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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/04 20200101AFI20241107BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20241107BHJP
   G01S 7/484 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01S17/04
G01S7/481 A
G01S7/484
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020192313
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081030
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】梅木 俊介
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176101(WO,A1)
【文献】特開平08-261753(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098263(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245919(US,A1)
【文献】特開2016-048237(JP,A)
【文献】実開平04-087487(JP,U)
【文献】特開2020-125031(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030923(WO,A1)
【文献】特開2000-075030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度ごとに設定されている照射角度へレーザ光を順次照射する走査サイクルを繰り返す照射部と、
物体により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部と、
前記反射光の受光量が予め設定されている閾値を上回り、且つ前記レーザ光の照射から前記反射光の受光までの時間に基づいて算出した距離が予め定められた基準範囲に含まれている状態が同一の前記照射角度で連続して発生し、その連続回数が所定回数となった場合に前記レーザ光を反射した物体が検知エリアに位置している判定する判定部と、
前記照射部から前記検知エリアに照射されるレーザ光の照射断面のサイズを前記走査サイクル毎に変更可能である変更部と
を備えており、
前記レーザ光のサイズとして、第1サイズと当該第1サイズよりも大きい第2サイズとを含み、
前記変更部は、連続する前記所定回数の前記走査サイクルのうち少なくとも1回は、前記第2サイズとなるようにして前記レーザ光のサイズを変更する構成となっているレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記変更部により前記レーザ光のサイズが変更される場合に、前記レーザ光の輝度及び前記判定部による判定条件の少なくとも一方を変更する手段を備えている請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記レーザ光のサイズを少なくとも当該レーザ光の走査方向において変更する構成となっている請求項1又は請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記所定回数の前記走査サイクルにおいて前記レーザ光のサイズが前記第2サイズとなる回数は、前記レーザ光のサイズが前記第1サイズとなる回数よりも少なくなっている請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
所定角度ごとに設定されている照射角度へレーザ光を順次照射する走査サイクルを繰り返す照射部と、
物体により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部と、
前記反射光の受光量が予め設定されている閾値を上回り、且つ前記レーザ光の照射から前記反射光の受光までの時間に基づいて算出した距離が予め定められた基準範囲に含まれている状態が同一の前記照射角度で連続して発生し、その連続回数が所定回数となった場合に前記レーザ光を反射した物体が検知エリアに位置していると判定する判定部と、
前記照射部から前記検知エリアに照射されるレーザ光の照射断面のサイズを前記走査サイクル毎に変更可能である変更部と
を備えており、
前記レーザ光のサイズとして、第1サイズと当該第1サイズよりも大きい第2サイズとを含み
記変更部は、前記状態が同一の前記照射角度で連続して発生し、その連続回数が前記所定回数よりも少ない特定回数となった場合に、前記第2サイズとなるようにして前記レーザ光のサイズを変更する構成となっているレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記変更部により前記レーザ光のサイズが前記第2サイズとなった走査サイクルにおいて同一の前記照射角度で前記状態が発生しなかった場合に、次の走査サイクルにおける前記レーザ光のサイズを前記第1サイズに変更する構成となっている請求項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項7】
前記検知エリアはレーザ光の走査方向において複数の個別エリアに分かれており、
前記変更部は、前記個別エリア毎に前記レーザ光のサイズを変更可能となっている請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【請求項8】
前記照射部は、複数の発光体を有してなり、
前記変更部は、前記複数の発光体のうち発光対象となる発光体の数を変更することで前記レーザ光のサイズを変更する構成となっている請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【請求項9】
記変更部は、前記レーザ光のサイズを前記第1サイズとする場合には前記複数の発光体のうち特定の発光体を前記発光対象とし、前記レーザ光のサイズを前記第2サイズとする場合には前記発光体のうち前記特定の発光体と当該特定の発光体に隣り合う他の発光体とを前記発光対象とする構成となっている請求項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項10】
前記照射部は、発光体と、当該発光体からの光が透過するレンズ部とを有しており、
前記変更部は、前記レンズ部に印加する電圧を切り替えて当該レンズの焦点を変更させることにより前記レーザ光のサイズを変更する構成となっている請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載のレーザレーダ装置。
【請求項11】
前記照射部及び前記受光部を収容するケース体を備え、
前記照射部は、レーザ光を出力する発光体と、レーザ光の走査方向に回動可能に設けられ当該発光体からのレーザ光を反射する反射部とを有し、前記反射部により反射されたレーザ光が前記ケース体の透過部を通じて前記検知エリアへ照射する構成となっており、
前記レンズ部は、当該レンズ部の光軸が鉛直方向を向き且つ前記発光体と前記反射部との間に位置するように配置されている請求項10に記載のレーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型のレーザレーダ装置は、所定角度ごとにレーザ光を順次照射する照射部と、そのレーザ光の反射光を受光する受光部とを有してなり、受光部の受光量等に基づいて検知エリア内に人や車等の物体(対象物体)が位置しているかを判定するように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-151788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したレーザレーダ装置が設置される環境については様々であり、検知対象として想定してない雪や埃等の微小な物体(非対象物体)が検知エリアを通過する可能性がある。これら微小な物体(特にレーザレーダ装置の近くを通過する微小な物体)にレーザ光が直撃した場合には、レーザ光の反射量が大きくなる。このような事象が発生した場合に、あたかも上述した対象物体が検知エリア内に位置しているかのように判定(誤検知)されることは、レーザレーダ装置の信頼性を向上させる上で妨げになる。このように、レーザレーダ装置が設置される環境等の影響を抑えて信頼性を向上させる上で、レーザレーダ装置に係る構成に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、レーザレーダ装置が設置される環境の影響を抑え、信頼性を向上させることができるレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.所定角度ごとに設定されている照射角度へレーザ光を順次照射する照射部(照射部21)と、
物体(物体T)により反射された前記レーザ光である反射光を受光する受光部(受光部31)と、
前記レーザ光を反射した物体が検知エリア(監視エリアDE)に位置しているかを前記受光部による前記反射光の受光状況(受光量等)に基づいて判定する判定部(制御部12におけるステップS101~S104,S201~204の処理を実行する機能)と、
前記照射部から前記検知エリアに照射されるレーザ光の照射断面のサイズを変更する変更部(制御部12における照射パターンA,Bの切替機能)と
を備えている。
【0008】
照射断面のサイズ(ビーム径のサイズ)が小さいレーザ光は、照射断面のサイズの大きいレーザ光と比べて、物体を検知する感度を高める上で有利である。但し、サイズの小さいレーザ光については、人や車等の大きい物体(対象物体)に照射された場合だけでなく雪や埃等の微小な物体(非対象物体)に照射された場合、特にレーザレーダ装置の近辺を通過する微小な物体に照射された場合にもレーザ光の反射量(照射されたレーザ光の光量に対する反射量の割合い)は大きくなる。このような事情から、サイズの小さいレーザ光を照射する場合には、サイズの大きいレーザ光を照射する場合と比べて、本来であれば検知対象に含まれていない微小な物体を検知(誤検知)する可能性が高くなる。
【0009】
一方、サイズの大きいレーザ光は、サイズの小さいレーザ光と比べて、物体を検知する場合の感度は低くなる。但し、人や車等の大きい物体(対象物体)にレーザ光が照射された場合には、サイズの小さいレーザ光と同様にレーザ光の反射量(照射されたレーザ光の光量に対する反射量の割合い)が十分に確保されるものの微小な物体(非対象物体)に照射されるレーザ光の一部は当該微小な物体の脇を素通りすることによりレーザ光の反射量(照射されたレーザ光の光量に対する反射量の割合い)は小さくなる。つまり、サイズの大きいレーザ光を照射する場合には、サイズの小さいレーザ光を照射する場合と比べて、上記誤検知を抑制しやすい。
【0010】
そこで、第1の手段に示すように、照射部から検知エリアに照射されるレーザ光のサイズ(断面積)を変更可能、すなわち感度向上が期待できる小さいサイズや誤検知抑制が期待できる大きいサイズに変更可能とすれば、対象物体の見逃しを抑制しつつ非対象物体に起因した誤検知を抑制できる。これにより、設置環境の影響を抑え、レーザレーダ装置の信頼性を好適に向上させることができる。また、サイズの異なる複数のレーザ光を常時併用する構成とした場合でも本第1の手段と同様に誤検知を抑制することは可能であるが、レーザレーダ装置の消費電力が大きく嵩むことになる。この点、本第1の手段に示したように、照射されるレーザ光のサイズを変更する構成とすれば、上述した常時併用タイプと比較して、消費電力を軽減することができる。
【0011】
なお、レーザ光のサイズの上限については、検知エリア内における照射断面の断面積が対象物体(例えば人や車)についてレーザ光が照射されると想定している部分の面積よりも小さくなるように設定することが好ましい。
【0012】
因みに、本特徴における「前記照射部から前記検知エリアに照射されるレーザ光のサイズを変更する変更部」との記載を「前記照射部から前記検知エリアに照射されるレーザ光のサイズを相対的に小さい第1サイズと相対的に大きい第2サイズとで切り替える切替部」とすることも可能である。
【0013】
第2の手段.前記変更部により前記レーザ光のサイズが変更される場合に、前記レーザ光の輝度及び前記判定部による判定条件の少なくとも一方を変更する手段を備えている。
【0014】
レーザ光のサイズ変更に合わせてレーザ光の輝度及び判定条件の少なくとも一方を変更する構成とすれば、上述した誤検知を好適に減らすことができる。例えば、レーザ光のサイズを大きくする際にレーザ光の輝度を引き下げ且つレーザ光のサイズを小さくする際にレーザ光の輝度を引き上げる構成とすれば、大きいサイズのレーザ光が雪や埃等の微小な物体に直撃した場合の反射量が小さいサイズのレーザ光が当該微小な物体に直撃した場合の反射量よりも小さくなる。これにより、上述した判定条件を据え置いたまま又はほとんど変更することなく誤検知が抑制される。また、レーザ光のサイズを大きくする際に判定条件を厳しくし且つレーザ光のサイズを小さくする際に判定条件を緩和する構成とすれば、大きいサイズのレーザ光が雪や埃等の微小な物体に直撃した場合の判定が小さいサイズのレーザ光が当該微小な物体に直撃した場合の判定よりも厳しくなる。これにより、レーザ光の輝度を据え置いたまま又はほとんど変更することなく誤検知が抑制される。
【0015】
なお、サイズ変更に伴ってレーザ光の輝度を変更する場合には、変更前後の各サイズにおいてレーザ光の光量(照射量)が同一又は略同一となるように各サイズにおけるレーザ光の輝度を規定するとよい。
【0016】
因みに、本特徴に示す構成を「前記変更部は、前記レーザ光のサイズを大きくする場合に、前記レーザ光の輝度を低くする変更及び前記判定部による判定条件を厳しくする変更の少なくとも一方を行い、前記レーザ光のサイズを小さくする場合に、前記レーザ光の輝度を高くする変更前記判定部による判定条件を緩和する変更の少なくとも一方を行う構成となっている」とすることも可能である。
【0017】
第3の手段.前記変更部は、前記レーザ光のサイズを少なくとも当該レーザ光の走査方向(例えば水平方向)において変更する構成となっている。
【0018】
レーザ光のサイズを走査方向において変更する構成とすれば、大きいサイズのレーザ光がエリア内の人や車等の物体(対象物体)に照射された場合の照射面積、すなわち対象物体からの反射量を稼ぎやすくなる。これは、対象物体の見逃しを抑制する上で好ましい。
【0019】
第4の手段.前記変更部は、前記レーザ光の走査サイクル毎に当該レーザ光のサイズを変更可能となっている。
【0020】
第4の手段に示すように走査サイクル毎にレーザ光のサイズを変更可能としてサイズ変更の機会を確保すれば、サイズ変更による誤検知抑制の効果を一層好適に発揮させることができる。
【0021】
なお、走査サイクル毎にレーザ光のサイズを変更する構成とする場合には、レーザ光の照射方向が検知エリアと反対側を向いている状況下にて当該変更を行うことにより、サイズ変更の応答性に係る制約を緩和できる。
【0022】
第5の手段.前記レーザ光のサイズとして、第1サイズ(照射パターンA)と当該第1サイズよりも大きい第2サイズ(照射パターンB)とを含み、
前記判定部は、前記受光部の受光状況が所定回数(例えば5回)の前記走査サイクルにおいて同一の前記照射角度で連続して特定の状況(受光量>閾値)となった場合に前記物体が前記検知エリアに位置していると判定する構成となっており、
前記変更部は、連続する前記所定回数の前記走査サイクルのうち少なくとも1回は、前記第2サイズとなるようにして前記レーザ光のサイズを変更する構成となっている。
【0023】
第5の手段に示す構成によれば、検知エリアに位置する人や車等の物体(対象物体)にレーザ光が照射され、同一の照射角度で特定の状況が連続して発生し、その連続回数が所定回数となることで当該物体が検知エリアに位置している判定される。これに対して、検知エリアを通過する雪等の微小な物体(非対象物体)にレーザ光が照射され、微小な物体について同一の照射角度で特定の状況が連続して発生した場合には、その連続回数が所定回数となる前にレーザ光のサイズが第2サイズとなることで当該連続が途切れることとなる。つまり、微小な物体について特定の状況が連続して発生した場合であっても、その連続回数<所定回数とすることができる。このようにして微小な物体を意図的に検知除外することにより、当該微小な物体に起因した誤検知を好適に抑制できる。
【0024】
第6の手段.前記所定回数の前記走査サイクルにおいて前記レーザ光のサイズが前記第2サイズとなる回数は、前記レーザ光のサイズが前記第1サイズとなる回数よりも少なくなっている。
【0025】
上述したように物体検知の感度については第2サイズ<第1サイズとなる。そこで、第1サイズのレーザ光の照射回数>第2サイズのレーザ光の照射回数とすることにより、物体検知の感度低下を好適に抑制できる。例えば、第1サイズのレーザ光の照射が繰り返される中で、第2サイズのレーザ光の照射を適宜割り込ませる構成とするとよい。
【0026】
第7の手段.前記判定部は、前記受光部の受光状況が所定回数(例えば5回)の前記走査サイクルにおいて同一の前記照射角度で連続して特定の状況(受光量>閾値)となった場合に前記物体が前記検知エリアに位置していると判定する構成となっており、
前記変更部は、前記受光部の受光状況が特定の状況であることを変更条件の1つとして前記レーザ光のサイズを大きくする構成となっている。
【0027】
受光状況が特定の状況であること、すなわち何らかの物体にレーザ光が照射されていることを変更条件の1つとしてレーザ光のサイズを大きくする構成とすることは、小さいサイズのレーザ光の照射回数をメインとして、すなわち大きいサイズのレーザ光の照射回数を極力少なくして、誤検知発生と物体検知の感度低下とを抑制する上で好ましい。例えば、特定の状況が連続している場合には特定の状況となる度にレーザ光のサイズを大きくしてもよい。
【0028】
第8の手段.前記レーザ光のサイズとして、第1サイズ(照射パターンA)と当該第1サイズよりも大きい第2サイズ(照射パターンB)とを含み、
前記判定部は、前記受光部の受光状況が所定回数(例えば5回)の前記走査サイクルにおいて同一の前記照射角度で連続して特定の状況(受光量>閾値)となった場合に前記物体が前記検知エリアに位置していると判定する構成となっており、
前記変更部は、前記受光部の受光状況が前記所定回数よりも少ない特定回数(2回以上、例えば4回)の前記走査サイクルにおいて同一の前記照射角度で連続して特定の状況(受光量>閾値)となった場合に、前記第2サイズとなるようにして前記レーザ光のサイズを変更する構成となっている。
【0029】
受光状況が連続して特定の状況となった場合に、その回数が特定回数となった際にレーザ光のサイズを第2サイズに変更する構成において、特定回数<所定回数とすれば、第1の手段に示した誤検知を好適に抑制できる。また、連続して特定の状況となった場合に第2サイズに変更される構成とすることは、小さいサイズのレーザ光の照射回数が無暗に多くなることを抑制する上で好ましい。つまり、誤検知発生と物体検知の感度低下とを抑制する上で有利である。
【0030】
第9の手段.前記変更部により前記レーザ光のサイズが前記第2サイズとなった走査サイクルにおいて同一の前記照射角度で前記受光部の受光状況が前記特定の状況とならなかった場合に、次の走査サイクルにおける前記レーザ光のサイズを前記第1サイズに変更する構成となっている。
【0031】
第8の手段に示したように、特定回数到達前にレーザ光のサイズを第2サイズとして特定回数到達を回避させる場合には、当該回避後は速やかにサイズを第1サイズに戻すことにより、物体検知の感度低下を最小限に留めることができる。
【0032】
第10の手段.前記検知エリアはレーザ光の走査方向において複数の個別エリア(エリアDEL,DEM,DER)に分かれており、
前記変更部は、前記個別エリア毎に前記レーザ光のサイズを変更可能となっている。
【0033】
本手段に示すように、検知エリアを複数の個別エリアに分けて個別エリア毎にレーザ光のサイズを変更可能とすれば、サイズの小さいレーザ光が照射される機会を極力多くすることができる。
【0034】
第11の手段.前記照射部は、複数(例えば3つ)の発光体(レーザダイオード22a,22b,22c)を有してなり、
前記変更部は、前記複数の発光体のうち発光対象となる発光体の数を変更することで前記レーザ光のサイズを変更する構成となっている。
【0035】
複数の発光体のうち発光対象とする発光体の数を変更することでレーザ光のサイズを変更する構成とすれば、サイズ変更の応答性を好適に向上させることができる。
【0036】
なお、複数の発光体をレーザ光の走査方向に並べて配置することにより、第3の手段に示した構成を好適に実現できる。
【0037】
第12の手段.前記レーザ光のサイズとして、第1サイズと当該第1サイズよりも大きい第2サイズとを含み、
前記変更部は、前記レーザ光のサイズを前記第1サイズとする場合には前記複数の発光体のうち特定の発光体(レーザダイオード22a)を前記発光対象とし、前記レーザ光のサイズを前記第2サイズとする場合には前記発光体のうち前記特定の発光体と当該特定の発光体に隣り合う他の発光体(レーザダイオード22b,22c)とを前記発光対象とする構成となっている。
【0038】
特定の発光体に隣り合う他の発光体のON/OFFによりレーザ光のサイズを変更する構成とすれば、サイズ変更によってレーザ光の向きが変わることを抑制できる。これは、物体検知の確からしさを簡易な構成によって実現する上で好ましい構成である。例えば、レーザ光の光軸を第1サイズと第2サイズとで一致させる構成とするとよい。
【0039】
第13の手段.前記照射部は、発光体(レーザダイオード22X)と、当該発光体からの光が透過するレンズ部(焦点可変レンズ60X)とを有しており、
前記変更部は、前記レンズ部に印加する電圧を切り替えて当該レンズの焦点を変更させることにより前記レーザ光のサイズを変更する構成となっている。
【0040】
本手段13に示すように、レーザ光が焦点可変レンズを通過する構成とすれば、レーザ光のサイズを任意に変更させる構成を簡易に実現できる。
【0041】
第14の手段.前記照射部及び前記受光部を収容するケース体(ケース13)を備え、
前記照射部は、レーザ光を出力する発光体(レーザダイオード22X)と、レーザ光の走査方向に回動可能に設けられ当該発光体からのレーザ光を反射する反射部(第2ミラー43)とを有し、前記反射部により反射されたレーザ光が前記ケース体の透過部(窓パネル15)を通じて前記検知エリアへ照射する構成となっており、
前記レンズ部は、当該レンズ部の光軸が鉛直方向を向き且つ前記発光体と前記反射部との間に位置するように配置されている。
【0042】
レンズ部を光軸が鉛直方向を向くように配置すれば、レンズ部の自重等によって当該レンズ部の形状に歪が生じたりレンズ部の向きが変化したりすることを抑制できる。これは、光路のずれを抑え、検知機能を安定して発揮させる上で好ましい。また、回動式の反射部を用いてレーザ光の照射方向を変化させる構成においては、出力されたレーザ光が反射部に到達する前、すなわちレーザ光の向きが変化する前にレンズ部を通過させる構成とすることにより、レーザ光のサイズ変更を簡易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1の実施形態におけるレーザレーダ装置の機械的構成を示す概略図。
図2】制御部にて実行されるエリア監視処理を示すフローチャート。
図3】レーザ光の拡がりとレーザレーダ装置から雪の粒までの距離との関係を示す概略図。
図4】従来のレーザレーダ装置における雪の影響に起因した誤報知の流れを示すタイミングチャート。
図5】(a)照射パターンAを示す概略図、(b)照射パターンBを示す概略図。
図6】照射パターンAと照射パターンBとの関係を示す概略図。
図7】照射パターンの切替態様を示す概略図。
図8】誤報知回避の流れを示すタイミングチャート。
図9】車の検知の流れを示すタイミングチャート。
図10】第2の実施形態におけるレーザレーダ装置の機械的構成を示す概略図。
図11】焦点可変レンズを示す概略図。
図12】第3の実施形態における照射パターンを対比した概略図。
図13】第4の実施形態におけるエリア監視処理を示すフローチャート。
図14】第5の実施形態における監視エリアを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、監視エリア内の物体を検知するレーザレーダ装置として具体化されている。
【0045】
図1に示すように、レーザレーダ装置10は、発光部21、受光部31及び光路形成部41からなる光学機構11と、当該光学機構11用の制御部12と、それら光学機構11及び制御部12を収容するハウジング13とを備えている。
【0046】
発光部21は、制御部12の制御に応じてパルスレーザ光(以下、レーザ光という)を間欠的に出力するPLDアレイ22と、当該PLDアレイ22から出力されるレーザ光の光路上に配設されたコリメートレンズ23とを有してなり、レーザ光はコリメートレンズ23を通過する際に平行光に変換される構成となっている。具体的には、PLDアレイ22及びコリメートレンズ23は何れも、光軸が水平となるようにしてハウジング13の奥壁部に取り付けられており、平行光に変換されたレーザ光は、当該ハウジング13の中央に配設された光路形成部41を通じてハウジング13の窓パネル15(レーザ光の透過部)から射出される。なお、レーザ光は、例えば赤外線や、可視光、紫外線等とするとよい。
【0047】
光路形成部41は、ハウジング13に固定された第1ミラー42と、当該第1ミラー42と対向する第2ミラー43と、第2ミラー43を回転させる回転機構45とを有している。第1ミラー42には、発光部21の光軸に対して斜めに傾く(斜め下方を向く)反射面42aが形成されており、発光部21から出力されたレーザ光は、当該反射面42aにより第2ミラー43の反射面43aへ導かれることとなる。
【0048】
第2ミラー43の反射面43aは、両ミラー42,43の並設方向(上下方向)に対して斜めに傾いており(斜め上方を向いており)、第1ミラー42により反射されたレーザ光は窓パネル15に向かうように第2ミラー43にて再度反射される構成となっている。
【0049】
回転機構45は、第2ミラー43が取り付けられたホルダ46と、ハウジング13に固定され且つホルダ46を回転可能に軸支する台座47と、ホルダ46を回転させるための駆動部であるモータ48とを有している。ホルダ46(第2ミラー43)の回転中心となる中心軸線CL1の向きは、第1ミラー42から第2ミラー43に入射するレーザ光の向きと一致しており、当該レーザ光の入射位置P1が反射面43aにおける中心軸線CL1上の位置となるように規定されている。
【0050】
モータ48は上記制御部12に接続されており、モータ48が動作することでホルダ46(第2ミラー43)が中心軸線CL1を中心に回転(周回)する。これにより、所定角度(例えば0.25°)毎に設定されている照射角度にてレーザ光が順次照射される構成が実現されている。なお、本実施形態においては、レーザレーダ装置10によるレーザ光の走査方向が水平方向となっている。
【0051】
監視エリアに物体Tが位置している状況下にてレーザレーダ装置10から当該監視エリアにレーザ光が照射された場合には、当該物体Tにより反射されたレーザ光(以下、反射光という)の一部がレーザレーダ装置10へ到達する。図1においては、レーザレーダ装置10から物体Tに至るレーザ光に符号L1を付し、物体Tにより反射された反射光のうち受光部31に至るものに符号L2を付している。
【0052】
受光部31は、光路形成部41の上方(ハウジング13の天井部)に配設されており、反射光は第2ミラー43によって当該受光部31に導かれる構成となっている。具体的には、受光部31は、上記天井部に取り付けられたフォトダイオード32と、当該フォトダイオード32及び上記第2ミラー43の間、詳しくは第1ミラー42の上方に配設された集光レンズ33(集光部)と、当該集光レンズ33及びフォトダイオード32の間に配設されたフィルタ34とを有してなり、第2ミラー43からの反射光が集光レンズ33→フィルタ34を通じてフォトダイオード32に導かれる構成となっている。フィルタ34は、反射光に対応した特定波長の光のみを透過させ、それ以外の光を遮断する波長選択フィルタであり、光路形成部41からフォトダイオード32に至る光路にて反射光を透過させ且つ反射光以外の光を除去する。
【0053】
なお、本実施形態においては、発光部21及び光路形成部41(第1ミラー42、第2ミラー43、回転機構45)より「照射部」が構成されている。
【0054】
次に、レーザレーダ装置10の電気的構成について補足説明する。レーザレーダ装置10の制御部12には、発光部21のPLDアレイ22及び受光部31のフォトダイオード32が各々接続され且つ駆動回路(図示略)を介して回転機構45のモータ48が接続されている。制御部12には演算部及び記憶部が設けられており、記憶部ではレーザレーダ装置用の制御プログラムや取得した各種計測結果(推定結果)を記憶し、演算部では記憶部に記憶されている測定結果等に基づいて物体の有無の判定等を行う。また、制御部12には、スピーカやランプ等からなる報知部が接続されており、例えば監視エリア内の物体を検知した場合にはその旨を示す報知が当該報知部により実行される。
【0055】
制御部12の演算部にて実行される処理については、所定角度(0.25°)毎に設定された各照射角度(ANG1~ANG600)にて発光部21からレーザ光を出力し、それら照射角度毎に受光部31の受光状況を確認し当該受光状況に係る情報を各々記憶するメイン処理と、メイン処理にて記憶された情報に基づいて監視エリア内に物体が位置しているか否かの判定等を行うエリア監視処理とに大別される。メイン処理は走査中に実行される処理であり、エリア監視処理は走査サイクル毎に繰り返し実行される処理である。ここで、図2のフローチャートを参照してエリア監視処理について補足説明する。
【0056】
エリア監視処理においては先ず、受光部31の受光量が予め設定されている閾値Dを上回っているか否かを判定する(ステップS101)。具体的には、上記メイン処理では受光量が照射角度毎に記憶される構成となっており、先のメイン処理にて記憶した受光量を読み出して当該受光量が閾値Dを上回っているか否かを判定する。
【0057】
受光量が閾値Dを上回っている場合には、レーザ光の照射から反射光の受光までの時間に基づいてレーザ光を反射したと推定される暫定対象までの距離を算出し、算出距離が基準範囲Lに含まれているか否かを判定する(ステップS102)。この基準範囲Lについては監視エリアに合わせて照射角度毎に定められている。算出距離が基準範囲Lに含まれている場合にはステップS103に進む。
【0058】
制御部12の記憶部には照射角度毎に物体判定用のカウンタ(以下、判定用カウンタという)が設けられている。ステップS103では、今回の照射角度に対応した判定用カウンタの値を更新すべく更新処理を行う。具体的には、判定用カウンタの値を「1」加算する。その後は、ステップS104にて判定用カウンタの値が基準値M(本実施の形態では「5」)に達しているか否かを判定する。ステップS104にて否定判定をした場合には、そのまま本監視処理を終了する。一方、ステップS104にて肯定判定をした場合には、上記報知部にて異常報知(例えばアラート)を開始すべく報知開始処理を実行する。
【0059】
ステップS101及びステップS102の何れかにて否定判定をした場合には、ステップS106に進み、判定用カウンタの値をリセット(0クリア)する。
【0060】
このように、本実施形態に示すレーザレーダ装置10では、1度の測距が発生したとしても直ちに監視エリア内に物体(予め検知対象として想定している物体)があると判定するのではなく、連続して5回の測距が発生することで監視エリアDE内に物体が位置している(侵入している)と判定する。すなわち、上記暫定対象を予め検知対象として想定している物体(「対象物体」に相当)として検知する。これにより、検知結果の確からしさの向上が図られている。なお、本実施形態においては制御部12においてステップS101~S104,S106の処理を実行する機能が「判定部」に相当する。
【0061】
本実施形態に示すレーザレーダ装置10を、例えば線路内への人や車の侵入監視を目的として踏切やホーム等に設置する場合には「対象物体」は人や車となる。そして、監視エリアについては屋外に設定され得る。
【0062】
屋外の監視エリアについてはその環境が気象条件等で大きく変化し、場合によっては当該監視エリアに雪が降る可能性がある。例えば図3に例示しているように、監視エリアDEを降下(通過)する雪(例えば牡丹雪)の粒Sに対してレーザ光が直撃した場合には、レーザ光の反射量が大きくなり、受光部31における受光量>閾値Dとなり得る。特に、レーザ光については感度向上等の観点から当該レーザ光のサイズ(断面積)が小さく抑えられていることが一般的である。レーザ光のサイズと雪のサイズとの差が小さくなることで、レーザ光のうち直撃時に雪の粒Sの脇を素通りする光の割合いは小さくなるため、上記事象が発生しやすくなる。なお、レーザ光は光源から遠ざかるにつれて照射方向(軸線)と交差する方向に僅かながら拡がる構成となっており、レーザレーダ装置10に近い位置を通過する雪の粒についてはレーザレーダ装置10から遠い位置を通過する雪の粒と比較して上記事象が発生する原因になりやすい。
【0063】
図4のタイミングチャートには、従来のレーザレーダ装置において、検知対象外の雪の粒S(「非対象物体」に相当)が原因となって誤検知が発生する場合の流れを例示している。
【0064】
図4に示す例では、雪の粒Sが監視エリアDEを縦に通過している。通過に要した時間(所要時間)は、走査サイクルが8回実行される程度の時間となっており、判定用カウンタの値が走査サイクル毎に「1」ずつ加算されている。当該判定用カウンタの値は雪の粒Sが監視エリアDEの上限に達してから5回目の走査サイクルが実行された際に基準値Mに達している。この結果、監視エリアDE内を通過する雪が対象物体として誤検知され、警報等が出力される。このような事象(誤検知定→警報)が頻発することは、レーザレーダ装置10の信頼性を大きく低下させる要因になると懸念される。本実施形態では、このような事情に配慮した工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図5図7を参照して当該工夫について説明する。
【0065】
図5(1)群に示すように、本実施形態に示す発光部21は、走査方向に複数(3つ)のレーザダイオード22a~22cが配列されてなる上記PLDアレイ22を有している。各レーザダイオード22a~22cは制御部12によりON(点灯)/OFF(消灯)を個別に制御可能となっている。レーザダイオード22a~22cは、輝度やレーザ光のサイズ等の各種仕様が共通となっているものの、点灯条件に若干の違いがある。以下の説明では、走査方向における中央のレーザダイオード22aを第1レーザダイオード22a、当該第1レーザダイオード22aの両隣のレーザダイオード22b,22cを第2レーザダイオード22b、第3レーザダイオード22cとして区別する。
【0066】
本実施形態では、レーザレーダ装置10から監視エリアDEに照射されるレーザ光のサイズ(断面積:光軸と直交する断面の面積)を照射パターンA/照射パターンBで切替可能となっている。
【0067】
照射パターンAは、レーザ光のサイズが相対的に小さい照射パターンであり、第1レーザダイオード22a=ON、第2レーザダイオード22b=OFF、第3レーザダイオード22c=OFFとなるように発光制御が行われる。詳細には、照射パターンAにおけるレーザ光のサイズは、レーザレーダ装置10から5mの地点(監視エリアDE内)にて縦横が何れも5cmである。
【0068】
照射パターンBは、レーザ光のサイズが相対的に大きい照射パターンであり、第1レーザダイオード22a=ON、第2レーザダイオード22b=ON、第3レーザダイオード22c=ONとなるように発光制御が行われる。第1レーザダイオード22aからのレーザ光の光路については、第2レーザダイオード22b及び第3レーザダイオード22cからのレーザ光の光路と接しており、レーザレーダ装置10から出力されるレーザ光のサイズは第2レーザダイオード22b及び第3レーザダイオード22cの分だけ照射パターンAよりも大きくなる。
【0069】
つまり、照射パターンAと照射パターンBとでは、走査方向と交差(直交)する方向におけるレーザ光のサイズは同一である一方、走査方向におけるレーザ光のサイズは異なっている(図5(2)群参照)。
【0070】
図6に示すように、照射パターンA及び照射パターンBは、レーザ光の輝度についても相違している。具体的には、照射パターンAでは輝度が相対的に高く、照射パターンBでは輝度が相対的に低くなっている。より詳細には、レーザ光の光量が両照射パターンA,Bで同一となるように照射パターンBにおける輝度が抑えられている。
【0071】
ここで、サイズが小さいレーザ光(照射パターンAのレーザ光)は、サイズの大きいレーザ光と比べて、物体検知の感度を高める上で有利である。但し、サイズの小さいレーザ光については、人や車等の大きい物体(対象物体)に照射された場合だけでなく雪等の微小な物体(非対象物体)に照射された場合、特にレーザレーダ装置10の近辺を通過する微小な物体に照射された場合にもレーザ光の反射量(照射されたレーザ光の光量に対する反射量の割合い)は大きくなる。このような事情から、サイズの小さいレーザ光を照射する場合には、サイズの大きいレーザ光を照射する場合と比べて、本来であれば検知対象外である微小な物体を検知する可能性が高くなる。このような事象が発生する確率は、降雪量が多くなることで高くなる。
【0072】
サイズの大きいレーザ光(照射パターンBのレーザ光)は、サイズの小さいレーザ光と比べて、物体を検知する場合の感度は低い。但し、人や車等の大きい物体(対象物体)にレーザ光が照射された場合には、サイズの小さいレーザ光と同様にレーザ光の反射量(照射されたレーザ光の光量に対する反射量の割合い)が十分に確保される一方、雪等の微小な物体(非対象物体)に照射されるレーザ光の一部は当該微小な物体の脇を素通りすることによりレーザ光の反射量(照射されたレーザ光の光量に対する反射量の割合い)は小さくなる。つまり、サイズの大きいレーザ光を照射する場合には、サイズの小さいレーザ光を照射する場合と比べて、上記誤検知を抑制する上で有利となる。
【0073】
本実施形態では、これら特性の違う2つのサイズのレーザ光を併用すべく、照射パターンA及び照射パターンBを走査サイクルの実行回数(周回数)に応じて所定の順序で切り替える構成となっている。具体的には、図7に示すように、走査サイクル(周回数)=nでは照射パターンA、走査サイクル(周回数)=n+1では照射パターンA→走査サイクル(周回数)=n+2では照射パターンA→走査サイクル(周回数)=n+3では照射パターンA→走査サイクル(周回数)=n+4では照射パターンBとなるように規定されている。そして、走査サイクル(周回数)=n+5以降は上述した切替パターンが繰り返されることとなる。つまり、連続する5回(上記基準値と同数)の走査サイクルのうち少なくとも1回が照射パターンBとなるように切り替わる構成となっている。言い換えれば、判定用カウンタの値が基準値Mに達するまでに必ず1度は照射パターンB対応の走査サイクルが発生するように構成されている。
【0074】
ここで、図8のタイミングチャートを参照して、照射パターンの切替によって雪等の微小な物体に係る誤検知が回避される場合の流れについて説明する。なお、図8に示す例では、雪の粒Sが監視エリアDEを縦に通過しており、通過に要した時間(所要時間)は、走査サイクルが8回実行される程度の時間となっている。
【0075】
雪の粒Sが監視エリアDEに突入したタイミングで実行された走査サイクル(以下、この走査サイクルを1回目の走査サイクルとして説明する)では、レーザ光の照射パターンが照射パターンAとなっている。レーザ光が雪の粒Sに当たってはいるものの、雪の粒Sの大部分は監視エリアDE外(照射範囲外)であり、受光量は閾値Dを下回っている。このため、判定用カウンタの値は「0」に維持される。
【0076】
2回目の走査サイクルについてもレーザ光の照射パターンが照射パターンAとなっている。このタイミングでは雪の粒Sの全体が監視エリアDEに入っており、レーザ光が雪の粒Sに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「0」→「1」に加算されている。3回目の走査サイクルでもレーザ光の照射パターンは照射パターンAとなっており、再びレーザ光が雪の粒Sに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「1」→「2」に加算されている。
【0077】
3回目の走査サイクルにて照射パターンAが4連続となり、4回目の走査サイクルではレーザ光の照射パターンが照射パターンBに切り替わる。4回目の走査サイクルにて照射されるレーザ光についても雪の粒Sに直撃してはいるものの、受光量は閾値Dを下回っている。これにより、判定用カウンタの値が「2」→「0」にリセットされている。
【0078】
5回目の走査サイクルでは、レーザ光の照射パターンが照射パターンAに切り替わり、再びレーザ光が雪の粒Sに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「0」→「1」に加算されている。以降の6回目、7回目の各走査サイクルでもレーザ光の照射パターンは照射パターンAであり、何れの場合も受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「1」→「2」→「3」の順に加算されている。
【0079】
8回目の走査サイクルでは、レーザ光の照射パターンは照射パターンAであるものの、雪の粒Sの凡そ1/3が監視エリアDEから外れている。このため、レーザ光が雪の粒Sに当たりはするものの、受光量は低下して閾値Dを下回ることとなる。この結果、判定用カウンタの値が「3」→「0」にリセットされている。
【0080】
9回目の走査サイクルが実行されるタイミングでは、レーザ光の照射パターンが照射パターンBとなる。レーザ光の拡大方向は走査方向と同じ方向(水平方向)であり、走査方向と交差する方向(鉛直方向)には拡大されない。このため、監視エリアDEを通り過ぎた雪の粒Sにレーザ光が当たらず、受光量は閾値Dを下回ったままとなる。つまり、判定用カウンタの値は「0」のままとなる。
【0081】
このように、雪の粒Sが監視エリアDEを通過する場合には、複数の走査サイクルにて判定用カウンタの値が連続して加算されはするものの、当該判定用カウンタの値が基準値Mに達する前に照射パターンBが介入して判定用カウンタのリセットが促されることとなる。このような構成とすることにより、雪の粒Sに係る上記誤検知を抑制することができる。
【0082】
ここで、監視エリアDEの高さについては、対象物体(詳しくは人の胴体や車のボディ)の高さに合わせて設定されている。つまり、監視エリアDEに人が侵入した場合にレーザ光が人の胴体に当たり、監視エリアDEに車が侵入した場合にはレーザ光が車のボディに当たることを想定してレーザレーダ装置10が設置される。レーザ光のサイズ(断面積)については、照射パターンA及び照射パターンBの何れの場合であっても、対象物体においてレーザ光が照射されると想定している部分の面積よりも小さくなるように設定されている。これにより、照射パターンBの介入によって本来検知すべき対象物体の見逃しが生じることを抑制している。以下、図9のタイミングチャートを参照して、監視エリアDEに対象物体である車Vが侵入した場合の検知の流れについて説明する。
【0083】
図9に示す例では、車Vが監視エリアDEに侵入している。車Vが監視エリアDEに侵入したタイミングで実行された走査サイクル(以下、この走査サイクルを1回目の走査サイクルとして説明する)では、レーザ光の照射パターンが照射パターンAとなっている。レーザ光が車Vに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「0」→「1」に加算されている。
【0084】
続く2回目の走査サイクルでもレーザ光の照射パターンは照射パターンAとなっており、再びレーザ光が車Vに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「1」→「2」に加算されている。
【0085】
2回目の走査サイクルでは照射パターンAが4回連続することなり、3回目の走査サイクルではレーザ光の照射パターンが照射パターンBとなる。3回目の走査サイクルにて照射されるレーザ光についても車Vに直撃しており、受光量は照射パターンAの場合よりも僅かに低下してはいるものの閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「2」→「3」に加算されている。
【0086】
4回目の走査サイクルでは、レーザ光の照射パターンが再び照射パターンAとなり、再びレーザ光が車Vに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「3」→「4」に加算されている。
【0087】
5回目の走査サイクルでもレーザ光の照射パターンは照射パターンAとなっており、再びレーザ光が車Vに直撃することで受光量が閾値Dを超えている。これにより、判定用カウンタの値が「4」→「5」に加算されている。当該判定用カウンタの値は車Vが監視エリアDEに侵入してから5回目の走査サイクルが実行された際に基準値Mに達している。この結果、監視エリアDE内への対象物体の侵入が検知され、警報等が出力されることとなる。
【0088】
以上詳述した第1の実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0089】
監視エリアDEに侵入した人や車等の物体(対象物体)にレーザ光が照射され、同一の照射角度で受光量が閾値Dを連続して上回り、その連続回数が基準値Mとなることで当該物体が監視エリアDEに位置している判定される。これに対して、監視エリアDEを通過する雪等の微小な物体(非対象物体)にレーザ光が照射され、微小な物体について同一の照射角度で受光量が閾値Dを連続して上回ったとしても、その連続回数が基準値Mとなる前にレーザ光の照射パターンが照射パターンBとなる。これにより、当該連続が途切れることとなる。つまり、微小な物体については受光量が閾値Dを連続して上回る回数<基準値Mとすることができる。このようにして微小な物体を意図的に検知除外することにより、当該微小な物体に起因した誤検知を好適に抑制できる。
【0090】
上述したように物体検知の感度については照射パターンB<照射パターンAとなる。そこで、照射パターンAのレーザ光の照射回数>照射パターンBのレーザ光の照射回数とすることにより、物体検知の感度低下を好適に抑制できる。
【0091】
複数のレーザダイオード22a~22cのうち点灯対象とするレーザダイオードの数を変更することでレーザ光のサイズを変更する構成によれば、サイズ変更の応答性を好適に向上させることができる。
【0092】
特に、中央の第1レーザダイオード22aに隣り合う他のレーザダイオード22b,22cのON/OFFによりレーザ光のサイズを変更する構成とすれば、サイズ変更によってレーザ光の向きが変わることを抑制できる。これは、物体検知の確からしさを簡易な構成によって実現する上で好ましい構成である。
【0093】
本実施形態に示したように、レーザ光のサイズを走査方向において変更する構成とすれば、大きいサイズのレーザ光がエリア内の人や車等の物体(対象物体)に照射された場合の照射面積、すなわち対象物体からの反射量を好適に稼ぐことができる。これは、対象物体の見逃しを抑制する上で好ましい。
【0094】
例えばサイズの異なる複数のレーザ光を常時併用する構成とした場合でも本実施形態に示したレーザレーダ装置10と同様に誤検知を抑制することは可能である。しかしながら、このようなレーザレーダ装置では消費電力が大きく嵩むことになる。この点、本実施形態に示したように、照射されるレーザ光のサイズを変更する構成とすれば、上述した常時併用タイプと比較して消費電力を軽減できる。
【0095】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、点灯させるレーザダイオードの数を変更することにより、レーザレーダ装置10から監視エリアDEに照射されるレーザ光のサイズを切り替える構成とした。本実施形態では、レーザ光のサイズ切替に係る構成が第1の実施形態と相違している。以下、図10及び図11を参照して第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態におけるサイズ切替に係る構成について説明する。
【0096】
図10に示すように、本実施形態に示すレーザレーダ装置10Xにおいては発光部と受光部との位置関係が第1の実施形態に示したレーザレーダ装置10と逆になっている。すなわち、光路形成部41Xの上方に発光部21Xが配設され且つ光路形成部41Xの後方に受光部31が配設されている。
【0097】
発光部21Xを構成しているレーザダイオード22Xは、光軸が第2ミラー43の回転中心軸線(中心軸線CL1)と一致するようにして配置されており、当該レーザダイオード22Xから出力されたレーザ光は第1ミラー42Xの中央部分に形成された貫通孔42bXを通じて第2ミラー43に到達するように構成されている。
【0098】
レーザダイオード22Xとコリメートレンズ23との間には焦点可変レンズ60X(詳しくは液体レンズ)が配設されている。焦点可変レンズ60Xの中心軸線(光軸)についてもレーザダイオード22X及びコリメートレンズ23と同様に上記中心軸線CL1と一致しており、レーザダイオード22Xから出力されたレーザ光はコリメートレンズ23にて平行光に変換される前に焦点可変レンズ60Xを通過するように構成されている。なお、焦点可変レンズ60Xを電気光学素子レンズとすることも可能である。
【0099】
焦点可変レンズ60Xは制御部12に接続されており、当該制御部12からの電気信号(印加される電圧)に応じてレンズの曲率(焦点の位置)が変化する。レンズの曲率が変化することにより、焦点可変レンズ60Xを通過するレーザ光のサイズが変更される。具体的には、焦点可変レンズ60Xに印加される電圧がLOWレベルの場合にはレンズの曲率が曲率Aとなり、レーザ光のサイズが相対的に小さい照射パターンAとなる。これに対して、焦点可変レンズ60Xに印加される電圧がHIレベルの場合にはレンズの曲率が曲率Bとなり、レーザ光のサイズが相対的に大きい照射パターンBとなる(図11参照)。
【0100】
本実施形態では、走査サイクルにおいて第2ミラー43が監視エリアDEとは反対側を向いている間にレンズの曲率(焦点の位置)を変化させる構成とすることにより、曲率変更の時間確保が次の走査サイクルへの速やかな移行を妨げる要因になることを抑制している。
【0101】
<第3の実施形態>
上記第1の実施形態では、レーザレーダ装置10から監視エリアDEに照射されるレーザ光のサイズを走査方向においてのみ拡大/縮小させる構成とした。本実施形態では、走査方向におけるサイズに加えて当該走査方向と交差(直交)する方向におけるサイズについても拡大/縮小させる構成となっている。具体的には、図12(a)→図12(b)に示すように、照射パターンA→照射パターンBとなることで、レーザ光の光軸(中心軸)と交差する全ての方向にサイズが拡大される。このようにしてレーザ光のサイズを全体的に大きくする場合にも、レーザ光の光軸については変更前後で一致させるとよい。
【0102】
例えば、PLDアレイを3×3の計9個のレーザダイオードで構成し、照射パターンAでは中央のレーザダイオードをON且つ他のレーザダイオードをOFFとし、照射パターンBではそれら全てのレーザダイオードをONとするとよい。
【0103】
<第4の実施形態>
上記第1の実施形態では、予め定められた順序でレーザ光の照射パターンを切り替える構成とした。本実施形態では、反射光の受光状況に応じてレーザ光の照射パターンを切り替える構成となっている点、具体的にはエリア監視処理における処理内容が第1の実施形態と相違している。以下、図13を参照して、本実施形態におけるエリア監視処理について説明する。なお、レーザレーダ装置10の構造等については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0104】
エリア監視処理においては先ず、受光部31の受光量が予め設定されている閾値Dを上回っているか否かを判定する(ステップS201)。受光量が閾値Dを上回っている場合には、レーザ光を反射したと推定される暫定対象までの距離を算出し、算出距離が基準範囲Lに含まれているか否かを判定する(ステップS202)。算出距離が基準範囲Lに含まれている場合には、今回の照射角度に対応した判定用カウンタの値を「1」加算する(ステップS203)。その後は、判定用カウンタの値が基準値M(本実施の形態では「5」)に達しているか否かを判定する(ステップS204)。基準値Mに達している場合には、上記報知部にて異常報知(例えばアラート)を開始すべく報知開始処理を実行する(ステップS205)。ステップS201及びステップS202の何れかにて否定判定をした場合には、判定用カウンタの値をリセット(0クリア)する(ステップS208)。つまり、1度の測距が発生したとしても直ちに監視エリア内に物体(予め検知対象として想定している物体)があると判定するのではなく、連続して5回の測距が発生することで監視エリアDE内に物体が位置している(侵入している)と判定する。すなわち、上記暫定対象を予め検知対象として想定している物体(「対象物体」に相当)として検知する。ステップS201~S205,S208の各処理は、ステップS101~S105,S106の各処理と同様である。
【0105】
上記ステップS204にて否定判定をした場合には、ステップS206に進む。ステップS206では、判定用カウンタの値が第2基準値Nとなっているか否かを判定する。第2基準値Nは第1基準値Mよりも小さい値(本実施形態においては「3」)である。ステップS206にて否定判定をした場合にはそのまま本エリア監視処理を終了する。ステップS206にて肯定判定をした場合にはステップS207にて記憶部に照射パターンBフラグをセットして、本エリア監視処理を終了する。
【0106】
照射パターンBフラグは上述したメイン処理にて参照されるフラグであり、当該照射パターンBフラグがセットされている場合には、レーザ光の照射パターンが照射パターンBとなる。これに対して、照射パターンBフラグがセットされていない場合には、レーザ光の照射パターンが照射パターンAとなる。ステップS207にてセットされた照射パターンBフラグについては、ステップS208にて判定用カウンタの値がリセットされる際に消去される。
【0107】
第1基準値M到達前にレーザ光の照射パターンを照射パターンBとして微小な物体を意図的に検知除外する場合には、除外後は速やかに照射パターンを照射パターンAに戻すことにより、物体検知の感度低下を最小限に留めることができる。
【0108】
<第5の実施形態>
上記第4の実施形態では、各走査サイクルにおいてサイクル開始からサイクル終了までの間は照射パターンが照射パターンA及び照射パターンBの何れかに固定される構成、すなわち1の走査サイクル中は何れの照射角度においても照射パターンは同一となる構成とした。本実施形態では、走査サイクル中は照射角度に応じて照射パターンA及び照射パターンBを切替可能となっている点で第4の実施形態と相違している。以下、図14の概略図を参照して、照射パターンの決定に係る構成について、第4の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0109】
本実施形態では、走査方向にて監視エリアDEを複数の個別エリアに分けて、それら個別エリア毎にレーザ光の照射パターンが決定される構成となっている。具体的には、個別エリアとして、右エリアDER(照射角度ANG1~ANG200)、中エリアDEM(照射角度ANG201~ANG400)、左エリアDEL(照射角度ANG401~ANG600)の3つが設けられており、走査サイクル中はそれらのエリアDER,DEM,DEL毎に照射パターンを切替可能となっている点で第4の実施形態と構成が相違している。
【0110】
次の走査サイクルにおける個別エリアDERでの照射パターンについては、個別エリアDERに対応した照射角度の各判定用カウンタの値が参照される。つまり、個別エリアDERに対応する何れかの判定用カウンタの値が基準値Nに達している場合には次の走査サイクルにおける個別エリアDERでの照射パターンが照射パターンBとなり、個別エリアDERに対応する何れかの判定用カウンタの値が何れも基準値Nに達していない場合には次の走査サイクルにおける個別エリアDERでの照射パターンが照射パターンAとなる。
【0111】
次の走査サイクルにおける個別エリアDEMでの照射パターンについては、個別エリアDEMに対応した照射角度の各判定用カウンタの値が参照される。つまり、個別エリアDEMに対応する何れかの判定用カウンタの値が基準値Nに達している場合には次の走査サイクルにおける個別エリアDEMでの照射パターンが照射パターンBとなり、個別エリアDEMに対応する何れかの判定用カウンタの値が何れも基準値Nに達していない場合には次の走査サイクルにおける個別エリアDEMでの照射パターンが照射パターンAとなる。
【0112】
次の走査サイクルにおける個別エリアDELでの照射パターンについては、個別エリアDELに対応した照射角度の各判定用カウンタの値が参照される。つまり、個別エリアDELに対応する何れかの判定用カウンタの値が基準値Nに達している場合には次の走査サイクルにおける個別エリアDELでの照射パターンが照射パターンBとなり、個別エリアDELに対応する何れかの判定用カウンタの値が何れも基準値Nに達していない場合には次の走査サイクルにおける個別エリアDELでの照射パターンが照射パターンAとなる。
【0113】
このようにして監視エリアDEを複数の個別エリアに分割し、それら個別エリア毎に照射パターンを切替可能とすれば、照射パターンAによる照射の機会を極力多くすることができる。これは、誤検知の抑制に起因した物体検知の感度低下を抑える上で好ましい。
【0114】
<他の実施形態>
・上記各実施形態では、照射パターンAとなる頻度と照射パターンBとなる頻度とが相違する構成としたが、これに限定されるものではない。照射パターンAとなる頻度と照射パターンBとなる頻度とを同一とすることも可能である。例えば、照射パターンAと照射パターンBとが交互となるように照射パターンを切り替える構成としてもよい。
【0115】
・上記各実施形態では、照射パターンAで出力されるレーザ光の光路(照射領域)が照射パターンBで出力されるレーザ光の光路(照射領域)に含まれる構成としたが、これに限定されるものではない。照射パターンAで出力されるレーザ光の光路の一部と照射パターンBで出力されるレーザ光の光路の一部とが重なる構成としてもよいし、照射パターンAで出力されるレーザ光の光路と照射パターンBで出力されるレーザ光の光路とが重ならない構成としてもよい。
【0116】
・上記各実施形態では、レーザ光をサイズが異なる2つの照射パターンA,Bで切り替える構成としたが、サイズが異なる照射パターンの数については2つ以上であれば任意に変更してもよい。例えば、3つとしてもよいし、4つとしてもよい。このような多段階的な切り替えを想定する場合には、例えば判定用カウンタの値が基準値Mに近づくにつれて、レーザ光のサイズを段階的に大きくするように照射パターンを切り替える構成とするとよい。
【0117】
・上記各実施形態では、レーザ光の断面(光軸と直交する断面)が矩形となる構成としたが、レーザ光の断面については任意に変更してもよい。例えば、円形(楕円形を含む)とすることも可能である。
【0118】
・上記各実施形態では、照射パターンBとなった場合にレーザ光の輝度を引き下げる構成としたが、これに限定されるものではない。これに代えて、照射パターンBとなった場合に閾値Dを引き上げる構成とすることも可能である。例えば、照射パターンA→照射パターンBとなることでレーザ光の光量(総量)が3倍になる場合には、閾値についても3倍にするとよい。
【0119】
・上記第1の実施形態等では、レーザダイオード22a~22cを点灯させた場合に、第1レーザダイオード22aからのレーザ光の外縁と、第2レーザダイオード22bからのレーザ光の外縁及び第3レーザダイオード22cからのレーザ光の外縁とが接する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、レーザダイオード22a~22cを点灯させた場合に、第1レーザダイオード22aからのレーザ光と第2レーザダイオード22bからのレーザ光及び第3レーザダイオード22cからのレーザ光との間にブランクが生じる構成とすることも可能である。また、第1レーザダイオード22aからのレーザ光と、第2レーザダイオード22bからのレーザ光及び第3レーザダイオード22cからのレーザ光とが一部で重なる構成(重複分が生じる構成)とすることも可能である。但し、レーザ光が重なる部分では輝度が高くなるため、この重なる部分が雪等の微小な物体に直撃した場合の反射量が大きくなると想定される。このような事情に配慮する上では、各レーザダイオードからのレーザ光については相互の重なりが回避される構成とすることが好ましい。
【0120】
・上記第1の実施形態等では、PLDアレイ22を3つのレーザダイオード22a~22cによって構成したが、少なくとも各照射パターンにて点灯されるレーザダイオードの数を相違させることができるのであれば足り、レーザダイオードの数については任意に変更してもよい。例えばレーザダイオードの数を4個としてもよいし、5個としてもよい。
【0121】
また、上記第1の実施形態等に示したPLDアレイ22は、複数のレーザダイオードが走査方向(水平方向)に配列されてなる構成としたが、これに加えて又は代えて複数のレーザダイオードが走査方向と直交する方向(鉛直方向)に配列されてなる構成とすることも可能である。
【0122】
・上記第2の実施形態では、焦点可変レンズ60Xを当該焦点可変レンズ60Xの光軸が縦向きとなるようにして配置したが、焦点可変レンズ60Xを当該焦点可変レンズ60Xの光軸が横向きとなるようにして配置することも可能である。また、焦点可変レンズ60Xの配置については、コリメートレンズ23と第2ミラー43との間に限定されるものではない。例えば、焦点可変レンズ60Xをレーザダイオード22Xとコリメートレンズ23との間に配置することも可能である。
【0123】
・上記第2の実施形態に示した印加電圧とレーザ光のサイズとの関係を逆にしてもよい。すなわち、焦点可変レンズ60Xに印加される電圧がLOWレベルの場合にはレーザ光のサイズが相対的に大きい照射パターンBとなり、焦点可変レンズ60Xに印加される電圧がHIレベルの場合にはレーザ光のサイズが相対的に小さい照射パターンAとなるようにしてもよい。
【0124】
・上記各実施形態では、監視エリアDEを屋外に設定する場合について例示したが、上記各実施形態に示したレーザレーダ装置10によれば、監視エリアDEを屋内(例えば工場等)に設定する場合に以下の効果が期待できる。すなわち、工場内では、作業者等の侵入を監視する監視エリアDEに天井等から埃やごみ等の微小な物体が落下し得る。このような微小な物体が監視エリアDEを通過する場合の誤検知を抑制し、監視機能に対する信頼性の向上に寄与できる。
【符号の説明】
【0125】
10…レーザレーダ装置、11…光学機構、12…制御部、13…ハウジング、15…窓パネル、21,21X…発光部、22…PLDアレイ、22X…レーザダイオード、22a~22c…レーザダイオード、31…受光部、32…フォトダイオード、43…第2ミラー、60X…焦点可変レンズ、CL1…回動中心軸線、DE…監視エリア、DEL,DEM,DER…個別エリア、S…雪の粒、T…物体、V…車。
図1
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