210は第1リテーナ200に対してシャフト軸方向に摺動可能となっている。
【0026】
図2(a)に示すように、第1リテーナ200の後端側には、プランジャ150と係合される係合部としてのフランジ206が外側に突出して形成されている。一方、
図1に示すように、プランジャ150の先端側には内側に突出するフランジ152が形成されている。第1リテーナ200のフランジ206とプランジャ150のフランジ152は通過できない寸法となっている。
【0027】
プランジャ150の内部には第1弾性部材としてのコイルスプリング190が備えられていて、ストッパ160に対して第1リテーナ200を突っ張って付勢している。これに伴いフランジ206,152が当接することから、プランジャ150も先端側に付勢される。プランジャ150による第1リテーナ200の移動方向は、コイルスプリング190による付勢方向に対して逆方向である。コイル130が励磁されてプランジャ150がストッパ160に向かって移動すると(図示下方向に移動すると)、フランジ152,206が当接することから、第1リテーナ200が下方向に引かれる。
【0028】
また
図2(a)に示すように、第1リテーナ200は、横穴204のそれぞれの後端側にフランジ208が形成されている。一方、第2リテーナ210にも、後端側にフランジ216が形成されている。そして
図3によく示されるように、フランジ208,216の間には、各段ごとに、第1リテーナ200に対して第2リテーナ210を突っ張って付勢する第2弾性部材としての皿ばね220が備えられている。
【0029】
図4は楔機構の動作を説明する図であって、
図4(a)はコイルが非励磁のときを示し、
図4(b)はコイルが励磁されているときを示している。
【0030】
図4(a)に示すように、コイル130が非励磁のときには、コイルスプリング190によって第1リテーナ200が先端側(図示上方向)に付勢される。すると第1リテーナ200に保持された転動体180(最下段の列)が楔空間の斜面178aに当接する。このとき各第2リテーナ210は皿ばね220によって先端側に付勢されているから、第2リテーナ210に保持された転動体180も楔空間の斜面178aに当接する。
【0031】
この状態においてシャフト110が先端側に向かって引き抜かれようとすると、各列の転動体180がシャフト110と楔空間の斜面178aの狭い箇所に強く食い込み、シャフト110の移動を規制する。シャフトが後端側(図示下方向)に向かって押し込まれるときは、転動体180が楔空間の斜面178aから浮いてしまうため規制することができず、シャフト110は移動する。このようにして、楔機構はワンウェイクラッチとして機能する。
【0032】
図4(b)に示すように、コイル130が励磁されると、プランジャ150が後端側に移動し、これに伴って第1リテーナ200も後端側に向かって移動する。すると第1リテーナ200に保持された転動体180が楔空間の斜面178aから離れる。同時に、各第2リテーナ210も第1リテーナ200に引かれて後端側に移動して、第2リテーナ210に保持された転動体180も楔空間の斜面178aから離れる。するとシャフト110は先端側にも後端側にも規制なくフリーに移動することが可能になる。
【0033】
以上説明したように、楔空間178を複数段にし、それに応じて楔である転動体180も複列としたことにより、耐荷重を任意に増大させることが可能となる。したがって、楔機構を用いた軸保持機構を備えた電磁アクチュエータ100において、耐荷重を飛躍的に高めることができる。
【0034】
特に、各列の転動体を保持するリテーナを列ごとに分割し(第1リテーナ200と複数の第2リテーナ210)、各リテーナを楔空間の斜面178aに向かって付勢するようにしたことにより、複列の転動体180をそれぞれ楔空間の斜面178aに当接させることができるため、各列の転動体を楔として確実に機能させることができる。
【0035】
本発明にかかる電磁アクチュエータの第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図5は第2実施形態にかかる電磁アクチュエータ300を説明する図である。本実施形態においてガイド部材310は、楔部材320と別体になっている。ガイド部材310の上端の開口312はシャフト110の移動をガイドする。ガイド部材310の両側の羽根314には、不図示の装置本体に締結するためのボルト穴314aが形成されている。
【0037】
ガイド部材310の内部には概略円筒形の楔部材320が取り付けられている。楔部材320は内面に多段の円錐台形状が形成されていて、これによりシャフト軸方向に複数段の楔空間328が形成されている。すべての楔空間の斜面328aは電磁アクチュエータ300の先端側に向かって隙間が狭くなる方向に向いている。
【0038】
図6はリテーナと転動体を説明する側面図および断面図であり、
図7はリテーナと転動体を説明する斜視図である。
図6に示す例では、第1リテーナ330には1列の転動体180が保持されていて、第2リテーナ340は1列備えられているため、転動体180は合計2列になっている。
【0039】
第1リテーナ330はシャフト110を挿通する略円筒形の長い筒(スリーブ)である。
図2(6)に示すように、第1リテーナ330のポケット332に1列の転動体180を保持している。本実施形態では第1リテーナ330に保持される列の転動体180は6個である。
【0040】
また
図6(a)および
図7に示すように、第1リテーナ330の側面には横穴334が形成されていて、第2リテーナ340が嵌合される。ここで
図6(c)および
図7に示すように、本実施形態にかかる第2リテーナ340は、第1リテーナ330の対向する2面を連結部344で連結した枠形状をしている。第2リテーナ340が枠形状をしていることにより、第2リテーナの転び(倒れ)を防止することができ、第2リテーナ340をシャフト軸方向に確実に摺動させることができる。第2リテーナ340には、片面につき2つのポケット342が形成され、2面で4個の転動体180が保持されている。したがって一列の転動体180は4個である。
【0041】
第2リテーナ340の連結部344の中央には、シャフト軸方向に延びる係合爪346が形成されている。一方、第1リテーナ330の内部には、係合爪346に対応する係合溝336が形成されている。そして横穴334のシャフト軸方向の幅は、第2リテーナ340のそれよりも大きくなっている。これにより、第2リテーナ340を横穴334に確実に嵌めることができると共に、第2リテーナ340は第1リテーナ330に対してシャフト軸方向に摺動可能となっている。
【0042】
図6(a)に示すように、第1リテーナ330の後端側には、プランジャ150と係合される係合部としてのフランジ338が外側に突出して形成されている。第1リテーナ330のフランジ338とプランジャ150のフランジ152は通過できない寸法となっている。
【0043】
プランジャ150の内部には第1弾性部材としてのコイルスプリング190が備えられていて、ストッパ160に対して第1リテーナ330を突っ張って付勢している。これに伴いフランジ338,152が当接することから、プランジャ150も先端側に付勢される。プランジャ150による第1リテーナ330の移動方向は、コイルスプリング190による付勢方向に対して逆方向である。コイル130が励磁されてプランジャ150がストッパ160に向かって移動すると(図示下方向に移動すると)、フランジ152,338が当接することから、第1リテーナ330が下方向に引かれる。
【0044】
また
図6(a)に示すように、第2リテーナ340には、転動体180より後端側にフランジ348が形成されている。そして
図5に示すように、プランジャ150に対して第2リテーナ340を突っ張って付勢する第2弾性部材としてのコイルスプリング350が備えられている。すなわち、第1リテーナ330に保持された転動体180はコイルスプリング190によって、第2リテーナ340に保持された転動体180はコイルスプリング350によって、それぞれ先端側に向かって付勢されている。
【0045】
図8は楔機構の動作を説明する図であって、
図8(a)はコイルが非励磁のときを示し、
図8(b)はコイルが励磁されているときを示している。
【0046】
図8(a)に示すように、コイル130が非励磁のときには、コイルスプリング190によって第1リテーナ330が先端側(図示上方向)に付勢される。すると第1リテーナ330に保持された転動体180(最下段の列)が楔空間の斜面328aに当接する。同様に、コイルスプリング350によって第2リテーナ340が先端側に付勢される。すると第2リテーナ340に保持された転動体180も楔空間の斜面328aに当接する。
【0047】
この状態においてシャフト110が先端側に向かって引き抜かれようとすると、各列の転動体180がシャフト110と楔空間の斜面328aの狭い箇所に強く食い込み、シャフト110の移動を規制する。シャフトが後端側(図示下方向)に向かって押し込まれるときは、転動体180が楔空間の斜面328aから浮いてしまうため規制することができず、シャフト110は移動する。このようにして、楔機構はワンウェイクラッチとして機能する。
【0048】
図8(b)に示すように、コイル130が励磁されると、プランジャ150が後端側に移動し、これに伴って第1リテーナ330も後端側に向かって移動する。すると第1リテーナ330に保持された転動体180が楔空間の斜面328aから離れる。同時に、第2リテーナ340も第1リテーナ330に引かれて後端側に移動して、第2リテーナ340に保持された転動体180も楔空間の斜面328aから離れる。するとシャフト110は先端側にも後端側にも規制なくフリーに移動することが可能になる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、高耐荷重軸保持機構を備えた電磁アクチュエータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…電磁アクチュエータ、110…シャフト、120…ボディ、130…コイル、140…ヨーク、150…プランジャ、152…フランジ、160…ストッパ、170…ガイド部材、172…開口、174…羽根、176…楔部材、178…楔空間、178a…楔空間の斜面、180…転動体、190…コイルスプリング、200…第1リテーナ、202…ポケット、204…横穴、204a…溝、206…フランジ、208…フランジ、210…第2リテーナ、212…ポケット、214…リブ、216…フランジ、220…皿ばね、300…電磁アクチュエータ、310…ガイド部材、312…開口、314…羽根、314a…ボルト穴、320…楔部材、328…楔空間、328a…楔空間の斜面、330…第1リテーナ、334…横穴、336…係合溝、338…フランジ、340…第2リテーナ、342…ポケット、344…連結部、346…係合爪、348…フランジ、350…コイルスプリング