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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】薬液供給装置及び薬液供給方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20241107BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241107BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20241107BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B01J4/00 103
B24B37/00 K
B24B37/10
B24B57/02
H01L21/304 622E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022002151
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2021080774の分割
【原出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022176057
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-01-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518440383
【氏名又は名称】株式会社西村ケミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100162536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】兼重 卓爾
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特公平2-12139(JP,B2)
【文献】特開平8-252442(JP,A)
【文献】特開2000-71173(JP,A)
【文献】特開2021-8003(JP,A)
【文献】特開昭60-173399(JP,A)
【文献】特表2012-521896(JP,A)
【文献】特公昭46-37481(JP,B1)
【文献】特開2011-131287(JP,A)
【文献】特開2003-155995(JP,A)
【文献】特開平2-119929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J4/00-4/04
H01L21/306
B24B37/00,57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留するための樹脂製ドラム、前記樹脂製ドラムの天板側から薬液を取り出すための薬液移送流路、及び前記薬液移送流路と接続している薬液供給部を具備する、薬液供給装置であって、
前記薬液移送流路が、非容積式ポンプを有しており
記薬液移送流路が、前記非容積式ポンプの下流側に支流を設けそこに容積式ポンプを有しており、
前記容積式ポンプは、前記薬液移送流路内を減圧して、前記樹脂製ドラムから薬液を抜き出して前記非容積式ポンプまで薬液を到達させ、前記容積式ポンプには薬液を到達しないように構成されている、
薬液供給装置。
【請求項2】
前記非容積式ポンプは、磁気浮上遠心ポンプである、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記樹脂製ドラムが、その内部をガスで加圧することによって薬液を取り出すことができる加圧ガス供給手段を有している、請求項1又は2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の薬液供給装置、及び前記薬液供給装置によって供給された薬液を含む研磨スラリーと研磨パッドとを用いる化学機械研磨装置を含む、化学機械研磨システム。
【請求項5】
請求項3に記載の薬液供給装置を用いて薬液を供給する薬液供給方法であって、
前記樹脂製ドラムをガスで加圧して前記樹脂製ドラムの内部の天板側から薬液を取り出すこと、及び
前記薬液移送流路の非容積式ポンプを用いて薬液を前記薬液供給部にまで移送すること
を含む、薬液供給方法。
【請求項6】
請求項に記載の薬液供給装置を用いて薬液を供給する薬液供給方法であって、
前記薬液移送流路の前記容積式ポンプを用いて前記樹脂製ドラムの内部の天板側から薬液を取り出すこと、
前記薬液移送流路の容積式ポンプに薬液が到達する前に前記容積式ポンプの稼働を停止すること、及び
前記薬液移送流路の前記非容積式ポンプを用いて薬液を前記薬液供給部にまで移送すること、
を含む、薬液供給方法。
【請求項7】
基材の化学機械研磨方法であって、請求項又はに記載の薬液供給方法によって薬液を供給すること、及び前記供給された薬液を含む研磨スラリーと研磨パッドによって前記基材を研磨することを含む、基材の化学機械研磨方法。
【請求項8】
前記基材が、半導体基板である、請求項に記載の化学機械研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液供給装置及び薬液供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々技術分野において、薬液を定量で供給する装置が用いられている。例えば、医薬品の合成のためには、高度に制御した流量で薬液を供給する必要がある。また、半導体製造プロセス等で用いられる研磨スラリー、洗浄液、めっき液等は、非常に高度に液体量を制御して定量で薬液を供給する必要がある。
【0003】
例えば、半導体製造プロセス等で用いられる研磨スラリーに関して、特許文献1は、非常に高度に定量で液体を提供できる研磨液供給装置を開示している。
【0004】
従来技術において用いられていたダイヤフラムポンプを用いた供給装置では、薬液を供給する際に脈動が生じるという課題があったのに対して、特許文献1に記載の供給装置では、ダイヤフラムポンプを使用せずに、薬液を含むドラムに対して不活性ガスで加圧することによって、ドラム内部の薬液を取り出す構成となっている。このような構成の薬液供給装置であれば、ダイヤフラムポンプによる脈動がないために、液体を高度に定量で供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-8003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置では、ドラムに対して不活性ガスを加圧するために、ドラムが暴発する可能性があった。特許文献1においては、その危険性に対して、ドラムを天板と底板で押さえつけることによってドラムの暴発を防ぐ手段を開示しているものの、ドラムの内圧が高くなりすぎると、ドラムが外見上で膨張していることが分かり、危険性を感じることがある。
【0007】
そこで、本発明は、薬液を高度に定量で供給することができ、かつ安全性の高い薬液供給装置及び薬液供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の実施形態を含む本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
1つの実施形態において、本発明の薬液供給装置は、薬液を貯留するための樹脂製ドラム、前記樹脂製ドラムから薬液を取り出すための薬液移送流路、及び前記薬液移送流路と接続している薬液供給部を具備しており、
前記薬液移送流路が、非容積式ポンプを有しており、
前記樹脂製ドラムが、その内部をガスで加圧することによって薬液を取り出すことができる加圧ガス供給手段を有しているか、かつ/又は前記薬液移送流路が、前記非容積式ポンプの下流側に容積式ポンプを有している。
【0010】
1つの実施形態において、薬液供給装置の前記非容積式ポンプは、磁気浮上遠心ポンプである。
【0011】
1つの実施形態においては、薬液供給装置の前記樹脂製ドラムは、加圧ガス供給手段を有している。
【0012】
1つの実施形態においては、薬液供給装置の前記薬液移送流路が、容積式ポンプを有している。
【0013】
1つの実施形態においては、本発明は、薬液供給装置、及び前記薬液供給装置によって供給された薬液を含む研磨スラリーと研磨パッドとを用いる化学機械研磨装置を含む、化学機械研磨システムに関する。
【0014】
1つの実施形態は、本発明は、前記樹脂製ドラムが加圧ガス供給手段を有している薬液供給装置を用いて薬液を供給する薬液供給方法であって、
前記樹脂製ドラムをガスで加圧して前記樹脂製ドラムの内部の薬液を取り出すこと、及び
前記薬液移送流路の非容積式ポンプを用いて薬液を前記薬液供給部にまで移送すること
を含む。
【0015】
1つの実施形態は、本発明は、薬液供給装置の前記薬液移送流路が、容積式ポンプを有している薬液供給装置を用いて薬液を供給する薬液供給方法であって、
前記薬液移送流路の前記容積式ポンプを用いて前記樹脂製ドラムの内部の薬液を取り出すこと、
前記薬液移送流路の容積式ポンプに薬液が到達する前に前記容積式ポンプの稼働を停止すること、及び
前記薬液移送流路の前記非容積式ポンプを用いて薬液を前記薬液供給部にまで移送すること、
を含む。
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、基材の化学機械研磨方法であって、上記の実施形態の薬液供給方法によって薬液を供給すること、及び前記供給された薬液を含む研磨スラリーと研磨パッドによって基材を研磨することを含む。
【0017】
1つの実施形態において、本発明は、基材の化学機械研磨方法であって、前記基材は、半導体基板である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、薬液を高度に定量で供給することができ、かつ安全性の高い薬液供給装置及び薬液供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の装置の1つの実施形態を示している。
図2図2は、本発明の装置で用いることができる樹脂製ドラムの1つの実施形態を示している。
図3図3は、本発明の化学機械研磨装置の1つの実施形態を示している。
図4図4は、図3のミキシングユニット50の構成の詳細を示す図である。
図5図5は、図3のミキシングユニット50の構成の詳細を示す図である。
図6図6は、図3のミキシングユニット50のドラム11の制御を示す図である。
図7図7は、従来のCMPシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の装置の1つの実施形態を概略的に示す。本発明の薬液供給装置10は、薬液を貯留するための樹脂製ドラム11、前記樹脂製ドラム11から薬液を取り出すための薬液移送流路15、及び前記薬液移送流路15と接続している薬液供給部18を具備する。また、本発明の薬液供給装置10の薬液移送流路15は、非容積式ポンプ16を有しており、前記樹脂製ドラム11が、その内部をガスで加圧することによって薬液を取り出すことができる加圧ガス供給手段14を有しているか、かつ/又は前記薬液移送流路15が、前記非容積式ポンプ16の下流側に容積式ポンプ17を有している。
【0021】
この実施形態では、樹脂製ドラム11から薬液供給部18まで薬液を供給する途中に、遠心ポンプ等の非容積式ポンプ16が存在することによって、樹脂製ドラム11への加圧を大きくする必要がないため、ドラムの暴発の危険性が非常に低い。すなわち、この実施形態では、樹脂製ドラム11に対しては、樹脂製ドラム11から薬液供給部18まで薬液を送り出すための圧力を掛ける必要はなく、樹脂製ドラム11から非容積式ポンプ16まで薬液を送り出すための圧力さえ掛ければよい。この場合、非容積式ポンプ16にまで達した薬液は、非容積式ポンプ16によって薬液供給部18まで送り出される。なお、樹脂製ドラム11に加圧をするのではなく、ダイヤフラムポンプ等の容積式ポンプ17を、非容積式ポンプ16の下流側に配置させ、容積式ポンプ17によって薬液移送流路15内を減圧することによって、樹脂製ドラム11の薬液を非容積式ポンプ16にまで送り出してもよい。
【0022】
本明細書において、薬液とは、その種類については特に限定されず、研磨液、洗浄液、めっき液、医薬原料等の薬液又はその1つの成分であることができる。例えば、研磨液は、スラリー、超純水、ケミカル、及び過酸化水素等の酸化剤を所定の割合で調合した液である。ここで、スラリーには、砥粒剤などを含んだスラリー、SiOを含んだアルカリ性スラリー、CeOを含んだ中性スラリー、Alを含んだ酸性スラリーなどの種類がある。ケミカルには、シリカ、メロン酸、クエン酸などの種類がある。スラリーやケミカルの有効成分は、この装置の用途、例えば研磨システムにこの装置を用いる場合には、その研磨対象の基材、研磨形状等に応じて決定するとよい。
【0023】
樹脂製ドラム11は、内壁が薬液に溶解等しないものであれば特に限定されず、ドラムの少なくとも一部が金属製等であってもよい。
【0024】
図2に示すように、例えば、樹脂製ドラム11は、天板31と、底板32と、それらの間に介在する側板33とを有することができる。ここで、樹脂製ドラム11の内部は気密になっている。天板31の上及び底板32の下には、ドラムサポートユニットであるSUS板311、PVC板312、PVC板321、及びSUS板322が設けられている。第1の板であるSUS板311及びPVC板312は、天板31の上に配置されており、第2の板であるPVC板321及びSUS板322は、底板32の下に配置されている。SUN板322の下にはロードセル12が配置されている。
【0025】
SUS板312及びPVC板311は、天板31を上から抑え、PVC板321及びSUS板322は、底板32を下から抑え、樹脂製ドラム11内の加圧による暴発を防ぐ役割を果たすものである。ドラム11には、エアシリンダー38が設けられている。エアシリンダー38により、SUS板312とPVC板311を上に持ち上げ、天板31から離すことができる。
【0026】
ただし、図2に示すような樹脂製ドラム11の構成は、例えば非容積式ポンプ16の下流側に容積式ポンプ17を用いる実施形態では、暴発の危険性が極めて低いために、必ずしも必要となるわけではなく、そのような実施形態では、より簡易的な構成の樹脂製ドラムを採用することができる。
【0027】
本発明の装置10は、加圧ガス供給手段14を具備することができる。このような実施形態では、容積式ポンプ17を設置する必要がなく、容積式ポンプ17を用いた場合に必要な複雑な制御等を行う必要が無いため好ましい。
【0028】
加圧ガス供給手段14は、樹脂製ドラム11の内部をガスで加圧することによって薬液を薬液移送流路15へと取り出すことができる。ここで、ガスは、通常は、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いる。加圧ガス供給手段14のバルブ14aを、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置によって制御することができ、必要なタイミングで樹脂製ドラム11にガスを供給できるようになっている。
【0029】
薬液移送流路15は、樹脂製ドラム11から薬液を取り出し、薬液供給部18に薬液を送り出すための流路であり、非容積式ポンプ16を有している。
【0030】
非容積式ポンプ16としては、渦巻ポンプ、タービンポンプ等の遠心ポンプ;軸流ポンプ、斜流ポンプ等のプロペラポンプ;及びカスケードポンプ等の粘性ポンプを挙げることができる。これらのポンプは、樹脂製ドラム11から薬液を大量に取り出すことができるほどには薬液移送流路15内を減圧にすることはできないが、薬液がポンプにまで達すれば、薬液供給部18に薬液を送り出すことができる。一方で、これらのポンプであれば、薬液がポンプでキャビテーションを起こす等のおそれが少ないため、装置全体に対して悪影響を与えることなく、薬液を送り出すことができる。なお、これらのポンプの内部も樹脂製表面を有することが好ましい。
【0031】
非容積式ポンプ16の中でも、キャビテーションを起こす等のおそれが少ないため、遠心ポンプを用いることが好ましく、特に磁気浮上遠心ポンプを用いることが好ましい。磁気浮上遠心ポンプは、磁気浮上の原理に基づいて、ポンプのインペラを駆動させるものであり、具体的には、ポンプのインペラは密閉されたケーシングの中で非接触の状態で浮上し、モータの回転磁界によって駆動されるポンプである。このポンプは、その内部に回転軸がないため、薬液が存在していない状態での空転も可能であり、また薬液に不純物が混入するおそれが低く好ましい。
【0032】
薬液移送流路15は、非容積式ポンプ16の下流側に容積式ポンプ17を有していてもよい。容積式ポンプ17によって、薬液移送流路15内を減圧して、樹脂製ドラム11から薬液を抜き出すことができる。このような実施形態では、樹脂製ドラム11に加圧ガス供給手段14を設置する必要がなく、樹脂製ドラム11を加圧する必要もないため、安全性が極めて高いため好ましい。
【0033】
たとえば、容積式ポンプ17を用いる場合には、薬液移送流路15と薬液供給部18との間にあるバルブ18aを閉じて、容積式ポンプ17の上流側にあるバルブ15aを開く。これにより、薬液移送流路15内を減圧して、樹脂製ドラム11から薬液を抜き出して、非容積式ポンプ16まで薬液を到達させる。薬液が非容積式ポンプ16に到達したら、容積式ポンプ17を停止し、バルブ15aを閉じて、バルブ18aを開く。これにより、稼働中の容積式ポンプ17に薬液を到達しないようにして、薬液を薬液供給部18にまで送り出すことができる。薬液を稼働中の容積式ポンプ17に入ると、薬液を供給する際に脈動が生じることがあり、また薬液によってはキャビテーションを起こす場合があるため、薬液を稼働中の容積式ポンプ17に入れないように制御することが好ましい。
【0034】
なお、これらの操作の間に、非容積式ポンプ16は、常に稼働していてもよく、又は必要なタイミングのみで稼働していてもよい。また、これらの操作は、これらの機器に連結しているPLCによって、自動で制御することができる。
【0035】
容積式ポンプ17としては、例えば、ピストンポンプ、ブランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ等の往復動ポンプ;及びギアポンプ、スクリューポンプ、ベーンポンプ等の回転ポンプを挙げることができるが、特にダイヤフラムポンプを用いることができる。
【0036】
薬液供給部18は、薬液を使用する場所に提供する部分であり、例えば薬液を他の薬液と混合するためのタンクへの接続部、薬液の調合流路への接続部等であることができる。
【0037】
本発明の薬液供給方法は、上記のような装置を用いて薬液を供給する方法である。1つの実施形態では、この薬液供給方法は、樹脂製ドラム11が加圧ガス供給手段14を有している薬液供給装置10を用いて薬液を供給する。この方法は、樹脂製ドラム11をガスで加圧して樹脂製ドラム11の内部の薬液を取り出すこと、及び薬液移送流路15の非容積式ポンプ16を用いて薬液を薬液供給部18にまで移送することを含む。
【0038】
このような実施形態の薬液供給方法では、薬液移送流路15に非容積式ポンプ16が存在することによって、樹脂製ドラム11への加圧を大きくする必要がないため、樹脂製ドラム11の暴発の危険性が非常に低い。また、薬液移送流路15に容積式ポンプ17を用いる必要がなく、容積式ポンプ17を用いた場合に行われる複雑な制御を回避することができる。
【0039】
また、他の実施形態では、本発明の薬液供給方法は、薬液移送流路15が、容積式ポンプ17を有している薬液供給装置10を用いて薬液を供給する。この方法は、薬液移送流路15の容積式ポンプ17を用いて樹脂製ドラム11の内部の薬液を取り出すこと、薬液移送流路15の容積式ポンプ17に薬液が到達する前に容積式ポンプ17の稼働を停止すること、及び薬液移送流路15の非容積式ポンプ16を用いて薬液を薬液供給部18にまで移送することを含む。
【0040】
このような実施形態の薬液供給方法では、樹脂製ドラム11に加圧ガス供給手段14を設置する必要がなく、樹脂製ドラム11を加圧する必要もないため、安全性が極めて高いため好ましい。
【0041】
本発明の薬液供給方法は、各種のセンサ、計器類によって状態を検知した上で、PLC等の制御装置を用いることによって、実行することができる。
【0042】
本発明の薬液供給装置の各構成については、本発明の薬液供給方法に関して説明した各構成を参照することができる。また、本発明の薬液供給方法において用いられる構成についても、本発明の薬液供給装置の各構成を参照することができる。
【0043】
本発明の薬液供給装置10は、薬液を高度に定量で供給する必要があるすべての技術分野において有用であり、例えば、研磨液、洗浄液、めっき液、医薬原料等の薬液を供給するために用いることができる。したがって、本発明は、薬液供給装置10を含む研磨システム、洗浄システム、めっき加工システム、医薬品の製造システムにも関する。例えば、本発明が、基材を研磨するための化学機械研磨システムである場合、安全性が非常に高く、かつ研磨スラリーのための薬液が高度に定量で供給されるため、安定して高品質な研磨基材の生産が可能になり、基材が半導体基板である場合には特に有用である。
【0044】
図3は、本発明の薬液供給装置10を用いた、特許文献1に記載の化学機械研磨(CMP)システムを示している。
【0045】
このCMPシステム1は、半導体製造プロセス等の研磨工程で使用することができる。CMPシステム1は、研磨液供給装置2と、CMP研磨装置8とを有する。
【0046】
研磨液供給装置2は、本発明の薬液供給装置10を具備しており、本発明の薬液供給装置10は、ケミカルを供給するための供給装置10CHM、スラリーを供給するための供給装置10SLR、過酸化水素水を供給するための供給装置10H2O2として用いられている。
【0047】
CMP研磨装置8の構成は、図7に示したような周知の研磨装置8の構成と概ね同様である。図7に示すように、CMPシステムは、研磨装置8と研磨液供給装置9とで構成される。研磨対象であるウエーハ88は、研磨装置8のヘッド81の下面の貼り付け盤82に接着される。このヘッド81により、ウエーハ88は、定盤83上の研磨パッド84に押圧される。研磨液供給装置9のタンク91には、スラリーを超純水や薬剤により希釈した研磨液が貯留される。研磨液供給装置9のタンク91内の研磨液をポンプ92により吸い出し、ノズル85の先端から研磨パッド84に研磨液を滴下しつつヘッド81及び定盤83を回転させると、ウエーハ88が研磨パッド84に押し付けられながら研磨パッド84の上を摺動する機械的作用と、ウエーハ88が研磨剤内のスラリーに接触する化学反応的作用とにより、ウエーハ88の表面が研磨される。
【0048】
図3において、CMP研磨装置8の液体送入口89は、研磨液供給装置2の液体送出口79と接続されている。CMP研磨装置8は、研磨対象であるウエーハ88を研磨する。研磨液供給装置2は、CMP研磨装置8に研磨液を供給する。
【0049】
CMP研磨装置8には、研磨液供給装置2のミキシングユニット50CHM、50SLR、及び50H2O2の前後の流量検出点及び濃度検出点における流量及び濃度の目標値を設定する操作子が設けられている。CMP研磨装置8において、流量又は濃度の目標値が設定された場合、CMP研磨装置8は、設定後の流量又は濃度を示す設定信号を研磨液供給装置2に供給する。
【0050】
研磨液供給装置2は、PLC70、外部の超純水供給源と接続された超純水送入口29、超純水を供給するための供給装置10DIW、ケミカルを供給するための供給装置10CHM、スラリーを供給するための供給装置10SLR、過酸化水素水を供給するための供給装置10H2O2並びに、超純水、ケミカル、スラリー、及び過酸化水素水の4種類の液体が調合される調合流路40を有する。例えば、ケミカル供給装置10CHMは、ケミカルが貯留されている複数のドラム11CHM、ドラム11CHMの重量を検出するロードセル12CHM、ドラム11CHMの中の圧力を検出する圧力センサ13CHMを有し、スラリー供給装置10SLR及び過酸化水素水供給装置10H2O2も同様の構成を有する。
【0051】
調合流路40は、CMP研磨装置8に至る液体送出口79の直前に配置されている。調合流路40は、各供給装置10のそれぞれの供給部18と連通している。調合流路40には、各流路のフローコントローラ65、流量センサ61、63、及び濃度センサ64が設けられている。
【0052】
各フローコントローラ65は、流量センサ62と流量調整バルブ26が一体になっているユニットである。各フローコントローラ65は、各供給装置10から調合流路40への液体の流量を調整する流量調整手段としての役割を果たすことができる。
【0053】
超純水供給装置10DIWには、低圧弁21(精密レギュレータ)が設けられている。低圧弁21の働きにより、装置10DIWにおける超純水の流量は、一定(例えば、1リッター/分)に保たれる。
【0054】
超純水供給装置10DIWは、ミキシングユニット50CHMの流入口F1と繋がっている。ケミカル供給装置10CHMは、ミキシングユニット50CHMの流入口F2と繋がっており、ミキシングユニット50CHMの流出口F3は、スラリーとのミキシングユニット50SLRの流入口F1と繋がっており、ミキシングユニット50SLRの流出口F3は、過酸化水素とのミキシングユニット50H2O2の流入口F1と繋がっており、ミキシングユニット50H2O2の流出口F3は、液体の送出口79と繋がっている。各ミキシングユニットは、図4に示すような、スタティックミキサー又はインラインミキサーであってもよい。
【0055】
図4(A)は、ミキシングユニット50CHM、50SLR、50H2O2の正面図である。図4(B)は、図4(A)を矢印B方向から見た図である。図4(C)は、図4(B)の内部を示す図である。図5は、図4(B)の一部断面図である。ミキシングユニット50CHM、50SLR、50H2O2は、2つの流入口F1及びF2と1つの流出口F3とをもったハウジングHZと、ハウジングHZ内に収められた攪拌スクリューSCRとを有する。
【0056】
ハウジングHZの本体は、供給装置10DIW、10CHM、10SLR、10H2O2の配管と略同じか僅かに太い直径をもった中空な円筒体である。ハウジングHZの本体の延在方向の一端に流入口F1があり、他端に流出口F3がある。ハウジングHZの本体の側面における流入口F1の近傍に、流入口F2がある。流入口F2は、ハウジングHZの本体の中に連通している。
【0057】
流入口F1は、ハウジングHZ内の配管HK1と連通している。配管HK1の先端は攪拌スクリューSCRと繋がっている。流入口F2は、ハウジングHZ内の配管HK2と連通している。図5に示すように、配管HK2の下端における幅方向の2辺は、配管HK1の内周面に当接している。配管HK2内の底と、底よりも僅かに上側の2か所の位置には、2つの液体吐出口HL1、HL2がある。配管HK1内において、2つの液体吐出口HL1、HL2は、攪拌スクリューSCRのほうを向いている。
【0058】
攪拌スクリューSCRは、軸棒AXSに、N(Nは、2以上の自然数、図4(C)の例では、N=5)個の捩れ羽根VL-k(k=1~N)を間隔をあけて配置したものである。軸棒AXSは、ハウジングHZの流入口F1と流出口F3において支持されている。捩れ羽根VL-kは、軸棒AXSの外周面に沿って半回転(180度)捩った形状をなしている。複数個の捩れ羽根VL-k(k=1~N)は、90度ずつ位相をずらして配置されており、相前後する捩れ羽根VL-kは、90度ずれて直交している。相前後する捩れ羽根VL-kの間隔は等しくなっている。相前後する捩れ羽根VL-kの間隔は、捩れ羽根VL-k自体の寸法(前後方向の幅)より短くなっている。
【0059】
ミキシングユニット50CHMの流入口F1及び流入口F2からミキシングユニット50CHM内に流入した2種類の液(超純水とケミカル)は、ミキシングユニット50CHM内において攪拌されながら混ざり合い、2種類の液を調合した液が、ミキシングユニット50CHMの流出口F3から送出される。他のミキシングユニットについても同様である。
【0060】
図3において、流量センサ61CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50CHMの流入口F1の直前の位置の液(超純水)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ62CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50CHMの流入口F2の直前の位置の液(ケミカル)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ63CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50CHMの流出口F3の直後の位置の液(超純水とケミカルを調合した液)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。濃度センサ64CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50CHMの流出口F3の直後の位置の液の濁度を、液体の濃度として検出し、濃度の検出信号を出力する。他の各流量センサについても同様である。
【0061】
PLC70は、研磨液供給装置2の制御手段としての役割を果たす装置である。PLC70は、調合流路40内の液体の流量及び濃度に応じて、流量調整手段であるフローコントローラ65CHM、65SLR、65H2O2の動作を制御する第1の制御と、液体の種類毎の複数のドラム11CHM、11SLR、11H2O2の貯留量に応じて、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2と供給装置10CHM、10SLR、10H2O2との連通を制御する第2の制御とを実行する。これは、PLC70は、図1に記載の各装置のPLCと共通化されていてもよく、又は別々に設けられていてもよい。
【0062】
より詳細に説明すると、第1の制御では、PLC70は、フローコントローラ65CHMの流量調整バルブ26CHMの開度を、流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す流量の目標値との関係、及び濃度センサ64CHMの検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す濃度の目標値との関係に基づいて決定した開度にし、以後の流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号、及び濃度センサ64CHMの検出信号に基づいて流量調整バルブ26CHMの開度を補正する。
【0063】
具体的には、PLC70は、流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号が示す流量が流量の目標値よりも大きく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を小さくすることを指示する制御信号をフローコントローラ65CHMに供給する。また、PLC70は、流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号が示す流量が目標値よりも小さく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を大きくすることを指示する制御信号をフローコントローラ65CHMに供給する。
【0064】
また、PLC70は、濃度センサ64CHMの検出信号が示す濃度が濃度の目標値よりも大きく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を小さくすることを指示する制御信号をフローコントローラ65CHMに供給する。また、PLC70は、濃度センサ64CHMの検出信号が示す濃度が目標値よりも小さく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を大きくすることを指示する制御信号を供給する。
【0065】
同様にして、PLC70は、他のフローコントローラの流量調整バルブの開度を補正する。
【0066】
第2の制御では、PLC70は、ケミカルが貯留されている複数のドラム11CHMの圧力センサ13CHMの検出信号を基に、ドラム11CHMの圧力を求めると共に、ロードセル12CHMの検出信号を基に、ドラム11CHMのケミカルの貯留量を求める。図6に示すように、PLC70は、複数のドラム11CHMのうちケミカル供給装置10CHMに連通しているドラム11CHM図6の例ではドラム1)の液体の貯留量が所定値THLQ1を下回ったとき、そのドラム11CHMの第1のチューブの弁を閉弁してケミカル供給装置10CHMとの連通を解除すると共に、ドラム11CHMの第2のチューブの弁を閉弁してドラム11CHMの加圧を停止する。また、このとき、別のドラム11CHMのうち、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値THPR1を超えているドラム11CHM図5の例ではドラム2)を選択し、選択したドラム11CHMの第1のチューブの弁を開弁してケミカル供給装置10CHMと連通させる。また、このとき、別のドラム11CHMのうち、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値THPR1に達していないドラム11CHM図6の例ではドラム3)を選択し、選択したドラム11CHMの第2のチューブの弁を開弁してそのドラム11CHMに加圧ガス供給手段14CHMから窒素を送出させ、ドラム11CHMの加圧を開始する。
【0067】
同様に、PLC70は、圧力センサ13SLR、ロードセル12SLRの検出信号に基づいて、スラリーが貯留されているドラム11SLRとスラリー供給装置10SLRとの連通を制御し、圧力センサ13H2O2、ロードセル12H2O2の検出信号に基づいて、過酸化水素水が貯留されているドラム11H2O2と過酸化水素供給装置10H2O2との連通を制御する。
【符号の説明】
【0068】
1 化学機械研磨システム
2 研磨液供給装置
8 化学機械研磨装置
11 ドラム
14 加圧ガス供給手段
15 薬液移送流路
16 非容積式ポンプ
17 容積式ポンプ
18 薬液供給部
14a、15a、18a バルブ
21 低圧弁
26 流量調整バルブ
29 超純水送入口
31 天板
32 底板
33 側板
38 エアシリンダー
40 調合流路
50 ミキシングユニット
61、62、63 流量センサ
64 濃度センサ
65 フローコントローラ
70 PLC
79 送出口
81 ヘッド
83 定盤
84 研磨パッド
85 ノズル
88 ウエーハ
89 液体送入口
91 タンク
92 ポンプ
311 312 321 322 板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7