(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】吸着プレートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/08 20060101AFI20241107BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241107BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241107BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
B24B41/06 L
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2021009982
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】副島 悟
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-142358(JP,A)
【文献】特開2020-93973(JP,A)
【文献】特開2020-23727(JP,A)
【文献】実開昭54-169988(JP,U)
【文献】特開昭62-162441(JP,A)
【文献】特開昭62-152607(JP,A)
【文献】特開昭60-131335(JP,A)
【文献】特開2001-267271(JP,A)
【文献】特表2020-501061(JP,A)
【文献】特開2020-147489(JP,A)
【文献】米国特許第5374021(US,A)
【文献】米国特許第6371430(US,B1)
【文献】特開2001-196330(JP,A)
【文献】特開2017-28157(JP,A)
【文献】米国特許第5803797(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/08
H01L 21/683
H01L 21/301
B24B 41/06
B33Y 80/00
B29C 64/00 - 64/40
B22F 10/00 - 12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空吸引装置本体の吸引口側に装着され、被加工物を吸引する吸着プレートの製造方法であって、
前記吸着プレートは3Dプリンタで成形して成り、
前記吸着プレートの表面に止め穴を形成し、
前記止め穴の内面に、該止め穴以外の領域よりも高い密度の皮膜を形成
し、
前記形成した止め穴とは異なる箇所に新しい止め穴を形成する場合には、
前記形成した止め穴の内面の高い密度の皮膜を除去し、
前記形成した止め穴の内部を疎の密度の樹脂で充填し、
異なる箇所に新しい止め穴を形成し、
前記新しい止め穴の内面に高い密度の皮膜を形成することを特徴とする吸着プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着プレートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平板状のガラス基板や薄板樹脂等を研磨加工したり、搬送したりするために、ガラス基板や薄板樹脂等を着脱自在に吸着する真空吸引装置が用いられている(例えば特許文献1)。かかる真空吸引装置では、真空ポンプ等によって真空吸引装置内の空気を吸引して気圧を低下させることにより、吸着プレートの外側面である吸着面にガラス基板や薄板樹脂等を吸着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加工物には、穴あけ加工を施したい場合もある。このとき、特許文献1のような従来の真空吸引装置では、穴あけ加工をする際に吸着プレートにも穴があいてしまい、もっぱら穴の部分からエアを吸うようになってしまう。すると、穴があいてしまった吸着プレートは使用できなくなるため、交換が必要となる。このため、穴あけ加工を実施するごとに新たな吸着プレートに交換する必要があり、製造コストの増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、穴あけ加工時の吸着プレートの損傷を防ぐことができ、製造コストの削減を図ることが可能な吸着プレートおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の真空吸引装置の吸着プレートの代表的な構成は、真空吸引装置本体の吸引口側に装着され、被加工物を吸引する吸着プレートであって、当該吸着プレートは、表面に止め穴を有し、止め穴の内面は、止め穴以外の領域よりも密度が高いことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、止め穴以外の領域は止め穴よりも密度が疎である。したがって、エアが通過しやすく、被加工物を良好に吸着することができる。一方、止め穴の内面は、止め穴以外の領域よりも密度が高いためエアが通りにくくなる。この止め穴において被加工物に穴あけ加工を施すことにより、穴あけ加工時の吸着プレートの損傷を防ぐことができる。したがって、真空吸引装置によって保持した被加工物に穴開け加工を施すことが可能になる。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の真空吸引装置の吸着プレートの製造方法の代表的な構成は、真空吸引装置本体の吸引口側に装着され、被加工物を吸引する吸着プレートの製造方法であって、吸着プレートは3Dプリンタで成形して成り、吸着プレートの表面に止め穴を形成し、止め穴の内面に、止め穴以外の領域よりも高い密度の皮膜を形成することを特徴とする。
【0009】
上述した真空吸引装置の吸着プレートにおける技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該真空吸引装置の吸着プレートの製造方法にも適用可能である。なお、吸着プレート1を構成する材料としては、炭素繊維強化樹脂を好適に用いることができる。炭素繊維強化樹脂は強度が高いため、これを用いることにより吸着プレートの強度を高めることが可能である。
【0010】
上記止め穴の内面の高い密度の皮膜を除去し、止め穴の内部を疎の密度の樹脂で充填し、異なる箇所に新しい止め穴を形成し、新しい止め穴の内面に高い密度の皮膜を形成するとよい。かかる構成によれば、異なる箇所に穴あけ加工を行う場合にも同一の吸着プレートを用いることができる。したがって、1つの吸着プレートを使い回すことができ、製造コストの削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、穴あけ加工時の吸着プレートの損傷を防ぐことができ、製造コストの削減を図ることが可能な吸着プレートおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の吸着プレートを説明する図である。
【
図2】本実施形態の吸着プレートの製造工程を説明する図である。
【
図3】本実施形態の吸着プレートの製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態の吸着プレート100を説明する図であり、
図1(a)は真空吸引装置10の平面図、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。以下、吸着プレート100について詳述しながら、その製造方法についても併せて説明する。
【0015】
図1に示す真空吸引装置10は、被加工物104を吸引する治具である。真空吸引装置10は、上面が開放されたフレーム102の開口面に吸着プレート100を取り付けて構成される。フレーム102には吸引口103が備えられていて、不図示の真空装置によってエアが引かれる。吸着プレート100は下面に設けた凹み101によって空間(バッファ)が形成されていて、吸引口103からエアを引くと吸着プレート100の上面全体からエアが吸引されるようになっている。
【0016】
そして本実施形態において吸着プレート100の表面には、被加工物に穴あけ加工を行うための止め穴110が形成されている。止め穴110の内面(側面および底面)は、他の部分より密度が高い皮膜が形成されている。
【0017】
図2および
図3は、本実施形態の吸着プレート100の製造工程を説明する図であり、吸着プレート100の模式的な断面を示している。本実施形態の吸着プレートの製造方法では、3Dプリンタを用いて、
図2(a)に示すように吸着プレート100を成形する。吸着プレート100を構成する材料としては、例えば炭素繊維強化樹脂を好適に用いることができる。炭素繊維強化樹脂は強度が高い。このため、吸着プレート100の強度を高めることが可能である。
【0018】
吸着プレート100の全体(皮膜112以外の部分)は、疎の密度の樹脂で構成する。疎の密度は、例えば間隔をあけた線を井桁に組むことによって実現することができる。これにより、エアを通過させて吸引させることができる。
【0019】
止め穴110は、吸着プレート100の全体をプリントするときに同時に形成する。このとき、止め穴110の表面には、止め穴110以外の領域よりも高い密度の皮膜112を形成する。高い密度は、間隔をあけずに材料を積層することによって実現することができる。
【0020】
上述したように製造された吸着プレート100は、
図2(b)に示すように、フレーム102に嵌め込まれ、吸着プレート100の上には被加工物104が載置される。そして、止め穴110が形成されている位置に、ドリル106によって被加工物104に穴105の穴あけ加工が行われる。換言すると、穴開け加工を行う位置に止め穴110を形成しておく。
【0021】
上記説明したように本実施形態の吸着プレート100およびその製造方法では、止め穴110の内面には、止め穴110以外の領域よりも密度が高い皮膜112が形成されている。換言すれば、止め穴110以外の領域は止め穴110よりも密度が疎である。これにより、止め穴110以外の領域ではエアが通過しやすく、被加工物104を良好に吸着することができる。一方、止め穴110の内面は止め穴110以外の領域よりも密度が高い皮膜が形成されているため、エアが通りにくくなる。この止め穴110において被加工物104に穴あけ加工を施すことにより、穴あけ加工時の吸着プレート100の損傷を防ぐことができる。したがって、真空吸引装置によって保持した被加工物に穴開け加工を施すことが可能になる。
【0022】
特に本実施形態では、吸着プレート100の製造に3Dプリンタを用いている。これにより、吸着プレート100を容易に製造することができる。また3Dプリンタを用いることにより、所定の領域の密度を容易に異ならせることが可能であるため、低い密度の吸着プレート100全体と、高い密度の皮膜112とを、いちどに成型することが可能となる。
【0023】
図3を参照する。被加工物104の種類によっては、穴あけ加工を行う位置が異なることがある。すると、
図1および
図2に示す吸着プレート100を用いることができなくなってしまう。
【0024】
このような場合、本実施形態の吸着プレート100の製造方法では、まず
図3(a)に示す吸着プレート100の止め穴110の内面の密度の高い皮膜112を除去する。例えば皮膜112よりも径の大きなビットを用いて中ぐり加工する。これにより、
図3(b)に示すように、疎の密度の部分が露出した径の大きな穴113が形成される。そして
図3(c)に示すように、3Dプリンタによって穴113の内部を疎の密度の樹脂114で充填する。このときの皮膜114はもちろん3Dプリンタで形成してもよいが、止め穴110が小さくて3Dプリンタのヘッドが入りにくい場合にはエポキシ樹脂や光硬化樹脂等の硬化樹脂を塗布したり、樹脂製のカップ(有底円筒)を挿入したりしてもよい。
【0025】
既存の止め穴110を埋めたら、
図3(d)に示すように、埋めた止め穴110とは異なる位置に新しい止め穴120を形成する。そして新しい止め穴120の内面に高い密度の皮膜112を形成する。このときの皮膜112はもちろん3Dプリンタで形成してもよいが、新しい止め穴120が小さくて3Dプリンタのヘッドが入りにくい場合にはエポキシ樹脂や光硬化樹脂等の硬化樹脂を塗布したり、樹脂製のカップ(有底円筒)を挿入したりしてもよい。
【0026】
これにより
図3(e)に示すように、新しい止め穴120の位置において被加工物108に穴109の穴あけ加工を行うことができる。したがって、被加工物108の異なる箇所に穴あけ加工を行う場合にも同一の吸着プレート100を用いることができる。故に、1つの吸着プレート100を使い回すことができ、製造コストの削減を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、吸着プレートおよびその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
100…吸着プレート、102…フレーム、103…吸引口、104…被加工物、105…穴、106…ドリル、108…被加工物、109…穴、110…止め穴、112…皮膜、113…径の大きな穴、114…樹脂、120…新しい止め穴