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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20241107BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20241107BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/64
A47C7/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021058096
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022058120
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】63/085,211
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】田代 正人
(72)【発明者】
【氏名】河田 和也
(72)【発明者】
【氏名】朴 喜赫
(72)【発明者】
【氏名】山口 貢載
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-202794(JP,A)
【文献】特開2015-198683(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084283(WO,A1)
【文献】特開2016-078793(JP,A)
【文献】特開2018-176942(JP,A)
【文献】特開2018-034730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0214166(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102004043490(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/22
B60N 2/64
A47C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座するシート本体と、
前記シート本体の内部に取り付けられ、前記シート本体の一部を前記着座者側へ突出させるために可動する可動体と、を備えた乗り物用シートであって、
前記シート本体は、骨格となるシートフレームを備え、
前記シートフレームは、
シート幅方向の左右側方に配置され、所定方向に延びているサイドフレームと、
左右の前記サイドフレームの延出方向の端部を連結する連結フレームと、
前記連結フレームとは前記サイドフレームの延出方向において異なる位置に配置され、左右の前記サイドフレームを連結する第2連結フレームと、
前記連結フレーム及び前記第2連結フレームを連結する連結部材と、を有し、
前記可動体は、前記連結部材に取り付けられていることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項2】
前記シート本体は、前記シートフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆されて構成され、
前記可動体は、
前記シート本体のシート幅方向のサイド部において前記クッション材の裏面に設けられ、前記シート本体のサイド部を前記着座者側へ突出させるために可動し、
前記連結部材のうち、前記第2連結フレームが連結された部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用シート。
【請求項3】
前記シートフレームは、シートバックの骨格となるバックフレームを有し、
前記サイドフレームは、上下方向に延びているバックサイドフレームであって、
前記連結フレームは、左右の前記バックサイドフレームの上端部を連結する上部フレームであって、
前記連結部材は、上下方向に延出し、前記上部フレームと前記第2連結フレームとに架け渡されていることを特徴とする請求項2に記載の乗り物用シート。
【請求項4】
前記可動体は、前記バックフレームのシート幅方向の左右側方に配置され、
左右の前記可動体は、
前記バックフレームの左右側方に設けられた前記連結部材にそれぞれ取り付けられ、
前記連結部材からシート幅方向の外側に突出するように延びていることを特徴とする請求項3に記載の乗り物用シート。
【請求項5】
前記連結部材は、前記可動体を支持する支持面を有し、
前記支持面が、前記可動体の延出方向に沿って延びて前記可動体を支持していることを特徴とする請求項4に記載の乗り物用シート。
【請求項6】
前記可動体は、流体が封入されることで膨出する複数の袋体を有し、
前記複数の袋体は、シート前後方向において異なる位置に配置され、それぞれ異なる大きさから構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【請求項7】
前記可動体は、
前記連結部材に支持されるベース部材と、
前記ベース部材よりもシート前方位置に配置され、前記ベース部材に支持される複数の袋体と、
前記ベース部材よりもシート前方位置に配置され、前記ベース部材に対して回動軸を介して回動可能となるように取り付けられる回動部材と、を有し、
前記複数の袋体は、前記ベース部材及び前記回動部材の間に配置され、
前記回動部材は、前記複数の袋体が膨出することで、前記サイド部をシート前方側に突出させるように回動することを特徴とする請求項6に記載の乗り物用シート。
【請求項8】
前記バックフレームは、前記上部フレームに取り付けられ、ヘッドレストの本体を支持するピラーを取り付けるためのピラー取り付け部材を有し、
前記連結部材は、シート幅方向において前記ピラー取り付け部材よりも外側位置に配置されていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【請求項9】
前記バックフレームは、
着座者を支持する支持プレートと、
上下方向に延出し、前記第2連結フレーム及び前記支持プレートを連結する第2ワイヤ部材と、を有し、
前記連結部材は、シート幅方向において前記第2ワイヤ部材よりも内側に配置されていることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【請求項10】
前記クッション材の表面には、前記表皮材の端末を吊りこむための表皮吊り込み溝が形成され、
前記表皮吊り込み溝は、
シート幅方向の左右側方に配置され、上下方向に延びている吊り溝サイド部と、
左右の前記吊り溝サイド部の上部を連結するようにシート幅方向に延びている吊り溝上方部と、を有し、
前記連結部材は、前記吊り溝上方部よりも上方位置に配置されていることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートに係り、シート本体の一部を通常位置よりも着座者側へ突出させるために可動する可動体を備えた乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者が着座するシート本体の内部に取り付けられ、シート本体の一部(例えば、サイド部)を通常位置よりも着座者側へ突出させるために可動する可動体(例えば、ショルダサポート部材)を備えた車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
当該可動体を備えていることで、着座者の体格や嗜好に応じて車両用シートのホールド性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-148235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような車両用シートでは、シート本体のサイド部を着座者側へ突出させるための可動体(ショルダサポート部材)をより安定して動作させることが求められていた。また、車両用シートにおいて可動体を含む構成部品を極力コンパクトに配置することが求められていた。
【0005】
また、可動体がシート本体のサイド部を着座者側へ突出させたときに、意図せずにシート本体の表面に(具体的には、表皮材に)シワやダブつきが生じてしまうことがあり、そうすると車両用シートの外観を損なう虞があった。
例えば、可動体がシート本体のサイド部を着座者側へ突出させたときに、シート本体の中央部とサイド部の境界部分(具体的には、表皮吊り込み溝に相当する部分)において表皮材のシワやダブつきが顕著に生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シート本体に取り付けられた可動体を安定して動作させることが可能な乗り物用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、乗り物用シートの構成部品をコンパクトに配置することが可能な乗り物用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シート本体の一部を着座者側へ突出させた場合であっても、シート本体の表面にシワやダブつきが生じることを抑制することが可能な乗り物用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シート本体の中央部とサイド部の境界部分(表皮吊り込み溝に相当する部分)において表皮材のシワやダブつきが生じることを抑制することが可能な乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗り物用シートによれば、着座者が着座するシート本体と、前記シート本体の内部に取り付けられ、前記シート本体の一部を前記着座者側へ突出させるために可動する可動体と、を備えた乗り物用シートであって、前記シート本体は、骨格となるシートフレームを備え、前記シートフレームは、シート幅方向の左右側方に配置され、所定方向に延びているサイドフレームと、左右の前記サイドフレームの延出方向の端部を連結する連結フレームと、前記連結フレームとは前記サイドフレームの延出方向において異なる位置に配置され、左右の前記サイドフレームを連結する第2連結フレームと、前記連結フレーム及び前記第2連結フレームを連結する連結部材と、を有し、前記可動体は、前記連結部材に取り付けられていること、により解決される。
上記構成により、シート本体に取り付けられた可動体を安定して動作させることが可能な乗り物用シートを実現することができる。
具体的には、可動体が、シートフレームにおいて比較的剛性が高い構成部品となる連結部材に取り付けられている。そのため、可動体に対して着座者による荷重が加わった場合であっても、可動体の変形を抑制することができる。その結果、可動体を安定して動作させることができる。
【0008】
このとき、前記シート本体は、前記シートフレームにクッション材を載置して表皮材で被覆されて構成され、前記可動体は、前記シート本体のシート幅方向のサイド部において前記クッション材の裏面に設けられ、前記シート本体のサイド部を前記着座者側へ突出させるために可動し、前記連結部材のうち、前記第2連結フレームが連結された部分に取り付けられていると良い。
上記構成により、可動体が、シートフレームにおいて一層剛性が高い部分に取り付けられることになる。そのため、可動体を一層安定して動作させることができる。
【0009】
このとき、前記シートフレームは、シートバックの骨格となるバックフレームを有し、前記サイドフレームは、上下方向に延びているバックサイドフレームであって、前記連結フレームは、左右の前記バックサイドフレームの上端部を連結する上部フレームであって、前記連結部材は、上下方向に延出し、前記上部フレームと前記第2連結フレームとに架け渡されていると良い。
上記構成により、シートバックにおいて可動体を安定して動作させることができる。また、シートバックにおいて乗り物用シートの構成部品(可動体、連結部材)をコンパクトに配置することも可能となる。
【0010】
このとき、前記可動体は、前記バックフレームのシート幅方向の左右側方に配置され、左右の前記可動体は、前記バックフレームの左右側方に設けられた前記連結部材にそれぞれ取り付けられ、前記連結部材からシート幅方向の外側に突出するように延びていると良い。
上記構成により、可動体をシートバックのサイド部にコンパクトに配置することができ、また可動体を好適に動作させることができる。
【0011】
このとき、前記連結部材は、前記可動体を支持する支持面を有し、前記支持面が、前記可動体の延出方向に沿って延びて前記可動体を支持していると良い。
上記構成により、可動体を一層安定して動作させることができる。
【0012】
このとき、前記可動体は、流体が封入されることで膨出する複数の袋体を有し、前記複数の袋体は、シート前後方向において異なる位置に配置され、それぞれ異なる大きさから構成されていると良い。
上記構成により、位置及び大きさの異なる複数の袋体を膨出させることで、可動体によるシートバックの突出向きや突出量を調整することができる。
また上記構成により、シートバックのサイド部の突出向きや突出量を調整することで、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制できる。
【0013】
このとき、前記可動体は、前記連結部材に支持されるベース部材と、前記ベース部材よりもシート前方位置に配置され、前記ベース部材に支持される複数の袋体と、前記ベース部材よりもシート前方位置に配置され、前記ベース部材に対して回動軸を介して回動可能となるように取り付けられる回動部材と、を有し、前記複数の袋体は、前記ベース部材及び前記回動部材の間に配置され、前記回動部材は、前記複数の袋体が膨出することで、前記サイド部をシート前方側に突出させるように回動すると良い。
上記構成により、可動体が連結部材に好適に支持される。その結果、可動体の可動動作(複数の袋体の膨出展開)を安定させることができる。また、可動体の可動動作が安定することで、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制するように調整することもできる。
また上記のように回動部材を備えていることで、可動体の可動動作を一層安定させることができる。
【0014】
このとき、前記バックフレームは、前記上部フレームに取り付けられ、ヘッドレストの本体を支持するピラーを取り付けるためのピラー取り付け部材を有し、前記連結部材は、シート幅方向において前記ピラー取り付け部材よりも外側位置に配置されていると良い。
上記構成により、可動体とピラーの干渉を抑制することができる。また、乗り物用シートのシート前後方向の大型化を抑制することもできる。
【0015】
このとき、前記バックフレームは、着座者を支持する支持プレートと、上下方向に延出し、前記第2連結フレーム及び前記支持プレートを連結する第2ワイヤ部材と、を有し、前記連結部材は、シート幅方向において前記第2ワイヤ部材よりも内側に配置されていると良い。
上記構成により、可動体と第2ワイヤ部材の干渉を抑制することができる。また、乗り物用シートのシート前後方向の大型化を抑制することもできる。
【0016】
このとき、前記クッション材の表面には、前記表皮材の端末を吊りこむための表皮吊り込み溝が形成され、前記表皮吊り込み溝は、シート幅方向の左右側方に配置され、上下方向に延びている吊り溝サイド部と、左右の前記吊り溝サイド部の上部を連結するようにシート幅方向に延びている吊り溝上方部と、を有し、前記連結部材は、前記吊り溝上方部よりも上方位置に配置されていると良い。
上記構成により、上下方向において可動体及び連結部材と、表皮吊り込み溝とが離れた位置に配置されることになる。そのため、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制することができる。
詳しく説明すると、可動体がシート本体のサイド部を着座者側へ突出させるとき、一般に表皮吊り込み溝の周辺において表皮材にシワやダブつきが顕著に生じることが分かっている。そのため、当該周辺において表皮材にシワやダブつきが生じないように配慮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シート本体に取り付けられた可動体を安定して動作させることが可能な乗り物用シートを実現することができる。
また本発明によれば、可動体が、シートフレームにおいて一層剛性が高い部分に取り付けられることになる。そのため、可動体を一層安定して動作させることができる。
また本発明によれば、シートバックにおいて乗り物用シートの構成部品(可動体、連結部材)をコンパクトに配置することができる。
また本発明によれば、可動体をシートバックのサイド部にコンパクトに配置することができ、また可動体を好適に動作させることができる。
また本発明によれば、位置及び大きさの異なる複数の袋体を膨出させることで、可動体によるシートバックの突出向きや突出量を調整することができる。また、シートバックのサイド部の突出向きや突出量を調整することで、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制できる。
また本発明によれば、可動体が連結部材に好適に支持される。その結果、可動体の可動動作(複数の袋体の膨出展開)を安定させることができる。また、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制するように調整できる。
また本発明によれば、可動体とピラーの干渉を抑制することができる。また、可動体と第2ワイヤ部材の干渉を抑制することもできる。また、乗り物用シートのシート前後方向の大型化を抑制することもできる。
また本発明によれば、シートバックの表皮材にシワやダブつきが生じることを抑制することができる。特に、表皮吊り込み溝の周辺において表皮材のシワやダブつきが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の乗り物用シートの外観斜視図である。
図2】骨格となるシートフレームを示す斜視図である。
図3】シートフレームを示す正面図である。
図4】乗り物用シートを示す正面図であって、可動体及び連結部材と、表皮吊り込み溝との位置関係を説明する図である。
図5A図1のV-V断面図であって、可動体が可動しておらず、シートバックのサイド部が「通常位置」いる状態を説明する図である。
図5B】可動体が可動し、シートバックのサイド部が「突出位置」にいる状態を説明する図である。
図6A】可動体の変形例1を示す図であって、シートバックのサイド部が「通常位置」いる状態を説明する図である。
図6B】シートバックのサイド部が「突出位置」にいる状態を説明する図である。
図7A】可動体の変形例2を示す図であって、シートバックのサイド部が「通常位置」いる状態を説明する図である。
図7B】シートバックのサイド部が「突出位置」にいる状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について図1図7A、Bを参照して説明する。
本実施形態は、シート本体の内部に取り付けられ、シート本体のシート幅方向のサイド部を着座者側へ突出させるために可動する可動体を備えた乗り物用シートであって、シートフレームは、シート幅方向の左右側方に配置され、所定方向に延びているサイドフレームと、左右のサイドフレームの延出方向の端部を連結する連結フレームと、連結フレームとは異なる位置に配置され、左右のサイドフレームを連結する第2連結フレームと、連結フレーム及び第2連結フレームを連結する連結部材とを有しており、可動体が連結部材に取り付けられていることを主な特徴とする乗り物用シートの発明に関するものである。
なお、乗り物用シートのシートバックに対して着座者が着座する側がシート前方側となる。
【0020】
本実施形態の乗り物用シートSは、図1に示すように、車両用シートであって、シートクッション1と、シートバック2と、ヘッドレスト3とを備えるシート本体と、シートバック2の内部に取り付けられ、シートバック2のサイド部2Bを「通常位置」と、通常位置よりも着座者側へ突出させた「突出位置」との間で移動させるために可動する可動体30(ショルダサポート部材)と、可動体30を可動させるために作動する作動装置40(流体供給装置)と、を備えている。
【0021】
シートクッション1は、図1に示すように、着座者を下方から支持する着座部であって、骨格となる図2に示すクッションフレーム10上にクッション材1aを載置して表皮材1bで被覆されて構成されている。
シートクッション1は、シート幅方向の中央部分にある中央部1Aと、中央部1Aのシート幅方向の外側にある左右のサイド部1B(サイドボルスター部)と、から構成されている。
クッション材1aは、発泡ウレタン等からなるパッド部材である。
クッション材1aの表面上には、中央部1Aと左右のサイド部1Bを区分けするようにシート前後方向に延びている左右の表皮吊り込み溝1aaが形成されている。
【0022】
シートバック2は、図1図4に示すように、着座者の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となる図2に示すバックフレーム20にクッション材2aを載置して表皮材2bで被覆されて構成されている。
シートバック2は、シート幅方向の中央部分にある中央部2Aと、中央部2Aのシート幅方向の外側にある左右のサイド部2B(サイドボルスター部)と、から構成されている。
クッション材2aの表面上には、中央部2Aと左右のサイド部2Bを区分けするように上下方向に延びている左右の吊り溝サイド部2aa(表皮吊り込み溝)と、左右の吊り溝サイド部2aaの上部を連結するようにシート幅方向に延びている吊り溝上方部2ab(表皮吊り込み溝)とが形成されている。
【0023】
ヘッドレスト3は、図1図4に示すように、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となるピラー3cにクッション材3aを載置して表皮材3bで被覆されて構成されている。
なお、図4に示すように、バックフレーム20の上部には、ヘッドレスト3の本体を支持するピラー3cを取り付けるためのピラー取り付け部材29が組み付けられている。
【0024】
クッションフレーム10は、図2に示すように、略矩形状の枠状体からなり、左右側方に配置されるクッションサイドフレーム11と、各クッションサイドフレーム11の前端部分に架設される板状のパンフレーム12(架設フレーム)と、各クッションサイドフレーム11の後方部分を連結する後方連結フレーム13と、パンフレーム12及び後方連結フレーム13に掛け止めされ、シート前後方向に蛇状に延びている複数の弾性バネ14(弾性支持部材)と、から主に構成されている。
【0025】
クッションサイドフレーム11は、シート前後方向に長尺な板状フレームである。
なお、クッションサイドフレーム11の後方部分にはリクライニング装置4が取り付けられており、その下方部分にはハイトリンク装置5を介してレール装置6が取り付けられている。
【0026】
バックフレーム20は、図2図4に示すように、略矩形状の枠状体からなり、左右側方に配置されるバックサイドフレーム21と、各バックサイドフレーム21の上端部分を連結する逆U字形状の上部フレーム22と、各バックサイドフレーム21の下端部分を連結するプレート形状の下部フレーム23と、上下方向に延出し、下部フレーム23に掛け止めされる複数のワイヤ部材24(弾性ワイヤ)と、複数のワイヤ部材24によって保持され、着座者を支持する支持プレート25と、から主に構成されている。
また、バックフレーム20は、上部フレーム22とはバックサイドフレーム21の延出方向において異なる位置に配置され、左右のバックサイドフレーム21の上方部分を連結する第2連結フレーム26(クロスメンバ)と、上部フレーム22及び第2連結フレーム26を連結する連結部材27(連結ブラケット)と、上下方向に延出し、第2連結フレーム26及び支持プレート25を連結する第2ワイヤ部材28と、を備えている。
さらに、バックフレーム20は、上部フレーム22のシート幅方向の中央部分に取り付けられ、ヘッドレスト3のピラー3cを取り付けるためのピラー取り付け部材29をさらに備えている。
【0027】
バックサイドフレーム21は、上下方向に延出し、横断面略C字形状からなる板金部材であって、その下端部分がリクライニング装置4を介してクッションサイドフレーム11の後端部分に連結されている。
上記構成においてバックフレーム20は、クッションフレーム10に対して相対回動することが可能となっている。
【0028】
連結部材27は、上下方向に延出し、横断面略矩形状からなるブラケットであって、上部フレーム22の前面と第2連結フレーム26の前面とに架け渡されている。
連結部材27は、シート幅方向に所定の間隔を空けて左右に配置されている。
左右の連結部材27の前面には、それぞれ左右の可動体30が取り付けられている。
【0029】
上記構成において、図3に示すように、連結部材27は、シート幅方向においてピラー取り付け部材29よりも外側位置に配置されている。
そのため、連結部材27に取り付けられる可動体30と、ピラー取り付け部材29に取り付けられるピラー3cとの干渉を抑制することができる。また、乗り物用シートSのシート前後方向の大型化を抑制することもできる。
【0030】
上記構成において、図3に示すように、連結部材27は、シート幅方向において第2ワイヤ部材28よりも内側に配置されている。
そのため、連結部材27に取り付けられる可動体30と、第2ワイヤ部材28との干渉を抑制することができる。また、乗り物用シートSのシート前後方向の大型化を抑制することもできる。
【0031】
上記構成において、図4に示すように、連結部材27は、表皮吊り込み溝(吊り溝上方部2ab)よりも上方位置に配置されている。
そのため、連結部材27に取り付けられる可動体30と、表皮吊り込み溝(吊り溝上方部2ab)とが上下方向において離れた位置に配置されることになる。そのため、シートバック2の表皮材2bにシワやダブつきが生じることを抑制できる。
詳しく説明すると、可動体30がシートバック2のサイド部2Bをシート前方側へ突出させるとき、一般に表皮吊り込み溝の周辺において表皮材2bにシワやダブつきが顕著に生じることが分かっている。そのため、当該周辺において表皮材2bにシワやダブつきが生じないように配慮することができる。
【0032】
可動体30は、図2図5A、Bに示すように、流体が封入されることで膨出する袋体(エアセル)を有し、流体としての圧縮空気が封入されることで着座者側へ膨出し(通常位置から突出位置へ突出し)、封入された圧縮空気が排出されることで収縮する(通常位置へ戻る)ものである。
具体的には、可動体30は、シートバック2の上方部分のサイド部2Bにおいてクッション材2aの裏面に取り付けられ、サイド部2Bを着座者側へ突出させるために可動するショルダサポート部材である。
可動体30は、シート幅方向に所定の間隔を空けて左右に配置され、それぞれ連結部材27の前面に取り付けられている。詳しく述べると、連結部材27の前面のうち、第2連結フレーム26が連結された重なり部分に取り付けられている。
なお、可動体30は折り畳まれた状態で取り付けられている。
【0033】
可動体30は、シート幅方向に長尺な略五角形状を有しており、連結部材27からシート幅方向の外側に突出するように延びている。
詳しく述べると、可動体30は、連結部材27に支持されるベース部材31と、ベース部材31よりもシート前方位置に配置され、ベース部材31の前面に支持される複数の袋体32と、から主に構成されている。
【0034】
ベース部材31は、シート幅方向に長尺なプレート部材であって、連結部材27の前面と、バックサイドフレーム21の前面とに架け渡されている(連結されている)。
複数の袋体32は、ベース部材31によって支持されており、折り畳まれた状態から圧縮空気が封入されることでシート前方側に膨出することができる。
なお、複数の袋体32は、ベース部材31の前面のうち、シート幅方向の内側端部に設けられた取り付け部材33によってベース部材31に取り付けられている。
【0035】
複数の袋体32は、シート前後方向及びシート幅方向において異なる位置に配置され、それぞれ異なる大きさから構成されている。
詳しく述べると、複数の袋体32は、3つの袋体から構成され、複数の袋体32のうち、最もシート前方側に位置する第1袋体32aが、その他の袋体よりも容量が最も小さく構成されている。そして、第2袋体32bの容量が最も大きく構成されており、第3袋体32cの容量が中程度となっている。
上記構成により、位置及び大きさの異なる複数の袋体32を膨出させることで、シートバック2(サイド部2B)の突出向きや突出量を調整することができる。
また、シートバック2のサイド部2Bの突出向きや突出量を調整することで、シートバック2の表皮材2bにシワやダブつきが生じることを抑制できる。
【0036】
上記構成において、可動体30は、シートバック2のサイド部2B(肩部)を、図5Aに示す「通常位置」から図5Bに示す「突出位置」へ移動させるために可動する(膨出する)ことができる。以下、詳しく説明する。
【0037】
図5Aは、シートバック2の横断面図であって、シートバック2のサイド部2Bが「通常位置」にいる状態を示す図である。
可動体30は、シート前後方向においてバックフレーム20と表皮材2bの間に配置されている。具体的には、連結部材27の前面に取り付けられており、クッション材2aの裏面に配置されている。
【0038】
シートバック2の内部においてクッション材2aよりも後方位置には、複数の袋体32(エアセル)に対し圧縮空気を供給する作動装置40(流体供給装置)が配置されている。
作動装置40は、バックフレーム20の中央部分の所定位置に取り付けられている。具体的には、圧縮空気を供給(給気)及び排出(排気)可能な空気ポンプ41と、空気ポンプ41及び可動体30(袋体32)を接続する空気配管42と、から主に構成されている。
【0039】
なお、作動装置40は、例えば不図示の制御装置から所定の制御信号を受信することで、袋体32に圧縮空気を供給することや、袋体32から圧縮空気を排出することができる。このとき、制御装置は、着座者による所定のユーザ操作の選択を受け付けて上記制御信号を送信すると良い。
そうすることで、着座者の体格に応じて可動体30の可動範囲を調整することが可能となる。
【0040】
図5Bは、可動体30(袋体32)がシート前方へ突出し、シートバック2のサイド部2Bが「通常位置」から「突出位置」に移動した状態を示す図である。
具体的には、作動装置40から圧縮空気の供給を受けることで、折り畳まれた状態の袋体32がシート前方へ膨出展開することで、サイド部2Bがシート前方へ移動する。その結果、シートバック2のサイド部2Bが「突出位置」に移動する。
なお、作動装置40によって袋体32の内部にある圧縮空気が排出されることで、膨らんだ状態の袋体32が収縮し、サイド部2Bがシート後方へ下がる。その結果、シートバック2のサイド部が「突出位置」から「通常位置」に戻る。
【0041】
上記構成において、図5Bに示すように、可動体30(袋体32)によって、シートバック2のサイド部がシート前方かつシート幅方向の内側に突出するように構成されている。
特に、シートバック2の左右の肩部が、シート前方かつシート幅方向の内側斜め下側に突出するように構成されている。
そうすることで、着座者の着座フィーリングを高めることができる。
【0042】
<可動体の変形例1>
次に、「可動体」の変形例1について、図6A、Bに基づいて説明する。
なお、上述の乗り物用シートSと重複する内容については説明を省略する。
可動体130は、ベース部材131と、ベース部材131よりもシート前方位置に配置され、ベース部材131に対して回動軸132を介して回動可能となるように取り付けられる回動部材133と、ベース部材131及び回動部材133の間に配置され、ベース部材131の前面に支持される1つの袋体134と、から主に構成されている。
【0043】
ベース部材131は、連結部材127の前面と、バックサイドフレーム121の前面とに架け渡されている。
回動軸132は、ベース部材131の前面のうち、シート幅方向の内側端部に取り付けられている。言い換えれば、ベース部材131と連結部材127が重なった部分に取り付けられている。
回動部材133は、ベース部材131に対してシート前後方向に回動可能に取り付けられており、シート前方に向かって回動することでシートバック102のサイド部102Bをシート前方側へ突出させる(押し出す)ことができる。
なお、回動部材133は、シートバック102が通常位置のときには、ベース部材131側に寄らせた位置に配置されている。不図示の付勢バネ(付勢部材)によってベース部材131側に付勢されていても良い。
【0044】
袋体134は、ベース部材131によって支持されており、圧縮空気が封入されることでシート前方側に膨出し、回動部材133をシート前方に向かって押し出すことができる。すなわち、回動部材133をシート前方に回動させることができる。
【0045】
図6Bは、可動体130(回動部材133)がシート前方へ突出し、シートバック102のサイド部102Bが「通常位置」から「突出位置」に移動した状態を示す図である。
具体的には、作動装置140から圧縮空気の供給を受けることで、折り畳まれた状態の袋体134がシート前方へ膨出展開し、回動部材133をシート前方に向かって押し出すことで、サイド部102Bがシート前方へ移動する。その結果、サイド部102Bが「突出位置」に移動する。
【0046】
<可動体の変形例2>
次に、「可動体」の変形例2について、図7A、Bに基づいて説明する。
可動体230は、連結部材227の前面に支持される複数の袋体231から構成されている。
複数の袋体231は、連結部材227の前面と、バックサイドフレーム121の前面とに架け渡されている。
このとき、連結部材227は、可動体230(袋体231)を支持する支持面227aを有しており、支持面227aが、袋体231の延出方向に沿って延びて袋体231を支持している。言い換えれば、支持面227aと袋体231が、シート幅方向に沿って重なるように配置されている。
【0047】
複数の袋体231は、3つの袋体からなり、シート前後方向及びシート幅方向において異なる位置に配置され、それぞれ異なる大きさから構成されている。
なお、複数の袋体231は、連結部材227の支持面227aのうち、シート幅方向の内側端部に設けられた取り付け部材232によって連結部材227に取り付けられている。
【0048】
図7Bは、可動体230(袋体231)がシート前方へ突出し、シートバック202のサイド部202Bが「通常位置」から「突出位置」に移動した状態を示す図である。
具体的には、折り畳まれた状態の袋体231がシート前方へ膨出展開することで、サイド部202Bがシート前方へ移動する。その結果、シートバック202のサイド部202Bが「突出位置」に移動する。
【0049】
<その他の別実施形態>
上記実施形態では、図1に示すように、可動体30が、シートバック2の上方部分に取り付けられているが、特に限定されることなく、シートバック2の中央部分に取り付けられていても良いし、シートバック2の下方部分に取り付けられていても良い。
あるいは、可動体30が、シートクッション1に取り付けられていても良い。
【0050】
上記実施形態では、図5A、Bに示すように、可動体30が袋体(エアセル)、作動装置40が流体供給装置として構成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、「可動体」及び「作動装置」が、機械的機構によって構成されていても良い。具体的には、「可動部材」がリンク機構やヒンジ機構等によって可動するように構成され、「作動装置」がモータ式や油圧式の駆動装置等によって構成されていても良い。
【0051】
上記実施形態では、図5A、Bに示すように、可動体30がクッション材2aの裏面側に配置されているが、特に限定されることなく、クッション材2aの表面側に配置されていても良い。
【0052】
上記実施形態のほか、クッション材2aのうち、可動体30に対向する部分には、シート前後方向に貫通した複数の貫通穴が形成されていても良い。
このとき、複数の貫通穴と、連結部材27とが、シート幅方向において重なる位置に設けられていると好ましい。あるいは、複数の貫通穴が、シート幅方向において連結部材27よりも外側位置に配置されていると好ましい。
そうすることで、クッション材2aが好適に撓み易くなって、可動体30を安定して動作させることができる。
【0053】
上記実施形態のほか、左右の連結部材27と、左右の表皮吊り込み溝(吊り溝サイド部2aa)とが、シート幅方向において重なる位置に設けられていると好ましい。あるいは、左右の連結部材27が、シート幅方向において左右の表皮吊り込み溝(吊り溝サイド部2aa)よりも外側位置に配置されていると好ましい。
そうすることで、クッション材2aが好適に撓み易くなって、可動体30を安定して動作させることができる。
【0054】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、特に限定されることなく、二輪車用の二輪シート、電車やバス等の車両用シート、飛行機や船等の乗り物用シートのほか、作業用の事務イス、車イス、ショッピングカートの子供用イス等の種々のシートに対して利用することができる。
【0055】
本実施形態では、主として本発明に係る乗り物用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
S 乗り物用シート
Sa シートフレーム
1 シートクッション
1A、2A 中央部
1B、2B、102B、202B サイド部
1a、2a、3a クッション材
1aa 表皮吊り込み溝
1b、2b、3b 表皮材
2、102、202 シートバック
2aa 吊り溝サイド部(表皮吊り込み溝)
2ab 吊り溝サイド部(表皮吊り込み溝)
3 ヘッドレスト
3c ピラー
4 リクライニング装置
5 ハイトリンク装置
6 レール装置
10 クッションフレーム
11 クッションサイドフレーム
12 パンフレーム
13 後方連結フレーム
14 弾性バネ(弾性支持部材)
20 バックフレーム
21、121 バックサイドフレーム
22 上部フレーム(連結フレーム)
23 下部フレーム
24 ワイヤ部材
25 支持プレート
26 第2連結フレーム(クロスメンバ)
27、127、227 連結部材
227a 支持面
28 第2ワイヤ部材
29 ピラー取り付け部材
30 可動体(ショルダサポート部材)
31 ベース部材
32 袋体
32a~32c 第1袋体~第3袋体
33 取り付け部材
40、140 作動装置(流体供給装置)
41 空気ポンプ
42 空気配管
130、230 可動体
131 ベース部材
132 回動軸
133 回動部材
134 袋体
231 袋体
232 取り付け部材
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B