(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】潅水装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/09 20060101AFI20241107BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A01G25/09 B
A01G9/24 X
(21)【出願番号】P 2024078981
(22)【出願日】2024-05-14
【審査請求日】2024-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524182617
【氏名又は名称】株式会社中村工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100186288
【氏名又は名称】原田 英信
(72)【発明者】
【氏名】中村 静男
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3013319(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0127344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/09
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の走行レールと、
該走行レール上を前輪及び後輪の少なくとも2つの車輪により往復動する走行車両と、
該走行車両に立設された主支柱から走行車両の左右方向に伸びる支持アームと、
該支持アームで支持される、散水ノズルが取り付けられたノズル菅と、
該ノズル菅に一端で接続する液体用ホースと、
該ホースの他端に接続する送液手段と、
前記走行車両の移動域に沿って張設されたケーブルと、
該ケーブルに前記液体用ホースを移動自在に吊支させる複数のホース保持部材と、
前記支持アームの左右をそれぞれ支持する補助輪が付いた副支柱と、を有することを特徴とする潅水装置。
【請求項2】
前記車輪及び/又は他の車輪により、前記走行レールを挟み込んで前記走行車両を前記レールに固定的に支持することを特徴とする請求項1に記載の潅水装置。
【請求項3】
トレイが設置可能な棚を上下2つ以上備える栽培棚を有し、前記散水ノズルの地上からの高さが120cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の潅水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潅水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、屋外や栽培ハウス等に設置して灌水するのに適した植物栽培に用いる給水装置に関するものである。
【0003】
従来より、ホースにスプリンクラーを取り付けた散水が行われているが、そのような態様だとどうしても散水むらが生じてしまい、植物全体がバランス良く育たない。
このような散水むらが生じないものとして、例えば、特許文献1や特許文献2のように、一対(2本)の走行レールを敷設し、これに散水手段を取り付けたモータ駆動の散水用自走台車を往復走行自在に設けると共に、この散水手段に液圧送ホースの一端を連結して、走行車両の左右両側に水平に張り出して設けたノズル管により、レールの左右に並べた育苗トレー等に灌水する装置が知られている。
しかしながら、これらの装置は、ポンプと散水手段とを結ぶ、水を満たした重量のあるホースや走行車両に電力を供給する電線を、走行車両に向けて繰り出したり、巻き取りしたりしながら走行させるために複雑な機構が必要でコストがかかり、実用的ではなかった。
そこで特許文献3のように、走行車両の移動域に沿ってケーブルを張設し、このケーブルに移動自在に係合する複数のホース保持部材を設けてホースをケーブルに吊支することによって、複雑な制御を必要とせず、極めて軽い力でホースを自走車用の移動に伴って伸長させるという使用勝手を良くしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平6-5726号公報
【文献】実公平6-39571号公報
【文献】登録実用新案第3013319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献では、例えば、
図15で示されるように、走行車両Sが敷設された一対(2本)のレールR上を往復動する際に、2本のレールRどうしの間隔分の幅が必要になるので、走行車両が往復動するのに必要となる土地の面積が多くなり、その分、植物栽培に要する土地の面積が減少してしまっていた。
また、散水面積を増加させるためにノズル菅を左右に大きく伸ばすとバランスを崩し易くなったり、背の高い植物を栽培する場合や高い位置に育苗トレーがある場合などで散水位置を高くすると走行車両の重心位置が高くなって倒れやすくなったりする欠点があった。さらに、レールが複数並んで敷設されていると、レール間に水やゴミが溜まり易くなり走行に支障が出る恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、上述のような従来技術の欠点を克服し、簡単な構成により、安価に設置、運用が可能で、植物栽培ができる面積を実質的に増やし、収穫量を増加させる灌水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための発明は、潅水装置であって、1本の走行レールと、該走行レール上を前輪及び後輪の少なくとも2つの車輪により往復動する走行車両と、該走行車両に立設された主支柱から走行車両の左右方向に伸びる支持アームと、該支持アームで支持される、散水ノズルが取り付けられたノズル菅と、該ノズル菅に一端で接続する液体用ホースと、該ホースの他端に接続する送液手段と、前記走行車両の移動域に沿って張設されたケーブルと、該ケーブルに前記液体用ホースを移動自在に吊支させる複数のホース保持部材と、前記支持アームの左右をそれぞれ支持する補助輪が付いた副支柱と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記車輪及び/又は他の車輪により、前記走行レールを挟み込んで前記走行車両を前記レールに固定的に支持することを特徴とする。
【0009】
また、トレイが設置可能な棚を上下2つ以上備える栽培棚を有し、前記散水ノズルの地上からの高さが125cm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、土地の有効活用が図れ、収穫量が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の概略説明図(潅水装置全体を走行車両の進行方向が垂直となる側面方向から見たもの)。
【
図2】第1の実施形態の潅水装置(特に走行車両)を上方向から見た概略説明図。
【
図3】第1の実施形態の走行車両を進行方向から見た概略説明図。
【
図4】本発明における張設したケーブル40に電線80やホース30を吊支した様子。
【
図5】本発明におけるポンプP及びタンクTの様子。
【
図7】本発明の第2の実施形態の概略説明図((a)上方向から見たもの、(b)走行車両の進行方向が垂直となる側面方向から見たもの)。
【
図8】第2の実施形態の走行車両を(c)上方向から見たもの、(d)走行車両の進行方向から見たもの。
【
図9】第2の実施形態の走行車両の主支柱12a、車輪7、モータm及びレール支持部の様子。
【
図10】第2の実施形態の走行車両の(e)レールを挟み込む構成の概略説明図、(f)他の態様の概略説明図。
【
図11】第2の実施形態における左右の副支柱(12b又は12c)に取り付けられた補助輪5の様子。
【
図12】第3の実施形態における栽培棚の概略説明図。
【
図13】第3の実施形態における栽培棚の様子(育苗初期の段階)。
【
図14】第3の実施形態における栽培棚の様子(育苗中期の段階)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
ただし、以下の各実施形態に限定されるものではなく、任意の組み合わせでも良い。
また、各実施形態に係る図に対する各参照符号は、原則として同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略するが、参照符号の増大による説明の煩雑化を避けるため、図面ごとに独立して用いている場合がある。ゆえに、他の図面と共通の参照符号を付していても、それらは他の図面とは必ずしも共通の構成ではない場合がある。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1~
図5に基づいて、本発明の実施形態である潅水装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を、走行車両の進行方向が垂直となる側方方向から、
図2は、それを平面方向(上方向)から、
図3は、それを進行方向から見たものである。本実施形態では、一本の走行レールRが、屋外、または、ビニールハウスなどの栽培室(不図示)内の地上に、敷設、固定されている。レールRは、鋼材を用いて作られており、図に示されているように、平坦な地面に直接載置されていてもよいが、そうではなく、コンクリート基礎の上にレールを固定したり、レールを犬釘やネジなどで木材等の枕木に固定したり、してもよい。
このように走行レールが1本(1本のみ)なので、従来(
図15参照)と比較して走行車両が往復動するのに必要とする面積は少なくなり、その分、植物栽培に要する面積が多くなる(
図2参照)。
【0014】
またレールRは、本実施形態では通常の電車等で用いるような形状(断面形状が「工」という字に似た形状)となっている。この場合、走行車両としての散水車Sの前輪2a、後輪2bは、側面に設けられた側部(フリンジ)2c(
図3参照)によって、走行中、左右のぶれがおさえられ、前記レール上をスムーズに転動する。なお、レールと車輪は走行車両が走行中、左右のぶれが抑えられる形態(組み合わせ)であれば他の形状でも良く、例えば、横断面が山形をなすレール(不図示)であってもよい。その場合には、車輪(不図示)は周面にV溝を設けた形態が望ましく、それによって同様に左右のぶれがおさえられ、前記レールをスムーズに転動する。散水車Sには、電動モータm(不図示)が、装着されており、歯車、ベルト又はチェーンなどを介して車軸3a及び/又は3bが、回転駆動される。モータは、散水車に搭載されたバッテリー、又は、給水ホースと共に引かれた電源ケーブルによって駆動される(不図示)。
【0015】
散水車Sの前面下端付近と後面下端付近に、レール端部検出器8、9が、夫々設けられており、これらの検出方法については従来周知の技術を用いることができる。例えば、弾性片とその弾性片の変位域内に検出スイッチのアクチュエータを備えた構造を有しており、レールの両端付近に立設した可撓片などから成る検出部10、11と弾性片とが衝突したとき、検出スイッチが押されてレール端を検知するものであってもよい。
【0016】
散水車Sの前後に垂直に、主支柱12aが立設されている。
また、パイプから成るノズル管16を支持する支持アーム15が、散水車Sの進行方向に対して左右方向に伸びて、その中央近傍が主支柱12aにより固定支持されている。
【0017】
支持アーム15の左右両端はそれぞれ補助輪5が付いた副支柱12b、12cにより固定支持されている。
このように補助輪が付いた副支柱で固定支持されることにより、散水位置が高くなって走行車両の重心位置が高くなってもバランスが悪くならず、強風、地震、大きな振動等で傾くことがなく、安定的に運用が可能になる。
また、走行車両が安定することにより、ノズル菅16をさらに左右方向に伸ばすことができるので散水面積の増加に寄与する。
なお、本実施形態では補助輪は左右の副支柱にそれぞれ1つ備えられているが、2つ以上備えられていてもよい。
【0018】
また、ノズル管16はその左右閉塞端が支持アーム15の両端付近に及ぶ状態で支持アーム15に固定支持されている。ノズル管16には、複数の分岐管が分岐しており、中央部付近の分岐管の一端は、支持アーム15の中央部付近で支持アームの外に突出し、ホースガイド19をなしている。後記するホース30の一端側は、ホースガイド19に係留されている。ノズル管16の他の分岐管は、支持アーム15の下面に適宜なピッチ間隔で突出し、その突出端に散水ノズル17、17、…が取り付けられている。
【0019】
なお、本実施形態では、ノズル菅16は、剛性の高い支持アーム15によって支持されるものであるが、従来周知の技術を用いて、ノズル菅自体を剛性の高いプラスチック製パイプや金属パイプ等で構成して、自己支持させてもよい。この場合はノズル菅16と支持アーム15は同じ部材(ノズル菅兼支持アーム)といえるので、両者は、一体的に構成されていても、また、同一部材で構成されていてもよく、いずれも本願発明に該当し得る。
【0020】
また、
図1及び
図4で示すように、一対のポール41、42が、走行レールRをその長手方向から挟むように立設され、それらポール間にはワイヤーケーブル40が張設され、ホース保持部材として複数のホース保持滑車50がこのケーブル40に滑動自在に取り付けられている。ホース30はホース保持滑車50を介してワイヤーケーブル40に吊り下げられている。
なお、ホース30、ホース保持滑車50、ケーブル、ポール、ポンプ(送液手段)及びタンクなどの構成は従来周知のものであってもよい。
【0021】
例えば、液体圧送ホース30は、その一端側において、散布車Sのホースガイド19に係留され、適切なピッチ間隔で、複数のホース保持滑車に保持されて、波状に屈曲して、ケーブル40に係留されている。該ホース30の他端は、
図1及び
図5で示されているように、ポール42を経て、ポンプPの吐出管に連結している。ポンプPの吸入管は、吸入ホースを介して、液体タンクT内の底部に連通している。
【0022】
また、潅水装置の制御は、タイマー、電磁開閉弁、圧力スイッチ、モータ駆動回路及び制御器等を用いた従来周知のものであってもよい。
例えば、圧力スイッチは、ホース30内の圧力が一定圧以上に上昇すると、制御器4に信号を送り、制御器4は、タイマーと電磁開閉弁とを付勢すると共に、モータ駆動回路を閉じる。モータ駆動回路は、タイマー回路が付勢されている限りにおいて、レール端検出器8、9が、レール端を検出して、検出信号が制御器4に入力される度に、モータの回転方向を反転させ、タイマー回路が、消勢したのちに、前記検出信号が入力されると、モータ駆動回路は開いて、モータを停止すると共に電磁開閉弁を消勢するように、前記制御器4によって制御される。
【0023】
このような構成から成る灌水装置は、レールRの左右両側の栽培エリア20に、栽培棚22を設置し、そこに灌水対象となる育苗トレイ、セルトレイ、プラグトレー、ポッド等(以下「トレイ70」又は「トレイ」という。)を並べて配置し、タンクT内には、水又は肥料溶液などを満たしておける。このような状況でポンプPの始動スイッチが押されると、ホースに水等が送られて、ノズル管内圧が上昇する。そうすると、例えば圧力スイッチが作動して、電磁開閉弁が開いて、散水ノズル17から水又は肥料を含む水が、トレイ70に灌水を開始すると共に、モータmが始動し、散布車Sがレールの他端に向けて移動を開始する。それと同時に制御器4のタイマー回路が付勢される。
【0024】
レールRの端部に散布車Sが到達し、検出部10にレール端検出器8が、当接すると、モータmは、逆回転をして、散布車Sは、反対方向に移動を開始する。そして、レール端検出器9が、検出部11を検出すると再び反転する。このようにして、往復動を繰り返しながら、灌水を行う。タイマー回路は、散布車の移動速度と走行レールの長さとから、散布車Sが、復路上にあるとき、設定時間が終了して消勢するように、調整されているので、予めタイマーに設定した散布時間が経過すると、散布車は、出発点における検出部11を検出器9が検出した時点で、停止する。同時に、電磁開閉弁も消勢し、灌水が停止する。
【0025】
ホース30は、
図1及び
図4で示されるように、散布車Sの往路においては、主支柱12a及び支持アーム15とによって、ポール41に向けて引っ張られながら、折り畳み状態から引き伸ばされつつ、ケーブル40に沿って移動し、散布車Sが復路を移動するときは、折り畳まれる状態で、主支柱12a及び支持アーム15とによって、散布車の動きに追随する。
【0026】
散布車は、バッテリー駆動又は、電線を介して外部電源を供給するものである。外部電源を用いる場合は、ホースガイド19付近でゴム被覆されて防水性と可撓性とを備えた電線80をホース30と一緒に束ねてケーブル40に沿って吊支し、ポール42の付近で、ホースと分離して電源に接続することで、積載バッテリー駆動の場合と全く同様に取り扱う事ができるだけでなく、バッテリーの消耗や充電に気を配る必要もなくなる(
図4参照)。
【0027】
なお、外部電源としては通常の電力網を利用しても良いが、電力網が無い場合や電力コストを下げたい場合などには本発明は省電力で稼働できる為、例えば小規模な太陽光発電による電力でも十分に稼働可能である。特に太陽光の少ない雨天の場合は稼働する必要も無い。
また、本発明は操作が簡単で少ない労力で走行車両を動かすことができるので、電力を用いずに人の操作で運用することも可能である。
【0028】
また、本実施の形態ではホースへの送液手段としてポンプを使用するが、他の送液手段であっても構わない。例えば、本潅水装置よりも高い場所を流れる川の水を引いてきてそのまま水をホースに送る態様であったとしても本発明の送液手段といえる。
【0029】
本実施の形態に係る潅水装置においては、1本のレールで走行車両を走行させるので、走行車両の幅が狭くなり、走行に要する面積が少なくなって、その分植物栽培面積が広くなり(
図2参照)、従来のもの(
図15参照)と比較して、収穫量を増やすことができる。
また、補助輪5で支持される副支柱(12b、12c)を備えたことにより、バランスが良くなり、強風や地震など大きな振動で傾くことがないので安定的に運用が可能になる。
【0030】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態に係る潅水装置について説明する。
図6は屋外に設置された本実施の形態の潅水装置を示したものである。
また、
図7のaは潅水装置を上からみたもの、
図7のbは走行車両の進行方向に垂直な側面から見たものであり、
図8のcは走行車両を上からみたもの、
図8のdは走行車両の進行方向から見たものである。
【0031】
第2の実施の形態は、コンクリート基礎の上に1本のレールRのみを敷設した態様となっている(
図6~
図9参照)。そして、
図9及び
図10のeで示されるように、レールRの上側に位置し、走行車両にかかる重量を支える車輪(第1の実施の形態と同じ前輪2a及び後輪2b)と共にそれぞれの車輪(2a、2b)に対応するレールの下側にあるレール支持部材6を介してレールを下側から支持する2つの補助車輪7を備えている。第1の実施の形態と異なるのは、走行車両の下側に設けられた補助車輪7があることにより、実質的にレールを上下から固定的に挟み込んで保持する態様となるので、強風や地震などが起きても走行車両はレールから離れることなく、しっかりとレールに保持される。
【0032】
なお、本実施形態はレール支持部材6を介してレールを挟み込むものであるが、このようにレールを挟み込んで保持する構成であれば本発明になり得る。例えば、
図10のf(1)~(3)で示す概略説明図のようにレール支持部材を介さず直接レールを挟み込む構成であっても同等の効果を奏し、本実施の形態となり得る。
ここで、
図10のf(1)は走行車両にかかる重量を支える車輪(2a、2b)とそれぞれ異なる2方向から支持する補助車輪7によってレールを挟み込んでレールを固定的に保持するものである。
また、
図10のf(2)は走行車両にかかる重量を支える車輪(2a、2b)とは別に進行方向に向かって左右方向から支持する補助車輪7によってレールを挟み込んでレールを固定的に保持するものである。
また、
図10のf(3)は1本のレールに対して、2つの車輪(フランジ付)1a及び1bでレールを挟み込んでレールを固定的に保持するものである。前輪と後輪のそれぞれがこのような2つの車輪で構成されていても良いし、この構成に加えて、さらに走行車両にかかる重量を支える車輪(2a、2b)(
図10のe、f(1)、f(2)参照)を有してもよい。
【0033】
なお、本発明において「固定的」とは、走行車両の車輪の回転を妨げない程度に走行車両とレールが接続(或いは接触)されていて、両者が分離されない(車両がレールから離れるのを阻止する構成を有する)状態を意味する。
【0034】
また、
図11で示すように左右の副支柱を支える補助輪5はそれぞれ平坦なコンクリート基礎の上を転がる態様となっており、これによりスムーズな走行が可能である。なお、コンクリート基礎の上に補助輪5に対応した走行レールをさらに備える形態であってもよい。
【0035】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態において、収穫量を増加させるためにトレイが設置可能な棚を上下2つ以上備える栽培棚22を用いたものである。
特に下の棚に配置される苗、苗木、株、植物等(以下、「苗木」という。)に自然光として日の光が適度に当たるよう、トレイが配置された栽培棚22の上下に隣接する棚どうしの間隔を広くすることで、苗木を良好に成長させることができる(
図12~14参照)。
なお、栽培棚22の棚は、トレイが配置できる態様であればよく、例えば
図13や
図14のように長い棒18を並べてその棒18でトレイの下部を支える形態であってもよい。
ここで、
図12は、トレイ70を栽培棚22に配置し、トレイ70に植えられた苗木に対する走行車両による散水状態を示している。
また、
図13、
図14は栽培棚に配置されたトレイによる苗木が成長した実際の様子を示している。
苗木は種類によって異なるものの、苗木としての高さが30cm~50cmになるまでトレイ等にて成長させるのが一般的である。
【0036】
ここで、
図12の栽培棚22は、上下2つの棚がある2段のもの(
図12のg、
図12のhの右側、
図13及び
図14参照)と上中下3つの棚がある3段のもの(
図12のhの左側)を示しているが、それぞれにトレイを配置して苗木を栽培する場合、上下に隣接する棚どうしの間隔が狭いと下の段に配置されたトレイには光があまり入らないので、そこの苗木は成長が悪くなってしまう。
この場合、適切な光を入れるには、苗木の高さから、その約1.5倍以上の間隔が必要である。例えば、苗木として高さが30cmのものを栽培する場合(
図12のg参照)には、苗木の高さから、さらに45cm以上の間隔が必要になる。
そうすると、上の段のトレイと下の段のトレイとの高さの差NL=75cm以上必要になる。
また、下の段のトレイの地面からの高さt0は約15cmなので、上の段のトレイの高さは約90cm以上となり、そうすると、上の段の苗木の高さ(30cm)を含めた地面から散水ノズルの高さTLは120cm以上となる。
【0037】
また、例えば、苗木として高さが50cmのものを栽培する場合(
図12のhの右側の栽培棚参照)には、前述のとおり、苗木の高さから、さらにその1.5倍となる75cm以上の間隔が必要になる。
そうすると、上の段のトレイと下の段のトレイとの高さの差NH=125cm以上必要になる。
また、下の段のトレイの地面からの高さt0は約15cmなので、上の段のトレイの高さは約140cm以上となり、そうすると、上の段の苗木の高さ(50cm)を含めた地面から散水ノズルの高さTHは190cm以上となる。
【0038】
また、栽培棚は2段以上であればよく、例えば3段とすることもできる。
この場合、例えば、苗木として高さが30cmのものを栽培する場合(
図12のhの左側の栽培棚参照)には、前述のとおり、下段のトレイの高さから中段のトレイまで、また、中段のトレイから上段のトレイまでは、それぞれ75cm以上の間隔が必要になる。なので、下段のトレイと上段のトレイとの高さの差NM=150cm以上必要になる。そうすると、同様に計算すると、上の段の苗木の高さを含めた地面から散水ノズルの高さは195cm以上となる。
【0039】
よって、本発明の栽培棚について、上下に隣接するトレイ間の距離が75cm以上、特に125cm以上、さらに150cm以上であれば下側のトレイに配置された苗木の成長に必要な日の光を十分に行きわたらせることができる(
図13、14参照)。
また、走行車両の散水ノズルの高さが地面から120cm以上、特に190cm以上、さらに195cm以上であれば本発明の栽培棚に配置するトレイを適切に上下の、2段、3段又はそれ以上に設置可能になり、収穫量を増加させることができる(
図13、14参照)。
【0040】
また、トレイの設置、取り出しについて、その作業を人が行う場合には、人として身長の制限がある(例えば、人間の平均身長(男性は約172.9cm、女性は約160.4cm))ので、上の段のトレイの設置高さは低い方が望ましい。
その場合、本発明の栽培棚は、上下に隣接するトレイ間の距離が75cm以上150cm以下(特に2段の場合は、75cm以上125cm以下)であることが望ましく、また、走行車両の散水ノズル高さは地面から120cm以上195cm以下(特に2段の場合は、120cm以上190cm以下)であることが望ましい。
【0041】
このように、第3の実施形態の潅水装置においては、走行車両の散水ノズルの高さを高くしても従来のようにバランスが崩れて倒れることはないので、栽培棚の上下にトレイを2段以上に設置した場合であっても、自然光を取り入れた状態で安定して適切に散水することが可能であり、限られた土地面積であっても、植物の収穫量をさらに増加させることができる。
【0042】
なお、水は上から下方向へ流れるので、排水性の高い栽培棚や水回りの良いトレイ(例えば、排水穴が大きい、排水穴の数が多い等)を使用することが望ましい。
【符号の説明】
【0043】
1 車輪(フリンジ付きの車輪1a、フリンジ付きの車輪1b)
2 車輪(前輪2a、後輪2b、側部(フリンジ)2c)
3 車軸(前輪車軸3a、後輪車軸3b)
4 制御器
5 補助輪
6 レール支持部材
7 補助車輪
8 レール端検出器
9 レール端検出器
10 検出部
11 検出部
12 支柱(主支柱12a、副支柱12b、12c)
15 支持アーム
16 ノズル菅
17 散水ノズル
18 棒(栽培棚の棚(上下)を構成する棒)
20 栽培エリア
22 栽培棚
30 ホース(液体用ホース、給水ホース)
40 ケーブル(ワイヤーケーブル)
41 ポール
42 ポール
50 ホース保持滑車
70 トレイ
80 電線
R 走行レール(レール)
m モータ
p ポンプ(送液手段)
S 走行車両
T タンク
【要約】
【課題】土地の有効利用が図れ、収穫量が増加する潅水装置。
【解決手段】潅水装置において、1本の走行レールと、該走行レール上を前輪及び後輪の少なくとも2つの車輪により往復動する走行車両と、該走行車両に立設された主支柱から走行車両の左右方向に伸びる支持アームと、該支持アームで支持される、散水ノズルが取り付けられたノズル菅と、該ノズル菅に一端で接続する液体用ホースと、該ホースの他端に接続する送液手段と、前記走行車両の移動域に沿って張設されたケーブルと、該ケーブルに前記液体用ホースを移動自在に吊支させる複数のホース保持部材と、前記支持アームの左右をそれぞれ支持する補助輪が付いた副支柱と、を有する。
【選択図】
図1