IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特許7583264予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム
<>
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図1
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図2
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図3
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図4
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図5
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図6
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図7
  • 特許-予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20241107BHJP
   B22D 11/18 20060101ALI20241107BHJP
   B22D 11/22 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B22D11/16 C
B22D11/16 Z
B22D11/18 A
B22D11/22 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021017982
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022120924
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】今西 佑典
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕貴
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-068747(JP,A)
【文献】特開2007-275924(JP,A)
【文献】特開2019-217519(JP,A)
【文献】特開2008-290082(JP,A)
【文献】特開2007-136480(JP,A)
【文献】国際公開第2014/177605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンとを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測用の説明変数として取得する通信部と、
前記予測用の説明変数に対応する学習用の説明変数と学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて生成された学習済モデルに前記予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に学習済モデルの出力に基づいて予測する予測部
を備え、
前記学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と水スプレー群による運転パターンとを含むデータであり、
前記学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表すデータである、
予測装置。
【請求項2】
前記通信部は、鋳造時の外気温度と冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、前記予測用の説明変数として更に取得する、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンとを含む学習用の説明変数と、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表す学習用の目的変数とを取得する通信部と、
前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて学習済モデルを生成する学習部と
を備える学習装置。
【請求項4】
前記通信部は、鋳造時の外気温度と冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、前記学習用の説明変数として更に取得する、
請求項3に記載の学習装置。
【請求項5】
前記学習部は、機械学習の手法を用いて前記学習済モデルを生成する、
請求項3又は請求項4に記載の学習装置。
【請求項6】
前記機械学習の手法は、ランダムフォレストと、サポートベクターマシンと、ロジスティック回帰分析と、多項式ロジスティック回帰分類とのうちの少なくとも一つである、
請求項に記載の学習装置。
【請求項7】
学習装置と予測装置とを備える予測システムであって、
前記学習装置は、
鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンとを含む学習用の説明変数と、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表す学習用の目的変数とを取得する第1通信部と、
前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて学習済モデルを生成する学習部とを有し、
前記予測装置は、
鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンとを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測用の説明変数として取得する第2通信部と、
前記予測用の説明変数に対応する前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて生成された学習済モデルに前記予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に学習済モデルの出力に基づいて予測する予測部とを有し、
前記学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と水スプレー群による運転パターンとを含むデータであり、
前記学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表すデータである、
予測システム。
【請求項8】
前記第1通信部及び前記第2通信部は、鋳造時の外気温度と冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、前記学習用の説明変数及び前記予測用の説明変数として更に取得する、
請求項7に記載の予測システム。
【請求項9】
予測装置が実行する予測方法であって、
鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンとを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測用の説明変数として取得する通信ステップと、
前記予測用の説明変数に対応する学習用の説明変数と学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて生成された学習済モデルに前記予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に学習済モデルの出力に基づいて予測する予測ステップと
を含み、
前記学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と水スプレー群による運転パターンとを含むデータであり、
前記学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表すデータである、
予測方法。
【請求項10】
前記通信ステップは、鋳造時の外気温度と冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、前記予測用の説明変数として更に取得することを含む、
請求項9に記載の予測方法。
【請求項11】
学習装置が実行する学習方法であって、
鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンとを含む学習用の説明変数と、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表す学習用の目的変数とを取得する通信ステップと、
前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて学習済モデルを生成する学習ステップと
を含む学習方法。
【請求項12】
前記通信ステップは、鋳造時の外気温度と冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、前記学習用の説明変数として更に取得することを含む、
請求項11に記載の学習方法。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の予測装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の連続鋳造機においては、溶融金属がレードルからタンディッシュに供給及び貯留された後、タンディッシュの下部に取り付けられた浸漬ノズルを介して、溶融金属がモールド内に連続的に注入される。モールド内の溶融金属は、水冷されたモールドで冷却され、溶融金属の表面から内部に向かう順で凝固シェルを形成し、対向して配置された複数対のロールに挟まれながら、モールドの下部から連続的に引き抜かれていく。引き抜かれる際に、溶融金属は水スプレーで冷却され、溶融金属が内部まで凝固することによって、鋳片が製造される。
【0003】
ロールが所定の間隔で設置されているため、内部に未凝固溶鋼を有する鋳片がロール間で凸状に膨らむことがある。この現象は「バルジング」と呼ばれている。
【0004】
バルジングが発生した箇所がロールに沿って元に戻ることなく、凝固シェルの一部が変形することによって、バルジングが発生した箇所を残したまま鋳片が未凝固溶鋼側に押し戻される現象が発生する。この現象は「非定常バルジング」と呼ばれている。
【0005】
一定の間隔で設置されたロールに沿って非定常バルジングが発生することで、鋳片の凝固シェルが未凝固溶鋼側に押し戻され、ロール側に押し出される動きが周期的に発生する。このような周期性外乱によって、モールド内の溶鋼の湯面で湯面レベル変動が発生する。
【0006】
モールドと凝固シェルの潤滑材として、モールドの湯面上にはパウダーが散布されている。モールド内での溶鋼の湯面レベル変動は、湯面上のパウダーを溶鋼の内部へ巻き込む。巻き込まれたパウダーが凝固後に鋳片内部の介在物となり、初期凝固の不安定化によるブレイクアウトと鋳片の品質低下とに繋がることがある。
【0007】
非定常バルジングの発生に起因する湯面レベルの変動(以下「非定常バルジング性湯面レベル変動」という。)を防ぐ為の手段として、鋳造速度を減速させ、バルジングの生じている該当ロール間での凝固シェルの厚みを増大させる手段と、湯面レベル変動を打ち消すように溶鋼供給量を調節する湯面レベル制御の手段と、水スプレーの流量を増やして冷却能力を上げることで凝固シェルの強度を増大させる手段とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-57414号公報
【文献】特開2006-68747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら従来では、連続鋳造の各チャージの鋳造において非定常バルジングが発生した場合に所定の対処を行うことはできても、非定常バルジングが発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中には予測することができなかった。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、非定常バルジングが発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測することが可能である予測装置、学習装置、予測システム、予測方法、学習方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測用の説明変数として取得する通信部と、前記予測用の説明変数に対応する学習用の説明変数と学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて生成された学習済モデルに前記予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に学習済モデルの出力に基づいて予測する予測部を備え、前記学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを含むデータであり、前記学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表すデータである、予測装置である。
【0012】
本発明の一態様は、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを含む学習用の説明変数と、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表す学習用の目的変数とを取得する通信部と、前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて学習済モデルを生成する学習部とを備える学習装置である。
【0013】
本発明の一態様は、前記学習部は、機械学習の手法を用いて前記学習済モデルを生成する。
【0014】
本発明の一態様は、前記機械学習の手法は、ランダムフォレストと、サポートベクターマシンと、ロジスティック回帰分析と、多項式ロジスティック回帰分類とのうちの少なくとも一つである。
【0015】
本発明の一態様は、学習装置と予測装置とを備える予測システムであって、前記学習装置は、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを含む学習用の説明変数と、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表す学習用の目的変数とを取得する通信部と、前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて学習済モデルを生成する学習部とを有し、前記予測装置は、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測用の説明変数として取得する通信部と、前記予測用の説明変数に対応する前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて生成された学習済モデルに前記予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に学習済モデルの出力に基づいて予測する予測部とを有し、前記学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを含むデータであり、前記学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表すデータである、予測システムである。
【0016】
本発明の一態様は、予測装置が実行する予測方法であって、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測用の説明変数として取得する通信ステップと、前記予測用の説明変数に対応する学習用の説明変数と学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて生成された学習済モデルに前記予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に学習済モデルの出力に基づいて予測する予測ステップとを含み、前記学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを含むデータであり、前記学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表すデータである、予測方法である。
【0017】
本発明の一態様は、学習装置が実行する学習方法であって、鋳片のサイズと鋳造速度と溶鋼の温度と連続鋳造の連続操業の回数と鋳造時の外気温度と溶鋼の組成と溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンと冷却水の温度とのうちの少なくとも一つを含む学習用の説明変数と、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを表す学習用の目的変数とを取得する通信ステップと、前記学習用の説明変数と前記学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて学習済モデルを生成する学習ステップとを含む学習方法である。
【0018】
本発明の一態様は、予測装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0019】
本発明の一態様は、学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、非定常バルジングが発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前又は実行中に予測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態における、連続鋳造装置の構成例を示す図である。
図2】実施形態における、学習装置の動作例を示すフローチャートである。
図3】実施形態における、予測装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】実施形態における、ロジスティック回帰分類の事前予測結果の評価例を示す図である。
図5】実施形態における、多項式ロジスティック回帰分類の事前予測結果の評価例を示す図である。
図6】実施形態における、サポートベクターマシンを用いるクラス分類(線形カーネル)の事前予測結果の評価例を示す図である。
図7】実施形態における、サポートベクターマシンを用いるクラス分類(非線形カーネル)の事前予測結果の評価例を示す図である。
図8】実施形態における、ランダムフォレストを用いる事前予測結果の評価例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、実施形態における、連続鋳造装置1の構成例を示す図である。連続鋳造装置1は、連続鋳造機2と、制御装置3と、駆動装置4と、通信回線5と、予測システム6とを備える。連続鋳造機2は、タンディッシュ20と、スライディングノズル21と、モールド22と、ロール群23と、スプレー群24と、温度センサ25と、レベルセンサ26とを備える。
【0023】
予測システム6は、学習装置60と、予測装置61とを備える。学習装置60は、通信部600と、記憶部601と、学習部602とを備える。予測装置61は、通信部610と、記憶部611と、予測部612と、表示部613とを備える。
【0024】
予測システム6の各装置のうちの一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)である記憶部からメモリに展開されたプログラムを実行することにより、ソフトウェアとして実現される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記録媒体である。プログラムは、通信回線5を経由して予測システム6に送信されてもよい。
【0025】
通信回線5は、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)等の回線である。通信回線5は、制御装置3と学習装置60と予測装置61との間の通信データ(例えば、制御信号、番号、説明変数、及び、目的変数)を伝送する。
【0026】
予測システム6の各装置のうちの一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit又はcircuitry)を含むハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0027】
温度センサ25は、温度を計測するセンサであり、例えばサーモカメラである。温度センサ25は、各チャージの鋳造時に、タンディッシュ20に流し込まれる前の溶鋼100の温度を計測する。温度センサ25は、溶鋼100の温度の計測値を、制御装置3に定周期で送信する。
【0028】
レベルセンサ26は、モールド22における溶鋼100の湯面レベルを計測する。レベルセンサ26は、湯面レベル「h」の計測値を制御装置3に定周期で出力する。
【0029】
制御装置3は、連続鋳造機2の各部の動作を制御する装置である。制御装置3は、湯面レベル「h」の計測値(サンプリング結果)に基づいて、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生したか否かを判定する(参考文献1:特開2011-143414号公報)。制御装置3は、連続鋳造の各チャージの鋳造番号を、各チャージの鋳造の実行中(実行直後)に予測システム6に送信する。
【0030】
予測段階よりも前の学習段階において、制御装置3は、予測用の説明変数に対応する学習用の説明変数と、学習用の目的変数と、連続鋳造の各チャージの鋳造番号とを、学習装置60に送信する。
【0031】
予測段階において、制御装置3は、予測用の説明変数と連続鋳造の各チャージの鋳造番号とを、予測装置61に送信する。
【0032】
制御装置3は、非定常バルジング性湯面レベル変動の発生の有無の予測結果を、各チャージの鋳造の実行中に、予測装置61から取得する。
【0033】
制御装置3は、溶鋼を冷却する水スプレー群による運転パターンの変更と鋳造速度の変更とを、予測結果に基づいて実行する。これによって、各チャージの鋳造前に、非定常バルジングの発生が防止される。
【0034】
第1実施形態では、予測システム6は、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に予測するシステムである。
【0035】
次に、学習装置60(学習段階)の詳細を説明する。
(A)モールド22における鋳片のサイズが大きいほど、溶鋼100の冷却が不足する可能性が高くなる。したがって、鋳片のサイズと、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(B)鋳造速度が速いほど、溶鋼100の冷却が不足する可能性が高くなる。したがって、鋳造速度と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(C)溶鋼100の温度が高いほど、溶鋼100の冷却が不足する可能性が高くなる。したがって、溶鋼100の温度と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(D)連続鋳造の連続操業の回数が多いほど、ロール群23などの周辺機器の温度や冷却水の温度が高くなり、溶鋼100の冷却が不足する可能性が高くなる。したがって、連続鋳造の連続操業の回数と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(E)外気温度が高いほど、溶鋼100や周辺機器の冷却速度が下がるので、溶鋼100の冷却が不足する可能性が高くなる。したがって、外気温度と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(F)溶鋼100の組成(鋼種)に応じて例えば凝固温度が変化する等の理由で、溶鋼100の冷却が不足する可能性が変化する。したがって、溶鋼100の組成と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(G)溶鋼100を冷却するスプレー群24に関するパターンに応じて、溶鋼100の冷却が不足する可能性が変化する。したがって、溶鋼100を冷却するスプレー群24に関するパターン(例えば、複数のスプレーの配置パターン、冷却水の量)と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
(H)冷却水の温度が高いほど、溶鋼100の冷却が不足する可能性が高くなる。したがって、冷却水の温度と、非定常バルジングの発生の有無とには相関がある。
【0036】
学習段階において通信部600は、学習用の説明変数と学習用の目的変数と連続鋳造の各チャージの鋳造番号とを、制御装置3から取得する。
【0037】
記憶部601は、機械学習の学習モデルを記憶する。記憶部601は、説明変数と目的変数とを、チャージの鋳造番号ごとに記憶する。記憶部601は、機械学習の手法を表すアルゴリズムデータを、学習部602が実行するプログラムとして記憶する。記憶部601は、学習部602によって更新された学習モデルを、学習済モデルとして記憶してもよい。
【0038】
学習部602は、学習用の説明変数と学習用の目的変数との間の相関関係に基づいて機械学習の手法を用いて学習モデルを更新することによって、学習済モデルを生成する。機械学習の手法は、特定の機械学習の手法に限定されない。例えば、機械学習の手法は、ランダムフォレストと、サポートベクターマシンと、ロジスティック回帰分析と、多項式ロジスティック回帰分類とのうちのいずれでもよい。
【0039】
学習部602は、学習用の説明変数を、記憶部601から取得する。学習部602は、学習用の説明変数を、学習モデルに入力する。学習部602は、学習モデルの出力と正解データとの誤差を導出する。学習部602は、誤差が少なくなるように、例えば誤差逆伝播法を用いて学習モデルを更新する。
【0040】
次に、予測装置61(予測段階)の詳細を説明する。
予測段階において、通信部610は、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に、予測用の説明変数を制御装置3から取得する。第1実施形態では、操業データは、操業条件の設定値と操業の計測値(実測値)とのうちの少なくとも一方を表すデータである。通信部610は、機械学習の学習済モデルを、通信部600から取得する。
【0041】
記憶部611は、機械学習の学習済モデルを記憶する。記憶部611は、チャージの鋳造番号ごとに記憶する。記憶部611は、機械学習の手法を表すアルゴリズムデータを、予測部612が実行するプログラムとして記憶する。
【0042】
予測部612は、予測用の説明変数を学習済モデルに入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否か(予測結果)を、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に、学習済モデルの出力(0:発生しない、1:発生する)に基づいて予測する。
【0043】
表示部613は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。表示部613は、例えば、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否か(予測結果)を表す画像を、各チャージの鋳造の実行中に表示する。なお、表示部613は、タッチパネルを備えてもよい。タッチパネルは、所定の操作を受け付ける。タッチパネルによって受け付けられた操作に応じた信号は、例えば指示信号として、通信部610を経由して学習部602及び予測部612に送信される。
【0044】
次に、予測システム6の動作例について説明する。
図2は、実施形態における、学習装置60の動作例を示すフローチャートである。図2に示された動作は、予測段階よりも前の学習段階において実行される。通信部600は、実行されたチャージの鋳造が学習対象のチャージの鋳造であるか否かを判定する。学習対象であるか否かは、例えば連続鋳造システムを運用する担当者によって予め定められる(ステップS101)。実行されたチャージの鋳造が学習対象以外のチャージの鋳造であると判定された場合(ステップS101:NO)、通信部600は、ステップS101の処理を、所定時間の経過後に再実行する。
【0045】
実行されたチャージの鋳造が学習対象のチャージの鋳造であると判定された場合(ステップS101:YES)、通信部600は、学習用の説明変数を、制御装置3から取得する(ステップS102)。通信部600は、学習用の目的変数を、制御装置3から取得する(ステップS103)。
【0046】
記憶部601は、学習用の説明変数と学習用の目的変数とを、通信部600から取得する。学習部602は、学習用の説明変数と学習用の目的変数とを、記憶部601から取得する。学習部602は、学習用の説明変数を、学習モデルに入力する(ステップS104)。学習部602は、学習モデルの出力と学習用の目的変数との誤差を導出する(ステップS105)。学習部602は、誤差が少なくなるように、例えば誤差逆伝播法を用いて学習モデルを更新する(ステップS106)。
【0047】
学習部602は、学習段階を終了させるか否かを、所定の指示信号に基づいて判定する(ステップS107)。学習段階を継続させると判定された場合(ステップS107:NO)、学習部602は、ステップS101に処理を戻す。学習段階を終了させると判定された場合(ステップS107:YES)、学習部602は、更新された学習用の説明変数と学習済モデルとを、記憶部601に記録する(ステップS108)。
【0048】
図3は、実施形態における、予測装置61の動作例を示すフローチャートである。図3に示された動作は、学習段階よりも後の予測段階における、例えば各チャージの鋳造の前のタイミングで実行される。
【0049】
通信部610は、学習済モデルを学習装置60から取得する(ステップS201)。通信部610は、実行される連続鋳造のチャージの鋳造が予測対象のチャージの鋳造であるか否かを判定する。予測対象であるか否かは、例えば連続鋳造装置1を運用する担当者によって予め定められる(ステップS202)。実行されるチャージの鋳造が予測対象以外のチャージの鋳造であると判定された場合(ステップS202:NO)、通信部610は、ステップS202の処理を、所定時間の経過後に再実行する。
【0050】
実行される連続鋳造のチャージの鋳造が予測対象のチャージの鋳造であると判定された場合(ステップS202:YES)、通信部610は、予測用の説明変数を制御装置3から取得する。記憶部611は、取得された予測用の説明変数を記憶する。予測部612は、記憶された予測用の説明変数を、記憶部611から取得する(ステップS203)。
【0051】
予測部612は、学習済モデルを記憶部611から取得する。予測部612は、通信部610を用いて、学習済モデルを学習装置60から取得してもよい。予測部612は、予測用の説明変数を、学習済モデルに入力する(ステップS204)。予測部612は、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否か(非定常バルジングが発生するか否か)を、学習済モデルの出力(0:発生しない、1:発生する)に基づいて予測する(ステップS205)。非定常バルジング性湯面レベル変動が発生しない(非定常バルジングが発生しない)と予測された場合(ステップS205:NO)、予測部612は、ステップS202に処理を戻す。
【0052】
非定常バルジング性湯面レベル変動が発生(非定常バルジングが発生する)と予測された場合(ステップS205:YES)、予測部612は、非定常バルジングが発生する旨を、例えば制御装置3又はオペレータに通知する。予測部612は、非定常バルジングが発生する旨を、表示部613に表示させてもよい(ステップS206)。
【0053】
制御装置3は、通知に基づいて駆動装置4の動作を制御してもよい。例えば、制御装置3は、溶鋼100を冷却するスプレー群24による運転パターンを、適正な操業条件となるように、各チャージの鋳造の実行中に変更してもよい。制御装置3は、通知に基づいて、適正な操業条件(例えば、適正な運転パターン及び鋳造速度)をオペレータに提示してもよい。適正な操業条件が存在しない場合、制御装置3は、通知に基づいて警告をオペレータに発してもよい。
【0054】
次に、機械学習(教師あり学習、分類問題)の手法を用いた予測結果の評価例を説明する。
【0055】
予測値は、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生すると予測された場合に1であり、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生しないと予測された場合に0である。実測値(計測値)は、非定常バルジング性湯面レベル変動が実際に発生した場合に1であり、非定常バルジング性湯面レベル変動が実際に発生しなかった場合に0である。
【0056】
以下では、予測値が真(正解)であること(予測値と実測値とが同じであること)を「T」と表記する。予測値が偽(不正解)であること(予測値と実測値とが異なること)を「F」と表記する。値が陽(=1)であることを「P」と表記する。値が陰(=0)であることを「N」と表記する。以下では、真陽性を「TP」と表記する。偽陰性を「FN」と表記する。偽陽性(過検知)を「FP」と表記する。真陰性を「TN」と表記する。
【0057】
一例として、学習用の説明変数と学習用の目的変数との組み合わせを含む評価データは、378点(=TP+FN+FP+TN)である。
【0058】
学習用の目的変数は、過去の連続鋳造における、非定常バルジング性湯面レベル変動の発生の有無(0:発生しない、1:発生する)である。学習用の説明変数は、過去の連続鋳造における、鋳片のサイズ(mm)と、鋳造速度(m/min)と、溶鋼100の温度(℃)と、連続鋳造の連続操業の回数(連連鋳回数)と、外気温度(℃)と、溶鋼100の組成(炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄)と、溶鋼100を水で冷却するスプレー群24に関する運転パターンの識別番号である。学習用の説明変数には、冷却水(ミスト)の温度と、冷却水の量とがさらに含まれてもよい。学習用の説明変数は、季節ごと(年間における予め定められた期間ごと)に用意されてもよい。
【0059】
図4は、実施形態における、ロジスティック回帰分類の予測結果の評価例を示す図である。図4では、正則化の強度のパラメータ「C」は1である。すなわち、パラメータ「C」は、誤分類がどの程度許容されるのかを表すパラメータである。したがって、パラメータ「C」の値が大きいほど、適合率は高くなり易い。
【0060】
予測段階における適合率は、0.567(=Precision=TP/(TP+FP)=34/(34+26))である。予測段階における再現率は、0.548(=Recall=TP/(TP+FN)=34/(34+28))である。予測段階におけるF1値(再現率と適合率との調和平均)は、0.557(=2×Recall×Precision/(Recall+Precision)=2×0.548×0.567/(0.548+0.567))である。なお、学習段階におけるF1値は、0.769であった。
【0061】
図5は、実施形態における、多項式ロジスティック回帰分類の予測結果の評価例を示す図である。図5では、正則化の強度のパラメータ「C」は50である。予測段階における適合率は、0.583(=28/(28+20))である。予測段階における再現率は、0.451(=28/(28+34))である。予測段階におけるF1値は、0.509(=2×0.451×0.583/(0.451+0.583))である。なお、学習段階におけるF1値は、0.857であった。
【0062】
図6は、実施形態における、サポートベクターマシン(Support Vector Machine : SVM)を用いるクラス分類(Support Vector Classification : SVC)(線形カーネル)の予測結果の評価例を示す図である。図6では、正則化の強度のパラメータ「C」は10である。予測段階における適合率は、0.529(=36/(36+32))である。予測段階における再現率は、0.581(=36/(36+26))である。予測段階におけるF1値は、0.554(=2×0.581×0.529/(0.581+0.529))である。なお、学習段階におけるF1値は、0.780であった。
【0063】
図7は、実施形態における、サポートベクターマシンを用いるクラス分類(非線形カーネル)の予測結果の評価例を示す図である。図7では、正則化の強度のパラメータ「C」は10である。クラス分類には2乗の多項式が用いられる。パラメータ「γ」は、点分布図において線からの距離が短い点と線からの距離が長い点とのうちのいずれを重視するのかを表す。パラメータ「γ」の値は、0.01である。「γ」の値が大きいほど、点分布図において線からの距離が短い点が重視される。
【0064】
予測段階における適合率は、0.396(=42/(42+64))である。予測段階における再現率は、0.677(=42/(42+20))である。予測段階におけるF1値は、0.500(=2×0.677×0.396/(0.677+0.396))である。なお、学習段階におけるF1値は、0.783であった。
【0065】
図8は、実施形態における、ランダムフォレストを用いる予測結果の評価例を示す図である。予測段階における適合率は、1.000(=18/(18+0))である。予測段階における再現率は、0.290(=18/(18+44))である。予測段階におけるF1値は、0.450(=2×1.000×0.290/(1.000+0.290))である。なお、学習段階におけるF1値は、0.977であった。
【0066】
非定常バルジング性湯面レベル変動が発生しない場合であるにも関わらず、非定常バルジング性湯面レベル変動の発生を防止するための不要な対処が各チャージの鋳造の前に実行されてしまうと、連続鋳造の正常な連続操業を誤って止めてしまう。このため、偽陽性「FP」の個数は少ないほうが望ましい。ランダムフォレストが用いられた予測結果では、偽陽性「FP」の個数は0である。そこで、予測部612は、非定常バルジング性湯面レベル変動の発生の有無を、ランダムフォレストを優先的に用いて予測してもよい。これによって、連続鋳造の正常な連続操業を予測部612が誤って止めてしまう可能性を低減することができる。
【0067】
上記より、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に予測することが可能である。これにより、初期凝固の不安定化によるブレイクアウトと鋳片の品質低下とを防ぐ事が出来る。加えて、学習モデルを用いて鋳造条件の最適化を行う事で、鋳造速度や出片温度の上昇を行う事が可能になる。
【0068】
上記非定常バルジング性湯面レベル変動の予測が可能になることにより、溶鋼の組成(例えば炭素量)と冷却水温度とに応じて鋳造条件の最適化を行うことが可能である。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態では、予測用の説明変数の一部が予測用の仮想データ(仮想設定値及び仮想計測値)に差し替えられる点が、第1実施形態と相違する。仮想データとは、シミュレーション等を用いて予め定められるデータ(設定値及び計測値)である。予測用の説明変数の一部とは、予測用の説明変数のうちで、例えば、鋳造の実行中に値の変化が予測される説明変数である。第2実施形態では、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0070】
温度センサ25は、各チャージの鋳造の実行中(実行直後)に、タンディッシュ20に流し込まれた溶鋼100の温度を計測する。通信部610は、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に、予測用の説明変数を、制御装置3から取得する。予測部612は、予測用の説明変数の一部を、予測用の仮想データに差し替える。予測部612は、一部が差し替えられた予測用の説明変数を学習済モデルに入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否か(予測結果)を、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に、学習済モデルの出力(0:発生しない、1:発生する)に基づいて予測する。
【0071】
制御装置3は、非定常バルジング性湯面レベル変動の発生の有無の予測結果を、各チャージの鋳造の実行中に、予測装置61から取得する。制御装置3は、通知に基づいて、適正な操業条件(例えば、適正な運転パターン及び鋳造速度)をオペレータに提示してもよい。また、制御装置3は、通知に基づいて警告をオペレータに発してもよい。これによって、各チャージの鋳造の実行中に、非定常バルジングの発生が防止される。
【0072】
このように、予測用の説明変数の一部が、予測用の仮想データと差し替えられる。一部が差し替えられた予測用の説明変数セットが、学習済モデルに入力される。このような学習済モデルが予測結果を出力する。これによって、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行中に予測することが可能である。操業中に、能動的な要因(例えば、鋳造速度の増速など)による非定常バルジング発生を予測して、操業条件を適正化することが可能である。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態では、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前に、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かが予測される点が、第1実施形態及び第2実施形態と相違する。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を主に説明する。
【0074】
第3実施形態では、予測用の説明変数の全てが、予測用の仮想データである。すなわち、予測用の説明変数は、操業データを含まない。第3実施形態では、予測システム6は、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前に予測するシステムである。例えば、図3に示された動作は、各チャージの鋳造前に実行される。
【0075】
通信部610は、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前に、操業データ(計測値等)を含まない説明変数を、予測用の説明変数として制御装置3から取得する。操業データを含まない説明変数は、例えばシミュレーションを用いて、予め定められる。予測部612は、学習済モデルに予測用の説明変数を入力し、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前に、学習済モデルの出力(0:発生しない、1:発生する)に基づいて予測する。
【0076】
制御装置3は、非定常バルジング性湯面レベル変動の発生の有無の予測結果を、各チャージの鋳造の実行前に、予測装置61から取得する。制御装置3は、通知に基づいて、適正な操業条件(例えば、適正な運転パターン及び鋳造速度)をオペレータに提示してもよい。適正な操業条件が存在しない場合、制御装置3は、通知に基づいて警告をオペレータに発してもよい。これによって、各チャージの鋳造の実行前に、非定常バルジングの発生が防止される。
【0077】
このように、シミュレーションに基づく予測用の説明変数セットが、学習済モデルに入力される。学習済モデルは、シミュレーションに基づく予測用の説明変数セットを用いて、予測結果を出力する。これによって、非定常バルジング性湯面レベル変動が発生するか否かを、連続鋳造の各チャージの鋳造の実行前に予測することが可能である。受動的な要因(例えば、鍋交換後のタンディッシュ20内における温度の変動など)による非定常バルジング発生を操業前に予測して、次回の操業における操業条件(例えば、鋳造速度を減速させるか否かを判定するための条件)に反映することが可能である。
【0078】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…連続鋳造装置、2…連続鋳造機、3…制御装置、4…駆動装置、5…通信回線、6…予測システム、20…タンディッシュ、21…スライディングノズル、22…モールド、23…ロール群、24…スプレー群、25…温度センサ、26…レベルセンサ、60…学習装置、61…予測装置、100…溶鋼、101…外殻、600…通信部、601…記憶部、602…学習部、610…通信部、611…記憶部、612…予測部、613…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8