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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】部材装着装置、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241107BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61J3/00 310Z
A61J1/20 314B
A61J3/00 310C
A61J1/20 314C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021075867
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170026
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】河内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭市
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-311869(JP,A)
【文献】特開2019-063313(JP,A)
【文献】特開2020-069268(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品が収容された払出容器と当該払出容器から患者への前記薬品の投与に用いられる投与器具との接続を中継する中継部材を保持する保持部と、
前記保持部により保持された前記中継部材を前記払出容器に装着する部材装着処理部と、
を備える、部材装着装置。
【請求項2】
前記薬品を前記払出容器に注入する混注処理を実行する混注処理部を更に備え、
前記部材装着処理部は、前記混注処理部による前記薬品の前記払出容器への注入後に、前記中継部材を前記払出容器に装着する、
請求項1に記載の部材装着装置。
【請求項3】
前記混注処理部は、前記保持部を用いて前記混注処理を実行する、
請求項2に記載の部材装着装置。
【請求項4】
前記保持部は、注射器のシリンジを保持する第1保持部と、前記注射器のプランジャを保持する第2保持部と、前記中継部材を保持する第3保持部とを備える、
請求項3に記載の部材装着装置。
【請求項5】
前記部材装着処理部は、ユーザー操作に応じて前記混注処理ごとに前記払出容器への前記中継部材の装着の要否を切り替え可能である
請求項2~4のいずれかに記載の部材装着装置。
【請求項6】
前記部材装着処理部は、前記薬品の種類及び前記払出容器の種類のいずれか一方又は両方に基づいて、前記払出容器への前記中継部材の装着の要否を判断する、
請求項1~5のいずれかに記載の部材装着装置。
【請求項7】
前記中継部材は、閉鎖式薬物移送システムである、
請求項1~6のいずれかに記載の部材装着装置。
【請求項8】
前記払出容器は、口部がゴム栓で封止された輸液バッグであり、
前記部材装着処理部は、前記中継部材の穿刺部の前記ゴム栓への穿刺により当該中継部材を前記払出容器に装着する、
請求項1~7のいずれかに記載の部材装着装置。
【請求項9】
前記部材装着処理部は、前記穿刺部を前記ゴム栓に貫通させた後、前記穿刺部を前記ゴム栓から引き抜く第1方向に移動させる工程と前記穿刺部を前記第1方向の反対方向の第2方向に移動させる工程とをそれぞれ1回又は複数回実行する、
請求項8に記載の部材装着装置。
【請求項10】
前記部材装着処理部は、前記中継部材の穿刺部が露出した状態で当該中継部材の少なくとも一部を収容可能な収容部材で保持された前記中継部材を前記払出容器に装着した後、前記中継部材から前記収容部材を取り外す、
請求項1~9のいずれかに記載の部材装着装置。
【請求項11】
前記部材装着処理部は、前記払出容器が載置される第1領域と前記薬品を前記払出容器に注入する混注処理が実行される第2領域とを仕切る壁部に形成された開口部を介して前記中継部材を前記払出容器に装着するものであり、
前記部材装着装置は、少なくとも前記部材装着処理部により前記収容部材から前記中継部材が取り外される動作以後に、前記第1領域から前記第2領域に向けて送風する送風部を備える、
請求項10に記載の部材装着装置。
【請求項12】
前記部材装着装置への前記中継部材の装填に用いられるトレイに設けられ前記中継部材が載置される載置部を備え、
前記中継部材及び前記載置部には、前記中継部材が特定の姿勢である場合に相互に嵌合可能な嵌合部が設けられている、
請求項1~11のいずれかに記載の部材装着装置。
【請求項13】
前記薬品を前記払出容器に注入する混注処理を実行する混注処理部を備え、
前記載置部は、前記トレイにおいて薬品容器又は注射器が載置可能な複数の器材載置部のうちいずれか一又は複数の器材載置部に着脱可能である、
請求項12に記載の部材装着装置。
【請求項14】
一又は複数のプロセッサーに、
薬品が収容された払出容器と当該払出容器から患者への前記薬品の投与に用いられる投与器具との接続を中継する中継部材を保持する部材保持ステップと、
前記部材保持ステップにより保持された前記中継部材を前記払出容器に装着する部材装着ステップと、
を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品が注入された払出容器に中継部材を装着する部材装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアル瓶などの薬品容器に収容された抗がん剤などの薬品を注射器で吸引し、その薬品を輸液が収容された輸液バッグなどの払出容器に注入する混注処理を実行する混注装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、払出容器に収容されている薬品を患者に投与する投与作業の前準備として、払出容器と患者への投与に用いられる点滴器具などの投与器具との接続を中継する中継部材が払出容器に装着されることがある。例えば、中継部材は、閉鎖式薬物移送システムなどである。これにより、患者への薬品の投与作業の現場において、作業者は、投与器具と中継部材とを接続すればよいため、現場で投与器具を直接払出容器に接続する場合に比べて、現場における払出容器からの薬品漏れ、又は、作業者及び患者の被ばく等が抑止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、払出容器に収容されている薬品を患者に投与する投与作業の前準備として払出容器に中継部材を装着する作業は作業者の作業負担となる。
【0006】
本発明の目的は、払出容器に中継部材を装着する作業を支援することのできる部材装着装置及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る部材装着装置は、薬品が収容された払出容器と当該払出容器から患者への前記薬品の投与に用いられる投与器具との接続を中継する中継部材を保持する保持部と、
前記保持部により保持された前記中継部材を前記払出容器に装着する部材装着処理部と、
を備える。
【0008】
本発明に係る制御プログラムは、一又は複数のプロセッサーに、薬品が収容された払出容器と当該払出容器から患者への前記薬品の投与に用いられる投与器具との接続を中継する中継部材を保持する部材保持ステップと、前記部材保持ステップにより保持された前記中継部材を前記払出容器に装着する部材装着ステップと、を実行させるための制御プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、払出容器に中継部材を装着する作業を支援することのできる部材装着装置及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る混注システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る混注装置の外観構成を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る混注装置の収容ユニットの一部を省略した状態の斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る混注装置の主扉及び前壁の一部を取り外した状態の正面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される中継部材の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用されるトレイを示す斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される輸液バッグ保持部を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される輸液バッグを示す斜視図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される輸液バッグ保持部を示す斜視図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される輸液バッグ保持部を示す斜視図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される固定部材を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用されるトレイを示す斜視図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用されるトレイを示す斜視図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される載置部を示す斜視図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用される載置部を示す斜視図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係る混注装置を下方から見た斜視図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係る混注装置の第1ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
図18図18は、本発明の実施形態に係る混注装置の第2ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
図19図19は、本発明の実施形態に係る混注装置の第2ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
図20図20は、本発明の実施形態に係る混注装置の第2ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
図21図21は、本発明の実施形態に係る混注装置のトレイ搬送部を示す平面模式図である。
図22図22は、本発明の実施形態に係る混注装置のトレイ搬送部の機構を示す斜視図である。
図23図23は、本発明の実施形態に係る混注装置の装着検出部を説明するための図である。
図24図24は、本発明の実施形態に係る混注装置の薬品読取部を示す図である。
図25図25は、本発明の実施形態に係る混注装置の収容ユニットの構成を示す図である。
図26図26は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図27図27は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理における表示画面の一例を示す図である。
図28図28は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理における表示画面の一例を示す図である。
図29図29は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理で用いられるデータの一例を示す図である。
図30図30は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理で用いられるデータの一例を示す図である。
図31図31は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図32図32は、本発明の実施形態に係る混注装置で用いられる中継部材の収容部材を説明するための図である。
図33図33は、本発明の実施形態に係る混注装置で用いられる樹脂製薬液容器を示す図である。
図34図34は、本発明の実施形態に係る混注装置で実行される穿刺工程の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。なお、以下では、各図で定義される前後、左右、上下の方向を用いて説明することがある。
【0012】
[混注システム2]
図1に示されるように、本実施形態に係る混注システム2は、混注装置1、上位システム600、及びプリンタ506などを含む。混注装置1、上位システム600、及びプリンタ506などは、無線又は有線で通信可能に接続される。
【0013】
[混注装置1]
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る混注装置1は、混注制御装置100、薬品装填部200、混注処理部300、収容ユニット700を備える。前記混注装置1は、病院などの医療施設に設置される。そして、前記混注装置1では、前記混注制御装置100により調製データに基づいて前記混注処理部300及び前記収容ユニット700の動作が制御されることによって、注射器で調製データに示された抗がん剤などの薬品を既定量の薬品が収容された一又は複数の薬品容器から輸液バッグなどの払出容器に注入する混注処理が実行される。本実施形態では、前記混注処理を実行する前記混注装置1を、本発明に係る部品装着装置の一例として説明するが、本発明に係る部品装着装置は、前記混注装置1とは別の装置として構成されていてもよい。この場合、前記混注装置1における混注処理が実行された後に、前記部材装着装置における後述の部材装着動作が実行されることになる。
【0014】
[混注制御装置100]
図1を参照しつつ前記混注制御装置100の概略構成について説明する。
【0015】
前記混注制御装置100は、通信可能に接続された第1制御部400及び第2制御部500を備える。前記第1制御部400は、前記薬品装填部200側に設けられ、前記第2制御部500は、前記混注処理部300側に設けられる。また、前記第1制御部400又は前記第2制御部500には、モノクロプリンタ、カラープリンタ、又はラベルプリンタなどのプリンタ506が接続され、当該プリンタ506は、紙又はラベルなどへの各種情報の印刷に用いられる。
【0016】
本実施形態で説明する前記第1制御部400及び前記第2制御部500各々の処理分担は一例に過ぎず、前記混注制御装置100で実行される各処理は前記第1制御部400及び前記第2制御部500のいずれかによって実行されればよい。また、他の実施形態として、前記混注制御装置100が、一つの制御部であること、又は三つ以上の制御部を有することも考えられる。なお、前記第1制御部400及び前記第2制御部500で実行される処理の一部又は全部が、ASIC又はDSPなどの電子回路により実行されてもよい。
【0017】
前記第1制御部400は、前記上位システム600と通信可能であり、当該上位システム600から前記調製データを受信する。前記上位システム600は、制御部601及び記憶部602を備える。前記制御部601は、前記調製データの入力を受け付け、又は処方データに基づいて前記調製データを生成し、前記調製データを前記第1制御部400に送信可能である。前記記憶部602には、前記処方データ又は前記調製データなどが記憶される。前記調製データは、前記処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は前記処方データそのものである。なお、前記記憶部602には、後述の医薬品マスター、患者マスター、医師マスター、処方箋区分マスター、診療科マスター、及び病棟マスターなどの各種データベースが記憶されていてもよい。
【0018】
前記処方データには、処方箋交付年月日、患者ID、患者名、患者生年月日、薬品情報(薬品コード、薬品名、用量など)、療法、剤形情報(内服、外用など)、用法情報(1日3回毎食後など)、診療種別(外来、入院など)、診療科、病棟、及び病室などが含まれる。前記調製データには、調製ID、患者情報(患者ID、患者名など)、医師情報、薬品情報、薬品の処方量、薬品容器の種類(薬液入りアンプル、薬液入りバイアル瓶、又は粉薬入りバイアル瓶など)、レジメンの種類、調製内容情報(混注処理に使用する薬品容器、注射器、注射針の種類及び本数等)、調製手順情報(作業内容、溶解薬、溶媒、溶解薬量、溶媒量、抜取量)、調製日、処方箋区分、投薬日、診療科、病棟、調製所要時間(調製時間)などが含まれる。
【0019】
前記第1制御部400は、CPU401、ROM402、RAM403、データ記憶部404、及び操作部405などを備えるコンピュータである。また、前記第1制御部400には、前記薬品装填部200に設けられるタッチパネルモニタ203、バーコードリーダ204、空気清浄装置205、及びICリーダ207などの各種の電気部品が接続されている。
【0020】
前記CPU401は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM402は、前記CPU401により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM403は、前記CPU401による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0021】
前記データ記憶部404は、前記CPU401に各種の処理を実行させるための各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等の不揮発性の記憶装置である。具体的に、前記データ記憶部404には、前記CPU401に後述の混注管理処理を実行させるための第1混注制御プログラムが記憶される。また、前記データ記憶部404には、前記上位システム600から入力される前記調製データが記憶される。
【0022】
前記第1制御部400は、前記上位システム600から入力された前記調製データと共に、前記調製データごとに対応する後述のトレイ101の識別情報を前記データ記憶部404に記憶する。例えば、前記調製データと前記トレイ101の識別情報との対応付けは前記第1制御部400によって行われる。また、前記調製データと前記トレイ101の識別情報との対応関係を示す情報が、前記調製データと共に前記上位システム600から前記混注装置1に入力されてもよい。
【0023】
前記データ記憶部404には、医薬品マスター、患者マスター、医師マスター、処方箋区分マスター、診療科マスター、及び病棟マスターなどの各種データベースが記憶される。前記医薬品マスターには、薬品コード、薬品名、JANコード(又はRSS)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬(粉薬)、錠剤、水剤、外用薬など)、比重、粘度、薬品種(普通薬、抗がん剤、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、注意事項、薬品容器の種別(アンプル、バイアル瓶)、薬品容器単位の薬品の収容量(既定量)、薬品容器の容器形状情報、及び薬品容器の重量などの情報が含まれる。なお、前記医薬品マスターには、生理用食塩水又はブドウ糖などの輸液が収容された輸液バッグ12(払出容器の一例)の情報も含まれる。また、前記医薬品マスターでは、残薬利用する薬品には残薬保存対象薬品である旨が予め登録されており、前記第1制御部400は、前記残薬保存対象薬品として登録された薬品の前記薬品容器10を残薬として使用する対象と判断することが考えられる。
【0024】
さらに、前記医薬品マスターでは、輸液バッグ12に注入されて払い出される前に当該輸液バッグ12に後述の中継部材90を装着する対象となる薬品について、前記中継部材90の装着対象薬品である旨が予め登録されている。例えば、揮発性の高い薬品は、前記中継部材の事前の装着に適さないため、前記装着対象薬品から除外される。また、前記医薬品マスターでは、前記中継部材90を装着する対象となる輸液バッグ12には装着対象払出容器である旨が予め登録されている。例えば、予め設定されたサイズ以上の前記輸液バッグ12は、前記混注装置1における前記中継部材90の装着に適さないため、前記装着対象払出容器から除外される。そして、前記医薬品マスターにおける前記装着対象薬品の情報又は前記装着対象払出容器の情報は、前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着するか否かの要否判断に用いられる。なお、前記医薬品マスターでは、前記中継部材90の装着の要否を判断することができる情報であれば、例えば前記中継部材90を使用しない薬品の種類又は輸液バッグ12の種類について装着非対象である旨の情報が登録されていてもよい。
【0025】
また、前記中継部材90の装着の要否判断には、前記調製データに示されるレジメンの種類が用いられてもよい。さらに、前記調製データで出力される前記輸液バッグ12を用いた点滴時に投与ポンプを使用するか否かの情報が前記データ記憶部404に予め登録されており、当該情報に基づいて前記中継部材90の装着の要否が判断されてもよい。その他、複数の前記輸液バッグ12から一人の患者に薬品を投与する場合、即ち点滴の途中で前記点滴器具と前記輸液バッグ12とを繋ぎ変える必要がある場合に、前記輸液バッグ12各々に前記中継部材90が装着されていれば、当該輸液バッグ12の繋ぎ変え作業が容易である。そのため、例えば、前記調製データに基づいて、複数の前記輸液バッグ12から一人の患者に薬品が投与される場合に前記中継部材90を装着するすると判断され、前記輸液バッグ12が一つである場合に前記中継部材90を装着しないと判断されてもよい。
【0026】
また、前記データ記憶部404には、残薬情報D30、待機情報D31、予約対応情報D32が記憶される。前記残薬情報D30には、前記混注装置1に存在する残薬の情報が記録され、前記待機情報D31には、前記混注装置1で混注処理の実行待ち状態である前記調製データが記録される。前記残薬情報D30及び前記待機情報D31は、前記第1制御部400及び前記第2制御部500によって更新される。なお、前記残薬情報D30及び前記待機情報D31の更新には、データの新規登録、修正、削除などが含まれる。前記予約対応情報D32は、ユーザー操作に応じて、前記第1制御部400又は前記第2制御部500によって設定又は更新される。
【0027】
図29(A)に示されるように、前記残薬情報D30では、前記調製データの識別情報である「調製ID」と、当該調製データに基づく混注処理で残った薬品の「薬品名」、「残量」、「開封日時」、「使用期限」、「使用予定調製データ」、「穿刺回数」などが対応付けられている。前記使用予定調製データは、残薬を使用する予定の調製データを識別するための調製IDなどの識別情報である。なお、前記残薬情報D30には、前記残薬が収容された前記薬品容器10が載置される後述の載置棚33における位置情報等の他の情報も含まれる。また、前記残薬が混合薬品である場合、前記残薬情報D30には、前記混合薬品の成分(薬品名、溶媒名)、溶媒量、残量、開封日時、使用期限、使用予定調製データ、及び穿刺回数などの各種の情報が含まれる。
【0028】
図29(B)に示されるように、前記待機情報D31では、前記調製データの識別情報である「調製ID」と、前記トレイ101の識別情報「トレイID」と、前記トレイ101の収容先の前記トレイ収容部811の識別情報「収容部No.」とが対応付けられている。また、前記待機情報D31では、前記調製データ各々に、当該調製データに基づく混注処理で使用される薬品の「薬品名」、「使用量」、「既定量」、「残薬利用有無」、「薬品装填有無」、「実行タイミング」などの情報も対応付けられている。なお、図29(B)に示される前記待機情報D31では、前記調製データ各々が、先に混注処理が実行される順で上位から表示されている。
【0029】
図30(A)に示されるように、前記予約対応情報D32では、参照項目D321と、当該参照項目D321に対応する予約条件D322とが対応付けられている。
【0030】
前記参照項目D321は、予約対象となる前記調製データに含まれる各種の情報のうち当該調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約する際に参照される情報の内容を示す。例えば、前記参照項目D321は、病棟、病室、療法、薬品名、診療種別、又は患者IDなどである。以下、本実施形態では、図30(A)に示されるように、前記参照項目D321の内容が前記調製データに対応する患者の病棟の情報である場合を例に挙げて説明する。
【0031】
前記予約条件D322は、前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを設定するために用いられる情報である。具体的に、前記予約条件D322は、予約時間帯、予約日付、又は予約曜日などである。以下、本実施形態では、図30(A)に示されるように、前記予約条件D322の内容が前記予約時間帯である場合を例に挙げて説明する。
【0032】
より具体的に、図30(A)に示される前記予約対応情報D32では、病棟が「病棟A」である場合には予約時間帯が「9時以前」であり、病棟が「病棟B」である場合には予約時間帯が「9時~10時」であることが定められている。即ち、前記予約対応情報D32では、病棟Aに入院する患者に対応する前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは9時以前であり、病棟Bに入院する患者に対応する前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは9時~10時の間であるべきである旨が定められている。
【0033】
前記操作部405は、前記第1制御部400における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作部を含む。
【0034】
前記第2制御部500は、CPU501、ROM502、RAM503、データ記憶部504、操作部505などを備えるコンピュータである。前記第2制御部500には、前記混注処理部300に設けられた第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、トレイ搬送部110、タッチパネルモニタ14、ICリーダ101c、ICリーダ15a、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42などの各種の電気部品が接続されている。
【0035】
前記CPU501は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM502は、前記CPU501により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM503は、前記CPU501による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0036】
前記データ記憶部504は、前記CPU501に各種の処理を実行させるための各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等である。具体的に、前記データ記憶部504には、前記CPU501に後述の混注制御処理などを実行させるための第2混注制御プログラムが記憶される。また、前記データ記憶部504にも、前記データ記憶部404と同様の前記医薬品マスターが記憶されており、前記第2制御部500は前記医薬品マスターを参照可能である。他の実施形態としては、前記第2制御部500が、前記第1制御部400から前記医薬品マスターの情報を取得可能な構成であってもよい。
【0037】
前記操作部505は、前記第2制御部500における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作部を含む。
【0038】
[薬品装填部200]
次に、図2及び図3を参照しつつ、前記薬品装填部200の概略構成について説明する。なお、図3は、前記薬品装填部200の内部構成の要部を示す図であり、前記収容ユニット700の記載は省略されている。
【0039】
図2及び図3に示されるように、前記薬品装填部200は、扉201、作業テーブル202、タッチパネルモニタ203、バーコードリーダ204、空気清浄装置205、及びトレイ排出口206などを備えるクリーンベンチである。なお、前記薬品装填部200と前記混注処理部300とは、前記混注処理部300の側面に形成されたトレイ装填口114(図16参照)及びトレイ排出口701(図24参照)で連通している。
【0040】
前記扉201は、前記薬品装填部200の前面に設けられており、鉛直上下方向に開閉可能な透明な部材である。ユーザーは、図2に示されるように、前記扉201を少し開いて手を前記薬品装填部200内に入れた状態で、前記混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行う。
【0041】
具体的に、前記混注装置1は、当該混注装置1への薬品容器10、注射器11、輸液バッグ12、及び中継部材90などの装填に用いられるトレイ101を有する。そして、前記作業テーブル202上に載置されるトレイ101には、前記混注装置1で実行される混注処理で使用する薬品容器10、注射器11、輸液バッグ12、及び中継部材90などが収容される。前記薬品容器10に収容されている薬品は、例えば抗がん剤であるが、抗がん剤以外の薬品であってもよい。
【0042】
前記輸液バッグ12には、当該輸液バッグ12の種類に対応する既定量の生理用食塩水、ブドウ糖、又は高カロリー輸液などの輸液が収容されている。本実施形態では、前記輸液バッグ12が、前記混注装置1から払い出される払出容器の一例である。前記輸液バッグ12には、例えばソフトバッグ又はハードボトルなどの種類が含まれる。
【0043】
前記中継部材90は、前記輸液バッグ12と、当該輸液バッグ12から患者への薬品の投与に用いられる点滴器具などの投与器具との接続を中継するものである。具体的に、前記中継部材90は、図5に示されるように、穿刺部91、連結部92、胴体部93、及び嵌合部94などを有する。なお、前記中継部材90は、閉鎖式薬物移送システム(CSTD:Closed System Drug Transfer Device)と称されることがある。
【0044】
前記穿刺部91は、前記輸液バッグ12に穿刺される針部である。前記中継部材90は、前記穿刺部91が前記輸液バッグ12に穿刺されることにより当該輸液バッグ12に装着される。前記穿刺部91には開口部91Aが形成されており、当該開口部91Aと前記連結部92とは前記胴体部93の内部空間を介して連通している。そして、前記点滴器具などの投与器具が前記中継部材90に装着されると、当該投与器具に設けられた連結部と前記連結部92とが連結される。これにより、前記投与器具と前記輸液バッグ12内とが、前記中継部材90を介して連通され、前記投与器具によって前記輸液バッグ12内の薬品を患者に投与することが可能である。例えば、前記中継部材90は、テルモ株式会社製のケモセーフロック「KL-BS01」であることが考えられ、前記連結部92と前記投与器具の連結部とは針部を使用せずに連結可能である。なお、前記中継部材90は、前記輸液バッグ12と前記投与器具との連結時における被ばくを抑制するために用いられるものであればよく、特にここで説明するものに限らない。例えば、他の実施形態として、前記中継部材90の連結部92にゴム栓が設けられており、当該連結部92と前記投与器具の連結部との連結時に、当該連結部の針部が当該連結部92に穿刺されることにより、当該連結部92と前記投与器具の連結部とが連結されてもよい。
【0045】
前記嵌合部94は、前記中継部材90が前記トレイ101に載置される際の位置決め等に用いられる。具体的に、前記嵌合部94は、二つの長径部を有する楕円形状の板状部であり、前記長径部各々が前記穿刺部91の軸方向から見て前記胴体部93よりも外側に突出している。なお、前記嵌合部94は、前記穿刺部91の軸方向から見て前記胴体部93の外側に突出していれば、前記穿刺部91の軸方向に対して傾斜していてもよい。また、前記嵌合部94は、楕円形状に限らず長方形などの多角形状又は棒状であってもよい。
【0046】
前記胴体部93には、後述の第2ロボットアーム22の保持部26によって保持される際に、当該保持部26に設けられた後述の保持部264の嵌合部264a及び嵌合部264bと嵌合する嵌合部93A及び嵌合部93Bが設けられている。これにより、前記保持部26によって前記中継部材90が安定して保持される。本実施形態では、前記嵌合部93Aが、凸部である前記嵌合部264aに嵌合する凹部であり、前記嵌合部93Bが、凹部である前記嵌合部264bに嵌合する凸部である。なお、前記胴体部93は、前記嵌合部93A及び前記嵌合部93Bのいずれか一方のみを有していてもよい。また、図示は省略するが、前記中継部材90は、前記穿刺部91にキャップが装着された状態で前記トレイ101にセットされる。
【0047】
前記準備作業には、例えば前記トレイ101の所定の位置に前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12、及び前記中継部材90などを必要に応じて載置させ、前記トレイ101を前記収容ユニット700に装填する装填作業が含まれる。本実施形態では、前記薬品容器10がバイアル瓶である場合を例に挙げて説明する。一方、前記薬品容器10はアンプルなどの他の形状の薬品容器であってもよい。
【0048】
前記作業テーブル202は、前記混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行うために用いられ、前記作業テーブル202には、前記タッチパネルモニタ203、前記バーコードリーダ204、及び前記トレイ101などが載置される。また、前記作業テーブル202の前面には、前記収容ユニット700から排出される前記トレイ101を取り出す際に開閉される前記トレイ排出口206が設けられている。また、前記作業テーブル202内には、前記作業テーブル202に載置された前記トレイ101のICタグ101bから情報を読み取ることが可能な前記ICリーダ207が設けられている。なお、前記ICリーダ207による読取結果は前記第1制御部400に入力される。
【0049】
前記タッチパネルモニタ203は、前記第1制御部400からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示部と、ユーザーのタッチ操作を受け付けるタッチパネルなどの操作部とを含む。
【0050】
前記バーコードリーダ204は、処方箋又は調製指示書などに記載されたバーコードを読み取って、前記バーコードの内容を前記第1制御部400に入力する。前記空気清浄装置205は、前記薬品装填部200内に所定のフィルターを通じて空気を供給する。
【0051】
ここで、図6図15を参照しつつ、前記トレイ101の構造の一例について説明する。なお、前記トレイ101の構造はここで説明するものに限らない。
【0052】
図6に示されるように、前記トレイ101は、当該トレイ101の前面に設けられた電子ペーパー101aと、当該トレイ101の底面に設けられたICタグ101bとを有する。前記電子ペーパー101aは、患者名(患者識別情報)、レジメン名(レジメン識別情報)、及び施用などの文字表示に用いられる。前記ICタグ101bは、各種の情報が読み書き可能なRFID(Radio Frequency Identification)タグであり、前記トレイ101を識別するための識別情報が記憶される。
【0053】
前記トレイ101は、前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90などが載置される器材載置部102と、前記輸液バッグ12が載置される輸液バッグ載置部103とを有する。また、前記輸液バッグ載置部103には、前記輸液バッグ12を保持する輸液バッグ保持部103A(図7参照)が着脱可能である。なお、前記器材載置部102も前記トレイ101に対して着脱可能である。
【0054】
図7に示されるように、前記輸液バッグ保持部103Aは、前記輸液バッグ12を固定するための固定部材140と、前記輸液バッグ保持部103Aを昇降させる際に使用される係合穴部103aとを有する。なお、前記輸液バッグ12は、図8に示されるように、口部12A、首部12B、本体部12C、及び前記口部12Aを封止するゴム栓12Dなどを有する。
【0055】
図9及び図10に示されるように、前記固定部材140は、前記輸液バッグ保持部103Aの被装着部140Aに対して着脱可能である。特に、前記輸液バッグ保持部103Aでは、複数種類の前記輸液バッグ12に対応する複数種類の前記固定部材140を選択的に前記被装着部140Aに装着可能である。
【0056】
図11に示されるように、前記固定部材140は、前記輸液バッグ12の首部12Bを把持する一対の把持部140Bを有する。そして、一対の前記把持部140Bは、相対する方向に弾性を有しており、前記輸液バッグ12の首部12Bを上下方向から挟持することが可能である。これにより、前記固定部材140では、前記把持部140Bの弾性変形の許容範囲で、前記首部12Bの径が異なる複数種類の前記輸液バッグ12を把持することが可能である。
【0057】
また、図11に示されるように、前記固定部材140は、前記把持部140の前方の縁部140Dよりも前方向に突出する一対のリブ140Cを有する。そして、前記首部12Bの長さが短い種類の前記輸液バッグ12が前記固定部材140に固定される場合には、前記把持部140Bの縁部140Dが前記輸液バッグ12の口部12Aの縁部12E(図8参照)と接触することにより、当該輸液バッグ12の後方への移動が制限される。一方、前記首部12Bの長さが長い種類の前記輸液バッグ12が前記固定部材140に固定される場合には、前記把持部140Bの縁部140Dではなく、前記リブ140Cが前記輸液バッグ12の口部12Aの縁部12E(図8参照)と接触することにより、当該輸液バッグ12の後方への移動が制限される。なお、前記輸液バッグ12の前方への移動は、当該輸液バッグ12の本体部12Cの縁部12F(図8参照)が、前記固定部材140又は前記輸液バッグ保持部103Aの壁部と接触することにより制限される。このように、前記固定部材140では、前記把持部140B及び前記リブ140Cにより、前記区部美12Bの長さが異なる少なくとも2種類の前記輸液バッグ12の前後方向の移動を制限することが可能である。
【0058】
図6の説明に戻り、前記器材載置部102には、前記薬品容器10及び前記注射器11などを支持する複数の器材支持部102Aが設けられている。特に、前記器材載置部102は、前記薬品容器10及び前記注射器11などを傾倒した状態で支持する傾斜面を有する。前記注射器11は、図18に示されるように、シリンジ11a、プランジャ11b、及び注射針11cを備えており、前記注射器11が前記器材支持部102Aに載置される際、前記シリンジ11a、前記プランジャ11b、及び前記注射針11cは組み立てられた状態であってもよく、前記シリンジ11a及び前記プランジャ11bと前記注射針11cとが分離した状態であってもよい。
【0059】
また、図12及び図13に示されるように、前記器材載置部102では、前記中継部材90が載置可能な載置部102Cが、前記器材支持部102Aのうちいずれか一又は複数の特定支持部102Bに着脱可能である。即ち、前記特定支持部102Bは、前記薬品容器10又は前記注射器11などの器材の載置と、前記載置部102Cの載置とのいずれにも使用可能である。なお、他の実施形態として、前記器材載置部102の予め定められた位置に、前記載置部102Cが固定又は一体形成されていてもよい。
【0060】
図14(A)及び図14(B)に示されるように、前記載置部102Cは、部材支持部102D、嵌合部102E、側壁部102E1、底面102F、底面102G、及び上面102Hなどを有する。前記嵌合部102Eは、前記部材支持部102Dに形成され、当該部材支持部102Dを上下方向に貫通する開口部であって、前記中継部材90の嵌合部94と嵌合可能である。前記嵌合部102Eの開口サイズは、前記中継部材90の嵌合部94が挿通可能なサイズであって、当該嵌合部102Eに挿通された前記嵌合部94の前後方向及び左右方向への移動を制限可能なサイズである。なお、前記嵌合部102Eは、前記嵌合部94が嵌合可能な溝部又は凹部などであってもよい。
【0061】
前記載置部102Cは、前記底面102F及び前記底面102Gが前記特定支持部102Bに形成された前記傾斜面によって、図13に示さされるように傾斜した状態で支持される。特に、前記載置部102Cが前記特定支持部102Bに装着された状態では、前記部材支持部102Dにおける前記嵌合部102Eの貫通方向が鉛直方向に対して傾斜した状態となる。例えば、前記貫通方向は、前記特定支持部102Bの前記傾斜面と垂直であってもよく、又は鉛直方向であってもよい。
【0062】
そして、図15(A)及び図15(B)に示されるように、前記中継部材90の嵌合部94が、上方から前記載置部102Cの嵌合部102Eに挿通され、前記嵌合部94と前記嵌合部102Eとが嵌合すると、前記中継部材90は、前記載置部102Cによって特定の姿勢で支持される。具体的に、前記中継部材90は、前記嵌合部94が前記嵌合部102Eの開口内面で支持され、前記胴体部93が前記部材支持部102Dで支持された状態となる。このように、前記嵌合部94及び前記嵌合部102Eは、前記中継部材90が前記特定の姿勢である場合に相互に嵌合可能である。例えば、前記特定の姿勢は、前記中継部材90の嵌合部94が前記嵌合部102Eに挿通可能な姿勢であり、前記中継部材90の嵌合部94における二つの長径部のいずれか一方が前記嵌合部102Eの開口の深さ方向に向けられた状態である。
【0063】
具体的に、前記側壁部102E1は、前記嵌合部102Eを挟む一対の側壁を有しており、当該側壁各々の間の幅は、楕円形状の前記嵌合部94の短径よりも大きく、当該嵌合部94の長径よりも小さい。そのため、前記中継部材90は、前記嵌合部94の長径部が前記嵌合部102Eの開口の深さ方向に向けられた前記特定の姿勢である場合に、当該嵌合部94が前記嵌合部102Eに挿通された状態で前記載置部102Cに載置可能である。一方、前記中継部材90は、前記嵌合部94の短径部が前記嵌合部102Eの開口の深さ方向に向けられた姿勢である場合には、当該嵌合部94が前記側壁部102E1に接触して前記嵌合部102Eへの挿通が制限されるため、当該姿勢では前記載置部102Cに載置することができない。即ち、前記中継部材90は、前記嵌合部94の長径方向と前記側壁部102E1の側壁とが概ね平行となる前記特定の姿勢でなければ前記載置部102Cに載置することができないため、当該中継部材90は予め定められた前記特定の姿勢とは異なる姿勢で前記載置部102Cに載置されることが抑止される。
【0064】
特に、前記中継部材90は、前記嵌合部94が前記嵌合部102Eに挿通されることによって、前記載置部102C上における姿勢の変位が制限される。具体的に、前記中継部材90は、前記嵌合部94及び前記嵌合部102Eの嵌合によって、前記穿刺部91の軸回りの回動が制限され、且つ、左右方向及び前後方向の移動が制限される。これにより、前記中継部材90は、前記載置部102Cによって安定して支持されることになる。一方、前記中継部材90が前記特定の姿勢でない状態、即ち前記嵌合部94が前記嵌合部102Eに挿通されない状態で、前記中継部材90が前記載置部102Cに載置されると、前記中継部材90の変位が制限されず不安定な状態となる。そのため、ユーザーは、前記中継部材90を前記載置部102Cに載置する際に、当該中継部材90を正しい位置又は姿勢で載置することができているか否かを容易に判断することができ、誤った姿勢で載置されることが抑止される。
【0065】
そして、前記トレイ101は、ユーザーにより前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12、及び前記中継部材90などの器材がセットされた後、前記収容ユニット700に装填される。後述するように、前記収容ユニット700には複数の前記トレイ101が収容可能であり、前記収容ユニット700から必要に応じて前記トレイ101が前記トレイ排出口701及び前記トレイ装填口114を通じて前記混注処理部300に自動的に供給される。その後、前記トレイ101は、前記混注処理部300における前記混注処理の終了後、前記輸液バッグ12が収容された状態で、前記混注処理部300のトレイ排出口15から排出され、又は、前記収容ユニット700を介して前記薬品装填部200の前記トレイ排出口206から排出される。
【0066】
ところで、点滴器具などの投与器具を用いて前記輸液バッグ12から患者に薬品を投与するための前準備として前記輸液バッグ12に前記中継部材90を装着する作業は作業者の作業負担となる。これに対し、本実施形態に係る混注装置1では、前記輸液バッグ12に前記中継部材90が装着された状態で当該輸液バッグ12を払い出すことが可能であり、前記輸液バッグ12に前記中継部材90を装着する作業を支援することができる。
【0067】
[混注処理部300]
続いて、前記混注処理部300の概略構成について説明する。
【0068】
図2図4に示されるように、前記混注処理部300の前面には、主扉301、注射器取出扉302、ゴミ収容室扉13、タッチパネルモニタ14、及びトレイ排出口15などが設けられている。
【0069】
前記主扉301は、例えば前記混注処理部300に設けられた混注処理室104内の清掃、又は前記薬品容器10の取り出しなどの目的で、前記混注処理室104内にアクセスするために開閉される。前記混注装置1では、薬品が注入された前記輸液バッグ12を払い出す他に、薬品が充填された状態で前記注射器11を払い出すことも可能であり、前記注射器取出扉302は、前記混注処理室104から前記注射器11を取り出す際に用いられる。
【0070】
前記ゴミ収容室扉13は、前記混注処理室104における混注処理で使用された後の前記薬品容器10及び前記注射器11などの廃棄物が収容されるゴミ収容室13aから前記廃棄物を除去するために開閉される。また、前記トレイ排出口15は、前記混注処理室104における前記混注処理の実行後の前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101を取り出すために開閉される。
【0071】
前記タッチパネルモニタ14は、前記第2制御部500からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示部と、ユーザーのタッチ操作を受け付けるタッチパネルなどの操作部とを含む。
【0072】
[混注処理室104]
図3及び図4に示されるように、前記混注処理室104には、第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、攪拌装置32、載置棚33、薬品読取部34、秤量計35、針曲り検知部36、混注連通口37、針挿入確認透明窓38、及びゴミ蓋132aなどが設けられている。また、図16に示されるように、前記混注処理室104の天井には、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42、注射針着脱装置43、針挿入確認カメラ44、殺菌灯45などが設けられている。なお、前記針挿入確認カメラ44は、前記輸液バッグ12のゴム栓12Dへの前記注射器11又は前記中継部材90の穿刺状態などを撮影可能である。
【0073】
[第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22]
前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、多関節構造を有する駆動部であり、前記混注処理室104の天井側に基端部を固定して垂下状に設けられている。なお、前記第1ロボットアーム21が本発明に係る第1駆動部の一例であり、前記第2ロボットアーム22が本発明に係る第2駆動部の一例である。
【0074】
例えば、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の関節はそれぞれ5軸~8軸である。そして、前記混注装置1では、双腕型の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により混注処理における各作業工程が実行される。
【0075】
具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の各関節に設けられた駆動モーターを個別に駆動させ、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に前記混注処理における各作業を実行させる。なお、前記混注処理部300は、前記混注処理を実行することができる構造であれば、例えば1本のロボットアームを有する構成、3本以上のロボットアームを含む構成、又はロボットアームを用いない構成であってもよい。
【0076】
図16に示されるように、前記第1ロボットアーム21は、前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90などの器材を変位可能に保持することが可能な保持部25を備え、前記保持部25を予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。前記第2ロボットアーム22は、前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90などの器材を変位可能に保持することが可能な保持部26を備え、前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90などを予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。また、前記保持部26は、前記注射器11による吸引及び注入の操作を実行することが可能な操作部である。
【0077】
図17に示されるように、前記第1ロボットアーム21の前記保持部25は、一対の把持部25aと、モーター251と、前記モーター251によって回転される2本のねじシャフト252、253と、前記ねじシャフト252、253に螺合されたナットブロック254、255とを備える。
【0078】
前記一対の把持部25aは、前記薬品容器10の保持に適した凹部を有する把持部である。前記一対の把持部25aは、前記ナットブロック254、255にそれぞれ固定されている。そして、前記ねじシャフト252、253の回転によって前記ナットブロック254、255が移動し、前記一対の把持部25aが相互に近接及び離間して前記保持部25で前記薬品容器10又は前記中継部材90等を保持し又はその保持を解放する。前記保持部25は、前記一対の把持部25aによって、注射針11c又は前記注射器11を保持することも可能である。
【0079】
図18に示されるように、前記第2ロボットアーム22の前記保持部26は、注射器保持部261(第1保持部の一例)、プランジャ保持部262(第2保持部の一例)及び移動部263を備える。前記注射器保持部261は、前記注射器11のシリンジ11aを保持する一対の把持部261aを備える。前記一対の把持部261aは、前記保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記シリンジ11aを保持及び解放する把持部である。また、前記一対の把持部261aにおいては、互いに対向する対向面に、前記把持部261aの上端面から前記対向面へ向けて下り傾斜する傾斜部261bが形成されている。
【0080】
前記プランジャ保持部262は、前記注射器11のプランジャ11bの鍔部を保持する一対の把持部262aを備える。前記一対の把持部262aは、前記保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記プランジャ11bの鍔部を保持及び解放する把持部である。
【0081】
具体的に、前記把持部262a各々の上面には把持部262bが固定されている。前記把持部262b各々は、前記一対の把持部262aを近接及び離間させることで近接及び離間し、前記注射器11だけではなく前記薬品容器10及び前記中継部材90などの他の器材を把持する把持部である。なお、前記一対の把持部262aの対向側の上面には前記プランジャ11bの鍔部が入り込むための凹部が形成されている。また、前記一対の把持部262bの先端は前記一対の把持部262aよりも前方に突出しており、前記一対の把持部262bによる前記薬品容器10などの器材の把持が容易である。なお、前記把持部262bは前記把持部261aに設けられていてもよい。
【0082】
また、図18では省略されているが、本実施形態に係る前記混注装置1では、図19及び図20に示されるように、前記把持部262bに、前記中継部材90を把持する一対の保持部264(第3保持部の一例)が固定される。なお、前記保持部264は、前記把持部262bに着脱可能である。
【0083】
前記一対の保持部264は、前記一対の把持部262bの近接及び離間と共に近接及び離間することにより、前記中継部材90を把持及び解放する。また、前記一対の保持部264は、前記中継部材90の穿刺部91が、前記プランジャ保持部262よりも当該プランジャ保持部262の移動方向(図18図20における前後方向)における一方向(前方)に突出した状態となるように前記中継部材90を保持する。
【0084】
また、前記一対の保持部264は、前記中継部材90の嵌合部93A及び嵌合部93Bに嵌合する嵌合部264a及び嵌合部264bを有する。本実施形態において、前記嵌合部264aは凸部であり、前記嵌合部264bは凹部である。そして、図20に示されるように、前記一対の保持部264によって前記中継部材90が把持される際には、前記嵌合部264a及び嵌合部264bと前記嵌合部93A及び前記嵌合部93Bとが嵌合し、当該中継部材90の軸回りの回動が制限される。これにより、前記中継部材90は、前記保持部264によって安定して保持される。
【0085】
前記移動部263は、前記プランジャ保持部262を前記注射器11のプランジャ11bの移動方向に移動させることが可能である。前記移動部263は、例えば、モーター、前記モーターによって回転されるねじシャフト、前記ねじシャフトに螺合されたナットブロック、ガイド等の駆動機構により前記プランジャ11bを移動させる。前記プランジャ保持部262は、前記ナットブロックに固定されており、前記ナットブロックの移動によって移動する。
【0086】
また、前記移動部263は、前記プランジャ保持部262を前記移動方向に沿って移動させることにより、前記保持部264で把持された前記中継部材90を同方向に移動させることが可能である。これにより、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記中継部材90の前記穿刺部91を前記輸液バッグ12などの払出容器に穿刺する穿刺工程を実行させることが可能である。即ち、前記混注装置1では、前記混注処理に用いられる前記第2ロボットアーム22が、前記輸液バッグ12への前記中継部材90の装着に利用可能である。
【0087】
[トレイ搬送部110]
また、前記混注処理部300には、図16における右側端部の前記トレイ装填口114と左側端部のトレイ搬送終端部110aとの間で前記トレイ101を往復搬送可能なトレイ搬送部110が設けられている。
【0088】
ここに、図21は、前記トレイ搬送部110における前記トレイ101の搬送経路の一例を示す平面模式図である。図21に示されるように、前記トレイ搬送部110は、前記トレイ101を、前記混注処理室104の下方であって前記ゴミ蓋132aの下に位置する前記ゴミ収容室13aの後方側を通過させて搬送するように設けられている。
【0089】
なお、図21では、前記トレイ搬送部110の搬送経路を示すために、前記トレイ搬送部110内を移動する前記トレイ101を二点鎖線で示しており、前記トレイ搬送部110内に同時に複数の前記トレイ101が存在するわけではない。また、前記トレイ搬送部110が、前記トレイ搬送部110内において前記トレイ装填口114と前記トレイ搬送終端部110aとの間で、複数の前記トレイ101を同時に搬送可能な構成であってもよい。
【0090】
前記トレイ搬送部110の前記トレイ搬送開始部110bには、前記トレイ装填口114から挿入される前記トレイ101を内部に引き込み、又は前記トレイ装填口114から前記トレイ101を排出することが可能な不図示のベルトコンベアーが設けられている。また、前記トレイ搬送部110には、前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部103Aに設けられた前記ICタグ101bから情報を読み取り可能なICリーダ101c及びICリーダ15aが設けられている。例えば、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aは、RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダである。前記ICリーダ101cは、前記トレイ装填口114から前記トレイ101が装填されるトレイ搬送開始部110bに設けられる。また、前記ICリーダ15aは、前記トレイ101が前記トレイ排出口15から排出される前記トレイ搬送終端部110aに設けられる。
【0091】
そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ装填口114から前記トレイ搬送開始部110bに挿入されたことを不図示のセンサ出力に基づいて判断すると、前記ICリーダ101cにより前記ICタグ101bから情報を読み取る。また、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送終端部110aに挿入されたことを不図示のセンサ出力に基づいて判断すると、前記ICリーダ15aにより前記ICタグ101bから情報を読み取る。同様に、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送開始部110bから前記トレイ装填口114を介して前記収容ユニット700に向けて搬送される際にも、前記ICリーダ101cにより前記ICタグ101bから情報を読み取ることが可能である。そして、前記第2制御部500は、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aによる読取結果に応じて前記トレイ101の適否などを判断するトレイ照合処理などを実行する。
【0092】
また、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ装填口114を通って前記トレイ搬送部110内の所定位置に達したことを、例えばセンサ(不図示)の出力に基づいて判断すると、前記トレイ搬送部110及び前記混注処理室104を連通及び遮蔽させるシャッター111を水平方向にスライドさせて開放する。前記シャッター111が開けられると、前記器材載置部102が前記混注処理室104内に露出される。図21では、前記器材載置部102が前記混注処理室104内に露出された状態が示されている。
【0093】
前記トレイ搬送部110には、前記トレイ装填口114を通って前記トレイ搬送部110内に移動された前記トレイ101における前記器材載置部102を昇降させるトレイ昇降部112が設けられている。図22に示されているように、前記トレイ昇降部112は、例えば昇降可能に設けられた4本のシャフト112aの上下方向の駆動により、前記器材載置部102を下から上方に持ち上げる。
【0094】
そして、前記第2制御部500は、前記トレイ昇降部112によって前記器材載置部102を上昇させた後、前記トレイ確認カメラ41による撮影を行う。前記トレイ確認カメラ41は、予め定められた前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90等を上方から撮影する。前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41の撮影画像を用いて画像認識処理を実行し、前記調製データで示されている数の前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90などが前記器材載置部102上に存在しているかどうか等の判断を行う。
【0095】
また、図22に示されるように、前記混注処理室104の左側空間に位置する前記トレイ搬送終端部110aには、前記輸液バッグ保持部103Aを昇降させるバッグ昇降部113が設けられている。前記第2制御部500は、前記トレイ101を前記バッグ昇降部113の前まで搬送させた後、前記バッグ昇降部113のフック部113aを前記係合穴部103aに下から引っかける。そして、前記第2制御部500は、前記フック部113aが形成された円弧ギア部113bをモーター113cで回転駆動させることにより、前記輸液バッグ保持部103Aを上昇させ、前記輸液バッグ12の口部12Aを前記混注連通口37に位置させる。また、前記第2制御部500は、前記モーター113cを制御することにより、前記バッグ昇降部113を駆動させて前記輸液バッグ保持部103Aを傾斜させ、前記輸液バッグ12の口部12Aを上向き又は下向きにすることができる。
【0096】
また、図16に示されるように、前記トレイ搬送終端部110aの上方には、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12を照明するドーム型ライト120及び輸液用カメラ121が設けられている。前記輸液用カメラ121は、前記ドーム型ライト120内の中心部に設けられ、前記輸液バッグ12の表面に付されているバーコードを読み取る。
【0097】
さらに、前記トレイ搬送終端部110aには、前記輸液バッグ12に前記中継部材90が装着される場合に、当該輸液バッグ12への前記中継部材90の装着の適否を判定するための装着検出部122が設けられており、当該装着検出部122による検出結果が前記第2制御部500に入力される。例えば、前記装着検出部122は、透過型又は反射型の光学式センサである。
【0098】
具体的に、前記装着検出部122が透過型の光学式センサである場合、図23(A)及び図23(B)に示されるように、前記装着検出部122は、発光部122A及び受光部122Bを有する。そして、前記装着検出部122は、前記発光部122Aからレーザー光L1を照射し、前記受光部122Bによって前記レーザー光L1が受光されるか否かに応じて、前記中継部材90が前記輸液バッグ12に適切に装着されているか否かを検出する。具体的に、前記発光部122A及び前記受光部122Bは、図23(A)に示されるように、前記中継部材90が前記輸液バッグ12に予め定められた所定量だけ挿入されている場合には、当該中継部材90の後端部が前記レーザー光L1の光路上に存在せず、図23(B)に示されるように、前記中継部材90が前記輸液バッグ12に前記所定量未満しか挿入されていない場合に、当該中継部材90の後端部が前記レーザー光K1の光路上に存在する位置関係で設置される。なお、前記装着検出部122は、前記薬品が前記輸液バッグ12に注入される際の当該輸液バッグ12の位置とは異なる所定位置に当該輸液バッグ12が移動した後で、前記中継部材90の装着の適否を検出可能な位置に設けられていてもよい。
【0099】
[攪拌装置32]
前記攪拌装置32は、当該攪拌装置32にセットされる一又は複数の前記薬品容器10を揺動させることにより当該薬品容器10内の薬品を攪拌する。
【0100】
[載置棚33]
図4に示されるように、前記載置棚33は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を仮置きするために用いられる。また、前記載置棚33には、前記混注処理で使用された薬品が残った前記薬品容器10の保存にも用いられる。前記載置棚33は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の双方がアクセス可能な位置に設けられている。
【0101】
前記載置棚33には、前記混注処理で使用される前記器材が載置される器材載置領域と、前記混注処理で使用された薬品が残った前記薬品容器10を載置するための残薬載置領域とが設けられている。そして、前記残薬載置領域には、予め設定された一又は複数の前記薬品容器10が載置可能である。
【0102】
[薬品読取部34]
前記薬品読取部34は、前記アンプル及び前記バイアル瓶などの前記薬品容器10に貼付されたラベルに記載され、収容された薬品の薬品情報を示すバーコードを読み取る。具体的に、前記薬品読取部34は、図24に示すように、二つのローラー34a、及びバーコードリーダ34bを備える。前記ローラー34a各々は、所定の間隔だけ離間して対向配置されている。一方の前記ローラー34aは回動自在に支持され、他方の前記ローラー34aは不図示の駆動モーターに連結されている。二つの前記ローラー34aは、前記駆動モーターによって駆動されることにより、前記ローラー34aの間に載置された前記薬品容器10を周方向に回転させる。これにより、前記薬品容器10を周方向に回転させ、前記薬品容器10に貼付されたラベルの全域を前記バーコードリーダ34bに向けることができる。そして、前記バーコードリーダ34bは、前記ローラー34aにより回転される前記薬品容器10のラベルからバーコードを読み取る。
【0103】
[秤量計35]
前記秤量計35は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記注射器11の重量を測定するために用いられ、前記秤量計35による測定結果は前記第2制御部500に入力される。なお、前記秤量計35は、前記第2ロボットアーム22の可動範囲内に配置されており、前記第2ロボットアーム22により載置された前記注射器11の重量を測定する。
【0104】
[混注連通口37]
前記混注連通口37は、図3に示されるように、前記トレイ搬送終端部110aと前記混注処理室104とを仕切る壁部において外側に突出するドーム状箇所に形成された開口部である。また、前記ドーム状箇所には上下方向に前記輸液バッグ12の口部12Aを通すための切欠きが形成されている。そのため、前記輸液バッグ保持部103Aが上昇すると、前記輸液バッグ12の口部12Aが前記混注処理室104内に位置することになる。これにより、前記第2ロボットアーム22で保持された前記注射器11の注射針11c又は前記中継部材90の穿刺部91が前記輸液バッグ12の口部12Aに挿通可能となる。
【0105】
[収容ユニット700]
続いて、図25を参照しつつ、前記収容ユニット700について説明する。なお、以下では、図25に示す上下左右の方向を用いて説明することがある。
【0106】
前記収容ユニット700は、トレイ搬入部712、昇降ユニット800などを備え、前記混注制御装置100によって制御される。前記トレイ搬入部712及び前記昇降ユニット800は、前記作業テーブル202の後方に配置されている。前記収容ユニット700には、複数の前記トレイ101が収容可能であり、前記混注制御装置100は、任意の前記トレイ101を前記収容ユニット700から前記混注処理部300に搬出することが可能である。なお、前記収容ユニット700の具体的構成については、同様の機能を達成することができれば、ここで説明する構成に限らない。
【0107】
前記トレイ搬入部712は、前記収容ユニット700内の前記昇降ユニット800に前記トレイ101を装填するために開閉される。ユーザーは、前記作業テーブル202上で前記トレイ101を後方側にスライド移動させることにより、前記トレイ101を前記昇降ユニット800内に装填することが可能である。
【0108】
前記昇降ユニット800は、上下方向に昇降可能に支持された移動筐体810、及び、前記移動筐体810内において上下方向に配置された複数段のトレイ収容部811などを備える。前記移動筐体810は、例えば前記収容ユニット700の筐体内面に形成されたレール部(不図示)によって上下方向にスライド可能に支持されている。前記移動筐体810は、少なくとも最上段の前記トレイ収容部811が前記トレイ搬入部712よりも上方に位置する状態と、最下段の前記トレイ収容部811が前記トレイ搬入部712よりも下方に位置する状態との間で昇降可能である。
【0109】
また、前記収容ユニット700は、前記トレイ収容部811各々に装填された前記トレイ101を当該トレイ収容部811から前記トレイ排出口701を介して前記混注処理部300に搬送可能な搬送機構(不図示)を備える。さらに、前記搬送機構(不図示)は、前記混注処理部300から供給される前記トレイ101を前記トレイ収容部811各々に搬送可能である。即ち、前記混注装置1では、前記トレイ収容部811から前記混注処理部300に前記トレイ101を搬送することが可能であり、前記混注処理の実行後の前記トレイ101を前記トレイ収容部811に収容することが可能である。
【0110】
[混注処理]
次に、前記混注装置1において、前記混注制御装置100によって前記混注処理部300が制御されることによって実行される混注処理の処理手順の一例について説明する。
【0111】
前記混注処理では、以下に説明するように、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22などを制御することにより、前記調製データに基づいて一又は複数の前記薬品容器10から前記注射器11で薬品を吸引すると共に前記注射器11から前記輸液バッグ12などの他の容器に前記薬品を注入する。そして、前記混注処理では、薬品が前記輸液バッグ12に注入された後、必要に応じて前記輸液バッグ12に前記中継部材90が装着され、当該輸液バッグ12が払い出される。
【0112】
ここでは、前記薬品容器10に収容された薬品が溶解の必要のある粉薬のような薬品であり、その薬品を輸液と混合してから前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理について説明する。また、ここでは前記トレイ101が前記収容ユニット700から前記混注処理部300に供給された後の処理について説明する。
【0113】
前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送部110に供給されると、前記ICリーダ101cによって前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記トレイ101の識別情報を読み取る。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、当該混注処理の前記調製データに予め対応付けられた識別情報に一致する場合、前記シャッター111を開く。その後、前記第2制御部500は、前記トレイ101の前記器材載置部102を、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により上昇させて前記混注処理室104に露出させる。
【0114】
次に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102を前記トレイ確認カメラ41により撮影する。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理によって、前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記中継部材90などの器材の位置や向きを把握する。特に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102から前記薬品容器10、前記注射器11、又は前記中継部材90を取り出す度に、前記トレイ確認カメラ41で前記器材載置部102を撮影し、その撮影画像から最新の前記薬品容器10及び前記注射器11の位置や向きを把握する。
【0115】
特に、前述したように前記中継部材90が前記載置部102Cに適切に載置されている場合には、前記中継部材90が前記特定の姿勢となっている。そのため、前記第2制御部500は、例えば前記トレイ確認カメラ41の撮影画像内で、前記特定の姿勢で載置されている前記中継部材90を検索して、当該中継部材90が適切に載置されているか否かを容易に判断することができる。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41により、前記中継部材90が前記器材載置部102の前記載置部102Cに適切に載置されていない場合にエラー等を報知する。
【0116】
続いて、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記混注処理室104内に露出された前記器材載置部102に載置された前記注射器11を前記載置棚33に仮置きする。なお、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記注射器11を前記載置棚33に仮置きせず、前記第2ロボットアーム22にセットしてもよい。次に、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記中継部材90を前記載置棚33に仮置きする。その後、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10を前記薬品読取部34にセットする。そして、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34により、前記薬品容器10に収容された薬品の種類などの情報を読み取る。
【0117】
次に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の全ての器材を取り出すと、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により前記器材載置部102を下降させて前記トレイ101に戻す。なお、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の器材が全て取り出されたか否かを前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理により確認する。
【0118】
その後、前記第2制御部500は、前記シャッター111を閉めて、前記トレイ搬送部110により前記トレイ101を前記トレイ搬送終端部110aに搬送させる。次に、前記第2制御部500は、前記トレイ搬送部110の前記バッグ昇降部113により前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部103Aで保持されている前記輸液バッグ12の口部12Aを前記混注処理室104に形成された混注連通口37に位置させる。
【0119】
そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記薬品読取部34にセットされた前記薬品容器10を前記載置棚33に移動させる。一方、この移動処理と並行して、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記注射器11の前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットする。
【0120】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置棚33から前記注射器11を取り出し、前記第2ロボットアーム22にセットする。続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて前記注射器11に前記注射針11cをセットさせる。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出する。
【0121】
なお、前記注射針11cが前記注射器11のシリンジ11aに装着された状態で前記トレイ101にセットされることも考えられる。この場合には、前記注射器11に前記注射針11cにセットする工程は省略される。ところで、前記トレイ101にセットされた前記注射器11における前記注射針11cと前記シリンジ11aとの螺合が十分でない場合には、前記混注処理において前記注射針11cから液漏れが発生するおそれ又は前記注射針11cが脱落するおそれがある。また、前記注射針11cと前記シリンジ11aとの螺合が必要以上に行われている場合には、前記注射針11cに傾斜が生じているおそれがある。そこで、前記第2制御部500は、前記注射針11cが前記注射器11のシリンジ11aに装着された状態で前記トレイ101にセットされる場合には、前記注射針着脱装置43を用いて前記注射針11cと前記シリンジ11aとを適切に螺合させるための動作を行ってもよい。
【0122】
例えば、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22及び前記注射針着脱装置43を制御し、前記シリンジ11aに螺合された前記注射針11cを螺合が緩む方向に回転させた後、前記注射針11cを再度螺合する方向に回転させる(第1螺合モードと称する)。そして、前記第2制御部500は、前記注射針着脱装置43で前記注射針11cを回転させる際のトルクが、螺合状態が適切となる予め設定された所定値に達した場合に、当該注射針11cの回転を停止させる。これにより、前記注射針11c及び前記シリンジ11aが適切な螺合状態で螺合される。なお、前記第2制御部500は、ユーザー操作に応じて、前記第1螺合モードの実行の有無を切り替えてもよい。
【0123】
また、前記第2制御部500は、前記シリンジ11aに螺合された前記注射針11cを前記シリンジ11aに螺合された前記注射針11cを螺合が緩む方向に回転させず、前記注射針11cを螺合する方向に回転させる動作のみを行うことも考えられる(第2螺合モードと称する)。なお、前記第2制御部500は、前記第2螺合モードの実行の有無を切り替えることが可能であってもよい。さらに、前記第2制御部500は、ユーザー操作に応じて、前記第1螺合モードと前記第2螺合モードとのいずれかを切り替えて実行可能であってもよい。
【0124】
続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の口部12Aのゴム栓12Cに前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記輸液バッグ12から前記調製データで示された輸液量の輸液を吸引する輸液吸引工程を実行する。なお、前記輸液吸引工程では、前記トレイ101に載置されていた前記輸液バッグ12ではなく、複数の患者についての複数の前記混注処理で共通して用いるために前記混注装置1に予め装填されている溶解用輸液バッグなどの溶解用輸液容器から輸液が吸引されてもよい。一方、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置棚33に載置されている前記薬品容器10を取り出す。
【0125】
そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記薬品容器10と前記注射器11とをそれぞれ接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記薬品容器10に穿刺する。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記注射器11内の前記輸液を前記薬品容器10内に注入する輸液注入工程を実行する。このように、前記薬品が粉薬である場合には、前記混注処理において、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液を抜き取る前記輸液吸引工程と、前記注射器11から前記薬品容器10に前記輸液を注入する輸液注入工程とが実行される。これにより、前記薬品容器10内の薬品が前記輸液で溶解されて薬液となる。このとき、前記注射器11及び前記薬品容器10の姿勢は、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直下方向に向けられ、前記薬品容器10の口部が鉛直上方向に向けられた状態である。
【0126】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記薬品容器10を前記攪拌装置32にセットし、当該攪拌装置32を用いて前記薬品容器10内の薬品及び輸液を攪拌する攪拌工程を実行する。前記攪拌工程における攪拌時間は、例えば前記薬品の種類によって予め定められている。また、前記攪拌時間は、前記薬品及び前記輸液の組み合わせごとに予め定められていてもよく、前記薬品容器10内の薬品量によって変更されてもよい。前記攪拌装置32による攪拌工程が終了すると、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記攪拌装置32から前記薬品容器10を取り出す。
【0127】
ここで、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21によって攪拌後の前記薬品容器10を取り出した後、当該第1ロボットアーム21によって前記薬品容器10を予め設定された低位置に移動させ、当該薬品容器10の液面を作業者に見せるための低位置移動工程を行うことが考えられる。例えば、前記低位置は、前記混注装置1の前方に立つ作業者の目の高さよりも低い位置であって、予め設定される作業者の身長に応じて定められる位置である。即ち、前記低位置は、作業者が、前記薬品容器10内の液面を上方から視認可能な位置である。これにより、作業者は、前記薬品容器10内の液面を見て、薬品の溶解度合いを容易に確認することができる。
【0128】
なお、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内で溶解される薬品が予め設定された特定の薬品である場合にのみ前記低位置移動工程を実行してもよい。前記特定の薬品は、例えば前記薬品容器10内における溶解が十分でない場合に液面に浮かぶ薬品である。また、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内における溶解が十分でない場合に液面に浮かぶ薬品については、前記低位置移動工程を実行し、前記薬品容器10内における溶解が十分でない場合に底部に沈む薬品については、前記低位置移動工程ではなく、前記第1ロボットアーム21によって前記薬品容器10を予め設定された高位置に移動させ、当該薬品容器10の底面を作業者に見せるための高位置移動工程を実行してもよい。例えば、前記高位置は、前記混注装置1の前方に立つ作業者の目の高さよりも高い位置であって、予め設定される作業者の身長に応じて定められる位置である。即ち、前記高位置は、作業者が、前記薬品容器10内の底面を下方から視認可能な位置である。
【0129】
そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の前記注射針11cを前記薬品容器10に穿刺し、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記薬品容器10内の薬品を前記注射器11で吸引する薬品吸引工程を実行する。このとき、前記注射器11及び前記薬品容器10の姿勢は、前記薬品容器10の口部が鉛直下方向に向けられ、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直上方向に向けられた状態である。なお、前記注射器11及び前記薬品容器10の姿勢は、少なくとも前記注射器11の注射針11cの先端が水平方向よりも上方向に向けられ、前記薬品容器10の口部が水平方向よりも下方向に向けられた状態であればよい。
【0130】
その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の口部12Aのゴム栓12Cに前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記注射器11内の薬品を前記輸液バッグ12に注入する薬品注入工程を実行する。このように、前記混注処理では、前記薬品容器10から前記注射器11で前記薬品が吸引される前記薬品吸引工程、及び前記注射器11から前記輸液バッグ12に前記薬品が注入される前記薬品注入工程が実行される。
【0131】
また、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21により前記薬品容器10を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。さらに、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、前記ゴミ収容室13aなどに、前記薬品容器10又は前記注射器11などの廃棄物の通過を検出可能な光学式センサが設けられていてもよい。そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21又は前記第2ロボットアーム22を制御し、前記薬品容器10又は前記注射器11などの廃棄物を落下させる動作を実行させた後、当該廃棄物が前記ゴミ収容室13aに収容されたことを前記光学式センサによる検出結果に応じて判断してもよい。
【0132】
そして、前記混注処理において、前記輸液バッグ12に前記薬品が注入された後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記保持部264で前記中継部材90を保持し、前記輸液バッグ12に前記中継部材90を装着する部材装着動作を実行させる。即ち、前記混注装置1では、前記混注処理で用いられる前記第2ロボットアーム22を前記部材装着動作のために兼用することができる。なお、前記混注装置1において、前記第2ロボットアーム22とは別に前記部材装着動作を実行可能なロボットアームなどの駆動装置が設けられていてもよい。
【0133】
まず、前記部材装着動作において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22の保持部26に設けられた保持部264によって前記中継部材90を保持する部材保持ステップを実行する。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御し、前記載置棚33から前記中継部材90を取り出し、当該第1ロボットアーム21から前記第2ロボットアーム22の保持部26に移動させる。このとき、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22の前記保持部264を開閉することにより当該保持部264で前記中継部材90を保持する。
【0134】
なお、前記中継部材90の穿刺部91にキャップが装着されている場合には、前記第2ロボットアーム22の前記保持部264で保持された前記中継部材90の穿刺部91のキャップが、前記第1ロボットアーム21の前記保持部25を用いて取り外される。また、前記第1ロボットアーム21の保持部25で保持された前記中継部材90の穿刺部91のキャップが、前記第2ロボットアーム22の前記保持部26を用いて取り外されてもよい。
【0135】
次に、前記部材装着動作において、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御し、前記保持部264により保持された前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する部材装着ステップを実行する。前記部材装着部ステップを実行するときの前記第2制御部500が本発明に係る部材装着処理部の一例である。
【0136】
具体的に、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御し、前記中継部材90の穿刺部91を前記口部12Aの前方の位置に移動させる。そして、前記第2制御部500は、前記移動部263を制御して、前記中継部材90を前記口部12Aに近接する方向に予め設定された特定量だけ移動させ、当該中継部材90の穿刺部91における特定の位置まで当該穿刺部91を前記口部12Aのゴム栓12Dに穿刺する穿刺工程を実行する。このように、前記移動部263により、前記中継部材90が前記ゴム栓12Dに穿刺されるため、前記第2ロボットアーム22の駆動軸を制御して前記中継部材90を前記ゴム栓12Dに穿刺する構成に比べて、前記第2制御部500の処理負荷及び前記第2ロボットアーム22への動作負荷を抑制することができる。一方、他の実施形態としては、前記第2ロボットアーム22の前記保持部26の把持部261a又は把持部262aによって前記中継部材90が保持され、当該第2ロボットアーム22の駆動軸が制御されて前記中継部材90が前記ゴム栓12Dに穿刺されてもよい。
【0137】
なお、前記穿刺工程において、前記第2制御部500は、前記ゴム栓12Dにおいて予め定められたOUTポートの位置に前記穿刺部91を穿刺する。例えば、前記OUTポートは、前記ゴム栓12Dの中心である。また、前記第2制御部500は、前記混注処理において前記注射器11の注射針11cを穿刺していない領域に前記穿刺部91を穿刺してもよい。なお、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して前記注射針11cを前記ゴム栓12Dに穿刺するため、当該ゴム栓12Dにおける前記注射針11cの穿刺位置を知得可能である。
【0138】
ところで、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dに穿刺する際に、一度で前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dに穿刺し、前記保持部264による前記中継部材90の把持を開放することも考えられる。しかしながら、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dに穿刺する動作を一度で行うと、当該ゴム栓12Dが前記穿刺部91の穿刺方向に撓んだ状態で、当該ゴム栓12Dに前記穿刺部91が穿刺されることになり、当該穿刺部91が前記特定量だけ移動しても、当該穿刺部91が前記特定の位置まで前記ゴム栓12Dに穿刺されないことがある。そして、この場合には、前記保持部264による前記中継部材90の把持が解放されると、前記ゴム栓12Dの撓みが解消される際の反発力により前記中継部材90が穿刺方向とは反対側に移動することになる。即ち、前記中継部材90の穿刺部91が前記特定の位置まで穿刺されていない状態で当該中継部材90が前記輸液バッグ12に装着されてしまうことがある。
【0139】
そこで、前記第2制御部500は、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dに貫通させた後、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dから引き抜く第1方向に移動させる工程と前記穿刺部91を前記第1方向の反対方向の第2方向に移動させる工程とをそれぞれ1回又は複数回実行する。
【0140】
具体的に、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御し、前記穿刺部91の先端を前記ゴム栓12Dの前方の予め定められた初期位置に移動させる。そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22の移動部263を制御し、前記初期位置から前記ゴム栓12Dに向かって第1所定量だけ移動させて、当該穿刺部91を前記ゴム栓12Dに貫通させる貫通動作を実行する。例えば、前記第1所定量は、前記穿刺部91を前記特定の位置まで前記ゴム栓12Dに穿刺するために予め定められた前記特定量である。
【0141】
次に、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22の移動部263を制御し、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dから引き抜く方向に第2所定量だけ移動させる引き戻し動作を実行する。前記第2所定量は、前記穿刺部91の先端が前記ゴム栓12Dから引き抜かれない距離として、前記輸液バッグ12の種類及び前記中継部材90の種類のいずれか一方又は両方に応じて予め設定された値である。例えば、前記第2所定量は、前記第1所定量の半分又は1/3程度の値である。
【0142】
続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22の移動部263を制御し、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dに向かって第3所定量だけ移動させる押し込み動作を実行する。このとき、前記穿刺部91は、前記貫通動作で前記ゴム栓12Dを貫通したときに比べて、当該ゴム栓12Dと間の摩擦力が小さくなって滑るため、前記穿刺部91の移動に伴う前記ゴム栓12Dの撓み量は小さくなり、前記穿刺部91の前記ゴム栓12Dへの穿刺量が増加する。例えば、前記第3所定量は、前記第2所定量と同じである。
【0143】
このように、前記穿刺工程において、前記貫通動作の後に前記引き戻し動作及び前記押し込み動作がそれぞれ少なくとも一回以上実行されると、前記穿刺部91を前記ゴム栓12Dに一度で穿刺する場合に比べて前記穿刺部91を奥まで前記ゴム栓12Dに穿刺することができる。したがって、前記保持部264による前記中継部材90の把持が開放されても、前記ゴム栓12Dによる反発力が作用せず又は反発力が小さくなっており、前記中継部材90が前記特定の位置まで穿刺された状態又は当該特定の位置に近い位置まで穿刺された状態で維持される。
【0144】
なお、前記第2制御部500は、前記引き戻し動作及び前記押し込み動作を複数回実行してもよく、前記引き戻し動作及び前記押し込み動作の繰り返し回数は、前記輸液バッグ12の種類及び前記中継部材90の種類のいずれか一方又は両方に応じて予め設定されていてもよい。また、前記第1所定量、前記第2所定量、及び前記第3所定量の関係は、予め設定されていればよく、ここで説明したものに限らない。
【0145】
その後、前記第2制御部500は、前記保持部264による前記中継部材90の保持を解除する。そして、前記第2制御部500は、前記バッグ昇降部113を制御し、前記輸液バッグ12が収容された前記輸液バッグ保持部103Aを前記トレイ101まで下降させる。なお、前記トレイ搬送終端部110aでは、前記輸液バッグ保持部103Aに収容された前記輸液バッグ12に前記中継部材90が装着された後、当該輸液バッグ保持部103Aの移動経路上において、前記中継部材90が他の部材に接触しないスペースが確保されている。そして、前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101を前記トレイ排出口15から排出する。
【0146】
また、前記輸液バッグ12に前記中継部材90が装着された場合、前記第2制御部500は、前記トレイ101が排出されるまでの間に、前記中継部材90が適切に装着されているか否かを判定する。具体的に、前記第2制御部500は、前記中継部材90の穿刺部91が前記特定の位置まで前記輸液バッグ12に挿入されていることが前記装着検出部122(図23(A)、(B)参照)によって検出された場合に、前記中継部材90の装着が適切であると判断する。ここで、前記第2制御部500は、前記中継部材90が前記輸液バッグ12に適切に装着されていないと判断した場合、作業者にエラーを報知すること、又は前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101の排出を中断すること等が考えられる。これにより、前記輸液バッグ12に前記中継部材90が適切に装着されていない状態で当該輸液バッグ12が装置外に払い出されることが抑止される。また、他の実施形態として、前記第2制御部500は、前記中継部材90の装着の適否を、前記針挿入確認カメラ44の撮影画像に基づいて判断してもよい。
【0147】
なお、前記薬品容器10に収容された薬品が溶解の必要のない薬液のような薬品であることも考えられる。この場合の前記混注処理は、前記輸液吸引工程、前記輸液注入工程、及び前記攪拌工程が実行されない点を除いて、前記薬品容器10に収容された薬品が溶解の必要のある粉薬のような薬品である場合の前記混注処理と同様であるため説明を省略する。また、前記薬品容器10に収容された薬品が液体である場合でも前記薬品の種類によっては前記攪拌工程が実行されてもよい。
【0148】
以下、図26図30を参照しつつ、前記混注装置1において、前記混注制御装置100によって実行される混注管理処理及び混注制御処理の手順の一例について説明する。
【0149】
[混注管理処理]
まず、図26を参照しつつ、前記第1制御部400によって実行される前記混注管理処理の一例について説明する。
【0150】
<ステップS20>
ステップS20において、前記第1制御部400は、ユーザーによる前記タッチパネルモニタ203を用いた装填準備開始操作を待ち受ける(S20:No)。具体的に、前記第1制御部400は、前記混注装置1に入力されている前記調製データの一覧を示す処方選択画面M1を前記タッチパネルモニタ203に表示させる。そして、処方選択画面M1において、ユーザーにより処理対象となる前記調製データが選択されると、前記装填準備開始操作が行われたと判断し(S20:Yes)、処理がステップS21に移行する。なお、以下では、ここで選択された処理対象の調製データを対象調製データと称することがある。
【0151】
ここに、図27は、前記処方選択画面M1の一例を示す図である。図27に示される前記処方選択画面M1には、前記選択候補を絞り込むための検索条件の入力欄が配置された検索条件表示部D1、及び前記選択候補の前記調製データが並べて配置された処方表示部D2などが含まれる。なお、前記処方表示部D2では、1行ごとに一つの前記調整データの情報が表示されている。前記検索条件表示部D1には、前記検索条件に従って前記調製データの選択候補を絞り込む抽出処理を開始させるための抽出キーD11が配置されている。
【0152】
<ステップS21>
ステップS21において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行要求が行われたか否かを判定する。ここで、前記実行要求が行われたと判定されると(S21:Yes)、処理がステップS22に移行し、前記実行要求が行われるまでの間は(S21:No)、処理がステップS21で待機する。
【0153】
具体的に、前記ステップS21において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行を指示するための実行指示画面P10を前記タッチパネルモニタ203に表示させる。ここに、図28は、前記実行指示画面P10の一例を示す図である。
【0154】
図28では、前記実行指示画面P10が、前記トレイ101への器材の装填を支援するための装填チェック画面M11上にポップアップ表示されている。なお、前記装填チェック画面M11には、前記対象調製データに含まれる診療科、診療種別、病棟などの各種の情報が表示される表示領域A11と、前記対象調製データに基づく前記混注処理で必要な前記薬品容器10及び前記輸液バッグ12などの器材が表示される表示領域A12とが含まれる。
【0155】
そして、図28に示されるように、前記実行指示画面P10では、前記対象調製データに関する情報として、例えば患者を識別するための患者ID及び患者名と、前記対象調製データを識別するための管理番号(調製ID)と、当該対象調製データに基づく混注処理の調製所要時間とが表示される。なお、前記混注処理の調製所要時間は、前記対象調製データで指示される調製内容(レジメン)ごとに前記データ記憶部404に記憶されている。また、前記データ記憶部404に前記調製所要時間を算出するための演算情報が記憶されており、前記第1制御部400が、当該演算情報に基づいて前記混注処理の調製所要時間を算出してもよい。なお、前記第1制御部400は、前記中継部材90が装着される前記部材装着動作の有無を前記調製所要時間の算出時に反映してもよい。
【0156】
前記実行指示画面P10では、前記対象調製データの予約手法の選択操作を受け付けるための操作キーK11~K13、前記対象調製データの予約の実行操作を受け付けるための操作キーK14、及び残薬の利用の可否の設定を受け付けるための操作キーK15などが表示されている。
【0157】
そして、前記第1制御部400は、前記操作キーK14の操作が行われると、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行要求が行われたと判定する(S21:Yes)。
【0158】
また、前記操作キーK11は、前記対象調製データに基づく混注処理を、当該対象調製データが入力された順で実行させる時間指定無し予約を予約手法として選択するための操作キーである。
【0159】
前記操作キーK12は、前記対象調製データに基づく混注処理を、ユーザー操作によって予め設定される実行タイミングに基づいて実行させる時間指定有り予約を予約手法として選択するための操作キーである。なお、前記実行タイミングの設定は、前記混注処理の完了予定時期を示す調製終了時刻の入力、又は、前記混注処理の開始予定時期を示す開始予定時刻の入力などによって行われる。
【0160】
前記操作キーK13は、前記対象調製データに基づく混注処理について、予め設定された自動予約条件に基づいて自動的に予約する自動予約処理を予約手法として選択するための操作キーである。
【0161】
前記操作キーK15は、前記対象調製データに基づく前記混注処理における残薬の利用の可否の設定を受け付けるための操作部である。そして、前記第1制御部400は、前記操作キーK15により残薬の利用の可否によって残薬の利用の有無を制御する。さらに、前記第1制御部400は、前記対象調製データに対応する患者の情報に基づいて、前記対象調製データに基づく前記混注処理における残薬の利用の可否を自動判定することも考えられる。具体的に、前記第1制御部400は、前記対象調製データのうち入院患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用を許可し、前記対象調製データのうち外来患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用を許可しないことが考えられる。また、これとは逆に、前記対象調製データのうち外来患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用が許可され、前記対象調製データのうち入院患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用が許可されないことも考えられる。
【0162】
<ステップS22>
ステップS22において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを前記自動予約条件に基づいて予約する自動予約処理を実行するか否かを判定する。具体的に、前記第1制御部400は、前記実行指示画面P10において、前記操作キーK13の操作状態に応じて前記自動予約処理の実行の有無を判定する。ここで、前記自動予約処理を実行しないと判定されると(S22:No)、処理がステップS221に移行し、前記自動予約処理を実行すると判定されると(S22:Yes)、処理がステップS222に移行する。
【0163】
<ステップS221>
ステップS221において、前記第1制御部400は、前記実行指示画面P10に入力された予約条件に基づいて、前記対象調製データの実行タイミングを設定するための予約設定処理を実行し、前記待機情報D31を更新した後、処理をステップS23に移行させる。
【0164】
例えば、前記操作キーK11が操作され、前記時間指定無し予約が選択されている場合、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理を、実行指示が行われた順で実行するように前記待機情報D31を更新する。一方、前記操作キーK12が操作され、前記時間指定有り予約が選択されている場合、前記第1制御部400は、前記対象調製データに含まれる調製日と、前記完了予定時期又は前記開始予定時期とに基づいて、前記混注処理の実行タイミングが重複しないように前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングなどを設定し、前記待機情報D31を更新する。
【0165】
<ステップS222>
ステップS222において、前記第1制御部400は、前記自動予約処理を実行し、前記待機情報D31を更新した後、処理をステップS23に移行させる。ここに、前記自動予約処理を実行するときの前記第1制御部400が本発明に係る予約処理部の一例である。
【0166】
具体的に、前記自動予約処理において、前記第1制御部400は、前記予約対応情報D32を前記データ記憶部404から読み出す。そして、前記第1制御部400は、前記予約対応情報D32と、前記対象調製データに含まれる特定情報の内容とに基づいて、当該対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約する。例えば、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理に関する情報(「薬品名」、「使用量」、「既定量」、「残薬利用有無」、「薬品装填有無」、「実行タイミング」などの情報)を前記待機情報D31に新規に追加する。
【0167】
例えば、図30(A)に示される前記予約対応情報D32に基づいて前記自動予約処理が実行される場合、患者の病棟が「病棟A」であれば、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは、前記対象調製データに含まれる調製日における「9時以前」の条件を満たすように設定される。
【0168】
なお、本実施形態では、前記予約対応情報D32における前記参照項目D321が「病棟」であり、前記予約条件D322が「予約時間帯」である場合について説明する。一方、図30(B)又は図30(C)に示されるように、前記参照項目D321は、「診療種別」、「処方区分」などの他の項目の情報であってもよい。例えば、図30(B)では、「外来」及び「入院」などの診療種別ごとに「予約時間帯」が設定されている。同様に、図30(C)では、「定期」及び「臨時」などの処方区分ごとに「予約時間帯」が設定されている。
【0169】
さらに、前記参照項目D321が異なる複数の前記予約対応情報D32が前記データ記憶部404に記憶されており、当該予約対応情報D32ごとに予め優先順位が設定されていてもよい。
【0170】
<ステップS23>
ステップS23において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理に必要な前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12、及び前記中継部材90などを前記トレイ101にセットする作業を支援するための器材準備支援処理を実行する。
【0171】
例えば、ステップS23において、前記第1制御部400は、前記輸液バッグ12及び前記薬品容器10に付されているGS1データバーなどの識別情報の読み取りを指示するためのメッセージ及び画像などを含む前記装填チェック画面M11を前記タッチパネルモニタ203に表示する。具体的に、前記装填チェック画面M11には、前記対象調製データに含まれる前記輸液バッグ12の種類、前記注射器11の種類、前記薬品容器10の種類、前記トレイ101へ前記中継部材90をセットする必要があるか否か(又は、混注処理後に前記中継部材90が前記輸液バッグ12に装着されるか否か)などが表示される。
【0172】
ここで、前記トレイ101へ前記中継部材90をセットする必要があるか否かは、前記医薬品マスターと、前記対象調製データに示された薬品の種類及び輸液バッグ12の種類のいずれか一方又は両方とに基づいて、前記第1制御部400が判定したものである。例えば、前記第1制御部400は、前記対象調製データに示された薬品の種類が、前記医薬品マスターにおいて前記装着対象薬品として登録されている場合に、前記トレイ101へ前記中継部材90をセットする必要があると判定する。また、前記第1制御部400は、前記対象調製データに示された輸液バッグ12の種類が前記医薬品マスターにおいて前記装着対象払出容器として登録されている場合に、前記トレイ101へ前記中継部材90をセットする必要があると判定してもよい。一方、前記第1制御部400は、前記対象調製データに示された薬品の種類、又は、前記対象調製データに示された輸液バッグ12の種類の少なくとも一方が、前記医薬品マスターにおいて前記装着対象薬品として登録されていない場合に、前記トレイ101へ前記中継部材90をセットする必要がないと判定してもよい。
【0173】
なお、他の実施形態として、前記上位システム600が、前記処方データに基づいて前記対象調製データを生成する際に、前記対象調製データに示される前記薬品容器10の薬品の種類及び前記輸液バッグ12の種類のいずれか一方又は両方に基づいて、前記中継部材90を前記トレイ101にセットする必要があるか否かを判断し、その判断結果を含む前記対象調製データを生成してもよい。
【0174】
そして、前記第1制御部400は、前記トレイ101へ前記中継部材90をセットする必要があると判断すると、当該中継部材90を前記トレイ101にセットする必要がある旨及びセットする位置などを示すメッセージ等を表示させる。また、前記第1制御部400は、前記混注装置1で複数種類の前記中継部材90が使用可能である場合には、前記薬品容器10の薬品の種類及び前記輸液バッグ12の種類のいずれか一方又は両方に基づいて前記中継部材90の種類を選択し、当該中継部材90の種類を表示してもよい。なお、前記第1制御部400は、前記中継部材90の装着が不要であると判断した場合には、前記メッセージ等を表示させない。
【0175】
また、前記第1制御部400は、前記中継部材90の装着の要否を、ユーザー操作に応じて、前記調製データ各々に対応する前記混注処理ごとに任意に切替可能であってもよい。例えば、前記第1制御部400は、前記装填チェック画面M11において、前記中継部材90の装着の要否の選択操作を受け付け可能であることが考えられる。また、前記第1制御部400は、前記ステップS20又は前記ステップS21における前記装填準備開始操作又は前記混注処理の実行要求などが行われる操作画面において、前記中継部材90の装着の要否の選択操作を受け付け可能であってもよい。なお、前記第1制御部400は、前記混注装置1の初期設定として、前記中継部材90の装着の要否の設定を受け付け可能であり、当該初期設定に従って前記中継部材90の装着の要否を判断してもよい。
【0176】
そして、前記第1制御部400は、前記バーコードリーダ204によって前記輸液バッグ12及び前記薬品容器10の識別情報が読み取られ、前記対象調製データとの照合結果が一致すると、処理をステップS24に移行させる。なお、前記第1制御部400は、前記輸液バッグ12又は前記薬品容器10の識別情報と前記対象調製データとの照合結果が一致しない場合には、前記タッチパネルモニタ203にエラーメッセージ等を表示させる。また、前記ステップS23において、前記第1制御部400は、前記ICリーダ207を用いて、前記作業テーブル202に現在載置されている前記トレイ101のICタグ101bから当該トレイ101の識別情報を、当該対象調製データに対応する前記トレイ101を識別するための情報として読み取る処理も実行する。
【0177】
ここで、前記第1制御部400は、前記作業テーブル202で前記トレイ101に前記中継部材90などが載置される際に、当該トレイ101を撮影可能な不図示のカメラによって撮影される撮影画像に基づいて、前記中継部材90が前記器材載置部102の前記載置部102Cに適切に載置されているか否かを判断し、適切でない場合にその旨を報知してもよい。なお、前述したように前記中継部材90が前記載置部102Cに適切に載置されている場合には、前記中継部材90が前記特定の姿勢となっている。そのため、前記第1制御部400は、例えば前記特定の姿勢で載置されている前記中継部材90を前記撮影画像内で検索して、当該中継部材90が適切に載置されているか否かを容易に判断することができる。
【0178】
<ステップS24>
ステップS24において、前記第1制御部400は、前記対象調製データについての装填準備が完了した旨の確認操作の有無を判断する。具体的に、前記第1制御部400は、前記確認操作を受け付けるための操作キーなどを前記タッチパネルモニタ203に表示し、前記操作キーが操作された場合に前記確認操作が行われたと判断する。ここで、前記確認操作が行われた場合は(S24:Yes)、処理をステップS25に移行させ、前記確認操作が行われるまでの間は(S24:No)、処理をステップS24で待機させる。
【0179】
<ステップS25>
ステップS25において、前記第1制御部400は、前記収容ユニット700の前記トレイ搬入部712を開放させる。具体的に、前記第1制御部400は、前記第2制御部500に対して、前記トレイ搬入部712の開放指示を送信する。これにより、前記第2制御部500は、前記収容ユニット700を制御して前記トレイ搬入部712を開放させ、ユーザーは、前記トレイ101を前記トレイ収容部811に収容することが可能である。
【0180】
なお、前記第2制御部500は、前記トレイ搬入部712を開放する前に、前記待機情報D31に基づいて、未使用の前記トレイ収容部811が前記トレイ101を収容することが可能な位置に配置されるように前記移動筐体810の位置を制御する。具体的に、前記トレイ101に対応する前記トレイ収容部811として前記待機情報D31に記憶されていない前記トレイ収容部811が未使用であると判断される。なお、前記第2制御部500は、前記トレイ収容部811への前記トレイ101の装填時、及び前記トレイ収容部811からの前記トレイ101の排出時などに、前記待機情報D31を編集する。
【0181】
<ステップS26>
そして、ステップS26において、前記第1制御部400は、前記収容ユニット700の前記トレイ収容部811に前記トレイ101が収容されると、前記対象調製データと前記トレイ101の識別情報と前記トレイ収容部811とを対応付ける処理を実行する。具体的に、前記第1制御部400は、前記対象調製データと、前記トレイ101の識別情報と、前記トレイ収容部811との対応関係を前記待機情報D31に記録する。これにより、前記第1制御部400及び前記第2制御部500は、前記待機情報D31に基づいて、前記対象調製データ、前記トレイ101の識別情報、及び前記トレイ収容部811の対応関係を認識することが可能である。
【0182】
例えば、前記第1制御部400は、前記ステップS23が実行される際に、前記作業テーブル202に設けられた前記ICリーダ207を用いて、前記作業テーブル202に載置された前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記トレイ101の識別情報を読み取る。そして、前記ステップS26において、前記第1制御部400は、前記ICタグ101bから読み取られていた前記識別情報を、処理対象として選択された前記対象調製データに対応する前記トレイ101の識別情報として前記データ記憶部404の前記待機情報D31に記憶する。また、前記待機情報D31では、前記調製データ各々に対応する前記トレイ101に当該調製データに基づく混注処理で残薬を使用するか否かを示す残薬利用情報が記憶されてもよい。
【0183】
なお、前記対象調製データに基づく前記混注処理において必要な前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12などの器材が一つの前記トレイ101に載置できない場合には、前記第1制御部400は、処理対象として選択された前記対象調製データと複数の前記トレイ101とを対応付けて待機情報D31に記憶する処理を実行してもよい。そして、前記対象調製データに基づく前記混注処理では、複数の前記トレイ101から供給される前記薬品容器10などの器材が用いられる。
【0184】
<ステップS27>
ステップS27において、前記第1制御部400は、前記対象調製データを前記第2制御部500に送信する。なお、前記第1制御部400は、前記対象調製データそのものに限らず、前記対象調製データに基づいて前記混注処理部300に混注処理を実行させるための混注制御データを生成し、前記混注制御データを前記第2制御部500に送信するものであってもよい。また、前記対象調製データを識別可能な調製データ識別情報が前記第2制御部500に送信されて、当該第2制御部500によって前記調製データ識別情報に対応する前記対象調製データが前記データ記憶部404から読み出されることも考えられる。
【0185】
また、前記ステップS27において、前記対象調製データを前記第2制御部500に送信する際、前記第1制御部400は、前記輸液バッグ12への前記中継部材90の装着の要否を示す装着要否情報を前記対象調製データと共に前記第2制御部500に送信する。これにより、前記第2制御部500では、前記対象調製データに基づく前記混注処理において、前記輸液バッグ12への前記中継部材90の装着の要否を前記装着要否情報に基づいて判断することが可能である。
【0186】
[混注制御処理]
続いて、図31を参照しつつ、前記第2制御部500によって実行される前記混注制御処理の手順の一例について説明する。
【0187】
<ステップS50>
ステップS50において、前記第2制御部500は、前記待機情報D31に登録されている調製データのいずれかについて前記混注処理の実行タイミングが到来したか否かを判断する。そして、前記実行タイミングが到来したと判断すると(S50:Yes)、処理がステップS51に移行し、前記実行タイミングが到来していなければ(S50:No)、処理がステップS50で待機する。前記ステップS50で前記混注処理の実行タイミングが到来したと判定された前記調製データを実行調製データと称することがある。
【0188】
<ステップS510>
次に、ステップS510において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに基づく前記混注処理において、当該実行調製データに対応して前記混注装置1に装填された前記薬品容器10を用いた場合に、当該薬品容器10に残薬が発生するか否かを判断する。ここで、前記第2制御部500は、前記薬品容器10に残薬が生じると判断した場合は(S510:Yes)、処理をステップS51に移行させ、前記薬品容器10に残薬が生じないと判断した場合は(S510:No)、処理をステップS52に移行させる。
【0189】
<ステップS51>
ステップS51において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに基づく前記混注処理において、過去に実行された前記混注処理で残存した残薬を使用するか否かを判断する。ここで、前記第2制御部500は、前記残薬を使用すると判断すると(S51のYes側)、処理をステップS53に移行させ、前記残薬を使用しないと判断すると(S51のNo側)、処理をステップS52に移行させる。
【0190】
具体的に、前記第2制御部500は、前記残薬情報D30及び前記待機情報D31に基づいて、前記実行調製データに基づく前記混注処理における残薬利用の有無を判断する。例えば、前記第2制御部500は、前記待機情報D31において前記実行調製データについて残薬利用が有りに設定され、且つ前記残薬情報D30の内容が予め設定された使用条件を満たす場合に前記実行調製データに基づく前記混注処理で残薬を利用すると判断する。前記使用条件は、例えば前記残薬情報D30に記憶された前記残薬の使用期限が経過していないこと、前記残薬の開封日時から所定時間が経過していないこと、又は前記薬品容器10への注射針11cの穿刺回数が上限回数に達していないこと等である。
【0191】
<ステップS52>
ステップS52において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から入力された前記実行調製データに基づいて前記混注処理部300を制御することにより、当該実行調製データに対応する前記トレイ101に載置されていた前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に薬品を注入する通常の前記混注処理を実行させる。
【0192】
具体的に、ステップS52において、前記第2制御部500は、前記収容ユニット700を制御し、前記実行タイミングが到来した前記実行調製データに対応付けられている前記トレイ101を前記収容ユニット700の前記トレイ収容部811から前記混注処理部300に供給する。そして、前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに示された薬品を前記トレイ101に載置された一又は複数の前記薬品容器10から前記注射器11によって吸引し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入する。
【0193】
その後、前記第2制御部500は、必要に応じて前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する部材装着動作を実行し、前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101を前記トレイ排出口15から排出する。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から受信する前記装着要否情報に基づいて、前記輸液バッグ12に前記中継部材90を装着する前記部材装着動作の実行有無を判断する。なお、前記トレイ101は、前記収容ユニット700にその後に取り出し可能な状態で収容されてもよく、又は前記収容ユニット700を介して前記薬品装填部200の前記トレイ排出口206から排出されてもよい。
【0194】
<ステップS53>
一方、ステップS53において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から入力された前記実行調製データ、前記残薬情報D30、及び前記待機情報D31に基づいて前記混注処理部300を制御することにより、前記残薬を使用して前記輸液バッグ12に薬品を注入する例外的な前記混注処理を実行する。即ち、前記第2制御部500は、処理対象の調製データ各々に基づく混注処理において、当該調製データとは異なる他の調製データに基づく混注処理で残る前記薬品容器10内の薬品を前記混注処理部300に使用させることが可能である。従って、例えば混注処理後に薬品が前記薬品容器10に残存する場合に、当該薬品が有効に利用され、当該薬品の無駄が抑制される。
【0195】
具体的に、ステップS53において、前記第2制御部500は、前記収容ユニット700を制御し、前記実行タイミングが到来した前記実行調製データに対応付けられている前記トレイ101を前記収容ユニット700の前記トレイ収容部811から前記混注処理部300に供給する。そして、前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに示された薬品を前記載置棚33に載置されている前記薬品容器10から前記注射器11によって吸引し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入する。なお、前記実行調製データに基づく前記混注処理では、前記載置棚33に残薬として保存されている前記薬品容器10と共に、前記トレイ101に載置された一又は複数の前記薬品容器10が用いられることもある。
【0196】
また、前記第2制御部500は、前記混注処理で残薬が使用された場合には、当該残薬を使用した実績及びその効果などに関する残薬実績情報を前記データ記憶部504などに記憶することが考えられる。例えば、前記第2制御部500は、前記混注処理で残薬が使用された場合に、前記混注処理で残薬が生じた調製データの調製ID(識別情報)と、その残薬を前記混注処理で使用した調製データの調製ID(識別情報)とを対応付けて前記残薬実績情報として記録することが考えられる。また、前記第2制御部500は、残薬を使用したことにより削減された薬品の識別情報とその削減量を前記残薬実績情報として記録することが考えられる。例えば、前記削減量は、残薬を使用しない場合に必要な前記薬品容器10の本数と、残薬を使用した場合に必要な前記薬品容器10の本数との差分である。なお、前記薬品容器10の本数の差の算出時には、1本未満の端数が切り上げて算出されてもよい。これにより、作業者は、前記残薬実績情報を参照することにより、残薬の使用の実績、及び残薬の使用による効果などを容易に把握することができる。
【0197】
また、前記ステップS53における前記混注処理においても、前記第2制御部500は、前記ステップS52と同様に、必要に応じて前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する部材装着動作を実行し、前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101を前記トレイ排出口15から排出する。
【0198】
<ステップS54>
前記混注処理が終了すると、ステップS54において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10に薬品が残存したか否かを判断する。前記ステップS54における残薬の発生の有無の判断処理は、前記ステップS510と同様の処理であってもよいが、前記第2制御部500が前記混注処理の結果に基づいて判断してもよい。ここで、前記第2制御部500は、前記薬品が残存したと判断すると(S54のYes側)、処理をステップS55に移行させ、前記薬品が残存しなかったと判断すると(S54のNo側)、処理をステップS541に移行させる。
【0199】
<ステップS55>
ステップS55において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10を残薬として前記載置棚33に保存するか否かを判定する判定処理を実行する。具体的に、前記第2制御部500は、予め設定された保存条件を満たす場合に、前記薬品容器10を残薬として保存すると判定する。前記保存条件には、予め設定される一又は複数の判定条件が含まれる。例えば、前記判定条件は、前記薬品容器10が前記薬品容器10であること、前記薬品容器10が前記医薬品マスターにおいて残薬保存対象薬品として登録されていること、前記薬品容器10内の残薬の残量が予め設定された最小残量以上であること、前記薬品容器10の識別情報が前記バーコードリーダ34bによって正常に読み取られたこと、前記薬品容器10の穿刺回数が上限回数以内であること、又は前記薬品容器10の使用期限が経過していないこと等である。なお、前記保存条件として複数の前記判定条件が設定されている場合には、当該判定条件の全てを満たす場合に前記保存条件を満たすと判定される。
【0200】
<ステップS56>
ステップS56において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内の薬品を再度利用可能な状態で前記混注処理室104内に保存する。より具体的に、前記第2制御部500は、前記混注処理部300の前記第1ロボットアーム21を制御することにより、前記薬品容器10を再度利用可能な状態で前記載置棚33に載置させる。即ち、前記混注処理部300は、前記実行調製データに基づく前記混注処理で薬品が残った前記薬品容器10を残薬容器として前記混注装置1内に保存し、当該残薬容器内の薬品を他の前記調製データに基づく前記混注処理で使用することが可能である。また、前記第2制御部500は、前記残薬情報D30に登録されている各種の情報を必要に応じて更新する。
【0201】
<ステップS541>
一方、前記薬品容器10に薬品が残存していない場合、前記第2制御部500は、ステップS541において、前記第1ロボットアーム21により前記薬品容器10を前記ゴミ収容室13aに廃棄する。即ち、基本的に、前記薬品容器10内の薬品を使い切っていない場合は前記薬品容器10が前記載置棚33に戻され、前記薬品容器10内の薬品が使い切られた場合は前記薬品容器10が廃棄される。
【0202】
以上説明したように、前記混注装置1では、前記混注処理において前記輸液バッグ12に薬品が注入された後、当該輸液バッグ12に前記中継部材90が必要に応じて装着される。これにより、前記混注装置1から前記輸液バッグ12が排出された後に作業者が前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する手間が省略され、当該中継部材90を患者の近くで前記輸液バッグ12に装着する際の作業者及び患者の被ばく等も抑制される。
【0203】
なお、本実施形態では、前記第2ロボットアーム22の前記把持部261bに、前記中継部材90を保持するための専用の前記保持部264が固定されている場合を例に挙げて説明した。一方、他の実施形態として、前記把持部261a又は前記把持部261bのように前記混注処理で他の器材の保持に用いられる保持部が、前記中継部材90の保持及び当該中継部材90の前記ゴム栓12Dへの穿刺に用いられてもよい。
【0204】
さらに、本実施形態では、前記混注処理にも用いられる前記第2ロボットアーム22を用いて前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する場合を例に挙げて説明したが、前記混注装置1が、前記第2ロボットアーム22とは別に、前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着するための部材装着装置を備えてもよい。また、前記混注装置1とは別に、当該混注装置1から排出された前記輸液バッグ12に対して前記中継部材90を装着可能な部材装着装置が構成されてもよい。例えば、前記部材装着装置では、前記混注処理後の前記輸液バッグ12が載置された前記輸液バッグ保持部103A又は前記トレイ101がセット可能であり、当該輸液バッグ12に前記中継部材90が装着される。また、この場合、前記部材装着装置は、前記混注装置1から前記混注処理における前記ゴム栓12Dへの穿刺位置の情報、又は前記ゴム栓12DにおけるOUTポートの位置の情報などを受信し、当該穿刺位置を避けた領域、又は前記OUTポートの位置に、前記穿刺部91を穿刺することが考えられる。
【0205】
ところで、前記調製データに基づいて前記混注処理と同様の混注作業を薬剤師などの作業者が実行する場合には、安全のためにバイアルアダプタなどの接続器具を用いて前記薬品容器10と前記シリンジ11aとを接続することになり、当該薬品容器10の数と同数の前記接続器具が必要になる。しかしながら、前記混注作業について患者に請求可能な請求可能額(請求可能点数)は一律であるため、前記接続器具の数が複数である場合でもその経費を前記請求額に上乗せすることはできない。そのため、前記混注作業で使用する前記接続器具の数、即ち前記薬品容器10の数によっては、前記混注作業を作業者が実行する場合の請求額よりも、当該接続器具の経費を超えるおそれがある。そこで、前記第1制御部400が、前記混注処理を前記混注装置1で実行するか、前記混注作業を作業者が実行するかを判断するための判断指標をユーザーに提示する提示処理を実行することが考えられる。例えば、前記第1制御部400は、図27に示される処方選択画面M1において前記調製データが選択された場合に、当該調製データに基づく前記混注作業で用いられる前記薬品容器10の数と前記接続器具の単価とに基づいて、当該混注作業を作業者が実行する場合の経費を算出する。その後、前記第1制御部400は、算出した前記経費が請求可能額を超える場合には、「手動調製のために使用する器具の代金が手動調製の請求費用をXX円程度超えてしまいます」のようなメッセージを前記表示部25に表示させる。また、前記第1制御部400は、図27に示される処方選択画面M1において、前記調製データ各々について、前記経費が請求可能額を超えるか否かを示す文字、フラグ又はアイコンなどの判断指標情報を表示してもよい。なお、前記提示処理は、前記混注装置1又は前記上位システム600のいずれで実行されてもよく、前記提示処理の実行タイミングは、前記混注装置1又は前記上位システム600が前記調製データを受信したタイミングなどであってもよい。さらに、前記第1制御部400又は前記上位システム600が、前記経費に応じて、前記混注処理を前記混注装置1で実行するか、前記混注作業を作業者が実行するかを自動的に切り替えてもよい。
【0206】
[他の実施形態]
以下、前記混注システム2が備える各種の機能又は前記混注システム2の他の実施形態などについて説明する。
【0207】
[中継部材の収容部材]
ところで、一般に、前記中継部材90には各種の製品が存在し、当該中継部材90の種類ごとに当該中継部材90の構造が異なる。また、前記混注装置1で一種類の前記中継部材90のみを使用可能にする場合であっても、前記保持部264の形状を当該中継部材90が保持可能な形状に合わせることが必要となる。そこで、前記混注装置1では、複数種類の前記中継部材90を前記混注装置1で使用するためのアタッチメント部材として、一種類又は複数種類の前記中継部材90を収容可能な収容部材900が使用されることが考えられる。
【0208】
図32(A)及び図32(B)に示されるように、前記収容部材900は、開閉部材901、902を有する有底円筒状の部材であり、前記保持部26の把持部261a又は把持部262aなどが当該収容部材900を容易に保持可能な形状である。前記開閉部材901、902は、回動軸903で開閉可能に軸支されている。具体的に、前記開閉部材901、902の前記回動軸903よりも後方の部位が挟持されると、当該回動軸903を中心に前記開閉部材901、902の先端側が回動して開放される。
【0209】
また、前記収容部材900内には、前記中継部材90の少なくとも一部が収容可能な空間が形成されており、前記中継部材90は前記収容部材900内に設けられた不図示の把持部によって把持され、前記穿刺部91が露出した状態で保持される。例えば、前記把持部は、前記中継部材90の嵌合部94を把持するものである。なお、本実施形態では、図32(A)に示されるように、前記収容部材900は、前記中継部材90における前記穿刺部91を除く全部位を収容可能である。
【0210】
そして、前記混注装置1では、前記部材装着動作において、図32(A)に示されるように、前記第2ロボットアーム22の保持部26の把持部261aにより前記収容部材900の前記回動軸903よりも前方(前記穿刺部91側)の先端部が把持され、前記把持部262aにより前記収容部材900の前記回動軸903よりも後方の後端部が把持される。その後、前記第2制御部500は、図32(A)に示されるように、前記中継部材90が前記収容部材900に収容された状態で、前記第2ロボットアーム22を制御して前記穿刺部91を前記ゴム栓12Aに穿刺し、当該中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する。続いて、前記第2制御部500は、図32(B)に示されるように、前記第2ロボットアーム22を制御して前記把持部261aを開き、前記把持部262aを閉じる。これにより、前記収容部材900では、前記開閉部材901、902が前記回動軸903を中心に回動して開放し、前記中継部材90が露出する。そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22を制御して、前記収容部材900を前記中継部材90から離間する方向(後方)に移動させ、当該収容部材900を前記中継部材90から取り外す。
【0211】
このような構成によれば、前記第2ロボットアーム22の前記保持部26の把持部261a及び262aを用いて、前記収容部材900に収容されている前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着することができる。したがって、前記薬品容器10及び前記注射器11などの把持及び操作する前記把持部261a及び262aを前記部材装着動作でも兼用することができ、前記中継部材90を把持するための前記保持部264を省略することができる。なお、前記収容部材900は、前記薬品容器10と同様に前記トレイ101の前記器材載置部102に載置することにより、前記中継部材90を載置するための前記載置部102Cも省略可能である。また、前記収容部材900が複数種類の前記中継部材90を収容可能な構造であれば、前記混注装置1において複数種類の前記中継部材90を使用することが可能となる。さらに、前記中継部材90が、前記輸液バッグ12に装着されるまでの間は前記収容部材900に収容されていることになるため、当該中継部材90の前記混注処理室104内における汚染も抑制される。
【0212】
また、前記輸液バッグ12が載置されている前記トレイ搬送終端部110a(第1領域の一例)から前記混注連通口37を介して前記混注処理室104(第2領域の一例)に向けて送風する送風ファンなどの送風部(不図示)が前記トレイ搬送終端部110aに設けられていてもよい。そして、前記第2制御部500は、前記中継部材90を前記輸液バッグ12に装着する前記部材装着動作の開始前又は前記部材装着動作の実行中などの予め設定されたタイミングで前記送風部を駆動させる。例えば、前記第2制御部500は、前記中継部材90を前記輸液バッグ12のゴム栓12Dに穿刺した後、前記収容部材900を前記中継部材90から取り外す動作の開始時に前記送風部を駆動させ、前記輸液バッグ12が前記トレイ搬送終端部110aから排出された後に前記送風部を停止させてもよい。これにより、少なくとも前記収容部材900から前記中継部材90が取り外される動作以後は前記送風部が駆動している状態となり、当該中継部材90の汚染が抑制される。
【0213】
なお、前記収容部材900が用いられる場合には、当該収容部材900に当該収容部材900を識別可能な一次元コード又は二次元コードなどのコード情報が印刷されたラベルなどが貼付されていることが考えられる。そして、前記中継部材90が使用される前記混注処理に対応する前記器材準備支援処理(ステップS23)では、前記第1制御部400が、前記バーコードリーダ204によって前記輸液バッグ12及び前記薬品容器10から読み取られる識別情報が前記対象調製データと一致し、且つ、前記収容部材900の前記コード情報が読み取られた場合に、処理をステップS24に移行させてもよい。一方、前記第1制御部400は、前記バーコードリーダ204によって前記輸液バッグ12及び前記薬品容器10から読み取られる識別情報が前記対象調製データと一致しても、前記収容部材900の前記コード情報が読み取られていなければ、その旨のエラーなどを報知する。これにより、前記収容部材900の載置漏れが抑止される。なお、前記収容部材900に代えて、前記中継部材90に、当該中継部材90が識別可能なコード情報が印刷されたラベルが貼付されていてもよい。
【0214】
[樹脂製薬品容器把持機能]
図33に示されるように、前記混注装置1における前記混注処理では、前記薬品容器10として、樹脂製薬液容器10Dが用いられることがある。前記樹脂製薬液容器10Dは、柔軟な胴体部10aと、前記胴体部10aよりも硬い硬質首部10bと、前記硬質首部10bの上部に形成された開口部10cと、前記開口部10cを塞ぎ当該開口部10cから離脱可能に形成された栓部10dと、前記栓部10dに形成された掴み片部10eと、前記胴体部10aの中心軸を通る一の面(以下、「リブ形成面」と称する)内で前記胴体部10aおよび前記硬質首部10bの外壁面に沿って2箇所に形成されたリブ部10fと、を有する。前記掴み片部10eも前記リブ形成面内に形成される。
【0215】
ところで、前記第1ロボットアーム21の保持部25の把持部25aによって前記樹脂製薬液容器10Dが保持される際、当該樹脂製薬液容器10Dは前記硬質首部10bが把持される。しかしながら、前記樹脂製薬液容器10Dは、前記硬質首部10bの外周形状が変形し、当該硬質首部10bが、前記リブ形成面を対称面とする面対称になっていない場合がある。この場合、前記第1ロボットアーム21の保持部25の把持部25aによって前記樹脂製薬液容器10Dを把持する際に、当該樹脂製薬液容器10Dの前記リブ部10fを避けて当該樹脂製薬液容器10Dを把持すると、当該樹脂製薬液容器10Dに傾きが生じるおそれがある。
【0216】
一方、前記樹脂製薬液容器10Dでは、前記リブ部10fにおける前記硬質首部10bの形状には変形が生じ難い。そこで、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21によって前記樹脂製薬液容器10Dを保持する際には、前記把持部25aによって、前記リブ部10fの位置で前記硬質首部10bを把持させる。これにより、前記樹脂製薬液容器10Dの傾きを抑制して前記把持部25aで前記樹脂製薬液容器10Dを保持することが可能である。
【0217】
具体的に、前記樹脂製薬液容器10Dの前記胴体部10aには、例えば光を透過しない素材からなるラベル10gが貼付されている。前記ラベル10gには、内容物、容量、使用期限の情報の他、これらの情報を含むバーコード10hが印刷されている。前記バーコード10hは、一次元コード又は二次元コードなどである。例えば、前記バーコード10hと前記リブ部10fの位置関係については、前記調製データで指定されている樹脂製薬液容器10Dの情報と前記医薬品マスターのデータとを照合することで判断することができる。また、前記樹脂製薬液容器10Dにおける前記硬質首部10bおよび掴み片部10eの高さ位置等も、前記調製データで指定されている樹脂製薬液容器10Dの情報と前記医薬品マスターのデータとを照合することで判断することができる。
【0218】
そして、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34を用いて前記把持部25aによって、前記リブ部10fの位置で前記硬質首部10bを把持させる。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21の保持部25で前記樹脂製薬液容器10Dを保持する場合には、当該樹脂製薬液容器10Dを前記薬品読取部34にセットする。その後、前記第2制御部500は、前記ローラー34aを回転させ、前記ラベル10gのバーコード10hを前記バーコードリーダ34aが認識してから、所定時間後に前記ローラー34aを停止させる。前記所定時間は、前記ラベル10gのバーコード10hを前記バーコードリーダ34aが認識してから、2本の前記ローラー34aの中心軸を含む面に対して前記リブ形成面が平行となるまでの時間である。これにより、前記樹脂製薬液容器10Dは、2本の前記ローラー34aの中心軸を含む面に対して前記リブ形成面が平行となる状態になる。その後、前記第2制御部500は、2本の前記ローラー34aの中心軸を含む面に対して前記一対の把持部25aの把持方向が平行となる状態で、当該把持部25aにより前記樹脂製薬液容器10Dの硬質首部10bを把持する。これにより、前記一対の把持部25aは、前記硬質首部10b上のリブ部10fの位置で、当該硬質首部10bを把持することができ、当該樹脂製薬液容器10Dの傾きが抑制される。
【0219】
[穿刺位置制御の一例]
前記混注処理では、前記輸液吸引工程及び前記薬品吸引工程などにおいて、前記注射器11の注射針11cが前記輸液バッグ12のゴム栓12Dに穿刺される。即ち、前記混注処理では、前記注射針11cが前記ゴム栓12Dに複数回穿刺されることになる。そのため、前記ゴム栓12Dには、前記注射針11cの穿刺位置を示す複数のINポートが所定の間隔を開けて設けられていることがある。しかしながら、前記混注処理における前記ゴム栓12Dへの前記注射針11cの穿刺回数が、前記INポートの数を超えることがある。
【0220】
そこで、前記第2制御部500は、これから実行する前記混注処理における前記ゴム栓12Dへの前記注射針11cの穿刺回数が、前記INポートの数を超えない場合には、複数の前記INポートの位置を予め設定された順で穿刺位置として使用する。一方、前記第2制御部500は、これから実行する前記混注処理における前記ゴム栓12Dへの前記注射針11cの穿刺回数が、前記INポートの数を超える場合には、前記INポートの位置に関係なく、当該穿刺回数に応じて予め設定された間隔の位置を穿刺位置として順に使用する。例えば、前記ゴム栓12Dにおいて前記INポートが120°間隔で3つ設けられている場合であって、前記穿刺回数が4回である場合には、穿刺位置が90°間隔で4箇所に設定されることが考えられる。また、前記INポート及び前記穿刺位置は、同一円上の複数の位置に限らず、同心円上における複数の位置であってもよく、前記ゴム栓12Dにおいて前記アウトポートを避けた任意の位置であってもよい。
【0221】
[穿刺工程の一例]
前記薬品吸引工程において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記注射器11の注射針11cを前記薬品容器10のゴム栓10Cに穿刺する穿刺工程を実行する。このとき、前記注射針11cを前記薬品容器10のゴム栓10Cに穿刺する際、又は、前記注射針11cを前記薬品容器10のゴム栓10Cから引き抜く際には、図34(A)に示されるように、前記注射針11cが水平面よりも上方向に向けられ、前記薬品容器10が水平面よりも下方向に向けられた状態であることが考えられる。
【0222】
しかしながら、図34(B)及び図34(C)に示されるように、前記注射針11cの尖端には前記注射針11cの長手方向(軸方向)に沿って長尺状の開口部11dが形成されており、当該開口部11dの長さは、前記注射針11cの種類などによって異なる。なお、前記開口部11dは、前記注射針11cの中空部の先端側の開放端部として当該注射針11cの先端に形成されている。そして、前記注射針11cの前記開口部11dの長さが、前記薬品容器10の前記ゴム栓10Cの厚みよりも長い場合には、図34(A)に示される状態で前記注射針11cが前記ゴム栓10Cに穿刺される際、又は、前記注射針11cが前記ゴム栓10Cから抜かれる際に、前記開口部11dが前記薬品容器10のゴム栓10Cの内側と外側とに亘って存在して当該薬品容器10の内外を連通する状態となった場合に、前記薬品容器10内の液体が前記開口部11dを介して外に漏れるおそれがある。
【0223】
そこで、前記第2制御部500は、前記混注処理で使用される前記注射針11cの開口部11dの長さに基づいて、前記注射針11cが前記薬品容器10に穿刺される際又は前記注射針11cが前記薬品容器10から抜かれる際の相対的な位置関係を変更することが考えられる。具体的に、前記データ記憶部504に、前記注射針11cの種類ごとに対応する前記開口部11dの長さ、及び前記薬品容器10のゴム栓10Cの厚みなどの情報が予め登録された器材マスターが記憶される。これにより、前記第2制御部500は、前記器材マスターに基づいて前記注射針11cの開口部11dの長さ及び前記薬品容器10のゴム栓10Cの厚みを判断することが可能である。
【0224】
そして、前記第2制御部500は、前記注射針11cの開口部11dの長さが予め設定された下限値未満である場合には、前記注射針11cが水平面よりも上方向に向けられ、前記薬品容器10が水平面よりも下方向に向けられた第1状態で(図34(A)参照)、前記注射針11cを前記薬品容器10のゴム栓10Cに穿刺し、又は前記注射針11cを前記ゴム栓10Cから引き抜く。例えば、前記下限値は、前記薬品容器10のゴム栓10Cの厚みであってもよく、前記薬品容器10のゴム栓10Cの厚みとは関係なく予め定められた値であってもよい。一方、前記第2制御部500は、前記注射針11cの開口部11dの長さが前記下限値以上である場合には、前記注射針11cが水平面よりも下方向に向けられ、前記薬品容器10が水平面よりも上方向に向けられた第2状態で(図34(D)参照)、前記注射針11cを前記ゴム栓10Cに穿刺し、又は前記注射針11cを前記ゴム栓10Cから引き抜く。これにより、前記注射針11cの開口部11dを介して液体が漏れることを抑止することが可能である。
【0225】
なお、前記第2制御部500は、前記注射針11cを前記ゴム栓10Cに穿刺する際、又は前記注射針11cを前記ゴム栓10Cから引き抜く際の相対位置が図34(D)に示される前記第1状態であっても、前記注射器11で液体を吸引する際は、図34(A)に示される前記第2状態に遷移させてもよい。また、前記注射針11cの穿刺対象は前記薬品容器10に限らず、液体が収容される他の容器に対して前記注射針11cが穿刺される場合又は引き抜かれる場合も同様である。なお、前記第2制御部500に代えて、前記第1制御部400が同様の判断処理を実行し、前記第2制御部500に制御指示を送信してもよい。
【0226】
[混注振分機能]
ところで、前記混注システム2は、前記上位システム600に接続された複数の前記混注装置1を備えることが考えられる。この場合、前記混注システム2では、前記上位システム600から前記混注装置1各々に前記調製データが送信され、当該混注装置1各々で前記調製データが作業者によって任意に選択されて前記混注処理が実行されることが考えられる。即ち、前記調製データに基づく前記混注処理を実行する前記混注装置1が作業者によって振り分けられることが考えられる。
【0227】
しかしながら、前記混注装置1各々では、当該混注装置1の機種又は当該混注装置1の設定などにより、当該混注装置1で実行可能な前記混注処理の内容が制限されることがある。例えば、前記混注装置1の機種に応じて、前記混注処理で使用可能な前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12、又は前記中継部材90の種類が異なることが考えらえる。
【0228】
そこで、前記上位システム600では、前記制御部601が、前記調製データの内容に応じて、当該調製データに基づく前記混注処理が実行可能な前記混注装置1を特定可能であることが考えられる。例えば、前記上位システム600には、前記調製データを識別するための一次元コード又は二次元コードなどのコード情報を読み取り可能なコード読取部が接続される。一方、前記上位システム600の前記記憶部602には、前記混注装置1各々の機種又は設定などの情報と、前記混注装置1で実行可能な前記混注処理の内容を示す情報とが対応付けられた装置情報が記憶されている。
【0229】
そして、前記制御部601は、処方箋又は調製指示書などに記載された前記コード情報が前記コード読取部によって読み取られると、前記コード情報に対応する前記調製データに基づく前記混注処理が実行可能な前記混注装置1を前記装置情報に基づいて特定する。その後、前記制御部601は、前記混注処理が実行可能であると特定された前記混注装置1を作業者に提示し、又は、前記混注処理が実行可能であると特定された前記混注装置1に自動的に当該混注処理を実行させる。
【0230】
また、前記制御部601は、前記調製データに基づく前記混注処理が実行可能な前記混注装置1が複数存在する場合には、当該混注処理の実行に適した前記混注装置1を選択してもよい。
【0231】
例えば、前記制御部601は、前記混注装置1各々の前記データ記憶部404に記憶されている前記待機情報D31を取得し、当該待機情報D31を当該混注装置1が識別可能な情報と共に前記記憶部602に記憶する。これにより、前記制御部601は、前記混注装置1各々に対応する前記待機情報D31に基づいて、当該混注装置1各々における混注処理の待機状況を把握することが可能である。そして、前記制御部601は、前記待機情報D31に基づいて、前記調製データに基づく前記混注処理が最も早く実行可能な前記混注装置1を当該混注処理の実行に適した前記混注装置1として選択する。その後、前記制御部601は、選択された前記混注装置1を作業者に提示し、又は、選択された前記混注装置1に自動的に当該混注処理を実行させる。
【0232】
また、前記制御部601は、複数の前記混注装置1のうち前記調製データに基づく前記混注処理において残薬が使用可能な前記混注装置1を当該混注処理の実行に適した前記混注装置1として選択可能であってもよい。この場合、前記制御部601は、前記混注装置1各々の前記データ記憶部404に記憶されている前記残薬情報D30を取得し、当該残薬情報D30を当該混注装置1が識別可能な情報と共に前記記憶部602に記憶する。これにより、前記制御部601は、前記混注装置1各々に対応する前記残薬情報D30に基づいて、当該混注装置1各々に存在する残薬の情報を把握することが可能である。そして、前記制御部601は、前記コード読取部によって前記コード情報が読み取られると、当該コード情報に対応する前記調製データに基づく前記混注処理で使用可能な薬品が残薬として存在する前記混注装置1を前記残薬情報D30に基づいて選択する。その後、前記制御部601は、選択された前記混注装置1を作業者に提示し、又は、選択された前記混注装置1に自動的に当該混注処理を実行させる。例えば、前記制御部601は、「〇号機の混注装置に残薬があるので、〇号機の混注装置を使用してください。」などのように残薬が使用可能な前記混注装置1の使用を促すメッセージを作業者に提示する。これにより、前記混注システム2全体として残薬を効率的に使用することが可能となる。
【0233】
なお、他の実施形態として、前記上位システム600に代えて、前記第1制御部400が、複数の前記混注装置1に接続されており、当該第1制御部400が、前記調製データに基づく前記混注処理を実行し得る前記混注装置1を特定してもよい。さらに、前記上位システム600に代えて、前記上位システム600又は前記混注装置1などに通信可能な携帯端末が、ユーザー操作に応じて、前記調製データに基づく前記混注処理を実行する前記混注装置1を選択可能であってもよい。この場合、前記携帯端末は、前記上位システム600及び前記混注装置1各々から、前記調製データ、前記残薬情報D30、及び前記待機情報D31などの各種の情報を取得し、前記混注装置1各々で待機中の前記調製データの数、当該調製データの内容、前記混注装置1に存在する残薬の情報などを参考情報として作業者に提示することが考えられる。また、前記携帯端末は、前記調製データに基づいて当該調製データに対応する患者が入院患者又は外来患者のいずれであるかを前記参考情報として提示してもよい。さらに、前記混注装置1各々では、前記待機情報D31において、前述したように前記上位システム600等により自動的に振り分けられたものであるか、前記調製データが前記携帯端末によって振り分けられたものであるか等が記憶されており、前記携帯端末が、その情報を前記参考情報として提示してもよい。
【0234】
[エラー報知機能]
前記混注装置1では、前記第1ロボットアーム21、前記第2ロボットアーム22、前記攪拌装置32、前記薬品読取部34、前記秤量計35、及び前記針曲り検知部36などの各種の制御対象の状態を検出する各種のセンサが設けられる。そして、前記第1制御部400又は前記第2制御部500は、前記各種のセンサの検出結果に基づいて前記混注装置1で実行される前記混注処理について異常が検出された場合に、その旨を前記混注装置1に設けられたスピーカー又は表示部などを用いて報知するエラー報知機能を有する。これにより、前記混注装置1を利用する薬剤師などの作業者は、前記混注装置1の異常を把握することが可能である。
【0235】
ところで、前記混注装置1を利用する薬剤師などの作業者は、当該混注装置1で前記混注処理が実行されているときに当該混注装置1の近くに居るとは限らない。そこで、前記第1制御部400又は前記第2制御部500は、前記混注装置1で異常が検出された場合には、前記混注装置1における報知を行った後、当該混注装置1の異常を確認するためのユーザー操作を待ち受ける。その後、前記第1制御部400又は前記第2制御部500は、予め設定された待機時間内に前記ユーザー操作が行われなかった場合には、予め設定された宛先に異常情報を送信する。前記宛先は、前記混注装置1とは別に利用される作業者のパーソナルコンピュータ、携帯端末、又はスマートフォンなどの情報処理装置に前記異常情報を送信するためのメールアドレス、SNSアドレス、又は電話番号などである。これにより、前記情報処理装置では、作業者に前記異常情報が報知される。したがって、作業者が前記混注装置1から離れた位置に居る場合にも、当該混注装置1における異常の発生を把握することが可能である。
【0236】
[実行保留予約機能]
前述したように、前記混注システム2では、前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約することが可能である。一方、前記第1制御部400が、前記調整データに基づく前記混注処理の実行タイミングを保留状態にして予約する実行保留予約機能を備えることが考えられる。具体的に、前記第1制御部400は、図28の前記実行指示画面P10において、前記調製データの予約手法の選択操作を受け付けるための操作キーK11~K13と共に、前記混注処理の実行タイミングを保留状態にして予約するための保留操作キーを表示する。
【0237】
そして、前記第1制御部400は、前記混注管理処理において、前記保留操作キーが選択されて前記調製データに基づく混注処理の実行要求が行われると(S21:Yes)、処理を前記ステップS22に移行する。その後、前記第1制御部400は、前記ステップS22において、前記自動予約処理を実行しないと判定し(S22:No)、前記ステップS221において、前記調製データに基づく混注処理を実行タイミングが保留状態となるように前記待機情報D31を更新する(S221)。例えば、前記待機情報D31において、保留対象の前記調製データに対応する「実行タイミング」の情報として「保留」が記録される。なお、前記第1制御部400は、前記ステップS221の実行後、前記ステップS23~S27を実行する。これにより、前記混注装置1では、前記調製データに対応する前記トレイ101が前記収容ユニット700に収容された状態であって、当該調製データに基づく混注処理が自動的には実行されず、当該調製データに基づく混注処理が保留状態となる。また、前記第1制御部400は、前記待機情報D31に登録されており前記混注処理が未実行の前記調製データについて、当該混注処理の実行をユーザー操作に応じて保留することが可能であってもよい。
【0238】
その後、前記第1制御部400は、ユーザー操作によって、前記待機情報D31に前記保留状態で予約された前記調製データが選択され、当該調製データに基づく混注処理の実行開始要求が行われると、当該調製データの実行タイミングが到来したと判断し、前記第2制御部500に前記調製データについての前記混注処理の実行開始要求を送信する。これにより、前記第2制御部500は、前記混注制御処理において、前記混注処理の実行タイミングであると判断し(S50:Yes)、前記調製データに基づく混注処理を実行することになる。また、前記第2制御部500が、ユーザー操作によって、前記待機情報D31に前記保留状態で予約された前記調製データが選択され、当該調製データに基づく混注処理の実行開始要求が行われた場合に、前記混注処理の実行タイミングであると判断し(S50:Yes)、前記調製データに基づく混注処理を実行してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
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図34