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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】広告の関心度評価システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0242 20230101AFI20241107BHJP
【FI】
G06Q30/0242
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020200161
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087982
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大地
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 耕二
【審査官】久慈 渉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-144895(JP,A)
【文献】特開2020-030717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、視聴者の視線を集める誘目要素を含む第1画像を表示する第1表示期間と、前記第1表示期間に続いて商品及び/又はサービスの情報を含む第2画像を表示する第2表示期間とを有する動画像広告であってディスプレイ上に表示された前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する広告の関心度評価システムにおいて、
前記ディスプレイを視る視聴者の視線を検出する視線検出手段と、
前記視線検出手段の検出結果に基づき、前記第1表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第1集団と前記第2表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第2集団とを演算する集団演算手段と、
前記集団演算手段で演算された第1,第2集団に共通する視聴者の人数に基づいて前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する関心度評価手段とを備え
前記集団演算手段は、前記ディスプレイを視認可能な視聴者を抽出した第3集団を演算し、
前記関心度評価手段は、前記第3集団の人数に対する前記第1,第2集団に共通する視聴者の人数の割合に基づき前記動画像広告の効果の大きさを評価することを特徴とする広告の関心度評価システム。
【請求項2】
前記動画像広告が、前記第2表示期間に続いて視聴者の購入意思決定を後押しする情報を含む第3画像を表示する第3表示期間を有することを特徴とする請求項1に記載の広告の関心度評価システム。
【請求項3】
前記ディスプレイは、前記第1,第2集団に共通する視聴者が存在しない場合、前記第3画像の表示を禁止することを特徴とする請求項2に記載の広告の関心度評価システム。
【請求項4】
前記関心度評価手段は、前記第1,第2集団の人数の時間変化に基づき時間帯毎の前記動画像広告の効果を評価することを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の広告の関心度評価システム。
【請求項5】
少なくとも、視聴者の視線を集める誘目要素を含む第1画像を表示する第1表示期間と、前記第1表示期間に続いて商品及び/又はサービスの情報を含む第2画像を表示する第2表示期間とを有する動画像広告であってディスプレイ上に表示された前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する広告の関心度評価システムにおいて、
前記ディスプレイを視る視聴者の視線を検出する視線検出手段と、
前記視線検出手段の検出結果に基づき、前記第1表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第1集団と前記第2表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第2集団とを演算する集団演算手段と、
前記集団演算手段で演算された第1,第2集団に共通する視聴者の人数に基づいて前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する関心度評価手段とを備え、
前記動画像広告が、前記第2表示期間に続いて視聴者の購入意思決定を後押しする情報を含む第3画像を表示する第3表示期間を有し、
前記ディスプレイは、前記第1,第2集団に共通する視聴者が存在しない場合、前記第3画像の表示を禁止することを特徴とする広告の関心度評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ上に表示された動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する広告の関心度評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般消費者が商品を購入する場合、注意(Attention)、関心(Interest)、欲求(Desire)、記憶(Memory)、購入(Action)の流れを無意識に行うことが知られている。このAIDMA(アイドマ)の法則以外にも、社会状況に合わせてAISASやSIPS等のマーケティングのフレームワーク(消費者心理プロセス)が提案されている。
そして、広告の制作者は、購入候補者である視聴者に制作意図を伝えるため、視聴者の注意(視線)を引き付けるように構図やカメラワーク等演出上の工夫を施した動画像広告を作成している。
【0003】
視聴者の視線をパラメータとして視聴者の購買意欲を高める技術が存在する。
特許文献1の情報配信方法は、広告物の関連情報を表示すると共に視聴者(歩行者)の視線を案内可能な携帯端末と、視聴者が広告物に接近したときに視聴者が広告物に視線を向けたか否か判定する路側機とを有し、路側機は、視聴者の視線が広告物に向いたことを検出したとき、携帯端末に広告物についての関連情報を表示させる指令信号を出力している。
【0004】
また、視聴者の視線をパラメータとして視聴者の関心度を評価する技術も存在する。
特許文献2の嗜好調査システムは、広告コンテンツを表示するコンテンツ表示手段と、コンテンツを視認する視聴者を撮影する撮影手段と、撮影した映像からコンテンツを視認する視聴者の視線を追尾する視線追尾手段と、視聴者がコンテンツを視認していた視認時間を測定する視認時間測定手段と、視聴者がコンテンツを視認していた視認時間に、コンテンツに表示されていた表示内容に関する情報を取得する表示内容情報取得手段と、視認時間に基づき表示内容に対する視聴者の関心度を定量化する関心度定量化手段と、表示内容情報と関心度とを関連付けて記録する記録手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-030717号公報
【文献】特開2008-243058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の嗜好調査システムは、大きなスペースを必要とすることなく、視聴者の視線をパラメータとして視聴者の関心度、所謂視聴者に対する広告効果を検出している。
しかし、視聴者が動画像広告を視認していた視認時間に基づき視聴者の関心度を推定する場合、視聴者が本当にその動画像広告に関心を示しているのか或いは単に視線(顔)を向けただけなのか不明であり、関心度が必ずしも高い精度で検出されているとは言い難い。
【0007】
図11に示すように、ディスプレイに表示される動画像広告は、最初に、視聴者の視線を集めるための第1画像が第1表示期間T1の間表示され、次に、商品やサービスを訴求するための第2画像が第2表示期間T2の間表示され、次に、視聴者の購入意思決定を後押しするための第3画像が第3表示期間T3の間表示されるように構成されている。最後に、キャッチコピーやメーカのハウスマーク(商標)が流れるように構成されている。
そして、第1画像は、誘目性(視覚的顕著性、或いはサリエンシーともいう)が高い要素を用いて動画像が構成されていることが多いことから、興味や意思等の視聴者特有の特別な要因を考慮しなければ、人間工学上、視野内で誘目性の高い領域が自然に注視される。
【0008】
それ故、第1表示期間T1が比較的短い広告の場合、視聴者の視認時間が通常よりも短くなり、第1表示期間T1が比較的長い広告の場合、広告物に興味がない(第2画像以降を視ない)視聴者であっても、視聴者の平均視認時間が長くなることが予想される。
一方、視線が誘引された視聴者のうち広告物に対して興味を生じた視聴者は、第1画像に引き続き第2画像を視聴することになる。また、第1画像を視聴していなくても元々広告物に関心がある視聴者は、第1画像の誘目性に拘りなく広告の途中からであっても第2画像を視聴する。
【0009】
デジタルサイネージ(電子看板)装置の場合、デジタル画像によって作成された動画像広告を表示可能なディスプレイが人通りの多い公共の場(駅や繁華街等)に設置されている。このようなデジタルサイネージ装置では、ディスプレイに表示される広告内容が容易に変更可能であるため、その映像の多彩さにより歩行者の視線を強力に惹き付ける。
即ち、動画像広告の条件反射的誘引作用に拘らず、動画像広告自体の効果を定量的に評価することは容易ではない。
【0010】
本発明の目的は、動画像広告の効果を定量的に評価可能な広告の関心度評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、少なくとも、視聴者の視線を集める誘目要素を含む第1画像を表示する第1表示期間と、前記第1表示期間に続いて商品及び/又はサービスの情報を含む第2画像を表示する第2表示期間とを有する動画像広告であってディスプレイ上に表示された前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する広告の関心度評価システムにおいて、前記ディスプレイを視る視聴者の視線を検出する視線検出手段と、前記視線検出手段の検出結果に基づき、前記第1表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第1集団と前記第2表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第2集団とを演算する集団演算手段と、前記集団演算手段で演算された第1,第2集団に共通する視聴者の人数に基づいて前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する関心度評価手段とを備え、前記集団演算手段は、前記ディスプレイを視認可能な視聴者を抽出した第3集団を演算し、前記関心度評価手段は、前記第3集団の人数に対する前記第1,第2集団に共通する視聴者の人数の割合に基づき前記動画像広告の効果の大きさを評価することを特徴としている。
【0012】
この広告の関心度評価システムでは、前記ディスプレイを視る視聴者の視線を検出する視線検出手段を有するため、視聴者の視線をパラメータとして視聴者の動画像広告に対する関心を検出することができる。前記視線検出手段の検出結果に基づき、前記第1表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第1集団と前記第2表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第2集団とを演算する集団演算手段を有するため、第1画像に関心がある視聴者からなる第1集団と第2画像に関心がある視聴者からなる第2集団とを抽出することができる。
前記集団演算手段で演算された第1,第2集団に共通する視聴者の人数に基づいて前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する関心度評価手段を有するため、第1画像に誘引された視聴者のうち引き続き第2画像を視聴する視聴者を識別することができ、動画像広告の効果を定量的に検出することができる。
【0013】
記集団演算手段は、前記ディスプレイを視認可能な視聴者を抽出した第3集団を演算し、前記関心度評価手段は、前記第3集団の人数に対する前記第1,第2集団に共通する視聴者の人数の割合に基づき前記動画像広告の効果の大きさを評価するため、動画広告の効果に加えて、ディスプレイを視認可能な全視聴者数のうち動画像広告に視線が誘引された視聴者数で表される誘引効果を検出することができる。また、ディスプレイの設置場所について優劣を評価することができる。
【0014】
請求項の発明は、請求項1の発明において、前記動画像広告が、前記第2表示期間に続いて視聴者の購入意思決定を後押しする情報を含む第3画像を表示する第3表示期間を有することを特徴としている。この構成によれば、視聴者による購入意欲を促進することができる。
【0015】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記ディスプレイは、前記第1,第2集団に共通する視聴者が存在しない場合、前記第3画像の表示を禁止することを特徴としている。この構成によれば、新たな購入候補者を早期に誘引することができる。
【0016】
請求項の発明は、請求項1~の何れか1項の発明において、前記関心度評価手段は、第1,第2集団の人数の時間変化に基づき時間帯毎の前記動画広告の効果を評価することを特徴としている。この構成によれば、時間帯毎の動画像広告の効果を評価することができる。
【0017】
請求項の発明は、少なくとも、視聴者の視線を集める誘目要素を含む第1画像を表示する第1表示期間と、前記第1表示期間に続いて商品及び/又はサービスの情報を含む第2画像を表示する第2表示期間とを有する動画像広告であってディスプレイ上に表示された前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する広告の関心度評価システムにおいて、 前記ディスプレイを視る視聴者の視線を検出する視線検出手段と、前記視線検出手段の検出結果に基づき、前記第1表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第1集団と前記第2表示期間において前記ディスプレイに視線を向けた視聴者を抽出した第2集団とを演算する集団演算手段と、前記集団演算手段で演算された第1,第2集団に共通する視聴者の人数に基づいて前記動画像広告に対する視聴者の関心度を評価する関心度評価手段とを備え、前記動画像広告が、前記第2表示期間に続いて視聴者の購入意思決定を後押しする情報を含む第3画像を表示する第3表示期間を有し、前記ディスプレイは、前記第1,第2集団に共通する視聴者が存在しない場合、前記第3画像の表示を禁止することを特徴としている。この構成によれば、
この広告の関心度評価システムでは、段落[0012]、[0016]と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の広告の関心度評価システムによれば、第1,第2集団に共通する視聴者の人数に基づいて視聴者の関心度を評価することにより、動画像広告の誘引作用に拘らず、動画像広告の効果を定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る広告の関心度評価システムの全体構成図である。
図2】広告の表示段階と視聴者に対する作用との対応表である。
図3】街頭ビジョンの正面図であって、(a)は、広告が表示されないときの街頭ビジョンの図、(b)は、誘引段階の広告が表示された街頭ビジョンの図、(c)は、訴求段階の広告が表示されたディスプレイの拡大図を示している。
図4】ビジョン制御処理のステップチャートである。
図5】関心度評価処理のステップチャートである。
図6】(a)は、図3(a)の誘目度マップ、(b)は、図3(b)の誘目度マップ、(c)は、図3(c)の誘目度マップを示している。
図7】視聴者の時系列分布グラフの一例である。
図8】実施例2に係る自動販売機の正面図であって、(a)は、広告が表示されないときの自動販売機の図、(b)は、誘引段階の広告が表示された自動販売機の図、(c)は、訴求段階の広告が表示された自動販売機の図、(d)は、後押し段階の広告が表示された自動販売機の図を示している。
図9】(a)は、図8(a)の誘目度マップ、(b)は、図8(b)の誘目度マップ、(c)は、図8(c)の誘目度マップ、図7(d)の誘目度マップを示している。
図10】ディスプレイの変形例であって、(a)は、駅ビルの柱に装備されたデジタルサイネージのディスプレイ、(b)は、電車の扉上部に設置されたディスプレイ、(c)は、家庭用テレビのディスプレイである。
図11】動画像広告の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明をデジタルサイネージ装置に表示される動画像広告の関心度評価システムに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について図1図7に基づいて説明する。
図1に示すように、広告の関心度評価システム1は、広告管理会社2と、ビジョン管理会社3と、視線検出部4と、演算部5とを主な構成要素として構成され、ネットワーク6によって各々が相互通信可能に接続されている。尚、以下の説明は、動画像広告の関心度評価方法の説明を含むものである。
【0022】
広告管理会社2は、クライアントに相当するビジョン管理会社3に対して動画像広告(広告コンテンツ)を所定の周期で定期的に配信している。
この広告管理会社2は、例えば、複数の動画像広告を格納する記憶部11と、広告制御部12とを主な構成要素としたサーバである。広告制御部12は、ビジョン管理会社3からの要求に応じて格納された動画像広告を記憶部11からリアルタイムに抽出すると共に抽出された動画像広告に所定の加工を施して送信している。
【0023】
ここで、動画像広告について説明する。
図3(b),図3(c),図11に示すように、ここで対象とする動画像広告は、例えば、第1画像F1が表示される第1表示期間T1と、第2画像F2が表示される第2表示期間T2と、第3画像(図示略)が表示される第3表示期間T3から構成されている。
一方、図2に示すように、動画像広告の視聴者P(図3(a),図3(b)参照)に対する作用は、誘引段階、商品/サービス情報提供段階(以下、訴求段階と略す)、購入意思決定後押し段階(以下、後押し段階と略す)毎に異なっている。後押し段階の後、視聴者Pは、広告物をしっかり確認して最終的に商品の購入を決定するという手順を踏む。
また、動画像広告は、広告が対象としている広告物(商品)によって、短期/少額消費(材用広告)と、中長期/高額消費(材用広告)とに分けられ、各々特徴が異なっている。
【0024】
短期/少額消費の広告を視る視聴者Pは、誘引段階で、その場の感性に合致するような派手な色彩模様に視線を向け、訴求段階で、情報量は少なくても「旨い、早い、安い」のような直接的価値や新規体験事項(ワード)を探す傾向にある。後押し段階では、得した感や競合物との比較により視聴者P単独で購入判断している。
中長期/高額消費の広告を視る視聴者Pは、誘引段階で、信用やブランドを想起させるコーポレートカラーや著名ロゴに視線を向け、訴求段階で、情報量は多くても自己実現に繋がる創造的価値を探す傾向にある。後押し段階では、幸福期待度や競合物との比較により家族等周囲の関係者の賛同を得た上で購入判断している。
【0025】
関心度評価システム1の説明に戻り、ビジョン管理会社3について説明する。
図1図3(a),図3(b)に示すように、ビジョン管理会社3は、街頭ビジョンV1にて、往来する不特定多数の歩行者である視聴者Pに表示している。
街頭ビジョンV1は、人通りの多い公共の場(駅周辺や繁華街等)に配設された建築物であり、広告管理会社2から動画像広告が配信されている。
【0026】
このビジョン管理会社3は、例えば、表示する動画像広告の種類及び表示周期を任意に設定可能なビジョン制御部21と、このビジョン制御部21を介して受信した種々の動画像広告を視聴者Pに表示するディスプレイ22とを主な構成要素としている。
ディスプレイ22は、液晶ディスプレイパネル或いはプラズマディスプレイパネル等である。
【0027】
次に、視線検出部4について説明する。
視線検出部4は、街頭ビジョンV1の周辺を往来する視聴者Pであって、特にディスプレイ22を視認可能な視聴者Pを継続的に撮像している。この視線検出部4は、ディスプレイ22側から視聴者Pを撮像可能な第1撮像手段31(視線検出手段)と、視聴者Pをディスプレイ22側に向けて撮像可能な第2撮像手段32(視線検出手段)と、これら第1,第2撮像手段31,32にて撮像した画像情報を画像処理する視線処理部33とを備えている。
【0028】
第1撮像手段31は、ディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを撮像するため、ディスプレイ22の近傍に位置するように街頭ビジョンV1に一体的に配設され、常時、視聴者Pの目を含む顔を撮像している。第2撮像手段32は、ディスプレイ22を視認可能な視聴者Pを撮像するため、ディスプレイ22の前側に位置する街路に設置された路側機39に装着され、常時、視聴者Pの目を含む顔を撮像している。
第1,第2撮像手段31,32は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0029】
視線処理部33は、第1,第2撮像手段31,32にて撮像した視聴者Pの画像を画像処理し、視聴者Pの顔や目の画像に基づいてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pとディスプレイ22を視認可能な視聴者Pを時系列に検出している。
視聴者Pの視線方向は、視聴者Pの顔の向きと黒目(瞳孔)部分の方向との組み合わせを基に計算されている。具体的には、第1,第2撮像手段31,32による画像情報から視聴者Pの目と視聴者Pが注視している点とを結ぶ直線を検出して視線方向を演算する。この視線方向がディスプレイ22に一致している視聴者Pがディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pとして検出される。また、ディスプレイ22の前方を通過した視聴者Pがディスプレイ22を視認可能な視聴者Pとして検出される。
【0030】
次に、演算部5について説明する。
演算部5は、視線検出部4にて検出された視聴者Pを第1~第3集団G1~G3に仕分けると共に、動画像広告に対する視聴者Pの分布を時間帯毎に評価している。
図1に示すように、演算部5は、動画像広告の表示段階(表示タイミング)に応じて視聴者Pを第1~第3集団G1~G3に仕分け演算する集団演算部41と、第1~第3集団G1~G3に仕分けられた視聴者Pに基づいて動画像広告に対する視聴者Pの分布を時系列に評価可能な関心度評価部42(関心度評価手段)とを備えている。
【0031】
集団演算部41は、画像情報に基づき、第1表示期間T1においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを第1集団G1として演算し、第2表示期間T2においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを第2集団G2として演算し、動画像広告が表示されている期間においてディスプレイ22を視認可能な視聴者Pを第3集団G3として演算している。また、この集団演算部41は、第1~第3集団G1~G3の各々に属する視聴者Pを個別に認識可能である。
【0032】
関心度評価部42は、ディスプレイ22に表示された動画像広告について、視聴者Pの関心度と効果とを評価している。この関心度評価部42は、視線検出部4にて検出された視聴者Pの注視点に基づき誘目性マップを作成することができる。
また、関心度評価部42は、視聴者Pを個別認識可能であるため、視聴者Pの属性(世代や性別等)に基づいて動画像広告の条件に応じた効果を演算することができる。具体的には、若年層における関心度調査の場合、若年層を前提条件として第1~第3集団G1~G3を形成し、関心度等を演算する。
【0033】
次に、図4に示すステップチャートを参照しながら、ビジョン制御部21(ビジョン管理会社3)によるビジョン制御動作の一例について説明する。尚、図中、Si(i=1,2,…)は、各ステップを示す。
【0034】
まず、第1画像F1を表示する(S1)。
ビジョン制御部21は、予め、配信を希望する動画像広告を広告管理会社2に要請しており、この動画像広告を広告管理会社2からネットワーク6を介して受信している。
図3(b)に示すように、ビジョン制御部21は、ディスプレイ22に配信された動画像広告の第1画像F1を表示開始から第1表示期間T1の間表示する(図11参照)。
第1画像F1は、視覚的顕著性が高い誘目要素(輝度、色合い、エッジ方向等)で画像全体が構成されている。
【0035】
次に、第2画像F2を表示する(S2)。
図3(c)に示すように、ビジョン制御部21は、ディスプレイ22に第2画像F2を第1表示期間T1の終了後第2表示期間T2の間表示する(図11参照)。
第2画像F2は、広告物である商品やサービスの情報(例えば、商品の局部画像、商品の部分画像、商品の全体画像、操作方法)等により構成されている。
【0036】
次に、第3画像を表示して(S3)、終了する。
S3では、ビジョン制御部21は、ディスプレイ22に第3画像を第2表示期間T2の終了後第3表示期間T3の間表示する(図11参照)。第3画像は、競合物との比較や仲間との共感醸成等、視聴者Pの購入の意思決定を後押しするための副次情報である。
この動画像広告は、ディスプレイ22に周期的或いは予め規定された時刻に表示されるように設定されている。
【0037】
次に、図5に示すステップチャート及び図6(a)~図6(c)に示す誘目度マップを参照しながら、集団演算部41及び関心度評価部42(演算部5)による関心度評価動作の一例について説明する。図中、Si(i=11,12,…)は、各ステップを示す。
図6(a)~図6(c)は、誘目度が高い領域程濃い網掛けが施された誘目度マップである。尚、誘目度は、公知の演算手法で演算されているため、詳細な説明を省略する。
また、図中、●、×、▲、■の記号は、夫々視聴者P1~P4の視線方向(注視点)を夫々示している。
【0038】
まず、第3集団G3を演算する(S11)。
図6(a)に示すように、集団演算部41は、街頭ビジョンV1の周辺に滞在する視聴者Pを含む歩行者を全て抽出する。この集団演算部41は、街頭ビジョンV1の周辺に滞在する歩行者のうち、本人が意識的に視ようとすればディスプレイ22を視認可能な領域(範囲)に滞在する視聴者Pを第3集団G3(例えば、視聴者P1~P4の合計4人)として抽出する。
【0039】
次に、第1集団G1を演算する(S12)。
S12は、ビジョン制御部21が第1画像F1を表示するS1に対応している。
図6(b)に示すように、集団演算部41は、第1表示期間T1においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを第1集団G1(例えば、視聴者P1~P3の合計3人)として抽出する。尚、視聴者P4は、意識的に視ようとすればディスプレイ22を視認可能な領域に滞在するものの、第1表示期間T1の間、視線が隣の建物に向けられ、ディスプレイ22に向けられていない。
【0040】
次に、第2集団G2を演算する(S13)。
S13は、ビジョン制御部21が第2画像F2を表示するS2に対応している。
図6(c)に示すように、集団演算部41は、第2表示期間T2においてディスプレイ22に視線を固定した状態の視聴者Pを第2集団G2(例えば、視聴者P1,P2の合計2人)として抽出する。尚、視聴者P3は、第1表示期間T1において第1画像F1に視線を向けていたものの、この動画像広告(広告物)には関心がなく、第2表示期間T2の途中において第2画像F2から視線を外している。
【0041】
次に、この動画像広告に対する視聴者Pの関心度を評価して(S14)、終了する。
関心度評価部42は、第1集団G1のうち引き続き第2表示期間T2においてディスプレイ22に視線を固定した状態の視聴者P、換言すれば、第1集団G1と第2集団G2に共に属する視聴者Pの人数を関心度として演算する。そして、第3集団G3に対する第1集団G1と第2集団G2に共に属する視聴者Pの人数の比率をこの動画像広告の効果としている。
【0042】
本実施例1では、第1集団G1が3人、第2集団G2が2人、第3集団G3が4人、第1集団G1と第2集団G2に共に属する視聴者Pの人数が2人であるため、関心度が2(人)、効果が50(%)である。尚、第1集団G1と第2集団G2に共に属する視聴者Pの人数(2人)と第3集団G3に対する第1集団G1と第2集団G2に共に属する視聴者Pの人数の比率(50%)は、便宜上、動画像広告の効果を観点を換えて演算したものであり、広義の意味では共に動画像広告の効果である。
【0043】
また、関心度評価部42は、視聴者Pの属性分布を時系列に評価している。
図7に、第3集団G3の人数L1(実線)と、関心度(第1集団G1と第2集団G2に共に属する視聴者Pの人数)L2(破線)と、関心度を有する20代の人数L3(一点鎖線)の時間経過グラフの一例を示す。
図7に示すように、第3集団G3は、15時、21時に一時的に減少している。
全世代における関心度は、18時まで増加し、その後減少しているものの、第3集団G3に対する関心度の比率は、遅い時間程高くなる傾向がある、換言すれば、遅い時間程この動画像広告の効果が高いことが分かる。また、第3集団G3に対する20代の比率は、時間帯によって殆ど変化しない、つまり、時間帯によって効果に差がないことが判明した。
【0044】
次に、上記広告の関心度評価システム1の作用、効果について説明する。
この広告の関心度評価システム1では、ディスプレイ22を視る視聴者Pの視線を検出する第1,第2撮像手段31,32を有するため、視聴者Pの視線をパラメータとして視聴者Pの動画像広告に対する関心を検出することができる。第1,第2撮像手段31,32の検出結果に基づき、第1表示期間T1においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを抽出した第1集団G1と第2表示期間T2においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを抽出した第2集団G2とを演算する集団演算手段41を有するため、第1画像F1に関心がある視聴者Pからなる第1集団G1と第2画像F2に関心がある視聴者Pからなる第2集団G2とを抽出することができる。
集団演算手段41で演算された第1,第2集団G1,G2に共通する視聴者Pの人数に基づいて動画像広告に対する視聴者Pの関心度を評価する関心度評価部42を有するため、第1画像F1に誘引された視聴者Pのうち引き続き第2画像F2を視聴する視聴者Pを識別することができ、動画像広告の効果を定量的に検出することができる。
【0045】
集団演算部41は、ディスプレイ22を視認可能な視聴者Pを抽出した第3集団G3を演算し、関心度評価部42は、第3集団G3の人数に対する第1,第2集団G1,G2に共通する視聴者Pの人数の割合に基づき動画像広告の効果の大きさを評価するため、動画広告の効果に加えて、ディスプレイ22を視認可能な全視聴者数のうち動画像広告に視線が誘引された視聴者Pの数で表される誘引効果を検出することができる。また、ディスプレイ22の設置場所について優劣を評価することができる。
【0046】
動画像広告が、第2表示期間T2に続いて視聴者Pの購入意思決定を後押しする情報を含む第3画像を表示する第3表示期間T3を有するため、視聴者Pによる購入意欲を促進することができる。
【0047】
関心度評価部42は、第1~第3集団G1~G3の人数の時間変化に基づき時間帯毎の動画広告の効果を評価するため、時間帯毎の動画像広告の効果を評価することができる。
また、視聴者Pの属性と時間帯とに基づき動画像広告の効果を評価することができる。
【0048】
この広告の関心度評価方法は、少なくとも、視聴者Pの視線を集める誘目要素を含む第1画像を表示する第1表示期間T1と、第1表示期間T1に続いて商品及び/又はサービスの情報を含む第2画像を表示する第2表示期間T2とを有する動画像広告であって、ディスプレイ22上に表示された動画像広告に対する視聴者Pの関心度を評価する広告の関心度評価方法において、ディスプレイ22を視る視聴者Pの視線を検出する視線検出ステップ(S11)と、視線検出ステップの後、第1表示期間T1においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを抽出した第1集団G1と第2表示期間T2においてディスプレイ22に視線を向けた視聴者Pを抽出した第2集団G2とを演算する集団演算ステップ(S12,S13)と、集団演算ステップで演算された第1,第2集団G1,G2に共通する視聴者Pの人数に基づいて動画像広告に対する視聴者Pの関心度を評価する関心度評価ステップ(S14)と、を備えている。これにより、動画像広告の誘引作用に拘らず、動画像広告の効果を定量的に評価することができる。
【実施例2】
【0049】
次に、実施例2に係る広告の関心度評価システム1Aについて図8図9に基づいて説明する。実施例1では、街頭ビジョンV1のディスプレイ22に表示された広告であったのに対し、実施例2では、自動販売機V2のディスプレイ23に表示された広告である。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
【0050】
まず、ビジョン制御部21について説明する。
図8(a)に示すように、ビジョン管理会社3は、広告管理会社2から配信された動画像広告を飲み物等の自動販売機V2のディスプレイ23にて、往来する不特定多数の歩行者である視聴者Pに表示している。このとき、ディスプレイ23には、誘目性が略等しい複数の商品が単に陳列された初期画像が表示されている。
図8(b)に示すように、自動販売機V2に配設されたカメラ34が視聴者Pを撮像したとき、ビジョン制御部21は、ディスプレイ23に誘目性が高い第1画像F1A(例えば、飲料が入ったコップの拡大画像)を表示開始から第1表示期間T1の間表示する。
【0051】
図8(c)に示すように、ビジョン制御部21は、ディスプレイ23に推奨する商品情報を含む第2画像F2A(例えば、「新感覚」等のPOPと商品の拡大画像)を第1表示期間T1の終了後第2表示期間T2の間表示する。
図8(d)に示すように、ビジョン制御部21は、ディスプレイ23に推奨する商品の追加情報である第3画像F3Aを第2表示期間T2の終了後第3表示期間T3の間表示する。このとき、ディスプレイ23には、他の商品と共に他の商品よりも誘目性を高くされた推奨商品とディスカウント価格等の追加情報が表示される。
【0052】
ビジョン制御部21は、集団演算部41の演算結果に基づき第1,第2集団G1A,G2Aに共通する視聴者Pが存在しない場合、第3画像F3Aの表示を禁止してディスプレイ23の表示を図8(a)の初期画像に戻すように構成されている。これにより、第1画像F1Aの表示タイミングを早期化することができ、新たな購入候補者を早期に誘引している。
【0053】
次に、演算部5について説明する。
集団演算部41は、自動販売機V2の周辺に滞在する視聴者Pを含む歩行者を全て抽出する。図9(a)に示すように、集団演算部41は、自動販売機V2の周辺に滞在する歩行者のうち、本人が意識的に視ようとすればディスプレイ23を視認可能な領域に滞在する視聴者Pを第3集団G3A(例えば、視聴者P1~P4の合計4人)として抽出する。
図9(b)に示すように、集団演算部41は、視聴者P1の視線がディスプレイ23から外れたため、第1表示期間T1においてディスプレイ23に視線を向けた視聴者Pを第1集団G1A(例えば、視聴者P2~P4の合計3人)として抽出する。
【0054】
図9(c)に示すように、集団演算部41は、視聴者P2の視線がディスプレイ23から外れたため、第2表示期間T2においてディスプレイ23に視線を固定した状態の視聴者Pを第2集団G2A(例えば、視聴者P3,P4の合計2人)として抽出する。
図9(d)は、追加情報を表示した際の誘目度マップを示している。
関心度評価部42は、第1集団G1Aと第2集団G2Aに共に属する視聴者Pの人数を関心度として演算(合計2人)する。そして、第3集団G3Aに対する第1集団G1Aと第2集団G2Aに共に属する視聴者Pの人数の比率を演算(50%)する。
【0055】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、街頭ビジョンV1と自動販売機V2のディスプレイ22,23の例を説明したが、動画像広告を表示可能な表示機構であれば何れであっても良い。
図10(a)に示すように、例えば、駅ビルの柱に装備されたデジタルサイネージのディスプレイ24であっても良く、図10(b)に示すように、電車の扉上部に設置されたディスプレイ25であっても良い。また、図10(c)に示すように、家庭用テレビのディスプレイ26を用いることも可能である。尚、何れの場合も、撮像手段としてのカメラ(図示略)をディスプレイ24~26の近傍に配設する必要がある。
【0056】
2〕前記実施形態においては、動画像広告がディスプレイ22,23に対してネットワーク6を介して配信される例を説明したが、広告管理会社2からディスプレイに地上波(電波)を介して配信されるように構成しても良い。
【0057】
3〕前記実施形態においては、関心度評価部42が第1,第2集団G1,G2に共通する視聴者Pの人数に基づいて動画像広告に対する視聴者Pの関心度を評価した例を説明したが、関心度評価部42が、第1,第2集団G1,G2に共通する視聴者Pの人数のみを評価するものであっても良い。
【0058】
4〕前記実施形態においては、第2集団G2を、第2表示期間T2の途中において第2画像F2から視線を外した視聴者Pを除いたものとして説明したが、大半の第2画像F2を視た視聴者Pを第2集団G2としても良い。具体的には、第2表示期間T2の前半部途中において第2画像F2から視線を外した視聴者Pを除いたものを第2集団G2として設定すると共に、第2表示期間T2の後半部途中において第2画像F2から視線を外した視聴者Pは第2集団G2に含める。
【0059】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0060】
1,1A 関心度評価システム
22~26 ディスプレイ
31 第1撮像手段
32 第2撮像手段
34 カメラ
41 集団演算部
42 関心度評価部
F1,F1A 第1画像
F2,F2A 第2画像
F3A 第3画像
T1 第1表示期間
T2 第2表示期間
T3 第3表示期間
G1 第1集団
G2 第2集団
G3 第3集団
P,P1~P4 視聴者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11