(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20241107BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20241107BHJP
G07G 1/06 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B41J29/00 C
B41J15/04
G07G1/06 Z
(21)【出願番号】P 2020212609
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】紅林 亮
(72)【発明者】
【氏名】徳田 圭祐
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124226(JP,A)
【文献】特開2013-049174(JP,A)
【文献】特開2005-088350(JP,A)
【文献】特開2011-156843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
B41J 15/04
G07G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を収納する収納空間を形成するロール紙収納部と、
前記ロール紙収納部とは水平方向にずれた位置に配置され、前記ロール紙から引き出された用紙に印字を施す印字ヘッドと該印字ヘッドに対向して配置されたプラテンとを有し、前記ロール紙収納部よりも高さの低い印字機構と、
前記印字機構よりも上方に設けられ、印字済みの用紙を上方に向かって排出する用紙排出口と、
前記印字機構の下方に設けられた基板ユニットと、
前記印字機構が配置された上部と前記基板ユニットが配置された下部とを仕切り、前記用紙排出口から該上部に浸入した液体を
前記収納空間に案内する案内部が形成された仕切壁と、を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記基板ユニットは、前記印字機構を制御する制御素子が実装された制御基板と、該印字機構および該制御基板に電力を供給する電源素子が実装された電源基板とを有するものであり、
前記電源基板は前記制御基板の上に積み重ねて配置されたものであることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記仕切壁は、前記ロール紙収納部の底面を構成するもので
あることを特徴とする請求項1または2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記仕切壁は、前記収納空
間に案内された液体を該収納空間の外部に排出する水抜孔が設けられたものであることを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙から引き出された用紙に印字を施して排出するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の用紙がロール状に巻かれたロール紙から用紙を引き出し、この用紙に印字を施して排出するプリンタが知られている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載されたプリンタは、ロール紙を収容するロール紙収納部と、サーマルヘッドおよびプラテンを有する印字機構と、基板ユニットと、カッターとを備えている。ロール紙から引き出された用紙は、サーマルヘッドとプラテンとの間で印字が施され、このプリンタの上面に設けられた用紙排出口から排出される。なお、用紙排出口から排出された用紙は、カッターによって切断され、伝票やレシート等の用紙片として用いられる。
【0003】
ところで、例えばレストランにおいて客から受けたオーダーを厨房に伝えるために、水や油などを取り扱う厨房にプリンタを置いて使用する場合がある。また、例えばガソリンスタンドのように、風雨に晒される屋外でプリンタを使用する場合もある。このようなプリンタでは、プリンタ内部に水などの液体が浸入することがある。そして、プリンタの内部に侵入した液体が基板ユニットにかかると回路が短絡したり、基板ユニットに設けられた電子部品が故障してしまう虞がある。
【0004】
特許文献1に記載されたプリンタでは、ほぼ密閉状態のケース内に基板ユニットを収納することで、プリンタの内部に進入した液体が基板ユニットに進入することを抑制している。その基板ユニットを収納したケースはロール紙収納部の下に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたプリンタの構成では、ロール紙収納部の下に基板ユニットを配置しているので、これらが積み重なってプリンタの高さが高くなり、プリンタが大型化してしまう。加えて、基板ユニットへの水の侵入を抑制するケースが設けられているため、さらにプリンタが大型化してしまう。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、基板ユニットへの水の侵入が抑制された小型なプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明のプリンタは、ロール紙を収納する収納空間を形成するロール紙収納部と、
前記ロール紙収納部とは水平方向にずれた位置に配置され、前記ロール紙から引き出された用紙に印字を施す印字ヘッドと該印字ヘッドに対向して配置されたプラテンとを有し、前記ロール紙収納部よりも高さの低い印字機構と、
前記印字機構よりも上方に設けられ、印字済みの用紙を上方に向かって排出する用紙排出口と、
前記印字機構の下方に設けられた基板ユニットと、
前記印字機構が配置された上部と前記基板ユニットが配置された下部とを仕切り、前記用紙排出口から該上部に浸入した液体を前記収納空間に案内する案内部が形成された仕切壁と、を備えたことを特徴とする。
また、ロール紙を収納する収納空間を形成するロール紙収納部と、
前記ロール紙収納部とは水平方向にずれた位置に配置され、前記ロール紙から引き出された用紙に印字を施す印字ヘッドと該印字ヘッドに対向して配置されたプラテンとを有し、前記ロール紙収納部よりも高さの低い印字機構と、
前記印字機構よりも上方に設けられ、印字済みの用紙を上方に向かって排出する用紙排出口と、
前記印字機構の下方に設けられた基板ユニットと、
前記印字機構が配置された上部と前記基板ユニットが配置された下部とを仕切り、前記用紙排出口から該上部に浸入した液体を所定方向に案内する案内部が形成された仕切壁と、を備えたことを特徴としてもよい。
【0009】
このプリンタによれば、前記ロール紙収納部よりも高さの低い前記印字機構の下方に前記基板ユニットを配置することでプリンタを小型化しつつ、前記上部に侵入した液体を前記仕切壁によって遮ぎり、前記案内部によって所定方向に案内するので、前記基板ユニットに液体が侵入することを防止できる。
【0010】
ここで、前記仕切壁は、前記印字機構と前記基板ユニットとの間を水密に仕切ることで、該基板ユニットに液体が到達することを防止するものであってもよい。前記印字機構は、前記ロール紙収納部と水平方向に並んで配置されたものであってもよく、前記基板ユニットも、該ロール紙収納部と水平方向に並んで配置されたものであってもよい。すなわち、前記印字機構と前記基板ユニットは、前記ロール紙収納部と横並びに配置されたものであってもよい。
【0011】
また、このプリンタにおいて、前記基板ユニットは、前記印字機構を制御する制御素子が実装された制御基板と、該印字機構および該制御基板に電力を供給する電源素子が実装された電源基板とを有するものであり、
前記電源基板は前記制御基板の上に積み重ねて配置されたものであってもよい。
【0012】
このプリンタによれば、前記基板ユニットにおける下方への投影面積が小さくなるので、該基板ユニットを前記印字機構の下に収納することが可能になり、結果としてプリンタを小型化できる。また、このプリンタが設置された場所に大量の液体が流れてきても、前記制御基板の上にある前記電源基板にはその液体が到達しにくいので、その液体を通して該電源基板から高圧の電気が漏電してしまうことを防止できる。
【0013】
ここで、前記電源基板には、一般的に背の高い電子部品が多く実装される一方で背の低い電子部品も実装される。そこで、前記電源基板において、背の低い電子部品を前記ロール紙収納部側に配置し、背の高い電子部品を前記印字機構側に配置してもよい。また、前記電源基板において、前記案内部よりも前記印字機構側に背の低い電子部品を配置し、該案内部よりも前記ロール紙収納部側に背の高い電子部品を配置してもよい。
【0014】
さらに、このプリンタにおいて、前記仕切壁は、前記ロール紙収納部の底面を構成するものであり、
前記案内部は、前記上部に浸入した液体を該ロール紙収納部側に案内するものであってもよい。
【0015】
こうすることで、前記用紙排出口から侵入した液体を該ロール紙収納部側に集めることができる。
【0016】
加えて、このプリンタにおいて、前記仕切壁は、前記収納空間側に案内された液体を該収納空間の外部に排出する水抜孔が設けられたものであってもよい。
【0017】
この水抜孔により、前記ロール紙収納部に案内された液体によって前記ロール紙が水没してしまうことを阻止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板ユニットへの水の侵入が抑制された小型なプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に相当するプリンタを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示したプリンタの筐体と各ユニットを分解して示す分解断面図である。
【
図4】
図1に示したプリンタの背面をやや下方から見た斜視図である。
【
図6】(a)は、オープンレバーが押された初期の動作を示す、
図5のC部を示す断面であり、(b)は、同図(a)からオープンレバーが押されてロックレバーが仕切壁に接触した状態を示す断面図であり、(c)は、同図(b)からオープンレバーがさらに押されてリヤカバーが回動しはじめた状態を示す断面図である。
【
図7】
図1に示したプリンタのリヤカバーが開放された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態の説明では、加熱することで発色する長尺状の用紙をロール状に巻き取ることで形成されたロール紙から用紙を引き出し、その用紙を選択的に加熱することで印字を行って印字済の用紙を排出するサーマルプリンタを例に挙げて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に相当するプリンタを斜め上方から見た斜視図である。
図1では、左斜め下側が前側(正面側)であり、右斜め上側が後側(背面側)である。また、
図1では、右斜め下側が左側であり、左斜め上側が右側である。
【0022】
図1に示すように、プリンタ1は、下面以外が筐体2で覆われている。筐体2は、本体ケース21と、リヤカバー22と、フロントカバー23とで構成されている。本体ケース21とリヤカバー22とフロントカバー23は、難燃性の樹脂を用いて成形されたものである。本体ケース21は、プリンタ1の下部を覆っている。リヤカバー22は、その後端部を回動中心として回動自在に本体ケース21に取り付けられている。また、フロントカバー23は、着脱自在に本体ケース21に取り付けられている。
【0023】
図1には、リヤカバー22が閉じられた閉状態のプリンタ1が示されている。また、
図1には、フロントカバー23が取り付けられた状態が示されている。この
図1では、プリンタ1の上方はリヤカバー22とフロントカバー23によって覆われている。そして、リヤカバー22とフロントカバー23の間には、印字された用紙が排出される用紙排出口1aが形成されている。
【0024】
リヤカバー22の左端部分には、オープンレバー221が設けられている。このオープンレバー221を押し下げることで、リヤカバー22は、その後端部を回動中心として回動し、プリンタ1の後方上部が開放される。オープンレバー221を押し下げたときの動作については後に詳述する。
【0025】
図2は、
図1のA-A断面図であり、
図3は、
図1に示したプリンタの筐体と各ユニットを分解して示す分解断面図である。この
図3は、各ユニットおよび各カバーを本体ケース21に組み付ける直前の状態を示した断面図とも言える。
【0026】
図2および
図3に示すように、本体ケース21は、プリンタ1内の上部とプリンタ1内の下部とを仕切る仕切壁211と、外装を構成する四方の側壁とが一体成形されたものである。この仕切壁211は、後述する水抜孔211aが形成された部分を除いて、水密にプリンタ1内を仕切っている。また、本体ケース21には、ロール紙Rを収納する収納空間Sを形成するロール紙収納部212が形成されている。
図2には、収納空間Sにロール紙Rが収容された様子が示されている。ロール紙収納部212の底面は、仕切壁211後側部分の上面によって構成されている。仕切壁211の、ロール紙収納部212の底面を構成している部分には平面視で矩形をした水抜孔211aが形成されている。この水抜孔211aは、左右方向に離間して2つ設けられている。なお、水抜孔211aは、1つであってもよく3つ以上であってもよく、円形や楕円形など矩形以外の形状をしていてもよい。仕切壁211については後述する。
【0027】
図2に示すように、プリンタ1は、上述した筐体2の他に、プリンタ1の上部に配置された印字機構4および切断装置5と、プリンタ1の下部に配置された基板ユニット6とを備えている。印字機構4は、印字ヘッド41と、プラテン42とを備えている。印字機構4は、ロール紙収納部212とは水平方向にずれた位置で、ロール紙収納部212と水平方向に並んで配置されている。また、印字機構4は、ロール紙収納部212よりも高さが低い。ロール紙Rから引き出された用紙は、印字ヘッド41とプラテン42の間を通過して用紙排出口1aから上方に向かって排出される。このロール紙収納部212と用紙排出口1aを結ぶ経路が用紙の搬送経路になり、ロール紙収納部212から用紙排出口1aに向かう方向が用紙の搬送方向になる。印字ヘッド41は、用紙幅方向である左右方向に並んだ複数の発熱素子を有するいわゆるサーマル式ヘッドである。これら複数の発熱素子を選択的に発熱させることで、印字ヘッド41とプラテン42の間を通過する用紙に印字が施される。切断装置5は、可動刃機構部51と固定刃52とを備えている。
図3に示すように、印字ヘッド41と可動刃機構部51はユニット化されている。以下、印字ヘッド41と可動刃機構部51を有するユニットをメカユニット3と称する場合がある。このメカユニット3には、ロール紙Rから印字ヘッド41とプラテン42の間で用紙を案内する用紙ガイド43が取り付けられている。この用紙ガイド43には、液体が通過することを許容するガイド貫通孔43aが形成されている。このガイド貫通孔43aは、左右方向に所定間隔で複数設けられている。なお、ガイド貫通孔43aは、1つであってもよが、その場合は左右方向に長く延在していることが好ましい。
【0028】
プラテン42は、印字機構4に設けられたステッピングモータM1によって回転するローラ状のものである。このプラテン42は搬送ローラの一例に相当し、ステッピングモータM1はアクチュエータの一例に相当する。ステッピングモータM1の代わりにDCモータなど他のモータを用いてもよい。このステッピングモータM1は、メカユニット3に取り付けられている。そして、メカユニット3には、ステッピングモータM1の駆動力をプラテン軸421の端部に固定された歯車に伝達する歯車輪列が取り付けられている。プラテン42は、プラテン軸421を有しており、そのプラテン軸421介して回転自在にリヤカバー22に保持されている。
図2に示すように、リヤカバー22が閉じられた閉状態では、プラテン42は、印字ヘッド41に対向して配置され、印字ヘッド41との間にはロール紙Rから引き出された用紙が挟み込まれている。プラテン42の回転に伴い、印字ヘッド41とプラテン42に挟み込まれた用紙は搬送方向下流側に搬送される。なお、プラテン42は、メカユニット3に保持されていてもよい。ただし、リヤカバー22がプラテン42を保持することで、収納空間Sにロール紙Rを投入して用紙を少し引き出しリヤカバー22を閉じるだけで、用紙の引き出した部分を印字ヘッド41とプラテン42の間に挟み込むことができる。
【0029】
上述したように、切断装置5は、可動刃機構部51と固定刃52とを備えている。可動刃機構部51は、可動刃511と、小型DCモータM2を有している。小型DCモータM2を駆動することで、可動刃511は、固定刃52に対して進退方向に往復動する。可動刃511が進出することで、印字が施された印字済み用紙が切断される。この固定刃52は、リヤカバー22に取り付けられている。なお、固定刃52を、メカユニット3に取り付けてもよい。ただし、リヤカバー22に固定刃52を取り付けておくことで、収納空間Sにロール紙Rを投入して用紙を少し引き出しリヤカバー22を閉じるだけで、用紙の引き出した部分を可動刃511と固定刃52の間に配置することができる。
【0030】
基板ユニット6は、制御基板61と、電源基板62とを有している。制御基板61には、印字機構4および切断装置5を制御するための制御素子が実装されている。具体的には、制御基板61は、上述した印字ヘッド41の発熱素子とステッピングモータM1を同期して制御することで、印字機構4に印字を実行させる。また、制御基板61は、小型DCモータM2を制御することで、印字済みの用紙を切断装置5に切断させる。基板ユニット6は、印字機構4の下方に設けられ、ロール紙収納部212と水平方向に並んで配置されている。
【0031】
電源基板62は、制御基板61の上に積み重ねて配置されている。このように配置することで、基板ユニット6の下方への投影面積が小さくなるので、基板ユニット6を印字機構4の下に収納することが可能になる。基板ユニット6を印字機構4の下に収納することで、従来空きスペースになりがちだった印字機構4の下の空間を有効活用することができ、その結果、プリンタ1を小型化できる。電源基板62には、スイッチング素子などの電源素子が実装されている。電源基板62は、AC電源からの電力をこの電源素子によって適切な電圧の電力に変換し、印字機構4と切断装置5と制御基板61それぞれに供給する。電源素子は、制御基板61に実装された制御素子よりも高さの高いものが多い。本実施形態では、高さの高い電源素子を前側に集中して実装している。これにより、基板ユニット6は前側が高く、後側が低くなっている。
【0032】
仕切壁211は、印字機構4と基板ユニット6の間を仕切っている。また、仕切壁211は、収納空間Sと基板ユニット6の間も仕切っている。そして、仕切壁211のうち、印字機構4と基板ユニット6の間を仕切っている部分は後側に向かって低くなるように第1段部211bおよび第2段部211cが形成されている。この第2段部211cは、案内部の一例に相当する。また、仕切壁211のうち、収納空間Sと基板ユニット6の間を仕切っている部分には、後側に向かうに従って低くなる傾斜面211dが形成されている。この傾斜面211dも、案内部の一例に相当する。水抜孔211aは、傾斜面211dの下端に連続した凹部に形成されている。
【0033】
例えばレストランの厨房など、液体がプリンタ1に降りかかる場所にプリンタ1を設置すると、用紙排出口1aからプリンタ1の内部に液体が浸入することがある。この実施形態のプリンタ1では、用紙排出口1aからプリンタ1の上部に侵入した液体は、仕切壁211によって遮られ、第2段部211cおよび傾斜面211dによってロール紙収納部212側(後側)に案内されて自重で流れていく。なお、用紙排出口1aからプリンタ1の内部に浸入した液体のうち用紙ガイド43よりも前側に浸入した液体は、ガイド貫通孔43aを通ってロール紙収納部212側に流れていく。また、用紙排出口1aからプリンタ1の内部に浸入した液体のうちの一部が、用紙ガイド43によって案内されてロール紙収納部212側に流れていくこともある。そして、ロール紙収納部212側に案内された液体は、水抜孔211aによって収納空間Sの外部に排水される。この水抜孔211aにより、ロール紙収納部212に案内された液体にロール紙Rが水没してしまうことを阻止できる。
図2には、プリンタ1の内部に浸入した液体が主に流れる流路が破線の矢印で示されている。水抜孔211aが形成された位置では、下方に基板ユニット6が存在していないので、排水された液体が基板ユニット6に侵入して制御基板61および電源基板62並びにそれらに実装された制御素子や電源素子などの電子部品にかかってしまうことはない。
【0034】
また、
図3に示すように、プリンタ1は、本体ケース21と、印字ヘッド41および可動刃機構部51を有するメカユニット3と、プラテン42および固定刃52を有するリヤカバー22と、フロントカバー23と、基板ユニット6とで構成されている。そして、
図3に白抜きの矢印で示すように、メカユニット3と、リヤカバー22と、フロントカバー23とを本体ケース21の上方から取り付け、基板ユニット6を本体ケース21の下方から組み付けることでプリンタ1が完成する。このように、この実施形態のプリンタ1は、各部をユニット化して上下それぞれから本体ケース21に組み付けるだけでプリンタ1が完成するので、組み付け作業が容易といった効果がある。また、メンテナンスや部品交換も容易に実施できるといった効果もある。さらに、基板ユニット6の上方と側方が、難燃性の樹脂で構成された本体ケース21で囲われることで、本体ケース21が防火エンクロージャして機能するので、防火のためだけの部材を設ける必要がなく、プリンタ1を安価に構成できる。
【0035】
図4は、
図1に示したプリンタの背面をやや下方から見た斜視図である。
【0036】
図4に示すように、基板ユニット6の後面には、USBケーブルやLANケーブルなどのコネクタが挿入される4つの端子611が左右方向に一列に並んで設けられている。また、それらの端子611に並んでリセットスイッチ612も設けられている。リセットスイッチ612は、プリンタ1を初期化するためのスイッチである。これらの端子611およびリセットスイッチ612は、制御基板61に接続されている。これらを横並びに配置することで、制御基板61の後端部に並べて実装することができる。基板ユニット6の後面左端には、電源インレット613も設けられている。この電源インレット613は、電源基板62に接続されている。電源インレット613は、収納空間S(
図2参照)から左方向に外れた位置に配置されている。電源基板62を制御基板61の上に積み重ねることで、その電源基板62に接続される電源インレット613は、やや上の位置に配置されることになる。上述した電源インレット613の配置によれば、左右方向から見てロール紙収納部212と電源インレット613とが重なる位置に配置されていても、ロール紙収納部212と電源インレット613が干渉してしまうことを回避できるといった効果がある。
【0037】
次に、オープンレバー221を操作することで、リヤカバー22が開放される様子を説明する。
【0038】
図5は、
図1のB-B断面図である。また、
図6(a)は、オープンレバーが押された初期の動作を示す、
図5のC部を示す断面であり、
図6(b)は、同図(a)からオープンレバーが押されてロックレバーが仕切壁に接触した状態を示す断面図であり、
図6(c)は、同図(b)からオープンレバーがさらに押されてリヤカバーが回動しはじめた状態を示す断面図である。
【0039】
図5に示すように、メカユニット3には、プラテン42を印字ヘッド41(
図2参照)に対向した位置に維持するロックレバー31が設けられている。リヤカバー22が閉じられた閉状態では、このロックレバー31と、メカユニット3の側板であるフレーム32に形成された凹部32aによってプラテン軸421が所定位置で保持されている。すなわち、プラテン軸421は、凹部32aによって前後方向および下方への移動が規制され、ロックレバー31によって上方への移動が規制されている。プラテン軸421がこの所定位置にあるとき、プラテン42は印字ヘッド41に対向した位置にある。また、プラテン軸421がこの所定位置でロックされることで、プラテン42を有するリヤカバー22も閉状態でロックされている。ロックレバー31は、フレーム32に固定されたロックレバー回動軸321を回動中心軸として回動自在にフレーム32に取り付けられている。また、ロックレバー31は、不図示のバネによって
図5における反時計周り方向に向かう荷重が付与されている。オープンレバー221は、オープンレバー回動軸2211を回動中心軸として回動自在にリヤカバー22に取り付けられている。ロックレバー31には、受部31aが形成されている。また、オープンレバー221も、不図示のバネによって
図5における反時計周り方向に向かう荷重が付与されている。
【0040】
リヤカバー22が閉じられた閉状態でオープンレバー221を下方に押すと、
図6(a)に示すように、バネに抗してオープンレバー221が時計回りに回動しはじめて、オープンレバー221の下端部がロックレバー31の受部31aに接触し、ロックレバー31を時計回りに回動させる。ロックレバー31が回動することで、プラテン軸421の上方が開放されてプラテン軸421は上方への移動が可能になる。さらにオープンレバー221を下方に押すと、
図6(b)に示すように、ロックレバー31が仕切壁211に突き当たり、それ以上のロックレバー31の回動は阻止される。ロックレバー31の回動が阻止されることで、オープンレバー221とロックレバー31との接点を中心としてオープンレバー回動軸2211に時計回り方向の荷重が発生し、
図6(c)に示すように、今度はリヤカバー22が開放方向に回動し始める。
【0041】
このオープンレバー221によるリヤカバー22開放動作によれば、オープンレバー221を操作するだけで、リヤカバー22のロックが解除され、さらにリヤカバー22とともにプラテン軸421が所定位置から持ち上がる。リヤカバー22のロック解除と、プラテン軸421の所定位置からの持ち上げが別々の操作によって実行される場合、操作順序を誤ってロック解除前にリヤカバー22を開放方向に回動してプラテン軸421を持ち上げてしまうと、ロック機構の一部が破損してしまう虞がある。これに対し、本実施形態の構造では、ロック解除とプラテン軸421の持ち上げが1つの操作で行われるので、ロックを解除するための機構が破損してしまうことを防止できる。
【0042】
図7は、
図1に示したプリンタのリヤカバーが開放された状態を示す斜視図である。また、
図8は、
図7のD-D断面図である。この
図7および
図8では、ロール紙Rはプリンタ1に収納されていない。
【0043】
図8に示すように、リヤカバー22が開放された開放状態では、プラテン42と固定刃52は上方に位置し、それぞれ印字ヘッド41と可動刃機構部51から離間している。また、この開放状態では、収納空間Sが露出している。ロール紙R(
図2参照)には、左右方向の長さである幅が広いものと狭いものがある。このプリンタ1には、複数のロール紙Rの幅に対応するため、収納空間Sに幅調整板7が設置可能に構成されている。
図7および
図8には、幅調整板7が設置された状態が示されている。
図7に示すように、幅調整板7は樹脂で構成された板状をしている。幅の広いロール紙Rを用いる場合、この幅調整板7を外してプリンタ1を使用し、幅の狭いロール紙Rを用いる場合、この幅調整板7を取り付けてプリンタ1を使用する。また、幅調整板7は、左右方向に異なる複数の位置に取り付けることができるように構成されている。従って、このプリンタ1は、異なる幅を有する多種類のロール紙Rに対応できる。
【0044】
図8に示すように、幅調整板7には、フック7aが形成されている。このフック7aが、仕切壁211に形成された引掛孔211eに差し込まれ、フック7aの先端が仕切壁211の下面に引っ掛かることで、幅調整板7は本体ケース21に保持されている。フック7aは、アーム部7bの先端に形成されている。アーム部7bは、支点部7cを支点として
図8における時計周りに回動可能に構成されている。このプリンタ1の使用者等が、幅調整板7の中央に形成された指挿入孔7Sに指を挿入し、その指を上方に移動することで、アーム部7bが時計回りに回動し、フック7aが仕切壁211の下面から外れて幅調整板7の保持が解除される。すなわち、指挿入孔7S挿入した指を上側に移動するだけで、フック7aが外れるとともに幅調整板7が持ち上げるので、必要に応じて容易に幅調整板7を本体ケース21から取り外すことができる。なお、指挿入孔7S挿入した指を前側に移動させてフック7aを外した後に、その指を上側に移動させることでも幅調整板7を本体ケース21から取り外すことができる。また、フック7aが支点部7cよりも下方かつ前側に位置しているので、何らかの原因で幅調整板7を持ち上げる方向の荷重が幅調整板7に加わると、フック7aには仕切壁211からの反力によって
図8における反時計回りの荷重が生じる。つまり、フック7aは、幅調整板7を持ち上げる方向の荷重が作用した場合にその荷重により支点部7cを中心に回転して引掛孔211eの縁部に食い込む、いわゆる食い込み勝手になるように配置されている。これにより、幅調整板7が本体ケース21から意図せず外れてしまうことが防止されている。加えて、幅調整板7には、アーム部7bとは間隔をあけて対向する位置にまわり止め部7dが形成されている。支点部7cを中心として時計回りにアーム部7bを所定角度回動させると、アーム部7bがまわり止め部7dに突き当たり、アーム部7bのそれ以上の回動は阻止される。このまわり止め部7dを設けることで、回動しすぎることでアーム部7bが折れてしまうことを防止している。
【0045】
この実施形態のプリンタ1によれば、印字機構4の下に基板ユニット6を配置することでプリンタ1を小型化することができる。単に印字機構4の下方に基板ユニット6を配置すると、用紙排出口1aからプリンタ1の上部に侵入した液体が電源基板62に到達してしまう虞がある。このプリンタ1では、上部に液体が侵入しても、基板ユニット6の上方にある仕切壁211によってその液体の基板ユニット6側への移動を遮ぎるので、液体が基板ユニット6に到達してしまうことがない。さらに、プリンタ1の上部に侵入した液体は、第2段部211cや傾斜面211dによってロール紙収納部212側に案内されるので、基板ユニット6に液体が侵入することをより確実に防止できる。また、制御基板61の上に電源基板62を積み重ねて配置しているので、電源基板62は、プリンタ1が載置された載置面に対してある程度の高さに位置している。これにより、プリンタ1が設置された場所に大量の液体が流れてきても、電源基板62にその液体が到達することが防止される。その結果、電源基板62から高圧の電気が漏電してしまうことを防止できる。また、制御基板61の上に電源基板62を積み重ねて配置することで、基板ユニット6の下方への投影面積が小さくなっている。これにより、基板ユニット6が印字機構4の下に収納可能にしている。そして、その下方への投影面積が小さい基板ユニット6を、従来空きスペースになりがちだった印字機構4の下に配置することで、プリンタ1が小型化されている。さらに、制御基板61の上にある電源基板62において、背の低い電子部品をロール紙収納部212側に実装し、背の高い電子部品を印字機構4側に配置することで、プリンタ1内部の空間を無駄にすることなく第2段部211cが形成できている。その結果、プリンタ1をより小型化することができる。
【0046】
なお、これまでに説明してきたプリンタは、ロール紙を収納する収納空間を形成するロール紙収納部と、
前記ロール紙収納部とは水平方向にずれた位置に配置され、前記ロール紙から引き出された用紙に印字を施す印字ヘッドと、用紙を搬送する搬送ローラを駆動するアクチュエータとを有し、前記ロール紙収納部よりも高さの低いメカユニットと、
前記メカユニットよりも上方に設けられ、印字済みの用紙を上方に向かって排出する用紙排出口と、
前記メカユニットの下方に設けられた基板ユニットと、
前記メカユニットが配置された上部と前記基板ユニットが配置された下部とを仕切る仕切壁とを備え、
前記基板ユニットは、前記メカユニットを制御する制御素子が実装された制御基板と、該メカユニットおよび該制御基板に電力を供給する電源素子が実装された電源基板とを有するものであり、
前記電源基板は前記制御基板の上に積み重ねて配置されたものであることを特徴としてもよい。
【0047】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、サーマル式の印字ヘッド41を用いたが、インパクトドット式などの他の方式の印字ヘッドを用いてもよい。また、プラテン42として板状のものなどローラ状以外のものを用いてもよい。さらに、第2段部211cと傾斜面211dにより、プリンタ1の上部に浸入した液体をロール紙収納部212側(後側)に案内する例を用いて説明したが、前側や左右側に向かって案内する段部や傾斜部に代えてもよく、複数の方向それぞれに案内する構成にしてもよい。また、水抜孔211aは、基板ユニット6を避けた位置に排水するものであれば、その配置位置はどこであっても構わない。
【0048】
なお、以上説明した実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 プリンタ
1a 用紙排出口
4 印字機構
6 基板ユニット
41 印字ヘッド
42 プラテン
211 仕切壁
211c 第2段部
211d 傾斜面
212 ロール紙収納部
R ロール紙
S 収納空間