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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】乗物用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20241107BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021017199
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120358
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押野 優汰
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-291233(JP,A)
【文献】特開2019-084957(JP,A)
【文献】特開平04-197315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及び前記シートクッションの後部に水平軸線周りの傾斜角を変更可能に連結されたシートバックを有するシート本体を含む乗物用シート装置であって、
前記シートクッション及び前記シートクッションに設けられ、着座者に振動刺激を与る複数の振動発生装置と、
前記シートクッションに対する前記シートバックの前記傾斜角を検出する傾斜角検出装置と、
乗物の挙動を検出する挙動検出装置と、
前記傾斜角検出装置により検出される前記傾斜角及び前記挙動検出装置により検出される前記乗物の挙動に関する情報を入力し、前記乗物の挙動が予め定められた所定の挙動である場合に、前記傾斜角が所定値未満であるときには前記シートクッションの前記振動発生装置が前記シートバックの前記振動発生装置よりも高い振動強度をもって発振し、前記傾斜角が所定値以上であるときには前記シートバックの前記振動発生装置が前記シートクッションの前記振動発生装置よりも高い振動強度をもって発振するように、前記振動発生装置の作動を制御する制御装置とを有する乗物用シート装置。
【請求項2】
前記挙動検出装置は前記乗物の加速度を検出する加速度検出装置を含み、
前記制御装置は、前記加速度が大きいときには、前記加速度が小さいときに比して前記振動発生装置が発振する振動の強度を高くする請求項1に記載の乗物用シート装置。
【請求項3】
前記挙動検出装置は前記乗物の操舵角を検出する操舵角検出装置を含み、
前記制御装置は、前記操舵角が大きいときには、前記操舵角が小さいときに比して前記振動発生装置が発振する振動の強度を高くする請求項1又は2に記載の乗物用シート装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記乗物に搭載されたナビゲーション装置から前記乗物の現在地情報及び前記乗物の地図データ上における走行経路情報を含むナビゲーション情報を入力する入力部を含み、現在地又は現在地から所定距離前方の前記走行経路の道路の曲率が所定値以上のときには前記曲率が所定値未満であるときに比して前記振動発生装置が発振する振動の強度を高くする請求項1~3の何れか一項に記載の乗物用シート装置。
【請求項5】
更に、前記乗物の走行速度を検出する車速検出装置を有し、
前記制御装置は、前記振動の強度を高くする度合いを前記走行速度に応じて大きくする請求項2~4の何れか一項に記載の乗物用シート装置。
【請求項6】
前記振動発生装置は、振幅及び周波数の少なくとも何れを変更することにより、前記振動の強度を調節する請求項2~5の何れか一項に記載の乗物用シート装置。
【請求項7】
前記振動発生装置は左右方向に複数配列され、
前記乗物の挙動に関する情報は前記乗物の旋回方向に関する情報を含み、
前記制御装置は、前記旋回方向側の前記振動発生装置が発振する振動の強度を左右反対側の前記振動発生装置が発振する振動の強度に比して高く請求項1~6の何れか一項に記載の乗物用シート装置。
【請求項8】
前記シートクッションに設けられた前記振動発生装置は、着座者の腰部に振動刺激を与えるものを含む請求項1~7の何れか一項に記載の乗物用シート装置。
【請求項9】
前記振動発生装置は、圧縮空気を供給されることにより膨張するエアバッグを含む請求項1~8の何れか一項に記載の乗物用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シート装置に関し、更に詳細には、リクライニング式の乗物用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物に用いられるシート装置として、シートバックに設けられたエアバッグ等によって着座者の背部の、腰椎や胸椎に対応する部位に、所定周期をもって圧迫や押圧等の刺激を与えることにより、着座者の呼吸を、リラックス向上に適した所定周期による呼吸に誘導する機能を備えたシート装置が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【0003】
乗物のシート装置のシートクッション及びシートバックに設けられた振動発生装置によって運転席に着座している運転者に振動刺激を与えることにより、運転者の覚醒度の低減を抑制する運転支援装置が知られている(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-296452号公報
【文献】特開2012-65728号公報
【文献】特開2019-8734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗物の挙動を、シートに着座している乗員に、シートクッションやシートバックの振動によって知らせ、乗員が乗物の挙動に対応する体勢を取れるようにすることにより、乗物酔いの軽減を図ることが考えられる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、乗物の挙動をシートクッションやシートバックの振動によってシートに着座している乗員に知らせることにより乗物酔いの軽減を図ることであり、特に、シートクッションに対する傾斜角を変更可能なシートバックを有するリクライニング式のシート装置において、シートクッションに対するシートバックの傾斜角の如何に拘わらず、乗物の挙動を着座者に的確に知らせることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による乗物用シート装置は、シートクッション(22)及び前記シートクッションの後部に水平軸線周りの傾斜角を変更可能に連結されたシートバック(26)を有するシート本体(20)を含む乗物用シート装置(10)であって、前記シートクッション及び前記シートクッションに設けられ、着座者に振動刺激を与える複数の振動発生装置(30、32)と、前記シートクッションに対する前記シートバックの前記傾斜角を検出する傾斜角検出装置(66)と、乗物の挙動を検出する挙動検出装置(60、62)と、前記傾斜角検出装置により検出される前記傾斜角及び前記挙動検出装置により検出される前記乗物の挙動に関する情報を入力し、入力した前記乗物の挙動が予め定められた所定の挙動である場合に、前記傾斜角が所定値未満であるときには前記シートクッションの前記振動発生装置が前記シートバックの前記振動発生装置よりも高い振動強度をもって発振し、前記傾斜角が所定値以上であるときには前記シートバックの前記振動発生装置が前記シートクッションの前記振動発生装置よりも高い振動強度をもって発振するように、前記振動発生装置の作動を制御する制御装置(50)とを有する。
【0008】
予め定められた所定の挙動としては、乗物の加減速、旋回等、着座者が乗物酔いを生じ易い挙動がある。
【0009】
この構成によれば、シートクッションに対するシートバックの傾斜角の如何に拘わらず、振動による乗物の挙動の通知が着座者に的確に行われる。
【0010】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記挙動検出装置は前記乗物の加速度を検出する加速度検出装置(60)を含み、前記制御装置は、前記加速度が大きいときには、前記加速度が小さいときに比して前記振動発生装置が発振する振動の強度を高くする。
【0011】
この構成によれば、振動の強度によって乗物の加速度の度合いを着座者に知らせることができる。
【0012】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記挙動検出装置は前記乗物の操舵角を検出する操舵角検出装置(62)を含み、前記制御装置は、前記操舵角が大きいときには、前記操舵角が小さいときに比して前記振動発生装置が発振する振動の強度を高くする。
【0013】
この構成によれば、振動の強度によって乗物の旋回の度合いを着座者に知らせることができる。
【0014】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記制御装置は、前記乗物に搭載されたナビゲーション装置(70)から前記乗物の現在地情報及び前記乗物の地図データ上における走行経路情報を含むナビゲーション情報を入力する入力部(52)を含み、現在地又は現在地から所定距離前方の前記走行経路の道路の曲率が所定値以上のときには前記曲率が所定値未満であるときに比して前記振動発生装置が発振する振動の強度を高くする。
【0015】
この構成によれば、振動の強度によって乗物の旋回の度合いを着座者に知らせることができる。
【0016】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、更に、前記乗物の走行速度を検出する車速検出装置を有し、前記制御装置は、前記振動の強度を高くする度合いを前記走行速度に応じて大きくする。
【0017】
この構成によれば、振動の強度によって乗物の旋回の度合い等を走行速度に応じた振動の強度をもって着座者に知らせることができる。
【0018】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記振動発生装置は、振幅及び周波数の少なくとも何れを変更することにより、前記振動の強度を調節する。
【0019】
この構成によれば、振動強度の調節が大きい幅をもって行われる。
【0020】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記振動発生装置は左右方向に複数配列され、前記乗物の挙動に関する情報は前記乗物の旋回方向に関する情報を含み、前記制御装置は、前記旋回方向側の前記振動発生装置が発振する振動の強度を左右反対側の前記振動発生装置が発振する振動の強度に比して高くする。
【0021】
この構成によれば、振動によって乗物の旋回方向を着座者に知らせることができる。
【0022】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記シートクッションに設けられた前記振動発生装置は、着座者の腰部に振動刺激を与えるものを含む。
【0023】
この構成によれば、乗物酔いの軽減に有効な深呼吸が誘導され、乗物酔い軽減効果が向上する。
【0024】
上記乗物用シート装置において、好ましくは、前記振動発生装置は、圧縮空気を供給されることにより膨張するエアバッグ(30、32)を含む。
【0025】
この構成によれば、空気圧による振動発生によって着座者に振動を与えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による乗物用シート装置によれば、シートクッションに対するシートバックの傾斜角の如何に拘わらず、乗物の挙動を着座者に的確に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による乗物用シート装置の一つの実施形態を示す斜視図
図2】本実施形態による乗物用シート装置の制御系のブロック線図
図3】本実施形態による乗物用シート装置の制御系のフローチャート
図4】本実施形態による乗物用シート装置のエアバッグ組み付け工程を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明による乗物用シート装置の一つの実施形態を、図1図3を参照して説明する。
【0029】
図1に示されているように、本実施形態のシート装置10は、前後方向に延在する左右のスライドレール装置12によって自動車のフロアパネル(不図示)上に設けられたシート本体20を有する。
【0030】
シート本体20は、座面を形成するシートクッション22及びシートクッション22の後部に電動リクライニング装置24によって水平軸線周りの傾斜角を変更可能に連結されて背凭れ面を形成するシートバック26を有する。シートバック26の上部にはヘッドレスト28が取り付けられている。
【0031】
シートクッション22には、振動発生装置として、複数のエアバッグ(エアセル)30が前後方向及び左右方向に互いに隔置されて格子状に設けられている。各エアバッグ30は、圧縮空気源(不図示)からの圧縮空気を供給、排出されることにより膨張・収縮変形し、着座者の臀部及び大腿部に、振動を伝える。
【0032】
シートバック26には、振動発生装置として、複数のエアバッグ(エアセル)32が上下方向及び左右方向に互いに隔置されて格子状に設けられている。各エアバッグ32は、圧縮空気源(不図示)からの圧縮空気を供給、排出されることにより膨張・収縮変形し、着座者の背部および腰部に、乗物酔いを軽減することに適した振動刺激を与える。シートバック26のエアバッグ32は、腹式呼吸を促進すべく、着座者の腰部、特に腰椎に対応する部位に振動刺激を与えるものを含む。
【0033】
エアバッグ30及び32は、振幅及び周波数の少なくとも何れが変更されることにより、着座者に与える振動の強度が調節される。
【0034】
シートクッション22の下部には制御装置50が設けられている。制御装置50を含むシート装置10の制御系を、図2を参照して説明する。
【0035】
制御装置50は、マイクロコンピュータを含む電子情報処理装置によるものであり、入力部52、演算処理部54及び出力部56を有する。
【0036】
入力部52には、自動車(乗物)の挙動を検出する挙動検出装置として、車載の加速度センサ(加速度検出装置)60、操舵角センサ(操舵角検出装置)62及び車速センサ(車速検出装置)64が接続されている。
【0037】
加速度センサ60は、多軸式のものであり、自動車の前後方向及び左右方向の加速度に関する情報を入力部52に対して出力する。操舵角センサ62は自動車の操舵角に関する情報を入力部52に対して出力する。車速センサ64は自動車の走行速度に関する情報を入力部52に対して出力する。
【0038】
入力部52には車載の傾斜角センサ(傾斜角検出装置)66が接続されている。傾斜角センサ66は、シートクッション22に対するシートバック26の水平軸線周りの傾斜角(以下、リクライニング角と称する)を検出し、リクライニング角に関する情報を入力部52に対して出力する。
【0039】
入力部52には車載のナビゲーション装置70が接続されている。ナビゲーション装置70は、GPS信号を受信することにより、地図データ上における自動車の現在地を検出し、現在地からユーザ設定された目的地までの自動車の地図データ上における走行経路をモニタ表示すると共に、その走行経路情報を含むナビゲーション情報を入力部52に対して出力する。換言すると、入力部52は、ナビゲーション装置70から地図データ上における走行経路情報を含むナビゲーション情報を入力する。
【0040】
演算処理部54は、入力部52の入力情報に基づいて、前後方向の加速度から分かる自動車の加減速時、左右方向の加速度及び操舵角から分かる自動車の旋回時等、乗物酔いを生じる虞が高い走行挙動時において、リクライニング角が所定値未満であるときには、つまりシートバック26が垂直近くまで起立した状態にあるときには、シートクッション22のエアバッグ30がシートバック26のエアバッグ32よりも高い振動強度をもって発振し、リクライニング角が所定値以上であるときには、つまりシートバック26が水平近くまで倒された状態にあるときには、シートバック26のエアバッグ32がシートクッション22のエアバッグ32よりも高い振動強度をもって発振する発振制御指令を生成し、当該発振制御指令を出力部56に渡す。
【0041】
更には、演算処理部54は、前後方向及び左右方向の加速度及びその変化(微分値)が大きいほど、操舵角及びその変化(微分値)が大きいほど、車速が高いほど、振動強度が高くなるように発振制御指令を補正し、当該発振制御指令を出力部56に渡す。
【0042】
演算処理部54は、入力部52に入力したナビゲーション情報に基づいて、自動車の現在地及び現在地より走行しようする走行経路の道路がカーブであるときには、リクライニング角が所定値未満であれば、シートクッション22のエアバッグ30がシートバック26のエアバッグ32よりも高い振動強度をもって発振し、リクライニング角が所定値以上であれは、シートバック26のエアバッグ32がシートクッション22のエアバッグ32よりも高い振動強度をもって発振する発振制御指令を生成し、当該発振制御指令を出力部56に渡す。
【0043】
更には、演算処理部54は、ナビゲーション情報に基づいて、現在地又は現在地から所定距離前方の走行経路の道路が急カーブであるときには緩カーブであるときに比して振動強度が高くなるように発振制御指令を補正し、当該発振制御指令を出力部56に渡す。現在地からの所定距離は、自動車が曲線路(カーブ路)に進入する時点より数十秒程度手前の時点に相当する距離であってよく、車速に比して設定されてよい。
【0044】
出力部56にはエアバッグ制御部58が接続されている。エアバッグ制御部58には各エアバッグ30及び32が接続されている。エアバッグ制御部58は、電磁式の吸排気弁等を含み、出力部56からの発振動作指令に基づいて、各エアバッグ30及び32に対する圧縮空気の供給・排出サイクル及び各サイクルにおける圧縮空気の供給・排出時間を可変設定する。
【0045】
これにより、各エアバッグ30及び32は、圧縮空気の供給・排出サイクルに応じた周期(周波数)をもって、且つ各サイクルにおける圧縮空気の供給・排出時間により決まる大きさをもって、繰り返し膨張・収縮変形する。つまり、エアバッグ30及び32は、発振動作指令によって決まる可変周波数及び可変振幅をもって振動する。
【0046】
リクライニング角が所定値未満であるときには、シートバック26が垂直近くまで起立した状態にあるから、シートクッション22に作用する体圧がシートバック26に作用する体圧よりも高く、リクライニング角が所定値以上であるときには、シートバック26が水平近くまで倒された状態にあるから、シートバック26に作用する体圧が、リクライニング角が所定値未満であるときに比して増大する。
【0047】
このことにより、本実施形態のシート装置10では、リクライニング角が所定値未満であるときには、シートクッション22のエアバッグ30がシートバック26のエアバッグ32よりも高い振動強度をもって発振し、リクライニング角が所定値以上であるときには、シートバック26のエアバッグ32がシートクッション22のエアバッグ30よりも高い振動強度をもって発振し、リクライニング角の如何に拘らず、振動が着座者に対して的確に伝えられる。
【0048】
これにより、加減速時や旋回時等、自動車が、乗員が乗物酔いを生じ易い挙動をすることを、振動によって着座者に伝えることが、リクライニング角の如何に拘らず、的確に行われるようになる。着座者は、リクライニング角の如何に拘らず、自動車の挙動を振動によって確実に知ることができる。
【0049】
本実施形態のシート装置10では、ナビゲーション情報が使用されることより、カーブ走行を事前に検出することができるから、エアバッグ30、32の振動動作をカーブ走行に先立って開始することができる。これにより、着座者は、自動車が旋回することをカーブ走行に先立って知ることができる。
【0050】
尚、リクライニング角が所定値未満であるときにはシートクッション22のエアバッグ30のみが振動し、リクライニング角が所定値以上であるときにはシートバック26のエアバッグ32のみが振動してもよい。
【0051】
本実施形態のシート装置10では、前後方向の加減速度、左右方向の加減速度、操舵角及びその変化が大きいほど、急カーブであるほど、車速が高いほど振動強度が高くなるから、着座者は、振動の強さによって、前後方向の加減速度、左右方向の加減速度、操舵角及びその変化の度合いを知ることができる。
【0052】
ナビゲーション情報による場合には、現在地より走行しようとする走行経路の道路の曲率が所定値以上のとき(急カーブ)には曲率が所定値未満(緩カーブ)であるときに比して振動強度が高くなるから、着座者は、走行しようとするカーブの度合いを旋回走行に先立って知ることができる。道路の曲率は旋回半径に置き換えることができ、旋回半径が所定値未満のときには旋回半径が所定値以上であるときに比して振動強度が高くなる。
【0053】
シートバック26のエアバッグ32は、着座者の腰部、特に腰椎に対応する部位に振動刺激を与えるものを含むから、この振動刺激によって着座者の腹式呼吸を促進することができる。これにより、気持ちを落ち着かせて乗物酔いの軽減に有効な深呼吸が誘導され、乗物酔い軽減効果が向上する。
【0054】
操舵角センサ62が出力する操舵角に関する情報及びナビゲーション装置70が出力するナビゲーション情報は自動車の旋回方向(左旋回、右旋回)に関する情報を含んでいる。この場合、制御装置50は、旋回方向側のエアバッグ30、32が発振する振動の強度を左右反対側のエアバッグ30、32が発振する振動の強度に比して高くなる発振制御指令を生成し、当該発振制御指令を出力部56に渡す。
【0055】
これにより、左旋回の場合には、エアバッグ30、32のうちの着座者にとって左側の列になるエアバッグ30、32が右側になる列のエアバッグ30、32よりも強く振動し、右旋回の場合には、エアバッグ30、32のうちの着座者にとって右側の列になるエアバッグ30、32が左側になる列のエアバッグ30、32よりも強く振動する。
【0056】
着座者は、エアバッグ30、32の振動により、自動車の旋回方向を認識でき、この認識(意識)により、無意識である場合に比して乗物酔いが軽減する。
【0057】
次に、図3に示されているフローチャートを参照してシート装置10の動作について説明する。このフローチャートに示されている制御ルーチンは制御装置50により実行される。
【0058】
この制御ルーチンは、乗物酔いが生じ易い加減速時や旋回時等に実行され、先ず、リクライニング角が所定値以上であるか否かの判別を行う(ステップS10)。リクライニング角の所定値は、リクライニング角度範囲が90度~180度の場合には135度であってよい。
【0059】
リクライニング角が所定値以上であれば、シートクッション22のエアバッグ30に比してシートバック26のエアバッグ32を強く振動させる(ステップS11)。これに対し、リクライニング角が所定値未満であれば、シートバック26のエアバッグ32に比してシートクッション22のエアバッグ30を強く振動させる(ステップS12)。
【0060】
次に、操舵角が所定値以上、例えば35度以上であるか否かの判別を行う(ステップS13)。操舵角が所定値以上であれば、車速に応じて振動強度を増大する(ステップS14)。
【0061】
操舵角が所定値未満である場合には、次に、後方向及び左右方向の加速度以上であるか否かの判別を行う(ステップS15)。前後方向の加速度及び左右方向の加速度の少なくとも1つが所定値以上であれば、車速に応じて振動強度を増大する(ステップS14)。
【0062】
前後方向の加速度及び左右方向の加速度の何れもが所定値未満である場合には、次に、カーブ半径(旋回半径)が所定値未満であるか否かの判別を行う(ステップS16)。カーブ半径の所定値は、車速の増大に応じて低下するように、車速に応じて設定される。例えば、車速が60km/hの場合には60mに設定される。カーブ半径が所定値未満であれば、車速に応じて振動強度を増大する(ステップS14)。
【0063】
カーブ半径が所定値以上であれば、振動強度の増大を行わずにルーチンを終了する。
【0064】
図1に示されているように、シートクッション22に設けられる複数のエアバッグ30は一枚の矩形の樹脂シート34に集積形成され、シートバック26に設けられる複数のエアバッグ32はもう一枚の矩形の樹脂シート36に集積形成されていてよい。
【0065】
複数のエアバッグ30を含む樹脂シート34は、図4に示されているように、シートクッション22のスポンジ部22Aの前部に形成されたスリット23からスポンジ部22A内に挿入されればよい。
【0066】
エアバッグ30は、シートクッション22の左右両側のボルスタ部25(図1参照)にも設けられてもよい。この場合には、図4に示されているように、複数のエアバッグ30を一列に配置された一枚の短冊形の矩形の樹脂シート34を、ボルスタ部25のスポンジ部25Aの前部に形成されたスリット27からスポンジ部22Aボルスタ部内に挿入すればよい。
【0067】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、エアバッグ30及び32の個数は、2×3の6個に限られることはなく、それ以外の複数であってもよい。振動発生装置は、エアバッグ30、32によるものに限られることはなく、電力供給により変形する電歪素子によるものやカム等が用いられた機械式のものであってもよい。振動発生装置はオットマン(不図示)に設けられてもよい。
【0068】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 :シート装置
12 :スライドレール装置
20 :シート本体
22 :シートクッション
22A :スポンジ部
23 :スリット
24 :電動リクライニング装置
25 :ボルスタ部
25A :スポンジ部
26 :シートバック
27 :スリット
28 :ヘッドレスト
30 :エアバッグ(振動発生装置)
32 :エアバッグ(振動発生装置)
34 :樹脂シート
36 :樹脂シート
50 :制御装置
52 :入力部
54 :演算処理部
56 :出力部
58 :エアバッグ制御部
60 :加速度センサ(挙動検出装置)
62 :操舵角センサ(挙動検出装置)
64 :車速センサ
66 :傾斜角センサ(傾斜角検出装置)
70 :ナビゲーション装置
図1
図2
図3
図4