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特許7583253透析装置および透析装置のプライミング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】透析装置および透析装置のプライミング方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A61M1/36 129
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020188817
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077804
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】松崎 光正
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-089499(JP,A)
【文献】特開2014-193362(JP,A)
【文献】米国特許第05893382(US,A)
【文献】特許第5999333(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に血液室と透析液室とが形成された透析器と、上記透析器の血液室に血液を流通させる血液回路と、上記透析器の透析液室に透析液を流通させる透析液回路と、上記透析液回路に設けられて透析液を送液する送液ポンプと、上記透析液回路と血液回路とを連通させる接続通路とを備え、
上記血液回路を構成する弾性を有したチューブを収容するハウジングと、当該ハウジングの内側で回転して上記チューブを圧迫しながら回転するロータとを備えた血液ポンプを設け、
プライミング作業時には上記接続通路を介して透析液回路から血液回路に透析液を流通させる透析装置において、
上記血液ポンプは、上記チューブがハウジングの外部に位置して内部を液体が流通可能にされた未装着状態から、上記チューブがハウジングに収容されて上記ロータによってチューブが圧迫されて閉鎖される装着状態へと切り替えるチューブ装着手段を有し、
上記プライミング作業時には、上記血液ポンプを上記未装着状態として、上記送液ポンプによって透析液回路から上記接続通路を介して血液回路に透析液を流入させ、上記接続通路が接続された位置から上記血液ポンプを超えて所定量の透析液が流通したら、上記ハウジングの外部に位置する上記チューブを上記チューブ装着手段によりハウジングに収容させて血液ポンプを上記装着状態にすることを特徴とする透析装置。
【請求項2】
上記接続通路に開閉弁を設けるとともに、当該開閉弁の開閉を制御する制御手段を備え、
上記プライミング作業時には、透析液回路の送液ポンプによって透析液を送液した状態で、上記制御手段が上記接続通路の開閉弁の開閉を繰り返すことにより、上記接続通路に連通する血液回路および透析器の内部にウォーターハンマー現象を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
上記透析液回路に設けた送液ポンプをマグネットギアポンプとしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の透析装置。
【請求項4】
上記接続通路は、透析治療時に透析液回路から血液回路に透析液を補液する際に使用する補液通路か、もしくは透析治療後に透析液回路から血液回路に透析液を流通させて血液回路の血液を患者に返血する際に使用する返血通路であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の透析装置。
【請求項5】
内部に血液室と透析液室とが形成された透析器と、上記透析器の血液室に血液を流通させる血液回路と、上記透析器の透析液室に透析液を流通させる透析液回路と、上記透析液回路に設けられて透析液を送液する送液ポンプと、上記透析液回路と血液回路とを連通させる接続通路とを備え、
上記血液回路を構成する弾性を有したチューブを収容するハウジングと、当該ハウジングの内側で回転して上記チューブを圧迫しながら回転するロータとを備えた血液ポンプが設けられ
透析治療を行う前のプライミング作業時には、上記接続通路を介して透析液回路から血液回路に透析液を流通させる透析装置のプライミング方法において、
上記プライミング作業中には、上記チューブハウジングから離脱さて内部を液体が流通可能な未装着状態において、上記送液ポンプを作動させて透析液回路から上記接続通路を介して血液回路に透析液を流入させ、上記接続通路が接続された位置から所定量の透析液を上記血液ポンプを超えた部分に流通させることを特徴とする透析装置のプライミング方法。
【請求項6】
上記血液ポンプ未装着状態において、上記送液ポンプを作動させて透析液回路から上記接続通路を介して血液回路に透析液を流入させて、所定量の透析液を上記血液ポンプを超えた部分に流通させた後、
上記血液ポンプのチューブハウジングに装着されるとともにロータ停止さ、チューブがロータによって圧迫された装着状態において、透析液を上記血液ポンプとは逆方向に流通させることを特徴とする請求項5に記載の透析装置のプライミング方法。
【請求項7】
上記接続通路に開閉弁設けられ
上記プライミング作業時において、透析液回路の送液ポンプを作動させて透析液を送液した状態で、上記接続通路の開閉弁を閉鎖させて上記接続通路の内圧を上昇させ、その後上記開閉弁を開放させることにより、上記接続通路に連通する血液回路および透析器の内部にウォーターハンマー現象を生じさせることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の透析装置のプライミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透析装置および透析装置のプライミング方法に関し、詳しくは血液回路および透析液回路を備えた透析装置および、上記透析液回路から血液回路に透析液を流通させて充満させる透析装置のプライミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析等において使用される透析装置は、血液透析を行う透析器に、血液を流通させる血液回路および透析液を流通させる透析液回路を接続した構成を有している。
このような透析装置では、透析治療を行う度に透析装置に新たな透析器および血液回路を装着しており、これに伴って透析器および血液回路にプライミング液を充満させるプライミングが必要とされている。
上記プライミングを行う方法として、上記透析液回路から血液回路へと透析液を血液回路に流通させて充満させる方法が知られており、このプライミング作業時には、血液回路全体に透析液を流通させるため、当該血液回路に設けた血液ポンプを用いていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6685374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記血液ポンプとしてはいわゆるチューブポンプが一般的に用いられているが、このチューブポンプは送液能力が低く、血液回路全体に透析液を流通させるのに時間がかかるという問題がある。
また、プライミング作業時には、治療時に患者に気泡が流入しないように、血液回路内に気泡を残らず除去する必要があるが、チューブポンプは送液能力(流量)が低いため、血液回路中に残存する気泡を効率的に除去できないという問題がある。
このような問題に鑑み、本発明はプライミング作業に要する時間を短縮するとともに、血液回路中に残存する気泡を効率的に除去することが可能な透析装置およびプライミング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1に記載した本発明は、内部に血液室と透析液室とが形成された透析器と、上記透析器の血液室に血液を流通させる血液回路と、上記透析器の透析液室に透析液を流通させる透析液回路と、上記透析液回路に設けられて透析液を送液する送液ポンプと、上記透析液回路と血液回路とを連通させる接続通路とを備え、
上記血液回路を構成する弾性を有したチューブを収容するハウジングと、当該ハウジングの内側で回転して上記チューブを圧迫しながら回転するロータとを備えた血液ポンプを設け、
プライミング作業時には上記接続通路を介して透析液回路から血液回路に透析液を流通させる透析装置において、
上記血液ポンプは、上記チューブがハウジングの外部に位置して内部を液体が流通可能にされた未装着状態から、上記チューブがハウジングに収容されて上記ロータによってチューブが圧迫されて閉鎖される装着状態へと切り替えるチューブ装着手段を有し、
上記プライミング作業時には、上記血液ポンプを上記未装着状態として、上記送液ポンプによって透析液回路から上記接続通路を介して血液回路に透析液を流入させ、上記接続通路が接続された位置から上記血液ポンプを超えて所定量の透析液が流通したら、上記ハウジングの外部に位置する上記チューブを上記チューブ装着手段によりハウジングに収容させて血液ポンプを上記装着状態にすることを特徴としている。
また請求項5に記載した本発明は、内部に血液室と透析液室とが形成された透析器と、上記透析器の血液室に血液を流通させる血液回路と、上記透析器の透析液室に透析液を流通させる透析液回路と、上記透析液回路に設けられて透析液を送液する送液ポンプと、上記透析液回路と血液回路とを連通させる接続通路とを備え、
上記血液回路を構成する弾性を有したチューブを収容するハウジングと、当該ハウジングの内側で回転して上記チューブを圧迫しながら回転するロータとを備えた血液ポンプが設けられ
透析治療を行う前のプライミング作業時には、上記接続通路を介して透析液回路から血液回路に透析液を流通させる透析装置のプライミング方法において、
上記プライミング作業中には、上記チューブハウジングから離脱さて内部を液体が流通可能な未装着状態において、上記送液ポンプを作動させて透析液回路から上記接続通路を介して血液回路に透析液を流入させ、上記接続通路が接続された位置から所定量の透析液を上記血液ポンプを超えた部分に流通させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、透析液回路から血液回路に対して透析液回路に設けた送液ポンプによって接続通路を介して透析液を送液するため、血液ポンプを用いて送液する場合に比べて送液量を大きくすることができ、迅速に血液回路に透析液を流通させることができ、効率的な気泡の除去が可能となる。
また血液ポンプによる送液は行わないものの、血液ポンプを未装着状態から装着状態として、チューブに透析液が流通可能な状態から、チューブがロータによって圧迫されて透析液の流通が阻止された状態に切り替えることにより、血液回路内における透析液の流通方向を制御し、血液回路の全体に透析液を充満させることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例にかかる透析装置の正面図
図2】第1実施例にかかる透析装置の回路図
図3】血液ポンプの平面図
図4】血液ポンプの斜視図
図5】血液ポンプの動作を説明する図
図6】第1実施例における第1ステップを説明する回路図
図7】第1実施例における第2ステップを説明する回路図
図8】第1実施例における第3ステップを説明する回路図
図9】第1実施例における第4ステップを説明する回路図
図10】第2実施例における第1ステップを説明する回路図
図11】第2実施例における第2ステップを説明する回路図
図12】第2実施例における第3ステップを説明する回路図
図13】第2実施例における第4ステップを説明する回路図
図14】第2実施例における第5ステップを説明する回路図
図15】第3実施例における第1ステップを説明する回路図
図16】第3実施例における第2ステップを説明する回路図
図17】第3実施例における第3ステップを説明する回路図
図18】第3実施例における第4ステップを説明する回路図
図19】第4実施例を説明する回路図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は本実施例にかかる透析装置1の正面図を示し、図2はこの透析装置1の回路図を示している。
上記透析装置1は、血液透析を行う透析器2と、透析器2に血液を流通させる血液回路3と、透析器2に透析液を流通させる透析液回路4とを備え、図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
図1に示すように、血液回路3のほとんどが透析装置1を構成する本体部5の前面に露出するように設けられ、これに対し透析液回路4のほとんどは透析装置1の内部に収容されたものとなっている。
また上記本体部5の上部には、患者の状態等を表示するとともに必要な操作を行うためのタッチパネル6が設けられており、また側面には上記透析器2を保持するための透析器ホルダ7が設けられている。
さらに上記本体部5の正面には、血液回路3を構成する血液ポンプ8やドリップチャンバ9や薬剤注入用のシリンジ10が保持され、また透析液回路4の端部に設けられた第1~第3接続ポートP1~P3と、本体部5に設けられた血液回路3用のセンサに血液回路3を接続するための第1、第2センサ用ポートP4,P5とが設けられている。
そして図1図2は、上記透析装置1のプライミング作業時の状態を示しており、ここでプライミング作業とは、透析治療を行う前に上記透析装置1に透析器2および血液回路3を接続して、透析器2および血液回路3に透析液を充満させる作業を言う。
なお以下に行う透析装置1の説明では、上記プライミング作業に関連する構成についての説明を行うものとし、直接的に関連しない構成についての図示や説明を省略するものとする。
【0009】
上記透析器2は樹脂製の筒状部11と、筒状部11の内部に設けられた複数の中空糸12とを備えており、中空糸12の内部は血液が流通する血液室2aを、中空糸12の外部は透析液が流通する透析液室2bを形成している。
上記筒状部11の両端部にはキャップ13が設けられており、キャップ13の中央には上記血液回路3が接続されて上記血液室2aに連通し、またキャップ13の側部には上記透析液回路4が接続されて上記透析液室2bに連通するようになっている。
そして図1に示すように、透析器2は上記キャップ13が上下に位置するように上記透析器ホルダ7に保持され、透析治療中は、血液が上記血液室2aを図示上方から下方に向けて流通(図2においては図示左方から右方)し、透析液は透析液室2bを図示下方から上方に向けて流通(図2においては図示右方から左方)するようになっている。
【0010】
上記血液回路3は、患者の動脈から透析器2の血液室2aに血液を送液するための動脈側通路21と、血液室2aから患者の静脈に血液を戻すための静脈側通路22とを備え、図1において動脈側通路21は上記透析器2の上部に接続され、静脈側通路22が透析器2の下部に接続されるようになっている。
図2において、上記動脈側通路21の端部には治療時に穿刺針が装着されるコネクタ21aが設けられており、当該コネクタ21aに対して隣接した位置から順に、制御手段によって制御される動脈側クランプV1と、透析治療後に血液回路3の血液を患者に戻す際に使用する接続通路としての返血通路23Aと、本体部5に設けられた動脈側圧力センサS1に接続される圧力測定用通路24と、上記シリンジ10の接続される薬剤供給通路25とが設けられている。
そして動脈側通路21における上記薬剤供給通路25と透析器2との間には上記血液ポンプ8が設けられている。
【0011】
上記動脈側通路21のコネクタ21aには透析治療の際に穿刺針が連結されて、患者の動脈に穿刺されるようになっている。一方、図1図2に示すプライミング中には第1プライミング用配管26の一端が接続されるようになっている。
上記動脈側クランプV1は本体部5の正面に設けられたケース5a内に収容されており、当該ケース5aの図示下方側に動脈側通路21のコネクタ21aが位置するようになっている。
上記返血通路23Aは本発明にかかる接続通路の一部を構成し、後述するように透析液回路4を構成する返血通路23Bの端部に設けられた第1接続ポートP1に接続されて返血通路23を構成するようになっている。
【0012】
上記第1接続ポートP1は上記本体部5の正面に設けられており、後述する第2、第3接続ポートP2、P3も第1接続ポートP1と同じ構成を有している。このような接続ポートPとしては特許第5920575公報に記載されている構成を使用することができる。
当該構成は従来公知であるため詳細な説明については省略するが、第1接続ポートP1は上記透析液回路4を構成する返血通路23Bの端部に設けられたコネクタ27と、本体部5の正面に回転可能に設けられた蓋部材28とから構成されている。
上記コネクタ27は上記本体部5の表面に露出するように設けられており、上記蓋部材28を回転させることで、上記コネクタ27を外部に露出させたり、外部に露出しないように覆うことが可能となっている。
一方、血液回路3側の返血通路23Aの端部にもコネクタが設けられており、透析治療時には上記第1接続ポートP1の蓋部材28を回転させて上記返血通路23Bのコネクタ27を露出させ、当該返血通路23Aのコネクタを接続することで、上記返血通路23Aと返血通路23Bとが連通するようになっている。
【0013】
図1において、動脈側圧力センサS1は本体部5の正面に第1センサ用ポートP4を備えており、上記圧力測定用通路24の端部は当該第1センサ用ポートP4に連結されるようになっている。
上記薬剤供給通路25の端部には薬剤を収容したシリンジ10が接続され、当該シリンジ10は図1に示すように本体部5の正面に保持されるとともに、透析治療時にはシリンジ10から薬剤が血液回路3に供給されるようになっている。
【0014】
上記血液ポンプ8としては、図3~5に示すたとえば特許第5397747号公報に記載された構成を用いることができる。図3は血液ポンプ8の正面図を、図4は血液ポンプ8の斜視図を、図5は血液ポンプ8の作動状態をそれぞれ説明する図となっている。
従来公知であるため具体的な説明は省略するが、上記血液ポンプ8はいわゆるチューブポンプとなっており、本体部の正面に鉛直方向に配置されたハウジング31と、当該本体部5の内部で回転されるロータ32とを備えている。
上記血液ポンプ8は、動脈側通路21を構成するチューブ33を馬蹄形(略U字形状)に変形させて、上記ハウジング31とロータ32との間に収容して使用するようになっている。
上記ロータ32の外周にはローラ32aが設けられており、上記ローラ32aは上記ハウジング31の内壁との間で上記チューブ33を圧迫するようになっており、ロータ32を回転させるとローラ32aがチューブ33を圧迫しながら移動し、チューブ33内の液体が押し出されることで送液されるようになっている。
【0015】
そして本実施例の血液ポンプ8は、上記チューブ33を自動的に上記ハウジング31とロータ32との間に押し込むチューブ装着手段を備えている。
ここで、上記チューブ33には上記動脈側通路21を構成する他の部分よりも大径のものを使用し、また馬蹄形に変形させた状態で両端部を樹脂製のホルダ34によって保持するようになっている。
上記ホルダ34に保持されたチューブ33の両端部にはそれぞれ動脈側通路21の他の部分が接続され、上記ハウジング31には、上記ロータ32およびチューブ33を収容する部分に隣接した位置に、上記ホルダ34を保持するための保持部31aが設けられている。
具体的には、上記ホルダ34の上下には棒状突起34aが形成されており、上記保持部31aには上記棒状突起34aが係合するための係合溝31bが形成されている。
このような構成により、医療従事者が血液回路3を血液ポンプ8に装着する際には、上記ホルダ34の棒状突起34aを上記ハウジング31の保持部31aに形成された係合溝31bに係合させればよい。
このとき、医療従事者はチューブ33をハウジング31とロータ32との間に押し込む必要はなく、後述するプライミング作業の途中に、上記チューブ装着手段が自動的に装着するようになっている。
【0016】
上記チューブ装着手段は、上記ロータ32の上記ローラ32aに隣接した位置に設けられたガイドピン35を有し、このガイドピン35は上記ロータ32の回転に伴ってチューブ33をハウジング31とロータ32との間に押し込むものとなっている。
以下、図5を用いて上記チューブ装着手段の動作について説明すると、まず図5(a)は上記ホルダ34によってチューブ33を血液ポンプ8に装着したものの、チューブ33がハウジング31に収容されていない未装着状態を示している。
この未装着状態では、上記チューブ33は上記ハウジング31およびロータ32に対して前方に位置していることから、チューブ33はハウジング31とロータ32とによって圧迫されておらず、チューブ33内を液体が流通可能な状態となっている。
【0017】
このチューブ33の未装着状態から上記ロータ32を回転させると、(b)に示すように上記ガイドピン35が上記チューブ33における上記ホルダ34に隣接した部分に係合し、その後さらにロータ32が回転すると、ガイドピン35がチューブ33をハウジング31とロータ32との間に押し込むようになっている。
その後さらにロータ32が回転すると、(c)に示すようにチューブ33の全体がハウジング31とロータ32との間に押し込まれ、チューブ33がハウジング31に収容された装着状態となる。
この装着状態では、上記チューブ33は上記ハウジング31およびロータ32の間に収容されて、上記ロータ32によって一部が圧迫されるようになっており、チューブ33内の液体の流通が阻止される。
【0018】
このように、上記血液ポンプ8を(a)に示す未装着状態とすることで上記チューブ33内に液体を流通させることができ、血液ポンプ8を超えて液体を流通させることができる。
一方、血液ポンプ8を(c)に示す装着状態とすることで上記チューブ33内の液体の流通を阻止することができ、血液ポンプ8を超えて液体を流通させることができないようになっている。
換言すると、この血液ポンプ8を未装着状態から装着状態とすることで、当該血液ポンプ8を開閉弁のように使用することが可能となっている。
なお上記血液ポンプ8としては、上記構成のものに限らず、上記ロータ32に3つ以上のローラ32aを備えているものや、ハウジング31内において上記チューブ33が略馬蹄形ではなく、コーナー部が略90°に屈曲するように収容されるものであってもよい。
【0019】
次に、上記静脈側通路22は図1において透析器2の下端部に接続されており端部には透析治療時に穿刺針が装着されるコネクタ22aが設けられている。
また図2に示すように、静脈側通路22には、透析器2側から順に、透析治療中に補液を行うための補液通路41Aと、流通する血液中の空気を除去する上記ドリップチャンバ9と、制御手段によって制御される静脈側クランプV2とが設けられている。
上記静脈側通路22のコネクタ22aは図1において上記本体部5のケース5aよりも図示下方側に位置し、プライミング中には上記第1プライミング用配管26が接続されて、上記動脈側通路21と連通するようになっている。
また上記静脈側クランプV2は図1において上記ケース5a内に収容されており、本実施例において上記動脈側通路21の動脈側クランプV1と上記静脈側クランプV2とは同じケース5a内に収容されるようになっている。
上記補液通路41Aの端部にはコネクタが設けられており、透析治療中には上記透析液回路4を構成する補液通路41Bの端部に設けられた第2接続ポートP2に接続され、本発明にかかる接続通路としての補液通路41を構成するようになっている。
【0020】
上記ドリップチャンバ9は図1に示すように透析装置1の本体部5の正面に保持された筒状の容器42と、当該容器42の上方に装着されたキャップ43とによって構成されている。そして静脈側通路22の透析器2側の通路が当該容器42の上方の側面に接続され、コネクタ22a側の通路が容器42の下端部に接続されている。
ドリップチャンバ9のキャップ43には、圧力測定用通路44を介して静脈側圧力センサS2が接続され、また容器42内の液体を排出するためのオーバーフロー用通路45が接続されている。
上記静脈側圧力センサS2は本体部5の正面に第2センサ用ポートP5を備えており、透析治療時には上記圧力測定用通路44が接続されるようになっている。
また上記圧力測定用通路44には液面調整用通路47が接続されており、当該液面調整用通路44には制御手段によって制御される第24開閉弁V24と、エアフィルタ48とが設けられており、医療従事者が上記タッチパネル6を操作して上記第24開閉弁V24を作動させることで、容器42内の液面の高さを任意に調整できるようになっている。
プライミング作業時には、上記オーバーフロー用通路45の端部に第2プライミング用配管46が接続され、当該第2プライミング用配管46は上記透析液回路4を構成する下記プライミング用通路63の第3接続ポートP3に接続されるようになっている。
そしてプライミング作業終了後には、上記オーバーフロー用通路45および第3接続ポートP3から第2プライミング用配管46が除去されるようになっている。
上記オーバーフロー用通路45には手動式のクランプV3が設けられ、第2プライミング用配管46を除去する際には、医療従事者が上記クランプV3を操作してオーバーフロー用通路45をあらかじめ閉鎖するようになっている。
【0021】
次に、上記透析液回路4について説明すると、透析液回路4は、ダイアフラムによって内部に供給室51a、52aおよび回収室51b、52bが形成された第1、第2透析液チャンバ51、52と、上記供給室51a、52aに清浄水を供給する給液通路53と、供給室51a、52aから透析器2へと透析液を供給する透析液供給通路54と、透析器2から回収室51b、52bへと使用済み透析液を回収する透析液回収通路55と、上記回収室51b、52bから使用済み透析液を排出する排液通路56とを備えている。
上記給液通路53からは、上記第1、第2透析液チャンバ51、52の供給室51a、52aに対して清浄水および透析液の原液が交互に流入し、供給室51a、52aの内部で透析液が調製されるようになっている。
そして供給室51a、52aに清浄水および原液が流入することでダイアフラムが変形し、回収室51b、52bからは流入したのと同量の使用済みの透析液が排液通路56へと排出されるようになっている。
一方、上記透析液回収通路55からは、透析器2を通過した使用済み透析液が回収室51b、52bに交互に流入し、これによりダイアフラムが変形して、供給室51a、52aからは流入したのと同量の新たな透析液が透析液供給通路54から透析器2へと供給されるようになっている。
【0022】
上記給液通路53は、上流側の端部が清浄水を供給する図示しない給水源に接続され、給水源側の上流側から順に、制御手段によって制御される第4開閉弁V4、上記排液通路56と連通する第1バイパス通路57、上記清浄水を送液する送液ポンプとしての給液ポンプ58、給液通路53に透析液の原液を供給する透析液原液供給手段59、圧力を測定する圧力センサS3が設けられ、当該圧力センサS3の下流側において給液通路53は上記第1、第2透析液チャンバ51、52に向けて分岐し、分岐した通路には制御手段によって制御される給液弁V5、V6がそれぞれ設けられている。
第1バイパス通路57は他端が上記排液通路56に接続され、途中には制御手段によって制御される第7開閉弁V7が設けられている。さらに当該第7開閉弁V7の上流側には上記透析液回収通路55との間に第2バイパス通路60が設けられ、当該第2バイパス通路60には制御手段によって制御される第8開閉弁が設けられている。
上記透析液原液供給手段59は、上記給液通路53を介して上記第1、第2透析液チャンバ51、52の供給室51a、52aに対し、透析液の原料となるA原液およびB原液を所定量ずつ供給するものとなっている。
【0023】
上記透析液供給通路54の上流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ51、52の供給室51a、52aに接続され、下流側の端部は図1における透析器2の下方側の端部に接続されて上記透析液室2bに連通するようになっている。
さらに透析液供給通路54における上記分岐部分にはそれぞれ供給弁V9、V10が設けられ、当該分岐部分よりも下流側となる位置には、上流側から順に、透析液中のエンドトキシンなどを吸着するフィルタF、透析液の濃度や温度を計測するセンサS4、治療中に補液をするための上記補液通路41B、治療後に返血を行うための上記返血通路23B、透析液の流量を計測する流量計61、上記透析液回収通路55との間で接続される第3バイパス通路62、制御手段によって制御される第11開閉弁V11が設けられている。
【0024】
上記補液通路41Bは上記センサS4の下流側となる位置で透析液供給通路54より分岐するように設けられ、その端部には図1において本体部5の正面に配置された第2接続ポートP2が設けられており、上述したように血液回路3の補液通路41Aが接続されるようになっている。
また透析液供給通路54における分岐位置よりも下流側となる位置と、補液通路41の接続位置よりも下流側となる位置とには、それぞれ第1、第2流量調整弁MV1、MV2が設けられている。
さらに上記補液通路41には、上記第2流量調整弁MV2と第2接続ポートP2との間に制御手段によって制御される第12開閉弁V12が設けられている。
そして透析治療中には、上記第2接続ポートP2を介して透析液回路4の補液通路41Bと血液回路3の補液通路41Aとを接続して補液通路41を構成し、上記第12開閉弁V12を開放するとともに、上記第1、第2流量調整弁MV1、MV2による流量を調整することで、透析液を補液通路41から血液回路3へと透析液を流入させ、患者への補液を行うようになっている。
【0025】
上記返血通路23Bは上記補液通路41Bと流量計61との間で透析液供給通路54より分岐して設けられ、端部には図1において本体部5の正面に設けられた上記第1接続ポートP1が設けられ、上述したように血液回路3の返血通路23が接続されるようになっている。また返血通路23には制御手段によって制御される第13開閉弁V13が設けられている。
これにより、上記第1接続ポートP1を介して透析液回路4の返血通路23Bと血液回路3の返血通路23Aとが接続されて、接続通路としての返血通路23が構成されるようになっている。
透析治療後に血液回路3の血液を患者に戻す返血作業を行う際には、上記第13開閉弁V13を開放することにより、透析液供給通路54から返血通路23を介して血液回路3へと流入させ、血液回路3内の血液を患者に押し戻すようになっている。
【0026】
上記第3バイパス通路62は上記流量計61と上記第11開閉弁V11との間から分岐して上記透析液回収通路55に接続されており、制御手段によって制御される第14開閉弁V14と、上記プライミング作業時に血液回路3のドリップチャンバ9からの透析液を流通させるためのプライミング用通路63とが設けられている。
上記プライミング用通路63の端部には図1において本体部5の正面に設けられた上記第3接続ポートP3が設けられ、またプライミング用通路63には制御手段によって制御される第25開閉弁V25が設けられている。
そして上記第3接続ポートP3には、上述したように血液回路3のドリップチャンバ9に接続された上記オーバーフロー用通路45との間に、上記第2プライミング用配管46が接続されるようになっている。
上記プライミング用通路63の第3接続ポートP3は透析治療時には使用されず、上記蓋部材28によって上記コネクタ27が閉鎖されるようになっている。
またプライミング作業時には、上記第2プライミング用配管46を上記ドリップチャンバ9のオーバーフロー用通路45と第3接続ポートP3との間に接続し、さらに上記第3バイパス通路62の第14開閉弁V14を閉鎖することで、ドリップチャンバ9に流入させた透析液を透析液回路4の透析液回収通路55へと排出させるようになっている。
【0027】
上記透析液回収通路55は、上流側の端部が上記透析器2に接続され、図1においては図示上方側に接続されたものとなっており、当該透析器2側から順に、制御手段によって制御される第15開閉弁V15、圧力や濃度、温度を計測するセンサS5、透析液中の気泡を除去する除気槽64、上記第1バイパス通路57に連通している上記第2バイパス通路60、透析液を送液する透析液ポンプ65、治療時に除水を行うための除水通路66、圧力を計測する圧力センサS6を備えている。
また透析液回収通路55はこの圧力センサS6の下流側で2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ51、52の回収室51b、52bに接続され、当該分岐部分には回収弁V16、V17が設けられている。
上記除気槽64には上記排液通路56との間に排気通路67が設けられており、当該排気通路67には制御手段によって制御される第18開閉弁V18が設けられている。上記除気槽64は従来公知であり、透析治療中に使用済み透析液が流入すると、当該使用済み透析液に含まれる気体を分離し、これを上記排気通路67を介して上記排液通路56より排出するものとなっている。
上記第2バイパス通路60は上記除気槽64と透析液ポンプ65との間に接続されており、他端部は上述したように上記第1バイパス通路57における上記第7開閉弁V7の上流側に接続されている。そしてプライミング作業時には清浄水を透析液回収通路55に補充するために用いられる。
上記除水通路66は透析液ポンプ65の下流側に接続され、また除水通路66には除水ポンプ68が設けられている。
透析治療時に上記除水ポンプ68を作動させることで、透析器2において透析液室2bと血液室2aとの間に差圧を生じさせ、これにより血液中の水分を除くものとなっている。
【0028】
ここで、本発明にかかる送液ポンプとしての上記給液ポンプ58および上記透析液ポンプ65には、いわゆるマグネットギアポンプを使用しており、例えば特許第5999333号公報に記載されるように従来公知となっている。
このマグネットギアポンプは、上記血液回路3に設けた血液ポンプ8としてのチューブポンプに比べて送液量が高く、一方では通路内の圧力が一定以上に達した場合には、それ以上の送液ができなくなるという特徴を有している。
つまりマグネットギアポンプでは、噛合した2つのギアによって液体を送液するようになっているが、当該ポンプの下流側の部分を構成する通路が所定の圧力まで達すると、ギア同士が空回りして送液が出できなくなり、当該下流側の部分が所定の圧力を超えないようになっている。
換言すると、マグネットギアポンプを用いた場合には、当該ポンプの下流側の部分の通路を閉鎖した場合であっても、通路を破損させることなく、当該通路を所定の圧力まで上昇させることが可能となっている。
これに対し、血液ポンプ8に用いられるチューブポンプは、上述したようにロータ32によってチューブ33を圧迫しながら送液を行うため、上記ロータ32によって圧迫された部分が完全に閉鎖された状態となってしまう。
このため、当該血液ポンプ8の下流側の部分を構成する通路が所定の圧力まで達した状態で、その後さらに血液ポンプ8の作動を継続させてしまうと、送液中の液体を逃がすことができずに通路内の圧力が過度に上昇してしまい、通路の破裂や脱落といった問題が発生することとなる。
なお、透析液回路4に設ける送液ポンプとしては、上記マグネットギアポンプの他、渦巻きポンプやプランジャポンプを採用することが可能となっている。
【0029】
上記排液通路56は、上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ51、52の回収室51b、52bに接続され、当該分岐部分には排液弁V19、V20が設けられている。
また排液通路56には、上記分岐部分から下流側に向けて、上記透析液回収通路55と連通する上記除水通路66と、透析液回収通路55と連通する上記排気通路67と、制御手段によって制御される第21開閉弁V21と、上記給液通路53と連通する上記第1バイパス通路57とが設けられている。
【0030】
上記構成を有する透析装置1の動作について説明する。ここでは最初に上記透析液回路4における透析液の送液動作について説明する。
まず、給液通路53に設けられた給液ポンプ58を作動させて給液通路53に清浄水を流通させ、また上記透析液原液供給手段59が透析液の原液を給液通路53に供給する。
例えば、第1透析液チャンバ51の供給室51aに隣接する給液弁V5を開放して供給弁V9を閉鎖すると、清浄水と原液とが第1透析液チャンバ51の供給室51aに流入し、当該供給室51aの内部で混合されて新鮮な透析液が調製される。
このとき、第1透析液チャンバ51の回収室51bに隣接する排液弁V19を開放し、回収弁V16を閉鎖すると、供給室51aに清浄水と原液が流入するのに伴い、ダイアフラムが変形して回収室51bの容積が減少してゆき、当該回収室51bに収容されていた使用済み透析液が排液通路56へと排出されることとなる。
【0031】
一方第2透析液チャンバ52では、供給室52aの給液弁V6を閉鎖するとともに供給弁V10を開放し、さらに回収室52bの回収弁V17を開放して排液弁V20を閉鎖する。
すると、上記透析器2を通過した使用済み透析液が上記透析液回収通路55の透析液ポンプ65によって上記回収室52b内に供給され、これに伴って供給室52aの容積が減少することにより、当該供給室52aに収容されている新鮮な透析液が透析液供給通路54を介して透析器2へと供給されることとなる。
その後、第1、第2透析液チャンバ51、52の給液弁V5、V6、供給弁V9、V10、回収弁V16、V17、排液弁V19、V20を交互に開閉することで、透析液回路4において透析液を調製しながら流通させるとともに、透析器2を通過した透析液を回収して排出することが可能となっている。
【0032】
透析治療中において、上述したように透析液回路4に透析液を流通させながら、所要のタイミングで上記除水通路66の除水ポンプ68を作動させると、透析液回収通路55の使用済み透析液が除水通路66を介して排液通路56に排出され、これにより透析器2の内部で差圧が生じ、血液中から除水を行うことができる。
また、透析治療中の所要のタイミングで上記透析液供給通路54に設けた第1流量調整弁MV1と上記補液通路41に設けた第2流量調整弁MV2とを制御することで、透析液供給通路54の透析液を上記補液通路41から血液回路3に供給することができ、補液を行うことができる。
そして、透析治療後には、上記返血通路23を介して透析液を血液回路3に流通させながら、血液回路3に設けた上記血液ポンプ8を正転および逆転のうちの少なくともいずれか一方に作動させることで、血液回路3に残留する血液を患者に返血することができる。
なお、透析治療中および透析治療後の返血の動作自体は従来公知であるためこれ以上の詳細な説明については省略するものとする。
【0033】
以下、第1実施例における透析装置1のプライミング方法について説明する。
図6はプライミング作業の第1ステップとして、透析器2の透析液室2bに透析液を充満させる工程を説明する図となっており、透析装置1には図1に示すように透析器2および血液回路3が装着され、また透析液回路4には予め透析液が充満された状態となっている。
このとき、血液回路3の返血通路23Aは透析液回路4の返血通路23Bと第1接続ポートP1を介して接続され、血液回路3の補液通路41Aは透析液回路4の補液通路41Bと第2接続ポートP2を介して接続され、それぞれ接続通路としての返血通路23および補液通路41が形成されている。
また上記血液回路3において、動脈側通路21と静脈側通路22とは第1プライミング用配管26によって接続され、上記静脈側通路22のドリップチャンバ9のオーバーフロー用通路45と、透析液回路4におけるプライミング用通路63の第3接続ポートP3との間には、第2プライミング用配管46が接続されている。
その他、上記動脈側通路21やドリップチャンバ9に設けた圧力測定用通路24、44も、それぞれ本体部5の正面に設けられた動脈側圧力センサS1および静脈側圧力センサS2のセンサ用ポートP4、P5に接続されている。
そして上記血液ポンプ8では、図5(a)に示すように上記チューブ33を保持するホルダ34をハウジング31の保持部31aに装着しただけの未装着状態となっており、上記チューブ33はハウジング31とロータ32との間に押し込まれていない状態となっている。
【0034】
この状態から、医療従事者がタッチパネル6を操作してプライミング作業の開始を指示する。ここで上記透析液回路4では、上述したように第1、第2透析液チャンバ51、52を用いて透析液が流通しているが、以下の説明では第1透析液チャンバ51の供給室51aの供給弁V9および回収室51bの回収弁V16が開放されている状態を用いて説明するものとする。
また図6以下の各図においては、透析液の流通した部分を太線にして示すとともに、閉鎖した開閉弁を黒色に塗りつぶして示すようになっているが、透析液回路4における透析液の流通については、上述した通常動作に伴う透析液の流通については太線を省略し、プライミング作業に伴って生じる液体の流れを太線にして説明するものとする。
【0035】
第1ステップでは、透析液回路4にはすでに透析液が充満しているため、この状態で透析液ポンプ65が透析液回収通路55の透析液を第1透析液チャンバ51の回収室51bに流入させると、第1透析液チャンバ51ではダイアフラムが変形して上記供給室51aより透析液が排出されるようになっている。
また透析液供給通路54の第1流量調整弁MV1は全開にされ、補液通路41の第2流量調整弁MV2は閉鎖されており、これにより排出された透析液の全てが透析液供給通路54を流通して透析器2の透析液室2bに流入することとなる。
そして透析器2を通過した透析液は、透析液回収通路55を流通して第1透析液チャンバ51の回収室51bに流入し、ダイアフラムを変形させて上記供給室51aより透析液を排出させるようになっている。
【0036】
ここで、プライミング作業の開始時においては、透析器2における血液室2aおよび透析液室2bは空となっており、第1ステップにおいて上記透析液供給通路54から透析器2に透析液を流通させると、上記透析器2の透析液室2bが透析液によって充満されることとなる。
このため上記供給室51aから排出された透析液は、上記透析器2の透析液室2bを充満させるために減少し、当該透析液を第1透析液チャンバ51の回収室51bに流入させても、供給室51aに収容されていた全ての透析液を排出することができない。
そこで第1ステップでは、上記第1バイパス通路57の第7開閉弁V7を閉鎖するとともに第2バイパス通路60の第8開閉弁V8を開放して、給液通路53の清浄水の一部を上記第1バイパス通路57および第2バイパス通路60を流通させて、透析液回収通路55に流入させるようになっている。
これにより、第2バイパス通路60から透析液回収通路55に供給された清浄水は、上記透析液ポンプ65を所定流量で作動させて送液することによって、上記第1透析液チャンバ51の回収室51bに流入することとなる。
これにより、回収室51bに流入する透析液の不足分が補充されることとなり、供給室51aから透析液の全量を透析液供給通路54へと排出することができるようになっている。
なお、第2バイパス通路60より余分に供給された清浄水に対応する量の透析液が、上記除気槽64から上記排気通路67へと流入し、その後上記排液通路56より排出されるようになっている。
そして上記第1ステップは、上記透析液ポンプ65が所定流量で所定時間運転したこと、あるいは、所定量の透析液を送液したことを上記制御手段が検出した時点で終了する。
なお、以下の第2ステップないし第4ステップの各ステップにおいても、上記透析液ポンプ65が所定流量で所定時間運転したこと、あるいは、所定量の透析液を送液したことを制御手段が検出した時点でステップを終了する。
【0037】
図7に示す第2ステップでは、透析器2の血液室2aと、上記返血通路23と、血液回路3における動脈側通路21および静脈側通路22の一部に透析液を充満させる工程を行う。なお、図7以下の図において、以前のステップですでに透析液が充満している部分については、網掛けにて表示するものとする。
ここでは、上記第1ステップと同様、給液通路53から第1、第2バイパス通路57、60を介して清浄水を透析液回収通路55に供給し、これを上記透析液ポンプ65によって所定流量で送液するようになっている。
そして第2ステップでは、透析液回路4において、透析器2に隣接する透析液供給通路54の第11開閉弁V11および透析液回収通路55の第15開閉弁V15を閉鎖し、上記プライミング用通路63の第25開閉弁V25を開放する。
また血液回路3においては、上記動脈側通路21の動脈側クランプV1および静脈側通路22の静脈側クランプV2を閉鎖するとともに、上記ドリップチャンバ9に設けたオーバーフロー用通路45の手動クランプV3を開放している。
さらに、上記第1接続ポートP1を介して接続された血液回路3の返血通路23Aと透析液回路4の返血通路23Bとからなる接続通路としての返血通路23において、第13開閉弁V13を開放する。
【0038】
これにより、透析液回路4の第1透析液チャンバ51の供給室51aより排出された透析液は、上記透析液供給通路54から上記返血通路23を介して血液回路3の動脈側通路21へと流入する。
このとき、血液ポンプ8は上記チューブ33の未装着状態であるため、透析液は上記チューブ33を流通可能であることから、上記返血通路23の接続された位置から血液ポンプ8を超えて透析器2に向けて流通し、透析器2の血液室2aに流入するようになっている。
そして透析器2を通過した透析液は、静脈側通路22を流通して上記ドリップチャンバ9に流入し、上記クランプV3が開放されていることから上記オーバーフロー用通路45および第2プライミング用配管46を流通して、透析液回路4のプライミング用通路63へと流入する。
ここで上記第3バイパス通路62の第14開閉弁V14は閉鎖されていることから、透析液は上記透析液回収通路55に流入し、余分な透析液は上記除気槽64および排気通路67を介して排液通路56より排出される。
【0039】
ここで、透析液を血液回路3に流通させてプライミングを行う際、透析器2における気泡の除去が問題となる。
従来、気泡を除去するために所定時間透析液を流通させることが行われているが、その場合、プライミング作業に必要な時間が長くなるため、非効率的であった。
そこで本実施例の透析装置1では、通路内にいわゆるウォーターハンマー現象を生じさせることによって、水圧による衝撃により気泡の除去を行うものとなっている。
具体的には、ステップ2および後述するステップ3において、透析液を上記返血通路23を介して血液回路3に送液する際、当該返血通路23に設けた上記第13開閉弁V13を所定時間ごとに開閉するようになっている。
第13開閉弁V13を閉鎖すると、返血通路23を含む当該第13開閉弁V13よりも上流側の通路の内圧が上昇し、その状態で第13開閉弁V13を開放すると、上昇した圧力が一気に開放されていわゆるウォーターハンマー現象が生じ、衝撃波によって透析器2を構成する中空糸12や、特に透析器2のキャップ13に形成されやすい気泡を除去することができる。
【0040】
ここで、上記返血通路23における第13開閉弁V13よりも上流側の通路の内圧は、透析液回収通路55に設けた透析液ポンプ65が透析液を第1透析液チャンバ51の回収室51bに供給することにより、上記供給室51aより透析液が押し出されることで上昇するものとなっている。
つまり返血通路23の内圧は透析液ポンプ65を構成するマグネットギアポンプによって上昇されるが、上述したようにマグネットギアポンプはその構成上、所定圧力以上の圧力で送液することができない。
したがって、ウォーターハンマー現象を生じさせるために第13開閉弁V13を閉鎖しても、返血通路23を含む当該第13開閉弁V13よりも上流側の通路の内圧が過剰に高くなることはなく、これらの通路の破裂や脱落が防止されるようになっている。
【0041】
図8に示す第3ステップでは、動脈側通路21および静脈側通路22の残りの部分に透析液を充満させる工程を行う。
第3ステップでは、上記動脈側通路21の動脈側クランプV1と、静脈側通路22の静脈側クランプV2を開放し、さらに上記血液回路3の血液ポンプ8を作動させて、図5(c)に示す装着状態とし、そのまま血液ポンプ8を停止させる。
これにより、第2ステップと同様、透析液は上記返血通路23を流通して血液回路3の動脈側通路21に流入するが、上記血液ポンプ8において上記チューブ33がロータ32によって圧迫されているため、透析液は血液ポンプ8を超えて流通することができず、透析液は動脈側通路21のコネクタ21aに向けて流通することとなる。
その後透析液は、動脈側通路21から第1プライミング用配管26を介して静脈側通路22に流入し、さらにドリップチャンバ9の上記オーバーフロー用通路45および第2プライミング用配管46を流通して、透析液回路4のプライミング用通路63から上記透析液回収通路55に流入するようになっている。
この第3ステップにおいても、上記第2ステップと同様、返血通路23の第13開閉弁V13を所定時間ごとに開閉することにより、ウォーターハンマー現象による気泡の除去を行うことができる。
なお、血液ポンプ8を装着状態をとする際には、血液ポンプ8のチューブ装着手段を用いずに、医療従事者がロータ32に内蔵される不図示のハンドルを引き出し、手作業によって回すことにより装着状態とするようにしても良い。
【0042】
そして図9に示す第4ステップでは、上記補液通路41のプライミングを行う。
制御手段は、上記透析液回路4において上記第1流量調整弁MV1を閉鎖するとともに補液通路41の第2流量調整弁MV2を開放し、さらに補液通路41の第12開閉弁V12を開放する。
これにより、透析液は透析液供給通路54から上記補液通路41へと流入し、その後上記血液回路3の静脈側通路22に流入する。
ここで、上記血液ポンプ8は装着状態となっており、チューブ33がロータ32によって圧迫された状態となっているため、静脈側通路22に流入した透析液は透析器2に向けて流通せず、上記ドリップチャンバ9に向けて流通することとなる。
その後は、上記第2、第3ステップと同様、透析液は上記ドリップチャンバ9から上記オーバーフロー用通路45、第2プライミング用配管46、プライミング用通路63を流通して、透析液回路4に流入する。
【0043】
このように、上記第1~第4ステップを行うことで、血液回路3の全体が透析液によって充満されてプライミング作業が終了することとなる。
その後、医療従事者は上記血液回路3の動脈側通路21および静脈側通路22から第1プライミング用配管26を除去するとともに、ドリップチャンバ9のオーバーフロー用通路45に接続した第2プライミング用配管46を除去する。
さらに、医療従事者は上記ドリップチャンバ9に接続されたオーバーフロー用通路45の手動クランプV3を操作するとともに、上記第2プライミング用配管46の他端を上記第3接続ポートP3より取り外して、当該第3接続ポートP3の蓋部材28を閉鎖する。
また医療従事者は透析治療の開始前に上記タッチパネル6を操作して、上記圧力測定用通路44に接続された液面調整用通路47の第24開閉弁V24を作動させ、ドリップチャンバ9の液面を調整する。
【0044】
上述したように本実施例における透析装置1では、プライミング液としての透析液を透析液回路4に設けた送液ポンプとしての透析液ポンプ65を用いて送液している。
透析液ポンプ65は血液ポンプ8として用いるチューブ33ポンプよりも送液量が高いことから、透析液を効率的に血液回路3に送液することができ、迅速なプライミング作業を行うことができる。
また上記第2、第3ステップにおいて、返血通路23に設けた第13開閉弁V13を所定時間ごとに開閉することにより、ウォーターハンマー現象により血液回路3の気泡を効率的に除去することが可能となっている。
このとき、透析液ポンプ65としてマグネットギアポンプを用いるため、上記返血通路23の内圧が過剰に高くなることはなく、透析液回路を構成する通路の破損や脱落を防止することができる。
なお、第1実施例において、第4ステップにおいて上記補液通路41に透析液を流通させる際においても、第12開閉弁V12を開閉させることにより、ウォーターハンマー現象を用いた気泡の除去を行うことができる。
【0045】
図10図14は第2実施例にかかる透析装置1のプライミング作業を示している。なお上記透析装置1の構成について、第1実施例と共通する部分についての説明は省略するものとする。
第2実施例の透析装置1の透析液回路4には、上記給液通路53における上記透析液原液供給手段59に、上記除水通路66に設けた除水ポンプ68と連通する第5バイパス通路71を設け、当該第5バイパス通路71に制御手段によって開閉される第22開閉弁V22を設けたものとなっている。
さらに本実施例では、プライミング作業の際に、上記第1実施例における第1、第2プライミング用配管26、46に代えて、第3、第4プライミング用配管72、73を接続するようになっている。
上記第3プライミング用配管72は、上記血液回路3の動脈側通路21に設けた返血通路23Aのコネクタと、上記静脈側通路22のコネクタ22aとの間に接続され、上記第4プライミング用配管73は、上記動脈側通路21のコネクタ21aと透析液回路4のプライミング用通路63の第3接続ポートP3との間に接続されるようになっている。
【0046】
以下、第2実施例における透析装置1のプライミング方法について説明すると、図10は第1ステップを示し、第1実施例における図6の第1ステップと同様の動作を行っている。
つまり第1ステップでは、透析液回路4において透析液を流通させつつ、上記第1バイパス通路57および第2バイパス通路60を介して給液通路53の清浄水を透析液回収通路55に流入させ、透析器2の透析液室2bに透析液を充満させつつ、透析液室2bを充満させる際に減少する透析液を補充するものとなっている。
上述した第1実施例と同様に、第1ステップは、上記透析液ポンプ65が所定流量で所定時間運転したこと、あるいは、所定量の透析液を送液したことを制御手段が検出した時点で終了する。
なお、以下の第2実施例の第2ステップ、第3ステップ、第5ステップの各ステップにおいても、上記透析液ポンプ65が所定流量で所定時間運転したこと、あるいは、所定量の透析液を送液したことを制御手段が検出した時点でステップを終了する。
【0047】
図11は第2ステップを示している。第2ステップでは透析器2の内部で中空糸12の透析液室2bから血液室2aへと透析液を通過させて、透析液を血液回路3の動脈側通路21へと流通させるものとなっている。
具体的には、上記透析液回収通路55の第15開閉弁V15を閉鎖するとともに、プライミング用通路63の第25開閉弁V25を開放し、血液回路3の動脈側通路21の動脈側クランプV1を開放する。また血液ポンプ8は未装着状態となっている。
これにより、透析液供給通路54より供給された透析液が透析器2の透析液室2bに流入するが、上記透析液回収通路55の第15開閉弁V15および静脈側通路22の静脈側クランプV2が閉鎖されていることから、透析液は内圧により中空糸12を通過し、透析液室2bから血液室2aへと流入する。
そして、血液回路3において上記血液ポンプ8はチューブ33が未装着状態であることから、透析液は動脈側通路21を流通して上記チューブ33を通過し、血液ポンプ8を超えて流通するようになっている。
その後、透析液は動脈側通路21から上記第4プライミング用配管73に流入し、透析液回路4のプライミング用通路63に流入するようになっている。
【0048】
図12は第3ステップを示している。第2実施例の第3ステップでは、補液通路41から透析液を血液回路3に流入させ、静脈側通路22の一部に透析液を充満させる作業を行う。
具体的には、上記透析液供給通路54の第1流量調整弁MV1を閉鎖し、補液通路41の第2流量調整弁MV2および第12開閉弁V12を開放する。
また血液回路3では血液ポンプ8は未装着状態のままとし、さらに動脈側通路21の動脈側クランプV1を開放し、静脈側通路22の静脈側クランプV2を閉鎖する。
なお、第1実施例と同様、医療従事者の手作業によって血液ポンプ8を未装着状態から装着状態とするようにしても良い。
これにより、透析液供給通路54から補液通路41Bに流入した透析液は血液回路3側の補液通路41Aを流通して静脈側通路22に流入するが、静脈側通路22の静脈側クランプV2が閉鎖されていることから、透析液は透析器2の血液室2aを通過するようになっている。
また上記血液ポンプ8はチューブ33が未装着状態であることから、透析液は動脈側通路21の血液ポンプ8を超えて流通し、その後第4プライミング用配管73から透析液回路4のプライミング用通路63に流入するようになっている。
この第3ステップでは、上記第1実施例と同様、補液通路41の第12開閉弁V12を所定時間ごとに開閉し、これによりウォーターハンマー現象を生じさせて透析器2中の気泡を除去することができる。
なお、この第3ステップにおいて動脈側通路21に透析液を流通させた範囲は、上記第2ステップにおいて透析液を流通させた範囲と重複しているため、上記第2ステップについては省略することができる。
【0049】
図13は第4ステップを示している。第4ステップでは、ドリップチャンバ9の液面調整を行う。
この第4ステップでは、透析液回路4では、上記第1、第2バイパス通路57、60の第7、第8開閉弁V7、V8を閉鎖するとともに、上記透析液供給通路54の第1流量調整弁MV1を閉鎖し、補液通路41の第2流量調整弁MV2および第12開閉弁V12を開放する。
また血液回路3では動脈側通路21の動脈側クランプV1および静脈側通路22の静脈側クランプV2を閉鎖し、上記ドリップチャンバ9のオーバーフロー用通路45のクランプV3を開放する。なお血液ポンプ8のチューブ33は未装着状態のままでもよいが、本実施例では装着状態としている。
この状態で、上記除水通路66に設けた除水ポンプ68を作動させ、さらに上記第5バイパス通路71の第22開閉弁V22を開放する。
すると、上記給液通路53から清浄水が第5バイパス通路71を介して透析液回収通路55に供給され、これにより第1透析液チャンバ51の回収室51bが変形して供給室51aより透析液が排出される。
透析液は上記透析液供給通路54から補液通路41を介して静脈側通路22に透析液が流入し、このとき動脈側通路21の動脈側クランプV1および静脈側通路22の静脈側クランプV2が閉鎖されていることから、透析液は上記ドリップチャンバ9内に流入することとなる。この時、オーバーフロー用通路45のクランプV3は閉鎖されている。
制御手段はドリップチャンバ9に接続された液面調整用通路47の第24開閉弁V24を開放しており、上記ドリップチャンバ9に透析液が流入して液面高さが上昇すると、これに伴ってドリップチャンバ9の空気が排出されるようになっている。
ここで上記除水ポンプ68の送液量は小さく、また正確であることから、制御手段は例えば除水ポンプ68の動作時間を制御することにより、ドリップチャンバ9内における透析液の液面高さを任意の高さに設定することができる。
なお第4ステップにおけるドリップチャンバ9の液面高さの調整は手作業でも可能であるため、この第4ステップを省略してもよい。
【0050】
図14は第5ステップを示している。第5ステップでは、補液通路41を介して透析液を血液回路3に流入させ、静脈側通路22のその他の部分に透析液を充満させる作業を行う。
具体的には、第4ステップで用いた上記除水ポンプ68を停止させるとともに第5バイパス通路71の第22開閉弁を閉鎖し、上記第1~第3ステップと同様に、第1、第2バイパス通路57、60を介して給液通路53の清浄水を透析液回収通路55に流通させる。
そのうえで、上記透析液供給通路54の第1流量調整弁MV1を閉鎖し、補液通路41の第2流量調整弁MV2および第12開閉弁V12を開放する。
また血液回路3では血液ポンプ8のチューブ33を装着状態とし、その状態で動脈側通路21の動脈側クランプV1および静脈側通路22の静脈側クランプV2を開放する。
これにより、透析液供給通路54から補液通路41に流入した透析液は血液回路3側の補液通路41を流通して静脈側通路22に流入するが、血液ポンプ8が装着状態となっていることから、透析液は血液ポンプ8を超えられず、ドリップチャンバ9側に流通する。
ドリップチャンバ9ではオーバーフロー用通路45のクランプV3および液面調整用通路47の第24開閉弁V24が閉鎖されており、流入した透析液はそのままドリップチャンバ9を通過し、その後上記第3プライミング用配管72および返血通路23を介して動脈側通路21に流入する。
ここで、血液ポンプ8は装着状態となっているため、透析液はさらに動脈側通路21から上記第4プライミング用配管73に流入し、透析液回路4のプライミング用通路63へと流入するようになっている。
これによりプライミングが終了し、その後医療従事者は上記第3プライミング用配管72を返血通路23Aより取り外し、当該返血通路23Aの端部を透析液回路4の返血通路23Bにおける第1接続ポートP1に接続する。
【0051】
ここで、上記第2実施例では第5ステップ終了後に返血通路23Bの付け替えを行っているが、プライミング作業時に上記血液回路3の返血通路23Aを透析液回路4の返血通路23Bに接続して、第1実施例と同じように返血通路23のプライミングを行うことも可能である。
この場合、図示しないが、上記血液回路3の動脈側通路21に上記第3プライミング用配管72を接続可能なポートを設けて、プライミング作業時に当該ポートに第3プライミング用配管72を接続するようにすればよい。
上記ポートの位置としては、上記動脈側通路21における上記動脈側クランプV1とコネクタ21aとの間が好ましく、この位置に上記第3プライミング用配管72を接続することにより、第3プライミング用配管72を介して動脈側通路21と静脈側通路23とを連通させればよい。
そしてプライミング作業時には、図8に示す第1実施例のステップ3で行った返血通路23Aおよび返血通路23Bのプライミング動作を、第2実施例におけるステップ2とステップ3との間に行えばよい。
【0052】
図15図18は第3実施例にかかる透析装置1のプライミング作業を示している。なお上記透析装置1の構成について、第2実施例と共通する部分についての説明は省略するものとする。
第3実施例の透析装置1では、上記第2実施例の透析装置1に対し、上記血液回路3の補液通路41Aの接続位置が動脈側通路21となっている点で相違している。具体的には補液通路41Aの端部は上記透析器2と血液ポンプ8との間に接続されたものとなっている。
このように、補液通路41Aを動脈側通路21に設けた構成であっても、透析治療中には透析液供給通路54から補液通路41を介して動脈側通路21に透析液を流通させて、補液を行うことができる。
ただし、補液通路41Aを動脈側通路21に設けたことで、補液通路41より供給された透析液は上記透析器2を流通するようになっており、透析器2において透析液室2bと血液室2aとの間で透析に使用されるものとなっている。
【0053】
以下、第3実施例における透析装置1のプライミング方法について説明すると、図15は第1ステップを示し、第1実施例における図6、第2実施例における図10の第1ステップに対応するものとなっている。
つまり第1ステップでは、透析液回路4において透析液を流通させつつ、上記第1バイパス通路57および第2バイパス通路60を介して給液通路53の清浄水を透析液回収通路55に流入させ、透析器2の透析液室2bに透析液を充満させつつ、透析液室2bを充満させる際に減少する透析液を補充するものとなっている。
上述した第1実施例、第2実施例と同様に、第1ステップは、上記透析液ポンプ65を所定流量で所定時間運転することによって所定量の透析液を送液したことを制御手段が検出した時点で終了する。
なお、以下の第3実施例の第2ステップ、第5ステップの各ステップにおいても、上記透析液ポンプ65を所定流量で所定時間運転することによって所定量の透析液を送液したことを制御手段が検出した時点でステップを終了する。
【0054】
図16は第2ステップを示している。第2ステップでは透析器2の内部で中空糸12の透析液室2bから血液室2aへと透析液を通過させて、透析液を血液回路3の動脈側通路21へと流通させるものとなっている。
具体的には、上記透析液回収通路55の第15開閉弁V15を閉鎖するとともに、プライミング用通路63の第25開閉弁V25を開放し、血液回路3の動脈側通路21の動脈側クランプV1を開放する。また血液ポンプ8は未装着状態となっている。
これにより、透析液供給通路54より供給された透析液が透析器2の透析液室2bに流入するが、上記透析液回収通路55の第15開閉弁V15および静脈側通路22の静脈側クランプV2が閉鎖されていることから、透析液は内圧により中空糸12を通過し、透析液室2bから血液室2aへと流入する。
そして、血液回路3において上記血液ポンプ8は未装着状態であることから、透析液は上記チューブ33を流通可能となっており、血液ポンプ8を超えて流通するようになっている。
その後、透析液は動脈側通路21から上記第4プライミング用配管73に流入し、さらに第3接続ポートP3から透析液回路4のプライミング用通路63に流入する。
【0055】
図17は第3ステップを示している。第3ステップでは、補液通路41を介して透析液を血液回路3に流入させ、静脈側通路22に設けたドリップチャンバ9の液面を調整する作業を行う。
具体的には、上記透析液供給通路54の第1流量調整弁MV1を閉鎖し、補液通路41の第2流量調整弁MV2および第12開閉弁V12を開放する。また血液回路3では血液ポンプ8はチューブ33を装着状態とし、ドリップチャンバ9のオーバーフロー用通路45のクランプV3を開放する。
さらに第3ステップでは、上記除水通路66に設けた除水ポンプ68を作動させるとともに、第5バイパス通路71の第22開閉弁V22を開放する。
これにより、透析液供給通路54から補液通路41に流入した透析液は血液回路3側の補液通路41を流通して動脈側通路21に流入するが、血液ポンプ8は装着状態となっているため、透析液は血液ポンプ8を超えて流通することができず、透析器2の血液室2aを通過して静脈側通路22に流入する。
そして、透析液はドリップチャンバ9内に流入するが、このとき透析液を除水ポンプ68によって送液するとともに、上記液面調整用通路47に設けた第24開閉弁V24の動作によって、微妙な液面高さの調整を行うことが可能となっている。
この第3ステップについても、上記第2実施例の第4ステップと同様、ドリップチャンバ9の液面調整については手動で行うことが可能であるため、本ステップを省略することも可能である。
【0056】
図18は第4ステップを示している。第4ステップでは、補液通路41を介して透析液を血液回路3に流入させ、静脈側通路22に透析液を流通させるものとなっている。
具体的には、上記透析液供給通路54の第1流量調整弁MV1を閉鎖し、補液通路41の第2流量調整弁MV2および第12開閉弁V12を開放する。
また血液回路3では血液ポンプ8のチューブ33を装着状態とし、動脈側通路21の動脈側クランプV1および静脈側通路22の静脈側クランプV2を開放する。さらにドリップチャンバ9のオーバーフロー用通路45の手動クランプV3を閉鎖する。
これにより、透析液供給通路54から補液通路41へと透析液が流通し、血液回路3の動脈側通路21に流入するが、第3ステップと同様、上記血液ポンプ8はチューブ33が装着状態であるため、透析液は血液ポンプ8を超えずに、動脈側通路21から透析器2を通過して静脈側通路22に流入する。
そして透析液はドリップチャンバ9を通過した後、静脈側通路22から第3プライミング用配管72を流通して上記動脈側通路21に接続された返血通路23より動脈側通路21に流入する。
ここでも、上記血液ポンプ8はチューブ33が装着状態となっていることから、透析液は動脈側通路21から第4プライミング用配管73を流通し、上記透析液回路4のプライミング用通路63へと流入する。
このようにして第4ステップが終了したら、医療従事者は上記第3プライミング用配管72を返血通路23Aより取り外し、当該返血通路23Aの端部を透析液回路4の返血通路23Bにおける第1接続ポートP1に接続し、これによりプライミング作業が終了する。
【0057】
なお、この第3実施例においても、第2実施例において記載したように、第4ステップ終了後の返血通路23Aの付け替えを省略するために返血通路23Aと返血通路23Bとを接続した状態でプライミングを行うようにしてもよい。
この場合においても、上記動脈側通路21に上記第3プライミング用配管72を接続可能なポートを設けて、プライミング作業時に当該ポートに第3プライミング用配管72を接続するようにすればよい。
そしてプライミング作業時には、図8に示す第1実施例のステップ3で行った返血通路23Aおよび返血通路23Bのプライミング動作を、第3実施例におけるステップ2とステップ3との間に行えばよい。
【0058】
次に、図19は第4実施例における透析装置1のプライミング方法を説明する図となっている。図19の透析装置1はいわゆるコンソールタイプの透析装置1となっており、図示しない透析液製造装置によってあらかじめ調製された透析液が供給されるものとなっている。
本実施例の透析装置1の透析液回路4には、上記給液通路53と透析液供給通路54との間に第6バイパス通路74が設けられており、この第6バイパス通路74には制御手段によって制御される第23開閉弁V23が設けられている。
また本実施例では透析液回路4に除水通路66および除水ポンプ68を備えておらず、その代わりに上記第1、第2透析液チャンバ51、52に、上記供給室51aと回収室51bとの間に容積変動室51c、52cが形成された3室式のタイプを採用したものとなっている。
上記容積変動室51c、52cにはシリコンオイルが充填されるとともに、容積変動室51c、52cには当該容積変動室51c、52cに対してシリコンオイルを吸排するオイルポンプ75が設けられており、オイルポンプ75によってシリコンオイルを吸排することにより、容積変動室51c、52cの容積を変動させるようになっている。
このような構成により、透析治療中に上記容積変動室51c、52cからシリンオイルを排出させて容積を減少させると、透析液回収通路55に負圧を生じさせることができ、これにより透析器2において透析液室2bと血液室2aとの間に差圧を生じさせて、除水が行われるようになっている。
【0059】
一方、本実施例の透析装置1の透析液回路4には、上記第1~第3実施例と同様、返血通路23B、補液通路41B、プライミング用通路63が設けられており、これらの端部にはそれぞれ上記第1~第3接続ポートP1~P3が設けられている。
そして透析装置1に装着される透析器2および血液回路3についても、上記第1~第3実施例と同様に装着することが可能であり、ここでは上記第1実施例と同じように血液回路3を装着し、また動脈側通路21と静脈側通路22との間に第1プライミング用配管26を、血液回路3の返血通路23Aと透析液回路4の返血通路23Bとの間に第2プライミング用配管46を接続している。
また血液回路3に設けた血液ポンプ8についても、上記第1~第3実施例で使用したものを使用し、プライミング作業中に上記チューブ33をハウジング31に装着させるチューブ装着手段を備え、未装着状態から装着状態にすることが可能となっている。
【0060】
以下、第4実施例にかかる透析装置1のプライミング作業について説明する。ここで図19は、上記第1実施例における第2ステップ(図7)に対応するものとなっている。
図示しないが、第4実施例における第1ステップでは、上記第1~第3実施例と同様、透析液回路4に透析液を流通させることで、透析器2の透析液室2bに透析液を流通させている。
続いて、図19に示す第2ステップでは、上記第6バイパス通路74の第23開閉弁V23を開放することで、上記給液通路53に設けた送液ポンプとしての給液ポンプ58によって、上記透析液製造装置によって製造された透析液が給液通路53から透析液供給通路54へと流通するようになっている。
続いて透析液は、上記第1実施例同様、透析液供給通路54から返血通路23に流入するが、血液回路3の動脈側通路21では上記血液ポンプ8のチューブ33は非装着状態であり、動脈側クランプV1が閉鎖されているため、透析液は血液ポンプ8を超えて透析器2側に向けて流通する。
さらに透析液は透析器2の血液室2aを通過した後、上記ドリップチャンバ9からオーバーフロー用通路45および第2プライミング用配管46を介して透析液回路4のプライミング用通路63に流入する。
その後は、上記給液ポンプ58によって透析液を送液する点を除き、第1実施例の第3、第4ステップと同様の動作を行うことで、第1実施例と同様、血液回路3のプライミングを行うことができる。
【0061】
このように、本実施例のようなコンソールタイプの透析装置1、より具体的には透析液回路4に上記給液通路53と透析液供給通路54との間に上記第6バイパス通路74を備える透析装置1においては、上記給液通路53に設けた給液ポンプ58によって透析液を送液して、プライミングを行うことが可能となっている。
上述したように、給液ポンプ58もマグネットギアポンプによって構成されていることから、プライミング時に透析液を給液ポンプ58によって送液することで、血液回路3に対して迅速に透析液を流通させることができる。
したがって、上記第1実施例と同様、返血通路23の第13開閉弁V13を所定間隔で開閉すれば、ウォーターハンマー現象を用いた送液を行うことができ、迅速なプライミングを行うことが可能となっている。
さらに第4実施例においても、第1~第3実施例と同様、血液ポンプ8においてチューブ33を未装着状態から装着状態として、上記チューブ33を圧迫して閉鎖することにより、血液回路3における透析液の流れを制御することが可能となっている。
【0062】
なお、上記第1~第3実施例においても、上記第4実施例にかかる上記第6バイパス通路74および第23開閉弁V23に相当する構成があれば、当該第4実施例と同様の方法でプライミングを行うことが可能である。
また第1~第3実施例に記載の透析液回路4の第1、第2透析液チャンバ51、52は供給室51aと回収室51bとが形成された2室構造となっているが、第4実施例のような3室構造のチャンバを用いて、補液通路および補液ポンプを省略することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 透析装置 2 透析器
3 血液回路 4 透析液回路
8 血液ポンプ 21 動脈側通路
22 静脈側通路 23 返血通路(接続通路)
26 第1プライミング用配管 31 ハウジング
32 ロータ 33 チューブ
41 補液通路(接続通路) 46 第2プライミング用配管
54 透析液供給通路 55 透析液回収通路
58 給液ポンプ(送液ポンプ) 65 透析液ポンプ
P1~P3 第1~第3接続ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19