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特許7583267凝固シェル厚みの推定方法及び溶融金属の連続鋳造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】凝固シェル厚みの推定方法及び溶融金属の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B22D11/16 104U
B22D11/16 104R
B22D11/16 A
B22D11/16 104B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021021617
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124069
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】上田 航也
(72)【発明者】
【氏名】高屋 慎
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】廣角 太朗
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079023(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107865(WO,A1)
【文献】特開2010-194548(JP,A)
【文献】特開2000-246413(JP,A)
【文献】特開平10-277716(JP,A)
【文献】特開2017-192969(JP,A)
【文献】特開2014-036998(JP,A)
【文献】特開2002-248547(JP,A)
【文献】特開2019-072749(JP,A)
【文献】特開平02-052158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属の連続鋳造時に鋳型内に生成する凝固シェルの部分のうち浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pの厚みTを推定する方法であって、
連続鋳造前に、前記部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること、
連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qの経時変化を、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること、
及び、
連続鋳造時に、前記関係と、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qの経時変化と、に基づいて、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTの経時変化を推定すること、
を含む、凝固シェル厚みの推定方法。
【請求項2】
浸漬ノズルから鋳型内へと溶融金属を吐出して、前記鋳型内で凝固シェルを生成させながら、前記溶融金属を連続的に鋳造する方法であって、
連続鋳造前に、前記鋳型内に生成する前記凝固シェルの部分のうち前記浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること、
連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qの経時変化を、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること、
連続鋳造時に、前記関係と、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qの経時変化と、に基づいて、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTの推定値の経時変化を求めること、
及び、
連続鋳造時に、前記厚みTの前記推定値の経時変化に基づいて、ブレークアウトに至る可能性の判定を行うこと、
を含む、溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項3】
連続鋳造時に、前記厚みTの前記推定値が0となった場合に、ブレークアウトに至る可能性があるものと判定すること、
を含む、請求項2に記載の溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項4】
浸漬ノズルから鋳型内へと溶融金属を吐出して、前記鋳型内で凝固シェルを生成させながら、前記溶融金属を連続的に鋳造する方法であって、
連続鋳造前に、前記鋳型内に生成する前記凝固シェルの部分のうち前記浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること、
連続鋳造前又は連続鋳造時に、前記関係に基づいて、前記厚みTが所定の範囲内となる前記局所熱流Qの上限値Qlimitを特定すること、
連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qの経時変化を、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること、
及び、
連続鋳造時に、前記上限値Qlimitと、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qの経時変化と、を比較して、ブレークアウトに至る可能性の判定を行うこと、
を含む、溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項5】
連続鋳造時の鋳造速度Vを考慮して前記上限値Qlimitを特定すること、
を含む、請求項4に記載の連続鋳造方法。
【請求項6】
連続鋳造前又は連続鋳造時に、前記関係に基づいて、前記厚みTが0となるような前記上限値Qlimitを特定すること、
を含む、請求項4又は5に記載の連続鋳造方法。
【請求項7】
前記溶融金属が1.0質量%以上のCを含む高炭素鋼である場合において、前記上限値Qlimitを下記式(1)に基づいて決定すること、
を含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の連続鋳造方法。
limit=1.28×V+1.49 ・・・ (1)
ここで、Qlimitは局所熱流束(MW/m)であり、Vは鋳造速度(m/min)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は凝固シェル厚みの推定方法及び溶融金属の連続鋳造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の連続鋳造時の操業トラブルとしてブレークアウト(BO)がある。連続鋳造時にBOが発生した場合、凝固した金属の除去や設備の修繕のために、操業を中断せざるを得ない。そのため、BOの発生を精度よく予知できる技術が必要である。
【0003】
BOの一つに、凝固シェルが再溶解して凝固シェルの厚みが部分的に薄くなることでBOに至る、再溶解性ブレークアウトがある。再溶解性ブレークアウトの発生を精度よく予知するためには、例えば、鋳型内の凝固シェルの厚みを精度よく推定することが有効と考えられる。
【0004】
特許文献1~5には、鋳型に設置された温度センサーによって測定される熱流束に着目して、BOの予知や凝固シェル厚みの推定をする技術が開示されている。また、特許文献6及び7には、鋳型に設置された温度センサーによって測定される熱流束に着目して、鋳型内の偏流を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-148061号公報
【文献】国際公開第2009/107865号
【文献】特開2010-105040号公報
【文献】特開2011-079023号公報
【文献】特開2019-072749号公報
【文献】特開平1-262050号公報
【文献】特開平3-032457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶融金属の連続鋳造時に、ブレークアウトを精度よく予知するための新たな技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
溶融金属の連続鋳造時に鋳型内に生成する凝固シェルの部分のうち浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pの厚みTを推定する方法であって、
連続鋳造前に、前記部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること、
連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること、
及び、
連続鋳造時に、前記関係と、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qと、に基づいて、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTを推定すること、
を含む、凝固シェル厚みの推定方法
を開示する。
【0008】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
浸漬ノズルから鋳型内へと溶融金属を吐出して、前記鋳型内で凝固シェルを生成させながら、前記溶融金属を連続的に鋳造する方法であって、
連続鋳造前に、前記鋳型内に生成する前記凝固シェルの部分のうち前記浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること、
連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること、
連続鋳造時に、前記関係と、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qと、に基づいて、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTの推定値を求めること、
及び、
連続鋳造時に、前記厚みTの前記推定値に基づいて、ブレークアウトに至る可能性の判定を行うこと、
を含む、溶融金属の連続鋳造方法
を開示する。
【0009】
本開示の連続鋳造方法は、
連続鋳造時に、前記厚みTの前記推定値が0となった場合に、ブレークアウトに至る可能性があるものと判定すること、
を含んでいてもよい。
【0010】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
浸漬ノズルから鋳型内へと溶融金属を吐出して、前記鋳型内で凝固シェルを生成させながら、前記溶融金属を連続的に鋳造する方法であって、
連続鋳造前に、前記鋳型内に生成する前記凝固シェルの部分のうち前記浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること、
連続鋳造前又は連続鋳造時に、前記関係に基づいて、前記厚みTが所定の範囲内となる前記局所熱流Qの上限値Qlimitを特定すること、
連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること、
及び、
連続鋳造時に、前記上限値Qlimitと、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qと、を比較して、ブレークアウトに至る可能性の判定を行うこと、
を含む、溶融金属の連続鋳造方法
を開示する。
【0011】
本開示の連続鋳造方法は、
連続鋳造時の鋳造速度Vを考慮して前記上限値Qlimitを特定すること、
を含んでいてもよい。
【0012】
本開示の連続鋳造方法は、
連続鋳造前又は連続鋳造時に、前記関係に基づいて、前記厚みTが0となるような前記上限値Qlimitを特定すること、
を含んでいてもよい。
【0013】
本開示の連続鋳造方法は、
前記溶融金属が1.0質量%以上のCを含む高炭素鋼である場合において、前記上限値Qlimitを下記式(1)に基づいて決定すること、
を含んでいてもよい。
limit=1.28×V+1.49 ・・・ (1)
ここで、Qlimitは局所熱流束(MW/m)であり、Vは鋳造速度(m/min)である。
【発明の効果】
【0014】
本開示の凝固シェル厚みの推定方法によれば、溶融金属の連続鋳造時、鋳型内の凝固シェルの部分のうち、浸漬ノズルからの吐出流が凝固シェルに衝突する部分Pにおける厚みTを精度よく推定することが可能である。また、本開示の溶融金属の連続鋳造方法によれば、ブレークアウトを精度よく予知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】凝固シェル厚みの推定方法の流れの一例を説明するための図である。
図2】溶融金属の連続鋳造方法の流れの一例を説明するための図である。
図3】溶融金属の連続鋳造方法の流れの他の例を説明するための図である。
図4】ブレークアウト後に鋳型から取得された凝固シェル(BO後凝固シェル)の断面形状を示す図である。
図5】BO後凝固シェルの厚みの理論値(吐出流がない場合)と実測値との関係を示す図である。
図6】5秒ごとの局所熱流束プロフィールを示す図である。
図7】メニスカスから約300mm地点での局所熱流束の経時変化を示す図である。
図8図5に示される凝固シェル厚みの理論値と実測値との差を示す図である。
図9】地点Aにおける凝固シェル厚みの経時変化と、地点Aにおける局所熱流束の経時変化とを示す図である。
図10】地点Aにおける凝固シェル厚みと局所熱流束との関係を示す図である。
図11】鋳造速度と局所熱流束との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.凝固シェル厚みの推定方法
本開示の凝固シェル厚みの推定方法は、溶融金属の連続鋳造時に鋳型内に生成する凝固シェルの部分のうち浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pの厚みTを推定する方法である。図1に示されるように、本開示の凝固シェル厚みの推定方法は、連続鋳造前に、前記部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること(S1)、連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること(S2)、及び、連続鋳造時に、前記関係と、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qと、に基づいて、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTを推定すること(S3)、を含む。
【0017】
1.1 S1
S1においては、連続鋳造前に、前記部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認する。
【0018】
本発明者は、ブレークアウト後に連続鋳造機の鋳型内に残った凝固シェル(BO後凝固シェル)を取得する機会を得た。BO後凝固シェルの性状を観察及び分析したところ、浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおいては、他の部分と比較して、凝固シェルの厚みが薄くなっていることが分かった。また、当該連続鋳造時に鋳型に設置された温度センサーによって求められた局所熱流束Qの実績値(履歴)と、BO後凝固シェルの性状とを比較及び分析したところ、浸漬ノズルからの吐出流が衝突して凝固シェルの厚みが薄くなっている部分Pにおいては、他の部分と比較して、局所熱流束Qが上昇することが分かった。さらに、当該部分Pにおいては、局所熱流束Qと凝固シェルの厚みTとの間に明確な相関関係があることが分かった。すなわち、部分Pにおいて、鋳型に設置された温度センサーによって求められた局所熱流束Qと、凝固シェルの厚みTとの関係を数式(関係式)で表すことができることを見出した。本開示の方法においては、例えば、部分Pにおける局所熱流束Qと、部分Pにおける凝固シェルの厚みTとの関係を、1次式(Q=aT+b、ここで定数a及びbは、各々、連続鋳造の操業条件に応じて決定される)によって表してもよい。
【0019】
連続鋳造前において、部分Pにおける局所熱流束Qと、部分Pにおける凝固シェルの厚みTと、の関係を確認する方法は、上記のBO後凝固シェルを観察及び分析する方法に限られない。本開示の方法においては、部分Pにおける局所熱流束Qと、部分Pにおける凝固シェルの厚みTと、の関係を予め確認するためだけに、実機で連続鋳造を行うことは要しない。部分Pの位置は、例えば、水モデルによる模擬実験や、シミュレーションを利用した解析等によって、連続鋳造前に確認してもよい。凝固シェル厚みは、例えば、鋳造中にFeS等を添加して推定してもよい。ただし、実機での連続鋳造の結果(例えば、上記のBO後凝固シェル)に基づいて当該関係を確認した場合、当該関係をより精度よく求めることができるものと考えられる。この点、本開示の方法においては、連続鋳造時に鋳型に設置された温度センサーによって求められた局所熱流束Qの実績値と、当該連続鋳造時にブレークアウトに至った後に得られるBO後凝固シェルの性状と、に基づいて、部分Pにおける局所熱流束Qと、部分Pにおける凝固シェルの厚みTと、の関係を確認してもよい。
【0020】
また、本発明者は、連続鋳造時に鋳型に設置された温度センサーによって求められた局所熱流束の実績値や、BO後凝固シェルの観察及び分析から、浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおいては、局所熱流束Qが経時的に変化し、凝固シェルが薄くなったり厚くなったりすることも見出した。この点、連続鋳造時、部分Pにおける局所熱流束Qの経時変化を監視することで、浸漬ノズルからの吐出流の流速の変化を監視することもできる。また、浸漬ノズルからの吐出流の流速が変化して部分Pにおける凝固シェルの厚みTが薄くなった場合、ブレークアウト(例えば、再溶解性ブレークアウト)が生じ易い。本開示の方法によれば、当該部分Pにおける凝固シェルの厚みTを精度良く推定することで、このようなブレークアウトを防止し易くなる。
【0021】
尚、「凝固シェルの部分のうち浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分P」は、浸漬ノズルの吐出口の向き及び形状や鋳型の形状や吐出流の流速等を考慮して特定すればよい。本開示の方法において、浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pは、点として特定されてもよいし、範囲として特定されてもよい。本開示の方法においては、凝固シェルの厚みのうち、浸漬ノズルからの吐出流が衝突している部分の全域の厚みを推定してもよいし、浸漬ノズルからの吐出流が衝突している部分の一部の厚みを推定してもよい。
【0022】
1.2 S2
S2においては、連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、鋳型に設置された温度センサーによって求める。
【0023】
本開示の方法は、連続鋳造時に、浸漬ノズルからの吐出流が凝固シェルに衝突する部分Pにおける凝固シェルの厚みTを精度よく推定するものであり、連続鋳造機の種類や連続鋳造の操業条件等によらず所望の効果が奏される。本開示の方法においては、一般的な連続鋳造機及び一般的な操業条件をいずれも採用可能である。
【0024】
鋳型に設置される温度センサーの種類も特に限定されるものではなく、例えば、公知の熱電対やFBGセンサーを採用してよい。本開示の方法においては、鋳型の部分のうち、少なくとも、浸漬ノズルからの吐出流が凝固シェルに衝突する部分Pと対応する部分(例えば、部分Pと対向する部分)に、温度センサーが少なくとも1つ設置されていればよい。温度センサーは鋳型の壁内に埋設されていてもよい。温度センサーは鋳型の長辺及び短辺の複数箇所に埋設されていてもよい。尚、鋳型に埋設された温度センサーによる測定結果に基づいて、部分Pにおける局所熱流束Qを求める手法についても特に限定されるものではなく、公知の手法を利用すればよい。局所熱流束Qは、例えば、溶融金属からの距離の異なる2本の温度センサーの測定温度の差をセンサー間距離で除し、鋳型壁(銅板)の熱伝導率を乗じることによって求めてもよい。
【0025】
1.3 S3
S3においては、連続鋳造時に、S1にて確認された関係と、S2にて温度センサーによって求められた局所熱流束Qと、に基づいて、前記部分Pにおける凝固シェルの厚みTを推定する。
【0026】
例えば、S1にて、部分Pにおける局所熱流束Qと、部分Pにおける凝固シェルの厚みTとの関係式を特定したうえで、S2にて、浸漬ノズルからの吐出流が凝固シェルに衝突する部分Pと対応する部分に設置された温度センサーによって部分Pにおける局所熱流束Qを求め、当該温度センサーによって求められた局所熱流束Qを当該関係式に代入することで、凝固シェルの厚みTを推定することができる。
【0027】
以上の通り、S1~S3を経ることで、溶融金属の連続鋳造時、鋳型内の凝固シェルの部分のうち、浸漬ノズルからの吐出流が凝固シェルに衝突する部分Pにおける厚みTを精度よく推定することが可能である。当該部分Pは、吐出流の流速の変化等によって凝固シェルの厚みTが変動し易い部分であり、ブレークアウトの原因となり易い部分であるものと考えられる。この点、本開示の方法によって当該部分Pの凝固シェルの厚みTを精度よく推定することで、ブレークアウトを防止し易くなる。
【0028】
2.溶融金属の連続鋳造方法
上述の通り、浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおいては、他の部分と比較して凝固シェルの厚みTが薄くなり、他の部分と比較して局所熱流束Qが上昇する。また、浸漬ノズルからの吐出流は常に一定の流速が維持されるというわけではなく、当該部分Pにおける凝固シェルの厚みTも経時的に変化し、局所熱流束Qも経時的に変化する。当該部分Pにおける凝固シェルの厚みTが薄くなり過ぎると、ブレークアウトの原因となり易いことから、当該部分Pにおける凝固シェルの厚みTを精度よく推定して、当該厚みTが薄くなり過ぎないように制御する必要がある。ここで、上述したように、本発明者は、当該部分Pにおいて、局所熱流束Qと凝固シェルの厚みTとの間に明確な相関関係があることを見出した。当該関係を利用して、当該部分Pにおける局所熱流束Qや凝固シェル厚みTを監視することで、ブレークアウトを防止し易くなる。
【0029】
2.1 第1形態
図2に溶融金属の連続鋳造方法の流れの一例を示す。本開示の連続鋳造方法は、浸漬ノズルから鋳型内へと溶融金属を吐出して、前記鋳型内で凝固シェルを生成させながら、前記溶融金属を連続的に鋳造する方法である。図2に示されるように、第1形態に係る連続鋳造方法は、連続鋳造前に、前記鋳型内に生成する前記凝固シェルの部分のうち前記浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること(S11)、連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること(S12)、連続鋳造時に、前記関係と、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qと、に基づいて、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTの推定値を求めること(S13)、及び、連続鋳造時に、前記厚みTの前記推定値に基づいて、ブレークアウトに至る可能性の判定を行うこと(S14)、を含む。
【0030】
2.1.1 S11~S13
S11~S13は上記のS1~S3と同様とすればよい。
【0031】
2.1.2 S14
S14においては、連続鋳造時に、S13にて求められた厚みTの推定値に基づいて、ブレークアウトに至る可能性の判定を行う。
【0032】
上述の通り、部分Pにおける厚みTが薄くなり過ぎると、ブレークアウトの可能性が高まる。この点、本開示の方法においては、例えば、部分Pにおける厚みTの推定値が所定範囲を外れて小さい場合に、部分Pにおける厚みTが薄くなり過ぎていると判定し、ブレークアウトに至る可能性があるものと判定してもよい。この場合、厚みTの推定値に閾値を設定し、当該閾値を基準として厚みTの推定値が小さくなった場合(厚みTの推定値が閾値を下回った場合、或いは、閾値以下となった場合)に、部分Pにおける凝固シェルが過剰に再溶解しているものと判断し、再溶解性ブレークアウトに至る可能性があるものと判定してもよい。当該閾値は連続鋳造の操業条件等に応じて適宜決定されればよい。また、当該閾値は連続鋳造の鋳造速度に応じて変化させてもよい。
【0033】
S14においては、連続鋳造時に、S13にて求められた厚みTの推定値が0となった場合に、ブレークアウトに至る可能性があるものと判定してもよい。厚みTの推定値が0である場合、部分Pにおいて凝固シェルが途切れて破断している(又は破断しようとしている)可能性が高く、ブレークアウトの可能性が一層高まるものと考えられるためである。
【0034】
2.1.3 その他の工程
尚、本開示の連続鋳造方法においては、S14においてブレークアウトに至る可能性があるものと判定された場合に、鋳造速度を低速化したり、鋳型の冷却量(抜熱量)を増加させること等によって凝固シェルの成長を促すことで、ブレークアウトの発生を防止することができる。すなわち、本開示の方法は、上記のブレークアウトの判定に基づいて鋳造速度を制御すること、を含んでいてもよいし、上記のブレークアウトの判定に基づいて鋳型の冷却量を制御すること、を含んでいてもよい。
【0035】
2.2 第2形態
第1形態においては、部分Pにおける凝固シェルの厚みTの推定値に基づいてブレークアウトを予知する形態について説明したが、本開示の連続鋳造方法はこの形態に限定されるものではない。図3に溶融金属の連続鋳造方法の流れの他の例を示す。本開示の連続鋳造方法は、浸漬ノズルから鋳型内へと溶融金属を吐出して、前記鋳型内で凝固シェルを生成させながら、前記溶融金属を連続的に鋳造する方法である。図3に示されるように、第2形態に係る連続鋳造方法は、連続鋳造前に、前記鋳型内に生成する前記凝固シェルの部分のうち前記浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分Pにおける局所熱流束Qと、前記部分Pにおける前記凝固シェルの厚みTと、の関係を確認すること(S21)、連続鋳造前又は連続鋳造時に、前記関係に基づいて、前記厚みTが所定の範囲内となる前記局所熱流Qの上限値Qlimitを特定すること(S22)、連続鋳造時に、前記部分Pにおける局所熱流束Qを、前記鋳型に設置された温度センサーによって求めること(S23)、及び、連続鋳造時に、前記上限値Qlimitと、前記温度センサーによって求められた前記局所熱流束Qと、を比較して、ブレークアウトに至る可能性の判定を行うこと(S24)、を含む。
【0036】
2.2.1 S21
S21は上記のS1と同様とすればよい。
【0037】
2.2.2 S22
S22においては、連続鋳造前又は連続鋳造時に、S21において確認された関係に基づいて、凝固シェルの厚みTが所定の範囲内となる局所熱流Qの上限値Qlimitを特定する。
【0038】
上述したように、部分Pにおける凝固シェルの厚みTが薄過ぎる場合、ブレークアウトに至る可能性が高まる。この点、本開示の連続鋳造方法においては、当該厚みTが薄くなり過ぎないように、局所熱流束Qについて閾値(上限値)を設定する。例えば、上述したように、部分Pにおける厚みTと、部分Pにおける局所熱流束Qと、の間には明確な相関関係があり、厚みTが薄くなると局所熱流束Qが増大することから、当該厚みTが必要最低限の厚み(下限値Tlimit)となる場合の局所熱流束Qの上限値Qlimitを特定する。上記関係が数式で表される場合、当該数式に厚みTの下限値Tlimitを代入することで、局所熱流束Qの上限値Qlimitを特定することができる。
【0039】
局所熱流束Qの上限値Qlimitは連続鋳造時の操業条件に応じて適宜決定されればよい。尚、局所熱流束Qの上限値Qlimitを、連続鋳造時の鋳造速度Vによって変化させてもよい。すなわち、本開示の連続鋳造方法は、連続鋳造時の鋳造速度Vを考慮して前記上限値Qlimitを特定すること、を含んでいてもよい。例えば、VとQlimitとの関係を数式化し、当該数式に基づいて、任意のVにおけるQlimitを特定することができる。VとQlimitとの関係は1次式で表されてもよい。
【0040】
S22においては、連続鋳造前又は連続鋳造時に、S21にて確認された関係に基づいて、前記厚みTが0となるような前記上限値Qlimitを特定してもよい。厚みTが0である場合、部分Pにおいて凝固シェルが途切れて破断している(又は破断しようとしている)可能性が高く、ブレークアウトの可能性が一層高まるものと考えられるためである。
【0041】
S22においては、鋳造速度Vの他、溶融金属の種類に応じてQlimitを決定してもよい。例えば、溶融金属が1.0質量%以上のCを含む高炭素鋼である場合において、前記上限値Qlimitを下記式(1)に基づいて決定してもよい。
limit=1.28×V+1.49 ・・・ (1)
ここで、Qlimitは局所熱流束(MW/m)であり、Vは鋳造速度(m/min)である。
【0042】
上述の通り、S22を行うタイミングは連続鋳造前であってもよいし、連続鋳造時であってもよいし、連続鋳造前と連続鋳造時との両方であってもよい。S22においては、連続鋳造時の鋳造速度Vの変化に応じて、連続鋳造時にQlimitを変化させてもよい。
【0043】
2.2.3 S23
S23は上記のS2と同様とすればよい。
【0044】
2.2.4 S24
S24においては、連続鋳造時に、S22において特定した上限値Qlimitと、S23において温度センサーによって求められた局所熱流束Qと、を比較して、ブレークアウトに至る可能性の判定を行う。
【0045】
上述の通り、部分Pにおける厚みTが薄くなり過ぎると、ブレークアウトの可能性が高まる。ここで、厚みTと局所熱流束Qとの間には明確な相関関係があり、局所熱流束Qが大きいほど厚みTが薄くなる。この点、本開示の方法においては、S22において特定した上限値Qlimitと、S23において温度センサーによって求められた局所熱流束Qと、を比較して、局所熱流束Qが大き過ぎる場合(例えば、局所熱流束Qが上限値Qlimitを上回っている場合、或いは、上限値Qlimit以上である場合)に、部分Pにおける厚みTが薄くなり過ぎていると判定し、ブレークアウトに至る可能性があるものと判定してもよい。
【0046】
2.2.5 その他の工程
尚、第2形態に係る連続鋳造方法においても、第1形態に係る連続鋳造方法と同様に、S24においてブレークアウトに至る可能性があるものと判定された場合に、鋳造速度を低速化したり、鋳型の冷却量(抜熱量)を増加させること等によって凝固シェルの成長を促すことで、ブレークアウトの発生を防止することができる。すなわち、本開示の方法は、上記のブレークアウトの判定に基づいて鋳造速度を制御すること、を含んでいてもよいし、上記のブレークアウトの判定に基づいて鋳型の冷却量を制御すること、を含んでいてもよい。
【0047】
以上の通り、第1形態及び第2形態のいずれの連続鋳造方法においても、ブレークアウトを精度よく予知することが可能である。
【0048】
3.補足
本開示の技術において、連続鋳造対象である溶融金属の種類に特に制限はない。溶融金属は溶鋼であってもよいし、溶鋼以外の溶融金属であってもよい。
【0049】
本開示の技術において、鋳型内に生成した凝固シェルの部分のうち、浸漬ノズルからの吐出流が衝突する部分P以外の部分については、凝固シェルの厚みを推定しても推定しなくてもよい。凝固シェルの厚みを推定する場合、本開示の方法と同じようにして当該厚みを推定してもよい。
【実施例
【0050】
以下、実施例を示しつつ本開示の技術による効果等について、より詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例では、1.0質量%以上のCを含む高炭素鋼の連続鋳造方法を例示するが、本開示の技術において連続鋳造対象である溶融金属の種類は特に限定されるものではない。また、その他の連続鋳造条件についても以下の条件に限定されるものではない。
【0051】
1.連続鋳造試験条件
下記条件にて連続鋳造試験を実施した。鋳造対象は下記表1に示す組成を有する溶鋼(軌条鋼)である。各試験において、鋳造速度はいずれも1m/minであり、鋳型のサイズは幅600mm×厚み100mmであり、浸漬ノズルの位置は鋳型幅方向及び厚み方向の中央であり、浸漬ノズルの吐出口角度は上向き10°である。また、短辺中央部に設置した温度センサー(FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバ・ブラッグ・グレーティング)センサー:光ファイバー利用温度センサー)によって、鋳造方向に47mm間隔で鋳型銅板の温度の測定が可能である。
【0052】
【表1】
【0053】
上記の連続鋳造試験において、鋳型の一方側の短辺において凝固シェルが拘束しブレークアウトが発生した。この時、鋳型の他方側の短辺から健全な凝固シェルを取得することができた。取得した凝固シェルについて、厚み中央部での切断面を図4に示す。この凝固シェルの厚み分布と鋳型短辺における熱流束とを比較した。
【0054】
2.解析
強い吐出流が鋳型短辺側に衝突することで、溶鋼からの熱伝達係数が上昇し、その個所の熱流束が周囲に比べ上昇すると考え、局所熱流束をメニスカスからの距離で整理した。横軸にメニスカスからの距離、縦軸に局所熱流束をとったものを以下、局所熱流束プロフィールと呼ぶ。局所熱流束の算出は、溶鋼からの距離の異なる2本のFEBセンサーの測定温度の差をセンサー間距離で除し、銅板の熱伝導率を乗じることで行った(下記式I)。銅板熱伝達率にはメーカー公表値である352MW/m・Kを使用した。
【0055】
【数1】
ここで、qは局所熱流束(MW/m)、kcuは銅板熱伝達率(MW/m・K)、dはセンサー間距離(m)、T及びTはセンサー温度(K)である。
【0056】
瞬間的な偏流を捉えられるかの検証のために、所定の時刻における局所熱流束プロフィールと凝固シェル厚みとを比較した。図5に取得した凝固シェルの厚み分布を示す。図5に示されるように、メニスカスから200mm付近から600mm付近まで、凝固シェルの厚みの実測値が理論値に比べて薄くなっており、吐出流により再溶解が生じていると思われる。
【0057】
当該凝固シェルが生成された際の局所熱流束プロフィールを図6に示す。図6に示される局所熱流束は5秒ごとの時間平均であり、ブレークアウト直前までの25秒間のものである。図6を見ると152秒から162秒までの間、メニスカスから約300mmの位置で局所熱流束の上昇が確認できる。このメニスカスから約300mmの位置で局所熱流束の時間変化を図7に示す。ブレークアウト直前の14秒間、局所熱流束が増加しており、この14秒間に鋳造した長さは約250mmである。凝固シェルにおいて再溶解していると思われる部分は200~600mmの400mmであり、強い吐出流によって、吐出流の衝突位置の上下の凝固シェルも影響を受けたと考えると矛盾しない結果である。
【0058】
以上の結果から、吐出流が凝固シェルに衝突する位置の局所熱流束を、一定時間ごとに算出して、その変化を監視することで、吐出流の影響を捉えることができることが分かった。
【0059】
ここで、ブレークアウトに至る限界熱流束の算出のために、凝固シェル厚みと局所熱流束の値を整理する。整理のため、以下の手法によって湯面から286mmの地点(以下、「地点A」という)における凝固シェル厚みを算出した。図8に凝固シェル厚みの理論値と実測値の差を示す。当該理論値と実測値との差は、吐出流による影響の経時変化と対応する。以下、地点Aでこの差分だけ再溶解したと仮定して、地点Aでの凝固シェル厚みと局所熱流束の関係を図9及び10に整理した。図9に示されるように、地点Aにおいては、局所熱流束の実測値が変動し、それに伴って、凝固シェル厚みも変動している。図10のように凝固シェル厚みと局所熱流束の関係を見ると、下記式(II)のような1次式によって整理することが可能である。
【0060】
【数2】
【0061】
上記式(II)から、例えば、凝固シェル厚みが0mmとなるのは、局所熱流束が約2.8MW/mとなるときである。すなわち、本実施例における連続鋳造条件においては、鋳造速度が1.0m/minの場合、局所熱流束が約2.8MW/mを超えた際に、ブレークアウトに至る可能性があると判定してもよい。
【0062】
局所熱流束は鋳造速度が増えるにつれ、増大するものと考えられる。すなわち、ブレークアウトに至る限界の局所熱流束Qlimitを考える際には、鋳造速度の影響を考慮することが好ましい。そこで、他の試験から鋳造速度と地点Aでの局所熱流束とを整理した(図11)。その結果、局所熱流束Qの平均値Qaveと鋳造速度Vとは以下の関係式(III)によって整理できることがわかった。
【0063】
【数3】
【0064】
ブレークアウトに至る限界の局所熱流束Qlimitにおいても傾きが等しいとして、鋳造速度が変わったときのQlimitは以下の式(IV)によって定められる。当該式(IV)は、1.0質量%以上のCを含む高炭素鋼を連続鋳造する場合に適用可能と考えられる。
【0065】
【数4】
【0066】
3.まとめ
以上の通り、温度センサー(FBGセンサー)を内蔵した鋳型を用いて鋳造試験を実施し、その際得られた測温データから、鋳型短辺の局所熱流束プロフィールを算出することで、凝固シェルの再溶解が見られた時刻に吐出流衝突位置の熱流束が上昇していることがわかった。吐出流衝突位置における局所熱流束Qと凝固シェル厚みTとの間には明確な相関関係があり、当該関係から、吐出流衝突位置における凝固シェル厚みを精度よく推定することができるといえる。局所熱流束Qと凝固シェル厚みTとの関係は、例えば、1次式によって整理することができる。また、当該凝固シェルの厚みTの推定値が所定の範囲から外れて薄くなった場合にブレークアウトに至る可能性があるものと判定することで、ブレークアウトの発生を精度よく予知することができるといえる。或いは、当該凝固シェル厚みTの推定値が所定の範囲内となる局所熱流束Qの上限値Qlimitを求め、局所熱流束の実測値Qと当該上限値Qlimitとを比較して、例えば、当該実測値Qが当該上限値Qlimitを超えた場合にブレークアウトに至る可能性があるものと判定することで、ブレークアウトの発生を精度よく予知することができるといえる。尚、鋳造速度Vによって局所熱流束Qの上限値Qlimitが変化し得ることから、例えば、鋳造速度Vと上限値Qlimitとの関係を整理したうえで、Vに応じてQlimitを特定することが好ましいといえる。VとQlimitとの関係は、例えば、1次式によって整理することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11