(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】保護システム
(51)【国際特許分類】
H02H 3/347 20060101AFI20241107BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20241107BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20241107BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H02H3/347
H02H7/26 H
H02H7/00 H
H02H3/16 B
(21)【出願番号】P 2024117987
(22)【出願日】2024-07-23
【審査請求日】2024-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】濱▲崎▼ 晃旗
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-44861(JP,A)
【文献】特開2003-209925(JP,A)
【文献】特開2002-51468(JP,A)
【文献】特開2009-219260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/32-3/52
H02H 7/22-7/30
H02H 7/00
H02H 7/10ー7/20
H02H 1/00-3/07
H02H 3/08-3/253
H02H 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相交流電力を供給する電力系統と、
3相交流電力の電圧を変圧する変圧器と、
前記変圧器の中性点に接続される中性点補償リアクトルと、
を備える送電システムを保護する保護システムであって、
前記保護システムは、
前記電力系統と前記変圧器との間に位置している第1遮断器と、
前記中性点補償リアクトルに直列に接続されている第2遮断器と、
前記第1遮断器および前記第2遮断器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、前記第2遮断器を遮断し、前記第2遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に前記第1遮断器を遮断する、保護システム。
【請求項2】
前記変圧器は、前記電力系統から供給される3相交流電力の電圧を変圧する変圧器である、請求項1に記載の保護システム。
【請求項3】
前記電力系統と連系している、前記電力系統とは別の電源装置に接続されている送電ケーブルをさらに備え、
前記変圧器は、前記電源装置と前記送電ケーブルとの間に位置し、前記電源装置から供給される3相交流電力の電圧を変圧する変圧器である、請求項1に記載の保護システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出しなかった場合に、前記第2遮断器を遮断せずに前記第1遮断器を遮断する、請求項1に記載の保護システム。
【請求項5】
3相交流電力を供給する電力系統と、
3相交流電力の電圧を変圧する変圧器と、
前記変圧器の中性点に接続される中性点補償リアクトルと、
前記電力系統と連系している、前記電力系統とは別の電源装置に接続されている送電ケーブルと、
を備える送電システムを保護する保護システムであって、
前記保護システムは、
前記電力系統と前記変圧器との間に位置している第1遮断器と、
前記送電ケーブルと第1遮断器との間に位置している第3遮断器と、
前記第1遮断器および前記第3遮断器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、前記第3遮断器を遮断し、前記第3遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に前記第1遮断器を遮断する、保護システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記外部からの遮断信号を、前記電力系統の制御システムから受信する、請求項1または5に記載の保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3相交流の電力系統を保護する保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、3相交流の電力系統において1線地絡故障または2線地絡故障が発生した場合に電力系統を保護する保護システムが開示されている。当該保護システムにおいては、送電ケーブルの充電容量を補償するために設置される中性点補償リアクトルに直列に中性点抵抗が接続されている。1線地絡故障または2線地絡故障が発生した場合には、零相電圧が発生し、故障電流が中性点補償リアクトルに流れる。故障電流に含まれる直流成分は、中性点抵抗により減衰される。その結果、零ミスが回避される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】飯山和彦 他,“非有効接地系統の長距離ケーブルにおける地絡投入零ミス現象と防止方法”,平成18年電気学会全国大会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示されている保護システムにおいては、中性点抵抗を有することで、故障電流の有効電流成分が大きくなる。この場合、通信線への電磁誘導障害のリスクが高まる。このため、中性点抵抗を用いた零ミスの回避方法を適用できない場合がある。
【0005】
本開示の一態様は、中性点抵抗を用いずに零ミスを回避可能な保護システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る保護システムは、3相交流電力を供給する電力系統と、3相交流電力の電圧を変圧する変圧器と、前記変圧器の中性点に接続される中性点補償リアクトルと、を備える送電システムを保護する保護システムであって、前記保護システムは、前記電力系統と前記変圧器との間に位置している第1遮断器と、前記中性点補償リアクトルに直列に接続されている第2遮断器と、前記第1遮断器および前記第2遮断器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、前記第2遮断器を遮断し、前記第2遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に前記第1遮断器を遮断する。
【0007】
また、本開示の一態様に係る保護システムは、3相交流電力を供給する電力系統と、3相交流電力の電圧を変圧する変圧器と、前記変圧器の中性点に接続される中性点補償リアクトルと、前記電力系統と連系している、前記電力系統とは別の電源装置に接続されている送電ケーブルと、を備える送電システムを保護する保護システムであって、前記保護システムは、前記電力系統と前記変圧器との間に位置している第1遮断器と、前記送電ケーブルと第1遮断器との間に位置している第3遮断器と、前記第1遮断器および前記第3遮断器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、前記第3遮断器を遮断し、前記第3遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に前記第1遮断器を遮断する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、中性点抵抗を用いずに零ミスを回避可能な保護システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る保護システムを備える送電システムを例示する図である。
【
図2】実施形態1に係る保護システムにおける処理を例示するフローチャートである。
【
図3】比較例の送電システム、および実施形態1の送電システムにおいて1線地絡故障が発生した場合の電流を例示するグラフである。
【
図4】実施形態2に係る保護システムを備える送電システムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態1に係る保護システム20を備える送電システム100を例示する図である。保護システム20は、送電システム100を保護するシステムである。
図1に示すように、送電システム100は、電力系統1、第1遮断器4、送電ケーブル5、変圧器6、中性点補償リアクトル7、第2遮断器9、第3遮断器10、および制御装置11を備える。このうち、第1遮断器4、第2遮断器9、および制御装置11が、保護システム20を構成する。
【0012】
電力系統1は、3相交流電力を供給する。
図1における符号2は、電力系統1の背後インピーダンスを示す。
【0013】
送電ケーブル5は、電力系統1と連系している、不図示の別の電源装置に接続されている。すなわち、電力系統1は、
図1に示す連系点P2を介して、当該別の電源装置と接続可能である。
【0014】
第1遮断器4は、連系点P2において電流を遮断するために、当該連系点P2に配置されている。換言すれば、第1遮断器4は、電力系統1と変圧器6との間に位置している。
図1では、連系点P2よりも電力系統1側の事故点P1において、1線地絡故障が生じた場合が例示されている。送電システム100において1線地絡故障が生じた場合、送電ケーブル5から第1遮断器4に向かって故障電流が流れる。
【0015】
変圧器6は、3相交流電力の電圧を変圧する。
図1の例では、変圧器6は、電力系統1から供給される3相交流電力の電圧を変圧する。変圧器6は、送電ケーブル5と並列に、第1遮断器4を介して電力系統1に接続されている。変圧器6は、3相の変圧器である限り、任意のタイプの変圧器であってよい。変圧器6の二次側には、例えばフィルタまたは調相設備などが接続されている。
【0016】
中性点補償リアクトル7は、変圧器6の中性点に接続されている。中性点補償リアクトル7は、送電ケーブル5の充電容量を補償する目的で設けられている。中性点補償リアクトル7の、変圧器6の中性点に接続される側とは逆側は、接地されている。
【0017】
第2遮断器9は、中性点補償リアクトル7に直列に接続されている。具体的には、第2遮断器9は、中性点補償リアクトル7の高圧側に接続されている。送電システム100においては、事故点P1において1線地絡故障が生じた場合に、事故点P1から第1遮断器4および変圧器6を介して中性点補償リアクトル7に故障電流が流れる。第2遮断器9は、故障電流を遮断する。
【0018】
第3遮断器10は、送電ケーブル5と第1遮断器4との間に位置する。具体的には、第3遮断器10は、互いに並列に第1遮断器4を介して電力系統1に接続されている変圧器6および送電ケーブル5の、送電ケーブル5側に位置する。このため、第3遮断器10の動作は、電力系統1から変圧器6への電流の経路には影響しない。
【0019】
制御装置11は、第1遮断器4および第2遮断器9を制御する。制御装置11は、第1遮断器リレー111、第2遮断器リレー112、およびEVT(Earthed Voltage Transformer、接地形計器用変圧器)113を含む。第1遮断器リレー111は、第1遮断器4に電流を遮断させるリレーである。第2遮断器リレー112は、第2遮断器9に電流を遮断させるリレーである。EVT113は、変圧器6の零相電圧を計測するための変圧器である。
【0020】
さらに、制御装置11は、第1遮断器リレー111および第2遮断器リレー112を制御する、図示しない制御処理部を含む。制御処理部は、例えば当該制御処理部としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。また、制御処理部は、論理回路により実現することも可能である。以下の説明では、制御処理部による、第1遮断器リレー111を介しての第1遮断器4の制御、または、第2遮断器リレー112を介しての第2遮断器9の制御について、簡単のため、制御装置11による第1遮断器4または第2遮断器9の制御として記載している。
【0021】
制御装置11は、外部からの遮断信号を第1遮断器リレー111が受信した場合に、電力の供給が適切に遮断されるように、第1遮断器4および第2遮断器9を制御する。外部からの遮断信号は、いずれかの設備での故障発生時に当該設備を切り離すために外部から送られてくる遮断信号である。
【0022】
図1に例示した送電システム100においては、制御装置11は、外部からの遮断信号を、電力系統1の制御システムから受信する。電力系統1の制御システムは、例えば事故点P1において1線地絡故障または2線地絡故障が生じた場合、第1遮断器リレー111に対して遮断信号を出力する。これにより、制御装置11は、事故点P1における1線地絡故障または2線地絡故障に対応して、電流を遮断できる。
【0023】
図2は、保護システム20における処理を例示するフローチャートである。
図2に例示する処理では、まず、制御装置11は、外部からの遮断信号を受信したか判定する(S1)。外部からの遮断信号を受信した場合(S1でYES)、さらに制御装置11は、零相電圧が設定値以下でないか判定する(S2)。設定値は、送電システム100において1線地絡故障または2線地絡故障が発生した場合に想定される零相電圧の値として、送電システム100の設計者により適宜設定される値である。
【0024】
制御装置11が外部からの遮断信号を受信し、かつ、零相電圧が設定値以下でない場合(S2でYES)には、1線地絡故障または2線地絡故障が発生していると考えられる。この場合、制御装置11は、第2遮断器9を遮断し(S3)、その後、第1遮断器4を遮断する(S4)。このとき、制御装置11は、第2遮断器9を遮断した後ではなく、第2遮断器9を遮断すると同時に第1遮断器4を遮断してもよい。第2遮断器9および第1遮断器4の遮断後、制御装置11は、処理を終了する。
【0025】
制御装置11が外部からの遮断信号を受信し、かつ、零相電圧が設定値以下である場合(S2でNO)には、母線に短絡故障が発生していると考えられる。ここでいう母線とは、電力系統1と連系点P2との間の架空線およびケーブルを指す。この場合、制御装置11は、第2遮断器9を遮断せずに、第1遮断器4を遮断する(S5)。第1遮断器4の遮断後、制御装置11は、処理を終了する。
【0026】
制御装置11が外部からの遮断信号を受信しなかった場合(S1でNO)、制御装置11は、零相電圧が設定値以下でないか判定する(S6)。制御装置11が外部からの遮断信号を受信せず、かつ、零相電圧が設定値以下でない場合(S6でYES)には、送電システム100の設備の内部または外部において地絡故障が発生していると考えられる。この場合、制御装置11は、設備の内部の故障であれば第1遮断器4を遮断し、設備の外部の故障であれば第1遮断器4を遮断しない(S7)。その後、制御装置11は、処理を終了する。
【0027】
ステップS7において、地絡故障が設備の内部および外部のいずれで発生しているかを制御装置11が判断する方法については説明を省略する。また、ステップS7において、地絡故障が設備の内部で発生している場合、制御装置11は、第2遮断器9を遮断してもよい。地絡故障が設備の外部で発生している場合には、制御装置11は、第2遮断器9については遮断しない。
【0028】
制御装置11が外部からの遮断信号を受信せず、かつ、零相電圧が設定値以下である場合(S6でNO)には、送電システム100の設備の内部または外部において短絡故障が発生していることが考えられる。この場合、制御装置11は、短絡故障が発生しているか否かを判定する(S8)。短絡故障が発生しているか否かは過電流リレーなどにより検出される。
【0029】
短絡故障が発生している場合(S8でYES)には、送電システム100の設備の内部または外部において短絡故障が発生していると考えられる。この場合、制御装置11は、設備の内部の故障であれば第1遮断器4を遮断し、設備の外部の故障であれば第1遮断器4を遮断しない(S9)。その後、制御装置11は、処理を終了する。一方、短絡故障が発生していない場合(S8でNO)、送電システム100において特に事故は発生していないと考えられる。この場合、制御装置11は、第1遮断器4および第2遮断器9のいずれも遮断せずに処理を終了する。
【0030】
図3は、比較例の送電システム、および実施形態1の送電システム100において1線地絡故障が発生した場合の電流を例示するグラフである。比較例の送電システムでは、制御装置11は、外部からの遮断信号を受信した場合に、第2遮断器9を遮断せずに第1遮断器4の遮断を試みる。
【0031】
図3において、符号301は、比較例の送電システムにおいて第1遮断器4に流れる電流を示す。符号302は、比較例の送電システムにおいて中性点補償リアクトル7に流れる電流を示す。符号303は、送電システム100において第1遮断器4に流れる電流を示す。符号304は、送電システム100において中性点補償リアクトル7に流れる電流を示す。符号301~304のいずれのグラフにおいても、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は電流の大きさ(A)を示す。
図3においては、1線地絡故障が発生した時刻をt1としている。
【0032】
比較例の送電システムにおいては、符号302に示すように、時刻t1において1線地絡故障が発生した後、第2遮断器9が遮断されず、中性点補償リアクトル7に電流が流れ続ける。このため、符号301に示すように、第1遮断器4も遮断されず、電流が流れ続ける。すなわち、第1遮断器4は、零ミスの状態となる。
【0033】
送電システム100においては、符号304に示すように、時刻t1において1線地絡故障が発生した後、中性点補償リアクトル7に流れる電流が最初に0になった時刻t2において、第2遮断器9が遮断される。このため、符号303に示すように、時刻t2の後、第1遮断器4に流れる電流が0になったタイミングで、第1遮断器4が遮断される。
【0034】
以上のとおり、保護システム20によれば、制御装置11が第1遮断器4を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、変圧器6の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、第2遮断器9を遮断し、第2遮断器9を遮断すると同時、または遮断した後に第1遮断器4を遮断する。これにより、1線地絡故障または2線地絡故障の発生時に、第1遮断器4における零ミスを回避できる。
【0035】
また、保護システム20において、制御装置11は、ステップS5のとおり、外部からの遮断信号を受信し、かつ、変圧器6の零相電圧が設定値以下でないことを検出しなかった場合に、第2遮断器9を遮断せずに第1遮断器4を遮断する。これにより、制御装置11は、母線に地絡故障が発生した場合であっても、速やかに故障電流を遮断できる。
【0036】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0037】
図4は、実施形態2に係る保護システム20Aを備える送電システム100Aを例示する図である。送電システム100Aは、送電システム100の構成に加えて、変圧器6A、中性点補償リアクトル7A、および第2遮断器9Aを備える。簡単のため、
図4においては、
図1で図示していた中性点補償リアクトル7および第2遮断器9については省略している。また、送電システム100Aは、送電システム100が備えていた制御装置11の代わりに、制御装置11Aを備える。送電システム100Aにおいては、第1遮断器4、第2遮断器9A、および制御装置11Aが、保護システム20Aを構成する。
【0038】
変圧器6Aは、連系点P2を介して電力系統1に接続されている、電力系統1とは別の電源装置と、送電ケーブル5との間に位置する変圧器である。変圧器6Aは、電力系統1とは別の電源装置から供給される電力の電圧を変圧する。
図4においては、変圧器6Aに直列に電源装置(不図示)が接続されているものとしている。しかし、変圧器6Aに並列に電源装置が接続されていてもよい。
【0039】
中性点補償リアクトル7Aは、変圧器6Aの中性点に接続されている。中性点補償リアクトル7Aの機能は、中性点補償リアクトル7の機能と同じである。第2遮断器9Aは、中性点補償リアクトル7に直列に接続されている。第2遮断器9Aの機能は、第2遮断器9の機能と同じである。
【0040】
制御装置11Aは、第2遮断器9の代わりに第2遮断器9Aを制御する点で、制御装置11と相違する。制御装置11Aは、第2遮断器リレー112の代わりに第2遮断器リレー112Aを含み、EVT113の代わりにEVT113Aを含む。第2遮断器リレー112Aは、第2遮断器9Aに電流を遮断させるリレーである。EVT113Aは、変圧器6Aの零相電圧を計測するための変圧器である。
【0041】
制御装置11Aは、制御装置11が第2遮断器9に対して行っていた制御と同じ制御を、第2遮断器9Aに対して行う。すなわち、制御装置11Aは、外部からの遮断信号を受信し、かつ、零相電圧が設定値以下でない場合に、第2遮断器9Aを遮断する。また、制御装置11Aは、第2遮断器9Aを遮断した後、または第2遮断器9Aを遮断すると同時に、第1遮断器4を遮断する。第1遮断器4、第2遮断器9Aおよび制御装置11Aを備える保護システム20Aによっても、1線地絡故障または2線地絡故障の発生時に、第1遮断器4における零ミスを回避できる。
【0042】
〔実施形態3〕
本開示のさらに他の実施形態について、以下に説明する。
【0043】
図1に例示した送電システム100において、制御装置11は、第2遮断器9の代わりに第3遮断器10を制御してもよい。すなわち、送電システム100において、第1遮断器4、第3遮断器10および制御装置11が、保護システム20を構成していてもよい。
【0044】
この場合、制御装置11は、外部からの遮断信号を受信し、かつ、零相電圧が設定値以下でない場合に、第2遮断器9の代わりに第3遮断器10を遮断する。さらに、制御装置11は、第3遮断器10を遮断した後、または第3遮断器10を遮断すると同時に第1遮断器4を遮断する。保護システム20がこのように動作することによっても、事故点P1における1線地絡故障または2線地絡故障の発生時に、第1遮断器4における零ミスを回避できる。
【0045】
〔まとめ〕
本開示は、以下のようにも表現される。
【0046】
本開示の態様1に係る保護システムは、3相交流電力を供給する電力系統と、3相交流電力の電圧を変圧する変圧器と、前記変圧器の中性点に接続される中性点補償リアクトルと、を備える送電システムを保護する保護システムであって、前記保護システムは、前記電力系統と前記変圧器との間に位置している第1遮断器と、前記中性点補償リアクトルに直列に接続されている第2遮断器と、前記第1遮断器および前記第2遮断器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、前記第2遮断器を遮断し、前記第2遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に前記第1遮断器を遮断する。
【0047】
本開示の態様2に係る保護システムは、態様1において、前記変圧器は、前記電力系統から供給される3相交流電力の電圧を変圧する変圧器である。
【0048】
本開示の態様3に係る保護システムは、態様1において、前記電力系統と連系している、前記電力系統とは別の電源装置に接続されている送電ケーブルをさらに備え、前記変圧器は、前記電源装置と前記送電ケーブルとの間に位置し、前記電源装置から供給される3相交流電力の電圧を変圧する変圧器である。
【0049】
本開示の態様4に係る保護システムは、態様1から3のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出しなかった場合に、前記第2遮断器を遮断せずに前記第1遮断器を遮断する。
【0050】
本開示の態様5に係る保護システムは、3相交流電力を供給する電力系統と、3相交流電力の電圧を変圧する変圧器と、前記変圧器の中性点に接続される中性点補償リアクトルと、前記電力系統と連系している、前記電力系統とは別の電源装置に接続されている送電ケーブルと、を備える送電システムを保護する保護システムであって、前記保護システムは、前記電力系統と前記変圧器との間に位置している第1遮断器と、前記送電ケーブルと第1遮断器との間に位置している第3遮断器と、前記第1遮断器および前記第3遮断器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1遮断器を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、前記変圧器の零相電圧が設定値以下でないことを検出した場合に、前記第3遮断器を遮断し、前記第3遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に前記第1遮断器を遮断する。
【0051】
本開示の態様6に係る保護システムは、態様1から5のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記外部からの遮断信号を、前記電力系統の制御システムから受信する。
【0052】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 電力系統
4 第1遮断器
5 送電ケーブル
6、6A 変圧器
7、7A 中性点補償リアクトル
9、9A 第2遮断器
10 第3遮断器
11、11A 制御装置
20、20A 保護システム
100、100A 送電システム
【要約】
【課題】中性点抵抗を用いずに零ミスを回避可能な保護システムを実現する。
【解決手段】保護システム(20)は、電力系統(1)と変圧器(6)との間に位置している第1遮断器(4)を遮断する外部からの遮断信号を受信し、かつ、変圧器の零相電圧が設定値以下でない場合に、中性点補償リアクトル(7)に直列に接続されている第2遮断器(9)を遮断し、第2遮断器を遮断すると同時、または遮断した後に第1遮断器を遮断する、制御装置(11)を備える。
【選択図】
図1